説明

業務用電磁誘導加熱調理器

【課題】被調理物を収納して加熱する調理鍋の外底部に誘導加熱用の加熱コイルを装着したものにおいて、簡単な構成にて加熱コイルの移動を確実に防止する事を目的とするものである。
【解決手段】被調理物を収納して加熱し、かつ回転可能に枢支した調理鍋1の少なくとも外側面をケース3にて包囲すると共に、複数本の固定バンド13により調理鍋の外底面に誘導加熱用の加熱コイル10を固定したものにおいて、加熱コイルを調理鍋の半径方向に所定の間隔を置いて複数のグループに分けて配置すると共に、固定バンドの加熱コイル間に位置してこれら加熱コイルの端部間に係入するストッパー21を着脱可能に装着して成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、業務用の食材や給食用の食材を一度に大量に加熱調理を行う業務用電磁誘導加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
直径が1メートル以上の調理鍋を用いて、コンビニエンスストア等で販売される食材や、学校給食等の食材を一度に大量に加熱調理する業務用の加熱調理器で、特に特許文献1に示される様に、調理鍋1を左右一対の回転軸4,4にて回転駆動する様に構成し、かつ調理鍋1の側面周囲を外ケース3により包囲すると共に、調理鍋の外底部に誘導加熱用の加熱コイル7,8,9を装着したものでは、複数本の帯状の固定バンド14・・により上記加熱コイルを固定している。
【特許文献1】特開2002−231430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の場合、加熱コイルの重量が10Kg前後ある為、調理鍋を回転軸により回転して加熱コイルの重心位置が高くなると、断熱材と加熱コイル及び加熱コイルと固定バンド間の摩擦力が加熱コイルの重力より低下し、加熱コイルが自重により下側に移動し易いという問題がある。
【0004】
そこで本発明は、比較的簡単な構成にて、調理鍋の回転時における加熱コイルの移動を確実に防止する事を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1の構成は、被調理物を収納して加熱し、かつ回転可能に枢支した調理鍋の少なくとも外側面をケースにて包囲すると共に、複数本の固定バンドにより調理鍋の外底面に誘導加熱用の加熱コイルを固定したものにおいて、加熱コイルを調理鍋の半径方向に所定の間隔を置いて複数のグループに分けて配置すると共に、固定バンドの加熱コイル間に位置して、これら加熱コイルの端部間に係入するストッパーを着脱可能に装着して成るものである。
【0006】
本発明の請求項2の構成は、請求項1の構成において、ストッパーを、加熱コイル間に係入する中空円筒状のスプリングピンと、このスプリングピンを固定バンドに固定する固定金具とから構成して成るものである。
【0007】
本発明の請求項3の構成は、請求項1〜2の構成において、調理鍋の外底部略中心位置にセラミック製の固定リングを装着し、固定バンドの一端を固定リングに固定すると共に、他端をスプリングを介してケースに固定して成るものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に記載の構成により、加熱コイル間に係入して加熱コイルの移動を防止するストッパーを固定バンドに着脱可能に装着したことで、比較的簡単な構成にて調理鍋を回転時における加熱コイルの移動を確実に防止する事が出来るものである。
【0009】
本発明の請求項2に記載の構成により、ストッパーをスプリングピンと、このスプリングピンを固定バンドに固定する固定金具とで構成したことで、加熱コイルの装着位置に合わせてスプリングピンの装着位置を簡単に微調節でき、これによりスプリングピンにて加熱コイルの移動を確実に防止できると同時に、スプリングピンに汎用品を用いることで、比較的安価にて構成する事が出来るものである。
【0010】
本発明の請求項3に記載の構成により、ストッパーにて加熱コイルの移動を防止することで、固定バンドによる加熱コイルの押圧力を多少低下しても加熱コイルの移動を防止することが可能となり、これにより固定バンドの固定をスプリングを介して行うことで、固定バンドの締め過ぎによる固定リングや固定バンドの損傷を防止する事が出来るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施例を先ず図1に基づき説明すると、1は被調理物を入れて加熱する調理鍋で、アルミニウム材を鋳造により上面を開口2した腕状に形成していると共に、この調理鍋の外側面周囲を中空円筒状のケース3にて包囲し、かつこのケースの側面左右に連結した一対の回転軸4,4にて、上記調理鍋1とケース3とを台座5,6に回転自在に支持している。
【0012】
又、上記台座6内には、上記回転軸4,4を回転駆動する駆動モータ7や、この駆動モータ等への通電を制御する制御回路8を収納配置し、かつ上部には操作ボックス9を立設している。
【0013】
尚、上記実施例例では、調理鍋1をアルミニウム材で成形し、外底部に鉄等の誘電材料を溶射した図示しない誘電層を形成して誘導加熱が可能に構成しているが、ステンレスのSUS403系等の誘電材料や、SUS304系の比較的加工し易い材料を用い、その外底部に鉄粉を溶射して電磁誘導加熱に適した構成にしたり、他の電磁誘導加熱に用いられるクラッド材等を用いても良い。
【0014】
一方、上記調理鍋1の外底部には、図2にても示す様に例えば2個のグループに分割したリング状の誘導加熱用の加熱コイル10,11を、上記調理鍋1の外底面との間に非磁性材料から成る断熱材12を介して略同心状に装着していると共に、これら断熱材や上記加熱コイル10,11は、アルミニウムやSUS304系の非磁性金属板から成る複数の固定バンド13・・にて外底面に押し当てて固定している。
【0015】
