説明

極低温ブッシング装置

【課題】高電圧用のブッシングを取付けても超電導コイルを収容する極低温容器を大型化することなく、しかも超電導コイルから発生する気泡の影響を受けにくい構造とすることにある。
【解決手段】極低温容器1と、この極低温容器内に液体窒素2とともに収容された超電導コイル3と、極低温容器1内に連通させて配置され、超電導コイル3を極低温容器1内部の低温部から極低温容器外部の常温部に電気的に接続し、対地から電気絶縁する一対の極低温ブッシング6a,6bとを備えた極低温ブッシング装置において、極低温容器1の異なる位置の側面をそれぞれ接続管5a,5bにより連通させてブッシングポケット4a,4bを配置し、このブッシングポケット内に極低温ブッシングを収納するとともに、極低温ブッシングの超電導コイル3との接続部を超電導コイル3の上部最外層端部から水平面とのなす角度が60°より下方の位置に配置する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温機器内部の低温部から常温部に電気的に接続し、対地に対しては電気絶縁する極低温ブッシング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大電流を流すことが可能な高温超電導体が線材として実用化されるようになりつつあり、これに伴って高温超電導体を限流器などの電力機器に適用することが検討され始めている。
【0003】
ところで、高温超電導体を用いた超電導機器を高電圧で使用するためには、既存の変電機器と接続する手段が必要であるが、気中絶縁を介して超電導機器を接続するには極低温に耐え得る構造のブッシングが不可欠である。
【0004】
従来、液体窒素温度で使用できる高電圧印加用の極低温ブッシングは、超電導ケーブルや超電導限流器用として定格電圧66kVクラスまでのものが研究、開発されている。現状では、この電圧クラス以下の超電導機器であれば電力用の開閉機器等を既存の極低温ブッシングを介して接続することが可能である。
【0005】
このような極低温ブッシングを用いたものとしては、極低温ケーブルの端末構造が提案されている(特許文献1〜3)。また、極低温ブッシングを取付けた超電導機器も提案されている(特許文献4)。
【0006】
従来の極低温ブッシング装置としては、図9に示すように極低温容器11の上面板11aを気密に貫通させて2本の極低温ブッシング12a,12bを配置し、これら極低温ブッシング12a,12bの極低温側端部に、極低温容器11内に収容され且つ極低温液体、例えば液体窒素13に浸された超電導コイル14の最内周側端及び最外周側端を接続導体15によりそれぞれ接続する構成としたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−196031号公報
【特許文献2】特開平9−130955号公報
【特許文献3】特開2005−237062号公報
【特許文献4】特開2007−104895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように従来の極低温ブッシング装置は、66kVクラスまでの使用に耐えることができるが、最近では送電容量が増加されるにつれて定格電圧300〜500kVクラスに対応できる構造の極低温ブッシング装置の開発が望まれている。
【0009】
しかし、上述した従来のブッシング装置では、極低温容器11の上面板11aを気密に貫通させて2本の極低温ブッシング12a,12bを配置しているので、極低温容器が大型になってしまうという問題があった。
【0010】
また、超電導コイル14に臨界電流を超える電流が流れると抵抗が発生し、超電導コイル14が発熱する。すると、超電導コイル14が発熱により液体窒素が沸騰して気泡が発生し、この気泡が極低温ブッシングの外周沿面に付着すると、ブッシングの絶縁性能を低下させると言う問題があった。
【0011】
本発明は上記のような問題を解消するためになされたもので、高電圧用のブッシングを取付けても超電導コイルを収容する極低温容器を大型化することなく、しかも超電導コイルから発生する気泡の影響を受けにくい構造としてブッシングの絶縁性能の低下を防止することができる極低温フッシング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記の目的を達成するため、次のような極低温ブッシング装置を構成する。
【0013】
(1)本発明は、極低温容器と、この極低温容器内に極低温液体とともに収容された超電導コイルと、前記極低温容器内に連通させて配置され、前記超電導コイルを極低温容器内部の低温部から極低温容器外部の常温部に電気的に接続し、対地から電気絶縁する一対の極低温ブッシングとを備えた極低温ブッシング装置において、前記極低温容器の異なる位置の側面をそれぞれ接続部により連通させてブッシングポケットを配置し、このブッシングポケット内に前記極低温ブッシングを収納するとともに、前記極低温ブッシングの前記超電導コイルとの接続部を前記超電導コイルの上部最外層端部から水平面とのなす角度が60°より下方の位置に配置する構成とする。
