説明

極性の変性ロウと粘着付与剤を含有する化粧品用組成物

本発明は、少なくとも一の極性の変性ロウと少なくとも一の粘着付与剤を含有する化粧品用組成物、並びにこのような組成物を使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、少なくとも一の極性の変性ロウと少なくとも一の粘着付与剤を含有するケラチン物質(例えば、唇、毛髪又は睫)用の組成物、例えばマスカラ、及び唇用組成物(例えばリップスティック又はリップグロス)に関する。毛髪又は睫等のケラチン物質に適用される場合、これらの組成物は、改善された長さ、リフト性及び/又は保持力を、ケラチン物質に付与可能である。唇等のケラチン物質に適用される場合、これらの組成物は、光沢を低減させることなく、粘着性もない、改善されたテクスチャー及び/又は感触を付与可能である。
【背景技術】
【0002】
多くのマスカラ及び他の化粧品用組成物は、帯着性、耐移動性、及び長さ/ボリューム特性が改善されるよう開発されている。このような特性は、典型的には、適用後に皮膜を形成する成分を使用することにより達成される。このような組成物は、皮膚又は睫と接触して蒸発し、ロウ及び/又は樹脂、顔料、フィラー、及び活性剤を含有する層を後に残す、揮発性溶媒を一般的に含有する。しかしながら、改善された化粧品用組成物、特にかなり改善された外観/化粧品特性、中でも一又は複数の上述した特性を有するマスカラ及び唇用組成物が必要とされている。
【0003】
従って、本発明の一態様は、ケラチン物質の外観及び/又は美容特性をかなり改善できる、唇、毛髪又は睫等のケラチン物質用のメークアップ、手入れ及び/又はトリートメント用組成物にある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、少なくとも一の極性の変性ロウと少なくとも一の粘着付与剤を含有する、マスカラ等のケラチン物質(例えば、毛髪又は睫)用の組成物に関する。このような組成物は、少なくとも一のブロックコポリマー及び/又は少なくとも一のアルキルシルセスキオキサン樹脂をさらに含有可能である。
また、本発明は、少なくとも一の極性の変性ロウと少なくとも一の粘着付与剤を含有する、リップスティック、リップグロス、又は液状唇用組成物等のケラチン物質(例えば、唇)用の組成物に関する。このような組成物は、少なくとも一のブロックコポリマー及び/又は少なくとも一のアルキルシルセスキオキサン樹脂をさらに含有可能である。
【0005】
さらに本発明は、少なくとも一の極性の変性ロウと少なくとも一の粘着付与剤を含有する組成物を、ケラチン物質の長さ、リフト性及び/又は保持力を増加させるのに有効な量、ケラチン物質に適用することを含む、ケラチン物質(例えば、毛髪又は睫)の長さ、リフト性及び/又は保持力を増加させる方法に関する。このような組成物は、少なくとも一のブロックコポリマー及び/又は少なくとも一のアルキルシルセスキオキサン樹脂をさらに含有可能である。
またさらに本発明は、少なくとも一の極性の変性ロウと少なくとも一の粘着付与剤を含有する組成物を、メークアップに有効な量、このようなメークアップを必要とするケラチン物質に適用することを含む、ケラチン物質をメークアップする方法に関する。このような組成物は、少なくとも一のブロックコポリマー及び/又は少なくとも一のアルキルシルセスキオキサン樹脂をさらに含有可能である。
また本発明は、少なくとも一の極性の変性ロウと少なくとも一の粘着付与剤を、適用前に組合せることを含む、ケラチン物質への適用後又は適用時に、ケラチン物質(例えば、毛髪又は睫)に付与される組成物のリフト性又は保持力を増加させる方法に関する。このような組成物は、少なくとも一のブロックコポリマー及び/又は少なくとも一のアルキルシルセスキオキサン樹脂をさらに含有可能である。
【0006】
さらに本発明は、ケラチン物質をトリートメント及び/又は手入れするのに十分な量、本発明の組成物をケラチン物質に適用することによる、ケラチン物質をトリートメント又は手入れする方法に関する。
またさらに本発明は、ケラチン物質の外観を高めるのに十分な量、本発明の組成物をケラチン物質に適用することによる、ケラチン物質の外観を高める方法に関する。
また本発明は、組成物を形成させるために、少なくとも一の極性の変性ロウと少なくとも一の粘着付与剤を混合することを含む、組成物を作製する方法に関する。このような組成物は、少なくとも一のブロックコポリマー及び/又は少なくとも一のアルキルシルセスキオキサン樹脂をさらに含有可能である。
上述した一般的記載及び以下の詳細な記載の双方とも、例示及び説明のみであり、本発明を制限するものではないと理解される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明の詳細な記載
ここで使用される場合、「少なくとも一の」なる表現は一又は複数であることを意味し、よって個々の成分並びに混合物/組合せ物を含む。
実施例以外、又は特に示さない限りは、成分の量及び/又は反応条件表す全ての数値は、いずれの場合においても、示された数字の10%〜15%以内を意味する、「約」なる用語により加減されると理解される。
ここで使用される場合、「皮膜形成体(film former)」又は「皮膜形成剤(film forming agent )」は、皮膜形成体に附随する溶媒が、基質上で蒸発、吸収及び/又は消散した後、適用された基質上に皮膜を残すポリマー又は樹脂を意味する。
【0008】
ここで使用される場合、「耐移動性」とは、例えば食事又は飲用により、ガラス、衣類又は皮膚等の他の物質と接触することで、容易に除去されない組成物が示す品質を称する。耐移動性は、このような評価のための当該技術で公知の任意の方法により評価されてよい。例えば、組成物の耐移動性は「キス」テストにより評価され得る。「キス」テストは、ヒトのケラチン物質、例えば毛髪、皮膚又は唇に組成物を適用し、適用に続いて所定時間後、例えば適用2分後に、ペーパーシート等の物質に、毛髪、皮膚又は唇をこすりつけることを含むものであってよい。同様に、組成物の耐移動性は、毛髪、皮膚又は唇への適用に続いて所定時間後、任意の他の基質に着用者から移動した、例えば個人の毛髪、皮膚又は唇から着用している衣服の衿に移動した製品の量によっても評価され得る。ついで、基質(例えば、衿又は紙)に移動した組成物の量を評価し、比較してよい。例えば、製品のほとんどが着用者の毛髪、皮膚又は唇に残っているならば、組成物は耐移動性があるとされる。さらに、移動した量は、他の組成物、例えば商業的に入手可能な組成物と比較されてもよい。本発明の好ましい実施態様において、組成物は、全く又はほとんど、毛髪、皮膚又は唇から基質に移動しない。
【0009】
ここで使用される場合、「長時間にわたる帯着性」を有する組成物とは、長時間経過後、裸眼で見て、適用時と同様又は実質的に同様の色調が保持されている組成物を称する。長時間にわたる帯着性は、このような特性を評価するための、当該技術で公知の任意の方法により評価され得る。例えば、長時間にわたる帯着性は、ヒトの毛髪、皮膚又は唇に組成物を適用し、長時間経過後の組成物の色調を評価することを含むテストにより評価され得る。例えば、組成物の色調を、毛髪、皮膚又は唇への適用直後に評価し、所定時間後に、これらの特徴を再評価して比較してもよい。さらにこれらの特徴は、他の組成物、例えば商業的に入手可能な組成物に対して評価してもよい。
【0010】
ここで使用される場合、「粘着性」とは、2つの物質の間の付着性を称する。例えば、2つの物質に間の粘着性が大きければ大きい程、物質の間の付着性は増す。「粘着性」を定量化するために、2つの物質に関し、IUPACに定義される「付着仕事量」を測定することが有用である。一般的に言えば、付着仕事量では2つの物質を分離させるのに必要な仕事量が測定される。よって、2つの物質に関する付着仕事量が大きければ大きい程、物質間にはより大きな付着力が存在し、2つの物質の間の粘着性が大きくなることを意味している。
【0011】
付着仕事量、よって粘着性は、許容可能な技術、及び付着性の測定に一般的に使用される方法を使用して定量することができ、典型的には強制時間単位(例えばグラム秒(「gs」))で報告されている。例えば、ステイブル・マイクロ・システム社(Stable Micro Systems, Ltd.)のTA-XT2は、その全内容が参照としてここに導入される、2000年1月に改訂されたTA-XT2応用研究(参照:MATI/PO.25)に説明されている手順に従い、付着性を測定するのに使用可能である。この方法によれば、実質的に非粘着質な物質の付着仕事量の所望の値は、約0.5gs未満、約0.4gs未満、約0.3gs未満、及び約0.2gs未満を含む。当該技術で公知である他の類似した方法を、付着性を測定するための他の類似した分析装置において使用することができる。
【0012】
