説明

検査システム及び検査装置

【課題】検査対象となる物品全体の中で、他の部位とは異なる検査条件が適用されるべき特定の部位を予め指定することができないような場合にも、そのような特定の部位にその他の部位とは異なる検査条件を適用することを可能にし、物品を効率よく検査することができる検査システム及び検査装置を提供する。
【解決手段】検査システム1は、金属検査装置10と、X線検査装置20とを備える。金属検査装置10は、物品Pを検査する。X線検査装置20は、金属検査装置10よりも物品Pの搬送方向について下流側に位置する。X線検査装置20は、物品Pの指定部位202と指定部位202以外の物品Pの非指定部位201,203とに異なる画像処理ルーチンR1,R2を適用して、物品Pを検査する。指定部位202は、金属検査装置10による物品Pの検査結果に基づいて指定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を検査する検査システム及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等の商品の生産ラインにおいては、商品に異物が混入している場合、包装内に必要な商品が含まれていない場合、又は商品に割れ欠けがある場合等にそのような不良商品が出荷されることを防止するために、X線検査装置や金属検査装置等の検査装置により商品の検査がなされることがある。
【0003】
特許文献1には、医薬品の包装容器内に能書等の添付品が添付されているか否かを検査するX線検査装置が開示されている。このX線検査装置では、能書が添付される予定位置が考慮された上で、X線画像に能書が写りやすい方向からX線が照射されたり、X線画像上の能書が添付される予定位置に対してのみ画像処理が施されたり等、添付品の有無の判断が容易になるように工夫されている。
【0004】
このように、従来より、検査対象となる物品全体に一律の検査条件を適用するのではなく、物品全体の中の特定の部位にその他の部位とは異なる検査条件を適用する検査方法が提案されている。
【特許文献1】特開平9−159770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のX線検査装置を利用するためには、検査対象となる物品全体の中で、他の部位とは異なる検査条件が適用されるべき部位を予め指定する必要がある。従って、例えば、どの部位に異物が混入しているのかを予測できないような商品について異物の混入を検査する場合には、特許文献1のX線検査装置を利用することは困難である。
【0006】
本発明の課題は、検査対象となる物品全体の中で、他の部位とは異なる検査条件が適用されるべき特定の部位を予め指定することができないような場合にも、そのような特定の部位にその他の部位とは異なる検査条件を適用することを可能にし、物品を効率よく検査することができる検査システム及び検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る検査システムは、上流側検査装置と、下流側検査装置とを備える。上流側検査装置は、物品を検査する。下流側検査装置は、上流側検査装置よりも物品の搬送方向について下流側に位置する。下流側検査装置は、物品の指定部位と指定部位以外の物品の非指定部位とに異なる検査条件を適用して、物品を検査する。指定部位は、上流側検査装置による物品の検査結果に基づいて指定される。
【0008】
この検査システムでは、検査対象となる物品が上流側検査装置において検査された後、同じ物品が下流側検査装置においても検査される。そして、下流側検査装置では、上流側検査装置による物品の検査結果に基づいて、物品全体の中で他の部位とは異なる検査条件が適用されるべき特定の部位が指定される。これにより、この検査システムでは、検査対象となる物品全体の中で、他の部位とは異なる検査条件が適用されるべき特定の部位を予め指定することができないような場合にも、そのような特定の部位にその他の部位とは異なる検査条件を適用することが可能になり、物品を効率よく検査することができる。
【0009】
第2発明に係る検査システムは、第1発明に係る検査システムであって、下流側検査装置は、X線源と、X線受光部と、画像処理部とを有する。X線源は、物品にX線を照射する。X線受光部は、X線源からのX線を受光する。画像処理部は、X線受光部により受光されたX線に基づいてX線画像を生成し、X線画像上の指定部位と非指定部位とに異なる検査条件を適用してX線画像に画像処理を施す。
【0010】
この検査システムでは、下流側検査装置において物品のX線画像が生成され、生成されたX線画像に画像処理が施されることにより、物品が検査される。このとき、下流側検査装置では、上流側検査装置による物品の検査結果に基づいて、X線画像上の物品の部位ごとに異なる検査条件が適用されて画像処理が施される。例えば、異物の混入が検査される場合であれば、上流側検査装置において異物の混入が検出された部位に対しては、その他の部位に対するよりもより多くのリソースを必要とするより高度な画像処理アルゴリズムを適用したり、異物の判定に利用される閾値をより低く設定したり等が可能になる。これにより、この検査システムでは、物品のX線画像に効率良く画像処理を施すことができる。
