説明

楽曲データの生成、配信方法および楽曲データ配信装置

【課題】本人および周囲の人にとって快くまた好ましく、かつ携帯電話機の機種と適合した音を作成し、配信すること。。
【解決手段】楽曲データの生成方法は、選曲ステップ、アレンジステップ、原曲よりも遅いテンポで演奏歌唱して録音するステップ、ミキシングして標準楽曲データを生成するステップ、標準楽曲データを携帯電話機の機種グループ毎に調整するステップを含む。更に、楽曲データ配信装置は、機種グループ毎の楽曲データを記憶しており、アクセスしてきた携帯電話機の機種情報を取得し、どの機種グループに属するかを判定して、機種グループと対応する楽曲データをダウンロードする。本人にとって快いと共に落ち着いて対応でき、周囲の人にとっても不快にならない楽曲データが生成され、かつ機種毎に最適化された楽曲を配信することができる。。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる着歌等の楽曲データの生成方法および生成された楽曲データの配信方法、装置に関するものであり、特に、各種の携帯電話機の特性に適合した楽曲データ生成方法および楽曲データ配信方法、装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機の着信音は単なる電子ブザーの音色からMIDI(楽譜)データに基づいて合成回路が楽音信号を生成する着メロへ移行し、また所望の曲データをダウンロードできるようになっている。更に、近年は、携帯電話機の記憶容量が増加し、圧縮されたデジタル楽音データをダウンロードして着信音として利用する、いわゆる着歌機能が搭載されている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、顧客が持参したメディアに記録されている音楽ソースの好みの部分を容易に着信音として編集し、携帯電話機で演奏可能とする着メロサービス方法が開示されている。
【特許文献1】特開2002−207489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の着歌機能において、サイトからダウンロードされる楽曲データは、例えばヒットチャートの上位の曲が選択され、その曲のCDのオリジナルデータを利用して着歌データが作成されていたので、携帯電話機において発音した場合に、メロディが聴き取りにくい、音が歪む、テンポが速すぎる、高音が耳に付くなどの問題点があり、本人および周囲の人にとって必ずしも快いあるいは好ましい音ではないという問題点があった。本発明は、上記した課題を解決することを目的とし、本人および周囲の人にとって快くまた好ましく、かつ携帯電話機の機種と適合した音を作成し、配信することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の楽曲データの生成方法は、選曲を行うステップと、選曲された楽曲のアレンジを行うステップと、アレンジされた楽曲を原曲よりも遅いテンポで演奏あるいは歌唱して録音するステップと、録音データをミキシングして標準となる楽曲データを生成するステップと、標準となる楽曲データを携帯電話機の機種グループ毎に調整して機種グループ毎の楽曲データを生成するステップとを含むことを主要な特徴とする。
【0006】
また、本発明の楽曲データ配信装置は、機種グループ毎の楽曲データを記憶しているデータベース手段と、アクセスしてきた携帯電話機の機種情報を取得する機種情報取得手段と、前記所得した機種情報に基づいて当該携帯電話機がどの機種グループに属するかを判定するグループ判定手段と、前記携帯電話機からの特定の楽曲のダウンロード要求に基づき、当該携帯電話機が属する機種グループと対応する楽曲データをダウンロードするダウンロード手段とを備えたことを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の楽曲データの生成方法および楽曲データ配信装置は上記のような特徴によって、本人にとって快いと共に落ち着いて対応でき、周囲の人にとっても不快にならない楽曲データが生成され、かつ機種毎に最適化された楽曲を配信することができるので、各種の携帯電話機において着信音として発音された場合においても歪まずに明瞭に発音され、着信音が本人のみならず周囲の人にとっても心地よく、快いものとなるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下実施例について図面を参照して説明する。この実施例は、元の曲のCDから楽曲データを生成するのではなく、その曲について着歌専用に演奏、歌唱を行い、録音することによって着歌データを生成し、機種対応に調整して、サーバから携帯電話機にダウンロードして着信音として利用するものである。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明の着歌データ生成処理を示すフローチャートである。S10においては、まず、選曲を行う。基準としてはヒットチャートの上位の曲や携帯電話機のユーザが興味を持ちそうな曲で、かつ携帯電話機の音響特性に合いそうな曲を選曲する。
【0010】
S11においては、コンセプトを決定し、アレンジ、編曲を行う。携帯電話機においては、スピーカが小さく、筐体も小さいので低音はかなり減衰したり歪んだりするが、中高音は明瞭に発音される傾向にある。従って、編曲においては、まず中高音域に適しており、かつ聞いて心地よい音色を選択する。発明者は各種の試行の結果、音色としてピアノあるいはアカペラ(人の声)が適していることを発見した。
【0011】