ここで使用される場合、「耐水性」とは、水をはじく能力、及び水に対する耐性を称する。耐水性は、このような特性を評価する当該技術で公知の任意の方法により評価されてよい。例えば、マスカラ用組成物はつけまつげに適用されてよく、ついで、所定時間、例えば20分水に配してもよい。予め確定されている時間の経過後、つけまつげを水から取り出し、例えばペーパーシート等の物質上に渡す。ついで、物質上に残った残留物の程度を評価し、他の組成物、例えば商業的に入手可能な組成物と比較してよい。同様に、例えば組成物を皮膚に適用し、所定時間、皮膚を水に浸してもよい。ついで、予め確定されている時間後、皮膚に残存する組成物の量を評価し、比較してもよい。例えば、製品のほとんどが着用者、例えば睫毛、皮膚等に残っているならば、組成物は耐水性があるとされる。本発明の好ましい実施態様において、組成物はほとんど又は全く帯着者から移動しない。
【0013】
ここで使用される場合、「置換された」とは、少なくとも一の置換基を有することを意味する。置換基の非限定的例には、原子、例えば酸素原子及び窒素原子、並びに官能基、例えばヒドロキシル基、エーテル基、アルコキシ基、アシルオキシアルキル基、オキシアルキレン基、ポリオキシアルキレン基、カルボン酸基、アミン基、アシルアミノ基、アミド基、ハロゲン含有基、エステル基、チオール基、スルホナート基、チオスルファート基、シロキサン基、及びポリシロキサン基が含まれる。置換基(類)はさらに置換されていてもよい。
【0014】
ここで使用される場合、「揮発性」とは、約100℃未満の引火点を有することを意味する。
ここで使用される場合、「非揮発性」とは、約100℃以上の引火点を有することを意味する。
ここで使用される場合、「水に不溶」とは、水への暴露時に、反応生成物がその構造中に保持され、溶解しないことを意味する。
【0015】
本発明の組成物及び方法は、ここで記載された本発明の必須要素及び制限、並びにここに記載された付加的な又は任意の成分、要素又は制限、もしくは他の有用なものを含有する、それらから構成される、又は本質的にそれらから構成され得る。
【0016】
本発明においては、組成物の「硬度」を考慮してもよい。組成物の硬度は、例えばグラム重量(gf)で表してよい。本発明の組成物は、それらの間の全ての範囲及び部分的範囲を含む、例えば20gf〜2000gf、例えば20gf〜900gf、さらには20gf〜600gfの範囲の硬度を有してよい。
【0017】
この硬度は2つの方法の一方で測定される。第1の硬度テストは、組成物にプローブを挿入し、特に高さ25mm、直径8mmのエボナイト性のシリンダーを具備するテクスチャー分析器(例えばレオ社(Rheo)のTA-XT2i)を使用する方法に従う。硬度測定は20℃で、組成物の5つのサンプルの中心で実施される。シリンダーを2mm/sの前速度、次いで0.5mm/sの速度、最後に2mm/sの後速度、全置換量が1mmで、組成物の各サンプルに導入する。記録された硬度値は観察された最大ピークのものである。測定誤差は±50gfである。
【0018】
第2の硬度テストは、直径8.1mm、好ましくは12.7mmのスティック状組成物を切断し、インデルコ−シャティヨン社(Indelco-Chatillon Co.)のDFGHS2張力測定器を使用し、速度100mm/分、20℃で硬度を測定することを含む、「チーズワイヤー」法である。この方法の硬度値は、上述した条件でスティックを切断するために要した剪断力を、グラムで表したものである。この方法によった場合、スティック形態をした本発明の組成物の硬度は、例えば直径8.1mmのスティックのサンプルにおいては、30gf〜300gf、例えば30gf〜250gfの範囲にあり、さらに直径12.7mmのスティックのサンプルにおいては、例えば30gf〜200gf、さらには30gf〜120gfの範囲にある。
【0019】
当業者であれば、所望の硬度及び考慮される用途に基づき、上述した概略の硬度テストの少なくとも一方を使用し、組成物を評価して選択するであろう。意図する用途を考慮して、これらの硬度テストの少なくとも一方から許容可能な硬度が得られるならば、組成物は本発明の好ましい実施態様の範疇に入る。
【0020】
極性の変性ロウ
本発明においては、少なくとも一の極性の変性ロウを含有する組成物が提供される。ここで使用される場合、「極性の変性ロウ」は、極性基又は単位を含み、変性しており、炭化水素骨格を有する、メタロセン触媒を使用して作製されるロウを称する。適切な極性の変性ロウには、その全内容が参照としてここに導入される、米国特許出願公開第20070031361号に開示されているものが含まれる。
【0021】
好ましくは、極性の変性ロウは、25000g/mol以下、好ましくは1000〜22000g/mol、特に好ましくは4000〜20000g/molの重量平均分子量Mw、15000g/mol以下、好ましくは500〜12000g/mol、特に好ましくは1000〜5000g/molの数平均分子量Mn、1.5〜10、好ましくは1.5〜5、特に好ましくは1.5〜3、さらに好ましくは2〜2.5の範囲のモル質量分布Mw/Mnを有し、メタロセン触媒により得られた、エチレン及び/又はプロピレンモノマーのホモポリマー及び/又はコポリマーロウをベースにしている。コポリマーロウのケースにおいては、コポリマー骨格の全重量に基づき、一方のモノマーに由来する0.1〜30重量%の構造単位と、他方のモノマーに由来する70.0〜99.9重量%の構造単位を有していることが好ましい。このようなホモポリマー及びコポリマーロウは、例えばここで特定されるメタロセン触媒を使用し、その全内容が参照としてここに導入される欧州特許第571882号に記載された方法により作製することができる。適切な調製方法には、モノマーの重合が可能であると共に、例えば、メタロセン触媒下におけるオレフィンの懸濁重合、溶液重合、及び気相重合が含まれる。
【0022】
極性の変性ロウは、酸素含有ガスを用いて酸化させることにより、又は極性モノマー、例えばマレイン酸又はアクリル酸又はこれらの酸の誘導体とグラフト反応させることにより、上述したホモポリマー及びコポリマーから、公知の方式で生成させることができる。空気を用いた酸化によるメタロセンポリオレフィンロウの極性変性は、例えば欧州特許第0890583A1に記載されており、グラフト化による変性は、例えば米国特許第5,998,547号に記載されており、双方の全内容は、それらの全てが参照としてここに導入される。
【0023】
許容可能な極性の変性ロウには、限定されるものではないが、無水マレイン酸、アクリラート、メタクリラート、ポリビニルピロリドン(PVP)等、親水性単位で変性されている、例えばエチレン、プロピレン、C18-C30、C26-C28等の疎水性基、例えばC2-C30基を有するホモポリマー及び/又はコポリマーが含まれる。好ましくは、極性の変性ロウは、それらの間の全ての範囲及び部分的範囲を含み、ロウの重量に関して、約0.5%〜約10%の親水性単位、好ましくは約1%〜約8%の親水性単位を有する。特に好ましくは、親水性の変性ロウは、無水マレイン酸単位で変性した、エチレン及び/又はプロピレン及び/又はC26-C28のホモポリマー及びコポリマーである。
【0024】
本発明で使用される特に好ましい極性の変性ロウは、リコケア(LICOCARE)又はリコセン(LICOCENE)の商品名でクラリアント社(Clariant)から商業的に入手可能な、ポリプロピレン及び/又はポリエチレン及び/又はC26-C28無水マレイン酸の変性ロウである。このようなロウの特定の例には、例えばPP207及びCM401との命名を有し、リコケアなる名称でクラリアント社から市販されている製品が含まれる。
【0025】
好ましくは、極性の変性ロウ(類)は、それらの間の全ての範囲及び部分的範囲を含み、組成物の全重量に対して約1%〜約20%、好ましくは組成物の全重量に対して約3%〜約17%、最も好ましくは約5%〜約15%である。
【0026】
粘着付与剤
本発明においては、少なくとも一の粘着付与剤を含有する組成物が提供される。本発明において、ブロックコポリマーへの添加により、得られた組成物が感圧付着性を有するようになれば、その物質は粘着付与剤と記載される。一般的に、粘着付与剤は、それらの化学的性質に応じて、4つの異なるファミリー、すなわち炭化水素樹脂、テルペン、非晶質(すなわち非結晶性)ロジン、及びロジンエステル及びそれらの誘導体、及び純粋なモノマー樹脂に分割することができる。これらの粘着付与剤は、ブロックコポリマーの少なくとも一のセグメントとの融和性により特徴付けられる。「融和性」なる用語は、ブロックコポリマーと粘着付与剤が混合された場合に、粘着付与剤とブロックコポリマーの少なくとも一のセグメントの組合せが、DMA、DSC又は中性子光散乱により測定され得る単一のガラス転移温度Tgを有する、ポリマー混合物を形成することを意味する。