【0011】
第3発明に係る検査システムは、第2発明に係る検査システムであって、画像処理部は、上述の画像処理が施されたX線画像を指定部位が明示された態様で出力する。
【0012】
この検査システムでは、上流側検査装置による検査結果と下流側のX線検査装置による検査結果とを重ね合わせた画像が出力される。これにより、この検査システムの利用者は、検査システム全体の検査結果を視覚的に把握することができる。
【0013】
第4発明に係る検査システムは、第2発明又は第3発明に係る検査システムであって、上流側検査装置は、金属検出部を有する。金属検出部は、物品に含まれる金属を検出する。指定部位は、物品のうち金属検出部により金属が検出された部位である。なお、本発明において、「金属」とは、金属だけでなく、脱酸素剤等の金属の性質を有する物質も含むものとする。
【0014】
一般的に、X線検査装置では、検査対象となる物品にX線透過方向に厚みのない異物が混入していた場合、異物を透過したことによるX線の減衰は殆どなく、そのような異物はX線画像上には殆ど現れない可能性がある。さらに、物品にX線透過方向に厚みのある異物が混入していたとしても、X線透過方向から見た異物の大きさが非常に小さいような場合には、異物がX線画像上に写し出されたとしても誤差として処理されてしまう可能性がある。
【0015】
第4発明に係る検査システムでは、上流側に金属検査装置が配置され、下流側にX線検査装置が配置される構成となっている。金属検査装置は、X線検査装置では検出されにくい薄い異物であっても金属であれば、高感度に検出することができる。これにより、この検査システムでは、検査対象となる物品全体の中で金属検査装置により金属の混入が検出された部位については、X線検査装置によりその他の部位よりも詳細に検査することが可能になり、金属を高感度に検出することができる。
【0016】
第5発明に係る検査システムは、第4発明に係る検査システムであって、金属検出部は、送信コイルと、受信コイルと、信号生成部とを有する。送信コイルは、交番磁界を発生させる。受信コイルは、交番磁界内に配置される。信号生成部は、受信コイルを流れる電流の波形に基づいて金属検出信号を生成する。画像処理部は、物品を仮想的に複数の部位に分割し、分割された複数の部位ごとの体積をX線受光部により受光されたX線に基づいて算出し、算出された体積で信号生成部により生成された金属検出信号を正規化し、正規化された金属検出信号に基づいて指定部位を指定する。
【0017】
例えば、精肉を検査する場合を想定する。この場合、精肉中の血液に含まれる鉄分等の金属は、金属検査装置から出力される金属検出信号に影響を与える。従って、検査対象となる物品によっては、物品に異物として含まれる金属を検出するに際して、物品本体の性質により検査の精度が低下する虞がある。
【0018】
第5発明に係る検査システムでは、金属検査装置から出力される金属検出信号が、検査対象となる物品の体積により正規化される。そして、正規化された金属検出信号に基づいて、物品全体の中で金属が含まれると判定される部位が指定される。これにより、この検査システムでは、物品本体が金属検出信号に与える影響を最小化して、物品に異物として含まれる金属をより高感度に検出することができる。
【0019】
第6発明に係る下流側検査装置は、物品を検査する上流側検査装置よりも物品の搬送方向について下流側に位置する下流側検査装置であって、受け取り手段と、検査手段とを備える。受け取り手段は、上流側検査装置による物品の検査結果を受け取る。検査手段は、物品の指定部位と指定部位以外の物品の非指定部位とに異なる検査条件を適用して、物品を検査する。指定部位は、受け取り手段により受け取られた物品の検査結果に基づいて指定される。
【0020】
この下流側検査装置では、上流側検査装置において検査された後の物品が検査される。そして、上流側検査装置による物品の検査結果に基づいて、物品全体の中で他の部位とは異なる検査条件が適用されるべき特定の部位が指定される。これにより、この下流側検査装置では、検査対象となる物品全体の中で、他の部位とは異なる検査条件が適用されるべき特定の部位を予め指定することができないような場合にも、そのような特定の部位にその他の部位とは異なる検査条件を適用することが可能になり、物品を効率よく検査することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る検査システム及び検査装置によれば、検査対象となる物品全体の中で、他の部位とは異なる検査条件が適用されるべき特定の部位を予め指定することができないような場合にも、そのような特定の部位にその他の部位とは異なる検査条件を適用することが可能になり、物品を効率よく検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図1〜10を参照して、本発明の一実施形態に係る検査システム1を説明する。
