説明

検査装置および検査方法

【課題】 異常(不良品)と判定された検査対象物が、所定の対処を行なうことで正常(良品)にすることができるか否かを判定し、指示することができる検査方法を提供すること
【解決手段】 検査対象物から取得した波形信号に対して前処理を実行後(S31,S32)、第1階層判定処理を実行し、検査対象物が、正常か異常かの判定を行なう(S33〜S35)。実行結果が正常な場合には、その旨を出力装置に出力し(S47)、異常と判定された場合には、異常原因が検査対象物に対して所定の対処を行なうことで正常にすることができるものか否かの判定をする第2階層判定処理を実行する(S36〜S38)。対処不能な場合には、その旨指示し(S43)、対処可能な場合には、対処方法を求める第3階層判定処理を実行する(S39,S41,S42,S44)。そして、求められた対処方法をそれぞれ出力する(S43,S45,S46)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検査対象物から取得した波形信号に対して特徴量を抽出し、抽出した特徴量に基づいて状態を判定する検査装置および検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車や家電製品などには、モータ等の駆動系部品が組み込まれた回転機器が非常に多く用いられている。例えば自動車を例にとってみると、エンジン,パワーステアリング,パワーシート,ミッションその他の至る所に回転機器が実装されている。また、家電製品では、冷蔵庫,エアコン,洗濯機その他各種の製品がある。そして、係る回転機器が実際に稼働すると、モータ等の回転に伴って音が発生する。
【0003】
係る音は、正常な動作に伴い必然的に発生するものもあれば、不良(故障)に伴い発生する音もある。その不良に伴う異常音の一例としては、ベアリングの異常,内部の異常接触,アンバランス,異物混入などがある。より具体的には、ギヤ1回転について1度の頻度で発生するギヤ欠け,異物かみ込み,スポット傷,モータ内部の回転部と固定部が回転中の一瞬だけこすれ合うような異常音がある。また、人が不快と感じる音としては、例えば人間が聞こえる20Hzから20kHzの中で様々な音があり、例えば約15kHz程度のものがある。そして、係る所定の周波数成分の音が発生している場合も異常音となる。もちろん、異常音はこの周波数に限られない。
【0004】
係る不良に伴う音は、不快であるばかりでなく、さらなる故障を発生させるおそれもある。そこで、それら各製品に対する品質保証を目的とし、生産工場においては、通常検査員による聴覚や触覚などの五感に頼った「官能検査」を行ない、異常音の有無の判断を行っている。具体的には、耳で聞いたり、手で触って振動を確認したりすることによって行っている。なお、官能検査は、官能検査用語 JIS Z8144により定義されている。
【0005】
ところで、係る検査員の五感に頼った官能検査では、熟練した技術を要するばかりでなく、判定結果に個人差や時間による変化などのばらつきが大きい。さらには、判定結果のデータ化,数値化が難しく管理も困難となるという問題がある。そこで、係る問題を解決するため、駆動系部品を含む製品の異常を検査する検査装置として、定量的かつ明確な基準による安定した検査を目的とした異音検査装置がある。
【0006】
このように検査対象から得られた振動波形から正常/異常を判別する検査(いわゆる異音検査)を自動的に行なう異音検査装置としては、従来、特許文献1に開示されたものがある。この特許文献1に開示された発明は、時間軸波形から得られた特徴量と周波数波形から得られた特徴量とを用いて検査対象の正常/異常を総合的に判別するものである。
【0007】
このように時間軸波形と周波数軸波形のように異なる軸から得られる波形に基づいて総合的に異音検査をするのは以下の理由からである。すなわち、それ以前に開発されていた時間軸波形から得られた特徴量だけの異音検査や、周波数軸波形から得られた特徴量だけの異音検査ではすべての異音を検出することが難しい。それは、それぞれの特徴量には得意・不得意があるからである。複数の特徴量を用いる異音検査は、単一の特徴量を用いる異音検査に比べて高い判別能力を有する。
【0008】
つまり、そもそも駆動系部品は、回転や往復運動を繰り返す機構で成り立っており、その機構にわずかな機械的異常があれば、それに起因した異常成分(良品から発せられる正常成分とは何かが違う成分)が必ず振動や音として周囲に伝達される。ところが、異音検査における異常成分は、正常成分と比較しても振動や音の波形に含まれる、わずかな違いでしかなく、熟練した人の耳であれば聞き分けられるような違いがあっても、波形解析してみるとノイズに埋もれてうまく検知することができないことがあった。これは、従前の異音検査が時間軸波形から得られた特徴量だけや、周波数軸波形から得られた特徴量だけの判別、しかも単一の特徴量のみに基づいて行われる判別であったからである。そこで、上記の特許文献1では、複数の軸から得られる複数の特徴量に基づいて総合的に正常/異常を判断するようにしている。そして、この特許文献1に開示された発明では、判別ルールとして、ファジィルールを用い、ファジィ推論により複数の特徴量に基づく正常/異常の判断を行なうようにしている。
【0009】
