説明

検出器と回路の飽和を避けることにより検査システムの熱破損を削減して、検出範囲を拡張するためのシステム、回路、方法

【課題】試料を検査するために使用される検査システムの欠陥検出を強化する。
【解決手段】光電子増倍管(PMT)検出器の測定検出範囲の制限要因として陽極飽和に対処することによって欠陥検出を強化するための検査システム、回路、方法が提供される。検査システムの測定検出範囲の制限要因として増幅器及びアナログ・デジタル回路の飽和レベルに対処することによって欠陥検出を強化するための検査システム、回路及び方法も提供される。加えて、表面検査の走査の間に試料に供給される入射レーザ・ビームパワー・レベルを動的に変更することによって大きな粒子に対する熱破損を削減することにより欠陥検出を強化するための検査システムや回路、方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、試料を検査するために使用される検査システムの測定検出範囲を拡張するための回路やシステム、方法に関する。より具体的には、本発明は、測定検出範囲の制限要因として光電子増倍管(PMT)の陽極飽和に対処することによって検査システムの測定検出範囲を拡張するための回路やシステム、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
論理素子、記憶デバイス、その他の集積回路デバイスなどの半導体デバイスを製造することは、一般に、半導体デバイスの様々なフィーチャや複数のレベルを形成するために、いくつかの半導体製造プロセスを使用して、半導体ウェーハなどの試料を処理することを含む。例えば、リソグラフィは、通常、半導体ウェーハ上に配置されたレジストにパターンを転写することを必要とする半導体製造プロセスである。半導体製造プロセスの追加例は、化学機械研磨、エッチ、堆積、イオン注入などを含むがこれらに限定されない。多数の半導体デバイスは、半導体ウェーハ上への配置として製造され、次いで、個々の半導体デバイスに分離される。
【0003】
検査プロセスは、製造プロセスにおいて高い歩留まり、したがって、高い利益を促す目的でウェーハ上の欠陥を検出する目的で半導体製造プロセスの間に様々なステップで使用される。検査は常に半導体製造の重要部分である。しかし、半導体デバイスの寸法が小さくなるにつれて、検査は許容できる半導体デバイスの製造にとってより一層重要になっている。例えば、比較的小さな欠陥でさえ半導体デバイス内に望まれない逸脱を引き起こす可能性があり、場合によっては、デバイスを故障させる可能性があるため、減少するサイズの欠陥を検出することはますます必要になっている。
【0004】
光学システムやEビームシステムを含めて、半導体ウェーハの検査のために多くの異なる種類の検査ツールが開発されている。光学検査ツールは、一般に、暗視野や明視野の検査システムを特徴とする。暗視野システムは、一般に、比較的高い検出範囲を有することで知られている。例えば、暗視野システムは、標準角度又は傾斜角から入射ビームが試料に供給され、試料の表面から散乱される光の量を検出する。システムによって検出される散光の量は、一般に、検査中のスポットの光学的な特徴(例えば、スポットの屈折率)や、そのスポット内の何らかの空間偏差(例えば、不均一な表面トポロギー)に依存する。暗視野検査の場合、平滑な表面は集めた信号をほとんどもたらさず、一方、突出したフィーチャ(パターン化されたフィーチャ又は欠陥など)を有する表面はより強く(時には、最高で6倍以上)散乱する傾向がある。明視野検査システムは、特定の角度で光を試料に方向づけ、同様の角度で試料の表面から反射された光の量を測定する。暗視野システムと対照的に、明視野システムによって集められた反射信号内の偏差は、一般に、約2倍に過ぎない。
【0005】
加えて、ほとんどの検査ツールは、パターン化されていない半導体ウェーハ又はパターン化された半導体ウェーハを検査するように設計されるが、両方を検査するようには設計されない。ツールは特定の種類のウェーハを検査するように最適化されるため、一般に、いくつかの理由で、異なる種類のウェーハを検査することはできない。例えば、パターン化されていないウェーハの多くの検査ツールは、レンズ(又は別のコレクタ)によって集められた光のすべてがレンズによって集められた光のすべてを表す単一の出力信号を生成する単一の検出器に方向づけられるように構成される。したがって、パターン化されたウェーハ上のパターン又はフィーチャから散乱された光は、(例えば、欠陥からの)その他の散光と組み合わされることになる。場合によっては、単一の検出器は飽和する可能性があり、結果として、欠陥検出のために分析される信号を生み出さない可能性がある。単一の検出器が飽和しないとしても、ウェーハ上のパターン又はその他のフィーチャからの散乱光は別の散乱光から分離されることができず、それにより、別の散乱光に基づいて欠陥検出を抑制しないとしても、これを妨げる。
【0006】
パターン化されたウェーハを検査するために使用されるツールは、一般に、空間解像度を改善するために少なくとも2つの検出器を用いる。しかし、特に、暗視野システムを用いて結像を行う場合、パターン化されたウェーハ検査ツール内で使用される検出器も飽和する可能性がある。上述のように、パターン化されたウェーハから得られる暗視野散乱信号は、(暗く見える)平滑な表面領域から(明るく見える)極めてテキスチャ付きの領域までの表面トポロギー内の偏差により、6倍(又は、それ以上)異なる可能性がある。特に、高いデータ転送速度で動作する検出システムの場合、「オンザフライ」調整なしで、検査されている基板の非常に暗い領域と非常に明るい領域の両方から大きな信号を集めることは困難な場合が多い。
【0007】
ほとんどの光学検査ツールは、検出範囲、検出感度、又はその両方に制限がある。例えば、より高い検出範囲を得るために高利得検出器を用いる検査ツールは、より小さい(すなわち、微光)信号を検出ができない。他方で、低利得検出器を用いる検査ツールは、検出範囲の減少という代償を払ってより大きな感度を実現する。すなわち、低利得検出器はより小さな信号を検出できる可能性があるが、より大きな信号が受信される場合、飽和することがある。その他の要因は、検出器の利得に加えて、検出範囲を制限する傾向がある。例えば、散乱出力信号を信号処理に適した形態に変換するために使用される増幅回路又は高速アナログ・デジタル変換器によってさらなる制限が課せられる可能性がある。
【0008】
この問題の1つの可能な解決策は、低増幅信号範囲を強調するために、検出器の出力信号に非線形増幅を加えることである。この種の手法は、その開示が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,002,122号でWolfによって説明されている。Wolfによって説明される方法では、光電子増倍管(PMT)からの出力信号は対数増幅器や利得補正機構によって処理される。Wolfは、PMT検出器の一般的な検出範囲制限である陽極飽和を回避するために、「オンザフライ」でPMT利得を変えることによって(ダイノードに供給されるバイアス電位を変えることによって)低増幅信号範囲を強調する。この手法は、暗視野画像内の小信号検出の可視性の改善を可能にするが、検査システムの検出範囲全体を拡張しない。加えて、Wolfによって開示された「オンザフライ」利得変調は、PMTに極めて非線形な方法で動作させ、したがって、非線形効果や過渡的効果を補償するために複雑な(かつ高価な)駆動エレクトロニクスと高度な較正とを要求する。
【0009】
検査システムの検出範囲を拡張するためのもう1つの手法は、個別の検出チャネルを有する2つ以上の検出器を利用することである。この種の手法は、その開示が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第2003/0058433号でAlmogy他によって説明されている。Almogyは、少なくとも2つの検出器を利用する欠陥検出システムを説明する。検出器のうちの1つは、高い感度を目指して最適化され、一方、もう1つの検出器は、通常、感度を犠牲にして、高い飽和レベルを有するように設計される。試料から散乱された光は、様々な光学部品の追加により検出器の間で分割される。Almogyは検出範囲を拡張することが可能であるが、Almogyは、そのすべてが追加的な空間を消費し、複雑性を増し、より高いコストを負う、追加的な光学系と電子回路とを有する複数の検出器を要求することによってこれを行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、ウェーハ検査システムの検出範囲を拡張するために改善された回路及び方法の必要性が依然として存在する。かかる改善された回路及び方法は、Wolfによって要求されるような、リアルタイムの利得調整の複雑性とコスト、又はAlmogyによって要求される追加的な検出器、光学系、電子回路を伴わずに、かなりの測定範囲拡張を提供することが好ましい。加えて、改善された検査システムは、スループット又は感度を犠牲にせずに、検出範囲を拡張することになる。場合によっては、改善された検査システムは、パターン化されたウェーハとパターン化されていないウェーハとに使用される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
システムや回路、方法の様々な実施態様の以下の説明は、決して添付の特許請求の範囲の主題を制限するものと解釈されるべきではない。
【0012】
本明細書で説明される検査システムや回路、方法は、光電子増倍管(PMT)検出器の測定検出範囲の制限要因として陽極飽和に対処することによって欠陥検出を強化する。本発明の一実施態様によれば、試料を検査するための方法は、試料に光を方向づけることと、試料から散乱された光を検出することとを含む。一般に、検出するステップは、PMT検出器の陽極電流を監視することと、陽極電流が所定の閾値に達するまで陽極電流を使用して、試料のフィーチャ、欠陥、又は光散乱特性を検出することとを含む。その後、方法は、試料のフィーチャ、欠陥、又は光散乱特性を検出するためにPMTのダイノード電流を使用してよい。
【0013】
場合によっては、方法は、光が試料に方向づけられる前に、検出のために使用されるダイノード電流を選択することを含んでもよい。例えば、PMT内に含まれる複数のダイノードのうちの1つに電気接続を提供することによって特定のダイノード電流が選択されてもよい。一実施態様では、中間程度の利得量を提供するために、複数のダイノードから中間ダイノードが選択される。本発明のその他の実施態様では、例えば、試料から散乱された光強度の範囲に応じて、その他のダイノードが選択されてもよい。
【0014】
場合によっては、方法は、試料のフィーチャ、欠陥、又は光散乱特性を検出するために使用されることになる代替のダイノード電流を選択することを含んでもよい。例えば、代替の選択は、上記の検出ステップの間(又は後)に、複数のダイノードのうちの異なる1つにもう1つの電気接続を提供することによって行われる。代替のダイノード電流は、当初選択されたダイノード電流よりも小さい又は大きい量の利得を提供するように選択されてもよい。
【0015】
本発明のもう1つの実施態様によれば、試料から散乱された光を検出するための回路が本明細書で説明される。一般的な実施態様では、回路は、試料から散乱された光を受信して、電気信号に変換するための光電子増倍管(PMT)を含む。当技術分野で知られているように、PMTは、陰極と、多数のダイノード及び陽極からなる複数のステージとを含む。このように、電気信号は陽極ステージで出力信号を生み出すために連続する各ステージで増幅される。
【0016】
しかし、従来型のPMT検出器と異なり、本明細書で説明される回路は、PMTのダイノード・ステージのうちの1つで増幅された電気信号を表す中間信号と共に出力信号を受信するためにPMTに結合される手段を含んでもよい。かかる手段は、一般に、i)出力信号が所定の閾値未満にとどまる限り、出力信号を検査システム構成要素に供給するように、そしてii)出力信号が所定の閾値に達すると中間信号を検査システム構成要素に供給するように構成される。ほとんどの場合、所定の閾値は、陽極ステージが飽和し始める電流レベルにほぼ同程度である。このように、本明細書で主張される手段は、陽極ステージが飽和に達すると中間信号を供給するように切り換わることが可能である。
【0017】
本発明のもう1つの実施態様によれば、試料を検査するための検査システムが本明細書で説明される。一般に、検査システムは、光を試料に方向づけするための照射サブシステムと、試料から散乱された光を検出するための検出サブシステムとを含んでいる。検出サブシステムは、検出された光に反応して、第1の信号と第2の信号とを生成するように構成される。しかし、先行技術の検査システムと異なり、本明細書で説明される検出サブシステムは、第1及び第2の信号を生成するために、1つの検出器だけを使用することが可能である。本明細書で主張されるシステム内には、第1の信号が所定の閾値レベルに達するまで第1の信号を使用し、その後、試料のフィーチャ、欠陥、又は光散乱特性を検出するために第2の信号を使用する、前記検出するためのプロセッサが含まれる。例えば、プロセッサは、i)第1の信号を所定の閾値レベルと比較するように、そしてii)第1の信号が所定の閾値レベルに達すると第2の信号に切り換わるように構成される。
【0018】
より具体的な実施態様では、検出サブシステムは、試料から散乱された光をコレクタの方向に集めるためのコレクタと、集められた光を第1及び第2の信号に変換するための検出器(又は光検出器)とを含む。ほとんどの場合、第2の信号は、第1の信号のごく一部である。例えば、光検出器は、光電子増倍管(PMT)と、電流・電圧変換器と、負荷とを含む。当技術分野で知られているように、PMTは、陰極と、複数のダイノードと、1つの陽極とを含み、電流・電圧変換器は第1の信号を生み出す目的で陽極電流を電圧に変換するために結合される。しかし、従来型の方法と異なり、本明細書で主張される負荷は、第2の信号を生み出す目的で中間ダイノード電流をもう1つの電圧に変換するために複数のダイノードのうちの1つに結合される。中間ダイノード電流は、陽極電流よりもかなり小さく、したがって、それが、ダイノード飽和を生じさせずに、陽極で検出されるものより、かなり大量の光を検出するために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】光を試料に方向づけるための照射サブシステムと、試料から散乱された光を検出するための検出サブシステムと、検出された光を使用して、試料のフィーチャ、欠陥、又は光散乱特性を検出するためのプロセッサとを含む、例示的な検査システムのブロック図である。
【図2A】本発明の第1の実施形態による、試料から散乱された光を検出するために図1の検出サブシステム内に含まれる例示的な回路のブロック図である。
【図2B】本発明の第2の実施形態による、試料から散乱された光を検出するために図1の検出サブシステム内に含まれる例示的な回路のブロック図である。
【図2C】本発明の第3の実施形態による、試料から散乱された光を検出するために図1の検出サブシステム内に含まれる例示的な回路のブロック図である。
【図3】本発明の第1、第2、及び第3の実施形態による、試料を検査するための例示的な方法の流れ図である。
【図4】本発明の第4の実施形態による、試料から散乱された光を検出するために図1の検出サブシステム内に含まれる例示的な回路のブロック図である。
【図5】図4A、図4Bの回路によって生成される信号間のフィルタリング、デジタル化、及び切替えのために使用される例示的なエレクトロニクスのブロック図である。
【図6】本発明の第4及び第5の実施形態による、試料を検査するための例示的な方法の流れ図である。
【図7】観測中の試料に供給される入射レーザパワーの量を制御するための手段を含む、もう1つの例示的な検査システムのブロック図である。
【図8】図7の検査システム内に含まれ得る、レーザパワー減衰器の例示的な実施形態のブロック図である。
【図9】図7の検査システム内に含まれ得る、レーザパワー制御装置の例示的な実施形態のブロック図である。
【図10】図7の検査システム内に含まれ得る、レーザパワー制御装置のもう1つの例示的な実施形態のブロック図である。
【図11】図7の検査システム内に含まれ得る、レーザパワー制御装置のさらにもう1つの例示的な実施形態のブロック図である。
【図12】大粒子の熱破損を削減して、図7の検査システムの測定検出範囲を拡張するために、観測中の試料に供給される入射レーザパワーの量を動的に変更するための方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のさらなる利点は、好ましい実施形態の以下の詳細な説明により、かつ添付の図面を参照することにより当業者に明らかになるであろう。