【0023】
<検査システム1の構成>
図1は、検査システム1の外観図を示す。検査システム1は、図1に示すように、金属検査装置10及びX線検査装置20を備えており、食品等の商品の生産ラインにおいて商品の品質検査を行うためのものである。なお、図1において、後述する振分機構70は省略されている。
【0024】
検査システム1の検査対象となる物品Pは、金属検査装置10の搬送コンベア11上及びX線検査装置20の搬送コンベア22上を矢印Aの向きに搬送される。搬送コンベア11及び搬送コンベア22は、略同じ高さとなるように略水平に設置されており、物品Pは、搬送コンベア11上から搬送コンベア22上へ滑らかに移動する。
【0025】
金属検査装置10は、搬送コンベア11上を搬送される物品Pに金属(脱酸素剤等の金属の性質を有する物質を含む。以下、同じ。)が含まれるか否かを検査する。X線検査装置20は、搬送コンベア22上を搬送される物品PにX線を照射して物品PのX線画像100(図10(b)参照)を生成し、金属検査装置10による物品Pの検査結果に基づいてX線画像100に画像処理を施すことにより、物品Pに異物が含まれるか否かを検査する。
【0026】
(金属検査装置10の構成)
金属検査装置10は、図2に示すように、搬送コンベア11、金属検出部12、光電センサ16及び制御部30を備えており、図3及び図4に示すように、搬送コンベア11によって複数の物品Pを連続的に搬送しながら、物品Pに金属が含まれるか否かを検査する。
【0027】
〔搬送コンベア11〕
搬送コンベア11は、駆動ローラによって無端状のベルトを回転させながら、ベルト上に載置された物品Pを矢印A(図1,図3,図4参照)の向きに搬送する。搬送コンベア11の搬送速度は、制御部30により、搬送コンベア22の搬送速度と同じになるように制御されている。
【0028】
〔金属検出部12〕
金属検出部12は、図1に示すように、上部ヘッド12a及び下部ヘッド12bを備えており、搬送コンベア11によって搬送される物品Pに含まれる金属を検出する。
【0029】
上部ヘッド12aは、下部ヘッド12bとともに搬送コンベア11の中央部分を挟み込むように配置されている。そして、上部ヘッド12aは、図4に示すように、送信コイル13を内部に備えている。送信コイル13は、金属検出部12に含まれる発振回路37(図2参照)から電流が印加されると、下部ヘッド12bを含む領域に交番磁界を発生させる。
【0030】
一方、下部ヘッド12bは、図4に示すように、内部に2つの受信コイル14a,14bを備えている。すなわち、受信コイル14a,14bは、送信コイル13によって形成される交番磁界内に配置されている。また、受信コイル14aと受信コイル14bとは、同様の構成を有しており、送信コイル13の中央線に対して対称な位置に配置されている。従って、交番磁界が送信コイル13を流れる電流の影響のみを受けて形成される場合には、2つの受信コイル14a,14b内を流れる電流の波形は釣り合うことになる。
【0031】
ところが、金属を含む物品Pが交番磁界内を通過する場合には、金属が交番磁界に影響を及ぼすため、2つの受信コイル14a,14b内を流れる電流の波形に差分が生じる。このとき、金属検出部12に含まれる検波・フィルタ回路36(図2参照)は、2つの受信コイル14a,14bを流れる電流の波形の差分を検出して、金属検出信号を生成する。続いて、金属検出部12に含まれるA/D変換回路38(図2参照)は、検波・フィルタ回路36から金属検出信号を受け取り、A/D変換した後、制御部30に送る。これにより、金属検出部12は、搬送コンベア11上を通過する物品Pに含まれる金属を容易に検出することができる。
【0032】
〔光電センサ16〕
光電センサ16は、図3に示すように、搬送コンベア11を介して対向する発光素子16a及び受光素子16bを有している。発光素子16a及び受光素子16bは、金属検出部12の上部ヘッド12a及び下部ヘッド12bの直上流側であって、搬送コンベア11の側方に配置されている。発光素子16aは、受光素子16bに向けて光を照射し、受光素子16bは、発光素子16aから照射された光を受光する。但し、物品Pが発光素子16aと受光素子16bとの間を搬送コンベア11により搬送されている間は、発光素子16aから照射された光は物品Pにより遮光されることになる。つまり、発光素子16aから照射された光が物品Pによって遮光されるタイミングを計測することにより、交番磁界の形成された検査領域を物品Pが通過するタイミングを測定することができる。
【0033】
〔制御部30〕
制御部30は、図2に示すように、バスライン32、CPU31、I/Oインターフェース33、ROM34及びRAM35を備えている。
【0034】
