極端紫外光源装置
【課題】LPP式EUV光源装置において、EUVコレクタミラーのスパッタ量を正確に反映させることにより、ミラー交換の時期を適切に判断できるようにする。
【解決手段】このEUV光源装置は、真空チャンバ内に配置され、プラズマから発生したイオンを検出して、そのイオン量を表す検出信号を出力するイオン検出器と、該イオン検出器から出力された検出信号に基づいて、イオン量を積算して積算値を算出する計算部と、該計算部によって算出された積算値が所定の基準値に至った場合に、集光ミラーの交換時期又は修理時期を表す判定信号を出力する判定部とを含む。
【解決手段】このEUV光源装置は、真空チャンバ内に配置され、プラズマから発生したイオンを検出して、そのイオン量を表す検出信号を出力するイオン検出器と、該イオン検出器から出力された検出信号に基づいて、イオン量を積算して積算値を算出する計算部と、該計算部によって算出された積算値が所定の基準値に至った場合に、集光ミラーの交換時期又は修理時期を表す判定信号を出力する判定部とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光機の光源として用いられる極端紫外(EUV:extreme ultra violet)光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体プロセスの微細化に伴って光リソグラフィも微細化が急速に進展しており、次世代においては、100〜70nmの微細加工、更には50nm以下の微細加工が要求されるようになる。そのため、例えば、50nm以下の微細加工の要求に応えるべく、波長13nm程度のEUV光源と縮小投影反射光学系(catadioptric system)とを組み合わせた露光機の開発が期待されている。
【0003】
EUV光源としては、レーザビームをターゲットに照射することによって生成するプラズマを用いたLPP(laser produced plasma:レーザ励起プラズマ)光源(以下において、「LPP式EUV光源」ともいう)と、放電によって生成するプラズマを用いたDPP(discharge produced plasma)光源と、軌道放射光を用いたSR(synchrotron radiation)光源との3種類がある。これらの内でも、LPP光源は、プラズマ密度をかなり大きくできるので黒体輻射に近い極めて高い輝度が得られ、ターゲット物質を選択することにより必要な波長帯のみの発光が可能であり、ほぼ等方的な角度分布を持つ点光源であるので光源の周囲に電極等の構造物がなく、2πsteradianという極めて大きな捕集立体角の確保が可能であること等の利点から、数十ワット以上のパワーが要求されるEUVリソグラフィ用の光源として有力であると考えられている。
【0004】
図10は、LPP式EUV光源の一般的な構成を示す模式図である。このEUV光源は、真空チャンバ100と、ターゲット生成装置101と、噴射ノズル102と、レーザ発振器103と、集光光学系104と、EUVコレクタミラー105と、ターゲット回収装置106とを含んでいる。真空チャンバ100には、励起用のレーザ光109を真空チャンバ100内に導入するための窓107と、生成されたEUV光110の露光機への導出ポート108とが設けられている。なお、EUV光110の出力先である露光機も、真空(又は減圧)下に設置されている。また、EUVコレクタミラー105の反射面には、波長が13.5nm付近のEUV光を選択的に反射するために、例えば、モリブデン及びシリコンを交互に積層した膜(Mo/Si多層膜)が形成されている。
【0005】
ターゲット生成装置101によって生成されたターゲット物質を噴射ノズル102から真空チャンバ100内に噴射することにより、ドロップレット(液滴)又はジェット状のターゲット111が形成される。このターゲット111に向けて、レーザ発振器103から射出したレーザ光109を、集光光学系104を介して集光して照射することにより、プラズマ112が発生する。このプラズマから発生した光の内の波長13.5nmのEUV光110が、EUVコレクタミラー105によって集光反射され、導出ポート108を通って露光機の方向に導かれる。
【0006】
ところで、このようなLPP式EUV光源においては、プラズマ発生の際に生じるデブリが問題となっている。EUV光源におけるデブリとは、主に、高いエネルギーを有する高速イオンや中性粒子等の飛散粒子のことである。デブリがEUVコレクタミラー105の反射面に付着したり、その反射面に形成された多層膜をスパッタして消失させることにより、反射率の低下や、反射率の均一性の低下を招いてしまう。このようにEUVコレクタミラーが劣化することにより、そのEUV光が利用される露光機において、半導体露光処理等に必要なレベルの光エネルギーや光品位を得ることが困難になってしまう。
【0007】
そのため、デブリの発生自体を抑制する方法や、デブリがEUVコレクタミラーに付着したり、多層膜をスパッタリングするのを防止するための様々な提案が為されている。しかしながら、そのような工夫によってEUVコレクタミラーの劣化速度を遅延させることは可能であるが、劣化を完全になくすことはできない。そのため、EUVコレクタミラーがいずれ劣化することを考慮して、EUVミラーを新品に交換する必要があり、交換すべき妥当な時期を判断しなくてはならない。
【0008】
関連する技術として、特許文献1には、プラズマを発生することにより、EUV光を発生させるEUV光源における消耗品管理方法であって、消耗品の残量もしくは寿命をモニタして、発光可能量を推定することを特徴とする消耗品管理方法が開示されている(第2頁)。この消耗品管理方法においては、モニタ手段として、消耗品の交換時から発光数をカウントすることにより、発光可能量を推測している。具体的には、EUVコレクタミラーの交換後、発光カウント数が所定数に達したとき、又は、EUVコレクタミラーの交換直後に比較してEUV光の強度検出値が所定値(例えば、10%)だけ低下したときが、EUVコレクタミラーの交換時期とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−111454号公報(第2、6頁)
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】グルンロウ(Grunrow)等、「EUVエンジニアリング・テスト・スタンドにおける光汚染のレート及びメカニズム(Rate and mechanism of optic contamination in the EUV engineering test stand)」、SPIE会報(Proceeding of SPIE)、第5037巻、第418〜428頁、2003年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示されているように、EUV光の発光カウント数や、EUV光の強度検出値のみに基づいてEUVコレクタミラーの交換時期を推測するのは困難と考えられる。その理由は次の通りである。
図11は、非特許文献1から引用したグラフであり、EUVコレクタミラーの反射面に形成されているMo/Si多層膜の層数と、EUVコレクタミラーの反射率との関係を示している。図11に示すように、多層膜の層数(横軸)が20層以下になると、反射率(縦軸)が大きく低下するようになる。このことから、デブリのスパッタリングによる多層膜の消失が、EUVコレクタミラーの寿命に大きな影響を及ぼすと言える。
【0012】
また、図12は、プラズマから発生した高速イオンや中性粒子による金(Au)のエロージョン・レート(erosion rate、或いは、1Mパルスあたりのスパッタ量)、及び、プラズマから発生した1Mパルスあたりのイオン量と、13.5nmを中心波長とする2%の帯域幅におけるEUV光のパルスエネルギー(EUVパルスエネルギー)との関係を示している。これらの関係は、本願発明者が実測により得たものである。この計測において、スパッタリング量の評価には、QCM(quartz crystal microbalance:水晶振動子質量計)を用いた。QCMとは、水晶振動子の共振周波数の変化に基づいて、センサ表面に形成されたサンプル膜(金)の膜厚を、オングストローム(Å)以下の精度でリアルタイムに計測できる検出器のことである。このQCMを用いることにより、プラズマからから飛散したイオンによる金膜におけるスパッタ量をリアルタイムに算出した。また、イオン量の検出には、ファラデーカップを用いた。ファラデーカップとは、イオン等の荷電粒子を金属製のカップに入射させて電流値を計測することによりイオン量を検出する装置のことである。
【0013】
図12に示すように、エロージョン・レートは、EUVパルスエネルギーの増加に伴い、ほぼ線形に増加している。また、イオン量についても同様の傾向が見られる。これより、1ショットあたりのEUVパルスエネルギーが増加に伴ってイオン量も増加するので、スパッタ量も同様の傾向で増加するものと考えられる。
そのため、単純に発光数のみをカウントすることによってミラー交換時期を判断する場合には、そのような1ショットあたりのEUVパルスエネルギー又はイオン量の変化に伴うスパッタ量の変化に対応することができない。
【0014】
また、EUVコレクタミラーによって集光されたEUVパルスエネルギーは、EUVコレクタミラーの劣化だけでなく、それ以外の様々な要因によっても低下する。具体的な要因としては、例えば、ターゲットの不具合(位置、サイズ、速度変化等)、レーザの不具合(出力低下、ビーム品位の悪化等)、レーザ光伝播光学系の不具合(光学素子の劣化、位置制御機構の不具合等)、レーザ光の集光光学系の不具合(光学素子の劣化、位置制御機構の不具合等)、EUVパルスエネルギー計測系の不具合が挙げられる。そのため、特許文献1の第6頁に開示されているように、集光されたEUVパルス(集光EUVパルス)のエネルギー強度を検出し、その検出値がEUVコレクタミラーの交換直後に比較して10%低下したとしても、その原因がEUVコレクタミラーの劣化によるものかどうかを判断することは困難である。即ち、集光EUVパルスエネルギーを検出するだけでは、EUVコレクタミラーの劣化を理由とするミラー交換時期を推測又は判断することはできない。さらに、集光EUVパルスを損失なしに計測することは困難なので、露光機において露光光として用いられる集光EUVパルスを常時計測することは不適切である。
【0015】
