説明

構造物の柱の施工方法

【課題】柱の施工を容易にした構造物の柱の施工方法を提供する。
【解決手段】構造物(10)の隣り合う梁同士の間又は構造物の隣り合う梁と基礎との間に柱を施工する方法であって、梁及び基礎(14)を有する構造物(10)を対象にし、複数の柱部品に分割した柱(15)を用意し、構造物(10)の隣り合う梁又は構造物の隣り合う梁と基礎(14)とに複数の柱部品から選択した柱部品をそれぞれ接合し、接合した柱部品及び残りの柱部品を組み立てて柱(15)を完成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、鉄道、道路の高架橋、ビル等の構造物の柱の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新設の構造物では、最初に柱を作製し、その後に柱の上に梁を作製する。よって、梁を作製した後に柱を梁に接合する施工方法は実施されていなかった。また、既存の構造物において梁と接合した柱を交換する場合、柱を梁から取り除いて、既製の柱を梁に接合していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、既存の構造物の梁に既製の柱を施工する方法は、柱の施工のために広いスペース、高いコストを必要とし、さらに、構造物の大規模な改築という問題を有していた。
【0004】
一方、都市における高架橋の下であって柱同士の間のスペースは、駅舎や店舗等に利用される。しかし、柱同士の間隔が短いことから、現状では柱が旅客流動や有効利用の妨げになっている。そのため、柱の断面積を小さくすること、又は、別の位置に柱を移設する方法が求められている。この点、既設高架橋において柱の位置を変更したいケースが見受けられるが、現状では構造の変更は難しい。その理由は、既設の高架橋では上部の梁と基礎の位置が決まっており、新設構造とは異なり、梁と既製の柱の部分を十分に配筋してコンクリートを打設することができないためである。このため、既設高架橋は、既製の柱を梁と接合することは困難であるという課題を有していた。
【0005】
そこで、本発明の目的は、柱の施工を容易にした構造物の柱の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、符号を付して本発明の特徴を説明する。なお、符号は参照のためであり、本発明を実施形態に限定するものでない。
【0007】
本発明の特徴に係わる構造物の柱の施工方法は、構造物(10)の隣り合う梁(13)同士の間又は構造物(10)の隣り合う梁(13)と基礎(14)との間に柱を施工する方法であって、梁(13)及び基礎(14)を有する構造物(10)を対象にし、複数の柱部品(151A、151B、152A、152B、153A、153B、154A、154B、158A、158B)に分割した柱(15、15A、15B、15C)を用意し、構造物(10)の隣り合う梁(13)又は構造物の隣り合う梁(13)と基礎(14)とに複数の柱部品(151A・・・158B)から選択した柱部品をそれぞれ接合し、接合した柱部品及び残りの柱部品を組み立てて柱(15・・・15C)を完成する。
【0008】
以上の特徴において、組み立てた柱部品(154A、154B、158A、158B)の周りに補強板(155A、155B、155C、157B、157C)を巻く。
【0009】
組み立てた柱部品(154A、154B、158A、158B)を囲むように補強管(156、159)を配置する。
【0010】
柱部品(151A・・・158B)は中空であり、柱部品(151A・・・158B)の内部にセメント系固化材(C1)を充填する。
【0011】
柱部品(154A、154B、158A、158B)と補強管(156、159)との間にセメント系固化材(C1)を充填する。
【0012】
梁(13)及び基礎(14)の一方に接合部(17A、17B、17C)を形成する。
【0013】
接合部をアンカー鉄筋(17C)で形成する。
【0014】
アンカー鉄筋(17C)を継鉄筋(17D)と接続し、アンカー鉄筋(17C)の周りに補強板(157A)を巻き、補強板(157A)の内部にセメント系固化材(C1)を充填する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の特徴によれば、複数の柱部品から柱を組み立てるので、梁又は基礎に対する柱の施工を容易にする。
【0016】
既存の柱を新たな柱に交換する場合、大規模な構造改良が不要となり、施工コストの面で有利である。
【0017】
梁又は基礎の高さを変えずに柱を設置することができる。
【0018】
柱のレイアウトの自由に変更できるので、構造物が高架橋であれば、旅客流動を円滑にし、高架橋下のスペースを有効に活用することがきる。