【0027】
また、ブロックコポリマーと粘着付与剤の融和性は、溶解度パラメータに関しても定義されていてよい。ハンセン溶解空間による溶解度パラメータδは、その全内容が参照としてここに導入される、「Polymer Handbook」 第3版、第VII章、519-559頁に記載のEric A. Grulkeによる文献、「Solubility parameter values」、以下の関係が記載されている。
δ=(d+d+d)1/2
上式中、
−dは、分子衝撃の際に誘発される双極子の形成により得られるロンドン分散力を特徴付け、
−dは、永久双極子間の相互作用のドバイ力を特徴付け、
−dは、特定の相互作用(水素結合、酸/塩基、又は供与体/受容体型等)の力を特徴付ける。ハンセンによる3次元溶解度空間における溶媒の定義は、その全内容が参照としてここに導入されるC. M. Hansenによる文献「The three-dimensional solubility parameters」 J. Paint Technol. 39, 105 (1967)に付与されている。
【0028】
本発明で使用される少なくとも一の粘着付与剤は、δに相当する溶解度パラメータを有し、ブロックコポリマーは、その溶解度パラメータがδ±2、好ましくはδ±1.7、より好ましくはδ±1.5、さらに好ましくはδ±1.3、またさらに好ましくはδ±1.0、もっと好ましくはδ±0.7、よりさらに好ましくはδ±0.5、さらにはδ±0.3に相当する少なくとも一のセグメントを有する。
【0029】
適切な粘着付与剤の例には、限定されるものではないが、脂肪族炭化水素樹脂、芳香族変性脂肪族炭化水素樹脂、水素化ポリシクロペンタジエン樹脂、ポリシクロペンタジエン樹脂、ガムロジン、ガムロジンエステル、ウッドロジン、ウッドロジンエステル、トール油ロジン、トール油ロジンエステル、ポリテルペン類、、芳香族変性ポリテルペン類、テルペンフェノール類、芳香族変性水素化ポリシクロペンタジエン樹脂、水素化脂肪族樹脂、水素化脂肪族芳香族樹脂、水素化テルペン類、及び変性テルペン類、水素化ロジン酸、水素化ロジンエステル、ポリイソプレン、部分的又は完全に水素化されたポリイソプレン、ポリブテンジエン、部分的又は完全に水素化されたポリブテンジエン等が含まれる。引用された具体例のいくつかにより証明されるように、粘着付与剤は、完全に又は部分的に水素化されていてよい。また粘着付与剤は無極性であってもよく、無極性とは、極性基を有するモノマーを実質的に含有しない粘着付与剤を称する。好ましくは、極性基は存在しないが;もし存在するならば、好ましくは約5重量%まで、さらに好ましくは約2重量%まで、より好ましくは約0.5重量%までの量で存在する。
【0030】
好ましい実施態様において、粘着付与剤は約80℃〜約150℃、好ましくは約100℃〜約130℃(ASTM E-28により測定されるRing and Ball)の軟化点を有してよい。他の好ましい実施態様において、粘着付与剤は液体であってよく、約−70℃〜約70℃のR及びB軟化点を有してよい。
【0031】
好ましい実施態様において、粘着付与剤は、水素化炭化水素樹脂、例えば水素化スチレン/メチルスチレン/インデンのコポリマー、例えば商品名レガライト(Regalite)(登録商標)としてイーストマン・ケミカル社(Eastman Chemical)から商業的に入手可能なR1090、R1100、R7100、S1100及びS5100を含むスチレン/メチルスチレン/インデンのコポリマーである。他の実施態様においては、脂肪族又は芳香族の炭化水素ベースの粘着樹脂、例えばハーキュレス社(Hercules)から「ピコタック(Piccotac)」及び「ヘルコタック(Hercotac)」、又はエクソン社から「エスコレズ(Escorez)」の名称で販売されている樹脂を使用してもよい。さらに、本発明の趣意を逸脱することなく、粘着付与剤の混合物を使用してもよいと理解される。
本発明で使用に特に好ましい粘着付与剤は、水素化炭水化物樹脂、例えば商品名レガライト(登録商標)R1100としてイーストマン社から商業的に入手可能な、水素化されたスチレン/メチルスチレン/インデンのコポリマーである。
【0032】
本発明の組成物において、粘着付与剤(類)は、それらの間の全ての範囲及び部分的範囲を含み、組成物の重量に基づき約0.1重量%〜約10重量%、好ましくは1〜10重量%、より好ましくは1〜8重量%、最も好ましくは1〜5重量%の量で存在している。
【0033】
ブロックコポリマー
本発明の好ましい実施態様において、少なくとも一のブロックコポリマーをさらに含有する組成物が提供される。本発明のブロックコポリマーは、少なくとも一の「硬質セグメント」と少なくとも一の「軟質」セグメントの存在により特徴付けられる。それらの組成的性質の他に、本発明のブロックコポリマーの硬質及び軟質セグメントは、それらのガラス転移温度「Tg」に関して定められる。特に、硬質セグメントは約50℃以上のTgを有するが、これに対して軟質セグメントは、約20℃未満のTgを有する。硬質ブロックのガラス転移温度Tgは、約50℃〜約150℃;約60℃〜約125℃;約70℃〜約120℃;又は約80℃〜約110℃の範囲とすることができる。ブロックコポリマーの軟質セグメントのガラス転移温度Tgは、約20℃〜約−150℃;約0℃〜約−135℃;約−10℃〜約−125℃;及び約−25℃〜約−100℃の範囲とすることができる。より深い意味は、その全内容が参照としてここに導入される、米国特許第5,294,438号及び同6,403,070号に見出すことができる。
【0034】
本発明の組成物に使用され得るブロックコポリマーの一タイプは、熱可塑性エラストマーである。熱可塑性エラストマーの硬質セグメントは、典型的には種々の量でビニルモノマーを含有する。適切なビニルモノマーの例には、限定されるものではないが、スチレン、メタクリラート、アクリラート、ビニルエステル、ビニルエーテル、酢酸ビニル等が含まれる。
【0035】
熱可塑性エラストマーの軟質セグメントは、典型的には、飽和、不飽和、又はそれらの組合せであってよいオレフィンポリマー及び/又はコポリマーを含む。適切なオレフィンコポリマーには、限定されるものではないが、エチレン/プロピレンのコポリマー、エチレン/ブチレンのコポリマー、プロピレン/ブチレンのコポリマー、ポリブチレン、ポリイソプレン、水素化ブタン類及びイソプレン類のポリマー、及びそれらの混合物が含まれる。
【0036】
本発明に有用な熱可塑性エラストマーには、ブロックコポリマー、例えばジ-ブロック、トリ-ブロック、マルチ-ブロック、ラジカル又は星型ブロックコポリマー、及びそれらの混合物並びに融合物が含まれる。ジ-ブロック熱可塑性エラストマーは、通常A-B型として定められ、つまり配列中に硬質セグメント(A)、これに軟質セグメント(B)が続く。トリ-ブロックは通常A-B-A型コポリマーとして定められ、つまり1の硬質、1の軟質及び1の硬質セグメントの比のものである。マルチ-ブロック又はラジカルブロック又は星型ブロックの熱可塑性エラストマーは、通常、硬質及び軟質セグメントの任意の組合せを含有し、硬質及び軟質の双方の特徴を有するエラストマーが提供される。
【0037】
好ましい実施態様において、本発明の熱可塑性エラストマーは、クレイトン(Kraton)TMゴムクラス(シェルケミカル社(Shell Chemical Company))又は類似した熱可塑性エラストマーから選択され得る。クレイトンTMゴムは、ポリマー鎖がジ-ブロック、トリ-ブロック、マルチ-ブロック、又はラジカル又は星型ブロック構造、又はそれらの多くの混合物を含有する熱可塑性エラストマーである。クレイトンTMトリ-ブロックゴムはゴム(軟質)セグメントの各端部にポリスチレン(硬質)セグメントを有するが、クレイトンTMジブロックゴムはゴム(軟質)セグメントに付着してポリスチレン(硬質)セグメントを有する。クレイトンTMラジカル又は星型構造は4点、又は他には多点星型であってよく、ゴムセグメントの各端部に付着してポリスチレンセグメントを有するゴムから作製される。各クレイトンTMゴムの構造は、分離ポリスチレンとゴムドメインを形成する。
【0038】
クレイトンTMゴムの各分子は、スチレンモノマー単位とゴムモノマー及び/又はコ-モノマー単位のブロックセグメントを含有していると言われている。クレイトンTMトリブロックコポリマーの最も一般的な構造は、直線状A-B-Aブロック型で、スチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-イソプレン-スチレン、スチレン-エチレンプロピレン-スチレン、又はスチレン-エチレンブチレン-スチレンである。クレイトンTMジ-ブロックは、好ましくはABブロック型、例えばスチレン-エチレンプロピレン、スチレン-エチレンブチレン、スチレン-ブタジエン、又はスチレン-イソプレンである。クレイトンTMゴム構造は当該技術でよく知られており、類似した構造を有する任意のブロックコポリマーエラストマーは、本発明の実施の範囲内である。他のブロックコポリマーは、商品名セプトン(Septon)(クラリー社(Kurary, Co., Ltd)から販売されている、SEEPSとしても公知のエラストマーを表す)として販売されており、また商品名ベクトル(Vector)TMとしてエクソン・ダウ社(Exxon Dow)から販売されているものがある。