【0014】
(2)本発明は、極低温容器と、この極低温容器内に極低温液体とともに収容された超電導コイルと、前記極低温容器内に連通させて配置され、前記超電導コイルを極低温容器内部の低温部から極低温容器外部の常温部に電気的に接続し、対地から電気絶縁する一対の極低温ブッシングとを備えた極低温ブッシング装置において、前記極低温容器の側面を接続部により連通させてブッシングポケットを配置し、このブッシングポケット内に一方の極低温ブッシングの前記超電導コイルとの接続側を収納するとともに、他方の極低温ブッシングの前記超電導コイルとの接続側を前記極低温容器の中心部に配置し、前記一方の極低温ブッシングの接続部を前記超電導コイルの上部最外層端部から水平面とのなす角度が60°より下方の位置に配置する構成とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明による極低温ブッシング装置によれば、高電圧用のブッシングを取付けても超電導コイルを収容する極低温容器の大型化することなく、しかも超電導コイルから発生する気泡の影響を受けにくい構造としてブッシングの絶縁性能の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による極低温ブッシング装置の第1の実施形態を示す構成図。
【図2】同実施形態において、ブッシングポケットと極低温容器との接続位置の説明図。
【図3】同実施形態において、極低温容器に対して2本の極低温ブッシングの取付け範囲の説明図。
【図4】本発明による極低温ブッシング装置の第2の実施形態を示す構成図。
【図5】同実施の形態において、極低温容器の上面板の中心部を貫通させて配置した一方の極低温ブッシングの配置構成の説明図。
【図6】同実施形態において、一方の極低温ブッシングに対して他方の極低温ブッシングの取付け範囲の説明図。
【図7】同じく他方の極低温ブッシングの図6と異なる取付け範囲の説明図。
【図8】本発明による極低温ブッシング装置の第3の実施形態を示す構成図。
【図9】従来の極低温ブッシング装置を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明の実施形態について図面を参照した説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は本発明による極低温ブッシング装置の第1の実施形態を示す構成図である。
【0019】
図1において、1は上部開口面が上面板1aにより密閉された有底円筒形の極低温容器で、この極低温容器1内には極低温液体として例えば液体窒素2が収容されるともに、この液体窒素2中に超電導機器、例えば超電導コイル3が浸されている。
【0020】
このような極低温容器1において、その中心部から見て180°異なる側面に円筒状のブッシングポケット4a,4bを接続管5a,5bにより極低温容器1内にそれぞれ連通させて配置し、これらブッシングポケット4a,4b内に極低温ブッシング6a,6bの超電導コイル3との接続側をそれぞれ収納する。そして、極低温ブッシング6aと超電導コイル3の最外周側端とを接続導体7aにより接続し、極低温ブッシング6bと超電導コイル3の最内周側端とを接続導体7bにより接続する。
【0021】
この場合、ブッシングポケット4a,4bは、その中心軸が垂直になるように配設され、また接続管5a,5bはその中心軸が水平になるように配設され、極低温容器1の側面とブッシングポケット4a,4bとの間を連通させて接続される。
【0022】
また、ブッシングポケット4a,4bと極低温容器1との間を接続する接続管5a,5bは、図2に示すように超電導コイル3の上部最外層端部3bにおいて、水平面となす角度3cが60°より下方となる位置に配置される。
【0023】
上記では、極低温ブッシング6aと極低温ブッシング6bとを図3(a)に示すように極低温容器1の中心部1bから見て180°異なる角度8aに配置する場合について述べたが、これら極低温ブッシング6a、6bは極低温容器1の中心部1bから見て図3(a)の180°から図3(b)の45°の角度8bの範囲内に配置できるものである。
【0024】
このような構成の極低温ブッシング装置においては、超電導コイル3が極低温容器1内、極低温ブッシング6a,6bがブッシングポケット4a,4b内のそれぞれ別容器内に収納され、またブッシングポケット4a,4bを極低温容器1に連通させて接続する接続管5a,5bを超電導コイル3の上部最外層端部3bにおいて、水平面となす角度3cが60°より下方、すなわち超電導コイル3から発生した気泡が到達しない角度より下方となる位置に配置しているので、超電導コイル3の発熱によって液体窒素2が沸騰して超電導コイル3から気泡が発生した場合でも極低温ブッシング6a,6bには気泡が到達しない。