【0021】
本発明は様々な修正形態や代替形態が可能であるが、その特定の実施形態は、図面で例として示されており、本明細書で詳細に説明されるであろう。図面は原寸に比例しない。しかし、図面やそれに対する詳細な説明は、本発明を開示される特定の形態に限定することが意図されず、逆に、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲に該当するすべての変更形態、均等物、代替形態を網羅することが意図される。
【0022】
本明細書で説明される方法及びシステムは、検出器の飽和、増幅器の飽和、アナログ・デジタル変換器(ADC)の固定ビット範囲を含むが、これらに限定されない、測定検出範囲の様々な制限要因に対処することによって欠陥検出を強化する。いくつかの現在使用されている検査方法と異なり、本明細書で説明される検査システムは、信号の直線性と安定性とを維持しながら、そのすべてが検査システムの空間消費、複雑性、コストを望ましくなく増加する、追加的な検出器、光学系、電子部品を用いずに、測定検出範囲を拡張することが可能である。
【0023】
試料を検査するために使用される光学検査システム又はツールに関して、様々な実施形態が本明細書で説明される。用語「試料」は、ウェーハ又はレチクルを指すため、又は、欠陥、フィーチャ、又は当技術分野で知られているその他の情報(例えば、ヘーズの量又はフィルム特性)に対して検出される何らかのその他のサンプルを指すために使用される。
【0024】
本明細書で使用されるように、用語「ウェーハ」は、一般に、半導体材料又は非半導体材料の形状の基板を指す。かかる半導体材料又は非半導体材料の例は、単結晶シリコン、ガリウムヒ素、リン化インジウムを含むが、これらに限定されない。かかる基板は、一般に、半導体製造施設で発見かつ/又は処理される。
【0025】
場合によっては、ウェーハは、バージン・ウェーハなどの基板だけを含む場合もある。あるいは、ウェーハは、基板上に形成される1つ又は複数の層を含む。かかる層の例は、レジスト、誘電体、導体材料を含むが、これらに限定されない。レジストは、光学リソグラフィ技術、電子ビーム・リソグラフィ技術、又はX線リソグラフィ技術によってパターン化されるレジストを含む。誘電体の例は、二酸化珪素、窒化珪素、酸窒化珪素、窒化ニタンを含むが、これらに限定されない。誘電体の追加例は、Applied Materials,Inc.,Santa Clara,Californiaから市販されているBlack Diamond(商標)、及びNovellus Systems,Inc.,San Jose,Californiaから市販されているCORAL(商標)などの「低誘電率」の誘電体、「キセロゲル」などの「超低誘電率」の誘電体、五酸化タンタルなどの「高誘導率」の誘電体を含む。加えて、導体材料の例は、アルミニウム、ポリシリコン、銅を含むが、これらに限定されない。
【0026】
ウェーハ上に形成される1つ又は複数の層は、「パターン化されても」又は「パターン化されなくても」よい。例えば、ウェーハは、繰り返し可能なパターン・フィーチャを有する複数のダイを含む。材料のかかる層の形成と処理は、最終的に、結果として完成された半導体デバイスを提供する。したがって、ウェーハはその上に完全な半導体デバイスのすべての層が形成されていない基板、又はその上に完全な半導体デバイスのすべての層が形成されている基板を含む。用語「半導体デバイス」は、本明細書で、用語「集積回路」と交換可能に使用される。加えて、微小電子機械(MEMS)デバイスなど、その他のデバイスもウェーハ上に形成される。
【0027】
「レチクル」はレチクル製造プロセスの任意のステージのレチクル、又は半導体製造施設での使用のために公表されているか、公表されていない完成されたレチクルである。レチクル、すなわち「マスク」は、一般に、その上に形成され、かつパターンの形で構成された、実質的に不透明な領域を有する実質的に透明な基板と定義される。基板は、例えば、石英などのガラス素材を含むであろう。レチクルは、レチクルのパターンがレジストに転写されるように、リソグラフィ・プロセスの露光ステップの間にレジスト被覆されたウェーハ上に配置される。例えば、レチクルの実質的に不透明な領域は、レジストの基礎的な領域をエネルギー源への露光から保護することができる。
【0028】
次に図面を参照すると、図1、2、4、5、7〜10は、原寸に比例して描かれていない点に留意されたい。特に、図のいくつかの要素の大きさは、その要素の特徴を強調するために大いに誇張されている。図1、2、4、5、7〜10は、同じ寸法に比例して描かれていない点にも留意されたい。2つ以上の図に示す類似要素は、同じ参照番号を使用して表示されている。
【0029】
図1は、本明細書で説明される検査方法を実行するために使用されるシステムを例示する。図1に示すシステムは、本明細書で説明される方法に従って試料を検査するために使用される一般的な光学構成を例示する。検査システムは、暗視野の光学サブシステムを含む。例示されたシステムは、依然として、本明細書で説明される方法を実行する能力を提供しながら、様々な方法で変更されることは当業者には明らかであろう。加えて、例示されたシステムは、ステージ、試料ハンドラ、フォールディング・ミラー、偏光器、追加的光源、追加的コレクタなど、図1に示されない様々な追加的構成要素を含んでよい点も当業者には明らかであろう。すべてのかかる変更は、本明細書で説明される発明の範囲内である。
【0030】
図1に例示されるシステムは照射サブシステムを含む。照射サブシステムは、光を試料に方向づけるように構成される。例えば、照射サブシステムは光源10を含む。光源10は、例えば、レーザ、ダイオード・レーザ、ヘリウム・ネオン・レーザ、アルゴン・レーザ、固体レーザ、ダイオード励起固体(DPSS)レーザ、キセノン・アーク灯、放電灯、又は白熱電球を含む。光源は、近単色光又は広帯域光を放射するように構成される。一般に、照射サブシステムは、比較的狭い波長域を有する光(例えば、近単色光、すなわち、約20nm未満、約10nm未満、約5nm未満、又はさらに約2nm未満の波長範囲を有する光)を試料に方向づけるように構成される。したがって、光源が広帯域の光源である場合、照射サブシステムは、試料に方向づけられる光の波長を制限することが可能な1つ又は複数のスペクトル・フィルタを含む。1つ又は複数のスペクトル・フィルタは、帯域通過フィルタ及び/又はエッジ・フィルタ及び/又はノッチ・フィルタである。
【0031】
照射サブシステムは、様々なビーム整形・偏光制御光学系12も含む。例えば、照射サブシステムは、例えば、入射ビームを特定のスポット・サイズを有する試料14に方向づけし、供給するための様々な光学系を含む。光源が様々な偏光の光を放射するように構成される場合、照射サブシステムは、光源によって放射される光の偏光特性を変えることが可能な1つ又は複数の偏光構成要素を含む。場合によっては、試料14に方向づけられた光は干渉性であってよく、又は非干渉であってもよい。ビーム整形・偏光制御光学系12は、ビーム拡張器、フォールディング・ミラー、焦点レンズ、円柱レンズ、ビーム・スプリッタなど、図1に示されない、いくつかの構成要素を含む。
【0032】
場合によっては、照射サブシステムは偏向器(図示せず)を含む。一実施形態では、偏向器は、音響光学偏向器(AOD)である。その他の実施形態では、偏向器は、機械的走査アセンブリ、電子スキャナ、回転鏡、ポリゴン・ベースのスキャナ、共振スキャナ、圧電スキャナ、ガルボ・ミラー、又は検流計を含む。偏向器は、試料全体にわたって光ビームを走査する。いくつかの実施形態では、偏向器は、およそ一定の走査速度で、試料全体にわたって光ビームを走査することが可能である。
【0033】
図1に示すように、照射サブシステムは、標準の入射角度で光のビームを試料に方向づけるように構成されてもよい。この実施形態では、試料に関して光学系の相対運動及び/又は光学系に対する試料の相対運動によって、光の標準入射ビームが試料全体にわたって走査されるため、照射サブシステムは偏向器を含まなくてよい。あるいは、照射サブシステムは、傾斜入射角度で光のビームを試料に方向づけるように構成される。システムは、光の傾斜入射ビームや光の標準入射ビームなど、光の複数のビームを試料に方向づけるように構成されてもよい。光の複数のビームは、実質的に同時に又は順次に、試料に方向づけられる。
【0034】
図1の検査システムは、単一の集光チャネルを含む。例えば、試料から散乱された光は、レンズ、複合レンズ、又は当技術分野で知られている任意の適切なレンズであるコレクタ16によって集められる。あるいは、コレクタ16は、鏡などの、反射光学部品又は一部反射光学部品である。加えて、1つの特定の集光角度が図1に例示されているが、集光チャネルは任意の適切な集光角度で配置されてもよい点を理解されたい。集光角度は、例えば、入射角度及び/又は試料の幾何学的形状の特性に応じて異なってよい。
【0035】
検査システムは、試料から散乱され、コレクタ16によって集められる光を検出するための検出器18も含む。検出器18は、一般に、散乱光を電気信号に変換するために機能し、したがって、実質的に、当技術分野で知られている任意の光検出器を含む。しかし、検出器の所望される性能特性、検査されることになる試料の種類、及び/又は照射サブシステムの構成に基づいて、本発明の1つ又は複数の実施形態内で使用するために特定の検出器が選択される。例えば、検査のために利用可能な光の量が比較的小さい場合、時間遅延積分(TDI)カメラなど、効率を強化する検出器は、システムの信号対雑音比を高めかつスループットを高めることができる。しかし、検査のために利用可能な光の量と、実行されている検査の種類とに応じて、電化結合素子(CCD)カメラ、光ダイオード、光電管、光電子増倍管(PMT)など、その他の検出器が使用されてもよい。本発明の少なくとも1つの実施形態では、試料から散乱された光を検出するために光電子増倍管が使用される。
【0036】
検査システムは、検出器18によって検出された散乱信号を処理するために必要な様々な電子部品も含む。例えば、図1に示すシステムは、増幅回路20と、アナログ・デジタル変換器(ADC)22と、プロセッサ24とを含む。増幅器20は、一般に、検出器18から出力信号を受信して、それらの出力信号を所定の量だけ増幅するように構成される。ADC22は、増幅された信号をプロセッサ24内の使用に適したデジタル形式に変換する。一実施形態では、プロセッサは、図1に示すように、透過媒体によってADC22に直接結合されてもよい。あるいは、プロサッサは、ADC22に結合されたその他の電子部品から信号を受信してもよい。このように、プロセッサは、透過媒体と介在電子部品とによってADC22に間接的に結合される。
【0037】
一般に、プロセッサ24は、信号集光チャネルから得られた電気信号を使用して、試料のフィーチャ、欠陥、又は光散乱特性を検出するように構成される。単一の集光チャネルによって生み出された信号は、単一の検出器(検出器18)によって検出された光を表す。用語「単一の検出器」は、本明細書で、1つだけの検出範囲、又は場合によっては、(例えば、検出器アレイ又は複数陽極PMT内で発見されるような)いくつかの感知範囲を有する検出器を説明するために使用される。数に関係なく、単一の検出器の感知範囲は、単一の筐体内で実施される。場合によっては、本明細書で説明される検査システムは、パターン化された試料や、パターン化されていない試料を検査するために使用される。プロセッサは、当技術分野で知られている任意の適切なプロセッサを含む。加えて、プロセッサは、当技術分野で知られている任意の適切な欠陥検出アルゴリズム又は方法を使用するように構成されてもよい。例えば、プロセッサは、試料上の欠陥を検出するためにダイ−データベース比較又は閾値アルゴリズムを使用してもよい。
【0038】
本明細書で説明される検査システムは、試料について、その他の検査システムよりも多くのフィーチャ、欠陥、又は光散乱特性情報を提供するが、感度に対して検出範囲をトレードオフする(逆もまた同様である)。すなわち、本明細書で説明される検査システムは、感度を犠牲にせずに、拡張された検出範囲(例えば、約0から約3倍、又はそれ以上)を提供する。改善された検査システムはまた、優れた信号直線性と安定性とを維持し、検出範囲を拡張するために複雑な較正又は追加的な検出器や光学系を要求しない。改善された検査システムは、検査システムの検出範囲を制限する傾向があるいくつかの要因に対処することによってこれをすべて実現する。これらの要因は、検出器の飽和、増幅器の飽和、アナログ・デジタル変換器の固定ビット範囲を含むが、これらに限定されない。検出器の飽和によって設けられる制限は、次に、光電子増倍管との関連で説明される。しかし、下に概略が説明される一般的概念はその他の種類の検出器に適用可能な場合がある点を認識されたい。
【0039】
光電子増倍管(PMT)は、多くの場合、光信号がかすんでいる場合に(すなわち、蛍光分光法など、低強度の用途で)検出器として使用される。一般的な光電子増倍管は、真空管内の光電子放出陰極(光電陰極)と、その後に続く、集束電極、(電子増倍部を形成する)複数のダイノード、(電子コレクタを形成する)陽極からなる。光がPMTに入射すると、光電陰極は光電子を真空管内に放出する。集束電極は、光電子を電子増倍部に方向づけ、そこで、電子は二次的な放射のプロセスによって増倍される。例えば、光電子は、電界によって光電陰極から第1のダイノードに向けて加速される。光電子がダイノードに衝突すると、光電子は追加的な電子を遊離させて、光電子信号を増幅する。これらの二次的電子は次のダイノードに移動し、そこで再度増幅される。ダイノード・チェーンの終りで、電子は陽極によって集められて、PMTに入射する光の量に比例して電気出力信号を生成する。陽極で生み出された出力信号は、一般に、トランスインピーダンス増幅器と、その後に続くアナログ・デジタル変換器など、従来型の電子工学を使用して測定されるように十分大きい。
【0040】
二次的な放射のプロセスは、光電子増倍管が高い電流増幅を実現することを可能にする。すなわち、光電陰極からの非常に小さな光電流は、光電子増倍管の陽極からの大きな出力電流として観測される。(別名、利得と呼ばれる)電流増幅は、単に、光電陰極からの光電流に対する陽極出力電流の比率である。各ダイノードでの利得は、そのダイノードと前のステージの間の電位に比例する、入射電子のエネルギーの関数である。PMTの総利得は、すべてのダイノード・ステージからの利得の積である。電圧(V)が(n個の)ダイノード・ステージを有する光電子増倍管の陰極と陽極の間に印加されると、総利得は次のようになる:
G(V)αVan 式1
式中、αは、ダイノード材料と幾何学的構造とによって決定される(通常、0.6から0.8の範囲の)係数である。
【0041】
ほとんどの場合、光電子増倍管は単一の所定利得で操作されることになる。例えば、バイアス電圧は、陰極と、ダイノードすべてと、陽極と、接地との間に一連の分圧抵抗器を接続することによって、ダイノードの各々に対して生成される。抵抗Rは、スケーリング定数として使用され、通常、光電子増倍管のすべてのステージに対して同じである。大きな負電圧(通常、−500Vから−1500V)が、次いで、陰極に印加され、電位は分圧抵抗器チェーンによってダイノード全体にわたり均等に分割される。これを行うことにより、ダイノードの各々が連続してより小さい負電位で維持されることが可能になり、その間の違いは中間ダイノード利得を定める。光電子増倍管の総利得は陰極に印加される電圧を変えることによって変更されるが、一般に、これは所望されない。例えば、大きな電圧を必要とすることは、バイアス・ストリング内のワット損を制限するために必要な寄生容量と大きな抵抗値とにより、利得を速やかに変更することを困難にする。したがって、ほとんどのユーザは、予め管利得(tube gain)を決定し、適切な陰極電圧を設定し、次いで、測定オペレーションを通してその電圧で管を操作する。
【0042】
この構成では、光電子増倍管の検出範囲は、トランスインピーダンス増幅器の雑音特性及び利得特性によってローエンドで、かつ陽極電流を引き渡すための光電子増倍管の能力によってハイエンドで制限される。低強度の用途では、陽極電流は管内の空間電荷効果、バイアス・ストリングの電力消費量、ダイノードの被覆材の消費性質によって制限される。高強度の用途では、光電子増倍管は、陽極の飽和、そして時には、陰極の飽和によって制限される。例えば、光電子増倍管は、比較的大量の光が陽極(又は陰極)を飽和させる場合、不正確な結果となる場合がある。以下の実施形態では、本発明は、検査システムの検出範囲に対する制限要因として陽極飽和に対処する。下により詳細に説明されるように、本発明は、一態様では、陽極飽和を回避するように設計された回路と方法を提供することによって、測定の不正確さを回避して、PMT検出器の検出範囲を拡張する。
