説明

極低温蒸留による空気の分離のための方法およびユニット

空気分離ユニットは、中圧カラム(39)、低圧カラム(41)、容器(141)、熱交換器(13)、低圧カラムのボトムコンデンサー(25)および容器内に配置されたコンデンサー(15)、圧縮されて精製されて冷却された空気を熱交換器から中圧カラムへ送るためのライン、熱発生ガスを容器内に配置されたコンデンサーへ送るためのライン、窒素リッチにされたガスを中圧カラムから低圧カラムのコンデンサーへ送るためのライン、酸素リッチにされた流れを中圧カラムの底から低圧カラムへ送るためのライン、酸素リッチ液を低圧カラムの底から容器へ送るためのライン、容器へ送るものより酸素リッチな流体を容器から回収するためのライン、ガスを容器から低圧カラムへ送るためのライン、およびオーバーヘッドガスを低圧カラムから回収するためのラインを有する。当該ユニットは、酸素リッチ液を低圧カラムの底の下流側および容器の上流側で拡張するための拡張手段(51)、および容器からのガスを圧縮するためのコンプレッサー(21)を有し、上記コンプレッサーは、容器の下流側および低圧カラムの上流側にあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、極低温蒸留による空気の分離のための方法およびユニットに関する。
【0002】
同じ圧力で作動する1つの中圧カラムおよび2つの低圧カラムを有するユニット内で空気を分離することが知られている。低圧カラムの一方は、その頂部で、他のカラムからのボトム液の供給を受け、各低圧カラムはボトムコンデンサーを有する。
【0003】
発明の1つの目的は、特に、窒素の副産物が無い場合における、純粋ではない酸素を製造するための分離エネルギーを減少することである。
【0004】
発明の他の目的は、このユニットの少なくともいくらかの要素のコストを減少することである。
【0005】
純度に関する全てのパーセンテージは、モルパーセンテージである。
【0006】
この発明は、低圧カラムの圧力を下回る圧力で作動するチャンバーから生ずる酸素リッチガスを圧縮するためのコールドコンプレッサーの使用を伴い、このガスが低圧カラムの底に向かわせられる。このことは、中圧カラムの底での圧力を低圧カラムの頂部と切り離すことを可能にする。
【0007】
この発明は、特に、低圧カラムより低圧で作動するチャンバーのコンデンサー内で部分的に液化する空気の場合に好都合である。
【0008】
この発明の1つの主題によると、
極低温蒸留によって空気を分離するための方法であって、
i)圧縮されて精製された空気の流れが、熱交換器内で冷却され、中圧で作動するカラムへ送られ;
ii)この空気の流れが、窒素リッチにされた流れと酸素リッチにされた流れとに分割され;
iii)この窒素リッチにされた流れの一部が、低圧カラムへ送られ;
iv)上記酸素リッチにされた流れの少なくとも一部が、上記低圧カラムへ送られ;
v)窒素リッチ流れが、上記低圧カラムの頂部から回収され;
vi)酸素リッチ流れが、上記低圧カラムの底から回収されて、少なくとも1つのコンデンサー再沸騰器を収容するチャンバーへ送られ;
vii)上記チャンバーから生ずるガス状の流れが、そこから回収されて、上記第1の低圧カラムへ、好ましくは上記底へ、戻され;
viii)ステップii)からの上記窒素リッチにされた流れの一部が、上記低圧カラムからのボトム液によって供給されたコンデンサー内で少なくとも部分的に液化し、上記中圧カラムおよび/或いは上記低圧カラムへ送られ;
ix)暖めるガスの流れ、随意に、ステップi)からの上記熱交換器内で冷却された圧縮されて精製された空気の少なくとも一部が、上記チャンバーの上記コンデンサー再沸騰器内で少なくとも部分的に液化し;
x)上記チャンバーから回収されたものが、上記低圧カラムの上記底から回収された流れより酸素リッチにされた流体であり;
上記低圧カラムの上記底から回収された上記酸素リッチ流れが、上記チャンバーの上流側で拡張され、上記チャンバーからの上記ガス状の流れが、第1の低圧カラムの上流側で加圧されることを特徴とする方法、が与えられる。
【0009】
・上記チャンバーから生ずる上記ガス状の流れは、好ましくは、上記チャンバーと上記コンプレッサーとの間で加熱ステップが起こらない、−50℃を下回る入口温度を有するコンプレッサー内で圧縮され;
