極端紫外光生成装置及び極端紫外光の生成方法
【課題】EUV光生成装置のCEを向上させる。
【解決手段】極端紫外光生成装置は、レーザ光生成システムと、前記レーザ光生成システムから出力される少なくとも1つのレーザ光の光強度および出力タイミングの少なくともいずれか一方を制御するレーザ制御システムと、前記レーザ光生成システムから出力される前記少なくとも1つのレーザ光を内部に導入するための少なくとも1つの入射口が設けられたチャンバと、前記チャンバに設けられ、前記チャンバ内の所定の領域にターゲット物質を供給するターゲット供給部と、を備えてもよい。
【解決手段】極端紫外光生成装置は、レーザ光生成システムと、前記レーザ光生成システムから出力される少なくとも1つのレーザ光の光強度および出力タイミングの少なくともいずれか一方を制御するレーザ制御システムと、前記レーザ光生成システムから出力される前記少なくとも1つのレーザ光を内部に導入するための少なくとも1つの入射口が設けられたチャンバと、前記チャンバに設けられ、前記チャンバ内の所定の領域にターゲット物質を供給するターゲット供給部と、を備えてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体ウエハを露光するため等に用いられる極端紫外(EUV:extreme ultraviolet)光を生成するための装置、及び極端紫外光の生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って光リソグラフィにおける微細化が急速に進展しており、次世代においては、60nm〜45nmの微細加工、更には32nm以下の微細加工が要求されるようになる。そのため、例えば、32nm以下の微細加工の要求に応えるべく、波長13nm程度のEUV光を生成するEUV光生成装置と縮小投影反射光学系とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲットにレーザ光を照射することによって生成されるプラズマを用いたLPP(laser produced plasma)式装置と、放電によって生成されるプラズマを用いたDPP(discharge produced plasma)式装置と、軌道放射光を用いたSR(synchrotron radiation)式装置との3種類が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/149862号明細書
【概要】
【0005】
本開示の1つの観点に係る極端紫外光生成装置は、レーザ光生成システムと、前記レーザ光生成システムから出力される少なくとも1つのレーザ光の光強度および出力タイミングの少なくともいずれか一方を制御するレーザ制御システムと、前記レーザ光生成システムから出力される前記少なくとも1つのレーザ光を内部に導入するための少なくとも1つの入射口が設けられたチャンバと、前記チャンバに設けられ、前記チャンバ内の所定の領域にターゲット物質を供給するターゲット供給部と、を備えてもよい。
【0006】
本開示の他の観点に係る極端紫外光生成装置は、レーザ光生成システムと、前記レーザ光生成システムから出力される少なくとも1つのレーザ光のフルーエンスを制御するレーザ制御システムと、前記レーザ光生成システムから出力される前記少なくとも1つのレーザ光を内部に導入するための少なくとも1つの入射口が設けられたチャンバと、前記チャンバに設けられ、前記チャンバ内の所定の領域にターゲット物質を供給するターゲット供給部と、を備えてもよい。
【0007】
本開示の他の観点に係る極端紫外光生成方法は、チャンバ内にターゲット物質をドロップレットの形状で供給することと、前記ドロップレットにレーザ光生成システムから出力されるプリパルスレーザ光を照射することと、前記ドロップレットに前記プリパルスレーザ光が照射された時点から所定時間経過後、前記プリパルスレーザ光が照射された前記ドロップレットに、前記レーザ光生成システムから出力されるメインパルスレーザ光を照射することと、を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本開示の一実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す概念図である。
【図2】図2は、ドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した様子を示す概念図である。
【図3】図3A〜図3Cは、溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した場合のドロップレットの拡散の様子をシミュレーションした結果の第1の例を示す図であり、図3Dは、実際に溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した場合のドロップレットの様子を撮影した写真である。
【図4】図4Aおよび図4Bは、溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した場合のドロップレットの拡散の様子の第2の例を模式的に示す図である。
【図5】図5A〜図5Iは、直径60μmの溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した場合の拡散ターゲットの状態をシミュレーションした結果を示す図である。
【図6】図6は、直径60μmの溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した場合の拡散ターゲットの拡散径と、拡散ターゲットへのメインパルスレーザ光の照射タイミングに応じたCEとを示す図である。
【図7】図7A〜図7Iは、直径10μmの溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した場合の拡散ターゲットの状態をシミュレーションした結果を示す図である。
【図8】図8は、直径10μmの溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した場合の拡散ターゲットの拡散径と、メインパルスレーザ光の照射タイミングに応じたCEとを示す図である。
【図9】図9は、第1の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を示す概念図である。
【図10】図10は、第2の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を示す概念図である。
【図11】図11は、第3の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を示す概念図である。
【図12】図12A〜図12Fは、第3の実施形態において、ドロップレットに第1のプリパルスレーザ光を照射し、さらに、第2のプリパルスレーザ光を照射した場合の拡散ターゲットの状態を示す概念図である。
【図13】図13は、第3の実施形態の変形例に係るEUV光生成装置の構成を示す概念図である。
【図14】図14は、第4の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を示す概念図である。
【図15】図15は、第5の実施形態に係るEUV光生成装置においてプリパルスレーザ光を出力するチタンサファイヤレーザの構成例を示す概念図である。
【図16】図16は、第6の実施形態に係るEUV光生成装置においてプリパルスレーザ光を出力するファイバレーザの構成例を示す概念図である。
【図17】図17A及び図17Bは、上述の実施形態に係るEUV光生成装置におけるレーザ光の照射条件の例を示す表である。
【図18】図18は、第7の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を示す概念図である。
【図19】図19Aは、ドロップレットに直線偏光のプリパルスレーザ光を照射した様子を示す概念図であり、図19Bは、ドロップレットの拡散の様子をシミュレーションした結果を示す図である。
【図20】図20Aは、ドロップレットに直線偏光のプリパルスレーザ光を照射した様子を示す概念図であり、図20Bは、ドロップレットの拡散の様子をシミュレーションした結果を示す図である。
【図21】図21は、溶融スズのドロップレットに対してP偏光及びS偏光で入射するレーザ光の吸収率を示すグラフである。
【図22】図22A〜図22Fは、第7の実施形態において、円偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射し、拡散したドロップレットにメインパルスレーザ光を照射した様子を示す概念図である。
【図23】図23A〜図23Fは、第7の実施形態において、空間的にランダムな直線偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射し、拡散したドロップレットにメインパルスレーザ光を照射した様子を示す概念図である。
【図24】図24A〜図24Fは、第7の実施形態において、ラジアル偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射し、拡散したドロップレットにメインパルスレーザ光を照射した様子を示す概念図である。
【図25】図25A〜図25Fは、第7の実施形態において、アジマス偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射し、拡散したドロップレットにメインパルスレーザ光を照射した様子を示す概念図である。
【図26】図26A及び図26Bは、直線偏光の割合を測定する直線偏光度の測定法の一例を説明するための図である。
【図27】図27は、第7の実施形態における偏光子の第1の例を示す図である。
【図28】図28A〜図28Cは、第7の実施形態における偏光子の第2の例を示す図である。
【図29】図29A及び図29Bは、第7の実施形態における偏光子の第3の例を示す図である。
【図30】図30は、第7の実施形態における偏光子の第4の例を示す図である。
【図31】図31は、第8の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を示す概念図である。
【図32】図32A〜図32Cは、第9の実施形態に係るEUV光生成装置においてプリパルスレーザ光を出力するレーザ装置の構成例を示す概念図である。
【図33】図33A〜図33Cは、第9の実施形態の変形例に係るEUV光生成装置においてプリパルスレーザ光を出力するレーザ装置の構成例を示す概念図である。
【図34】図34A及び図34Bは、第9の実施形態における偏光子の例を示す図である。
【図35】図35は、第8の実施形態に係るEUV光生成装置による拡散ターゲット生成実験の結果を示す図である。
【図36】図36は、上述の実施形態において、プリパルスレーザ光のフルーエンスに応じたCEの測定値をプロットしたグラフである。
【図37】図37は、上述の実施形態において、プリパルスレーザ光照射後からメインパルスレーザ光が照射されるまでの遅延時間に応じたCEの測定値をターゲット物質のドロップレット径ごとにプロットしたグラフである。
【実施の形態】
【0009】
<内容>
<1.概略構成>
<2.ドロップレットの拡散>
<2−1.円盤状又は皿状の拡散>
<2−2.トーラス状の拡散>
<2−3.大径ドロップレットの拡散>
<2−4.小径ドロップレットの拡散>
<3.第1の実施形態>
<4.第2の実施形態>
<5.第3の実施形態>
<6.第4の実施形態>
<7.第5の実施形態>
<8.第6の実施形態>
<9.レーザ光の照射条件>
<10.第7の実施形態>
<10−1.偏光制御の概要>
<10−2.偏光制御の例>
<10−3.偏光子の例>
<11.第8の実施形態>
<12.第9の実施形態>
<13.フルーエンスの制御>
<14.遅延時間の制御>
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明する実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の範囲を限定するものではない。また、実施形態で説明される構成の全てが本開示の構成として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
<1.概略構成>
図1は、本開示の一実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す概念図である。本実施形態に係るEUV光生成装置では、レーザ光をターゲット物質に照射してターゲット物質を励起することによりEUV光を生成するLPP方式が採用されてもよい。図1に示すように、このEUV光生成装置は、チャンバ1と、ターゲット供給部2と、ドライバレーザ3と、EUV集光ミラー5と、EUV光生成コントローラ7とを備えてもよい。
【0012】
チャンバ1は、好ましくは真空チャンバであり、その内部でEUV光の生成が行われ得る。チャンバ1には、露光装置接続ポート11と、窓12とが設けられてもよい。露光装置接続ポート11を介して、チャンバ1内で生成されたEUV光が外部の露光装置(縮小投影反射光学系)等の処理装置に出力されてもよい。窓12を介して、ドライバレーザ3から出力されたレーザ光をチャンバ1内に入射させてもよい。
【0013】
ターゲット供給部2は、EUV光を生成するために用いられるスズ(Sn)やリチウム(Li)等のターゲット物質を、ドロップレットコントローラ8によって指示されたタイミングでチャンバ1内に供給してもよい。ターゲット供給部2内のターゲット物質は、ターゲットノズル13からドロップレットDLとして出力され得る。ドロップレットDLは、例えば10μm以上100μm以下の直径を有していてもよい。チャンバ1内に供給された複数のドロップレットDLの内で、レーザ光が照射されずに不要となったものは、ターゲット回収部14に回収されてもよい。
【0014】
ドライバレーザ3は、ターゲット物質を励起するために用いられるレーザ光を出力してもよい。ドライバレーザ3は、発振増幅型レーザ装置(master oscillator power amplifier type laser apparatus)でもよい。ドライバレーザ3から出力されるレーザ光は、例えば、パルス幅が数ns〜数十ns程度、周波数が10kHz〜100kHz程度のパルスレーザ光であってもよい。本実施形態では、ドライバレーザ3は、プリパルスレーザ光と、メインパルスレーザ光とを出力してもよい。ドライバレーザ3としては、例えば、プリパルスレーザ光を出力するYAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザ装置と、メインパルスレーザ光を出力するCO2レーザ装置との組合せが用いられ得るが、他のレーザ装置が用いられてもよい。
【0015】
ドライバレーザ3から出力されたプリパルスレーザ光及びメインパルスレーザ光は、それぞれ、高反射ミラー15a、軸外放物面ミラー15b等を含むレーザ集光光学系と、上述の窓12とを介して、チャンバ1内の所定の領域においてドロップレットDL上に焦点を形成するように集光されてもよい。
【0016】
プリパルスレーザ光がドロップレットDLに照射されると、ドロップレットDLが微細な粒子となって拡散し得る。本願では、ドロップレットDLが粉々に拡散した状態のターゲット物質を拡散ターゲットと称する。メインパルスレーザ光は、ドロップレットDLが拡散したことによって形成された拡散ターゲットに照射され得る。メインパルスレーザ光のエネルギーによって、ターゲット物質が励起されてプラズマ化すると、そこからEUV光を含む様々な波長の光が放射され得る。
【0017】
EUV集光ミラー5は、プラズマから放射される様々な波長の光の内から、所定の波長の光(例えば、13.5nm付近の波長を有するEUV光)を集光する光学系でよい。EUV集光ミラー5は、例えば、波長が13.5nm付近のEUV光を選択的に反射するモリブデン(Mo)/シリコン(Si)多層膜が形成されている回転楕円面の凹面状の反射面を有するミラーであってもよい。EUV集光ミラー5は、回転楕円面の第1の焦点がプラズマ生成領域PSと一致するように配置されもよい。EUV集光ミラー5で反射されたEUV光は、回転楕円面の第2の焦点、即ち、中間集光点(intermediate focus)IFに集光され、外部の露光装置等に出力されてもよい。
【0018】
EUV光生成コントローラ7は、ドライバレーザ3に発振トリガ信号とレーザ光強度設定信号とを出力してもよい。これにより、EUV光生成コントローラ7は、チャンバ1内に供給されるドロップレットが所望の拡散ターゲットに変容するように、プリパルスレーザ光の光強度及び生成タイミングを制御してもよい。また、EUV光生成コントローラ7は、メインパルスレーザ光の照射によって拡散ターゲットから所望の状態のプラズマが生成されるように、メインパルスレーザ光の光強度及び生成タイミングを制御してもよい。
【0019】
発振トリガ信号は、露光装置コントローラ9からの発振トリガ検出信号に基づいて出力され、ドライバレーザ3によるレーザ光の生成タイミングが制御されてもよい。レーザ光強度設定信号は、露光装置コントローラ9からの発振トリガ検出信号と、チャンバ1内のEUV光検出器16及び露光装置コントローラ9からのEUVパルスエネルギー検出信号のいずれかとに基づいて出力されてもよい。レーザ光強度設定信号は、レーザ光の光強度を制御するために、ドライバレーザ3に出力されてもよい。また、EUV光生成コントローラ7は、トリガーカウンタ7aとタイマー7bとを含んでもよく、所定時間あたりの発振トリガ検出信号数をカウントしてもよい。EUVパルスエネルギー検出信号と、カウントされた発振トリガ検出信号数とに基づいて、レーザ光強度設定信号が出力されてもよい。
【0020】
<2.ドロップレットの拡散>
プリパルスレーザ光の照射によるドロップレットの拡散について説明する。図2は、ドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した様子を示す概念図である。図2は、プリパルスレーザ光のビーム軸(Z軸)に直交する方向からドロップレットを見たものである。
【0021】
図2に示すように、ドロップレットDLにプリパルスレーザ光を集光して照射した際、プリパルスレーザ光が照射されたドロップレットDLの表面付近においてレーザアブレーションが生じ得る。その結果、レーザアブレーションのエネルギーによって、プリパルスレーザ光が照射されたドロップレットDLの表面からドロップレットDL内部に向かって衝撃波が発生し得る。この衝撃波はドロップレットDLの全体に伝わり得る。プリパルスレーザ光の光強度が弱ければドロップレットDLは略破壊されないが、プリパルスレーザ光の光強度が第1の所定値(例えば1×109W/cm2)以上である場合には、この衝撃波によってドロップレットDLが粉々に破壊され拡散し得る。
【0022】
<2−1.円盤状又は皿状の拡散>
図3A〜図3Cは、溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した場合のドロップレットの拡散の様子をシミュレーションした結果の第1の例を示す図である。図3Dは、図3Cに示すシミュレーション結果と同一条件下で、実際に溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した場合のドロップレットの様子を撮影した写真である。図3A〜図3Dは、それぞれプリパルスレーザ光のビーム軸に直交する方向からドロップレットを見たものである。さらに、図3A〜図3Cにおいては、メインパルスレーザ光のスポット径と、ドロップレットDLに照射されたプリパルスレーザ光の光強度とをそれぞれ示している。図3Bには、拡散ターゲットの拡散径Ddとメインパルスレーザ光の照射スポット径Dmを示す。
【0023】
図3Aに示すように、プリパルスレーザ光の光強度が6.4×108W/cm2の場合においては、ドロップレットはほとんど拡散しない。これに対し、図3Bに示すように、プリパルスレーザ光の光強度が1.6×109W/cm2(図3Aに示すシミュレーションの光強度の約2.5倍)の場合においては、ドロップレットは破壊される。破壊されたドロップレットは多数の微粒子となり、拡散ターゲットを形成する。これらの微粒子は、Z軸方向から見て円盤状に拡散する。さらに、図3Cに示すように、プリパルスレーザ光の光強度が5.5×109W/cm2(図3Aに示すシミュレーションの光強度の約8.6倍)の場合においては、破壊されたドロップレットの微粒子は、皿状に拡散する。図3Cと図3Dとを比較すると明らかなように、実際の微粒子の拡散の状態は、シミュレーションの結果と略一致していた。
【0024】
図3Aに示す場合には、メインパルスレーザ光を照射しても、メインパルスレーザ光のエネルギーの多くがドロップレットに吸収されないので、CEは高くならないと推定される。つまり、プリパルスレーザ光照射後のターゲット物質の大きさに対して、メインパルスレーザ光の照射スポット径が非常に大きいため、メインパルスレーザ光の大部分がプラズマ生成に利用されず、通過してしまう。これに対し、図3B及び図3Cに示す場合には、ドロップレットがメインパルスレーザ光の照射スポット内に拡散するので、メインパルスレーザ光の大部分をプラズマ生成に利用できる。さらに、拡散ターゲットはドロップレット状態(1個の球状液滴)に比べて総表面積が大きくなる。以下に示すように、1滴の球体状の液滴がn3個に破壊されると、1滴当たりの半径が(1/n)倍になり、このとき、表面積の合計は1滴の球体状の液滴の表面積のn倍となる。
【0025】
拡散前の液滴の半径をrとすると、液滴1個分の体積V1は、次の式(1)で表される。
V1=4πr3/3 ・・・(1)
【0026】
一方、拡散後の微小な液滴の半径(r/n)のn3個分の体積の合計V2は、次の式(2)で表される。
V2=n3×4π(r/n)3/3 ・・・(2)
【0027】
半径(r/n)の液滴n3個分の体積の合計V2は、半径rの液滴1個分の体積V1に等しい(V2=V1)。
【0028】
半径rの液滴1個分の表面積S1は、次の式(3)で表される。
S1=4πr2 ・・・(3)
【0029】
一方、半径(r/n)の液滴n3個分の表面積の合計S2は、次の式(4)で表される。
S2=n3×4π(r/n)2=n×4πr2 ・・・(4)
【0030】
従って、半径(r/n)の液滴n3個分の表面積の合計S2は、半径rの液滴1個分の表面積S1のn倍となる(S2=n×S1)。
【0031】
このように、図3B及び図3Cに示す場合では、ドロップレットDLが拡散し、総表面積が大きくなる。その結果、拡散した微粒子にメインパルスレーザ光のエネルギーが効率的に吸収され得る。これにより、拡散した微粒子のより多くの部分がプラズマ化され、高いエネルギーのEUV光が得られるので、CEを向上させることができると推定される。
【0032】
図3B及び図3Cの何れに示す場合においても、拡散ターゲットの形状はプリパルスレーザ光のビーム軸方向の長さが、プリパルスレーザ光のビーム軸方向に直交する方向の長さより短い形状となっている。このような拡散ターゲットに対して、メインパルスレーザ光は、プリパルスレーザ光と略同一方向から照射されるのが好ましい。これにより、拡散ターゲットにメインパルスレーザ光をより均一に照射することができ、ターゲット物質にメインパルスレーザ光を効率的に吸収させることができると推定される。
【0033】
また、拡散ターゲットの拡散径Ddは、メインパルスレーザ光の照射スポット径Dm以下の大きさであることが好ましい。これにより、拡散ターゲットの全体にメインパルスレーザ光を照射できるため、拡散ターゲットのより多くの部分をプラズマ化することができ、その結果、ターゲット物質のデブリの発生を低減することができると推定される。
【0034】
さらに、拡散ターゲットの拡散径Ddは、メインパルスレーザ光の照射スポット径Dmに等しいか、近い大きさであることが好ましい。これにより、メインパルスレーザ光のエネルギーの多くが拡散ターゲットに吸収されるため、CEを向上させることができると推定される。ここで、図3Bはメインパルスレーザ光のビームウエストの位置と拡散ターゲットの位置とが略一致する構成を示したが、本開示はこの実施形態に限定されない。つまり、メインパルスレーザ光のビームウエストの位置と、拡散ターゲットの位置とが必ずしも一致する必要はない。本願では、照射スポット径Dmを、拡散ターゲットに照射される位置又はその付近におけるビーム断面の直径と定義する。
【0035】
メインパルスレーザ光のビーム断面が円形であり、拡散ターゲットの断面(レーザ光の進行方向に直交する面における断面)が円形である場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、メインパルスレーザ光のビーム断面の面積が、拡散ターゲットの断面の最大面積を超える大きさであってもよい。
【0036】
<2−2.トーラス状の拡散>
図4A及び図4Bは、溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した場合のドロップレットの拡散の様子の第2の例を模式的に示す図である。図4Aは、プリパルスレーザ光及びメインパルスレーザ光のビーム軸に直交する方向からターゲット物質を見た図である。図4Bは、メインパルスレーザ光のビーム軸方向からターゲット物質を見た図である。図4Bには、トーラス型の拡散ターゲットの外径Doutとメインパルスレーザ光の照射スポット径Dmを示している。
【0037】
図2を参照しながら説明したように、ドロップレットDLにプリパルスレーザ光を集光して照射すると、ドロップレットDLの表面付近においてレーザアブレーションが生じ得る。ここで、プリパルスレーザ光の光強度が第2の所定値(例えば6.4×109W/cm2)以上の光強度である場合には、ドロップレットは粉々に破壊され、図4A及び図4Bに示すようなトーラス型の拡散ターゲットが形成され得る。図4A及び図4Bに示すように、トーラス型の拡散ターゲットは、ドロップレットが、プリパルスレーザ光のビーム軸に対して軸対称に、かつ、トーラス状に拡散したものである。
【0038】
トーラス型の拡散ターゲットを形成するための具体的条件は、例えば以下の通りでよい。プリパルスレーザ光の光強度範囲は、6.4×109W/cm2以上、3.2×1010W/cm2以下でよく、ドロップレットの直径は、12μm以上、40μm以下でよい。
【0039】
次に、トーラス型の拡散ターゲットへのメインパルスレーザ光の照射について説明する。トーラス型の拡散ターゲットは、プリパルスレーザ光をドロップレットに照射した後、例えば0.5μs〜2.0μsのタイミングで形成され得る。従って、プリパルスレーザ光をドロップレットに照射した後の上記タイミングで、メインパルスレーザ光を拡散ターゲットに照射することが好ましい。
【0040】
また、図4A及び図4Bに示すように、トーラス型の拡散ターゲットの形状は、プリパルスレーザ光のビーム軸方向の長さが、プリパルスレーザ光のビーム軸方向に直交する方向の長さよりも短い形状となっている。このような拡散ターゲットに対して、メインパルスレーザ光は、プリパルスレーザ光と略同一方向に照射されるのが好ましい。これにより、拡散ターゲットにメインパルスレーザ光をより効率よく照射することができ、ターゲット物質にメインパルスレーザ光を効率的に吸収させることができると推定される。従って、LPP式EUV光生成装置におけるCEを向上させることができる。実験により、上記の条件で照射した場合にCE〜3%が確認された。
【0041】
例えば光強度分布がガウス分布であるメインパルスレーザ光を、トーラス型の拡散ターゲットに照射することにより、トーラス型の拡散ターゲットから円筒状にプラズマが放出されると推定される。そして、その円筒の内側に向けて拡散するプラズマが円筒内に閉じ込められる効果が期待され得る。従って、プラズマを高温かつ高密度に生成し、CEを向上させることができると推定できる。なお、「トーラス型」とは円環体の形状を意味するが、拡散ターゲットは必ずしも円環体である必要はなく、実質的に環状に拡散したものであればよい。
