説明

極低温冷却装置及びその冷媒液面制御方法

【課題】装置内の極低温冷媒の液面を、エネルギー消費量を増大させることなく好適に制御する。
【解決手段】冷凍機からの極低温冷媒をJT弁32により液化して超電導加速空洞1へ導き、この超電導加速空洞を冷却した後に前記冷凍機へ戻すメイン冷却系11を備えた極低温冷却装置10において、メイン冷却系から極低温冷媒の一部を分流して導き、超電導加速空洞1に熱的影響を及ぼす熱シールド板6を液体ヘリウム2により冷却してメイン冷却系11の出口側液体ヘリウム槽21Bに合流させるサブ冷却系12と、液体ヘリウム2をサブ冷却系へ分流させる流量を調整する流量調整弁35とを有し、この流量調整弁35により、メイン冷却系11の出口側液体ヘリウム槽21Bにおける極低温冷媒の液面Aを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導加速空洞などの被冷却物を極低温に冷却し、装置内の極低温冷媒の液面を制御する極低温冷却装置、及びその冷媒液面制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導体は電気抵抗がゼロである特性から、超電導コイルや超電導加速空洞などに応用されている。一般に、超電導コイルや超電導加速空洞を超電導状態に保つためには臨界温度以下に冷却する必要があり、そのために、液体ヘリウムや液体窒素などの極低温冷媒が利用されている。この極低温冷媒は発熱や熱侵入により蒸発してしまうため補給が必要であるが、蒸発したガスを冷凍機で再液化することにより補給を不要とした方式も使われている。
【0003】
特許文献1には、冷凍機により極低温に冷却された液体ヘリウムを用いて、被冷却物、例えば超電導磁石や、超電導加速空洞を備えた加速器などの超電導機器を冷却する極低温冷却システムが開示されている。
【0004】
また、冷凍機で再液化する場合、熱負荷と冷凍機能力の大小関係によって極低温冷媒の液量が増減してしまう。この液量の増減に応じて冷媒ガスの出し入れが必要になり、一般的にはバッファタンク等で調整している。しかし、極低温冷媒は液化すると容積が非常に小さくなるため、バッファタンクによる調整は限定的であり、液面制御が必要になる。
【0005】
このような極低温冷媒の液面制御方法としては液体冷媒を貯溜する容器または槽内にヒータを配置し、このヒータの加熱量をコントローラで増減することで液面を制御する方法がある。この方法はTESLA(TeV-Energy Superconducting Linear Accelerator)やLHC(Large Hadron Collider)などの大型加速器で採用されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
ヒータによる極低温冷媒の液面制御の方法を、図9を用いて説明する。この極低温冷媒の液面制御方法を実施する極低温冷却装置100は、極低温冷媒としてヘリウム(液体ヘリウム)を用いたものであり、被冷却物である複数の超電導加速空洞1と、これら複数の超電導加速空洞1を各々内包する複数の液体ヘリウム容器22と、これら複数の液体ヘリウム容器22を連結し、入口側と出口側にそれぞれ入口側液体ヘリウム槽21A、出口側液体ヘリウム槽21Bを有する液体ヘリウム配管23と、入口側液体ヘリウム槽21Aに液体ヘリウム2を供給すると共に、JT弁32を有する供給配管31と、出口側液体ヘリウム槽21Bから蒸発ガス(ヘリウムガス)を回収する戻り配管33と、出口側液体ヘリウム槽21B内での液体ヘリウム2の液面を計測する液面計4と、出口側液体ヘリウム槽21Bに取り付けられたヒータ5とを備えて構成されている。
【0007】
このように構成された極低温冷却装置100で液体ヘリウム2の液面を制御する方法を以下に説明する。冷凍機から低温高圧の状態で送られてきたヘリウムガスはJT弁32で膨張され、一部が液体ヘリウム2になるため装置内の液体ヘリウム量が増加する。一方、超電導加速空洞1での発熱と熱侵入による熱負荷によって液体ヘリウム2が蒸発し、戻り配管33を経由して冷凍機側へ戻るため、装置内の液体ヘリウム量が減少する。この液体ヘリウム2の液化による増加と蒸発による減少の大小関係により、出口側液体ヘリウム槽21B内で液体ヘリウム2の液面Aが上下に変化する。この変化を液面計4で計測し、液面Aが上昇する場合に、ヒータ5の加熱量を増大して液体ヘリウム2を蒸発させ、液面Aが低下する場合に、ヒータ5の加熱量を減少させて液体ヘリウム2の蒸発を抑制することで、出口側液体ヘリウム槽21B内における液体ヘリウム2の液面Aを一定に制御している。
【特許文献1】特開2001−66029号公報
【非特許文献1】Advances in Cryogenic Engineering, Vol 41 (1996) p911, G. Horlitz, et al. “ The TESLA 500 Cryogenic System Layout ”
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した極低温冷却装置100における極低温冷媒の液面制御方法では、ヒータ5の加熱量をゼロ以下にできないため、ヒータ5の加熱量がゼロの場合でも液体ヘリウム2の液面Aが低下するときには、液面制御が出来ないことになる。このような事態を避けるために、前記冷凍機は、超電導加速空洞1での発熱と熱侵入の合計である熱負荷の最大値を上回る冷凍能力を持つものが採用されている。すなわち、従来の極低温冷却装置100の液面制御方法では、冷凍機は最大熱負荷に対応する冷却を常に行い、それにより冷却された液体ヘリウム2の多くをヒータ5で蒸発させている。
【0009】
