説明

検出装置

【課題】電源を必要とせず、メンテナンスが不要で、構成が単純で、信頼性の向上を図ることのできる検出装置を提供する。
【解決手段】大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性素子11等の磁気センサが発生したパルス電圧を検出する検出装置10であって、磁気センサが発生したパルス電圧を利用して電力を発生する電源発生回路12と、該電源発生回路12が発生した電力により動作して所定の処理を実行する処理回路13とを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性素子等の、磁気センサが発生したパルス電圧に基づき信号を送出する検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気及び電子機器のスイッチ等の各種分野において、移動している物体の位置や移動方向に応じて発生したパルス信号に基づき信号を送出する検出装置が知られている。
【0003】
この種の従来の検出装置としては、例えば、接点型防犯センサの常閉型動作接点に電流検知回路を直列接続して構成したセンサ回路部と、このセンサ回路部に監視信号として所定周期の間欠パルス信号を供給するパルス発生回路部と、前記動作接点の変換に応じて電流検知回路に生じる電流変化を検知して前記防犯センサの発報を判別してワイヤレス送信部を作動する判別部とを含んだ信号処理部とを備えた装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2900094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した特許文献1に記載された装置では、監視時にセンサ回路部に供給される監視信号がパルス信号となっているため、防犯センサを接続した場合にも電池の消費電流は軽減されるものの、監視信号を形成するためには、電流検知回路に常時電流を流しておく必要があり、別に電源を設けることが必要であった。したがって、電源を定期的にメンテナンスする必要があると共に、構成が複雑になり、検出装置の信頼性を高めることが難しいといった問題があった。
【0005】
また、従来の装置では、外部電源より常に非常に強いエネルギー(電力)を供給する必要があるため、防爆等の安全を考慮しなければならない設備に適用するには、配線に多大な安全構造が必要となる。したがって、そのような安全を考慮しなければならない設備に従来の装置を適用することは実質的に不可能であった。
【0006】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、電源を必要としないため、メンテナンスが不要となると共に、構成が単純となり、信頼性の向上を図ることのできる検出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するため、本発明は、磁気センサが発生したパルス電圧を検出する検出装置であって、前記磁気センサが発生したパルス電圧を利用して電力を発生する電源発生回路と、該電源発生回路が発生した電力を利用して所定の処理を実行する処理回路とを備えていることを特徴とする。
【0008】
また、前記磁気センサは、大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性素子であってもよい。
【0009】
また、前記電源発生回路は、前記磁性素子が発生したパルス電圧を整流する整流回路と、該整流回路が整流した整流電圧を平滑して充電する平滑回路とを備え、前記処理回路は、前記平滑回路に充電された電圧を利用して起動処理を実行する起動処理回路と、該起動処理回路が実行した起動処理により所定の信号を出力する処理を実行する信号送出処理回路とを備えていてもよい。
【0010】
さらに、本発明の検出装置は防犯センサに設けられており、前記起動回路は、該防犯センサの位置を特定するための識別コードを生成する処理を実行するように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性素子等の磁気センサが発生したパルス電圧に基づき電源発生回路が発生した電力を利用して処理回路が動作するように構成されているため、別個に電源を必要としない。したがって、省電力化が可能となり、メンテナンスが不要となると共に、構成が単純となるため、コストの低減化が可能となり、装置の信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、本発明に係る検出装置を防犯センサに適用した場合について例示して説明する。
【0013】
まず、本発明の実施の形態に係る防犯センサについて説明するに当り、該防犯センサにおいて使用する大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性素子(以下、単に磁性素子という場合がある)について、一般的に知られているワイヤ状の複合磁性素子を例として、その構造と挙動について説明する。
【0014】
強磁性体を線引きして細いワイヤにしたものは、その合金組成とともに独特な磁気的性質を持つ。この強磁性体ワイヤにひねり応力を加えると、ワイヤの外周部付近ほど多くひねられ、中心部ほどひねられ方は少なくなり、このため外周部と中心部では磁気特性が異なることとなる。この状態を残留させる加工を施すと、外周部と中心部で磁気特性が異なる強磁性体の磁気ワイヤができる。そして、外周部の磁気特性は、比較的小さな磁界によってその磁化方向を変える。これに対して、中心部は、外周部よりも大きな磁界によってその磁化方向を変える。すなわち、一本の磁気ワイヤの中に比較的磁化され易い磁気特性を持つ外周部と、磁化されにくい中心部という2種類の異なった磁気特性を持つ複合磁性体が形成されている。この複合磁気ワイヤは、一軸異方性である。ここでは、外周部をソフト層、中心部をハード層と呼び、このような複合磁気ワイヤを、ワイヤ状の複合磁性素子と称する。
【0015】