CPU31は、バスライン32を介して、I/Oインターフェース33、ROM34及びRAM35に接続されており、さらに、I/Oインターフェース33を介して、搬送コンベア11及び光電センサ16に接続されている。これにより、CPU31は、ROM34等に格納されている各種プログラムをRAM35に読み出して実行することにより、金属検査装置10を構成する各部11,12,16の動作を制御することができる。また、CPU31は、バスライン32を介して、金属検出部12の発振回路37及びA/D変換回路38にも接続されている。これにより、CPU31は、発振回路37が送信コイル13に電流を印加する動作を制御するとともに、受信コイル14a,14bを流れる電流の波形に基づいて生成される金属検出信号をA/D変換回路38から受け取ることができる。
【0035】
また、I/Oインターフェース33は、図2に示すように、X線検査装置20のI/Oインターフェース53に接続されている。これにより、制御部30は、X線検査装置20の制御部50(図6参照)と信号をやりとりすることができ、A/D変換回路38から受け取ったA/D変換された金属検出信号を制御部50に送る等している。
【0036】
(X線検査装置20の構成)
X線検査装置20の搬送コンベア22上には、図5に示すように、金属検査装置10で検査された後の物品Pが搬送コンベア11により連続的に運ばれてくる。
【0037】
X線検査装置20は、搬送コンベア22によって複数の物品Pを連続的に搬送しながら、物品PにX線を照射してX線画像100(図10(b)参照)を生成する。そして、X線検査装置20は、金属検査装置10による物品Pの検査結果を受け取り、その検査結果に基づいてX線画像100に後述する画像処理を施すことにより、物品Pに異物が含まれるか否かを検査する。
【0038】
X線検査装置20による物品Pの検査結果は、X線検査装置20の下流側に配置される振分機構70(図5参照)に送られる。振分機構70は、X線検査装置20において物品Pに異物が含まれると判定された場合には、物品Pをそのまま正規のラインコンベア80へと搬送する。一方、X線検査装置20において物品Pに異物が含まれないと判定された場合には、下流側の端部を回転軸とする振分機構70のアーム70aが搬送路を遮るように回動する。これにより、異物が含まれると判定された物品Pは、搬送路から外れた位置に配置された不良品回収箱90によって回収される。
【0039】
X線検査装置20は、図1に示すように、シールドボックス21、搬送コンベア22、遮蔽ノレン25及びタッチパネル機能付きのモニタ26を備えており、さらに、図6に示すように、X線照射器23、X線ラインセンサ24、コンベアモータ22f、ロータリエンコーダ22g、光電センサ27及び制御部50を備えている。なお、X線照射器23、X線ラインセンサ24、コンベアモータ22f、ロータリエンコーダ22g、光電センサ27及び制御部50は、シールドボックス21の内部に収容されている。
【0040】
〔シールドボックス21〕
シールドボックス21の両側面には、図1に示すように、物品Pをシールドボックス21内に搬入し、又はシールドボックス21内から搬出するための開口21aが形成されている。開口21aは、図1に示すように、シールドボックス21の外部へのX線の漏洩を防止するために、遮蔽ノレン25によって塞がれている。遮蔽ノレン25は、鉛を含むゴム製のノレン部分を有しており、物品Pが搬入又は搬出される際に物品Pによって押しのけられる。
【0041】
また、シールドボックス21の正面上部には、モニタ26の他、キーの差し込み口や電源スイッチが配置されている。
【0042】
〔搬送コンベア22〕
搬送コンベア22は、図1に示すように、シールドボックス21の両側面に形成された開口21aを貫通するように配置されている。そして、搬送コンベア22は、コンベアモータ22f(図6参照)によって駆動される駆動ローラによって無端状のベルトを回転させながら、ベルト上に載置された物品Pを矢印Aの向きに搬送する。搬送コンベア22の搬送速度は、操作者が入力した設定速度になるように、制御部50によるコンベアモータ22fのインバータ制御によって細かく制御される。
【0043】
また、コンベアモータ22fには、ロータリエンコーダ22gが装着されており、搬送コンベア22の搬送速度を検出して制御部50に送る。
【0044】
〔X線照射器23〕
X線照射器23は、図7に示すように、搬送コンベア22の上方に配置されており、下方のX線ラインセンサ24に向けて扇状の照射範囲KにX線を照射する。
【0045】
〔X線ラインセンサ24〕
X線ラインセンサ24は、図7に示すように、搬送コンベア22の下方に配置されており、物品Pや搬送コンベア22を透過したX線を検出する。X線ラインセンサ24は、図8に示すように、搬送コンベア22の搬送方向に直交する向きに一直線に水平配置された複数の画素24aから構成されている。
【0046】
なお、図8は、X線検査装置20内におけるX線の照射状態と、その時のX線ラインセンサ24を構成する各画素24aにおいて検出されるX線量を示すグラフとを示している。
【0047】
〔モニタ26〕