特許文献1に開示された異音検査に判別ルールとして用いるファジィ推論は、ニューラルネットなど、その他の判別モデルと比較して、人が判別ルールを理解しやすいという利点がある。例えばニューラルネットとは、ニューロンモデルを互いに多数結合させて接続しネットワーク状にしたものであり、どのような判別をしてそのような結果に至ったのか、その根拠が難解で感覚的に理解しがたい。感覚的に理解できないものを人は信用しにくい。それが品質の要となる検査装置であるならなおさらである。
【0010】
これに対して、ファジィ推論は、あいまいさを表現するメンバシップ関数を用いており、ファジィ推論を用いた判別ルールは、判別の根拠と判別結果を対応づけて「IF 特徴量A=大 THEN 異常」のように人に理解しやすい表現で示すことが出来る。このように感覚的に理解できるものは説明もしやすく、品質ソリューションを事業とする場合に、検査装置の検査ロジックとして判別ルールを説明しやすいため、その説明を受けた顧客にとっても納得する度合いが高いので安心して採用できるという利点がある。
【0011】
また、新規に異音検査装置を導入しようとする顧客は、それまで熟練者(官能検査員)の耳による官能検査を行っていることも多く、官能検査員は「異音なきこと」などの記述が一般的な検査基準に対して独自の判定基準やノウハウ、知見をすでに有している。このような場合には、異音検査装置は官能検査員がこれまで行っていた官能検査の置き換えとなるので、官能検査員の持つ判定基準やノウハウ、知見との整合性が自ずと求められるのが現状である。係る場合にも、作成した判別ルールと、それまでの官能検査員がもっていた知識(検査基準)との整合性を説明しやすいということは、顧客に対して説明責任を負うソリューション提供者にとってファジィ推論による説明のしやすさは事業を進める上で大きな利点となっている。
【0012】
ところで、上述した官能検査は、生産現場において最終製品あるいは中間製品に対して良否判定を行ない、不良品と判定されたものを廃棄し、良品のみを出荷することに利用される。
【0013】
そして、不良品として判定されて生産ライン(組み立てライン)から排除されたものを手直しし、元のラインに戻すようにした技術としては、特許文献2に開示された発明がある。この特許文献2に開示された発明は、組立ラインの各工程において、良品/不良品を検査してその都度不良品を組立コンベアから不良コンベアに取り出す。次いで、不良コンベアにはじき出された不良品を手直しした後に組立コンベアに戻すものである。この特許文献2では、不良コンベアに排除されたすべての不良品を手直し対象としている。
【特許文献1】特許第3484665号
【特許文献2】特公平6−28823号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来の官能検査を行なう検査装置は、良品か不良品かを判定することができるにすぎない。そのため、不良品と判定されたものは、基本的には廃棄するか、あるいは、特許文献2に開示されたようにすべての不良品を手直しするしかなかった。
【0015】
一方、昨今の日本の製造業は生産地としての生き残りを模索している。国内製造業を取り巻く環境は、商品ライフサイクルの短命化、出荷量の減少、生産地の中国その他の外国への移転などの要因によって厳しさを増している。そこで、日本が生産地として生き残るために、需要に同期して生産する新たな生産方式(需要同期生産)への挑戦が始まっている。
【0016】
需要同期生産では、生産と品質をともにコントロールすることが必要であり、生産と品質を時間的に一致させなければならない。なぜなら、10個作って10個出荷する、1個作って1個出荷するというように需要同期生産では、10個作って数個の不良の発生は許容できないからである。つまり、不良の発生は需要同期生産を破綻させてしまうため、生産開始前に生産と設計が一体となって不良の発生原因を撲滅する生設一体QCで不良を発生させない生産体制を目指しつつも、万が一発生してしまった不良については早期に発見して早期に対処した方が、結果的に二度手間をなくすことが出来る。よって、工程を進め過ぎず、工程内での検査結果をリアルタイムに小さく回すリアルタイムQCが有効な手法となる。
【0017】
組立工程であれば、組立不良を組立直後の検査によって次工程に不良品が流出しないようにするとともに、手直しで良品となるのであれば早期に手直しして、良品とする方がよい。組立工程で発生した組立不良を後からまとめて手直しするようでは、組立工程に手直し在庫が溜まるばかりである。
【0018】
しかしながら、特許文献2に開示された発明では、組立ラインの各工程において、良品/不良品を検査してその都度不良品を組立コンベアから不良コンベアに取り出し、不良コンベアにはじき出した不良品を手直しした後に組立コンベアに戻しているだけであり、不良品のすべてを手直し対象としているに過ぎない。しかし、組立後の検査において検査装置から得られる情報が「検査対象の正常/異常」だけでは、どの不良品に対してどのような手直しをすべきかがわからない。その結果、需要同期生産のように極度に限られた投入数から決められた数の良品を限られた時間内で次工程に送り出さなければならない場合には、手直しを始めてからどのような手直しをすべきか判断しているようでは実用に供し得ない。
【0019】
つまり、不良品を手直ししてみたが予想外に時間が掛かってしまっただけでも、需要同期生産の根底を揺らがしかねないが、不良品を手直ししてみたが結局手直しできなかったりすると、手直しに要した時間が全くのムダとなってしまう。
【0020】
