検出回路、センサーデバイス及び電子機器
【課題】素子特性バラツキを原因とする出力電圧のバラツキを低減できる検出回路、センサーデバイス及び電子機器等の提供。
【解決手段】検出回路は、焦電素子10と、検出回路の出力ノードNQと低電位側電源ノードとの間に設けられ、焦電素子10からの検出信号がゲートに入力される第1のP型トランジスターTP1と、高電位側電源ノードと出力ノードNQとの間に設けられ、ゲートが基準電圧VRに設定される第2のP型トランジスターTP2を含む。
【解決手段】検出回路は、焦電素子10と、検出回路の出力ノードNQと低電位側電源ノードとの間に設けられ、焦電素子10からの検出信号がゲートに入力される第1のP型トランジスターTP1と、高電位側電源ノードと出力ノードNQとの間に設けられ、ゲートが基準電圧VRに設定される第2のP型トランジスターTP2を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出回路、センサーデバイス及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、焦電素子等を用いた赤外線の検出回路が知られている。例えば人体からは、波長が10μm付近の赤外線が輻射されており、これを検出することで人体の存在や温度の情報を非接触で取得できる。従って、このような赤外線の検出回路を利用することで、侵入検知や物理量計測を実現できる。
【0003】
赤外線の検出回路の従来技術としては例えば非特許文献1、特許文献1に開示される技術が知られている。非特許文献1の従来技術では、直列接続されたトランジスター(JFET)と抵抗とから構成されるソースフォロワー回路により、焦電素子の焦電流を検出している。
【0004】
また特許文献1の従来技術では、負荷素子として機能するP型トランジスターと増幅素子として機能するN型トランジスターが直列接続されることで、ソース接地増幅回路が構成され、このソース接地増幅回路により焦電素子の焦電流を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−68863号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Daisuke Akai et al. , “Pyroelectric infrared sensors with fast response time and high sensitivity using epitaxial PbZr, TiO3 films on epitaxial γ-Al2O3/Si substrates”, Sensors and Actuators A: Physical, Volumes 130-131, 14 August 2006, Pages 111-115, Elsevier Science B.V.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの従来技術では、検出回路を構成する抵抗やトランジスターなどの回路素子の特性バラツキが原因で、検出回路の出力電圧のバラツキが非常に大きくなってしまうという課題があった。
【0008】
本発明の幾つかの態様によれば、素子特性バラツキを原因とする出力電圧のバラツキを低減できる検出回路、センサーデバイス及び電子機器等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、焦電素子と、検出回路の出力ノードと低電位側電源ノードとの間に設けられ、前記焦電素子からの検出信号がゲートに入力される第1のP型トランジスターと、高電位側電源ノードと前記出力ノードとの間に設けられ、ゲートが基準電圧に設定される第2のP型トランジスターとを含む検出回路に関係する。
【0010】
本発明の一態様によれば、焦電素子と、焦電素子からの検出信号がゲートに入力される第1のP型トランジスターと、ゲートが基準電圧に設定される第2のP型トランジスターが設けられる。そして第1、第2のP型トランジスターによりソースフォロワー回路が構成され、第1のP型トランジスターのゲートに入力される検出信号に対応する出力電圧が、出力ノードに出力される。このような構成の検出回路によれば、第1、第2のP型トランジスターのしきい値電圧等の特性バラツキの影響が出力電圧に及ぶのを抑制できるため、素子特性のバラツキを原因とする出力電圧のバラツキの低減が可能になる。
【0011】
また本発明の一態様では、前記第1のP型トランジスターの基板電位は、前記第1のP型トランジスターのソースの電位に設定され、前記第2のP型トランジスターの基板電位は、前記第2のP型トランジスターのソースの電位に設定されてもよい。
【0012】
このようにすれば、基板バイアス効果による第1、第2のP型トランジスターのしきい値電圧の変動を防止できるため、出力電圧のバラツキを更に低減できる。
【0013】
また本発明の一態様では、前記第1のP型トランジスターと前記第2のP型トランジスターとは、ゲート長及びゲート幅の少なくとも一方が同一であってもよい。
【0014】
このようにすれば、第1、第2のP型トランジスターのしきい値電圧等の素子特性を近づけることが可能になり、出力電圧のバラツキを更に低減できる。
【0015】
また本発明の一態様では、前記第1のP型トランジスターと前記第2のP型トランジスターは隣接してレイアウト配置されてもよい。
【0016】
このようにレイアウト配置すれば、製造プロセス変動等による第1、第2のP型トランジスターの素子特性のバラツキを低減できるため、出力電圧のバラツキを更に低減できる。
【0017】
また本発明の一態様では、前記第2のP型トランジスターは、他の焦電素子の検出回路との間で共用されてもよい。
【0018】
このように第2のP型トランジスターを共用すれば、トランジスターのレイアウト面積の縮小化等を図れる。
【0019】
また本発明の一態様では、前記高電位側電源ノードに対して高電位側電源電圧Vccが供給され、前記第2のP型トランジスターのゲートの電圧が前記基準電圧としてVcc−Vconstに設定され、前記第1のP型トランジスターは、電圧Vconstに対応する設定電圧を基準として、前記焦電素子からの前記検出信号の電圧変化に伴い変化する電圧をソースに出力してもよい。
【0020】
このようにすれば、電圧Vconstに対応する設定電圧を基準に、検出回路の出力電圧が変化させることが可能になる。
【0021】
また本発明の一態様では、前記第1のP型トランジスターのしきい値電圧をVthとした場合に、Vth≦Vconst≦Vcc−Vthであってもよい。
【0022】
このようにすれば、第1、第2のP型トランジスターを飽和領域で動作させることが可能になる。また出力電圧をしきい値電圧Vth以上に設定することが可能になり、後段の回路の設計の容易化等を図れる。
【0023】
また本発明の一態様では、前記第2のP型トランジスターと前記出力ノードとの間に設けられ、前記第2のP型トランジスターのドレイン・ソース間電圧を調整する電圧調整回路を含んでもよい。
【0024】
このような電圧調整回路を設ければ、第1、第2のP型トランジスターのドレイン・ソース間電圧を近づけることが可能になり、第1、第2のP型トランジスターの素子特性の差を更に小さくすることが可能になる。
【0025】
また本発明の他の態様は、上記のいずれかの検出回路を含むセンサーデバイスに関係する。
【0026】
また本発明の他の態様は、複数のセンサーセルが配列されるセンサーアレイと、複数の行線と、1又は複数の列線と、前記複数の行線に接続される行選択回路と、前記1又は複数の列線に接続される読み出し回路とを含み、前記複数のセンサーセルの各センサーセルは焦電素子と、前記各センサーセルに対応する対応列線への出力ノードと低電位側電源ノードとの間に設けられ、前記焦電素子からの検出信号がゲートに入力される第1のP型トランジスターと、高電位側電源ノードと前記出力ノードとの間に設けられ、ゲートが基準電圧に設定される第2のP型トランジスターとを含むセンサーデバイスに関係する。
【0027】
本発明の他の態様によれば、各センサーセルには、焦電素子と、焦電素子からの検出信号がゲートに入力される第1のP型トランジスターと、ゲートが基準電圧に設定される第2のP型トランジスターが設けられる。そして第1、第2のP型トランジスターによりソースフォロワー回路が構成され、第1のP型トランジスターのゲートに入力される検出信号に対応する出力電圧が、出力ノードに出力されるようになる。このような構成のセンサーデバイスによれば、第1、第2のP型トランジスターのしきい値電圧等の特性バラツキの影響が出力電圧に及ぶのを抑制できるため、センサーセルからの出力電圧のバラツキの低減が可能になる。
【0028】
また本発明の他の態様は、複数のセンサーセルが配列されるセンサーアレイと、複数の行線と、1又は複数の列線と、前記複数の行線に接続される行選択回路と、前記1又は複数の列線に接続される読み出し回路と、前記1又は複数の列線に接続される電流源回路とを含み、前記複数のセンサーセルの各センサーセルは、焦電素子と、前記各センサーセルに対応する対応列線への出力ノードと低電位側電源ノードとの間に設けられ、前記焦電素子からの検出信号がゲートに入力される第1のP型トランジスターとを含み、前記電流源回路は、高電位側電源ノードと前記対応列線との間に設けられ、ゲートが基準電圧に設定され、前記対応列線を介して前記各センサーセルに電流を供給する第2のP型トランジスターを含むセンサーデバイスに関係する。
【0029】
本発明の他の態様によれば、各センサーセルには、焦電素子と、焦電素子からの検出信号がゲートに入力される第1のP型トランジスターが設けられる。また電流源回路には、各対応列線に対応して第2のP型トランジスターが設けられる。そしてこれらの第1、第2のP型トランジスターによりソースフォロワー回路が構成され、第1のP型トランジスターのゲートに入力される検出信号に対応する出力電圧が、出力ノードに出力されるようになる。このような構成のセンサーデバイスによれば、第1、第2のP型トランジスターのしきい値電圧等の特性バラツキの影響が出力電圧に及ぶのを抑制できるため、センサーセルからの出力電圧のバラツキの低減が可能になる。
【0030】
また本発明の他の態様では、前記各センサーセルは、前記出力ノードと前記対応列線との間に設けられ、前記各センサーセルに対応する対応行線がゲートに接続される行選択トランジスターを含み、前記対応列線に対応して設けられる複数のセンサーセルの各センサーセルが、前記行選択トランジスターを介して前記対応列線に接続されてもよい。
【0031】
このようにすれば、対応行線により行選択トランジスタのオン・オフ制御を行うことで、各センサーセルを行選択トランジスターを介して対応列線に接続して出力電圧を読み出すことが可能になる。
【0032】
また本発明の他の態様は、上記のいずれかに記載の検出回路を含む電子機器に関係する。
【0033】
また本発明の他の態様は、上記のいずれかに記載のセンサーデバイスを含む電子機器に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】比較例の検出回路の説明図。
【図2】比較例の検出回路の被写体温度−出力電圧の特性例。
【図3】本実施形態の検出回路の構成例。
【図4】焦電素子のヒステリシスループの例。
【図5】本実施形態の検出回路の被写体温度−出力電圧の特性例。
【図6】本実施形態の検出回路の変形例。
【図7】図7(A)〜図7(D)は電圧調整回路の構成例。
【図8】変形例の検出回路の被写体温度−出力電圧の特性例。
【図9】図9(A)、図9(B)はセンサーデバイスの構成例。
【図10】センサーデバイスの詳細な第1の構成例。
【図11】センサーデバイスの詳細な第2の構成例。
【図12】図12(A)〜図12(C)は第1、第2のP型トランジスタのレイアウト配置例。
【図13】図13(A)〜図13(C)は第1、第2のP型トランジスタのレイアウト配置例。
【図14】本実施形態の電子機器の構成例。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0036】
1.比較例
図1に、前述した非特許文献1の従来技術の回路構成を比較例として示す。この比較例の検出回路は、焦電素子10と、N型のデプレッション・トランジスターTNと、抵抗Rを含む。
【0037】
CPは焦電素子10の容量であり、RPは焦電素子10の抵抗である。焦電素子10には赤外線が入射されており、焦電素子10の焦電体(強誘電体)11には、焦電素子10の温度に応じた自発分極が発生している。そして電極12、13の表面電荷と電気的に中性を保っている。
【0038】
N型のデプレッション・トランジスターTNと抵抗Rは、VCCのノード(広義には高電位側電源ノード)とGNDのノード(広義には低電位側電源ノード)の間に直列に設けられ、ソースフォロワー回路が構成されている。
【0039】
N型トランジスターTNのゲートには、焦電素子10からの検出信号SD(検出電圧)が入力され、N型トランジスターTNのソースは、抵抗Rの一端に接続される。これらのトランジスターTNと抵抗Rによりソースフォロワー回路が構成され、そのゲインはほぼ1になる。そしてN型トランジスターTNのソースに対応する出力ノードNQから、検出信号SDの電圧変化に伴い変化する出力電圧VQが出力される。
【0040】
ここで、比較例の検出回路をIC基板上に製造するにあたり、特にソースフォロワー回路の出力特性のバラツキの要因となる項目としては、以下のような製造バラツキが存在する。例えば、トランジスターTNの電流供給能力のバラツキ、しきい値のバラツキ、形状のバラツキ、抵抗Rのシート抵抗値のバラツキ、抵抗Rの形状のバラツキなどである。
【0041】
そして、一般にIC基板上に製造される抵抗の特性バラツキは、トランジスターの特性バラツキに比べて変動が大きい。また製造条件の変動に依存した抵抗の特性変動とトランジスターの特性変動とは、連動しない。このため、図1の比較例の検出回路の出力電圧VQの特性バラツキは非常に大きくなる。
【0042】
例えば図2に、比較例の検出回路を赤外線検出回路として用いた場合の被写体温度−出力電圧の特性例を示す。図2において横軸は被写体温度であり、縦軸は被写体から発生した赤外線を受光した際の検出回路の出力電圧VQである。図2のA1、A2、A3、A4は、トランジスターTNや抵抗Rの特性が一般的なICの製造規格内でばらついた場合の検出回路の出力電圧特性を4通りプロットしたものである。
