構造物制震および免震方法
【課題】地震時の下部構造に作用する慣性力を軽減、減衰して上部構造に伝達し、且つ上部構造の水平変位を低減する上部構造に作用する大きな地震時慣性力の作用による下部構造の負荷を軽減することが可能な構造物制震および免震方法を提供することを目的とする。
【解決手段】構造物制震および免震方法において、建築物や橋梁等の構造物の上部構造3と下部構造2との間に、地震時前記下部構造に作用する慣性力に対して逆方向の水平力を発生させる水平力発生機構100と前記水平力発生機構に連結されたゴム系弾性体5からなる制震および免震装置1を配置し、地震時前記水平力発生機構が下部構造に作用する慣性力を逆方向の水平力に変換し前記ゴム系弾性体を前記下部構造の慣性力方向と逆方向に変形させ、上部構造に伝達される地震エネルギーを軽減すると共に上部構造及び下部構造の水平変位量を低減することを特徴とする。
【解決手段】構造物制震および免震方法において、建築物や橋梁等の構造物の上部構造3と下部構造2との間に、地震時前記下部構造に作用する慣性力に対して逆方向の水平力を発生させる水平力発生機構100と前記水平力発生機構に連結されたゴム系弾性体5からなる制震および免震装置1を配置し、地震時前記水平力発生機構が下部構造に作用する慣性力を逆方向の水平力に変換し前記ゴム系弾性体を前記下部構造の慣性力方向と逆方向に変形させ、上部構造に伝達される地震エネルギーを軽減すると共に上部構造及び下部構造の水平変位量を低減することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物や橋梁等の構造物の制震および免震方法において、地震時に下部構造に作用する慣性力を軽減、減衰して上部構造に伝達し、かつ上部構造の水平変位を低減することが可能な構造物制震および免震方法に関する。
【背景技術】
【0002】
兵庫県南部地震以降、高減衰ゴム系の免震支承や鉛プラグ入り積層ゴム支承等を用いて長周期化と高減衰化により地震力の低減と耐震性の向上を図る免震構造が一般的に採用されるようになってきている。機能分離型の支承構造として、鉛直荷重を受け持つ鉛直荷重支持支承と水平力を受け持つ水平力分散支承を組み合わせた支承構造が採用される事例が増えつつある。
【0003】
また、建物の制震装置として、ばねと錘とダンパーを用い、錘を建物の揺れに同調させて建物の揺れを打ち消す力を発生させるアクティブ制震システムや、円弧レールとローラを組み合わせた転がり支承の上に錘を載せ、建物の揺れを利用して錘を揺らし、建物の揺れの固有周期と錘の揺れの周期が同じになるように設定して、錘の揺れが建物の揺れを打ち消す方向に揺れるパッシブ制震システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−140976号公報
【特許文献2】特開2001−227197号公報
【特許文献3】特開平7−139220号公報
【特許文献4】特開平10−82208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の支承構造は、図12に示すように、地震時に建築物や橋梁等の構造物には下部構造2に慣性力が作用し、その慣性力が積層ゴム25を有する支承装置24を介して上部構造3に伝達される。その際、積層ゴム25は図11に示すように下部構造2の慣性力の方向と同じ方向に弾性変形する。上部構造3に伝達された地震エネルギーは、加速度成分が加わり矢印で示す大きな地震時慣性力として上部構造3に作用する。上部構造3に作用する地震時慣性力は、積層ゴム25を有する支承24を介して下部構造2に伝達される。下部構造2には、上部構造3の地震時慣性力と同方向の矢印で示すFという大きな慣性力が作用する。上部構造に作用する慣性力により支承装置24が破壊されるだけでなく、橋脚、橋台、基礎構造等の下部構造2に作用する大きな慣性力により下部構造2自体が損傷する恐れがある。また、上部構造3には大きな水平変位が発生する。上部構造の大きな水平変位に対してはその変位を吸収するためのダンパーや変位制限装置、落橋防止装置等が必要となる。下部構造に負荷される大きな慣性力により下部構造2に損傷を与えないために下部構造2の設計強度を大きくする必要がある。下部構造2の設計強度を大きくするためには、基礎杭の本数の増加や橋脚や橋台の各種寸法、配筋量等を増加する必要がある。そのため、既存橋梁又は既存建築物の耐震補強のケースにおいても、新設構造物の構築のケースにおいても多くの施工日数と多額の費用が必要となるという問題を有する。
【0006】
また、建物の制震装置としてのアクティブ制震システムとパッシブ制震システムは、共に建物の上層部に配置し、建物の上層部の揺れを軽減するものであり、制震の制御が複雑であり、且つM構造物の下部構造と上部構造の間に配置して、地震時の下部構造の慣性力を軽減、減衰して上部構造に伝達する制震および免震装置としては使用できないものであった。
【0007】
本発明は、上記従来の問題を解決するものであって、地震時の下部構造に作用する慣性力を軽減、減衰して上部構造に伝達し、且つ上部構造の水平変位を低減し、上部構造に作用する大きな地震時慣性力の作用による下部構造の負荷を軽減することが可能な構造物制震および免震方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の構造物制震および免震方法は、前記課題を解決するために、建築物や橋梁等の構造物の上部構造と下部構造との間に、地震時前記下部構造に作用する慣性力に対して逆方向の水平力を発生させる水平力発生機構と前記水平力発生機構に連結されたゴム系弾性体からなる制震および免震装置を配置し、地震時前記水平力発生機構が下部構造に作用する慣性力を逆方向の水平力に変換し前記ゴム系弾性体を前記下部構造の慣性力方向と逆方向に変形させ、上部構造に伝達される地震エネルギーを軽減すると共に上部構造及び下部構造の水平変位量を低減することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の構造物制震および免震方法は、前記水平力発生機構と前記ゴム系弾性体からなる制震および免震装置を、多径間連続桁橋の橋脚、橋台等の下部構造と主桁等の上部構造との間に配置し、連続した上部構造の水平変位量を低減し、且つ、複数の下部構造の水平変位量を低減することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の構造物制震および免震方法は、前記水平力発生機構と前記ゴム系弾性体からなる制震および免震装置と、バッファー、免震支承、固定支承、可動支承およびダンパーの内のいずれかを多径間連続桁橋の橋脚、橋台等の下部構造と主桁等の上部構造との間に混在させて配置し、連続した上部構造の水平変位量を低減し、且つ、複数の下部構造の水平変位量を低減することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の構造物制震および免震方法は、前記水平力発生機構と前記ゴム系弾性体からなる制震および免震装置と、バッファー、免震支承、固定支承、可動支承およびダンパーの内の少なくとも1つを、橋脚、橋台等の下部構造と主桁等の上部構造との間に組み合わせて配置し、上部構造および下部構造の水平変位量を低減することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の構造物制震および免震方法は、前記制震および免震装置は、上部構造または下部構造の一方に固定したゴム系弾性体と、前記ゴム系弾性体が固定された構造側の前記ゴム系弾性体の外側に一端を固定した中央垂直軸と、前記中央垂直軸に回転自在に軸支され、両端に長穴、U字状切り欠き又はスライド溝等のスライド係合部を形成したリンク部材と、前記リンク部材の一方の側の前記スライド係合部に係合される前記ゴム系弾性体に一端を固定した第1垂直軸と、前記リンク部材の他方の側の前記スライド係合部に係合される前記ゴム系弾性体の固定されない構造側に一端を固定した第2垂直軸とからなる水平力発生機構と、を備え、地震時に下部構造に作用する慣性力を前記リンク部材の回動により逆方向の水平力に変換して上部構造に伝達すると共に、前記ゴム系弾性体を前記下部構造の慣性力方向と逆方向に変形させることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の構造物制震および免震方法は、前記中央垂直軸と前記第1垂直軸間の距離と前記中央垂直軸と前記第2垂直軸間の距離およびその比を、上部構造の変位制限またはゴム系弾性体の弾性変形制限の設計要件に応じた変数としたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の構造物制震および免震方法は、一方のリンク部材と他方のリンク部材を直交する方向に配置したことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の構造物制震および免震方法は、前記制震および免震装置は、上部構造または下部構造の一方に配置される慣性力方向に直線的に延びるギヤレールと、他方の構造に回転自在に配置されるギヤと、前記上部構造及び下部構造に上下が固定されるゴム系弾性体と、を備え、前記ギヤと前記ギヤレールを噛み合わせ、地震時に下部構造に作用する慣性力を前記ギヤレールと前記ギヤの噛合しながら相対移動することで逆方向の水平力に変換して上部構造に伝達すると共に、前記ゴム系弾性体を前記下部構造の慣性力方向と逆方向に変形させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
