構築した植物性タンパク質製品のテクスチャーを改変するための低pHの使用
本発明は、動物肉組成物及び模造動物肉組成物を提供する。加えて、本発明は、動物肉組成物及び模造動物肉組成物の製造方法を提供する。本方法は、動物肉組成物及び模造動物肉組成物を低いpH条件下で生成することを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2006年10月5日出願の米国仮特許出願第60/828,298号明細書及び2007年10月5日出願の米国特許出願第11/868,087号明細書からの優先権を主張し、これらの出願は全体として参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、動物肉組成物及び模造(simulated)肉組成物を提供する。本発明はまた、動物肉組成物及び模造動物肉組成物の製造方法も提供する。本方法においては、概してpH降下剤が利用される。
【背景技術】
【0003】
食品科学者らは、許容可能な肉様食品、例えば、牛肉、豚肉、家禽肉、魚肉、及び貝肉の類似品を様々な種類の植物性タンパク質から調製する方法の開発に、多大な時間を割いてきた。タンパク質源としては、比較的豊富にあり、且つある程度安価なため、大豆タンパク質が利用されてきた。肉類似品は典型的には、押出しプロセスによって調製される。乾燥混和物が処理され、繊維質の材料が形成される。これまで、高タンパク質押出物から製造される肉類似品は、肉様のテクスチャー特性及び口当たりに欠けるため、普及が限られてきた。むしろ、形成されるタンパク質繊維の不揃いで捩れた性質が主因となって、スポンジ状で容易には噛み切れないことを特徴としている。ほとんどがハンバーガータイプの挽肉用の増量剤として使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
動物肉の繊維構造を模造し、受け入れることのできる肉様のテクスチャー、香味及び色をもつ構築した(structured)植物性タンパク質製品に対するいまだ満たされないニーズが依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、構築した植物性タンパク質製品の製造方法を提供する。本方法は典型的には、植物性タンパク質原料をpH降下剤と加え合わせてpHが約6.0未満の混合物を形成するステップを含む。混合物が高温高圧の条件下で押し出されると、実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる構築した植物性タンパク質製品が形成される。
【0006】
別の態様は、動物肉組成物の製造方法である。本方法は典型的には、動物肉、植物性タンパク質原料をpH降下剤と加え合わせて、pHが約6.0未満の混合物を形成するステップを含む。次に混合物が高温高圧の条件下で押し出されることにより、実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる構築した植物性タンパク質製品が形成される。
【0007】
本発明のさらに別の態様は、動物肉組成物を提供する。概して、この動物肉組成物は、動物肉と、pH降下剤と、実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる構築した植物性タンパク質製品とを含んでなる。
【0008】
本発明のさらなる態様は、模造動物肉組成物を提供する。この模造動物肉組成物は、実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる構築した植物性タンパク質製品とpH降下剤とを含んでなる。
【0009】
カラー図面の参照
本願は、少なくとも1枚のカラーで作成された写真を含む。カラー写真を伴う本特許出願公報の写しは、当局に請求して必要な手数料を支払えば提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実質的に整列したタンパク質繊維を含む本発明の構築した植物性タンパク質製品を示す顕微鏡写真の画像を表す。
【図2】本発明の方法により生成されたものではない植物性タンパク質製品を示す顕微鏡写真の画像を表す。本明細書に記載されるとおり、植物性タンパク質製品を含んでなるタンパク質繊維はクロスハッチ状である。
【図3】動物肉組成物の写真画像を表し、組成物のpHはその製造中に乳酸によって5.6に低減された。
【図4】動物肉組成物の写真画像を表し、組成物のpHはその製造中に6.7に低減された。
【図5a】pH降下剤を含まないサンプルによる剪断力試験についての時間と力との関係を示すグラフである。
【図5b】pH降下剤を含むサンプルによる剪断力試験についての時間と力との関係を示すグラフである。
【図6a】pH降下剤を含まないサンプルについてのテクスチャープロファイル分析を示すグラフである。
【図6b】pH降下剤を含むサンプルについてのテクスチャープロファイル分析を示すグラフである。
【図7a】レトルト前のpHが6.74のサンプルについての剪断力試験を示すグラフである。
【図7b】レトルト前のpHが5.46のサンプルについての剪断力試験を示すグラフである。
【図8】様々なpHレベルの肉混和物についての調理後の歩留まり率を示すグラフである。
【図9】様々なpHレベルの肉混和物についての剪断力(最大力)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、動物肉組成物又は模造肉組成物を提供する。典型的には、双方の組成物とも、実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる構築した植物性タンパク質製品を含む。本組成物は場合により動物肉を含み得る。本発明はまた、酸性のpH条件下で組成物を生成する方法も提供する。動物肉組成物又は模造動物肉組成物を、硬直肉に見られるpHレベルのような低いpH条件下で生成すると、結果として肉様の質が改善された肉組成物が得られることが発見されている。例として図3及び4を参照すると、図3に表される動物肉組成物は5.6という酸性のpHで調製されたもので、一方、図4の動物肉組成物は6.7という比較的中性のpHで調整されたものである。写真画像に示されるとおり、酸性条件下で生成された動物肉組成物は繊維質の密集性を有しており、中性のpH条件下で生成されたよりゴム質でより粘性の低い密集性を有する動物肉組成物と比較して、より肉に近いテクスチャーを有する。pHの低減によってテクスチャー及び香味の改善がもたらされることから、本発明の組成物は、様々な用途で全筋肉を模造するために利用され得る。
【0012】
(I)構築した植物性タンパク質製品
本発明の動物肉組成物及び模造動物肉組成物は各々、下記のI(f)にさらに詳細に説明されるとおり、実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる構築した植物性タンパク質製品を含んでなる。例示的実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は、下記のI(e)に詳述される押出しプロセスに供された植物原料の押出物である。本発明で利用される構築した植物性タンパク質製品は、実質的に動物肉と類似した様式で整列したタンパク質繊維を有するため、本動物肉組成物及び模造動物肉組成物は概して、全て動物肉のみを含有する組成物のテクスチャー及び食感を有し、消費者が求める肉様のテクスチャーを生み出す。
【0013】
(a)タンパク質含有出発原料
タンパク質を含有する様々な成分を押出しプロセスで利用することにより、動物肉組成物及び模造動物肉組成物における使用に好適な構築した植物性タンパク質製品を生成し得る。典型的には、植物に由来するタンパク質を含んでなる成分が使用されるが、動物源などの他の供給源に由来するタンパク質が、本発明の範囲から逸脱することなく利用され得ることもまた想定される。例えば、カゼイン、カゼイネート、乳清タンパク質、乳タンパク質濃縮物、乳タンパク質分離物、及びこれらの混合物からなる群から選択される乳タンパク質が利用されてもよい。例示的実施形態において、乳タンパク質は乳清タンパク質である。さらなる例として、オボアルブミン、オボグロブリン、オボムチン、オボムコイド、オボトランスフェリン、オボビテラ(ovovitella)、オボビテリン、アルブミン・グロブリン、及びビテリンからなる群から選択される卵タンパク質が利用されてもよい。
【0014】
タンパク質に加え、他の成分種が利用され得ることが想定される。かかる成分の非限定的な例としては、糖、デンプン、オリゴ糖、大豆繊維及び他の食物繊維並びにグルテンが挙げられる。
【0015】
タンパク質含有出発原料は無グルテンであり得ることもまた想定される。グルテンは典型的には押出しプロセス中のフィラメント形成に用いられるため、無グルテン出発原料が使用される場合、食用架橋結合剤を利用してフィラメント形成を促進してもよい。好適な架橋結合剤の非限定的な例としては、コンニャクグルコマンナン(KGM)粉、トランスグルタミナーゼ(transglutanimnase)などの食用架橋結合剤、Takeda(米国)によって製造されるPureglucan(登録商標)などのβグルカン、カルシウム塩、及びマグネシウム塩が挙げられる。当業者は、必要があれば、無グルテンの実施形態において必要とされる架橋結合剤の量を容易に決定できる。
【0016】
押出しプロセスに利用される成分は、その供給源又は成分の分類に関わらず、典型的には実質的に整列したタンパク質繊維を有する押出物(構築した植物性タンパク質製品)を形成する能力を有する。かかる成分の好適な例は、以下でさらに完全に詳述される。
【0017】
(i)植物性タンパク質原料
例示的実施形態においては、タンパク質含有原料を形成するため植物に由来する少なくとも1つの成分が利用され得る。一般的に言えば、この成分はタンパク質を含んでなり得る。利用される成分中に存在するタンパク質量は、用途に応じて異なってもよく、及び異なり得る。例えば、利用される成分中に存在するタンパク質量は、約40重量%〜約100重量%の範囲をとり得る。別の実施形態において、利用される成分中に存在するタンパク質量は、約50重量%〜約100重量%の範囲をとり得る。さらなる実施形態において、利用される成分中に存在するタンパク質量は、約60重量%〜約100重量%の範囲をとり得る。さらなる実施形態において、利用される成分中に存在するタンパク質量は、約70重量%〜約100重量%の範囲をとり得る。さらに別の実施形態において、利用される成分中に存在するタンパク質量は、約80重量%〜約100重量%の範囲をとり得る。さらなる実施形態において、利用される成分中に存在するタンパク質量は、約90重量%〜約100重量%の範囲をとり得る。
【0018】
押出しにおいて利用される成分は、種々の好適な植物に由来し得る。非限定的な例として、好適な植物としては、マメ科植物、トウモロコシ、エンドウ豆、カノーラ、ヒマワリ、モロコシ、米、アマランス、ジャガイモ、タピオカ、クズウコン、カンナ、ルピナス、菜種、小麦、オート麦、ライ麦、大麦、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0019】
一実施形態において、成分は小麦及び大豆から分離される。別の例示的実施形態において、成分は大豆から分離される。好適な小麦由来タンパク質含有成分としては、小麦グルテン、小麦粉、及びこれらの混合物が挙げられる。本発明において利用され得る市販の小麦グルテンの例は、Gem of the West Vital Wheat Glutenのレギュラー、又は有機であり、各々、Manildra Milling(カンザス州ショーニーミッション(Shawnee Mission,KS))から入手可能である。好適な大豆由来タンパク質含有成分(「大豆タンパク質原料」)としては、大豆タンパク質分離物、大豆タンパク質濃縮物、大豆粉、及びこれらの混合物が挙げられ、これらの各々は以下に詳述される。前述の実施形態の各々において、大豆原料が、デンプン、穀粉、グルテン、食物繊維、及びこれらの混合物からなる群から選択される1つ又は複数の成分と組み合わされてもよい。
【0020】
種々の供給源から分離されるタンパク質を含有する原料の好適な例が表Aに詳述され、様々なタンパク質成分が示される。
【0021】
表A タンパク質の組み合わせ
【0022】
(表A続き)
【0023】
表Aに示された実施形態の各々において、タンパク質含有原料の組み合わせは、デンプン、穀粉、グルテン、食物繊維、及びこれらの混合物からなる群から選択される成分の1つ又は複数と組み合わされてもよい。一実施形態において、タンパク質含有原料は、タンパク質、デンプン、グルテン、及び繊維を含んでなる。例示的実施形態において、タンパク質含有原料は、乾燥物質基準で約45%〜約65%の大豆タンパク質、乾燥物質基準で約20%〜約30%の小麦グルテン、乾燥物質基準で約10%〜約15%の小麦デンプン、及び乾燥物質基準で約1%〜約5%の繊維を含んでなる。前述の実施形態の各々において、タンパク質含有原料は、リン酸二カルシウム、L−システイン又は、リン酸二カルシウム及びL−システインの双方の組み合わせを含んでなってもよい。
【0024】
(ii)大豆タンパク質原料
上記に詳述されるとおりの例示的実施形態において、大豆タンパク質分離物、大豆タンパク質濃縮物、大豆粉、及びこれらの混合物が押出しプロセスにおいて利用され得る。大豆タンパク質原料は、一般に当該技術分野において周知の方法に従い、全大豆に由来し得る。全大豆は、標準的な大豆(すなわち、遺伝子組み換えされていない大豆)、商品化されている大豆、交雑された大豆、遺伝子組み換え大豆、保存されている大豆、及びこれらの組み合わせであり得る。
【0025】
一般的に言えば、大豆分離物が使用される場合、好ましくは、高度に加水分解された大豆タンパク質分離物ではない分離物が選択される。しかしながら、特定の実施形態においては、組み合わされた大豆タンパク質分離物のうち高度に加水分解された大豆タンパク質分離物の含量が、概して組み合わされた大豆タンパク質分離物の約40重量%未満であるならば、高度に加水分解された大豆タンパク質分離物が他の大豆タンパク質分離物と組み合わせて使用されてもよい。別の実施形態において、膜ろ過された大豆分離物が使用されてもよい。本発明において有用な大豆タンパク質分離物の例は、例えば、Solae,LLC(ミズーリ州セントルイス(St.Louis,MO))から市販されており、SUPRO(登録商標)500E、SUPRO(登録商標)EX 33、SUPRO(登録商標)620、及びSUPRO(登録商標)545が挙げられる。例示的実施形態においては、実施例3に詳述されるとおり、SUPRO(登録商標)620の形態が利用される。
【0026】
或いは、大豆タンパク質濃縮物又は大豆粉を大豆タンパク質分離物と混和して、大豆タンパク質原料の供給源として大豆タンパク質分離物の一部を代用してもよい。典型的には、大豆タンパク質濃縮物が大豆タンパク質分離物の一部の代用とされる場合、大豆タンパク質濃縮物は最高で約55重量%までの大豆タンパク質分離物の代用とされる。別の実施形態において、大豆タンパク質濃縮物は最高で約50重量%までの大豆タンパク質分離物の代用とされる。別の実施形態において、40重量%の大豆タンパク質が代用される。別の実施形態において、代用される量は最高で大豆タンパク質分離物の約30重量%までである。本発明で有用な好適な大豆タンパク質濃縮物の例としては、Procon、Alpha 12及びAlpha 5800が挙げられ、これらはSolae,LLC(ミズーリ州セントルイス(St.Louis,MO))から市販されている。大豆粉が大豆タンパク質分離物の一部の代用とされる場合、大豆粉は最高で約35重量%までの大豆タンパク質分離物の代用とされる。大豆粉は、タンパク質分散指数(PDI)が高い大豆粉でなければならない。
【0027】
本願で機能し得る当該技術分野において周知の任意の繊維が、繊維源として使用され得る。場合により大豆子葉繊維が繊維源として利用され得る。典型的には、好適な大豆子葉繊維は一般に、大豆タンパク質と大豆子葉繊維との混合物が押し出されるとき、水を効果的に結合し得る。これに関連して、「効果的に水を結合する」とは概して、大豆子葉繊維が大豆子葉繊維1グラム当たり少なくとも5.0〜約8.0グラムの水の保水能力を有し、及び好ましくは大豆子葉繊維が大豆子葉繊維1グラム当たり少なくとも約6.0〜約8.0グラムの水の保水能力を有することを意味する。大豆タンパク質原料中に存在するとき、大豆子葉繊維は無水基準で約1重量%〜約20重量%、好ましくは約1.5重量%〜約20重量%、及び最も好ましくは、約2重量%〜約5重量%の範囲の量で存在し得る。好適な大豆子葉繊維は市販されている。例えば、FIBRIM(登録商標)1260及びFIBRIM(登録商標)2000は、Solae,LLC(ミズーリ州セントルイス(St.Louis,MO))から市販されている大豆子葉繊維原料である。
【0028】
(b)pH還元剤
動物肉組成物及び模造肉組成物は概して、硬直後の肉のpHなど、低いpH条件下で生成される。一般に、低pHは、組成物をpH降下剤と接触させることにより実現される。pH降下剤は、組成物の様々な製造段階で組成物、又は組成物を形成する製品と好適に接触し得ることが想定される。一実施形態においては、pH降下剤を植物性タンパク質原料と接触させた後、I(e)に詳述されるプロセスに従って混合物が押し出される。或いは、pH降下剤は、下記II及びIIIに詳述されるとおり、構築した植物性タンパク質製品を押し出した後にそれと接触させてもよい。
【0029】
pH降下剤が導入される製造段階に関係なく、好適な薬剤としては、組成物のpHをおよそ硬直後の肉のpHレベルまで降下させ得るものが挙げられる。当業者は理解するであろうとおり、硬直後の肉のpHは動物によって異なり得るとともに、異なるであろうが、pHは概して酸性(すなわち、約7.0未満)であり得る。一実施形態において、pHは約7.0未満である。別の実施形態において、pHは約6.0〜約7.0である。さらに別の実施形態において、pHは約6.0未満である。別の実施形態において、pHは約5.0〜約6.0である。この実施形態の一代替例において、pHは約5.2〜約5.9である。この実施形態のさらに別の代替例において、pHは約5.4〜約5.8である。この実施形態のさらなる代替例において、pHは約5.6である。別の実施形態において、pHは約5.0未満である。さらなる実施形態において、pHは約4.0〜約5.0である。さらに別の実施形態において、pHは約4.0未満である。
【0030】
いくつかのpH降下剤が本発明での使用に好適である。pH降下剤は有機性であってもよい。或いは、pH降下剤は無機性であってもよい。例示的実施形態において、pH降下剤は食品級の食用酸である。非限定的に本発明での使用に好適な酸としては、酢酸、乳酸、塩酸、リン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0031】
当業者は理解するであろうとおり、本発明の方法で利用されるpH降下剤の量は、選択される薬剤、所望のpH、及び薬剤が添加される製造段階を含むいくつかのパラメータに応じて異なってもよく、及び異なり得る。非限定的な例として、植物性タンパク質原料と加え合わされる(すなわち、混合物の押し出し前に薬剤が添加される適用について)、又は動物肉組成物若しくは模造肉組成物のいずれかと加え合わされる(すなわち、押し出し後に薬剤が添加される適用について)pH降下剤の量は、乾燥物質基準で約0.1%〜約15%の範囲であり得る。別の実施形態において、pH降下剤の量は乾燥物質基準で約0.5%〜約10%の範囲であり得る。さらなる実施形態において、pH降下剤の量は乾燥物質基準で約1%〜約5%の範囲であり得る。他の実施形態において、pH降下剤の量は乾燥物質基準で約2%〜約3%の範囲であり得る。別の実施形態において、pH降下剤の量は乾燥物質基準で約2.5%である。
【0032】
(c)追加的な成分
本発明の範囲から逸脱することなく、様々な追加成分が上記のタンパク質含有原料とpH降下剤との組み合わせのいずれにも添加され得る。例えば、抗酸化剤、抗菌剤、及びこれらの組み合わせを含めることができる。抗酸化添加剤としては、BHA、BHT、TBHQ、ビタミンA、C及びE並びに誘導体が挙げられ、及び抗酸化特性を有するカロテノイド、トコフェロール又はフラボノイドを含有するものなど、様々な植物抽出物を含めることにより、動物肉組成物又は模造肉組成物の品質保持期限を延ばしたり、又は栄養的に増強したりできる。抗酸化剤及び抗菌剤は、合わせて、押し出され得るタンパク質含有原料の約0.01重量%〜約10重量%、好ましくは、約0.05重量%〜約5重量%、及びより好ましくは約0.1重量%〜約2重量%のレベルで存在し得る。
【0033】
(d)含水量
当業者は理解するであろうとおり、タンパク質含有原料の含水量は、その組み合わせが供される熱プロセス、例えば、レトルト調理、電子レンジ調理、及び押出しに応じて異なってもよく、及び異なり得る。例示的実施形態において、熱プロセスは押出しである。一般的に言えば、熱プロセスが押出しの場合、含水量は約1重量%〜約80重量%の範囲であり得る。低水分の押出し適用においては、タンパク質含有原料の含水量は約1重量%〜約35重量%の範囲であり得る。あるいは、高水分の押出し適用においては、タンパク質含有原料の含水量は約35重量%〜約80重量%の範囲であり得る。例示的実施形態において、押出物を形成するために利用される押出し適用は、低水分である。繊維が実質的に整列したタンパク質を有する押出物を生成するための低水分の押出しプロセスの例示的な例は、I(f)並びに実施例3及び4に詳述される。
【0034】
(e)タンパク質含有植物原料の押出し
植物性タンパク質原料の調製に好適な押出しプロセスは、植物性タンパク質原料及び他の成分を混合タンク(すなわち、材料ブレンダー)に投入し、成分を加え合わせて乾燥したブレンド植物性タンパク質原料プレミックスを形成するステップを含んでなる。上記で詳述されたとおり、ある実施形態においてpH降下剤は混合物の押し出し前に植物原料と接触させ得る。次に乾燥ブレンド植物性タンパク質原料プレミックスがホッパーに移され、そこから乾燥ブレンド材料が水分と共にプレコンディショナーに投入され、調質された植物性タンパク質原料混合物が形成される。調質された原料は次に押出機に供給され、そこで植物性タンパク質原料混合物が押出機のスクリューにより生成される機械的圧力下で加熱されることにより、溶融した押出物の集塊が形成される。溶融した押出物の集塊は押出しダイを通じて押出機から出る。
【0035】
(i)押出しプロセス条件
本発明の実施に有用な好適な押出し装置としては、例えば、米国特許第4,600,311号明細書に記載されるとおりのダブルバレル・二軸スクリュー押出機がある。好適な市販の押出し装置のさらなる例としては、Clextral,Inc.(フロリダ州タンパ(Tampa,FL))製のCLEXTRALモデルBC−72押出機、Wenger Manufacturing,Inc.(カンザス州サベタ(Sabetha,KS))製のWENGERモデルTX−57押出機、WENGERモデルTX−168押出機、及びWENGERモデルTX−52押出機が挙げられる。本発明における使用に好適な他の従来式押出機は、例えば、米国特許第4,763,569号明細書、同第4,118,164号明細書、及び同第3,117,006号明細書に記載され、これらの文献は全体として参照により本明細書に援用される。一軸スクリュー押出機もまた本発明で使用され得る。好適な市販の一軸スクリュー押出し装置の例としては、Wenger X−175、Wenger X−165、及びWenger X−85が挙げられ、これらは全て、Wenger Manufacturing,Inc.から入手できる。