【0042】
さらに、メインパルスレーザ光の照射スポット径Dmは、トーラス型の拡散ターゲットの外径Doutに対して、以下の関係を有することが好ましい。
Dm≧Dout
このようにすることにより、トーラス型の拡散ターゲットの全体にメインパルスレーザ光を照射できるため、拡散ターゲットのより多くの部分をプラズマ化することができる。その結果、ターゲット物質のデブリの発生を低減することができると推定される。
【0043】
<2−3.大径ドロップレットの拡散>
図5A〜図5Hは、直径60μmの溶融スズのドロップレットDLにプリパルスレーザ光を照射した場合の拡散ターゲットの状態をシミュレーションした結果を示す図である。図5A〜図5Dは、プリパルスレーザ光のビーム軸に直交する方向(X軸)からドロップレット及び拡散ターゲットの状態を見たものである。図5A〜図5Dは、それぞれドロップレットDLに対するプリパルスレーザ光の照射後の時間Tが0μs、0.4μs、0.8μs、1.4μsの時点でのターゲット物質の状態を示している。図5E〜図5Hは、プリパルスレーザ光のビーム軸方向からドロップレット及び拡散ターゲットの状態を見たものである。図5E〜図5Hは、それぞれプリパルスレーザ光の照射から図5A〜図5Dに示す場合と同一の時間が経過した時点でのターゲット物質の状態を示している。図5Iは、メインパルスレーザ光が拡散ターゲットに照射される位置での、メインパルスレーザ光の照射スポット径の大きさを示している。なお、プリパルスレーザ光の光強度が1.5×109W/cm2の場合を示す。
【0044】
図5A〜図5Hに示すシミュレーション結果を、図5Iに示すメインパルスレーザ光の照射スポット径と併せて参照すると、次のことがわかる。拡散ターゲットの大部分にメインパルスレーザ光が照射されるようにできるのは、プリパルスレーザ光の照射から約0.4μs後のタイミングである。従って、このようなタイミングで拡散ターゲットにメインパルスレーザ光が照射されるように構成すれば、デブリの発生を低減できると推定される。
【0045】
プリパルスレーザ光の照射前に直径が60μmであったドロップレットは、プリパルスレーザ光の照射によって拡散し、微粒子化され得る。図5A〜図5Dに、この拡散ターゲット中の微粒子径の最大値及び最小値を併せて示す。このシミュレーションにおけるプリパルスレーザ光の光強度では、拡散ターゲット中の微粒子径の最大値が48.0μmとなっている。つまり、プリパルスレーザ光による粉砕が不十分で、メインパルスレーザ光の照射によってもプラズマ化されない部分が多く残ることが予想される。これは、デブリが多く発生する可能性を示唆する。また、プリパルスレーザ光の照射後における拡散ターゲット中の微粒子径の最小値は、0.4μs後で3.7μm、0.8μs後で3.5μm、1.4μs後で3.1μmとなっている。これより、プリパルスレーザ光照射後の時間Tが経過するに従って微粒子の直径は微小化し、これに伴って粒子数が増加することが予想される。これは、直径60μmの溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した場合、プリパルスレーザ光照射後の時間Tが0.4μs〜1.4μsの範囲内でメインパルスレーザ光を拡散ターゲットに照射すると、時間Tが長いほどCEが向上する可能性を示唆している。
【0046】
図6は、直径60μmの溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した場合の、拡散ターゲットの拡散径Ddの時間変化と、ある時点においてメインパルスレーザ光を拡散ターゲットへ照射した際のCEを示す図である。図5に示すように、プリパルスレーザ光の照射から約0.4μs後で、拡散ターゲットの拡散径Ddが、メインパルスレーザ光の照射スポット径と略一致する。従って、プリパルスレーザ光の照射から約0.4μs後にメインパルスレーザ光を照射すると、デブリの発生が抑制される可能性がある(図6の矢印A)。これに対し、図6を参照すると、プリパルスレーザ光の照射から約3μs後にメインパルスレーザ光を照射すると、高いCEが得られる可能性が示されている(矢印B)。このシミュレーション結果から、プリパルスレーザ光の照射からメインパルスレーザ光の照射までの遅延時間には、デブリ発生の低減のために好ましい値と、高いCEを得るために好ましい値との間に隔たりがあることが判る。つまり、直径60μmの溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光及びメインパルスレーザ光を照射する場合、デブリ低減と高いCEの両立は容易ではないと予測できる。ここで、プリパルスレーザ光の照射後の時間Tは、プリパルスレーザ光の照射からメインパルスレーザ光の照射までの遅延時間と同じ時間を示す。
【0047】
<2−4.小径ドロップレットの拡散>
図7A〜図7Hは、直径10μmの溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した場合の拡散ターゲットの状態をシミュレーションした結果を示す図である。図7A〜図7Dは、プリパルスレーザ光のビーム軸に直交する方向(X軸)からドロップレット及び拡散ターゲットを見た図である。図7A〜図7Dは、それぞれプリパルスレーザ光の照射後の時間Tが0μs、0.1μs、0.25μs、0.5μsの時点でのターゲット物質の状態を示している。図7E〜図7Hは、プリパルスレーザ光のビーム軸の方向からドロップレット及び拡散ターゲットを見たものである。図7E〜図7Hは、それぞれプリパルスレーザ光の照射から図7A〜図7Dに示す場合と同一の時間が経過した時点でのターゲット物質の状態を示している。図7Iは、メインパルスレーザ光が拡散ターゲットに照射される位置での、メインパルスレーザ光の照射スポット径の大きさを示している。なお、プリパルスレーザ光の光強度が1.5×109W/cm2の場合を示す。
【0048】
図7A〜図7Hに示すシミュレーション結果を、図7Iに示すメインパルスレーザ光の照射スポット径と併せて参照すると、次のことがわかる。拡散ターゲットの大部分にメインパルスレーザ光が照射されるようにできるのは、プリパルスレーザ光の照射から約0.1μs後のタイミングである。従って、このようなタイミングでメインパルスレーザ光が拡散ターゲットに照射されるように構成すれば、デブリの発生を低減できると推定できる。
【0049】
また、図7A〜図7Dに併せて示したように、プリパルスレーザ光の照射後における拡散ターゲット中の微粒子径の最大値は、プリパルスレーザ光の照射から0.1μs後で2.2μm、プリパルスレーザ光の照射から0.25μs後及び0.5μs後で1.1μmとなっている。これより、拡散ターゲット中の微粒子径の最大値は、プリパルスレーザ光の照射から0.25μs後以降で一定となると推定できる。また、プリパルスレーザ光の照射後における拡散ターゲット中の微粒子径の最小値は、プリパルスレーザ光の照射から0.1μs後、0.25μs後及び0.5μs後で何れも0.2μmとなっている。これより、プリパルスレーザ光の照射から0.1μs後において拡散ターゲット中の微粒子径は十分小さくなっていると推定できる。これは、プリパルスレーザ光の照射から約0.1μs経過以降に、メインパルスレーザ光を拡散ターゲットに照射するとCEが向上する可能性があることを示唆している。
【0050】
図8は、直径10μmの溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した場合の、拡散ターゲットの拡散径Ddの時間変化と、ある時点においてメインパルスレーザ光を拡散ターゲットに照射した際のCEとを示す図である。
【0051】
図7に示すように、プリパルスレーザ光の照射から約0.1μs後では、拡散ターゲットの拡散径Ddが、メインパルスレーザ光の照射スポット径と略一致する。従って、プリパルスレーザ光の照射から約0.1μs後にメインパルスレーザ光を拡散ターゲットに照射すると、デブリの発生が抑制される可能性がある(図8の矢印A)。これに対し、図8を参照すると、プリパルスレーザ光の照射から約0.15μs後にメインパルスレーザ光を拡散ターゲットに照射すると、高いCEが得られる可能性が示されている(矢印B)。このシミュレーション結果から、デブリ低減のために好ましいメインパルスレーザ光の遅延時間と、高いCEを得るために好ましいメインパルスレーザ光の遅延時間との間の隔たりが比較的小さいことが判る。つまり、直径10μmの溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射する場合、デブリ低減と高いCEの両立が可能であると予測できる。直径10μm程度の溶融スズのドロップレットは、所望のEUV光を生成するのに必要最小限質量のターゲットという意味で、マスリミテッドターゲットと呼ぶことがある。
【0052】
<3.第1の実施形態>
次に、添付の図面を参照に各実施形態について説明する。図9は、第1の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す概念図である。第1の実施形態に係るEUV光生成装置は、YAGパルスレーザ装置3aから出力されるプリパルスレーザ光のビーム軸と、CO2パルスレーザ装置3bから出力されるメインパルスレーザ光のビーム軸とを、ビームコンバイナ15cによって略一致させる構成を有してもよい。すなわち、第1の実施形態においては、プリパルスレーザ光とメインパルスレーザ光とを各々同軸の光路を介してチャンバ1内に供給してもよい。
【0053】
まず、露光装置コントローラ9からEUV光生成コントローラ7にEUV発光信号が入力されてもよい。EUV光生成コントローラ7は、YAGパルスレーザ装置3aにYAGレーザ光強度設定信号を出力してもよい。さらに、EUV光生成コントローラ7は、CO2パルスレーザ装置3bにCO2レーザ光強度設定信号を出力してもよい。
【0054】
また、EUV光生成コントローラ7は、トリガコントローラ17にEUV発光トリガ信号を出力してもよい。トリガコントローラ17は、ドロップレットを出力させるための信号をドロップレットコントローラ8に出力してもよい。ドロップレットコントローラ8はターゲット供給部2にドロップレット出力信号を入力し、ターゲット供給部2はターゲットノズル13からドロップレットDLを出力してもよい。トリガコントローラ17は、YAGレーザ発振トリガ信号をYAGパルスレーザ装置3aに出力してもよい。YAGレーザ発振トリガ信号は、ドロップレットDLがプラズマ生成領域PSに到着するタイミングに合わせてプリパルスレーザ光がドロップレットDLに照射されるように、出力され得る。さらに、トリガコントローラ17は、CO2パルスレーザ装置3bのマスタオシレータ3dにCO2レーザ発振トリガ信号を出力してもよい。CO2レーザ発振トリガ信号は、ドロップレットDLにプリパルスレーザ光が照射されてから、所望の拡散ターゲットが形成されるまでの遅延時間T後のタイミングでメインパルスレーザ光が拡散ターゲットに照射されるように、出力され得る。
【0055】
YAGパルスレーザ装置3aは、EUV光生成コントローラ7から出力されたYAGレーザ光強度設定信号と、トリガコントローラ17から出力されたYAGレーザ発振トリガ信号とに基づいて、第1の波長でプリパルスレーザ光を出力してもよい。プリパルスレーザ光は、ビームエキスパンダ4においてビーム径が拡大された後、ビームコンバイナ15cに入射してもよい。
【0056】
CO2パルスレーザ装置3bは、マスタオシレータ3dと、プリアンプ3hと、メインアンプ3jとの下流側に、それぞれリレー光学系3g、3i、3kを直列に配置して構成されてもよい。マスタオシレータ3dは、CO2パルスレーザ発振トリガ信号に基づいて、第2の波長を含むシード光を出力してもよい。マスタオシレータ3dから出力されたシード光は、CO2レーザ光強度設定信号に基づいて、プリアンプ3h及びメインアンプ3jによって所望の光強度に増幅され得る。この増幅されたレーザ光は、メインパルスレーザ光としてビームコンバイナ15cに入射してもよい。
【0057】
ビームコンバイナ15cは、YAGパルスレーザ装置3aから出力されたレーザ光に含まれる第1の波長のレーザ光を透過させ、CO2パルスレーザ装置3bから出力されたレーザ光に含まれる第2の波長のレーザ光を高反射してもよい。こうようにして、ビームコンバイナ15cは、プリパルスレーザ光の光路とメインパルスレーザ光の光路とを同軸としてチャンバ1内に供給してもよい。なお、ビームコンバイナ15cは、YAGレーザ装置の波長1.06μmのレーザ光を透過させ、CO2レーザ装置の波長10.6μmのレーザ光を高反射する光学素子でよい。具体的には、ダイヤモンド基板上に、上記のような反射透過特性を有する多層膜をコートして構成されてもよい。あるいは、YAGレーザ装置のレーザ光を高反射して、CO2レーザ装置のレーザ光を透過させる光学素子であっても、プリパルスレーザ光の光路とメインパルスレーザ光の光路とを同軸とすることができる。
【0058】
ドロップレットコントローラ8と、YAGパルスレーザ装置3aと、CO2パルスレーザ装置3bとが、上述のトリガコントローラ17からの各種信号に基づいて同期して動作してもよい。これにより、ターゲット供給部2によってチャンバ1内に供給されたターゲット物質が所定の位置に到着するタイミングに合わせて、YAGパルスレーザ装置3aがプリパルスレーザ光を出力してもよい。そして、プリパルスレーザ光の照射によって所望の拡散ターゲットが形成されたタイミングに合わせて、CO2パルスレーザ装置3bがメインパルスレーザ光を出力してもよい。
【0059】
第1の実施形態によれば、プリパルスレーザ光とメインパルスレーザ光とを略同一方向からプラズマ生成領域(PS)に照射できるため、EUV集光ミラー5に形成される貫通孔を小さく且つ少なくすることができる。
【0060】
また、YAGパルスレーザ装置3aから出力されるプリパルスレーザ光の波長(例えば1.06μm)が、CO2パルスレーザ装置3bから出力されるメインパルスレーザ光の波長(例えば10.6μm)の10分の1以下となる。このようにプリパルスレーザ光の波長がメインパルスレーザ光の波長よりも十分に短いため、以下のメリットが考えられる。(1)スズ等のターゲット物質に対するプリパルスレーザ光の吸収率をメインパルスレーザ光の吸収率より高くすることができる。(2)ドロップレットに集光されるプリパルスレーザ光の照射スポット径を小さくすることができる。その結果、プリパルスレーザ光は小さなパルスエネルギーで小さなドロップレットDLを効率よく照射し拡散させることができる。他の点については図1を参照しながら説明したものと同様であるため、ここでは重複する説明を省略する。
【0061】
<4.第2の実施形態>
図10は、第2の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す概念図である。第2の実施形態に係るEUV光生成装置は、YAGパルスレーザ装置3aから出力されたプリパルスレーザ光と、CO2パルスレーザ装置3bから出力されたメインパルスレーザ光とが、別々の経路からチャンバ1内に供給される構成を有してもよい。
【0062】
YAGパルスレーザ装置3aから出力されたプリパルスレーザ光は、高反射ミラー15eと、軸外放物面ミラー15gと、EUV集光ミラー5に形成された1つの貫通孔とを介して、チャンバ1内のドロップレット上に集光されてもよい。これにより、拡散ターゲットが形成され得る。
【0063】
CO2パルスレーザ装置3bから出力されたメインパルスレーザ光は、高反射ミラー15dと、軸外放物面ミラー15fと、EUV集光ミラー5に形成されたもう1つの貫通孔とを介して、チャンバ1内においてプリパルスレーザ光の照射によって形成された拡散ターゲットに集光され得る。
【0064】
第2の実施形態によれば、プリパルスレーザ光とメインパルスレーザ光とを別々の光学系を介してターゲットに照射できるため、それぞれ所望の大きさのビームスポットを形成することが容易となる。また、プリパルスレーザ光とメインパルスレーザ光とを同軸の光路とするためのビームコンバイナ等の光学素子を用いなくてもよい。しかしながら、プリパルスレーザ光及びメインパルスレーザ光を、それぞれドロップレットDL及び拡散ターゲットに略同一方向から照射することができる。他の点については第1の実施形態と同様であるため、ここでは重複する説明を省略する。
【0065】
<5.第3の実施形態>
図11は、第3の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す概念図である。第3の実施形態に係るEUV光生成装置は、YAGパルスレーザ装置3aから出力される第1のプリパルスレーザ光と、CO2パルスレーザ装置3bから出力される第2のプリパルスレーザ光及びメインパルスレーザ光とが、チャンバ1内に供給される構成を有してもよい。
【0066】
CO2パルスレーザ装置3bは、メインパルスレーザ光のシード光を出力するマスタオシレータ3dの他に、第2のプリパルスレーザ光のシード光を出力するマスタオシレータ3eを含んでもよい。マスタオシレータ3eから出力された第2のプリパルスレーザ光のシード光は、プリアンプ3h及びメインアンプ3jによって所望の光強度に増幅され得る。この増幅されたレーザ光は、第2のプリパルスレーザ光としてビームコンバイナ15cに入射してもよい。マスタオシレータ3dから出力されたメインパルスレーザ光のシード光もまた、プリアンプ3h及びメインアンプ3jによって所望の光強度に増幅され得る。この増幅されたレーザ光も、メインパルスレーザ光としてビームコンバイナ15cに入射してもよい。
【0067】
マスタオシレータ3d及び3eは、CO2レーザ媒体において増幅可能な波長領域で発振する半導体レーザであってもよい。具体的には、複数の量子カスケードレーザ(Quantum Cascade Laser)をそれぞれマスタオシレータ3d及び3eとしてもよい。
【0068】
図12A〜図12Fは、第3の実施形態において、ドロップレットDLに第1のプリパルスレーザ光を照射し、さらに、第2のプリパルスレーザ光を照射した場合の拡散ターゲットの状態を示す概念図である。図12A〜図12Cは、第1及び第2のプリパルスレーザ光のビーム軸に直交する方向(X軸)からドロップレット及び拡散ターゲットを見た図であり、それぞれ第1のプリパルスレーザ光の照射後の遅延時間T=0、T=t2、T=tm(但し、0<t2<tm)におけるターゲット物質の状態を示している。図12D〜図12Fは、第1及び第2のプリパルスレーザ光のビーム軸の方向からドロップレット及び拡散ターゲットを見たものであり、それぞれ第1のプリパルスレーザ光の照射から図12A〜図12Cに示す場合と同一の時間が経過した時点でのターゲット物質の状態を示している。
【0069】
まず、図12A及び図12Dに示すターゲット物質のドロップレットに、第1のプリパルスレーザ光を照射すると、図12B及び図12Eに示すように、ドロップレットが拡散し、第1の拡散ターゲットが形成され得る。第1のプリパルスレーザ光によって形成された第1の拡散ターゲットが、第2のプリパルスレーザ光の照射スポット径と略同一かそれ以下である所望の拡散径になったタイミングで、当該第1の拡散ターゲットに第2のプリパルスレーザ光が照射されてもよい。
【0070】
第1の拡散ターゲットに第2のプリパルスレーザ光が照射されると、図12C及び図12Fに示すように、第1の拡散ターゲットの各粒子がさらに細かい粒子となって拡散し、第2の拡散ターゲットが形成され得る。第2のプリパルスレーザ光の照射によって形成された第2の拡散ターゲットがメインパルスレーザ光の照射スポット径と略同一かそれ以下である所望の拡散径の拡散ターゲットになったタイミングで、当該第2の拡散ターゲット(所望の拡散ターゲット)にメインパルスレーザ光が照射されてもよい。
【0071】
このように、第1及び第2のプリパルスレーザ光の照射によって形成された第2の拡散ターゲットにメインパルスレーザ光が照射され得る。第1の拡散ターゲットに比べてさらに微細な粒子が存在する第2の拡散ターゲットにメインパルスレーザ光が照射されるので、メインパルスレーザ光のエネルギーが第2の拡散ターゲットに効率良く吸収され得る。これにより、第2の拡散ターゲットの多くの部分がプラズマ化するので、高いCEが得られると推定される。さらに、メインパルスレーザ光の照射スポット径を第2の拡散ターゲットの拡散径と略同等とすることで、高CE化とデブリ低減の両立が可能となると推定される。他の点については上述の実施形態と同様であるため、ここでは重複する説明を省略する。
【0072】
第3の実施形態においても、マスリミテッドターゲット、例えば直径約10μmの溶融スズを用いるのが好ましい。
【0073】
第3の実施形態においては、2段階のプリパルスレーザ光をターゲット物質に照射した後に、メインパルスレーザ光を拡散ターゲットに照射する例を示したが、3段階以上のプリパルスレーザ光をターゲット物質に照射してもよい。
【0074】
また、第3の実施形態においては、第1のプリパルスレーザ光をYAGパルスレーザ装置3aが出力し、第2のプリパルスレーザ光及びメインパルスレーザ光をCO2パルスレーザ装置3bが出力する例を示したが、これらのレーザ光を1台のパルスレーザ装置、例えばCO2レーザ装置が出力してもよい。
【0075】
さらに、第1及び第2のプリパルスレーザ光を第1のレーザ装置が出力し、メインパルスレーザ光を第2のレーザ装置が出力してもよい。ここで、第1のレーザ装置を例えばYAGレーザ装置又はファイバレーザ装置とし、第2のレーザ装置を例えばCO2レーザ装置としてもよい。
【0076】
図13は、第3の実施形態の変形例に係るEUV光生成装置の構成を示す概念図である。図13に示すEUV光生成装置は、第1のYAGパルスレーザ装置3mと、第2のYAGパルスレーザ装置3nと、ビームコンバイナ3pとを含んでもよい。
【0077】
第1及び第2のYAGパルスレーザ装置3m及び3nは、いずれも、EUV光生成コントローラ7から出力されたYAGレーザ光強度設定信号と、トリガコントローラ17から出力されたYAGレーザ発振トリガ信号とを受信してもよい。第1のYAGパルスレーザ装置3mは、第1のプリパルスレーザ光を出力してもよい。第1のプリパルスレーザ光は、ビームコンバイナ3pに入射してもよい。第2のYAGパルスレーザ装置3nは、第2のプリパルスレーザ光を出力してもよい。第2のプリパルスレーザ光もまた、ビームコンバイナ3pに入射してもよい。ビームコンバイナ3pは、第1及び第2のプリパルスレーザ光を同軸化して、ビームエキスパンダ4に出力してもよい。
【0078】
他の点については第1の実施形態と同様でよい。この構成によっても、図11を参照しながら説明した第3の実施形態と同様に、第1及び第2のプリパルスレーザ光とメインパルスレーザ光とがチャンバ1内に供給され得る。なお、第1及び第2のプリパルスレーザ光は、第1及び第2のファイバレーザ装置によって出力されてもよい。
【0079】
<6.第4の実施形態>
図14は、第4の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す概念図である。図14は、図9〜図11のXIV−XIV面における断面を示している。第4の実施形態に係るEUV光生成装置は、上述の第1〜第3の実施形態と同様の構成において、磁石6a及び6bによってチャンバ1内に磁場を生成することにより、チャンバ1内において発生したイオンを回収する構成を有してもよい。
【0080】
磁石6a及び6bは、コイル巻き線やコイル巻き線の冷却機構等を含んだ電磁石でよい。これらの磁石6a及び6bには、電源コントローラ6dによって制御される電源装置6cが接続されてもよい。電源装置6cから磁石6a及び6bに供給される電流を電源コントローラ6dが調節することにより、所定方向の磁場がチャンバ1内に形成され得る。磁石6a及び6bとしては、例えば超伝導磁石が用いられてもよい。ここでは2つの磁石6a及び6bが用いられる場合を例に説明したが、1つの電磁石が用いられてもよい。さらに、永久磁石をチャンバ内に配置してもよい。
【0081】
ターゲット物質へのメインパルスレーザ光の照射によって生成されるプラズマは、正イオン及び負イオン(又は電子)を含み得る。チャンバ1内を移動する正イオン及び負イオンは、磁場中でローレンツ力を受けるため、磁力線に沿って螺旋状に移動し得る。これにより、イオン化されたターゲット物質が磁場にトラップされ、磁場中に設けられたイオン回収部19a及び19bに回収され得る。従って、チャンバ1内のデブリを低減することができ、EUV集光ミラー5などのチャンバ内の光学素子へのデブリの付着により、光学素子が劣化するのが抑制され得る。図14において、磁場は矢印の向きとなっているが、矢印と反対の向きであっても同様の機能を果たし得る。
【0082】
デブリの光学素子への付着を低減するミチゲーション技術は、磁場を用いるものに限られず、エッチングガスを利用してEUV集光ミラー5等に付着した物質をエッチングするものでもよい。また、ミチゲーション技術は、磁場中で水素ガス(H2)又は水素ラジカル(H)をデブリと反応させて、デブリとの気化化合物として除去するものでもよい。
【0083】
<7.第5の実施形態>
図15は、第5の実施形態に係るEUV光生成装置においてプリパルスレーザ光を出力するチタンサファイヤレーザの構成例を示す概念図である。第5の実施形態におけるチタンサファイヤレーザ50aは、上述の第1〜第4の実施形態においてドロップレットを拡散させるためのプリパルスレーザ光を出力するドライバレーザとして、チャンバの外部に設けられてもよい。
【0084】
第5の実施形態におけるチタンサファイヤレーザ50aは、半導体可飽和吸収ミラー51aと出力結合ミラー52aとの間に、凹面ミラー53a、第1のポンピングミラー54a、チタンサファイア結晶55a、第2のポンピングミラー56a、並びに、2つのプリズム57a及び58aがこの順に半導体可飽和吸収ミラー51a側から配置されたレーザ共振器を含んでもよい。さらに、チタンサファイヤレーザ50aは、このレーザ共振器に励起光を導入するための励起光源59aを含んでもよい。
【0085】
第1のポンピングミラー54aは、レーザ共振器外部からの励起光を透過させ、レーザ共振器内側からの光を高い反射率で反射するミラーでよい。チタンサファイア結晶55aは、励起光を受けて誘導放出を行うレーザ媒質でよい。2つのプリズム57a及び58aは、所定の波長の光を選択的に透過させてもよい。出力結合ミラー52aは、レーザ共振器内で増幅されたレーザ光の一部を透過させて出力し、残りの一部を反射してレーザ共振器内に戻してもよい。半導体可飽和吸収ミラー51aは、反射層と可飽和吸収体層とがミラー基板に積層されたミラーであり、入射光が弱い間は可飽和吸収体層が入射光を吸収し、入射光が強くなると可飽和吸収体層が入射光を透過させて反射層が入射光を反射することにより、入射光を短パルス化して反射してもよい。
【0086】
励起光源59aとして、例えば半導体励起Nd:YVO4(neodymium-doped yttrium orthovanadate)レーザを用いることができる。この励起光源59aから出力される第2高調波を第1のポンピングミラー54aに導入し、半導体可飽和吸収ミラー51aの位置を調節し、レーザ共振器の共振器長と縦モードとを同期させて発振させてもよい。これにより、出力結合ミラー52aからピコ秒またはそれ以下のオーダーのパルス時間幅を有するパルスレーザ光が出力され得る。なお、パルスエネルギーが小さい場合は、再生増幅器等により、このパルスレーザ光を増幅してもよい。
【0087】
第5の実施形態によれば、ピコ秒またはそれ以下のオーダーのパルス時間幅を有する短パルスレーザ光をプリパルスレーザ光としてターゲット物質に照射することが可能となる。短パルスレーザ光をターゲット物質に照射する場合、照射部分の熱拡散を非常に小さくできる可能性があるため、熱拡散してしまうエネルギーをアブレーション作用に利用できると推定される。この結果、第5の実施形態によれば、ナノ秒オーダーのレーザ光に比べて、小さなパルスエネルギーでドロップレットを拡散させることができると推定される。