これは明らかに無駄であり、消費エネルギーを低減する方法として、熱負荷が小さい場合には冷凍機の冷凍能力を下げて消費エネルギーを減らすか、液体状態の極低温冷媒を有効に活用する方法を考える必要がある。しかし、超電導加速空洞1を備えた大型の加速器では、図9のような極低温冷却装置100を100台以上並べて1台の冷凍機で冷却するため、冷凍機の冷凍能力を細かく制御する方法はあまり有効ではない。
【0010】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、装置内の極低温冷媒の液面を、エネルギー消費量を増大させることなく好適に制御できる極低温冷却装置及びその冷媒液面制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、冷凍機からの極低温冷媒を膨張手段により液化して被冷却物に導き、この被冷却物を冷却した後に前記冷凍機へ戻すメイン冷却系を備えた極低温冷却装置において、前記メイン冷却系から極低温冷媒の一部を分流して導き、前記被冷却物に熱的影響を及ぼす高温部を、液化された極低温冷媒により冷却した後、当該極低温冷媒を前記メイン冷却系の合流部に合流させるサブ冷却系と、極低温冷媒を前記サブ冷却系へ分流させる流量を制御する流量制御手段とを有し、この流量制御手段により、前記メイン冷却系の前記合流部における極低温冷媒の液面が制御されるよう構成されたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被冷却物を極低温冷媒により冷却するメイン冷却系からサブ冷却系へ極低温冷媒の一部を分流させ、この分流した極低温冷媒により、被冷却物に熱的影響を及ぼす高温部を冷却し、極低温冷媒をサブ冷却系へ分流させる流量を制御する流量制御手段によって、サブ冷却系からの極低温冷媒が合流するメイン冷却系の合流部における極低温冷媒の液面が制御される。従って、冷凍機の冷凍能力を増大させることによるエネルギー消費量の増大を招くことなく、装置内の極低温冷媒の液面を好適に制御できる。
【0013】
また、流量制御手段により、メイン冷却系における余剰の極低温冷媒をサブ冷却系へ導いて、被冷却物に熱的影響を及ぼす高温部を冷却することから、極低温冷媒を有効に活用して被冷却物への熱侵入量を低減できるので、被冷却物の効率的な冷却を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づき説明する。
【0015】
[A]第1の実施の形態(図1)
図1は、本発明に係る極低温冷却装置の第1の実施の形態を示す概略構成図である。本実施の形態において、背景技術と同様な部分は、同一の符号を付す。
【0016】
図1に示す極低温冷却装置10は、液化された極低温冷媒により被冷却物としての複数の超電導加速空洞1を冷却するメイン冷却系11と、同じく液化された極低温冷媒により超電導加速空洞1に熱的影響を及ぼす高温部としての熱シールド板6を冷却するサブ冷却系12と、メイン冷却系11の極低温冷媒をサブ冷却系12へ分流させる流量を制御する流量制御手段としての流量調整弁35と、を有して構成される。
【0017】
ここで、超電導加速空洞1は、超電導体(超電導材料)で構成され、内部に形成される電場によって電子等の荷電粒子を加速するものである。複数の超電導加速空洞1にて加速された荷電粒子のビームは、後述のビームパイプ8の周囲に適宜設けられた例えば超電導磁石9によって収束され、またはその方向が変更される。
【0018】
また、前記極低温冷媒は例えばヘリウムであり、冷凍機により低温高圧状態とされ、後述のJT(ジュールトムソン)弁32により膨張されて液化され、約4〜2Kの温度となる。超電導加速空洞1は、液化された極低温冷媒(即ち液体ヘリウム2)により臨界温度以下に冷却されて超電導状態に保持される。
【0019】
さて、メイン冷却系11は、冷凍機からの極低温冷媒(ヘリウムガス)を、膨張手段としてのJT弁32により液化して超電導加速空洞1へ導き、この超電導加速空洞1を臨界温度以下の約4〜2Kに冷却した後、前記冷凍機へ戻す系統である。このメイン冷却系11は、供給配管31、入口側液体ヘリウム槽21A、液体ヘリウム配管23、液体ヘリウム容器22、出口側液体ヘリウム槽21B、戻り配管33及びJT弁32を有して構成される。
【0020】
液体ヘリウム容器22は複数設置され、それぞれが液体ヘリウム配管23に連結される。各液体ヘリウム容器22は、複数個、例えば9個連設された超電導加速空洞1を内包すると共に、液体ヘリウム配管23から液体ヘリウム2が導入されて超電導加速空洞1を冷却する。尚、隣接する液体ヘリウム容器22間で、超電導加速空洞1どうしはビームパイプ8により連結されている。
【0021】
液体ヘリウム配管23は、前述の如く複数の液体ヘリウム容器22に連結される共に、入口側端部に入口側液体ヘリウム槽21Aが、出口側端部に出口側液体ヘリウム槽21Bが、それぞれ配置されて構成される。そして、入口側液体ヘリウム槽21Aに供給配管31が接続され、出口側液体ヘリウム槽21Bに戻り配管33が接続される。JT弁32は供給配管31に配設されている。
【0022】
従って、冷凍機からの低温高圧状態のヘリウムガスは供給配管31に導かれ、JT弁32により膨張されて液化され、液体ヘリウム2となって入口側液体ヘリウム槽21Aに流入する。この液体ヘリウム2は、入口側液体ヘリウム槽21Aから液体ヘリウム配管23を通って各液体ヘリウム容器22へ導入され、複数の超電導加速空洞1を約4〜2Kに冷却する。これらの超電導加速空洞1を冷却した液体ヘリウム2は、一部がヘリウムガスとなって出口側液体ヘリウム槽21Bへ流入し、このヘリウムガスが戻り配管33を通って冷凍機に回収される。
【0023】
入口側液体ヘリウム槽21A及び出口側液体ヘリウム槽21Bには、それぞれの槽内における液体ヘリウムの液面Aを計測する液面計4が設置されている。また、出口側液体ヘリウム槽21Bには、槽内の液体ヘリウム2を加熱してガス化するためのヒータ5が設置されている。
【0024】