又、上記固定バンド13・・は、所定の幅寸法を有する帯状を成し、一端14・・をU字状に折曲して上記調理鍋1の外底部の略中心に配置した、セラミック等の非磁性材料にて形成したリング状の固定リング15に係止し、かつ他端16・・を図3にても示す様に、スプリング17・・を介して上記ケース3の内側面に固定した固定ボルト18・・に係止している。
【0016】
尚、上記固定ボルト18・・は、上記ケース3の内側壁に固定された固定金具19・・のナット20・・に上下方向に移動可能に螺入され、かつ上端に上記スプリング17・・の一端を係止し、このスプリングの他端は上記固定バンド13・・の他端16・・に係止している。
【0017】
これにより、固定ボルト18・・を上方向に螺入することで、スプリング17・・の張力を上昇させて固定バンド13・・による加熱コイル10,11の調理鍋1外底面への押圧力を増加し、逆に固定ボルト18・・を下方向に移動させることで、スプリング17・・の張力を低下させることが出来る。
【0018】
又、上記固定バンド13・・と加熱コイル10,11との間にはゴムシート19を介在し、固定バンド13・・と加熱コイル10,11との接触による加熱コイルの損傷を防止すると同時に、これらの摩擦抵抗を増加して加熱コイルの移動を防止している。
【0019】
上記構成により、固定バンド18・・をスプリング17・・を介して固定したことで、固定バンド18・・を直接ケース3に固定する場合に比較し、固定ボルト18・・の締め過ぎや、調理鍋1の回転開始時における重心移動や回転力の付加による固定バンド18・・や固定リング15の破損を防止する事が出来るものである。
【0020】
尚、上記実施例では各固定バンド13・・の他端16・・に各々一対のスプリング17・・を連接しているが、これに限定されることなく1本或いは数本で構成しても良く、かつ固定ボルト18・・の回転によりスプリング17・・の張力を調整しているが、ナット20・・の回転により調整しても良く、固定ボルト18・・とナット20・・以外の組み合わせにより調整する様に構成しても良い。
【0021】
21・・は上記固定バンド13・・の加熱コイル10,11間に固定したストッパーで、図3にても示す様に、加熱コイル10,11間の部に上記ゴムシート19の上から係入する溝付きのスプリングピン22・・と、略コ字状を成し一端23・・を各々上記スプリングピンの端部に係入し、他端24・・を各々所定の間隔を置いて対向させてこれらをボルト25・・とナット26・・により連結固定した固定金具27・・とで構成している。
【0022】
これらの構成により、駆動モータ7により調理鍋1を回転すると、調理鍋の傾斜に伴って加熱コイル10,11の重心位置が上昇し、加熱コイルが自重により低い方向に移動し易いが、上記スプリングピン22・・により加熱コイル10,11の移動を確実に防止する事が出来るものである。
【0023】
尚、上記スプリングピン22・・や固定金具27・・、ボルト25・・、ナット26・・は、例えばSUS304系の非磁性材料やアルミニウム等で構成することで、加熱コイル10,11の通電時における温度上昇を防止出来る。
【0024】
又、上記実施例では汎用品のスプリングピン22・・を利用することで、専用品の設計によるコストアップを防止しているが、これに限定されることなく加熱コイル10,11の端部に位置して加熱コイルの移動を防止する形状であれば良い。
【0025】
上記駆動モータ7により調理鍋1を回転時における加熱コイル10,11の自重による移動を防止するものである。
【0026】
更に、上記固定バンド13・・の端部をスプリング17・・を介して固定したことで、ボルト等によってケース3に直接固定する場合に比べ、ボルトの締め過ぎや、調理鍋1の回転初期における一時的な負荷による固定リング15や固定バンド13・・の損傷を防止する事が出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による実施例を示す側面縦断面図である。
【図2】同じく要部の底面図である。
【図3】同じく要部の側面縦断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 調理鍋
3 ケース
10 加熱コイル
11 加熱コイル
13 固定バンド
15 固定リング
17 スプリング
21 ストッパー
22 スプリングピン
27 固定金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を収納して加熱し、かつ回転可能に枢支した調理鍋の少なくとも外側面をケースにて包囲すると共に、複数本の固定バンドにより上記調理鍋の外底面に誘導加熱用の加熱コイルを固定したものにおいて、上記加熱コイルを調理鍋の半径方向に所定の間隔を置いて複数のグループに分けて配置すると共に、上記固定バンドの加熱コイル間に位置して、これら加熱コイルの端部間に係入するストッパーを着脱可能に装着した事を特徴とする業務用電磁誘導加熱調理器。
【請求項2】
上記ストッパーを、上記加熱コイル間に係入する中空円筒状のスプリングピンと、このスプリングピンを上記固定バンドに固定する固定金具とから構成した事を特徴とする、上記請求項1に記載の業務用電磁誘導加熱調理器。
【請求項3】
上記調理鍋の外底部略中心位置にセラミック製の固定リングを装着し、上記固定バンドの一端を固定リングに固定すると共に、他端をスプリングを介してケースに固定した事を特徴とする、上記請求項1〜2に記載の業務用電磁誘導加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−269089(P2006−269089A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−80975(P2005−80975)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(302071092)テガ三洋工業株式会社 (244)
【Fターム(参考)】