【0088】
<8.第6の実施形態>
図16は、第6の実施形態に係るEUV光生成装置においてプリパルスレーザ光を出力するためのファイバレーザの構成例を示す概念図である。第6の実施形態におけるファイバレーザ50bは、上述の第1〜第4の実施形態においてドロップレットを拡散させるためのプリパルスレーザ光を出力するドライバレーザとして、チャンバの外部に設けられてもよい。
【0089】
第6の実施形態におけるファイバレーザ50bは、高反射ミラー51bと半導体可飽和吸収ミラー52bとの間に、グレーティングペア53b、第1の偏光維持ファイバ54b、マルチプレクサ55b、分離素子56b、第2の偏光維持ファイバ57b、及び、集光光学系58bがこの順に高反射ミラー51b側から配置されたレーザ共振器を含んでもよい。さらに、ファイバレーザ50bは、レーザ共振器に励起光を導入するための励起光源59bを含んでもよい。
【0090】
マルチプレクサ55bは、励起光源59bからの励起光を第1の偏光維持ファイバ54bに導入するとともに、第1の偏光維持ファイバ54bと第2の偏光維持ファイバ57bとの間を往復する光を透過させてもよい。第1の偏光維持ファイバ54bには、イッテルビウム(Yb)がドープされており、励起光を受けて誘導放出を行ってもよい。グレーティングペア53bは、回折作用によって所定の波長の光を選択的に反射してもよい。半導体可飽和吸収ミラー52bは、反射層と可飽和吸収体層とが基板に積層されたミラーであり、入射光が弱い間は可飽和吸収体層が入射光を吸収し、入射光が強くなると可飽和吸収体層が入射光を透過させて反射層が入射光を反射することにより、入射光を短パルス化して反射してもよい。分離素子56bは、レーザ共振器内で増幅された光の一部を分離して出力し、残りの一部をレーザ共振器内に戻してもよい。マルチプレクサ55bに光ファイバで接続された励起光源59bから励起光が導入されると、分離素子56bを介してピコ秒オーダーのパルス時間幅を有するパルスレーザ光が出力され得る。
【0091】
ここで、ピコ秒オーダーのパルス時間幅を有するパルスレーザ光を出力するピコ秒パルスレーザとは、パルス時間幅Tが1ns未満(T<1ns)のパルスレーザ光を出力するパルスレーザを意味する。さらに、フェムト秒オーダーのパルス時間幅を有するパルスレーザ光を出力するフェムト秒パルスレーザを本開示に適用しても、同様の効果を得ることができる。
【0092】
第6の実施形態によれば、第5の実施形態と同様の効果を奏するのに加えて、プリパルスレーザ光を光ファイバで導入できるため、ターゲット物質に対して高精度にプリパルスレーザ光を照射することが容易となると推定される。また、一般にファイバレーザでは、レーザ光の強度分布の理想的なガウス分布からのずれを表すM2値が、1.2程度である。M2値が1に近いとそれだけ集光性能が高い。このため、ファイバレーザを用いると小さなターゲットに対して高精度にプリパルスレーザ光を照射することができると推定される。
【0093】
レーザ光の波長が短くなるほど、スズによるレーザ光の吸収率は高くなり得る。従って、スズによる吸収を重視する場合は、短波長の方が有利である。例えば、Nd:YAG(neodymium-doped yttrium aluminum garnet)レーザから出力される基本波の波長1064nmに対し、高調波2ω=532nm、3ω=355nm、4ω=266nmの順で、吸収効率が高くなる。
【0094】
ここではピコ秒オーダーのパルス時間幅を有する短パルスレーザ光を用いる例を示したが、ナノ秒オーダーのパルス時間幅を有するパルスレーザ光を用いても、ドロップレットを拡散させることができる。例えば、パルス時間幅約15ns、繰返し周波数100kHz、パルスエネルギー1.5mJ、波長1.03μm、M2値1.5未満のファイバレーザでも、プリパルスレーザとして十分使用可能である。
【0095】
<9.レーザ光の照射条件>
図17A及び図17Bは、上述のEUV光生成装置におけるレーザ光の照射条件の例を示す表である。照射パルスエネルギーをE(J)、パルス幅をT(s)、照射スポット径をDm(m)とすると、レーザ光の光強度W(W/m2)は、次の式(5)で表される。
W=E/(T(Dm/2)2π)・・・式(5)
【0096】
図17Aは、プリパルスレーザ光の照射条件として、4通りの例(ケース1〜ケース4)を示している。ケース1は、例えば溶融スズのドロップレットの直径が60μmである場合を想定している。そのようなドロップレットを拡散させて所望の拡散ターゲットを生成するための照射条件は次のようになる。例えば、ドロップレットへの照射スポット径Dmを100μmとして、1.6×109W/cm2のレーザ光の光強度Wを必要とした場合には、照射パルスエネルギーE及びパルス幅Tを、それぞれ1.9mJ及び15nsに設定することができる。このようなプリパルスレーザ光により、図3Bに示すような拡散ターゲットの生成が可能となる。
【0097】
図17Aに示すケース2は、例えば溶融スズのドロップレットの直径が10μmのマスリミテッドターゲットに相当する大きさである場合を想定している。そのようなドロップレットを拡散させて所望の拡散ターゲットを生成するための照射条件は次のようになる。例えば、ドロップレットへの照射スポット径Dmを30μmとして、1.6×109W/cm2のレーザ光の光強度Wを必要とした場合には、照射パルスエネルギーE及びパルス幅Tを、それぞれ0.17mJ及び15nsに設定することができる。このようなプリパルスレーザ光により、図7Bに示すような拡散ターゲットの生成が可能となる。
【0098】
図17Aに示すケース3及びケース4は、プリパルスレーザ光を出力するレーザ装置として、図15及び図16に示すようなレーザ装置を使用した場合の例である。ケース3及びケース4は、ドロップレットがマスリミテッドターゲットに相当する大きさであって、1×1010W/cm2以上のレーザ光の光強度Wが必要な場合に適用することができる。
【0099】
図17Bは、メインパルスレーザ光の照射条件として、4通りの例(ケース1〜ケース4)を示している。ケース1は、例えば拡散ターゲットの拡散径が250μmである場合を想定している。そのような拡散ターゲットをプラズマ化するための照射条件は次のようになる。例えば、拡散ターゲットへの照射スポット径Dmを250μmとして、1.0×1010W/cm2のレーザ光の光強度Wを必要とした場合には、照射パルスエネルギーE及びパルス幅Tを、それぞれ100mJ及び20nsに設定することができる。これにより、プラズマ化のために必要なエネルギーが拡散ターゲットに供給され得る。
【0100】
図17Bに示すケース2は、拡散ターゲットの拡散径、照射スポット径Dm及びレーザ光の光強度Wが図17Bのケース1におけるものと同じである場合に、照射パルスエネルギーE及びパルス幅Tを、それぞれ150mJ及び30nsに設定する例である。これにより、プラズマ化のために必要なエネルギーが拡散ターゲットに供給され得る。
【0101】
図17Bに示すケース3は、拡散ターゲットの拡散径が300μmである場合を想定している。そのような拡散ターゲットをプラズマ化するための照射条件は次のようになる。例えば、拡散ターゲットへの照射スポット径Dmを300μmとして、1.1×1010W/cm2のレーザ光の光強度Wを必要とした場合には、照射パルスエネルギーE及びパルス幅Tを、それぞれ200mJ及び25nsに設定することができる。これにより、プラズマ化のために必要なエネルギーが拡散ターゲットに供給され得る。
【0102】
図17Bに示すケース4は、拡散ターゲットの拡散径が200μmである場合を想定している。そのような拡散ターゲットをプラズマ化するための照射条件は次のようになる。例えば、拡散ターゲットへの照射スポット径Dmを200μmとして、1.2×1010W/cm2のレーザ光の光強度Wを必要とした場合には、照射パルスエネルギーE及びパルス幅Tを、それぞれ200mJ及び50nsに設定することができる。これにより、プラズマ化のために必要なエネルギーが拡散ターゲットに供給され得る。
【0103】
以上のように、プリパルスレーザ光及びメインパルスレーザ光の光強度の設定は、それぞれのレーザ光の照射パルスエネルギーEとパルス幅Tとを設定することにより、実現できる。
【0104】
<10.第7の実施形態>
図18は、第7の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す概念図である。第7の実施形態係るEUV光生成装置は、ファイバレーザシステム31から出力されたプリパルスレーザ光の偏光状態を、偏光子(polarizer)20によって変える構成を有してもよい。偏光子20は、プリパルスレーザ光の偏光状態を、直線偏光以外の偏光状態となるように変える素子でよい。偏光子20は、ドライバレーザとプラズマ生成領域(PS)との間の光路の所定の位置に設けられてもよい。本開示において、偏光子には、polarization retarderも含まれる。
【0105】
第7の実施形態において、ファイバレーザシステム31は、ファイバレーザコントローラ31aと、図16(第6の実施形態)を参照しながら説明したファイバレーザ50bとを含んでもよい。CO2パルスレーザシステム32は、CO2レーザコントローラ32aと、図9(第1の実施形態)を参照しながら説明したマスタオシレータ3d、プリアンプ3h、メインアンプ3j、並びに、リレー光学系3g、3i及び3kとを含んでもよい。
【0106】
EUV光生成コントローラ7は、ファイバレーザコントローラ31aにファイバレーザ光強度設定信号を出力してもよい。さらに、EUV光生成コントローラ7は、CO2レーザコントローラ32aにCO2レーザ光強度設定信号を出力してもよい。
【0107】
トリガコントローラ17は、ファイバレーザ50bにファイバレーザ発振トリガ信号を出力してもよい。さらに、トリガコントローラ17は、マスタオシレータ3dにCO2レーザ発振トリガ信号を出力してもよい。
【0108】
ファイバレーザ50bは、ファイバレーザ発振トリガ信号に基づいて、第1の波長でプリパルスレーザ光を出力してもよい。ファイバレーザコントローラ31aは、ファイバレーザ光強度設定信号に基づいて、ファイバレーザ50bの出力強度を制御してもよい。ファイバレーザ50bから出力されたプリパルスレーザ光は、ビームエキスパンダ4においてビーム径が拡大され、偏光子20によって偏光状態が変えられた後、ビームコンバイナ15cに入射してもよい。
【0109】
マスタオシレータ3dは、CO2レーザ発振トリガ信号に基づいて、第2の波長の光を含むシード光を出力してもよい。CO2レーザコントローラ32aは、CO2レーザ光強度設定信号に基づいて、プリアンプ3h及びメインアンプ3jの出力強度を制御してもよい。プリアンプ3h及びメインアンプ3jにより、マスタオシレータ3dから出力されたシード光は所望の光強度に増幅され得る。
【0110】
他の点については第1の実施形態と同様でよい。なお、第7の実施形態において、プリパルスレーザ光の光源としてファイバレーザ50bを用いる場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、プリパルスレーザ光の光源としてYAGレーザやチタンサファイヤレーザを用いてもよい。あるいは、2段階のプリパルスレーザ光による照射が採用される構成において、第1のプリパルスレーザ光が小さな集光径を実現しやすいファイバレーザ装置から出力され、第2のプリパルスレーザ光がYAGレーザ装置または超短パルスレーザ光を得やすいチタンサファイヤレーザ装置から出力され、メインパルスレーザ光が高出力レーザ光が実現できるCO2レーザ装置から出力されるように構成されてもよい。つまり、所望の数のプリパルスレーザ光が各々異なる複数のレーザ装置から出力されるように構成されてもよい。また、プリパルスレーザ光を照射する時点での拡散ターゲットの状態にあわせて、集光径、エネルギー、波長、パルス幅等の異なるプリパルスレーザ光が拡散ターゲットに複数照射されるように構成されてもよい。
【0111】
<10−1.偏光制御の概要>
図19A及び図20Aは、ドロップレットに直線偏光のプリパルスレーザ光を照射する様子を示す概念図である。図19B及び図20Bは、ドロップレットに直線偏光のプリパルスレーザ光を照射した場合に、ドロップレットが拡散する様子を示すシミュレーション結果を示す。図19A及び図19Bはプリパルスレーザ光の偏光方向に直行する方向(X方向)から見た図であり、図20A及び図20Bはプリパルスレーザ光のビーム軸方向(Z方向)から見た図である。
【0112】
図19A及び図20Aを参照に、ドロップレットに直線偏光のプリパルスレーザ光を照射する場合を説明する。この場合、ドロップレットは拡散し、図19B及び図20Bに示すように、拡散ターゲットを生成され得る。このシミュレーション結果から、拡散ターゲットは、偏光方向(Y方向)への広がりに対して、プリパルスレーザ光の偏光方向に直交する方向(X方向)へは大きく広がることがわかる。このような形状に拡散した拡散ターゲットに、プリパルスレーザ光と略同一方向からメインパルスレーザ光を照射する場合、図19B及び図20Bに示すように、拡散ターゲットの形状と、メインパルスレーザ光の断面形状とが比較的大きく異なってしまうため、プラズマ生成に利用されないメインパルスレーザ光が多くなってしまう可能性が高い。
【0113】
ここで、拡散したドロップレットが、直線偏光のプリパルスレーザ光の偏光方向に直交する方向(X方向)には大きく広がる原因について考察する。図21は、溶融スズのドロップレット表面に入射するレーザ光のP偏光成分及びS偏光成分の吸収率を示すグラフである。図21においては、レーザ光の波長を1.06μmとしている。図示するように、レーザ光の吸収率は、レーザ光の入射角度及びその偏光に依存すると言える。
【0114】
入射するレーザ光のP偏光成分の吸収率は、溶融スズのドロップレット表面への入射角度が80°〜85°の場合に最も高く、この角度範囲からずれるに従って低下する。一方、S偏光成分の吸収率は、溶融スズのドロップレット表面への入射角度が略0°の場合、すなわちドロップレット表面に略垂直に入射する場合には、P偏光成分の吸収率と同等であり、入射角度が大きくなるに従って吸収率は低下する。たとえば、入射角度が80°以上の場合、S偏光成分の吸収率は0%に近くなる。
【0115】
このような吸収特性からすると、直線偏光のプリパルスレーザ光が照射されたドロップレットは、レーザ光がP偏光成分として80°〜85°の入射角度で入射する部分において、レーザ光のエネルギーを最も多く吸収すると推定される。ドロップレットの被照射面の内、レーザ光がP偏光成分として80°〜85°の入射角度で入射する部分は、図19A及び図20Aに示すドロップレットのレーザ照射を受ける側の半球面のY方向端部付近である。つまり、この部分ではレーザ光の吸収率が高く、強力なレーザアブレーションが生じると推定される。レーザアブレーション領域(ドロップレットのレーザ照射を受ける側の半球面のY方向端部付近)におけるアブレーション反作用の結果、アブレーション領域から、ドロップレット内部に向かう衝撃波が発生し得る。この衝撃波は、図20AにおけるドロップレットのX軸方向端部付近に向かって伝わり、図20AにおけるX方向に、ドロップレットが拡散すると推定される。拡散したドロップレットが、直線偏光のプリパルスレーザ光の偏光方向に直交する方向(X方向)には大きく広がるのに対し、偏光方向(Y方向)にはあまり広がらない原因は、以上の通りであると推定される。
【0116】
そこで、第7の実施形態においては、偏光子20を用いて、プリパルスレーザ光の偏光状態を、直線偏光以外の偏光状態となるように変えてもよい。さらに、プリパルスレーザ光のスポット径をドロップレットの直径(例えば40μm)以上の大きさにすることにより、ドロップレットのレーザ照射側の面全体にプリパルスレーザ光を照射することができる。これにより、ドロップレットをプリパルスレーザ光のビーム軸を中心に軸対称に拡散させ、拡散したドロップレットにメインパルスレーザ光を効率的に照射することができる。
【0117】
偏光子20は、プリパルスレーザ光の偏光状態を、例えば、実質的に円偏光、ビーム軸に垂直な断面の複数の部分における偏光配向がそれぞれ直交する空間的にランダムな直線偏光、ラジアル偏光、アジマス偏光等に変えてもよい。
【0118】
<10−2.偏光制御の例>
図22A〜図22Fは、第7の実施形態において、円偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射し、拡散したドロップレットにメインパルスレーザ光を照射する様子を示す概念図である。図22A及び図22Bは、円偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射する様子を示している。図22C及び図22Dは、プリパルスレーザ光の照射によって拡散したドロップレットに、メインパルスレーザ光を照射する様子を示している。図22E及び図22Fは、メインパルスレーザ光の照射によって生成されるプラズマの様子を模式的に示している。
【0119】
円偏光の光では、電場ベクトルの先端の軌跡が螺旋を描き、当該軌跡をビーム軸に直交する面(XY面)へ投影すると円を描く。また、プリパルスレーザ光のXY面の断面のどの位置においても偏光状態は円偏光である(図22A及び図22B)。円偏光の光では、X方向の偏光成分とY方向の偏光成分との光強度の割合が実質的に1:1となる。このような円偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射すると、プリパルスレーザ光のドロップレット表面における吸収率の分布は、ドロップレットへのレーザ光の照射方向におけるドロップレットの中心軸に対して軸対称となり得る。その結果、ドロップレットの拡散状態は、ドロップレットの中心軸に対して軸対称となり、拡散ターゲットの形状は、例えば、円盤状となり得る(図22C及び図22D)。これにより、拡散ターゲットの形状と、メインパルスレーザ光の断面形状とが略一致するようになるので、拡散ターゲットにメインパルスレーザ光を効率的に吸収させることができる。
【0120】
図23A〜図23Fは、第7の実施形態において、空間的にランダムな直線偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射し、拡散したドロップレットにメインパルスレーザ光を照射する様子を示す概念図である。図23A及び図23Bは、空間的にランダムな直線偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射する様子を示している。図23C及び図23Dは、プリパルスレーザ光の照射によって拡散したドロップレットに、メインパルスレーザ光を照射する様子を示している。図23E及び図23Fは、メインパルスレーザ光の照射によって生成されるプラズマの様子を模式的に示している。
【0121】
図23Bに示すプリパルスレーザ光は、ビーム軸に直交する断面(XY面)において、直交する直線偏光の分布が、空間的にランダムである。このように空間的にランダムな直線偏光は、X方向の偏光成分とY方向の偏光成分との光強度の割合が実質的に1:1となり得る。空間的にランダムな直線偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射する場合を考える。空間的にランダムな直線偏光とは、レーザ光内を微視的に見た場合に、直線偏光状態の領域が多数混在する偏光状態である。このような偏光状態のプリパルスレーザ光のドロップレット表面における吸収率の分布は、ドロップレットへのレーザ光の照射方向におけるドロップレットの中心軸に対して略軸対称となる。その結果、ドロップレットの拡散状態は、ドロップレットの中心軸に対して略軸対称となり、拡散ターゲットの形状は、例えば、円盤状となり得る。従って、拡散ターゲットにメインパルスレーザ光を効率的に吸収させることができる。
【0122】
図24A〜図24Fは、第7の実施形態において、ラジアル偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射し、拡散したドロップレットにメインパルスレーザ光を照射する様子を示す概念図である。図24A及び図24Bは、ラジアル偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射する様子を示している。図24C及び図24Dは、プリパルスレーザ光の照射によって拡散したドロップレットに、メインパルスレーザ光を照射する様子を示している。図24E及び図24Fは、メインパルスレーザ光の照射によって生成されるプラズマの様子を模式的に示している。
【0123】
ラジアル偏光の光では、ビーム軸に直交する断面(XY面)における偏光配向が放射状であり、ビーム軸に対して軸対称である。このようなラジアル偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射すると、プリパルスレーザ光のドロップレット表面における吸収率の分布は、プリパルスレーザ光のビーム軸に対して軸対称となり得る。この際、プリパルスレーザ光のビーム軸とドロップレットの中心軸とが略一致するのが好ましい。その結果、ドロップレットの拡散状態は、プリパルスレーザ光のビーム軸に対して軸対称となり、拡散ターゲットの形状は、例えば、円盤状となり得る。従って、拡散ターゲットにメインパルスレーザ光を効率的に吸収させることができる。
【0124】
プリパルスレーザ光のスポット径をドロップレットの直径(例えば40μm)以上の大きさにした場合には、ラジアル偏光のプリパルスレーザ光は、ドロップレットDLのレーザ照射側の半球面全体に、P偏光成分として入射し得る。従って、プリパルスレーザ光の吸収率を向上させることができるので、適切な状態の拡散ターゲットを生成するためのプリパルスレーザエネルギーは小さくてもよいと推定される。
【0125】
図25A〜図25Fは、第7の実施形態において、アジマス偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射し、拡散したドロップレットにメインパルスレーザ光を照射する様子を示す概念図である。図25A及び図25Bは、アジマス偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射する様子を示している。図25C及び図25Dは、プリパルスレーザ光の照射によって拡散したドロップレットに、メインパルスレーザ光を照射する様子を示している。図25E及び図25Fは、メインパルスレーザ光の照射によって生成されるプラズマの様子を模式的に示している。
【0126】
アジマス偏光の光では、ビーム軸に直交する断面(XY面)における偏光配向がそれぞれの点において接線方向を向くため、ビーム軸(Z軸)に対して軸対称となり得る。このようなアジマス偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射すると、プリパルスレーザ光のドロップレット表面における吸収率の分布は、プリパルスレーザ光のビーム軸に対して軸対称となり得る。この際、プリパルスレーザ光のビーム軸とドロップレットの中心軸とが略一致するのが好ましい。その結果、ドロップレットの拡散状態は、プリパルスレーザ光のビーム軸に対して軸対称となり、拡散ターゲットの形状は、例えば、円盤状となり得る。従って、拡散ターゲットにメインパルスレーザ光を効率的に吸収させることができる。
【0127】
第7の実施形態においては、プリパルスレーザ光の偏光状態を制御することによって、プリパルスレーザ光のドロップレット表面における吸収率の分布が、ドロップレットの中心軸及び/又はプリパルスレーザ光のビーム軸に対して軸対称となる場合について説明した。しかし、本開示はこれらに限定されない。プリパルスレーザ光のドロップレット表面における吸収率の分布は、ビーム軸に対して完全に軸対称ではなくても、ある程度の軸対称性を有していればよい。従って、プリパルスレーザ光の偏光状態は、例えば、楕円偏光でもよい。
【0128】
図26A及び図26Bは、直線偏光の割合を測定する直線偏光度の測定法の一例を説明するための図である。図26Aは、偏光プリズム及び光強度検出器を含む、直線偏光度の測定装置を示している。図26Bは、偏光プリズムの回転角度と光強度検出器の検出結果との関係の一例を示している。
【0129】
図26Aに示すように、ファイバレーザ50bから出力される直線偏光のプリパルスレーザ光を、偏光子20によって楕円偏光のレーザ光に変えるとする。この楕円偏光の光を、集光光学系41によって集光し、偏光プリズム42に入射させる。偏光プリズム42からの出射光の強度は、光強度検出器43によって検出される。偏光プリズム42は、方解石(calcite)等の複屈折性の結晶を2つ接合して構成されたプリズムである。偏光プリズム42は、入射光から、プリズムの接合面の向きに応じて所定の偏光方向の光を出射光として取り出すために用いられる。偏光プリズム42をプリパルスレーザ光のビーム軸周りに回転させることにより、偏光プリズム42は、回転角度に応じた偏光方向を有するレーザ光を透過させる。以下の説明では偏光プリズム42は、消光比が十分高い理想的な偏光プリズムとする。
【0130】
図26Bに示すように、偏光プリズム42を180°回転させる毎に、偏光プリズム42からの出射光の強度が周期的に変化する。ここで、式(6)に示すように、直線偏光度Pは光強度の最大値Imaxと最小値Iminとから求めることができる。
P=(Imax−Imin)/(Imax+Imin)×100(%)・・・式(6)
【0131】
ビーム軸に対して略軸対称な偏光状態(円偏光、空間的にランダムな直線偏光、ラジアル偏光、アジマス偏光)の場合は、図26Aによって計測された直線偏光度Pは略0%となる。一方、直線偏光の場合は、直線偏光度Pは略100%となる。但し、偏光成分比Rが以下のような範囲であれば、拡散ターゲットが所望の形状(たとえば、円盤状)に近い形状に形成され得る。これにより、直線偏光のプリパルスレーザ光がドロップレットに照射される場合に比べてメインパルスレーザ光の吸収率を向上させることができる。
0%≦P<30%(好ましい範囲)
0%≦P<20%(より好ましい範囲)
0%≦P<10%(最も好ましい範囲)
なお、この範囲は実際に使用する偏光プリズム42の消光比を考慮して補正してもよい。
【0132】
<10−3.偏光子の例>
図27は、第7の実施形態における偏光子の第1の例を示す斜視図である。図27においては、直線偏光を円偏光に変換するλ/4波長板(quarter waveplate)21が、偏光子として用いられている。
【0133】
透過型のλ/4波長板21は、入射した光の内の、結晶の光学軸に平行な偏光成分と結晶の光学軸に直交する偏光成分との間に、位相差π/2を与えて各偏光成分を透過させる複屈折性の結晶である。図27に示すように、λ/4波長板21の入射側の面に垂直に入射する直線偏光の入射光の偏光方向が、λ/4波長板21の結晶の光学軸に対して+45°傾いている場合には、λ/4波長板21からの出射光は円偏光となる。また、入射光の偏光方向が、λ/4波長板21の結晶の光学軸に対して−45°の角度となった場合には、出射光の円偏光の回転方向が逆転する。なお、本開示は、透過型のλ/4波長板21を用いる場合に限定されず、反射型のλ/4波長板を用いてもよい。
【0134】
図28A〜図28Cは、第7の実施形態における偏光子の第2の例を示す図である。図28Aは偏光子の正面図、図28Bは偏光子の径方向における断面の一部を拡大した図、図28Cは偏光子の使用形態を示す図である。図28A〜図28Cにおいては、直線偏光を空間的にランダムな直線偏光に変換するランダム位相板22が、偏光子として用いられている。
【0135】