また、一般に、EUVコレクタミラーは数十〜数百層(例えば、300層)からなる多層膜によって形成されるので、スパッタにより多層膜が徐々に消失し、層数が十分な反射率が得られる数を下回った時点で、突然反射率が大きく低下する場合がある(例えば、図11においては20層以下)。そのため、EUVパルスエネルギーとスパッタ量との関係を考慮することなく、発光カウント数や集光EUVパルスエネルギーの強度低下のみを基準としてEUVコレクタミラーの交換時期を推測又は判断することは実用的でない。
【0016】
そこで、上記の問題点に鑑み、本発明は、LPP式EUV光源装置において、EUVコレクタミラーのスパッタ量を正確に反映させることにより、ミラー交換の時期を適切に判断できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明の1つの観点に係る極端紫外光源装置は、真空チャンバ内に供給されたターゲット物質にレーザ光を照射することにより該ターゲットを励起させてプラズマを発生させ、該プラズマから放射される極端紫外光を集光ミラーにより集光して出力するレーザ励起プラズマ方式の極端紫外光源装置であって、真空チャンバ内に配置され、プラズマから発生したイオンを検出して、そのイオン量を表す検出信号を出力するイオン検出器と、該イオン検出器から出力された検出信号に基づいて、イオン量を積算して積算値を算出する計算部と、該計算部によって算出された積算値が所定の基準値に至った場合に、集光ミラーの交換時期又は修理時期を表す判定信号を出力する判定部とを具備する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、EUVコレクタミラーのスパッタ量と相関のある、プラズマから発生したイオンの量の積算値に基づいてミラー交換時期を算出するので、種々の条件により1パルスあたりのEUVエネルギーが変化した場合においても、正確にミラー交換又は修理時期を推測又は判断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るEUV光源装置の構成を示す模式図である。
【図2】EUVパルスエネルギー、イオン量、及び、スパッタ量を計測する実験を行うための装置の構成を示す模式図である。
【図3】センサ表面の膜厚とEUVパルスエネルギーの総量との関係を示す図である。
【図4】センサ表面の膜厚とイオン総量との関係を示す図である。
【図5】1パルスあたりのイオン量とEUVパルスエネルギーとの関係を示す図である。
【図6】EUVパルスエネルギー、イオン量、及び、スパッタ量の相関を実測するための装置の構成を示す模式図である。
【図7】EUVパルスエネルギー、イオン量、及びスパッタ量の相関を実測するための装置の別の構成を示す模式図である。
【図8】励起用レーザとしてYAGレーザ及びCO2レーザを使用した場合におけるEUVパルスエネルギーの総量とスパッタ量との相関を示す図である。
【図9】図1に示す制御装置におけるデータ処理を説明するための図である。
【図10】LPP式EUV光源の一般的な構成を示す模式図である。
【図11】EUVコレクタミラーの反射面に形成されているMo/Si多層膜の層数と、EUVコレクタミラーの反射率との関係を示す図である。
【図12】エロージョン・レート及びイオン量と、EUVパルスエネルギーとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る極端紫外(EUV)光源装置を示す模式図である。このEUV光源装置は、LPP(レーザ励起プラズマ)方式を採用しており、露光機用の光源として用いられる。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係るEUV光源装置は、EUV光の生成が行われる真空チャンバ(EUV光生成チャンバ)10と、ターゲット生成装置11と、噴射ノズル12と、レーザ発振器13と、集光光学系14と、EUVコレクタミラー(集光ミラー)15と、ターゲット回収装置16と、EUV光検出部20と、イオン検出器21と、スパッタ量検出器22と、制御装置30とを含んでいる。真空チャンバ10には、ターゲット(標的)1を励起してプラズマ2を発生させるためのレーザ光(励起用レーザ光)3を導入する窓17と、生成されたEUV光4の露光機への導出ポート18とが設けられている。なお、EUV光4の出力先である露光機も、真空チャンバ10内と同様の真空(又は減圧)下に設置されている。
【0022】
ターゲット生成装置11は、ターゲット物質を所望の状態にして噴射ノズル12に供給する。例えば、液体キセノン(Xe)をターゲットとして用いる場合には、キセノンガスを冷却することにより液化されたキセノンが、噴射ノズル12に供給される。また、錫をターゲット物質として用いる場合には、固体の錫を加熱することにより液化された錫や、錫の微粒子を含む水溶液等が、噴射ノズル12に供給される。
【0023】
噴射ノズル12は、供給されたターゲット物質を真空チャンバ10内に噴射する。ターゲット1は、噴流(ジェット)の状態であっても良いし、図1に示すように、液滴(ドロップレット)の状態であっても良い。後者の場合には、噴射ノズル12を所定の周波数で振動させるための振動機構(例えば、PZT振動子)が設けられる。さらに、噴射されたターゲット1が励起用レーザ光3の照射位置を通過するように噴射ノズル12の位置を調節する位置調節機構を設けても良い。
レーザ発振器13は、レーザ発振を行うことにより、ターゲット1を照射するための励起用のレーザ光3を射出する。集光光学系14は、レーザ発振器13から射出したレーザ光3を集光して、窓17を介してターゲット1に照射させる。
【0024】
EUVコレクタミラー15は、凹状の反射面を有しており、プラズマから発生した光の内の所定の波長成分(例えば、13.5nm±0.135nmのEUV光)を反射して、露光機の方向に集光する。そのために、EUVコレクタミラー15の反射面には、そのような波長成分を選択的に反射するための多層膜(例えば、Mo/Si多層膜)が形成されている。多層膜の層数は、一般的には数十〜数百程度である。なお、EUVコレクタミラー15には、レーザ光3を通過させるための空孔が形成されている。
【0025】
ターゲット回収装置16は、噴射ノズル12から噴射されたにもかかわらず、レーザ光3が照射されずにプラズマ発生に寄与しなかったターゲットを回収する。それにより、真空チャンバ10内の真空度の低下(圧力上昇)、及び、EUVコレクタミラー15や窓17等の汚染を防止している。
【0026】
このようなEUV光源装置において、ターゲット1を形成すると共に、レーザ発振を行ってレーザ光3をターゲット1に照射させることにより、プラズマ2が発生する。このプラズマ2から放射された光には、様々な波長成分が様々なエネルギーレベルで含まれている。その内の所定の波長成分(EUV光)が、EUVコレクタミラー15によって露光機への導出ポート18の方向に集光反射される。このようにして生成されたEUV光が、露光機において露光光として利用される。
【0027】
EUV光検出部20は、EUVコレクタミラー15等の光学素子を介することなくプラズマ2の発光光を直接受光することにより、EUV光の発光量を検出するためのモニタである。EUV光検出部20は、多層膜ミラー20aと、ジルコニウム(Zr)フィルタ20bと、フォトダイオード20cとを含んでいる。多層膜ミラー20aには、例えば、13.5nm近傍の波長に対して反射率が高いMo/Si多層膜が形成されている。また、ジルコニウムフィルタ20bは、波長が20nm以上の光に対してはほとんど透過率を有しないフィルタである。さらに、フォトダイオード20cは、入射した光の光量に応じた検出信号を出力する。フォトダイオード20cとしては、例えば、米国IRD社製のAXUVシリーズが用いられる。このシリーズは、EUV領域の波長に対する量子効率が保証されたフォトダイオードである。
【0028】
このようなEUV光検出部20は、EUVコレクタミラー15への入射光路及び反射光路を除く領域に配置されている。それにより、露光機に出力されるEUV光にエネルギー損失を与えることがなくなると共に、プラズマ2の発光点から放射されたEUV光を直接受光するので、EUVコレクタミラー15の特性変化の影響を受けることなく、プラズマ発光点におけるEUV光の光量を検出することができる。なお、本願において、プラズマ発光点における発光量又は光エネルギーとは、EUVコレクタミラー15を介することなく、プラズマから直接受光される光の発光量又はエネルギーのことをいう。
【0029】
EUV光が生成されている間には、プラズマ2から放射された光の一部がEUV光検出部20に入射する。この光が、Mo/Si多層膜ミラー20aによって反射され、ジルコニウムフィルタ20bを透過する。それにより、所望の波長成分(波長が13.5nm±0.135nmの領域のEUV光)がフォトダイオード20cに入射する。フォトダイオード20cは、入射したEUV光の光量に応じた検出信号を出力する。
【0030】
イオン検出器21は、プラズマ2から発生するイオンの量を検出するために設けられており、例えば、ファラデーカップを含んでいる。
スパッタ量検出器22は、プラズマから発生したイオン等によるスパッタリング量を検出するために設けられており、例えば、QCM(quartz crystal microbalance:水晶振動子質量計)を含んでいる。QCMは、センサ表面に形成された金(Au)等のサンプル膜の厚さを、水晶振動子の共振周波数の変化に基づいて、オングストローム(Å)以下の精度でリアルタイムに計測する装置である。
【0031】
このようなスパッタ量検出器22を用いることにより、EUVコレクタミラー15に形成されている多層膜の膜厚の変化を間接的に検出する事が可能である。以下に、その検出原理について説明する。
スパッタ量検出器22のセンサ表面の膜とEUVコレクタミラー15の多層膜との大きな相違点は、膜の材質と設置位置との2点である。例えば、同一のエネルギーを有するイオンが衝突したとしても、スパッタ対象となる物質の種類に応じてスパッタ量は異なってくる。そこで、QCMを用いて多層膜のスパッタ量を求める場合には、センサ表面に形成される物質(例えば、金、Mo、Si等)と、EUVコレクタミラー15の反射面に形成される多層膜(例えば、Mo/Si多層膜)とのスパッタ比率を予め求めておく。例えば、アンダーソン(Anderson)等、「積層コンデンサ光学におけるプラズマによる侵食の研究(Investigation of plasma-induced erosion of multilayer condenser optics)」(SPIE会報(Proceeding of SPIE)、第5751巻、第128−139頁)の表1には、金とモリブデンとシリコンのスパッタ量(エロージョン・レート)の比率(Au:Mo:Si=1:0.26:0.19)が示されている(第133頁)。