【0025】
また、極低温ブッシング6a,6bに印加する電圧に応じた距離が保てるように極低温ブッシング6a,6b間の角度を極低温容器1の中心部1bから見て45°〜180°の角度の範囲内で変えることにより、最小寸法で極低温ブッシング6a,6bを配置することができる。
【0026】
このように本発明の第1の実施形態によれば、超電導コイル3から発生する気泡が極低温ブッシング6a,6bに到達しないため、気泡の発生による極低温ブッシング6a,6bの絶縁低下の恐れがなくなり、絶縁性能を向上させることができる。
【0027】
また、極低温ブッシング6a,6bの間隔を最小にすることで、極低温容器1全体を小形にすることができる。
【0028】
(第2の実施形態)
図4は本発明による極低温ブッシング装置の第2の実施形態を示す構成図で、図1と同一構成部品には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0029】
第2の実施形態では、図4に示すように極低温容器1の側面に円筒状のブッシングポケット4を接続管5により極低温容器1内に連通させて配設するとともに、このブッシングポケット4内に極低温ブッシング6aの超電導コイル3との接続側を収納し、また、極低温容器1の上面板1aの中心部1bに極低温ブッシング6bを垂直に貫通させて配置する。そして、極低温ブッシング6aと超電導コイル3の最外周側端とを接続導体7aにより接続し、極低温ブッシング6bと超電導コイル3の最内周側端とを接続導体7bにより接続する。
【0030】
この場合、ブッシングポケット4は、その中心軸が垂直になるように配設され、また接続管5はその中心軸が水平になるように配設され、極低温容器1の側面とブッシングポケット4との間を連通させて接続される。
【0031】
また、ブッシングポケット4と極低温容器1との間を接続する接続管5は、第1の実施形態と同様に超電導コイル3の上部最外層端部において、水平面となす角度が60°より下方となる位置に配置される。
【0032】
さらに、超電導コイル3の最内層コイル3aは、図5に示すように他層のコイルより背が高く、極低温ブッシング6bの下端を覆うように配置されて構成されている。
【0033】
上記では、極低温容器1の側面に円筒状のブッシングポケット4をその中心軸が垂直になるように配設して、このブッシングポケット4内に極低温ブッシング6aを極低温容器1の上面板1aの中心部1bを垂直に貫通する極低温ブッシング6bに対して平行、つまり0°の角度で配置する場合について述べたが、極低温ブッシング6aは、図6、図7に示すように極低温ブッシング6bと角度0°〜90°の範囲8で傾けて配置できるものである。
【0034】
このような構成の極低温ブッシング装置においては、極低温ブッシング6aが極低温容器1とは別容器のブッシングポケット4内に収納され、ブッシングポケット4を極低温容器1に接続する接続部5が超電導コイル3から発生した気泡が到達しない角度より下方に配置されていることから、超電導コイル3の発熱によって液体窒素2が沸騰して超電導コイル3から気泡が発生した場合でも極低温ブッシング6aには気泡が到達しない。
【0035】
また、極低温ブッシング6bが極低温容器1の中央部に配置でき、極低温ブッシング6aと最小限の絶縁距離となる角度で配置できるため、極低温機器全体の寸法を小形にすることができる。
【0036】
このように本発明の第2の実施形態によれば、超電導コイル3から発生する気泡が極低温ブッシング6a及び極低温ブッシング6bに到達しないため、気泡の発生による極低温ブッシング4の絶縁低下の恐れがなくなり、絶縁性能を向上させることができる。
【0037】
(第3の実施形態)
図8は本発明による極低温ブッシング装置の第3の実施形態を示す構成図で、図1と同一構成部品には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0038】
第3の実施形態では、図8に示すように極低温容器1内に偶数個の同心円筒状コイルで構成された超電導コイル3を液体窒素2とともに収容し、極低温容器1の側面に該容器と同一高さの円筒状のブッシングポケット4c,4dを別容器として超電導コイル3の下端部に対応する位置に設けられた接続管5c,5dにより極低温容器1内にそれぞれ連通させて配置し、これらブッシングポケット4c,4d内に極低温ブッシング6a,6bの超電導コイル3との接続側をそれぞれ収納する。そして、極低温ブッシング6aと超電導コイル3の最外周側端の下部とを接続導体7aにより接続し、極低温ブッシング6bと超電導コイル3の最内周側端の下部とを接続導体7bにより接続する。
【0039】
この場合、極低温ブッシング6a、6bは第1の実施形態と同様に極低温容器1の中心部から見て45°〜180°の角度の範囲内に配置できるものである。
