説明

検出装置

【課題】タッチ操作の検出感度を向上させることができる検出装置を提供する。
【解決手段】実施の形態に係る検出装置1は、交流信号を生成する発振部2と、発振部2から出力された交流信号の位相を反転させた反転信号を生成する反転素子31、および容量性リアクタンスを有する複数の容量性リアクタンス素子を含み、交流信号と反転信号とを加算した加算信号を出力する加算信号生成部3と、加算信号生成部3に電気的に接続され、タッチ操作を検出する検出部4と、検出部4によるタッチ操作の検出に基づいて加算信号生成部3から出力された加算信号を増幅する増幅部5と、を備えて概略構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、方形波を出力する発振源と、方形波が入力する第1抵抗と、方形波を反転した反転波を出力する反転手段と、反転手段を介して出力される方形波が入力する第2抵抗と、第2抵抗の下流側に接続された検出電極と、検出電極よりも下流側に接続された第3抵抗とを備えた静電容量変化検出回路が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この静電容量変化検出回路によれば、検出電極にタッチ操作がなされていないとき、方形波と反転波とを加算した信号がゼロとなり、また、タッチ操作がなされたとき、加算した信号がゼロではなくなるので、加算した信号の増幅率を高く設定することが可能となり、感度の高い静電容量の変化を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−306679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、電子回路には、電子回路の物理的な構造により発生する、不可避的な容量成分(寄生容量)が発生することが知られている。従って、従来の静電容量変化検出回路は、この寄生容量が発生している。つまり、従来の静電容量変化検出回路は、この寄生容量と複数の抵抗とを有していることから、回路のインピーダンスに実部と虚部とが現れ、タッチ操作がなされていないとき、加算された信号をゼロにすることができず、加算された信号の増幅率を上げることが困難であった。
【0006】
従って、本発明の目的は、タッチ操作の検出感度を向上させることができる検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、交流信号を生成する発振部と、発振部から出力された交流信号の位相を反転させた反転信号を生成する反転素子、および容量性リアクタンスを有する複数の容量性リアクタンス素子、を含み、交流信号と反転信号とを加算した加算信号を出力する加算信号生成部と、加算信号生成部に電気的に接続され、タッチ操作を検出する検出部と、検出部によるタッチ操作の検出に基づいて加算信号生成部から出力された加算信号を増幅する増幅部と、を備えた検出装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、タッチ操作の検出感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施の形態に係る検出装置の回路図である。
【図2】図2(a)は、実施の形態に係る交流信号の振幅の時間変化を示す概略図であり、(b)は、反転素子から出力される反転信号の振幅の時間変化を示す概略図であり、(c)は、加算信号生成部から出力される加算信号の振幅の時間変化を示す概略図であり、(d)は、検波部から出力される検波信号の振幅の時間変化を示す概略図である。
【図3】図3は、比較例に係る検出装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態の要約)
実施の形態に係る検出装置は、交流信号を生成する発振部と、発振部から出力された交流信号の位相を反転させた反転信号を生成する反転素子、および容量性リアクタンスを有する複数の容量性リアクタンス素子、を含み、交流信号と反転信号とを加算した加算信号を出力する加算信号生成部と、加算信号生成部に電気的に接続され、タッチ操作を検出する検出部と、検出部によるタッチ操作の検出に基づいて加算信号生成部から出力された加算信号を増幅する増幅部と、を備える。
【0011】
[実施の形態]
(検出装置の構成)
図1は、実施の形態に係る検出装置の回路図である。図2(a)は、実施の形態に係る交流信号の振幅の時間変化を示す概略図であり、(b)は、反転素子から出力される反転信号の振幅の時間変化を示す概略図であり、(c)は、加算信号生成部から出力される加算信号の振幅の時間変化を示す概略図であり、(d)は、検波部から出力される検波信号の振幅の時間変化を示す概略図である。図2(a)〜(d)は、縦軸が電圧(V)、横軸が時間(t)である。