透過型のランダム位相板22は、直径Dの透過型光学素子の入射側面又は出射側面に、たとえば、一辺の長さがdである微小な正方形領域が凹部や凸部によって形成され、これらがランダムに配置された構成を有してもよい。このランダム位相板22は、直径Dの入射光を、一辺の長さがdである正方形の微小ビームに分割し得る。そして、ランダム位相板22は、凸部22aを透過した微小光と凹部22bを透過した微小光との間に、位相差πを与え得る。位相差πは、入射光の波長をλとし、ランダム位相板22の屈折率をn1とした場合に、凸部22aと凹部22bとの段差Δtを式(7)のように設定することによって与えられる。
Δt=λ/2(n1−1)・・・式(7)
【0136】
図28Cに示すように、透過型のランダム位相板22は、たとえばプリパルスレーザ装置と集光光学系15との間に配置されてもよい。直線偏光のレーザ光がランダム位相板22に入射し、ランダム位相板22を透過したレーザ光は、偏光配向がそれぞれ直交する空間的にランダムな直線偏光に変換され得る。ここで、直交する偏光配向のレーザ光同士は干渉しない。このため、集光光学系15による集光点でのビーム断面における光強度の分布はガウス分布ではなく、トップハット(top hat)分布に近くなる。このようなプリパルスレーザ光をドロップレットに照射することにより、ドロップレットの拡散状態は、ドロップレットの中心軸に対して略軸対称となり得る。このため、拡散ターゲットの形状は、例えば、円盤状となり、拡散ターゲットにメインパルスレーザ光を効率的に吸収させることができる。
【0137】
なお、本開示は透過型のランダム位相板22を用いる場合に限定されず、反射型のランダム位相板を用いてもよい。また、ランダム位相板22の凸部22a及び凹部22bの平面形状を正方形とした場合について説明したが、凸部22a及び凹部22bの平面形状は、六角形、三角形又はその他の多角形でもよい。
【0138】
図29A及び図29Bは、第7の実施形態における偏光子の第3の例を示す図である。図29Aは偏光子の斜視図であり、図29Bは偏光子の正面図である。図29A及び図29Bにおいては、直線偏光の光をラジアル偏光の光に変換するn分割波長板23が、偏光子として示されている。
【0139】
n分割波長板23は、三角形のn枚の半波長板(half waveplates)231、232、…、23nをレーザ光のビーム軸に対して軸対称となるように配置した透過型の光学素子である。半波長板231、232、…、23nの各々は、入射した光の内の、結晶の光学軸に平行な偏光成分と結晶の光学軸に直交する偏光成分との間に、位相差πを与えて各偏光成分を透過させる複屈折性の結晶である。このような半波長板の入射側面に垂直に入射する直線偏光の入射光の偏光方向が、半波長板の結晶の光学軸に対して角度θ傾いていると、出射光は、半波長板の結晶の光学軸に対して偏光方向がさらに角度θ傾いた直線偏光となる。つまり、出射光の偏光方向は、入射光の偏光方向から角度2θ傾くことになる。
【0140】
例えば、半波長板231と半波長板233とは、結晶の光学軸が45°異なるように配置されている。すると、半波長板231を透過した直線偏光の光と、半波長板233を透過した直線偏光の光とでは、偏光方向が90°異なることになる。このように、入射光の偏光方向は、各半波長板の光学軸と入射光の偏光方向とがなす角度に応じて変換される。これによって、各半波長板を透過したレーザ光の偏光方向が、各々所定の偏光方向に変換される。結果として、n分割波長板23は、直線偏光の光をラジアル偏光の光に変換することができる。また、n分割波長板23におけるそれぞれの半波長板の配置を変更することにより、直線偏光の光をアジマス偏光の光に変換することもできる。
【0141】
図30は、第7の実施形態における偏光子の第4の例を示す図である。図30においては、直線偏光の光をラジアル偏光の光に変換する偏光子として、位相補償板24a、偏光回転板24b、及び、シータセル24cが示されている。
【0142】
シータセル24cは、ねじれネマティック(twisted nematic,TN)液晶が封入された光学素子であり、光の入射側から出射側にかけて、液晶分子の配列がねじれるように各液晶分子が配置されている。このシータセル24cに入射した直線偏光の入射光は、液晶分子の配列のねじれに従って旋光し、入射光の偏光方向に対して偏光方向が傾いた直線偏光の光がシータセル24cから出射する。従って、シータセル24cにおける液晶分子の配列のねじれ角度を、方位角方向に応じて異なるようにすることにより、シータセル24cは直線偏光の入射光をラジアル偏光の出射光に変換することができる。
【0143】
但し、シータセル24cのみで直線偏光をラジアル偏光に変換しようとすると、シータセル24cから出射する出射光の上半分と下半分との境界付近において、光強度が低下してしまう場合がある。そこで、位相補償板24aにより、予め入射光の上半分の位相をπずらし、下半分は位相をずらさずに、シータセル24cに入射させる。図30において、位相補償板24aの出射面に示される破線の矢印は、位相補償板24aの上半分と下半分とで光の位相を逆にしたことを示している。位相補償板24aの上半分は、例えば、光の入射側から出射側にかけて、液晶分子の配列が180°ねじれているTN液晶によって構成される。このように位相補償板24aの上半分と下半分とで位相を逆にした直線偏光をシータセル24cに入射させることにより、シータセル24cの上半分から出射する出射光と下半分から出射する出射光との境界付近においては同位相の光が出射することになる。これにより、シータセル24cから出射した出射光の上半分と下半分との境界付近における光強度の低下を抑制することができる。
【0144】
偏光回転板24bは、直線偏光の入射光の偏光方向を90°回転させて出力する光学素子である。入射光の偏光方向を90°回転させてシータセル24cに入射させた場合には、シータセル24cは直線偏光の光をアジマス偏光の光に変換することができる。偏光回転板24bは、例えば、光の入射側から出射側にかけて、液晶分子の配列が90°ねじれているTN液晶によって構成される。この場合、ラジアル偏光とアジマス偏光との切り替えは、偏光回転板24bに印加する直流電圧を制御して、液晶分子の配列をねじれた状態とねじれていない状態とに切り替えることによって行うことができる。
【0145】
以上のように、位相補償板24a、偏光回転板24b、及びシータセル24cを用いることにより、偏光状態の変換を比較的自由に行うことができる。また、図27〜図29Bを参照しながら説明したように、波長板(位相板)を用いて偏光方向を変える場合は、波長板(位相板)の厚さによって、偏光方向を変える光の波長が異なるのに対し、図30を参照しながら説明したように、シータセル24cを用いる場合は、幅広い波長帯域の入射光の偏光方向を変換できる。従って、シータセル24cを用いれば、プリパルスレーザ光の帯域幅が広い場合でも偏光方向の変換が可能である。
【0146】
<11.第8の実施形態>
図31は、第8の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す概念図である。第8の実施形態に係るEUV光生成装置は、ファイバレーザシステム31から出力されたプリパルスレーザ光の偏光状態を、偏光子20によって制御し、このプリパルスレーザ光をメインパルスレーザ光とは別の経路からチャンバ1内に供給する構成を有してもよい。ファイバレーザシステム31及び偏光子20の構成は、第7の実施形態において説明したのと同様でよい。他の点については第2の実施形態と同様でよい。
【0147】
<12.第9の実施形態>
図32A〜図32Cは、第9の実施形態に係るEUV光生成装置においてプリパルスレーザ光を出力するレーザ装置の構成例を示す概念図である。第9の実施形態におけるレーザ装置60aは、上述の第1〜第4の実施形態においてドロップレットを拡散させるためのプリパルスレーザ光を出力するドライバレーザとして、チャンバの外部に設けられてもよい。
【0148】
図32Aに示すように、レーザ装置60aは、反射型の偏光子61aと、フロントミラー62とを含むレーザ共振器を含んでもよい。レーザ共振器内には、レーザ媒質63が配置されてもよい。図示しない励起光源が出力する励起光によってレーザ媒質63から誘導放出光が生成される。誘導放出光は偏光子61aとフロントミラー62との間を往復しながらレーザ媒質63により増幅され、レーザ装置60aからレーザ光が出力される。
【0149】
偏光子61aは、偏光子61aの入射位置に応じて所定の偏光方向の光を高い反射率で反射する機能を有してもよい。偏光子61aの反射特性に応じて、図32Bに示すラジアル偏光、又は、図32Cに示すアジマス偏光の光が、レーザ共振器内で増幅され得る。この増幅された光の一部がフロントミラー62を透過して、プリパルスレーザ光として出力され得る。
【0150】
第9の実施形態によれば、ドライバレーザの共振器の一部に偏光子が用いられている。これにより、ドライバレーザとプラズマ生成領域(PS)との間の光路上には、第7の実施形態のように偏光子を配置しなくてもよい。
【0151】
図33A〜図33Cは、第9の実施形態の変形例に係るEUV光生成装置においてプリパルスレーザ光を出力するレーザ装置の構成例を示す概念図である。この変形例におけるレーザ装置60bは、リアミラー61と、反射型の偏光子62aとを含むレーザ共振器を含んでもよい。偏光子62aの反射特性に応じて、図33Bに示すラジアル偏光、又は、図33Cに示すアジマス偏光の光が、レーザ共振器内で増幅され得る。この増幅された光の一部が偏光子62aを透過して、プリパルスレーザ光として出力され得る。
【0152】
図34A及び図34Bは、第9の実施形態における偏光子の例を示す図である。図34Aは偏光子の斜視図であり、図34Bは偏光子の回折格子部の径方向における断面の一部を拡大して示す図である。図34Aに示すように、反射型の偏光子61aは、反射面に同心円状の回折格子611が形成されたミラーでよい。また、図34Bに示すように、偏光子61aにおいては、ガラス基板613上に多層膜612が形成され、多層膜612の表面に回折格子611が形成されてもよい。
【0153】
このような偏光子61aにアジマス偏光(偏光方向が回折格子611の各溝の方向に略平行)の光が入射すると、アジマス偏光の光は回折格子611を透過して多層膜612へと伝搬し得る。これに対し、偏光子61aにラジアル偏光(偏光方向が回折格子611の各溝の方向に略垂直)の光が入射すると、ラジアル偏光の光は回折格子611を透過せずに反射される。第9の実施形態(図32A〜図32C参照)においては、このような偏光子61aをレーザ共振器に用いることによって、ラジアル偏光でのレーザ光の発振を実現することができる。
【0154】
なお、回折格子611の溝を放射状に形成すれば、偏光子61aがアジマス偏光の光を高い反射率で反射するように構成される。この場合には、アジマス偏光でのレーザ光の発振も可能である。また、第9の実施形態の変形例(図33A〜図33C参照)における偏光子62aに回折格子611を形成することにより、ラジアル偏光又はアジマス偏光でのレーザ光の発振が可能である。
【0155】
ドロップレットへのプリパルスレーザ光照射から所定時間内にメインパルスレーザ光を拡散ターゲットに照射することにより、ドロップレット直径によらずEUV光のエネルギーのバラつきを低減できる可能性がある。図35は、第8の実施形態に係るEUV光生成装置による拡散ターゲットの生成実験の結果を示す。プリパルスレーザ光は偏光子により円偏光となっている。図35の横軸はプリパルスレーザ光がドロップレットに照射された時点からの経過時間を示す。縦軸はドロップレットにプリパルスレーザ光を照射して生成された拡散ターゲットの拡散半径を示す。拡散半径は、直径6μm以上の大きさの粒子が存在する空間の半径としている。図中の各線は、ドロップレットの直径を12μm、20μm、30μm、40μmとした場合の、プリパルスレーザ照射時点からの拡散ターゲット半径の時間変化を各々プロットしている。図35から判るように、拡散ターゲットの拡散半径は、ドロップレット直径に対する依存性が低い。また、ドロップレットへのプリパルスレーザ光照射から0.3〜3μSの間は、拡散半径の時間変化が比較的緩やかになっている。この時間帯ではドロップレット毎の拡散径のバラつきが少ないと推測できる。従って、この時間帯における拡散ターゲットにメインパルスレーザ光を照射すれば、生成されるEUV光エネルギーのパルス間でのバラつきも少ないと推定される。ドロップレットへのプリパルスレーザ光照射から0.3〜3μSの間にメインパルスレーザ光を拡散ターゲットに照射することにより、EUV光のエネルギーのバラつきを低減できる可能性がある。
【0156】
<13.フルーエンスの制御>
図36は、上述の実施形態において、プリパルスレーザ光のフルーエンス(集光点におけるビーム断面の単位面積あたりのエネルギー)に応じたCEの測定値をプロットしたグラフである。
【0157】
測定条件は、次の通りである。ターゲット物質としては、直径20μmの溶融スズのドロップレットを用いた。プリパルスレーザ光としては、YAGパルスレーザ装置から出力されるパルス幅5nsから15nsのレーザ光を用いた。メインパルスレーザ光としては、CO2パルスレーザ装置から出力されるパルス幅20nsのレーザ光を用いた。メインパルスレーザ光の光強度は6.0×109W/cm2とし、プリパルスレーザ光照射後のメインパルスレーザ光照射までの遅延時間は1.5μsとした。
【0158】
図36に示すグラフの横軸はプリパルスレーザ光の照射条件(パルス幅、エネルギー、集光面積)をフルーエンスに換算した値を示している。また、縦軸はプリパルスレーザ光の各照射条件において生成された拡散ターゲットに前述のメインパルスレーザ光をほぼ同様の条件で照射した場合のCEを示している。
【0159】
図36に示す測定結果から、プリパルスレーザ光のフルーエンスを高くするとCEが3%程度にまで向上することがわかった。すなわち、少なくともプリパルスレーザ光のパルス幅が5ns〜15nsの範囲では、フルーエンスとCEとの相関があることがわかった。
【0160】
従って、上述の実施形態において、EUV光生成コントローラ7はプリパルスレーザ光の光強度ではなくフルーエンスを制御するように構成されてもよい。図36に示す測定結果から、プリパルスレーザ光のフルーエンスは、10mJ/cm2〜600mJ/cm2の範囲が好ましい。また、30mJ/cm2〜400mJ/cm2の範囲がより好ましい。また、150mJ/cm2〜300mJ/cm2の範囲がさらに好ましい。
【0161】
プリパルスレーザ光のフルーエンスが上述のような範囲に制御される場合にCEが向上するという計測結果から、この条件ではターゲット物質のドロップレットは円盤状又は皿状、或いはトーラス状に拡散していたものと推測される。つまり、ドロップレットが拡散し、総表面積が大きくなった結果、拡散した微粒子にメインパルスレーザ光のエネルギーが効率的に吸収されたため、CEが向上したものと推測される。
【0162】
<14.遅延時間の制御>
図37は、上述の実施形態において、プリパルスレーザ光照射後からメインパルスレーザ光が照射されるまでの遅延時間に応じたCEの測定値をターゲット物質のドロップレット径ごとにプロットしたグラフである。
【0163】
測定条件は、次の通りである。ターゲット物質としては、直径12μm、20μm、30μm及び40μmの溶融スズのドロップレットを用いた。プリパルスレーザ光としては、YAGパルスレーザ装置から出力されるパルス幅5nsのレーザ光を用いた。プリパルスレーザ光のフルーエンスは490mJ/cm2とした。メインパルスレーザ光としては、CO2パルスレーザ装置から出力されるパルス幅20nsのレーザ光を用いた。メインパルスレーザ光の光強度は6.0×109W/cm2とした。
【0164】
図37に示す測定結果から、プリパルスレーザ光照射後からメインパルスレーザ光照射までの遅延時間は、0.5μs〜2.5μsの範囲が好ましいことがわかった。但し、ターゲット物質のドロップレット径ごとに、高いCEを得るためのメインパルスレーザ光照射までの遅延時間の最適範囲は異なる可能性があることがわかった。
【0165】
ドロップレット径が12μmの場合、プリパルスレーザ光照射後からメインパルスレーザ光照射までの遅延時間は、0.5μs〜2μsの範囲が好ましい。また、0.6μs〜1.5μsの範囲がより好ましい。また、0.7μs〜1μsの範囲がさらに好ましい。
【0166】
ドロップレット径が20μmの場合、プリパルスレーザ光照射後からメインパルスレーザ光照射までの遅延時間は、0.5μs〜2.5μsの範囲が好ましい。また、1μs〜2μsの範囲がより好ましい。また、1.3μs〜1.7μsの範囲がさらに好ましい。
【0167】
ドロップレット径が30μmの場合、プリパルスレーザ光照射後からメインパルスレーザ光照射までの遅延時間は、0.5μs〜4μsの範囲が好ましい。また、1.5μs〜3.5μsの範囲がより好ましい。また、2μs〜3μsの範囲がさらに好ましい。
【0168】
ドロップレット径が40μmの場合、プリパルスレーザ光照射後からメインパルスレーザ光照射までの遅延時間は、0.5μs〜6μsの範囲が好ましい。また、1.5μs〜5μsの範囲がより好ましい。また、2μs〜4μsの範囲がさらに好ましい。
【0169】
プリパルスレーザ光照射後からメインパルスレーザ光照射までの遅延時間を上述のような範囲に制御することにより、ターゲット物質のドロップレットが十分に細かい微粒子に拡散されたものと推測される。また、ドロップレットが拡散し、総表面積が大きくなった結果、拡散した微粒子にメインパルスレーザ光のエネルギーが効率的に吸収されたため、CEが向上したものと推測される。
【0170】
以上の説明において、ドライバレーザ3(図1)は、ドロップレットに照射されるプリパルスレーザ光、及び拡散ターゲットに照射されるメインパルスレーザ光を出力するレーザ光生成システムに相当する。YAGパルスレーザ装置3a(図9〜図11)及びファイバレーザシステム31(図18、図31)は、それぞれ、プリパルスレーザ光を生成する第1のパルスレーザ装置に相当する。CO2パルスレーザ装置3b(図9〜図11)及びCO2パルスレーザシステム32(図18、図31)は、それぞれ、メインパルスレーザ光を生成する第2のパルスレーザ装置に相当する。また、EUV光生成コントローラ7(図1)は、プリパルスレーザ光の光強度とメインパルスレーザ光の光強度及び生成タイミングとを制御するレーザ制御部に相当する。
【符号の説明】
【0171】
1…チャンバ、2…ターゲット供給部、3…ドライバレーザ、3a…YAGパルスレーザ装置、3b…CO2パルスレーザ装置、3d、3e…マスタオシレータ、3g…リレー光学系、3h…プリアンプ、3i…リレー光学系、3j…メインアンプ、3k…リレー光学系、4…ビームエキスパンダ、5…EUV集光ミラー、6a、6b…磁石、6c…電生成装置、6d…電源コントローラ、7…光生成コントローラ、7a…トリガーカウンタ、7b…タイマー、8…ドロップレットコントローラ、9…露光装置コントローラ、11…露光装置接続ポート、12…窓、13…ターゲットノズル、14…ターゲット回収部、15…集光光学系、15a…高反射ミラー、15b…軸外放物面ミラー、15c…ビームコンバイナ、15d、15e…高反射ミラー、15f、15g…軸外放物面ミラー、16…光検出器、17…トリガコントローラ、19a、19b…イオン回収部、20…偏光子、21…λ/4波長板、22…ランダム位相板、22a…凸部、22b…凹部、23…n分割波長板、24a…位相補償板、24b…偏光回転板、24c…シータセル、31…ファイバレーザシステム、31a…ファイバレーザコントローラ、32…CO2パルスレーザシステム、32a…CO2レーザコントローラ、41…集光光学系、42…偏光プリズム、43…光強度検出器、50a…チタンサファイヤレーザ、50b…ファイバレーザ、51a、52b…半導体可飽和吸収ミラー、51b…高反射ミラー、52a…出力結合ミラー、53a…凹面ミラー、53b…グレーティングペア、54a…第1のポンピングミラー、54b…第1の偏光維持ファイバ、55a…チタンサファイア結晶、55b…マルチプレクサ、56a…第2のポンピングミラー、56b…分離素子、57a、58a…プリズム、57b…第2の偏光維持ファイバ、58b…集光光学系、59a、59b…励起光源、60a、60b…レーザ装置、61…リアミラー、61a…偏光子、62…フロントミラー、62a…偏光子、63…レーザ媒質、231、232、233、23n…半波長板、611…回折格子、612…多層膜、613…ガラス基板、DL…ドロップレット、PS…プラズマ生成領域、IF…中間集光点
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体ウエハを露光するため等に用いられる極端紫外(EUV:extreme ultraviolet)光を生成するための装置、及び極端紫外光の生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って光リソグラフィにおける微細化が急速に進展しており、次世代においては、60nm〜45nmの微細加工、更には32nm以下の微細加工が要求されるようになる。そのため、例えば、32nm以下の微細加工の要求に応えるべく、波長13nm程度のEUV光を生成するEUV光生成装置と縮小投影反射光学系とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲットにレーザ光を照射することによって生成されるプラズマを用いたLPP(laser produced plasma)式装置と、放電によって生成されるプラズマを用いたDPP(discharge produced plasma)式装置と、軌道放射光を用いたSR(synchrotron radiation)式装置との3種類が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/149862号明細書
【概要】
【0005】
本開示の1つの観点に係る極端紫外光生成装置は、レーザ光生成システムと、前記レーザ光生成システムから出力される少なくとも1つのレーザ光の光強度および出力タイミングの少なくともいずれか一方を制御するレーザ制御システムと、前記レーザ光生成システムから出力される前記少なくとも1つのレーザ光を内部に導入するための少なくとも1つの入射口が設けられたチャンバと、前記チャンバに設けられ、前記チャンバ内の所定の領域にターゲット物質を供給するターゲット供給部と、を備えてもよい。
【0006】
本開示の他の観点に係る極端紫外光生成装置は、レーザ光生成システムと、前記レーザ光生成システムから出力される少なくとも1つのレーザ光のフルーエンスを制御するレーザ制御システムと、前記レーザ光生成システムから出力される前記少なくとも1つのレーザ光を内部に導入するための少なくとも1つの入射口が設けられたチャンバと、前記チャンバに設けられ、前記チャンバ内の所定の領域にターゲット物質を供給するターゲット供給部と、を備えてもよい。
【0007】
本開示の他の観点に係る極端紫外光生成方法は、チャンバ内にターゲット物質をドロップレットの形状で供給することと、前記ドロップレットにレーザ光生成システムから出力されるプリパルスレーザ光を照射することと、前記ドロップレットに前記プリパルスレーザ光が照射された時点から所定時間経過後、前記プリパルスレーザ光が照射された前記ドロップレットに、前記レーザ光生成システムから出力されるメインパルスレーザ光を照射することと、を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本開示の一実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す概念図である。
【図2】図2は、ドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した様子を示す概念図である。
【図3】図3A〜図3Cは、溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した場合のドロップレットの拡散の様子をシミュレーションした結果の第1の例を示す図であり、図3Dは、実際に溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した場合のドロップレットの様子を撮影した写真である。
【図4】図4Aおよび図4Bは、溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した場合のドロップレットの拡散の様子の第2の例を模式的に示す図である。
【図5】図5A〜図5Iは、直径60μmの溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した場合の拡散ターゲットの状態をシミュレーションした結果を示す図である。
【図6】図6は、直径60μmの溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した場合の拡散ターゲットの拡散径と、拡散ターゲットへのメインパルスレーザ光の照射タイミングに応じたCEとを示す図である。
【図7】図7A〜図7Iは、直径10μmの溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した場合の拡散ターゲットの状態をシミュレーションした結果を示す図である。
【図8】図8は、直径10μmの溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した場合の拡散ターゲットの拡散径と、メインパルスレーザ光の照射タイミングに応じたCEとを示す図である。
【図9】図9は、第1の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を示す概念図である。
【図10】図10は、第2の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を示す概念図である。
【図11】図11は、第3の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を示す概念図である。
【図12】図12A〜図12Fは、第3の実施形態において、ドロップレットに第1のプリパルスレーザ光を照射し、さらに、第2のプリパルスレーザ光を照射した場合の拡散ターゲットの状態を示す概念図である。
【図13】図13は、第3の実施形態の変形例に係るEUV光生成装置の構成を示す概念図である。
【図14】図14は、第4の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を示す概念図である。
【図15】図15は、第5の実施形態に係るEUV光生成装置においてプリパルスレーザ光を出力するチタンサファイヤレーザの構成例を示す概念図である。
【図16】図16は、第6の実施形態に係るEUV光生成装置においてプリパルスレーザ光を出力するファイバレーザの構成例を示す概念図である。
【図17】図17A及び図17Bは、上述の実施形態に係るEUV光生成装置におけるレーザ光の照射条件の例を示す表である。
【図18】図18は、第7の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を示す概念図である。
【図19】図19Aは、ドロップレットに直線偏光のプリパルスレーザ光を照射した様子を示す概念図であり、図19Bは、ドロップレットの拡散の様子をシミュレーションした結果を示す図である。
【図20】図20Aは、ドロップレットに直線偏光のプリパルスレーザ光を照射した様子を示す概念図であり、図20Bは、ドロップレットの拡散の様子をシミュレーションした結果を示す図である。
【図21】図21は、溶融スズのドロップレットに対してP偏光及びS偏光で入射するレーザ光の吸収率を示すグラフである。
【図22】図22A〜図22Fは、第7の実施形態において、円偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射し、拡散したドロップレットにメインパルスレーザ光を照射した様子を示す概念図である。
【図23】図23A〜図23Fは、第7の実施形態において、空間的にランダムな直線偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射し、拡散したドロップレットにメインパルスレーザ光を照射した様子を示す概念図である。