【0039】
本発明で有用な他の熱可塑性エラストマーには、スチレン-ブチレン/エチレン-スチレンのコポリマー(トリ-ブロック)、エチレン/プロピレン-スチレンのコポリマー(ラジカル又は星型ブロック)、又は2つの混合物もしくは融合物を含む、それらのブロックコポリマーエラストマーが含まれる(ある製造者では、水素化ブロックコポリマー、例えば水素化スチレン-ブチレン/エチレン-スチレンのコポリマー(トリ-ブロック)として、ブロックコポリマーを称する)。
【0040】
ブロック(コ)ポリマー又は(コ)ポリマー、並びにそれらの構造体(ジ-ブロック、トリ-ブロック等)の量は、脆弱から柔軟/可撓性のある範囲まで、そのゲル化形態を含む、熱可塑性エラストマーの性質に影響を与える。例えば、軟質ゲルは、比較的多量の軟質セグメントを含有し、皮膜ゲルは比較的多量の硬質セグメントを含有する。また、組成物の全体的な性質は、例えばコポリマーの混合物を含む、このようなブロックコポリマーを1以上含有することによって影響を受ける。例えば、トリ-ブロックコポリマーが存在すると、形成される皮膜の完全性が高められる。また、ゲルは、ここで記載したような、添加される他の化粧品的に許容可能な成分に応じて、透明、半透明又は不透明であってよい。
【0041】
ブロックコポリマーにおけるスチレンの含有量は、ブロックコポリマーの重量に基づき、30重量%未満、好ましくは25重量%未満、より好ましくは20重量%未満であることが好ましい。これは、30重量%以上のスチレン含有量を有するブロックコポリマーに、従来の担体系を硬化/ゲル化させる傾向があるためである。しかしながら、30重量%以上のスチレン含有量を有するブロックコポリマーが使用される場合、化粧品用組成物におけるスチレン-含有エラストマーの硬化/ゲル化を制御するのに十分な量のスチレンブロックを溶解可能な共溶媒又は機能的成分を使用する必要があるかもしれない。
【0042】
本発明での使用に特に好ましいブロックコポリマーは、クレイトンG1657Mの名称でシェルケミカル社から商業的に入手可能なスチレン-エチレン/ブチレン-スチレンのジ-ブロック又はトリ-ブロックのコポリマーの組合せである。しかしながら、少なくとも一の軟質及び少なくとも一の硬質セグメントを含有するブロックコポリマータイプの任意の熱可塑性エラストマーを、本発明の趣意を逸脱しないならば、使用してもよいことを記しておく。
【0043】
ブロックコポリマーは、粘着付与剤に対して、δ±2、好ましくはδ±1.7、より好ましくはδ±1.5、さらに好ましくはδ±1.3、またさらに好ましくはδ±1.0、もっと好ましくはδ±0.7、よりさらに好ましくはδ±0.5、さらにはδ±0.3の溶解度パラメータを有することが好ましい。
【0044】
本発明の組成物において、ブロックコポリマー(類)は、組成物の全重量に対して約1〜約10重量%、より好ましくは1〜8重量%、さらに好ましくは1〜6重量%、最も好ましくは1〜5重量%の、それらの間の全ての範囲及び部分的範囲を含む量で存在していることが好ましい。
特に好ましい実施態様において、本発明の組成物は、少なくとも一のブロックコポリマー及び少なくとも一の粘着付与剤を同じ量、又は少なくとも一の粘着付着剤と比較して少なくとも一のブロックコポリマーをより多く含有する。例えば、少なくとも一のブロックコポリマー及び少なくとも一の粘着付与剤は、それらの間の全ての範囲及び部分的範囲を含む、1.25、1.00、0.75、0.50、0.33、0.25及び0.10の比率で存在可能であり、1.00〜0.33の比率が特に好ましい。
また好ましくは、極性の変性ロウ対ブロックコポリマー/粘着付与剤の比率は、約10:1〜約1:10、好ましくは約1:5〜約5:1、最も好ましくは約1:3〜約3:1の範囲である。
【0045】
本発明の特に好ましい実施態様において、ブロックコポリマー、粘着付与剤及び極性の変性ロウを含有する組成物は、毛髪又は睫等のケラチン物質の長さ、リフト性又は保持力に関して、相乗的に改善された特性を有する。驚くべきことに、添加剤以上の量で、ブロックコポリマー、粘着付与剤及び極性の変性ロウを組合せることで、毛髪又は睫等のケラチン物質を長くする、リフトする、又は保持する能力を増加させることができる。
【0046】
アルキルシルセスキオキサン樹脂
本発明の好ましい実施態様において、少なくとも一のアルキルシルセスキオキサン樹脂をさらに含有する組成物が提供される。アルキルシルセスキオキサン樹脂は、一般式RSiO(4−n)/2の平均シロキサン単位を有するシルセスキオキサンのホモポリマー又はコポリマーであり、ここで各Rは独立して、水素原子及びC-C10アルキル基から選択され、Rの80モル%以上がC-C10アルキル基を表し、nが1.0〜1.4の値であり、コポリマーの60モル%以上が、RSiO3/2単位を有する。
好ましくは、使用されるシルセスキオキサン樹脂は、RがC-C10、好ましくはC-Cアルキル基、さらに好ましくはプロピル基であるものである。本発明での使用に適したアルキルシルセスキオキサン樹脂の具体例はプロピルシルセスキオキサン樹脂である。このようなプロピルシルセスキオキサン樹脂はの一つは、ダウコーニング(Dow Corning)(登録商標)670フルイドとして、ダウ-コーニング社(Dow-Corning)から商業的に入手可能である。
【0047】
アルキルシルセスキオキサン樹脂は、組成物の全重量に対して約3重量%〜約50重量%、例えば約5重量%〜約30重量%の範囲の、それらの間の全ての範囲及び部分的範囲を含む量で、本発明の化粧品用組成物中に好ましくは存在する。
【0048】
溶媒
好ましい実施態様において、本発明の組成物は、ブロックポリマーの軟質又は硬質セグメントを溶解可能な少なくとも一の溶媒をさらに含有する。このような適切な溶媒は、典型的には、それらの室温での粘度、重量平均分子量、及び/又はブロックコポリマーの少なくとも一の硬質セグメントに関する溶解度パラメータについて特徴付けられる。
ブロックコポリマーの硬質セグメントを溶解可能な溶媒(類)は、好ましくは約1〜約200cps、より好ましくは1〜150cps、さらに好ましくは1〜100cps、またさらに好ましくは2〜60cps、もっと好ましくは2〜40cpsの、室温での粘度を有するであろう。
【0049】
本発明で使用されるブロックコポリマーの硬質セグメントを溶解可能な溶媒(類)は、好ましくはδ'に相当する溶解度パラメータを有しており、ブロックコポリマーは、その溶解度パラメータがδ'±2、好ましくはδ'±1.7、より好ましくはδ'±1.5、さらに好ましくはδ'±1.3、またさらに好ましくはδ'±1.0、もっと好ましくはδ'±0.7、よりさらに好ましくはδ'±0.5、さらにはδ'±0.3に相当する少なくとも一の硬質セグメントを有する。
【0050】
本発明で使用可能なブロックコポリマーの硬質セグメントを溶解可能な非揮発性溶媒の例には、限定されるものではないが、脂肪族及び/又は芳香族が混合したモノエステル、ジエステル、トリエステル、極性油、例えば:動物由来の炭化水素ベース油、例えばペルヒドロスクワレン:炭化水素ベースの植物性油、例えば脂肪酸とグリセロールの液状トリグリセリドで、脂肪酸が様々な鎖長さを有していてよく、これらの鎖が直鎖状又は分枝状で、飽和又は不飽和であってよいもの;特に小麦胚芽油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、大豆油、マロー油、グレープシード油、クロフサスグリの種油、ゴマ油、ヘーゼルナッツ油、アプリコット油、マカダミア油、ヒマシ油、アボカド油、カリテバター、スイートアルモンド油、綿油、アルファルファ油、ケシ油、カボチャ油、マツヨイグサ油、穀類油、大麦油、キノア油、オリブ油、ライ麦油、ベニバナ油、ククイノキ油、トケイソウ油、マスクローズ油、及びカプリル/カプリン酸のトリグリセリド、例えばステアリネリーズ・デュボイス社(Stearineris Dubois)から販売されているもの、又はダイナミットノーベル社(Dynamit Nobel)からミグリオール(Miglyol)810、812及び818の名称で販売されているものから選択可能な油;Rが7〜19の炭素原子を有する高級脂肪酸残基であり、Rが3〜20の炭素原子を有する分枝状の炭化水素ベース鎖である、式RCOORの天然又は合成エステル、例えばプルセリン油(オクタン酸セトステアリル)、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸、デカン酸又はリシノール酸のアルキル又はポリアルキル;RがCないしC19アルキル基であり、RがCないしC20アルキル基である、式RCORの合成エステル;少なくとも12の炭素原子を有する脂肪アルコール類、例えばオクチルドデカノール又はオレイルアルコール;環状の炭化水素、例えば(アルキル)シクロアルカン類で、アルキル鎖が直鎖状又は分枝状、飽和又は不飽和であり、1〜30の炭素原子を有するもの、特にシクロヘキサン又はジオクチルシクロヘキサン;芳香族の炭化水素、例えばアルカン類、特にベンゼン、トルエン、2,4-ジメチル-3-シクロヘキサン、ジペンテン、p-シメン、ナフタレン又はアントラセン、及びエステル、例えば安息香酸イソステアリル;第1級、第2級又は第3級アミン類、例えばトリエタノールアミン;及びその混合物が含まれる。一実施態様において、合成エステル、特にミリスチン酸イソプロピルが使用される。