【0032】
一方、設置位置に関しては、スパッタの主な原因となるのはプラズマから発生する高速イオンであるが、そのイオンの分布は空間的に一様でない。従って、膜の設置位置に応じてスパッタ量が異なってくる。そこで、異なる位置に設置されるスパッタ量検出器22のセンサ表面の膜とEUVコレクタミラー15の多層膜との間におけるスパッタ比率を予め求めておく。なお、スパッタ比率を求める具体的な方法については後で説明する。
【0033】
そして、QCM(スパッタ量検出器22)から出力された検出信号が表すスパッタ量(例えば、金の膜厚を示す)を、表面物質の違いに基づくスパッタ比率と設置位置の違いに基づくスパッタ比率とを用いて換算することにより、EUVコレクタミラー15の多層膜のスパッタ量が求められる。
【0034】
制御装置30は、例えば、パーソナルコンピュータを含んでおり、EUV光検出部20や、イオン検出器21や、スパッタ量検出器22から出力された検出信号に基づいて、EUVコレクタミラー15の交換時期を推測又は判断するための演算処理を行う。この演算処理は、例えば、プログラムに従って動作するCPUによって制御される。
なお、図1には、EUV光検出部20と、イオン検出器21と、スパッタ量検出器22とが示されているが、EUVコレクタミラー15の交換時期を判断する際には、それらのの内のいずれかが備えられていれば良い。
【0035】
このようなEUV光源装置は、プラズマ発光点におけるEUV光のエネルギー又はプラズマから発生したイオン量、又は、スパッタ量検出器を用いて取得されたスパッタ量に基づいて、EUVコレクタミラー15の交換時期を高い精度で推測又は判断することを特徴としている。そこで、それらの量に基づいてミラーの交換時期を判断できる原理について、図2〜図5を参照しながら説明する。
【0036】
図2は、本願発明者によって行われた実験において用いられた装置の構成を示す模式図である。この装置は、真空チャンバ10(窓17を含む)〜ターゲット回収装置16を含む一般的なEUV光源装置からEUVコレクタミラー15(図1参照)を取り外し、EUV光検出部20、イオン検出器21、及び、スパッタ量測定用QCM23を設けたものである。イオン検出器21及びスパッタ量測定用QCM23は、通常EUVコレクタミラー15が設置される位置に、プラズマについて対称となるように配置されている。
【0037】
本願発明者は、図2に示す装置を用いることにより、レーザ光3を1ショット射出する毎にほぼ同時に得られるEUVパルスエネルギー(プラズマから放射されたEUV光のエネルギー)、イオン量、及び、スパッタ量測定用QCM23のセンサ表面におけるスパッタ量を計測した。図3〜図5は、それらの実測値に基づいて得られた相関を示している。
【0038】
図3は、スパッタ量測定用QCM23のセンサ表面に形成された膜の厚さ(nm)と、EUVパルスエネルギーの総量(積分値)との関係を示している。EUVパルスエネルギーは、0.3mJ、0.7mJ、及び、1.4mJの2種類について測定した。ここで、膜厚とスパッタ量とは係数がマイナス1の線形関係にあるので、図3は、スパッタ量とEUVパルスエネルギー総量との関係を間接的に表していると言える。
【0039】
図3に示すように、EUVパルスエネルギーの総量の増加に伴って膜厚がほぼ線形に減少していることから、スパッタ量は、エネルギー総量の増加に伴って増加することがわかる。この相関関係は、各EUVパルスエネルギーの大きさ(0.3mJ、0.7mJ、及び、1.4mJ)には依存していない。従って、この相関関係を利用することにより、各EUVパルスエネルギーの大きさによらず、その総量のみから、EUVコレクタミラーのスパッタ量を求めることができる。ここで、EUVパルスエネルギーはユーザの要求や調整等の条件により変化してしまう場合があるが、EUVパルスエネルギーの総量さえ把握しておけば、スパッタ量が反映されたEUVコレクタミラーの交換時期を正確に判断することが可能となる。
【0040】
図4は、スパッタ量測定用QCM23のセンサ表面に形成された膜の厚さ(nm)とイオン総量(イオン量の積分値)との関係を示している。イオン総量は、EUVパルスエネルギーの大きさが0.3mJ、0.7mJ、及び、1.4mJの3種類について測定した。ここで、膜厚とスパッタ量とは係数がマイナス1の線形関係にあるので、図4は、スパッタ量とイオン総量との関係を間接的に表していると言える。なお、イオン量は、1価のイオンを1個として計測されたものである。従って、例えば、2価のイオンが1個検出された場合には、イオン量=2として出力される。
【0041】
図4に示すように、スパッタ量は、EUVパルスエネルギーの大きさ(0.3mJ、0.7mJ、及び、1.4mJの3種類)に依存することなく、イオン総量の増加に伴ってほぼ線形に増加している(図4においては、膜厚の減少によって示されている)。従って、この相関関係を利用することにより、各EUVパルスエネルギーの大きさによらず、イオンの総量のみから、EUVコレクタミラーのスパッタ量を求めることができ、それに基づいて、コレクタミラーの交換時期を正確に判断することが可能となる。
【0042】
図5は、1パルスあたりのイオン量(イオン数、縦軸)とEUVパルスエネルギー(mJ、横軸)との関係を示している。図5に示すように、イオン量とEUVパルスエネルギーとは非常に良い相関を示しており、EUVパルスエネルギーの変化に伴い、1パルスあたりのイオン量がほぼ線形に変化することがわかる。これより、EUVパルスエネルギー及びイオン量のいずれを用いても、EUVコレクタミラーの交換時期を正確に判断することができることが裏付けられる(図3及び図4参照)。
【0043】
次に、このような関係(図3〜図5)に基づいて、EUVコレクタミラーの交換時期を判断するために必要な情報を取得する方法について説明する。
図1に示すEUV光源装置において、EUVコレクタミラー15のスパッタ量を計測するためには、次の3つの相関の内の少なくとも1つを実測により予め求めておく必要がある。
(1)EUV光検出部20によって検出されるEUV光のエネルギー総量と、EUVコレクタミラー15のスパッタ量との関係(EUVパルスエネルギー総量対スパッタ量)
(2)イオン検出器21によって検出されるイオンの総量と、EUVコレクタミラー15のスパッタ量との関係(イオン総量対スパッタ量)
(3)スパッタ量検出器22によって検出されるセンサ表面の膜のスパッタ量と、EUVコレクタミラー15のスパッタ量との関係(センサ対ミラーのスパッタ量)
【0044】
図6は、上記3つの相関(1)〜(3)を実測するための装置の構成を示す模式図である。この装置は、真空チャンバ10(窓17を含む)〜ターゲット回収装置16を含む一般的なEUV光源装置からEUVコレクタミラー15(図1参照)を取り外し、それに替えて、EUVコレクタミラー15の設置範囲に複数のEUV多層膜サンプル40を配置したものである。EUV多層膜サンプル40には、EUVコレクタミラー15に形成されているものと同じ多層膜(例えば、300層のMo/Si多層膜)が形成されている。この多層膜の層数は、相関関係を計測できる程度の数で良い。このようなサンプルを用いるのは、サンプル量を実測するために、大型で高価なEUVコレクタミラーを使用する必要はないからである。
【0045】
図6に示す装置においてプラズマ2を発生させることによりEUV光を放射させ、その時のEUVパルスエネルギー、イオン量、及び、スパッタ量検出器22のセンサ表面のスパッタ量を検出し、それらの総量を算出する。また、一方で、複数のEUV多層膜サンプル40のスパッタ量を計測する。このスパッタ量については、プラズマ2の発生を停止した後でEUV多層膜サンプル40を真空チャンバ10から取り出して、AFM(原子間力顕微鏡)やSEM(走査電子顕微鏡)やTEM(透過電子顕微鏡)等を用いて計測しても良いし、EUV多層膜サンプル40を真空チャンバ10内に設置した状態のまま、レーザ干渉計等を用いて計測しても良い。或いは、それ以外の公知の計測方法を用いても良い。
そのようにして実測された値に基づいて、上記相関(1)〜(3)が得られる。
【0046】
図7は、上記3つの相関(1)〜(3)を実測するために用いられる装置の別の構成を示す模式図である。この装置においては、図6に示す装置における複数のEUV多層膜サンプル40の替わりに、複数の相関測定用QCM41が配置されている。このような装置においてプラズマ2を発生させることによりEUV光を放射させ、その時のEUVパルスエネルギー、イオン量、スパッタ量検出器22におけるスパッタ量、及び、相関測定用QCM41におけるスパッタ量を検出し、それらの総量を求める。さらに、相関測定用QCM41におけるスパッタ量を、センサ表面の膜材料(Au)とMo/Si多層膜とのスパッタリング比率(上記アンダーソンらの文献の表1参照)に基づいて、EUVコレクタミラー15におけるスパッタ量に換算する。それにより、上記相関(1)〜(3)が得られる。
【0047】
ここで、図6及び図7に示すように、EUV多層膜サンプル40や相関測定用QCM41を複数個用いるのは、EUVコレクタミラー15におけるスパッタ量の空間的な分布を把握するためである。即ち、複数箇所におけるEUV多層膜サンプル40等の計測値と検出機器20〜22の計測値との相関を予め求めておくことにより、検出機器20〜22の計測値のみに基づいて、EUVコレクタミラー15の複数箇所におけるスパッタ量に関する情報を得ることが可能となる。それにより、例えば、EUVコレクタミラー15におけるスパッタ量の空間的分布が一様でない場合には、EUVコレクタミラー15全体を交換する前に、EUVコレクタミラー15のスパッタ量が多い箇所から優先的に補修したり、部分的に交換することも可能となる。
【0048】
ここで、このような相関の特性は、レーザ発振器13の種類やターゲット物質に応じて変化する。例えば、図8は、励起用レーザとしてNd:YAGレーザ及びCO2レーザを使用した場合におけるEUVパルスエネルギー総量とスパッタ量との関係を示している。従って、このような相関は、露光用のEUV光を生成する際に使用される機器やターゲット物質等の条件に応じて取得しておくことが望ましい。