【0012】
実施の形態に係る検出装置1は、図1に示すように、交流信号を生成する発振部2と、発振部2から出力された交流信号の位相を反転させた反転信号を生成する反転素子31、および容量性リアクタンスを有する複数の容量性リアクタンス素子を含み、交流信号と反転信号とが合流する点xにおいて交流信号と反転信号とを加算した加算信号を出力する加算信号生成部3と、加算信号生成部3に電気的に接続され、タッチ操作を検出する検出部4と、検出部4によるタッチ操作の検出に基づいて加算信号生成部3から出力された加算信号を増幅する増幅部5と、を備えて概略構成されている。なお、タッチ操作とは、例えば、操作者の手指が検出部4の電極40に触れる操作のことを示している。
【0013】
また、検出装置1は、増幅部5から出力された増幅信号を検波する検波部6を備えている。
【0014】
発振部2から出力される交流信号は、例えば、図2(a)に示すように、電圧Hi(>0)と電圧Lo(<0)とを周期的に繰り返す矩形波である。電圧Hiと電圧Loは、一例として、その絶対値は等しいものとする。なお、発振部2は、矩形波以外の波形を有する交流信号を出力するように構成されていても良い。
【0015】
加算信号生成部3は、反転素子31と並列となるように発振部2と電気的に接続する第1の容量性リアクタンス素子としての第1のコンデンサ30と、発振部2と電気的に接続する反転素子31と電気的に接続する第2の容量性リアクタンス素子としての第2のコンデンサ32と、第1のコンデンサ30および第2のコンデンサ32に電気的に接続する第3の容量性リアクタンス素子としての第3のコンデンサ33と、を備えて概略構成されている。
【0016】
第1のコンデンサ30は、例えば、静電容量がCである。第2のコンデンサ32は、例えば、静電容量がCである。第3のコンデンサ33は、例えば、静電容量がCである。この静電容量C〜静電容量Cは、加算信号生成部3から出力される加算信号が、タッチ操作がなされていないとき、その振幅がゼロとなる静電容量とされる。
【0017】
検出部4は、例えば、導電体を用いて形成された電極40を備えて概略構成されている。本実施の形態に係る電極40は、例えば、金属材料を用いて形成される。この電極40は、例えば、加算信号生成部3の第2のコンデンサ32と第3のコンデンサ33との間に電気的に接続されている。
【0018】
検出部4は、例えば、図1に示すように、電極40にタッチ操作がなされるとき、電極40と接地との間にコンデンサ41が発生する。このコンデンサ41は、例えば、静電容量が操作者により異なるため、ΔCで示すものとする。
【0019】
増幅部5は、非反転入力端子(+)が接地されたオペアンプ51と、一方が第1のコンデンサ30および第3のコンデンサ33、他方がオペアンプ51の反転入力端子(−)に電気的に接続された抵抗52と、一方がオペアンプ51の反転入力端子、他方がオペアンプ51の出力端子に電気的に接続された抵抗53と、オペアンプ51の出力端子に電気的に接続され、直流成分を遮断するコンデンサ54と、を備えて概略構成されている。この増幅部5は、例えば、抵抗52の抵抗値をR、抵抗53の抵抗値をRとするとき、増幅率がR/Rとなる、増幅信号を出力するように構成されている。
【0020】
検波部6は、例えば、入力する増幅信号に対して全波整流を行うためにブリッジ回路とされた第1のダイオード60〜第4のダイオード3と、ブリッジ回路から出力された信号を平滑化するコンデンサ64と、時定数を決定する抵抗65と、を備えて概略構成されている。
【0021】
第1のダイオード60のアノードは、第4のダイオード63のアノードに電気的に接続され、さらに接地されている。また、第1のダイオード60のカソードは、第2のダイオード61のアノードに電気的に接続されている。第2のダイオード61のカソードは、第3のダイオード62のカソードと電気的に接続され、さらにコンデンサ64に電気的に接続されている。第3のダイオード62のアノードは、第4のダイオード63のカソードに電気的に接続され、さらに接地されている。
【0022】
この検波部6は、例えば、時間t〜時間tにおいて、電圧0を境に振幅する増幅信号を全検波し、図2(d)に示すように、タッチ操作が行われている期間(時間t〜時間t)において、一定電圧Vとなる検波信号を生成する。検波部6から出力される検波信号は、図2(d)に示すように、タッチ操作が行われていない場合、電圧はゼロとなる。
【0023】
以下に、実施の形態の加算信号と比較例の加算信号と、を比較することにより、タッチ操作の検出感度について説明する。
【0024】
(検出装置の検出感度について)
