説明

構成部材の洗浄方法

【課題】 高い洗浄能力を有するとともに、洗浄工程の簡素化が図れ、洗浄液(界面活性剤+純水)等の省エネ効果が高い構成部材の洗浄方法、および循環型社会における環境負荷の少ない簡易で洗浄力の優れた画像形成装置用構成部材の洗浄方法を提供する。
【解決手段】 画像形成装置を構成する構成部材である感光体用基体、ヒートロール用基体若しくは帯電ローラ用基体などをナノバブルを含む水溶液で洗浄することを特徴とする。特に、ナノバブルを含む水溶液を噴霧状にして前記構成部材に付着して洗浄することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式のプリンタや複写機などの画像形成装置を構成する例えば感光体用基体(素管)、ヒートロール用基体(素管)若しくは帯電ローラ用基体(素管)などの構成部材の洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式プリンタ(レーザープリンタ)用感光体基体にはアルミニウム素管が多用され、面精度を確保するためにダイヤモンドバイトを用いて表面を鏡面状に機械研削する。その際に使用される研削油及び異物除去のために、界面活性剤入り水溶液で洗浄―純粋水洗−乾燥等の基体洗浄がなされる。必要に応じて基体のエッチング工程が入る場合もある。
【0003】
図1は、従来のアルミニウム素管の表面処理法を説明するためのフローチャートである。同図に示すように、最初にアルミニウム素管をアルカリ溶液で脱脂して、水洗、中和を行い、次に酸によりエッチング処理を行う。その後、水洗をして温風を吹き付けて乾燥する。
【0004】
このような一連の工程において、前記洗浄工程で不具合があると次工程の感光膜を作製するときに膜にピンホールあるいは膜剥離等の不良が発生する。そのため細心の注意を払わなければならず、厳密な工程管理が要求される。一方、多量の洗浄水、電力を必要とするため、省エネ化が要求される工程でもあり、洗浄水の再利用等が図られている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−121962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし従来の洗浄方法では、十分な洗浄効果が得られず、また洗浄工程が煩雑であるなどの問題点を有している。
【0007】
本発明の目的は、このような従来技術の欠点を解消し、高い洗浄能力を有するとともに、洗浄工程の簡素化が図れ、洗浄液(界面活性剤+純水)等の省エネ効果が高い構成部材の洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため本発明の第1の手段は、画像形成装置を構成する構成部材をナノバブルを含む水溶液で洗浄することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、前記ナノバブルを含む水溶液を噴霧状にして前記部材に付着して洗浄することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の第3の手段は前記第1または第2の手段において、前記構成部材は感光体用基体、ヒートロール用基体若しくは帯電ローラ用基体のいずれかであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は前述のような構成になっており、高い洗浄能力を有するとともに、洗浄工程の簡素化が図れ、洗浄液(界面活性剤+純水)等の省エネ効果が高い構成部材の洗浄方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
近年、前記特許文献1に記載されているように、ナノバブルを含むナノバブル水を用いた応用が盛んである。ナノバブルは一般には生成時に1μm以下のバブルを言うが、100〜50nm程度の気泡がより効果を発生している。このように微小径のため、バブル内はヤング−ラプラスの式(Δp=2γ/r、Δp:気泡の内圧、γ:表面張力、r:気泡の半径)から予想されるように数10気圧にもなる。また、バブル界面では静電分極が生じて表面活性が増大するため、汚れ成分の吸着度の増大、あるいは殺菌効果等が発揮できる。
【0013】
このナノバブルが構成部材に接触してはじける際に発生させる高圧気流による異物除去能力、あるいは水中における高汚染物質付着能等から洗浄能力が極めて高いのが特長である。従って、ナノバブル水を用いれば、洗浄工程が簡略化でき、使用する洗浄液(界面活性剤+純水)の削減も図れる。
【0014】
本発明は、レーザービームプリンタ、複写機等の画像形成装置を構成する各種部材の洗浄において特に有効である。次に本発明の実施形態について図を用いて説明する。
[実施例1]
電子写真用感光体の基体には、通常、アルミニウム素管が用いられる。本実施形態ではアルミニウムにJIS6063のアルミニウム合金を用いた。押し出し又は引き抜き法で製造されたアルミニウム素管は、所定の熱処理を施した後、ダイヤモンドバイト研削で表面を鏡面状態に研削される。
【0015】
従来の洗浄方法を用いれば、前洗浄工程で有機溶剤、洗剤で機械研削オイル又は防錆油が脱脂される。その後図1に示すように、本洗浄工程で温浴中でアルカリ脱脂−水洗―中和−酸又はアルカリ水溶液中で基体表面エッチング−水洗―中和―温水で水きりで洗浄工程が完了する。次いで、前記工程中で使用される従来の純水の代わりにナノバブル水を用いて洗浄を進めた。このナノバブル水を用いることにより優れた洗浄効果が得られた。なお、洗浄効果の確認は以下のようにして進めた。評価項目は洗浄むらによる
1.ピンホール発生頻度
2.密着力低下
の2点である。本実施形態ではこの洗浄効果を確認するため、感光膜を作製し、前記2項目を評価した。検討した感光膜は、高速プリンタで多用されるセレニウム感光体(Se)である。