【0049】
また、EUV光検出器20、イオン検出器21、及び、スパッタ量検出器22の配置は、図6及び図7に示す位置には限定されない。即ち、上記の相関を求めることができる計測値を得ることができれば、真空チャンバ10内のいずれの位置に配置しても良い。その際には、それらの検出機器20〜22をEUVコレクタミラー15によって集光反射されるEUV光の光路(入射光路及び反射光路)以外に配置することが好ましい。それにより、露光光として利用されるEUV光への影響を抑えることができるので、エネルギー損失なく、常時計測することが可能となるからである。
【0050】
次に、本発明の一実施形態に係るEUV光源装置においてEUVコレクタミラー15の交換時期を判断するためのデータ処理について、図1及び図9を参照しながら説明する。このデータ処理は、図1に示す制御装置30において行われる。図9に示すように、制御装置30は、A/D変換器31と、計算部32と、判定部33と、記憶部34とを含んでいる。この内の記憶部34には、予め取得された上記の相関(1)及び/又は(2)及び/又は(3)(即ち、EUVエネルギー総量対スパッタ量、及び/又は、イオン総量対スパッタ量、及び/又は、センサ膜対EUVコレクタミラー多層膜のスパッタ量)と、初期状態におけるEUVコレクタミラー15の多層膜の層数(LMAX)に対応する多層膜の厚さ(nm)と、EUVコレクタミラー15においてEUV光を集光反射するために必要な反射率を確保できる多層膜の層数(LMIN)に対応する多層膜の厚さ(nm)とが記憶されている。例えば、初期状態における多層膜の層数は300層であり、反射率を確保できる層数は、少なくとも20〜30層である。
【0051】
(実施例1)EUVパルスエネルギーの検出信号に基づいてデータ処理を行う場合
図1に示すEUV光源装置においてEUV光の生成を開始することにより、プラズマ2の発生タイミングに応じて、EUV光検出部20からEUVパルスエネルギーを表す検出信号が出力される。この検出信号がA/D変換器31においてディジタル信号に変換されることにより、EUVパルスエネルギーEP1、EP2、…EPi、…を表す検出データが順次生成される(iはプラズマ発生回数)。これらの検出データは、計算部32に入力されて積算される。それにより、EUVパルスエネルギーの積算値(総量値)ETOTAL=EP1+EP2+…=ΣEPi(i=1、2、…)が算出される。この総量値ETOTALは、検出データが入力される毎に算出されて、判定部33に出力される。
【0052】
一方、判定部33は、予め記憶部34に記憶されている相関(1)(EUVパルスエネルギー総量対スパッタ量)に基づいて、層数(LMAX−LMIN)に相当する厚さ(即ち、スパッタ量)に対応するエネルギー値ETHを取得する。このエネルギー値ETHが、交換時期の基準値として設定される。或いは、予めEUVコレクタミラー15のスパッタ量と反射率との関係が得られている場合には、判定部33は、必要な反射率が最低限確保されるときのスパッタ量に対応するエネルギー値を、交換時期基準値ETHとしても良い。このような交換時期基準値ETHは、EUVコレクタミラー15が新しいものに交換される毎に算出される。
【0053】
そして、判定部33は、計算部32から出力されたEUVパルスエネルギーの総量値ETOTALを交換時期基準値ETHと比較し、ETOTAL≧ETHとなったときにEUVコレクタミラー15の交換時期を表す判定信号を出力する。
【0054】
(実施例2)イオンの検出信号に基づいてデータ処理を行う場合
図1に示すEUV光源装置においてEUV光の生成を開始することにより、プラズマ2の発生タイミングに応じて、イオン検出器21からイオン量を表す検出信号が出力される。この検出信号がA/D変換器31においてディジタル信号に変換されることにより、イオン量IP1、IP2、…、IPiを表す検出データが順次生成される(iはプラズマ発生回数)。これらの検出データは、計算部32に入力されて積算される。それにより、イオンの積算値(総量値)ITOTAL=IP1+IP2+…=ΣIPi(i=1、2、…)が算出される。この総量値ITOTALは、検出データが入力される毎に算出されて、判定部33に出力される。
【0055】
一方、判定部33は、予め記憶部34に記憶されている相関(2)(イオン総量対スパッタ量)に基づいて、層数(LMAX−LMIN)に相当する厚さ(スパッタ量)に対応するイオン量ITHを取得する。このイオン量ITHが、交換時期の基準値として設定される。或いは、予めEUVコレクタミラー15のスパッタ量と反射率との関係が得られている場合には、判定部33は、必要な反射率が最低限確保されるときのスパッタ量に対応するイオン量を、交換時期基準値ITHとしても良い。このような交換時期基準値ITHは、EUVコレクタミラー15が新しいものに交換される毎に算出される。
【0056】
そして、判定部33は、計算部32から出力されたイオンの総量値ITOTALを交換時期基準値ITHと比較し、ITOTAL≧ITHとなったときにEUVコレクタミラー15の交換時期を表す判定信号を出力する。
【0057】
(実施例3)スパッタ量の検出信号に基づいてデータ処理を行う場合
図1に示すEUV光源装置においてEUV光の生成を開始することにより、プラズマ2の発生タイミングに応じて、スパッタ量検出器22からセンサ表面の膜厚を表す検出信号が定期的に出力される。この検出信号は、A/D変換器31においてディジタル信号に変換され、計算部32に入力される。計算部32においては、入力された検出データに基づいて、初期状態におけるセンサの膜厚に対する変化量である膜厚変化総量TTOTALが算出される。このセンサ膜厚変化総量TTOTALは、検出データが入力される毎に算出されて、判定部33に出力される。
【0058】
一方、判定部33は、予め記憶部34に記憶されている相関(3)(センサ膜対EUVコレクタミラー多層膜のスパッタ量)に基づいて、層数(LMAX−LMIN)に相当する厚さ(即ち、スパッタ量)に対応するセンサ膜厚変化量TTHを取得する。このセンサ膜厚変化量TTHが、交換時期の基準値として設定される。或いは、予めEUVコレクタミラー多層膜のスパッタ量と反射率との関係が得られている場合には、判定部33は、必要な反射率が最低限確保されるときのスパッタ量に対応するセンサ膜厚変化量を、交換時期基準値TTHとしても良い。このような交換時期基準値TTHは、EUVコレクタミラー15が新しいものに交換される毎に算出される。
【0059】
そして、判定部33は、計算部32から出力されたセンサ膜厚変化総量TTOTALを交換時期基準値TTHと比較し、TTOTAL≧TTHとなったときにEUVコレクタミラー15の交換時期を表す判定信号を出力する。
【0060】
ここで、EUVコレクタミラー15におけるスパッタ量の空間的な分布が予め得られている場合には、判定部33は、EUVコレクタミラー15内の複数箇所について判定を行い、それらの箇所ごとに、修理時期を表す判定信号を出力するようにしても良い。
【0061】
以上説明した実施例1〜3において、交換時期基準値ETH及びITH及びTTHは種々の条件によって異なってくるので、多層膜の種類やEUV光の利用目的(露光機の種類)等に応じて相関(1)〜(3)を求めて、それらの基準値を適切に設定することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、露光機の光源として用いられる極端紫外(EUV:extreme ultra violet)光源装置に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1、111…ターゲット、2、112…プラズマ、3、109…レーザ光、4、110…EUV光、10、100…真空チャンバ、11、101…ターゲット生成装置、12、102…噴射ノズル、13、103…レーザ発振器、14、104…集光光学系、15、105…EUVコレクタミラー、16、106…ターゲット回収装置、17、107…窓、18、108…導出ポート、20…EUV光検出部、21…イオン検出器、22…スパッタ量検出器、23…スパッタ量測定用QCM、30…制御装置、31…A/D変換器、32…計算部、33…判定部、34…記憶部、40…EUV多層膜サンプル、41…相関測定用QCM
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光機の光源として用いられる極端紫外(EUV:extreme ultra violet)光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体プロセスの微細化に伴って光リソグラフィも微細化が急速に進展しており、次世代においては、100〜70nmの微細加工、更には50nm以下の微細加工が要求されるようになる。そのため、例えば、50nm以下の微細加工の要求に応えるべく、波長13nm程度のEUV光源と縮小投影反射光学系(catadioptric system)とを組み合わせた露光機の開発が期待されている。
【0003】
EUV光源としては、レーザビームをターゲットに照射することによって生成するプラズマを用いたLPP(laser produced plasma:レーザ励起プラズマ)光源(以下において、「LPP式EUV光源」ともいう)と、放電によって生成するプラズマを用いたDPP(discharge produced plasma)光源と、軌道放射光を用いたSR(synchrotron radiation)光源との3種類がある。これらの内でも、LPP光源は、プラズマ密度をかなり大きくできるので黒体輻射に近い極めて高い輝度が得られ、ターゲット物質を選択することにより必要な波長帯のみの発光が可能であり、ほぼ等方的な角度分布を持つ点光源であるので光源の周囲に電極等の構造物がなく、2πsteradianという極めて大きな捕集立体角の確保が可能であること等の利点から、数十ワット以上のパワーが要求されるEUVリソグラフィ用の光源として有力であると考えられている。
【0004】
図10は、LPP式EUV光源の一般的な構成を示す模式図である。このEUV光源は、真空チャンバ100と、ターゲット生成装置101と、噴射ノズル102と、レーザ発振器103と、集光光学系104と、EUVコレクタミラー105と、ターゲット回収装置106とを含んでいる。真空チャンバ100には、励起用のレーザ光109を真空チャンバ100内に導入するための窓107と、生成されたEUV光110の露光機への導出ポート108とが設けられている。なお、EUV光110の出力先である露光機も、真空(又は減圧)下に設置されている。また、EUVコレクタミラー105の反射面には、波長が13.5nm付近のEUV光を選択的に反射するために、例えば、モリブデン及びシリコンを交互に積層した膜(Mo/Si多層膜)が形成されている。