次に、着歌データは携帯電話機の記憶容量が小さいので、数百キロバイト程度にする必要があり、長くても30秒程度に編曲する必要がある。そこで、例えば楽曲の最も特徴的なさびの部分等を抽出して短く編曲する。また、原曲のテンポは一般に着歌としては速すぎるので、テンポは原曲よりも遅くする。テンポを遅くすることによって、メロディがより明瞭に聞き取れ、また落ち着いた感じとなって不快感が減少する。
【0012】
メロディ(主旋律)が決定すると、音楽理論に基づいて主旋律に伴奏音(ハーモニー)を加えていく。同時に発音、発声する数は多すぎるとそれぞれの音が聞きづらくなるので、3〜4程度とする。
【0013】
S12においては、演奏家あるいは歌手に依頼してピアノ、デジタルピアノあるいはその他の楽器による演奏あるいはアカペラによる歌唱を行ってもらい、マルチトラックでデジタル録音する。S13においては、試聴して良好か否かを判定し、良好でない場合にはS12に戻るか、あるいはS11に戻ってやり直す。
【0014】
S14においては、標準的な携帯電話機の電気的音響的特性に合わせて、マルチトラックデータをデジタルステレオ信号にミキシングする。ステレオ信号とする理由は、現在の着歌データはモノラルであるが、将来的にはステレオ化される可能性があるためである。ミキシングにおいては、低音部はけずり、エコーを多めにかける。以上の作業によって、ベースとなる標準着歌データが生成される。この標準着歌データは、後述する新機種追加処理等のために保存しておく。
【0015】
S15以降は携帯電話機の機種ごとの特性に適合させるための処理である。携帯電話機は、機種毎にデータフォーマット(コード)、使用される回路(LSIチップ)、スピーカが異なり、また筐体の形状も異なるので、最終的に発音される音の周波数特性や音割れするレベル等が異なっている。しかし、同じLSIやスピーカを使用した携帯電話機は機種が異なっていても音響特性は類似している。
【0016】
そこで、音響特性の類似している機種を機種グループにまとめ、機種グループ毎に標準の着歌データのレベルや音質を調整し、エンコード、即ち携帯電話機において再生可能なコードに変換、圧縮する。
【0017】
S15においては、複数の機種グループの中からまだ未処理の機種グループを1つ選択する。S16においては、そのグループの特性に合わせて調整、エンコード処理を行う。具体的には、例えば当該機種グループの携帯電話機の音響特性に合わせて、平均レベル、各周波数帯域毎の相対レベル(周波数特性)、各周波数帯域毎のコンプレッサレベル、リミッタレベル等の調整パラメータを設定して、前記した標準着歌データをデジタル加工処理し、更にエンコード処理して、機種グループ対応の着歌データを生成する。
【0018】
S17においては、試聴して良好か否かを判定し、良好でない場合にはS16に戻って調整パラメータを修正して処理をやり直す。S18においては、全ての機種グループについて処理が終了したか否か判定し、未処理のものがあればS15に戻る。S19においては、作成した各機種グループ毎の着歌データをそれぞれの機種グループと対応付けて後述するサーバのDBに登録する。
【0019】
図2は、本発明の着歌データ配信装置を含むシステム全体の構成を示すブロック図である。着歌データ配信装置であるサーバ10は前記した機種グループ毎の着歌データが登録されたデータベース11を備え、インターネット12に接続されている。サーバ10はWebサーバ機能を備えている。
【0020】
各通信業者の運営する携帯電話網A13、携帯電話網B14、携帯電話網C15も図示しないゲートウェイサーバを介してインターネット12に接続されており、各携帯電話網の端末である携帯電話機20は、それぞれの携帯電話網およびインターネット12を介してサーバ10と接続可能である。携帯電話機20はWebブラウザを備え、サーバ10から所望の着歌データをダウンロードしてメモリに保存することができる。なおこのような通信網および携帯電話機は周知である。
【0021】
図3は、サーバの処理内容を示すフローチャートである。S20においては、アクセスがあるまで待ち、S21においては、アクセスしてきたユーザが登録ユーザか否かを判定する。なお、公式サイトであれば携帯電話網からユーザ識別情報を取得可能である。また、予め登録されているIDとパスワードに基づいて認証を行ってもよい。
【0022】
S22においては、(特定の楽曲の)ダウンロード要求か否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS23に移行するが、肯定の場合にはS24に移行する。S23においては、その他のサービス処理が行われる。
【0023】
S24においては、端末から機種情報を取得する。携帯電話機には端末を識別するための端末IDコードが固定的に記憶されており、そのコードの上位の所定桁は機種コードとなっている。従って、端末からこの端末IDコードを取得することにより、端末の機種が判明する。
【0024】
S25においては、端末が属する機種グループを決定する。このために、予め、データベース内に機種と機種グループの対応テーブルを作成しておき、機種コードをキーとしてこのテーブルを参照する。
【0025】
S26においては、S25において決定された機種グループと対応する特定の楽曲の着歌データを読み出して携帯電話機にダウンロードする。以上のような処理によって、携帯電話機のユーザは自分の携帯電話機の機種に適合した着歌データをダウンロードすることができる。
【0026】
図4は、新機種追加処理の内容を示すフローチャートである。図1のフローチャートは現在の機種グループ対応に新しい楽曲の着歌データを作成する場合の処理であるが、携帯電話機の新機種が発売された場合には、既存の多数の着歌データを速やかに新機種に対応させる必要がある。