・上記低圧カラムから回収された上記酸素リッチ流れは、上記低圧カラムの上記底での圧力を下回る多くとも1バールの圧力へ拡張され、好ましくは、多くとも0.5バール、或いはこの圧力を下回る多くとも0.2バールの圧力へ拡張され、および/或いは上記チャンバーから生ずる上記ガス状の流れは、その圧力を増大するため、上記低圧カラムの上流側で、多くとも1バール、好ましくは、多くとも0.5バール、或いは多くとも0.2バールへ圧縮され;
・上記チャンバーは、いかなる質量変換手段も収容せず、いかなるパッキング或いは蒸留プレートをも収容せず;
・上記チャンバーは、第2の低圧カラムを構成し、上記コンデンサーの少なくとも上方に配置されたパッキングや蒸留プレートのような質量交換手段を収容する。
【0010】
本発明の他の主題によると、中圧カラムと、低圧カラムと、チャンバーと、熱交換器と、上記低圧カラムのボトムコンデンサー、および上記チャンバー内に配置されたコンデンサーと、上記熱交換器内で冷却された圧縮されて精製された空気を上記中圧カラムへ送るためのラインと、上記チャンバー内に配置された上記コンデンサーへ暖めるガスを送るためのラインと、上記中圧カラムから上記低圧カラムの上記コンデンサーへ窒素リッチにされたガスを送るためのラインと、上記中圧カラムの上記底から上記低圧カラムへ酸素リッチにされた流れを送るためのラインと、上記低圧カラムの上記底から上記チャンバーへ酸素リッチ液を送るためのラインと、上記チャンバーへ送るものより酸素リッチな流体を上記チャンバーから回収するためのラインと、上記チャンバーから上記低圧カラムへガスを戻すためのラインと、上記低圧カラムからオーバーヘッドガスを回収するためのラインと、を有し、上記酸素リッチ液を上記低圧カラムの上記底の下流側および上記チャンバーの上流側で拡張するための拡張手段と、上記チャンバーからのガスを上記チャンバーの下流側および上記低圧カラムの上流側で圧縮するためのコンプレッサーと、を有することを特徴とする空気分離ユニット、が与えられる。
【0011】
随意に:
・上記チャンバーは、上記コンデンサーの上に質量変換手段を有し;
・上記チャンバーは、上記コンデンサーの上にいかなる質量変換手段をも有しておらず;
・当該ユニットは、タービンと、窒素リッチガスを上記中圧カラムから上記タービンへ送るためのラインと、を有し;
・当該ユニットは、上記低圧カラムから、および/或いは上記熱交換器の上流側の上記チャンバーから生ずる液体酸素の流れを加圧するためのポンプを有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明は、本発明によるところのユニットを示す図面を参照して詳細に説明されるであろう。
【図1】
【図2】
【0013】
図1において、空気1は、コンプレッサー3内で3バールと5バールとの間に圧縮され、精製ユニット5内で精製されて、2つに分けられる。一方の部分9は、熱交換器13内で冷却されて、チャンバー141のボトムコンデンサー15へ送られ、そこで、ダブルカラムの中圧カラム39へ送られる前に、部分的に液化する。
【0014】
ダブルカラムは、中圧カラム39およびその上にある低圧カラム41を有し、2つのカラムの間の熱リンクが低圧カラム41の底にあるコンデンサー25によって与えられる。
【0015】
空気の他の部分7は、コンプレッサー11内で圧縮されて、熱交換器13内で冷却され、圧縮された液体酸素の気化のために使用される。酸素が低圧で気化するため、この気化は、熱交換器13とは異なる外部再沸騰器27内で起こる。従って、形成されたこの液化空気は、バルブ19内における拡張の後、中圧カラム39へ送られる。この液体空気は、低圧カラムへ送られてもよい。
【0016】
酸素リッチにされた液体17は、中圧カラム39の底から回収されて、熱交換器43内で冷却され、バルブ内で拡張されて、低圧カラム41へ送られる。実質的に空気の圧縮を有する液体49は、中圧カラム39の中間レベルで回収されて、熱交換器43内で冷却され、バルブ内で拡張されて、低圧カラム41へ送られる。窒素リッチにされた液体47は、中圧カラム39の頂部から排出されて、熱交換器43内で冷却され、バルブ内で拡張されて、低圧カラム41の頂部へ送られる。
【0017】
窒素リッチガス45は、低圧カラムの頂部から回収され、熱交換器43で加熱され、そして、熱交換器13で加熱される。このガスの一部は、精製ユニット5の再生に関係する流れ37を形成するため、コンプレッサー35内で圧縮されてもよい。
【0018】