【0005】
ターゲット生成装置101によって生成されたターゲット物質を噴射ノズル102から真空チャンバ100内に噴射することにより、ドロップレット(液滴)又はジェット状のターゲット111が形成される。このターゲット111に向けて、レーザ発振器103から射出したレーザ光109を、集光光学系104を介して集光して照射することにより、プラズマ112が発生する。このプラズマから発生した光の内の波長13.5nmのEUV光110が、EUVコレクタミラー105によって集光反射され、導出ポート108を通って露光機の方向に導かれる。
【0006】
ところで、このようなLPP式EUV光源においては、プラズマ発生の際に生じるデブリが問題となっている。EUV光源におけるデブリとは、主に、高いエネルギーを有する高速イオンや中性粒子等の飛散粒子のことである。デブリがEUVコレクタミラー105の反射面に付着したり、その反射面に形成された多層膜をスパッタして消失させることにより、反射率の低下や、反射率の均一性の低下を招いてしまう。このようにEUVコレクタミラーが劣化することにより、そのEUV光が利用される露光機において、半導体露光処理等に必要なレベルの光エネルギーや光品位を得ることが困難になってしまう。
【0007】
そのため、デブリの発生自体を抑制する方法や、デブリがEUVコレクタミラーに付着したり、多層膜をスパッタリングするのを防止するための様々な提案が為されている。しかしながら、そのような工夫によってEUVコレクタミラーの劣化速度を遅延させることは可能であるが、劣化を完全になくすことはできない。そのため、EUVコレクタミラーがいずれ劣化することを考慮して、EUVミラーを新品に交換する必要があり、交換すべき妥当な時期を判断しなくてはならない。
【0008】
関連する技術として、特許文献1には、プラズマを発生することにより、EUV光を発生させるEUV光源における消耗品管理方法であって、消耗品の残量もしくは寿命をモニタして、発光可能量を推定することを特徴とする消耗品管理方法が開示されている(第2頁)。この消耗品管理方法においては、モニタ手段として、消耗品の交換時から発光数をカウントすることにより、発光可能量を推測している。具体的には、EUVコレクタミラーの交換後、発光カウント数が所定数に達したとき、又は、EUVコレクタミラーの交換直後に比較してEUV光の強度検出値が所定値(例えば、10%)だけ低下したときが、EUVコレクタミラーの交換時期とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−111454号公報(第2、6頁)
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】グルンロウ(Grunrow)等、「EUVエンジニアリング・テスト・スタンドにおける光汚染のレート及びメカニズム(Rate and mechanism of optic contamination in the EUV engineering test stand)」、SPIE会報(Proceeding of SPIE)、第5037巻、第418〜428頁、2003年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示されているように、EUV光の発光カウント数や、EUV光の強度検出値のみに基づいてEUVコレクタミラーの交換時期を推測するのは困難と考えられる。その理由は次の通りである。
図11は、非特許文献1から引用したグラフであり、EUVコレクタミラーの反射面に形成されているMo/Si多層膜の層数と、EUVコレクタミラーの反射率との関係を示している。図11に示すように、多層膜の層数(横軸)が20層以下になると、反射率(縦軸)が大きく低下するようになる。このことから、デブリのスパッタリングによる多層膜の消失が、EUVコレクタミラーの寿命に大きな影響を及ぼすと言える。
【0012】
また、図12は、プラズマから発生した高速イオンや中性粒子による金(Au)のエロージョン・レート(erosion rate、或いは、1Mパルスあたりのスパッタ量)、及び、プラズマから発生した1Mパルスあたりのイオン量と、13.5nmを中心波長とする2%の帯域幅におけるEUV光のパルスエネルギー(EUVパルスエネルギー)との関係を示している。これらの関係は、本願発明者が実測により得たものである。この計測において、スパッタリング量の評価には、QCM(quartz crystal microbalance:水晶振動子質量計)を用いた。QCMとは、水晶振動子の共振周波数の変化に基づいて、センサ表面に形成されたサンプル膜(金)の膜厚を、オングストローム(Å)以下の精度でリアルタイムに計測できる検出器のことである。このQCMを用いることにより、プラズマからから飛散したイオンによる金膜におけるスパッタ量をリアルタイムに算出した。また、イオン量の検出には、ファラデーカップを用いた。ファラデーカップとは、イオン等の荷電粒子を金属製のカップに入射させて電流値を計測することによりイオン量を検出する装置のことである。
【0013】
図12に示すように、エロージョン・レートは、EUVパルスエネルギーの増加に伴い、ほぼ線形に増加している。また、イオン量についても同様の傾向が見られる。これより、1ショットあたりのEUVパルスエネルギーが増加に伴ってイオン量も増加するので、スパッタ量も同様の傾向で増加するものと考えられる。
そのため、単純に発光数のみをカウントすることによってミラー交換時期を判断する場合には、そのような1ショットあたりのEUVパルスエネルギー又はイオン量の変化に伴うスパッタ量の変化に対応することができない。
【0014】
また、EUVコレクタミラーによって集光されたEUVパルスエネルギーは、EUVコレクタミラーの劣化だけでなく、それ以外の様々な要因によっても低下する。具体的な要因としては、例えば、ターゲットの不具合(位置、サイズ、速度変化等)、レーザの不具合(出力低下、ビーム品位の悪化等)、レーザ光伝播光学系の不具合(光学素子の劣化、位置制御機構の不具合等)、レーザ光の集光光学系の不具合(光学素子の劣化、位置制御機構の不具合等)、EUVパルスエネルギー計測系の不具合が挙げられる。そのため、特許文献1の第6頁に開示されているように、集光されたEUVパルス(集光EUVパルス)のエネルギー強度を検出し、その検出値がEUVコレクタミラーの交換直後に比較して10%低下したとしても、その原因がEUVコレクタミラーの劣化によるものかどうかを判断することは困難である。即ち、集光EUVパルスエネルギーを検出するだけでは、EUVコレクタミラーの劣化を理由とするミラー交換時期を推測又は判断することはできない。さらに、集光EUVパルスを損失なしに計測することは困難なので、露光機において露光光として用いられる集光EUVパルスを常時計測することは不適切である。
【0015】
また、一般に、EUVコレクタミラーは数十〜数百層(例えば、300層)からなる多層膜によって形成されるので、スパッタにより多層膜が徐々に消失し、層数が十分な反射率が得られる数を下回った時点で、突然反射率が大きく低下する場合がある(例えば、図11においては20層以下)。そのため、EUVパルスエネルギーとスパッタ量との関係を考慮することなく、発光カウント数や集光EUVパルスエネルギーの強度低下のみを基準としてEUVコレクタミラーの交換時期を推測又は判断することは実用的でない。
【0016】
そこで、上記の問題点に鑑み、本発明は、LPP式EUV光源装置において、EUVコレクタミラーのスパッタ量を正確に反映させることにより、ミラー交換の時期を適切に判断できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明の1つの観点に係る極端紫外光源装置は、真空チャンバ内に供給されたターゲット物質にレーザ光を照射することにより該ターゲットを励起させてプラズマを発生させ、該プラズマから放射される極端紫外光を集光ミラーにより集光して出力するレーザ励起プラズマ方式の極端紫外光源装置であって、真空チャンバ内に配置され、プラズマから発生したイオンを検出して、そのイオン量を表す検出信号を出力するイオン検出器と、該イオン検出器から出力された検出信号に基づいて、イオン量を積算して積算値を算出する計算部と、該計算部によって算出された積算値が所定の基準値に至った場合に、集光ミラーの交換時期又は修理時期を表す判定信号を出力する判定部とを具備する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、EUVコレクタミラーのスパッタ量と相関のある、プラズマから発生したイオンの量の積算値に基づいてミラー交換時期を算出するので、種々の条件により1パルスあたりのEUVエネルギーが変化した場合においても、正確にミラー交換又は修理時期を推測又は判断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るEUV光源装置の構成を示す模式図である。
【図2】EUVパルスエネルギー、イオン量、及び、スパッタ量を計測する実験を行うための装置の構成を示す模式図である。
【図3】センサ表面の膜厚とEUVパルスエネルギーの総量との関係を示す図である。
【図4】センサ表面の膜厚とイオン総量との関係を示す図である。
【図5】1パルスあたりのイオン量とEUVパルスエネルギーとの関係を示す図である。
【図6】EUVパルスエネルギー、イオン量、及び、スパッタ量の相関を実測するための装置の構成を示す模式図である。
【図7】EUVパルスエネルギー、イオン量、及びスパッタ量の相関を実測するための装置の別の構成を示す模式図である。
【図8】励起用レーザとしてYAGレーザ及びCO2レーザを使用した場合におけるEUVパルスエネルギーの総量とスパッタ量との相関を示す図である。
【図9】図1に示す制御装置におけるデータ処理を説明するための図である。
【図10】LPP式EUV光源の一般的な構成を示す模式図である。
【図11】EUVコレクタミラーの反射面に形成されているMo/Si多層膜の層数と、EUVコレクタミラーの反射率との関係を示す図である。