【図24】図24A〜図24Fは、第7の実施形態において、ラジアル偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射し、拡散したドロップレットにメインパルスレーザ光を照射した様子を示す概念図である。
【図25】図25A〜図25Fは、第7の実施形態において、アジマス偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射し、拡散したドロップレットにメインパルスレーザ光を照射した様子を示す概念図である。
【図26】図26A及び図26Bは、直線偏光の割合を測定する直線偏光度の測定法の一例を説明するための図である。
【図27】図27は、第7の実施形態における偏光子の第1の例を示す図である。
【図28】図28A〜図28Cは、第7の実施形態における偏光子の第2の例を示す図である。
【図29】図29A及び図29Bは、第7の実施形態における偏光子の第3の例を示す図である。
【図30】図30は、第7の実施形態における偏光子の第4の例を示す図である。
【図31】図31は、第8の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を示す概念図である。
【図32】図32A〜図32Cは、第9の実施形態に係るEUV光生成装置においてプリパルスレーザ光を出力するレーザ装置の構成例を示す概念図である。
【図33】図33A〜図33Cは、第9の実施形態の変形例に係るEUV光生成装置においてプリパルスレーザ光を出力するレーザ装置の構成例を示す概念図である。
【図34】図34A及び図34Bは、第9の実施形態における偏光子の例を示す図である。
【図35】図35は、第8の実施形態に係るEUV光生成装置による拡散ターゲット生成実験の結果を示す図である。
【図36】図36は、上述の実施形態において、プリパルスレーザ光のフルーエンスに応じたCEの測定値をプロットしたグラフである。
【図37】図37は、上述の実施形態において、プリパルスレーザ光照射後からメインパルスレーザ光が照射されるまでの遅延時間に応じたCEの測定値をターゲット物質のドロップレット径ごとにプロットしたグラフである。
【実施の形態】
【0009】
<内容>
<1.概略構成>
<2.ドロップレットの拡散>
<2−1.円盤状又は皿状の拡散>
<2−2.トーラス状の拡散>
<2−3.大径ドロップレットの拡散>
<2−4.小径ドロップレットの拡散>
<3.第1の実施形態>
<4.第2の実施形態>
<5.第3の実施形態>
<6.第4の実施形態>
<7.第5の実施形態>
<8.第6の実施形態>
<9.レーザ光の照射条件>
<10.第7の実施形態>
<10−1.偏光制御の概要>
<10−2.偏光制御の例>
<10−3.偏光子の例>
<11.第8の実施形態>
<12.第9の実施形態>
<13.フルーエンスの制御>
<14.遅延時間の制御>
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明する実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の範囲を限定するものではない。また、実施形態で説明される構成の全てが本開示の構成として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
<1.概略構成>
図1は、本開示の一実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す概念図である。本実施形態に係るEUV光生成装置では、レーザ光をターゲット物質に照射してターゲット物質を励起することによりEUV光を生成するLPP方式が採用されてもよい。図1に示すように、このEUV光生成装置は、チャンバ1と、ターゲット供給部2と、ドライバレーザ3と、EUV集光ミラー5と、EUV光生成コントローラ7とを備えてもよい。
【0012】
チャンバ1は、好ましくは真空チャンバであり、その内部でEUV光の生成が行われ得る。チャンバ1には、露光装置接続ポート11と、窓12とが設けられてもよい。露光装置接続ポート11を介して、チャンバ1内で生成されたEUV光が外部の露光装置(縮小投影反射光学系)等の処理装置に出力されてもよい。窓12を介して、ドライバレーザ3から出力されたレーザ光をチャンバ1内に入射させてもよい。
【0013】
ターゲット供給部2は、EUV光を生成するために用いられるスズ(Sn)やリチウム(Li)等のターゲット物質を、ドロップレットコントローラ8によって指示されたタイミングでチャンバ1内に供給してもよい。ターゲット供給部2内のターゲット物質は、ターゲットノズル13からドロップレットDLとして出力され得る。ドロップレットDLは、例えば10μm以上100μm以下の直径を有していてもよい。チャンバ1内に供給された複数のドロップレットDLの内で、レーザ光が照射されずに不要となったものは、ターゲット回収部14に回収されてもよい。
【0014】
ドライバレーザ3は、ターゲット物質を励起するために用いられるレーザ光を出力してもよい。ドライバレーザ3は、発振増幅型レーザ装置(master oscillator power amplifier type laser apparatus)でもよい。ドライバレーザ3から出力されるレーザ光は、例えば、パルス幅が数ns〜数十ns程度、周波数が10kHz〜100kHz程度のパルスレーザ光であってもよい。本実施形態では、ドライバレーザ3は、プリパルスレーザ光と、メインパルスレーザ光とを出力してもよい。ドライバレーザ3としては、例えば、プリパルスレーザ光を出力するYAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザ装置と、メインパルスレーザ光を出力するCO2レーザ装置との組合せが用いられ得るが、他のレーザ装置が用いられてもよい。
【0015】
ドライバレーザ3から出力されたプリパルスレーザ光及びメインパルスレーザ光は、それぞれ、高反射ミラー15a、軸外放物面ミラー15b等を含むレーザ集光光学系と、上述の窓12とを介して、チャンバ1内の所定の領域においてドロップレットDL上に焦点を形成するように集光されてもよい。
【0016】
プリパルスレーザ光がドロップレットDLに照射されると、ドロップレットDLが微細な粒子となって拡散し得る。本願では、ドロップレットDLが粉々に拡散した状態のターゲット物質を拡散ターゲットと称する。メインパルスレーザ光は、ドロップレットDLが拡散したことによって形成された拡散ターゲットに照射され得る。メインパルスレーザ光のエネルギーによって、ターゲット物質が励起されてプラズマ化すると、そこからEUV光を含む様々な波長の光が放射され得る。
【0017】
EUV集光ミラー5は、プラズマから放射される様々な波長の光の内から、所定の波長の光(例えば、13.5nm付近の波長を有するEUV光)を集光する光学系でよい。EUV集光ミラー5は、例えば、波長が13.5nm付近のEUV光を選択的に反射するモリブデン(Mo)/シリコン(Si)多層膜が形成されている回転楕円面の凹面状の反射面を有するミラーであってもよい。EUV集光ミラー5は、回転楕円面の第1の焦点がプラズマ生成領域PSと一致するように配置されもよい。EUV集光ミラー5で反射されたEUV光は、回転楕円面の第2の焦点、即ち、中間集光点(intermediate focus)IFに集光され、外部の露光装置等に出力されてもよい。
【0018】
EUV光生成コントローラ7は、ドライバレーザ3に発振トリガ信号とレーザ光強度設定信号とを出力してもよい。これにより、EUV光生成コントローラ7は、チャンバ1内に供給されるドロップレットが所望の拡散ターゲットに変容するように、プリパルスレーザ光の光強度及び生成タイミングを制御してもよい。また、EUV光生成コントローラ7は、メインパルスレーザ光の照射によって拡散ターゲットから所望の状態のプラズマが生成されるように、メインパルスレーザ光の光強度及び生成タイミングを制御してもよい。
【0019】
発振トリガ信号は、露光装置コントローラ9からの発振トリガ検出信号に基づいて出力され、ドライバレーザ3によるレーザ光の生成タイミングが制御されてもよい。レーザ光強度設定信号は、露光装置コントローラ9からの発振トリガ検出信号と、チャンバ1内のEUV光検出器16及び露光装置コントローラ9からのEUVパルスエネルギー検出信号のいずれかとに基づいて出力されてもよい。レーザ光強度設定信号は、レーザ光の光強度を制御するために、ドライバレーザ3に出力されてもよい。また、EUV光生成コントローラ7は、トリガーカウンタ7aとタイマー7bとを含んでもよく、所定時間あたりの発振トリガ検出信号数をカウントしてもよい。EUVパルスエネルギー検出信号と、カウントされた発振トリガ検出信号数とに基づいて、レーザ光強度設定信号が出力されてもよい。
【0020】
<2.ドロップレットの拡散>
プリパルスレーザ光の照射によるドロップレットの拡散について説明する。図2は、ドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した様子を示す概念図である。図2は、プリパルスレーザ光のビーム軸(Z軸)に直交する方向からドロップレットを見たものである。
【0021】
図2に示すように、ドロップレットDLにプリパルスレーザ光を集光して照射した際、プリパルスレーザ光が照射されたドロップレットDLの表面付近においてレーザアブレーションが生じ得る。その結果、レーザアブレーションのエネルギーによって、プリパルスレーザ光が照射されたドロップレットDLの表面からドロップレットDL内部に向かって衝撃波が発生し得る。この衝撃波はドロップレットDLの全体に伝わり得る。プリパルスレーザ光の光強度が弱ければドロップレットDLは略破壊されないが、プリパルスレーザ光の光強度が第1の所定値(例えば1×109W/cm2)以上である場合には、この衝撃波によってドロップレットDLが粉々に破壊され拡散し得る。
【0022】
<2−1.円盤状又は皿状の拡散>
図3A〜図3Cは、溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した場合のドロップレットの拡散の様子をシミュレーションした結果の第1の例を示す図である。図3Dは、図3Cに示すシミュレーション結果と同一条件下で、実際に溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した場合のドロップレットの様子を撮影した写真である。図3A〜図3Dは、それぞれプリパルスレーザ光のビーム軸に直交する方向からドロップレットを見たものである。さらに、図3A〜図3Cにおいては、メインパルスレーザ光のスポット径と、ドロップレットDLに照射されたプリパルスレーザ光の光強度とをそれぞれ示している。図3Bには、拡散ターゲットの拡散径Ddとメインパルスレーザ光の照射スポット径Dmを示す。
【0023】
図3Aに示すように、プリパルスレーザ光の光強度が6.4×108W/cm2の場合においては、ドロップレットはほとんど拡散しない。これに対し、図3Bに示すように、プリパルスレーザ光の光強度が1.6×109W/cm2(図3Aに示すシミュレーションの光強度の約2.5倍)の場合においては、ドロップレットは破壊される。破壊されたドロップレットは多数の微粒子となり、拡散ターゲットを形成する。これらの微粒子は、Z軸方向から見て円盤状に拡散する。さらに、図3Cに示すように、プリパルスレーザ光の光強度が5.5×109W/cm2(図3Aに示すシミュレーションの光強度の約8.6倍)の場合においては、破壊されたドロップレットの微粒子は、皿状に拡散する。図3Cと図3Dとを比較すると明らかなように、実際の微粒子の拡散の状態は、シミュレーションの結果と略一致していた。
【0024】
図3Aに示す場合には、メインパルスレーザ光を照射しても、メインパルスレーザ光のエネルギーの多くがドロップレットに吸収されないので、CEは高くならないと推定される。つまり、プリパルスレーザ光照射後のターゲット物質の大きさに対して、メインパルスレーザ光の照射スポット径が非常に大きいため、メインパルスレーザ光の大部分がプラズマ生成に利用されず、通過してしまう。これに対し、図3B及び図3Cに示す場合には、ドロップレットがメインパルスレーザ光の照射スポット内に拡散するので、メインパルスレーザ光の大部分をプラズマ生成に利用できる。さらに、拡散ターゲットはドロップレット状態(1個の球状液滴)に比べて総表面積が大きくなる。以下に示すように、1滴の球体状の液滴がn3個に破壊されると、1滴当たりの半径が(1/n)倍になり、このとき、表面積の合計は1滴の球体状の液滴の表面積のn倍となる。
【0025】
拡散前の液滴の半径をrとすると、液滴1個分の体積V1は、次の式(1)で表される。
V1=4πr3/3 ・・・(1)
【0026】
一方、拡散後の微小な液滴の半径(r/n)のn3個分の体積の合計V2は、次の式(2)で表される。
V2=n3×4π(r/n)3/3 ・・・(2)
【0027】
半径(r/n)の液滴n3個分の体積の合計V2は、半径rの液滴1個分の体積V1に等しい(V2=V1)。
【0028】
半径rの液滴1個分の表面積S1は、次の式(3)で表される。
S1=4πr2 ・・・(3)
【0029】
一方、半径(r/n)の液滴n3個分の表面積の合計S2は、次の式(4)で表される。
S2=n3×4π(r/n)2=n×4πr2 ・・・(4)
【0030】
従って、半径(r/n)の液滴n3個分の表面積の合計S2は、半径rの液滴1個分の表面積S1のn倍となる(S2=n×S1)。
【0031】
このように、図3B及び図3Cに示す場合では、ドロップレットDLが拡散し、総表面積が大きくなる。その結果、拡散した微粒子にメインパルスレーザ光のエネルギーが効率的に吸収され得る。これにより、拡散した微粒子のより多くの部分がプラズマ化され、高いエネルギーのEUV光が得られるので、CEを向上させることができると推定される。
【0032】
図3B及び図3Cの何れに示す場合においても、拡散ターゲットの形状はプリパルスレーザ光のビーム軸方向の長さが、プリパルスレーザ光のビーム軸方向に直交する方向の長さより短い形状となっている。このような拡散ターゲットに対して、メインパルスレーザ光は、プリパルスレーザ光と略同一方向から照射されるのが好ましい。これにより、拡散ターゲットにメインパルスレーザ光をより均一に照射することができ、ターゲット物質にメインパルスレーザ光を効率的に吸収させることができると推定される。
【0033】
また、拡散ターゲットの拡散径Ddは、メインパルスレーザ光の照射スポット径Dm以下の大きさであることが好ましい。これにより、拡散ターゲットの全体にメインパルスレーザ光を照射できるため、拡散ターゲットのより多くの部分をプラズマ化することができ、その結果、ターゲット物質のデブリの発生を低減することができると推定される。
【0034】
さらに、拡散ターゲットの拡散径Ddは、メインパルスレーザ光の照射スポット径Dmに等しいか、近い大きさであることが好ましい。これにより、メインパルスレーザ光のエネルギーの多くが拡散ターゲットに吸収されるため、CEを向上させることができると推定される。ここで、図3Bはメインパルスレーザ光のビームウエストの位置と拡散ターゲットの位置とが略一致する構成を示したが、本開示はこの実施形態に限定されない。つまり、メインパルスレーザ光のビームウエストの位置と、拡散ターゲットの位置とが必ずしも一致する必要はない。本願では、照射スポット径Dmを、拡散ターゲットに照射される位置又はその付近におけるビーム断面の直径と定義する。
【0035】
メインパルスレーザ光のビーム断面が円形であり、拡散ターゲットの断面(レーザ光の進行方向に直交する面における断面)が円形である場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、メインパルスレーザ光のビーム断面の面積が、拡散ターゲットの断面の最大面積を超える大きさであってもよい。
【0036】
<2−2.トーラス状の拡散>
図4A及び図4Bは、溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した場合のドロップレットの拡散の様子の第2の例を模式的に示す図である。図4Aは、プリパルスレーザ光及びメインパルスレーザ光のビーム軸に直交する方向からターゲット物質を見た図である。図4Bは、メインパルスレーザ光のビーム軸方向からターゲット物質を見た図である。図4Bには、トーラス型の拡散ターゲットの外径Doutとメインパルスレーザ光の照射スポット径Dmを示している。
【0037】
図2を参照しながら説明したように、ドロップレットDLにプリパルスレーザ光を集光して照射すると、ドロップレットDLの表面付近においてレーザアブレーションが生じ得る。ここで、プリパルスレーザ光の光強度が第2の所定値(例えば6.4×109W/cm2)以上の光強度である場合には、ドロップレットは粉々に破壊され、図4A及び図4Bに示すようなトーラス型の拡散ターゲットが形成され得る。図4A及び図4Bに示すように、トーラス型の拡散ターゲットは、ドロップレットが、プリパルスレーザ光のビーム軸に対して軸対称に、かつ、トーラス状に拡散したものである。
【0038】
トーラス型の拡散ターゲットを形成するための具体的条件は、例えば以下の通りでよい。プリパルスレーザ光の光強度範囲は、6.4×109W/cm2以上、3.2×1010W/cm2以下でよく、ドロップレットの直径は、12μm以上、40μm以下でよい。
【0039】
次に、トーラス型の拡散ターゲットへのメインパルスレーザ光の照射について説明する。トーラス型の拡散ターゲットは、プリパルスレーザ光をドロップレットに照射した後、例えば0.5μs〜2.0μsのタイミングで形成され得る。従って、プリパルスレーザ光をドロップレットに照射した後の上記タイミングで、メインパルスレーザ光を拡散ターゲットに照射することが好ましい。
【0040】
また、図4A及び図4Bに示すように、トーラス型の拡散ターゲットの形状は、プリパルスレーザ光のビーム軸方向の長さが、プリパルスレーザ光のビーム軸方向に直交する方向の長さよりも短い形状となっている。このような拡散ターゲットに対して、メインパルスレーザ光は、プリパルスレーザ光と略同一方向に照射されるのが好ましい。これにより、拡散ターゲットにメインパルスレーザ光をより効率よく照射することができ、ターゲット物質にメインパルスレーザ光を効率的に吸収させることができると推定される。従って、LPP式EUV光生成装置におけるCEを向上させることができる。実験により、上記の条件で照射した場合にCE〜3%が確認された。
【0041】
例えば光強度分布がガウス分布であるメインパルスレーザ光を、トーラス型の拡散ターゲットに照射することにより、トーラス型の拡散ターゲットから円筒状にプラズマが放出されると推定される。そして、その円筒の内側に向けて拡散するプラズマが円筒内に閉じ込められる効果が期待され得る。従って、プラズマを高温かつ高密度に生成し、CEを向上させることができると推定できる。なお、「トーラス型」とは円環体の形状を意味するが、拡散ターゲットは必ずしも円環体である必要はなく、実質的に環状に拡散したものであればよい。
【0042】
さらに、メインパルスレーザ光の照射スポット径Dmは、トーラス型の拡散ターゲットの外径Doutに対して、以下の関係を有することが好ましい。
Dm≧Dout
このようにすることにより、トーラス型の拡散ターゲットの全体にメインパルスレーザ光を照射できるため、拡散ターゲットのより多くの部分をプラズマ化することができる。その結果、ターゲット物質のデブリの発生を低減することができると推定される。
【0043】
<2−3.大径ドロップレットの拡散>
図5A〜図5Hは、直径60μmの溶融スズのドロップレットDLにプリパルスレーザ光を照射した場合の拡散ターゲットの状態をシミュレーションした結果を示す図である。図5A〜図5Dは、プリパルスレーザ光のビーム軸に直交する方向(X軸)からドロップレット及び拡散ターゲットの状態を見たものである。図5A〜図5Dは、それぞれドロップレットDLに対するプリパルスレーザ光の照射後の時間Tが0μs、0.4μs、0.8μs、1.4μsの時点でのターゲット物質の状態を示している。図5E〜図5Hは、プリパルスレーザ光のビーム軸方向からドロップレット及び拡散ターゲットの状態を見たものである。図5E〜図5Hは、それぞれプリパルスレーザ光の照射から図5A〜図5Dに示す場合と同一の時間が経過した時点でのターゲット物質の状態を示している。図5Iは、メインパルスレーザ光が拡散ターゲットに照射される位置での、メインパルスレーザ光の照射スポット径の大きさを示している。なお、プリパルスレーザ光の光強度が1.5×109W/cm2の場合を示す。
【0044】
図5A〜図5Hに示すシミュレーション結果を、図5Iに示すメインパルスレーザ光の照射スポット径と併せて参照すると、次のことがわかる。拡散ターゲットの大部分にメインパルスレーザ光が照射されるようにできるのは、プリパルスレーザ光の照射から約0.4μs後のタイミングである。従って、このようなタイミングで拡散ターゲットにメインパルスレーザ光が照射されるように構成すれば、デブリの発生を低減できると推定される。
【0045】
プリパルスレーザ光の照射前に直径が60μmであったドロップレットは、プリパルスレーザ光の照射によって拡散し、微粒子化され得る。図5A〜図5Dに、この拡散ターゲット中の微粒子径の最大値及び最小値を併せて示す。このシミュレーションにおけるプリパルスレーザ光の光強度では、拡散ターゲット中の微粒子径の最大値が48.0μmとなっている。つまり、プリパルスレーザ光による粉砕が不十分で、メインパルスレーザ光の照射によってもプラズマ化されない部分が多く残ることが予想される。これは、デブリが多く発生する可能性を示唆する。また、プリパルスレーザ光の照射後における拡散ターゲット中の微粒子径の最小値は、0.4μs後で3.7μm、0.8μs後で3.5μm、1.4μs後で3.1μmとなっている。これより、プリパルスレーザ光照射後の時間Tが経過するに従って微粒子の直径は微小化し、これに伴って粒子数が増加することが予想される。これは、直径60μmの溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した場合、プリパルスレーザ光照射後の時間Tが0.4μs〜1.4μsの範囲内でメインパルスレーザ光を拡散ターゲットに照射すると、時間Tが長いほどCEが向上する可能性を示唆している。
【0046】
図6は、直径60μmの溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した場合の、拡散ターゲットの拡散径Ddの時間変化と、ある時点においてメインパルスレーザ光を拡散ターゲットへ照射した際のCEを示す図である。図5に示すように、プリパルスレーザ光の照射から約0.4μs後で、拡散ターゲットの拡散径Ddが、メインパルスレーザ光の照射スポット径と略一致する。従って、プリパルスレーザ光の照射から約0.4μs後にメインパルスレーザ光を照射すると、デブリの発生が抑制される可能性がある(図6の矢印A)。これに対し、図6を参照すると、プリパルスレーザ光の照射から約3μs後にメインパルスレーザ光を照射すると、高いCEが得られる可能性が示されている(矢印B)。このシミュレーション結果から、プリパルスレーザ光の照射からメインパルスレーザ光の照射までの遅延時間には、デブリ発生の低減のために好ましい値と、高いCEを得るために好ましい値との間に隔たりがあることが判る。つまり、直径60μmの溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光及びメインパルスレーザ光を照射する場合、デブリ低減と高いCEの両立は容易ではないと予測できる。ここで、プリパルスレーザ光の照射後の時間Tは、プリパルスレーザ光の照射からメインパルスレーザ光の照射までの遅延時間と同じ時間を示す。
【0047】
<2−4.小径ドロップレットの拡散>
図7A〜図7Hは、直径10μmの溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した場合の拡散ターゲットの状態をシミュレーションした結果を示す図である。図7A〜図7Dは、プリパルスレーザ光のビーム軸に直交する方向(X軸)からドロップレット及び拡散ターゲットを見た図である。図7A〜図7Dは、それぞれプリパルスレーザ光の照射後の時間Tが0μs、0.1μs、0.25μs、0.5μsの時点でのターゲット物質の状態を示している。図7E〜図7Hは、プリパルスレーザ光のビーム軸の方向からドロップレット及び拡散ターゲットを見たものである。図7E〜図7Hは、それぞれプリパルスレーザ光の照射から図7A〜図7Dに示す場合と同一の時間が経過した時点でのターゲット物質の状態を示している。図7Iは、メインパルスレーザ光が拡散ターゲットに照射される位置での、メインパルスレーザ光の照射スポット径の大きさを示している。なお、プリパルスレーザ光の光強度が1.5×109W/cm2の場合を示す。
【0048】
図7A〜図7Hに示すシミュレーション結果を、図7Iに示すメインパルスレーザ光の照射スポット径と併せて参照すると、次のことがわかる。拡散ターゲットの大部分にメインパルスレーザ光が照射されるようにできるのは、プリパルスレーザ光の照射から約0.1μs後のタイミングである。従って、このようなタイミングでメインパルスレーザ光が拡散ターゲットに照射されるように構成すれば、デブリの発生を低減できると推定できる。
【0049】
また、図7A〜図7Dに併せて示したように、プリパルスレーザ光の照射後における拡散ターゲット中の微粒子径の最大値は、プリパルスレーザ光の照射から0.1μs後で2.2μm、プリパルスレーザ光の照射から0.25μs後及び0.5μs後で1.1μmとなっている。これより、拡散ターゲット中の微粒子径の最大値は、プリパルスレーザ光の照射から0.25μs後以降で一定となると推定できる。また、プリパルスレーザ光の照射後における拡散ターゲット中の微粒子径の最小値は、プリパルスレーザ光の照射から0.1μs後、0.25μs後及び0.5μs後で何れも0.2μmとなっている。これより、プリパルスレーザ光の照射から0.1μs後において拡散ターゲット中の微粒子径は十分小さくなっていると推定できる。これは、プリパルスレーザ光の照射から約0.1μs経過以降に、メインパルスレーザ光を拡散ターゲットに照射するとCEが向上する可能性があることを示唆している。
【0050】
図8は、直径10μmの溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した場合の、拡散ターゲットの拡散径Ddの時間変化と、ある時点においてメインパルスレーザ光を拡散ターゲットに照射した際のCEとを示す図である。
【0051】
図7に示すように、プリパルスレーザ光の照射から約0.1μs後では、拡散ターゲットの拡散径Ddが、メインパルスレーザ光の照射スポット径と略一致する。従って、プリパルスレーザ光の照射から約0.1μs後にメインパルスレーザ光を拡散ターゲットに照射すると、デブリの発生が抑制される可能性がある(図8の矢印A)。これに対し、図8を参照すると、プリパルスレーザ光の照射から約0.15μs後にメインパルスレーザ光を拡散ターゲットに照射すると、高いCEが得られる可能性が示されている(矢印B)。このシミュレーション結果から、デブリ低減のために好ましいメインパルスレーザ光の遅延時間と、高いCEを得るために好ましいメインパルスレーザ光の遅延時間との間の隔たりが比較的小さいことが判る。つまり、直径10μmの溶融スズのドロップレットにプリパルスレーザ光を照射する場合、デブリ低減と高いCEの両立が可能であると予測できる。直径10μm程度の溶融スズのドロップレットは、所望のEUV光を生成するのに必要最小限質量のターゲットという意味で、マスリミテッドターゲットと呼ぶことがある。
【0052】
<3.第1の実施形態>