建築物や橋梁等の構造物の上部構造と下部構造との間に、地震時前記下部構造に作用する慣性力に対して逆方向の水平力を発生させる水平力発生機構と前記水平力発生機構に連結されたゴム系弾性体からなる制震および免震装置を配置し、地震時前記水平力発生機構が下部構造に作用する慣性力を逆方向の水平力に変換して前記ゴム系弾性体を前記下部構造の慣性力方向と逆方向に変形させ、上部構造に伝達される地震エネルギーを軽減すると共に上部構造及び下部構造の水平変位量を低減することで、下部構造の地震時慣性力による負荷を軽減することで下部構造の耐震設計強度を低く抑えることが可能となる。また、上部構造及び下部構造の水平変位量を抑えることができるため伸縮装置遊間が狭くすることができ、したがって装置のメンテナンス期間を長くすることが可能となる。
水平力発生機構とゴム系弾性体からなる制震および免震装置を、多径間連続桁橋の橋脚、橋台等の下部構造と主桁等の上部構造との間に配置し、連続した上部構造の水平変位量を低減し、且つ、複数の下部構造の水平変位量を低減することで、地震時の下部構造に作用する慣性力が逆方向の水平力に変換されて減衰して上部構造に伝達されると共に、上部構造及び下部構造の水平変位量を低減することが可能になる。
水平力発生機構とゴム系弾性体からなる制震および免震装置と、バッファー、免震支承、固定支承、可動支承およびダンパーの内のいずれかを多径間連続桁橋の橋脚、橋台等の下部構造と主桁等の上部構造との間に混在させて配置し、連続した上部構造の水平変位量を低減し、且つ、複数の下部構造の水平変位量を低減することで、制震および免震装置を配置した造主桁に作用する地震時慣性力の方向と、バッファー、免震支承、固定支承、可動支承およびダンパーの内のいずれかを配置した主桁に作用する地震時慣性力の方向とが互いに逆方向となるため、連続した主桁に作用する地震時慣性力が互いに干渉し主桁全体としての地震時慣性力を低減すると共に、上部構造及び下部構造の水平変位量を低減することが可能になる。
水平力発生機構とゴム系弾性体からなる制震および免震装置と、バッファー、免震支承、固定支承、可動支承およびダンパーの内の少なくとも1つを、橋脚、橋台等の下部構造と主桁等の上部構造との間に組み合わせて配置し、上部構造および下部構造の水平変位量を低減することで、地震時の下部構造に作用する慣性力が逆方向の水平力に変換されて減衰して上部構造に伝達されると共に、上部構造及び下部構造の水平変位量を低減することが可能になる。
制震および免震装置は、上部構造または下部構造の一方に固定したゴム系弾性体と、前記ゴム系弾性体が固定された構造側の前記ゴム系弾性体の外側に一端を固定した中央垂直軸と、前記中央垂直軸に回転自在に軸支され、両端に長穴、U字状切り欠き又はスライド溝等のスライド係合部を形成したリンク部材と、前記リンク部材の一方の側の前記スライド係合部に係合される前記ゴム系弾性体に一端を固定した第1垂直軸と、前記リンク部材の他方の側の前記スライド係合部に係合される前記ゴム系弾性体の固定されない構造側に一端を固定した第2垂直軸とからなる水平力発生機構と、を備え、地震時に下部構造に作用する慣性力を前記リンク部材の回動により逆方向の水平力に変換して上部構造に伝達すると共に、前記ゴム系弾性体を前記下部構造の慣性力方向と逆方向に変形させることで、簡単な構成で下部構造からの慣性力に対して逆方向の水平力を発生させ、ゴム系弾性体を下部構造の慣性力方向と逆方向に変形し、地震エネルギーを軽減して上部構造に伝達するので上部構造の地震時慣性力を低減し、上部構造の地震時慣性力による下部構造の負荷を軽減することが可能となる。また、上部構造及び下部構造の水平変位量を抑えることができるため伸縮装置遊間が狭くすることができ、したがって装置のメンテナンス期間を長くすることが可能となる。
中央垂直軸と第1垂直軸間の距離と中央垂直軸と第2垂直軸間の距離およびその比を、上部構造の変位制限またはゴム系弾性体の弾性変形制限の設計要件に応じた変数としたことで、上部構造の水平変位を制限したいという要件や弾性体の弾性変形を制限したいというような各種設計要件に対応することが可能となる。
一方のリンク部材と他方のリンク部材を直交する方向に配置した構成により、全方向の慣性力に対して対応可能な水平力を発生させる機構とすることが可能となる。
上部構造または下部構造の一方に配置される慣性力方向に直線的に延びるギヤレールと、他方の構造に回転自在に配置されるギヤと、前記上部構造及び下部構造に上下が固定されるゴム系弾性体と、を備え、前記ギヤと前記ギヤレールを噛み合わせ、地震時に下部構造に作用する慣性力を前記ギヤレールと前記ギヤの噛合しながら相対移動することで逆方向の水平力に変換して上部構造に伝達すると共に、前記ゴム系弾性体を前記下部構造の慣性力方向と逆方向に変形させることで、簡単な構成で下部構造からの慣性力に対して逆方向の水平力を発生させ、ゴム系弾性体を下部構造の慣性力方向と逆方向に変形し、地震エネルギーを軽減して上部構造に伝達するので上部構造の地震時慣性力を低減し、上部構造の地震時慣性力による下部構造の負荷を軽減することが可能となる。また、上部構造及び下部構造の水平変位量を抑えることができるため伸縮装置遊間が狭くすることができ、したがって装置のメンテナンス期間を長くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の構造物免震方法の実施形態を示す図である。
【図2】本発明の構造物免震方法の実施形態を示す図である。
【図3】本発明の構造物免震方法の実施形態を示す図である。
【図4】本発明の構造物免震方法の実施形態を示す図である。
【図5】本発明の構造物免震方法の実施形態を示す図である。
【図6】本発明の構造物免震方法の実施形態を示す図である。
【図7】本発明の構造物免震方法の実施形態を示す図である。
【図8】本発明の構造物免震方法の実施形態を示す図である。
【図9】本発明の構造物免震方法の実施形態を示す図である。
【図10】本発明の構造物免震方法の実施形態を示す図である。
【図11】本発明の構造物免震方法の実施形態を示す図である。
【図12】従来技術を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を図により説明する。図1は、本発明の構造物制震および免震方法の作用を説明するための模式図である。本発明の構造物制震および免震方法は、建築物や橋梁の構造物に適用するものであるが、実施形態として橋梁に用いた例で説明する。
【0019】
本発明の構造物制震および免震方法は、橋脚や橋台等の下部構造2と橋桁からなる上部構造3との間に水平力発生機構100と、水平力発生機構100に連結されたゴム系弾性体5を備えた制震および免震装置1が配置される。ゴム系弾性体5としては、ゴム、ゴムと補強鋼板を鉛直方向に積層した積層ゴム、高減衰性ゴム、積層ゴムに鉛プラグを挿入した鉛プラグ入り積層ゴム等の弾性変形可能なものから選択する。地震時に下部構造2に作用する慣性力は、水平力発生機構100およびゴム系弾性体5を介して上部構造3に伝達される。水平力発生機構100は、下部構造2に作用する慣性力に対して逆方向の水平力に変換し、水平力発生機構100に連結されたゴム系弾性体5を下部構造2に作用する慣性力方向と逆方向に変形させて上部構造3に伝達するので、下部構造2の慣性力のエネルギーを消費させて上部構造3に伝達する。また、水平力発生機構100による逆方向の水平力への変換の際、ゴム系弾性体5は下部構造2に作用する慣性力の方向と逆方向に変形する。
【0020】
水平力発生機構100による水平力の発生とゴム系弾性体5の変形により下部構造2に作用する慣性力は軽減され上部構造3に伝達され、上部構造3の水平変位量も低減する。ゴム系弾性体5を高減衰性ゴムや鉛プラグ入り積層ゴムとすることで地震エネルギーが減衰され免震効果が向上する。軽減されて上部構造3に伝達された下部構造2に作用する慣性力と逆方向の水平力は、上部構造3に作用する加速度成分が加わり矢印に示すような地震時慣性力が上部構造3に作用する。上部構造2には軽減された下部構造2の慣性力が伝達されるため、上部構造3に作用する地震時慣性力も低減し、上部構造3の水平変位量も低減する。また、上部構造3の地震時慣性力に対して、ゴム系弾性体5が下部構造2に作用する慣性力と逆方向に弾性変形するので、上部構造3の地震時慣性力に対する抵抗力となり、下部構造2に矢印に示す上部構造3に作用する地震時慣性力と逆方向のFaという軽減された負荷慣性力が作用し、下部構造2の水平変位量も低減する。下部構造2に作用する負荷慣性力Faは、図12に示される従来技術の上部構造3の地震時慣性力により下部構造2に作用する負荷慣性力Fに比較して、水平力発生機構100による逆方向の水平力への変換に伴う抵抗およびゴム系弾性体5の下部構造2の慣性力方向と逆方向への変形に伴う抵抗により大幅に減衰されるため、F>Faの関係になる。