【0043】
具体的には、図2のA1、A2、A3、A4は、各々、ケース1、2、3、4での被写体温度−出力電圧の特性例である。ここでケース1は、抵抗Rの抵抗値RVが高くなり、トランジスターTNのゲート幅Wが大きくなり、ゲート長Lが小さくなり、しきい値電圧Vthが低くなり、ゲート膜厚FTCが薄くなった場合の特性である。ケース2は、RVが低くなり、Wが小さくなり、Lが大きくなり、Vthが低くなり、FTCが薄くなった場合の特性である。ケース3は、RVが高くなり、Wが大きくなり、Lが小さくなり、Vthが高くなり、FTCが厚くなった場合の特性である。ケース4は、RVが低くなり、Wが小さくなり、Lが大きくなり、Vthが高くなり、FTCが厚くなった場合の特性である。
【0044】
図2のA1、A2、A3、A4に示すように、比較例の検出回路では、出力電圧VQの被写体温度依存性よりも、各検出回路の素子特性のバラツキに起因する出力電圧VQの変動の方がはるかに大きい。このため検出回路の検出精度を維持できないという問題がある。
【0045】
特に、焦電素子をマトリクス状に配置してFPA(Focal Plane Array:焦点面アレイ)を構成した場合には、図1の検出回路がIC基板上に複数個配置される。そして、各検出回路の出力は行選択トランジスター等を介して束ねられ、増幅回路やA/D変換器に接続される。その際に、検出回路の出力電圧の被写体温度依存性よりも、各検出回路の特性バラツキに起因する出力電圧の変化の方が大きいと、複数の検出回路の出力を束ねて増幅回路で信号を増幅したり、A/D変換器で出力電圧をデジタルデータに変換したりすることが困難になる。即ち、複数の検出回路が1つの増幅回路やA/D変換器に接続された場合に、出力電圧の特性がばらついた全ての検出回路に対して、増幅回路やA/D変換器が安定して動作するように設計することは、極めて困難である。また、個々の焦電素子10に照射された赤外線の強度や、当該赤外線を放射した被写体の温度を判定することも極めて難しい。
【0046】
また図1のトランジスターTNと抵抗Rから構成されるソースフォロワー回路が動作するためには、トランジスターTNが安定的にオンしている必要がある。そしてトランジスターTNのゲート電圧はほぼ0Vである。従って、トランジスターTNがオンするためにはトランジスターTNのソース電圧、即ち検出回路の出力電圧VQが、トランジスターTNのしきい値の絶対値よりも十分低い電圧となるように設計する必要がある。
【0047】
一方、IC基板上にセンサーアレイを形成する場合、検出回路の出力を受ける増幅回路やA/D変換器は、CMOSプロセスにて、検出回路のGND端子と同一電位のGND端子に接続された小型の回路を設計することになる。この場合に、これらの回路の入力電圧が0V(=GND端子電位)に近づくと、回路の能力が低下したり、動作しなくなったりするなどの問題が発生する。
【0048】
2.検出回路の構成、動作
以上のような問題を解決する本実施形態の検出回路の構成例を図3に示す。この検出回路は焦電素子10を含む。またVCCとGNDの間に直列に設けられた第1のP型トランジスターTP1と第2のP型トランジスターTP2を含む。これらの第1、第2のP型トランジスターTP1、TP2によりソースフォロワー回路が構成される。即ち検出信号SDの小信号振幅変化に対して、ゲインがほぼ1となる振幅の電圧が出力電圧VQとして出力される。
【0049】
焦電素子10(熱検出素子、赤外線検出素子、センサー素子)は容量CPと抵抗RPによりその等価回路が構成され、焦電素子10の焦電体11には、赤外線の入射による温度の変化に応じた自発分極が発生している。
【0050】
第1のP型トランジスターTP1(P型MOSトランジスター)は、検出回路の出力ノードNQとGNDノード(低電位側電源ノード)との間に設けられる。例えば図3ではTP1のソースが出力ノードNQに接続され、ドレインがGNDノードに接続され、焦電素子10からの検出信号SDがゲートに入力される。
【0051】
第2のP型トランジスターTP2(P型MOSトランジスター)は、VCCノード(高電位側電源ノード)と出力ノードNQとの間に設けられる。例えば図3ではTP2のソースがVCCノードに接続され、ドレインが出力ノードNQに接続され、ゲートが基準電圧VR=Vcc−Vconstに設定される。ここでVccは、高電位側電源VCCの電圧を表し、Vconstは定電圧(固定電圧)である。
【0052】
なお、P型トラジスターTP1とTP2の間に他の回路素子(例えば後述する電圧調整回路、行選択トランジスター等)が設けられていてもよい。
【0053】
また、P型トランジスターTP1の基板電位はTP1のソースの電位に設定される。例えば図3ではTP1の基板電位は出力ノードNQに接続される。またP型トランジスターTP2の基板電位はTP2のソースの電位に設定される。例えば図3ではTP2の基板電位はVCCノードに接続される。このようにP型トランジスターTP1、TP2の基板電位をそのソース電位に設定することで、基板バイアス効果によるTP1、TP2のしきい値電圧の変動を防止できるため、TP1とTP2のしきい値電圧を、より近づけることが可能になる。なおP型トランジスターTP1、TP2の基板電位を共にVCCの電位に設定する変形実施も可能である。
【0054】
またP型トランジスターTP1とTP2とは、そのゲート長及びゲート幅の少なくとも一方が同一になっている。更に望ましくはTP1とTP2は、そのゲート長及びゲート幅の両方が同一になっている。このようにすれば、P型トランジスターTP1、TP2のしきい値電圧等の素子特性を近づけることが可能になり、製造プロセス変動等に起因する出力電圧VQの変動を抑制できる。
【0055】
また、後述するようにP型トランジスターTP1とTP2は隣接してレイアウト配置されていることが望ましい。このようにすれば、P型トランジスターTP1とTP2のしきい値電圧等の素子特性のバラツキを低減できるため、出力電圧VQのバラツキを更に低減できる。
【0056】
なお、隣接してレイアウト配置とは、例えばその間に他の回路素子(トランジスター、抵抗等)が配置されずにTP1とTP2が配置されることである。また第1のP型トランジスターTP1は、他の焦電素子の検出回路が有する第1のP型トランジスターと隣接して配置されていてもよい。同様に第2のP型トランジスターTP2は、他の焦電素子の検出回路が有する第2のP型トランジスターと隣接して配置されていてもよい。
【0057】
またP型トランジスターTP2は、後述するように、他の焦電素子の検出回路との間で共用されていてよい。即ち、P型トランジスターTP2が複数の検出回路の共通の電流源として共用されてもよい。このようにすることで、第2のP型トランジスターのレイアウト占有面積を最小限に抑えることが可能になる。
【0058】
次に本実施形態の検出回路の動作について更に詳細に説明する。図3に示すようにトランジスターTP2のゲートは基準電圧VR=Vcc−Vconstに設定されている。従って、トランジスターTP2のゲート・ソース間電圧はVconstであり、TP2は飽和領域で動作するため、TP2には、ほとんどゲート・ソース間電圧Vconstとしきい値電圧だけで決まる電流I1が流れる。
【0059】
一方、トランジスターTP1はトランジスターTP2に直列接続されているため、TP1には同じ電流I1が流れる。そしてトランジスターTP1の基板電位は、トランジスターTP2と同様にソース電位に設定されている。従って、トランジスターTP1のしきい値電圧とトランジスターTP2のしきい値電圧を等しくできる。更にトランジスターTP1は飽和領域で動作し、トランジスターTP1とTP2が同一のトランジスタサイズ(ゲート幅、ゲート長が同一)であるとすると、TP1のゲート・ソース間電圧は、TP2のゲート・ソース間電圧であるVconstとほぼ同じ電圧になる。また、トランジスターTP1のゲートは焦電素子10に接続され、TP1のゲートのノードNDとGNDの間には焦電素子10の抵抗RPが存在するため、ノードNDは定常的には0Vに設定される。従って、トランジスターTP1のソースノードである検出回路の出力ノードNQの電圧VQは、定常的にはVconstとほぼ同じ電圧に設定される。
【0060】
この状態で焦電素子10に赤外線が照射されて焦電素子10の温度が変化すると、発生した焦電流によりトランジスターTP1のゲート(ゲート容量)が過渡的に充電され、電圧がΔVだけ変動する。このとき、トランジスターTP1には、トランジスターTP2からの電流I1が流れるため、TP1のソース電圧であるVQは、VQ=Vconst+ΔVとなる。即ち、トランジスターTP1、TP2からなる回路はゲイン=1のソースフォロワー回路として動作する。
【0061】
以上のように本実施形態では、高電位側電源電圧としてVccが供給される場合に、P型トランジスターTP2のゲートは、基準電圧VR=Vcc−Vconstに設定される。そしてP型トランジスターTP1は、Vconstに対応する設定電圧を基準として、焦電素子10からの検出信号SDの電圧変化に伴い変化する電圧を、そのソースに出力する。例えば、焦電素子10の温度が変化して検出信号SDの電圧が0VからΔVだけ変化すると、出力電圧VQも、Vconstに対応する設定電圧を基準としてΔVだけ変化する。ここでVconstに対応する設定電圧は、Vconstそのものであってもよいし、Vconstと若干だけ異なる電圧であってもよい。即ち、後述する電圧調整回路やVconstの設定などにより、トランジスターTP1とTP2のソース・ドレイン電圧等が同一に設定される場合には、TP1とTP2のゲート・ソース間電圧は等しくなるため、Vconstに対応する設定電圧はVconstそのものになる。一方、トランジスターTP1とTP2のソース・ドレイン電圧等が同一でない場合には、その分だけ、VQの設定電圧はずれることになる。
【0062】
またP型トランジスターTP2(TP1)のしきい値電圧をVthとした場合に、Vth≦Vconst≦Vcc−Vthとなるように、電圧Vconstを設定することが望ましい。即ち、このような関係が成り立つ基準電圧VR=Vcc−Vconstを、P型トランジスターTP2のゲートに入力する。このようにすれば、トランジスターTP1、TP2を飽和領域で動作させることが可能になる。また出力電圧VQの設定電圧となるVconstがしきい値電圧Vth以上になるため、後段の増幅回路やA/D変換器に対して、しきい値電圧Vth以上の電圧を定常的に入力できるようになる。従って、後段の増幅回路やA/D変換器の設計を容易化でき、増幅回路やA/D変換器としてコンパクトで簡素な回路を使用することも可能になる。
【0063】
図4に強誘電体の焦電素子10のヒステリシスループの例を示す。E1は低温の場合のヒステリシスループであり、E2は高温の場合のヒステリシスループである。図4に示すように、高温の場合のヒステリシスループでの自発分極PR2(残留分極)は、低温の場合の自発分極PR1よりも小さくなる。
【0064】
赤外線が照射され、焦電素子10の温度が変化すると、温度変化量に応じて焦電素子10の自発分極が変化する。このとき焦電素子10の自発分極と電気的な中性状態を保つように電極12、13の表面電荷の移動が起こり、これにより焦電流が発生する。従って、焦電流の大きさは焦電素子10の温度変化量に依存する。発生した焦電流によりトランジスターTP1のゲート(ゲート容量)が充電され、焦電素子10の検出信号SDの到達電圧(ΔV)が変化する。従って、この到達電圧を、図3のトランジスターTP1、TP2からなるゲインが1のソースフォロワー回路を介して出力電圧VQとして出力することで、赤外線の照射による焦電素子10の温度の変化を検出できるようになる。
【0065】
以上のように本実施形態の赤外線の検出回路のソースフォロワー回路では、図1の比較例のような特性バラツキが大きい抵抗を負荷素子として使用していない。また、ソースフォロワー回路を構成する2つの素子は共にP型のMOSトランジスターであるため、製造条件の変動に依存した2つの素子の特性変動は連動し、検出回路の出力電圧VQの特性バラツキは小さくなる。
【0066】
またトランジスターTP1、TP2の基板電位は、その各々のソース端子に接続されている。従って、トランジスターTP1、TP2のしきい値電圧はほぼ等しくなるため、検出回路の出力電圧VQの特性バラツキを更に小さくできる。
【0067】
更にトランジスターTP1、TP2は同一のトランジスターサイズ(ゲート長、ゲート幅)に設定され、直列接続されたトランジスターTP1、TP2には同一の電流I1が流れ、共に飽和領域で動作する。またトランジスターサイズが同一に設定されることで、しきい値電圧の微小な差は更に小さくなる。このため、これらのトランジスターTP1、TP2は、例えばソース・ドレイン間電圧以外の全てのパラメーターがほぼ等しい状態で動作する。従って、検出回路の出力電圧VQの特性バラツキは更に小さくなる。
【0068】
例えば図5に、本実施形態の検出回路を赤外線検出回路として用いた場合の被写体温度−出力電圧の特性例を示す。図5のB1、B2、B3、B4は、トランジスターTP1、TP2の特性が一般的なICの製造規格内でばらついた場合の検出回路の出力電圧特性を4通りプロットしたものである。図5のB1、B2、B3、B4は図2のA1、A2、A3、A4のケース1、2、3、4に相当する。
【0069】
図5から理解されるように、本実施形態の検出回路では、出力電圧の被写体温度依存性に対し、個々の検出回路の特性バラツキによる出力電圧の変化は十分に小さい。従って、本実施形態の検出回路の出力を入力とする増幅回路やA/D変換器などの回路が、接続された複数の全ての検出回路(特性がばらついた回路)に対して、安定して動作するように設計可能になる。従って、設計の容易化を図れ、増幅回路やA/D変換器としてコンパクトで簡素な回路を採用できるようになる。
【0070】
また赤外線の検出回路の出力電圧を安定してデジタルデーターとして取得できれば、個々の検出回路の出力電圧のバラツキは、十分にソフトウエアで補正できる範囲内になるため、個々の焦電素子10に照射された赤外線の強度や、当該赤外線を放射した被写体の温度を高精度で判定することが可能になる。
【0071】