【0019】
複数の柱部品により柱の強度を高めて、柱横断面を小さくできるので、柱同士の間隔を広げることができる。これにより、構造物が高架橋であれば、旅客流動を円滑にし、高架橋下のスペースを店舗の設置等に有効活用することがきる。
【0020】
柱は複数の柱部品から構成されるので、全体の変形性能を向上させ、耐震性能を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係る高架橋の斜視図である。
【図2】既存の高架橋の斜視図である。
【図3】(A)、(B)、(C)、(D)は、柱の施工工程を示す概要図である。
【図4】(A)、(B)、(C)、(D)は、第2の実施形態に係る柱の施工工程を示す概要図である。
【図5】(A)、(B)、(C)は、第3の実施形態に係る柱の施工工程を示す概要図である。
【図6】(A)、(B)、(C)は、図5(C)に続く柱の施工工程を示す概要図である。
【図7】(A)、(B)は図6(C)に続く柱の施工工程を示す概要図である。
【図8】(A)、(B)、(C)は第4の実施形態に係る高架橋の柱の施工工程を示す概要図である。
【図9】(A)、(B)、(C)は、図8(C)に続く柱の施工工程を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して高架橋を一例として実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
第1の実施形態
図1に示すように、構造物としての高架橋10は、軌道11が設置された床版12と、床版12を支持する梁13と(図3参照)、梁13と接合されると共に基礎14の上に配置された柱15群と、柱15同士の間に店舗構造物16を有する。
【0024】
図3(D)に示すように、柱15は、長手方向に半分に分割された第1及び第2の柱部品151A、151Bから構成される。第1及び第2の柱部品151A、151Bは、接合部17A、17Bで梁13及び基礎14に接合される。第1及び第2の柱部品151A、151Bは、それぞれ中空の鋼管からなる。各柱部品151A、151Bの内部はセメント系固化材C1で充填されている。セメント系固化材C1は、例えば、コンクリート又はモルタルである。このような柱は、CFT(Concrete Filled Steel Tube)柱と言われている。
【0025】
次に、既設の高架橋の柱105を本形態の柱15に交換する施工方法を説明する。
【0026】
図2に示すように、既存の高架橋100は、軌道11が設置された床版12と、床板12の下の梁13を支持すると共に基礎14に支持された柱群105を有する。以下、1つの柱105を代表として交換方法を説明する。
【0027】
図3(A)に示すように、既存の柱105の両側であって梁13と基礎14の間に仮支持材106A、106Bを配置する。仮支持材106A、106Bは梁13を一時的に支持する。その後、既存の柱105を撤去する。図3(B)に示すように、既存の柱105の位置に一致するように梁13及び基礎14のそれぞれに接合部17A、17Bを加工する。接合部17A、17Bは、例えば、アンカー鉄筋からなる。ここで、接合部を既存の柱から離して柱のレイアウトを変更しても良い。図3(C)に示すように、梁13と基礎14と間であって接合部17A、17B対して一方側に第1の柱部品151Aを配置する。同様に、梁13と基礎14と間であって接合部17A、17Bに対して他方側に第2の柱部品151Bを配置する。図3(D)に示すように、各柱部品151A、151Bによって、接合部17A、17Bを挟むようにして、接合部17A、17Bと第1及び第2の柱部品151A、151Bとを接合して組み立てる。最後に第1及び第2の柱部品151A、151Bの内部にセメント系固化材C1を充填する。以上より、柱15が完成する。
【0028】
以上の実施形態によれば、柱部品151A、151Bを柱15に組み立てるので、梁13又は基礎14に対する柱15の施工を容易にする。
【0029】
既存の柱105のみを新たな柱15に交換するので、大規模な構造改良が不要となり、施工コストの面で有利である。
【0030】
上下の梁13と基礎14の高さを変えずに新たな柱15を設置することができる。
【0031】
柱15のレイアウトの自由に変更できるので、旅客流動を円滑にし、高架橋10下のスペースを有効に活用することがきる。
【0032】
複数の柱部品151A、151Bにより柱15の強度を高めて、柱横断面を小さくできるので、柱15同士の間隔を広げることがでる。これにより、旅客流動を円滑にし、高架橋下のスペースを店舗の設置等に有効活用することがきる。
【0033】
柱15は複数の柱部品151A、151Bから構成されるので、全体の変形性能を向上させ、耐震性能を向上させる。