【図12】エロージョン・レート及びイオン量と、EUVパルスエネルギーとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る極端紫外(EUV)光源装置を示す模式図である。このEUV光源装置は、LPP(レーザ励起プラズマ)方式を採用しており、露光機用の光源として用いられる。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係るEUV光源装置は、EUV光の生成が行われる真空チャンバ(EUV光生成チャンバ)10と、ターゲット生成装置11と、噴射ノズル12と、レーザ発振器13と、集光光学系14と、EUVコレクタミラー(集光ミラー)15と、ターゲット回収装置16と、EUV光検出部20と、イオン検出器21と、スパッタ量検出器22と、制御装置30とを含んでいる。真空チャンバ10には、ターゲット(標的)1を励起してプラズマ2を発生させるためのレーザ光(励起用レーザ光)3を導入する窓17と、生成されたEUV光4の露光機への導出ポート18とが設けられている。なお、EUV光4の出力先である露光機も、真空チャンバ10内と同様の真空(又は減圧)下に設置されている。
【0022】
ターゲット生成装置11は、ターゲット物質を所望の状態にして噴射ノズル12に供給する。例えば、液体キセノン(Xe)をターゲットとして用いる場合には、キセノンガスを冷却することにより液化されたキセノンが、噴射ノズル12に供給される。また、錫をターゲット物質として用いる場合には、固体の錫を加熱することにより液化された錫や、錫の微粒子を含む水溶液等が、噴射ノズル12に供給される。
【0023】
噴射ノズル12は、供給されたターゲット物質を真空チャンバ10内に噴射する。ターゲット1は、噴流(ジェット)の状態であっても良いし、図1に示すように、液滴(ドロップレット)の状態であっても良い。後者の場合には、噴射ノズル12を所定の周波数で振動させるための振動機構(例えば、PZT振動子)が設けられる。さらに、噴射されたターゲット1が励起用レーザ光3の照射位置を通過するように噴射ノズル12の位置を調節する位置調節機構を設けても良い。
レーザ発振器13は、レーザ発振を行うことにより、ターゲット1を照射するための励起用のレーザ光3を射出する。集光光学系14は、レーザ発振器13から射出したレーザ光3を集光して、窓17を介してターゲット1に照射させる。
【0024】
EUVコレクタミラー15は、凹状の反射面を有しており、プラズマから発生した光の内の所定の波長成分(例えば、13.5nm±0.135nmのEUV光)を反射して、露光機の方向に集光する。そのために、EUVコレクタミラー15の反射面には、そのような波長成分を選択的に反射するための多層膜(例えば、Mo/Si多層膜)が形成されている。多層膜の層数は、一般的には数十〜数百程度である。なお、EUVコレクタミラー15には、レーザ光3を通過させるための空孔が形成されている。
【0025】
ターゲット回収装置16は、噴射ノズル12から噴射されたにもかかわらず、レーザ光3が照射されずにプラズマ発生に寄与しなかったターゲットを回収する。それにより、真空チャンバ10内の真空度の低下(圧力上昇)、及び、EUVコレクタミラー15や窓17等の汚染を防止している。
【0026】
このようなEUV光源装置において、ターゲット1を形成すると共に、レーザ発振を行ってレーザ光3をターゲット1に照射させることにより、プラズマ2が発生する。このプラズマ2から放射された光には、様々な波長成分が様々なエネルギーレベルで含まれている。その内の所定の波長成分(EUV光)が、EUVコレクタミラー15によって露光機への導出ポート18の方向に集光反射される。このようにして生成されたEUV光が、露光機において露光光として利用される。
【0027】
EUV光検出部20は、EUVコレクタミラー15等の光学素子を介することなくプラズマ2の発光光を直接受光することにより、EUV光の発光量を検出するためのモニタである。EUV光検出部20は、多層膜ミラー20aと、ジルコニウム(Zr)フィルタ20bと、フォトダイオード20cとを含んでいる。多層膜ミラー20aには、例えば、13.5nm近傍の波長に対して反射率が高いMo/Si多層膜が形成されている。また、ジルコニウムフィルタ20bは、波長が20nm以上の光に対してはほとんど透過率を有しないフィルタである。さらに、フォトダイオード20cは、入射した光の光量に応じた検出信号を出力する。フォトダイオード20cとしては、例えば、米国IRD社製のAXUVシリーズが用いられる。このシリーズは、EUV領域の波長に対する量子効率が保証されたフォトダイオードである。
【0028】
このようなEUV光検出部20は、EUVコレクタミラー15への入射光路及び反射光路を除く領域に配置されている。それにより、露光機に出力されるEUV光にエネルギー損失を与えることがなくなると共に、プラズマ2の発光点から放射されたEUV光を直接受光するので、EUVコレクタミラー15の特性変化の影響を受けることなく、プラズマ発光点におけるEUV光の光量を検出することができる。なお、本願において、プラズマ発光点における発光量又は光エネルギーとは、EUVコレクタミラー15を介することなく、プラズマから直接受光される光の発光量又はエネルギーのことをいう。
【0029】
EUV光が生成されている間には、プラズマ2から放射された光の一部がEUV光検出部20に入射する。この光が、Mo/Si多層膜ミラー20aによって反射され、ジルコニウムフィルタ20bを透過する。それにより、所望の波長成分(波長が13.5nm±0.135nmの領域のEUV光)がフォトダイオード20cに入射する。フォトダイオード20cは、入射したEUV光の光量に応じた検出信号を出力する。
【0030】
イオン検出器21は、プラズマ2から発生するイオンの量を検出するために設けられており、例えば、ファラデーカップを含んでいる。
スパッタ量検出器22は、プラズマから発生したイオン等によるスパッタリング量を検出するために設けられており、例えば、QCM(quartz crystal microbalance:水晶振動子質量計)を含んでいる。QCMは、センサ表面に形成された金(Au)等のサンプル膜の厚さを、水晶振動子の共振周波数の変化に基づいて、オングストローム(Å)以下の精度でリアルタイムに計測する装置である。
【0031】
このようなスパッタ量検出器22を用いることにより、EUVコレクタミラー15に形成されている多層膜の膜厚の変化を間接的に検出する事が可能である。以下に、その検出原理について説明する。
スパッタ量検出器22のセンサ表面の膜とEUVコレクタミラー15の多層膜との大きな相違点は、膜の材質と設置位置との2点である。例えば、同一のエネルギーを有するイオンが衝突したとしても、スパッタ対象となる物質の種類に応じてスパッタ量は異なってくる。そこで、QCMを用いて多層膜のスパッタ量を求める場合には、センサ表面に形成される物質(例えば、金、Mo、Si等)と、EUVコレクタミラー15の反射面に形成される多層膜(例えば、Mo/Si多層膜)とのスパッタ比率を予め求めておく。例えば、アンダーソン(Anderson)等、「積層コンデンサ光学におけるプラズマによる侵食の研究(Investigation of plasma-induced erosion of multilayer condenser optics)」(SPIE会報(Proceeding of SPIE)、第5751巻、第128−139頁)の表1には、金とモリブデンとシリコンのスパッタ量(エロージョン・レート)の比率(Au:Mo:Si=1:0.26:0.19)が示されている(第133頁)。
【0032】
一方、設置位置に関しては、スパッタの主な原因となるのはプラズマから発生する高速イオンであるが、そのイオンの分布は空間的に一様でない。従って、膜の設置位置に応じてスパッタ量が異なってくる。そこで、異なる位置に設置されるスパッタ量検出器22のセンサ表面の膜とEUVコレクタミラー15の多層膜との間におけるスパッタ比率を予め求めておく。なお、スパッタ比率を求める具体的な方法については後で説明する。
【0033】
そして、QCM(スパッタ量検出器22)から出力された検出信号が表すスパッタ量(例えば、金の膜厚を示す)を、表面物質の違いに基づくスパッタ比率と設置位置の違いに基づくスパッタ比率とを用いて換算することにより、EUVコレクタミラー15の多層膜のスパッタ量が求められる。
【0034】
制御装置30は、例えば、パーソナルコンピュータを含んでおり、EUV光検出部20や、イオン検出器21や、スパッタ量検出器22から出力された検出信号に基づいて、EUVコレクタミラー15の交換時期を推測又は判断するための演算処理を行う。この演算処理は、例えば、プログラムに従って動作するCPUによって制御される。
なお、図1には、EUV光検出部20と、イオン検出器21と、スパッタ量検出器22とが示されているが、EUVコレクタミラー15の交換時期を判断する際には、それらのの内のいずれかが備えられていれば良い。
【0035】
このようなEUV光源装置は、プラズマ発光点におけるEUV光のエネルギー又はプラズマから発生したイオン量、又は、スパッタ量検出器を用いて取得されたスパッタ量に基づいて、EUVコレクタミラー15の交換時期を高い精度で推測又は判断することを特徴としている。そこで、それらの量に基づいてミラーの交換時期を判断できる原理について、図2〜図5を参照しながら説明する。
【0036】
図2は、本願発明者によって行われた実験において用いられた装置の構成を示す模式図である。この装置は、真空チャンバ10(窓17を含む)〜ターゲット回収装置16を含む一般的なEUV光源装置からEUVコレクタミラー15(図1参照)を取り外し、EUV光検出部20、イオン検出器21、及び、スパッタ量測定用QCM23を設けたものである。イオン検出器21及びスパッタ量測定用QCM23は、通常EUVコレクタミラー15が設置される位置に、プラズマについて対称となるように配置されている。
【0037】
本願発明者は、図2に示す装置を用いることにより、レーザ光3を1ショット射出する毎にほぼ同時に得られるEUVパルスエネルギー(プラズマから放射されたEUV光のエネルギー)、イオン量、及び、スパッタ量測定用QCM23のセンサ表面におけるスパッタ量を計測した。図3〜図5は、それらの実測値に基づいて得られた相関を示している。
【0038】