【0036】
二軸スクリュー押出機のスクリューは、バレル内で同方向又は逆方向に回転できる。スクリューの同方向の回転は単流または共回転と称され、一方、スクリューの逆方向の回転は複流または二重反転と称される。押出機の1本又は複数のスクリューの速度は、特定の装置に応じて異なり得るが、典型的には約250〜約450毎分回転数(rpm)である。一般に、スクリュー速度が増加すると、押出物の密度は低下する。押出し装置は、シャフトとウォーム部分とで組み立てられたスクリュー、並びに植物性タンパク質原料の押出し用に押出し装置製造業者により推奨されるとおりの混合ローブ及びリング型の剪断要素を含む。
【0037】
押出し装置は一般に複数の加熱領域を含んでなり、タンパク質混合物はそこを通って機械的圧力下に搬送され、その後押出ダイを通って押出し装置から出る。連続的な加熱領域の各々の温度は、一般に前の加熱領域の温度を約10℃〜約70℃上回る。一実施形態において、調質されたプレミックスは押出し装置内で4つの加熱領域を通って移送され、それに伴いタンパク質混合物が約100℃〜約150℃の温度まで加熱されるため、溶融した押出物の集塊が押出ダイに入るときの温度は約100℃〜約150℃となる。当業者は、温度を調節して加熱又は冷却することにより、所望の特性を実現し得る。典型的には、温度変化は作業入力によるもので、突然起こり得る。
【0038】
押出機バレル内部の圧力は、典型的には約50psig〜約500psig、好ましくは約75psig〜約200psigである。概して、最後の2つの加熱領域内の圧力は約100psig〜約3000psig、好ましくは約150psig〜約500psigである。バレル圧力は多くの要因に依存し、例えば、押出機スクリュー速度、混合物のバレルへの供給速度、水のバレルへの供給速度、及びバレル内の溶融した集塊の粘度が挙げられる。
【0039】
水が押出機バレルに注入されることで植物性タンパク質原料混合物が水和され、タンパク質のテクスチャー化が促進される。溶融した押出物の集塊の形成を補助するものとして、水は可塑剤のように働く。水は1つ又は複数の注入ジェットを介して押出機バレルに投入され得る。典型的には、バレルの混合物は約15重量%〜約35重量%の水を含有する。一般に水のバレルへの投入速度を制御することにより、所望の特性を有する押出物の生成が促進される。水のバレルへの投入速度が低下するほど、押出物の密度は低下することが観察されている。典型的には、タンパク質1kg当たり約1kg未満の水がバレルに投入される。好ましくは、タンパク質1kg当たり約0.1kg〜約1kgの水がバレルに投入される。
【0040】
(ii)予備調質
プレコンディショナーにおいて、タンパク質含有原料及び他の成分が予熱され、水分と接触して制御された温度及び圧力条件下に保たれると、水分が浸透して個々の粒子を軟化させることができる。別の実施形態において、プレコンディショナーにおける圧力条件は周囲圧力とされる。プレコンディショナーは1つ又は複数のパドルを含み、タンパク質の均一な混合及びタンパク質混合物のプレコンディショナーを通じた移送を促進する。パドルの構成及び回転速度は、プレコンディショナーの容量、押出機の処理能力及び/又は混合物のプレコンディショナー又は押出機バレル中での所望の滞留時間によって大幅に異なる。概して、パドルの速度は約100〜約1300毎分回転数(rpm)である。撹拌は、均等な水和及び良好な混合を得るのに十分な程度に激しくなければならない。
【0041】
典型的には、タンパク質含有原料は、押出し装置に投入される前に、プレミックスを水分(すなわち、蒸気及び/又は水)と接触させることにより予備調質される。好ましくはタンパク質含有原料はプレコンディショナー中で然るべき水の温度を用いて約25℃〜約80℃、より好ましくは約30℃〜約40℃の温度まで加熱される。
【0042】
典型的にはタンパク質含有材料プレミックスは、コンディショナーの速度及びサイズに応じて、約30〜約60秒にわたり調質される。例示的実施形態において、タンパク質含有プレミックスは、約3.0分間〜約5.0分間にわたり調質される。プレミックスは、プレコンディショナー中でほぼ一定の蒸気流量で蒸気及び/又は水と接触して加熱され、所望の温度を実現する。水及び/又は蒸気によりプレミックスは調質(すなわち、水和)され、その密度が増加し、乾燥混合物の流動性が妨げなく促進されてから押出機バレルに投入され、そこでタンパク質がテクスチャー化される。低水分のプレミックスが所望される場合、調質されるプレミックスは約1%〜約35%(重量)の水を含有し得る。高水分のプレミックスが所望される場合、調質されるプレミックスは約35%〜約80%(重量)の水を含有し得る。
【0043】
調質されたプレミックスは典型的には約0.25g/cm3〜約0.6g/cm3のバルク密度を有する。一般に、予備調質されたタンパク質混合物のバルク密度がこの範囲内で増加すると、タンパク質混合物の加工がより容易になる。
【0044】
(iii)押出しプロセス
調質されたプレミックスは次に押出機に供給されて、加熱、剪断され、最終的に混合物は可塑化される。押出機は任意の市販の押出機から選択されてもよく、混合物をスクリュー要素で機械的に剪断する一軸スクリュー押出機か、又は好ましくは二軸スクリュー押出機であってもよい。
【0045】
どの押出機を使用するにしても、約50%を超過するモーター負荷で運転させるべきである。典型的には、調質されたプレミックスは押出し装置に毎分約16キログラム〜毎分約60キログラムの速度で投入される。別の実施形態において、調質されたプレミックスは押出し装置に毎分20キログラム〜毎分約40キログラムの速度で投入される。調質されたプレミックスは押出し装置に毎分約26キログラム〜毎分約32キログラムの速度で投入される。一般に、プレミックスの押出機への供給速度が増加すると、押出物の密度が低下することが観察されている。
【0046】
プレミックスが押出機により剪断及び圧力を受けると、混合物は可塑化される。押出機のスクリュー要素は、混合物を剪断すると同時に、押出機を通じて、及びダイを通じて混合物を前方に押し込むことにより押出機に圧力を生じさせる。好ましくは、スクリューのモーター速度は約200rpm〜約500rpm、及びより好ましくは約300rpm〜約450rpmの速度に設定され、それにより混合物は押出機内を、少なくとも毎分約20キログラム、及びより好ましくは少なくとも毎分約40キログラムの速度で進む。好ましくは押出機は約50〜約3000psigの押出機バレル出口圧力を生成する。
【0047】
混合物が押出機を通過するとき、押出機は混合物の温度を制御して混合物中のタンパク質を変性させる。押出機は、混合物の温度を制御してその温度を確実に約100℃〜約180℃にするための手段を含む。好ましくは押出機内で混合物の温度を制御するための手段は押出機バレルジャケットを備え、そのジャケット内に蒸気又は水などの熱媒体又は冷却媒体が導入されることにより、押出機を通過する混合物の温度が制御され得る。押出機はまた、押出機内部で混合物に蒸気を直接注入するための蒸気注入ポートも含み得る。押出機は好ましくは、独立した温度に制御できる複数の加熱領域を含み、ここで加熱領域の温度は好ましくは、混合物が押出機を通って進むとき、混合物の温度を制御するように設定される。例えば、押出機は4つの温度領域構成に設定されてもよく、ここでは第1の領域(押出機入口ポートに隣接する)が約80℃〜約100℃の温度に設定され、第2の領域が約100℃〜135℃の温度に設定され、第3の領域が135℃〜約150℃の温度に設定され、及び第4の領域(押出機出口ポートに隣接する)が約150℃〜約180℃の温度に設定される。押出機は必要に応じて他の温度領域構成に設定されてもよい。例えば、押出機は5つの温度領域構成に設定されてもよく、ここでは第1の領域が約25℃の温度に設定され、第2の領域が約50℃の温度に設定され、第3の領域が約95℃の温度に設定され、第4の領域が約130℃の温度に設定され、及び第5の領域が約150℃の温度に設定される。
【0048】
混合物は押出機内で融解して可塑化された集塊を形成する。押出機にはダイアセンブリが取り付けられ、これは可塑化された混合物が押出機出口ポートからダイアセンブリに流れることができるような構成とされ、ここでダイアセンブリはダイとバックプレートとからなる。加えてダイアセンブリは、可塑化した混合物がダイアセンブリを通じて流れるとき、その中に実質的に整列したタンパク質繊維を生成する。バックプレートはダイと組み合わさって少なくとも1つの中央チャンバを作り出し、これが押出機からの融解して可塑化された集塊を少なくとも1つの中央開口を通じて受け取る。融解して可塑化された集塊は少なくとも1つの中央チャンバから流れ誘導器によって少なくとも1つの細長テーパ状チャネルに送られる。各細長テーパ状チャネルは個々のダイ開口部に直接通じている。押出物はダイアセンブリの周囲又は側面にある少なくとも1つの開口部を通じてダイを出て、この時点で内部に含まれるタンパク質繊維が実質的に整列する。押出物はダイ前面にある少なくとも1つの開口部を通じてダイアセンブリから出てもよいこともまた企図され、このダイ前面は、ダイに固着されたダイプレートであり得る。
【0049】
ダイ開口部の幅及び高さ寸法は、混合物の押出しに先立ち、所望の寸法の繊維原料押出物を提供するよう選択及び設定される。ダイ開口部の幅は、押出物を角切り肉の塊からフィレステーキに至るまで似せるように設定されてもよく、ここでダイ開口部の幅を広げると、押出物の角切り肉様の性質が弱まり、押出物のフィレ様の性質が強くなる。好ましくは、ダイ開口部の幅は約5ミリメートル〜約40ミリメートルの幅に設定される。
【0050】
ダイ開口部の高さ寸法は、所望の厚さの押出物を提供するよう設定され得る。開口部の高さは、非常に薄い押出物又は厚い押出物を提供するよう設定され得る。好ましくはダイ開口部の高さは約1ミリメートル〜約30ミリメートル、及びより好ましくは約8ミリメートル〜約16ミリメートルに設定され得る。
【0051】
また、ダイ開口部は丸くされ得ることも企図される。ダイ開口部の直径は、所望の厚さの押出物を提供するよう設定され得る。開口部の直径は、非常に薄い押出物又は厚い押出物を提供するよう設定され得る。好ましくは、ダイ開口部の直径は、約1ミリメートル〜約30ミリメートル、及びより好ましくは約8ミリメートル〜約16ミリメートルに設定され得る。
【0052】
押出物はダイアセンブリから出た後に切断されてもよい。押出物をダイアセンブリから出た後に切断するための好適な装置としては、Wenger Manufacturing,Inc.(カンザス州サベタ(Sabetha,KS))製及びClextral,Inc.(フロリダ州タンパ(Tampa,FL))製の可撓性のナイフが挙げられる。遅動式の切断が押出物に対して行われてもよい。かかる遅動式切断機の一例は、ギロチン型機器である。
【0053】
ドライヤーが使用される場合、それは一般に空気温度が異なり得る複数の乾燥領域を含んでなる。押出物は、所望の含水量を有する押出物を生成するのに十分な時間にわたりドライヤー内にあることになる。従って、空気の温度は重要ではなく、より低い温度が用いられれば、より高い温度が用いられる場合と比べてより長い乾燥時間が必要となる。概して、領域の1つ又は複数の内部における空気の温度は約100℃〜約185℃であろう。かかる温度では、一般的に押出物は、少なくとも約5分間以上で、さらに一般的には少なくとも約10分間で乾燥する。好適なドライヤーとしては、Wolverine Proctor & Schwartz(マサチューセッツ州メリマク(Merrimac,MA.))製、National Drying Machinery Co.(ペンシルベニア州フィラデルフィア(Philadelphia,PA))製、Wenger(カンザス州サベタ(Sabetha,KS))製、Clextral(フロリダ州タンパ(Tampa,FL))製、及びBuehler(イリノイ州レークブラフ(Lake Bluff,IL))製のものが挙げられる。
【0054】
所望の含水量は、意図される押出物の用途に応じて幅広く異なり得る。一般的に言えば、押し出された原料は、乾燥していれば約6重量%〜約13重量%の含水量を有する。繊維を分離させるために必要ではないが、水が吸収されるまで水中で水和させることは、繊維を分離させる1つの方法である。タンパク質原料が乾燥していないか、又は完全には乾燥していない場合、その含水量はより高く、概して約16重量%〜約30重量%である。
【0055】
乾燥した押出物をさらに粉砕することにより、押出物の平均粒度が低減され得る。好適な挽砕装置としては、Hosokawa Micron Ltd.(英国)製のMikro Hammer Mill、Fitzpatrick Company(イリノイ州エルムハースト(Elmhurst,IL))製のFitzmill(登録商標)、Urschel Laboratories,Inc.(インディアナ州バルパライソ(Valparaiso,IN))製のComitrol(登録商標)加工機などのハンマーミル、及びRossKamp Champion(イリノイ州ウォータールー(Waterloo,IL))製のRossKamp Roller Millなどのローラーミルが挙げられる。
【0056】
(f)構築したタンパク質製品の特性決定
I(e)で生成された押出物は典型的には、実質的に整列したタンパク質繊維を含む構築した植物性タンパク質製品を含んでなる。本発明に関連して「実質的に整列した」とは、概して、構築した植物性タンパク質製品を形成するタンパク質繊維の著しく高い割合が、水平面で見たとき約45°未満の角度で互いに隣接しているようなタンパク質繊維の配列を指す。典型的には、構築した植物性タンパク質製品を含んでなるタンパク質繊維のうち平均して少なくとも55%が実質的に整列している。別の実施形態において、構築した植物性タンパク質製品を含んでなるタンパク質繊維のうち平均して少なくとも60%が実質的に整列している。さらなる実施形態において、構築した植物性タンパク質製品を含んでなるタンパク質繊維のうち平均して少なくとも70%が実質的に整列している。さらなる実施形態において、構築した植物性タンパク質製品を含んでなるタンパク質繊維のうち平均して少なくとも80%が実質的に整列している。さらに別の実施形態において、構築した植物性タンパク質製品を含んでなるタンパク質繊維のうち平均して少なくとも90%が実質的に整列している。タンパク質繊維の整列程度を測定するための方法は、当該技術分野において周知であり、顕微鏡写真画像に基づく目視測定が挙げられる。例として、図1及び2は顕微鏡写真画像を表し、実質的に整列したタンパク質繊維を含む構築した植物性タンパク質製品を、著しくクロスハッチ状となっているタンパク質繊維を有するタンパク質製品と比較して、両者の間の差を示す。図1は、I(a)〜I(e)に従い実質的に整列したタンパク質繊維を有するよう調製された、構築した植物性タンパク質製品を表す。対照的に、図2は著しくクロスハッチ状となっており、実質的に整列していないタンパク質繊維を含有するタンパク質製品を表す。図1に示されるとおり、タンパク質繊維が実質的に整列しているため、本発明において利用される構築した植物性タンパク質製品は概して調理済み筋肉のテクスチャー及び堅さを有する。対照的に、向きがばらばらの、又はクロスハッチ状のタンパク質繊維を有する押出物は、概して柔らかい、又はスポンジ状のテクスチャーを有する。
【0057】
実質的に整列したタンパク質繊維を有することに加え、構築した植物性タンパク質製品はまた、典型的には全筋肉と実質的に同様の剪断強度も有する。本発明に関連して、用語「剪断強度」は、構築した植物性タンパク質製品に対し全筋様のテクスチャー及び外観を与えるのに十分な繊維の網目の形成を定量化する一手段を提供する。剪断強度は、所与のサンプルを貫通して剪断するのに必要な最大の力をグラムで測ったものである。剪断強度を計測するための方法は、実施例1に記載される。一般的に言えば、本発明の構築した植物性タンパク質製品は少なくとも1400グラムの平均剪断強度を有し得る。さらなる実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は約1500〜約1800グラムの平均剪断強度を有し得る。さらに別の実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は約1800〜約2000グラムの平均剪断強度を有し得る。さらなる実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は約2000〜約2600グラムの平均剪断強度を有し得る。さらなる実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は少なくとも2200グラムの平均剪断強度を有し得る。さらなる実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は少なくとも2300グラムの平均剪断強度を有し得る。さらに別の実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は少なくとも2400グラムの平均剪断強度を有し得る。さらに別の実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は少なくとも2500グラムの平均剪断強度を有し得る。さらなる実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は少なくとも2600グラムの平均剪断強度を有し得る。
【0058】
構築した植物性タンパク質製品中に形成されたタンパク質繊維のサイズを定量化するための手段は、細断特性試験により行われ得る。細断特性は、一般に、構築した植物性タンパク質製品中に形成された大型断片の割合を測定する試験である。間接的な方法では、細断特性の割合は、構築した植物性タンパク質製品中のタンパク質繊維の整列程度を定量化するための追加的な手段を提供する。一般的に言えば、大型断片の割合が増加すると、構築した植物性タンパク質製品内部でのタンパク質繊維の整列程度もまた典型的には増加する。逆に、大型断片の割合が低下すると、構築した植物性タンパク質製品内部でのタンパク質繊維の整列程度もまた典型的には低下する。細断特性を測定するための方法は実施例2に詳述される。本発明の構築した植物性タンパク質製品は典型的には大型断片が少なくとも10重量%の平均細断特性を有する。さらなる実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は大型断片が約10重量%〜約15重量%の平均細断特性を有する。別の実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は大型断片が約15重量%〜約20重量%の平均細断特性を有する。さらに別の実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は大型断片が約20重量%〜約50重量%の平均細断特性を有する。別の実施形態においては、大型断片が少なくとも20重量%、少なくとも21重量%、少なくとも22重量%、少なくとも23重量%、少なくとも24重量%、少なくとも25重量%、又は少なくとも26重量%の平均細断特性を有する。
【0059】
本発明の好適な構築した植物性タンパク質製品は、一般に実質的に整列したタンパク質繊維を有し、少なくとも1400グラムの平均剪断強度を有し、及び大型断片が少なくとも10重量%の平均細断特性を有する。より典型的には、構築した植物性タンパク質製品は、少なくとも55%が整列したタンパク質繊維を有し、少なくとも1800グラムの平均剪断強度を有し、及び大型断片が少なくとも15重量%の平均細断特性を有し得る。例示的実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は、少なくとも55%が整列したタンパク質繊維を有し、少なくとも2000グラムの平均剪断強度を有し、及び大型断片が少なくとも17重量%の平均細断特性を有し得る。別の例示的実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は、少なくとも55%が整列したタンパク質繊維を有し、少なくとも2200グラムの平均剪断強度を有し、及び大型断片が少なくとも20重量%の平均細断特性を有し得る。別の例示的実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は、少なくとも55%が整列したタンパク質繊維を有し、少なくとも2400グラムの平均剪断強度を有し、及び大型断片が少なくとも20重量%の平均細断特性を有し得る。
【0060】
(II)動物肉
動物肉組成物はまた、構築した植物性タンパク質製品に加え、動物肉を含んでなる。例として、様々な構築した植物性タンパク質特許について具体的に定義される肉及び肉成分としては、無傷の、又は挽砕された牛肉、豚肉、子羊肉、羊肉、馬肉、山羊肉、家禽(ニワトリ、アヒル、ガチョウ又は七面鳥などの飼われている養鶏鳥)の肉、脂肪及び皮、並びにより具体的には任意の養鶏鳥(任意の鳥類)由来の肉質組織、ナマズ、マグロ、チョウザメ、サケ、バス、アメリカカワカマス、キタカワカマス、ボウフィン、ガー、ヘラチョウザメ、ブリーム、コイ、マス、ウォールアイ、スネークヘッド及びクラッピーなどの淡水魚及び海水魚の双方に由来する魚類の肉身、貝類及び甲殻類起源の動物の肉身、及び冷凍の魚、鶏肉、牛肉、豚肉等を鋸で切断するときに出る冷凍の残留物などの加工に由来する動物の肉身の切片及び動物の組織、鶏肉の皮、豚肉の皮、魚の皮、動物性脂肪、例えば、牛肉の脂肪、豚肉の脂肪、子羊肉の脂肪、鶏肉の脂肪、七面鳥の脂肪、豚脂及び獣脂などのレンダリングされた動物性脂肪、香味を増進させた動物性脂肪、断片化されるか、又はさらに処理された動物性脂肪組織、きめの細かいテクスチャー部分の(finely textured)牛肉、きめの細かいテクスチャー部分の豚肉、きめの細かいテクスチャー部分の子羊肉、きめの細かいテクスチャー部分の鶏肉、低温でレンダリングされた牛肉及び低温でレンダリングされた豚肉などの低温でレンダリングされた動物組織、機械的に分離した肉又は機械的に骨抜きした肉(MDM)(様々な機械的手段によって骨から取り除かれた肉の肉身)、例えば、機械的に分離した牛肉、機械的に豚肉、機械的に分離した魚肉、機械的に分離した鶏肉、機械的に分離した七面鳥肉、任意の動物種に由来する任意の調理された動物肉身及び内臓肉が挙げられる。肉の肉身は、動物組織の塩の分画に由来する筋肉タンパク質画分、等電性の分画に由来するタンパク質成分、及び動物筋肉又は動物肉及び熱で骨抜きした(hot boned)肉の沈殿物並びに機械的に調製したコラーゲン組織及びゼラチンを含むまで拡張されるものとする。加えて、バッファロー、シカ、エルク、ムース、トナカイ、カリブー、アンテロープ、ウサギ、クマ、リス、ビーバー、マスクラット、オポッサム、アライグマ、アルマジロ及びヤマアラシなどの狩猟動物、並びに爬虫類の生物、例えば、ヘビ、カメ及びトカゲなどの肉、脂肪、結合組織及び内臓肉も肉と見なされるものとする。
【0061】
また、本発明においては、製品の意図される用途に応じて様々な肉質が利用され得ることも想定される。例えば、挽肉状か、又はぶつ切り若しくはステーキの形態のいずれかである全筋肉が利用され得る。さらなる実施形態において、機械的に骨抜きした肉(MDM)が利用され得る。本発明に関連して、「MDM」は、牛肉、豚肉及び鶏肉の骨など、様々な動物の骨から市販の機器を使用して回収される肉のペーストである。MDMは一般に、無傷の筋肉に見られる天然の繊維質のテクスチャーを欠いた粉砕製品である。他の実施形態において、MDMと全筋肉との組み合わせが利用され得る。
【0062】