前述のサブ冷却系12は、メイン冷却系11から極低温冷媒(本実施の形態では液化された極低温冷媒、即ち液体ヘリウム2)の一部を分流して導き、この液化された極低温冷媒(液体ヘリウム2)により熱シールド板6を冷却した後、大部分がガス化された極低温冷媒(ヘリウムガス)をメイン冷却系11の合流部としての出口側液体ヘリウム槽21Bに合流させるものである。このサブ冷却系12は、分流配管36と熱交換器部37とを有してなる。
【0025】
ここで、熱シールド板6は、超電導加速空洞1を熱から遮蔽するものであり、液体ヘリウム容器22、液体ヘリウム配管23、入口側液体ヘリウム槽21A及び出口側液体ヘリウム槽21Bなどを覆う。これらの液体ヘリウム容器22、液体ヘリウム配管23、入口側液体ヘリウム槽21A及び出口側液体ヘリウム槽21Bなどは熱シールド板6により支持される。また、この熱シールド板6は、当該熱シールド板6を収納する図示しない真空容器に、支持体(不図示)を用いて支持される。
【0026】
分流配管36は、メイン冷却系11の供給配管31におけるJT弁32下流側の位置(分流点P1)に接続され、当該JT弁32により液化された極低温冷媒(液体ヘリウム2)を導く。また、分流配管36の出口部39は、出口側液体ヘリウム槽21B内において水平方向に延び、当該出口側液体ヘリウム槽21B内の液体ヘリウム2の液面Aよりも上方に設置される。これにより、分流配管36の出口部39から吐き出されるヘリウムガスによって、出口側液体ヘリウム槽21B内の液体ヘリウム2の液面Aが乱されないように配慮されている。
【0027】
熱交換器部37は、分流配管36内を流れる液体ヘリウム2と熱シールド板6との間で熱交換を実施する。これにより、熱シールド板6が、液体ヘリウム2の温度に近い温度である4〜2Kに冷却される。
【0028】
前述の流量調整弁35は、分流配管36と供給配管31の少なくとも一方の分流点P1付近、本実施の形態では、分流配管36の分流点P1付近に設置される。この流量調整弁35の開度制御により、供給配管31から分流配管36へ分流される液体ヘリウム2の流量が調整される。これにより、メイン冷却系11の出口側液体ヘリウム槽21Bにおける液体ヘリウム2の液面Aが制御される。
【0029】
つまり、超電導加速空洞1における発熱や熱侵入などの熱負荷が小さい場合には、この超電導加速空洞1の熱負荷による液体ヘリウム2の蒸発量が少ないので、出口側液体ヘリウム槽21Bにおける液体ヘリウム2の液面Aが上昇する傾向にある。従って、この液体ヘリウム2の液面Aの上昇を液面計4が計測したときに、流量調整弁35の開度を大きく制御して、サブ冷却系12への液体ヘリウム2の分流量を増加させ、この液体ヘリウム2により熱シールド板6を冷却し、この熱シールド板6の冷却による液体ヘリウムの蒸発量を増大させる。これにより、出口側液体ヘリウム槽21Bにおける液体ヘリウム2の液面Aの上昇が抑制される。
【0030】
また、超電導加速空洞1における熱負荷が大きい場合には、この超電導加速空洞1の熱負荷によって液体ヘリウム2の蒸発量が多くなり、出口側液体ヘリウム槽21Bにおける液体ヘリウム2の液面Aが低下する傾向にある。従って、この液体ヘリウム2の液面Aの低下を液面計4が計測したときに、流量調整弁35の開度を小さく制御して、サブ冷却系12への液体ヘリウム2の分流量を減少させ、この液体ヘリウム2による熱シールド板6の冷却を抑制する。これにより、熱シールド板6の冷却による液体ヘリウム2の蒸発量が減少して、出口側液体ヘリウム槽21Bにおける液体ヘリウム2の液面Aの低下が抑制される。このように流量調整弁35の開度制御によって、出口側液体ヘリウム槽21Bにおける液体ヘリウム2の液面Aが略一定に制御される。
【0031】
ここで、熱シールド板6による超電導加速空洞1への熱侵入量の低減効果について考察する。上述のように、超電導加速空洞1での熱負荷が少ない場合には熱シールド板6を十分冷却できるが、超電導加速空洞1での熱負荷が多い場合には熱シールド板6を充分に冷却できない。すなわち、超電導加速空洞1での熱負荷が少ない場合には、熱シールド板6の冷却により超電導加速空洞1への熱侵入量を低減できるが、超電導加速空洞1での熱負荷が多い場合には、熱シールド板6の冷却によって超電導加速空洞1への熱侵入量を充分に低減できないことになり、一見無意味に思われる。
【0032】
しかし、熱シールド板6の熱容量が大きい場合には、熱シールド板6の温度変化に長時間を要し、熱シールド板6の冷却が停止された場合にも、この熱シールド板6の温度は、長時間低い温度に平均化されて維持される。したがって、熱シールド板6は、超電導加速空洞1での熱負荷が大きい場合にも、超電導加速空洞1への熱侵入量の低減に寄与できることになる。これは、冷凍機に対する最大熱負荷を低減することになり、この結果、冷凍機において必要な冷凍能力を低下させることができ、この冷凍機を駆動するための所要動力も低減することができる。
【0033】
尚、出口側液体ヘリウム槽21B内の液体ヘリウム2の流量調整弁35による液面制御は、冷凍機の運転周波数を制御するよりは容易であるが、超電導加速空洞1での熱負荷の急激な変動に対しては追従できない場合が考えられる。この場合、出口側液体ヘリウム槽21B内の液体ヘリウム2の液面制御を、上述の流量調整弁35による液面制御と、ヒータ5の加熱量による液面制御とを併用して実施する。すなわち、ヒータ5の加熱量により液面制御として、液面上昇時にヒータ5の加熱量を増大し、液面低下時にヒータ5の加熱量を減少させる。この場合、ヒータ5の加熱量による液面制御は急激な変動分を補償するだけなので、ヒータ5による超電導加速空洞1への入熱量は、ヒータ5の加熱量による液面制御のみを実施する従来の方法に比べて数分の一に低減できる。
【0034】
以上のように構成されたことから、本実施の形態によれば、次の効果(1)及び(2)を奏する。
【0035】