そこで、需要同期生産を実現するために二度手間を極力減らしていくには、検査装置といえども単なる良品/不良品の判定から、不良品と判定された検査対象についてどうすべきか(組立後の検査では、その時その場で手直しすべきか否か)をその場で判断するための判断材料の提供が求められるようになってきている。
【0021】
この発明は、異常(不良品)と判定された検査対象物が、所定の対処を行なうことで正常(良品)にすることができるか否かを判定し、指示することができる検査装置および検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記した目的を達成するため、本発明に係る検査装置は、検査対象物から取得した波形信号(センサからリアルタイムで取得したものでも良いし、過去に取得し記憶したデータベースから取得したものでも良い)に対して特徴量を抽出し、抽出した特徴量に基づいて状態を判定する検査装置であって、前記検査対象物が、正常か異常かの判定を行なう第1階層判定部と、その第1階層判定部で異常と判定された場合に、異常原因が前記検査対象物に対して所定の対処を行なうことで正常にすることができるものか否かの判定をする第2階層判定部と、前記各判定部で判定した判定結果を出力する出力手段と、を備えて構成した。
【0023】
本発明によれば、異常と判断された検査対象物であっても、第2階層判定部により、所定の対処を実行することにより正常(良品)にすることができるのか、できないのかが判断される。よって、対処可能なものについては所定の対処をすることで、正常に戻すことができることが分かる。よって、無駄に廃棄する量を削減できる。また、異常原因によっては、どのように対処しても正常にできないものもあり、本発明では、係る正常にできないものであることも分かるので、正常にするための調整その他の無駄な対処をすることなく、廃棄することができる。よって、時間並びに労力の軽減を図ることができる。
また、前記第2階層判定部で正常にする対処が可能と判定された検査対象物の波形信号から得られた特徴量に基づき、対処方法を求める第3階層判定部を備え、
その第3階層判定部における判定処理は、
(1)求めた対処方法が、部品交換で正常となる可能性があるか否か
(2)求めた対処方法が、調整作業(組立直し)で正常となる可能性があるか否か
(3)求めた対処方法が、現場での対応が困難か否か
のうち、少なくとも1つを判定する機能を備え、前記第3階層判定部の判定結果を前記出力手段に出力するように構成しても良い。係る構成を採ると、具体的な対処方法の指示を受けることができるため、現場作業員は、異常と判定された検査対象物に対する対処をスムーズに行なえる。
【0024】
前記各階層判定部で行なう判定処理に使用する特徴量と判定ルールとを、それぞれ、各階層と関連づけて記憶する記憶手段を備えることができる。
【0025】
一方、各判定部における処理は、各種のものがとれるが、一例としては、前記第1階層判定部における判定処理で使用する特徴量は、振動の実効値と振動のパワーとを用い、その第1階層判定部における判定処理は、前記振動の実効値と前記振動のパワーとがともに大きい場合に異常と判定するように構成できる。
【0026】
また、前記第2階層判定部における判定処理で使用する特徴量は、閾値を超えたピークの数と、その各ピークのピーク値の総和とを用い、その第2階層判定部における判定処理は、前記ピーク値の数と前記ピーク値の総和とがともに大きい場合に対処不能と判定するように構成できる。
さらに、前記第3階層判定部は、
(1)′極値の尖り度と極値の歪み度がともに大きい場合に、部品交換で正常となる可能性ありと判断する機能
(2)′極値の尖り度と極値の歪み度の少なくとも一方が小さく、かつ、特定周波数が小さい場合に、調整作業(組立直し)で正常となる可能性があると判断する機能
(3)′極値の尖り度と極値の歪み度の少なくとも一方が小さく、かつ、特定周波数が大きい場合に、現場での対応が困難と判断する機能
の少なくとも1つを備えるように構成することができる。
【0027】
本発明に係る検査方法は、検査対象物から取得した波形信号に対して特徴量を抽出し、抽出した特徴量に基づいて状態を判定する検査装置を用いた検査方法であって、前記検査対象物が、正常か異常かの判定を行なう第1階層判定処理を実行し、その実行結果が正常な場合には、その旨を出力装置に出力し、前記第1階層判定処理を実行して異常と判定された場合に、異常原因が前記検査対象物に対して所定の対処を行なうことで正常にすることができるものか否かの判定をする第2階層判定処理を実行し、その第2階層判定処理の結果を出力装置に出力するようにした。
【0028】
また、前記第2階層判定処理で正常にする対処が可能と判定された検査対象物の波形信号から得られた特徴量に基づき、対処方法を求める第3階層判定処理を実行し、
その第3階層判定処理により求めた対処方法を出力装置に出力するものであり、
その第3階層判定処理は、
(1)求めた対処方法が、部品交換で正常となる可能性があるか否か
(2)求めた対処方法が、調整作業(組立直し)で正常となる可能性があるか否か
(3)求めた対処方法が、現場での対応が困難か否か
のうち、少なくとも1つを判定するものとすることができる。
【0029】
上記した各判定において、「大きい」,「小さい」は、予め定めた基準・ルールと比較して判定する。実施の形態でも示したとおり、閾値を設定し、単純に大小関係を判定するものもあれば、ファジィ推論のようにルールに反映させ、単純な大小関係(スクリプトな判断)をすることなく、相対的に判定するもの含む。
【発明の効果】
【0030】