(III)動物肉及び模造動物肉組成物を含んでなる食品の製造方法
本発明の別の態様は、動物肉組成物を含んでなる食品の製造方法を提供する。動物肉組成物は、動物肉と構築した植物性タンパク質製品との混合物を含んでなり得るか、又は構築した植物性タンパク質製品を含んでなり得る。本方法は概して、構築した植物性タンパク質製品を水和させるステップと、必要であればその粒度を低減するステップと、場合により構築した植物性タンパク質製品を香味付け及び着色するステップと、場合によりそれを動物肉と混合するステップと、組成物をさらに加工して食品にするステップとを含んでなる。
【0063】
本発明の組成物の調製中、数段階においてpH降下剤が添加され得る。動物肉組成物が調製されるとき、pH降下剤が動物肉と加え合わされて混合物を形成してもよく、次にこの混合物が構築した植物性タンパク質製品と加え合わされてもよい。或いは、構築した植物性タンパク質製品が動物肉と加え合わされて混合物を形成してもよく、次にこの混合物がpH降下剤と加え合わされてもよい。さらなる実施形態において、動物肉、構築した植物性タンパク質製品、及びpH降下剤が全て実質的に同時に加え合わされてもよい。模造肉組成物が調製されるとき、pH降下剤は植物性タンパク質原料の押し出し前に添加されてもよく、又は以下に詳述されるとおり、水和中、着色中、又は調理手順の前など、組成物の調製中の任意の段階で添加されてもよい。
【0064】
(a)構築した植物性タンパク質製品の水和
構築した植物性タンパク質製品は水と混合されると、再び水和され得る。構築した植物性タンパク質製品に添加される水の量は様々であってもよく、及び様々であり得る。水と構築した植物性タンパク質製品との比は、約1.5:1〜約4:1の範囲であり得る。好ましい実施形態において、水と構築した植物性タンパク質製品との比は、約2.5:1であり得る。以上に詳述されたとおり、pH降下剤は水和プロセス中に構築した植物性タンパク質製品と接触させてもよい。
【0065】
(b)任意の動物肉との混和
水和された構築した植物性タンパク質製品は動物肉と混和され、動物肉組成物を生成し得る。上記IIに詳述された動物肉、又はその他の当該技術分野において周知の動物肉のいずれが利用されてもよい。一般に、構築した植物性タンパク質製品は類似した粒度を有する動物肉と混和され得る。典型的には、動物肉組成物中の動物肉の量に対する構築した植物性タンパク質製品の量は、組成物の意図される用途に応じて様々であってもよく、及び様々であり得る。例として、動物の香味が比較的わずかな専らベジタリアン向けの組成物が所望される場合、動物肉組成物中の動物肉の濃度は、約45重量%、40重量%、35重量%、30重量%、25重量%、20重量%、15重量%、10重量%、5重量%、2重量%、又は0重量%であってもよい。或いは、比較的強い動物肉の香味を有する動物肉組成物が所望される場合、動物肉組成物中の動物肉の濃度は、約50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、又は75重量%であってもよい。結果的に、動物肉組成物中の水和された構築した植物性タンパク質製品の濃度は、約25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、又は99重量%であってもよい。一実施形態において、動物肉組成物は水和された構築した植物性タンパク質と−2℃〜約12℃の温度で混合される。
【0066】
食品によっては、動物肉は典型的には事前に調理されることにより、肉身を部分的に水和し、以降の加工適用(例えば、レトルト調理)の間にそうした体液が放出されるのを防止し、強い香味を有し得る天然の液体又は油を除去し、動物性タンパク質を凝固させて肉を骨格からほぐし、又はテクスチャーを有する望ましい香味特性を発生させる。事前調理プロセスは、蒸気、水、油、熱風、薫煙、又はそれらの組み合わせで行われ得る。動物肉は一般に、内部の温度が60℃〜85℃になるまで加熱される。一実施形態において、動物肉組成物は水和された構築した植物性タンパク質と、肉製品の温度に対応する高温で混合される。
【0067】
(c)任意の着色剤添加
また、動物肉組成物又は模造肉組成物が、組成物の色を模造対象の動物肉の色に似せるような好適な着色剤と加え合わされ得ることも想定される。本発明の組成物は、濃い動物肉又は薄い動物肉に似るように着色され得る。例として、組成物は、天然着色料、天然着色料の組み合わせ、人工着色料、人工着色料の組み合わせ、又は天然着色料と人工着色料との組み合わせで着色され得る。食品での使用が認可されている天然着色料の好適な例としては、アナトー(赤みがかったオレンジ色)、アントシアニン(赤色〜青色、pHによる)、ビート汁、βカロチン(オレンジ色)、β−APO8カロテナル(オレンジ色)、ブラックカラント、バーントシュガー;カンタキサンチン(ピンク色〜赤色)、カラメル、カルミン/カルミン酸(鮮赤色)、コチニール抽出物(赤色)、クルクミン(黄色〜オレンジ色);ルテイン(赤色〜オレンジ色);混合カロテノイド(オレンジ色)、紅麹(赤色〜紫色、発酵した赤米に由来)、パプリカ、赤キャベツ汁、リボフラビン(黄色)、サフラン、二酸化チタン(白色)、及びウコン(黄色〜オレンジ色)が挙げられる。食品への使用が認可されている人工着色料の好適な例としては、FD&C(Food Drug & cosmetics)赤色3号(カルモシン)、4号(ファストレッドE)、7号(ポンソー4R)、9号(アマランス)、14号(エリスロシン)、17号(アルーラレッド)、40号(アルーラレッドAC)及びFD&C黄色5号(タートラジン)、6号(サンセットイエロー)及び13号(キノリンイエロー)が挙げられる。食品着色料は、水に対し可溶性の粉末、顆粒、又は液体の染料であり得る。或いは、天然及び人工の食品着色料は、染料と不溶性原料とが組み合わさったレーキ顔料であり得る。レーキ顔料は油溶性ではないが、油分散性であり、分散することによって色をつける。
【0068】
1種又は複数の着色料のタイプ及び1種又は複数の着色料の濃度を調節して、模造対象の動物肉の色に適合させ得る。天然食品着色料の最終濃度は、約0.01重量%〜約4重量%の範囲であり得る。
【0069】
着色系はさらに、着色料のpHを最適範囲に維持するため酸性度調整剤を含んでなり得る。酸性度調整剤は酸味剤であってもよい。食品に添加され得る酸味剤の例としては、クエン酸、酢酸(酢)、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、乳酸、リン酸、ソルビン酸、及び安息香酸が挙げられる。動物肉組成物中の酸味剤の最終濃度は、約0.001重量%〜約5重量%の範囲であり得る。酸味剤の最終濃度は、約0.01重量%〜約2重量%の範囲であり得る。酸味剤の最終濃度は、約0.1重量%〜約1重量%の範囲であり得る。酸性度調整剤はまた、二リン酸二ナトリウムなどのpH上昇剤であってもよい。
【0070】
(d)任意成分の添加
模造動物肉組成物又は動物肉と混和された組成物は、場合により様々な香味料、香辛料、抗酸化剤、又は他の成分を含み、最終食品を栄養的に増強し得る。当業者は理解するであろうとおり、動物肉組成物に添加される成分の選択は、製造される食品に依存してもよく、及び依存し得る。
【0071】
動物肉組成物又は模造動物肉組成物は、抗酸化剤をさらに含んでなり得る。抗酸化剤は動物肉中の多価不飽和脂肪酸(例えば、ω3脂肪酸)の酸化を防止し得るとともに、抗酸化剤はまた、着色された構築した植物性タンパク質製品及び動物肉の酸化による変色も防止し得る。抗酸化剤は天然のものであっても、又は合成のものであってもよい。好適な抗酸化剤としては、限定はされないが、アスコルビン酸及びその塩、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、アノクソマー(anoxomer)、N−アセチルシステイン、ベンジルイソチオシアネート、o−、m−又はp−アミノ安息香酸(oはアントラニル酸であり、pはPABAである)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、コーヒー酸、カンタキサンチン(canthaxantin)、αカロチン、βカロチン、βカロテン(caraotene)、β−アポ−カロチン酸、カルノソール、カルバクロール、カテキン、没食子酸セチル、クロロゲン酸、クエン酸及びその塩、クローブ抽出物、コーヒー豆抽出物、p−クマル酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(DPPD)、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジステアリル、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、没食子酸ドデシル、エデト酸、エラグ酸、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、エスクレチン、エスクリン、6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン、没食子酸エチル、エチルマルトール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ユーカリ抽出物、オイゲノール、フェルラ酸、フラボノイド、フラボン(例えば、アピゲニン、クリシン、ルテオリン)、フラボノール(例えば、ダチスセチン、ミリセチン、ダイムフェロ(daemfero))、フラバノン、フラキセチン、フマル酸、没食子酸、リンドウ抽出物、グルコン酸、グリシン、グアヤクガム、ヘスペレチン、α−ヒドロキシベンジルホスフィン酸、ヒドロキシ桂皮酸(hydroxycinammic acid)、ヒドロキシグルタル酸、ヒドロキノン、N−ヒドロキシコハク酸、ヒドロキシチロソール、ヒドロキシウレア、米糠抽出物、乳酸及びその塩、レシチン、クエン酸レシチン;R−α−リポ酸、ルテイン、リコピン、リンゴ酸、マルトール、5−メトキシトリプタミン、没食子酸メチル、クエン酸モノグリセリド;クエン酸モノイソプロピル;モリン、β−ナフトフラボン、ノルジヒドログアヤレト酸(NDGA)、没食子酸オクチル、シュウ酸、クエン酸パルミチル、フェノチアジン、ホスファチジルコリン、リン酸、リン酸塩、フィチン酸、フィチルビクロメル(phytylubichromel)、ピメント抽出物、没食子酸プロピル、ポリリン酸塩、ケルセチン、トランスレスベラトロール、ローズマリー抽出物、ロスマリン酸、セージ抽出物、セサモール、シリマリン、シナピン酸、コハク酸、クエン酸ステアリル、シリンガ酸、酒石酸、チモール、トコフェロール(すなわち、α−、β−、γ−及びδ−トコフェロール)、トコトリエノール(すなわち、α−、β−、γ−及びδ−トコトリエノール)、チロソール、バニリン酸、2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール(すなわち、Ionox 100)、2,4−(トリス−3’,5’−ジ(bi)−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−メシチレン(すなわち、Ionox 330)、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン、ユビキノン、第三ブチルヒドロキノン(TBHQ)、チオジプロピオン酸、トリヒドロキシブチロフェノン、トリプタミン、チラミン、尿酸、ビタミンK及び誘導体、ビタミンQ10、小麦胚芽油、ゼアキサンチン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。動物肉組成物中の抗酸化剤の濃度は、約0.0001重量%〜約20重量%の範囲であり得る。別の実施形態において、動物肉組成物中の抗酸化剤の濃度は、約0.001重量%〜約5重量%の範囲であり得る。さらに別の実施形態において、動物肉組成物中の抗酸化剤の濃度は、約0.01重量%〜約1重量%の範囲であり得る。
【0072】
さらなる実施形態において、動物肉組成物又は模造動物肉組成物は、動物肉フレーバー、動物肉油、香辛料抽出物、香辛料油、天然燻煙液、天然燻煙抽出物、酵母抽出物、及び椎茸抽出物などの香味剤をさらに含んでなり得る。さらなる香味剤としては、オニオンフレーバー、ガーリックフレーバー、又はハーブフレーバーを挙げることができる。動物肉組成物は香味増進剤をさらに含んでなり得る。使用され得る香味増進剤の例としては、塩(塩化ナトリウム)、グルタミン酸塩(例えば、グルタミン酸モノナトリウム)、グリシン塩、グアニル酸塩、イノシン酸塩、5’−リボヌクレオチド塩、加水分解されたタンパク質、及び加水分解された植物性タンパク質が挙げられる。
【0073】
さらなる実施形態において、動物肉組成物は、増粘剤又はゲル化剤、例えば、アルギン酸及びその塩、寒天、カラギーナン及びその塩、加工ユーケマ藻類、ガム(カロブビーン、グアー、トラガカント、及びキサンタン)、ペクチン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、及び修飾デンプンをさらに含んでなり得る。
【0074】
さらなる実施形態において、動物肉組成物は、ビタミン、ミネラル、抗酸化剤、ω3脂肪酸、又はハーブなどの栄養物をさらに含んでなり得る。好適なビタミンとしては、抗酸化剤でもあるビタミンA、C、及びE、並びにビタミンB及びDが挙げられる。添加され得るミネラルの例としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、及びカリウムの塩が挙げられる。好適なω3脂肪酸としては、ドコサヘキサエン酸(DHA)が挙げられる。添加され得るハーブとしては、バジル、セロリ葉、チャービル、チャイブ、シラントロ、パセリ、オレガノ、タラゴン、及びタイムが挙げられる。
【0075】
(e)様々な食品
動物肉組成物は、ヒト又は動物のいずれかの食用として様々な食品に加工され得る。非限定的な例として、最終製品は、挽肉製品、ステーキ製品、サーロインティップ製品、ケバブ製品、細断製品、角切り肉製品、又はナゲット製品を模造するヒトの食用としての動物肉組成物であり得る。前述の製品のいずれも、トレイに載せられて、包装物で覆われるか、真空包装されるか、レトルト用の缶若しくは袋に入れられるか、又は凍結される。
【0076】
また、本発明の動物組成物は様々な動物の食餌に利用され得ることも想定される。一実施形態において、最終製品は、コンパニオンアニマルの食用として配合された動物肉組成物であり得る。別の実施形態において、最終製品は、農業用動物又は動物園動物の食用として配合された動物肉組成物であり得る。当業者は、肉組成物を、コンパニオンアニマル、農業用動物又は動物園動物の食餌における使用向けに容易に配合できる。
【0077】
定義
用語「押出物」は、本明細書で使用されるとき、押出し製品を指す。これに関連して、実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる構築した植物性タンパク質製品は、ある実施形態において押出物であり得る。
【0078】
用語「繊維」は、本明細書で使用されるとき、実施例2に詳述される細断特性試験を実施した後のサイズが約4センチメートル長及び0.2センチメートル幅である構築した植物性タンパク質製品を指す。繊維は概して、実施例2に詳述されるとおりの細断特性試験でグループ1を形成する。これに関連して、用語「繊維」は、大豆子葉繊維などの栄養物クラスの繊維を含まず、また、植物性タンパク質製品を含んでなる実質的に整列したタンパク質繊維の構造的形成を指すものでもない。
【0079】
用語「動物肉」は、本明細書で使用されるとき、動物に由来する肉身、全筋肉、又はそれらの一部分を指す。
【0080】
用語「グルテン」は、本明細書で使用されるとき、高含量のタンパク質並びに特有の構造特性及び粘着特性を有する小麦などの穀類の穀粉中のタンパク質画分を指す。
【0081】
用語「無グルテンデンプン」は、本明細書で使用されるとき、改質タピオカデンプンを指す。無グルテン又は実質的にグルテンを含まないデンプンは、小麦、トウモロコシ、及びタピオカベースのデンプンから作製される。これらは、小麦、オート麦、ライ麦又は大麦由来のグルテンを含有しないことから、無グルテンである。
【0082】
用語「大型断片」は、本明細書で使用されるとき、構築した植物性タンパク質製品の細断パーセンテージを特性決定する方式である。細断特性の測定は実施例2に詳述される。
【0083】
用語「タンパク質繊維」は、本明細書で使用されるとき、一体となって本発明の植物性タンパク質製品の構造を画定する様々な長さの個別の連続的なフィラメント又は分離した細長い断片を指す。加えて、本発明の植物性タンパク質製品が実質的に整列したタンパク質繊維を有することから、タンパク質繊維の配列は植物性タンパク質製品に対し全筋肉のテクスチャーを与える。
【0084】
用語「模造する」は、本明細書で使用されるとき、動物肉を含有しない動物肉組成物を指す。
【0085】
用語「大豆子葉繊維」は、本明細書で使用されるとき、少なくとも約70%の食物繊維を含有する大豆子葉の多糖タンパク質を指す。大豆子葉繊維は典型的には、いくらかの微量の大豆タンパク質を含有するが、100%繊維であってもよい。大豆子葉繊維は、本明細書で使用されるとき、大豆外皮繊維を指すものではなく、又はそれを含まない。一般に、大豆子葉繊維は大豆から形成され、これは大豆の外皮及び胚芽を除去し、子葉を圧扁又は挽砕して圧扁又は挽砕した子葉から油を除去し、大豆子葉繊維を大豆原料及び子葉の炭水化物と分離することによる。
【0086】
用語「大豆タンパク質濃縮物」は、本明細書で使用されるとき、タンパク質含量が無水基準で約65%〜約90%未満の大豆タンパク質であるような大豆原料である。大豆タンパク質濃縮物はまた、大豆子葉繊維、典型的には無水基準で約3.5重量%〜最高約20重量%の大豆子葉繊維も含有する。大豆タンパク質濃縮物は大豆から形成され、これは、大豆の外皮及び胚芽を除去し、子葉を圧扁又は挽砕して圧扁又は挽砕した子葉から油を除去し、大豆タンパク質及び大豆子葉繊維を子葉の可溶性炭水化物と分離することによる。
【0087】
用語「大豆粉」は、本明細書で使用されるとき、粉砕された形態の脱脂大豆原料を指し、好ましくは含油量が約1%未満で、粒子が100番メッシュ(米国規格)のスクリーンを通過できるような粒度の粒子から形成される。大豆のケーキ、チップ、フレーク、ミール、又は原料の混合物は、従来式の大豆製粉プロセスを用いて粉砕され、大豆粉になる。大豆粉の大豆タンパク質含量は無水基準で約49%〜約65%である。
【0088】
用語「大豆タンパク質分離物」は、本明細書で使用されるとき、タンパク質含量が無水基準で少なくとも約90%の大豆タンパク質であるような大豆原料である。大豆タンパク質分離物は大豆から形成され、これは、大豆の外皮及び胚芽を子葉から除去し、子葉を圧扁又は挽砕して圧扁又は挽砕された子葉から油を除去し、大豆タンパク質及び子葉の炭水化物を子葉繊維と分離し、続いて大豆タンパク質を炭水化物と分離することによる。
【0089】
用語「ストランド」は、本明細書で使用されるとき、実施例2に詳述される細断特性試験を実施した後のサイズが約2.5〜約4センチメートル長及び約0.2センチメートル超の幅である構築した植物性タンパク質製品を指す。ストランドは概して、実施例2の細断特性試験で定義されるとき、グループ2を形成する。
【0090】
用語「デンプン」は、本明細書で使用されるとき、任意の天然供給源に由来するデンプンを指す。典型的にはデンプン源は、穀類、塊茎、根、マメ科植物、及び果実類である。
【0091】
用語「小麦粉」は、本明細書で使用されるとき、小麦の製粉から得られる粉を指す。一般的に言えば、小麦粉の粒度は約14μm〜約120μmである。
【0092】
実施例1〜9は本発明の様々な実施形態を示す。
【0093】
実施例1 剪断強度の測定
サンプルの剪断強度はグラムで計測され、以下の手順により測定され得る。構築した植物性タンパク質製品のサンプルを計量し、ヒートシール可能なポーチに入れて、サンプル重量の3倍の室温の水道水でサンプルを水和させる。ポーチを約0.01バールの圧力まで脱気してポーチを密封する。サンプルを約12〜約24時間水和させる。水和したサンプルを取り出し、それをテクスチャー分析機のベースプレート上に、テクスチャー分析機のナイフがサンプルの直径を通って切断するような向きで置く。さらにサンプルは、テクスチャー分析機のナイフの下に、ナイフがテクスチャーを有する断片の長軸と垂直に切断するような向きとしなければならない。押出物を切断するために使用される好適なナイフは、Texture Technologies(米国)製のインサイザーブレード、モデルTA−45である。この試験を実施するための好適なテクスチャー分析機は、25、50、又は100キログラムの負荷を装備したStable Micro Systems Ltd.(英国)製のモデルTA,TXT2である。この試験に関連して、剪断強度は、サンプルを貫通して剪断するために必要な最大の力をグラムで測ったものである。
【0094】
実施例2 細断特性の測定
細断特性の測定手順は以下のとおり実施され得る。構築した植物性タンパク質製品を、丸ごとの断片だけを使用して約150グラム計量する。サンプルをヒートシール可能なプラスチック袋に入れ、25℃の水を約450グラム添加する。袋を約150mmHgで真空包装し、内容物を約60分間水和させる。水和したサンプルを、一軸ブレードパドルを装備したKitchen AidミキサーモデルKM14G0のボウルに入れ、内容物を130rpmで2分間混合する。パドル及びボウルの側面を擦過し、剥がれ落ちた物をボウルの底に戻す。混合及び擦過を2回繰り返す。ボウルから約200gの混合物を取り出す。この約200gの混合物を分けて、2つのグループのうちの一方とする。グループ1は、サンプルのうち、少なくとも4センチメートル長及び少なくとも0.2センチメートル幅の繊維を有する部分である。グループ2は、サンプルのうち、2.5cm〜4.0cm長、及び≧0.2cm幅のストランドを有する部分である。各グループを計量し、重量を記録する。各グループの重量を全て合計し、出発重量(例えば約200g)で除す。これにより、サンプル中の大型断片のパーセンテージが決定される。求められた値が15%を下回るか、又は20%を上回る場合、試験は完了する。値が15%〜20%の場合、ボウルからさらに約200gを量り取り、混合物をグループ1とグループ2とに分けて再び計算を行なう。
【0095】
実施例3 構築した植物性タンパク質製品の生成
以下の押出しプロセスを用いて、実施例1及び2で利用される構築した大豆植物性タンパク質製品などの、本発明の構築した植物性タンパク質製品が調製され得る。乾式ブレンド混合タンクに、1000キログラム(kg)のSupro(登録商標)620(大豆分離物)、440kgの小麦グルテン、171kgの小麦デンプン、34kgの大豆子葉繊維、9kgのリン酸二カルシウム、及び1kgのL−システインを添加する。内容物を混合して乾燥したブレンド大豆タンパク質混合物を形成する。次に乾燥ブレンド物をホッパーに移し、そこから乾燥ブレンド物を480kgの水と共にプレコンディショナーに投入して調質された大豆タンパク質予備混合物を形成する。次に調質された大豆タンパク質予備混合物を25kg/分以下の速度で二軸スクリュー押出し装置(Wenger Manufacturing,Inc.(カンザス州サベタ(Sabetha,KS))によるWengerモデルTX−168押出機)に供給する。押出し装置は5つの温度制御領域を備え、タンパク質混合物は、第1の領域における約25℃から、第2の領域において約50℃、第3の領域において約95℃、第4の領域において約130℃、及び第5の領域において約150℃の温度に制御される。押出物の集塊は、第1の領域における少なくとも約400psigから第5の領域における約1500psigまでの圧力を受ける。毎時60kgの水が、加熱領域と連通している1つ又は複数の注入ジェットを介して押出機バレルに注入される。溶融した押出物の集塊は、ダイとバックプレートとからなるダイアセンブリを通じて押出機バレルを出る。集塊がダイアセンブリを通じて流れるとき、内部に含まれるタンパク質繊維が互いに実質的に整列して繊維質の押出物を形成する。繊維質の押出物はダイアセンブリを出ると可撓性のナイフで切断され、次に切断された集塊を約10重量%の含水量まで乾燥させる。