【0021】
地震時に上部構造3に作用する地震時慣性力による下部構造2の負荷が大幅に軽減されることで、下部構造の耐震設計強度の増加を抑制することが可能となる。また、水平力発生機構100及びゴム系弾性体によるにより、上部構造3の水平変位量を抑制できるので、上部構造3に設置される伸縮装置遊間が狭く、したがって装置のメンテナンス期間を長くすることが可能となる。
【0022】
図2は、橋台2E,2Fの間に複数の橋脚2A、2B、2C、2Dを配置し、下部構造2である橋台2E,2Fと橋脚2A、2B、2C、2D上に上部構造3である主桁を支持した多径間連続橋に本発明の構造物制震および免震方法を多径間連続橋に適用した実施例を示す図である。
【0023】
橋台2E,2Fと複数の橋脚2A、2B、2C、2D(下部構造2)に連続した主桁(上部構造3)が支持される多径間連続橋に水平力発生機構100とゴム系弾性体5からなる制震および免震装置1が配置される。地震時に下部構造3である橋台2E,2Fと複数の橋脚2A、2B、2C、2Dには、矢印で示す慣性力が作用する。
【0024】
地震時、下部構造3である橋台2E,2Fと各橋脚2A、2B、2C、2Dに作用する慣性力は、水平力発生機構100とゴム系弾性体5からなる制震および免震装置1を介して、軽減され逆方向の水平力として上部構造3である主桁に伝達される。軽減され上部構造3に伝達される水平力は上部構造3の水平変位量を低減し、連続した主桁3全体に作用する地震時慣性力を低減し、橋台2E,2Fと各橋脚2A、2B、2C、2Dの地震時慣性力による負荷を軽減し、下部構造2の耐震設計強度を低く抑えることが可能となる。また、上部構造3及び下部構造2の水平変位量を低減することで、伸縮装置遊間が狭くすることができ、したがって装置のメンテナンス期間を長くすることが可能となる。
【0025】
図3は、多径間連続橋に本発明の構造物制震および免震方法を適用した他の実施例を示す図である。
【0026】
多径間連続橋の下部構造2である橋台2e,2fと複数の橋脚2a、2b、2c、2dと上部構造3である主桁との間に、水平力発生機構100とゴム系弾性体5からなる制震および免震装置1と、バッファー、免震支承、固定支承、可動支承、ダンパーの内のいずれかを混在して配置する。
【0027】
水平力発生機構100とゴム系弾性体5からなる制震および免震装置1を配置した橋脚2a、2c上の上部構造3には、橋脚2a、2cに作用する慣性力が逆方向の水平力に変換され、軽減されその水平変位量が低減されて伝達される。また、バッファー、免震支承、固定支承、可動支承、ダンパーの内のいずれか23を配置した橋台2e,2fと橋脚2b、2d上の上部構造3には、橋台2e,2fと橋脚2b、2dに作用する慣性力と同方向の地震時慣性力が作用する。その結果、連続した上部構造3に方向の異なる地震時慣性力が作用し、方向の異なる地震時慣性力同士が干渉し合い、連続した上部構造3全体としての地震時慣性力を低減すると共に上部構造3全体の水平変位量を低減する。その結果、下部構造2である橋台2e,2fと各橋脚2a、2b、2c、2dの地震時慣性力による負荷を軽減し、下部構造2の耐震設計強度を低く抑えることが可能となる。また、上部構造3及び下部構造2の水平変位量を低減することで、伸縮装置遊間が狭くすることができ、したがって装置のメンテナンス期間を長くすることが可能となる。
【0028】
図4は、本発明の構造物制震および免震方法を、橋脚、橋台等の1つの下部構造2と上部構造3との間に配置した別の実施例を示す図である。
【0029】
この実施例では、橋脚、橋台等の1つの下部構造2と主桁等の上部構造3との間に、水平力発生機構100とゴム系弾性体5からなる制震および免震装置1と、バッファー、免震支承、固定支承、可動支承、ダンパーの内のいずれ23の少なくとも1つを組み合わせて配置する。地震時、下部構造2である橋脚、橋台等に作用する慣性力は、水平力発生機構100とゴム系弾性体5からなる制震および免震装置1を介して、軽減され逆方向の水平力として上部構造3である主桁に伝達される。軽減され上部構造3に伝達される水平力は上部構造3の水平変位量を低減し、上部構造に作用する地震時慣性力を低減し、下部構造2の地震時慣性力による負荷を軽減し、下部構造2の耐震設計強度を低く抑えることが可能となる。また、上部構造3及び下部構造2の水平変位量を低減することで、伸縮装置遊間が狭くすることができ、したがって装置のメンテナンス期間を長くすることが可能となる。
【0030】
図5、図6は、本発明の構造物制震および免震方法に用いる制震および免震装置1の第1実施形態を示す図である。第1実施形態では、ゴム系弾性体5を下部構造2側に固定した実施例に基づいて説明するが、ゴム系弾性体5を上部構造3側に固定しても良い。
【0031】
水平力発生機構100とゴム系弾性体5からなる制震および免震装置1は、下部構造2と上部構造3との間に設置される。下部構造2にはベースプレート4がアンカーボルト(図示せず)等の固定手段を介して設置される。ベースプレート4上には、ゴム系弾性体5とリンク部材支持台7が設置される。ゴム系弾性体5として、ゴム、ゴムと補強鋼板を鉛直方向に積層した積層ゴム、高減衰性ゴム、積層ゴムに鉛プラグを挿入した鉛プラグ入り積層ゴム等の弾性変形可能なものを用いる。ゴム系弾性体5上にはゴム系弾性体5の平面形状よりも大きい所定厚みの連結鋼板6が固定される。
【0032】
ベースプレート4上のゴム系弾性体5の両側に互いに平行に伸びるリンク部材支持台7が設置される。リンク支持台7に中央垂直軸10の一端が固定される。下部構造2側に固定されたゴム系弾性体5と一体化された連結鋼板6に第1垂直軸10の一端が固定される。上部構造3に固定された上鋼板9に第2垂直軸14の一端が固定される。
【0033】
リンク部材支持台7に水平力発生機構100を構成するリンク部材8が中央垂直軸10を介して回動可能に軸支される。図5、図6に示される実施形態では、リンク部材支持台7にそれぞれ1個のリンク部材8を配置しているが、リンク部材8の数は構造物の規模等により増やしても良い。
【0034】
リンク部材8両端部側に、第1スライド係合部11と第2スライド係合部12である長穴、U字状切り欠き又はスライド溝が形成される。第1スライド係合部11には、下部構造2側に固定されたゴム系弾性体5と一体化された連結鋼板6に一端を固定した第1垂直軸13が第1スライド係合部11に沿って相対移動可能に係合される。第1垂直軸13の連結鋼板6への固定位置は、ゴム系弾性体5の外側に張り出した連結鋼板6の部分とする。ゴム系弾性体5として、ゴム、ゴムと補強鋼板を鉛直方向に積層した積層ゴム、高減衰性ゴム、積層ゴムに鉛プラグを挿入した鉛プラグ入り積層ゴム等の弾性変形可能なものを用いる。
【0035】
第2スライド係合部12には、上部構造3に固定された上鋼板9に一端を固定した第2垂直軸14が第2長穴12に沿って相対移動可能に係合する。この実施形態では、第1垂直軸13と第2垂直軸14の中央垂直軸10からの距離が同じになるように設定しているが、後述するように、中央垂直軸10と第1垂直軸13との距離と中央垂直軸10と第2垂直軸14との距離およびその比は、各種設計要件に応じた変数として設定される。
【0036】
地震時に下部構造2に作用する慣性力は、下部構造2に固定されたゴム系弾性体5と一体化された連結鋼板6に一端を固定された第1垂直軸13と第1スライド係合部11との係合によりリンク部材8に伝達される。第1垂直軸13に伝達された下部構造2の慣性力によりリンク部材8は中央垂直軸10を軸として回動する。第1垂直軸13と第1スライド係合部11の係合部の位置は、リンク部材8の中央垂直軸10を軸とした回動によりその軌跡が円弧状となるため第1スライド係合部11に沿って相対移動する。リンク部材8の中央垂直軸10を軸とした回動力は、第2垂直軸14と第2スライド係合部12の係合により上部構造3に下部構造3に作用する慣性力と逆方向の水平力に変換して伝達される。水平力発生機構100による下部構造に作用する慣性力と逆方向の水平力への変換の際の力は、ゴム系弾性体5を下部構造2に作用する慣性力と逆方向に変形させる。リンク部材8の回動に伴う抵抗力およびゴム系弾性体5の変形により抵抗力により下部構造に作用する慣性力を軽減させ、水平変位量が低減されて上部構造3に伝達する。ゴム系弾性体として、高減衰性ゴム、鉛プラグ入り積層ゴムを用いることにより地震エネルギーの減衰効果を高めることが可能となる。