【0051】
好ましいエステルは、約100〜約600、好ましくは100〜500の範囲の重量平均分子量(Mw)を有するものである。その実施例には、限定されるものではないが、C12-15安息香酸アルキル、ミリスチン酸イソプロピル(Mw=270)、パルミチン酸イソプロピル(Mw=300)、イソノナン酸イソノニル、エチルヘキサン酸セチル(Mw=368)、ネオペンチルグリコールジエチルヘキサノアート(Mw=356)、セバシン酸ジイソプロピル(Mw=286)が含まれる。
【0052】
ブロックコポリマーの硬質セグメントを溶解可能な溶媒(類)は、存在するならば、典型的には、組成物の重量に基づき約85重量%まで;75重量%まで;55重量%まで;45重量%まで;40重量%まで;30重量%まで;20重量%まで;10重量%まで;及び5重量%までの量で、本発明の組成物に存在していてよい。
本発明の好ましい実施態様において使用され得るブロックコポリマーの硬質セグメントを溶解可能な溶媒は、典型的には、それらの室温での粘度、重量平均分子量、及び/又はブロックコポリマーの少なくとも一の硬質セグメントに関する溶解度パラメータについて特徴付けられる。
【0053】
ブロックコポリマーの軟質セグメントを溶解可能な溶媒(類)は、好ましくは約1〜約50cps、より好ましくは1〜40cps、さらに好ましくは1〜30cps、またさらに好ましくは2〜20cps、もっと好ましくは2〜10cpsの、室温での粘度を有するであろう。
本発明で使用されるブロックコポリマーの軟質セグメントを溶解可能な溶媒(類)は、好ましくはδ'に相当する溶解度パラメータを有しており、ブロックコポリマーは、その溶解度パラメータがδ'±2、好ましくはδ'±1.7、より好ましくはδ'±1.5、さらに好ましくはδ'±1.3、またさらに好ましくはδ'±1.0、もっと好ましくはδ'±0.7、よりさらに好ましくはδ'±0.5、さらにはδ'±0.3に相当する少なくとも一の軟質セグメントを有する。
【0054】
ブロックコポリマーの軟質セグメントを溶解可能な溶媒(類)は、揮発性溶媒及び非揮発性溶媒から選択されてよい。「揮発性溶媒」なる表現は、適用されて、支持体から室温で蒸発可能な溶媒、換言すれば室温で測定可能な蒸気圧を有する溶媒を意味する。その全内容が参照としてここに導入される米国特許第6,656,458号を参照。
【0055】
適切な揮発性有機溶媒の代表例には、限定されるものではないが、揮発性炭化水素ベース油が含まれる。「炭化水素ベース油」なる表現は、水素と炭素原子のみを含有する油を意味する。揮発性炭化水素ベース油の例には、イソパラフィン類、すなわち8〜16の炭素原子を有する分枝状アルカン類、特にイソドデカン(2,2,4,4,6-ペンタメチルヘプタンとしても公知)が含まれる。また、このようなイソパラフィン類の混合物を使用することもできる。他の揮発性炭化水素ベース油、例えば石油蒸留物を使用することもできる。
適切な揮発性シリコーン溶媒の代表例には、限定されるものではないが、2〜7のケイ素原子を有し、室温で6cSt以下の粘度を有する直鎖状又は環状のシリコーン油が含まれ、これらのシリコーン類は1〜10の炭素原子を有するアルキル又はアルコキシ基で置換されていてもよい。本発明で使用され得る特定の油には、オクタメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン及びそれらの混合物が含まれる。使用され得る他の揮発性油には、6cStの粘度を有するKF96A、94℃の引火点を有する信越(Shin Etsu)の市販品が含まれる。好ましくは、揮発性シリコーン油は少なくとも40℃の引火点を有する。
【0056】
使用可能な適切な非揮発性溶媒は、約150〜約450、好ましくは200〜350の範囲の重量平均分子量を有するものである。その例には、限定されるものではないが、水素化ポリデセン、水素化ポリイソブテン、イソエイコサン、ポリデセン及びポリブテンが含まれる。
ブロックコポリマーの軟質セグメントを溶解可能な溶媒(類)は、存在するならば、典型的には、組成物の重量に基づき約85重量%まで;75重量%まで;55重量%まで;45重量%まで;40重量%まで;30重量%まで;20重量%まで;10重量%まで;及び5重量%までの量で、本発明の組成物に存在していてよい。
【0057】
本発明の好ましい実施態様において、高分子量及び高粘度を有する少なくとも一の共溶媒が、本発明において使用されてよい。
ブロックコポリマーの硬質セグメントと融和性のある適切な高粘度共溶媒の例には、限定されるものではないが、カプリン/カプリル酸トリグリセリド(Mw=500)、ジイソプロピルダイマージリノレアート(Mw=644)、フマル酸ジイソステアリル(Mw=620)、リンゴ酸ジイソステアリル(Mw=640)、テトラオレイン酸ペンタエリトリチル、グリコールジエチルヘキサン酸ネオペンチル、セバシン酸ジエチルヘキシル、及びトリカプリラート/トリカプラートが含まれる。これらの共溶媒の重量平均分子量は、好ましくは約500〜約1000、より好ましくは500〜800である。
【0058】
ブロックコポリマーの軟質セグメントと融和性のある適切な高粘度共溶媒の例には、限定されるものではないが、ポリイソブテン、水素化ポリイソブテン、ポリブテン、水素化ポリブテン、ポリデセン、及び水素化ポリデセンが含まれる。これら共溶媒の重量平均分子量は、好ましくは約2500〜約10000、より好ましくは3000〜10000である。
これらの共溶媒が存在するならば、好ましくは約50重量%まで;40重量%まで;30重量%まで;25重量%までの量で、本発明の組成物に使用されてよく;全ての重量は組成物の重量に基づく。
【0059】
増粘剤
本発明は、エラストマー性化合物、例えば信越からKSG6、ダウ・コーニング社(Dow Corning)からトレフィル(Trefil)E-505C又はトレフィルE-506C、グラント・インダストリー社(Grant Industries)からグランシル(Gransil)(SR-CYC、SR DMF10、SR-DC556)の名称で作製され、販売されているもの、又は信越から既に構成化されているゲルの形態で市販されているもの(KSG15、KSG17、KSG16、KSG18、KSG21)、ジェネラル・エレクトリック社からのグランシルSR 5CYCゲル、グランシルSR DMF10ゲル、グランシルSR DC556ゲル、SF1204及びJK113、又は乳化エラストマー、例えば信越からKSG-210、KSG-30、KSG-31、KSG-32、KSG-33、KSG-40、KSG-41、KSG-42、KSG-43及びKSG-44の名称で販売されているものをさらに含有していてもよい。
【0060】
また組成物は、変性クレー類、例えばC10ないしC22脂肪酸の塩化アンモニウムで変性したヘクトライト類、特にクアテルニウム(quaternium)-18ベントナイト(bentonite)として公知のジステアリルジメチルアンモニウムクロリドで変性したヘクトライト、中でもレオックス社(Rheox)からベントーン(Bentone)34の名称で作製又は販売されている製品、サザンクレイ社(Southern Clay)で製造又は販売されているクレイトーン(Claytone)XL、クレイトーン34及びクレイトーン40、サザンクレイ社からクレイトーンHT、クレイトーンGR及びクレイトーンPSの名称で製造又は販売され、クアテルニウム-18ベンザルコニウムベントナイト類の名称で公知の変性クレー類、ステラルコニウム(steralkonium)ベントナイト類として公知の、ステアリルジメチルベンゾイルアンモニウムクロリドで変性したクレー類、例えばサザンクレイ社からクレイトーンAPA及びクレイトーンAFの名称で製造又は販売されている製品、及びレオックス社で製造又は販売されているバラゲル(Baragel)24をさらに含有していてもよい。