【0096】
実施例4 pHが調整された構築した植物性タンパク質製品の生成
以下の押出しプロセスを用いて、実施例1及び2で利用される構築した大豆植物性タンパク質製品などの、本発明のpHが低減した構築した植物性タンパク質製品が調製され得る。乾式ブレンド混合タンクに、1000キログラム(kg)のSupro(登録商標)620(大豆分離物)、440kgの小麦グルテン、171kgの小麦デンプン、34kgの大豆子葉繊維、9kgのリン酸二カルシウム、及び1kgのL−システインを添加する。加えて、乾式ブレンド中に、クエン酸(CA)又は炭酸ナトリウム(SC)などのpH改変剤を所定量、添加した。pH値の例は、以下の表1に示される。内容物を混合して乾燥したブレンド大豆タンパク質混合物を形成する。次に乾燥ブレンド物をホッパーに移し、そこから乾燥ブレンド物を480kgの水と共にプレコンディショナーに投入して、調質された大豆タンパク質予備混合物を形成する。次に調質された大豆タンパク質予備混合物を25kg/分以下の速度で二軸スクリュー押出し装置(Wenger Manufacturing,Inc.(カンザス州サベタ(Sabetha,KS))によるWengerモデルTX−168押出機)に供給する。押出し装置は5つの温度制御領域を備え、タンパク質混合物は、第1の領域における約25℃から、第2の領域において約50℃、第3の領域において約95℃、第4の領域において約130℃、及び第5の領域において約150℃の温度に制御される。押出物の集塊は、第1の領域における少なくとも約400psigから第5の領域における約1500psigまでの圧力を受ける。毎時60kgの水が、加熱領域と連通している1つ又は複数の注入ジェットを介して押出機バレルに注入される。溶融した押出物の集塊は、ダイとバックプレートとからなるダイアセンブリを通じて押出機バレルを出る。集塊がダイアセンブリを通じて流れるとき、内部に含まれるタンパク質繊維が互いに実質的に整列して繊維質の押出物を形成する。繊維質の押出物はダイアセンブリを出ると可撓性のナイフで切断され、次に切断された集塊を約10重量%の含水量まで乾燥させる。
【0097】
表1−構造を有する植物性タンパク質についての押し出し後のpH値に関するpH改変剤の量(重量パーセント)
【0098】
実施例5 異なるpH値で生成された動物肉組成物のテクスチャーの比較
繊維質でより肉に近いテクスチャー及び外見の動物肉組成物を作製するため、硬直肉に見られるpHレベルで組成物を生成する方策が考案された。牛肉、豚肉、又は家禽肉の動物が屠殺されると、酸素が制限されるようになり、嫌気的代謝の結果としてグリコーゲンから乳酸への変換が生じ、それに伴いpHが低減する。屠殺前、筋組織は中性のpH範囲である。屠殺後、pHは典型的には約5.4〜5.8に低下し、この低下は筋組織中に乳酸が蓄積することに起因する。乳酸は屠殺後の筋組織中に天然に存在することから、pH降下剤としては乳酸が選択された。処理2で使用される乳酸はPURAC(登録商標)FCC88(Purac America、イリノイ州リンカンシャー(Lincolnshire,IL)60069)であり、これがpHを、硬直後の肉に見られるであろうような5.4〜5.8のレベルの範囲内まで降下させる。pH降下剤の影響を試験するため、処理1における肉混和物は所定量の乳酸を含まず、逆に、処理2における肉混和物は所定量の乳酸を含む。
【0099】
pH降下剤(乳酸)の添加を除き、動物肉組成物ブレンドを同じように調製した。各々について、以下の成分を3〜4℃で混合した。成分のリスト及び重量パーセンテージは表2に従う。テンパリングされた鶏肉MDMは6.35mmに挽砕し、牛肉は3.175mmに挽砕してから混和した。SUPRO(登録商標)MAX 5050(植物性タンパク質製品)を一軸パドルミキサー(モデルAV50、Talleres Cato,s.a.、スペイン国)に入れ、水と20分間にわたり水和させると同時に真空下で細断した。次に、鶏肉MDM、牛肉、亜硝酸ナトリウム及び塩を細断されたSUPRO(登録商標)MAX 5050に添加し、10分間真空混合した。次に残りの全成分をミキサーに加え、真空下で5分間混合した。この段階で、処理2のpHはPURAC(登録商標)FCC88乳酸の添加によって5.6まで降下した。処理1のブレンド物のpHは調整されなかった。次に、Hollymatic成型機(Hollymatic Corporation、イリノイ州カントリーサイド(Countryside,IL))を使用して肉混和物をパテに形成した。次に、全てのパテを内部温度が71℃になるまで、Combo Oven(Groen Combination Steamer Oven、モデルCC20−E Convection Combo、Groen、ミシシッピ州ジャクソン(Jackson,MS))において対流熱と蒸気との組み合わせオプションを選択して177℃で調理した。次に、全ての生成物を以降の試験まで保存するため冷凍した。テクスチャー及び剪断分析前に、サンプルは室温の約23℃に戻した。
【0100】
表2:肉混和物の配合
【0101】
20gの各処理試験生成物を180gの蒸留水とOster(登録商標)ブレンダーにおいて15秒間高速で加え合わせ、Orion pH計(モデル410A)でpHを計測することにより、プロセス全体を通じて2つの生成物のpHを記録した。処理2のpHは硬直後の肉のpHレベルまで降下した。これらのpHの計測結果は表3にある。
【0102】
表3:試験生成物生成プロセスの種々の段階における処理のpH
【0103】
最終生成物のテクスチャーを、5ブレード付きKramer Shear Cell and Texture Profile Analysis(TPA)により、100mmの丸型プラテンを使用して60%圧縮でTA−HDi Texture Analyser(Stable Micro Systems,Ltd.、英国サリー州(Surrey))を伴い、25℃のサンプルで分析した。これらの計測結果を表4に示す。
【0104】
表4:パテのテクスチャー特性。同じ上付きのある平均値には有意差がない。
【0105】
表4が示すとおり、処理1のパテと処理2のパテとは区別できる。図5a及び5bは曲線下面積、すなわち同じ力の値に達するのに要した仕事量が有意に異なったことを示し、これが処理1と処理2との肉混和物の違いを示す。
【0106】
さらに、TPA計測値は、硬さ、凝集性、粘着性、噛み応え及び歯応えが2つの処理間で有意に異なることを明らかにした。TPAの図は図6a及び6bに提示され、これは2つの処理のテクスチャーの違いを示す。これらの違いは、混合中にブレンド物にpH降下剤を添加したときには、肉製品のテクスチャーに違いが見られたことを示す。
【0107】
実施例6 異なるpH値で生成された模造肉組成物の剪断値の比較
試験は、酸の使用によって、水和された構築した植物性タンパク質断片のみのテクスチャーが変化し得たことを示し、従って水和された構築した植物性タンパク質の作成中にpH改変剤を添加したときには、構築した植物性タンパク質断片のテクスチャーに違いが見られたことが示されて完了した。これを試験するため、SUPRO(登録商標)MAX 5053(Solae,LLC(ミズーリ州セントルイス(St.Louis,MO)))の断片を、静電真空下で1時間超にわたり、55%クエン酸溶液を種々に希釈した蒸留水の溶液中で水和させた。次に断片をツナ缶の中に蒸留水と共に入れた。これらの缶を密封し、118.3℃で75分間レトルトした。次に缶を氷水浴中で冷却し、サンプルのテクスチャー及び剪断分析の準備が整うまで、冷蔵温度に保持した。テクスチャー及び剪断分析前に、サンプルは室温の約23℃に戻した。
【0108】
レトルトに先立ち、20gのSUPRO(登録商標)MAX 5053断片を180gの蒸留水とOster(登録商標)ブレンダーで約15秒間にわたり混合することによって、各処理のpHを計測した。次にこのpHを、Orion pH計(モデル410A)を使用して計測した。レトルト及び冷却後の断片のpH計測にも、同じプロセスを用いた。これらの計測値は、表5に見ることができる。
【0109】
表5:レトルト前及びレトルト後のSUPRO(登録商標)MAX 5053断片のpHの計測
【0110】
処理のテクスチャーを、TA−HDi Texture Analyser(Stable Micro Systems,Ltd.、英国サリー州(Surrey))のTA−45 Incisorナイフを使用することによって、25℃のサンプルで計測した。プローブが、SUPRO(登録商標)MAX 5053断片を剪断するのに必要な剪断力をグラムで計測した。テクスチャーのデータは、表6に見ることができる。
【0111】
表6:pHとの関連におけるレトルトされたSUPRO(登録商標)MAX 5053断片のテクスチャー特性。同じ上付きのある平均値には有意差がない。
【0112】
剪断力の値は、5.96〜6.39のpHレベルについて4.05〜5.48のpHレベルと比較して異なる。図7a及び7bは、処理のうち2つについての剪断分析を示し、異なるpH処理(pH6.39の処理Aと、それに対するpH5.48の処理C)の間のテクスチャーの違いを示す。表及び図が示すとおり、pH降下剤の添加は構築した植物性タンパク質断片のテクスチャーに影響を及ぼした。具体的には、処理C〜Fの間で剪断力に有意な差はないが、処理C〜Fは処理A〜Bと有意に異なる。従って、pHが6未満の肉混和物と比較したとき、pHが6以上の肉混和物間には有意な差が示される。
【0113】
実施例7 異なるpH値で生成された模造肉組成物の比較
この例では、様々なpH値の水和された構築した植物性タンパク質を用いて繊維質でより肉に近いテクスチャー及び外見の肉組成物を作成する方策が考案された。動物肉組成物ブレンドを実施例5で先述されたのと同様に、但し水和された構築した植物性タンパク質成分は実施例3と同様に様々なpHレベルで作成して調製した。各々について、以下の成分を3〜4℃で混合した。成分のリスト及び重量パーセンテージは表7に従う。牛肉は3mmに挽砕してから混和した。SUPRO(登録商標)MAX 5050を一軸パドルミキサー(モデルAV50、Talleres Cato,s.a.、スペイン国)に入れ、水と20分間にわたり水和させると同時に真空下で細断した。次に、牛肉及び香味剤(Givaudan Flavors Corporation)を細断したSUPRO(登録商標)MAX 5050に添加し、10分間真空混合した。SUPRO(登録商標)MAX 5050成分は各処理ごとに様々なpHレベルを有し、表8に示されるとおり、肉混和物に様々なpHレベルを生じさせた。次に、残りの全成分をミキサーに添加し、真空下で5分間混合した。SUPRO(登録商標)MAX 5050成分を作成するために使用されるpH調整物質の量は、最終的に所望されるpHの結果に依存した。次に、Hollymatic成型機(Hollymatic Corporation、イリノイ州カントリーサイド(Countryside,IL))を使用して、肉混和物をパテに形成した。次に、全てのパテを内部温度が71℃になるまで、Combo Oven(Groen Combination Steamer Oven、モデルCC20−E Convection Combo、Groen、ミシシッピ州ジャクソン(Jackson,MS))において対流熱と蒸気との組み合わせオプションを選択して177℃で調理した。次に、全ての生成物を以降の試験まで保存するため冷凍した。
【0114】
20gの各処理試験生成物を180gの蒸留水とOster(登録商標)ブレンダーにおいて15秒間高速で加え合わせ、Orion pH計(モデル410A)でpHを計測することによって、処理(肉混和物)のpHを記録した。これらのpHの計測結果は表8にある。
【0115】
表7:肉混和物の配合
【0116】
表8:水和された構造を有する植物性タンパク質組成物のpH値との関連における肉混和物の剪断分析及び調理歩留まり
【0117】
調理歩留まり及び剪断分析の結果が、それぞれ図8及び9に示される。処理のテクスチャーを、TA−HDi Texture Analyser(Stable Micro Systems,Ltd.、英国サリー州(Surrey))のTA−45 Incisorナイフを使用することによって、25℃のサンプルで計測した。プローブが、SUPRO(登録商標)MAX 5050断片を剪断するのに必要な剪断力をグラムで計測した。テクスチャーのデータは、図8に見ることができる。対照、すなわち全ての肉製品は、15,890の最大力(剪断強度)を生じた。図が示すとおり、pHは肉製品のテクスチャーに影響を有する。
【0118】
調理歩留まり率を、未調理の重量と比較した調理済み肉製品の重量パーセンテージで計測した。示されるとおり、肉製品の調理歩留まりは比較的類似しており、典型的には80.0%の歩留まりである。調理済みの重量データは図9に見ることができる。対照、すなわち全ての肉製品は、74.6%の調理済み重量パーセンテージを生じた。
【0119】
実施例8 異なるpH値における水和された構築した植物性タンパク質組成物の比較
水和された構築した植物性タンパク質組成物を、実施例4で用いられたステップに従い調製した。様々な量のpH改変成分、例えば炭酸ナトリウム及びクエン酸を使用して、水和された構築した植物性タンパク質について所望のpHレベルを得た。表9は、水和された構築した植物性タンパク質組成物のpHレベルと、それに対応する各々に関連した剪断力、細断試験、及び塊の密度とを示す。剪断分析は、実施例1に概説されるステップに従い行った。細断分析は、実施例2に概説されるステップに従い行った。
【0120】
表9−pHとの関連における水和された、構築した植物性タンパク質組成物の剪断、細断、及び塊分析
* クエン酸(CA)
**炭酸ナトリウム(SC)
【0121】
情報が示すとおり、水和された構築した植物性タンパク質のpHが低いほど、剪断力、許容可能な細断パーセンテージ、及び塊の密度が低くなる。
【0122】
実施例9 異なるpH値における水和された構築した植物性タンパク質組成物の比較
水和された構築した植物性タンパク質組成物を、実施例4で用いられたステップに従い調製した。様々な量のpH改変成分、例えば炭酸ナトリウム及びクエン酸ナトリウムを使用して、水和された構築した植物性タンパク質について所望のpHレベルを得た。表11及び12は、それらのpHレベル、及びそれに対応する剪断力をグラムで示す。剪断分析は、上記の実施例1及び7に説明されるステップに従い行った。
【0123】
表10−水和された構築した植物性タンパク質組成物の配合
【0124】
表11:pHとの関連における水和された、構築した植物性タンパク質組成物の剪断分析
【0125】
表12:pHとの関連における水和された構築した植物性タンパク質組成物の剪断分析
【0126】
本発明は、その例示的な実施形態との関連で説明されてきたが、この記載を読めば、当業者にはその様々な修正例が明らかとなるであろうことは理解されるべきである。従って、本明細書に開示される本発明は、かかる修正例を、以下の特許請求の範囲の範囲内に該当するものとして包含するよう意図されることは理解されるべきである。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2006年10月5日出願の米国仮特許出願第60/828,298号明細書及び2007年10月5日出願の米国特許出願第11/868,087号明細書からの優先権を主張し、これらの出願は全体として参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、動物肉組成物及び模造(simulated)肉組成物を提供する。本発明はまた、動物肉組成物及び模造動物肉組成物の製造方法も提供する。本方法においては、概してpH降下剤が利用される。
【背景技術】
【0003】
食品科学者らは、許容可能な肉様食品、例えば、牛肉、豚肉、家禽肉、魚肉、及び貝肉の類似品を様々な種類の植物性タンパク質から調製する方法の開発に、多大な時間を割いてきた。タンパク質源としては、比較的豊富にあり、且つある程度安価なため、大豆タンパク質が利用されてきた。肉類似品は典型的には、押出しプロセスによって調製される。乾燥混和物が処理され、繊維質の材料が形成される。これまで、高タンパク質押出物から製造される肉類似品は、肉様のテクスチャー特性及び口当たりに欠けるため、普及が限られてきた。むしろ、形成されるタンパク質繊維の不揃いで捩れた性質が主因となって、スポンジ状で容易には噛み切れないことを特徴としている。ほとんどがハンバーガータイプの挽肉用の増量剤として使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
動物肉の繊維構造を模造し、受け入れることのできる肉様のテクスチャー、香味及び色をもつ構築した(structured)植物性タンパク質製品に対するいまだ満たされないニーズが依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、構築した植物性タンパク質製品の製造方法を提供する。本方法は典型的には、植物性タンパク質原料をpH降下剤と加え合わせてpHが約6.0未満の混合物を形成するステップを含む。混合物が高温高圧の条件下で押し出されると、実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる構築した植物性タンパク質製品が形成される。
【0006】
別の態様は、動物肉組成物の製造方法である。本方法は典型的には、動物肉、植物性タンパク質原料をpH降下剤と加え合わせて、pHが約6.0未満の混合物を形成するステップを含む。次に混合物が高温高圧の条件下で押し出されることにより、実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる構築した植物性タンパク質製品が形成される。
【0007】
本発明のさらに別の態様は、動物肉組成物を提供する。概して、この動物肉組成物は、動物肉と、pH降下剤と、実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる構築した植物性タンパク質製品とを含んでなる。
【0008】
本発明のさらなる態様は、模造動物肉組成物を提供する。この模造動物肉組成物は、実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる構築した植物性タンパク質製品とpH降下剤とを含んでなる。
【0009】
カラー図面の参照
本願は、少なくとも1枚のカラーで作成された写真を含む。カラー写真を伴う本特許出願公報の写しは、当局に請求して必要な手数料を支払えば提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実質的に整列したタンパク質繊維を含む本発明の構築した植物性タンパク質製品を示す顕微鏡写真の画像を表す。
【図2】本発明の方法により生成されたものではない植物性タンパク質製品を示す顕微鏡写真の画像を表す。本明細書に記載されるとおり、植物性タンパク質製品を含んでなるタンパク質繊維はクロスハッチ状である。
【図3】動物肉組成物の写真画像を表し、組成物のpHはその製造中に乳酸によって5.6に低減された。
【図4】動物肉組成物の写真画像を表し、組成物のpHはその製造中に6.7に低減された。
【図5a】pH降下剤を含まないサンプルによる剪断力試験についての時間と力との関係を示すグラフである。
【図5b】pH降下剤を含むサンプルによる剪断力試験についての時間と力との関係を示すグラフである。
【図6a】pH降下剤を含まないサンプルについてのテクスチャープロファイル分析を示すグラフである。
【図6b】pH降下剤を含むサンプルについてのテクスチャープロファイル分析を示すグラフである。
【図7a】レトルト前のpHが6.74のサンプルについての剪断力試験を示すグラフである。
【図7b】レトルト前のpHが5.46のサンプルについての剪断力試験を示すグラフである。
【図8】様々なpHレベルの肉混和物についての調理後の歩留まり率を示すグラフである。
【図9】様々なpHレベルの肉混和物についての剪断力(最大力)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、動物肉組成物又は模造肉組成物を提供する。典型的には、双方の組成物とも、実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる構築した植物性タンパク質製品を含む。本組成物は場合により動物肉を含み得る。本発明はまた、酸性のpH条件下で組成物を生成する方法も提供する。動物肉組成物又は模造動物肉組成物を、硬直肉に見られるpHレベルのような低いpH条件下で生成すると、結果として肉様の質が改善された肉組成物が得られることが発見されている。例として図3及び4を参照すると、図3に表される動物肉組成物は5.6という酸性のpHで調製されたもので、一方、図4の動物肉組成物は6.7という比較的中性のpHで調整されたものである。写真画像に示されるとおり、酸性条件下で生成された動物肉組成物は繊維質の密集性を有しており、中性のpH条件下で生成されたよりゴム質でより粘性の低い密集性を有する動物肉組成物と比較して、より肉に近いテクスチャーを有する。pHの低減によってテクスチャー及び香味の改善がもたらされることから、本発明の組成物は、様々な用途で全筋肉を模造するために利用され得る。
【0012】
(I)構築した植物性タンパク質製品
本発明の動物肉組成物及び模造動物肉組成物は各々、下記のI(f)にさらに詳細に説明されるとおり、実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる構築した植物性タンパク質製品を含んでなる。例示的実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は、下記のI(e)に詳述される押出しプロセスに供された植物原料の押出物である。本発明で利用される構築した植物性タンパク質製品は、実質的に動物肉と類似した様式で整列したタンパク質繊維を有するため、本動物肉組成物及び模造動物肉組成物は概して、全て動物肉のみを含有する組成物のテクスチャー及び食感を有し、消費者が求める肉様のテクスチャーを生み出す。
【0013】
(a)タンパク質含有出発原料
タンパク質を含有する様々な成分を押出しプロセスで利用することにより、動物肉組成物及び模造動物肉組成物における使用に好適な構築した植物性タンパク質製品を生成し得る。典型的には、植物に由来するタンパク質を含んでなる成分が使用されるが、動物源などの他の供給源に由来するタンパク質が、本発明の範囲から逸脱することなく利用され得ることもまた想定される。例えば、カゼイン、カゼイネート、乳清タンパク質、乳タンパク質濃縮物、乳タンパク質分離物、及びこれらの混合物からなる群から選択される乳タンパク質が利用されてもよい。例示的実施形態において、乳タンパク質は乳清タンパク質である。さらなる例として、オボアルブミン、オボグロブリン、オボムチン、オボムコイド、オボトランスフェリン、オボビテラ(ovovitella)、オボビテリン、アルブミン・グロブリン、及びビテリンからなる群から選択される卵タンパク質が利用されてもよい。