モニタ26は、フルドット表示の液晶ディスプレイである。また、モニタ26は、タッチパネル機能を有しており、金属検査装置10及びX線検査装置20の初期設定や金属検査装置10及びX線検査装置20の動作に関する動作パラメータの入力等を操作者に促す画面を表示する。
【0048】
また、モニタ26は、後述する最終的な出力画像200を表示する。これにより、操作者は、物品Pに含まれる異物の有無、場所、大きさを視覚的に認識することができる。
【0049】
〔光電センサ27〕
光電センサ27は、X線ラインセンサ24の直上流側であって搬送コンベア22の側方に配置されている点を除き、光電センサ16と同様の構成を有しており、物品PがX線ラインセンサ24の位置にくるタイミングを測定することができる。
【0050】
〔制御部50〕
制御部50は、図6に示すように、バスライン52、CPU51、I/Oインターフェース53、ROM54、RAM55及びコンパクトフラッシュ(登録商標)(以下、CF)56を備えている。
【0051】
CPU51は、バスライン52を介して、I/Oインターフェース53、ROM54、RAM55及びCF56に接続されており、さらに、I/Oインターフェース53を介して、コンベアモータ22f、ロータリエンコーダ22g、X線照射器23、X線ラインセンサ24、モニタ26、光電センサ27及び振分機構70に接続されている。これにより、CPU51は、ROM54やCF56に格納されている各種プログラムをRAM55に読み出して実行することにより、X線検査装置20を構成する各部22f,22g,23,24,26,27や振分機構70の動作を制御することができる。
【0052】
また、I/Oインターフェース53は、図6に示すように、金属検査装置10のI/Oインターフェース33に接続されている。これにより、制御部50は、金属検査装置10の制御部30と信号をやりとりすることができ、A/D変換された金属検出信号を金属検査装置10の制御部30から受け取るとともに、モニタ26のタッチパネルを介して操作者から入力された金属検査装置10の動作に関する動作パラメータを制御部30に送る等している。このように、制御部50は、I/Oインターフェース33,53を介して金属検査装置10の制御部30と信号をやりとりすることにより、X線検査装置20の動作を制御するとともに、金属検査装置10の動作も制御し、検査システム1全体の動作を制御している。
【0053】
CF56は、検査システム1を動作させるためのプログラムを格納している。このプログラムには、後述される画像処理ルーチンR1,R2が含まれる。また、CF56は、異物が含まれると判定された不良商品に対応するX線画像100(図10(b)参照)や、X線画像100に画像処理ルーチンR1,R2により画像処理が施されることにより生成される最終的な出力画像200(図10(e)参照)等を保存蓄積する。また、CF56は、リムーバブルメディアであり、X線検査装置20に挿脱自在に取り付けられている。そのため、X線検査装置20からCF56に保存蓄積されているX線画像100や検査結果等を取り出すことや、CF56に格納されているプログラムを更新することも容易になっている。
【0054】
また、制御部50は、モニタ26へのデータ表示を制御する表示制御回路、モニタ26のタッチパネルからのキー入力データを取り込むキー入力回路、プリンタ等の他機器との接続を可能にする外部接続端子としてのUSBポート等を備えている。
【0055】
(検査システム1の動作)
検査システム1は、操作者によりモニタ26のタッチパネルを介して物品Pの検査の開始命令が入力されると、物品Pの検査を開始する。以下、物品Pが精肉Mである場合を例に、図9を参照して、検査システム1の動作を説明する。
【0056】
ステップS1では、金属検査装置10により、精肉Mに金属が含まれるか否かが検査される。具体的には、精肉Mが、搬送コンベア11により交番磁界の形成される検査領域内を搬送される。このとき、光電センサ16により、精肉Mが検査領域を通過するタイミングが測定され、金属検出部12により、金属検出信号が生成される。制御部30は、精肉Mが検査領域を通過するタイミングと金属検出信号とを制御部50に送る。制御部50は、制御部30から受け取ったこれらの情報に基づいて、金属検出信号を示す関数S(X)(図10(a)参照)を算出する。ここで、Xは、精肉Mの搬送方向の長さ位置を表す。また、金属検査装置10により検査された後の精肉Mは、搬送コンベア11によってX線検査装置20の搬送コンベア22上に搬送される。
【0057】
次に、ステップS2では、X線検査装置20により、精肉Mとその背景領域とを含むX線画像100(図10(b)参照)が生成される。具体的には、精肉Mが、搬送コンベア22によりX線の照射範囲K内を搬送される。このとき、制御部50は、光電センサ27からの信号を受け取り、精肉Mが扇状のX線の照射範囲Kを通過するときに、X線ラインセンサ24からX線透過信号(図8参照)を細かい時間間隔で取得する。そして、制御部50は、それらのX線透過信号に基づいて、精肉Mとその背景部分とを含むX線画像100を生成する。すなわち、制御部50は、X線ラインセンサ24の各画素24aから細かい時間間隔をあけて各時刻のデータを取得して、それらのデータを時間経過順につなぎ合わせることにより、精肉Mとその背景部分とを含む2次元画像を生成する。