【0037】
上部構造3に軽減され、水平変位量が低減されて伝達した水平力は、加速度成分が加わり上部構造3に地震時慣性力として作用する。地震時に上部構造3に作用する地震時慣性力に対して、ゴム系弾性体5の下部構造3に作用する慣性力と逆方向の変形が抵抗力となり、下部構造に作用する負荷慣性力をより低減する。下部構造2の上部構造2の地震時慣性力による負荷が軽減されることで下部構造2の耐震補強強度の増加を抑制することが可能となる。また、水平力発生機構100により発生する水平力により上部構造3の水平方向の変位を低く抑えることができる。そのため、上部構造3に設置される伸縮装置遊間が狭く、したがって装置のメンテナンス期間を長くすることが可能となる。
【0038】
図7、図8は、中央垂直軸10と第1垂直軸13との距離と中央垂直軸10と第2垂直軸14との距離およびその比を設計要件に応じた変数として設定した実施形態を示す図である。
【0039】
図7に示す実施形態は、リンク部材8を回動自在に軸支する中央垂直軸10と第2スライド係合部12に係合される上部構造3に固定される第2垂直軸14間の距離が、中央垂直軸10と第1スライド係合部11に係合される下部構造2に固定される第1垂直軸13間との距離より短くしている。上部構造3に固定される第2垂直軸14と中央垂直軸10間の距離を短く設定することにより上部構造3の水平変位を制限することが可能となる。
【0040】
図8に示す実施形態は、リンク部材8を回動自在に軸支する中央垂直軸10と第1スライド係合部11に係合される下部構造2に固定される第1垂直軸13間の距離が、中央垂直軸10と第2スライド係合部12に係合される上部構造3に固定される第2垂直軸14間の距離より短くしている。下部構造2に固定されたゴム系弾性体5と一体化された連結鋼板6に固定される第1垂直軸13と中央垂直軸10間の距離を短く設定することにより弾性体5の弾性変形を制限することが可能となる。
【0041】
図7、図8に示すように、中央垂直軸10と第1垂直軸13間の距離と中央垂直軸10と第2垂直軸14間の距離とその比の関係は、支承設計の際の各種設計要件に応じて設定する。
【0042】
図9は、本発明の構造物制震および免震方法に用いる制震および免震装置1の第2実施形態を示す図である。第2実施形態では、ゴム系弾性体5を下部構造2側に固定した実施例に基づいて説明するが、ゴム系弾性体5を上部構造3側に固定しても良い。
【0043】
第2実施形態では、ゴム系弾性体5を挟んで一方の1対のリンク部材支持台7を平行に設置し、ゴム系弾性体5を挟んで他方の1対のリンク部材支持台7を平行に設置する。一方の一対のリンク部材7と他方の一対のリンク部材7をゴム系弾性体5を挟んで直交する位置に設置する。一方の一対のリンク部材支持台7に、一方の直線状のリンク部材8が中央垂直軸10により回動自在に軸支される。他方の一対のリンク部材に、他方の直線状のリンク部材8が中央垂直軸10により回動自在に軸支される。ゴム系弾性体5を挟んで、互いに直交する方向にそれぞれリンク部材8を配置することにより、下部構造2に作用する全方向の慣性力に対して対応が可能な制震および免震装置1とすることができる。他の構成は、図5,図6に示される第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0044】
図10、図11は、本発明の水平力発生機構100とゴム系弾性体5からなる制震および免震装置1の第3実施形態を示す図である。
【0045】
第3実施形態では、下部構造2にアンカーボルト15で固定されるベースプレート4にゴム系弾性体5の下面が固定される。ゴム系弾性体5として、ゴム、ゴムと補強鋼板を鉛直方向に積層した積層ゴム、高減衰性ゴム、積層ゴムに鉛プラグを挿入した鉛プラグ入り積層ゴム等の弾性変形可能なものを用いる。ベースプレート4に配置したゴム系弾性体5の慣性力方向の両側にサイドブロック16が設置される。サイドブロック16には、サイドブロック16の表面から一部が突き出す軸部材17が固定される。軸部材17のサイドブロック17の表面から突き出した部分に、水平力発生機構100を構成するギヤ18を回転自在に軸支する。
【0046】
上部構造3側に固定される上鋼板19の下面には、慣性力方向に平行に延びる2つの溝部20が形成される。溝部20の内側の両側壁部には、慣性力方向に延びる水平力発生機構100を構成するギヤレール21が配置される。上鋼板19の2つの溝部20の間でゴム系弾性体5の上面を固定ボルト等の固定手段を介して固定する。下部構造2側のギヤ18と上部構造3側のギヤレール21を噛合わせる。第3実施形態では、ギヤ18を下部構造2側に配置し、ギヤレール21を上部構造3側に配置しているが、その配置を逆にしても良い。
【0047】
地震時に下部構造2に作用する慣性力により、下部構造2側に配置されたギヤ18は上部構造3側に配置されたギヤレール21が噛合しつつ回転する。ギヤ18のギヤレール21との噛合しながらの回転により、上部構造3と下部構造3が相対移動する。ギヤ18とギヤレール21の噛合しながらの回転による相対移動に伴い、下部構造2の慣性力と逆方向の水平力が発生し上部構造3に伝達される。水平力発生機構100による下部構造2の慣性力と逆方向の水平力が発生に伴い、ゴム系弾性体5が、下部構造2に作用する慣性力方向と逆方向に変形する。
【0048】
ギヤ18とギヤレール21の噛合しながらの回転による下部構造2と上部構造3の相対移動による下部構造2の慣性力と逆方向の水平力が発生と、ゴム系弾性体5の下部構造2の慣性力方向と逆方向の変形により、下部構造に作用する慣性力が軽減され、下部構造2に作用する慣性力とは逆方向の水平力として上部構造3に伝達される。
【0049】
上部構造3に軽減されて伝達した水平力は、加速度成分が加わり上部構造3に地震時慣性力が作用する。地震時に上部構造3に作用する地震時慣性力に対して、ゴム弾性体5の下部構造3に作用する慣性力と逆方向の変形が抵抗力となり、下部構造2に作用する負荷慣性力をより低減する。下部構造2の上部構造3に作用する地震時慣性力による負荷が軽減されることで下部構造2の耐震補強強度の増加を抑制することが可能となる。また、水平力発生機構100により発生する水平力により上部構造3の水平方向の変位を低く抑えることができる。そのため、上部構造3に設置される伸縮装置遊間が狭く、したがって装置のメンテナンス期間を長くすることが可能となる。ゴム系弾性体5として、高減衰性ゴム、鉛プラグ入り積層ゴムを用いることにより地震エネルギーの減衰効果を高めることが可能となる。
【0050】
以上のように、本発明の構造物制震・振免震方法によれば、水平力発生機構による下部構造の慣性力方向逆方向の水平力への変換とゴム系弾性体の下部構造の慣性力方向と逆方向の変形により地震エネルギーを軽減して上部構造に伝達するので、上部構造に作用する地震時慣性力を低減し、下部構造の地震時慣性力による負荷を軽減することで下部構造の耐震設計強度を低く抑えることが可能となる。また、上部構造及び下部構造の水平変位量を抑えることができるため伸縮装置遊間が狭くすることができ、したがって装置のメンテナンス期間を長くすることが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1:制震および免震装置、2:下部構造、3:上部構造、4:ベースプレート、5:ゴム系弾性体、6:連結鋼板、7:リンク部材支持台、8:リンク部材、9:上鋼板、10:中央垂直軸、11:第1スライド係合部、12:第2スライド係合部、13:第1垂直軸、14:第2垂直軸、15:アンカーボルト、16:サイドブロック、17:軸部材、18:ギヤ、19:上鋼板 、20:溝部、21:ギヤレール、23:バッファー、免震支承、固定支承、可動支承、ダンパーの内のいずれか、24:支承装置、25:積層ゴム
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物や橋梁等の構造物の制震および免震方法において、地震時に下部構造に作用する慣性力を軽減、減衰して上部構造に伝達し、かつ上部構造の水平変位を低減することが可能な構造物制震および免震方法に関する。
【背景技術】
【0002】
兵庫県南部地震以降、高減衰ゴム系の免震支承や鉛プラグ入り積層ゴム支承等を用いて長周期化と高減衰化により地震力の低減と耐震性の向上を図る免震構造が一般的に採用されるようになってきている。機能分離型の支承構造として、鉛直荷重を受け持つ鉛直荷重支持支承と水平力を受け持つ水平力分散支承を組み合わせた支承構造が採用される事例が増えつつある。
【0003】
また、建物の制震装置として、ばねと錘とダンパーを用い、錘を建物の揺れに同調させて建物の揺れを打ち消す力を発生させるアクティブ制震システムや、円弧レールとローラを組み合わせた転がり支承の上に錘を載せ、建物の揺れを利用して錘を揺らし、建物の揺れの固有周期と錘の揺れの周期が同じになるように設定して、錘の揺れが建物の揺れを打ち消す方向に揺れるパッシブ制震システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−140976号公報