【0014】
タンパク質に加え、他の成分種が利用され得ることが想定される。かかる成分の非限定的な例としては、糖、デンプン、オリゴ糖、大豆繊維及び他の食物繊維並びにグルテンが挙げられる。
【0015】
タンパク質含有出発原料は無グルテンであり得ることもまた想定される。グルテンは典型的には押出しプロセス中のフィラメント形成に用いられるため、無グルテン出発原料が使用される場合、食用架橋結合剤を利用してフィラメント形成を促進してもよい。好適な架橋結合剤の非限定的な例としては、コンニャクグルコマンナン(KGM)粉、トランスグルタミナーゼ(transglutanimnase)などの食用架橋結合剤、Takeda(米国)によって製造されるPureglucan(登録商標)などのβグルカン、カルシウム塩、及びマグネシウム塩が挙げられる。当業者は、必要があれば、無グルテンの実施形態において必要とされる架橋結合剤の量を容易に決定できる。
【0016】
押出しプロセスに利用される成分は、その供給源又は成分の分類に関わらず、典型的には実質的に整列したタンパク質繊維を有する押出物(構築した植物性タンパク質製品)を形成する能力を有する。かかる成分の好適な例は、以下でさらに完全に詳述される。
【0017】
(i)植物性タンパク質原料
例示的実施形態においては、タンパク質含有原料を形成するため植物に由来する少なくとも1つの成分が利用され得る。一般的に言えば、この成分はタンパク質を含んでなり得る。利用される成分中に存在するタンパク質量は、用途に応じて異なってもよく、及び異なり得る。例えば、利用される成分中に存在するタンパク質量は、約40重量%〜約100重量%の範囲をとり得る。別の実施形態において、利用される成分中に存在するタンパク質量は、約50重量%〜約100重量%の範囲をとり得る。さらなる実施形態において、利用される成分中に存在するタンパク質量は、約60重量%〜約100重量%の範囲をとり得る。さらなる実施形態において、利用される成分中に存在するタンパク質量は、約70重量%〜約100重量%の範囲をとり得る。さらに別の実施形態において、利用される成分中に存在するタンパク質量は、約80重量%〜約100重量%の範囲をとり得る。さらなる実施形態において、利用される成分中に存在するタンパク質量は、約90重量%〜約100重量%の範囲をとり得る。
【0018】
押出しにおいて利用される成分は、種々の好適な植物に由来し得る。非限定的な例として、好適な植物としては、マメ科植物、トウモロコシ、エンドウ豆、カノーラ、ヒマワリ、モロコシ、米、アマランス、ジャガイモ、タピオカ、クズウコン、カンナ、ルピナス、菜種、小麦、オート麦、ライ麦、大麦、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0019】
一実施形態において、成分は小麦及び大豆から分離される。別の例示的実施形態において、成分は大豆から分離される。好適な小麦由来タンパク質含有成分としては、小麦グルテン、小麦粉、及びこれらの混合物が挙げられる。本発明において利用され得る市販の小麦グルテンの例は、Gem of the West Vital Wheat Glutenのレギュラー、又は有機であり、各々、Manildra Milling(カンザス州ショーニーミッション(Shawnee Mission,KS))から入手可能である。好適な大豆由来タンパク質含有成分(「大豆タンパク質原料」)としては、大豆タンパク質分離物、大豆タンパク質濃縮物、大豆粉、及びこれらの混合物が挙げられ、これらの各々は以下に詳述される。前述の実施形態の各々において、大豆原料が、デンプン、穀粉、グルテン、食物繊維、及びこれらの混合物からなる群から選択される1つ又は複数の成分と組み合わされてもよい。
【0020】
種々の供給源から分離されるタンパク質を含有する原料の好適な例が表Aに詳述され、様々なタンパク質成分が示される。
【0021】
表A タンパク質の組み合わせ
【0022】
(表A続き)
【0023】
表Aに示された実施形態の各々において、タンパク質含有原料の組み合わせは、デンプン、穀粉、グルテン、食物繊維、及びこれらの混合物からなる群から選択される成分の1つ又は複数と組み合わされてもよい。一実施形態において、タンパク質含有原料は、タンパク質、デンプン、グルテン、及び繊維を含んでなる。例示的実施形態において、タンパク質含有原料は、乾燥物質基準で約45%〜約65%の大豆タンパク質、乾燥物質基準で約20%〜約30%の小麦グルテン、乾燥物質基準で約10%〜約15%の小麦デンプン、及び乾燥物質基準で約1%〜約5%の繊維を含んでなる。前述の実施形態の各々において、タンパク質含有原料は、リン酸二カルシウム、L−システイン又は、リン酸二カルシウム及びL−システインの双方の組み合わせを含んでなってもよい。
【0024】
(ii)大豆タンパク質原料
上記に詳述されるとおりの例示的実施形態において、大豆タンパク質分離物、大豆タンパク質濃縮物、大豆粉、及びこれらの混合物が押出しプロセスにおいて利用され得る。大豆タンパク質原料は、一般に当該技術分野において周知の方法に従い、全大豆に由来し得る。全大豆は、標準的な大豆(すなわち、遺伝子組み換えされていない大豆)、商品化されている大豆、交雑された大豆、遺伝子組み換え大豆、保存されている大豆、及びこれらの組み合わせであり得る。
【0025】
一般的に言えば、大豆分離物が使用される場合、好ましくは、高度に加水分解された大豆タンパク質分離物ではない分離物が選択される。しかしながら、特定の実施形態においては、組み合わされた大豆タンパク質分離物のうち高度に加水分解された大豆タンパク質分離物の含量が、概して組み合わされた大豆タンパク質分離物の約40重量%未満であるならば、高度に加水分解された大豆タンパク質分離物が他の大豆タンパク質分離物と組み合わせて使用されてもよい。別の実施形態において、膜ろ過された大豆分離物が使用されてもよい。本発明において有用な大豆タンパク質分離物の例は、例えば、Solae,LLC(ミズーリ州セントルイス(St.Louis,MO))から市販されており、SUPRO(登録商標)500E、SUPRO(登録商標)EX 33、SUPRO(登録商標)620、及びSUPRO(登録商標)545が挙げられる。例示的実施形態においては、実施例3に詳述されるとおり、SUPRO(登録商標)620の形態が利用される。
【0026】
或いは、大豆タンパク質濃縮物又は大豆粉を大豆タンパク質分離物と混和して、大豆タンパク質原料の供給源として大豆タンパク質分離物の一部を代用してもよい。典型的には、大豆タンパク質濃縮物が大豆タンパク質分離物の一部の代用とされる場合、大豆タンパク質濃縮物は最高で約55重量%までの大豆タンパク質分離物の代用とされる。別の実施形態において、大豆タンパク質濃縮物は最高で約50重量%までの大豆タンパク質分離物の代用とされる。別の実施形態において、40重量%の大豆タンパク質が代用される。別の実施形態において、代用される量は最高で大豆タンパク質分離物の約30重量%までである。本発明で有用な好適な大豆タンパク質濃縮物の例としては、Procon、Alpha 12及びAlpha 5800が挙げられ、これらはSolae,LLC(ミズーリ州セントルイス(St.Louis,MO))から市販されている。大豆粉が大豆タンパク質分離物の一部の代用とされる場合、大豆粉は最高で約35重量%までの大豆タンパク質分離物の代用とされる。大豆粉は、タンパク質分散指数(PDI)が高い大豆粉でなければならない。
【0027】
本願で機能し得る当該技術分野において周知の任意の繊維が、繊維源として使用され得る。場合により大豆子葉繊維が繊維源として利用され得る。典型的には、好適な大豆子葉繊維は一般に、大豆タンパク質と大豆子葉繊維との混合物が押し出されるとき、水を効果的に結合し得る。これに関連して、「効果的に水を結合する」とは概して、大豆子葉繊維が大豆子葉繊維1グラム当たり少なくとも5.0〜約8.0グラムの水の保水能力を有し、及び好ましくは大豆子葉繊維が大豆子葉繊維1グラム当たり少なくとも約6.0〜約8.0グラムの水の保水能力を有することを意味する。大豆タンパク質原料中に存在するとき、大豆子葉繊維は無水基準で約1重量%〜約20重量%、好ましくは約1.5重量%〜約20重量%、及び最も好ましくは、約2重量%〜約5重量%の範囲の量で存在し得る。好適な大豆子葉繊維は市販されている。例えば、FIBRIM(登録商標)1260及びFIBRIM(登録商標)2000は、Solae,LLC(ミズーリ州セントルイス(St.Louis,MO))から市販されている大豆子葉繊維原料である。
【0028】
(b)pH還元剤
動物肉組成物及び模造肉組成物は概して、硬直後の肉のpHなど、低いpH条件下で生成される。一般に、低pHは、組成物をpH降下剤と接触させることにより実現される。pH降下剤は、組成物の様々な製造段階で組成物、又は組成物を形成する製品と好適に接触し得ることが想定される。一実施形態においては、pH降下剤を植物性タンパク質原料と接触させた後、I(e)に詳述されるプロセスに従って混合物が押し出される。或いは、pH降下剤は、下記II及びIIIに詳述されるとおり、構築した植物性タンパク質製品を押し出した後にそれと接触させてもよい。
【0029】
pH降下剤が導入される製造段階に関係なく、好適な薬剤としては、組成物のpHをおよそ硬直後の肉のpHレベルまで降下させ得るものが挙げられる。当業者は理解するであろうとおり、硬直後の肉のpHは動物によって異なり得るとともに、異なるであろうが、pHは概して酸性(すなわち、約7.0未満)であり得る。一実施形態において、pHは約7.0未満である。別の実施形態において、pHは約6.0〜約7.0である。さらに別の実施形態において、pHは約6.0未満である。別の実施形態において、pHは約5.0〜約6.0である。この実施形態の一代替例において、pHは約5.2〜約5.9である。この実施形態のさらに別の代替例において、pHは約5.4〜約5.8である。この実施形態のさらなる代替例において、pHは約5.6である。別の実施形態において、pHは約5.0未満である。さらなる実施形態において、pHは約4.0〜約5.0である。さらに別の実施形態において、pHは約4.0未満である。
【0030】
いくつかのpH降下剤が本発明での使用に好適である。pH降下剤は有機性であってもよい。或いは、pH降下剤は無機性であってもよい。例示的実施形態において、pH降下剤は食品級の食用酸である。非限定的に本発明での使用に好適な酸としては、酢酸、乳酸、塩酸、リン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0031】
当業者は理解するであろうとおり、本発明の方法で利用されるpH降下剤の量は、選択される薬剤、所望のpH、及び薬剤が添加される製造段階を含むいくつかのパラメータに応じて異なってもよく、及び異なり得る。非限定的な例として、植物性タンパク質原料と加え合わされる(すなわち、混合物の押し出し前に薬剤が添加される適用について)、又は動物肉組成物若しくは模造肉組成物のいずれかと加え合わされる(すなわち、押し出し後に薬剤が添加される適用について)pH降下剤の量は、乾燥物質基準で約0.1%〜約15%の範囲であり得る。別の実施形態において、pH降下剤の量は乾燥物質基準で約0.5%〜約10%の範囲であり得る。さらなる実施形態において、pH降下剤の量は乾燥物質基準で約1%〜約5%の範囲であり得る。他の実施形態において、pH降下剤の量は乾燥物質基準で約2%〜約3%の範囲であり得る。別の実施形態において、pH降下剤の量は乾燥物質基準で約2.5%である。
【0032】
(c)追加的な成分
本発明の範囲から逸脱することなく、様々な追加成分が上記のタンパク質含有原料とpH降下剤との組み合わせのいずれにも添加され得る。例えば、抗酸化剤、抗菌剤、及びこれらの組み合わせを含めることができる。抗酸化添加剤としては、BHA、BHT、TBHQ、ビタミンA、C及びE並びに誘導体が挙げられ、及び抗酸化特性を有するカロテノイド、トコフェロール又はフラボノイドを含有するものなど、様々な植物抽出物を含めることにより、動物肉組成物又は模造肉組成物の品質保持期限を延ばしたり、又は栄養的に増強したりできる。抗酸化剤及び抗菌剤は、合わせて、押し出され得るタンパク質含有原料の約0.01重量%〜約10重量%、好ましくは、約0.05重量%〜約5重量%、及びより好ましくは約0.1重量%〜約2重量%のレベルで存在し得る。
【0033】
(d)含水量
当業者は理解するであろうとおり、タンパク質含有原料の含水量は、その組み合わせが供される熱プロセス、例えば、レトルト調理、電子レンジ調理、及び押出しに応じて異なってもよく、及び異なり得る。例示的実施形態において、熱プロセスは押出しである。一般的に言えば、熱プロセスが押出しの場合、含水量は約1重量%〜約80重量%の範囲であり得る。低水分の押出し適用においては、タンパク質含有原料の含水量は約1重量%〜約35重量%の範囲であり得る。あるいは、高水分の押出し適用においては、タンパク質含有原料の含水量は約35重量%〜約80重量%の範囲であり得る。例示的実施形態において、押出物を形成するために利用される押出し適用は、低水分である。繊維が実質的に整列したタンパク質を有する押出物を生成するための低水分の押出しプロセスの例示的な例は、I(f)並びに実施例3及び4に詳述される。
【0034】
(e)タンパク質含有植物原料の押出し
植物性タンパク質原料の調製に好適な押出しプロセスは、植物性タンパク質原料及び他の成分を混合タンク(すなわち、材料ブレンダー)に投入し、成分を加え合わせて乾燥したブレンド植物性タンパク質原料プレミックスを形成するステップを含んでなる。上記で詳述されたとおり、ある実施形態においてpH降下剤は混合物の押し出し前に植物原料と接触させ得る。次に乾燥ブレンド植物性タンパク質原料プレミックスがホッパーに移され、そこから乾燥ブレンド材料が水分と共にプレコンディショナーに投入され、調質された植物性タンパク質原料混合物が形成される。調質された原料は次に押出機に供給され、そこで植物性タンパク質原料混合物が押出機のスクリューにより生成される機械的圧力下で加熱されることにより、溶融した押出物の集塊が形成される。溶融した押出物の集塊は押出しダイを通じて押出機から出る。
【0035】
(i)押出しプロセス条件
本発明の実施に有用な好適な押出し装置としては、例えば、米国特許第4,600,311号明細書に記載されるとおりのダブルバレル・二軸スクリュー押出機がある。好適な市販の押出し装置のさらなる例としては、Clextral,Inc.(フロリダ州タンパ(Tampa,FL))製のCLEXTRALモデルBC−72押出機、Wenger Manufacturing,Inc.(カンザス州サベタ(Sabetha,KS))製のWENGERモデルTX−57押出機、WENGERモデルTX−168押出機、及びWENGERモデルTX−52押出機が挙げられる。本発明における使用に好適な他の従来式押出機は、例えば、米国特許第4,763,569号明細書、同第4,118,164号明細書、及び同第3,117,006号明細書に記載され、これらの文献は全体として参照により本明細書に援用される。一軸スクリュー押出機もまた本発明で使用され得る。好適な市販の一軸スクリュー押出し装置の例としては、Wenger X−175、Wenger X−165、及びWenger X−85が挙げられ、これらは全て、Wenger Manufacturing,Inc.から入手できる。
【0036】
二軸スクリュー押出機のスクリューは、バレル内で同方向又は逆方向に回転できる。スクリューの同方向の回転は単流または共回転と称され、一方、スクリューの逆方向の回転は複流または二重反転と称される。押出機の1本又は複数のスクリューの速度は、特定の装置に応じて異なり得るが、典型的には約250〜約450毎分回転数(rpm)である。一般に、スクリュー速度が増加すると、押出物の密度は低下する。押出し装置は、シャフトとウォーム部分とで組み立てられたスクリュー、並びに植物性タンパク質原料の押出し用に押出し装置製造業者により推奨されるとおりの混合ローブ及びリング型の剪断要素を含む。
【0037】
押出し装置は一般に複数の加熱領域を含んでなり、タンパク質混合物はそこを通って機械的圧力下に搬送され、その後押出ダイを通って押出し装置から出る。連続的な加熱領域の各々の温度は、一般に前の加熱領域の温度を約10℃〜約70℃上回る。一実施形態において、調質されたプレミックスは押出し装置内で4つの加熱領域を通って移送され、それに伴いタンパク質混合物が約100℃〜約150℃の温度まで加熱されるため、溶融した押出物の集塊が押出ダイに入るときの温度は約100℃〜約150℃となる。当業者は、温度を調節して加熱又は冷却することにより、所望の特性を実現し得る。典型的には、温度変化は作業入力によるもので、突然起こり得る。
【0038】
押出機バレル内部の圧力は、典型的には約50psig〜約500psig、好ましくは約75psig〜約200psigである。概して、最後の2つの加熱領域内の圧力は約100psig〜約3000psig、好ましくは約150psig〜約500psigである。バレル圧力は多くの要因に依存し、例えば、押出機スクリュー速度、混合物のバレルへの供給速度、水のバレルへの供給速度、及びバレル内の溶融した集塊の粘度が挙げられる。
【0039】
水が押出機バレルに注入されることで植物性タンパク質原料混合物が水和され、タンパク質のテクスチャー化が促進される。溶融した押出物の集塊の形成を補助するものとして、水は可塑剤のように働く。水は1つ又は複数の注入ジェットを介して押出機バレルに投入され得る。典型的には、バレルの混合物は約15重量%〜約35重量%の水を含有する。一般に水のバレルへの投入速度を制御することにより、所望の特性を有する押出物の生成が促進される。水のバレルへの投入速度が低下するほど、押出物の密度は低下することが観察されている。典型的には、タンパク質1kg当たり約1kg未満の水がバレルに投入される。好ましくは、タンパク質1kg当たり約0.1kg〜約1kgの水がバレルに投入される。
【0040】
(ii)予備調質
プレコンディショナーにおいて、タンパク質含有原料及び他の成分が予熱され、水分と接触して制御された温度及び圧力条件下に保たれると、水分が浸透して個々の粒子を軟化させることができる。別の実施形態において、プレコンディショナーにおける圧力条件は周囲圧力とされる。プレコンディショナーは1つ又は複数のパドルを含み、タンパク質の均一な混合及びタンパク質混合物のプレコンディショナーを通じた移送を促進する。パドルの構成及び回転速度は、プレコンディショナーの容量、押出機の処理能力及び/又は混合物のプレコンディショナー又は押出機バレル中での所望の滞留時間によって大幅に異なる。概して、パドルの速度は約100〜約1300毎分回転数(rpm)である。撹拌は、均等な水和及び良好な混合を得るのに十分な程度に激しくなければならない。
【0041】
典型的には、タンパク質含有原料は、押出し装置に投入される前に、プレミックスを水分(すなわち、蒸気及び/又は水)と接触させることにより予備調質される。好ましくはタンパク質含有原料はプレコンディショナー中で然るべき水の温度を用いて約25℃〜約80℃、より好ましくは約30℃〜約40℃の温度まで加熱される。
【0042】
典型的にはタンパク質含有材料プレミックスは、コンディショナーの速度及びサイズに応じて、約30〜約60秒にわたり調質される。例示的実施形態において、タンパク質含有プレミックスは、約3.0分間〜約5.0分間にわたり調質される。プレミックスは、プレコンディショナー中でほぼ一定の蒸気流量で蒸気及び/又は水と接触して加熱され、所望の温度を実現する。水及び/又は蒸気によりプレミックスは調質(すなわち、水和)され、その密度が増加し、乾燥混合物の流動性が妨げなく促進されてから押出機バレルに投入され、そこでタンパク質がテクスチャー化される。低水分のプレミックスが所望される場合、調質されるプレミックスは約1%〜約35%(重量)の水を含有し得る。高水分のプレミックスが所望される場合、調質されるプレミックスは約35%〜約80%(重量)の水を含有し得る。
【0043】
調質されたプレミックスは典型的には約0.25g/cm3〜約0.6g/cm3のバルク密度を有する。一般に、予備調質されたタンパク質混合物のバルク密度がこの範囲内で増加すると、タンパク質混合物の加工がより容易になる。
【0044】
(iii)押出しプロセス
調質されたプレミックスは次に押出機に供給されて、加熱、剪断され、最終的に混合物は可塑化される。押出機は任意の市販の押出機から選択されてもよく、混合物をスクリュー要素で機械的に剪断する一軸スクリュー押出機か、又は好ましくは二軸スクリュー押出機であってもよい。
【0045】
どの押出機を使用するにしても、約50%を超過するモーター負荷で運転させるべきである。典型的には、調質されたプレミックスは押出し装置に毎分約16キログラム〜毎分約60キログラムの速度で投入される。別の実施形態において、調質されたプレミックスは押出し装置に毎分20キログラム〜毎分約40キログラムの速度で投入される。調質されたプレミックスは押出し装置に毎分約26キログラム〜毎分約32キログラムの速度で投入される。一般に、プレミックスの押出機への供給速度が増加すると、押出物の密度が低下することが観察されている。
【0046】
プレミックスが押出機により剪断及び圧力を受けると、混合物は可塑化される。押出機のスクリュー要素は、混合物を剪断すると同時に、押出機を通じて、及びダイを通じて混合物を前方に押し込むことにより押出機に圧力を生じさせる。好ましくは、スクリューのモーター速度は約200rpm〜約500rpm、及びより好ましくは約300rpm〜約450rpmの速度に設定され、それにより混合物は押出機内を、少なくとも毎分約20キログラム、及びより好ましくは少なくとも毎分約40キログラムの速度で進む。好ましくは押出機は約50〜約3000psigの押出機バレル出口圧力を生成する。
【0047】
混合物が押出機を通過するとき、押出機は混合物の温度を制御して混合物中のタンパク質を変性させる。押出機は、混合物の温度を制御してその温度を確実に約100℃〜約180℃にするための手段を含む。好ましくは押出機内で混合物の温度を制御するための手段は押出機バレルジャケットを備え、そのジャケット内に蒸気又は水などの熱媒体又は冷却媒体が導入されることにより、押出機を通過する混合物の温度が制御され得る。押出機はまた、押出機内部で混合物に蒸気を直接注入するための蒸気注入ポートも含み得る。押出機は好ましくは、独立した温度に制御できる複数の加熱領域を含み、ここで加熱領域の温度は好ましくは、混合物が押出機を通って進むとき、混合物の温度を制御するように設定される。例えば、押出機は4つの温度領域構成に設定されてもよく、ここでは第1の領域(押出機入口ポートに隣接する)が約80℃〜約100℃の温度に設定され、第2の領域が約100℃〜135℃の温度に設定され、第3の領域が135℃〜約150℃の温度に設定され、及び第4の領域(押出機出口ポートに隣接する)が約150℃〜約180℃の温度に設定される。押出機は必要に応じて他の温度領域構成に設定されてもよい。例えば、押出機は5つの温度領域構成に設定されてもよく、ここでは第1の領域が約25℃の温度に設定され、第2の領域が約50℃の温度に設定され、第3の領域が約95℃の温度に設定され、第4の領域が約130℃の温度に設定され、及び第5の領域が約150℃の温度に設定される。
【0048】