【0058】
次に、ステップS3では、制御部50は、X線ラインセンサ24からのX線透過信号に基づいて、精肉Mの体積を算出する。具体的には、制御部50は、ステップS2で生成されたX線画像100上において精肉Mを示す部分101と背景領域を示す部分102とを切り分け、矢印B(図3参照)に示す方向の精肉Mの幅を算出する。ここで、矢印Bに示す方向は、搬送コンベア11,22によって精肉Mが搬送される搬送方向と直交する方向である。また、制御部50は、X線ラインセンサ24からのX線透過信号に基づいて、X線の減衰の程度を判断し、精肉MのX線透過方向の厚みを算出する。続いて、制御部50は、仮想的に精肉Mを搬送方向に複数の微小部位に分割し、分割された微小部位ごとの体積を算出された精肉Mの幅及び厚みに基づいて算出することにより、精肉Mに含まれる長さ位置X付近における微小部位の体積を示す関数V(X)(図10(c)参照)を算出する。
【0059】
次に、ステップS4において、制御部50は、ステップS1で生成された金属検出信号をステップS3で算出された精肉Mの体積で正規化する。具体的には、制御部50は、金属検出信号を示す関数S(X)を精肉Mに含まれる長さ位置X付近における微小部位の体積を示す関数V(X)で割ることにより、正規化された金属検出信号を示す関数N(X)(図10(d)参照)を算出する。
【0060】
次に、ステップS5では、制御部50は、正規化された金属検出信号に基づいて、精肉M全体の中で金属が含まれると判定される部位202(図10(e)参照)を指定する。具体的には、正規化された金属検出信号を示す関数N(X)の値と所定の閾値T1(図10(d)参照)との大小関係が判断され、N(X)>T1を満たす範囲X3<X<X4に対応する精肉Mの部位202(図10(e)参照)には金属が含まれ、N(X)≦T1を満たす範囲X1≦X≦X3又はX4≦X≦X2に対応する精肉Mの部位201,203(図10(e)参照)には金属が含まれないと判定される。
【0061】
ここで、図10(a)に示される金属検出信号を示す関数S(X)と、図10(d)に示される正規化された金属検出信号を示す関数N(X)とを比較すると、正規化される前の関数S(X)には、ピークがP1,P2と2つ存在しているのに対し、正規化された後の関数N(X)には、ピークがP3の1つしかないことが分かる。これは、関数S(X)においてピークP2の現れた長さ位置X付近に対応する部位では、実際には金属の混入がみられないにもかかわらず、精肉Mの体積が大きくなっているため、精肉M中の血液に含まれる鉄分等の金属の影響が過大になったことが原因であると推定される。このように、金属検出信号を精肉Mの体積で正規化することにより、精肉M本体が金属検出信号に与える影響を打ち消すことができる。
【0062】
次に、ステップS6では、制御部50は、X線画像100に画像処理を施して最終的な出力画像200(図10(e)参照)を生成する。このとき、制御部50は、ステップS5において金属が含まれるとして指定された部位202とそれ以外の部位201,203とにそれぞれ異なる画像処理ルーチンR1,R2を適用する。具体的には、制御部50は、X線画像100上の部位201,203に画像処理ルーチンR1により画像処理を施し、X線画像100上の部位202に画像処理ルーチンR2により画像処理を施す。ここで、画像処理ルーチンR2は、画像処理ルーチンR1よりも複雑なアルゴリズムを実装しており、制御部50において実行される際により多くのリソースを要し、また、より多くの時間を要するプログラムである。制御部50は、画像処理ルーチンR1,R2により画像処理が施されたX線画像100に部位202を囲む輪郭線を付加することにより、最終的な出力画像200を生成する。すなわち、最終的な出力画像200では、部位202がステップS5において金属が含まれると判定された部位であることが明示されている。
【0063】
ここで、図10(b)に示されるX線画像100と、図10(e)に示される最終的な出力画像200とを比較すると、画像処理が施される前のX線画像100には現れていなかった異物F2が、画像処理が施された後の最終的な出力画像200には現れていることが分かる。異物F1は、金属検出信号に基づいて金属が含まれると判定された部位202に含まれているため、金属であると推定される。一方、異物F2は、金属検出信号に基づいて金属が含まれないと判定された部位203に含まれているため、石やガラス等、金属以外の異物であると推定される。
【0064】