【0043】
図2Aは、試料から散乱された光を検出するために使用される回路30の一実施形態を例示する。したがって、回路30は、検出器18として、図1の検査システム内に組み込まれることが可能である。図2Aの実施形態では、回路30は、陰極34と、複数のダイノード36と、陽極38とを有する光電子増倍管(PMT)32を含む。8個のダイノードだけを有して示されるが、PMT32は、実質的に任意の数のダイノードを含んでよく、一般的な数は約8個から約20個に及ぶ。PMT32は、図2Aで、ヘッドオン型(head-on)光電子増倍管、特に、透過モードで操作される線形集束(linear-focused)ヘッドオン型PMTとしても示されている。しかし、当業者は本明細書で説明される本発明の態様がどのようにその他のモード及び/又は種類のPMTに応用されるかを明確に理解するであろう。例えば、PMT32は、あるいは、サイドオン型(side-on)構成で形成され、かつ/又は反射モードで操作されてもよい。図2Aに示す線形集束型PMTに加えて、本発明の態様は、環状ケージ・タイプ(circular-cage type)、ボックス・アンド・グリッド・タイプ(box-and-grid type)、ベネチア・ブランド・タイプ、メッシュ・タイプなどを含むが、これらに限定されない、その他の種類のPMTに応用されることも可能である。
【0044】
従来型のPMT回路と同じように、回路30は、陰極と、ダイノードの大部分と、陽極とを通して結合されたインピーダンス要素(例えば、Z1〜Z9)を有する分圧器チェーン40を含む。インピーダンス要素は、均等の抵抗、テーパ(tapered)抵抗、又は当技術分野で知られているように抵抗器とコンデンサの組合せを含んでもよい。したがって、高い負電圧(VS1)が陰極に印加される場合、電位はすべてのダイノード全体にわたって均等に、又は若干、不均等に分割されることがあり、その結果、チェーンの中間のダイノードはより少ない利得を得る。光(hv)がPMTに入射すると、陰極34は光電子を放射し、光電子はダイノード・チェーン36を通じて移動して、陽極38で増幅された光電子電流(IA)を生み出す。陽極38からの電流出力は、電流・電圧変換器42によって電圧(VA)に変換される。ほとんどの場合、変換器42は、PMTの出力で生成された電圧(VA)が以下の式によって陽極電流に関連するように、帰還インピーダンス(ZF)と負荷インピーダンス(ZL)とを有する動作可能な増幅器であってよい。
A=IA*(ZF/ZL) 式2
【0045】
従来型のPMT回路と異なり、回路30は、陽極電圧(VA)に加えて、中間ダイノード電圧(VD)を測定するための追加的な回路要素を含む。一例では、中間ダイノード電圧は、以下の式のように、ダイノード・ステージ36のうちの1つで生成された光電流(ID)を追加的なインピーダンス要素(ZD)に供給することによって得ることが可能である。
D=ID*(ZD) 式3
ほとんどの場合、ダイノード電圧は電流が陽極で完全に増幅される前に光電流を表すため、中間ダイノード電圧は陽極電圧よりも低い。下でより詳細に説明されるように、中間ダイノード電圧は、試料上の欠陥を検出するために陽極電圧の代わりに使用される。例えば、中間ダイノード電圧は、陽極での光電流が陽極を飽和させると、欠陥を検出するために使用される。スイッチング論理44は、陽極電圧を監視して、陽極電流が飽和に達すると中間ダイノード電圧に切り替えるために回路30内に含まれている。
【0046】
陽極38が飽和に達するレベルは、材料構成と陽極の幾何学的構造、最後のダイノードと陽極の間の高電圧、分圧器チェーンの構造を含むが、これらに限定されない、いくつかの要因に依存する。当技術分野で知られているように、入力でのさらなる変更が、結果として、その要素によって生成されたパワー信号に明らかな変化をもはやもたらさない場合、要素は「飽和」する。場合によっては、陽極38は、最高で約10mAまでの高い線形陽極電流を提供する。陽極は、次いで、PMTに入射する光の量がおよそ10mAを超える量に陽極電流を増やすと、飽和する可能性がある。しかし、本発明のその他の実施形態では、より小さな飽和レベル又はより大きな飽和レベルが適切である点に留意されたい。例えば、場合によっては、陽極電流が依然として最高約100mAまで実質的に線形である場合、より大きな飽和レベルが適切な可能性がある。
【0047】
陽極飽和を回避するために、陽極電流(IA)が飽和レベルに近づく、達する、又は超えると、スイッチング論理44は中間ダイノード電圧(VD)に切り替えることができる。例えば、スイッチング論理44は、所定の閾値レベルとして、陽極飽和レベル、又はかかるレベルよりわずかに高い値若しくはわずかに低い値を使用してよい。回路動作の間、スイッチング論理44は、検出器のパワー信号(VOUT)として陽極電流(VA)を後続の処理構成要素(例えば、ADC22やプロセッサ24)に供給しながら、陽極電流(IA)を監視する。陽極電流が所定の閾値レベルに達すると、スイッチング論理44は、検出器の出力信号(VOUT)として中間ダイノード電圧(VD)を使用する。陽極電流が使用されるか、ダイノード電流が使用されるかに関係なく、スイッチング論理44によって転送された検出器の出力信号は、実質的に一貫した量だけADC22によって増幅される。
【0048】
スイッチング論理44は、ハードウェア、ソフトウェア、又はそれら両方の組合せ(すなわち、ファームウェア)として実施されてもよい。したがって、スイッチング論理44は、スイッチング論理44内で実施される機能性を実行する論理素子の組合せとして、回路30内又は回路30に隣接して配置されてもよい。他方で、機能性は「オンチップで」又は「オフチップで」記憶及び実行されるプログラム命令を用いて実施されてもよい。例えば、スイッチング論理44は、回路30に連結されるデジタル信号処理(DSP)チップとして、又はプロセッサ24によって実行されるプログラム命令として実施されてもよい。スイッチング論理44のその他の構成/実施形態が可能であり、かつ本発明の範囲内である。例えば、スイッチング論理44は、陽極電流(IA)の代わりに陽極電圧(VA)を監視することが好ましい場合があり、したがって、図2Aに示すように、陽極電流を受信するために結合されない可能性がある。
【0049】
上述のように、中間ダイノード電圧は、複数のダイノード36のうちの1つから得られる。選択される特定のダイノードは、一般に、陽極電圧とダイノード電圧の間の所望される利得差に依存する可能性がある。例えば、各ダイノードは、分圧器チェーン40によって生成された特定のバイアス電圧と、分圧器チェーン40に結合される負の高圧電源(VS1)とにより供給される。高圧電源は、通常、特定の量の総合(すなわち「管」)利得を提供するように選択されてもよい。ほとんどの場合、分圧器チェーンに沿って受ける直列抵抗が増加するため、各ダイノード36には連続的なより小さい負電位が供給される。例えば、約−1000Vの負の電源が供給される場合、分圧器チェーン40内のインピーダンス要素(例えば、Z1からZ9)は、−900Vが第1のダイノードに供給され、−800Vが第2のダイノードに供給され、以下同様に行われるように、ダイノード・チェーンに連続的により小さい負電位を供給するように構成される。選択されたダイノードの供給される電圧と陽極に供給される電圧の間の電位差は、それらの間の利得差を決定する。
【0050】
所望される利得差、したがって、所望されるダイノードは、PMTに入射する光強度の偏差に基づいて選択されることもある。高強度の用途の場合、ダイノード電圧と陽極電圧の間により大きな利得差を生み出すために、チェーンの初めに近接するダイノードが選択される。かかる大きな利得差は、陽極が飽和した後で、実質的により大きな量の光が検出されることを可能にする。他方で、より小さな光の強度範囲が測定されるために十分な可能性があるより小さな利得差を生み出すために、チェーンのさらに下のダイノードが選択されてもよい。いくつかの実施形態では、中間利得信号を生み出すために、ダイノード・チェーンの中間付近のダイノードが選択されてもよい。したがって、本明細書で説明される回路及び方法は、可能な利得差の範囲をユーザに提供することができる。この範囲は、約G((n-m)/n)とおよそ同等であり、式中、Gは(陰極から陽極の)総PMT利得であり、mは(陰極から数えた)選択された中間ダイノードの位置であり、nはダイノードの総数である。
【0051】
図2Aの実施形態では、選択されたダイノードは、分圧器チェーンから切断され、中間ダイノード電圧は、追加的なインピーダンス要素(ZD)全体にわたって測定される。追加的なインピーダンス要素は、実質的に任意の受動要素又は能動要素により実施可能であるが、単純な抵抗が好ましい。一般に、追加的なインピーダンス要素のサイズは、そこで全体にわたって測定される信号が陽極での信号レベルと実質的に等しいように選択されるべきである。図2Aに示すように、中間ダイノード電圧を測定するために追加的電源(VS2)が必要となることもある。場合によっては、追加的な電源レベルは、ダイノードが分圧器チェーンから切断されていない場合、選択されたダイノードに供給されていることになる電位を与えるように設定されてもよい。
【0052】
図2Bは、回路30の代替実施形態を例示する。図2A及び図2Bで示される実施形態の間の類似特徴を示すために同様の参照番号が使用され、したがって、かかる特徴の詳細な説明は、簡潔さのために繰り返されない。図2Aと同じように、図2Bで示される実施形態は、陰極34と、複数のダイノード36と、陽極36とを有するPMT検出器32を含む。いくつかの実施形態では、陽極で生成された光電流(IA)は、電流・電圧変換器42とスイッチング論理44とに供給される。陽極電流(IA)が(陽極飽和に関連する)所定の閾値レベルに達すると、スイッチング論理は中間ダイノード電圧(VD)を後続の処理構成部品に供給するように切り替えることができる。その他の実施形態では、陽極電流(IA)の代わりに陽極電圧(VA)が監視される。かかる実施形態では、スイッチング論理44は、図2Bに示すように、陽極電流を受信するために結合されなくてよい。
【0053】
図2A及び図2Bに示される実施形態は、中間ダイノード電圧が生み出される方法の点で異なる。単一の分圧器チェーン40の代わりに、図2Bの実施形態は、チェーンを第1の部分40aと第2の部分40bとに分割する。第1の部分40aには第1の電源電圧(VS1)が供給され、一方、第2の部分40bには第2の電源電圧(VS2)が供給される。この構成では、中間ダイノード電圧は、第1の部分40a内の最後のインピーダンス要素(Z5)全体にわたって測定される。この構成の利点は、陽極の飽和と、電流をより高いダイノードに供給する分圧器チェーンの部分(例えば、部分40b)は、より低いダイノードに供給するチェーンの部分(例えば、部分40a)に影響を与えないことになる点である。
【0054】
図2Cは、回路30のさらに別の代替実施形態を例示する。前と同じように、図2A〜2Cで示される実施形態の間の類似の特徴を示すために同様の参照番号が使用され、したがって、かかる特徴の詳細な説明は、簡潔さのために繰り返されない。図2A及び図2Bと同じように、図2Cに示される実施形態は、陰極34と、複数のダイノード36と、陽極36とを有する、PMT検出器32を含む。いくつかの実施形態では、陽極で生成される光電流(IA)は、電流・電圧変換器42とスイッチング論理44とに供給される。陽極電流(IA)が(陽極飽和に関連する)所定の閾値レベルに達すると、スイッチング論理は中間ダイノード電圧(VD)を後続の処理構成部品に供給するように切り替えることができる。その他の実施形態では、陽極電流(IA)の代わりに陽極電圧(VA)が監視される。かかる実施形態では、スイッチング論理44は、図2Cに示すように、陽極電流を受信するために結合されない。
【0055】
図2Cは、中間ダイノード電圧(VD)が生み出されるさらに別の方法を例示する。例えば、回路30は、中間ダイノード電圧(VD)の利得を修正するための演算増幅器回路46を含む。演算増幅器は、各々が追加的なインピーダンス要素(ZD)の異なる端末に結合される1対の入力を有している。いくつかの場合では、負荷インピーダンスと帰還インピーダンスは、演算増幅器入力のうちの少なくとも1つに結合されている。この構成では、追加的なインピーダンス要素(ZD)全体にわたって測定された中間ダイノード電圧は、多少より高い利得又はより低い利得を有する信号を生み出すように修正される。例えば、図2Cで示される構成は、中間ダイノード電圧を高い負の電位から陽極出力と同じレベルである接地レベルにするために使用される。
【0056】
図3は、図1の検査システムと、図2A及び図2Bで示される回路とを使用して、試料を検査するための例示的な方法を示す流れ図である。図3で示される様々な方法ステップは、検査システム内に含まれる構成要素によって実行されることが可能であるが、いくつかのステップは検査システムのユーザによって実行されてもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、方法は、(ステップ50で)中間ダイノード電圧を測定するために使用されることになるダイノードを選択することによって開始する。場合によっては、PMTの選択されたダイノードと陽極の間に所望される利得差をもたらすために、特定のダイノードが検査システムのユーザによって選択される。所望される利得差は、想定、根拠のある推測、又は散乱光強度の期待されるレベル又はこれまでのレベルに基づく所定の量である。その他の場合、特定のダイノードは、散乱光強度の期待されるレベル又はこれまでのレベルに基づいて検査システム構成要素(例えば、プロセッサ24)によって自動的に選択されてもよい。
【0058】
ステップ52で、光は考察中の試料に方向づけられる。上述のように、用語「試料」はウェーハ、レチクル、あるいは欠陥、フィーチャ、又は当技術分野で知られているその他の情報(例えば、ヘーズ特性若しくはフィルム特性の量)に関して検査される任意のその他のサンプルである。本明細書で説明される実施形態では、試料を検査するために使用されるシステムは、反射光ではなく散乱光を測定する、暗視野の光学検査システムである。したがって、方法は、(ステップ54で)光電子増倍管(PMT)からの陽極電流を使用して試料から散乱された光を検出することに続く。PMTは、図2A又は図2Bに示されるように構成されてもよい。図3に示すように、陽極電流は、陽極電流が所定の閾値レベル未満にとどまる限り、散乱光を検出するために使用される。この閾値レベルは、PMTの種類/構成に基づいて、システムのユーザによって手動で、又はシステム構成要素によって自動的に設定できる。ほとんどの場合、所定の閾値レべルは、陽極に関連する飽和レベルに近接して又は等しくてよい。
【0059】
(ステップ56で)陽極電流が所定の閾値未満にとどまる場合、(ステップ58で)陽極電流を使用して試料のフィーチャ、欠陥、及び/又は光散乱特性が検出される。そうでなければ、(ステップ60で)選択されたダイノードからの電流がかかる検出のために使用される。ダイノード電流を使用することは、陽極で測定されるよりも、かなり大量の散乱光がダイノードで測定されることを可能にする。これは、ダイノード飽和なしに(例えば、中間ダノードを使用して)、およそ1倍から1000倍の大きな信号がダイノードで測定されることを可能にする、より小さな増幅がダイノードに存在していることに起因する。しかし、正確さを維持するために、ダイノード電流は、陽極及び中間ダイノードの利得比率とおよそ同等の較正比率によって乗算されなければならない。図1を参照すると、較正比率は、システム・プロセッサ24又はその他のシステム構成要素(例えば、アナログ・ボード又はデータ処理ボード)によってダイノード電流に応用されてもよい。較正比率がどのように応用されるかに関係なく、較正比率の使用は、陽極で生成された場合と同様に、ダイノード電流が欠陥を検出するために使用可能である。
【0060】
場合によっては、方法はステップ60で終了してよい。しかし、その他の場合、当初選択されたダイノードが、何らかの理由で、現在の又は後続の測定のために不十分である場合、方法は追加的なステップ(例えば、ステップ62、64、66)を含む。例えば、比較的低い利得のダイノードは、極めて低い光信号を検出するためには不十分である。他方で、比較的高い利得のダイノードは、極めて高い強度の光がPMTに供給される場合、飽和する可能性がある。(オプションのステップ62で)当初選択されたダイノードが不十分であると判断された場合、(オプションのステップ64で)代替のダイノードが選択されて、(オプションのステップ66で)試料のフィーチャ、欠陥、その他の光散乱特性を検出するために使用される。代替のダイノードは、現在進行中の測定操作の間に、又は実行されることになる次の測定操作に備えて、検査システムのユーザ又は構成要素によって選択されてもよい。