【0034】
第2の実施形態
図4(D)に示すように、柱15Aは、接合部17Aを用いて梁13に取り付けられた立方体状の上柱部品152Aと、接合部17Bを用いて基礎14に取り付けられた立方体状の下柱部品152Bと、上柱部品152Aと下柱部品152Bとの間に配置された第1及び第2の中柱部品153A、153Bを有する。
【0035】
柱15Aは、横方向において上柱部品152A、第1及び第2の中柱部品153A、153B、下柱部品152Bに分割される。さらに、第1及び第2の中柱部品153A、153Bは長手方向に半分に分割される。
【0036】
次に、既設の高架橋の柱105を本実施形態の柱15Aに交換する施工方法を説明する。
【0037】
図4(A)、(B)に示すように、既存の柱105の撤去方法、及び、接合部17A、17Bの加工は、第1の実施形態と同様である。
【0038】
図4(B)に示すように、梁13の接合部17Aに上柱部品152Aを取り付ける。同様に、基礎14の接合部17Bに下柱部品152Bを取り付ける。さらに、図4(C)に示すように、上柱部品152A及び下柱部品152Bに間に第1及び第2の中柱部品153A、153Bを挿入する。図4(D)に示すように、第1及び第2の中柱部品153A、153B同士を接合する。第1及び第2の中柱部品153A、153Bをそれぞれ上柱部品152A、下柱部品152Bに接合する。最後に、各部品152A、152B、153A、153Bの内部にセメント系固化材C1を充填する。以上より柱15Aが完成する。
【0039】
以上の実施形態によれば、柱15Aを4つの柱部品152A、152B、153A、153Bに分割しているので、柱の施工性を向上させ、また、柱横断面を小さくすることができる。
【0040】
第3の実施形態
図7(B)に示すように、柱15Bは、アンカー鉄筋17Cを用いて基礎14及び梁(図示省略)に接合されると共に互いに接合された半円柱状の第1の柱部品154A、154Bを有する。柱15Bは、第1及び第2の柱部品154A、154Bの下部、中部、上部の周りに巻かれた第1、第2、及び第3の補強板155A、155B、155Cを有する。柱15Bは、第1及び第2の柱部品154A、154B並びに第1、第2、第3の補強板155A、155B、155Cの外側を囲むように配置された補強管156を有する。第1、第2、第3の補強板155A、155B、155Cは、例えば、鋼板である。補強管156は、例えば、鋼管である。
【0041】
図5〜図7を用いて、既存の高架橋の柱105を新しい柱15Bに交換する施工方法を説明する。
【0042】
図5(A)、(B)に示すように、既存の柱105の撤去方法は、第1の実施形態と同様である。図5(C)以降、梁13を省略して基礎14のみを表示するが、梁13にも基礎14と同様の施工を実施する。
【0043】
図5(C)に示すように、基礎14に複数のアンカー鉄筋17Cを差し込む。
【0044】
図6(A)に示すように、アンカー鉄筋17Cを挿入するように中空の第1の柱部品154A及び第2の柱部品154Bを配置する。第1の柱部品154A及び第2の柱部品154Bを互いに接合し組み立てる。図6(B)に示すように、第1及び第2の柱部品154A、154Bの下部の周りに第1の補強板155Aを巻く。図6(C)に示すように、第1及び第2の柱部品154A、154Bの中部及び上部に第2及び第3の補強板155B、155Cを巻く。
【0045】
図7(A)に示すように、第1及び第2の柱部品154A、154B並びに第1、第2及び第3の補強板155A、155B、155Cの外側を囲むように補強管156を配置する。図7(B)に示すように、最後に、第1及び第2の柱部品154A、154Bの内部、及び、補強管156と第1及び第2の柱部品154A、154Bとの間にセメント系固化材C1を充填する。以上より、柱15Bが完成する。
【0046】
以上の実施形態によれば、第1、第2及び第3補強板155A、155B、155C、並びに、補強管156により柱15Bの強度をより向上させる。
【0047】
第4の実施形態
図9(C)に示すように、柱15Cは、基礎14に差し込まれた複数のアンカー鉄筋17Cと、アンカー鉄筋17Cに継ぎ足された複数の継鉄筋17Dと、アンカー鉄筋17Cの周りを囲む第1の補強板157Aを有する。柱15Cは、継鉄筋17Dが挿入されるように配置されると共に互いに接合された第1の柱部品158A及び第2の柱部品158Bを有する。柱15Cは、第1及び第2の柱部品158A、158Bの下部及び上部に巻かれた第2の補強板157B、第3の補強板157Cを有する。柱15Cは、第1及び第2の柱部品158A、158B、並びに、第1、第2及び第3の補強板の外側を囲むように配置された補強管159を有する。
【0048】