この複合磁気ワイヤのハード層及びソフト層は、初期的には、どのような方向に磁化されているか定まっておらず、バラバラな磁化状態にある。この複合磁気ワイヤの長手方向、つまり軸線方向と平行に、ハード層の磁化方向を反転させるのに十分な外部磁界をかけると、ソフト層は、当然のこと、ハード層も磁化され同じ磁化方向にそろう。次に、ソフト層だけを磁化できるような外部磁界を、前とは逆方向にかける。その結果、複合磁気ワイヤのソフト層とハード層とでは磁化されている方向が逆であるという磁化状態ができる。一軸異方性であるから、この状態で外部磁界を取り去ってもソフト層の磁化方向は、ハード層の磁化に押さえられていて磁化状態は安定している。このときの外部磁界をセット磁界と呼ぶ。次に、セット磁界と反対方向の外部磁界をかけてこの磁界を増加させる。外部磁界の強さがある臨界強度を越すと、ソフト層の磁化方向は急激に反転する。この磁界を、臨界磁界と呼ぶ。このときの反転現象は、雪崩をうつようにソフト層の磁壁が移動し反応が起きる。この結果、ソフト層とハード層の磁化方向は同じとなり最初の状態に戻る。外部磁界は臨界磁界よりも大きな磁界をかけておく。この磁界を、リセット磁界と呼ぶ。この雪崩をうつように磁壁が移動する現象を大バルクハウゼンジャンプという。磁壁の速度(磁束密度の変化)は、この大バルクハウゼンジャンプのみに依存していて外部磁界には無関係である。
【0016】
以上、大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性素子について、ワイヤ状の磁性素子を例に挙げて説明してきたが、本発明においては、このようなワイヤ状の複合磁性素子に限らず、同様の挙動を示す他の種々な磁性素子を使用することができる。また、前述した複合磁性素子は、ハード層とソフト層とを有するものであったが、大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性素子としては、このようなハード層とソフト層との複合層を有していないような磁性素子でも可能である。例えば、特開平4−218905号公報に開示されているような薄膜形成技術を使用することにより、薄膜状の磁性体を形成し、これを、薄膜状の磁性素子として使用することもできる。また、この磁性素子は、厚膜状でも板状でもよい。したがって、ここでいう大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性素子は、前述したような挙動を示す種々な磁性素子のすべてを含むものである。尚、板状又は膜状にした場合には、平面コイルとすることもできる。
【0017】
次に、図1を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る防犯センサについて説明する。ここで、図1は、本発明の実施の形態に係る防犯センサの概略構成を示すブロック図である。
【0018】
この防犯センサ10は、大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性素子11が発生したパルス電圧を検出する検出装置であり、磁性素子11が発生したパルス電圧を利用して電力を発生する電源発生回路12と、この電源発生回路12が発生した電力を利用して所定の処理を実行するマイクロコンピュータ等から成る処理回路13と、防犯センサ10の位置を特定するための識別コード等を格納する格納部14と、RFID(Radio Frequency Identification)等から成る送信部15とを備えて構成されている。
【0019】
電源発生回路12は、磁性素子11が発生したパルス電圧を整流するダイオードから成る整流回路16と、この整流回路が整流した電圧を平滑にして充電するコンデンサから成る平滑回路17とを備えて構成されている。また、処理回路13は、平滑回路17に充電された電圧を利用して起動処理を実行する起動処理回路18と、この起動処理回路18が実行した起動処理により所定の信号を出力する処理を実行する信号送出処理回路19とを備えて構成されている。
【0020】
信号送出処理回路19は、例えば、防犯センサ10が電波による信号送出を実行するように構成されている場合には変調と電波送信用のアンテナ等により構成される。なお、この信号送出処理は、電波の他、音波や光等によっても実行可能であり、マイクロコンピュータの他、無線タグ用IC等により実行することも可能である。
【0021】
また、磁性素子11の周りには、検出コイル20が巻回されており、この検出コイル20の一方の出力端子20aに整流回路13が接続されると共に、他方の出力端子20bにコモン信号線21が接続され、このコモン信号線21は、順次、平滑回路17、起動処理回路18、信号送出処理回路19にそれぞれ接続されている。
【0022】
次に、図1及び図2(a),(b)を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る防犯センサ10の動作について説明する。ここで、図2(a)は磁性素子11が発生するパルス信号を示す図、図2(b)は電源発生回路12において整流及び平滑された出力電圧を示す図、図3は図2(b)に示す出力電圧を測定するための測定回路を示す図である。
【0023】
防犯上、異常とされる現象が発生し、図2(a)に示すように、大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性素子11が磁界の変化を検知してパルス電圧を発生すると、このパルス電圧は電源発生回路12に流れ込み、図2(b)に示されているように、整流回路16によって整流されると共に平滑回路17によって平滑にされ、充電される。この時、図1に示されているように、整流回路16のアノード側が磁性素子11に接続され、カソード側が平滑回路17に接続されているため、平滑回路17に充電される電圧が磁性素子11に逆流するのを防止する共に負極側に発生するパルス電圧を遮断することができる。
【0024】
起動処理回路18は、このように平滑回路17に充電された電圧を監視する機能をも有しており、処理回路13が動作可能な電圧までこの電圧が上昇して処理回路13に供給されると共に前記パルス電圧の立ち上がりを利用してトリガが掛かると、起動処理回路18は、格納部14に格納されている防犯センサ10の識別コードの生成処理や、次の信号送出処理回路19が必要とする処理等の起動処理を開始し、実行する。
【0025】