次に、ステップS7では、制御部50は、ステップS6で生成された最終的な出力画像200に基づいて、精肉Mに異物が含まれるか否かを判定する。図10(e)に示される例では、2つの異物F1,F2が検出されるため、精肉Mには異物が含まれると判定されることになる。なお、制御部50による異物が含まれるか否かの判定処理には、画像200に含まれる各画素の濃度を所定の濃度D1を基準として2値化して、所定の濃度D1よりも暗い画素を異物として検出する2値化処理や、画像200に含まれる各画素についてその周囲の画素の濃度の平均値との差をとり、孤立した濃度の高い領域を抽出して異物として検出する微分処理等を用いることができる。但し、これらの判定処理は、画像200のうち、部位202を囲む輪郭線に対応する画素には適用されないものとする。
【0065】
次に、ステップS8では、制御部50は、ステップS7において精肉Mに異物が含まれると判定された場合に、その物品が正規のラインコンベア80に搬送されることを防止するために、振分機構70のアーム70aを回動させて搬送路を遮る。その結果、異物が含まれると判定された精肉Mは、搬送路から外れて不良品回収箱90によって回収される。
【0066】
次に、ステップS9では、制御部50は、ステップS6で生成された最終的な出力画像200をモニタ26に表示する。これにより、検査システム1の操作者は、精肉Mに含まれる異物F1,F2の有無、場所、大きさを視覚的に認識することができる。
【0067】
<特徴>
(1)
検査システム1では、検査対象となる物品Pは、上流側にある金属検査装置10において検査された後、続いて下流側にあるX線検査装置20においても検査される。このとき、制御部50は、金属検査装置10による物品Pの検査結果に基づいて、物品P全体の中で金属が含まれると判定される部位202を指定する。これにより、検査システム1では、検査対象となる物品P全体の中で、他の部位201,203とは異なる検査条件が適用されるべき部位202を予め指定することができないような場合にも、部位202にその他の部位201,203とは異なる検査条件を適用することが可能になっている。
【0068】
特に、検査システム1では、X線画像100上の部位202に、その他の部位201,203に適用される画像処理ルーチンR1よりも高度な画像処理アルゴリズムを実装する画像処理ルーチンR2が適用される。このように、物品PのX線画像100には、画像処理が効率良く施されるようになっている。
【0069】
(2)
検査システム1では、金属検査装置10による検査結果とX線検査装置20による検査結果とを重ね合わせた最終的な出力画像200がモニタ26に表示される。これにより、操作者は、検査システム1全体の検査結果を視覚的に把握することができるようになっている。
【0070】
(3)
検査システム1では、上流側に金属検査装置10が配置され、下流側にX線検査装置20が配置されている。金属検査装置10は、X線検査装置20では検出されにくい薄い異物であっても金属であれば高感度に検出することが可能である。このため、検査システム1では、金属検査装置10により金属の混入が検出された部位202については、X線検査装置20によりその他の部位201,203よりも詳細に検査することにより、X線画像100に現れていた異物F1だけでなく、X線画像100には現れなかった異物F2も検出することができるようになっている。
【0071】
(4)
検査システム1では、金属検査装置10から出力される金属検出信号が検査対象となる物品Pの体積により正規化され、正規化された金属検出信号に基づいて金属が含まれるか否かの判定がされている。このため、精肉Mのように、金属検出信号に影響を与える傾向にある物品Pが検査対象とされる場合であっても、そうした影響を最小化して、物品Pに異物として含まれる金属をより高感度に検出することができるようになっている。
【0072】
<変形例>
(1)
上記実施形態では、上流側に金属検査装置10が配置され、下流側にX線検査装置20が配置される構成となっているが、上流側及び下流側の双方又は一方に別の検査装置が配置されてもよい。
【0073】
例えば、上流側にカメラが設置され、下流側にX線検査装置が配置される構成とすることも可能である。この場合、検査システム1は、物品Pに異物が含まれるか否かの検査だけでなく、包装内に必要な物品Pが含まれているか否かや物品Pに割れ欠けがないか否か等の検査にも利用することができる。
【0074】
(2)
上記実施形態では、金属検査装置10により金属が含まれると判定された部位202に対しては、その他の部位201,203に対するよりもより複雑な画像処理アルゴリズムを実装する画像処理ルーチンR2が施されているが、本発明はこの態様に限定されない。
【0075】
例えば、金属検査装置10により指定された部位202とその他の部位201,203とに異なるパラメータを用いて画像処理を行うことができる。すなわち、最終的な出力画像200上において部位202のみを拡大したり、最終的な出力画像200上の部位202についてのみ解像度を上げたり等も可能である。また、異物が含まれるか否かの判定処理に際して、使用される閾値などを変えることも可能である。
【0076】
(3)