【特許文献2】特開2001−227197号公報
【特許文献3】特開平7−139220号公報
【特許文献4】特開平10−82208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の支承構造は、図12に示すように、地震時に建築物や橋梁等の構造物には下部構造2に慣性力が作用し、その慣性力が積層ゴム25を有する支承装置24を介して上部構造3に伝達される。その際、積層ゴム25は図11に示すように下部構造2の慣性力の方向と同じ方向に弾性変形する。上部構造3に伝達された地震エネルギーは、加速度成分が加わり矢印で示す大きな地震時慣性力として上部構造3に作用する。上部構造3に作用する地震時慣性力は、積層ゴム25を有する支承24を介して下部構造2に伝達される。下部構造2には、上部構造3の地震時慣性力と同方向の矢印で示すFという大きな慣性力が作用する。上部構造に作用する慣性力により支承装置24が破壊されるだけでなく、橋脚、橋台、基礎構造等の下部構造2に作用する大きな慣性力により下部構造2自体が損傷する恐れがある。また、上部構造3には大きな水平変位が発生する。上部構造の大きな水平変位に対してはその変位を吸収するためのダンパーや変位制限装置、落橋防止装置等が必要となる。下部構造に負荷される大きな慣性力により下部構造2に損傷を与えないために下部構造2の設計強度を大きくする必要がある。下部構造2の設計強度を大きくするためには、基礎杭の本数の増加や橋脚や橋台の各種寸法、配筋量等を増加する必要がある。そのため、既存橋梁又は既存建築物の耐震補強のケースにおいても、新設構造物の構築のケースにおいても多くの施工日数と多額の費用が必要となるという問題を有する。
【0006】
また、建物の制震装置としてのアクティブ制震システムとパッシブ制震システムは、共に建物の上層部に配置し、建物の上層部の揺れを軽減するものであり、制震の制御が複雑であり、且つM構造物の下部構造と上部構造の間に配置して、地震時の下部構造の慣性力を軽減、減衰して上部構造に伝達する制震および免震装置としては使用できないものであった。
【0007】
本発明は、上記従来の問題を解決するものであって、地震時の下部構造に作用する慣性力を軽減、減衰して上部構造に伝達し、且つ上部構造の水平変位を低減し、上部構造に作用する大きな地震時慣性力の作用による下部構造の負荷を軽減することが可能な構造物制震および免震方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の構造物制震および免震方法は、前記課題を解決するために、建築物や橋梁等の構造物の上部構造と下部構造との間に、地震時前記下部構造に作用する慣性力に対して逆方向の水平力を発生させる水平力発生機構と前記水平力発生機構に連結されたゴム系弾性体からなる制震および免震装置を配置し、地震時前記水平力発生機構が下部構造に作用する慣性力を逆方向の水平力に変換し前記ゴム系弾性体を前記下部構造の慣性力方向と逆方向に変形させ、上部構造に伝達される地震エネルギーを軽減すると共に上部構造及び下部構造の水平変位量を低減することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の構造物制震および免震方法は、前記水平力発生機構と前記ゴム系弾性体からなる制震および免震装置を、多径間連続桁橋の橋脚、橋台等の下部構造と主桁等の上部構造との間に配置し、連続した上部構造の水平変位量を低減し、且つ、複数の下部構造の水平変位量を低減することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の構造物制震および免震方法は、前記水平力発生機構と前記ゴム系弾性体からなる制震および免震装置と、バッファー、免震支承、固定支承、可動支承およびダンパーの内のいずれかを多径間連続桁橋の橋脚、橋台等の下部構造と主桁等の上部構造との間に混在させて配置し、連続した上部構造の水平変位量を低減し、且つ、複数の下部構造の水平変位量を低減することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の構造物制震および免震方法は、前記水平力発生機構と前記ゴム系弾性体からなる制震および免震装置と、バッファー、免震支承、固定支承、可動支承およびダンパーの内の少なくとも1つを、橋脚、橋台等の下部構造と主桁等の上部構造との間に組み合わせて配置し、上部構造および下部構造の水平変位量を低減することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の構造物制震および免震方法は、前記制震および免震装置は、上部構造または下部構造の一方に固定したゴム系弾性体と、前記ゴム系弾性体が固定された構造側の前記ゴム系弾性体の外側に一端を固定した中央垂直軸と、前記中央垂直軸に回転自在に軸支され、両端に長穴、U字状切り欠き又はスライド溝等のスライド係合部を形成したリンク部材と、前記リンク部材の一方の側の前記スライド係合部に係合される前記ゴム系弾性体に一端を固定した第1垂直軸と、前記リンク部材の他方の側の前記スライド係合部に係合される前記ゴム系弾性体の固定されない構造側に一端を固定した第2垂直軸とからなる水平力発生機構と、を備え、地震時に下部構造に作用する慣性力を前記リンク部材の回動により逆方向の水平力に変換して上部構造に伝達すると共に、前記ゴム系弾性体を前記下部構造の慣性力方向と逆方向に変形させることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の構造物制震および免震方法は、前記中央垂直軸と前記第1垂直軸間の距離と前記中央垂直軸と前記第2垂直軸間の距離およびその比を、上部構造の変位制限またはゴム系弾性体の弾性変形制限の設計要件に応じた変数としたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の構造物制震および免震方法は、一方のリンク部材と他方のリンク部材を直交する方向に配置したことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の構造物制震および免震方法は、前記制震および免震装置は、上部構造または下部構造の一方に配置される慣性力方向に直線的に延びるギヤレールと、他方の構造に回転自在に配置されるギヤと、前記上部構造及び下部構造に上下が固定されるゴム系弾性体と、を備え、前記ギヤと前記ギヤレールを噛み合わせ、地震時に下部構造に作用する慣性力を前記ギヤレールと前記ギヤの噛合しながら相対移動することで逆方向の水平力に変換して上部構造に伝達すると共に、前記ゴム系弾性体を前記下部構造の慣性力方向と逆方向に変形させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
建築物や橋梁等の構造物の上部構造と下部構造との間に、地震時前記下部構造に作用する慣性力に対して逆方向の水平力を発生させる水平力発生機構と前記水平力発生機構に連結されたゴム系弾性体からなる制震および免震装置を配置し、地震時前記水平力発生機構が下部構造に作用する慣性力を逆方向の水平力に変換して前記ゴム系弾性体を前記下部構造の慣性力方向と逆方向に変形させ、上部構造に伝達される地震エネルギーを軽減すると共に上部構造及び下部構造の水平変位量を低減することで、下部構造の地震時慣性力による負荷を軽減することで下部構造の耐震設計強度を低く抑えることが可能となる。また、上部構造及び下部構造の水平変位量を抑えることができるため伸縮装置遊間が狭くすることができ、したがって装置のメンテナンス期間を長くすることが可能となる。
水平力発生機構とゴム系弾性体からなる制震および免震装置を、多径間連続桁橋の橋脚、橋台等の下部構造と主桁等の上部構造との間に配置し、連続した上部構造の水平変位量を低減し、且つ、複数の下部構造の水平変位量を低減することで、地震時の下部構造に作用する慣性力が逆方向の水平力に変換されて減衰して上部構造に伝達されると共に、上部構造及び下部構造の水平変位量を低減することが可能になる。
水平力発生機構とゴム系弾性体からなる制震および免震装置と、バッファー、免震支承、固定支承、可動支承およびダンパーの内のいずれかを多径間連続桁橋の橋脚、橋台等の下部構造と主桁等の上部構造との間に混在させて配置し、連続した上部構造の水平変位量を低減し、且つ、複数の下部構造の水平変位量を低減することで、制震および免震装置を配置した造主桁に作用する地震時慣性力の方向と、バッファー、免震支承、固定支承、可動支承およびダンパーの内のいずれかを配置した主桁に作用する地震時慣性力の方向とが互いに逆方向となるため、連続した主桁に作用する地震時慣性力が互いに干渉し主桁全体としての地震時慣性力を低減すると共に、上部構造及び下部構造の水平変位量を低減することが可能になる。