(1)超電導加速空洞1を極低温冷媒(液体ヘリウム2)により冷却するメイン冷却系11からサブ冷却系12へ液体ヘリウム2の一部を分流させ、この分流された液体ヘリウム2により超電導加速空洞1に熱的影響を及ぼす熱シールド板6を冷却し、液体ヘリウム2をサブ冷却系12へ分流させる流量を制御する流量調整弁35によって、サブ冷却系12が合流するメイン冷却系11の出口側液体ヘリウム槽21Bにおける液体ヘリウム2の液面Aが制御される。従って、冷凍機の冷凍能力を増大させ、且つ、ヒータ5の加熱量を調整することによって液体ヘリウム2の液面Aを制御する従来の場合に比べ、エネルギー消費量の増大を招くことなく、出口側液体ヘリウム槽21B内の液体ヘリウム2の液面Aを好適に制御できる。
【0036】
(2)流量調整弁35により、メイン冷却系11における余剰の極低温冷媒(液体ヘリウム2)をサブ冷却系12へ導いて、超電導加速空洞1に熱的影響を及ぼす熱シールド板6を冷却することから、極低温冷媒を有効に活用して超電導加速空洞1への熱侵入量を低減できる。この結果、超電導加速空洞1の効率的な冷却を実現できる。
【0037】
[B]第2の実施の形態(図2)
図2は、本発明に係る極低温冷却装置の第2の実施の形態を示す概略構成図である。この第2の実施の形態において、前記第1の実施の形態と同様な部分は、同一の符号を付して説明を省略あるいは簡素化する。
【0038】
本実施の形態の極低温冷却装置20が前記第1の実施の形態の極低温冷却装置10と異なる点は、極低温冷却装置20のサブ冷却系13における分流配管36が、メイン冷却系11における供給配管31のJT弁32上流側の位置(分流点P2)に接続され、この分流点P2付近に膨張手段としてのJT弁41が備えられたことである。従って、サブ冷却系13は、冷凍機からの低温高圧の極低温冷媒(ヘリウムガス)をメイン冷却系11から分流して導き、JT弁41にて膨張させて液化し、液体ヘリウム2を熱交換器部37へ導く。
【0039】
更に、流量調整弁35が、分流点P2下流側の供給配管31と分流配管36との少なくとも一方において、JT弁32または41の上流側に設置される。例えば、流量調整弁35は分流配管36において、分流点P2とJT弁41との間に設置される。
【0040】
前記第1の実施の形態では、液体ヘリウム配管23は、圧力損失が小さくなるように太い配管が採用されているが、分流配管36はこのような太い配管を採用できないので、この分流配管36へ分流される極低温冷媒の流量比率は数%程度である。これに対し、本実施の形態では、JT弁32とJT弁41との開度比率、つまり絞りの比率を変更することで、供給配管31から分流配管36へ分流される極低温冷媒(ヘリウムガス)の流量比率を0%〜100%の間の任意の比率に設定することが可能となる。
【0041】
従って、本実施の形態によれば、前記第1の実施の形態の効果(1)及び(2)と同様な効果を奏するほか、次の効果(3)を奏する。
【0042】
(3)JT弁32とJT弁41との絞りの比率を変更することで、供給配管31から分流配管36へ分流されるヘリウムガスの流量比率を0%〜100%の広い範囲で設定できる。このため、メイン冷却系11の出口側液体ヘリウム槽21Bにおける液体ヘリウム2の液面Aの制御範囲を拡大することができると共に、余剰の極低温冷媒を一層有効に活用して、超電導加速空洞1をより効率的に冷却することができる。
【0043】
尚、本実施の形態では、サブ冷却系13の分流配管36に流量調整弁35が設置される場合を述べたが、この流量調整弁35を省略し、JT弁32とJT弁41の少なくとも一つ、例えばJT弁41によって、供給配管31から分流配管36へ分流される極低温冷媒(ヘリウムガス)の流量を制御してもよい。
【0044】
[C]第3の実施の形態(図3)
図3は、本発明に係る極低温冷却装置の第3の実施の形態を示す概略構成図である。この第3の実施の形態において、前記第1及び第2の実施の形態と同様な部分は、同一の符号を付して説明を省略あるいは簡素化する。
【0045】
本実施の形態の極低温冷却装置30は、メイン冷却系11と、超電導加速空洞1を予冷または昇温するため予冷・昇温系42とを備えた既存の極低温冷却装置110(図10参照)に、熱シールド板6を冷却するサブ冷却系14を具備させた構成の冷却装置である。更に、極低温冷却装置30は、メイン冷却系11から分流される極低温冷媒(ヘリウムガス)を予冷・昇温系42またはサブ冷却系14へ択一に切り換えて導く切換手段(後述のストップ弁44及びJT弁41)を備える。
【0046】
ここで、既存の極低温冷却装置110は、図10に示すように、メイン冷却系11から予冷・昇温系42へ分流させる極低温冷媒(ヘリウムガス)の流量を制御する流量制御手段としての流量調整弁35を備えると共に、予冷・昇温系42が予冷・昇温配管43を備える。この予冷・昇温配管43は、入口端がメイン冷却系11における供給配管31のJT弁32上流側の位置(分流点P2)に接続され、出口端が複数の液体ヘリウム容器22に接続される。そして、この予冷・昇温配管43の入口端(つまり分流点P2)付近に、流量調整弁35が配設される。
【0047】
これにより、メイン冷却系11の供給配管31から低温高圧のヘリウムガスが分流して予冷・昇温配管43内へ導かれ、このヘリウムガスにより液体ヘリウム容器22内の超電導加速空洞1が予冷または昇温される。予冷・昇温配管43内へのヘリウムガスの分流流量は、流量調整弁35により調整される。尚、流量調整弁35は、供給配管31における分流点P2とJT弁32との間に設置されてもよく、または予冷・昇温配管43及び供給配管31の上記各位置に設置されてもよい。
【0048】
さて、本極低温冷却装置30(図3)におけるサブ冷却系14の分流配管36は、予冷・昇温配管43における流量調整弁35下流側の接続点P3に接続され、この接続点P3付近にJT弁41が配設されている。予冷・昇温配管43において、接続点P3の下流側付近にストップ弁44が配設される。極低温冷却装置30の停止時には、JT弁41が全閉操作され、ストップ弁44が全開操作されて、流量調整弁35の開度に応じたヘリウムガスがメイン冷却系11の供給配管31から予冷・昇温系42の予冷・昇温配管43内へ導かれ、超電導加速空洞1が予冷または昇温される。