混合物は押出機内で融解して可塑化された集塊を形成する。押出機にはダイアセンブリが取り付けられ、これは可塑化された混合物が押出機出口ポートからダイアセンブリに流れることができるような構成とされ、ここでダイアセンブリはダイとバックプレートとからなる。加えてダイアセンブリは、可塑化した混合物がダイアセンブリを通じて流れるとき、その中に実質的に整列したタンパク質繊維を生成する。バックプレートはダイと組み合わさって少なくとも1つの中央チャンバを作り出し、これが押出機からの融解して可塑化された集塊を少なくとも1つの中央開口を通じて受け取る。融解して可塑化された集塊は少なくとも1つの中央チャンバから流れ誘導器によって少なくとも1つの細長テーパ状チャネルに送られる。各細長テーパ状チャネルは個々のダイ開口部に直接通じている。押出物はダイアセンブリの周囲又は側面にある少なくとも1つの開口部を通じてダイを出て、この時点で内部に含まれるタンパク質繊維が実質的に整列する。押出物はダイ前面にある少なくとも1つの開口部を通じてダイアセンブリから出てもよいこともまた企図され、このダイ前面は、ダイに固着されたダイプレートであり得る。
【0049】
ダイ開口部の幅及び高さ寸法は、混合物の押出しに先立ち、所望の寸法の繊維原料押出物を提供するよう選択及び設定される。ダイ開口部の幅は、押出物を角切り肉の塊からフィレステーキに至るまで似せるように設定されてもよく、ここでダイ開口部の幅を広げると、押出物の角切り肉様の性質が弱まり、押出物のフィレ様の性質が強くなる。好ましくは、ダイ開口部の幅は約5ミリメートル〜約40ミリメートルの幅に設定される。
【0050】
ダイ開口部の高さ寸法は、所望の厚さの押出物を提供するよう設定され得る。開口部の高さは、非常に薄い押出物又は厚い押出物を提供するよう設定され得る。好ましくはダイ開口部の高さは約1ミリメートル〜約30ミリメートル、及びより好ましくは約8ミリメートル〜約16ミリメートルに設定され得る。
【0051】
また、ダイ開口部は丸くされ得ることも企図される。ダイ開口部の直径は、所望の厚さの押出物を提供するよう設定され得る。開口部の直径は、非常に薄い押出物又は厚い押出物を提供するよう設定され得る。好ましくは、ダイ開口部の直径は、約1ミリメートル〜約30ミリメートル、及びより好ましくは約8ミリメートル〜約16ミリメートルに設定され得る。
【0052】
押出物はダイアセンブリから出た後に切断されてもよい。押出物をダイアセンブリから出た後に切断するための好適な装置としては、Wenger Manufacturing,Inc.(カンザス州サベタ(Sabetha,KS))製及びClextral,Inc.(フロリダ州タンパ(Tampa,FL))製の可撓性のナイフが挙げられる。遅動式の切断が押出物に対して行われてもよい。かかる遅動式切断機の一例は、ギロチン型機器である。
【0053】
ドライヤーが使用される場合、それは一般に空気温度が異なり得る複数の乾燥領域を含んでなる。押出物は、所望の含水量を有する押出物を生成するのに十分な時間にわたりドライヤー内にあることになる。従って、空気の温度は重要ではなく、より低い温度が用いられれば、より高い温度が用いられる場合と比べてより長い乾燥時間が必要となる。概して、領域の1つ又は複数の内部における空気の温度は約100℃〜約185℃であろう。かかる温度では、一般的に押出物は、少なくとも約5分間以上で、さらに一般的には少なくとも約10分間で乾燥する。好適なドライヤーとしては、Wolverine Proctor & Schwartz(マサチューセッツ州メリマク(Merrimac,MA.))製、National Drying Machinery Co.(ペンシルベニア州フィラデルフィア(Philadelphia,PA))製、Wenger(カンザス州サベタ(Sabetha,KS))製、Clextral(フロリダ州タンパ(Tampa,FL))製、及びBuehler(イリノイ州レークブラフ(Lake Bluff,IL))製のものが挙げられる。
【0054】
所望の含水量は、意図される押出物の用途に応じて幅広く異なり得る。一般的に言えば、押し出された原料は、乾燥していれば約6重量%〜約13重量%の含水量を有する。繊維を分離させるために必要ではないが、水が吸収されるまで水中で水和させることは、繊維を分離させる1つの方法である。タンパク質原料が乾燥していないか、又は完全には乾燥していない場合、その含水量はより高く、概して約16重量%〜約30重量%である。
【0055】
乾燥した押出物をさらに粉砕することにより、押出物の平均粒度が低減され得る。好適な挽砕装置としては、Hosokawa Micron Ltd.(英国)製のMikro Hammer Mill、Fitzpatrick Company(イリノイ州エルムハースト(Elmhurst,IL))製のFitzmill(登録商標)、Urschel Laboratories,Inc.(インディアナ州バルパライソ(Valparaiso,IN))製のComitrol(登録商標)加工機などのハンマーミル、及びRossKamp Champion(イリノイ州ウォータールー(Waterloo,IL))製のRossKamp Roller Millなどのローラーミルが挙げられる。
【0056】
(f)構築したタンパク質製品の特性決定
I(e)で生成された押出物は典型的には、実質的に整列したタンパク質繊維を含む構築した植物性タンパク質製品を含んでなる。本発明に関連して「実質的に整列した」とは、概して、構築した植物性タンパク質製品を形成するタンパク質繊維の著しく高い割合が、水平面で見たとき約45°未満の角度で互いに隣接しているようなタンパク質繊維の配列を指す。典型的には、構築した植物性タンパク質製品を含んでなるタンパク質繊維のうち平均して少なくとも55%が実質的に整列している。別の実施形態において、構築した植物性タンパク質製品を含んでなるタンパク質繊維のうち平均して少なくとも60%が実質的に整列している。さらなる実施形態において、構築した植物性タンパク質製品を含んでなるタンパク質繊維のうち平均して少なくとも70%が実質的に整列している。さらなる実施形態において、構築した植物性タンパク質製品を含んでなるタンパク質繊維のうち平均して少なくとも80%が実質的に整列している。さらに別の実施形態において、構築した植物性タンパク質製品を含んでなるタンパク質繊維のうち平均して少なくとも90%が実質的に整列している。タンパク質繊維の整列程度を測定するための方法は、当該技術分野において周知であり、顕微鏡写真画像に基づく目視測定が挙げられる。例として、図1及び2は顕微鏡写真画像を表し、実質的に整列したタンパク質繊維を含む構築した植物性タンパク質製品を、著しくクロスハッチ状となっているタンパク質繊維を有するタンパク質製品と比較して、両者の間の差を示す。図1は、I(a)〜I(e)に従い実質的に整列したタンパク質繊維を有するよう調製された、構築した植物性タンパク質製品を表す。対照的に、図2は著しくクロスハッチ状となっており、実質的に整列していないタンパク質繊維を含有するタンパク質製品を表す。図1に示されるとおり、タンパク質繊維が実質的に整列しているため、本発明において利用される構築した植物性タンパク質製品は概して調理済み筋肉のテクスチャー及び堅さを有する。対照的に、向きがばらばらの、又はクロスハッチ状のタンパク質繊維を有する押出物は、概して柔らかい、又はスポンジ状のテクスチャーを有する。
【0057】
実質的に整列したタンパク質繊維を有することに加え、構築した植物性タンパク質製品はまた、典型的には全筋肉と実質的に同様の剪断強度も有する。本発明に関連して、用語「剪断強度」は、構築した植物性タンパク質製品に対し全筋様のテクスチャー及び外観を与えるのに十分な繊維の網目の形成を定量化する一手段を提供する。剪断強度は、所与のサンプルを貫通して剪断するのに必要な最大の力をグラムで測ったものである。剪断強度を計測するための方法は、実施例1に記載される。一般的に言えば、本発明の構築した植物性タンパク質製品は少なくとも1400グラムの平均剪断強度を有し得る。さらなる実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は約1500〜約1800グラムの平均剪断強度を有し得る。さらに別の実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は約1800〜約2000グラムの平均剪断強度を有し得る。さらなる実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は約2000〜約2600グラムの平均剪断強度を有し得る。さらなる実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は少なくとも2200グラムの平均剪断強度を有し得る。さらなる実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は少なくとも2300グラムの平均剪断強度を有し得る。さらに別の実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は少なくとも2400グラムの平均剪断強度を有し得る。さらに別の実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は少なくとも2500グラムの平均剪断強度を有し得る。さらなる実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は少なくとも2600グラムの平均剪断強度を有し得る。
【0058】
構築した植物性タンパク質製品中に形成されたタンパク質繊維のサイズを定量化するための手段は、細断特性試験により行われ得る。細断特性は、一般に、構築した植物性タンパク質製品中に形成された大型断片の割合を測定する試験である。間接的な方法では、細断特性の割合は、構築した植物性タンパク質製品中のタンパク質繊維の整列程度を定量化するための追加的な手段を提供する。一般的に言えば、大型断片の割合が増加すると、構築した植物性タンパク質製品内部でのタンパク質繊維の整列程度もまた典型的には増加する。逆に、大型断片の割合が低下すると、構築した植物性タンパク質製品内部でのタンパク質繊維の整列程度もまた典型的には低下する。細断特性を測定するための方法は実施例2に詳述される。本発明の構築した植物性タンパク質製品は典型的には大型断片が少なくとも10重量%の平均細断特性を有する。さらなる実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は大型断片が約10重量%〜約15重量%の平均細断特性を有する。別の実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は大型断片が約15重量%〜約20重量%の平均細断特性を有する。さらに別の実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は大型断片が約20重量%〜約50重量%の平均細断特性を有する。別の実施形態においては、大型断片が少なくとも20重量%、少なくとも21重量%、少なくとも22重量%、少なくとも23重量%、少なくとも24重量%、少なくとも25重量%、又は少なくとも26重量%の平均細断特性を有する。
【0059】
本発明の好適な構築した植物性タンパク質製品は、一般に実質的に整列したタンパク質繊維を有し、少なくとも1400グラムの平均剪断強度を有し、及び大型断片が少なくとも10重量%の平均細断特性を有する。より典型的には、構築した植物性タンパク質製品は、少なくとも55%が整列したタンパク質繊維を有し、少なくとも1800グラムの平均剪断強度を有し、及び大型断片が少なくとも15重量%の平均細断特性を有し得る。例示的実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は、少なくとも55%が整列したタンパク質繊維を有し、少なくとも2000グラムの平均剪断強度を有し、及び大型断片が少なくとも17重量%の平均細断特性を有し得る。別の例示的実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は、少なくとも55%が整列したタンパク質繊維を有し、少なくとも2200グラムの平均剪断強度を有し、及び大型断片が少なくとも20重量%の平均細断特性を有し得る。別の例示的実施形態において、構築した植物性タンパク質製品は、少なくとも55%が整列したタンパク質繊維を有し、少なくとも2400グラムの平均剪断強度を有し、及び大型断片が少なくとも20重量%の平均細断特性を有し得る。
【0060】
(II)動物肉
動物肉組成物はまた、構築した植物性タンパク質製品に加え、動物肉を含んでなる。例として、様々な構築した植物性タンパク質特許について具体的に定義される肉及び肉成分としては、無傷の、又は挽砕された牛肉、豚肉、子羊肉、羊肉、馬肉、山羊肉、家禽(ニワトリ、アヒル、ガチョウ又は七面鳥などの飼われている養鶏鳥)の肉、脂肪及び皮、並びにより具体的には任意の養鶏鳥(任意の鳥類)由来の肉質組織、ナマズ、マグロ、チョウザメ、サケ、バス、アメリカカワカマス、キタカワカマス、ボウフィン、ガー、ヘラチョウザメ、ブリーム、コイ、マス、ウォールアイ、スネークヘッド及びクラッピーなどの淡水魚及び海水魚の双方に由来する魚類の肉身、貝類及び甲殻類起源の動物の肉身、及び冷凍の魚、鶏肉、牛肉、豚肉等を鋸で切断するときに出る冷凍の残留物などの加工に由来する動物の肉身の切片及び動物の組織、鶏肉の皮、豚肉の皮、魚の皮、動物性脂肪、例えば、牛肉の脂肪、豚肉の脂肪、子羊肉の脂肪、鶏肉の脂肪、七面鳥の脂肪、豚脂及び獣脂などのレンダリングされた動物性脂肪、香味を増進させた動物性脂肪、断片化されるか、又はさらに処理された動物性脂肪組織、きめの細かいテクスチャー部分の(finely textured)牛肉、きめの細かいテクスチャー部分の豚肉、きめの細かいテクスチャー部分の子羊肉、きめの細かいテクスチャー部分の鶏肉、低温でレンダリングされた牛肉及び低温でレンダリングされた豚肉などの低温でレンダリングされた動物組織、機械的に分離した肉又は機械的に骨抜きした肉(MDM)(様々な機械的手段によって骨から取り除かれた肉の肉身)、例えば、機械的に分離した牛肉、機械的に豚肉、機械的に分離した魚肉、機械的に分離した鶏肉、機械的に分離した七面鳥肉、任意の動物種に由来する任意の調理された動物肉身及び内臓肉が挙げられる。肉の肉身は、動物組織の塩の分画に由来する筋肉タンパク質画分、等電性の分画に由来するタンパク質成分、及び動物筋肉又は動物肉及び熱で骨抜きした(hot boned)肉の沈殿物並びに機械的に調製したコラーゲン組織及びゼラチンを含むまで拡張されるものとする。加えて、バッファロー、シカ、エルク、ムース、トナカイ、カリブー、アンテロープ、ウサギ、クマ、リス、ビーバー、マスクラット、オポッサム、アライグマ、アルマジロ及びヤマアラシなどの狩猟動物、並びに爬虫類の生物、例えば、ヘビ、カメ及びトカゲなどの肉、脂肪、結合組織及び内臓肉も肉と見なされるものとする。
【0061】
また、本発明においては、製品の意図される用途に応じて様々な肉質が利用され得ることも想定される。例えば、挽肉状か、又はぶつ切り若しくはステーキの形態のいずれかである全筋肉が利用され得る。さらなる実施形態において、機械的に骨抜きした肉(MDM)が利用され得る。本発明に関連して、「MDM」は、牛肉、豚肉及び鶏肉の骨など、様々な動物の骨から市販の機器を使用して回収される肉のペーストである。MDMは一般に、無傷の筋肉に見られる天然の繊維質のテクスチャーを欠いた粉砕製品である。他の実施形態において、MDMと全筋肉との組み合わせが利用され得る。
【0062】
(III)動物肉及び模造動物肉組成物を含んでなる食品の製造方法
本発明の別の態様は、動物肉組成物を含んでなる食品の製造方法を提供する。動物肉組成物は、動物肉と構築した植物性タンパク質製品との混合物を含んでなり得るか、又は構築した植物性タンパク質製品を含んでなり得る。本方法は概して、構築した植物性タンパク質製品を水和させるステップと、必要であればその粒度を低減するステップと、場合により構築した植物性タンパク質製品を香味付け及び着色するステップと、場合によりそれを動物肉と混合するステップと、組成物をさらに加工して食品にするステップとを含んでなる。
【0063】
本発明の組成物の調製中、数段階においてpH降下剤が添加され得る。動物肉組成物が調製されるとき、pH降下剤が動物肉と加え合わされて混合物を形成してもよく、次にこの混合物が構築した植物性タンパク質製品と加え合わされてもよい。或いは、構築した植物性タンパク質製品が動物肉と加え合わされて混合物を形成してもよく、次にこの混合物がpH降下剤と加え合わされてもよい。さらなる実施形態において、動物肉、構築した植物性タンパク質製品、及びpH降下剤が全て実質的に同時に加え合わされてもよい。模造肉組成物が調製されるとき、pH降下剤は植物性タンパク質原料の押し出し前に添加されてもよく、又は以下に詳述されるとおり、水和中、着色中、又は調理手順の前など、組成物の調製中の任意の段階で添加されてもよい。
【0064】
(a)構築した植物性タンパク質製品の水和
構築した植物性タンパク質製品は水と混合されると、再び水和され得る。構築した植物性タンパク質製品に添加される水の量は様々であってもよく、及び様々であり得る。水と構築した植物性タンパク質製品との比は、約1.5:1〜約4:1の範囲であり得る。好ましい実施形態において、水と構築した植物性タンパク質製品との比は、約2.5:1であり得る。以上に詳述されたとおり、pH降下剤は水和プロセス中に構築した植物性タンパク質製品と接触させてもよい。
【0065】
(b)任意の動物肉との混和
水和された構築した植物性タンパク質製品は動物肉と混和され、動物肉組成物を生成し得る。上記IIに詳述された動物肉、又はその他の当該技術分野において周知の動物肉のいずれが利用されてもよい。一般に、構築した植物性タンパク質製品は類似した粒度を有する動物肉と混和され得る。典型的には、動物肉組成物中の動物肉の量に対する構築した植物性タンパク質製品の量は、組成物の意図される用途に応じて様々であってもよく、及び様々であり得る。例として、動物の香味が比較的わずかな専らベジタリアン向けの組成物が所望される場合、動物肉組成物中の動物肉の濃度は、約45重量%、40重量%、35重量%、30重量%、25重量%、20重量%、15重量%、10重量%、5重量%、2重量%、又は0重量%であってもよい。或いは、比較的強い動物肉の香味を有する動物肉組成物が所望される場合、動物肉組成物中の動物肉の濃度は、約50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、又は75重量%であってもよい。結果的に、動物肉組成物中の水和された構築した植物性タンパク質製品の濃度は、約25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、又は99重量%であってもよい。一実施形態において、動物肉組成物は水和された構築した植物性タンパク質と−2℃〜約12℃の温度で混合される。
【0066】
食品によっては、動物肉は典型的には事前に調理されることにより、肉身を部分的に水和し、以降の加工適用(例えば、レトルト調理)の間にそうした体液が放出されるのを防止し、強い香味を有し得る天然の液体又は油を除去し、動物性タンパク質を凝固させて肉を骨格からほぐし、又はテクスチャーを有する望ましい香味特性を発生させる。事前調理プロセスは、蒸気、水、油、熱風、薫煙、又はそれらの組み合わせで行われ得る。動物肉は一般に、内部の温度が60℃〜85℃になるまで加熱される。一実施形態において、動物肉組成物は水和された構築した植物性タンパク質と、肉製品の温度に対応する高温で混合される。
【0067】
(c)任意の着色剤添加
また、動物肉組成物又は模造肉組成物が、組成物の色を模造対象の動物肉の色に似せるような好適な着色剤と加え合わされ得ることも想定される。本発明の組成物は、濃い動物肉又は薄い動物肉に似るように着色され得る。例として、組成物は、天然着色料、天然着色料の組み合わせ、人工着色料、人工着色料の組み合わせ、又は天然着色料と人工着色料との組み合わせで着色され得る。食品での使用が認可されている天然着色料の好適な例としては、アナトー(赤みがかったオレンジ色)、アントシアニン(赤色〜青色、pHによる)、ビート汁、βカロチン(オレンジ色)、β−APO8カロテナル(オレンジ色)、ブラックカラント、バーントシュガー;カンタキサンチン(ピンク色〜赤色)、カラメル、カルミン/カルミン酸(鮮赤色)、コチニール抽出物(赤色)、クルクミン(黄色〜オレンジ色);ルテイン(赤色〜オレンジ色);混合カロテノイド(オレンジ色)、紅麹(赤色〜紫色、発酵した赤米に由来)、パプリカ、赤キャベツ汁、リボフラビン(黄色)、サフラン、二酸化チタン(白色)、及びウコン(黄色〜オレンジ色)が挙げられる。食品への使用が認可されている人工着色料の好適な例としては、FD&C(Food Drug & cosmetics)赤色3号(カルモシン)、4号(ファストレッドE)、7号(ポンソー4R)、9号(アマランス)、14号(エリスロシン)、17号(アルーラレッド)、40号(アルーラレッドAC)及びFD&C黄色5号(タートラジン)、6号(サンセットイエロー)及び13号(キノリンイエロー)が挙げられる。食品着色料は、水に対し可溶性の粉末、顆粒、又は液体の染料であり得る。或いは、天然及び人工の食品着色料は、染料と不溶性原料とが組み合わさったレーキ顔料であり得る。レーキ顔料は油溶性ではないが、油分散性であり、分散することによって色をつける。
【0068】
1種又は複数の着色料のタイプ及び1種又は複数の着色料の濃度を調節して、模造対象の動物肉の色に適合させ得る。天然食品着色料の最終濃度は、約0.01重量%〜約4重量%の範囲であり得る。
【0069】
着色系はさらに、着色料のpHを最適範囲に維持するため酸性度調整剤を含んでなり得る。酸性度調整剤は酸味剤であってもよい。食品に添加され得る酸味剤の例としては、クエン酸、酢酸(酢)、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、乳酸、リン酸、ソルビン酸、及び安息香酸が挙げられる。動物肉組成物中の酸味剤の最終濃度は、約0.001重量%〜約5重量%の範囲であり得る。酸味剤の最終濃度は、約0.01重量%〜約2重量%の範囲であり得る。酸味剤の最終濃度は、約0.1重量%〜約1重量%の範囲であり得る。酸性度調整剤はまた、二リン酸二ナトリウムなどのpH上昇剤であってもよい。
【0070】
(d)任意成分の添加
模造動物肉組成物又は動物肉と混和された組成物は、場合により様々な香味料、香辛料、抗酸化剤、又は他の成分を含み、最終食品を栄養的に増強し得る。当業者は理解するであろうとおり、動物肉組成物に添加される成分の選択は、製造される食品に依存してもよく、及び依存し得る。
【0071】