次に、添付の図面を参照に各実施形態について説明する。図9は、第1の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す概念図である。第1の実施形態に係るEUV光生成装置は、YAGパルスレーザ装置3aから出力されるプリパルスレーザ光のビーム軸と、CO2パルスレーザ装置3bから出力されるメインパルスレーザ光のビーム軸とを、ビームコンバイナ15cによって略一致させる構成を有してもよい。すなわち、第1の実施形態においては、プリパルスレーザ光とメインパルスレーザ光とを各々同軸の光路を介してチャンバ1内に供給してもよい。
【0053】
まず、露光装置コントローラ9からEUV光生成コントローラ7にEUV発光信号が入力されてもよい。EUV光生成コントローラ7は、YAGパルスレーザ装置3aにYAGレーザ光強度設定信号を出力してもよい。さらに、EUV光生成コントローラ7は、CO2パルスレーザ装置3bにCO2レーザ光強度設定信号を出力してもよい。
【0054】
また、EUV光生成コントローラ7は、トリガコントローラ17にEUV発光トリガ信号を出力してもよい。トリガコントローラ17は、ドロップレットを出力させるための信号をドロップレットコントローラ8に出力してもよい。ドロップレットコントローラ8はターゲット供給部2にドロップレット出力信号を入力し、ターゲット供給部2はターゲットノズル13からドロップレットDLを出力してもよい。トリガコントローラ17は、YAGレーザ発振トリガ信号をYAGパルスレーザ装置3aに出力してもよい。YAGレーザ発振トリガ信号は、ドロップレットDLがプラズマ生成領域PSに到着するタイミングに合わせてプリパルスレーザ光がドロップレットDLに照射されるように、出力され得る。さらに、トリガコントローラ17は、CO2パルスレーザ装置3bのマスタオシレータ3dにCO2レーザ発振トリガ信号を出力してもよい。CO2レーザ発振トリガ信号は、ドロップレットDLにプリパルスレーザ光が照射されてから、所望の拡散ターゲットが形成されるまでの遅延時間T後のタイミングでメインパルスレーザ光が拡散ターゲットに照射されるように、出力され得る。
【0055】
YAGパルスレーザ装置3aは、EUV光生成コントローラ7から出力されたYAGレーザ光強度設定信号と、トリガコントローラ17から出力されたYAGレーザ発振トリガ信号とに基づいて、第1の波長でプリパルスレーザ光を出力してもよい。プリパルスレーザ光は、ビームエキスパンダ4においてビーム径が拡大された後、ビームコンバイナ15cに入射してもよい。
【0056】
CO2パルスレーザ装置3bは、マスタオシレータ3dと、プリアンプ3hと、メインアンプ3jとの下流側に、それぞれリレー光学系3g、3i、3kを直列に配置して構成されてもよい。マスタオシレータ3dは、CO2パルスレーザ発振トリガ信号に基づいて、第2の波長を含むシード光を出力してもよい。マスタオシレータ3dから出力されたシード光は、CO2レーザ光強度設定信号に基づいて、プリアンプ3h及びメインアンプ3jによって所望の光強度に増幅され得る。この増幅されたレーザ光は、メインパルスレーザ光としてビームコンバイナ15cに入射してもよい。
【0057】
ビームコンバイナ15cは、YAGパルスレーザ装置3aから出力されたレーザ光に含まれる第1の波長のレーザ光を透過させ、CO2パルスレーザ装置3bから出力されたレーザ光に含まれる第2の波長のレーザ光を高反射してもよい。こうようにして、ビームコンバイナ15cは、プリパルスレーザ光の光路とメインパルスレーザ光の光路とを同軸としてチャンバ1内に供給してもよい。なお、ビームコンバイナ15cは、YAGレーザ装置の波長1.06μmのレーザ光を透過させ、CO2レーザ装置の波長10.6μmのレーザ光を高反射する光学素子でよい。具体的には、ダイヤモンド基板上に、上記のような反射透過特性を有する多層膜をコートして構成されてもよい。あるいは、YAGレーザ装置のレーザ光を高反射して、CO2レーザ装置のレーザ光を透過させる光学素子であっても、プリパルスレーザ光の光路とメインパルスレーザ光の光路とを同軸とすることができる。
【0058】
ドロップレットコントローラ8と、YAGパルスレーザ装置3aと、CO2パルスレーザ装置3bとが、上述のトリガコントローラ17からの各種信号に基づいて同期して動作してもよい。これにより、ターゲット供給部2によってチャンバ1内に供給されたターゲット物質が所定の位置に到着するタイミングに合わせて、YAGパルスレーザ装置3aがプリパルスレーザ光を出力してもよい。そして、プリパルスレーザ光の照射によって所望の拡散ターゲットが形成されたタイミングに合わせて、CO2パルスレーザ装置3bがメインパルスレーザ光を出力してもよい。
【0059】
第1の実施形態によれば、プリパルスレーザ光とメインパルスレーザ光とを略同一方向からプラズマ生成領域(PS)に照射できるため、EUV集光ミラー5に形成される貫通孔を小さく且つ少なくすることができる。
【0060】
また、YAGパルスレーザ装置3aから出力されるプリパルスレーザ光の波長(例えば1.06μm)が、CO2パルスレーザ装置3bから出力されるメインパルスレーザ光の波長(例えば10.6μm)の10分の1以下となる。このようにプリパルスレーザ光の波長がメインパルスレーザ光の波長よりも十分に短いため、以下のメリットが考えられる。(1)スズ等のターゲット物質に対するプリパルスレーザ光の吸収率をメインパルスレーザ光の吸収率より高くすることができる。(2)ドロップレットに集光されるプリパルスレーザ光の照射スポット径を小さくすることができる。その結果、プリパルスレーザ光は小さなパルスエネルギーで小さなドロップレットDLを効率よく照射し拡散させることができる。他の点については図1を参照しながら説明したものと同様であるため、ここでは重複する説明を省略する。
【0061】
<4.第2の実施形態>
図10は、第2の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す概念図である。第2の実施形態に係るEUV光生成装置は、YAGパルスレーザ装置3aから出力されたプリパルスレーザ光と、CO2パルスレーザ装置3bから出力されたメインパルスレーザ光とが、別々の経路からチャンバ1内に供給される構成を有してもよい。
【0062】
YAGパルスレーザ装置3aから出力されたプリパルスレーザ光は、高反射ミラー15eと、軸外放物面ミラー15gと、EUV集光ミラー5に形成された1つの貫通孔とを介して、チャンバ1内のドロップレット上に集光されてもよい。これにより、拡散ターゲットが形成され得る。
【0063】
CO2パルスレーザ装置3bから出力されたメインパルスレーザ光は、高反射ミラー15dと、軸外放物面ミラー15fと、EUV集光ミラー5に形成されたもう1つの貫通孔とを介して、チャンバ1内においてプリパルスレーザ光の照射によって形成された拡散ターゲットに集光され得る。
【0064】
第2の実施形態によれば、プリパルスレーザ光とメインパルスレーザ光とを別々の光学系を介してターゲットに照射できるため、それぞれ所望の大きさのビームスポットを形成することが容易となる。また、プリパルスレーザ光とメインパルスレーザ光とを同軸の光路とするためのビームコンバイナ等の光学素子を用いなくてもよい。しかしながら、プリパルスレーザ光及びメインパルスレーザ光を、それぞれドロップレットDL及び拡散ターゲットに略同一方向から照射することができる。他の点については第1の実施形態と同様であるため、ここでは重複する説明を省略する。
【0065】
<5.第3の実施形態>
図11は、第3の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す概念図である。第3の実施形態に係るEUV光生成装置は、YAGパルスレーザ装置3aから出力される第1のプリパルスレーザ光と、CO2パルスレーザ装置3bから出力される第2のプリパルスレーザ光及びメインパルスレーザ光とが、チャンバ1内に供給される構成を有してもよい。
【0066】
CO2パルスレーザ装置3bは、メインパルスレーザ光のシード光を出力するマスタオシレータ3dの他に、第2のプリパルスレーザ光のシード光を出力するマスタオシレータ3eを含んでもよい。マスタオシレータ3eから出力された第2のプリパルスレーザ光のシード光は、プリアンプ3h及びメインアンプ3jによって所望の光強度に増幅され得る。この増幅されたレーザ光は、第2のプリパルスレーザ光としてビームコンバイナ15cに入射してもよい。マスタオシレータ3dから出力されたメインパルスレーザ光のシード光もまた、プリアンプ3h及びメインアンプ3jによって所望の光強度に増幅され得る。この増幅されたレーザ光も、メインパルスレーザ光としてビームコンバイナ15cに入射してもよい。
【0067】
マスタオシレータ3d及び3eは、CO2レーザ媒体において増幅可能な波長領域で発振する半導体レーザであってもよい。具体的には、複数の量子カスケードレーザ(Quantum Cascade Laser)をそれぞれマスタオシレータ3d及び3eとしてもよい。
【0068】
図12A〜図12Fは、第3の実施形態において、ドロップレットDLに第1のプリパルスレーザ光を照射し、さらに、第2のプリパルスレーザ光を照射した場合の拡散ターゲットの状態を示す概念図である。図12A〜図12Cは、第1及び第2のプリパルスレーザ光のビーム軸に直交する方向(X軸)からドロップレット及び拡散ターゲットを見た図であり、それぞれ第1のプリパルスレーザ光の照射後の遅延時間T=0、T=t2、T=tm(但し、0<t2<tm)におけるターゲット物質の状態を示している。図12D〜図12Fは、第1及び第2のプリパルスレーザ光のビーム軸の方向からドロップレット及び拡散ターゲットを見たものであり、それぞれ第1のプリパルスレーザ光の照射から図12A〜図12Cに示す場合と同一の時間が経過した時点でのターゲット物質の状態を示している。
【0069】
まず、図12A及び図12Dに示すターゲット物質のドロップレットに、第1のプリパルスレーザ光を照射すると、図12B及び図12Eに示すように、ドロップレットが拡散し、第1の拡散ターゲットが形成され得る。第1のプリパルスレーザ光によって形成された第1の拡散ターゲットが、第2のプリパルスレーザ光の照射スポット径と略同一かそれ以下である所望の拡散径になったタイミングで、当該第1の拡散ターゲットに第2のプリパルスレーザ光が照射されてもよい。
【0070】
第1の拡散ターゲットに第2のプリパルスレーザ光が照射されると、図12C及び図12Fに示すように、第1の拡散ターゲットの各粒子がさらに細かい粒子となって拡散し、第2の拡散ターゲットが形成され得る。第2のプリパルスレーザ光の照射によって形成された第2の拡散ターゲットがメインパルスレーザ光の照射スポット径と略同一かそれ以下である所望の拡散径の拡散ターゲットになったタイミングで、当該第2の拡散ターゲット(所望の拡散ターゲット)にメインパルスレーザ光が照射されてもよい。
【0071】
このように、第1及び第2のプリパルスレーザ光の照射によって形成された第2の拡散ターゲットにメインパルスレーザ光が照射され得る。第1の拡散ターゲットに比べてさらに微細な粒子が存在する第2の拡散ターゲットにメインパルスレーザ光が照射されるので、メインパルスレーザ光のエネルギーが第2の拡散ターゲットに効率良く吸収され得る。これにより、第2の拡散ターゲットの多くの部分がプラズマ化するので、高いCEが得られると推定される。さらに、メインパルスレーザ光の照射スポット径を第2の拡散ターゲットの拡散径と略同等とすることで、高CE化とデブリ低減の両立が可能となると推定される。他の点については上述の実施形態と同様であるため、ここでは重複する説明を省略する。
【0072】
第3の実施形態においても、マスリミテッドターゲット、例えば直径約10μmの溶融スズを用いるのが好ましい。
【0073】
第3の実施形態においては、2段階のプリパルスレーザ光をターゲット物質に照射した後に、メインパルスレーザ光を拡散ターゲットに照射する例を示したが、3段階以上のプリパルスレーザ光をターゲット物質に照射してもよい。
【0074】
また、第3の実施形態においては、第1のプリパルスレーザ光をYAGパルスレーザ装置3aが出力し、第2のプリパルスレーザ光及びメインパルスレーザ光をCO2パルスレーザ装置3bが出力する例を示したが、これらのレーザ光を1台のパルスレーザ装置、例えばCO2レーザ装置が出力してもよい。
【0075】
さらに、第1及び第2のプリパルスレーザ光を第1のレーザ装置が出力し、メインパルスレーザ光を第2のレーザ装置が出力してもよい。ここで、第1のレーザ装置を例えばYAGレーザ装置又はファイバレーザ装置とし、第2のレーザ装置を例えばCO2レーザ装置としてもよい。
【0076】
図13は、第3の実施形態の変形例に係るEUV光生成装置の構成を示す概念図である。図13に示すEUV光生成装置は、第1のYAGパルスレーザ装置3mと、第2のYAGパルスレーザ装置3nと、ビームコンバイナ3pとを含んでもよい。
【0077】
第1及び第2のYAGパルスレーザ装置3m及び3nは、いずれも、EUV光生成コントローラ7から出力されたYAGレーザ光強度設定信号と、トリガコントローラ17から出力されたYAGレーザ発振トリガ信号とを受信してもよい。第1のYAGパルスレーザ装置3mは、第1のプリパルスレーザ光を出力してもよい。第1のプリパルスレーザ光は、ビームコンバイナ3pに入射してもよい。第2のYAGパルスレーザ装置3nは、第2のプリパルスレーザ光を出力してもよい。第2のプリパルスレーザ光もまた、ビームコンバイナ3pに入射してもよい。ビームコンバイナ3pは、第1及び第2のプリパルスレーザ光を同軸化して、ビームエキスパンダ4に出力してもよい。
【0078】
他の点については第1の実施形態と同様でよい。この構成によっても、図11を参照しながら説明した第3の実施形態と同様に、第1及び第2のプリパルスレーザ光とメインパルスレーザ光とがチャンバ1内に供給され得る。なお、第1及び第2のプリパルスレーザ光は、第1及び第2のファイバレーザ装置によって出力されてもよい。
【0079】
<6.第4の実施形態>
図14は、第4の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す概念図である。図14は、図9〜図11のXIV−XIV面における断面を示している。第4の実施形態に係るEUV光生成装置は、上述の第1〜第3の実施形態と同様の構成において、磁石6a及び6bによってチャンバ1内に磁場を生成することにより、チャンバ1内において発生したイオンを回収する構成を有してもよい。
【0080】
磁石6a及び6bは、コイル巻き線やコイル巻き線の冷却機構等を含んだ電磁石でよい。これらの磁石6a及び6bには、電源コントローラ6dによって制御される電源装置6cが接続されてもよい。電源装置6cから磁石6a及び6bに供給される電流を電源コントローラ6dが調節することにより、所定方向の磁場がチャンバ1内に形成され得る。磁石6a及び6bとしては、例えば超伝導磁石が用いられてもよい。ここでは2つの磁石6a及び6bが用いられる場合を例に説明したが、1つの電磁石が用いられてもよい。さらに、永久磁石をチャンバ内に配置してもよい。
【0081】
ターゲット物質へのメインパルスレーザ光の照射によって生成されるプラズマは、正イオン及び負イオン(又は電子)を含み得る。チャンバ1内を移動する正イオン及び負イオンは、磁場中でローレンツ力を受けるため、磁力線に沿って螺旋状に移動し得る。これにより、イオン化されたターゲット物質が磁場にトラップされ、磁場中に設けられたイオン回収部19a及び19bに回収され得る。従って、チャンバ1内のデブリを低減することができ、EUV集光ミラー5などのチャンバ内の光学素子へのデブリの付着により、光学素子が劣化するのが抑制され得る。図14において、磁場は矢印の向きとなっているが、矢印と反対の向きであっても同様の機能を果たし得る。
【0082】
デブリの光学素子への付着を低減するミチゲーション技術は、磁場を用いるものに限られず、エッチングガスを利用してEUV集光ミラー5等に付着した物質をエッチングするものでもよい。また、ミチゲーション技術は、磁場中で水素ガス(H2)又は水素ラジカル(H)をデブリと反応させて、デブリとの気化化合物として除去するものでもよい。
【0083】
<7.第5の実施形態>
図15は、第5の実施形態に係るEUV光生成装置においてプリパルスレーザ光を出力するチタンサファイヤレーザの構成例を示す概念図である。第5の実施形態におけるチタンサファイヤレーザ50aは、上述の第1〜第4の実施形態においてドロップレットを拡散させるためのプリパルスレーザ光を出力するドライバレーザとして、チャンバの外部に設けられてもよい。
【0084】
第5の実施形態におけるチタンサファイヤレーザ50aは、半導体可飽和吸収ミラー51aと出力結合ミラー52aとの間に、凹面ミラー53a、第1のポンピングミラー54a、チタンサファイア結晶55a、第2のポンピングミラー56a、並びに、2つのプリズム57a及び58aがこの順に半導体可飽和吸収ミラー51a側から配置されたレーザ共振器を含んでもよい。さらに、チタンサファイヤレーザ50aは、このレーザ共振器に励起光を導入するための励起光源59aを含んでもよい。
【0085】
第1のポンピングミラー54aは、レーザ共振器外部からの励起光を透過させ、レーザ共振器内側からの光を高い反射率で反射するミラーでよい。チタンサファイア結晶55aは、励起光を受けて誘導放出を行うレーザ媒質でよい。2つのプリズム57a及び58aは、所定の波長の光を選択的に透過させてもよい。出力結合ミラー52aは、レーザ共振器内で増幅されたレーザ光の一部を透過させて出力し、残りの一部を反射してレーザ共振器内に戻してもよい。半導体可飽和吸収ミラー51aは、反射層と可飽和吸収体層とがミラー基板に積層されたミラーであり、入射光が弱い間は可飽和吸収体層が入射光を吸収し、入射光が強くなると可飽和吸収体層が入射光を透過させて反射層が入射光を反射することにより、入射光を短パルス化して反射してもよい。
【0086】
励起光源59aとして、例えば半導体励起Nd:YVO4(neodymium-doped yttrium orthovanadate)レーザを用いることができる。この励起光源59aから出力される第2高調波を第1のポンピングミラー54aに導入し、半導体可飽和吸収ミラー51aの位置を調節し、レーザ共振器の共振器長と縦モードとを同期させて発振させてもよい。これにより、出力結合ミラー52aからピコ秒またはそれ以下のオーダーのパルス時間幅を有するパルスレーザ光が出力され得る。なお、パルスエネルギーが小さい場合は、再生増幅器等により、このパルスレーザ光を増幅してもよい。
【0087】
第5の実施形態によれば、ピコ秒またはそれ以下のオーダーのパルス時間幅を有する短パルスレーザ光をプリパルスレーザ光としてターゲット物質に照射することが可能となる。短パルスレーザ光をターゲット物質に照射する場合、照射部分の熱拡散を非常に小さくできる可能性があるため、熱拡散してしまうエネルギーをアブレーション作用に利用できると推定される。この結果、第5の実施形態によれば、ナノ秒オーダーのレーザ光に比べて、小さなパルスエネルギーでドロップレットを拡散させることができると推定される。
【0088】
<8.第6の実施形態>
図16は、第6の実施形態に係るEUV光生成装置においてプリパルスレーザ光を出力するためのファイバレーザの構成例を示す概念図である。第6の実施形態におけるファイバレーザ50bは、上述の第1〜第4の実施形態においてドロップレットを拡散させるためのプリパルスレーザ光を出力するドライバレーザとして、チャンバの外部に設けられてもよい。
【0089】
第6の実施形態におけるファイバレーザ50bは、高反射ミラー51bと半導体可飽和吸収ミラー52bとの間に、グレーティングペア53b、第1の偏光維持ファイバ54b、マルチプレクサ55b、分離素子56b、第2の偏光維持ファイバ57b、及び、集光光学系58bがこの順に高反射ミラー51b側から配置されたレーザ共振器を含んでもよい。さらに、ファイバレーザ50bは、レーザ共振器に励起光を導入するための励起光源59bを含んでもよい。
【0090】
マルチプレクサ55bは、励起光源59bからの励起光を第1の偏光維持ファイバ54bに導入するとともに、第1の偏光維持ファイバ54bと第2の偏光維持ファイバ57bとの間を往復する光を透過させてもよい。第1の偏光維持ファイバ54bには、イッテルビウム(Yb)がドープされており、励起光を受けて誘導放出を行ってもよい。グレーティングペア53bは、回折作用によって所定の波長の光を選択的に反射してもよい。半導体可飽和吸収ミラー52bは、反射層と可飽和吸収体層とが基板に積層されたミラーであり、入射光が弱い間は可飽和吸収体層が入射光を吸収し、入射光が強くなると可飽和吸収体層が入射光を透過させて反射層が入射光を反射することにより、入射光を短パルス化して反射してもよい。分離素子56bは、レーザ共振器内で増幅された光の一部を分離して出力し、残りの一部をレーザ共振器内に戻してもよい。マルチプレクサ55bに光ファイバで接続された励起光源59bから励起光が導入されると、分離素子56bを介してピコ秒オーダーのパルス時間幅を有するパルスレーザ光が出力され得る。
【0091】
ここで、ピコ秒オーダーのパルス時間幅を有するパルスレーザ光を出力するピコ秒パルスレーザとは、パルス時間幅Tが1ns未満(T<1ns)のパルスレーザ光を出力するパルスレーザを意味する。さらに、フェムト秒オーダーのパルス時間幅を有するパルスレーザ光を出力するフェムト秒パルスレーザを本開示に適用しても、同様の効果を得ることができる。
【0092】
第6の実施形態によれば、第5の実施形態と同様の効果を奏するのに加えて、プリパルスレーザ光を光ファイバで導入できるため、ターゲット物質に対して高精度にプリパルスレーザ光を照射することが容易となると推定される。また、一般にファイバレーザでは、レーザ光の強度分布の理想的なガウス分布からのずれを表すM2値が、1.2程度である。M2値が1に近いとそれだけ集光性能が高い。このため、ファイバレーザを用いると小さなターゲットに対して高精度にプリパルスレーザ光を照射することができると推定される。
【0093】
レーザ光の波長が短くなるほど、スズによるレーザ光の吸収率は高くなり得る。従って、スズによる吸収を重視する場合は、短波長の方が有利である。例えば、Nd:YAG(neodymium-doped yttrium aluminum garnet)レーザから出力される基本波の波長1064nmに対し、高調波2ω=532nm、3ω=355nm、4ω=266nmの順で、吸収効率が高くなる。
【0094】
ここではピコ秒オーダーのパルス時間幅を有する短パルスレーザ光を用いる例を示したが、ナノ秒オーダーのパルス時間幅を有するパルスレーザ光を用いても、ドロップレットを拡散させることができる。例えば、パルス時間幅約15ns、繰返し周波数100kHz、パルスエネルギー1.5mJ、波長1.03μm、M2値1.5未満のファイバレーザでも、プリパルスレーザとして十分使用可能である。
【0095】
<9.レーザ光の照射条件>
図17A及び図17Bは、上述のEUV光生成装置におけるレーザ光の照射条件の例を示す表である。照射パルスエネルギーをE(J)、パルス幅をT(s)、照射スポット径をDm(m)とすると、レーザ光の光強度W(W/m2)は、次の式(5)で表される。
W=E/(T(Dm/2)2π)・・・式(5)
【0096】
図17Aは、プリパルスレーザ光の照射条件として、4通りの例(ケース1〜ケース4)を示している。ケース1は、例えば溶融スズのドロップレットの直径が60μmである場合を想定している。そのようなドロップレットを拡散させて所望の拡散ターゲットを生成するための照射条件は次のようになる。例えば、ドロップレットへの照射スポット径Dmを100μmとして、1.6×109W/cm2のレーザ光の光強度Wを必要とした場合には、照射パルスエネルギーE及びパルス幅Tを、それぞれ1.9mJ及び15nsに設定することができる。このようなプリパルスレーザ光により、図3Bに示すような拡散ターゲットの生成が可能となる。
【0097】
図17Aに示すケース2は、例えば溶融スズのドロップレットの直径が10μmのマスリミテッドターゲットに相当する大きさである場合を想定している。そのようなドロップレットを拡散させて所望の拡散ターゲットを生成するための照射条件は次のようになる。例えば、ドロップレットへの照射スポット径Dmを30μmとして、1.6×109W/cm2のレーザ光の光強度Wを必要とした場合には、照射パルスエネルギーE及びパルス幅Tを、それぞれ0.17mJ及び15nsに設定することができる。このようなプリパルスレーザ光により、図7Bに示すような拡散ターゲットの生成が可能となる。
【0098】
図17Aに示すケース3及びケース4は、プリパルスレーザ光を出力するレーザ装置として、図15及び図16に示すようなレーザ装置を使用した場合の例である。ケース3及びケース4は、ドロップレットがマスリミテッドターゲットに相当する大きさであって、1×1010W/cm2以上のレーザ光の光強度Wが必要な場合に適用することができる。
【0099】
図17Bは、メインパルスレーザ光の照射条件として、4通りの例(ケース1〜ケース4)を示している。ケース1は、例えば拡散ターゲットの拡散径が250μmである場合を想定している。そのような拡散ターゲットをプラズマ化するための照射条件は次のようになる。例えば、拡散ターゲットへの照射スポット径Dmを250μmとして、1.0×1010W/cm2のレーザ光の光強度Wを必要とした場合には、照射パルスエネルギーE及びパルス幅Tを、それぞれ100mJ及び20nsに設定することができる。これにより、プラズマ化のために必要なエネルギーが拡散ターゲットに供給され得る。
【0100】
図17Bに示すケース2は、拡散ターゲットの拡散径、照射スポット径Dm及びレーザ光の光強度Wが図17Bのケース1におけるものと同じである場合に、照射パルスエネルギーE及びパルス幅Tを、それぞれ150mJ及び30nsに設定する例である。これにより、プラズマ化のために必要なエネルギーが拡散ターゲットに供給され得る。
【0101】
図17Bに示すケース3は、拡散ターゲットの拡散径が300μmである場合を想定している。そのような拡散ターゲットをプラズマ化するための照射条件は次のようになる。例えば、拡散ターゲットへの照射スポット径Dmを300μmとして、1.1×1010W/cm2のレーザ光の光強度Wを必要とした場合には、照射パルスエネルギーE及びパルス幅Tを、それぞれ200mJ及び25nsに設定することができる。これにより、プラズマ化のために必要なエネルギーが拡散ターゲットに供給され得る。
【0102】
図17Bに示すケース4は、拡散ターゲットの拡散径が200μmである場合を想定している。そのような拡散ターゲットをプラズマ化するための照射条件は次のようになる。例えば、拡散ターゲットへの照射スポット径Dmを200μmとして、1.2×1010W/cm2のレーザ光の光強度Wを必要とした場合には、照射パルスエネルギーE及びパルス幅Tを、それぞれ200mJ及び50nsに設定することができる。これにより、プラズマ化のために必要なエネルギーが拡散ターゲットに供給され得る。
【0103】
以上のように、プリパルスレーザ光及びメインパルスレーザ光の光強度の設定は、それぞれのレーザ光の照射パルスエネルギーEとパルス幅Tとを設定することにより、実現できる。
【0104】
<10.第7の実施形態>
図18は、第7の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す概念図である。第7の実施形態係るEUV光生成装置は、ファイバレーザシステム31から出力されたプリパルスレーザ光の偏光状態を、偏光子(polarizer)20によって変える構成を有してもよい。偏光子20は、プリパルスレーザ光の偏光状態を、直線偏光以外の偏光状態となるように変える素子でよい。偏光子20は、ドライバレーザとプラズマ生成領域(PS)との間の光路の所定の位置に設けられてもよい。本開示において、偏光子には、polarization retarderも含まれる。