上記実施形態では、金属検出信号を示す関数S(X)を精肉Mに含まれる微小部位の体積を示す関数V(X)で割ることにより、金属検出信号を物品Pの体積で正規化している。しかしながら、本発明はこの態様に限定されず、関数の除算による方法の他、金属検出信号に含まれる物品P自体に含まれる金属の影響を打ち消すことができる任意の計算方法が利用され得る。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、検査対象となる物品全体の中で、他の部位とは異なる検査条件が適用されるべき特定の部位を予め指定することができないような場合にも、そのような特定の部位にその他の部位とは異なる検査条件を適用することを可能にし、物品を効率よく検査することができるという効果を有し、物品を検査する検査システム及び検査装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施形態に係る検査システム1の外観図。
【図2】金属検査装置10の構成を示すブロック図。
【図3】金属検査装置10を示す平面図。
【図4】金属検査装置10を示す正面図。
【図5】X線検査装置20の前後を示す平面図。
【図6】X線検査装置20の構成を示すブロック図。
【図7】X線検査装置20において物品PにX線が照射される状態を示す図。
【図8】X線検査の原理を示す模式図。
【図9】本発明の一実施形態に係る検査システム1の動作を示すフローチャート。
【図10】(a)金属検出信号を示す図。(b)物品Pと背景領域とを含むX線画像100を示す図。(c)物品Pの体積を示す図。(d)物品Pの体積により正規化された金属検出信号を示す図。(e)最終的な出力画像200を示す図。
【符号の説明】
【0079】
1 検査システム
10 金属検査装置
12 金属検出部
13 送信コイル
14a,14b 受信コイル
20 X線検査装置
23 X線照射器(X線源)
24 X線ラインセンサ(X線受光部)
36 検波・フィルタ回路
38 A/D変換回路
50 制御部(画像処理部)
100 X線画像
200 最終的な出力画像
201,203 非指定部位
202 指定部位
P 物品
R1,R2 画像処理ルーチン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を検査する上流側検査装置と、
前記上流側検査装置よりも前記物品の搬送方向について下流側に位置し、前記上流側検査装置による前記物品の検査結果に基づいて指定される前記物品の指定部位と前記指定部位以外の前記物品の非指定部位とに異なる検査条件を適用して、前記物品を検査する下流側検査装置と、
を備える、検査システム。
【請求項2】
前記下流側検査装置は、
前記物品にX線を照射するX線源と、
前記X線源からのX線を受光するX線受光部と、
前記X線受光部により受光されたX線に基づいてX線画像を生成し、前記X線画像上の前記指定部位と前記非指定部位とに異なる検査条件を適用して前記X線画像に画像処理を施す画像処理部と、
を有する、
請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記画像処理部は、前記画像処理が施された前記X線画像を前記指定部位が明示された態様で出力する、
請求項2に記載の検査システム。
【請求項4】
前記上流側検査装置は、
前記物品に含まれる金属を検出する金属検出部、
を有し、
前記指定部位は、前記物品のうち前記金属検出部により金属が検出された部位である、
請求項2又は3に記載の検査システム。
【請求項5】
前記金属検出部は、
交番磁界を発生させる送信コイルと、
前記交番磁界内に配置される受信コイルと、
前記受信コイルを流れる電流の波形に基づいて金属検出信号を生成する信号生成部と、
を有し、
前記画像処理部は、前記物品を仮想的に複数の部位に分割し、分割された前記複数の部位ごとの体積を前記X線受光部により受光されたX線に基づいて算出し、算出された前記体積で前記信号生成部により生成された前記金属検出信号を正規化し、正規化された前記金属検出信号に基づいて前記指定部位を指定する、
請求項4に記載の検査システム。
【請求項6】
物品を検査する上流側検査装置よりも前記物品の搬送方向について下流側に位置する下流側検査装置であって、
前記上流側検査装置による前記物品の検査結果を受け取る受け取り手段と、
前記受け取り手段により受け取られた前記物品の検査結果に基づいて指定される前記物品の指定部位と前記指定部位以外の前記物品の非指定部位とに異なる検査条件を適用して、前記物品を検査する検査手段と、
を備える、下流側検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−114092(P2007−114092A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306979(P2005−306979)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】