更に、後述するようにトランジスターTP1、TP2は隣接してレイアウト配置されるため、2つのトランジスターTP1、TP2の特性バラツキは更に小さくなり、検出回路の出力電圧の特性バラツキも更に小さくなる。
【0072】
また、基準電圧VR=Vcc−Vconstの定電圧Vconstは、トランジスターTP1、TP2が飽和領域で動作する範囲内で設計者が自由に設定することができる。このため、本実施形態の検出回路の出力電圧VQは、図1の比較例の検出回路に比べて十分に高い電圧に設定できる。従って、検出回路の出力電圧を受ける増幅回路やA/D変換器の回路では、その入力電圧が0V(=GNDの電位)に近づくことで回路の能力が低下したり、動作しなくなったりするという問題は発生しないようになり、回路動作を安定化できる。
【0073】
なお前述した特許文献1の検出回路では、直列接続されたP型トランジスターとN型トランジスターによりソース接地回路が構成される。しかしながら、このような構成のソース接地回路では、P型トランジスターとN型トランジスターのしきい値電圧が相殺することはなく、これらのP型トランジスターとN型トランジスターの特性バラツキが原因で検出回路の出力電圧が変動してしまう。
【0074】
これに対して本実施形態の検出回路では、P型トランジスターTP1とTP2のしきい値電圧等が相殺されて、これらのしきい値電圧等の特性バラツキが出力電圧のバラツキとして現れることを抑制できる。従って、特許文献1の検出回路に比べて、出力電圧のバラツキを低減でき、赤外線の検出精度等を向上できる。
【0075】
3.変形例
本実施形態の検出回路は図3の構成に限定されず、種々の変形実施が可能である。例えば図6に本実施形態の検出回路の変形例を示す。この変形例では、図3の構成に対して電圧調整回路20が更に設けられている。
【0076】
電圧調整回路20は、P型トランジスターTP2のドレイン・ソース間電圧を調整するための回路であり、P型トランジスターTP2と出力ノードNQとの間に設けられる。即ち電圧調整回路20は、P型トランジスターTP1とTP2のドレイン・ソース間電圧を近づける電圧調整を行う。
【0077】
例えば図7(A)〜図7(D)に電圧調整回路20の具体的な構成例を示す。図7(A)では、ノードNAとNQの間に設けられる電圧調整回路20が、抵抗RAにより実現されている。図7(B)では、そのソースがノードNAに接続され、そのゲート及びドレインがノードNQに接続されるダイオード接続のP型トランジスターTP3により、電圧調整回路20が実現されている。図7(C)では、そのソースがノードNAに接続され、そのドレインがノードNQに接続され、そのゲートに基準電圧VR2=Vcc−Vconst2が入力されるP型トランジスターTP4により、電圧調整回路20が実現されている。図7(D)では、そのドレインがノードNAに接続され、そのソースがノードNQに接続され、そのゲートに基準電圧VR3=Vconst3が入力されるN型トランジスターTN1により、電圧調整回路20が実現されている。なおVconst2、Vconst3は、Vconstと異なる電圧であってもよい、同じ電圧であってもよい。
【0078】
図6のような電圧調整回路20を設けることで、トランジスターTP1とTP2のドレイン・ソース間電圧が近づくようになり、例えばこれらのドレイン・ソース間電圧を同一に設定することも可能になる。
【0079】
そして例えばトランジスターTP1、TP2のドレイン・ソース間電圧が同一になれば、トランジスターTP1、TP2には同じ電流値の電流I1が流れるため、トランジスターTP1、TP2のゲート・ソース間電圧を同一にできる。従って、トランジスターTP2のゲートにVR=Vcc−Vconstを入力した場合には、トランジスターTP1のソースであるノードNQには、Vconstの電圧が定常的に出力されるようになる。即ち、焦電素子10からの検出信号SDの電圧がΔVだけ変化すると、ノードNQの出力電圧VQは、Vconstを基準にΔVだけ変化するようになる。このように出力電圧VQの設定電圧が正確にVconstに設定されれば、後段の増幅回路やA/D変換器などの回路設計を簡素化できる。
【0080】
また電圧調整回路20を設けることで、トランジスターTP1、TP2のドレイン・ソース間電圧が近づけば、トランジスターTP1、TP2間の素子特性の差を更に小さくすることが可能になり、これらの素子特性が相殺されることで、出力電圧VQのバラツキを更に低減できる。
【0081】
例えば図8に、図6の検出回路を採用した場合の被写体温度−出力電圧の特性例を示す。図8は、図2、図5と同様に、トランジスターTP1、TP2等の特性が一般的なICの製造規格内でばらついた場合の検出回路の出力電圧特性を4通りプロット(ケース1〜4)したものである。
【0082】
図6のような電圧調整回路20を設ければ、図8と図5を比較すれば明らかなように、出力電圧VQの変動バラツキを更に低減することが可能になり、検出回路による温度検出等の検出精度を更に向上できる。
【0083】
4.センサーデバイス
図9(A)に本実施形態のセンサーデバイスの構成例を示す。このセンサーデバイスは、センサーアレイ100と、行選択回路(行ドライバー)110と、読み出し回路120を含む。またA/D変換部130、制御回路150を含むことができる。このセンサーデバイスを用いることで、例えばナイトビジョン機器などに用いられる赤外線カメラなどを実現できる。
【0084】
センサーアレイ100(焦点面アレイ)には、複数のセンサーセルが配列(配置)される。また複数の行線(ワード線、走査線)と複数の列線(データ線)が設けられる。なお列線の本数が1本であってもよい。列線が1本である場合には、列線に沿った方向(縦方向)に複数のセンサーセルが配列されたラインセンサーが構成される。
【0085】
センサーアレイ100の各センサーセルは、各行線と各列線の交差位置に対応する場所に配置(形成)される。例えば図9(B)のセンサーセルは、行線WL1と列線DL1の交差位置に対応する場所に配置されている。他のセンサーセルも同様である。
【0086】
行選択回路110は、1又は複数の行線に接続される。そして各行線の選択動作を行う。例えば図9(B)のようなQVGA(320×240画素)のセンサーアレイ100(焦点面アレイ)を例にとれば、行線WL0、WL1、WL2・・・・WL239を順次選択(走査)する動作を行う。即ちこれらの行線を選択する信号(ワード選択信号)をセンサーアレイ100に出力する。
【0087】
読み出し回路120は、複数の列線に接続される。そして各列線の読み出し動作を行う。QVGAのセンサーアレイ100を例にとれば、列線DL0、DL1、DL2・・・・DL319からの検出信号(検出電流、検出電荷)を読み出す動作を行う。例えば読み出し回路120には、複数の列線の各列線に対応して各増幅回路が設けられる。そして、各増幅回路は、対応する列線の信号の増幅処理を行う。
【0088】
A/D変換部130は、読み出し回路120において取得された検出電圧(測定電圧、到達電圧)をデジタルデータにA/D変換する処理を行う。そしてA/D変換後のデジタルデータDOUTを出力する。具体的には、A/D変換部130には、複数の列線の各列線に対応して各A/D変換器が設けられる。そして、各A/D変換器は、対応する列線において読み出し回路120により取得された検出電圧のA/D変換処理を行う。なお、複数の列線に対応して1つのA/D変換器を設け、この1つのA/D変換器を用いて、複数の列線の検出電圧を時分割にA/D変換してもよい。また読み出し回路120の増幅回路を設けないで、各列線の信号を直接にA/D変換部130の各A/D変換器に入力するようにしてもよい。
【0089】
制御回路150(タイミング生成回路)は、各種の制御信号を生成して、行選択回路110、読み出し回路120、A/D変換部130に出力する。例えば、各回路のタイミングを制御する信号などを生成して出力する。
【0090】
図10に本実施形態のセンサーデバイスの詳細な第1の構成例を示す。図10では主にセンサーアレイ100の詳細な構成が示されている。
【0091】
図10において、SC00〜SCnmはアレイ状に配置されたセンサーセルである。またWL0〜WLmは行線(行選択線)であり、DL0〜DLnは列線(列データ線)である。またQC0〜QCnは、列線DL0〜DLnに接続される増幅回路であり、列線DL0〜DLnの電圧を増幅した信号をDQ0〜DQnとして出力する。なお、QC0〜QCnは、列線DL0〜DLnの電圧を直接にA/D変換するA/D変換器であってもよい。
【0092】
複数のセンサーセルSC00〜SCnmの各センサーセルは、焦電素子10と、第1、第2のP型トランジスターTP1、TP2を含む。また行選択トランジスターTSを含む。
【0093】
第1のP型トランジスターTP1は、各センサーセルに対応する対応列線への出力ノードNQとGNDノード(低電位側電源ノード)との間に設けられる。そして焦電素子10からの検出信号がTP1のゲートに入力される。
【0094】
第2のP型トランジスターTP2は、VCCノード(高電位側電源ノード)と出力ノードNQとの間に設けられる。そしてTP2のゲートが基準電圧VR(Vcc−Vconst)に設定される。この基準電圧VRは基準電圧生成回路30により生成されて、センサーセルSC00〜SCnmに供給される。
【0095】
行選択トランジスターTSは、出力ノードNQと各センサーセルの対応列線との間に設けられる。そして各センサーセルに対応する対応行線がTSのゲートに接続される。そして対応列線に対応して設けられる複数のセンサーセルの各センサーセルが、行選択トランジスターTSを介して対応列線に接続される。即ち、各センサーセルの行選択トランジスターTSは、行線WL0〜WLmのうち、そのセンサーセルに対応する対応行線が接続される。そして、その対応行線が例えばHレベルになることで、行選択トランジスターTSがオンになり、そのセンサーセルの出力ノードNQとそのセンサーセルの対応列線が接続されるようになる。
【0096】
例えばセンサーセルSC00〜SC0mは、SC00〜SC0mの対応列線DL0に接続される。具体的には、SC00〜SC0mの各センサーセルの出力ノードNQは行選択トランジスターTSを介して対応列線DL0に接続される。同様にセンサーセルSC10〜SC1mは、SC10〜SC1mの対応列線DL1に接続される。具体的には、SC10〜SC1mの各センサーセルの出力ノードNQは行選択トランジスターTSを介して対応列線DL1に接続される。他のセンサーセルSCn0〜SCnm等も同様である。
【0097】
また行線WL0に対応して設けられるセンサーセルSC00、SC10・・・SCn0の行選択トランジスターTSは、行線WL0がHレベルになるとオンになる。すると、センサーセルSC00、SC10・・・SCn0の出力ノードNQは、各々の対応列線DL0、DL1・・・DLnに接続される。これによりセンサーセルSC00、SC10・・・SCn0からの信号が読み出されて、対応列線DL0、DL1・・・DLnに出力され、増幅回路QC0〜QCnにより増幅されて、信号DQ0〜DQnとして出力される。
【0098】
また行線WL1に対応して設けられるセンサーセルSC01、SC11・・・SCn1の行選択トランジスターTSは、行線WL1がHレベルになるとオンになる。これにより、センサーセルSC01、SC11・・・SCn1の出力ノードNQは、各々の対応列線DL0、DL1・・・DLnに接続される。これによりセンサーセルSC01、SC11・・・SCn1からの信号が読み出されて、対応列線DL0、DL1・・・DLnに出力され、増幅回路QC0〜QCnにより増幅されて、信号DQ0〜DQnとして出力される。他の行線WLm等に接続されるセンサーセルの動作も同様である。
【0099】
図10の第1の構成例によれば、各センサーセルに対して2つのP型トランジスターTP1、TP2が設けられるため、各センサーセルにおけるトランジスターの占有面積は増加する。しかしながら、例えば、強誘電体膜等により構成される焦電素子10の下方等にトランジスターが形成され、トランジスターの占有面積よりも焦電素子10の占有面積の方が大きい場合がある。このような場合には、図10のように各センサーセルにP型トランジスターTP1、TP2を設けても、それほど問題は生じない。
【0100】
一方、図10のように各センサーセルにP型トランジスターTP1、TP2を設ける手法によれば、P型トランジスターTP1、TP2の製造条件等を均等にできるため、TP1、TP2のしきい値電圧等の回路特性をほぼ同じにすることができ、出力電圧のバラツキを、より低減できるという利点がある。
【0101】
図11に本実施形態のセンサーデバイスの詳細な第2の構成例を示す。図11の第2の構成例は、図10の第1の構成例とセンサーセルの構成が異なる。また図11では列線DL0〜DLnに接続される電流源回路40が更に設けられている。
【0102】
SC00〜SCnmの各センサーセルは、焦電素子10と第1のP型トランジスターTP1を含む。第1のP型トランジスターTP1は、各センサーセルに対応する対応列線への出力ノードNQとGNDノードとの間に設けられ、焦電素子10からの検出信号がゲートに入力される。
【0103】
またSC00〜SCnmの各センサーセルは、行選択トランジスターTSを含む。行選択トランジスターTSは、出力ノードNQと各センサーセルの対応列線との間に設けられる。そして各センサーセルに対応する対応行線がTSのゲートに接続される。即ち、各センサーセルの行選択トランジスターTSは、行線WL0〜WLmのうち、そのセンサーセルに対応する対応行線が接続される。そして、その対応行線が例えばHレベルになることで、その行選択トランジスターTSがオンになり、そのセンサーセルの出力ノードNQとそのセンサーセルの対応列線が接続されるようになる。
【0104】
電流源回路40は、第2のP型トランジスターTPC0〜TPCnを含む。この第2のP型トランジスターTPC0〜TPCnは、図3の第2のP型トランジスターTP2に対応するものである。即ち図11では、TPC0〜TPCnの各P型トランジスターが、対応列線に接続されるセンサーセルの第2のP型トランジスターとして共用されており、電流源回路40のTPC0〜TPCnの各P型トランジスターとセンサーセルのP型トランジスターTP1とによりソースフォロワー回路が構成される。