【0061】
図1〜図3は、検出信号の直線性と安定性とを維持しながら、PMT検出器の測定検出範囲を増加することによって欠陥検出を改善するための例示的な検査システムや、回路、方法を示す。例えば、陽極電流は、低強度側に関する散乱光の検出のために使用でき、一方、中間ダイノード電流は高強度側に関する検出のために使用される。避けられない陽極飽和により検出範囲が制限される従来型のPMT検出器と異なり、本明細書で説明されるPMT検出器は、陽極が飽和すると、より低い利得のダイノード電流に切り替えることによって(高強度側に関する)測定検出範囲を拡張する。このように、本明細書で説明されるPMT検出器は、より高い感度、(陽極電流から得られる)より低い飽和検出信号とより低い感度、(ダイノード電流から得られる)より高い飽和検出信号の間で動的に切り替えることによって、試料の実質的により多いフィーチャ、欠陥、又は光散乱特性を検出するために使用される。陽極電流は、低い散乱強度を有する小さな欠陥などのフィーチャを検出するために使用されることが可能であり、一方、大きく散乱する大きな欠陥はダイノード電流により検出可能な場合がある。
【0062】
検出範囲の拡張に加えて、本明細書で説明されるPMT検出器は、簡単であるが、非常に効果的な解決策により陽極飽和を回避することによって、検出信号の直線性と安定性とを維持する。加えて、本発明のPMT検出器は、PMT利得を「オンザフライ」で変えることを試みる場合にもたらされる可能性がある非線形効果や過渡的な効果を補償するために先行技術の設計で要求されることが多い、精巧な較正と複雑な回路を回避する。さらに、本発明は、単一の検出器を使用しながら、これらの利点を提供し、したがって、測定検出範囲を拡張するために複数の検出器を使用する場合に要求される追加的な光学系と制御回路とを回避する。したがって、本発明は、空間消費とコストの両方においてかなりの節約となる。
【0063】
図4〜図6は、通常、増幅器の飽和とアナログ・デジタル変換器(ADC)の固定ビット範囲とによって定められる検出範囲制限を克服するための例示的な回路や、システム、方法を示す。比較的少数の実施形態が示されるが、当業者は類似の機能性を有する代替実施形態を生み出すために本明細書で説明される様々な構想がどのように適用されるかを容易に理解されよう。
【0064】
図4A、4Bは、試料から散乱される光を検出するために検査システム内で使用される検出器回路と増幅器回路の例示的な実施形態を示す。図4A、図4Bに示される検出器回路70は、試料から散乱される光を検出するため、及び光を電気信号に変換するために1つの光検出器だけを含む。上述のように、「単一の検出器」は、単一の筐体内に実装される1つだけの検出領域又はいくつかの検出領域を有してよい。したがって、図4A、図4Bで示される検出器は、単一の検出領域を有する単一の検出器、又は複数の検出領域を有する単一の検出器アレイを含む。一般に、検出器回路70は、試料から散乱された光を検出するのに適した、実質的にいかなる技術を含んでもよい。例示的な検出器は、光ダイオード、光電管、光電子増倍管(PMT)、時間遅延積分(TDI)カメラ、電荷結合素子(CCD)カメラを含むが、これらに限定されない。
【0065】
増幅器回路72は、一般に、検出器回路70によって生成された電気信号に応答して、1対の出力信号を生み出すように構成される。このため、増幅器回路72は、本明細書で「デュアル出力増幅器」と呼ばれることがある。示された実施形態では、増幅器回路72は、電気信号から高解像度(高利得)の出力信号と低解像度(低利得)の出力信号とを生成するように構成される。下でより詳細に説明されるように、高解像度の信号は、散乱光が低強度範囲内に入射する場合、試料のフィーチャ、欠陥、及び/又は光散乱特性を検出するために使用される。高解像度の信号が飽和すると、低解像度の信号は、より強力に散乱する傾向がある(すなわち、散乱光が高強度範囲内に入射する場合)、試料の追加的なフィーチャ又は特性を検出するために使用される。試料の検査システム走査の間に、高解像度の信号と低解像度の信号の間で動的に切り替え、それにより、通常、従来型の増幅器回路やADC回路によって設けられる制限を克服することによって検査システムの検出範囲を拡張するための手段が下で(例えば、図5〜図6で)提供される。
【0066】
デュアル出力増幅器72の第1の実施形態は、1対の演算増幅器(74、76)と、例えば、抵抗器R1とR2により実施される分圧器ネットワークとを含むものとして、図4Aで示される。演算増幅器(すなわち「オペアンプ」)74、76は、負の帰還を伴う電圧フォロワとして構成される。演算増幅器74、76の正端子(+)は、検出器70によって生成された光検出器電流(IS)を、いくらかの抵抗値によって乗算したものを受信するために結合される。図4Aの実施形態では、光検出器電流は、オペアンプ76に関して抵抗器R2の値で乗算され、オペアンプ74に関して抵抗器R1とR2の値によって乗算される。電圧フォロワ構成のために、オペアンプの出力端末に存在する電圧は、それらの正端子に供給される電圧に実質的に等しい。この構成では、デュアル出力増幅器72は、以下と実質的に同等な、高解像度の出力信号(VH)と低解像度の出力信号(VL)とを生成することが可能である。
H=V1=IS*(R1+R2)及び 式4
L=V2=IS*R2 式5
抵抗器R1とR2の値は、実質的に異なる利得を有する出力信号を提供するように選択される。場合によっては、例えば、低解像度の出力信号(VL)よりも16倍多い利得を有する高解像度の出力信号(VH)を生成するために抵抗器R1の値は、抵抗器R2の値よりも15倍大きくてよい。一実施形態では、抵抗器R1は、約7.5kΩの値を有してよく、抵抗器R2は、約500Ωの値を有してよい。
【0067】
上に提供された例では、R1とR2の値は、利得差(したがって、回路の検出範囲)を約2倍から約16倍だけ高めるために選択される。本発明のその他の実施形態では、同じ量の利得を生み出すために、又は、より多い利得若しくはより少ない利得を提供するために、その他の値が選択されてもよい。例えば、抵抗器の値は、利得差(したがって、回路の検出範囲)を光検出器だけによって提供された元の範囲の約2倍から約1024倍増加するように選択されてもよい。それによって検出範囲が拡張される量は、一般に、後続のアナログ・デジタル変換器(例えば、図1のADC22)の解像度と、高解像度の信号と低解像度の信号の間の切替え点で所望される解像度とに依存する。例えば、利得差は、14ビットの変換器(最高16383ADC)及び16ADCの所望される重複解像度により、約1024倍だけ拡張される。
【0068】
デュアル出力増幅器72のもう1つの実施形態が図4Bに示される。この実施形態では、増幅器72は、少なくとも3つの演算増幅器(78、80、82)を含む。第1の演算増幅器(78)は、オペアンプの負端子(−)で光検出器電流(IS)を、かつ正端子(+)で接地電位を受信するために結合される。抵抗器R1は、以下と実質的に同等な出力電圧を生成するためにオペアンプ78の負の帰還内に配置される。
N=IS*R1 式6
第2及び第3の演算増幅器(80、82)は、オペアンプ78によって提供される接点電圧(VN)に基づいて1対の出力信号を生成するために結合される。例えば、抵抗器R2とR3は、以下と実質的に同等な高解像度の出力信号(VH)を生成するためにオペアンプ80内に含まれてよい。
H=−VN[R3/R2] 式7
同様に、抵抗器R4とR5は、以下と実質的に同等な低解像度の出力信号(VL)を生成するためにオペアンプ82内に含まれてよい。
L=−VN[R5/R4] 式8
上の実施形態でのように、抵抗器R1、R2、R3、R4、R5の値は、実質的に異なる利得を有する出力信号を提供するように選択されてもよい。一実施形態では、抵抗器R3とR5の値は、式8が以下になるように、互いに同等に設定されてもよい。
L=−VN[R3/R4] 式9
このとき、抵抗器R2とR4の値は、所望される利得差を提供するように選択されてもよい。一実施形態では、低解像度の出力信号(VL)より16倍多い利得を有する高解像度の出力信号(VH)を生成するために抵抗器R2の値は抵抗器R4の値の16倍少なくてよい。例えば、抵抗器R2は約62.5Ωの値を有し、(いくつかの実施形態では同等な場合がある)抵抗器R1とR4は約1kΩの値を有し、抵抗器R3とR5は約500Ωの値を有してもよい。本発明のその他の実施形態では、同じ量の利得を生み出すために、又はより多い利得若しくはより少ない利得を提供するために、その他の値が選択されてもよい。例えば、抵抗器の値は、利得差(したがって、回路の検出範囲)を光検出器だけによって提供された元の範囲の約2倍から約1024倍増加するように選択される。いくつかの実施形態では、高解像度の出力信号と低解像度の出力信号の利得差を増加/削減するために、1つ又は複数の追加的な増幅器回路がオペアンプ80及び82と直列で結合される。
【0069】
(例えば、図4A又は図4Bに示すように)デュアル出力増幅器72によって生成された高解像度の出力信号や低解像度の出力信号は、個別の処理チャネル(84、90)に供給され、そこで、フィルタ処理されて、1対のデジタル信号に変換される。例えば、図5に示すように、デュアル出力増幅器72によって生成された高解像度の信号(VH)は、処理チャネル84に供給され、そこで、アナログ・フィルタ86によってフィルタ処理されて、アナログ・デジタル変換器(ADC1)88によってデジタル化される。同様に、デュアル出力増幅器72によって生成された低解像度の信号(VL)は、処理チャネル90に供給され、そこで、アナログ・フィルタ92によってフィルタ処理されて、アナログ・デジタル変換器(ADC2)94によってデジタル化される。アナログ・フィルタ86及び92は、バターワース・フィルタ、ベッセル・フィルタなど、アンチエリアシング・フィルタであってよい。高解像度及び低解像度のアナログ信号を対応するデジタル信号に変換するために、実質的に任意のNビットのアナログ・デジタル変換器(88、94)が使用されてもよい。アナログ信号間の利得差は、低解像度のデジタル信号より高解像度のデジタル信号を多少大きな値にする。
【0070】
デジタル信号のうちの少なくとも1つは、さらなる処理のために(図1のプロセッサ24など)後続の検査システム構成要素に供給されてもよい。例えば、図5に示すように、多重化装置96は、処理チャネル84から高解像度のデジタル信号、又は処理チャネル90から低解像度のデジタル信号を選択するために結合される。選択は、ほとんどの場合、高解像度のデジタル信号を監視するための処理チャネル84に結合されるスイッチング論理98によって制御される。
【0071】
上述のように、ADCの各々は最高でN個の数のデジタル・ビットを処理することが可能である。場合によっては、そのデジタル値がNビットADCに関連する所定の閾値(例えば、8ビットのADCの場合、28=256)未満にとどまる限り、スイッチング論理98は出力のために高解像度の信号を選択する。高解像度の信号が所定の閾値に達すると、スイッチング論理98は、出力のために低解像度信号を選択する。この構成では、検査システムは、(例えば、小さな微粒子又は表面欠陥など)「低散乱」フィーチャを検出するためのより大きな(すなわち、高解像度の)デジタル信号を使用して、試料のフィーチャ、欠陥、又は光散乱特性を検出可能である。所定の閾値に達すると、(例えば、大きな微粒子又は表面欠陥など)より強く散乱する傾向があるフィーチャを検出するために、小さな(すなわち、低解像度の)デジタル信号が使用される。最低解像度は、最高ADC出力(2N)より小さい「所定の閾値」を選択することによって、高解像度の信号と低解像度の信号の間の「切替え点」に維持される。例えば、切替え点で十分な解像度を維持するために実質的に2N-1以下の最高閾値が選択される。
【0072】
図5に示すように、スイッチング論理98は、組み合わされた場合、スイッチング論理98内で実施される機能を実行する論理及び/又は記憶要素として実施される。その他の実施形態では、機能性は、「オンチップで」又は「オフチップで」で記憶し、実行されるプログラム命令により実装されてもよい。例えば、スイッチング論理98は、処理チャネル84、90に結合されるデジタル信号処理(DSP)チップとして、又はプロセッサ24によって実行される1つ又は複数のプログラム命令として実装されてもよい。後者の場合、各デジタル信号は、代わりに、プロセッサ24に供給されて、多重化装置96は、図5のブロック図から除外される。次いで信号選択は、プロセッサ24内のプログラム実行を経て行われる。スイッチング論理98のその他の構成/実施が可能であり、本発明の範囲内である。
【0073】
図6は、図1の検査システムと、図4、図5に示される回路やシステムとを使用して試料を検査するための例示的な方法を示す流れ図である。図6に示される様々な方法ステップは、検査システム内に含まれる構成要素によって実行されることが可能であるが、いくつかのステップは検査システムのユーザによって実行されてもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、方法は、(ステップ100で)考察中の試料に光を方向づけることによって開始する。上述のように、用語「試料」は、ウェーハ、レチクル、あるいは欠陥、フィーチャ、又は当技術分野で知られているその他の情報(例えば、ヘーズ特性若しくはフィルム特性の量)に関して検査される任意のその他のサンプルである。本明細書で説明される実施形態では、試料を検査するために使用されるシステムは、反射光ではなく散乱光を測定する、暗視野の光学検査システムである。したがって、方法は、(ステップ102で)試料から散乱された光を検出することによって続く。複数の検出器を使用して検出範囲を拡張することを試みるいくつかの先行技術の検査システムと異なり、本明細書で説明されるシステムと方法は、かかる検出のために1つの検出器だけを使用する。本明細書で使用される単一の検出器は、散乱光を検出するために、及び光を電気信号に変換するために一般に使用される実質的にいずれの光検出器を含む。
【0075】
ステップ104で、検出器によって生成された電気信号は、1対の不均等な増幅信号に変換される。例えば、図4A〜図4Bで示されるものと類似したデュアル出力増幅器は、電気信号に応答して、第1の信号と第2の信号とを生成するために使用される。場合によっては、第1の信号は、実質的により低いレベルの散乱光を検出するために、第2の信号よりも高い解像度(より高い利得)を有する。他方で、第2の信号は、実質的により高いレベルの散乱光を検出するために、第1の信号よりも低い解像度(より低い利得)を有する。このように、第1の信号によって検出されたより低いレベルの光は、第1の検出範囲内にあり、一方、第2の信号によって検出されたより高いレベルの光は第2の検出範囲内にある。「切替え点」で十分な解像度を維持するために、第2の検出範囲は、第1の検出範囲と少なくとも部分的に重なってよい。上述のように、これは、Nビットのアナログ・デジタル変換器88、90に関連する最大値(例えば、2N)未満の所定の閾値を選択することによって実現される。場合によっては、ADC88、90は、各々、N個やM個など、1つがもう片方よりも大きい、異なる数のビットを有している。そのような場合、十分な解像度は、NビットADC88及びMビットADC90に関連する最大値(例えば、2N、2M)未満の閾値を選択することによって、依然として切替え点で維持される。
【0076】
ほとんどの場合、第1の(高解像度の)信号は、(ステップ106で)第1の信号が所定の閾値に達するまで、試料のフィーチャ、欠陥、又は光散乱特性を検出するために使用される。しかし、(ステップ108で)第1の信号が所定の閾値に達すると、(ステップ110で)第2の(低解像度の)信号は、試料のフィーチャ、欠陥、又は光散乱特性を検出するために使用される。例えば、第1の信号が検出のために使用されている間、スイッチング論理98は、第1の信号のデジタル値を所定の閾値と比較する。スイッチング論理98は、その後、第1の信号のデジタル値が所定の閾値に達するとかつ/又は超えると、第2の信号に切り替える。
【0077】