【0105】
第7の実施形態において、ファイバレーザシステム31は、ファイバレーザコントローラ31aと、図16(第6の実施形態)を参照しながら説明したファイバレーザ50bとを含んでもよい。CO2パルスレーザシステム32は、CO2レーザコントローラ32aと、図9(第1の実施形態)を参照しながら説明したマスタオシレータ3d、プリアンプ3h、メインアンプ3j、並びに、リレー光学系3g、3i及び3kとを含んでもよい。
【0106】
EUV光生成コントローラ7は、ファイバレーザコントローラ31aにファイバレーザ光強度設定信号を出力してもよい。さらに、EUV光生成コントローラ7は、CO2レーザコントローラ32aにCO2レーザ光強度設定信号を出力してもよい。
【0107】
トリガコントローラ17は、ファイバレーザ50bにファイバレーザ発振トリガ信号を出力してもよい。さらに、トリガコントローラ17は、マスタオシレータ3dにCO2レーザ発振トリガ信号を出力してもよい。
【0108】
ファイバレーザ50bは、ファイバレーザ発振トリガ信号に基づいて、第1の波長でプリパルスレーザ光を出力してもよい。ファイバレーザコントローラ31aは、ファイバレーザ光強度設定信号に基づいて、ファイバレーザ50bの出力強度を制御してもよい。ファイバレーザ50bから出力されたプリパルスレーザ光は、ビームエキスパンダ4においてビーム径が拡大され、偏光子20によって偏光状態が変えられた後、ビームコンバイナ15cに入射してもよい。
【0109】
マスタオシレータ3dは、CO2レーザ発振トリガ信号に基づいて、第2の波長の光を含むシード光を出力してもよい。CO2レーザコントローラ32aは、CO2レーザ光強度設定信号に基づいて、プリアンプ3h及びメインアンプ3jの出力強度を制御してもよい。プリアンプ3h及びメインアンプ3jにより、マスタオシレータ3dから出力されたシード光は所望の光強度に増幅され得る。
【0110】
他の点については第1の実施形態と同様でよい。なお、第7の実施形態において、プリパルスレーザ光の光源としてファイバレーザ50bを用いる場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、プリパルスレーザ光の光源としてYAGレーザやチタンサファイヤレーザを用いてもよい。あるいは、2段階のプリパルスレーザ光による照射が採用される構成において、第1のプリパルスレーザ光が小さな集光径を実現しやすいファイバレーザ装置から出力され、第2のプリパルスレーザ光がYAGレーザ装置または超短パルスレーザ光を得やすいチタンサファイヤレーザ装置から出力され、メインパルスレーザ光が高出力レーザ光が実現できるCO2レーザ装置から出力されるように構成されてもよい。つまり、所望の数のプリパルスレーザ光が各々異なる複数のレーザ装置から出力されるように構成されてもよい。また、プリパルスレーザ光を照射する時点での拡散ターゲットの状態にあわせて、集光径、エネルギー、波長、パルス幅等の異なるプリパルスレーザ光が拡散ターゲットに複数照射されるように構成されてもよい。
【0111】
<10−1.偏光制御の概要>
図19A及び図20Aは、ドロップレットに直線偏光のプリパルスレーザ光を照射する様子を示す概念図である。図19B及び図20Bは、ドロップレットに直線偏光のプリパルスレーザ光を照射した場合に、ドロップレットが拡散する様子を示すシミュレーション結果を示す。図19A及び図19Bはプリパルスレーザ光の偏光方向に直行する方向(X方向)から見た図であり、図20A及び図20Bはプリパルスレーザ光のビーム軸方向(Z方向)から見た図である。
【0112】
図19A及び図20Aを参照に、ドロップレットに直線偏光のプリパルスレーザ光を照射する場合を説明する。この場合、ドロップレットは拡散し、図19B及び図20Bに示すように、拡散ターゲットを生成され得る。このシミュレーション結果から、拡散ターゲットは、偏光方向(Y方向)への広がりに対して、プリパルスレーザ光の偏光方向に直交する方向(X方向)へは大きく広がることがわかる。このような形状に拡散した拡散ターゲットに、プリパルスレーザ光と略同一方向からメインパルスレーザ光を照射する場合、図19B及び図20Bに示すように、拡散ターゲットの形状と、メインパルスレーザ光の断面形状とが比較的大きく異なってしまうため、プラズマ生成に利用されないメインパルスレーザ光が多くなってしまう可能性が高い。
【0113】
ここで、拡散したドロップレットが、直線偏光のプリパルスレーザ光の偏光方向に直交する方向(X方向)には大きく広がる原因について考察する。図21は、溶融スズのドロップレット表面に入射するレーザ光のP偏光成分及びS偏光成分の吸収率を示すグラフである。図21においては、レーザ光の波長を1.06μmとしている。図示するように、レーザ光の吸収率は、レーザ光の入射角度及びその偏光に依存すると言える。
【0114】
入射するレーザ光のP偏光成分の吸収率は、溶融スズのドロップレット表面への入射角度が80°〜85°の場合に最も高く、この角度範囲からずれるに従って低下する。一方、S偏光成分の吸収率は、溶融スズのドロップレット表面への入射角度が略0°の場合、すなわちドロップレット表面に略垂直に入射する場合には、P偏光成分の吸収率と同等であり、入射角度が大きくなるに従って吸収率は低下する。たとえば、入射角度が80°以上の場合、S偏光成分の吸収率は0%に近くなる。
【0115】
このような吸収特性からすると、直線偏光のプリパルスレーザ光が照射されたドロップレットは、レーザ光がP偏光成分として80°〜85°の入射角度で入射する部分において、レーザ光のエネルギーを最も多く吸収すると推定される。ドロップレットの被照射面の内、レーザ光がP偏光成分として80°〜85°の入射角度で入射する部分は、図19A及び図20Aに示すドロップレットのレーザ照射を受ける側の半球面のY方向端部付近である。つまり、この部分ではレーザ光の吸収率が高く、強力なレーザアブレーションが生じると推定される。レーザアブレーション領域(ドロップレットのレーザ照射を受ける側の半球面のY方向端部付近)におけるアブレーション反作用の結果、アブレーション領域から、ドロップレット内部に向かう衝撃波が発生し得る。この衝撃波は、図20AにおけるドロップレットのX軸方向端部付近に向かって伝わり、図20AにおけるX方向に、ドロップレットが拡散すると推定される。拡散したドロップレットが、直線偏光のプリパルスレーザ光の偏光方向に直交する方向(X方向)には大きく広がるのに対し、偏光方向(Y方向)にはあまり広がらない原因は、以上の通りであると推定される。
【0116】
そこで、第7の実施形態においては、偏光子20を用いて、プリパルスレーザ光の偏光状態を、直線偏光以外の偏光状態となるように変えてもよい。さらに、プリパルスレーザ光のスポット径をドロップレットの直径(例えば40μm)以上の大きさにすることにより、ドロップレットのレーザ照射側の面全体にプリパルスレーザ光を照射することができる。これにより、ドロップレットをプリパルスレーザ光のビーム軸を中心に軸対称に拡散させ、拡散したドロップレットにメインパルスレーザ光を効率的に照射することができる。
【0117】
偏光子20は、プリパルスレーザ光の偏光状態を、例えば、実質的に円偏光、ビーム軸に垂直な断面の複数の部分における偏光配向がそれぞれ直交する空間的にランダムな直線偏光、ラジアル偏光、アジマス偏光等に変えてもよい。
【0118】
<10−2.偏光制御の例>
図22A〜図22Fは、第7の実施形態において、円偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射し、拡散したドロップレットにメインパルスレーザ光を照射する様子を示す概念図である。図22A及び図22Bは、円偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射する様子を示している。図22C及び図22Dは、プリパルスレーザ光の照射によって拡散したドロップレットに、メインパルスレーザ光を照射する様子を示している。図22E及び図22Fは、メインパルスレーザ光の照射によって生成されるプラズマの様子を模式的に示している。
【0119】
円偏光の光では、電場ベクトルの先端の軌跡が螺旋を描き、当該軌跡をビーム軸に直交する面(XY面)へ投影すると円を描く。また、プリパルスレーザ光のXY面の断面のどの位置においても偏光状態は円偏光である(図22A及び図22B)。円偏光の光では、X方向の偏光成分とY方向の偏光成分との光強度の割合が実質的に1:1となる。このような円偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射すると、プリパルスレーザ光のドロップレット表面における吸収率の分布は、ドロップレットへのレーザ光の照射方向におけるドロップレットの中心軸に対して軸対称となり得る。その結果、ドロップレットの拡散状態は、ドロップレットの中心軸に対して軸対称となり、拡散ターゲットの形状は、例えば、円盤状となり得る(図22C及び図22D)。これにより、拡散ターゲットの形状と、メインパルスレーザ光の断面形状とが略一致するようになるので、拡散ターゲットにメインパルスレーザ光を効率的に吸収させることができる。
【0120】
図23A〜図23Fは、第7の実施形態において、空間的にランダムな直線偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射し、拡散したドロップレットにメインパルスレーザ光を照射する様子を示す概念図である。図23A及び図23Bは、空間的にランダムな直線偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射する様子を示している。図23C及び図23Dは、プリパルスレーザ光の照射によって拡散したドロップレットに、メインパルスレーザ光を照射する様子を示している。図23E及び図23Fは、メインパルスレーザ光の照射によって生成されるプラズマの様子を模式的に示している。
【0121】
図23Bに示すプリパルスレーザ光は、ビーム軸に直交する断面(XY面)において、直交する直線偏光の分布が、空間的にランダムである。このように空間的にランダムな直線偏光は、X方向の偏光成分とY方向の偏光成分との光強度の割合が実質的に1:1となり得る。空間的にランダムな直線偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射する場合を考える。空間的にランダムな直線偏光とは、レーザ光内を微視的に見た場合に、直線偏光状態の領域が多数混在する偏光状態である。このような偏光状態のプリパルスレーザ光のドロップレット表面における吸収率の分布は、ドロップレットへのレーザ光の照射方向におけるドロップレットの中心軸に対して略軸対称となる。その結果、ドロップレットの拡散状態は、ドロップレットの中心軸に対して略軸対称となり、拡散ターゲットの形状は、例えば、円盤状となり得る。従って、拡散ターゲットにメインパルスレーザ光を効率的に吸収させることができる。
【0122】
図24A〜図24Fは、第7の実施形態において、ラジアル偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射し、拡散したドロップレットにメインパルスレーザ光を照射する様子を示す概念図である。図24A及び図24Bは、ラジアル偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射する様子を示している。図24C及び図24Dは、プリパルスレーザ光の照射によって拡散したドロップレットに、メインパルスレーザ光を照射する様子を示している。図24E及び図24Fは、メインパルスレーザ光の照射によって生成されるプラズマの様子を模式的に示している。
【0123】
ラジアル偏光の光では、ビーム軸に直交する断面(XY面)における偏光配向が放射状であり、ビーム軸に対して軸対称である。このようなラジアル偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射すると、プリパルスレーザ光のドロップレット表面における吸収率の分布は、プリパルスレーザ光のビーム軸に対して軸対称となり得る。この際、プリパルスレーザ光のビーム軸とドロップレットの中心軸とが略一致するのが好ましい。その結果、ドロップレットの拡散状態は、プリパルスレーザ光のビーム軸に対して軸対称となり、拡散ターゲットの形状は、例えば、円盤状となり得る。従って、拡散ターゲットにメインパルスレーザ光を効率的に吸収させることができる。
【0124】
プリパルスレーザ光のスポット径をドロップレットの直径(例えば40μm)以上の大きさにした場合には、ラジアル偏光のプリパルスレーザ光は、ドロップレットDLのレーザ照射側の半球面全体に、P偏光成分として入射し得る。従って、プリパルスレーザ光の吸収率を向上させることができるので、適切な状態の拡散ターゲットを生成するためのプリパルスレーザエネルギーは小さくてもよいと推定される。
【0125】
図25A〜図25Fは、第7の実施形態において、アジマス偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射し、拡散したドロップレットにメインパルスレーザ光を照射する様子を示す概念図である。図25A及び図25Bは、アジマス偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射する様子を示している。図25C及び図25Dは、プリパルスレーザ光の照射によって拡散したドロップレットに、メインパルスレーザ光を照射する様子を示している。図25E及び図25Fは、メインパルスレーザ光の照射によって生成されるプラズマの様子を模式的に示している。
【0126】
アジマス偏光の光では、ビーム軸に直交する断面(XY面)における偏光配向がそれぞれの点において接線方向を向くため、ビーム軸(Z軸)に対して軸対称となり得る。このようなアジマス偏光のプリパルスレーザ光をドロップレットに照射すると、プリパルスレーザ光のドロップレット表面における吸収率の分布は、プリパルスレーザ光のビーム軸に対して軸対称となり得る。この際、プリパルスレーザ光のビーム軸とドロップレットの中心軸とが略一致するのが好ましい。その結果、ドロップレットの拡散状態は、プリパルスレーザ光のビーム軸に対して軸対称となり、拡散ターゲットの形状は、例えば、円盤状となり得る。従って、拡散ターゲットにメインパルスレーザ光を効率的に吸収させることができる。
【0127】
第7の実施形態においては、プリパルスレーザ光の偏光状態を制御することによって、プリパルスレーザ光のドロップレット表面における吸収率の分布が、ドロップレットの中心軸及び/又はプリパルスレーザ光のビーム軸に対して軸対称となる場合について説明した。しかし、本開示はこれらに限定されない。プリパルスレーザ光のドロップレット表面における吸収率の分布は、ビーム軸に対して完全に軸対称ではなくても、ある程度の軸対称性を有していればよい。従って、プリパルスレーザ光の偏光状態は、例えば、楕円偏光でもよい。
【0128】
図26A及び図26Bは、直線偏光の割合を測定する直線偏光度の測定法の一例を説明するための図である。図26Aは、偏光プリズム及び光強度検出器を含む、直線偏光度の測定装置を示している。図26Bは、偏光プリズムの回転角度と光強度検出器の検出結果との関係の一例を示している。
【0129】
図26Aに示すように、ファイバレーザ50bから出力される直線偏光のプリパルスレーザ光を、偏光子20によって楕円偏光のレーザ光に変えるとする。この楕円偏光の光を、集光光学系41によって集光し、偏光プリズム42に入射させる。偏光プリズム42からの出射光の強度は、光強度検出器43によって検出される。偏光プリズム42は、方解石(calcite)等の複屈折性の結晶を2つ接合して構成されたプリズムである。偏光プリズム42は、入射光から、プリズムの接合面の向きに応じて所定の偏光方向の光を出射光として取り出すために用いられる。偏光プリズム42をプリパルスレーザ光のビーム軸周りに回転させることにより、偏光プリズム42は、回転角度に応じた偏光方向を有するレーザ光を透過させる。以下の説明では偏光プリズム42は、消光比が十分高い理想的な偏光プリズムとする。
【0130】
図26Bに示すように、偏光プリズム42を180°回転させる毎に、偏光プリズム42からの出射光の強度が周期的に変化する。ここで、式(6)に示すように、直線偏光度Pは光強度の最大値Imaxと最小値Iminとから求めることができる。
P=(Imax−Imin)/(Imax+Imin)×100(%)・・・式(6)
【0131】
ビーム軸に対して略軸対称な偏光状態(円偏光、空間的にランダムな直線偏光、ラジアル偏光、アジマス偏光)の場合は、図26Aによって計測された直線偏光度Pは略0%となる。一方、直線偏光の場合は、直線偏光度Pは略100%となる。但し、偏光成分比Rが以下のような範囲であれば、拡散ターゲットが所望の形状(たとえば、円盤状)に近い形状に形成され得る。これにより、直線偏光のプリパルスレーザ光がドロップレットに照射される場合に比べてメインパルスレーザ光の吸収率を向上させることができる。
0%≦P<30%(好ましい範囲)
0%≦P<20%(より好ましい範囲)
0%≦P<10%(最も好ましい範囲)
なお、この範囲は実際に使用する偏光プリズム42の消光比を考慮して補正してもよい。
【0132】
<10−3.偏光子の例>
図27は、第7の実施形態における偏光子の第1の例を示す斜視図である。図27においては、直線偏光を円偏光に変換するλ/4波長板(quarter waveplate)21が、偏光子として用いられている。
【0133】
透過型のλ/4波長板21は、入射した光の内の、結晶の光学軸に平行な偏光成分と結晶の光学軸に直交する偏光成分との間に、位相差π/2を与えて各偏光成分を透過させる複屈折性の結晶である。図27に示すように、λ/4波長板21の入射側の面に垂直に入射する直線偏光の入射光の偏光方向が、λ/4波長板21の結晶の光学軸に対して+45°傾いている場合には、λ/4波長板21からの出射光は円偏光となる。また、入射光の偏光方向が、λ/4波長板21の結晶の光学軸に対して−45°の角度となった場合には、出射光の円偏光の回転方向が逆転する。なお、本開示は、透過型のλ/4波長板21を用いる場合に限定されず、反射型のλ/4波長板を用いてもよい。
【0134】
図28A〜図28Cは、第7の実施形態における偏光子の第2の例を示す図である。図28Aは偏光子の正面図、図28Bは偏光子の径方向における断面の一部を拡大した図、図28Cは偏光子の使用形態を示す図である。図28A〜図28Cにおいては、直線偏光を空間的にランダムな直線偏光に変換するランダム位相板22が、偏光子として用いられている。
【0135】
透過型のランダム位相板22は、直径Dの透過型光学素子の入射側面又は出射側面に、たとえば、一辺の長さがdである微小な正方形領域が凹部や凸部によって形成され、これらがランダムに配置された構成を有してもよい。このランダム位相板22は、直径Dの入射光を、一辺の長さがdである正方形の微小ビームに分割し得る。そして、ランダム位相板22は、凸部22aを透過した微小光と凹部22bを透過した微小光との間に、位相差πを与え得る。位相差πは、入射光の波長をλとし、ランダム位相板22の屈折率をn1とした場合に、凸部22aと凹部22bとの段差Δtを式(7)のように設定することによって与えられる。
Δt=λ/2(n1−1)・・・式(7)
【0136】
図28Cに示すように、透過型のランダム位相板22は、たとえばプリパルスレーザ装置と集光光学系15との間に配置されてもよい。直線偏光のレーザ光がランダム位相板22に入射し、ランダム位相板22を透過したレーザ光は、偏光配向がそれぞれ直交する空間的にランダムな直線偏光に変換され得る。ここで、直交する偏光配向のレーザ光同士は干渉しない。このため、集光光学系15による集光点でのビーム断面における光強度の分布はガウス分布ではなく、トップハット(top hat)分布に近くなる。このようなプリパルスレーザ光をドロップレットに照射することにより、ドロップレットの拡散状態は、ドロップレットの中心軸に対して略軸対称となり得る。このため、拡散ターゲットの形状は、例えば、円盤状となり、拡散ターゲットにメインパルスレーザ光を効率的に吸収させることができる。
【0137】
なお、本開示は透過型のランダム位相板22を用いる場合に限定されず、反射型のランダム位相板を用いてもよい。また、ランダム位相板22の凸部22a及び凹部22bの平面形状を正方形とした場合について説明したが、凸部22a及び凹部22bの平面形状は、六角形、三角形又はその他の多角形でもよい。
【0138】
図29A及び図29Bは、第7の実施形態における偏光子の第3の例を示す図である。図29Aは偏光子の斜視図であり、図29Bは偏光子の正面図である。図29A及び図29Bにおいては、直線偏光の光をラジアル偏光の光に変換するn分割波長板23が、偏光子として示されている。
【0139】
n分割波長板23は、三角形のn枚の半波長板(half waveplates)231、232、…、23nをレーザ光のビーム軸に対して軸対称となるように配置した透過型の光学素子である。半波長板231、232、…、23nの各々は、入射した光の内の、結晶の光学軸に平行な偏光成分と結晶の光学軸に直交する偏光成分との間に、位相差πを与えて各偏光成分を透過させる複屈折性の結晶である。このような半波長板の入射側面に垂直に入射する直線偏光の入射光の偏光方向が、半波長板の結晶の光学軸に対して角度θ傾いていると、出射光は、半波長板の結晶の光学軸に対して偏光方向がさらに角度θ傾いた直線偏光となる。つまり、出射光の偏光方向は、入射光の偏光方向から角度2θ傾くことになる。
【0140】
例えば、半波長板231と半波長板233とは、結晶の光学軸が45°異なるように配置されている。すると、半波長板231を透過した直線偏光の光と、半波長板233を透過した直線偏光の光とでは、偏光方向が90°異なることになる。このように、入射光の偏光方向は、各半波長板の光学軸と入射光の偏光方向とがなす角度に応じて変換される。これによって、各半波長板を透過したレーザ光の偏光方向が、各々所定の偏光方向に変換される。結果として、n分割波長板23は、直線偏光の光をラジアル偏光の光に変換することができる。また、n分割波長板23におけるそれぞれの半波長板の配置を変更することにより、直線偏光の光をアジマス偏光の光に変換することもできる。
【0141】
図30は、第7の実施形態における偏光子の第4の例を示す図である。図30においては、直線偏光の光をラジアル偏光の光に変換する偏光子として、位相補償板24a、偏光回転板24b、及び、シータセル24cが示されている。
【0142】
シータセル24cは、ねじれネマティック(twisted nematic,TN)液晶が封入された光学素子であり、光の入射側から出射側にかけて、液晶分子の配列がねじれるように各液晶分子が配置されている。このシータセル24cに入射した直線偏光の入射光は、液晶分子の配列のねじれに従って旋光し、入射光の偏光方向に対して偏光方向が傾いた直線偏光の光がシータセル24cから出射する。従って、シータセル24cにおける液晶分子の配列のねじれ角度を、方位角方向に応じて異なるようにすることにより、シータセル24cは直線偏光の入射光をラジアル偏光の出射光に変換することができる。
【0143】
但し、シータセル24cのみで直線偏光をラジアル偏光に変換しようとすると、シータセル24cから出射する出射光の上半分と下半分との境界付近において、光強度が低下してしまう場合がある。そこで、位相補償板24aにより、予め入射光の上半分の位相をπずらし、下半分は位相をずらさずに、シータセル24cに入射させる。図30において、位相補償板24aの出射面に示される破線の矢印は、位相補償板24aの上半分と下半分とで光の位相を逆にしたことを示している。位相補償板24aの上半分は、例えば、光の入射側から出射側にかけて、液晶分子の配列が180°ねじれているTN液晶によって構成される。このように位相補償板24aの上半分と下半分とで位相を逆にした直線偏光をシータセル24cに入射させることにより、シータセル24cの上半分から出射する出射光と下半分から出射する出射光との境界付近においては同位相の光が出射することになる。これにより、シータセル24cから出射した出射光の上半分と下半分との境界付近における光強度の低下を抑制することができる。
【0144】
偏光回転板24bは、直線偏光の入射光の偏光方向を90°回転させて出力する光学素子である。入射光の偏光方向を90°回転させてシータセル24cに入射させた場合には、シータセル24cは直線偏光の光をアジマス偏光の光に変換することができる。偏光回転板24bは、例えば、光の入射側から出射側にかけて、液晶分子の配列が90°ねじれているTN液晶によって構成される。この場合、ラジアル偏光とアジマス偏光との切り替えは、偏光回転板24bに印加する直流電圧を制御して、液晶分子の配列をねじれた状態とねじれていない状態とに切り替えることによって行うことができる。
【0145】
以上のように、位相補償板24a、偏光回転板24b、及びシータセル24cを用いることにより、偏光状態の変換を比較的自由に行うことができる。また、図27〜図29Bを参照しながら説明したように、波長板(位相板)を用いて偏光方向を変える場合は、波長板(位相板)の厚さによって、偏光方向を変える光の波長が異なるのに対し、図30を参照しながら説明したように、シータセル24cを用いる場合は、幅広い波長帯域の入射光の偏光方向を変換できる。従って、シータセル24cを用いれば、プリパルスレーザ光の帯域幅が広い場合でも偏光方向の変換が可能である。
【0146】
<11.第8の実施形態>
図31は、第8の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す概念図である。第8の実施形態に係るEUV光生成装置は、ファイバレーザシステム31から出力されたプリパルスレーザ光の偏光状態を、偏光子20によって制御し、このプリパルスレーザ光をメインパルスレーザ光とは別の経路からチャンバ1内に供給する構成を有してもよい。ファイバレーザシステム31及び偏光子20の構成は、第7の実施形態において説明したのと同様でよい。他の点については第2の実施形態と同様でよい。
【0147】
<12.第9の実施形態>
図32A〜図32Cは、第9の実施形態に係るEUV光生成装置においてプリパルスレーザ光を出力するレーザ装置の構成例を示す概念図である。第9の実施形態におけるレーザ装置60aは、上述の第1〜第4の実施形態においてドロップレットを拡散させるためのプリパルスレーザ光を出力するドライバレーザとして、チャンバの外部に設けられてもよい。
【0148】
図32Aに示すように、レーザ装置60aは、反射型の偏光子61aと、フロントミラー62とを含むレーザ共振器を含んでもよい。レーザ共振器内には、レーザ媒質63が配置されてもよい。図示しない励起光源が出力する励起光によってレーザ媒質63から誘導放出光が生成される。誘導放出光は偏光子61aとフロントミラー62との間を往復しながらレーザ媒質63により増幅され、レーザ装置60aからレーザ光が出力される。
【0149】
偏光子61aは、偏光子61aの入射位置に応じて所定の偏光方向の光を高い反射率で反射する機能を有してもよい。偏光子61aの反射特性に応じて、図32Bに示すラジアル偏光、又は、図32Cに示すアジマス偏光の光が、レーザ共振器内で増幅され得る。この増幅された光の一部がフロントミラー62を透過して、プリパルスレーザ光として出力され得る。
【0150】
第9の実施形態によれば、ドライバレーザの共振器の一部に偏光子が用いられている。これにより、ドライバレーザとプラズマ生成領域(PS)との間の光路上には、第7の実施形態のように偏光子を配置しなくてもよい。
【0151】
図33A〜図33Cは、第9の実施形態の変形例に係るEUV光生成装置においてプリパルスレーザ光を出力するレーザ装置の構成例を示す概念図である。この変形例におけるレーザ装置60bは、リアミラー61と、反射型の偏光子62aとを含むレーザ共振器を含んでもよい。偏光子62aの反射特性に応じて、図33Bに示すラジアル偏光、又は、図33Cに示すアジマス偏光の光が、レーザ共振器内で増幅され得る。この増幅された光の一部が偏光子62aを透過して、プリパルスレーザ光として出力され得る。