図3は、スパッタ量測定用QCM23のセンサ表面に形成された膜の厚さ(nm)と、EUVパルスエネルギーの総量(積分値)との関係を示している。EUVパルスエネルギーは、0.3mJ、0.7mJ、及び、1.4mJの2種類について測定した。ここで、膜厚とスパッタ量とは係数がマイナス1の線形関係にあるので、図3は、スパッタ量とEUVパルスエネルギー総量との関係を間接的に表していると言える。
【0039】
図3に示すように、EUVパルスエネルギーの総量の増加に伴って膜厚がほぼ線形に減少していることから、スパッタ量は、エネルギー総量の増加に伴って増加することがわかる。この相関関係は、各EUVパルスエネルギーの大きさ(0.3mJ、0.7mJ、及び、1.4mJ)には依存していない。従って、この相関関係を利用することにより、各EUVパルスエネルギーの大きさによらず、その総量のみから、EUVコレクタミラーのスパッタ量を求めることができる。ここで、EUVパルスエネルギーはユーザの要求や調整等の条件により変化してしまう場合があるが、EUVパルスエネルギーの総量さえ把握しておけば、スパッタ量が反映されたEUVコレクタミラーの交換時期を正確に判断することが可能となる。
【0040】
図4は、スパッタ量測定用QCM23のセンサ表面に形成された膜の厚さ(nm)とイオン総量(イオン量の積分値)との関係を示している。イオン総量は、EUVパルスエネルギーの大きさが0.3mJ、0.7mJ、及び、1.4mJの3種類について測定した。ここで、膜厚とスパッタ量とは係数がマイナス1の線形関係にあるので、図4は、スパッタ量とイオン総量との関係を間接的に表していると言える。なお、イオン量は、1価のイオンを1個として計測されたものである。従って、例えば、2価のイオンが1個検出された場合には、イオン量=2として出力される。
【0041】
図4に示すように、スパッタ量は、EUVパルスエネルギーの大きさ(0.3mJ、0.7mJ、及び、1.4mJの3種類)に依存することなく、イオン総量の増加に伴ってほぼ線形に増加している(図4においては、膜厚の減少によって示されている)。従って、この相関関係を利用することにより、各EUVパルスエネルギーの大きさによらず、イオンの総量のみから、EUVコレクタミラーのスパッタ量を求めることができ、それに基づいて、コレクタミラーの交換時期を正確に判断することが可能となる。
【0042】
図5は、1パルスあたりのイオン量(イオン数、縦軸)とEUVパルスエネルギー(mJ、横軸)との関係を示している。図5に示すように、イオン量とEUVパルスエネルギーとは非常に良い相関を示しており、EUVパルスエネルギーの変化に伴い、1パルスあたりのイオン量がほぼ線形に変化することがわかる。これより、EUVパルスエネルギー及びイオン量のいずれを用いても、EUVコレクタミラーの交換時期を正確に判断することができることが裏付けられる(図3及び図4参照)。
【0043】
次に、このような関係(図3〜図5)に基づいて、EUVコレクタミラーの交換時期を判断するために必要な情報を取得する方法について説明する。
図1に示すEUV光源装置において、EUVコレクタミラー15のスパッタ量を計測するためには、次の3つの相関の内の少なくとも1つを実測により予め求めておく必要がある。
(1)EUV光検出部20によって検出されるEUV光のエネルギー総量と、EUVコレクタミラー15のスパッタ量との関係(EUVパルスエネルギー総量対スパッタ量)
(2)イオン検出器21によって検出されるイオンの総量と、EUVコレクタミラー15のスパッタ量との関係(イオン総量対スパッタ量)
(3)スパッタ量検出器22によって検出されるセンサ表面の膜のスパッタ量と、EUVコレクタミラー15のスパッタ量との関係(センサ対ミラーのスパッタ量)
【0044】
図6は、上記3つの相関(1)〜(3)を実測するための装置の構成を示す模式図である。この装置は、真空チャンバ10(窓17を含む)〜ターゲット回収装置16を含む一般的なEUV光源装置からEUVコレクタミラー15(図1参照)を取り外し、それに替えて、EUVコレクタミラー15の設置範囲に複数のEUV多層膜サンプル40を配置したものである。EUV多層膜サンプル40には、EUVコレクタミラー15に形成されているものと同じ多層膜(例えば、300層のMo/Si多層膜)が形成されている。この多層膜の層数は、相関関係を計測できる程度の数で良い。このようなサンプルを用いるのは、サンプル量を実測するために、大型で高価なEUVコレクタミラーを使用する必要はないからである。
【0045】
図6に示す装置においてプラズマ2を発生させることによりEUV光を放射させ、その時のEUVパルスエネルギー、イオン量、及び、スパッタ量検出器22のセンサ表面のスパッタ量を検出し、それらの総量を算出する。また、一方で、複数のEUV多層膜サンプル40のスパッタ量を計測する。このスパッタ量については、プラズマ2の発生を停止した後でEUV多層膜サンプル40を真空チャンバ10から取り出して、AFM(原子間力顕微鏡)やSEM(走査電子顕微鏡)やTEM(透過電子顕微鏡)等を用いて計測しても良いし、EUV多層膜サンプル40を真空チャンバ10内に設置した状態のまま、レーザ干渉計等を用いて計測しても良い。或いは、それ以外の公知の計測方法を用いても良い。
そのようにして実測された値に基づいて、上記相関(1)〜(3)が得られる。
【0046】
図7は、上記3つの相関(1)〜(3)を実測するために用いられる装置の別の構成を示す模式図である。この装置においては、図6に示す装置における複数のEUV多層膜サンプル40の替わりに、複数の相関測定用QCM41が配置されている。このような装置においてプラズマ2を発生させることによりEUV光を放射させ、その時のEUVパルスエネルギー、イオン量、スパッタ量検出器22におけるスパッタ量、及び、相関測定用QCM41におけるスパッタ量を検出し、それらの総量を求める。さらに、相関測定用QCM41におけるスパッタ量を、センサ表面の膜材料(Au)とMo/Si多層膜とのスパッタリング比率(上記アンダーソンらの文献の表1参照)に基づいて、EUVコレクタミラー15におけるスパッタ量に換算する。それにより、上記相関(1)〜(3)が得られる。
【0047】
ここで、図6及び図7に示すように、EUV多層膜サンプル40や相関測定用QCM41を複数個用いるのは、EUVコレクタミラー15におけるスパッタ量の空間的な分布を把握するためである。即ち、複数箇所におけるEUV多層膜サンプル40等の計測値と検出機器20〜22の計測値との相関を予め求めておくことにより、検出機器20〜22の計測値のみに基づいて、EUVコレクタミラー15の複数箇所におけるスパッタ量に関する情報を得ることが可能となる。それにより、例えば、EUVコレクタミラー15におけるスパッタ量の空間的分布が一様でない場合には、EUVコレクタミラー15全体を交換する前に、EUVコレクタミラー15のスパッタ量が多い箇所から優先的に補修したり、部分的に交換することも可能となる。
【0048】
ここで、このような相関の特性は、レーザ発振器13の種類やターゲット物質に応じて変化する。例えば、図8は、励起用レーザとしてNd:YAGレーザ及びCO2レーザを使用した場合におけるEUVパルスエネルギー総量とスパッタ量との関係を示している。従って、このような相関は、露光用のEUV光を生成する際に使用される機器やターゲット物質等の条件に応じて取得しておくことが望ましい。
【0049】
また、EUV光検出器20、イオン検出器21、及び、スパッタ量検出器22の配置は、図6及び図7に示す位置には限定されない。即ち、上記の相関を求めることができる計測値を得ることができれば、真空チャンバ10内のいずれの位置に配置しても良い。その際には、それらの検出機器20〜22をEUVコレクタミラー15によって集光反射されるEUV光の光路(入射光路及び反射光路)以外に配置することが好ましい。それにより、露光光として利用されるEUV光への影響を抑えることができるので、エネルギー損失なく、常時計測することが可能となるからである。
【0050】
次に、本発明の一実施形態に係るEUV光源装置においてEUVコレクタミラー15の交換時期を判断するためのデータ処理について、図1及び図9を参照しながら説明する。このデータ処理は、図1に示す制御装置30において行われる。図9に示すように、制御装置30は、A/D変換器31と、計算部32と、判定部33と、記憶部34とを含んでいる。この内の記憶部34には、予め取得された上記の相関(1)及び/又は(2)及び/又は(3)(即ち、EUVエネルギー総量対スパッタ量、及び/又は、イオン総量対スパッタ量、及び/又は、センサ膜対EUVコレクタミラー多層膜のスパッタ量)と、初期状態におけるEUVコレクタミラー15の多層膜の層数(LMAX)に対応する多層膜の厚さ(nm)と、EUVコレクタミラー15においてEUV光を集光反射するために必要な反射率を確保できる多層膜の層数(LMIN)に対応する多層膜の厚さ(nm)とが記憶されている。例えば、初期状態における多層膜の層数は300層であり、反射率を確保できる層数は、少なくとも20〜30層である。
【0051】
(実施例1)EUVパルスエネルギーの検出信号に基づいてデータ処理を行う場合
図1に示すEUV光源装置においてEUV光の生成を開始することにより、プラズマ2の発生タイミングに応じて、EUV光検出部20からEUVパルスエネルギーを表す検出信号が出力される。この検出信号がA/D変換器31においてディジタル信号に変換されることにより、EUVパルスエネルギーEP1、EP2、…EPi、…を表す検出データが順次生成される(iはプラズマ発生回数)。これらの検出データは、計算部32に入力されて積算される。それにより、EUVパルスエネルギーの積算値(総量値)ETOTAL=EP1+EP2+…=ΣEPi(i=1、2、…)が算出される。この総量値ETOTALは、検出データが入力される毎に算出されて、判定部33に出力される。
【0052】
一方、判定部33は、予め記憶部34に記憶されている相関(1)(EUVパルスエネルギー総量対スパッタ量)に基づいて、層数(LMAX−LMIN)に相当する厚さ(即ち、スパッタ量)に対応するエネルギー値ETHを取得する。このエネルギー値ETHが、交換時期の基準値として設定される。或いは、予めEUVコレクタミラー15のスパッタ量と反射率との関係が得られている場合には、判定部33は、必要な反射率が最低限確保されるときのスパッタ量に対応するエネルギー値を、交換時期基準値ETHとしても良い。このような交換時期基準値ETHは、EUVコレクタミラー15が新しいものに交換される毎に算出される。
【0053】