図4〜図6は、検査システム内に含まれる増幅器及びアナログ・デジタル回路の測定検出範囲を増加することによって、欠陥検出を改善するための例示的な検査システムや回路、方法を示す。例えば、デュアル出力増幅器は、単一の光検出器によって提供された電気信号から高解像度と低解像度の出力信号を生成するために使用される。本明細書で説明されるシステムや回路、方法は、検査走査の間に高解像度の出力信号と低解像度の出力信号の間で動的に切り替えることによって、増幅器とアナログ・デジタル回路が飽和するのを回避する。これは、測定検出範囲を本質的に増加し、2つの出力信号により検出される欠陥サイズの範囲を拡張することによって、試料のより多いフィーチャ、欠陥、又は光散乱特性を検出することを可能にする。1つの例では、高解像度の信号は約40nmから約155nmの範囲で欠陥を検出するために使用されてよく、一方、低解像度信号は約80nmから約500nmの範囲で欠陥を検出するために使用されてもよい。その他の実施形態は、多少、より小さな欠陥又はより大きな欠陥を検出することが可能である。本発明のシステムや方法により検出される欠陥のサイズを決定する要素は、レーザパワー、波長、表面トポロギー、スポット・サイズ、偏光、集光角度、検出器効率、雑音を含むが、これらに限定されない。検出範囲を重ね合わせることは、高解像度の信号と低解像度の信号の間の「切替え点」に十分な解像度が存在するであろうことを確実にする。
【0078】
本明細書で説明されるシステムや回路、方法はまた、複数の検出器の間で散乱光を分割するために高価な光学系を使用することによって測定検出範囲を拡張することを試みる、従来型の検査システムに関連する追加的な空間消費とコストを回避する。1つの光検出器だけを使用することによって、本発明は、散乱が複数の検出器の間で分割された場合に発生する信号対雑音の低下を回避することによって、検出された信号の感度を改善することも可能である。
【0079】
図4〜図6で示される実施形態に加えて、本明細書で説明される概念は、2つ以上の増幅器出力に拡張される。例えば、図4A、図4Bで示される増幅器の設計は、検出器70から生み出された電気信号から3つ以上の出力信号(例えば、高解像度、中解像度、低解像度の信号)を生成するように修正される。検出器70を実施するために図2A及び図2Bに示されるものに類似したPMT検出器が使用される場合、図5に示されるシステムは、例えば、低解像度の信号が飽和した場合、中間ダイノード電圧に切り替えるように修正されることも可能である。その他の構成及び/又は実施形態が可能であり、したがって、本発明の範囲内であるとみなされる。
【0080】
図7は、本明細書で説明されるように、試料を検査するための方法を実行するために使用される検査システムのもう1つの例を示す。特に、図7は、表面検査の走査の間、試料に対する熱破損を削減及び/又は予防するために使用される検査システムの1つの例を示す。熱破損は、一般に、先行技術のシステムにおいて、試料に方向づけられた入射レーザ光が吸収されて、(大きな粒子又は欠陥など)試料上のフィーチャによって不十分に分散された場合に見られる。熱破損を予防することに加えて、図7の検査システムは、検査システムの測定検出範囲を拡張するためのさらにもう1つの手段を提供するために使用される。
【0081】
図7〜図12は、大きく散乱する大きな粒子全体にわたって走査する前に入射レーザパワーを動的に削減することによって、高パワーのレーザ・ベースの検査システムを使用する、表面検査の走査の間に粒子破損を削減するための例示的な回路やシステム、方法を示す。比較的少数の実施形態が示されるが、当業者は、類似の機能性を有する代替の実施形態を生み出すために、本明細書で説明される様々な概念がどのように応用されるかを容易に理解するであろう。
【0082】
高パワーのレーザ・ベースの検査システムでは、入射レーザ・ビームのパワー密度は、一般に、約1kW/cm2から約1000kW/cm2に及ぶ。残念ながら、粒子破損は、多くの場合、レーザ・ビームから試料上の粒子(又は粒子の一部)への急速なパワー転送により、高パワー密度のレーザ・ビームにより表面検査の走査の間に発生する。大量のパワーを分散できない粒子は、急速に熱くなる傾向があり、多くの場合、不十分なパワー分散により破裂する。例えば、(フォトレジスト粒子などの)有機材料は(金属粒子などの)無機質材料よりかなり小さなパワーを分散する傾向があり、したがって、より多くの破損を受ける傾向がある。残念ながら、破裂した粒子は、試料全体にわたって広い領域の汚染を広げる可能性のある破片になる。
【0083】
熱破損を削減するために使用される方法は、削減されたレーザパワー(例えば、10だけ小さなパワー)又は破損を与えることで知られているパワーすなわちスポット・サイズより増加されたスポット・サイズ(例えば、2.5倍から5.7倍の大きなスポット・サイズ)でウェーハ全体を走査するための方法を含む。もう1つの方法は、入射レーザ・ビームの一部を抑止することによって検査からウェーハの中央を除外することが可能である。この方法は、通常、ウェーハの中央領域に供給される高パワー・レベルを除去することによって熱破損を削減する。しかし、これらの方法は、(レーザパワーを削減する場合、すなわちスポット・サイズを増加する場合)信号対雑音比を削減することによって感度を削減する、又は結果として、ウェーハの不完全な検査をもたらす(すなわち、中央を除外する場合)。したがって、前述の方法は、多くの場合、不十分な感度又は完全な除外により、ウェーハ上の欠陥を見逃す。
【0084】
これに対して、本明細書で説明される本発明の概念は、より大きな粒子(一般に、>5μm)は、より小さな粒子よりも入射レーザ・ビームによる破損を受ける可能性が高いという考察に基づく。例えば、より大きな粒子は、より広い表面領域を有し、したがって、より少ない表面領域を有するより小さな粒子よりもかなり多くのパワーを吸収する傾向がある。より大きな粒子はまた、領域がより広くかつ/又は表面の不揃いが増すため、より小さな粒子よりもかなり多くの光を散乱させる傾向がある。例えば、半径Rの粒子から散乱された光の量は、6乗(すなわち、R6)のパワーに高められた粒子半径に比較的比例する。
【0085】
本明細書で説明される本発明の概念は、表面検査の走査の間の熱破損を削減するために、大きな粒子の大きく散乱する特性を利用する。下でより詳細に述べられるように、熱破損は大きな粒子の存在を検出して、ビームの主要部分が大きな粒子に達する前に入射レーザ・ビームパワーを削減することによって回避される。一実施形態では、パワー削減は、大きな粒子全体にわたって走査する場合、入射レーザパワーを「安全」レベルに削減するために用いられることが可能な、高速のレーザパワー減衰器によって得られる。レーザパワー減衰器は、ウェーハのより低い散乱部分を走査する際に、入射レーザパワーを「全」パワーで維持(又は増加)するために外すことが可能である。
【0086】
図面を参照すると、図7は、図1で示され、上で説明されたシステムに類似した検査システムを例示する。図1と図7に共通の要素は、類似の参照番号を用いて示され、その説明はここで繰り返されない。図1の検査システムと異なり、図7に示される検査システムは、高出力の光学検査システムに特有なものである。したがって、光源10は、出力パワー密度が約1kW/cm2から約1000kW/cm2に及ぶ任意の数の光源を含む。光源10のために使用される潜在的な高パワーのレーザ・ベースの源の例は、ダイオード・レーザ、固体レーザ、ダイオード励起固体(DPSS)レーザ、(ヘリウム・ネオン・レーザ、アルゴン・レーザなど)様々なガス・レーザを含むが、これらに限定されない。場合によっては、光源10は、アーク灯、高圧又は低圧の水銀灯、LEDアレイ、電球など、高パワーの非レーザ・ベースの源を用いて実施される。光源10によって生成された光のビーム(すなわち、「生成光」)は、ビーム整形・偏光制御光学系12を介して試料14の表面に方向づけられる。混乱を取り除くために、試料の表面に達する光は、本明細書で「入射光」又は「入射レーザ・ビーム」と呼ばれることになる。下でより詳細に説明されるように、偏光、強度、スポットのサイズや形状などを含めて、1つ又は複数の方法で、「入射光」は「生成光」と異なる。
【0087】
図1に示される要素に加えて、図7に示される検査システムは、試料に供給される入射光のパワー・レベルを動的に変更するための手段を含む。例えば、レーザパワー減衰器26は、表面検査の走査の間に入射レーザ・ビームのパワー・レベルを動的に変更するために光源10と光学系12の間に配置されている。一般に、レーザパワー減衰器26は、入射光の偏光に基づいて、入射光の一部を透過するように適合されることが可能な、選択的に透過可能な光学部品により実施される。例えば、いくつかの実施形態では、レーザパワー減衰器26は、(4分の1波長板などの)波長板と、偏光ビーム・スプリッタとを含む。この構成では、波長板は、入射光の偏光を変えるために使用され、一方、ビーム・スプリッタは1つ又は複数の選択偏光(例えば、直線偏光)を透過して、すべてのその他の光(例えば、無作為偏光、円偏光、又は楕円偏光)を反射するように機能する。光の一部を反射することによって、波長板とビーム・スプリッタは、波長板を介して透過された光の強度又はパワー・レベルを削減するように機能する。しかし、波長板及び(ニュートラル・デンシティ・フィルタ(neutral density filter)など)その類似の光学部品は、スイッチのようにオン又はオフにすることができず、代わりに、2つの識別可能なパワー・レベルを提供するためにビーム経路に出し入れしなければならない。場合によっては、かかる移動は、表面検査の走査の間に動的な出力変更をもたらすためには十分早くない可能性がある。
【0088】
図8は、好ましいレーザパワー減衰器26の一実施形態を例示する。示された実施形態では、「オン」状態と「オフ」状態の間でスイッチに電気光学材料200を使用することによって、非常に高速なレーザパワー減衰が提供される。「オン」の場合、電気光学材料200は、入射光の偏光を所定の偏光方向に変えることができる。このいわゆる「再偏光(re-polarized light)」は、次いで、電気光学スイッチからの特定の偏光出力に応じて、再偏光の一部だけを透過できる偏光ビーム・スプリッタ210に供給される。再偏光の残りの部分は、反射されて、ビーム・ダンプ220によって吸収される。場合によっては、電気光学材料は、数ナノ秒から数マイクロ数のタイム・スパン範囲内で「オン」状態と「オフ」状態の間で切り替えることができる。このように、高速のレーザパワー減衰は、選択的に透過可能な光学要素をビーム経路で選択的に出し入れするのではなく、電気光学スイッチを使用することよって提供される。
【0089】
特定の実施形態では、レーザパワー減衰器26は、ポッケルスセルとして知られている高速の電気制御光学シャッタにより実施される。当初、ポッケルスセル200は、光源10によって生成された光がレーザパワー減衰器26を自由に通過することを可能にするために「オン」状態に設定される。しかし、大きな粒子の存在が検出されると、ポッケルスセル200は「オフ」状態に切り替わり、生成された光の偏光を、偏光ビーム・スプリッタ210によって少なくとも部分的に透過される異なる偏光に変える。「オン」状態と「オフ」状態の間で切り替えるために、可変電源230によって提供される電気電圧がポッケルスセル200に供給されて、電気光学材料(通常、電気光学結晶)を通過する光の偏光を変える。図8に示されるように、ポッケルスセルに供給される電圧は、可変電源230に対する制御信号入力によって決定される。
【0090】
一例では、ポッケルスセル200に供給される(すなわち、セルを「オン」状態に切り替える)電圧は、直線偏光を円偏光に変える(「4分の1波長位相シフト」と呼ばれることが多い現象)ように、電気光学結晶の特性を変更することが可能である。円偏光が、主に円偏光を反射するように構成されるビーム・スプリッタに供給される場合、レーザパワー減衰器26からの光出力の強度又はパワー・レベルは、ポッケルスセルを「オン」状態に設定することによって削減される。他方で、レーザパワー減衰器26からの光出力の強度又はパワー・レベルは、ポッケルスセルを「オフ」状態に設定することによって維持される(又は増加される)ことが可能である。
【0091】
しかし、パワー減衰器26からの光出力の強度は、偏光ビーム・スプリッタ210やポッケルスセル200によって生み出される位相シフトに依存する。例えば、ビーム・スプリッタは、一般に、例えば、いわゆる「S」偏光と「P」偏光など、2つの直交偏光を区別する。しかし、(C偏光などの)光のその他の偏光は部分的に透過され、したがって、ビーム・スプリッタによって部分的に(ビーム・ダンプ内に)再方向づけされる。ポッケルスセルが1/4波長位相シフトを生み出すように電圧が印加される場合、入射直線偏光(通常、レーザ出力)は円偏光になり、その光の半分が再方向づけされると同時に、もう半分はビーム・スプリッタを通過する。1/2波長シフトの場合、光学部品の不完全度による若干の漏れを除いて、光はビーム・スプリッタを通過しない。すなわち、(無パワーの状態で、すべての光がビーム・スプリッタを通過すると想定して)ポッケルスセルが1/2波長シフトを生み出すように構成される場合、事実上、入射光のすべては再方向づけされることになる。
【0092】
場合によっては、光源10によって生成される一定出力レーザ・ビームは、(ポッケルスセルなどの)電気光学シャッタを「オン」状態と「オフ」状態の間で動的に切り替えることによって、2つの識別可能なパワー・レベル(例えば、「安全」パワー・レベルと「全」パワー・レベル)に分割される。安全パワー・レベルは、大きな粒子全体にわたって走査する場合、熱破損を防止するために全パワー・レベルよりもかなり小さいものである。例えば、安全パワー・レベルは、全パワー・レベルの(例えば、約1%から約50%まで及ぶ)数パーセントである。一実施形態では、安全パワー・レベルは、全パワー・レベルの約10%である。その他の可能性が存在し、一般に、入射レーザパワー、並びに走査されている粒子のサイズや材料構成に依存する可能性がある。
【0093】
その他の場合、(ポッケルスセルなどの)電気光学シャッタは、2つを超える識別可能なパワー・レベルを生成するように構成されてもよい。例えば、ポッケルスセルは、実質的に任意の位相シフトを生み出すように駆動されてよく、したがって、実質的に任意の出力パワー・レベルを生み出すために偏光ビーム・スプリッタと組み合わされてもよい。すなわち、図8に示される実施形態は、実質的に任意の数の識別可能なパワー・レベルを生み出すために使用される。場合によっては、例えば、図11に示されるように、閉帰還ループの形で、連続するパワー・レベル調整を可能にするために、回路及び/又はソフトウェアが含まれてもよい。
【0094】
上で説明され、図7、図8に示された例に加えて、試料に供給される入射光のパワー・レベルを動的に変更するためにその他の手段が使用されてもよい。例えば、かかる手段は、光源の直接パワー調整、高速マイクロミラー、音響光学偏向器(AOD)、高速機械シャッタなどを含んでよいが、これらに限定されない。したがって、かかる手段が(例えば、数ナノ秒から数マイクロ秒程度の)比較的高速の応答と、少なくとも2つの識別可能なパワー・レベル(例えば、「安全」パワー・レベルと「全」パワー・レベル)とを提供することを考慮すると、本発明はレーザ・ビームのパワー・レベルを動的に変更するための任意の適切な手段を包括することが可能である。一般に、応答時間は、粒子を破損するのにかかる典型的な時間よりも速いものとすべきである。高速レーザパワー減衰器の選択肢に影響を与える可能性があるその他の要素は、光の透過、コスト、信頼性、寿命を含むが、これらに限定されない。
【0095】
レーザ・ビームのパワー・レベルを動的に変更するための上に説明された様々な手段に加えて、図7の検査システムは、かかる変更を制御するための手段を提供する。例えば、レーザパワー制御装置28は、検出器サブシステムの1つ又は複数の要素(例えば、コレクタ16、光検出器18、増幅器20、ADC22、プロセッサ24)とレーザパワー減衰器26の間で結合されてもよい。下でより詳細に説明されるように、レーザパワー制御装置28は、試料14から散乱されて、検出器サブシステムによって検出された光を連続的に監視して、検出された散乱光が所定の閾値レベルを超えるか又は当該レベル未満であるかを決定する。かかる決定に基づいて、レーザパワー制御装置28は、第1のパワー・レベル(例えば、「全」パワー・レベル)又は第2のパワー・レベル(例えば、「安全」パワー・レベル)で入射光を試料に提供するようにレーザパワー減衰器26に命令することができる。2つを超えるパワー・レベルが利用可能であり、状況がかかるレベルを保証する(又は、利益を得る)場合、レーザパワー制御装置は、レーザパワー減衰器に、例えば、第3、第4、又は第5(など)のパワー・レベルを試料に提供させることも可能である。
【0096】
一般に、所定の閾値レベルは、試料に方向づけられた入射光が試料上のフィーチャによって吸収されて、不十分に分散される場合に発生する可能性がある熱破損を削減又は防止するために設定される。所定の閾値レベルは、一般に、入射レーザパワー密度、より詳細には、一定のサイズのフィーチャ上又は粒子上に加えられる熱破損の始まりに関連するパワー密度に基づく。例えば、所定の閾値レベルは、比較的大きな粒子(例えば、>5μm)の破損を回避するために、約1kW/cm2から約1000kW/cm2に及ぶ入射レーザパワー密度のグループから選択されてもよい。有機材料を走査する場合、所定の閾値レベルは、比較的不十分な熱放射による大きな粒子の破損を回避するために、約1kW/cm2から約100kW/cm2に及ぶ。図7に示されるように、所定の閾値レベルは、プロセッサ(又は、コピュータ・システム)24からレーザパワー制御装置28に供給される。所定の閾値レベルは、システムのユーザによって手動で、又はプロセッサ24によって自動的に選択されてもよい。