【0049】
また、極低温冷却装置30の運転時には、ストップ弁44が全閉操作され、JT弁41が開操作される。供給配管31から予冷・昇温配管43へ分流されたヘリウムガスは、接続点P3を経て分流配管36内へ導かれ、JT弁41にて液化されて液体ヘリウム2となる。この液体ヘリウム2は熱シールド板6を冷却し、大部分が蒸発してヘリウムガスとなって、出口側液体ヘリウム槽21B内へ吐き出される。
【0050】
この極低温冷却装置30の運転時に、超電導加速空洞1の熱負荷の大小により変動する出口側液体ヘリウム槽21B内の液体ヘリウム2の液面Aが液面計4により計測され、この計測値に基づき前記第1及び第2の実施の形態と同様にして、出口側液体ヘリウム槽21B内の液体ヘリウム2の液面Aが一定に制御される。つまり、液面計4の計測値に基づき、流量調整弁35の開度が調整されて、供給配管31からサブ冷却系14へのヘリウムガスの分流流量が制御され、且つヒータ5の加熱量が適宜制御されて、出口側液体ヘリウム槽21B内の液体ヘリウム2の液面Aが一定に制御される。
【0051】
従って、本実施の形態によれば、前記第1及び第2の実施の形態の効果(1)〜(3)と同様な効果を奏するほか、次の効果(4)を奏する。
【0052】
(4)メイン冷却系11、予冷・昇温系42及び流量調整弁35を備えた既存の極低温冷却装置110の予冷・昇温系42に、JT弁41を備えるサブ冷却系14を接続し、予冷・昇温系42にストップ弁44を配設し、流量調整弁35を兼用するという最小限の変更を施すことで、余剰の極低温冷媒を有効に活用して超電導加速空洞1を効率的に冷却可能な極低温冷却装置30を構成することができる。
【0053】
[D]第4の実施の形態(図4、図5)
図4は、本発明に係る極低温冷却装置の第4の実施の形態を示す概略構成図である。図5は、本発明に係る極低温冷却装置の第4の実施の形態における変形形態を示す概略構成図である。この第4の実施の形態において、前記第1及び第2の実施の形態と同様な部分は、同一の符号を付して説明を省略あるいは簡素化する。
【0054】
本実施の形態の極低温冷却装置40が前記第1、第2の実施の形態の極低温冷却装置10、20と異なる点は、当該極低温冷却装置40のサブ冷却系15(図4)、サブ冷却系16(図5)が、超電導加速空洞1へ熱を侵入させる支持材、ビームパイプ8、電流リード、入力カプラ7の少なくとも一つの熱アンカー部を冷却する点である。このうち、図4に示すサブ冷却系15は、メイン冷却系11の供給配管31から極低温冷媒(ヘリウムガス)を分流して分流配管36内に導き、このヘリウムガスをJT弁41にて液化して液体ヘリウム2とし、熱交換器部46において入力カプラ7を液体ヘリウム2により冷却している。
【0055】
ここで、上記支持材は、前述の如く熱シールド板6を、図示しない真空容器にて支持するものである。また、電流リードは、超電導磁石9へ電流を供給するための電流供給部分である。更に、入力カプラ7は、超電導加速空洞1に荷電粒子を加速するための電場を形成する目的で、高周波電力を超電導加速空洞1へ供給する同軸管である。
【0056】
上述の熱アンカー部(支持材、ビームパイプ8、電流リード、入力カプラ7)の温度が高すぎると、分流配管36内では液体ヘリウム2が全て蒸発してヘリウムガスとなるばかりか、このヘリウムガスが加熱されて高温のガスになる場合がある。ヘリウムガスは、高温になると密度が低くなり、流速が速くなって、圧力損失が急激に増加することがある。このようにヘリウムガスの圧力損失が急激に増加すると、流量調整弁35等による分流流量の制御が難しくなるため、ヘリウムガスの温度上昇を極力減少させたい。そのために、上記アンカー部の冷却が重要となり、この熱アンカー部を液体ヘリウムの温度に近い温度に冷却する必要が生ずるのである。
【0057】
また、入力カプラ7から超電導加速空洞1へ侵入する熱侵入量は、超電導加速空洞1への全熱侵入量の大部分を占めるため、入力カプラ7を冷却することによって、超電導加速空洞1への熱侵入量を大幅に低減させることが可能となる。
【0058】
図5に示すサブ冷却系16は、メイン冷却系11の供給配管31から分流して導いた極低温冷媒(ヘリウムガス)をJT弁41にて液化し、この液体ヘリウム2により熱シールド板6及び入力カプラ7の冷却している。
【0059】
ここで、熱シールド板6、支持材またはビームパイプ8は発熱がないため長時間冷却すると温度が下がり易いが、入力カプラ7や電流リードは、発熱があるため長時間の冷却によっても温度が低下しにくい。このため、熱シールド板6や熱アンカー部などの複数の高温部をサブ冷却系16によって冷却する場合には、冷却させ易い、つまり、冷却によって温度が低下し易い熱シールド板6、支持材またはビームパイプ8をサブ冷却系16の上流側において先に冷却し、冷却させ難い、つまり冷却によって温度が低下しにくい入力カプラ7または電流リードをサブ冷却系16の下流側において後に冷却することが、冷却効率の点で好ましい。
【0060】
また、サブ冷却系15または16において、入力カプラ7等の熱アンカー部を冷却する場合、これらのサブ冷却系15または16は、熱アンカー部のうち超電導加速空洞1に最も近い箇所を冷却することが冷却効率の点で好ましい。例えば、入力カプラ7が熱シールド板6に支持され、この熱シールド板6が図4に示すようにサブ冷却系15等により冷却されていない場合、サブ冷却系15の熱交換器部46は、入力カプラ7において熱シールド板6よりも超電導加速空洞1に近い位置に設置される。これにより、入力カプラ7は、超電導加速空洞1から遠い位置で熱シールド板6により例えば20Kに冷却され、超電導加速空洞1に近い位置でサブ冷却系15により例えば4Kに冷却される。これにより、入力カプラ7は、超電導加速空洞1に遠い位置から近い位置へ向かって段階的に冷却されるので、この入力カプラ7の効率的な冷却が実現される。