図8、9を用いて、既存の高架橋の柱105を新しい柱15Cに交換する施工方法を説明する。
【0049】
既存の柱の撤去方法は、第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0050】
図8(A)に示すように、複数のアンカー鉄筋17Cを基礎14に差し込み固定する。図8(B)に示すように、アンカー鉄筋17Cの周りに囲むように第1の補強板157Aを配置する。図8(C)に示すように、アンカー鉄筋17Cのそれぞれに継鉄筋17Dを継ぎ足す。
【0051】
図9(A)に示すように、第1の補強板157Aの内部にセメント系固化材C1を充填する。図9(B)に示すように、継鉄筋17Dを第1の柱部品158Aと第2の柱部品158Bに差し込み、第1及び第2の柱部品158A、158Bを充填したセメント系固化材C1の上に設置する。第1の柱部品158Aと第2の柱部品158Bとを互いに接合する。接合した第1及び第2の柱部品158A、158Bの下部の周りに第2の補強板157Bを巻く。図9(C)に示すように、第1及び第2の柱部品158A、158Bの上部の周りに第3の補強板157Cを巻く。第1及び第2の柱部品158A、158B、並びに、第1の補強板17Cの外側を囲むように補強管159を配置する。最後に、第1及び第2の柱部品158A、158Bの内部、第1及び第2の柱部品158A、158Bと補強管159との間に、セメント系固化材C1を充填する。以上より、柱15Cが完成する。
【0052】
以上の実施形態によれば、第1、第2、第3の補強板157A、157B、157C、補強管159により、柱15Cの強度が向上する。
【0053】
なお、本発明は本実施形態に限定されず、また、各実施形態は発明の趣旨を変更しない範囲で変更、修正可能である。本発明の施工方法は高架橋に限定されず、ビル等のあらゆる構造物に適用される。本発明の施工方法は、隣り合う梁と基礎との間の他、隣り合う梁同士の間に柱を作製する場合に適用される。本発明の施工方法は、既存の構造物の柱の交換に適用してもよいし、梁及び基礎が既設された新設の構造物の柱の施工に用いてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 高架橋
13 梁
14 基礎
15、15A、15B、15C 柱
17A、17B、接合部
17C アンカー鉄筋
17D 継鉄筋
151A 第1の柱部品
151B 第2の柱部品
152A 上柱部品
152B 下柱部品
153A 第1の中柱部品
153B 第2の中柱部品
154A 第1の柱部品
154B 第2の柱部品
155A 第1の補強板
155B 第2の補強板
155C 第3の補強板
156 補強管
157A 第1の補強板
157B 第2の補強板
157C 第3の補強板
158A 第1の柱部品
158B 第2の柱部品
159 補強管
C1 セメント系固化材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の隣り合う梁同士の間又は構造物の隣り合う梁と基礎との間に柱を施工する方法であって、
梁及び基礎を有する構造物を対象にし、
複数の柱部品に分割した柱を用意し、
前記構造物の隣り合う梁又は前記構造物の隣り合う梁と基礎とに前記複数の柱部品から選択した柱部品をそれぞれ接合し、
前記接合した柱部品及び残りの柱部品を組み立てて柱を完成する、
構造物の柱の施工方法。
【請求項2】
前記組み立てた柱部品の周りに補強板を巻く、請求項1に記載の構造物の柱の施工方法。
【請求項3】
前記組み立てた柱部品を囲むように補強管を配置する、請求項1又は2に記載の構造物の柱の施工方法。
【請求項4】
前記柱部品は中空であり、
前記柱部品の内部にセメント系固化材を充填する請求項1乃至3の何れか1つに記載の構造物の柱の施工方法。
【請求項5】
前記柱部品と補強管との間にセメント系固化材を充填する、請求項3に記載の構造物の柱の施工方法。
【請求項6】
前記梁及び基礎に接合部を形成する、請求項1乃至5の何れかに1つに記載の構造物の柱の施工方法。
【請求項7】
前記接合部をアンカー鉄筋で形成する、請求項6に記載の構造物の柱の施工方法。
【請求項8】
前記アンカー鉄筋を継鉄筋と接続し、
前記アンカー鉄筋の周りに補強板を巻き、
前記補強板の内部にセメント系固化材を充填する、請求項7に記載の構造物の柱の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−185011(P2011−185011A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54532(P2010−54532)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】