【0105】
なお図11では、電流源回路40に、複数のP型トランジスターTPC0〜TPCnが設けられているが、列線の本数が1本であるラインセンサーの場合には、その1本の列線に接続される1つの第2のP型トランジスターを設ければよい。
【0106】
TPC0〜TPCnの各P型トランジスターは、VCCノードと対応列線との間に設けられる。そしてゲートが基準電圧VR(=Vcc−Vconst)に設定され、対応列線を介してSC00〜SCnmの各センサーセルに電流(定電流)を供給する。例えばP型トランジスターTPC0は、VCCノードと対応列線DL0との間に設けられ、対応列線DL0のセンサーセルSC00〜SC0mに電流を供給する。P型トランジスターTPC1は、VCCノードと対応列線DL1との間に設けられ、対応列線DL1のセンサーセルSC10〜SC1mに電流を供給する。他のP型トランジスターTPCn等も同様である。
【0107】
例えば行線WL0に対応して設けられるセンサーセルSC00、SC10・・・SCn0の行選択トランジスターTSは、行線WL0がHレベルになるとオンになる。すると、センサーセルSC00、SC10・・・SCn0の出力ノードNQは、各々の対応列線DL0、DL1・・・DLnに接続される。これにより、電流源回路40のP型トランジスターTPC0〜TPCnからの定電流がセンサーセルSC00、SC10・・・SCn0のP型トランジスターTP1に流れ、図3の検出回路と同様の動作が実現される。そして、センサーセルSC00、SC10・・・SCn0からの信号が読み出されて、対応列線DL0、DL1・・・DLnに出力され、増幅回路QC0〜QCnにより増幅されて、信号DQ0〜DQnとして出力される。行線WL1〜WLmに接続されるセンサーセルSC01〜SCnmの動作も同様である。
【0108】
図11の第2の構成例によれば、第2のP型トランジスターTPC0〜TPCnが、複数の検出回路で共用される。従って、各センサーセルに対して1つのP型トランジスターTP1だけを設ければ済むため、各センサーセルにおけるトランジスターの占有面積を図10の第1の構成例に比べて小さくできる。但し、P型トランジスターTP1とTPC0〜TPCnが、図10の第1の構成例に比べて離れた位置にレイアウト配置される。このためP型トランジスターTP1とTPC0〜TPCnの製造条件等がばらつき、図10の第1の構成例よりも出力電圧のバラツキが増えてしまうおそれもある。
【0109】
5.レイアウト配置
図12(A)〜図13(C)に第1のP型トランジスターTP1と第2のP型トランジスターTP2、TPC(TPC0〜TPCn)のレイアウト配置例を示す。
【0110】
図12(A)〜図12(C)は、図3のように第1、第2のP型トランジスターTP1、TP2(TPC)の基板電位がソース電位に設定される場合のレイアウト配置例である。NWLはNウェル領域であり、N+はN型拡散領域であり、P+はP型拡散領域であり、POLYはゲートを形成するポリシリコン配線である。
【0111】
P型トランジスターTP1が形成されるN型ウェルNWLは、N型拡散領域N+を介してTP1のソース電位に設定される。即ち、TP1が形成されるN型ウェルNWLは図3の出力ノードNQに電気的に接続される。一方、P型トランジスターTP2(TPC)が形成されるN型ウェルNWLは、N型拡散領域N+を介してTP2(TPC)のソース電位に設定される。即ちTP2(TPC)が形成されるN型ウェルNWLはVCCノードに電気的に接続される。
【0112】
このように図12(A)〜図12(C)では、各P型トランジスターTP1、TP2(TPC)ごとにN型ウェルNWLが分離して形成されるため、P型トランジスターTP1、TP2(TPC)の基板電位をそのソース電位に設定できるようになる。従って、基板バイアス効果によるしきい値電圧の変動を防止でき、TP1とTP2(TPC)のしきい値電圧を、より近づけることが可能になる。
【0113】
図12(A)、図12(B)は、図10の第1の構成例でのレイアウト配置例である。図12(A)、図12(B)では図10の各センサーセルに設けられる第1、第2のP型トランジスターTP1、TP2が隣接してレイアウト配置される。即ち、TP1とTP2が、その間に他の回路素子を介さずに配置される。また例えば隣り合うセンサーセルのP型トランジスターTP1、TP2を隣接してレイアウト配置してもよい。
【0114】
図12(C)は、図11の第2の構成例でのレイアウト配置例である。図12(C)では、図11の各センサーセルに設けられる第1のP型トランジスターTP1と電流源回路40に設けられる第2のP型トランジスターTPC(TPC0〜TPCn)が隣接してレイアウト配置される。また例えば隣り合うセンサーセルのP型トランジスターTP1が隣接してレイアウト配置される。
【0115】
図13(A)〜図13(C)は、第1、第2のP型トランジスターTP1、TP2(TPC)の基板電位が高電位側電源VCCの電位に設定される場合のレイアウト配置例である。
【0116】
図13(A)〜図13(C)では、全てのP型トランジスターTP1、TP2(TPC)が、共通のN型ウェルNWLに形成される。そして、このN型ウェル領域NWLは、N型拡散領域N+を介してVCCの電位に設定される。このレイアウト配置では、図12(A)〜図12(C)とは異なり、基板バイアス効果によるしきい値電圧の変動が生じるが、レイアウト面積を縮小化することも可能になる。
【0117】
なお本実施形態のP型トランジスターTP1、TP2(TPC)のレイアウト配置は図12(A)〜図13(C)には限定されない。例えば各トランジスターの配置位置や配置方向やサイズ、Nウェル領域やN型拡散領域N+やP型拡散領域P+の配置位置や配置方向やサイズなどについては種々の変形実施が可能である。
【0118】
6.電子機器
図14に本実施形態のセンサーデバイスや検出回路を含む電子機器の構成例を示す。この電子機器は、光学系200、センサーデバイス210(検出回路)、画像処理部220、処理部230、記憶部240、操作部250、表示部260を含む。なお本実施形態の電子機器は図14の構成に限定されず、その構成要素の一部(例えば光学系、操作部、表示部等)を省略したり、他の構成要素を追加したりするなどの種々の変形実施が可能である。
【0119】
光学系200は、例えば1又は複数のレンズや、これらのレンズを駆動する駆動部などを含む。そしてセンサーデバイス210への物体像の結像などを行う。また必要であればフォーカス調整なども行う。
【0120】
センサーデバイス210は、図9(A)〜図11等で説明したものであり、物体像の撮像処理を行う。画像処理部220は、センサーデバイス210からのデジタルの画像データ(画素データ)に基づいて、画像補正処理などの各種の画像処理を行う。なおイメージセンサーとなるセンサーデバイス210の代わりに、図3、図6等で説明した検出回路を用いてもよい。
【0121】
処理部230は、電子機器の全体の制御を行ったり、電子機器内の各ブロックの制御を行ったりする。この処理部230は、例えばCPU等により実現される。記憶部240は、各種の情報を記憶するものであり、例えば処理部230や画像処理部220のワーク領域として機能する。操作部250は、ユーザが電子機器を操作するためのインターフェースとなるものであり、例えば各種ボタンやGUI(Graphical User Interface)画面などにより実現される。表示部260は、例えばセンサーデバイス210により取得された画像やGUI画面などを表示するものであり、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの各種のディスプレイや投写型表示装置などにより実現される。
【0122】
なお本実施形態は、FPA(Focal Plane Array:焦点面アレイ)を用いた赤外線カメラや赤外線カメラを用いた電子機器に適用できる。赤外線カメラを適用した電子機器としては、例えば夜間の物体像を撮像するナイトビジョン機器、物体の温度分布を取得するサーモグラフィー機器、人の侵入を検知する侵入検知機器、物体の物理情報の解析(測定)を行う解析機器(測定機器)、火や発熱を検知するセキュリティー機器、工場などに設けられるFA(Factory Automation)機器などが想定できる。ナイトビジョン機器を車載機器に適用すれば、車の走行時に夜間の人等の姿を検知して表示することができる。またサーモグラフィー機器に適用すれば、インフルエンザ検疫等に利用することができる。
【0123】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語(高電位側電源ノード、低電位側電源ノード等)と共に記載された用語(VCCノード、GNDノード)は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また検出回路、センサーデバイス、電子機器の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定に限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0124】
TP1 第1のP型トランジスター、
TP2、TPC、TPC0〜TPCn 第2のP型トランジスター、
CP 容量、RP、R 抵抗、SD 検出信号、VQ 出力電圧、
ND 検出信号のノード、NQ 出力ノード、VR 基準電圧、
WL0〜WLm 行線、DL0〜DLn 列線、
10 焦電素子、20 電圧調整回路、30 基準電圧生成回路、40 電流源回路、
100 センサーアレイ、110 行選択回路、120 読み出し回路、
130 A/D変換部、150 制御回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出回路、センサーデバイス及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、焦電素子等を用いた赤外線の検出回路が知られている。例えば人体からは、波長が10μm付近の赤外線が輻射されており、これを検出することで人体の存在や温度の情報を非接触で取得できる。従って、このような赤外線の検出回路を利用することで、侵入検知や物理量計測を実現できる。
【0003】
赤外線の検出回路の従来技術としては例えば非特許文献1、特許文献1に開示される技術が知られている。非特許文献1の従来技術では、直列接続されたトランジスター(JFET)と抵抗とから構成されるソースフォロワー回路により、焦電素子の焦電流を検出している。
【0004】
また特許文献1の従来技術では、負荷素子として機能するP型トランジスターと増幅素子として機能するN型トランジスターが直列接続されることで、ソース接地増幅回路が構成され、このソース接地増幅回路により焦電素子の焦電流を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−68863号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Daisuke Akai et al. , “Pyroelectric infrared sensors with fast response time and high sensitivity using epitaxial PbZr, TiO3 films on epitaxial γ-Al2O3/Si substrates”, Sensors and Actuators A: Physical, Volumes 130-131, 14 August 2006, Pages 111-115, Elsevier Science B.V.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの従来技術では、検出回路を構成する抵抗やトランジスターなどの回路素子の特性バラツキが原因で、検出回路の出力電圧のバラツキが非常に大きくなってしまうという課題があった。
【0008】
本発明の幾つかの態様によれば、素子特性バラツキを原因とする出力電圧のバラツキを低減できる検出回路、センサーデバイス及び電子機器等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、焦電素子と、検出回路の出力ノードと低電位側電源ノードとの間に設けられ、前記焦電素子からの検出信号がゲートに入力される第1のP型トランジスターと、高電位側電源ノードと前記出力ノードとの間に設けられ、ゲートが基準電圧に設定される第2のP型トランジスターとを含む検出回路に関係する。
【0010】
本発明の一態様によれば、焦電素子と、焦電素子からの検出信号がゲートに入力される第1のP型トランジスターと、ゲートが基準電圧に設定される第2のP型トランジスターが設けられる。そして第1、第2のP型トランジスターによりソースフォロワー回路が構成され、第1のP型トランジスターのゲートに入力される検出信号に対応する出力電圧が、出力ノードに出力される。このような構成の検出回路によれば、第1、第2のP型トランジスターのしきい値電圧等の特性バラツキの影響が出力電圧に及ぶのを抑制できるため、素子特性のバラツキを原因とする出力電圧のバラツキの低減が可能になる。
【0011】
また本発明の一態様では、前記第1のP型トランジスターの基板電位は、前記第1のP型トランジスターのソースの電位に設定され、前記第2のP型トランジスターの基板電位は、前記第2のP型トランジスターのソースの電位に設定されてもよい。
【0012】
このようにすれば、基板バイアス効果による第1、第2のP型トランジスターのしきい値電圧の変動を防止できるため、出力電圧のバラツキを更に低減できる。
【0013】
また本発明の一態様では、前記第1のP型トランジスターと前記第2のP型トランジスターとは、ゲート長及びゲート幅の少なくとも一方が同一であってもよい。
【0014】
このようにすれば、第1、第2のP型トランジスターのしきい値電圧等の素子特性を近づけることが可能になり、出力電圧のバラツキを更に低減できる。
【0015】
また本発明の一態様では、前記第1のP型トランジスターと前記第2のP型トランジスターは隣接してレイアウト配置されてもよい。
【0016】
このようにレイアウト配置すれば、製造プロセス変動等による第1、第2のP型トランジスターの素子特性のバラツキを低減できるため、出力電圧のバラツキを更に低減できる。