中圧窒素流れ33は、中圧カラム39の頂部から回収され、熱交換器13内で加熱され、タービン23内で拡張され、精製ユニット5の再生のために使用される前に、熱交換器13内で再び加熱される。
【0019】
45%と75%の間の酸素を含む酸素リッチな流れ53は、低圧カラム41の底から回収され、バルブ51内で拡張され、この変形においてボトムコンデンサーを備えた蒸留カラムであるチャンバー141の頂部へ送られる。上に見られるように、コンデンサーは、熱および質量交換手段143であり、例えば、構造化された或いは構造化されていないパッキング或いはプレートである。バルブ51は、唯一、液体の圧力を約0.15バールに下げる。
【0020】
液体53は、ボトムとして酸素がよりリッチな液体29を形成するため、チャンバー内で分離される。ポンプ63における加圧のあと、再沸騰器27へ送られるものは、この液体29である。パージ液61は、再沸騰器27から回収される。代りに、酸素リッチガスは、チャンバー141から回収されてもよい。
【0021】
オーバーヘッドガス145は、チャンバーから回収されて、圧力を多くても0.15バールに増大するコンプレッサー21内で回収温度で圧縮される。このように製造されたガスは、コンプレッサー21の出口圧力で低圧カラムの底内へ再注入される。
【0022】
熱交換器13内におけるホットエンドでの2℃の温度差を伴って、低圧カラムの底にコールドコンプレッサーの無い同じレイアウトと比較して、約2.5%の省力が得られる。
【0023】
図2のユニットは、チャンバー141がいかなるパッキングやプレートをも含まない点で、図1のユニットと異なる。また、再沸騰器15内で上昇的な部分的な液化がある。従って、チャンバーへ送られる液体53とチャンバーから回収される液体29との間の組成の違いは、液体29が液体53より酸素リッチである場合でさえも非常に減少される。ガス145は、空気9との間の熱交換によるチャンバー141内での液体53の部分的な気化によって製造されたガスである。
【0024】
熱交換器13のホットエンドでの温度差が2℃に保持されている場合、LPボトムコールドコンプレッサーの無い同じレイアウトと比較して、約1.5%の省力がある。
【0025】
熱交換器のホットエンドで2℃を保持することを伴って、WO−A−2007/129152からのプロセスのエネルギーよりごくわずかによいエネルギーを得られる。コールドコンプレッサーが2つのプロセスで使用された場合でさえ、発明の変形において、コールドコンプレッサーの電力が、従来技術の変形におけるより10倍小さく、窒素タービンが2倍小さい。本発明によるところの変形における圧縮率が非常に低く、ファンと同様の技術がコンプレッサー21のために満足させるべきであることが観測され:これらの要素は、コールドコンプレッサー21およびタービン23が従来技術のプロセスにおけるものより少し高いであろうことを述べることを可能にする。
【0026】
比較的酸素でリッチな流体の極低温圧縮は、安全問題を与えるべきではない。
【0027】
低圧カラム内の蒸気部分の圧縮のコンセプトは、低圧カラムの3つのコンデンサーの間に1つ或いは2つのコールドコンプレッサーを伴う、低圧カラム内に3つのコンデンサーを伴うレイアウトの場合へ延長されてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温蒸留によって空気を分離するための方法であって、
i)圧縮されて精製された空気の流れが、熱交換器(13)内で冷却され、中圧で作動するカラム(39)へ送られ;
ii)この空気の流れが、窒素リッチにされた流れと酸素リッチにされた流れとに分割され;
iii)この窒素リッチにされた流れの一部が、低圧カラム(41)へ送られ;
iv)上記酸素リッチにされた流れの少なくとも一部が、上記低圧カラムへ送られ;
v)窒素リッチ流れが、上記低圧カラムの頂部から回収され;
vi)酸素リッチ流れが、上記低圧カラムの底から回収されて、少なくとも1つのコンデンサー再沸騰器(15)を収容するチャンバー(141)へ送られ;
vii)上記チャンバーから生ずるガス状の流れが、そこから回収されて、上記低圧カラムへ、好ましくは上記底へ、戻され;
viii)ステップii)からの上記窒素リッチにされた流れの一部が、上記低圧カラムから生ずる液体によって供給されたコンデンサー(25)内で少なくとも部分的に液化し、上記中圧カラムおよび/或いは上記低圧カラムへ送られ;