動物肉組成物又は模造動物肉組成物は、抗酸化剤をさらに含んでなり得る。抗酸化剤は動物肉中の多価不飽和脂肪酸(例えば、ω3脂肪酸)の酸化を防止し得るとともに、抗酸化剤はまた、着色された構築した植物性タンパク質製品及び動物肉の酸化による変色も防止し得る。抗酸化剤は天然のものであっても、又は合成のものであってもよい。好適な抗酸化剤としては、限定はされないが、アスコルビン酸及びその塩、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、アノクソマー(anoxomer)、N−アセチルシステイン、ベンジルイソチオシアネート、o−、m−又はp−アミノ安息香酸(oはアントラニル酸であり、pはPABAである)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、コーヒー酸、カンタキサンチン(canthaxantin)、αカロチン、βカロチン、βカロテン(caraotene)、β−アポ−カロチン酸、カルノソール、カルバクロール、カテキン、没食子酸セチル、クロロゲン酸、クエン酸及びその塩、クローブ抽出物、コーヒー豆抽出物、p−クマル酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(DPPD)、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジステアリル、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、没食子酸ドデシル、エデト酸、エラグ酸、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、エスクレチン、エスクリン、6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン、没食子酸エチル、エチルマルトール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ユーカリ抽出物、オイゲノール、フェルラ酸、フラボノイド、フラボン(例えば、アピゲニン、クリシン、ルテオリン)、フラボノール(例えば、ダチスセチン、ミリセチン、ダイムフェロ(daemfero))、フラバノン、フラキセチン、フマル酸、没食子酸、リンドウ抽出物、グルコン酸、グリシン、グアヤクガム、ヘスペレチン、α−ヒドロキシベンジルホスフィン酸、ヒドロキシ桂皮酸(hydroxycinammic acid)、ヒドロキシグルタル酸、ヒドロキノン、N−ヒドロキシコハク酸、ヒドロキシチロソール、ヒドロキシウレア、米糠抽出物、乳酸及びその塩、レシチン、クエン酸レシチン;R−α−リポ酸、ルテイン、リコピン、リンゴ酸、マルトール、5−メトキシトリプタミン、没食子酸メチル、クエン酸モノグリセリド;クエン酸モノイソプロピル;モリン、β−ナフトフラボン、ノルジヒドログアヤレト酸(NDGA)、没食子酸オクチル、シュウ酸、クエン酸パルミチル、フェノチアジン、ホスファチジルコリン、リン酸、リン酸塩、フィチン酸、フィチルビクロメル(phytylubichromel)、ピメント抽出物、没食子酸プロピル、ポリリン酸塩、ケルセチン、トランスレスベラトロール、ローズマリー抽出物、ロスマリン酸、セージ抽出物、セサモール、シリマリン、シナピン酸、コハク酸、クエン酸ステアリル、シリンガ酸、酒石酸、チモール、トコフェロール(すなわち、α−、β−、γ−及びδ−トコフェロール)、トコトリエノール(すなわち、α−、β−、γ−及びδ−トコトリエノール)、チロソール、バニリン酸、2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール(すなわち、Ionox 100)、2,4−(トリス−3’,5’−ジ(bi)−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−メシチレン(すなわち、Ionox 330)、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン、ユビキノン、第三ブチルヒドロキノン(TBHQ)、チオジプロピオン酸、トリヒドロキシブチロフェノン、トリプタミン、チラミン、尿酸、ビタミンK及び誘導体、ビタミンQ10、小麦胚芽油、ゼアキサンチン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。動物肉組成物中の抗酸化剤の濃度は、約0.0001重量%〜約20重量%の範囲であり得る。別の実施形態において、動物肉組成物中の抗酸化剤の濃度は、約0.001重量%〜約5重量%の範囲であり得る。さらに別の実施形態において、動物肉組成物中の抗酸化剤の濃度は、約0.01重量%〜約1重量%の範囲であり得る。
【0072】
さらなる実施形態において、動物肉組成物又は模造動物肉組成物は、動物肉フレーバー、動物肉油、香辛料抽出物、香辛料油、天然燻煙液、天然燻煙抽出物、酵母抽出物、及び椎茸抽出物などの香味剤をさらに含んでなり得る。さらなる香味剤としては、オニオンフレーバー、ガーリックフレーバー、又はハーブフレーバーを挙げることができる。動物肉組成物は香味増進剤をさらに含んでなり得る。使用され得る香味増進剤の例としては、塩(塩化ナトリウム)、グルタミン酸塩(例えば、グルタミン酸モノナトリウム)、グリシン塩、グアニル酸塩、イノシン酸塩、5’−リボヌクレオチド塩、加水分解されたタンパク質、及び加水分解された植物性タンパク質が挙げられる。
【0073】
さらなる実施形態において、動物肉組成物は、増粘剤又はゲル化剤、例えば、アルギン酸及びその塩、寒天、カラギーナン及びその塩、加工ユーケマ藻類、ガム(カロブビーン、グアー、トラガカント、及びキサンタン)、ペクチン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、及び修飾デンプンをさらに含んでなり得る。
【0074】
さらなる実施形態において、動物肉組成物は、ビタミン、ミネラル、抗酸化剤、ω3脂肪酸、又はハーブなどの栄養物をさらに含んでなり得る。好適なビタミンとしては、抗酸化剤でもあるビタミンA、C、及びE、並びにビタミンB及びDが挙げられる。添加され得るミネラルの例としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、及びカリウムの塩が挙げられる。好適なω3脂肪酸としては、ドコサヘキサエン酸(DHA)が挙げられる。添加され得るハーブとしては、バジル、セロリ葉、チャービル、チャイブ、シラントロ、パセリ、オレガノ、タラゴン、及びタイムが挙げられる。
【0075】
(e)様々な食品
動物肉組成物は、ヒト又は動物のいずれかの食用として様々な食品に加工され得る。非限定的な例として、最終製品は、挽肉製品、ステーキ製品、サーロインティップ製品、ケバブ製品、細断製品、角切り肉製品、又はナゲット製品を模造するヒトの食用としての動物肉組成物であり得る。前述の製品のいずれも、トレイに載せられて、包装物で覆われるか、真空包装されるか、レトルト用の缶若しくは袋に入れられるか、又は凍結される。
【0076】
また、本発明の動物組成物は様々な動物の食餌に利用され得ることも想定される。一実施形態において、最終製品は、コンパニオンアニマルの食用として配合された動物肉組成物であり得る。別の実施形態において、最終製品は、農業用動物又は動物園動物の食用として配合された動物肉組成物であり得る。当業者は、肉組成物を、コンパニオンアニマル、農業用動物又は動物園動物の食餌における使用向けに容易に配合できる。
【0077】
定義
用語「押出物」は、本明細書で使用されるとき、押出し製品を指す。これに関連して、実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる構築した植物性タンパク質製品は、ある実施形態において押出物であり得る。
【0078】
用語「繊維」は、本明細書で使用されるとき、実施例2に詳述される細断特性試験を実施した後のサイズが約4センチメートル長及び0.2センチメートル幅である構築した植物性タンパク質製品を指す。繊維は概して、実施例2に詳述されるとおりの細断特性試験でグループ1を形成する。これに関連して、用語「繊維」は、大豆子葉繊維などの栄養物クラスの繊維を含まず、また、植物性タンパク質製品を含んでなる実質的に整列したタンパク質繊維の構造的形成を指すものでもない。
【0079】
用語「動物肉」は、本明細書で使用されるとき、動物に由来する肉身、全筋肉、又はそれらの一部分を指す。
【0080】
用語「グルテン」は、本明細書で使用されるとき、高含量のタンパク質並びに特有の構造特性及び粘着特性を有する小麦などの穀類の穀粉中のタンパク質画分を指す。
【0081】
用語「無グルテンデンプン」は、本明細書で使用されるとき、改質タピオカデンプンを指す。無グルテン又は実質的にグルテンを含まないデンプンは、小麦、トウモロコシ、及びタピオカベースのデンプンから作製される。これらは、小麦、オート麦、ライ麦又は大麦由来のグルテンを含有しないことから、無グルテンである。
【0082】
用語「大型断片」は、本明細書で使用されるとき、構築した植物性タンパク質製品の細断パーセンテージを特性決定する方式である。細断特性の測定は実施例2に詳述される。
【0083】
用語「タンパク質繊維」は、本明細書で使用されるとき、一体となって本発明の植物性タンパク質製品の構造を画定する様々な長さの個別の連続的なフィラメント又は分離した細長い断片を指す。加えて、本発明の植物性タンパク質製品が実質的に整列したタンパク質繊維を有することから、タンパク質繊維の配列は植物性タンパク質製品に対し全筋肉のテクスチャーを与える。
【0084】
用語「模造する」は、本明細書で使用されるとき、動物肉を含有しない動物肉組成物を指す。
【0085】
用語「大豆子葉繊維」は、本明細書で使用されるとき、少なくとも約70%の食物繊維を含有する大豆子葉の多糖タンパク質を指す。大豆子葉繊維は典型的には、いくらかの微量の大豆タンパク質を含有するが、100%繊維であってもよい。大豆子葉繊維は、本明細書で使用されるとき、大豆外皮繊維を指すものではなく、又はそれを含まない。一般に、大豆子葉繊維は大豆から形成され、これは大豆の外皮及び胚芽を除去し、子葉を圧扁又は挽砕して圧扁又は挽砕した子葉から油を除去し、大豆子葉繊維を大豆原料及び子葉の炭水化物と分離することによる。
【0086】
用語「大豆タンパク質濃縮物」は、本明細書で使用されるとき、タンパク質含量が無水基準で約65%〜約90%未満の大豆タンパク質であるような大豆原料である。大豆タンパク質濃縮物はまた、大豆子葉繊維、典型的には無水基準で約3.5重量%〜最高約20重量%の大豆子葉繊維も含有する。大豆タンパク質濃縮物は大豆から形成され、これは、大豆の外皮及び胚芽を除去し、子葉を圧扁又は挽砕して圧扁又は挽砕した子葉から油を除去し、大豆タンパク質及び大豆子葉繊維を子葉の可溶性炭水化物と分離することによる。
【0087】
用語「大豆粉」は、本明細書で使用されるとき、粉砕された形態の脱脂大豆原料を指し、好ましくは含油量が約1%未満で、粒子が100番メッシュ(米国規格)のスクリーンを通過できるような粒度の粒子から形成される。大豆のケーキ、チップ、フレーク、ミール、又は原料の混合物は、従来式の大豆製粉プロセスを用いて粉砕され、大豆粉になる。大豆粉の大豆タンパク質含量は無水基準で約49%〜約65%である。
【0088】
用語「大豆タンパク質分離物」は、本明細書で使用されるとき、タンパク質含量が無水基準で少なくとも約90%の大豆タンパク質であるような大豆原料である。大豆タンパク質分離物は大豆から形成され、これは、大豆の外皮及び胚芽を子葉から除去し、子葉を圧扁又は挽砕して圧扁又は挽砕された子葉から油を除去し、大豆タンパク質及び子葉の炭水化物を子葉繊維と分離し、続いて大豆タンパク質を炭水化物と分離することによる。
【0089】
用語「ストランド」は、本明細書で使用されるとき、実施例2に詳述される細断特性試験を実施した後のサイズが約2.5〜約4センチメートル長及び約0.2センチメートル超の幅である構築した植物性タンパク質製品を指す。ストランドは概して、実施例2の細断特性試験で定義されるとき、グループ2を形成する。
【0090】
用語「デンプン」は、本明細書で使用されるとき、任意の天然供給源に由来するデンプンを指す。典型的にはデンプン源は、穀類、塊茎、根、マメ科植物、及び果実類である。
【0091】
用語「小麦粉」は、本明細書で使用されるとき、小麦の製粉から得られる粉を指す。一般的に言えば、小麦粉の粒度は約14μm〜約120μmである。
【0092】
実施例1〜9は本発明の様々な実施形態を示す。
【0093】
実施例1 剪断強度の測定
サンプルの剪断強度はグラムで計測され、以下の手順により測定され得る。構築した植物性タンパク質製品のサンプルを計量し、ヒートシール可能なポーチに入れて、サンプル重量の3倍の室温の水道水でサンプルを水和させる。ポーチを約0.01バールの圧力まで脱気してポーチを密封する。サンプルを約12〜約24時間水和させる。水和したサンプルを取り出し、それをテクスチャー分析機のベースプレート上に、テクスチャー分析機のナイフがサンプルの直径を通って切断するような向きで置く。さらにサンプルは、テクスチャー分析機のナイフの下に、ナイフがテクスチャーを有する断片の長軸と垂直に切断するような向きとしなければならない。押出物を切断するために使用される好適なナイフは、Texture Technologies(米国)製のインサイザーブレード、モデルTA−45である。この試験を実施するための好適なテクスチャー分析機は、25、50、又は100キログラムの負荷を装備したStable Micro Systems Ltd.(英国)製のモデルTA,TXT2である。この試験に関連して、剪断強度は、サンプルを貫通して剪断するために必要な最大の力をグラムで測ったものである。
【0094】
実施例2 細断特性の測定
細断特性の測定手順は以下のとおり実施され得る。構築した植物性タンパク質製品を、丸ごとの断片だけを使用して約150グラム計量する。サンプルをヒートシール可能なプラスチック袋に入れ、25℃の水を約450グラム添加する。袋を約150mmHgで真空包装し、内容物を約60分間水和させる。水和したサンプルを、一軸ブレードパドルを装備したKitchen AidミキサーモデルKM14G0のボウルに入れ、内容物を130rpmで2分間混合する。パドル及びボウルの側面を擦過し、剥がれ落ちた物をボウルの底に戻す。混合及び擦過を2回繰り返す。ボウルから約200gの混合物を取り出す。この約200gの混合物を分けて、2つのグループのうちの一方とする。グループ1は、サンプルのうち、少なくとも4センチメートル長及び少なくとも0.2センチメートル幅の繊維を有する部分である。グループ2は、サンプルのうち、2.5cm〜4.0cm長、及び≧0.2cm幅のストランドを有する部分である。各グループを計量し、重量を記録する。各グループの重量を全て合計し、出発重量(例えば約200g)で除す。これにより、サンプル中の大型断片のパーセンテージが決定される。求められた値が15%を下回るか、又は20%を上回る場合、試験は完了する。値が15%〜20%の場合、ボウルからさらに約200gを量り取り、混合物をグループ1とグループ2とに分けて再び計算を行なう。
【0095】
実施例3 構築した植物性タンパク質製品の生成
以下の押出しプロセスを用いて、実施例1及び2で利用される構築した大豆植物性タンパク質製品などの、本発明の構築した植物性タンパク質製品が調製され得る。乾式ブレンド混合タンクに、1000キログラム(kg)のSupro(登録商標)620(大豆分離物)、440kgの小麦グルテン、171kgの小麦デンプン、34kgの大豆子葉繊維、9kgのリン酸二カルシウム、及び1kgのL−システインを添加する。内容物を混合して乾燥したブレンド大豆タンパク質混合物を形成する。次に乾燥ブレンド物をホッパーに移し、そこから乾燥ブレンド物を480kgの水と共にプレコンディショナーに投入して調質された大豆タンパク質予備混合物を形成する。次に調質された大豆タンパク質予備混合物を25kg/分以下の速度で二軸スクリュー押出し装置(Wenger Manufacturing,Inc.(カンザス州サベタ(Sabetha,KS))によるWengerモデルTX−168押出機)に供給する。押出し装置は5つの温度制御領域を備え、タンパク質混合物は、第1の領域における約25℃から、第2の領域において約50℃、第3の領域において約95℃、第4の領域において約130℃、及び第5の領域において約150℃の温度に制御される。押出物の集塊は、第1の領域における少なくとも約400psigから第5の領域における約1500psigまでの圧力を受ける。毎時60kgの水が、加熱領域と連通している1つ又は複数の注入ジェットを介して押出機バレルに注入される。溶融した押出物の集塊は、ダイとバックプレートとからなるダイアセンブリを通じて押出機バレルを出る。集塊がダイアセンブリを通じて流れるとき、内部に含まれるタンパク質繊維が互いに実質的に整列して繊維質の押出物を形成する。繊維質の押出物はダイアセンブリを出ると可撓性のナイフで切断され、次に切断された集塊を約10重量%の含水量まで乾燥させる。
【0096】
実施例4 pHが調整された構築した植物性タンパク質製品の生成
以下の押出しプロセスを用いて、実施例1及び2で利用される構築した大豆植物性タンパク質製品などの、本発明のpHが低減した構築した植物性タンパク質製品が調製され得る。乾式ブレンド混合タンクに、1000キログラム(kg)のSupro(登録商標)620(大豆分離物)、440kgの小麦グルテン、171kgの小麦デンプン、34kgの大豆子葉繊維、9kgのリン酸二カルシウム、及び1kgのL−システインを添加する。加えて、乾式ブレンド中に、クエン酸(CA)又は炭酸ナトリウム(SC)などのpH改変剤を所定量、添加した。pH値の例は、以下の表1に示される。内容物を混合して乾燥したブレンド大豆タンパク質混合物を形成する。次に乾燥ブレンド物をホッパーに移し、そこから乾燥ブレンド物を480kgの水と共にプレコンディショナーに投入して、調質された大豆タンパク質予備混合物を形成する。次に調質された大豆タンパク質予備混合物を25kg/分以下の速度で二軸スクリュー押出し装置(Wenger Manufacturing,Inc.(カンザス州サベタ(Sabetha,KS))によるWengerモデルTX−168押出機)に供給する。押出し装置は5つの温度制御領域を備え、タンパク質混合物は、第1の領域における約25℃から、第2の領域において約50℃、第3の領域において約95℃、第4の領域において約130℃、及び第5の領域において約150℃の温度に制御される。押出物の集塊は、第1の領域における少なくとも約400psigから第5の領域における約1500psigまでの圧力を受ける。毎時60kgの水が、加熱領域と連通している1つ又は複数の注入ジェットを介して押出機バレルに注入される。溶融した押出物の集塊は、ダイとバックプレートとからなるダイアセンブリを通じて押出機バレルを出る。集塊がダイアセンブリを通じて流れるとき、内部に含まれるタンパク質繊維が互いに実質的に整列して繊維質の押出物を形成する。繊維質の押出物はダイアセンブリを出ると可撓性のナイフで切断され、次に切断された集塊を約10重量%の含水量まで乾燥させる。
【0097】
表1−構造を有する植物性タンパク質についての押し出し後のpH値に関するpH改変剤の量(重量パーセント)
【0098】
実施例5 異なるpH値で生成された動物肉組成物のテクスチャーの比較
繊維質でより肉に近いテクスチャー及び外見の動物肉組成物を作製するため、硬直肉に見られるpHレベルで組成物を生成する方策が考案された。牛肉、豚肉、又は家禽肉の動物が屠殺されると、酸素が制限されるようになり、嫌気的代謝の結果としてグリコーゲンから乳酸への変換が生じ、それに伴いpHが低減する。屠殺前、筋組織は中性のpH範囲である。屠殺後、pHは典型的には約5.4〜5.8に低下し、この低下は筋組織中に乳酸が蓄積することに起因する。乳酸は屠殺後の筋組織中に天然に存在することから、pH降下剤としては乳酸が選択された。処理2で使用される乳酸はPURAC(登録商標)FCC88(Purac America、イリノイ州リンカンシャー(Lincolnshire,IL)60069)であり、これがpHを、硬直後の肉に見られるであろうような5.4〜5.8のレベルの範囲内まで降下させる。pH降下剤の影響を試験するため、処理1における肉混和物は所定量の乳酸を含まず、逆に、処理2における肉混和物は所定量の乳酸を含む。
【0099】
pH降下剤(乳酸)の添加を除き、動物肉組成物ブレンドを同じように調製した。各々について、以下の成分を3〜4℃で混合した。成分のリスト及び重量パーセンテージは表2に従う。テンパリングされた鶏肉MDMは6.35mmに挽砕し、牛肉は3.175mmに挽砕してから混和した。SUPRO(登録商標)MAX 5050(植物性タンパク質製品)を一軸パドルミキサー(モデルAV50、Talleres Cato,s.a.、スペイン国)に入れ、水と20分間にわたり水和させると同時に真空下で細断した。次に、鶏肉MDM、牛肉、亜硝酸ナトリウム及び塩を細断されたSUPRO(登録商標)MAX 5050に添加し、10分間真空混合した。次に残りの全成分をミキサーに加え、真空下で5分間混合した。この段階で、処理2のpHはPURAC(登録商標)FCC88乳酸の添加によって5.6まで降下した。処理1のブレンド物のpHは調整されなかった。次に、Hollymatic成型機(Hollymatic Corporation、イリノイ州カントリーサイド(Countryside,IL))を使用して肉混和物をパテに形成した。次に、全てのパテを内部温度が71℃になるまで、Combo Oven(Groen Combination Steamer Oven、モデルCC20−E Convection Combo、Groen、ミシシッピ州ジャクソン(Jackson,MS))において対流熱と蒸気との組み合わせオプションを選択して177℃で調理した。次に、全ての生成物を以降の試験まで保存するため冷凍した。テクスチャー及び剪断分析前に、サンプルは室温の約23℃に戻した。
【0100】
表2:肉混和物の配合
【0101】
20gの各処理試験生成物を180gの蒸留水とOster(登録商標)ブレンダーにおいて15秒間高速で加え合わせ、Orion pH計(モデル410A)でpHを計測することにより、プロセス全体を通じて2つの生成物のpHを記録した。処理2のpHは硬直後の肉のpHレベルまで降下した。これらのpHの計測結果は表3にある。
【0102】
表3:試験生成物生成プロセスの種々の段階における処理のpH
【0103】
最終生成物のテクスチャーを、5ブレード付きKramer Shear Cell and Texture Profile Analysis(TPA)により、100mmの丸型プラテンを使用して60%圧縮でTA−HDi Texture Analyser(Stable Micro Systems,Ltd.、英国サリー州(Surrey))を伴い、25℃のサンプルで分析した。これらの計測結果を表4に示す。
【0104】
表4:パテのテクスチャー特性。同じ上付きのある平均値には有意差がない。
【0105】
表4が示すとおり、処理1のパテと処理2のパテとは区別できる。図5a及び5bは曲線下面積、すなわち同じ力の値に達するのに要した仕事量が有意に異なったことを示し、これが処理1と処理2との肉混和物の違いを示す。
【0106】
さらに、TPA計測値は、硬さ、凝集性、粘着性、噛み応え及び歯応えが2つの処理間で有意に異なることを明らかにした。TPAの図は図6a及び6bに提示され、これは2つの処理のテクスチャーの違いを示す。これらの違いは、混合中にブレンド物にpH降下剤を添加したときには、肉製品のテクスチャーに違いが見られたことを示す。
【0107】
実施例6 異なるpH値で生成された模造肉組成物の剪断値の比較
試験は、酸の使用によって、水和された構築した植物性タンパク質断片のみのテクスチャーが変化し得たことを示し、従って水和された構築した植物性タンパク質の作成中にpH改変剤を添加したときには、構築した植物性タンパク質断片のテクスチャーに違いが見られたことが示されて完了した。これを試験するため、SUPRO(登録商標)MAX 5053(Solae,LLC(ミズーリ州セントルイス(St.Louis,MO)))の断片を、静電真空下で1時間超にわたり、55%クエン酸溶液を種々に希釈した蒸留水の溶液中で水和させた。次に断片をツナ缶の中に蒸留水と共に入れた。これらの缶を密封し、118.3℃で75分間レトルトした。次に缶を氷水浴中で冷却し、サンプルのテクスチャー及び剪断分析の準備が整うまで、冷蔵温度に保持した。テクスチャー及び剪断分析前に、サンプルは室温の約23℃に戻した。
【0108】
レトルトに先立ち、20gのSUPRO(登録商標)MAX 5053断片を180gの蒸留水とOster(登録商標)ブレンダーで約15秒間にわたり混合することによって、各処理のpHを計測した。次にこのpHを、Orion pH計(モデル410A)を使用して計測した。レトルト及び冷却後の断片のpH計測にも、同じプロセスを用いた。これらの計測値は、表5に見ることができる。