【0061】
以上のように構成されたことから、本実施の形態においても、前記第1及び第2の実施の形態の効果(1)〜(3)と同様な効果(但し、熱シールド板6を、熱シールド板6または/及び熱アンカー部に置き換えて適用する)を奏するほか、次の効果(5)〜(7)を奏する。
【0062】
(5)サブ冷却系15、16により熱アンカー部を液体ヘリウム2の温度に近い温度まで冷却することによって、サブ冷却系15、16の分流配管36内での圧力損失の増大が回避されるので、メイン冷却系11の供給配管31からサブ冷却系15、16への流量調整弁35による分流流量の制御を良好に実現できる。
【0063】
(6)サブ冷却系16により熱シールド板6及び熱アンカー部を冷却する場合、冷却させ易い熱シールド板6、支持材またはビームパイプ8を先に冷却し、冷却させ難い入力カプラ7または電流リードを後に冷却することで、これら熱シールド板6及び熱アンカー部を効率的に冷却できる。
【0064】
(7)入力カプラ7等の熱アンカー部を冷却する場合、当該熱アンカー部の複数の冷却箇所のうち、超電導加速空洞1に最も近い箇所をサブ冷却系15、16により冷却することから、当該熱アンカー部を超電導加速空洞1に遠い側から近い側へ向かって段階的に冷却させることができる。このため、この熱アンカー部を効率的に冷却でき、熱アンカー部から超電導加速空洞1への熱侵入量を低減できる。
【0065】
[E]第5の実施の形態(図6)
図6は、本発明に係る極低温冷却装置の第5の実施の形態を示す概略構成図である。この第5の実施の形態において、前記第1及び第2の実施の形態と同様な部分は、同一の符号を付して説明を省略あるいは簡素化する。
【0066】
本実施の形態の極低温冷却装置50が前記第1、第2の実施の形態の極低温冷却装置10、20と異なる点は、超電導加速空洞1の周囲に設けられた熱シールド板6の外側に、1または複数の熱シールド板47が設置され、このうち、超電導加速空洞1に最も近い位置に配置された熱シールド板6がサブ冷却系13により冷却される点である。このように、超電導加速空洞1の周囲に複数(または多数)の熱シールド板(熱シールド板6、47、…)を配置する構造はMSI(Multi Shell Insulator)と称される。このMSIは熱シールド板の熱容量と、熱シールド板間の空気層の熱容量とを積極的に利用して、超電導加速空洞1への熱侵入量を低減する構造になっている。
【0067】
例えば、超電導加速空洞1と同じ温度に冷却された複数の熱シールド板6、47を用意する。この状態で熱シールド板6及び47の冷却を停止すると、外側の熱シールド板47の温度は直ちに上昇し始めるが、内側の熱シールド板6は、外側の熱シールド板47によって熱の侵入が抑えられているためその温度は直ちに上昇せず、外側の熱シールド板47の温度上昇から遅れて上昇する。熱シールド板の枚数が多い場合、温度上昇は内側の熱シールド板ほど遅れ、最も内側の熱シールド板の温度が上昇するまで長時間を要することになる。その結果、超電導加速空洞1の周囲に複数の熱シールド板(例えば熱シールド板6、47)を設けることによって、超電導加速空洞1への熱侵入量を、これらの熱シールド板への冷却を停止した後でも長時間に亘って低減することが可能となる。
【0068】
従って、本実施の形態によれば、前記第1及び第2の実施の形態の効果(1)〜(3)と同様な効果を奏するほか、次の効果(8)及び(9)を奏する。
【0069】
(8)超電導加速空洞1の周囲に複数の熱シールド板(例えば熱シールド板6、47)を配設することで、これらの熱シールド板と熱シールド板間の空気層とのそれぞれの熱容量を利用することにより、これらの熱シールド板の冷却が停止された後でも、超電導加速空洞1への熱侵入量を長時間にわたり低減できる。
【0070】
(9)超電導加速空洞1の周囲に複数設けられた熱シールド板(例えば熱シールド板6、47)のうち、超電導加速空洞1に最も近い位置の熱シールド板6がサブ冷却系13によって液体ヘリウム2により冷却されることから、最も温度上昇の遅い熱シールド板6をサブ冷却系13により冷却することで、超電導加速空洞1への熱侵入を好適に阻止できる。
【0071】
[F]第6の実施の形態(図7、図8)
図7は、本発明に係る極低温冷却装置の第6の実施の形態における一部を示す概略構成図である。図8は、本発明に係る極低温冷却装置の第6の実施の形態における変形形態の一部を示す概略構成図である。この第6の実施の形態において、前記第1及び第2の実施の形態と同様な部分は、同一の符号を付して説明を省略あるいは簡素化する。
【0072】
本実施の形態の極低温冷却装置60が前記第1、第2の実施の形態の極低温冷却装置10、20と異なる点は、メイン冷却系11の出口側液体ヘリウム槽21Bに極低温冷媒(ヘリウムガス)を合流させるサブ冷却系17における分流配管36の出口部48、49の構造である。つまり、出口部48は、出口側液体ヘリウム槽21Bにおける液体ヘリウム2の液中を通り、出口端51が上記液体ヘリウム2の液面Aの上方に位置づけられるよう構成されている。また、出口部49は、出口側液体ヘリウム槽21Bにおける液体ヘリウム2の液中に設置され、その出口端52が、液体ヘリウム2の液面Aの下方に位置づけられるよう構成されている。
【0073】
従って、出口部48では、ヘリウムガスは、この出口部48内を通過する間に液体ヘリウム2によって冷却された後、この液体ヘリウム2の液面A上方に吐き出されて、戻り配管33へ導かれる。また、出口部49では、ヘリウムガスは、この出口部49内を通過する間に液体ヘリウムによって冷却された後、この液体ヘリウム2中に吐き出されて、戻り配管33へ導かれる。