本発明では、検査対象物に対する検査結果として、単純に異常か否かの良否判定に留まらず、異常(不良品)と判定された検査対象物が、所定の対処を行なうことで正常(良品)にすることができるか否かを判定し、指示することができる。その結果、例えば現場での作業員は、異常と判定された検査対象物をそのまま廃棄した方がよいか、所定の対処をして正常にすることで使用可能とすることができるかの判断が容易に行なえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1は、本発明に係る装置の好適な一実施の形態を示している。図1に示すように、検査システムは、検査対象物に接触・近接配置し、検査対象物から発生する振動や音を検出する加速度センサやマイク等のセンサ1と、そのセンサ1の出力(アナログデータ)をデジタルデータに変換するA/D変換器2と、A/D変換器2でデジタルデータに変換された波形データ(センシングデータ)に対し、所定の前処理を行なう前処理部3と、その前処理部3で前処理されたデータに基づき、良品/不良品の判定等を行なう異常検出部4と、その異常検出部4における検出結果を出力する情報出力装置7と、異常検出部4にて判定処理を行なう際に参照するデータを格納する階層的特徴量データベース5と、診断ルール記憶データベース6と、を備えている。センサ1の出力信号のレベルが小さい場合、アンプを設け、増幅した値をA/D変換器2に与えることもある。
【0032】
前処理部3と、異常検出部4と、階層的特徴量データベース5と、診断ルール記憶データベース6とは、たとえばパソコン9により構成される。より具体的には、前処理部3と、異常検出部4とが、アプリケーションプログラムとしてパソコン9にインストールすることで実現でき、階層的特徴量データベース5と、診断ルール記憶データベース6とは、パソコン9のハードディスクその他の記憶装置に、所定のデータを格納することで実現できる。また、情報出力装置7は、パソコン9のモニタにより実現することができる。
【0033】
前処理部3は、取得した振動データから特徴量を抽出するために必要な前処理を実行するもので、具体的には、波形フィルタや波形変換(FFT、包絡線処理など)を行ない、所望の周波数成分を取り出すものである。
【0034】
異常検出部4は、前処理したデータから特徴量を抽出し、その抽出した特徴量のレベルに従い、良否判定を行なうとともに、不良品と判断した場合には、その対処方法を求める。この異常検出部4の詳細は、後述する。
【0035】
階層的特徴量データベース5は、図2に示すようなデータ構造をとっている。すなわち、この階層特徴量データベース5のデータ構造は、特徴量のラベル,階層番号および演算方法を関連付けたテーブル構造からなる。
【0036】
すなわち、図3に示すように、異常検出部4は、第1階層判定部10と、第2階層判定部11と、第3階層判定部12とを備えている。詳細な説明は後述するが、第1階層判定部10は正常か異常かを判定別し、第2階層判定部11は第1階層判定部10で異常と判定された場合に、対処可能か不可能を判定し、第3階層判定部12は、第2階層判定部で対処可能と判定された場合に対処可能な場合の対処方法を導き出すものである。
【0037】
このように、本実施の形態の異常検出部4は、段階的に判定を行なわせるようにした。当然のことながら、各階層で行なう判定内容が異なるため、各判定を行なうのに適した特徴量も異なる。そこで、階層的特徴量データベース5は、各特徴量の内容と、その特徴量がどの階層の判定で用いられるかを特定する除法を格納するものである。つまり、階層番号が、どの階層判定部で行なうかを特定する情報であり、演算方法は、各特徴量の具体的な算出方法に関する情報である。詳細は後述する。
【0038】
診断ルール記憶データベース6は、上述した各階層判定部10から12に対応づけられた特徴量に基づき、各階層判定部10から12が良否判定その他の判定処理を行なう際に使用するルールを格納するものである。詳細は後述する。
【0039】
ここで、各特徴量と、それに基づいて判定できる内容について説明する。まず、不良品と検出する場合の異常の種類としては、大別すると構造系異常(全体欠陥)と、共振系異常(局所欠陥)と、摩耗系異常とがある。構造系異常(全体欠陥)としては、「アンバランス」,「ミスアライメント」などがある。共振系異常(局所欠陥)としては、「軸受異常」,「歯車異常」などがある。摩耗形状としては、「金属接触」がある。
【0040】
<アンバランス>
アンバランスは、回転軸に対して質量が均一でない状態のことをいう。アンバランスを生じる原因は、ロータの偏心、材質の不均質、たわみなど多くある。また、経年変化による腐食や摩耗、付着物などにより、アンバランスが発生することがある。研削盤などでは、ドレッサや研削によってアンバランスが生じる。係るアンバランスの状態では、遠心力によって力が加わり、回転軸に垂直な振動(振幅変動)が起こることがあり、ベアリング・ロータ・保持構造物等の破損原因となる。例えば、エンジンの場合における想定原因とし3ては、カムシャフトの曲がり,シャフトの曲がり,シャフトの強度不足,クランクのバランス,ピストン同士のバランス,ピストンの汚れ,コンロッドの汚れ,材質不均一,加工精度異常などが考えられる。
【0041】
対処方法は、部品交換で対応可能である。しかし、バランスが狂っている部品を調べる必要があるため、時間を要し、現場対処は困難である。この異常状態を検出するための特徴量としては、実効値,波形率,実効値ピーク,総パワー,極大値尖り度,極値の実効値などがある。