【0017】
また本発明の一態様では、前記第2のP型トランジスターは、他の焦電素子の検出回路との間で共用されてもよい。
【0018】
このように第2のP型トランジスターを共用すれば、トランジスターのレイアウト面積の縮小化等を図れる。
【0019】
また本発明の一態様では、前記高電位側電源ノードに対して高電位側電源電圧Vccが供給され、前記第2のP型トランジスターのゲートの電圧が前記基準電圧としてVcc−Vconstに設定され、前記第1のP型トランジスターは、電圧Vconstに対応する設定電圧を基準として、前記焦電素子からの前記検出信号の電圧変化に伴い変化する電圧をソースに出力してもよい。
【0020】
このようにすれば、電圧Vconstに対応する設定電圧を基準に、検出回路の出力電圧が変化させることが可能になる。
【0021】
また本発明の一態様では、前記第1のP型トランジスターのしきい値電圧をVthとした場合に、Vth≦Vconst≦Vcc−Vthであってもよい。
【0022】
このようにすれば、第1、第2のP型トランジスターを飽和領域で動作させることが可能になる。また出力電圧をしきい値電圧Vth以上に設定することが可能になり、後段の回路の設計の容易化等を図れる。
【0023】
また本発明の一態様では、前記第2のP型トランジスターと前記出力ノードとの間に設けられ、前記第2のP型トランジスターのドレイン・ソース間電圧を調整する電圧調整回路を含んでもよい。
【0024】
このような電圧調整回路を設ければ、第1、第2のP型トランジスターのドレイン・ソース間電圧を近づけることが可能になり、第1、第2のP型トランジスターの素子特性の差を更に小さくすることが可能になる。
【0025】
また本発明の他の態様は、上記のいずれかの検出回路を含むセンサーデバイスに関係する。
【0026】
また本発明の他の態様は、複数のセンサーセルが配列されるセンサーアレイと、複数の行線と、1又は複数の列線と、前記複数の行線に接続される行選択回路と、前記1又は複数の列線に接続される読み出し回路とを含み、前記複数のセンサーセルの各センサーセルは焦電素子と、前記各センサーセルに対応する対応列線への出力ノードと低電位側電源ノードとの間に設けられ、前記焦電素子からの検出信号がゲートに入力される第1のP型トランジスターと、高電位側電源ノードと前記出力ノードとの間に設けられ、ゲートが基準電圧に設定される第2のP型トランジスターとを含むセンサーデバイスに関係する。
【0027】
本発明の他の態様によれば、各センサーセルには、焦電素子と、焦電素子からの検出信号がゲートに入力される第1のP型トランジスターと、ゲートが基準電圧に設定される第2のP型トランジスターが設けられる。そして第1、第2のP型トランジスターによりソースフォロワー回路が構成され、第1のP型トランジスターのゲートに入力される検出信号に対応する出力電圧が、出力ノードに出力されるようになる。このような構成のセンサーデバイスによれば、第1、第2のP型トランジスターのしきい値電圧等の特性バラツキの影響が出力電圧に及ぶのを抑制できるため、センサーセルからの出力電圧のバラツキの低減が可能になる。
【0028】
また本発明の他の態様は、複数のセンサーセルが配列されるセンサーアレイと、複数の行線と、1又は複数の列線と、前記複数の行線に接続される行選択回路と、前記1又は複数の列線に接続される読み出し回路と、前記1又は複数の列線に接続される電流源回路とを含み、前記複数のセンサーセルの各センサーセルは、焦電素子と、前記各センサーセルに対応する対応列線への出力ノードと低電位側電源ノードとの間に設けられ、前記焦電素子からの検出信号がゲートに入力される第1のP型トランジスターとを含み、前記電流源回路は、高電位側電源ノードと前記対応列線との間に設けられ、ゲートが基準電圧に設定され、前記対応列線を介して前記各センサーセルに電流を供給する第2のP型トランジスターを含むセンサーデバイスに関係する。
【0029】
本発明の他の態様によれば、各センサーセルには、焦電素子と、焦電素子からの検出信号がゲートに入力される第1のP型トランジスターが設けられる。また電流源回路には、各対応列線に対応して第2のP型トランジスターが設けられる。そしてこれらの第1、第2のP型トランジスターによりソースフォロワー回路が構成され、第1のP型トランジスターのゲートに入力される検出信号に対応する出力電圧が、出力ノードに出力されるようになる。このような構成のセンサーデバイスによれば、第1、第2のP型トランジスターのしきい値電圧等の特性バラツキの影響が出力電圧に及ぶのを抑制できるため、センサーセルからの出力電圧のバラツキの低減が可能になる。
【0030】
また本発明の他の態様では、前記各センサーセルは、前記出力ノードと前記対応列線との間に設けられ、前記各センサーセルに対応する対応行線がゲートに接続される行選択トランジスターを含み、前記対応列線に対応して設けられる複数のセンサーセルの各センサーセルが、前記行選択トランジスターを介して前記対応列線に接続されてもよい。
【0031】
このようにすれば、対応行線により行選択トランジスタのオン・オフ制御を行うことで、各センサーセルを行選択トランジスターを介して対応列線に接続して出力電圧を読み出すことが可能になる。
【0032】
また本発明の他の態様は、上記のいずれかに記載の検出回路を含む電子機器に関係する。
【0033】
また本発明の他の態様は、上記のいずれかに記載のセンサーデバイスを含む電子機器に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】比較例の検出回路の説明図。
【図2】比較例の検出回路の被写体温度−出力電圧の特性例。
【図3】本実施形態の検出回路の構成例。
【図4】焦電素子のヒステリシスループの例。
【図5】本実施形態の検出回路の被写体温度−出力電圧の特性例。
【図6】本実施形態の検出回路の変形例。
【図7】図7(A)〜図7(D)は電圧調整回路の構成例。
【図8】変形例の検出回路の被写体温度−出力電圧の特性例。
【図9】図9(A)、図9(B)はセンサーデバイスの構成例。
【図10】センサーデバイスの詳細な第1の構成例。
【図11】センサーデバイスの詳細な第2の構成例。
【図12】図12(A)〜図12(C)は第1、第2のP型トランジスタのレイアウト配置例。
【図13】図13(A)〜図13(C)は第1、第2のP型トランジスタのレイアウト配置例。
【図14】本実施形態の電子機器の構成例。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0036】
1.比較例
図1に、前述した非特許文献1の従来技術の回路構成を比較例として示す。この比較例の検出回路は、焦電素子10と、N型のデプレッション・トランジスターTNと、抵抗Rを含む。
【0037】
CPは焦電素子10の容量であり、RPは焦電素子10の抵抗である。焦電素子10には赤外線が入射されており、焦電素子10の焦電体(強誘電体)11には、焦電素子10の温度に応じた自発分極が発生している。そして電極12、13の表面電荷と電気的に中性を保っている。
【0038】
N型のデプレッション・トランジスターTNと抵抗Rは、VCCのノード(広義には高電位側電源ノード)とGNDのノード(広義には低電位側電源ノード)の間に直列に設けられ、ソースフォロワー回路が構成されている。
【0039】
N型トランジスターTNのゲートには、焦電素子10からの検出信号SD(検出電圧)が入力され、N型トランジスターTNのソースは、抵抗Rの一端に接続される。これらのトランジスターTNと抵抗Rによりソースフォロワー回路が構成され、そのゲインはほぼ1になる。そしてN型トランジスターTNのソースに対応する出力ノードNQから、検出信号SDの電圧変化に伴い変化する出力電圧VQが出力される。
【0040】
ここで、比較例の検出回路をIC基板上に製造するにあたり、特にソースフォロワー回路の出力特性のバラツキの要因となる項目としては、以下のような製造バラツキが存在する。例えば、トランジスターTNの電流供給能力のバラツキ、しきい値のバラツキ、形状のバラツキ、抵抗Rのシート抵抗値のバラツキ、抵抗Rの形状のバラツキなどである。
【0041】
そして、一般にIC基板上に製造される抵抗の特性バラツキは、トランジスターの特性バラツキに比べて変動が大きい。また製造条件の変動に依存した抵抗の特性変動とトランジスターの特性変動とは、連動しない。このため、図1の比較例の検出回路の出力電圧VQの特性バラツキは非常に大きくなる。
【0042】
例えば図2に、比較例の検出回路を赤外線検出回路として用いた場合の被写体温度−出力電圧の特性例を示す。図2において横軸は被写体温度であり、縦軸は被写体から発生した赤外線を受光した際の検出回路の出力電圧VQである。図2のA1、A2、A3、A4は、トランジスターTNや抵抗Rの特性が一般的なICの製造規格内でばらついた場合の検出回路の出力電圧特性を4通りプロットしたものである。
【0043】
具体的には、図2のA1、A2、A3、A4は、各々、ケース1、2、3、4での被写体温度−出力電圧の特性例である。ここでケース1は、抵抗Rの抵抗値RVが高くなり、トランジスターTNのゲート幅Wが大きくなり、ゲート長Lが小さくなり、しきい値電圧Vthが低くなり、ゲート膜厚FTCが薄くなった場合の特性である。ケース2は、RVが低くなり、Wが小さくなり、Lが大きくなり、Vthが低くなり、FTCが薄くなった場合の特性である。ケース3は、RVが高くなり、Wが大きくなり、Lが小さくなり、Vthが高くなり、FTCが厚くなった場合の特性である。ケース4は、RVが低くなり、Wが小さくなり、Lが大きくなり、Vthが高くなり、FTCが厚くなった場合の特性である。
【0044】
図2のA1、A2、A3、A4に示すように、比較例の検出回路では、出力電圧VQの被写体温度依存性よりも、各検出回路の素子特性のバラツキに起因する出力電圧VQの変動の方がはるかに大きい。このため検出回路の検出精度を維持できないという問題がある。
【0045】
特に、焦電素子をマトリクス状に配置してFPA(Focal Plane Array:焦点面アレイ)を構成した場合には、図1の検出回路がIC基板上に複数個配置される。そして、各検出回路の出力は行選択トランジスター等を介して束ねられ、増幅回路やA/D変換器に接続される。その際に、検出回路の出力電圧の被写体温度依存性よりも、各検出回路の特性バラツキに起因する出力電圧の変化の方が大きいと、複数の検出回路の出力を束ねて増幅回路で信号を増幅したり、A/D変換器で出力電圧をデジタルデータに変換したりすることが困難になる。即ち、複数の検出回路が1つの増幅回路やA/D変換器に接続された場合に、出力電圧の特性がばらついた全ての検出回路に対して、増幅回路やA/D変換器が安定して動作するように設計することは、極めて困難である。また、個々の焦電素子10に照射された赤外線の強度や、当該赤外線を放射した被写体の温度を判定することも極めて難しい。
【0046】
また図1のトランジスターTNと抵抗Rから構成されるソースフォロワー回路が動作するためには、トランジスターTNが安定的にオンしている必要がある。そしてトランジスターTNのゲート電圧はほぼ0Vである。従って、トランジスターTNがオンするためにはトランジスターTNのソース電圧、即ち検出回路の出力電圧VQが、トランジスターTNのしきい値の絶対値よりも十分低い電圧となるように設計する必要がある。
【0047】
一方、IC基板上にセンサーアレイを形成する場合、検出回路の出力を受ける増幅回路やA/D変換器は、CMOSプロセスにて、検出回路のGND端子と同一電位のGND端子に接続された小型の回路を設計することになる。この場合に、これらの回路の入力電圧が0V(=GND端子電位)に近づくと、回路の能力が低下したり、動作しなくなったりするなどの問題が発生する。
【0048】
2.検出回路の構成、動作
以上のような問題を解決する本実施形態の検出回路の構成例を図3に示す。この検出回路は焦電素子10を含む。またVCCとGNDの間に直列に設けられた第1のP型トランジスターTP1と第2のP型トランジスターTP2を含む。これらの第1、第2のP型トランジスターTP1、TP2によりソースフォロワー回路が構成される。即ち検出信号SDの小信号振幅変化に対して、ゲインがほぼ1となる振幅の電圧が出力電圧VQとして出力される。
【0049】
焦電素子10(熱検出素子、赤外線検出素子、センサー素子)は容量CPと抵抗RPによりその等価回路が構成され、焦電素子10の焦電体11には、赤外線の入射による温度の変化に応じた自発分極が発生している。
【0050】
第1のP型トランジスターTP1(P型MOSトランジスター)は、検出回路の出力ノードNQとGNDノード(低電位側電源ノード)との間に設けられる。例えば図3ではTP1のソースが出力ノードNQに接続され、ドレインがGNDノードに接続され、焦電素子10からの検出信号SDがゲートに入力される。
【0051】
第2のP型トランジスターTP2(P型MOSトランジスター)は、VCCノード(高電位側電源ノード)と出力ノードNQとの間に設けられる。例えば図3ではTP2のソースがVCCノードに接続され、ドレインが出力ノードNQに接続され、ゲートが基準電圧VR=Vcc−Vconstに設定される。ここでVccは、高電位側電源VCCの電圧を表し、Vconstは定電圧(固定電圧)である。
【0052】
なお、P型トラジスターTP1とTP2の間に他の回路素子(例えば後述する電圧調整回路、行選択トランジスター等)が設けられていてもよい。
【0053】
また、P型トランジスターTP1の基板電位はTP1のソースの電位に設定される。例えば図3ではTP1の基板電位は出力ノードNQに接続される。またP型トランジスターTP2の基板電位はTP2のソースの電位に設定される。例えば図3ではTP2の基板電位はVCCノードに接続される。このようにP型トランジスターTP1、TP2の基板電位をそのソース電位に設定することで、基板バイアス効果によるTP1、TP2のしきい値電圧の変動を防止できるため、TP1とTP2のしきい値電圧を、より近づけることが可能になる。なおP型トランジスターTP1、TP2の基板電位を共にVCCの電位に設定する変形実施も可能である。
【0054】