【0074】
従って、本実施の形態によれば、前記第1〜第5の実施の形態の効果(1)〜(9)と同様な効果を奏するほか、次の効果(10)を奏する。
【0075】
(10)出口側液体ヘリウム槽21Bに導かれる分流配管36の出口部48、49内のヘリウムガスが高温の場合にも、この出口部48、49内のヘリウムガスが、出口側液体ヘリウム槽21B内の液体ヘリウム2によって冷却された後、戻り配管33へ導かれることから、この戻り配管33内を流れて冷凍機へ向かうヘリウムガスの温度が低下する。戻り配管33内を流れるヘリウムガスが高温の場合、この戻り配管33内の圧力損失が大きくなり、冷凍機による極低温冷媒(ヘリウムガス)の冷却温度が上昇してしまう。しかしながら、本実施の形態では、戻り配管33内を流れるヘリウムガスの温度が低下するので、戻り配管33内での圧力損失の増大を回避でき、冷凍機による極低温冷媒の冷却温度を安定化できる。
【0076】
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1〜第6の各実施の形態において、極低温冷媒がヘリウム(液体ヘリウム)の場合を述べたが、窒素(液体窒素)、水素(液体水素)、ネオン(液体ネオン)またはこれらの混合物であっても同様の効果が得られる。
【0077】
また、各実施の形態では、膨張手段がJT弁32、41の場合を述べたが、膨張タービンまたは膨張ピストンであってもよい。
【0078】
更に、被冷却物が超電導加速空洞1の場合を述べたが、超電導磁石や超電導素子などであっても同様の効果が得られる。
【0079】
また、MSIの原理を用いる方法として、熱シールド板6、47を例に説明したが、支持材、ビームパイプ8、電流リード、入力カプラ7などの熱アンカー部に熱容量を持たせる構造(例えば、支持材の数箇所に銅塊を固着させた構造)を用いても良い。
【0080】
さらに、本発明は、上述したような各実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の各実施例を組み合わせて、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に係る極低温冷却装置の第1の実施の形態を示す概略構成図。
【図2】本発明に係る極低温冷却装置の第2の実施の形態を示す概略構成図。
【図3】本発明に係る極低温冷却装置の第3の実施の形態を示す概略構成図。
【図4】本発明に係る極低温冷却装置の第4の実施の形態を示す概略構成図。
【図5】本発明に係る極低温冷却装置の第4の実施の形態における変形形態を示す概略構成図。
【図6】本発明に係る極低温冷却装置の第5の実施の形態を示す概略構成図。
【図7】本発明に係る極低温冷却装置の第6の実施の形態における一部を示す概略構成図。
【図8】本発明に係る極低温冷却装置の第6の実施の形態における変形形態の一部を示す概略構成図。
【図9】従来の極低温冷却装置を示す概略構成図。
【図10】従来の他の極低温冷却装置を示す概略構成図。
【符号の説明】
【0082】
1…超電導加速空洞(被冷却物)、2…液体ヘリウム(極低温冷媒)、4…液面計、5…ヒータ、6…熱シールド板(高温部)、7…入力カプラ(高温部、熱アンカー部)、8…ビームパイプ(熱アンカー部)、10…極低温冷却装置、11…メイン冷却系、12、13、14、15、16、17…サブ冷却系、20…極低温冷却装置、21B…出口側液体ヘリウム槽(合流部)、30…極低温冷却装置、32…JT弁(膨張手段)、35…流量調整弁(流量制御弁)、39…出口部、40…極低温冷却装置、41…JT弁(膨張手段、切換手段)、42…予冷・昇温系、44…ストップ弁(切換手段)、47…熱シールド板、48、49…出口部、50…極低温冷却装置、51、52…出口端、60…極低温冷却装置、A…液面、P1、P2…分流点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍機からの極低温冷媒を膨張手段により液化して被冷却物に導き、この被冷却物を冷却した後に前記冷凍機へ戻すメイン冷却系を備えた極低温冷却装置において、
前記メイン冷却系から極低温冷媒の一部を分流して導き、前記被冷却物に熱的影響を及ぼす高温部を、液化された極低温冷媒により冷却した後、当該極低温冷媒を前記メイン冷却系の合流部に合流させるサブ冷却系と、
前記極低温冷媒を前記サブ冷却系へ分流させる流量を制御する流量制御手段とを有し、
この流量制御手段により、前記メイン冷却系の前記合流部における極低温冷媒の液面が制御されるよう構成されたことを特徴とする極低温冷却装置。
【請求項2】
前記サブ冷却系は、前記メイン冷却系の膨張手段により液化された極低温冷媒を分流して導くものであることを特徴とする請求項1に記載の極低温冷却装置。
【請求項3】
前記流量制御手段は、極低温冷媒を分流する分流点の下流側におけるメイン冷却系とサブ冷却系の少なくとも一方に設けられた流量調整弁であることを特徴とする請求項1または2に記載の極低温冷却装置。
【請求項4】
前記サブ冷却系は、前記メイン冷却系における膨張手段の上流側から極低温冷媒を分流して導き、当該サブ冷却系の膨張手段により極低温冷媒を液化する構成であり、
前記流量制御手段は、極低温冷媒を分流する分流点の下流側におけるメイン冷却系とサブ冷却系の少なくとも一方においてそれぞれの前記膨張手段の上流側に設置された流量調整弁であることを特徴とする請求項1に記載の極低温冷却装置。
【請求項5】
前記サブ冷却系は、メイン冷却系における膨張手段の上流側から極低温冷媒を分流して導き、当該サブ冷却系の膨張手段により極低温冷媒を液化する構成であり、
前記流量制御手段は、メイン冷却系の膨張手段とサブ冷却系の膨張手段の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1に記載の極低温冷却装置。
【請求項6】