【0109】
表5:レトルト前及びレトルト後のSUPRO(登録商標)MAX 5053断片のpHの計測
【0110】
処理のテクスチャーを、TA−HDi Texture Analyser(Stable Micro Systems,Ltd.、英国サリー州(Surrey))のTA−45 Incisorナイフを使用することによって、25℃のサンプルで計測した。プローブが、SUPRO(登録商標)MAX 5053断片を剪断するのに必要な剪断力をグラムで計測した。テクスチャーのデータは、表6に見ることができる。
【0111】
表6:pHとの関連におけるレトルトされたSUPRO(登録商標)MAX 5053断片のテクスチャー特性。同じ上付きのある平均値には有意差がない。
【0112】
剪断力の値は、5.96〜6.39のpHレベルについて4.05〜5.48のpHレベルと比較して異なる。図7a及び7bは、処理のうち2つについての剪断分析を示し、異なるpH処理(pH6.39の処理Aと、それに対するpH5.48の処理C)の間のテクスチャーの違いを示す。表及び図が示すとおり、pH降下剤の添加は構築した植物性タンパク質断片のテクスチャーに影響を及ぼした。具体的には、処理C〜Fの間で剪断力に有意な差はないが、処理C〜Fは処理A〜Bと有意に異なる。従って、pHが6未満の肉混和物と比較したとき、pHが6以上の肉混和物間には有意な差が示される。
【0113】
実施例7 異なるpH値で生成された模造肉組成物の比較
この例では、様々なpH値の水和された構築した植物性タンパク質を用いて繊維質でより肉に近いテクスチャー及び外見の肉組成物を作成する方策が考案された。動物肉組成物ブレンドを実施例5で先述されたのと同様に、但し水和された構築した植物性タンパク質成分は実施例3と同様に様々なpHレベルで作成して調製した。各々について、以下の成分を3〜4℃で混合した。成分のリスト及び重量パーセンテージは表7に従う。牛肉は3mmに挽砕してから混和した。SUPRO(登録商標)MAX 5050を一軸パドルミキサー(モデルAV50、Talleres Cato,s.a.、スペイン国)に入れ、水と20分間にわたり水和させると同時に真空下で細断した。次に、牛肉及び香味剤(Givaudan Flavors Corporation)を細断したSUPRO(登録商標)MAX 5050に添加し、10分間真空混合した。SUPRO(登録商標)MAX 5050成分は各処理ごとに様々なpHレベルを有し、表8に示されるとおり、肉混和物に様々なpHレベルを生じさせた。次に、残りの全成分をミキサーに添加し、真空下で5分間混合した。SUPRO(登録商標)MAX 5050成分を作成するために使用されるpH調整物質の量は、最終的に所望されるpHの結果に依存した。次に、Hollymatic成型機(Hollymatic Corporation、イリノイ州カントリーサイド(Countryside,IL))を使用して、肉混和物をパテに形成した。次に、全てのパテを内部温度が71℃になるまで、Combo Oven(Groen Combination Steamer Oven、モデルCC20−E Convection Combo、Groen、ミシシッピ州ジャクソン(Jackson,MS))において対流熱と蒸気との組み合わせオプションを選択して177℃で調理した。次に、全ての生成物を以降の試験まで保存するため冷凍した。
【0114】
20gの各処理試験生成物を180gの蒸留水とOster(登録商標)ブレンダーにおいて15秒間高速で加え合わせ、Orion pH計(モデル410A)でpHを計測することによって、処理(肉混和物)のpHを記録した。これらのpHの計測結果は表8にある。
【0115】
表7:肉混和物の配合
【0116】
表8:水和された構造を有する植物性タンパク質組成物のpH値との関連における肉混和物の剪断分析及び調理歩留まり
【0117】
調理歩留まり及び剪断分析の結果が、それぞれ図8及び9に示される。処理のテクスチャーを、TA−HDi Texture Analyser(Stable Micro Systems,Ltd.、英国サリー州(Surrey))のTA−45 Incisorナイフを使用することによって、25℃のサンプルで計測した。プローブが、SUPRO(登録商標)MAX 5050断片を剪断するのに必要な剪断力をグラムで計測した。テクスチャーのデータは、図8に見ることができる。対照、すなわち全ての肉製品は、15,890の最大力(剪断強度)を生じた。図が示すとおり、pHは肉製品のテクスチャーに影響を有する。
【0118】
調理歩留まり率を、未調理の重量と比較した調理済み肉製品の重量パーセンテージで計測した。示されるとおり、肉製品の調理歩留まりは比較的類似しており、典型的には80.0%の歩留まりである。調理済みの重量データは図9に見ることができる。対照、すなわち全ての肉製品は、74.6%の調理済み重量パーセンテージを生じた。
【0119】
実施例8 異なるpH値における水和された構築した植物性タンパク質組成物の比較
水和された構築した植物性タンパク質組成物を、実施例4で用いられたステップに従い調製した。様々な量のpH改変成分、例えば炭酸ナトリウム及びクエン酸を使用して、水和された構築した植物性タンパク質について所望のpHレベルを得た。表9は、水和された構築した植物性タンパク質組成物のpHレベルと、それに対応する各々に関連した剪断力、細断試験、及び塊の密度とを示す。剪断分析は、実施例1に概説されるステップに従い行った。細断分析は、実施例2に概説されるステップに従い行った。
【0120】
表9−pHとの関連における水和された、構築した植物性タンパク質組成物の剪断、細断、及び塊分析
* クエン酸(CA)
**炭酸ナトリウム(SC)
【0121】
情報が示すとおり、水和された構築した植物性タンパク質のpHが低いほど、剪断力、許容可能な細断パーセンテージ、及び塊の密度が低くなる。
【0122】
実施例9 異なるpH値における水和された構築した植物性タンパク質組成物の比較
水和された構築した植物性タンパク質組成物を、実施例4で用いられたステップに従い調製した。様々な量のpH改変成分、例えば炭酸ナトリウム及びクエン酸ナトリウムを使用して、水和された構築した植物性タンパク質について所望のpHレベルを得た。表11及び12は、それらのpHレベル、及びそれに対応する剪断力をグラムで示す。剪断分析は、上記の実施例1及び7に説明されるステップに従い行った。
【0123】
表10−水和された構築した植物性タンパク質組成物の配合
【0124】
表11:pHとの関連における水和された、構築した植物性タンパク質組成物の剪断分析
【0125】
表12:pHとの関連における水和された構築した植物性タンパク質組成物の剪断分析
【0126】
本発明は、その例示的な実施形態との関連で説明されてきたが、この記載を読めば、当業者にはその様々な修正例が明らかとなるであろうことは理解されるべきである。従って、本明細書に開示される本発明は、かかる修正例を、以下の特許請求の範囲の範囲内に該当するものとして包含するよう意図されることは理解されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構築した植物性タンパク質製品の製造方法であって、
(a)植物性タンパク質原料をpH降下剤と加え合わせて混合物を形成するステップであって、前記混合物のpHが約6.0未満であるステップと、
(b)前記混合物を高温高圧の条件下で押し出して実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる構築した植物性タンパク質製品を形成するステップと、
を含んでなる、前記方法。
【請求項2】
前記構築した植物性タンパク質製品が、少なくとも1400グラムの平均剪断強度及び少なくとも10%の平均細断特性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記構築した植物性タンパク質製品が、図1の顕微鏡写真画像に示されるように実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記pH降下剤が、酢酸、乳酸、塩酸、リン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される酸であり、前記植物性タンパク質原料と加え合わされる前記pH降下剤の量が、乾燥物質基準で約0.1重量%〜約5重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記植物性タンパク質原料が、マメ科植物、トウモロコシ、エンドウ豆、カノーラ、ヒマワリ、モロコシ、米、アマランス、ジャガイモ、タピオカ、クズウコン、カンナ、ルピナス、菜種、小麦、オート麦、ライ麦、大麦、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの動物性タンパク質原料を前記混合物と加え合わせるステップをさらに含んでなり、前記動物性タンパク質原料が、カゼイン、カゼイネート、乳清タンパク質、乳タンパク質濃縮物、乳タンパク質分離物、オボアルブミン、オボグロブリン、オボムチン、オボムコイド、オボトランスフェリン、オボビテラ(ovovitella)、オボビテリン、アルブミン・グロブリン、ビテリン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記植物性タンパク質原料が、乾燥物質基準で約40%〜約90%のタンパク質を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記植物性タンパク質原料が、タンパク質、デンプン、グルテン、及び繊維原料を含んでなり、
(a)乾燥物質基準で約35%〜約65%の大豆タンパク質と、
(b)乾燥物質基準で約20%〜約30%の小麦グルテンと、
(c)乾燥物質基準で約10%〜約15%の小麦デンプンと、
(d)乾燥物質基準で約1%〜約5%の繊維と、
を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記植物性タンパク質原料がリン酸二カルシウム、L−システイン、及びこれらの混合物をさらに含んでなる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
動物肉組成物の製造方法であって、
(a)動物肉と、
(b)実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる構築した植物性タンパク質製品であって、植物性タンパク質原料の押出物を含んでなる構築した植物性タンパク質製品と、
(c)前記動物肉組成物が約6.0未満のpHを有するように約0.1重量%〜約5重量%のpH降下剤と、を加え合わせるステップと、
(d)前記混合物を高温高圧の条件下で押し出して前記動物肉組成物を形成するステップと、
を含んでなる、前記方法。
【請求項11】
前記構築した植物性タンパク質製品が、少なくとも1400グラムの平均剪断強度及び少なくとも10%の平均細断特性を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記構築した植物性タンパク質製品が、図1の顕微鏡写真画像に示されるように実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記動物肉とpH降下剤とが加え合わされて混合物を形成し、次に前記混合物が前記構築した植物性タンパク質製品と加え合わされる、請求項10に記載の動物肉組成物。
【請求項14】
前記構築した植物性タンパク質製品とpH降下剤とが加え合わされて混合物を形成し、次に前記混合物が前記動物肉と加え合わされる、請求項10に記載の動物肉組成物。
【請求項15】
前記構築した植物性タンパク質製品と動物肉とが加え合わされて混合物を形成し、次に前記混合物が前記pH降下剤と加え合わされる、請求項10に記載の動物肉組成物。
【請求項16】
さらなる動物性タンパク質原料を前記混合物と加え合わせるステップをさらに含んでなり、前記動物性タンパク質原料が、カゼイン、カゼイネート、乳清タンパク質、乳タンパク質濃縮物、乳タンパク質分離物、オボアルブミン、オボグロブリン、オボムチン、オボムコイド、オボトランスフェリン、オボビテラ(ovovitella)、オボビテリン、アルブミン・グロブリン、ビテリン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項10に記載の動物肉組成物。
【請求項17】
動物肉組成物であって、
(a)動物肉と、
(b)実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる構築した植物性タンパク質製品であって、植物性タンパク質原料の押出物を含んでなる構築した植物性タンパク質製品と、
(c)前記動物肉組成物が約6.0未満のpHを有するような量のpH降下剤と、
を含んでなる、前記動物肉組成物。
【請求項18】
前記動物肉組成物中に存在する構築した植物性タンパク質製品の濃度が約25重量%〜約99重量%の範囲であり、存在する動物肉の濃度が約1重量%〜約75重量%の範囲であり;及びpH降下剤の濃度が約0.1重量%〜約5重量%の範囲である、請求項17に記載の動物肉組成物。
【請求項19】
前記構築した植物性タンパク質製品が、少なくとも1400グラムの平均剪断強度及び少なくとも10%の平均細断特性を有する、請求項17に記載の動物肉組成物。
【請求項20】
前記構築した植物性タンパク質製品が、図1の顕微鏡写真画像に示されるように実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる、請求項19に記載の動物肉組成物。
【請求項21】
前記動物肉が、豚肉、牛肉、子羊肉、家禽肉、野生の狩猟動物の肉、魚肉、及びこれらの混合物からなる群から選択される動物由来のものである、請求項17に記載の動物肉組成物。
【請求項22】
模造肉組成物であって、
(a)実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる構築した植物性タンパク質製品であって、植物性タンパク質原料の押出物を含んでなる構築した植物性タンパク質製品と、
(b)前記模造肉組成物が約6.0未満のpHを有するような量のpH降下剤と、
を含んでなる、前記模造肉組成物。
【請求項23】
前記構築した植物性タンパク質製品が、少なくとも1400グラムの平均剪断強度及び少なくとも10%の平均細断特性を有する、請求項22に記載の模造肉組成物。
【請求項24】
前記構築した植物性タンパク質製品が、図1の顕微鏡写真画像に示されるように実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる、請求項23に記載の模造肉組成物。
【請求項1】
構築した植物性タンパク質製品の製造方法であって、
(a)植物性タンパク質原料をpH降下剤と加え合わせて混合物を形成するステップであって、前記混合物のpHが約6.0未満であるステップと、
(b)前記混合物を高温高圧の条件下で押し出して実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる構築した植物性タンパク質製品を形成するステップと、
を含んでなる、前記方法。
【請求項2】
前記構築した植物性タンパク質製品が、少なくとも1400グラムの平均剪断強度及び少なくとも10%の平均細断特性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記構築した植物性タンパク質製品が、図1の顕微鏡写真画像に示されるように実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記pH降下剤が、酢酸、乳酸、塩酸、リン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される酸であり、前記植物性タンパク質原料と加え合わされる前記pH降下剤の量が、乾燥物質基準で約0.1重量%〜約5重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記植物性タンパク質原料が、マメ科植物、トウモロコシ、エンドウ豆、カノーラ、ヒマワリ、モロコシ、米、アマランス、ジャガイモ、タピオカ、クズウコン、カンナ、ルピナス、菜種、小麦、オート麦、ライ麦、大麦、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの動物性タンパク質原料を前記混合物と加え合わせるステップをさらに含んでなり、前記動物性タンパク質原料が、カゼイン、カゼイネート、乳清タンパク質、乳タンパク質濃縮物、乳タンパク質分離物、オボアルブミン、オボグロブリン、オボムチン、オボムコイド、オボトランスフェリン、オボビテラ(ovovitella)、オボビテリン、アルブミン・グロブリン、ビテリン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記植物性タンパク質原料が、乾燥物質基準で約40%〜約90%のタンパク質を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記植物性タンパク質原料が、タンパク質、デンプン、グルテン、及び繊維原料を含んでなり、
(a)乾燥物質基準で約35%〜約65%の大豆タンパク質と、
(b)乾燥物質基準で約20%〜約30%の小麦グルテンと、
(c)乾燥物質基準で約10%〜約15%の小麦デンプンと、
(d)乾燥物質基準で約1%〜約5%の繊維と、
を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記植物性タンパク質原料がリン酸二カルシウム、L−システイン、及びこれらの混合物をさらに含んでなる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
動物肉組成物の製造方法であって、
(a)動物肉と、
(b)実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる構築した植物性タンパク質製品であって、植物性タンパク質原料の押出物を含んでなる構築した植物性タンパク質製品と、
(c)前記動物肉組成物が約6.0未満のpHを有するように約0.1重量%〜約5重量%のpH降下剤と、を加え合わせるステップと、
(d)前記混合物を高温高圧の条件下で押し出して前記動物肉組成物を形成するステップと、
を含んでなる、前記方法。
【請求項11】
前記構築した植物性タンパク質製品が、少なくとも1400グラムの平均剪断強度及び少なくとも10%の平均細断特性を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記構築した植物性タンパク質製品が、図1の顕微鏡写真画像に示されるように実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記動物肉とpH降下剤とが加え合わされて混合物を形成し、次に前記混合物が前記構築した植物性タンパク質製品と加え合わされる、請求項10に記載の動物肉組成物。
【請求項14】
前記構築した植物性タンパク質製品とpH降下剤とが加え合わされて混合物を形成し、次に前記混合物が前記動物肉と加え合わされる、請求項10に記載の動物肉組成物。
【請求項15】
前記構築した植物性タンパク質製品と動物肉とが加え合わされて混合物を形成し、次に前記混合物が前記pH降下剤と加え合わされる、請求項10に記載の動物肉組成物。
【請求項16】
さらなる動物性タンパク質原料を前記混合物と加え合わせるステップをさらに含んでなり、前記動物性タンパク質原料が、カゼイン、カゼイネート、乳清タンパク質、乳タンパク質濃縮物、乳タンパク質分離物、オボアルブミン、オボグロブリン、オボムチン、オボムコイド、オボトランスフェリン、オボビテラ(ovovitella)、オボビテリン、アルブミン・グロブリン、ビテリン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項10に記載の動物肉組成物。
【請求項17】
動物肉組成物であって、
(a)動物肉と、
(b)実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる構築した植物性タンパク質製品であって、植物性タンパク質原料の押出物を含んでなる構築した植物性タンパク質製品と、
(c)前記動物肉組成物が約6.0未満のpHを有するような量のpH降下剤と、
を含んでなる、前記動物肉組成物。
【請求項18】
前記動物肉組成物中に存在する構築した植物性タンパク質製品の濃度が約25重量%〜約99重量%の範囲であり、存在する動物肉の濃度が約1重量%〜約75重量%の範囲であり;及びpH降下剤の濃度が約0.1重量%〜約5重量%の範囲である、請求項17に記載の動物肉組成物。
【請求項19】
前記構築した植物性タンパク質製品が、少なくとも1400グラムの平均剪断強度及び少なくとも10%の平均細断特性を有する、請求項17に記載の動物肉組成物。
【請求項20】
前記構築した植物性タンパク質製品が、図1の顕微鏡写真画像に示されるように実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる、請求項19に記載の動物肉組成物。
【請求項21】
前記動物肉が、豚肉、牛肉、子羊肉、家禽肉、野生の狩猟動物の肉、魚肉、及びこれらの混合物からなる群から選択される動物由来のものである、請求項17に記載の動物肉組成物。
【請求項22】
模造肉組成物であって、
(a)実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる構築した植物性タンパク質製品であって、植物性タンパク質原料の押出物を含んでなる構築した植物性タンパク質製品と、
(b)前記模造肉組成物が約6.0未満のpHを有するような量のpH降下剤と、
を含んでなる、前記模造肉組成物。
【請求項23】
前記構築した植物性タンパク質製品が、少なくとも1400グラムの平均剪断強度及び少なくとも10%の平均細断特性を有する、請求項22に記載の模造肉組成物。
【請求項24】
前記構築した植物性タンパク質製品が、図1の顕微鏡写真画像に示されるように実質的に整列したタンパク質繊維を含んでなる、請求項23に記載の模造肉組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2010−505424(P2010−505424A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531627(P2009−531627)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/080601
【国際公開番号】WO2008/043076
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(504140299)ソレイ リミテッド ライアビリティ カンパニー (42)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/080601
【国際公開番号】WO2008/043076
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(504140299)ソレイ リミテッド ライアビリティ カンパニー (42)
【Fターム(参考)】
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