【0097】
検出された散乱光が所定の閾値レベル未満にとどまる場合、レーザパワー制御装置28は、レーザパワー減衰器26に、入射レーザ・ビームを「全」パワー・レベルに維持するように命令することができる。しかし、検出された散乱光が(例えば、大きな粒子が近くにあることを表示する)所定の閾値レベルを超える場合、レーザパワー制御装置28は、入射レーザ・ビームのパワーを「安全」パワー・レベルに削減するように命令を与えることができる。入射レーザ・ビームが大きな粒子(又はその他の大きく散乱するフィーチャ)全体にわたって走査すると、検出された散乱光は所定の閾値レベル未満に後退して、レーザパワー制御装置28が入射レーザ・ビームを「全」パワーに戻すようレーザパワー減衰器に命令させる。
【0098】
このように、本明細書で説明される検査システムは、第1のパワー・レベル(例えば、「全」パワー)で入射光を試料に方向づけることによって、比較的小さなサイズのフィーチャを検出し、一方、第2のパワー・レベル(例えば、「安全」パワー)で入射光を試料に方向づけることによって比較的大きなサイズのフィーチャが検出されるように独自に構成されてもよい。現在のシステムでは、第2のパワー・レベルを第1のパワー・レベルよりもかなり低く設定することによって、これらのフィーチャ上に熱破損を与えずに、より大きなフィーチャが検出される。2つを超えるパワー・レベルが利用可能である場合、レーザパワー制御装置28は、検出された散乱光を2つ以上の閾値と比較して、かかる比較に基づいて、入射レーザ・ビームを適切なパワー・レベルに維持、削減、又は増加するようレーザパワー減衰器に命令することができる。
【0099】
図9は、好ましいレーザパワー制御装置28の一実施形態を例示する。示された実施形態では、レーザパワー制御装置28は、入射レーザパワー、検出器の利得に対して検出器の出力を正規化するための除算器240を含む。したがって、除算器240は、正規化された散乱パワーを計算するために使用でき、したがって、あるいは、散乱パワー計算機と呼ばれることもある。一例では、散乱パワーは、検出器の出力を入射レーザパワーと検出器の利得で除算することによって、又は以下によって計算される。
散乱パワー=検出器出力/(レーザパワー)(検出器利得) 式10
かかる方法で検出器の出力を正規化することによって、レーザパワー制御装置は、レーザパワー減衰器に所与の信号レベルで切り替えるのではなく、同じ散乱光レベルで一貫して切り替えさせる。すなわち、検出器の利得が増加すると、すべての信号はより大きくなる。検出器の利得が増加する際に検出器の出力が正規化されない場合、切り替えは、実際に意図されるよりも小さな粒子サイズで発生する可能性がある。入射レーザパワーと検出器の利得に対して検出器の出力を正規化することは、所与のサイズの粒子が検出されると(例えば、より低いパワー・レベルに)一貫して切り替えることを可能にする。
【0100】
図7に示されるように、除算器240は、光検出器18からのアナログ信号として、あるいは、ADC22又はプロセッサ24からのフィルタ処理及びデジタル化された信号として検出器の出力(すなわち、試料から検出された散乱光)を受信することが可能である。検出器の利得(すなわち、検出器に関連する現在の増幅)は、プロセッサ24によって除算器240に供給される。使用される特定の光検出器に応じて可変又は固定であってよい。しかし、下でより詳細に説明されるように、入射レーザパワーは、2つの方法のうちの1つで除算器240に供給されてもよい。
【0101】
いくつかの実施形態では、除算器240によって生成された、正規化された散乱パワー信号は、図7及び図9〜図11で破線によって示されるように、プロセッサ24に供給し戻される。すなわち、除算器240は、走査結果として、入射レーザパワーと検出器の利得に対して正規化されている散乱データ(すなわち、検出器の出力)を提示するために使用される。プロセッサに送られる前にデータを正規化することによって、実際の検出された散乱パワーは、欠陥のサイズを正確に検出するために使用される。例えば、大きな粒子全体にわたって走査する際に入射レーザパワーが低下した場合、ADCカウント(すなわち、検出器の出力)は減衰されていない場合よりも必然的に低いものになる。これは、プロセッサによって供給される走査結果は、実際にそこに存在するものより小さな欠陥を示すことになることを意味する。散乱データを正規化することは、プロセッサが欠陥のサイズをより正確に決定することを可能にする。
【0102】
いくつかの実施形態では、入射レーザパワー内の変化に対して散乱パワー信号を正規化するためにADC22とプロセッサ24の間のデータ収集経路で追加的な正規化器/除算器23が使用されてもよい。追加的な除算器23は、レーザパワー制御装置28内に含まれる正規化器/除算器(240)と一緒に、又はその代替形態として、使用されてもよい。例えば、2つの除算器が使用される場合、除算器23はプロセッサ24に送られた散乱パワー信号を正規化するためにデータ収集経路内に配置され、一方、除算器240はもう1つのレーザパワー制御構成要素(例えば、上で議論された比較器250)に送られた散乱パワー信号を正規化するために閾値経路内に配置される。しかし、(データ収集経路内若しくは閾値経路内で)1つの除算器だけが使用される、又は除算器が使用されない(この場合、下で議論されるように、システムは動的な範囲拡張をサポートしない)というその他の選択肢が存在する可能性もある。
【0103】
上述のように、入射レーザパワーは、2つの方法のうちの1つで除算器240に供給される。図9の実施形態では、入射ビームの実際のレーザパワーは、レーザパワー減衰器26の下位のビーム経路内で配置されてもよいレーザパワー検出器27によって測定される。この実施形態では、レーザパワー検出器27は、レーザパワー減衰器26からの実際の強度又はパワー・レベル出力を監視するために含まれる。レーザパワー検出器によって測定されたパワー(すなわち、測定パワー)は、正規化された散乱パワーを計算するためにレーザパワー制御装置28に供給される。レーザパワー検出器は、とりわけ、光ダイオードや光電子増倍管(PMT)を含むがこれらに限定されない、実質的に任意のパワー検出手段を用いて実施されてもよい。しかし、下でより詳細に説明されるように、レーザパワー検出器27は、本発明のすべての実施形態に含まれなくてよい。
【0104】
図9に示されるように、レーザパワー制御装置28は、正規化された散乱パワーをプロセッサ24によって供給される1つ又は複数の所定の閾値レベルと比較するための比較器250を含んでいる。上述のように、(1つ又は複数の)閾値レベルは、大きな(又はその他の大きく散乱する)粒子全体にわたって走査する場合、熱破損を効果的に削減するために、システムのユーザ又は処理構成要素によって選択されてもよい。一実施形態では、比較器250は、「安全」散乱パワーの最大量に関連するレーザパワー密度を表示する(「安全散乱閾値」と呼ばれる)1つの閾値レベルだけを受信することができる。正規化された散乱パワーを安全散乱閾値と比較した後で、比較器250は、減衰器に供給されるパワー・モードを維持又は変更することによって、入射レーザ・ビームを適切なパワー・レベル(例えば、「全」パワー・レベル又は「安全」パワー・レベル)に維持、削減、又は増加するようレーザパワー減衰器26に命令することが可能である。一般に、パワー・モードは減衰器に出力パワー・レベルを維持又は変更させる任意の制御信号であってよい。例えば、図8の実施形態では、減衰器に供給されるパワー・モードは、機能上、可変電源230への制御信号入力に相当する。
【0105】
図10は、好ましいレーザパワー制御装置28のもう1つの実施形態を例示する。特に、図10は、レーザパワー減衰器26からの実際のパワー・レベル出力の測定を行うためにレーザパワー検出器が使用されない場合、正規化された散乱パワーが計算される1つの方法を例示する。測定パワーを受信する代わりに、除算器240は、減衰器に供給されるパワー・モード制御信号を受信するために比較器250の出力に結合されてもよい。制御信号に基づいて、除算器240は、例えば、ルックアップ・テーブルを用いて、散乱パワー計算で使用されることになる適切な入射レーザパワーを決定することができる。図9及び図10に示される実施形態では、分散器240及び比較器250は、ハードウェア、ソフトウェア、又はそれら両方の組合せにより実施されてもよい。一例では、除算器240はソフトウェア内で実施されてよく、一方、比較器250はハードウェア内で実施されてもよい。
【0106】
図11は、好ましいレーザパワー制御装置28のさらに別の実施形態を例示する。特に、図11は、レーザパワー制御装置28によって連続的なパワー調整が行われる1つの方法を例示する。先の実施形態と同じように、除算器240は、検出器の利得と出力信号とを受信するために、そして、それに応答して正規化された散乱パワー信号を生成するために結合されている。しかし、(図9〜図10に示すように)正規化された散乱パワー信号を比較器に供給する代わりに、散乱パワー信号は、供給された信号に基づいて出力パワー・モードを動的に調整する制御ループ帰還フィルタ260に供給される。図11では、散乱パワー信号は、入射レーザパワーを調整するために(例えば、一定の検出器の出力信号を実現するために)帰還ループ260内で使用される。したがって、固定パワー・レベルの代わりに、図11に示す実施形態は、連続的に調整可能なパワー・レベルを提供する。
【0107】
図7〜図11に示す回路とシステムは、表面検査の走査の間に入射レーザ・ビームの強度又はパワー・レベルを動的に調整することによって、大きな粒子(例えば、>5μm)に対する熱破損を削減することができる。一実施形態では、熱破損は固定入射レーザ・ビーム検査システムに対して100%まで削減される。本明細書で説明される回路及びシステムは、走査オペレーションの間に2つ以上の入射ビームパワー・レベルの間で動的に切り替えるために使用される、1つ又は複数の事前設定閾値レベルを提供することによって、様々な走査オペレーションに合わせて調整される。このように、熱破損は、大きく散乱する大きな粒子全体にわたって走査する場合、入射レーザパワーを低パワー・レベル(例えば、「安全」パワー・レベル)に削減することによって、削減されたり、又は回避することさえ可能である。しかし、検出感度は、システムがより小さな欠陥を検出することを可能にする、より高いパワー・レベル(例えば、「全」パワー・レベル)で低散乱領域を走査することによって維持される。
【0108】
本発明の代替実施形態では、これまでの又は現在の検査走査結果に基づいて、閾値レベル及び/又はパワー・レベルを変更するために適応学習プロセスが使用される。1つの利点として、決定は、切り替えが必要となる直前に「オンザフライ」で行われるのではなく、実際の切替え事象にはるかに先立って行われることになるため、適応学習プロセスはスイッチング・エレクトロニクスに対してより長い遅延時間を可能にする。正確さは高まる可能性があるが、かかる実施形態は、上で説明された回路やシステムの複雑性(及び、場合によっては、コスト)を明らかに増加することになる。中間代替形態として、いくつかの実施形態では、試料に供給される入射パワー量を継続的に変更するために散乱パワーと入射パワー・レベルの間にスケーリングされた関係を確立することが可能である。この代替形態は、試料に供給される入射パワーの継続的な調整により、PMTにとって常に最適範囲近くにある散乱光信号を提供するために使用される。
【0109】
単一の光検出器の使用は本発明のほとんどの実施形態で好ましいが、いくつかの実施形態では、試料に供給されることになる適切なパワー・レベルを選択するために追加的な検出器が含まれてもよい。含まれた場合、試料から散乱される光を監視するために個別の検出器が使用されてもよい。しかし、入射パワー・レベルがそれに応じて調整されるように散乱光を検出するために使用される元の検出器と異なり、追加な検出器は、次いで、試料に方向づけられることになる適切なパワー・レベルを選択するために使用される、特定の閾値レベル又は「切替え点」を選択するために使用される。
【0110】
熱破損を削減することに加えて、図7〜図11に示す回路やシステムは、検査システムの測定検出範囲を増加するために使用されることもある。通常、固定パワー検査システムの検出範囲は、光検出器の検出範囲に制限されている。しかし、可変パワー検査システムを提供することによって、本発明は、測定検出範囲をほぼ以下までかなり増加する。
(光検出器の検出範囲)×(減衰器の検出範囲) 式11
場合によっては、レーザパワー減衰器によって提供される追加的な検出範囲は、システムの測定検出範囲全体を約2倍から16倍まで増加する。(改善されたPMT検出器及び/又はデュアル出力増幅器など)本明細書で説明されるその他の手段と組み合わされる場合、検査システムの測定検出範囲全体は、従来技術に対して約2倍から10,000倍まで改善される。
【0111】
図12は、図7〜図11で示され、上で説明されたものなど、可変パワー検査システムを用いて試料を検査するための例示的な方法を示す流れ図である。図12で述べられる様々な方法ステップは、検査システム内に含まれる構成要素によって実行されることが可能であるが、いくつかのステップは検査システムのユーザによって実行される。
【0112】
いくつかの実施形態では、方法は、(ステップ300で)第1のパワー・レベルで試料に光を方向づけることによって開始することができる。例えば、比較的小さなフィーチャ又は欠陥が検出されるように、入射レーザ・ビームは(「全」パワー・レベルなど)比較的高いパワー・レベルで試料に供給される。下でより詳細に説明されるように、比較的大きなフィーチャを破損せずに、これらのフィーチャ又は欠陥が検出されるように、入射レーザ・ビームは(「安全」パワー・レベルなど)後により低いパワー・レベルに削減されてもよい。図12に示される方法は、要求に応じて、2つを超えるパワー・レベル間で動的に切り替えるために変更される。
【0113】
ほとんどの場合、方法は、(ステップ302で)試料の表面全体にわたって光を走査すると同時に、(ステップ304で)試料から散乱された光を検出することができる。例えば、入射レーザ・ビームが試料上の現在の位置に方向づけられる場合、散乱光は試料から検出される。現在の位置で検出された散乱光は、(ステップ306で)その位置で試料のフィーチャ、欠陥、又は光散乱特性を検出するために使用される。ビーム位置は、次いで、近接の位置に対して走査されることが可能であり、そこで、プロセスは近接の位置で発見される可能性があるフィーチャを検出するために繰り返される。
【0114】
いくつかの実施形態では、走査は試料につながるビーム経路内に光学偏向器を配置することによって実施される。例えば、偏向器は、図1と図7のビーム整形・偏光制御光学系12内に含まれてよい。いくつかの実施形態では、偏向器は、音響光学偏向器(AOD)、機械的走査アセンブリ、電子スキャナ、回転鏡、ポリゴン・ベースのスキャナ、共振スキャナ、圧電スキャナ、ガルボ・ミラー、又は検流計を含む。いくつかの実施形態では、偏向器は、ほぼ一定の走査速度で試料全体にわたって光ビームを走査することができる。例えば、光ビームは約0m/sから約24m/sの速度範囲から選択された一定走査速度で試料全体にわたって走査することができる。他の実施形態では、偏向器は、約0m/sから約24m/sに及ぶ様々な走査速度で試料全体にわたって光ビームを走査することができる。しかし、偏向器は、本発明のすべての実施形態で走査を実施しなくてもよい。例えば、試料に関してビーム整形光学系の相対運動によって、及び/又は光学系に関して試料の相対運動によって、試料全体にわたって光の通常の入射ビームが走査されてもよい。
【0115】
走査プロセスの間、(ステップ304で)試料から散乱された光が現在の位置で検出されると同時に、方法は(ステップ308で)近接の位置で試料から散乱された光を監視する。例えば、入射レーザ・ビームは、分布の中間付近でピークに達し、分布の端近くで先細りになるパワー密度分布により試料に供給されてもよい。本明細書で使用されるように、分布の中間は「メイン・ビーム」と呼ばれることになり、一方、端は「ビーム・スカート」と呼ばれる。1つの例は、メイン・ローブと、メイン・ローブの各側面上に少なくとも1つのサイド・ローブとを有するパワー密度分布であろう。サイド・ローブはより小さいパワー密度を有し、したがって、メイン・ローブよりも小さい増幅を有する。もう1つの例は、その1つのメイン・ローブが徐々に先細りになるビーム・スカートを有する、ベル型分布すなわちガウス分布である。