【0027】
S30においては、例えば新機種の発売前にメーカーからサンプルの提供を受けて、携帯電話機の新機種の仕様、回路特性、音響特性などを調査、測定する。S31においては、既存の機種グループの特性と一致あるいは類似するか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS32に移行するが、肯定の場合にはS38に移行する。S38においては、着歌データを新たに生成する必要はないので、既存の機種グループに機種を追加登録して処理を終了する。
【0028】
新機種の特性が既存の機種と異なっている場合には新機種用に着歌データを生成する必要があるので、S32においては、前記した標準着歌データを加工するためのレベルや周波数特性等の調整パラメータを決定する。S33においては、未処理の標準着歌データを読み出す。
【0029】
S34においては、S32において決定されたパラメータによって標準着歌データを調整し、その機種に適合したコードにエンコード処理を行う。S35においては、全ての機種グループについて処理が完了したか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS33に移行するが、肯定の場合にはS36に移行する。
【0030】
S36においては、データベースに機種グループおよび機種を追加登録する。S37においては、機種グループと対応して生成された全てのエンコードデータを登録する。以上のような処理によって、新機種に対応した着歌データを自動的に生成することができる。
【0031】
以上実施例1を説明したが、本発明には以下のような変形例も考えられる。実施例においては、サラウンド機能には対応していないが、携帯電話機がステレオ化された場合には携帯電話機の特性に合わせたサラウンド調整を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の着歌データ生成処理を示すフローチャートである。
【図2】本発明の着歌データ配信装置を含むシステム全体の構成を示すブロック図である。
【図3】サーバの処理内容を示すフローチャートである。
【図4】新機種追加処理の内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0033】
10…サーバ
11…データベース
12…インターネット
13、14、15…携帯電話網
20…携帯電話機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選曲を行うステップと、
選曲された楽曲のアレンジを行うステップと、
アレンジされた楽曲を原曲よりも遅いテンポで演奏あるいは歌唱して録音するステップと、
録音データをミキシングして標準となる楽曲データを生成するステップと、
標準となる楽曲データを携帯電話機の機種グループ毎に調整して機種グループ毎の楽曲データを生成するステップと
を含むことを特徴とする携帯電話機用の楽曲データの生成方法。
【請求項2】
前記アレンジを行うステップにおいては、楽曲を短く編曲し、同時発音数を所定数以下にすると共に、携帯電話機の音響特性に合う音色に決定することを特徴とする請求項1に記載の楽曲データの生成方法。
【請求項3】
前記アレンジを行うステップにおいては、同時発音数を4以下にすると共に音色をピアノあるいはアカペラのいずれかに決定することを特徴とする請求項1に記載の楽曲データの生成方法。
【請求項4】
新機種の携帯電話機の特性を測定するステップと、
既存の機種グループの特性と比較し、一致するグループがある場合には、その機種グループに新機種を追加するステップと、
既存の機種グループの特性と比較し、一致するグループがない場合には、楽曲データを調整するパラメータを決定するステップと、
前記パラメータによって既存の標準楽曲データを調整して機種対応の楽曲データを生成するステップと、
機種グループを新設し、機種および対応する楽曲データを登録するステップと
を含むことを特徴とする携帯電話機用の楽曲データの生成方法。
【請求項5】
楽曲データ配信装置において、アクセスしてきた携帯電話機の機種情報を取得するステップと、
前記所得した機種情報に基づいて当該携帯電話機がどの機種グループに属するかを判定するステップと、
前記携帯電話機からの特定の楽曲のダウンロード要求に基づき、当該携帯電話機が属する機種グループと対応する、請求項1の方法によって生成された楽曲データをダウンロードするステップと
を含むことを特徴とする楽曲データの配信方法。
【請求項6】
機種グループ毎の楽曲データを記憶しているデータベース手段と、
アクセスしてきた携帯電話機の機種情報を取得する機種情報取得手段と、
前記所得した機種情報に基づいて当該携帯電話機がどの機種グループに属するかを判定するグループ判定手段と、
前記携帯電話機からの特定の楽曲のダウンロード要求に基づき、当該携帯電話機が属する機種グループと対応する楽曲データをダウンロードするダウンロード手段と
を備えたことを特徴とする楽曲データ配信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−47652(P2006−47652A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228101(P2004−228101)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(398052553)日本エンタープライズ株式会社 (3)
【出願人】(504297630)株式会社ジィーズ (1)
【Fターム(参考)】