【0152】
図34A及び図34Bは、第9の実施形態における偏光子の例を示す図である。図34Aは偏光子の斜視図であり、図34Bは偏光子の回折格子部の径方向における断面の一部を拡大して示す図である。図34Aに示すように、反射型の偏光子61aは、反射面に同心円状の回折格子611が形成されたミラーでよい。また、図34Bに示すように、偏光子61aにおいては、ガラス基板613上に多層膜612が形成され、多層膜612の表面に回折格子611が形成されてもよい。
【0153】
このような偏光子61aにアジマス偏光(偏光方向が回折格子611の各溝の方向に略平行)の光が入射すると、アジマス偏光の光は回折格子611を透過して多層膜612へと伝搬し得る。これに対し、偏光子61aにラジアル偏光(偏光方向が回折格子611の各溝の方向に略垂直)の光が入射すると、ラジアル偏光の光は回折格子611を透過せずに反射される。第9の実施形態(図32A〜図32C参照)においては、このような偏光子61aをレーザ共振器に用いることによって、ラジアル偏光でのレーザ光の発振を実現することができる。
【0154】
なお、回折格子611の溝を放射状に形成すれば、偏光子61aがアジマス偏光の光を高い反射率で反射するように構成される。この場合には、アジマス偏光でのレーザ光の発振も可能である。また、第9の実施形態の変形例(図33A〜図33C参照)における偏光子62aに回折格子611を形成することにより、ラジアル偏光又はアジマス偏光でのレーザ光の発振が可能である。
【0155】
ドロップレットへのプリパルスレーザ光照射から所定時間内にメインパルスレーザ光を拡散ターゲットに照射することにより、ドロップレット直径によらずEUV光のエネルギーのバラつきを低減できる可能性がある。図35は、第8の実施形態に係るEUV光生成装置による拡散ターゲットの生成実験の結果を示す。プリパルスレーザ光は偏光子により円偏光となっている。図35の横軸はプリパルスレーザ光がドロップレットに照射された時点からの経過時間を示す。縦軸はドロップレットにプリパルスレーザ光を照射して生成された拡散ターゲットの拡散半径を示す。拡散半径は、直径6μm以上の大きさの粒子が存在する空間の半径としている。図中の各線は、ドロップレットの直径を12μm、20μm、30μm、40μmとした場合の、プリパルスレーザ照射時点からの拡散ターゲット半径の時間変化を各々プロットしている。図35から判るように、拡散ターゲットの拡散半径は、ドロップレット直径に対する依存性が低い。また、ドロップレットへのプリパルスレーザ光照射から0.3〜3μSの間は、拡散半径の時間変化が比較的緩やかになっている。この時間帯ではドロップレット毎の拡散径のバラつきが少ないと推測できる。従って、この時間帯における拡散ターゲットにメインパルスレーザ光を照射すれば、生成されるEUV光エネルギーのパルス間でのバラつきも少ないと推定される。ドロップレットへのプリパルスレーザ光照射から0.3〜3μSの間にメインパルスレーザ光を拡散ターゲットに照射することにより、EUV光のエネルギーのバラつきを低減できる可能性がある。
【0156】
<13.フルーエンスの制御>
図36は、上述の実施形態において、プリパルスレーザ光のフルーエンス(集光点におけるビーム断面の単位面積あたりのエネルギー)に応じたCEの測定値をプロットしたグラフである。
【0157】
測定条件は、次の通りである。ターゲット物質としては、直径20μmの溶融スズのドロップレットを用いた。プリパルスレーザ光としては、YAGパルスレーザ装置から出力されるパルス幅5nsから15nsのレーザ光を用いた。メインパルスレーザ光としては、CO2パルスレーザ装置から出力されるパルス幅20nsのレーザ光を用いた。メインパルスレーザ光の光強度は6.0×109W/cm2とし、プリパルスレーザ光照射後のメインパルスレーザ光照射までの遅延時間は1.5μsとした。
【0158】
図36に示すグラフの横軸はプリパルスレーザ光の照射条件(パルス幅、エネルギー、集光面積)をフルーエンスに換算した値を示している。また、縦軸はプリパルスレーザ光の各照射条件において生成された拡散ターゲットに前述のメインパルスレーザ光をほぼ同様の条件で照射した場合のCEを示している。
【0159】
図36に示す測定結果から、プリパルスレーザ光のフルーエンスを高くするとCEが3%程度にまで向上することがわかった。すなわち、少なくともプリパルスレーザ光のパルス幅が5ns〜15nsの範囲では、フルーエンスとCEとの相関があることがわかった。
【0160】
従って、上述の実施形態において、EUV光生成コントローラ7はプリパルスレーザ光の光強度ではなくフルーエンスを制御するように構成されてもよい。図36に示す測定結果から、プリパルスレーザ光のフルーエンスは、10mJ/cm2〜600mJ/cm2の範囲が好ましい。また、30mJ/cm2〜400mJ/cm2の範囲がより好ましい。また、150mJ/cm2〜300mJ/cm2の範囲がさらに好ましい。
【0161】
プリパルスレーザ光のフルーエンスが上述のような範囲に制御される場合にCEが向上するという計測結果から、この条件ではターゲット物質のドロップレットは円盤状又は皿状、或いはトーラス状に拡散していたものと推測される。つまり、ドロップレットが拡散し、総表面積が大きくなった結果、拡散した微粒子にメインパルスレーザ光のエネルギーが効率的に吸収されたため、CEが向上したものと推測される。
【0162】
<14.遅延時間の制御>
図37は、上述の実施形態において、プリパルスレーザ光照射後からメインパルスレーザ光が照射されるまでの遅延時間に応じたCEの測定値をターゲット物質のドロップレット径ごとにプロットしたグラフである。
【0163】
測定条件は、次の通りである。ターゲット物質としては、直径12μm、20μm、30μm及び40μmの溶融スズのドロップレットを用いた。プリパルスレーザ光としては、YAGパルスレーザ装置から出力されるパルス幅5nsのレーザ光を用いた。プリパルスレーザ光のフルーエンスは490mJ/cm2とした。メインパルスレーザ光としては、CO2パルスレーザ装置から出力されるパルス幅20nsのレーザ光を用いた。メインパルスレーザ光の光強度は6.0×109W/cm2とした。
【0164】
図37に示す測定結果から、プリパルスレーザ光照射後からメインパルスレーザ光照射までの遅延時間は、0.5μs〜2.5μsの範囲が好ましいことがわかった。但し、ターゲット物質のドロップレット径ごとに、高いCEを得るためのメインパルスレーザ光照射までの遅延時間の最適範囲は異なる可能性があることがわかった。
【0165】
ドロップレット径が12μmの場合、プリパルスレーザ光照射後からメインパルスレーザ光照射までの遅延時間は、0.5μs〜2μsの範囲が好ましい。また、0.6μs〜1.5μsの範囲がより好ましい。また、0.7μs〜1μsの範囲がさらに好ましい。
【0166】
ドロップレット径が20μmの場合、プリパルスレーザ光照射後からメインパルスレーザ光照射までの遅延時間は、0.5μs〜2.5μsの範囲が好ましい。また、1μs〜2μsの範囲がより好ましい。また、1.3μs〜1.7μsの範囲がさらに好ましい。
【0167】
ドロップレット径が30μmの場合、プリパルスレーザ光照射後からメインパルスレーザ光照射までの遅延時間は、0.5μs〜4μsの範囲が好ましい。また、1.5μs〜3.5μsの範囲がより好ましい。また、2μs〜3μsの範囲がさらに好ましい。
【0168】
ドロップレット径が40μmの場合、プリパルスレーザ光照射後からメインパルスレーザ光照射までの遅延時間は、0.5μs〜6μsの範囲が好ましい。また、1.5μs〜5μsの範囲がより好ましい。また、2μs〜4μsの範囲がさらに好ましい。
【0169】
プリパルスレーザ光照射後からメインパルスレーザ光照射までの遅延時間を上述のような範囲に制御することにより、ターゲット物質のドロップレットが十分に細かい微粒子に拡散されたものと推測される。また、ドロップレットが拡散し、総表面積が大きくなった結果、拡散した微粒子にメインパルスレーザ光のエネルギーが効率的に吸収されたため、CEが向上したものと推測される。
【0170】
以上の説明において、ドライバレーザ3(図1)は、ドロップレットに照射されるプリパルスレーザ光、及び拡散ターゲットに照射されるメインパルスレーザ光を出力するレーザ光生成システムに相当する。YAGパルスレーザ装置3a(図9〜図11)及びファイバレーザシステム31(図18、図31)は、それぞれ、プリパルスレーザ光を生成する第1のパルスレーザ装置に相当する。CO2パルスレーザ装置3b(図9〜図11)及びCO2パルスレーザシステム32(図18、図31)は、それぞれ、メインパルスレーザ光を生成する第2のパルスレーザ装置に相当する。また、EUV光生成コントローラ7(図1)は、プリパルスレーザ光の光強度とメインパルスレーザ光の光強度及び生成タイミングとを制御するレーザ制御部に相当する。
【符号の説明】
【0171】
1…チャンバ、2…ターゲット供給部、3…ドライバレーザ、3a…YAGパルスレーザ装置、3b…CO2パルスレーザ装置、3d、3e…マスタオシレータ、3g…リレー光学系、3h…プリアンプ、3i…リレー光学系、3j…メインアンプ、3k…リレー光学系、4…ビームエキスパンダ、5…EUV集光ミラー、6a、6b…磁石、6c…電生成装置、6d…電源コントローラ、7…光生成コントローラ、7a…トリガーカウンタ、7b…タイマー、8…ドロップレットコントローラ、9…露光装置コントローラ、11…露光装置接続ポート、12…窓、13…ターゲットノズル、14…ターゲット回収部、15…集光光学系、15a…高反射ミラー、15b…軸外放物面ミラー、15c…ビームコンバイナ、15d、15e…高反射ミラー、15f、15g…軸外放物面ミラー、16…光検出器、17…トリガコントローラ、19a、19b…イオン回収部、20…偏光子、21…λ/4波長板、22…ランダム位相板、22a…凸部、22b…凹部、23…n分割波長板、24a…位相補償板、24b…偏光回転板、24c…シータセル、31…ファイバレーザシステム、31a…ファイバレーザコントローラ、32…CO2パルスレーザシステム、32a…CO2レーザコントローラ、41…集光光学系、42…偏光プリズム、43…光強度検出器、50a…チタンサファイヤレーザ、50b…ファイバレーザ、51a、52b…半導体可飽和吸収ミラー、51b…高反射ミラー、52a…出力結合ミラー、53a…凹面ミラー、53b…グレーティングペア、54a…第1のポンピングミラー、54b…第1の偏光維持ファイバ、55a…チタンサファイア結晶、55b…マルチプレクサ、56a…第2のポンピングミラー、56b…分離素子、57a、58a…プリズム、57b…第2の偏光維持ファイバ、58b…集光光学系、59a、59b…励起光源、60a、60b…レーザ装置、61…リアミラー、61a…偏光子、62…フロントミラー、62a…偏光子、63…レーザ媒質、231、232、233、23n…半波長板、611…回折格子、612…多層膜、613…ガラス基板、DL…ドロップレット、PS…プラズマ生成領域、IF…中間集光点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光生成システムと、
前記レーザ光生成システムから出力される少なくとも1つのレーザ光の光強度および出力タイミングの少なくともいずれか一方を制御するレーザ制御システムと、
前記レーザ光生成システムから出力される前記少なくとも1つのレーザ光を内部に導入するための少なくとも1つの入射口が設けられたチャンバと、
前記チャンバに設けられ、前記チャンバ内の所定の領域にターゲット物質を供給するターゲット供給部と、
を備える極端紫外光生成装置。
【請求項2】
前記ターゲット物質は、ドロップレットの形状で前記所定の領域に供給される、請求項1記載の極端紫外光生成装置。
【請求項3】
前記レーザ光生成システムは、第1のレーザ装置を含み、
前記第1のレーザ装置は、前記チャンバ内で前記ターゲット物質に照射される第1のプリパルスレーザ光を出力する、
請求項1記載の極端紫外光生成装置。
【請求項4】
前記第1のレーザ装置はYAGレーザ装置を含む、請求項3記載の極端紫外光生成装置。
【請求項5】
前記第1のレーザ装置はファイバレーザ装置含む、請求項3記載の極端紫外光生成装置。
【請求項6】
前記第1のレーザ装置はチタンサファイアレーザ装置を含む、請求項3記載の極端紫外光生成装置。
【請求項7】
前記第1のプリパルスレーザ光の光路上には、偏光子が設けられ、
前記偏光子を透過した前記第1のプリパルスレーザ光の偏光状態は、前記第1のプリパルスレーザ光に含まれる互いに垂直な第1および第2の偏光成分の光強度をそれぞれI1およびI2として、式R=|I1−I2|/|I1+I2|×100(%)で定義される値Rの最大値が0%以上30%未満となるような偏光状態に変更される、請求項3記載の極端紫外光生成装置。
【請求項8】
前記偏光子を透過した第1のプリパルスレーザ光の偏光状態は、円偏光に変更される、請求項7記載の極端紫外光生成装置。
【請求項9】
前記偏光子を透過した第1のプリパルスレーザ光の偏光状態は、ラジアル偏光に変更される、請求項7記載の極端紫外光生成装置。
【請求項10】
前記偏光子を透過した第1のプリパルスレーザ光の偏光状態は、前記第1のプリパルスレーザ光のビーム軸に対して軸対称性を有する偏光状態に変更される、請求項7記載の極端紫外光生成装置。
【請求項11】
前記レーザ光生成システムは、第2のレーザ装置をさらに含み、
前記第2のレーザ装置は、前記第1のプリパルスレーザ光が照射された前記ターゲット物質に照射される第1のメインパルスレーザ光を出力する、
請求項3記載の極端紫外光生成装置。
【請求項12】
前記第2のレーザ装置はCO2レーザ装置を含む、請求項11記載の極端紫外光生成装置。
【請求項13】
前記第1のプリパルスレーザ光の波長は前記第1のメインパルスレーザ光の波長よりも短い、請求項11記載の極端紫外光生成装置。
【請求項14】
前記レーザ制御システムは、前記第1のメインパルスレーザ光の出力タイミングを、前記第1のプリパルスレーザ光が前記ターゲット物質に照射される時点から0.3〜3μSの範囲内のタイミングに制御する、請求項11記載の極端紫外光生成装置。
【請求項15】
前記第1のプリパルスレーザ光が照射された前記ターゲット物質の形状は、円盤状および皿状のいずれかである、請求項14記載の極端紫外光生成装置。
【請求項16】
前記第1のプリパルスレーザ光が照射された前記ターゲット物質の形状は、前記第1のプリパルスレーザ光の進行方向における長さが、前記第1のプリパルスレーザ光の進行方向に垂直な方向における長さよりも短い形状である、請求項15記載の極端紫外光生成装置。
【請求項17】
前記第1のメインパルスレーザ光は、前記第1のプリパルスレーザ光と略同一方向から前記ターゲット物質を照射する、請求項11記載の極端紫外光生成装置。
【請求項18】
前記第1のメインパルスレーザ光の、該第1のメインパルスレーザ光が前記ターゲット物質に照射される時点でのビーム断面の面積は、前記ターゲット物質の前記第1のメインパルスレーザ光の進行方向に垂直な面における断面の最大面積以上である、請求項17記載の極端紫外光生成装置。
【請求項19】
前記ターゲット物質は、ドロップレットの形状で前記所定の領域に供給され、
前記ドロップレットの直径は12μm以上、40μm以下であり、
前記レーザ制御システムは、前記第1のプリパルスレーザ光の光強度を6.4×109W/cm2以上、3.2×1010W/cm2以下に制御し、
前記レーザ制御システムは、前記第1のメインパルスレーザ光の出力タイミングを、前記第1のプリパルスレーザ光が前記ドロップレットに照射される時点から0.5μS〜2μSの範囲内のタイミングに制御する、
請求項11記載の極端紫外光生成装置。
【請求項20】
前記第1のプリパルスレーザ光が照射された前記ターゲット物質の形状は、前記第1のプリパルスレーザ光のビーム軸に対して略軸対称であり、且つ実質的に環状である、請求項19記載の極端紫外光生成装置。
【請求項21】
前記レーザ光生成システムは、第3のレーザ装置をさらに含み、
前記第3のレーザ装置は、前記第1のプリパルスレーザ光が照射された前記ターゲット物質に照射される第2のプリパルスレーザ光および前記第2のプリパルスレーザ光が照射された前記ターゲット物質に照射される第2のメインパルスレーザ光を出力する、
請求項3記載の極端紫外光生成装置。
【請求項22】
前記第3のレーザ装置はCO2レーザ装置を含む、請求項21記載の極端紫外光生成装置。
【請求項23】
前記第1のプリパルスレーザ光の波長は、前記第2のプリパルスレーザ光の波長よりも短い、請求項21記載の極端紫外光生成装置。
【請求項24】
前記第2のプリパルスレーザ光および前記第2のメインパルスレーザ光は、前記第1のプリパルスレーザ光と略同一方向から前記ターゲット物質を照射する、請求項21記載の極端紫外光生成装置。
【請求項25】
前記第2のメインパルスレーザ光の、該第2のメインパルスレーザ光が前記ターゲット物質に照射される時点でのビーム断面の面積は、前記ターゲット物質の前記第2のメインパルスレーザ光の進行方向に垂直な面における断面の最大面積以上である、請求項24記載の極端紫外光生成装置。
【請求項26】
レーザ光生成システムと、
前記レーザ光生成システムから出力される少なくとも1つのレーザ光のフルーエンスを制御するレーザ制御システムと、
前記レーザ光生成システムから出力される前記少なくとも1つのレーザ光を内部に導入するための少なくとも1つの入射口が設けられたチャンバと、
前記チャンバに設けられ、前記チャンバ内の所定の領域にターゲット物質を供給するターゲット供給部と、
を備える極端紫外光生成装置。
【請求項27】
レーザ光生成システム、レーザ制御システム、チャンバおよびターゲット供給部を備える極端紫外光生成装置において、極端紫外光を生成する方法であって、
前記チャンバ内にターゲット物質をドロップレットの形状で供給することと、
前記ドロップレットに前記レーザ光生成システムから出力されるプリパルスレーザ光を照射することと、
前記ドロップレットに前記プリパルスレーザ光が照射された時点から所定時間経過後、前記プリパルスレーザ光が照射された前記ドロップレットに、前記レーザ光生成システムから出力されるメインパルスレーザ光を照射することと、
を含む、方法。
【請求項28】
前記所定時間は0.5μS〜3μSの範囲内である、請求項27記載の方法。
【請求項1】
レーザ光生成システムと、
前記レーザ光生成システムから出力される少なくとも1つのレーザ光の光強度および出力タイミングの少なくともいずれか一方を制御するレーザ制御システムと、
前記レーザ光生成システムから出力される前記少なくとも1つのレーザ光を内部に導入するための少なくとも1つの入射口が設けられたチャンバと、
前記チャンバに設けられ、前記チャンバ内の所定の領域にターゲット物質を供給するターゲット供給部と、
を備える極端紫外光生成装置。
【請求項2】
前記ターゲット物質は、ドロップレットの形状で前記所定の領域に供給される、請求項1記載の極端紫外光生成装置。
【請求項3】
前記レーザ光生成システムは、第1のレーザ装置を含み、
前記第1のレーザ装置は、前記チャンバ内で前記ターゲット物質に照射される第1のプリパルスレーザ光を出力する、
請求項1記載の極端紫外光生成装置。
【請求項4】
前記第1のレーザ装置はYAGレーザ装置を含む、請求項3記載の極端紫外光生成装置。
【請求項5】
前記第1のレーザ装置はファイバレーザ装置含む、請求項3記載の極端紫外光生成装置。
【請求項6】
前記第1のレーザ装置はチタンサファイアレーザ装置を含む、請求項3記載の極端紫外光生成装置。
【請求項7】
前記第1のプリパルスレーザ光の光路上には、偏光子が設けられ、
前記偏光子を透過した前記第1のプリパルスレーザ光の偏光状態は、前記第1のプリパルスレーザ光に含まれる互いに垂直な第1および第2の偏光成分の光強度をそれぞれI1およびI2として、式R=|I1−I2|/|I1+I2|×100(%)で定義される値Rの最大値が0%以上30%未満となるような偏光状態に変更される、請求項3記載の極端紫外光生成装置。
【請求項8】
前記偏光子を透過した第1のプリパルスレーザ光の偏光状態は、円偏光に変更される、請求項7記載の極端紫外光生成装置。
【請求項9】
前記偏光子を透過した第1のプリパルスレーザ光の偏光状態は、ラジアル偏光に変更される、請求項7記載の極端紫外光生成装置。
【請求項10】
前記偏光子を透過した第1のプリパルスレーザ光の偏光状態は、前記第1のプリパルスレーザ光のビーム軸に対して軸対称性を有する偏光状態に変更される、請求項7記載の極端紫外光生成装置。
【請求項11】
前記レーザ光生成システムは、第2のレーザ装置をさらに含み、
前記第2のレーザ装置は、前記第1のプリパルスレーザ光が照射された前記ターゲット物質に照射される第1のメインパルスレーザ光を出力する、
請求項3記載の極端紫外光生成装置。
【請求項12】
前記第2のレーザ装置はCO2レーザ装置を含む、請求項11記載の極端紫外光生成装置。
【請求項13】
前記第1のプリパルスレーザ光の波長は前記第1のメインパルスレーザ光の波長よりも短い、請求項11記載の極端紫外光生成装置。
【請求項14】
前記レーザ制御システムは、前記第1のメインパルスレーザ光の出力タイミングを、前記第1のプリパルスレーザ光が前記ターゲット物質に照射される時点から0.3〜3μSの範囲内のタイミングに制御する、請求項11記載の極端紫外光生成装置。
【請求項15】
前記第1のプリパルスレーザ光が照射された前記ターゲット物質の形状は、円盤状および皿状のいずれかである、請求項14記載の極端紫外光生成装置。
【請求項16】
前記第1のプリパルスレーザ光が照射された前記ターゲット物質の形状は、前記第1のプリパルスレーザ光の進行方向における長さが、前記第1のプリパルスレーザ光の進行方向に垂直な方向における長さよりも短い形状である、請求項15記載の極端紫外光生成装置。
【請求項17】
前記第1のメインパルスレーザ光は、前記第1のプリパルスレーザ光と略同一方向から前記ターゲット物質を照射する、請求項11記載の極端紫外光生成装置。
【請求項18】
前記第1のメインパルスレーザ光の、該第1のメインパルスレーザ光が前記ターゲット物質に照射される時点でのビーム断面の面積は、前記ターゲット物質の前記第1のメインパルスレーザ光の進行方向に垂直な面における断面の最大面積以上である、請求項17記載の極端紫外光生成装置。
【請求項19】
前記ターゲット物質は、ドロップレットの形状で前記所定の領域に供給され、
前記ドロップレットの直径は12μm以上、40μm以下であり、
前記レーザ制御システムは、前記第1のプリパルスレーザ光の光強度を6.4×109W/cm2以上、3.2×1010W/cm2以下に制御し、
前記レーザ制御システムは、前記第1のメインパルスレーザ光の出力タイミングを、前記第1のプリパルスレーザ光が前記ドロップレットに照射される時点から0.5μS〜2μSの範囲内のタイミングに制御する、
請求項11記載の極端紫外光生成装置。
【請求項20】
前記第1のプリパルスレーザ光が照射された前記ターゲット物質の形状は、前記第1のプリパルスレーザ光のビーム軸に対して略軸対称であり、且つ実質的に環状である、請求項19記載の極端紫外光生成装置。
【請求項21】
前記レーザ光生成システムは、第3のレーザ装置をさらに含み、
前記第3のレーザ装置は、前記第1のプリパルスレーザ光が照射された前記ターゲット物質に照射される第2のプリパルスレーザ光および前記第2のプリパルスレーザ光が照射された前記ターゲット物質に照射される第2のメインパルスレーザ光を出力する、
請求項3記載の極端紫外光生成装置。
【請求項22】
前記第3のレーザ装置はCO2レーザ装置を含む、請求項21記載の極端紫外光生成装置。
【請求項23】
前記第1のプリパルスレーザ光の波長は、前記第2のプリパルスレーザ光の波長よりも短い、請求項21記載の極端紫外光生成装置。
【請求項24】
前記第2のプリパルスレーザ光および前記第2のメインパルスレーザ光は、前記第1のプリパルスレーザ光と略同一方向から前記ターゲット物質を照射する、請求項21記載の極端紫外光生成装置。
【請求項25】
前記第2のメインパルスレーザ光の、該第2のメインパルスレーザ光が前記ターゲット物質に照射される時点でのビーム断面の面積は、前記ターゲット物質の前記第2のメインパルスレーザ光の進行方向に垂直な面における断面の最大面積以上である、請求項24記載の極端紫外光生成装置。
【請求項26】
レーザ光生成システムと、
前記レーザ光生成システムから出力される少なくとも1つのレーザ光のフルーエンスを制御するレーザ制御システムと、
前記レーザ光生成システムから出力される前記少なくとも1つのレーザ光を内部に導入するための少なくとも1つの入射口が設けられたチャンバと、
前記チャンバに設けられ、前記チャンバ内の所定の領域にターゲット物質を供給するターゲット供給部と、
を備える極端紫外光生成装置。
【請求項27】
レーザ光生成システム、レーザ制御システム、チャンバおよびターゲット供給部を備える極端紫外光生成装置において、極端紫外光を生成する方法であって、
前記チャンバ内にターゲット物質をドロップレットの形状で供給することと、
前記ドロップレットに前記レーザ光生成システムから出力されるプリパルスレーザ光を照射することと、
前記ドロップレットに前記プリパルスレーザ光が照射された時点から所定時間経過後、前記プリパルスレーザ光が照射された前記ドロップレットに、前記レーザ光生成システムから出力されるメインパルスレーザ光を照射することと、
を含む、方法。
【請求項28】
前記所定時間は0.5μS〜3μSの範囲内である、請求項27記載の方法。
【図1】
【図2】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図21】
【図26】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図12】
【図19】
【図20】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図27】
【図2】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図21】
【図26】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図12】
【図19】
【図20】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図27】
【公開番号】特開2013−4258(P2013−4258A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133111(P2011−133111)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術開発機構「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト/次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト(石特会計)/EUV光源高信頼化技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術開発機構「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト/次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト(石特会計)/EUV光源高信頼化技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】
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