【0116】
試料の表面全体にわたって走査する場合、入射レーザ・ビームのビーム・スカートは、粒子又は欠陥にメイン・ビームが達する(例えば、1マイクロ秒から数マイクロ秒程度)前に粒子又は欠陥に達することが可能である。例えば、試料の表面上の大部分の粒子又は欠陥は、レーザ・ビームのスポット・サイズよりもかなり小さいことになる。これは、メイン・ビームが達する前に、ビーム・スカートが粒子又は欠陥に達することを可能にする。入射レーザ・ビームが試料の表面全体にわたって走査されると、試料から散乱される光の量(すなわち、散乱パワー)は、ビームのどの部分が粒子又は欠陥をカバーしているかに応じて変化することになる。例えば、低パワー密度のビーム・スカートが大きな粒子又は欠陥に達する場合、高パワー密度のメイン・ビームが試料の比較的平滑な表面をカバーしていると想定する。比較的平滑な表面から散乱された光の量は、一般に、大きな粒子又は欠陥に帰属する散乱よりもずっと小さいため、メイン・ビーム部分に帰属する散乱パワーの量は、ごくわずかなものとみることができる。したがって、散乱パワーの著しい増加は、ビーム・スカートが大きな粒子又は欠陥に達したことを表す可能性がある。すなわち、大きな粒子又は欠陥の存在は、低パワー密度のビーム・スカートから散乱レベルを監視することによって近接の位置で検出される。
【0117】
(ステップ310で)ビーム・スカートからの散乱レベルが実質的に安全散乱閾値以上である場合、(ステップ314で)入射レーザ・ビームは、第1のパワー・レベルより低い第2のパワー・レベルに削減されてもよい。上述のように、(「安全」パワー・レベルと呼ばれる)第2のパワー・レベルは、一般に、(「全」パワー・レベルと呼ばれる)第1のパワー・レベルの約1%から約50%の範囲内であってよく、好ましい実施形態では、全パワー・レベルの約10%であってよい。(ステップ310で)ビーム・スカートからの散乱レベルが、安全散乱閾値未満である場合、より小さなフィーチャが検出されることを可能にして、検出感度を保つために第1のパワー・レベルが維持されることになる。
【0118】
場合によっては、(ステップ316で)表面検査の走査が完了すると、(ステップ318で)方法は終了する。そうでなければ、近接の位置が現在の位置になるように、(ステップ320で)走査プロセスは継続してよい。入射レーザ・ビームが欠陥全体にわたって移動する間に、方法は引き続きビーム・スカートの散乱レベルを監視する。(ステップ310で)ビームの高密度の中心(すなわち、メイン・ビーム)が欠陥を通過したことを示して、散乱レベルが安全散乱閾値未満に後退する場合、(ステップ312で)第1のパワー・レベルは小さな欠陥に関して試料を検査し続けることになる。
【0119】
上で説明された、図7や図8で示されるものなど、高速レーザパワー減衰器を使用することによって、本明細書で説明されるシステム及び方法は、メイン・ビームが近接の位置に達する前に、高パワー・レベルと低パワー・レベルの間で容易に切り替えることができる。例えば、メイン・ビームが近接の位置に達する数マイクロ秒前に、その位置での大きな欠陥の存在を表示するためにビーム・スカートの散乱レベルが使用される。1つには、レーザパワー減衰器26の比較的高速(例えば、数ナノ秒から数マイクロ秒程度)の応答により、本発明は、ビーム・スカートの散乱レベルを監視することによって、メイン・ビームが欠陥に達する前に入射ビームパワー・レベルを削減することが可能である。大きな粒子を走査する間にパワー・レベルを動的に削減して、その粒子が走査されるとパワー・レベルを増加することによって、本発明は、システムのスループットと感度を維持しながら、大きな粒子に対する熱破損を削減する。
【0120】
本発明の様々な態様のさらなる変更形態及び代替実施形態は、本明細書に鑑みて当業者に明らかであろう。例えば、検査システムの検出範囲を拡張するための方法及びシステムが提供される。それに応じて、この明細書は、例示なものとしてだけ解釈されるべきであり、当業者が本発明を実行する一般的な方法を教示することを目的とする。本明細書で示され、かつ説明される本発明の形態は、現在、好ましい実施形態であるものと理解されるべきである。本発明の利益を得た後で当業者に明らかになるように、要素及び材料を本明細書で例示及び説明されるものと置き換えることが可能であり、部品及びプロセスは逆転されてよく、本発明のいくつかのフィーチャは独立して利用されてもよい。添付の特許請求の範囲で説明される発明の精神及び範囲から逸脱せずに、本明細書で説明される要素に変更が加えられてよい。
【0121】
(付記1)試料を検査するための方法であって、
光を前記試料に方向づけるステップと、
前記試料から散乱された光を検出するステップであって、
光電子増倍管(PMT)の陽極電流を監視するステップと、
前記陽極電流が所定の閾値に達するまで前記陽極電流を使用して前記試料のフィーチャ、欠陥、又は光散乱特性を検出し、その後、前記検出のために前記PMTのダイノード電流を使用する検出するステップとを含む、検出するステップと
を含む方法。
【0122】
(付記2)前記方向づけるステップに先立って、前記PMT内に含まれた複数のダイノードのうちの1つに電気に接続することによって、前記検出のために使用されることになる前記ダイノード電流を選択するステップをさらに含む付記1の記載の方法。
【0123】
(付記3)前記複数のダイノードのうちの前記選択される1つが前記複数のダイノードのほぼ中央に配置される付記2に記載の方法。
【0124】
(付記4)前記検出の間又は後に、前記複数のダイノードのうちの異なる1つにもう1つの電気接続を行うことによって、前記検出のために使用されることになる代替のダイノード電流を選択するステップをさらに含む付記2に記載の方法。
【0125】
(付記5)前記代替のダイノード電流が、当初選択される前記ダイノード電流よりも小さい又は大きい量の利得を提供する付記4に記載の方法。
【0126】
(付記6)試料から散乱された光を検出するための回路であって、
前記試料から散乱された前記光を受信して、電気信号に変換するための光電子増倍管(PMT)であって、前記PMTが陰極と、多数のダイノード及び陽極からなる複数のステージとを含み、前記電気信号が前記陽極ステージで出力信号を生み出すために各連続的なステージで増幅されるPMTと、
前記PMTの前記ダイノード・ステージのうちの1つで前記増幅された電気信号を表す中間信号と共に前記出力信号を受信するために前記PMTに結合された手段と
を含む回路。
【0127】
(付記7)前記手段が、
前記出力信号が所定の閾値未満にとどまる限り、前記出力信号を検査システム構成要素に供給し、かつ
前記出力信号が前記所定の閾値に達すると、前記中間信号を前記検査システム構成要素に供給するように構成された付記6に記載の回路。
【0128】
(付記8)前記所定の閾値が、前記陽極ステージが飽和し始める最高電流レベル、又は前記陽極ステージが飽和し始める電流レベルをごくわずかに下回る電流レベルを含む付記7に記載の回路。
【0129】
(付記9)前記所定の閾値が約1μAから約10mAを含む値の範囲内にある付記8に記載の回路。
【0130】
(付記10)前記中間信号が較正比率によって乗算された前記1つのダイノード・ステージからの前記増幅された電気信号を含む付記8に記載の回路。
【0131】
(付記11)前記較正比率が前記1つのダイノード・ステージからの前記増幅された電気信号によって除算された前記陽極ステージでの前記電流レベルを含む付記10に記載の回路。
【0132】
(付記12)前記手段が、前記出力信号を前記検査システム構成要素に供給しながら、前記出力信号を監視して、前記出力信号が前記所定の閾値に達すると、前記中間信号に切り替えるように構成された制御論理を含む付記7に記載の回路。
【0133】
(付記13)前記手段が、
前記出力信号を前記検査システム構成要素に供給しながら、前記出力信号を監視するた
めの第1のプログラム命令のセットと、
前記出力信号を前記所定の閾値に達すると、前記中間信号に切り替えるための第2のプ
ログラム命令のセットと
を実行するように構成されたプロセッサを含む付記7に記載の回路。
【0134】
(付記14)前記PMTの前記陰極と前記陽極の間に結合された複数の抵抗器をさらに含む付記7に記載の回路。
【0135】
(付記15)前記複数の抵抗器が、第1の電源に並列に結合されるとともに、前記PMT内の前記陰極と前記複数のステージに並列に結合された分圧器チェーンを形成するために互いに直列に結合された付記14に記載の回路。
【0136】
(付記16)前記抵抗器の大部分が、各々、i)前記陰極と第1のダイノード、ii)2つの隣り合う奇数及び偶数のダイノード、又はiii)最後のダイノートと前記陽極のいずれかの間に並列に結合され、2つ以上の前記抵抗器が隣り合う奇数のダイノード又は隣り合う偶数のダイノードの間に並列に結合された付記15に記載の回路。
【0137】
(付記17)前記隣り合う奇数のダイノード又は前記隣り合う偶数のダイノードの間に配置された中間ダイノードと、第2の電源の間に結合された追加的な抵抗器とをさらに含む付記16に記載の回路。
【0138】
(付記18)前記中間信号が前記追加的な抵抗器全体にわたって測定された電圧信号を含む付記16に記載の回路。
【0139】
(付記19)前記複数の抵抗器が、各々、関連する個別の電源を有する、直列結合された第1の抵抗器部分と、直列結合された第2の抵抗器部分に分離される付記14に記載の回路。
【0140】
(付記20)前記第1の抵抗器部分が、前記陰極と、前記PMTの前記中間ダイノードを含み、かつ前記中間ダイノードで終わる1つ又は複数のダイノードとに結合された付記19に記載の回路。
【0141】
(付記21)前記第2の抵抗器部分が、前記PMTの前記中間ダイノードと前記陽極にすぐ続くダイノードに結合された付記20に記載の回路。
【0142】
(付記22)前記中間信号が前記第1の抵抗器部分内の最後の抵抗器全体にわたって測定された電圧信号を含む付記21に記載の回路。
【0143】
(付記23)光を試料に方向づけるように構成された照射サブシステムと、
前記試料から散乱された光を検出して、それに応答して第1の信号と第2の信号とを生成するように構成された検出サブシステムであって、前記第1及び第2の信号を生成するための1つの光検出器だけを含む検出サブシステムと、
前記第1の信号が所定の閾値レベルに達するまで前記第1の信号を使用して前記試料のフィーチャ、欠陥、又は光散乱特性を検出し、その後、前記検出のために前記第2の信号を使用するように構成されたプロセッサと
を含む検査システム。
【0144】
(付記24)前記試料の前記フィーチャ、欠陥、又は光散乱特性を検出する際に、前記プロサッサが、
前記第1の信号を前記所定の閾値レベルと比較し、かつ
前記第1の信号が前記所定の閾値レベルに達すると、前記第2の信号に切り替わる
ように構成された付記23に記載の検査システム。
【0145】
(付記25)前記検出サブシステムが、
前記試料から散乱された前記光を集めるためのコレクタと、
前記集められた光を前記第1及び第2の信号に変換するための光検出器であって、前記
第2の信号が前記第1の信号のごく一部だけを含む、光検出器と、
実質的に同等な量によって前記第1及び前記第2の信号を増幅するための増幅器と
を含む付記23に記載の検査システム。
【0146】
(付記26)前記光検出器が、
陰極と、複数のダイノード及び陽極とを有する光電子増倍管(PMT)と、
前記第1の信号を生み出すために、前記陽極電流を電圧に変換するための電流・電圧変換器と、
前記第2の信号を生み出すために、中間ダイノード電流をもう1つの電圧に変換するための前記複数のダイノードのうちの1つに結合された負荷と
を含む付記25に記載の検査システム。
【0147】
(付記27)前記試料から散乱された光を検出するための回路であって、
前記試料から散乱された前記光を検出して、前記光を電気信号に変換するように構成された1つだけの光検出器と、
前記電気信号に応答して、少なくとも第1の信号と第2の信号とを生成するように構成された増幅器ステージであって、前記第1の信号が前記散乱光の実質的により低いレベルを検出するために第2の信号よりも高い解像度を有する増幅器ステージと
を有する回路。
【0148】
(付記28)前記1つだけの光検出器が、光ダイオード、光電管、光電子増倍管からなるグループから選択される付記27に記載の回路。
【0149】
(付記29)前記1つだけの光検出器が、1つだけの検出領域、あるいは、アレイ内に配置された複数の検出領域を含む付記27に記載の回路。
【0150】
(付記30)前記増幅器ステージが、各々が正及び負の入力端子を有する、第1の演算増幅器と第2の演算増幅器とを含む付記27に記載の回路。
【0151】
(付記31)前記第1及び第2の演算増幅器が、その正の入力端子が少なくとも第1の抵抗器(R1)と第2の抵抗器(R2)とを含む分圧器ネットワーク内の異なるノードに結合された電圧フォロワを含む付記30に記載の回路。
【0152】
(付記32)前記第1の演算増幅器の前記正の入力端子が、[R1+R2]の一連の抵抗器によって乗算された前記電気信号を受信するために結合され、前記第2の演算増幅器の前記正の入力端子が、R2の抵抗器によって乗算された前記電気信号を受信するために結合された付記31に記載の回路。
【0153】
(付記33)前記第1及び第2の抵抗器の値が、比較的高い利得を有する第1の信号と、比較的低い利得を有する第2の信号とを提供するために選択される付記32に記載の回路。
【0154】
(付記34)前記第1及び第2の抵抗器が、前記回路の検出範囲を約2倍から約1024倍だけ増加するように選択される付記33に記載の回路。
【0155】
(付記35)前記増幅器ステージが、正及び負の入力端子を有する第3の演算増幅器を含む付記30に記載の回路。
【0156】
(付記36)前記第1の演算増幅器が前記電気信号を第1の抵抗値(R1)で乗算することによって接点電圧を生成するために結合された付記35に記載の回路。
【0157】
(付記37)前記第2の演算増幅器が前記接点電圧を第3の抵抗値(R3)によって乗算し、第2の抵抗値(R2)によって除算することによって前記第1の信号を生成するために結合された付記36に記載の回路。
【0158】
(付記38)前記第3の演算増幅器が前記接点電圧を第5の抵抗値(R5)によって乗算し、第4の抵抗値(R4)によって除算することによって前記第2の信号を生成するために結合された付記37に記載の回路。
【0159】
(付記39)前記第1、第2、第3、第4、第5の抵抗値が、比較的高い利得を有する前記第1の信号と、比較的低い利得を有する前記第2の信号とを提供するために選択される付記38に記載の回路。
【0160】
(付記40)前記第1、第2、第3、第4、第5の抵抗値が、前記回路の検出範囲を約2倍から約1024倍だけ増加するために選択される付記39に記載の回路。
【0161】
(付記41)光を試料に方向づけるように構成された照射サブシステムと、
前記試料から散乱された光を検出して、前記光を電気信号に変換するように構成された単一の光検出器と、
前記電子信号を、1つがもう1つより比較的高い利得を有する、1対のアナログ信号に変換するために結合された増幅器ステージと
を含む、検査システム。
【0162】
(付記42)前記1つだけの光検出器が、光ダイオード、光電管、光電子増倍管からなるグループから選択される付記41に記載の検査システム。
【0163】
(付記43)前記1つだけの光検出器が、1つだけの検出領域、あるいは、アレイ内に配置された複数の検出領域を含む付記41に記載の検査システム。
【0164】
(付記44)前記1対のアナログ信号を、1つがもう1つより大きな値である、1対のデジタル信号に変換するために結合された1対のアナログ・デジタル変換器(ADC)をさらに含む付記41に記載の検査システム。
【0165】
(付記45)前記より大きなデジタル信号を生成する責任を担う前記ADCが所定の閾値に達するまで、前記より大きな値を有する前記デジタル信号を信号処理サブシステムに供給し、その後、前記より小さい値を有する前記デジタル信号を前記信号処理サブシステプに供給するために結合された選択論理をさらに含む付記44に記載の検査システム。
【0166】
(付記46)前記所定の閾値が実質的に2N-1以下であり、Nは前記ADCの各々に関連するビットの数である付記45に記載の検査システム。
【0167】
(付記47)前記所定の閾値に達するまで前記より大きなデジタル信号を使用して前記試料のフィーチャ、欠陥、又は光散乱特性を検出し、その後、前記検出のために前記より小さいデジタル信号を使用するように構成された前記信号処理サブシステムを含む付記45に記載の検査システム。
【0168】
(付記48)試料を検査するための方法であって、
光を前記試料に方向づけるステップと、