【0042】
<ミスアライメント>
ミスアライメントは、複数の回転体の回転軸の中心がずれている状態のことを言う。想定原因としは、軸受の傾き,軸受の磨耗,ギヤの軸ずれなどが考えられる。アキシャル方向に振動が生じやすいという特徴があるため、アキシャル方向の振動がラジアル方向の振動の50%以上を生じていれば、ミスアライメントと推定できる。また、アンバランスでは、回転数の2乗に比例して振幅が増加するが、ミスアライメントでは回転数にあまり関係なく、振幅がほぼ一定という特徴があるため、係る特徴に着目することで、両者を識別できる。
【0043】
対処方法は、組立て直しで対応可能である。よって、現場対処は可能となる。この異常状態を検出するための特徴量としては、実効値,波形率,実効値ピーク,卓越周波数(FFTにより求める),卓越周波数パワー(FFTにより求める),総パワー,極大値尖り度,極値の実効値などがある。
【0044】
<共振系異常の局所欠陥>
共振系異常の局所欠陥は、異物の混入,疲労破損,過負荷などの局所的に異常を生じることで、回転体が1回転する都度、当該異常を生じている局所部分にきたときに衝撃振動が生じる(定常振動に定期的な衝撃波形が重畳される)。想定原因としては、ギヤの破損,カムの破損,バルブの破損,バルブとヘッドの当たり,軸受の破損(傷)などがある。例えば、歯車の歯の一部が破損している場合、破損した歯が接触する都度衝撃が出る。このように、局所欠陥の場合には、軸受・歯車の損傷による振動で、衝撃振動として捉えることができる。
【0045】
この異常の場合、部品同士が当たっているため、対処方法は、まず接触部分の影響を調査する必要がある。従って、現場対処ができない。この異常状態を検出するための特徴量としては、実効値,尖り度,自己相関実効値,自己相関極点数,卓越周波数パワー(FFTにより求める),サイドバンドパワー(FFTにより求める),総パワー,極大値尖り度,ピーク値,ピーク数,極小値尖り度などがある。
【0046】
金属接触による振動は、金属同士の摩擦(歯車、シリンダとピストン……)により生じる。金属接触が生じると、きしみ音や衝撃が発生し、回転数に応じた金属同士の擦れによる振動が発生する。係る金属接触がおこると、シリンダ、ピストン、歯車の磨耗や破損につながる。金属接触の原因は、部品の精度、部品の組合せ、磨耗、潤滑油の不足などであり、エンジンにおける想定原因は、ピストンとシリンダの擦れ,カムの傷,ギアのかみ合わせ,オイル切れなどがある。
【0047】
対処方法は、部品交換で対応可能である。よって、現場対処は可能となる。この異常状態を検出するための特徴量としては、実効値,平均ピーク,重心,総パワー,歪み度,ピーク値,ピーク数,極値の平均などがある。
【0048】
次に、上述した特徴量を用いた各階層判定部の判定処理の原理並びに具体的な処理を説明する。まず、第1階層判定部10は、正常/異常を判別するものである。図4(a)は、良品に基づく正常波形の一例を示しており、図4(b)は、不良品に基づく異常波形の一例を示している。図からも明らかなように、異常時には何らかの外的要因が回転のエネルギー以外に加わり、振動の振幅やパワーが大きくなる。そこで、第1階層判定部10は、特徴量として「実効値」と「パワー」を使用し、下記式に基づいて算出された振動の振幅(実効値)、パワーが共に大きい場合に異常と判別するルールとした。
【数1】

【0049】
より具体的には、第1階層判定部10は、図5に示すフローチャートを実行する機能を有する。つまり、処理ステップS1,S2の何れもがYesとなった場合にはじめて異常と判断され、それ以外の場合には、良品と判断される。良品と判断された場合には、異常検出部4における今回の判定処理は終了し、結果(良品)を出力する。処理ステップS1,S2における分岐判断であるが、単純にある設定した閾値を超えたか否かにより判定を行なうことができる。この場合には、係る閾値が診断ルール記憶データベース6に設定される。また、そのように閾値と大小関係を単純に比較するのではなく、図6に示すようなメンバシップ関数を使用し、ファジィ推論により異常か否か(不良/良品)の判定を行なうようにしてもよい。この場合のファジィルールとしては、例えば、

If 振動の実効値=大 AND 振動のパワー=大 Then 異常

のようになる。係る場合、このファジィルールや、図6に示すメンバシップ関数、さらには、最終的な適合度に基づき異常か否かを判断する際の値などが、第1階層判定用の診断ルールとして診断ルール記憶データベース6に格納される。そして、第1階層判定部10は、階層的特徴量データベース5に格納された第1階層用の特徴量と、診断ルール記憶データベース6に格納された第1階層用のルールに基づき、与えられた波形データ(前処理済み)に対して所定の演算処理を行ない、良否判定を行なう。
【0050】
第2階層判定部11は、対処可能/不可能を判別するものである。上記の異常の現象でも説明したように、部品同士の当たりがある場合は、部品破損の可能性があるため、破損箇所を特定するための調査が必要となり組立現場での対処は不可能である。そして、衝撃成分が大きい場合には、部品同士の当たりが大きいと考えられる。図7(a)は、異常ではあるが対処可能な場合の振動波形の一例を示しており、図7(b)は、異常であり、しかも、現場で対処が不可能な場合の振動波形の一例を示している。図からも明らか内容に、対処不可能(困難)な場合には、部品接触があるため、衝撃成分・衝撃に伴い発生するピーク数が大きくなる。そこで、この第2階層で使用する特徴量セットとしては、衝撃成分を調べるものが有効であり、本実施の形態では、ピーク値の総和と、ピーク数を用いるようにした。そこで、第2階層判定部11は、特徴量として「ピーク値の総和」と「ピーク数」を使用し、下記式に基づいて算出された各値が共に大きい場合に対処不能と判別するルールとした。