図3は、比較例に係る検出装置の回路図である。比較例に係る検出装置7は、図3に示すように、発振部70と、加算信号生成部71と、検出部73と、を備えている。発振部70は、例えば、実施の形態に係る発振部2に対応する。検出部73は、例えば、実施の形態に係る検出部4に対応する。比較例では、実施の形態の増幅部5および検波部6は、省略している。
【0025】
加算信号生成部71は、実施の形態に係る加算信号生成部3の第1のコンデンサ30が第1の抵抗711、第2のコンデンサ32が第2の抵抗712、および第3のコンデンサ33が第3の抵抗713に置き換わった構成を有する。
【0026】
第1の抵抗711は、例えば、抵抗値がRである。第2の抵抗712は、例えば、抵抗値がRである。第3の抵抗713は、例えば、抵抗値がRである。
【0027】
また、加算信号生成部71は、交流信号と反転信号とが合流する点yから加算信号を出力する。
【0028】
一般的に電子回路には、電子回路の物理的な構造、例えば、基板と、基板に配置された配線との関係により発生する、不可避的な容量成分(寄生容量C)が発生することが知られている。この寄生容量Cは、例えば、図1および図3において、寄生容量10および寄生容量72として図示している。
【0029】
また、比較例の電極730にタッチ操作がなされるとき、電極730と接地との間にコンデンサ74が発生する。なお、図1および図3では、寄生容量は、加算信号生成部と検出部との間に図示しているが、増幅部までのいずれかの位置に発生する寄生容量をまとめて図示したものである。
【0030】
検出部に対するタッチ操作の検出を高感度で行うためには、加算信号をより大きな増幅率で増幅することが求められる。そのためには、タッチ操作がなされていない状態で、加算信号がゼロであることが望ましい。なぜなら、加算信号がゼロでない場合、増幅部による増幅率を大きくすることにより、タッチ操作がなされていない場合であっても増幅部から出力される増幅信号が飽和してしまう可能性があるからである。
【0031】
ここで、比較例の加算信号生成部71に入力する電圧Vinと、加算信号生成部71の点yにおける加算信号の電圧Vと、の関係は、以下の式(1)から求められる。ただし、タッチ操作はなされていないものとする。
=Vin×(R+R−R+j×ω×C×R×R)/{R+R+R+j×ω×C×(R×R+R×R)}・・・(1)
j:虚数単位
ω:交流の角周波数
【0032】
一方、実施の形態の加算信号生成部3に入力する電圧Vinと、加算信号生成部3の点xにおける加算信号の電圧Vと、の関係は、以下の式(2)から求められる。ただし、タッチ操作はなされていないものとする。
=Vin×(C×C+C×C+C×C−C×C)/(C×C+C×C+C×C+C×C+C×C)・・・(2)
【0033】
比較例では、第1の抵抗712〜第3の抵抗713のみならず、不可避的な寄生容量Cが存在するため、電圧Vinと電圧Vとの関係式に、虚数単位が現れ、この式(1)の分子(R+R−R+jωC×R×R)をゼロにすることができない。従って、比較例の加算信号は、タッチ操作がなされていない状態であってもゼロにすることはできない。つまり、比較例の検出装置7は、検出感度を上げるため、タッチ操作がなされたときの加算信号の増幅率を大きくすると、タッチ操作がなされていないときの増幅信号が飽和する問題が生じる。
【0034】
一方、実施の形態では、静電容量C〜静電容量C、および不可避的な寄生容量Cを用いて電圧Vinと電圧Vとの関係式を求めることができるので、虚数単位が現れず、式(2)の分子(C×C+C×C+C×C−C×C)をゼロとすることができる。従って、実施の形態の検出装置1は、タッチ操作がなされていないときの加算信号をゼロとすることができるので、比較例と比べて、増幅率を大きくしても、タッチ操作がなされていないときの増幅信号が飽和することはない。
【0035】
以上の結果により、静電容量C〜静電容量Cは、加算信号をゼロとなる条件、すなわち、式(2)の分子をゼロとすることにより求められる。
【0036】
以下に、本実施の形態に係る検出装置1の動作について、各図を参照しながら説明する。なお、タッチ操作は、図2(d)に示すように、時間t〜時間tの間、継続的に行われたものとする。
【0037】
(動作)
まず、図2(a)に示すように、発振部2より、交流信号が出力され、加算信号生成部3に入力する。
【0038】
加算信号生成部3の反転素子31は、入力した交流信号の位相を反転した反転信号を生成する。
【0039】
ここで、検出部4に対するタッチ操作がなされていない場合、第1のコンデンサ30を経由した交流信号と、反転素子31、第2のコンデンサ32および第3のコンデンサ33を経由した反転信号と、を点xにおいて加算した加算信号は、ゼロとなる。つまり、検出装置1は、タッチ操作がなされていない場合、ゼロとなる検波信号を検波部6から出力する。