【0061】
また組成物は、シリカ、例えばヒュームドシリカをさらに含有していてもよい。ヒュームドシリカは、例えば約5nm〜200nmの範囲のナノメートル又はマイクロメートルであってよい粒子径を有する。
ヒュームドシリカは、水素-酸素炎において、揮発性ケイ素化合物を高温で加水分解することにより得られ、微細に分割されたシリカが生成される。このプロセスにより、それらの表面に多数のシラノール基を有する親水性シリカを得ることができる。このような親水性シリカは、例えばデガッサ社(Degussa)から「エアロシル(Aerosil)130(登録商標)」、「エアロシル200(登録商標)」、「エアロシル255(登録商標)」、「エアロシル300(登録商標)」及び「エアロシル380(登録商標)」、及びカボット社(Cabot)から「CAB-O-SIL HS-55(登録商標)」、「CAB-O-SIL EH-5(登録商標)」、「CAB-O-SIL LM-130(登録商標)」、「CAB-O-SIL MS-55(登録商標)」及び「CAB-O-SIL M-5(登録商標)」の名称で製造又は販売されている。
【0062】
よって化学反応により、親水性シリカの表面を化学的に変性させ、シラノール基の数を減少させることもできる。シラノール基は、例えば疎水性基で置き換えることもでき;これにより疎水性シリカが付与される。疎水性基は以下のものであってよい:(a)トリメチルシロキシル基、特にヘキサメチルジシラザンの存在下で、ヒュームドシリカを処理することにより得られるもの。このように処理されたシリカは、CFTA(第6版、1995年)に従い、「シリル化シリカ」として公知である。それらは、例えばデガッサ社から「エアロシルR812(登録商標)」、及びカボット社から「CAB-O-SIL TS-530(登録商標)」の参照名で製造又は販売されている;(b)ジメチルシリルオキシル又はポリジメチルシロキサン基、特にポリジメチルシロキサン又はジメチルジクロロシランの存在下で、ヒュームドシリカを処理することにより得られるもの。このように処理されたシリカは、CFTA(第6版、1995年)に従い、「シリル化ジメチルシリカ」として公知である。それらは、例えばデガッサ社から「エアロシルR972(登録商標)」及び「エアロシルR974(登録商標)」、及びカボット社から「CAB-O-SIL TS-610(登録商標)」及び「CAB-O-SIL TS-720(登録商標)」の参照名で製造又は販売されている;(c)シランアルコキシド類又はシロキサン類とヒュームドシリカを反応させることから誘導される基。これらの処理されたシリカは、例えばデガッサ社から「エアロシルR805(登録商標)」の参照名で製造又は販売されている製品である。
【0063】
疎水性シリカ、例えばヒュームドシリカを使用することにより、例えばロウ、フィラー及び顔料(真珠母を含む)等の不透明粒子の不在下、にじみ出ることのない、スティックの形態をした半透明又は透明な組成物を得ることができる。
【0064】
また組成物は、少なくとも一の典型的なロウをさらに含有してもよい。本発明の目的において、典型的なロウは、室温(25℃)、大気圧(760mmHg、すなわち101KPa)で固体状であり、可逆的な固体/液体の状態変化を受け、40℃を超える、さらには55℃を越え、200℃までの高い融点を有する脂質親和性脂肪化合物である。ロウをその融点にすることにより、油と混和し、顕微鏡的に均質な混合物を形成させることができるが、混合物の温度を室温まで戻すと、混合物の油中のロウが再結晶化する。混合物におけるこの再結晶化は、混合物の光沢低下の原因である。
【0065】
本発明の目的において、ロウは、化粧品及び皮膚科学において一般的に使用されているものであり;それらは、例えば天然由来のもの、特にミツロウ、オゾケライト、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、オーリクリーロウ、モクロウ、コルク繊維ロウ、サトウキビロウ、パラフィンロウ、亜炭ロウ、マイクロクリスタリンワックス、ラノリンロウ、モンタンロウ、オゾケライト類及び水素化油、例えば水素化ホホバ油、並びに合成由来のロウ、例えばエチレンの重合から誘導されたポリエチレンロウ、フィッシャー-トロプシュ合成法により得られたロウ、脂肪酸エステル及びグリセリド類で、40℃、例えば55℃以上でも固体状のもの、脂肪アルコールロウ、例えばC30-C50アルコールを含み、ペルホルマコール(Performacol)の名称(ペルホルマコール350、425及び550)で、ベイカー・ペトロライト社(Baker Petrolite)から販売されているもの、シリコーンロウ、例えばアルキル-及びアルコキシ-ポリ(ジ)メチルシロキサン類及び/又はポリ(ジ)メチル-シロキサンエステルで、40℃、例えば55℃以上でも固体状のものである。
【0066】
本発明において、融点値は、5又は10℃/分の温度上昇を伴う、「示差走査熱量測定」法により測定された、融解ピークに相当する。
【0067】
組成物は、ポリシリコーン-ポリアミドのコポリマー、例えば米国特許出願公開第2004/0170586号に開示されたもの、及び/又はレオロジー変性ポリマー、例えばPVPをさらに含有していてもよい。
しかしながら、特に好ましい実施態様において、組成物は、上述にて論議した増粘剤の存在が組成物の化粧品的特性に影響を与えない程度に少ない増粘剤しか含有しない。好ましくは、組成物は、このような増粘剤を実質的に含有しない(すなわち、約1%未満の増粘剤を含有)、このような増粘剤を本質的に含有しない(すなわち、約0.5%未満の増粘剤を含有)、又はこのような増粘剤を含有しない(すなわち、約0.1%未満の増粘剤を含有)。
【0068】
特に好ましい実施態様において、組成物は、このようなエラストマー及び/又はロウの存在が組成物の化粧品的特性に影響を与えない程度に少ないエラストマー及び/又はロウしか含有しない。好ましくは、組成物は、このようなエラストマー及び/又はロウを実質的に含有しない(すなわち、約0.5%未満のエラストマー及び/又はロウを含有)、このようなエラストマー及び/又はロウを本質的に含有しない(すなわち、約0.25%未満のエラストマー及び/又はロウを含有)、又はこのようなエラストマー及び/又はロウを含有しない(すなわち、約0.1%未満のエラストマー及び/又はロウの増粘剤を含有)。
【0069】
着色剤
本発明において、組成物は、場合によっては少なくとも一の着色剤(着色料)を含有していてよい。適切な着色剤には、限定されるものではないが、顔料、染料、例えば脂溶性染料、真珠光沢顔料、及びパール剤が含まれる。典型的には、組成物が着色料を含有する場合、それはメークアップ組成物、例えばマスカラ組成物である。組成物が着色料を含有しない場合、それはメークアップ組成物の適用、例えばマスカラの睫への適用前(又は後)のベースコート(又はトップコート)として使用可能な澄んでいる又は透明な組成物であり、又は毛髪のトリートメント用組成物、例えば毛髪用コンディショナー又はムースとして使用することもできる。しかしながら、トップコート、ベースコート、毛髪用トリートメント製品等が着色料を含有していてもよく、及び/又はマスカラ又はメークアップ組成物が着色剤を全く又はほとんど含有していなくてもよい。
【0070】
本発明で使用され得る代表的な脂溶性染料には、スーダンレッド、DCレッド17、DCグリーン6、β−カロテン、大豆油、スーダンブラウン、DCイエロー11、DCバイオレット2、DCオレンジ5、アナトー及びキノリンイエローが含まれる。脂溶性染料が存在する場合、それらは組成物の全重量に対して、一般的に20重量%まで、例えば0.0001重量%〜6重量%の範囲の濃度を有する。
【0071】
本発明で使用され得る真珠光沢顔料は、白色の真珠光沢顔料、例えば、チタン又はオキシ塩化ビスマスで被覆されたマイカ、有色の真珠光沢顔料、例えば、酸化鉄を有するチタンマイカ、フェリックブルー又は酸化クロムを有するチタンマイカ、上述したものから選択される有機顔料を有するチタンマイカ、及びオキシ塩化ビスマスをベースとした真珠光沢顔料から選択され得る。また真珠光沢顔料が存在するならば、それらは、組成物の全重量に対して50重量%まで、例えば0.1重量%〜20重量%、好ましくは0.1重量%〜15重量%の範囲の濃度で組成物に存在する。
【0072】
本発明で使用され得る顔料は、白色、有色、無機、有機、ポリマー性、非ポリマー性で、被覆された又は被覆されていない顔料から選択され得る。無機顔料の代表的な例には、表面処理されていてもよい二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、酸化クロム、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー、クロム水和物及びフェリックブルーが含まれる。有機顔料の代表的な例には、カーボンブラック、D&C型の顔料、アルミニウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、コチニールカルミンをベースとしたレーキ類が含まれる。