そして、判定部33は、計算部32から出力されたEUVパルスエネルギーの総量値ETOTALを交換時期基準値ETHと比較し、ETOTAL≧ETHとなったときにEUVコレクタミラー15の交換時期を表す判定信号を出力する。
【0054】
(実施例2)イオンの検出信号に基づいてデータ処理を行う場合
図1に示すEUV光源装置においてEUV光の生成を開始することにより、プラズマ2の発生タイミングに応じて、イオン検出器21からイオン量を表す検出信号が出力される。この検出信号がA/D変換器31においてディジタル信号に変換されることにより、イオン量IP1、IP2、…、IPiを表す検出データが順次生成される(iはプラズマ発生回数)。これらの検出データは、計算部32に入力されて積算される。それにより、イオンの積算値(総量値)ITOTAL=IP1+IP2+…=ΣIPi(i=1、2、…)が算出される。この総量値ITOTALは、検出データが入力される毎に算出されて、判定部33に出力される。
【0055】
一方、判定部33は、予め記憶部34に記憶されている相関(2)(イオン総量対スパッタ量)に基づいて、層数(LMAX−LMIN)に相当する厚さ(スパッタ量)に対応するイオン量ITHを取得する。このイオン量ITHが、交換時期の基準値として設定される。或いは、予めEUVコレクタミラー15のスパッタ量と反射率との関係が得られている場合には、判定部33は、必要な反射率が最低限確保されるときのスパッタ量に対応するイオン量を、交換時期基準値ITHとしても良い。このような交換時期基準値ITHは、EUVコレクタミラー15が新しいものに交換される毎に算出される。
【0056】
そして、判定部33は、計算部32から出力されたイオンの総量値ITOTALを交換時期基準値ITHと比較し、ITOTAL≧ITHとなったときにEUVコレクタミラー15の交換時期を表す判定信号を出力する。
【0057】
(実施例3)スパッタ量の検出信号に基づいてデータ処理を行う場合
図1に示すEUV光源装置においてEUV光の生成を開始することにより、プラズマ2の発生タイミングに応じて、スパッタ量検出器22からセンサ表面の膜厚を表す検出信号が定期的に出力される。この検出信号は、A/D変換器31においてディジタル信号に変換され、計算部32に入力される。計算部32においては、入力された検出データに基づいて、初期状態におけるセンサの膜厚に対する変化量である膜厚変化総量TTOTALが算出される。このセンサ膜厚変化総量TTOTALは、検出データが入力される毎に算出されて、判定部33に出力される。
【0058】
一方、判定部33は、予め記憶部34に記憶されている相関(3)(センサ膜対EUVコレクタミラー多層膜のスパッタ量)に基づいて、層数(LMAX−LMIN)に相当する厚さ(即ち、スパッタ量)に対応するセンサ膜厚変化量TTHを取得する。このセンサ膜厚変化量TTHが、交換時期の基準値として設定される。或いは、予めEUVコレクタミラー多層膜のスパッタ量と反射率との関係が得られている場合には、判定部33は、必要な反射率が最低限確保されるときのスパッタ量に対応するセンサ膜厚変化量を、交換時期基準値TTHとしても良い。このような交換時期基準値TTHは、EUVコレクタミラー15が新しいものに交換される毎に算出される。
【0059】
そして、判定部33は、計算部32から出力されたセンサ膜厚変化総量TTOTALを交換時期基準値TTHと比較し、TTOTAL≧TTHとなったときにEUVコレクタミラー15の交換時期を表す判定信号を出力する。
【0060】
ここで、EUVコレクタミラー15におけるスパッタ量の空間的な分布が予め得られている場合には、判定部33は、EUVコレクタミラー15内の複数箇所について判定を行い、それらの箇所ごとに、修理時期を表す判定信号を出力するようにしても良い。
【0061】
以上説明した実施例1〜3において、交換時期基準値ETH及びITH及びTTHは種々の条件によって異なってくるので、多層膜の種類やEUV光の利用目的(露光機の種類)等に応じて相関(1)〜(3)を求めて、それらの基準値を適切に設定することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、露光機の光源として用いられる極端紫外(EUV:extreme ultra violet)光源装置に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1、111…ターゲット、2、112…プラズマ、3、109…レーザ光、4、110…EUV光、10、100…真空チャンバ、11、101…ターゲット生成装置、12、102…噴射ノズル、13、103…レーザ発振器、14、104…集光光学系、15、105…EUVコレクタミラー、16、106…ターゲット回収装置、17、107…窓、18、108…導出ポート、20…EUV光検出部、21…イオン検出器、22…スパッタ量検出器、23…スパッタ量測定用QCM、30…制御装置、31…A/D変換器、32…計算部、33…判定部、34…記憶部、40…EUV多層膜サンプル、41…相関測定用QCM
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバ内に供給されたターゲット物質にレーザ光を照射することにより該ターゲット物質を励起させてプラズマを発生させ、該プラズマから放射される極端紫外光を集光ミラーにより集光して出力するレーザ励起プラズマ方式の極端紫外光源装置であって、
前記真空チャンバ内に配置され、プラズマから発生したイオンを検出して、そのイオン量を表す検出信号を出力するイオン検出器と、
前記イオン検出器から出力された検出信号に基づいて、イオン量を積算して積算値を算出する計算部と、
前記計算部によって算出された積算値が所定の基準値に至った場合に、前記集光ミラーの交換時期又は修理時期を表す判定信号を出力する判定部と、
を具備する極端紫外光源装置。
【請求項2】
前記集光ミラーの反射面に形成されている多層膜の膜厚又は該多層膜におけるスパッタ量とプラズマから発生したイオンの量の積算値との相関であって、予め計測を行うことによって取得された前記相関を記憶する記憶部をさらに具備し、
前記判定部が、前記集光ミラーの反射面に形成されている多層膜の初期状態における厚さと前記集光ミラーにおいて所定の値以上の反射率を確保できる多層膜の厚さとの差に相当するイオン量の積算値を、前記記憶部に記憶されている前記相関に基づいて取得し、取得された積算値を前記基準値として設定する、
請求項1記載の極端紫外光源装置。
【請求項3】
前記イオン検出器が、ファラデーカップを含む、請求項1又は2記載の極端紫外光源装置。
【請求項4】
前記計算部が、前記イオン検出器から出力された検出信号に基づいて、イオン量を積算することにより、前記集光ミラーの反射面に形成されている多層膜の膜厚又は該多層膜におけるスパッタ量と相関を有する積算値を算出する、請求項1〜3のいずれか1項記載の極端紫外光源装置。
【請求項1】
真空チャンバ内に供給されたターゲット物質にレーザ光を照射することにより該ターゲット物質を励起させてプラズマを発生させ、該プラズマから放射される極端紫外光を集光ミラーにより集光して出力するレーザ励起プラズマ方式の極端紫外光源装置であって、
前記真空チャンバ内に配置され、プラズマから発生したイオンを検出して、そのイオン量を表す検出信号を出力するイオン検出器と、
前記イオン検出器から出力された検出信号に基づいて、イオン量を積算して積算値を算出する計算部と、
前記計算部によって算出された積算値が所定の基準値に至った場合に、前記集光ミラーの交換時期又は修理時期を表す判定信号を出力する判定部と、
を具備する極端紫外光源装置。
【請求項2】
前記集光ミラーの反射面に形成されている多層膜の膜厚又は該多層膜におけるスパッタ量とプラズマから発生したイオンの量の積算値との相関であって、予め計測を行うことによって取得された前記相関を記憶する記憶部をさらに具備し、
前記判定部が、前記集光ミラーの反射面に形成されている多層膜の初期状態における厚さと前記集光ミラーにおいて所定の値以上の反射率を確保できる多層膜の厚さとの差に相当するイオン量の積算値を、前記記憶部に記憶されている前記相関に基づいて取得し、取得された積算値を前記基準値として設定する、
請求項1記載の極端紫外光源装置。
【請求項3】
前記イオン検出器が、ファラデーカップを含む、請求項1又は2記載の極端紫外光源装置。
【請求項4】
前記計算部が、前記イオン検出器から出力された検出信号に基づいて、イオン量を積算することにより、前記集光ミラーの反射面に形成されている多層膜の膜厚又は該多層膜におけるスパッタ量と相関を有する積算値を算出する、請求項1〜3のいずれか1項記載の極端紫外光源装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−19225(P2012−19225A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189808(P2011−189808)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【分割の表示】特願2006−16934(P2006−16934)の分割
【原出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年9月7日〜11日 社団法人応用物理学会主催の「2005年(平成17年)秋季 第66回応用物理学会学術講演会」において文書をもって発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「極端紫外線(EUV)露光システムの基盤開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【分割の表示】特願2006−16934(P2006−16934)の分割
【原出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年9月7日〜11日 社団法人応用物理学会主催の「2005年(平成17年)秋季 第66回応用物理学会学術講演会」において文書をもって発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「極端紫外線(EUV)露光システムの基盤開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】
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