【数2】

【0051】
より具体的には、第2階層判定部11は、図8に示すフローチャートを実行する機能を有する。つまり、処理ステップS11,S12の何れもがYesとなった場合に対処不能と判断され、それ以外の場合には、対処可能と判断される。対処不能と判断された場合には、異常検出部4における今回の判定処理は終了し、結果(対処不能)を出力する。処理ステップS11,S12における分岐判断であるが、単純にある設定した閾値を超えたか否かにより判定を行なうことができる。この場合には、係る閾値が診断ルール記憶データベース6に設定される。また、そのように閾値と大小関係を単純に比較するのではなく、図9に示すようなメンバシップ関数を使用し、ファジィ推論により対処可能か否かの判定を行なうようにしてもよい。この場合のファジィルールとしては、例えば、

If ピーク値総和=大 AND ピーク数=大 Then 対処不可能

のようになる。係る場合、このファジィルールや、図9に示すメンバシップ関数、さらには、最終的な適合度に基づき異常か否かを判断する際の値などが、第2階層判定用の診断ルールとして診断ルール記憶データベース6に格納される。そして、第2階層判定部11は、階層的特徴量データベース5に格納された第2階層用の特徴量と、診断ルール記憶データベース6に格納された第2階層用のルールに基づき、与えられた波形データ(前処理済み)に対して所定の演算処理を行ない、対処可能か否かの判定を行なう。対処不可能と判定された場合には、その旨を情報出力装置7に出力する。
【0052】
第3階層判定部12は、第2階層判定部11にて対処可能と判定されたものに対し、具体的な対処方法を判定するものである。上記の異常の現象でも説明したように、組み立て現場で対応可能なもの、すなわち、短時間で調整・組み立て直しなどの対処が可能なものや、組み合わせその他の処理により対応は可能なものの、組立工程(現場)における短時間の対処が困難なものがある。さらに、組立工程での対処が可能なものの中には、いくつかの種類があり、それぞれどのような対処かを判別し、現場の作業員に対して指示する必要がある。
【0053】
一例を示すと、軸のずれなど組立て不良による振動がある場合には、組立直しで現場にて対処する。部品のバランスが悪い場合には、部品の交換やバランス調整で現場にて対処する。部品のかみ合わせ異常などの場合組合せで対処可能であるが、どの部品同士のバランスが狂っているか調べる必要があるので、組立工程においては短時間では困難のため、現場対処困難と判断する。図10(a)は、アンバランス時の波形の一例を示しており、図10(b)は、ミスアライメント時の波形の一例を示したおり、図10(c)は、金属接触を生じているときの波形の一例を示している。図からも明らかなように、アンバランス時には、特定周波数の振動が乗るという特徴がある(図10(a)参照)。また、アンバランス並びにミスアライメントの場合、極値の確率密度分布の尖り度が小さいという特徴がある(図10(a),(b)参照)。金属接触の場合、極値の確率密度分布の尖り度が小さくかつゆがみが大きいという特徴がある(図10(c)参照)。各特徴量の値と、各異常原因の関係を示すと、以下のようになる。
【0054】
<ピーク尖り度>
正常時(大)>金属接触(中)>アンバランス・ミスアライメント(小)
<ピーク歪み度>
正常時(小)<アンバランス・ミスアライメント(中)<金属接触(大)
<特定周波数成分(FFTで求める)>
アンバランス(大)>ミスアライメント(小)
ピーク値・数が非常に大の場合、局所部品異常と考えられる。
ピーク値・数が大、ピーク尖り度が中、ピーク歪み度が大の場合、金属接触と考えられる。
ピーク値・数が中、ピーク尖り度が小、歪み度が中の場合、アンバランス・ミスアライメントと考えられる。
【0055】
そして、各特徴量は、下記式により求めることができる。
【数3】

【0056】
より具体的には、第3階層判定部12は、図11に示すフローチャートを実行する機能を有する。つまり、処理ステップS21,S22の何れもがYesとなった場合の対処は、現場での部品交換と判定され、処理ステップS21,S22の少なくとも一方がNoで、特定周波数が小さい場合(処理ステップS23でNo)の対処は、現場での組立直しと判定され、特定周波数が大きい場合(処理ステップS23でYes)は、現場での対処が不可能と判定する。
【0057】
この第3階層判定部12においても、処理ステップS21〜S23における分岐判断は、単純にある設定した閾値を超えたか否かにより判定を行なうことができる。この場合には、係る閾値が診断ルール記憶データベース6に設定される。また、そのように閾値と大小関係を単純に比較するのではなく、図12,図13に示すようなメンバシップ関数を使用し、ファジィ推論により対処可能か否かの判定を行なうようにしてもよい。この場合のファジィルールとしては、例えば、

If 極値の尖り度=小 AND 極値の歪み度=大
Then 部品交換(金属接触)
If 極値の尖り度=小 AND 極値の歪み度=小 AND 特定周波数=小
Then 組立て直し(ミスアライメント)
If 極値の尖り度=小 AND 極値の歪み度=小 AND 特定周波数=大