【0073】
顔料が存在するならば、それらは、組成物の全重量に対して50重量%まで、例えば0.5重量%〜40重量%、さらには2重量%〜30重量%の範囲の濃度で、組成物に存在してよい。ある種の製品のケースにおいては、真珠光沢顔料を含む顔料は、例えば組成物の50重量%までであってよい。
【0074】
皮膜形成剤
本発明の特に好ましい実施態様においては、少なくとも一の皮膜形成剤(皮膜形成体)をさらに含有していてもよい組成物が提供される。許容可能な皮膜形成剤は当該分野で公知であり、限定されるものではないが、その全内容が参照としてここに導入される、米国特許出願公開第2004/0170586号に開示されているものが含まれる。このような皮膜形成剤の非限定的代表例には、他のシリコーン樹脂、例えばMQ樹脂(例えばトリメチルシロキシシリカート)及びMK樹脂(例えばポリメチルシルセスキオキサン)、シリコーンエステル、例えばその開示が参照としてここに導入される、米国特許第6,045,782号、同5,334,737号及び同4,725,658号に開示されているもの、ビニルポリマー、メタクリルポリマー、及びアクリルポリマーから選択される骨格と、ペンダントシロキサン基及びペンダントフルオロ化学基から選択される少なくとも一の鎖を含有するポリマー、例えばその開示が参照としてここに導入される、米国特許第5,209,924号、同4,693,935号、同4,981,903号、同4,981,902号、及び同4,972,037号、及び国際公開第01/32737号に開示されているもの、ポリマー、例えばその開示が参照としてここに導入される、米国特許第5,468,477号に開示されているもの(このようなポリマーの非限定的例は、VS70IBMの商品名で3M社から商業的に入手可能なポリ(ジメチルシロキサン)-g-ポリ(メタクリル酸イソブチル)である)が含まれる。
【0075】
好ましい実施態様において、皮膜形成体が存在する場合、それらは、組成物の全重量に対して0.1重量%〜30重量%の範囲の量で組成物に存在する。皮膜形成体は、組成物の全重量に対して、好ましくは0.5重量%〜20重量%、さらに好ましくは2重量%〜15重量%の範囲で、それらの間の全ての範囲及び部分的範囲を含む量で存在する。当業者であれば、本発明の皮膜形成体が商業的に入手可能であり、希釈液の形態で供給者から入荷されることを認識しているであろう。よって、ここに開示された皮膜形成体の量は、活性物質の重量パーセントで表される。
【0076】
本発明の好ましい実施態様において、本発明の組成物は無水である。「無水」とは、組成物が水を実質的に含有しない(すなわち水が組成物の重量に対して約0.5%未満である)ことを意味する。
【0077】
他の好ましい実施態様において、本発明の組成物は水をさらに含有する。この実施態様において、水は組成物の全重量に対して、好ましくは約0.6〜約70%、より好ましくは約3.0〜60%、さらに好ましくは約5〜約50%の範囲の量で存在する。好ましくは、このような水分含有化粧品用組成物は、エマルション又は分散液である。
特に好ましい実施態様において、本発明の組成物はエマルションの形態である。適切なエマルションの形態には、限定されるものではないが、水中油型、油中水型、油中水中油型、水中油中水型及びナノエマルション(その油球が非常に微細な粒子経である、すなわち約100ナノメートル(nm)未満の数平均径を有するエマルション)が含まれる。エマルションは、少なくとも一の油相と少なくとも一の水相を含有する。典型的に述べれば、エマルションは、エマルションを安定化させ、エマルションの相分離を阻害するために、界面活性剤又は界面活性剤様物質を含有する。
【0078】
付加的な添加剤
本発明の組成物は、考慮される分野で通常使用される任意の添加剤をさらに含有可能である。例えば、分散剤、特にポリ(12-ヒドロキシステアリン酸)、酸化防止剤、精油、サンスクリーン剤、防腐剤、香料、フィラー、中和剤、化粧品用及び皮膚用の活性剤、例えばエモリエント、保湿剤、ビタミン類、必須脂肪酸、界面活性剤、ペースト状の化合物及びそれらの混合物を添加することができる。このような成分の非包括的列挙は、その全内容が参照としてここに導入される、米国特許出願公開第2004/0170586号に見出すことができる。適切な付加的成分のさらなる例は、この出願に参照されて導入されている他の参考文献に見出すことができる。このような付加的成分のまたさらなる例は、International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook(第9版、2002年)に見出される。
【0079】
当業者であれば、考慮される添加により、本発明の組成物の有利な特性が悪影響を受けないか、実質的に受けないように留意して、任意の付加的な添加剤及び/又はその量を選択するであろう。
これらの物質は、所望する特性、例えばコンシステンシー又はテクスチャーを有する組成物を調製するために、当業者により様々に選択され得る。
これらの添加剤は、(存在するならば)組成物の全重量に対して0%〜99%(例えば0.01%〜90%)、さらには0.1%〜50%で、それらの間の全ての範囲及び部分的範囲を含む割合で、組成物に存在していてよい。
言うまでもなく、本発明の組成物は、化粧品的又は皮膚科学的に許容可能、すなわち無毒性の生理学的に許容可能な媒体を含有し、ヒトの睫毛に適用可能なものであるべきである。
【0080】
このような付加的な成分の非限定的例には、非揮発性油、例えばシリコーン油(例えばジメチコーン、フェニルトリメチコーン、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン等)、又は炭化水素油(例えばエステル)が含まれる。本発明の一実施態様において、本発明の組成物は、シリコーン油を実質的に含有しない(すなわち、約0.5%未満のシリコーン油を含有)。他の実施態様において、組成物は非シリコーン油を実質的に含有しない(すなわち、約0.5%未満の非シリコーン油を含有)。他の実施態様において、組成物は非揮発性油を実質的に含有しない(すなわち、約0.5%未満の非揮発性油を含有)。
【0081】
本発明の好ましい実施態様においては、少なくとも一の極性の変性ロウ及び少なくとも一の粘着付与剤、場合によっては少なくとも一のブロックコポリマー及び/又は少なくとも一のアルキルシルセスキオキサン樹脂を含有する組成物を、ケラチン物質のリフト性、保持力及び/又は長さを増大させるのに有効な量、該ケラチン物質に適用することを含む、ケラチン物質(例えば、毛髪又は睫)のリフト性、保持力及び/又は長さを増大させる方法が提供される。組成物は、必要であれば、ケラチン物質に、好ましくは1日1回又は2回、より好ましくは1日1回適用され、ついで好ましくは、衣類又は他の物体等と接触する前に乾燥させる。
【0082】
特に好ましい実施態様においては、組成物の性能特性が、個々の成分をそれぞれ含有する組成物の性能特性よりも大きくなる(すなわち、少なくとも一の極性の変性ロウ、少なくとも一の粘着付与剤、少なくとも一のブロックコポリマー及び/又は少なくとも一のアルキルシルセスキオキサン樹脂に関して、相乗効果が存在する)よう、十分な極性の変性ロウを、十分な粘着付与剤、場合によっては十分なブロックコポリマー及び/又はアルキルシルセスキオキサン樹脂と組合せる。さらなる他の好ましい実施態様において、このような成分を組合せることで、組成物の光沢又は輝きの大幅な低下、及び/又は組成物の適用時おける乏しいテクスチャー又は粘着性には至らず、組成物に十分なゲル化性が付与される。
【0083】
本発明のさらなる実施態様においては、少なくとも一の極性の変性ロウ、及び少なくとも一の粘着付与剤、場合によっては少なくとも一のブロックコポリマー及び/又は少なくとも一のアルキルシルセスキオキサン樹脂を含有する組成物を、ケラチン物質をメークアップするのに十分な量、このようなメークアップを必要とするケラチン物質に適用することを含む、ケラチン物質(例えば、毛髪又は睫)をメークアップする方法が提供される。好ましくは、ケラチン物質の「メークアップ」には、ケラチン物質に色調を付与するのに十分な量、ケラチン物質に少なくとも一の着色剤を適用することを含む。
【0084】
本発明の好ましい実施態様においては、ケラチン物質をトリートメント及び/又は手入れするのに十分な量、本発明の組成物をケラチン物質に適用することによる、ケラチン物質(例えば、毛髪又は睫)をトリートメント又は手入れする方法が提供される。