【0040】
このような構成の極低温ブッシング装置においては、極低温ブッシング6a,6bが超電導コイル3が収容された極低温容器1とはそれぞれ別容器のブッシングポケット4c,4d内に収納されるとともに、超電導コイル3が偶数個の円筒状コイルから構成されていることから、極低温ブッシング6a,6bと超電導コイル3間を接続する接続導体7a,7bを超電導コイル3の下部に配置することができるので、超電導コイル3の発熱によって液体窒素2が沸騰して気泡が発生した場合でも極低温ブッシング6a,6bや、接続導体7a,7bには気泡が到達しない。
【0041】
このように本発明の第3の実施形態によれば、超電導コイル3から発生する気泡が極低温ブッシング6a,6b及び接続導体7a,7bに到達しないため、気泡の発生による極低温ブッシング6a,6bの絶縁低下の恐れがなくなり、絶縁性能を向上させることができる。
【0042】
なお、本発明は上記し且つ図面に示す実施形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で種々変形して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0043】
1…極低温容器、1a…上面板、1b…極低温容器の中心部、3…超電導コイル、3a…最内層コイル、3b…上部最外層端部、3c…角度、4,4a,4b,4c,4d…ブッシングポケット、5,5a,5b,5c,5d…接続管、6a,6b…極低温ブッシング、7a,7b…接続導体、8a,8b…ブッシング同士がなす角度、8…範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温容器と、この極低温容器内に極低温液体とともに収容された超電導コイルと、前記極低温容器内に連通させて配置され、前記超電導コイルを極低温容器内部の低温部から極低温容器外部の常温部に電気的に接続し、対地から電気絶縁する一対の極低温ブッシングとを備えた極低温ブッシング装置において、
前記極低温容器の異なる位置の側面をそれぞれ接続部により連通させてブッシングポケットを配置し、このブッシングポケット内に前記極低温ブッシングを収納するとともに、前記極低温ブッシングの前記超電導コイルとの接続部を前記超電導コイルの上部最外層端部から水平面とのなす角度が60°より下方の位置に配置する構成としたことを特徴とする極低温ブッシング装置。
【請求項2】
請求項1記載の極低温ブッシング装置において、
前記一対の極低温ブッシングは、該ブッシング同士がなす角度を前記極低温容器の中心部を中心として45°〜180°の範囲内に配置する構成としたことを特徴とする極低温ブッシング装置。
【請求項3】
極低温容器と、この極低温容器内に極低温液体とともに収容された超電導コイルと、前記極低温容器内に連通させて配置され、前記超電導コイルを極低温容器内部の低温部から極低温容器外部の常温部に電気的に接続し、対地から電気絶縁する一対の極低温ブッシングとを備えた極低温ブッシング装置において、
前記極低温容器の側面を接続部により連通させてブッシングポケットを配置し、このブッシングポケット内に一方の極低温ブッシングの前記超電導コイルとの接続側を収納するとともに、他方の極低温ブッシングの前記超電導コイルとの接続側を前記極低温容器の中心部に配置し、前記一方の極低温ブッシングの接続部を前記超電導コイルの上部最外層端部から水平面とのなす角度が60°より下方の位置に配置する構成としたことを特徴とする極低温ブッシング装置。
【請求項4】
請求項3記載の極低温ブッシング装置において、
前記極低温容器の側面に配置した一方の極低温ブッシングは、前記極低温容器の中心部に配置した他方の極低温ブッシングとなす角度を0°〜90°の範囲で傾けて配置する構成としたことを特徴とする極低温ブッシング装置。
【請求項5】
請求項3記載の極低温ブッシング装置において、
前記超電導コイルは、同心円筒状の同軸コイルで構成され、その最内層コイル巻枠が他方の極低温ブッシング端部の一部を覆うように配置する構成としたことを特徴とする極低温ブッシング装置。
【請求項6】
請求項1又は請求項2記載の極低温ブッシング装置において、
前記超電導コイルは、偶数個の同心円筒状の同軸コイルで構成され、この超電導コイルの下部と前記極低温ブッシングとを接続する構成としたことを特徴とする極低温ブッシング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−134905(P2011−134905A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293269(P2009−293269)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】