その後、信号送出処理回路19は、送信部15にとって必要な処理を実行し、送信部15は図示しないメイン装置に対して防犯センサ10の識別コードを出力し、これによりメイン装置はどの防犯センサ10が動作したかを認識することができる。
【0026】
例えば、図2(b)は図2(a)のような出力を有するセンサを図3に示す測定回路22で測定した出力電圧の例であるが、上記したような防犯センサ10の一連の動作の間、電源発生回路12からは、図2(b)に示されているように、100mVの電圧が10m秒の間、出力される一方、処理回路13を構成するマイクロコンピュータ等の命令処理速度は数マイクロ秒以内である。すなわち、電源発生回路12の出力電圧が処理回路13の動作電圧以下になるまでに上記処理を完了することが可能であり、これにより、電源の不要な防犯センサ10の実現が可能となる。なお、図3に示す例は、100kΩの抵抗に電流を流し、処理回路13で必要な消費電力を想定した場合の測定回路であるが、処理回路13における必要な処理内容によりセンサの出力性能、電圧、電流、有効時間等を選択することができることは勿論である。
【0027】
このように上記した本発明の実施の形態に係る防犯センサ10によれば、大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性素子11が発生したパルス電圧に基づき電源発生回路12が発生した電力を利用して処理回路13が動作するように構成されているため、別個に電源を必要としない。したがって、省電力化が可能となり、メンテナンスが不要となると共に、複雑な配線等が不要となり、構成が単純となるため、コストの低減化が可能となり、装置の信頼性を高めることができる。
【0028】
さらに、磁性素子11が発生したパルス電圧をトリガとして処理回路13が起動するため、防犯センサ10はメイン装置からの働き掛けがなくても、動作することが可能となる。そのため、前記メイン装置と防犯センサ10との間で複数の問合せ信号が同時に発生し、メイン装置の負荷が増大したり、データを取りこぼしたりすることがなく、リアルタイムの監視を行うことができる。
【0029】
さらにまた、本発明の実施の形態に係る防犯センサ10は、外部からの電源供給が不要なため、防爆等の安全を考慮しなければならない設備に適用しても、配線に多大な安全構造を施す必要がない。したがって、そのような安全を考慮しなければならない設備にも本発明の実施の形態に係る防犯センサ10を容易に適用することができ、適用範囲の拡大化を図ることができる。
【0030】
なお、上記した実施の形態では、外部の磁気変化に反応して電力を発生する磁気センサとして、大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性素子を使用した場合について説明したが、本発明はこの場合に限定されるものではなく、例えば、電磁ピックアップ等、大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性素子以外の磁気センサを使用した場合にも適用可能である。
【0031】
また、上記した実施の形態では、本発明に係る検出装置を防犯センサ10に適用した場合について説明したが、これは単なる例示に過ぎず、本発明は、冷蔵庫のドア、携帯電話の蓋、自動車の燃料やオイル等の液面管理装置、振動感知センサ、地震計等、その他の各種分野の検出装置に適用可能であることは言う迄もない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態に係る防犯センサの概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る防犯センサにおいて、(a)は磁性素子11が発生するパルス信号を示す図、(b)は電源発生回路12により整流及び平滑された出力電圧を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る防犯センサにおいて、は図2(b)に示す出力電圧を測定するための測定回路を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
10 防犯センサ
11 磁性素子
12 電源発生回路
13 処理回路
16 整流回路
17 平滑回路
18 起動処理回路
19 信号送出処理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気センサが発生したパルス電圧を検出する検出装置であって、
前記磁気センサが発生したパルス電圧を利用して電力を発生する電源発生回路と、
該電源発生回路が発生した電力を利用して所定の処理を実行する処理回路と、
を備えていることを特徴とする検出装置。
【請求項2】
前記磁気センサは、大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性素子である請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記電源発生回路は、前記磁性素子が発生したパルス電圧を整流する整流回路と、該整流回路が整流した電圧を平滑して充電する平滑回路とを備え、
前記処理回路は、前記平滑回路に充電された電圧を利用して起動処理を実行する起動処理回路と、該起動処理回路が実行した起動処理により所定の信号を出力する処理を実行する信号送出処理回路とを備えている請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項4】
防犯センサに設けられており、前記起動処理回路は、該防犯センサの位置を特定するための識別コードを生成する処理を実行する請求項3に記載の検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−15683(P2009−15683A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178218(P2007−178218)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(591168345)HST株式会社 (16)
【Fターム(参考)】