水平力発生機構とゴム系弾性体からなる制震および免震装置と、バッファー、免震支承、固定支承、可動支承およびダンパーの内の少なくとも1つを、橋脚、橋台等の下部構造と主桁等の上部構造との間に組み合わせて配置し、上部構造および下部構造の水平変位量を低減することで、地震時の下部構造に作用する慣性力が逆方向の水平力に変換されて減衰して上部構造に伝達されると共に、上部構造及び下部構造の水平変位量を低減することが可能になる。
制震および免震装置は、上部構造または下部構造の一方に固定したゴム系弾性体と、前記ゴム系弾性体が固定された構造側の前記ゴム系弾性体の外側に一端を固定した中央垂直軸と、前記中央垂直軸に回転自在に軸支され、両端に長穴、U字状切り欠き又はスライド溝等のスライド係合部を形成したリンク部材と、前記リンク部材の一方の側の前記スライド係合部に係合される前記ゴム系弾性体に一端を固定した第1垂直軸と、前記リンク部材の他方の側の前記スライド係合部に係合される前記ゴム系弾性体の固定されない構造側に一端を固定した第2垂直軸とからなる水平力発生機構と、を備え、地震時に下部構造に作用する慣性力を前記リンク部材の回動により逆方向の水平力に変換して上部構造に伝達すると共に、前記ゴム系弾性体を前記下部構造の慣性力方向と逆方向に変形させることで、簡単な構成で下部構造からの慣性力に対して逆方向の水平力を発生させ、ゴム系弾性体を下部構造の慣性力方向と逆方向に変形し、地震エネルギーを軽減して上部構造に伝達するので上部構造の地震時慣性力を低減し、上部構造の地震時慣性力による下部構造の負荷を軽減することが可能となる。また、上部構造及び下部構造の水平変位量を抑えることができるため伸縮装置遊間が狭くすることができ、したがって装置のメンテナンス期間を長くすることが可能となる。
中央垂直軸と第1垂直軸間の距離と中央垂直軸と第2垂直軸間の距離およびその比を、上部構造の変位制限またはゴム系弾性体の弾性変形制限の設計要件に応じた変数としたことで、上部構造の水平変位を制限したいという要件や弾性体の弾性変形を制限したいというような各種設計要件に対応することが可能となる。
一方のリンク部材と他方のリンク部材を直交する方向に配置した構成により、全方向の慣性力に対して対応可能な水平力を発生させる機構とすることが可能となる。
上部構造または下部構造の一方に配置される慣性力方向に直線的に延びるギヤレールと、他方の構造に回転自在に配置されるギヤと、前記上部構造及び下部構造に上下が固定されるゴム系弾性体と、を備え、前記ギヤと前記ギヤレールを噛み合わせ、地震時に下部構造に作用する慣性力を前記ギヤレールと前記ギヤの噛合しながら相対移動することで逆方向の水平力に変換して上部構造に伝達すると共に、前記ゴム系弾性体を前記下部構造の慣性力方向と逆方向に変形させることで、簡単な構成で下部構造からの慣性力に対して逆方向の水平力を発生させ、ゴム系弾性体を下部構造の慣性力方向と逆方向に変形し、地震エネルギーを軽減して上部構造に伝達するので上部構造の地震時慣性力を低減し、上部構造の地震時慣性力による下部構造の負荷を軽減することが可能となる。また、上部構造及び下部構造の水平変位量を抑えることができるため伸縮装置遊間が狭くすることができ、したがって装置のメンテナンス期間を長くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の構造物免震方法の実施形態を示す図である。
【図2】本発明の構造物免震方法の実施形態を示す図である。
【図3】本発明の構造物免震方法の実施形態を示す図である。
【図4】本発明の構造物免震方法の実施形態を示す図である。
【図5】本発明の構造物免震方法の実施形態を示す図である。
【図6】本発明の構造物免震方法の実施形態を示す図である。
【図7】本発明の構造物免震方法の実施形態を示す図である。
【図8】本発明の構造物免震方法の実施形態を示す図である。
【図9】本発明の構造物免震方法の実施形態を示す図である。
【図10】本発明の構造物免震方法の実施形態を示す図である。
【図11】本発明の構造物免震方法の実施形態を示す図である。
【図12】従来技術を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を図により説明する。図1は、本発明の構造物制震および免震方法の作用を説明するための模式図である。本発明の構造物制震および免震方法は、建築物や橋梁の構造物に適用するものであるが、実施形態として橋梁に用いた例で説明する。
【0019】
本発明の構造物制震および免震方法は、橋脚や橋台等の下部構造2と橋桁からなる上部構造3との間に水平力発生機構100と、水平力発生機構100に連結されたゴム系弾性体5を備えた制震および免震装置1が配置される。ゴム系弾性体5としては、ゴム、ゴムと補強鋼板を鉛直方向に積層した積層ゴム、高減衰性ゴム、積層ゴムに鉛プラグを挿入した鉛プラグ入り積層ゴム等の弾性変形可能なものから選択する。地震時に下部構造2に作用する慣性力は、水平力発生機構100およびゴム系弾性体5を介して上部構造3に伝達される。水平力発生機構100は、下部構造2に作用する慣性力に対して逆方向の水平力に変換し、水平力発生機構100に連結されたゴム系弾性体5を下部構造2に作用する慣性力方向と逆方向に変形させて上部構造3に伝達するので、下部構造2の慣性力のエネルギーを消費させて上部構造3に伝達する。また、水平力発生機構100による逆方向の水平力への変換の際、ゴム系弾性体5は下部構造2に作用する慣性力の方向と逆方向に変形する。
【0020】
水平力発生機構100による水平力の発生とゴム系弾性体5の変形により下部構造2に作用する慣性力は軽減され上部構造3に伝達され、上部構造3の水平変位量も低減する。ゴム系弾性体5を高減衰性ゴムや鉛プラグ入り積層ゴムとすることで地震エネルギーが減衰され免震効果が向上する。軽減されて上部構造3に伝達された下部構造2に作用する慣性力と逆方向の水平力は、上部構造3に作用する加速度成分が加わり矢印に示すような地震時慣性力が上部構造3に作用する。上部構造2には軽減された下部構造2の慣性力が伝達されるため、上部構造3に作用する地震時慣性力も低減し、上部構造3の水平変位量も低減する。また、上部構造3の地震時慣性力に対して、ゴム系弾性体5が下部構造2に作用する慣性力と逆方向に弾性変形するので、上部構造3の地震時慣性力に対する抵抗力となり、下部構造2に矢印に示す上部構造3に作用する地震時慣性力と逆方向のFaという軽減された負荷慣性力が作用し、下部構造2の水平変位量も低減する。下部構造2に作用する負荷慣性力Faは、図12に示される従来技術の上部構造3の地震時慣性力により下部構造2に作用する負荷慣性力Fに比較して、水平力発生機構100による逆方向の水平力への変換に伴う抵抗およびゴム系弾性体5の下部構造2の慣性力方向と逆方向への変形に伴う抵抗により大幅に減衰されるため、F>Faの関係になる。
【0021】
地震時に上部構造3に作用する地震時慣性力による下部構造2の負荷が大幅に軽減されることで、下部構造の耐震設計強度の増加を抑制することが可能となる。また、水平力発生機構100及びゴム系弾性体によるにより、上部構造3の水平変位量を抑制できるので、上部構造3に設置される伸縮装置遊間が狭く、したがって装置のメンテナンス期間を長くすることが可能となる。
【0022】
図2は、橋台2E,2Fの間に複数の橋脚2A、2B、2C、2Dを配置し、下部構造2である橋台2E,2Fと橋脚2A、2B、2C、2D上に上部構造3である主桁を支持した多径間連続橋に本発明の構造物制震および免震方法を多径間連続橋に適用した実施例を示す図である。
【0023】
橋台2E,2Fと複数の橋脚2A、2B、2C、2D(下部構造2)に連続した主桁(上部構造3)が支持される多径間連続橋に水平力発生機構100とゴム系弾性体5からなる制震および免震装置1が配置される。地震時に下部構造3である橋台2E,2Fと複数の橋脚2A、2B、2C、2Dには、矢印で示す慣性力が作用する。
【0024】
地震時、下部構造3である橋台2E,2Fと各橋脚2A、2B、2C、2Dに作用する慣性力は、水平力発生機構100とゴム系弾性体5からなる制震および免震装置1を介して、軽減され逆方向の水平力として上部構造3である主桁に伝達される。軽減され上部構造3に伝達される水平力は上部構造3の水平変位量を低減し、連続した主桁3全体に作用する地震時慣性力を低減し、橋台2E,2Fと各橋脚2A、2B、2C、2Dの地震時慣性力による負荷を軽減し、下部構造2の耐震設計強度を低く抑えることが可能となる。また、上部構造3及び下部構造2の水平変位量を低減することで、伸縮装置遊間が狭くすることができ、したがって装置のメンテナンス期間を長くすることが可能となる。
【0025】
図3は、多径間連続橋に本発明の構造物制震および免震方法を適用した他の実施例を示す図である。
【0026】