またP型トランジスターTP1とTP2とは、そのゲート長及びゲート幅の少なくとも一方が同一になっている。更に望ましくはTP1とTP2は、そのゲート長及びゲート幅の両方が同一になっている。このようにすれば、P型トランジスターTP1、TP2のしきい値電圧等の素子特性を近づけることが可能になり、製造プロセス変動等に起因する出力電圧VQの変動を抑制できる。
【0055】
また、後述するようにP型トランジスターTP1とTP2は隣接してレイアウト配置されていることが望ましい。このようにすれば、P型トランジスターTP1とTP2のしきい値電圧等の素子特性のバラツキを低減できるため、出力電圧VQのバラツキを更に低減できる。
【0056】
なお、隣接してレイアウト配置とは、例えばその間に他の回路素子(トランジスター、抵抗等)が配置されずにTP1とTP2が配置されることである。また第1のP型トランジスターTP1は、他の焦電素子の検出回路が有する第1のP型トランジスターと隣接して配置されていてもよい。同様に第2のP型トランジスターTP2は、他の焦電素子の検出回路が有する第2のP型トランジスターと隣接して配置されていてもよい。
【0057】
またP型トランジスターTP2は、後述するように、他の焦電素子の検出回路との間で共用されていてよい。即ち、P型トランジスターTP2が複数の検出回路の共通の電流源として共用されてもよい。このようにすることで、第2のP型トランジスターのレイアウト占有面積を最小限に抑えることが可能になる。
【0058】
次に本実施形態の検出回路の動作について更に詳細に説明する。図3に示すようにトランジスターTP2のゲートは基準電圧VR=Vcc−Vconstに設定されている。従って、トランジスターTP2のゲート・ソース間電圧はVconstであり、TP2は飽和領域で動作するため、TP2には、ほとんどゲート・ソース間電圧Vconstとしきい値電圧だけで決まる電流I1が流れる。
【0059】
一方、トランジスターTP1はトランジスターTP2に直列接続されているため、TP1には同じ電流I1が流れる。そしてトランジスターTP1の基板電位は、トランジスターTP2と同様にソース電位に設定されている。従って、トランジスターTP1のしきい値電圧とトランジスターTP2のしきい値電圧を等しくできる。更にトランジスターTP1は飽和領域で動作し、トランジスターTP1とTP2が同一のトランジスタサイズ(ゲート幅、ゲート長が同一)であるとすると、TP1のゲート・ソース間電圧は、TP2のゲート・ソース間電圧であるVconstとほぼ同じ電圧になる。また、トランジスターTP1のゲートは焦電素子10に接続され、TP1のゲートのノードNDとGNDの間には焦電素子10の抵抗RPが存在するため、ノードNDは定常的には0Vに設定される。従って、トランジスターTP1のソースノードである検出回路の出力ノードNQの電圧VQは、定常的にはVconstとほぼ同じ電圧に設定される。
【0060】
この状態で焦電素子10に赤外線が照射されて焦電素子10の温度が変化すると、発生した焦電流によりトランジスターTP1のゲート(ゲート容量)が過渡的に充電され、電圧がΔVだけ変動する。このとき、トランジスターTP1には、トランジスターTP2からの電流I1が流れるため、TP1のソース電圧であるVQは、VQ=Vconst+ΔVとなる。即ち、トランジスターTP1、TP2からなる回路はゲイン=1のソースフォロワー回路として動作する。
【0061】
以上のように本実施形態では、高電位側電源電圧としてVccが供給される場合に、P型トランジスターTP2のゲートは、基準電圧VR=Vcc−Vconstに設定される。そしてP型トランジスターTP1は、Vconstに対応する設定電圧を基準として、焦電素子10からの検出信号SDの電圧変化に伴い変化する電圧を、そのソースに出力する。例えば、焦電素子10の温度が変化して検出信号SDの電圧が0VからΔVだけ変化すると、出力電圧VQも、Vconstに対応する設定電圧を基準としてΔVだけ変化する。ここでVconstに対応する設定電圧は、Vconstそのものであってもよいし、Vconstと若干だけ異なる電圧であってもよい。即ち、後述する電圧調整回路やVconstの設定などにより、トランジスターTP1とTP2のソース・ドレイン電圧等が同一に設定される場合には、TP1とTP2のゲート・ソース間電圧は等しくなるため、Vconstに対応する設定電圧はVconstそのものになる。一方、トランジスターTP1とTP2のソース・ドレイン電圧等が同一でない場合には、その分だけ、VQの設定電圧はずれることになる。
【0062】
またP型トランジスターTP2(TP1)のしきい値電圧をVthとした場合に、Vth≦Vconst≦Vcc−Vthとなるように、電圧Vconstを設定することが望ましい。即ち、このような関係が成り立つ基準電圧VR=Vcc−Vconstを、P型トランジスターTP2のゲートに入力する。このようにすれば、トランジスターTP1、TP2を飽和領域で動作させることが可能になる。また出力電圧VQの設定電圧となるVconstがしきい値電圧Vth以上になるため、後段の増幅回路やA/D変換器に対して、しきい値電圧Vth以上の電圧を定常的に入力できるようになる。従って、後段の増幅回路やA/D変換器の設計を容易化でき、増幅回路やA/D変換器としてコンパクトで簡素な回路を使用することも可能になる。
【0063】
図4に強誘電体の焦電素子10のヒステリシスループの例を示す。E1は低温の場合のヒステリシスループであり、E2は高温の場合のヒステリシスループである。図4に示すように、高温の場合のヒステリシスループでの自発分極PR2(残留分極)は、低温の場合の自発分極PR1よりも小さくなる。
【0064】
赤外線が照射され、焦電素子10の温度が変化すると、温度変化量に応じて焦電素子10の自発分極が変化する。このとき焦電素子10の自発分極と電気的な中性状態を保つように電極12、13の表面電荷の移動が起こり、これにより焦電流が発生する。従って、焦電流の大きさは焦電素子10の温度変化量に依存する。発生した焦電流によりトランジスターTP1のゲート(ゲート容量)が充電され、焦電素子10の検出信号SDの到達電圧(ΔV)が変化する。従って、この到達電圧を、図3のトランジスターTP1、TP2からなるゲインが1のソースフォロワー回路を介して出力電圧VQとして出力することで、赤外線の照射による焦電素子10の温度の変化を検出できるようになる。
【0065】
以上のように本実施形態の赤外線の検出回路のソースフォロワー回路では、図1の比較例のような特性バラツキが大きい抵抗を負荷素子として使用していない。また、ソースフォロワー回路を構成する2つの素子は共にP型のMOSトランジスターであるため、製造条件の変動に依存した2つの素子の特性変動は連動し、検出回路の出力電圧VQの特性バラツキは小さくなる。
【0066】
またトランジスターTP1、TP2の基板電位は、その各々のソース端子に接続されている。従って、トランジスターTP1、TP2のしきい値電圧はほぼ等しくなるため、検出回路の出力電圧VQの特性バラツキを更に小さくできる。
【0067】
更にトランジスターTP1、TP2は同一のトランジスターサイズ(ゲート長、ゲート幅)に設定され、直列接続されたトランジスターTP1、TP2には同一の電流I1が流れ、共に飽和領域で動作する。またトランジスターサイズが同一に設定されることで、しきい値電圧の微小な差は更に小さくなる。このため、これらのトランジスターTP1、TP2は、例えばソース・ドレイン間電圧以外の全てのパラメーターがほぼ等しい状態で動作する。従って、検出回路の出力電圧VQの特性バラツキは更に小さくなる。
【0068】
例えば図5に、本実施形態の検出回路を赤外線検出回路として用いた場合の被写体温度−出力電圧の特性例を示す。図5のB1、B2、B3、B4は、トランジスターTP1、TP2の特性が一般的なICの製造規格内でばらついた場合の検出回路の出力電圧特性を4通りプロットしたものである。図5のB1、B2、B3、B4は図2のA1、A2、A3、A4のケース1、2、3、4に相当する。
【0069】
図5から理解されるように、本実施形態の検出回路では、出力電圧の被写体温度依存性に対し、個々の検出回路の特性バラツキによる出力電圧の変化は十分に小さい。従って、本実施形態の検出回路の出力を入力とする増幅回路やA/D変換器などの回路が、接続された複数の全ての検出回路(特性がばらついた回路)に対して、安定して動作するように設計可能になる。従って、設計の容易化を図れ、増幅回路やA/D変換器としてコンパクトで簡素な回路を採用できるようになる。
【0070】
また赤外線の検出回路の出力電圧を安定してデジタルデーターとして取得できれば、個々の検出回路の出力電圧のバラツキは、十分にソフトウエアで補正できる範囲内になるため、個々の焦電素子10に照射された赤外線の強度や、当該赤外線を放射した被写体の温度を高精度で判定することが可能になる。
【0071】
更に、後述するようにトランジスターTP1、TP2は隣接してレイアウト配置されるため、2つのトランジスターTP1、TP2の特性バラツキは更に小さくなり、検出回路の出力電圧の特性バラツキも更に小さくなる。
【0072】
また、基準電圧VR=Vcc−Vconstの定電圧Vconstは、トランジスターTP1、TP2が飽和領域で動作する範囲内で設計者が自由に設定することができる。このため、本実施形態の検出回路の出力電圧VQは、図1の比較例の検出回路に比べて十分に高い電圧に設定できる。従って、検出回路の出力電圧を受ける増幅回路やA/D変換器の回路では、その入力電圧が0V(=GNDの電位)に近づくことで回路の能力が低下したり、動作しなくなったりするという問題は発生しないようになり、回路動作を安定化できる。
【0073】
なお前述した特許文献1の検出回路では、直列接続されたP型トランジスターとN型トランジスターによりソース接地回路が構成される。しかしながら、このような構成のソース接地回路では、P型トランジスターとN型トランジスターのしきい値電圧が相殺することはなく、これらのP型トランジスターとN型トランジスターの特性バラツキが原因で検出回路の出力電圧が変動してしまう。
【0074】
これに対して本実施形態の検出回路では、P型トランジスターTP1とTP2のしきい値電圧等が相殺されて、これらのしきい値電圧等の特性バラツキが出力電圧のバラツキとして現れることを抑制できる。従って、特許文献1の検出回路に比べて、出力電圧のバラツキを低減でき、赤外線の検出精度等を向上できる。
【0075】
3.変形例
本実施形態の検出回路は図3の構成に限定されず、種々の変形実施が可能である。例えば図6に本実施形態の検出回路の変形例を示す。この変形例では、図3の構成に対して電圧調整回路20が更に設けられている。
【0076】
電圧調整回路20は、P型トランジスターTP2のドレイン・ソース間電圧を調整するための回路であり、P型トランジスターTP2と出力ノードNQとの間に設けられる。即ち電圧調整回路20は、P型トランジスターTP1とTP2のドレイン・ソース間電圧を近づける電圧調整を行う。
【0077】
例えば図7(A)〜図7(D)に電圧調整回路20の具体的な構成例を示す。図7(A)では、ノードNAとNQの間に設けられる電圧調整回路20が、抵抗RAにより実現されている。図7(B)では、そのソースがノードNAに接続され、そのゲート及びドレインがノードNQに接続されるダイオード接続のP型トランジスターTP3により、電圧調整回路20が実現されている。図7(C)では、そのソースがノードNAに接続され、そのドレインがノードNQに接続され、そのゲートに基準電圧VR2=Vcc−Vconst2が入力されるP型トランジスターTP4により、電圧調整回路20が実現されている。図7(D)では、そのドレインがノードNAに接続され、そのソースがノードNQに接続され、そのゲートに基準電圧VR3=Vconst3が入力されるN型トランジスターTN1により、電圧調整回路20が実現されている。なおVconst2、Vconst3は、Vconstと異なる電圧であってもよい、同じ電圧であってもよい。
【0078】
図6のような電圧調整回路20を設けることで、トランジスターTP1とTP2のドレイン・ソース間電圧が近づくようになり、例えばこれらのドレイン・ソース間電圧を同一に設定することも可能になる。
【0079】
そして例えばトランジスターTP1、TP2のドレイン・ソース間電圧が同一になれば、トランジスターTP1、TP2には同じ電流値の電流I1が流れるため、トランジスターTP1、TP2のゲート・ソース間電圧を同一にできる。従って、トランジスターTP2のゲートにVR=Vcc−Vconstを入力した場合には、トランジスターTP1のソースであるノードNQには、Vconstの電圧が定常的に出力されるようになる。即ち、焦電素子10からの検出信号SDの電圧がΔVだけ変化すると、ノードNQの出力電圧VQは、Vconstを基準にΔVだけ変化するようになる。このように出力電圧VQの設定電圧が正確にVconstに設定されれば、後段の増幅回路やA/D変換器などの回路設計を簡素化できる。
【0080】
また電圧調整回路20を設けることで、トランジスターTP1、TP2のドレイン・ソース間電圧が近づけば、トランジスターTP1、TP2間の素子特性の差を更に小さくすることが可能になり、これらの素子特性が相殺されることで、出力電圧VQのバラツキを更に低減できる。
【0081】
例えば図8に、図6の検出回路を採用した場合の被写体温度−出力電圧の特性例を示す。図8は、図2、図5と同様に、トランジスターTP1、TP2等の特性が一般的なICの製造規格内でばらついた場合の検出回路の出力電圧特性を4通りプロット(ケース1〜4)したものである。
【0082】
図6のような電圧調整回路20を設ければ、図8と図5を比較すれば明らかなように、出力電圧VQの変動バラツキを更に低減することが可能になり、検出回路による温度検出等の検出精度を更に向上できる。
【0083】
4.センサーデバイス
図9(A)に本実施形態のセンサーデバイスの構成例を示す。このセンサーデバイスは、センサーアレイ100と、行選択回路(行ドライバー)110と、読み出し回路120を含む。またA/D変換部130、制御回路150を含むことができる。このセンサーデバイスを用いることで、例えばナイトビジョン機器などに用いられる赤外線カメラなどを実現できる。
【0084】