ix)暖めるガスの流れ、随意に、ステップi)からの上記熱交換器内で冷却された圧縮されて精製された空気の少なくとも一部の流れが、上記チャンバーの上記コンデンサー再沸騰器内で少なくとも部分的に液化し;
x)上記チャンバーから回収されたものが、上記低圧カラムの上記底から回収された流れより酸素リッチにされた流体であり;
xi)上記低圧カラムの上記底から回収された上記酸素リッチ流れが、上記チャンバーの上流側で拡張され、上記チャンバーからの上記ガス状の流れが、第1の低圧カラムの上流側で加圧されることを特徴とする方法。
【請求項2】
上記チャンバーから生ずる上記ガス状の流れは、好ましくは、上記チャンバーと上記コンプレッサーとの間で加熱ステップが起こらない、−50℃を下回る入口温度を有するコンプレッサー(21)内で圧縮される、
請求項1に記載された方法。
【請求項3】
上記低圧カラム(41)から回収された上記酸素リッチ流れは、上記低圧カラムの上記底での圧力を下回る多くとも1バールの圧力へ拡張され、好ましくは、多くとも0.5バール、或いはこの圧力を下回る多くとも0.2バールの圧力へ拡張され、および/或いは上記チャンバー(141)から生ずる上記ガス状の流れは、その圧力を増大するため、上記低圧カラムの上流側で、多くとも1バール、好ましくは、多くとも0.5バール、或いは多くとも0.2バールへ圧縮される、
請求項1或いは2に記載された方法。
【請求項4】
上記チャンバー(141)は、いかなる質量変換手段も収容せず、いかなるパッキング或いは蒸留プレートをも収容しない、
請求項1乃至3のいずれかに記載された方法。
【請求項5】
上記チャンバー(141)は、第2の低圧カラムを構成し、上記コンデンサーの少なくとも上方に配置されたパッキングや蒸留プレートのような質量交換手段(143)を収容する、
請求項1乃至3のいずれかに記載された方法。
【請求項6】
中圧カラム(39)と、
低圧カラム(41)と、
チャンバー(141)と、
熱交換器(13)と、
上記低圧カラムのコンデンサー(25)、および上記チャンバー内に配置されたコンデンサー(15)と、
上記熱交換器内で冷却された圧縮されて精製された空気を上記中圧カラムへ送るためのラインと、
上記チャンバー内に配置された上記コンデンサーへ暖めるガスを送るためのラインと、
上記中圧カラムから上記低圧カラムの上記コンデンサーへ窒素リッチにされたガスを送るためのラインと、
上記中圧カラムの上記底から上記低圧カラムへ酸素リッチにされた流れを送るためのラインと、
上記低圧カラムの上記底から上記チャンバーへ酸素リッチ液を送るためのラインと、
上記チャンバーへ送るものより酸素リッチな流体を上記チャンバーから回収するためのラインと、
上記チャンバーから上記低圧カラムへガスを戻すためのラインと、
上記低圧カラムからオーバーヘッドガスを回収するためのラインと、を有し、
上記酸素リッチ液を上記低圧カラムの上記底の下流側および上記チャンバーの上流側で拡張するための拡張手段(51)と、
上記チャンバーからのガスを上記チャンバーの下流側および上記低圧カラムの上流側で圧縮するためのコンプレッサー(21)と、
を有することを特徴とする空気分離ユニット。
【請求項7】
上記チャンバー(141)は、上記コンデンサー(15)の上に質量変換手段(143)を有する、
請求項6に記載されたユニット。
【請求項8】
上記チャンバー(141)は、上記コンデンサー(15)の上にいかなる質量変換手段をも有していない、
請求項6に記載されたユニット。
【請求項9】
タービン(23)と、
窒素リッチガスを上記中圧カラムから上記タービンへ送るためのラインと、
を有する請求項6乃至8のいずれかに記載したユニット。
【請求項10】
上記低圧カラムから、および/或いは上記熱交換器の上流側の上記チャンバーから生ずる液体酸素の流れを加圧するためのポンプ(63)を有する、
請求項6乃至9のいずれかに記載したユニット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−513775(P2013−513775A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542592(P2012−542592)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052099
【国際公開番号】WO2011/070257
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【Fターム(参考)】