多径間連続橋の下部構造2である橋台2e,2fと複数の橋脚2a、2b、2c、2dと上部構造3である主桁との間に、水平力発生機構100とゴム系弾性体5からなる制震および免震装置1と、バッファー、免震支承、固定支承、可動支承、ダンパーの内のいずれかを混在して配置する。
【0027】
水平力発生機構100とゴム系弾性体5からなる制震および免震装置1を配置した橋脚2a、2c上の上部構造3には、橋脚2a、2cに作用する慣性力が逆方向の水平力に変換され、軽減されその水平変位量が低減されて伝達される。また、バッファー、免震支承、固定支承、可動支承、ダンパーの内のいずれか23を配置した橋台2e,2fと橋脚2b、2d上の上部構造3には、橋台2e,2fと橋脚2b、2dに作用する慣性力と同方向の地震時慣性力が作用する。その結果、連続した上部構造3に方向の異なる地震時慣性力が作用し、方向の異なる地震時慣性力同士が干渉し合い、連続した上部構造3全体としての地震時慣性力を低減すると共に上部構造3全体の水平変位量を低減する。その結果、下部構造2である橋台2e,2fと各橋脚2a、2b、2c、2dの地震時慣性力による負荷を軽減し、下部構造2の耐震設計強度を低く抑えることが可能となる。また、上部構造3及び下部構造2の水平変位量を低減することで、伸縮装置遊間が狭くすることができ、したがって装置のメンテナンス期間を長くすることが可能となる。
【0028】
図4は、本発明の構造物制震および免震方法を、橋脚、橋台等の1つの下部構造2と上部構造3との間に配置した別の実施例を示す図である。
【0029】
この実施例では、橋脚、橋台等の1つの下部構造2と主桁等の上部構造3との間に、水平力発生機構100とゴム系弾性体5からなる制震および免震装置1と、バッファー、免震支承、固定支承、可動支承、ダンパーの内のいずれ23の少なくとも1つを組み合わせて配置する。地震時、下部構造2である橋脚、橋台等に作用する慣性力は、水平力発生機構100とゴム系弾性体5からなる制震および免震装置1を介して、軽減され逆方向の水平力として上部構造3である主桁に伝達される。軽減され上部構造3に伝達される水平力は上部構造3の水平変位量を低減し、上部構造に作用する地震時慣性力を低減し、下部構造2の地震時慣性力による負荷を軽減し、下部構造2の耐震設計強度を低く抑えることが可能となる。また、上部構造3及び下部構造2の水平変位量を低減することで、伸縮装置遊間が狭くすることができ、したがって装置のメンテナンス期間を長くすることが可能となる。
【0030】
図5、図6は、本発明の構造物制震および免震方法に用いる制震および免震装置1の第1実施形態を示す図である。第1実施形態では、ゴム系弾性体5を下部構造2側に固定した実施例に基づいて説明するが、ゴム系弾性体5を上部構造3側に固定しても良い。
【0031】
水平力発生機構100とゴム系弾性体5からなる制震および免震装置1は、下部構造2と上部構造3との間に設置される。下部構造2にはベースプレート4がアンカーボルト(図示せず)等の固定手段を介して設置される。ベースプレート4上には、ゴム系弾性体5とリンク部材支持台7が設置される。ゴム系弾性体5として、ゴム、ゴムと補強鋼板を鉛直方向に積層した積層ゴム、高減衰性ゴム、積層ゴムに鉛プラグを挿入した鉛プラグ入り積層ゴム等の弾性変形可能なものを用いる。ゴム系弾性体5上にはゴム系弾性体5の平面形状よりも大きい所定厚みの連結鋼板6が固定される。
【0032】
ベースプレート4上のゴム系弾性体5の両側に互いに平行に伸びるリンク部材支持台7が設置される。リンク支持台7に中央垂直軸10の一端が固定される。下部構造2側に固定されたゴム系弾性体5と一体化された連結鋼板6に第1垂直軸10の一端が固定される。上部構造3に固定された上鋼板9に第2垂直軸14の一端が固定される。
【0033】
リンク部材支持台7に水平力発生機構100を構成するリンク部材8が中央垂直軸10を介して回動可能に軸支される。図5、図6に示される実施形態では、リンク部材支持台7にそれぞれ1個のリンク部材8を配置しているが、リンク部材8の数は構造物の規模等により増やしても良い。
【0034】
リンク部材8両端部側に、第1スライド係合部11と第2スライド係合部12である長穴、U字状切り欠き又はスライド溝が形成される。第1スライド係合部11には、下部構造2側に固定されたゴム系弾性体5と一体化された連結鋼板6に一端を固定した第1垂直軸13が第1スライド係合部11に沿って相対移動可能に係合される。第1垂直軸13の連結鋼板6への固定位置は、ゴム系弾性体5の外側に張り出した連結鋼板6の部分とする。ゴム系弾性体5として、ゴム、ゴムと補強鋼板を鉛直方向に積層した積層ゴム、高減衰性ゴム、積層ゴムに鉛プラグを挿入した鉛プラグ入り積層ゴム等の弾性変形可能なものを用いる。
【0035】
第2スライド係合部12には、上部構造3に固定された上鋼板9に一端を固定した第2垂直軸14が第2長穴12に沿って相対移動可能に係合する。この実施形態では、第1垂直軸13と第2垂直軸14の中央垂直軸10からの距離が同じになるように設定しているが、後述するように、中央垂直軸10と第1垂直軸13との距離と中央垂直軸10と第2垂直軸14との距離およびその比は、各種設計要件に応じた変数として設定される。
【0036】
地震時に下部構造2に作用する慣性力は、下部構造2に固定されたゴム系弾性体5と一体化された連結鋼板6に一端を固定された第1垂直軸13と第1スライド係合部11との係合によりリンク部材8に伝達される。第1垂直軸13に伝達された下部構造2の慣性力によりリンク部材8は中央垂直軸10を軸として回動する。第1垂直軸13と第1スライド係合部11の係合部の位置は、リンク部材8の中央垂直軸10を軸とした回動によりその軌跡が円弧状となるため第1スライド係合部11に沿って相対移動する。リンク部材8の中央垂直軸10を軸とした回動力は、第2垂直軸14と第2スライド係合部12の係合により上部構造3に下部構造3に作用する慣性力と逆方向の水平力に変換して伝達される。水平力発生機構100による下部構造に作用する慣性力と逆方向の水平力への変換の際の力は、ゴム系弾性体5を下部構造2に作用する慣性力と逆方向に変形させる。リンク部材8の回動に伴う抵抗力およびゴム系弾性体5の変形により抵抗力により下部構造に作用する慣性力を軽減させ、水平変位量が低減されて上部構造3に伝達する。ゴム系弾性体として、高減衰性ゴム、鉛プラグ入り積層ゴムを用いることにより地震エネルギーの減衰効果を高めることが可能となる。
【0037】
上部構造3に軽減され、水平変位量が低減されて伝達した水平力は、加速度成分が加わり上部構造3に地震時慣性力として作用する。地震時に上部構造3に作用する地震時慣性力に対して、ゴム系弾性体5の下部構造3に作用する慣性力と逆方向の変形が抵抗力となり、下部構造に作用する負荷慣性力をより低減する。下部構造2の上部構造2の地震時慣性力による負荷が軽減されることで下部構造2の耐震補強強度の増加を抑制することが可能となる。また、水平力発生機構100により発生する水平力により上部構造3の水平方向の変位を低く抑えることができる。そのため、上部構造3に設置される伸縮装置遊間が狭く、したがって装置のメンテナンス期間を長くすることが可能となる。
【0038】
図7、図8は、中央垂直軸10と第1垂直軸13との距離と中央垂直軸10と第2垂直軸14との距離およびその比を設計要件に応じた変数として設定した実施形態を示す図である。
【0039】
図7に示す実施形態は、リンク部材8を回動自在に軸支する中央垂直軸10と第2スライド係合部12に係合される上部構造3に固定される第2垂直軸14間の距離が、中央垂直軸10と第1スライド係合部11に係合される下部構造2に固定される第1垂直軸13間との距離より短くしている。上部構造3に固定される第2垂直軸14と中央垂直軸10間の距離を短く設定することにより上部構造3の水平変位を制限することが可能となる。
【0040】
図8に示す実施形態は、リンク部材8を回動自在に軸支する中央垂直軸10と第1スライド係合部11に係合される下部構造2に固定される第1垂直軸13間の距離が、中央垂直軸10と第2スライド係合部12に係合される上部構造3に固定される第2垂直軸14間の距離より短くしている。下部構造2に固定されたゴム系弾性体5と一体化された連結鋼板6に固定される第1垂直軸13と中央垂直軸10間の距離を短く設定することにより弾性体5の弾性変形を制限することが可能となる。
【0041】
図7、図8に示すように、中央垂直軸10と第1垂直軸13間の距離と中央垂直軸10と第2垂直軸14間の距離とその比の関係は、支承設計の際の各種設計要件に応じて設定する。
【0042】
図9は、本発明の構造物制震および免震方法に用いる制震および免震装置1の第2実施形態を示す図である。第2実施形態では、ゴム系弾性体5を下部構造2側に固定した実施例に基づいて説明するが、ゴム系弾性体5を上部構造3側に固定しても良い。
【0043】