センサーアレイ100(焦点面アレイ)には、複数のセンサーセルが配列(配置)される。また複数の行線(ワード線、走査線)と複数の列線(データ線)が設けられる。なお列線の本数が1本であってもよい。列線が1本である場合には、列線に沿った方向(縦方向)に複数のセンサーセルが配列されたラインセンサーが構成される。
【0085】
センサーアレイ100の各センサーセルは、各行線と各列線の交差位置に対応する場所に配置(形成)される。例えば図9(B)のセンサーセルは、行線WL1と列線DL1の交差位置に対応する場所に配置されている。他のセンサーセルも同様である。
【0086】
行選択回路110は、1又は複数の行線に接続される。そして各行線の選択動作を行う。例えば図9(B)のようなQVGA(320×240画素)のセンサーアレイ100(焦点面アレイ)を例にとれば、行線WL0、WL1、WL2・・・・WL239を順次選択(走査)する動作を行う。即ちこれらの行線を選択する信号(ワード選択信号)をセンサーアレイ100に出力する。
【0087】
読み出し回路120は、複数の列線に接続される。そして各列線の読み出し動作を行う。QVGAのセンサーアレイ100を例にとれば、列線DL0、DL1、DL2・・・・DL319からの検出信号(検出電流、検出電荷)を読み出す動作を行う。例えば読み出し回路120には、複数の列線の各列線に対応して各増幅回路が設けられる。そして、各増幅回路は、対応する列線の信号の増幅処理を行う。
【0088】
A/D変換部130は、読み出し回路120において取得された検出電圧(測定電圧、到達電圧)をデジタルデータにA/D変換する処理を行う。そしてA/D変換後のデジタルデータDOUTを出力する。具体的には、A/D変換部130には、複数の列線の各列線に対応して各A/D変換器が設けられる。そして、各A/D変換器は、対応する列線において読み出し回路120により取得された検出電圧のA/D変換処理を行う。なお、複数の列線に対応して1つのA/D変換器を設け、この1つのA/D変換器を用いて、複数の列線の検出電圧を時分割にA/D変換してもよい。また読み出し回路120の増幅回路を設けないで、各列線の信号を直接にA/D変換部130の各A/D変換器に入力するようにしてもよい。
【0089】
制御回路150(タイミング生成回路)は、各種の制御信号を生成して、行選択回路110、読み出し回路120、A/D変換部130に出力する。例えば、各回路のタイミングを制御する信号などを生成して出力する。
【0090】
図10に本実施形態のセンサーデバイスの詳細な第1の構成例を示す。図10では主にセンサーアレイ100の詳細な構成が示されている。
【0091】
図10において、SC00〜SCnmはアレイ状に配置されたセンサーセルである。またWL0〜WLmは行線(行選択線)であり、DL0〜DLnは列線(列データ線)である。またQC0〜QCnは、列線DL0〜DLnに接続される増幅回路であり、列線DL0〜DLnの電圧を増幅した信号をDQ0〜DQnとして出力する。なお、QC0〜QCnは、列線DL0〜DLnの電圧を直接にA/D変換するA/D変換器であってもよい。
【0092】
複数のセンサーセルSC00〜SCnmの各センサーセルは、焦電素子10と、第1、第2のP型トランジスターTP1、TP2を含む。また行選択トランジスターTSを含む。
【0093】
第1のP型トランジスターTP1は、各センサーセルに対応する対応列線への出力ノードNQとGNDノード(低電位側電源ノード)との間に設けられる。そして焦電素子10からの検出信号がTP1のゲートに入力される。
【0094】
第2のP型トランジスターTP2は、VCCノード(高電位側電源ノード)と出力ノードNQとの間に設けられる。そしてTP2のゲートが基準電圧VR(Vcc−Vconst)に設定される。この基準電圧VRは基準電圧生成回路30により生成されて、センサーセルSC00〜SCnmに供給される。
【0095】
行選択トランジスターTSは、出力ノードNQと各センサーセルの対応列線との間に設けられる。そして各センサーセルに対応する対応行線がTSのゲートに接続される。そして対応列線に対応して設けられる複数のセンサーセルの各センサーセルが、行選択トランジスターTSを介して対応列線に接続される。即ち、各センサーセルの行選択トランジスターTSは、行線WL0〜WLmのうち、そのセンサーセルに対応する対応行線が接続される。そして、その対応行線が例えばHレベルになることで、行選択トランジスターTSがオンになり、そのセンサーセルの出力ノードNQとそのセンサーセルの対応列線が接続されるようになる。
【0096】
例えばセンサーセルSC00〜SC0mは、SC00〜SC0mの対応列線DL0に接続される。具体的には、SC00〜SC0mの各センサーセルの出力ノードNQは行選択トランジスターTSを介して対応列線DL0に接続される。同様にセンサーセルSC10〜SC1mは、SC10〜SC1mの対応列線DL1に接続される。具体的には、SC10〜SC1mの各センサーセルの出力ノードNQは行選択トランジスターTSを介して対応列線DL1に接続される。他のセンサーセルSCn0〜SCnm等も同様である。
【0097】
また行線WL0に対応して設けられるセンサーセルSC00、SC10・・・SCn0の行選択トランジスターTSは、行線WL0がHレベルになるとオンになる。すると、センサーセルSC00、SC10・・・SCn0の出力ノードNQは、各々の対応列線DL0、DL1・・・DLnに接続される。これによりセンサーセルSC00、SC10・・・SCn0からの信号が読み出されて、対応列線DL0、DL1・・・DLnに出力され、増幅回路QC0〜QCnにより増幅されて、信号DQ0〜DQnとして出力される。
【0098】
また行線WL1に対応して設けられるセンサーセルSC01、SC11・・・SCn1の行選択トランジスターTSは、行線WL1がHレベルになるとオンになる。これにより、センサーセルSC01、SC11・・・SCn1の出力ノードNQは、各々の対応列線DL0、DL1・・・DLnに接続される。これによりセンサーセルSC01、SC11・・・SCn1からの信号が読み出されて、対応列線DL0、DL1・・・DLnに出力され、増幅回路QC0〜QCnにより増幅されて、信号DQ0〜DQnとして出力される。他の行線WLm等に接続されるセンサーセルの動作も同様である。
【0099】
図10の第1の構成例によれば、各センサーセルに対して2つのP型トランジスターTP1、TP2が設けられるため、各センサーセルにおけるトランジスターの占有面積は増加する。しかしながら、例えば、強誘電体膜等により構成される焦電素子10の下方等にトランジスターが形成され、トランジスターの占有面積よりも焦電素子10の占有面積の方が大きい場合がある。このような場合には、図10のように各センサーセルにP型トランジスターTP1、TP2を設けても、それほど問題は生じない。
【0100】
一方、図10のように各センサーセルにP型トランジスターTP1、TP2を設ける手法によれば、P型トランジスターTP1、TP2の製造条件等を均等にできるため、TP1、TP2のしきい値電圧等の回路特性をほぼ同じにすることができ、出力電圧のバラツキを、より低減できるという利点がある。
【0101】
図11に本実施形態のセンサーデバイスの詳細な第2の構成例を示す。図11の第2の構成例は、図10の第1の構成例とセンサーセルの構成が異なる。また図11では列線DL0〜DLnに接続される電流源回路40が更に設けられている。
【0102】
SC00〜SCnmの各センサーセルは、焦電素子10と第1のP型トランジスターTP1を含む。第1のP型トランジスターTP1は、各センサーセルに対応する対応列線への出力ノードNQとGNDノードとの間に設けられ、焦電素子10からの検出信号がゲートに入力される。
【0103】
またSC00〜SCnmの各センサーセルは、行選択トランジスターTSを含む。行選択トランジスターTSは、出力ノードNQと各センサーセルの対応列線との間に設けられる。そして各センサーセルに対応する対応行線がTSのゲートに接続される。即ち、各センサーセルの行選択トランジスターTSは、行線WL0〜WLmのうち、そのセンサーセルに対応する対応行線が接続される。そして、その対応行線が例えばHレベルになることで、その行選択トランジスターTSがオンになり、そのセンサーセルの出力ノードNQとそのセンサーセルの対応列線が接続されるようになる。
【0104】
電流源回路40は、第2のP型トランジスターTPC0〜TPCnを含む。この第2のP型トランジスターTPC0〜TPCnは、図3の第2のP型トランジスターTP2に対応するものである。即ち図11では、TPC0〜TPCnの各P型トランジスターが、対応列線に接続されるセンサーセルの第2のP型トランジスターとして共用されており、電流源回路40のTPC0〜TPCnの各P型トランジスターとセンサーセルのP型トランジスターTP1とによりソースフォロワー回路が構成される。
【0105】
なお図11では、電流源回路40に、複数のP型トランジスターTPC0〜TPCnが設けられているが、列線の本数が1本であるラインセンサーの場合には、その1本の列線に接続される1つの第2のP型トランジスターを設ければよい。
【0106】
TPC0〜TPCnの各P型トランジスターは、VCCノードと対応列線との間に設けられる。そしてゲートが基準電圧VR(=Vcc−Vconst)に設定され、対応列線を介してSC00〜SCnmの各センサーセルに電流(定電流)を供給する。例えばP型トランジスターTPC0は、VCCノードと対応列線DL0との間に設けられ、対応列線DL0のセンサーセルSC00〜SC0mに電流を供給する。P型トランジスターTPC1は、VCCノードと対応列線DL1との間に設けられ、対応列線DL1のセンサーセルSC10〜SC1mに電流を供給する。他のP型トランジスターTPCn等も同様である。
【0107】
例えば行線WL0に対応して設けられるセンサーセルSC00、SC10・・・SCn0の行選択トランジスターTSは、行線WL0がHレベルになるとオンになる。すると、センサーセルSC00、SC10・・・SCn0の出力ノードNQは、各々の対応列線DL0、DL1・・・DLnに接続される。これにより、電流源回路40のP型トランジスターTPC0〜TPCnからの定電流がセンサーセルSC00、SC10・・・SCn0のP型トランジスターTP1に流れ、図3の検出回路と同様の動作が実現される。そして、センサーセルSC00、SC10・・・SCn0からの信号が読み出されて、対応列線DL0、DL1・・・DLnに出力され、増幅回路QC0〜QCnにより増幅されて、信号DQ0〜DQnとして出力される。行線WL1〜WLmに接続されるセンサーセルSC01〜SCnmの動作も同様である。
【0108】
図11の第2の構成例によれば、第2のP型トランジスターTPC0〜TPCnが、複数の検出回路で共用される。従って、各センサーセルに対して1つのP型トランジスターTP1だけを設ければ済むため、各センサーセルにおけるトランジスターの占有面積を図10の第1の構成例に比べて小さくできる。但し、P型トランジスターTP1とTPC0〜TPCnが、図10の第1の構成例に比べて離れた位置にレイアウト配置される。このためP型トランジスターTP1とTPC0〜TPCnの製造条件等がばらつき、図10の第1の構成例よりも出力電圧のバラツキが増えてしまうおそれもある。
【0109】
5.レイアウト配置
図12(A)〜図13(C)に第1のP型トランジスターTP1と第2のP型トランジスターTP2、TPC(TPC0〜TPCn)のレイアウト配置例を示す。
【0110】
図12(A)〜図12(C)は、図3のように第1、第2のP型トランジスターTP1、TP2(TPC)の基板電位がソース電位に設定される場合のレイアウト配置例である。NWLはNウェル領域であり、N+はN型拡散領域であり、P+はP型拡散領域であり、POLYはゲートを形成するポリシリコン配線である。
【0111】
P型トランジスターTP1が形成されるN型ウェルNWLは、N型拡散領域N+を介してTP1のソース電位に設定される。即ち、TP1が形成されるN型ウェルNWLは図3の出力ノードNQに電気的に接続される。一方、P型トランジスターTP2(TPC)が形成されるN型ウェルNWLは、N型拡散領域N+を介してTP2(TPC)のソース電位に設定される。即ちTP2(TPC)が形成されるN型ウェルNWLはVCCノードに電気的に接続される。
【0112】
このように図12(A)〜図12(C)では、各P型トランジスターTP1、TP2(TPC)ごとにN型ウェルNWLが分離して形成されるため、P型トランジスターTP1、TP2(TPC)の基板電位をそのソース電位に設定できるようになる。従って、基板バイアス効果によるしきい値電圧の変動を防止でき、TP1とTP2(TPC)のしきい値電圧を、より近づけることが可能になる。
【0113】
図12(A)、図12(B)は、図10の第1の構成例でのレイアウト配置例である。図12(A)、図12(B)では図10の各センサーセルに設けられる第1、第2のP型トランジスターTP1、TP2が隣接してレイアウト配置される。即ち、TP1とTP2が、その間に他の回路素子を介さずに配置される。また例えば隣り合うセンサーセルのP型トランジスターTP1、TP2を隣接してレイアウト配置してもよい。
【0114】
図12(C)は、図11の第2の構成例でのレイアウト配置例である。図12(C)では、図11の各センサーセルに設けられる第1のP型トランジスターTP1と電流源回路40に設けられる第2のP型トランジスターTPC(TPC0〜TPCn)が隣接してレイアウト配置される。また例えば隣り合うセンサーセルのP型トランジスターTP1が隣接してレイアウト配置される。
【0115】
図13(A)〜図13(C)は、第1、第2のP型トランジスターTP1、TP2(TPC)の基板電位が高電位側電源VCCの電位に設定される場合のレイアウト配置例である。
【0116】
図13(A)〜図13(C)では、全てのP型トランジスターTP1、TP2(TPC)が、共通のN型ウェルNWLに形成される。そして、このN型ウェル領域NWLは、N型拡散領域N+を介してVCCの電位に設定される。このレイアウト配置では、図12(A)〜図12(C)とは異なり、基板バイアス効果によるしきい値電圧の変動が生じるが、レイアウト面積を縮小化することも可能になる。
【0117】