前記試料から散乱された光を検出するステップであって、
前記試料から散乱された前記光を検出して、前記光を電気信号に変換するために1つだけの光検出器を利用するステップと、
前記電気信号に応答して、第1の信号と第2の信号とを生成するステップであって、
前記散乱光のかなり低いレベルを検出するために、前記第1の信号が前記第2の信号よりも高い解像度を有するステップと、
前記第1の信号が所定の閾値に達するまで前記試料のフィーチャ、欠陥、又は光散乱特性を検出するために前記第1の信号を使用し、その後、前記検出のために前記第2の信号を使用するステップとを含む、検出するステップと
を含む方法。
【0169】
(付記49)前記使用するステップに先立って、前記第1及び前記第2の信号をアナログ信号から対応するデジタル信号に変換するステップをさらに含む付記48に記載の方法。
【0170】
(付記50)前記使用するステップの間に、
前記第1の信号のデジタル値を所定の閾値と比較するステップと、
前記第1の信号の前記デジタル値が前記所定の閾値に達すると、前記第2の信号に切り替えるステップと
をさらに含む付記49に記載の方法。
【0171】
(付記51)前記所定の閾値が実質的に2N-1以下であり、Nは前記第1及び第2の信号をアナログ信号から対応するデジタル信号に変換するために使用される手段に関連するビットの数である付記50に記載の方法。
【0172】
(付記52)前記散乱光の実質的により高いレベルを検出するために、前記第1の信号より低い解像度を有する第2の信号が生成される付記50に記載の方法。
【0173】
(付記53)前記第1の信号によって検出された光の前記より低いレベルが、第1の検出範囲内にあり、第2の信号によって検出された光のより高いレベルが、少なくとも部分的に前記第1の検出範囲と重なる第2の検出範囲内にある付記52に記載の方法。
【0174】
(付記54)第1のパワー・レベルで、光を試料に方向づけるための照射サブシステムと、
前記試料から散乱された光を検出するための検出サブシステムと、
前記試料から検出された前記散乱光に基づいて前記試料に方向づけられたパワー・レベルを動的に変更するための電力減衰器サブシステムと
を含む検査システム。
【0175】
(付記55)前記電力減衰器サブシステムが前記試料に方向づけられた前記光を提供するための光源を含む付記54に記載の検査システム。
【0176】
(付記56)前記光源が、ダイオード・レーザ、ヘリウム・ネオン・レーザ、アルゴン・レーザ、固体レーザ、ダイオード励起固体(DPSS)レーザを含むレーザ・ベースの源のグループから選択される付記55に記載の検査システム。
【0177】
(付記57)前記光源が、アーク灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、LEDアレイ、電球を含む非レーザ・ベースの源のグループから選択される付記55に記載の検査システム。
【0178】
(付記58)前記電力減衰器サブシステムが、前記光源と前記試料の間に配置されたレーザパワー減衰器を含み、前記レーザパワー減衰器が
前記検出された散乱光が所定の閾値レベル未満にとどまる場合、前記試料に方向付けられた前記光を前記第1のパワー・レベルに維持し、
前記検出された散乱光が前記所定の閾値レベルを超える場合、前記試料に方向づけられた前記光を、前記第1のパワー・レベル未満である第2のパワー・レベルに削減し、かつ
前記検出された散乱光が前記所定の閾値レベル未満に後退する場合、前記試料に方向づけられた前記光を前記第1のパワー・レベルに増加して戻すように
構成された付記55に記載の検査システム。
【0179】
(付記59)前記電力減衰器サブシステムが、前記検出サブシステムと前記レーザパワー減衰器の間に結合されたレーザパワー制御装置をさらに含み、前記レーザパワー制御装置が
前記検出された散乱光が前記所定の閾値レベルを超えるか又は前記所定の閾値未満であるかを決定するために前記検出された散乱光を継続的に監視し、かつ
前記レーザパワー制御装置による決定に基づいて、前記試料に方向づけられた前記光を前記第1のパワー・レベル又は前記第2のパワー・レベルで提供するよう前記レーザパワー減衰器に命令する
ように構成された付記58に記載の検査システム。
【0180】
(付記60)前記所定の閾値レベルが、前記試料に方向づけられた前記光が前記試料上のフィーチャによって吸収されるか不十分に分散される場合に発生する熱破損を最低限に抑えるために選択され、前記所定の閾値レベルが、一定のサイズのフィーチャ上に加えられた熱破損の始まりに関連する入力レーザパワー密度に基づく付記59に記載の検査システム。
【0181】
(付記61)前記所定の閾値レベルが約1kW/cm2から約1000kW/cm2に及ぶ入射レーザパワー密度のグループから選択される付記60に記載の検査システム。
【0182】
(付記62)前記第2のパワー・レベルが前記第1のパワー・レベルの割合を含み、前記割合が約1%から約50%を含むグループから選択される付記60に記載の検査システム。
【0183】
(付記63)前記第2のパワー・レベルが前記第1のパワー・レベルの約10%と実質的に同等である付記62に記載の検査システム。
【0184】
(付記64)前記検査システムが前記第1のパワー・レベルで前記光を前記試料に方向づけることによって比較的小さなサイズのフィーチャを検出するように構成された付記62に記載の検査システム。
【0185】
(付記65)前記検査システムが、比較的大きなサイズのフィーチャ上に熱破損を加えずに、前記第1のパワー・レベルではなく、前記第2のパワー・レベルで前記光を前記試料に方向づけることによって、それらのフィーチャを検出するように構成された付記64に記載の検査システム。
【0186】
(付記66)前記電力減衰器サブシステムが前記試料に方向づけられることになる適切なパワー・レベルを動的に選択するために1つを超える所定の閾値レベルを利用し、前記適切なパワー・レベルが使用のために利用可能な3つ以上の異なるパワー・レベルから選択される付記60に記載の検査システム。
【0187】
(付記67)試料の表面検査の走査の間に前記試料に供給される光のパワー・レベルを動的に制御するための回路であって、
前記試料に供給される前記光の前記パワー・レベルを動的に変更するための手段と、
前記試料から検出された散乱光の計算された量に基づいて前記パワー・レベルの前記動的に変更するステップを制御するための手段と
を含む回路。
【0188】
(付記68)前記パワー・レベルを動的に変更するための前記手段が、前記光の偏光に基づいて前記光の一部を透過するように適合された選択的に透過可能な光学部品を含む付記67に記載の回路。
【0189】
(付記69)前記パワー・レベルを動的に変更するための前記手段が、組み合わされた場合、前記光の偏光に基づいて前記光の一部を透過するように適合された、波長板と偏光ビーム・スプリッタとを含む付記67に記載の回路。
【0190】
(付記70)前記パワー・レベルを動的に変更するための前記手段が、
電気光学結晶に供給される可変制御電圧に基づいて、前記光の偏光を変更するように適合された電気光学結晶と、
前記結晶からの前記光出力の前記偏光に基づいて前記光の一部を透過するように適合されたビーム・スプリッタと
を含む付記67に記載の回路。
【0191】
(付記71)前記動的に変更するステップを制御するための前記手段が、
前記試料から散乱された前記光を検出して、前記検出された散乱光を電気出力信号に変換するための光検出器と、
前記電気出力信号を所定の閾値レベルと比較して、それに応答して制御信号を生成するための比較器と
を含む付記67に記載の回路。
【0192】
(付記72)前記動的に変更するステップを制御するための前記手段が、前記光検出器と前記比較器の間に結合された除算器をさらに含み、前記除算器が前記電気出力信号の正規化されたバージョンを生成するように構成され、前記正規化されたバージョンが前記試料から検出された散乱光の前記計算された量に相当し、前記比較器が前記電気出力信号の前記正規化されたバージョンを前記所定の閾値レベルと比較して、それに応答して前記制御信号を生成するように構成された付記71に記載の回路。
【0193】
(付記73)前記比較器によって生成された前記制御信号が、前記試料に供給されることになるパワー・レベルを複数の利用可能なパワー・レベルから選択するために前記動的に変更するための手段に供給される付記72に記載の回路。
【0194】
(付記74)前記電気出力信号の前記正規化されたバージョンがi)前記選択されるパワー・レベル、及びii)前記光検出器によって前記電気出力信号に加えられた利得によって前記電気出力信号を除算することによって生成される付記73に記載の回路。
【0195】
(付記75)前記電気出力信号の前記正規化されたバージョンが前記所定の閾値レベル未満である場合、前記制御信号が第1のパワー・レベルを前記試料に供給させる付記74に記載の回路。
【0196】
(付記76)前記電気出力信号の前記正規化されたバージョンが前記所定の閾値レベル以上である場合、前記制御信号が第2のパワー・レベルを前記試料に供給させ、前記第2のパワー・レベルが実質的に前記第1のパワー・レベル未満である付記75に記載の回路。
【0197】
(付記77)前記第2のパワー・レベルが前記第1のパワー・レベルの割合を含み、前記割合が約1%から約50%を含むグループから選択される付記76に記載の回路。
【0198】
(付記78)前記第2のパワー・レベルが前記第1のパワー・レベルの約10%と実質的に同等である付記76に記載の回路。
【0199】
(付記79)前記試料の欠陥、フィーチャ、又は光散乱特性を検出するための1つ又は複数のプログラム命令を実行するように構成されたプロセッサをさらに含む付記72に記載の回路。
【0200】
(付記80)前記プロセッサが前記除算器から前記電気出力信号の前記正規化されたバージョンを受信して、それに応答して、前記試料の前記欠陥、フィーチャ、又は光散乱特性を検出する
ように構成された付記79に記載の回路。
【0201】
(付記81)前記光検出器によって生成された前記電気出力信号の第2の正規化されたバージョンを生成するために前記光検出器に結合された追加的な除算器をさらに含む付記79に記載の回路。
【0202】
(付記82)前記プロセッサが前記追加的な除算器から前記電気出力信号の前記第2の正規化されたバージョンを受信して、それに応答して、前記試料の前記欠陥、フィーチャ、又は光散乱特性を検出するように構成された付記81に記載の回路。
【0203】
(付記83)試料を検査するための方法であって、
光を第1のパワー・レベルで前記試料に方向付けるステップと、
前記試料の表面全体にわたって前記光を走査するステップであって、前記走査の間、前記方法が
前記試料から散乱された光を検出するステップと、
前記検出された光が所定の閾値レベルを超える場合、前記試料に方向づけられた前記光を第2のパワー・レベルに削減するステップと、
前記試料から散乱された前記検出された光を使用して、前記試料のフィーチャ、欠陥、又は光特性を検出するステップと
を含む方法。
【0204】
(付記84)前記所定の閾値レベルを超えた場合、前記方法が、前記検出された散乱光が前記走査の間に前記所定の閾値レベル未満に後退する場合、前記試料に方向づけられた前記光を前記第1のパワー・レベルに増加して戻すステップをさらに含む付記83に記載の方法。
【0205】
(付記85)前記光を前記試料に方向付けるステップが、分布の中間付近でピークに達し、前記分布の端近くで先細りになるパワー密度分布により前記光を前記試料の表面に供給し、前記分布の前記中間がメイン・ビームと呼ばれ、前記分布の前記端がビーム・スカートと呼ばれる付記84に記載の方法。
【0206】
(付記86)前記パワー密度分布がメイン・ローブと、前記メイン・ローブの各側面上に少なくとも1つのサイド・ローブとを含み、前記サイド・ローブはパワー密度が前記メイン・ローブよりも小さいものである付記85に記載の方法。
【0207】
(付記87)前記パワー密度分布がガウス分布を含む付記85に含む方法。
【0208】
(付記88)前記光を検出するステップが、前記メイン・ビームが前記試料上の比較的大きなフィーチャに達する前に前記試料に方向づけられた前記光が前記第2のパワー・レベルに削減されることを可能にし、前記メイン・ビームが前記第1のパワー・レベルでそこに供給された場合、前記比較的大きなフィーチャは熱破損を受け易いものである付記85に記載の方法。
【0209】
(付記89)前記走査の間に、前記方法が、
前記試料から散乱された光を監視するステップと、
前記試料に方向づけられることになる適切なパワー・レベルを選択するために使用される前記所定の閾値レベルを選択するために前記監視された光を使用するステップと
含む付記88に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を検査するための方法であって、
光を前記試料に方向づけるステップと、
前記試料から散乱された光を検出するステップであって、
光電子増倍管(PMT)の陽極電流を監視するステップと、
前記陽極電流が所定の閾値に達するまで前記陽極電流を使用して前記試料のフィーチャ、欠陥、又は光散乱特性を検出し、その後、前記検出のために前記PMTのダイノード電流を使用して検出するステップとを含む、検出するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記方向づけるステップに先立って、前記PMT内に含まれた複数のダイノードのうちの1つに電気に接続することによって、前記検出のために使用されることになる前記ダイノード電流を選択するステップをさらに含む請求項1の記載の方法。
【請求項3】
前記複数のダイノードのうちの前記選択される1つが前記複数のダイノードのほぼ中央に配置される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記検出の間又は後に、前記複数のダイノードのうちの異なる1つにもう1つの電気接続を行うことによって、前記検出のために使用されることになる代替のダイノード電流を選択するステップをさらに含む請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記代替のダイノード電流が、当初選択される前記ダイノード電流よりも小さい又は大きい量の利得を提供する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
光を試料に方向づけるように構成された照射サブシステムと、
前記試料から散乱された光を検出して、それに応答して第1の信号と第2の信号とを生成するように構成された検出サブシステムであって、前記第1及び第2の信号を生成するための1つの光検出器だけを含む検出サブシステムと、
前記第1の信号が所定の閾値レベルに達するまで前記第1の信号を使用して前記試料のフィーチャ、欠陥、又は光散乱特性を検出し、その後、前記検出のために前記第2の信号を使用するように構成されたプロセッサと
を含む検査システム。
【請求項7】
前記試料の前記フィーチャ、欠陥、又は光散乱特性を検出する際に、前記プロサッサが、
前記第1の信号を前記所定の閾値レベルと比較し、かつ
前記第1の信号が前記所定の閾値レベルに達すると、前記第2の信号に切り替わる
ように構成された請求項6に記載の検査システム。
【請求項8】
前記検出サブシステムが、
前記試料から散乱された前記光を集めるためのコレクタと、
前記集められた光を前記第1及び第2の信号に変換するための光検出器であって、前記第2の信号が前記第1の信号のごく一部だけを含む、光検出器と、
実質的に同等な量によって前記第1及び前記第2の信号を増幅するための増幅器と
を含む請求項6に記載の検査システム。
【請求項9】
前記光検出器が、
陰極と、複数のダイノード及び陽極とを有する光電子増倍管(PMT)と、
前記第1の信号を生み出すために、前記陽極電流を電圧に変換するための電流・電圧変換器と、
前記第2の信号を生み出すために、中間ダイノード電流をもう1つの電圧に変換するための前記複数のダイノードのうちの1つに結合された負荷と
を含む請求項8に記載の検査システム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−159513(P2012−159513A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−93665(P2012−93665)
【出願日】平成24年4月17日(2012.4.17)
【分割の表示】特願2008−521588(P2008−521588)の分割
【原出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(500049141)ケーエルエー−テンカー コーポレイション (126)
【Fターム(参考)】