他の好ましい実施態様においては、ケラチン物質の外観を高めるのに十分な量、本発明の組成物をケラチン物質に適用することによる、ケラチン物質(例えば、毛髪又は睫)の外観を高める方法が提供される。
【0085】
上述した好ましい実施態様において、本発明の組成物は、ケラチン物質をトリートメント、手入れ及び/又はメークアップするのに、又はケラチン物質の外観を高めるのに十分な量、ケラチン物質(例えば、毛髪又は睫)に局所的に適用される。組成物は、必要であれば、好ましくは1日1回又は2回、より好ましくは1日1回適用され、ついで好ましくは、衣類又は他の物体等と接触する前に乾燥させる。他の好ましい実施態様において、このような成分を組合せることで、組成物の光沢又は輝きの大幅な低下、及び/又は組成物の適用時おける乏しいテクスチャー又は粘着には至らず(すなわち、あまり妨害されることなく、組成物は滑らかに伸び)、組成物に十分なゲル化性が付与される。
【0086】
本発明の他の実施態様においては、少なくとも一の極性の変性ロウ、及び少なくとも一の粘着付与剤、及び場合によっては少なくとも一のブロックコポリマー及び/又は少なくとも一のアルキルシルセスキオキサン樹脂を、組成物を形成させるために混合することを含む、組成物の作製方法が提供される。特に好ましい実施態様において、極性の変性ロウは水相に存在し、粘着付与剤、ブロックコポリマー及び/又はアルキルシルセスキオキサン樹脂は油相に存在し、粘着付与剤、ブロックコポリマー及び/又はアルキルシルセスキオキサン樹脂、及び極性の変性ロウは、水相と油相が組合せられる際に組合せられる。このような好ましい手順により、とりわけ、実質的又は本質的に界面活性剤を含有しないエマルションの調製が可能となる。
【0087】
特に示さない限りは、明細書及び特許請求の範囲に使用されている成分の量、反応条件、及びその他色々を表す全ての数値は、いずれの場合においても、「約」なる用語により加減されると理解される。従って、それとは対照的に示されていない場合、以下の明細書及び附随する特許請求の範囲に説明されている数的パラメータは、本発明により得られると思われる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。
【0088】
本発明の広範囲において説明された数的範囲及びパラメータは、近似値であるにもかかわらず、特定の実施例で説明されている数値は、可能な限り正確に報告している。しかしながら、任意の数値は、それらそれぞれの測定において見出される標準偏差から必然的に生じる誤差を本質的に含む。以下の実施例は本発明を例証することを意図しており、結果としてその範囲を限定するものではない。パーセンテージは重量に基づいて付与される。
【実施例】
【0089】
実施例1及び2−マスカラ

【0090】
実施例3及び4−リップグロス

リップグロスの生成に、極性の変性ロウ(リコケア)、粘着付与剤(レガライト)及びブロックコポリマー(クレイトン)を含有する実施例4は、シリカを含有する実施例3のリップグロスよりも、輝きがあり、さらにより透明であった。さらに、実施例4のリップグロスは、シリカの使用に付随する、泡包含の問題にも対処されている。最後に、実施例4のリップグロスは、実施例3のリップグロスよりも、より良好な適用性を有する。特に、実施例4のリップグロスは、適用時に、好ましく非粘着質な感触を有する。
【0091】
本発明のファンデーション:実施例5及び6

【0092】
比較ファンデーション:実施例A

【0093】
本発明のファンデーション:実施例7及び8

【0094】
顔料グラインド

極性の変性ロウの使用により、帯着性及び快適性が改善されることがわかった。
【0095】
手順
高速ミキサー下、A1相を添加し−完全に溶解するまで加熱し(80℃を超えるべきではない)−ビーカーを覆う。
完全に溶解するまで、A2相を添加する。加熱し続ける。
A3相、続いてA4相を添加する。完全に混合されるまで、〜10分、高剪断を使用する。
完全に溶解するまで、分別ビーカーでB相を加熱する。A相に温度を適合させる(〜65℃)。
A相とB相の双方が完全に混合された時、同じ温度で、高剪断下でB相をA相にゆっくりと添加する。
〜15分、エマルションを混合する。冷却する。
【0096】
マスカラ 本発明の実施例9

単一ロウ、極性の変性ロウの使用により、このマスカラにボリューム、強い色調、帯着性及びクリーミーなテクスチャーが付与されることが見出された。
【0097】
手順
主ケトルにて、イソドデカンを65-75℃まで加熱する。混合下、リコケアPP207 LP3349を添加し、混合し、レガライト1100を添加し、激しい混合下で溶解させる(約15分)。
固形物を完全に溶解させた後、T-プロピルシルセスキオキサンを添加し、溶解するまで混合する。
十分に混合した時、ホモジナイザーに移し、サンプロ(Sunpuro)黒酸化鉄を添加し、少なくとも1時間、ホモジナイズする。
全てが均質になった時、パドルミキサーに移す。
冷却時、バッチを降ろす。
【0098】
実施例10-12

実施例10-12を作製する手順
1.高速ミキサー下、A1相を添加し−完全に溶解するまで加熱し(80℃を超えるべきではない)−ビーカーを覆う。
2.完全に溶解するまで、A2相を添加する。加熱し続ける。
3.A3相、続いてA4相を添加する。完全に混合されるまで、〜10分、高剪断を使用する。
4.完全に溶解するまで、分別ビーカーでB相を加熱する。A相に温度を適合させる(〜65℃)。
5.A相とB相の双方が完全に混合された時、同じ温度で、高剪断下でB相をA相にゆっくりと添加する。
6.〜15分、エマルションを混合する。ついで冷却する。
【0099】
唇用組成物 本発明の実施例13-15

【0100】
皮膜特性:


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一の極性の変性ロウと少なくとも一の粘着付与剤を含有する組成物。
【請求項2】
組成物がエマルションである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも一の着色剤をさらに含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも一の極性の変性ロウが、本質的にポリプロピレン単位と無水マレイン酸単位からなるロウ、本質的にC26-C28アルファオレフィン単位と無水マレイン酸単位からなるロウ、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも一の極性の変性ロウが、本質的にポリプロピレン単位と無水マレイン酸単位からなるロウである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも一の極性の変性ロウが、本質的にC26-C28アルファオレフィン単位と無水マレイン酸単位からなるロウである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも一のブロックコポリマーをさらに含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも一のブロックコポリマーが、A-Bポリマー又はA-B-Aポリマーであり、Aが硬質セグメントを表し、Bが軟質セグメントを表す、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
ポリマーがポリスチレンを含有する、請求項8に記載のポリマー。
【請求項10】
アルキルシルセスキオキサン樹脂をさらに含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
アルキルシルセスキオキサン樹脂をさらに含有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
睫に請求項1に記載の組成物を適用することを含む、睫をメークアップする方法。
【請求項13】
唇に請求項1に記載の組成物を適用することを含む、唇をメークアップする方法。
【請求項14】
睫に請求項7に記載の組成物を適用することを含む、睫をメークアップする方法。
【請求項15】
唇に請求項7に記載の組成物を適用することを含む、唇をメークアップする方法。

【公表番号】特表2011−507964(P2011−507964A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540850(P2010−540850)
【出願日】平成20年12月23日(2008.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/088090
【国際公開番号】WO2009/086338
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】