Then 現場対処困難(アンバランス)

のようになる。係る場合、このファジィルールや、図12,図13に示すメンバシップ関数、さらには、最終的な適合度に基づき異常か否かを判断する際の値などが、第3階層判定用の診断ルールとして診断ルール記憶データベース6に格納される。そして、第3階層判定部12は、階層的特徴量データベース5に格納された第3階層用の特徴量と、診断ルール記憶データベース6に格納された第3階層用のルールに基づき、与えられた波形データ(前処理済み)に対して所定の演算処理を行ない、対処方法の判定を行なう。そして、判定結果である対処方法(現場での対処不能を含む)を、情報出力装置7に出力する。
【0058】
図14は、本検査装置全体の機能(作用)を示すローチャートである。まず、検査対象となる波形データを取得する(S31)。基本的には、不良品が発生した場合に組立作業現場での現場対応可能か否かの判定を行うため、取得する波形データもセンサ1にて取得した波形データを読み込むことになる。もちろん、たとえば振動波形データ記憶部に格納された振動波形データを読み出すようにしても良い。
【0059】
次に、係る取得した波形データを前処理部3にて所定の帯域通過フィルタを用いた周波数のフィルタリング処理や、波形変換処理を行なう(S32)。この前処理を行なって得られた波形データ(波形変換された情報を含む)を異常検出部4に与え、所定の判定処理を行なう。
【0060】
次いで、前処理を行なったデータに対し、第1階層判定を行なうための特徴量を演算し(S33)、異常の有無を診断(判定)する(S34)。これらは、異常検出部4内の第1階層判定部10が実行するもので、具体的な処理は、上述したとおりである。そして、異常がなかった場合(良品)には、処理ステップS35の分岐判断はNoとなるので、情報出力装置7に向けて、判定結果として「正常」を出力する(S47)。
【0061】
一方、処理ステップS34で実行した診断結果が、「異常」の場合、処理ステップS35の分岐判断はYesとなるので、第2階層の判定に移行する。すなわち、第2階層判定を行なうための特徴量を演算し(S36)、異常の有無を診断(判定)する(S37)。これらは、異常検出部4内の第2階層判定部11が実行するもので、具体的な処理は、上述したとおりである。よって、ここでの異常の診断は、具体的には、異常の内容(原因)が対処可能なものか否かを判定する。そして、対処不可能な場合には、処理ステップS38の分岐判断はNoとなるので、情報出力装置7に向けて、判定結果として「対処不能」を出力する(S43)。
【0062】
一方、処理ステップS37で実行した診断結果が、「対処可能」の場合、処理ステップS38の分岐判断はYesとなるので、第3階層の判定に移行する。すなわち、第3階層判定を行なうための特徴量を演算し(S39)、現場対象可能か否か並びに対応可能な場合にはその方法を判定する(S41)。これらは、異常検出部4内の第3階層判定部12が実行するもので、具体的な処理は、上述したとおりである。
【0063】
そして、時間内に対処可能でない(対処に時間がかかる)場合には、処理ステップS42の分岐判断はNoとなるので、情報出力装置7に向けて、判定結果として「処理不能」を出力する(S43)。また、時間内(短時間)に対処可能な場合には、処理ステップS42の分岐判断はYesとなるので、対処内容が「組立直し」か否かを判断する(S44)。そして、判定結果が組み立て直しの場合には、情報出力装置7に向けて、判定結果として「組立て直し」を出力し(S45)、組み立て直しでない場合には、情報出力装置7に向けて、判定結果として「部品交換」を出力する(S46)。
【0064】
なお、上述した実施の形態では、3段階に分けて判定を行ない、最終的に具体的な対処方法まで特定し、出力するようにしたが、本発明は此に限ることはなく、例えば、第2階層判定部までの2段階の判定により、対応が可能か否か(時間がかかるか否かは別)を判断し、結果を出力するようにしても良い。係る情報の提供をするだけでも、従来のように不良品と判断された全てのものに対して調整処理をすることで、対処不能なものに対して無駄な調整処理をすることを回避できるので好ましい。また、不良品と判断されたものを全て廃棄する方式を採っている現場においては、何かしらの対処をすることにより良品になることが分かるので、本質的に廃棄すべきものを容易に理解できるので好ましい。
【0065】
また、出力方法としては、モニタに表示することを示したが、プリントアウトとしたり、予め決められたランプの点灯をさせるようにしたりするなど各種の対応がとれるのはもちろんである。
さらにまた、各階層における判定処理で用いられる特徴量は、一例であり、他の特徴量を用いてももちろん良いし、例示した特徴量を使用しなくても良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る検査装置の好適な一実施の形態を示すブロック図である。
【図2】階層的特徴量データベースのデータ構造の一例を示す図である。
【図3】異常検出部の内部構造を示すブロック図である。
【図4】第1階層判定部の動作原理を説明するための正常と異常の波形図の一例を示す図である。
【図5】第1階層判定部の機能を示すフローチャートである。
【図6】第1階層判定部の機能を示す分布図並びに判定する際に使用するメンバシップ関数の一例を示す図である。
【図7】第2階層判定部の動作原理を説明するための対処可能なものと対処不能なものの波形図の一例を示す図である。