冷凍機からの極低温冷媒を膨張手段により液化して被冷却物に導き、この被冷却物を冷却した後に上記冷凍機へ戻すメイン冷却系と、
当該メイン冷却系の膨張手段の上流側から極低温冷媒を分流して導き、前記被冷却物を予冷または昇温する予冷・昇温系と、
極低温冷媒を上記予冷・昇温系へ分流させる流量を制御する流量制御手段と、を備えた極低温冷却装置において、
前記予冷・昇温系に接続され、運転時には極低温冷媒を液化して、前記被冷却物に熱的影響を及ぼす高温部を冷却した後、この極低温冷媒を前記メイン冷却系の合流部に合流させるサブ冷却系と、
前記予冷・昇温系または前記サブ冷却系に極低温冷媒を択一に切り換えて導く切換手段とを有し、
この切換手段により極低温冷媒が前記サブ冷却系に導かれるように切り換えられた状態で、前記流量制御手段により、前記メイン冷却系の前記合流部における極低温冷媒の液面が制御されるよう構成されたことを特徴とする極低温冷却装置。
【請求項7】
前記メイン冷却系の合流部にヒータが設置され、当該合流部における極低温冷媒の液面が、流量制御手段及び前記ヒータにより制御されるよう構成されたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の極低温冷却装置。
【請求項8】
前記被冷却物が超電導加速空洞であり、
前記高温部が、前記超電導加速空洞を熱から遮蔽するための熱シールド板であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の極低温冷却装置。
【請求項9】
前記被冷却物が超電導加速空洞であり、
前記高温部が、前記超電導加速空洞へ熱を侵入させる、支持材、ビームパイプ、電流リード、入力カプラのうちの少なくとも一つの熱アンカー部であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の極低温冷却装置。
【請求項10】
前記高温部が複数存在する場合には、サブ冷却系において、冷却させ易い高温部を先に冷却し、冷却させ難い高温部を後に冷却することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の極低温冷却装置。
【請求項11】
前記メイン冷却系の合流部に極低温冷媒を合流させるサブ冷却系の出口部は、前記合流部における極低温冷媒の液面上方に設置され、又は前記合流部における極低温冷媒の液中を通りこの出口端が極低温冷媒の液面上方に設置されることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の極低温冷却装置。
【請求項12】
前記メイン冷却系の合流部に極低温冷媒を合流させるサブ冷却系の出口部は、上記合流部における極低温冷媒の液中に設置され、出口端が極低温冷媒の液面下方に位置付けられることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の極低温冷却装置。
【請求項13】
冷凍機からの極低温冷媒を膨張手段により液化して被冷却物に導き、この被冷却物を冷却した後に上記冷凍機へ戻すメイン冷却系と、
このメイン冷却系から極低温冷媒の一部を分流して導き、前記被冷却物に熱的影響を及ぼす高温部を、液化された極低温冷媒により冷却した後、当該極低温冷媒を上記メイン冷却系の合流部に合流させるサブ冷却系とを有する極低温冷却装置の冷媒液面制御方法であって、
前記被冷却物での熱負荷が小さい場合には、前記サブ冷却系への極低温冷媒の分流量を増加させて高温部を冷却し、当該サブ冷却系にて極低温冷媒の蒸発量を増大させ、また、前記被冷却物での熱負荷が大きい場合には、上記サブ冷却系への極低温冷媒の分流量を減少させて高温部の冷却を抑制し、当該サブ冷却系による極低温冷媒の蒸発量を減少させることにより、前記メイン冷却系の前記合流部における極低温冷媒の液面を制御することを特徴とする極低温冷却装置の冷媒液面制御方法。
【請求項14】
冷凍機からの極低温冷媒を膨張手段により液化して被冷却物に導き、この被冷却物を冷却した後に上記冷凍機へ戻すメイン冷却系と、
当該メイン冷却系の膨張手段の上流側から極低温冷媒を分流して導き、前記被冷却物を予冷または昇温する予冷・昇温系と、
この予冷・昇温系に接続され、運転時には極低温冷媒を液化して、前記被冷却物に熱的影響を及ぼす高温部を冷却した後、この極低温冷媒を前記メイン冷却系の合流部に合流させるサブ冷却系とを有する極低温冷却装置の冷媒液面制御方法であって、
装置の停止時には、メイン冷却系からの極低温冷媒を前記予冷・昇温系に導いて、前記被冷却物を予冷または昇温し、
装置の運転時で前記被冷却物での熱負荷が小さい場合には、前記サブ冷却系への極低温冷媒の分流量を増加させて高温部を冷却し、当該サブ冷却系にて極低温冷媒の蒸発量を増大させ、また、装置の運転時で前記被冷却物での熱負荷が大きい場合には、前記サブ冷却系への極低温冷媒の分流量を減少させて高温部の冷却を抑制し、当該サブ冷却系による極低温冷媒の蒸発量を減少させることにより、装置運転時における前記メイン冷却系の前記合流部における極低温冷媒の液面を制御することを特徴とする極低温冷却装置の冷媒液面制御方法。
【請求項15】
前記メイン冷却系の合流部にヒータが設置され、
サブ冷却系へ分流する極低温冷媒の分流量の制御と共に、上記ヒータを制御することにより、前記メイン冷却系の前記合流部における極低温冷媒の液面を制御することを特徴とする請求項13または14に記載の極低温冷却装置の冷媒液面制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−153579(P2008−153579A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342463(P2006−342463)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】