【0040】
一方、検出部の電極40にタッチ操作がなされた場合、コンデンサ41が形成されることから静電容量ΔCが検出部4と接地との間に現れる。この静電容量ΔCにより、図2(b)に示すように、タッチ操作が行われた時間t〜時間tにおいて、反転信号の電圧Hiが+Vに、電圧Loが−Vに変化するので、加算信号は、図2(c)に示すように、タッチ操作が行われた期間内において、電圧+Vおよび電圧−Vを繰り返す信号となる。
【0041】
加算信号は、増幅部5により、予め定められた増幅率に増幅され、検波部6に出力される。
【0042】
検波部6は、入力する増幅信号を全検波し、図2(d)に示すように、タッチ操作が行われた期間において、一定電圧Vとなる検波信号を出力する。この検波信号は、例えば、検出装置1に接続された判定装置に出力される。判定装置は、例えば、この入力した検波信号に基づいて、時間t〜時間tの間おいて、タッチ操作がなされたと判定する。
【0043】
(実施の形態の効果)
本実施の形態に係る検出装置1によれば、加算信号生成部に抵抗成分が含まれる場合と比べて、タッチ操作の検出感度を向上させることができる。
【0044】
また、本実施の形態に係る検出装置1によれば、加算信号生成部に抵抗成分が含まれる場合と比べて、増幅部5の増幅率を高くすることが可能となり、タッチ操作の検出感度を向上させることができる。
【0045】
さらに、本実施の形態に係る検出装置1は、加算信号生成部に抵抗成分が含まれる場合と比べて、加算信号をゼロとする第1のコンデンサ30、第2のコンデンサ32および第3のコンデンサ33の静電容量を容易に決定することができ、検出装置1の設計が容易となる。
【0046】
以上、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、一例に過ぎず、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更等を行うことができる。また、これら実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない。さらに、これら実施の形態は、発明の範囲及び要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1…検出装置、2…発振部、3…加算信号生成部、4…検出部、5…増幅部、6…検波部、7…検出装置、10…寄生容量、30…第1のコンデンサ、31…反転素子、32…第2のコンデンサ、33…第3のコンデンサ、40…電極、41…コンデンサ、51…オペアンプ、52…抵抗、53…抵抗、54…コンデンサ、60〜63…第1のダイオード〜第4のダイオード、64…コンデンサ、65…抵抗、70…発振部、71…加算信号生成部、72…寄生容量、73…検出部、74…コンデンサ、711…第1の抵抗、712…第2の抵抗、713…第3の抵抗、730…電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流信号を生成する発振部と、
前記発振部から出力された前記交流信号の位相を反転させた反転信号を生成する反転素子、および容量性リアクタンスを有する複数の容量性リアクタンス素子、を含み、前記交流信号と前記反転信号とを加算した加算信号を出力する加算信号生成部と、
前記加算信号生成部に電気的に接続され、タッチ操作を検出する検出部と、
前記検出部による前記タッチ操作の検出に基づいて前記加算信号生成部から出力された前記加算信号を増幅する増幅部と、
を備えた検出装置。
【請求項2】
前記加算信号は、前記検出部に前記タッチ操作がなされない状態では振幅がゼロとなる請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記加算信号生成部は、前記反転素子と並列となるように前記発振部と電気的に接続する第1の容量性リアクタンス素子と、前記反転素子と電気的に接続する第2の容量性リアクタンス素子と、前記第1の容量性リアクタンス素子および前記第2の容量性リアクタンス素子に電気的に接続する第3の容量性リアクタンス素子と、を備える請求項2に記載の検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−156799(P2012−156799A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14190(P2011−14190)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】