【図8】第2階層判定部の機能を示すフローチャートである。
【図9】第2階層判定部の機能を示す分布図並びに判定する際に使用するメンバシップ関数の一例を示す図である。
【図10】第3階層判定部の動作原理を説明するための、各異常原因に対応する波形図の一例を示す図である。
【図11】第3階層判定部の機能を示すフローチャートである。
【図12】第3階層判定部の機能を示す分布図並びに判定する際に使用するメンバシップ関数の一例を示す図である。
【図13】第3階層判定部の機能を示す分布図並びに判定する際に使用するメンバシップ関数の一例を示す図である。
【図14】検査装置の全体の機能を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
1 センサ
2 A/D変換器
3 前処理部
4 異常検出部
5 階層的特徴量データベース
6 診断ルール記憶データベース
7 情報出力装置
9 パソコン(検査装置)
10 第1階層判定部
11 第2階層判定部
12 第3階層判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物から取得した波形信号に対して特徴量を抽出し、抽出した特徴量に基づいて状態を判定する検査装置であって、
前記検査対象物が、正常か異常かの判定を行なう第1階層判定部と、
その第1階層判定部で異常と判定された場合に、異常原因が前記検査対象物に対して所定の対処を行なうことで正常にすることができるものか否かの判定をする第2階層判定部と、
前記各判定部で判定した判定結果を出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記第2階層判定部で正常にする対処が可能と判定された検査対象物の波形信号から得られた特徴量に基づき、対処方法を求める第3階層判定部を備え、
その第3階層判定部における判定処理は、
(1)求めた対処方法が、部品交換で正常となる可能性があるか否か
(2)求めた対処方法が、調整作業で正常となる可能性があるか否か
(3)求めた対処方法が、現場での対応が困難か否か
のうち、少なくとも1つを判定する機能を備え、
前記第3階層判定部の判定結果を前記出力手段に出力するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記各階層判定部で行なう判定処理に使用する特徴量と判定ルールとを、それぞれ、各階層と関連づけて記憶する記憶手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記第1階層判定部における判定処理で使用する特徴量は、振動の実効値と振動のパワーとを用い、
その第1階層判定部における判定処理は、前記振動の実効値と前記振動のパワーとがともに大きい場合に異常と判定するものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記第2階層判定部における判定処理で使用する特徴量は、閾値を超えたピークの数と、その各ピークのピーク値の総和とを用い、
その第2階層判定部における判定処理は、前記ピーク値の数と前記ピーク値の総和とがともに大きい場合に対処不能と判定するものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記第3階層判定部は、
(1)′極値の尖り度と極値の歪み度がともに大きい場合に、部品交換で正常となる可能性ありと判断する機能
(2)′極値の尖り度と極値の歪み度の少なくとも一方が小さく、かつ、特定周波数が小さい場合に、調整作業(組立直し)で正常となる可能性があると判断する機能
(3)′極値の尖り度と極値の歪み度の少なくとも一方が小さく、かつ、特定周波数が大きい場合に、現場での対応が困難と判断する機能
の少なくとも1つを備えたことを特徴とする請求項2に記載の検査装置。
【請求項7】
検査対象物から取得した波形信号に対して特徴量を抽出し、抽出した特徴量に基づいて状態を判定する検査装置を用いた検査方法であって、
前記検査対象物が、正常か異常かの判定を行なう第1階層判定処理を実行し、
その実行結果が正常な場合には、その旨を出力装置に出力し、
前記第1階層判定処理を実行して異常と判定された場合に、異常原因が前記検査対象物に対して所定の対処を行なうことで正常にすることができるものか否かの判定をする第2階層判定処理を実行し、
その第2階層判定処理の結果を出力装置に出力することを特徴とする検査方法。
【請求項8】
前記第2階層判定処理で正常にする対処が可能と判定された検査対象物の波形信号から得られた特徴量に基づき、対処方法を求める第3階層判定処理を実行し、
その第3階層判定処理により求めた対処方法を出力装置に出力するものであり、
その第3階層判定処理は、
(1)求めた対処方法が、部品交換で正常となる可能性があるか否か
(2)求めた対処方法が、調整作業(組立直し)で正常となる可能性があるか否か
(3)求めた対処方法が、現場での対応が困難か否か
のうち、少なくとも1つを判定するものであることを特徴とする請求項7に記載の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−51870(P2007−51870A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−235082(P2005−235082)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】