【0016】
図2は、本実施形態に係るアルミニウム素管の表面処理法を説明するためのフローチャートである。同図に示されているように、アルミニウム素管をナノバブル水中で脱脂し、次に酸を用いてエッチング処理し、しかる後にナノバブル水で洗浄を行い、アルミニウム素管に温風を吹き付けて乾燥する。
【0017】
図3は、ナノバブル水洗洗浄装置の概要構成図である。同図に示すように、鏡面研磨したアルミニウム素管1の両端部にエンドリング4を取り付け、それを洗浄槽11内の図示しない回転機に取り付ける。
【0018】
ナノバブル水は以下のようにして生成させる。まず、純水槽10に純水を入れ、その純水を揚水ポンプ9でナノバブル水生成カラム8に圧送する。このナノバブル水生成カラム8内には多孔質フィルタ(図示せず)が装着されており、高圧ガスをガス入り口7から断続的に導入する。すると多孔質フィルタから直径数十ナノメータの気泡が無数に押し出され、純水中にこれらの気泡が均一に分散する。
【0019】
このようにして生成されたナノバブル水は、ナノバブル水貯蔵槽6に蓄えられる。このナノバブル水を揚水ポンプ5で加圧しながら、アルミニウム素管1の直上にある、散水マニホールドヘッド2へ送られ、噴霧状ナノバブル水3にして回転するアルミニウム素管1を洗浄し、洗浄工程が完成する。洗浄後の液は、洗浄槽11に下部に設けられている図示しないドレインから排出される。このようにしてナノバブル水を噴霧状(シャワー状)にしてアルミニウム素管1を洗浄することで、洗浄液(ナノバブル水)の使用量を従来の1/10程度に削減できる。
【0020】
なお、ナノバブルを発生させる方法には、一般的にキャビテーション法、微細孔法、固体包埋法、電解法、化学反応法等がある。本実施例では、微細孔法で単分散性に優れるナノバブルを発生させたが、前述のいずれの方法でも適用可能である。
【0021】
本実施例のシャワー方式(噴霧方式)では要求された時に必要最小限の水量を供給すればよいから、従来行われてきている薬品等でバブル寿命を延ばす工夫の必要がない利点があり、また純水を使用できるため、環境への負荷を最小限に抑えることができる。
【0022】
前述のようにして処理したアルミニウム素管上にセレニウムを60μmの厚みになるように45分間、真空蒸着して感光膜を形成した。このアルミニウム素管を真空装置から取り出した後、前記評価項目1に関しては全周を目視検査で感光膜上でのピンホール発生頻度、また前記評価項目2に関しては感光膜の剥離強度を鉛筆硬度法で評価した。その結果、ピンホール発生がほとんどなく、しかも高い剥離強度が得られ、優れた洗浄効果を有していることが確認できた。
[実施例2]
本実施例ではより効果を確認するため、有機溶剤、洗剤を用いずにアルミニウム素管を洗浄した。即ち、前洗浄工程なしに、ナノバブル水中で脱脂をし、基体エッチング処理(本工程は従来通り)した後、ナノバブル水中で洗浄した。実施工程は図2の通りであり、ナノバブル水中での洗浄は図3に示す洗浄装置を用いた。
【0023】
次いで洗浄効果の確認を実施例1と同様にして進めた。即ち、ナノバブル水で処理したアルミニウム素管上にセレニウムを60μmの厚みになるように45分間、真空蒸着して感光膜を形成した。そのアルミニウム素管を真空装置から取り出した後、前記評価項目1に関しては全周を目視検査で感光膜上でのピンホール発生頻度、前記評価項目2に関しては感光膜の剥離強度を鉛筆硬度法で評価した。その結果、ピンホール発生がほとんどなく、しかも高い剥離強度が得られ、優れた洗浄効果を有していることが確認できた。
[実施例3]
本実施例では他の電子写真用部材について洗浄効果を確認した。検討した部材はヒートロール用アルミニウム素管、帯電ローラ用アルミニウム素管である。実施例2と同様にシャワー方式(噴霧方式)で前記アルミニウム素管の洗浄を行った。実施例2と同様に評価を行った結果、ピンホール発生がほとんどなく、しかも高い剥離強度が得られ、優れた洗浄効果を有していることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来のアルミニウム素管の表面処理法を説明するためのフローチャートである。
【図2】本発明の実施形態に係るアルミニウム素管の表面処理法を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態で使用されるナノバブル水洗洗浄装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0025】
1:鏡面研磨したアルミニウム素管
2:マニホールドヘッド
3:噴霧状ナノバブル水
4:エンドリング
5:揚水ポンプ
6:ナノバブル水貯蔵槽
7:高圧ガス入り口
8:ナノバブル水生成カラム
9:揚水ポンプ
10:純水槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置を構成する構成部材をナノバブルを含む水溶液で洗浄することを特徴とする構成部材の洗浄方法。
【請求項2】
請求項1記載の構成部材の洗浄方法において、前記ナノバブルを含む水溶液を噴霧状にして前記部材に付着して洗浄することを特徴とする構成部材の洗浄方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の構成部材の洗浄方法において、前記構成部材は感光体用基体、ヒートロール用基体若しくは帯電ローラ用基体のいずれかであることを特徴とする構成部材の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−89745(P2008−89745A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−268123(P2006−268123)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】