なお本実施形態のP型トランジスターTP1、TP2(TPC)のレイアウト配置は図12(A)〜図13(C)には限定されない。例えば各トランジスターの配置位置や配置方向やサイズ、Nウェル領域やN型拡散領域N+やP型拡散領域P+の配置位置や配置方向やサイズなどについては種々の変形実施が可能である。
【0118】
6.電子機器
図14に本実施形態のセンサーデバイスや検出回路を含む電子機器の構成例を示す。この電子機器は、光学系200、センサーデバイス210(検出回路)、画像処理部220、処理部230、記憶部240、操作部250、表示部260を含む。なお本実施形態の電子機器は図14の構成に限定されず、その構成要素の一部(例えば光学系、操作部、表示部等)を省略したり、他の構成要素を追加したりするなどの種々の変形実施が可能である。
【0119】
光学系200は、例えば1又は複数のレンズや、これらのレンズを駆動する駆動部などを含む。そしてセンサーデバイス210への物体像の結像などを行う。また必要であればフォーカス調整なども行う。
【0120】
センサーデバイス210は、図9(A)〜図11等で説明したものであり、物体像の撮像処理を行う。画像処理部220は、センサーデバイス210からのデジタルの画像データ(画素データ)に基づいて、画像補正処理などの各種の画像処理を行う。なおイメージセンサーとなるセンサーデバイス210の代わりに、図3、図6等で説明した検出回路を用いてもよい。
【0121】
処理部230は、電子機器の全体の制御を行ったり、電子機器内の各ブロックの制御を行ったりする。この処理部230は、例えばCPU等により実現される。記憶部240は、各種の情報を記憶するものであり、例えば処理部230や画像処理部220のワーク領域として機能する。操作部250は、ユーザが電子機器を操作するためのインターフェースとなるものであり、例えば各種ボタンやGUI(Graphical User Interface)画面などにより実現される。表示部260は、例えばセンサーデバイス210により取得された画像やGUI画面などを表示するものであり、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの各種のディスプレイや投写型表示装置などにより実現される。
【0122】
なお本実施形態は、FPA(Focal Plane Array:焦点面アレイ)を用いた赤外線カメラや赤外線カメラを用いた電子機器に適用できる。赤外線カメラを適用した電子機器としては、例えば夜間の物体像を撮像するナイトビジョン機器、物体の温度分布を取得するサーモグラフィー機器、人の侵入を検知する侵入検知機器、物体の物理情報の解析(測定)を行う解析機器(測定機器)、火や発熱を検知するセキュリティー機器、工場などに設けられるFA(Factory Automation)機器などが想定できる。ナイトビジョン機器を車載機器に適用すれば、車の走行時に夜間の人等の姿を検知して表示することができる。またサーモグラフィー機器に適用すれば、インフルエンザ検疫等に利用することができる。
【0123】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語(高電位側電源ノード、低電位側電源ノード等)と共に記載された用語(VCCノード、GNDノード)は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また検出回路、センサーデバイス、電子機器の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定に限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0124】
TP1 第1のP型トランジスター、
TP2、TPC、TPC0〜TPCn 第2のP型トランジスター、
CP 容量、RP、R 抵抗、SD 検出信号、VQ 出力電圧、
ND 検出信号のノード、NQ 出力ノード、VR 基準電圧、
WL0〜WLm 行線、DL0〜DLn 列線、
10 焦電素子、20 電圧調整回路、30 基準電圧生成回路、40 電流源回路、
100 センサーアレイ、110 行選択回路、120 読み出し回路、
130 A/D変換部、150 制御回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦電素子と、
検出回路の出力ノードと低電位側電源ノードとの間に設けられ、前記焦電素子からの検出信号がゲートに入力される第1のP型トランジスターと、
高電位側電源ノードと前記出力ノードとの間に設けられ、ゲートが基準電圧に設定される第2のP型トランジスターと、
を含むことを特徴とする検出回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1のP型トランジスターの基板電位は、前記第1のP型トランジスターのソースの電位に設定され、
前記第2のP型トランジスターの基板電位は、前記第2のP型トランジスターのソースの電位に設定されることを特徴とする検出回路。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記第1のP型トランジスターと前記第2のP型トランジスターとは、ゲート長及びゲート幅の少なくとも一方が同一であることを特徴とする検出回路。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記第1のP型トランジスターと前記第2のP型トランジスターは隣接してレイアウト配置されることを特徴とする検出回路。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記第2のP型トランジスターは、他の焦電素子の検出回路との間で共用されることを特徴とする検出回路。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記高電位側電源ノードに対して高電位側電源電圧Vccが供給され、前記第2のP型トランジスターのゲートの電圧が前記基準電圧としてVcc−Vconstに設定され、
前記第1のP型トランジスターは、電圧Vconstに対応する設定電圧を基準として、前記焦電素子からの前記検出信号の電圧変化に伴い変化する電圧をソースに出力することを特徴とする検出回路。
【請求項7】
請求項6において、
前記第1のP型トランジスターのしきい値電圧をVthとした場合に、Vth≦Vconst≦Vcc−Vthであることを特徴とする検出回路。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかにおいて、
前記第2のP型トランジスターと前記出力ノードとの間に設けられ、前記第2のP型トランジスターのドレイン・ソース間電圧を調整する電圧調整回路を含むことを特徴とする検出回路。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかの検出回路を含むことを特徴とするセンサーデバイス。
【請求項10】
複数のセンサーセルが配列されるセンサーアレイと、
複数の行線と、
1又は複数の列線と、
前記複数の行線に接続される行選択回路と、
前記1又は複数の列線に接続される読み出し回路と、
を含み、
前記複数のセンサーセルの各センサーセルは、
焦電素子と、
前記各センサーセルに対応する対応列線への出力ノードと低電位側電源ノードとの間に設けられ、前記焦電素子からの検出信号がゲートに入力される第1のP型トランジスターと、
高電位側電源ノードと前記出力ノードとの間に設けられ、ゲートが基準電圧に設定される第2のP型トランジスターと、
を含むことを特徴とするセンサーデバイス。
【請求項11】
複数のセンサーセルが配列されるセンサーアレイと、
複数の行線と、
1又は複数の列線と、
前記複数の行線に接続される行選択回路と、
前記1又は複数の列線に接続される読み出し回路と、
前記1又は複数の列線に接続される電流源回路と、
を含み、
前記複数のセンサーセルの各センサーセルは、
焦電素子と、
前記各センサーセルに対応する対応列線への出力ノードと低電位側電源ノードとの間に設けられ、前記焦電素子からの検出信号がゲートに入力される第1のP型トランジスターとを含み、
前記電流源回路は、
高電位側電源ノードと前記対応列線との間に設けられ、ゲートが基準電圧に設定され、前記対応列線を介して前記各センサーセルに電流を供給する第2のP型トランジスターを含むことを特徴とするセンサーデバイス。
【請求項12】
請求項10又は11において、
前記各センサーセルは、前記出力ノードと前記対応列線との間に設けられ、前記各センサーセルに対応する対応行線がゲートに接続される行選択トランジスターを含み、
前記対応列線に対応して設けられる複数のセンサーセルの各センサーセルが、前記行選択トランジスターを介して前記対応列線に接続されることを特徴とするセンサーデバイス。
【請求項13】
請求項1乃至8のいずれかに記載の検出回路を含むことを特徴とする電子機器。
【請求項14】
請求項9乃至12のいずれかに記載のセンサーデバイスを含むことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
焦電素子と、
検出回路の出力ノードと低電位側電源ノードとの間に設けられ、前記焦電素子からの検出信号がゲートに入力される第1のP型トランジスターと、
高電位側電源ノードと前記出力ノードとの間に設けられ、ゲートが基準電圧に設定される第2のP型トランジスターと、
を含むことを特徴とする検出回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1のP型トランジスターの基板電位は、前記第1のP型トランジスターのソースの電位に設定され、
前記第2のP型トランジスターの基板電位は、前記第2のP型トランジスターのソースの電位に設定されることを特徴とする検出回路。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記第1のP型トランジスターと前記第2のP型トランジスターとは、ゲート長及びゲート幅の少なくとも一方が同一であることを特徴とする検出回路。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記第1のP型トランジスターと前記第2のP型トランジスターは隣接してレイアウト配置されることを特徴とする検出回路。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記第2のP型トランジスターは、他の焦電素子の検出回路との間で共用されることを特徴とする検出回路。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記高電位側電源ノードに対して高電位側電源電圧Vccが供給され、前記第2のP型トランジスターのゲートの電圧が前記基準電圧としてVcc−Vconstに設定され、
前記第1のP型トランジスターは、電圧Vconstに対応する設定電圧を基準として、前記焦電素子からの前記検出信号の電圧変化に伴い変化する電圧をソースに出力することを特徴とする検出回路。
【請求項7】
請求項6において、
前記第1のP型トランジスターのしきい値電圧をVthとした場合に、Vth≦Vconst≦Vcc−Vthであることを特徴とする検出回路。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかにおいて、
前記第2のP型トランジスターと前記出力ノードとの間に設けられ、前記第2のP型トランジスターのドレイン・ソース間電圧を調整する電圧調整回路を含むことを特徴とする検出回路。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかの検出回路を含むことを特徴とするセンサーデバイス。
【請求項10】
複数のセンサーセルが配列されるセンサーアレイと、
複数の行線と、
1又は複数の列線と、
前記複数の行線に接続される行選択回路と、
前記1又は複数の列線に接続される読み出し回路と、
を含み、
前記複数のセンサーセルの各センサーセルは、
焦電素子と、
前記各センサーセルに対応する対応列線への出力ノードと低電位側電源ノードとの間に設けられ、前記焦電素子からの検出信号がゲートに入力される第1のP型トランジスターと、
高電位側電源ノードと前記出力ノードとの間に設けられ、ゲートが基準電圧に設定される第2のP型トランジスターと、
を含むことを特徴とするセンサーデバイス。
【請求項11】
複数のセンサーセルが配列されるセンサーアレイと、
複数の行線と、
1又は複数の列線と、
前記複数の行線に接続される行選択回路と、
前記1又は複数の列線に接続される読み出し回路と、
前記1又は複数の列線に接続される電流源回路と、
を含み、
前記複数のセンサーセルの各センサーセルは、
焦電素子と、
前記各センサーセルに対応する対応列線への出力ノードと低電位側電源ノードとの間に設けられ、前記焦電素子からの検出信号がゲートに入力される第1のP型トランジスターとを含み、
前記電流源回路は、
高電位側電源ノードと前記対応列線との間に設けられ、ゲートが基準電圧に設定され、前記対応列線を介して前記各センサーセルに電流を供給する第2のP型トランジスターを含むことを特徴とするセンサーデバイス。
【請求項12】
請求項10又は11において、
前記各センサーセルは、前記出力ノードと前記対応列線との間に設けられ、前記各センサーセルに対応する対応行線がゲートに接続される行選択トランジスターを含み、
前記対応列線に対応して設けられる複数のセンサーセルの各センサーセルが、前記行選択トランジスターを介して前記対応列線に接続されることを特徴とするセンサーデバイス。
【請求項13】
請求項1乃至8のいずれかに記載の検出回路を含むことを特徴とする電子機器。
【請求項14】
請求項9乃至12のいずれかに記載のセンサーデバイスを含むことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−117847(P2012−117847A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265639(P2010−265639)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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