第2実施形態では、ゴム系弾性体5を挟んで一方の1対のリンク部材支持台7を平行に設置し、ゴム系弾性体5を挟んで他方の1対のリンク部材支持台7を平行に設置する。一方の一対のリンク部材7と他方の一対のリンク部材7をゴム系弾性体5を挟んで直交する位置に設置する。一方の一対のリンク部材支持台7に、一方の直線状のリンク部材8が中央垂直軸10により回動自在に軸支される。他方の一対のリンク部材に、他方の直線状のリンク部材8が中央垂直軸10により回動自在に軸支される。ゴム系弾性体5を挟んで、互いに直交する方向にそれぞれリンク部材8を配置することにより、下部構造2に作用する全方向の慣性力に対して対応が可能な制震および免震装置1とすることができる。他の構成は、図5,図6に示される第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0044】
図10、図11は、本発明の水平力発生機構100とゴム系弾性体5からなる制震および免震装置1の第3実施形態を示す図である。
【0045】
第3実施形態では、下部構造2にアンカーボルト15で固定されるベースプレート4にゴム系弾性体5の下面が固定される。ゴム系弾性体5として、ゴム、ゴムと補強鋼板を鉛直方向に積層した積層ゴム、高減衰性ゴム、積層ゴムに鉛プラグを挿入した鉛プラグ入り積層ゴム等の弾性変形可能なものを用いる。ベースプレート4に配置したゴム系弾性体5の慣性力方向の両側にサイドブロック16が設置される。サイドブロック16には、サイドブロック16の表面から一部が突き出す軸部材17が固定される。軸部材17のサイドブロック17の表面から突き出した部分に、水平力発生機構100を構成するギヤ18を回転自在に軸支する。
【0046】
上部構造3側に固定される上鋼板19の下面には、慣性力方向に平行に延びる2つの溝部20が形成される。溝部20の内側の両側壁部には、慣性力方向に延びる水平力発生機構100を構成するギヤレール21が配置される。上鋼板19の2つの溝部20の間でゴム系弾性体5の上面を固定ボルト等の固定手段を介して固定する。下部構造2側のギヤ18と上部構造3側のギヤレール21を噛合わせる。第3実施形態では、ギヤ18を下部構造2側に配置し、ギヤレール21を上部構造3側に配置しているが、その配置を逆にしても良い。
【0047】
地震時に下部構造2に作用する慣性力により、下部構造2側に配置されたギヤ18は上部構造3側に配置されたギヤレール21が噛合しつつ回転する。ギヤ18のギヤレール21との噛合しながらの回転により、上部構造3と下部構造3が相対移動する。ギヤ18とギヤレール21の噛合しながらの回転による相対移動に伴い、下部構造2の慣性力と逆方向の水平力が発生し上部構造3に伝達される。水平力発生機構100による下部構造2の慣性力と逆方向の水平力が発生に伴い、ゴム系弾性体5が、下部構造2に作用する慣性力方向と逆方向に変形する。
【0048】
ギヤ18とギヤレール21の噛合しながらの回転による下部構造2と上部構造3の相対移動による下部構造2の慣性力と逆方向の水平力が発生と、ゴム系弾性体5の下部構造2の慣性力方向と逆方向の変形により、下部構造に作用する慣性力が軽減され、下部構造2に作用する慣性力とは逆方向の水平力として上部構造3に伝達される。
【0049】
上部構造3に軽減されて伝達した水平力は、加速度成分が加わり上部構造3に地震時慣性力が作用する。地震時に上部構造3に作用する地震時慣性力に対して、ゴム弾性体5の下部構造3に作用する慣性力と逆方向の変形が抵抗力となり、下部構造2に作用する負荷慣性力をより低減する。下部構造2の上部構造3に作用する地震時慣性力による負荷が軽減されることで下部構造2の耐震補強強度の増加を抑制することが可能となる。また、水平力発生機構100により発生する水平力により上部構造3の水平方向の変位を低く抑えることができる。そのため、上部構造3に設置される伸縮装置遊間が狭く、したがって装置のメンテナンス期間を長くすることが可能となる。ゴム系弾性体5として、高減衰性ゴム、鉛プラグ入り積層ゴムを用いることにより地震エネルギーの減衰効果を高めることが可能となる。
【0050】
以上のように、本発明の構造物制震・振免震方法によれば、水平力発生機構による下部構造の慣性力方向逆方向の水平力への変換とゴム系弾性体の下部構造の慣性力方向と逆方向の変形により地震エネルギーを軽減して上部構造に伝達するので、上部構造に作用する地震時慣性力を低減し、下部構造の地震時慣性力による負荷を軽減することで下部構造の耐震設計強度を低く抑えることが可能となる。また、上部構造及び下部構造の水平変位量を抑えることができるため伸縮装置遊間が狭くすることができ、したがって装置のメンテナンス期間を長くすることが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1:制震および免震装置、2:下部構造、3:上部構造、4:ベースプレート、5:ゴム系弾性体、6:連結鋼板、7:リンク部材支持台、8:リンク部材、9:上鋼板、10:中央垂直軸、11:第1スライド係合部、12:第2スライド係合部、13:第1垂直軸、14:第2垂直軸、15:アンカーボルト、16:サイドブロック、17:軸部材、18:ギヤ、19:上鋼板 、20:溝部、21:ギヤレール、23:バッファー、免震支承、固定支承、可動支承、ダンパーの内のいずれか、24:支承装置、25:積層ゴム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物や橋梁等の構造物の上部構造と下部構造との間に、地震時前記下部構造に作用する慣性力に対して逆方向の水平力を発生させる水平力発生機構と前記水平力発生機構に連結されたゴム系弾性体からなる制震および免震装置を配置し、
地震時前記水平力発生機構が下部構造に作用する慣性力を逆方向の水平力に変換し前記ゴム系弾性体を前記下部構造の慣性力方向と逆方向に変形させ、上部構造に伝達される地震エネルギーを軽減すると共に上部構造及び下部構造の水平変位量を低減することを特徴とする構造物制震および免震方法。
【請求項2】
前記水平力発生機構と前記ゴム系弾性体からなる制震および免震装置を、多径間連続桁橋の橋脚、橋台等の下部構造と主桁等の上部構造との間に配置し、連続した上部構造の水平変位量を低減し、且つ、複数の下部構造の水平変位量を低減することを特徴とする請求項1に記載の構造物用制震および免震方法。
【請求項3】
前記水平力発生機構と前記ゴム系弾性体からなる制震および免震装置と、バッファー、免震支承、固定支承、可動支承およびダンパーの内のいずれかを多径間連続桁橋の橋脚、橋台等の下部構造と主桁等の上部構造との間に混在させて配置し、連続した上部構造の水平変位量を低減し、且つ、複数の下部構造の水平変位量を低減することを特徴とする請求項1に記載の構造物制震および免震方法。
【請求項4】
前記水平力発生機構と前記ゴム系弾性体からなる制震および免震装置と、バッファー、免震支承、固定支承、可動支承およびダンパーの内の少なくとも1つを、橋脚、橋台等の下部構造と主桁等の上部構造との間に組み合わせて配置し、上部構造および下部構造の水平変位量を低減することを特徴とする請求項1に記載の構造物制震および免震方法。
【請求項5】
前記制震および免震装置は、
上部構造または下部構造の一方に固定したゴム系弾性体と、
前記ゴム系弾性体が固定された構造側の前記ゴム系弾性体の外側に一端を固定した中央垂直軸と、前記中央垂直軸に回転自在に軸支され、両端に長穴、U字状切り欠き又はスライド溝等のスライド係合部を形成したリンク部材と、前記リンク部材の一方の側の前記スライド係合部に係合される前記ゴム系弾性体に一端を固定した第1垂直軸と、前記リンク部材の他方の側の前記スライド係合部に係合される前記ゴム系弾性体の固定されない構造側に一端を固定した第2垂直軸とからなる水平力発生機構と、を備え、地震時に下部構造に作用する慣性力を前記リンク部材の回動により逆方向の水平力に変換して上部構造に伝達すると共に、前記ゴム系弾性体を前記下部構造の慣性力方向と逆方向に変形させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の構造物制震および免震方法。
【請求項6】
前記中央垂直軸と前記第1垂直軸間の距離と前記中央垂直軸と前記第2垂直軸間の距離およびその比を、上部構造の変位制限またはゴム系弾性体の弾性変形制限の設計要件に応じた変数としたことを特徴とする請求項5に記載の構造物制震および免震方法。
【請求項7】
一方のリンク部材と他方のリンク部材を直交する方向に配置したことを特徴とする請求項5又は6に記載の構造物制震および免震方法。
【請求項8】
前記制震および免震装置は、
上部構造または下部構造の一方に配置される慣性力方向に直線的に延びるギヤレールと、
他方の構造に回転自在に配置されるギヤと、
前記上部構造及び下部構造に上下が固定されるゴム系弾性体と、
を備え、
前記ギヤと前記ギヤレールを噛み合わせ、地震時に下部構造に作用する慣性力を前記ギヤレールと前記ギヤの噛合しながら相対移動することで逆方向の水平力に変換して上部構造に伝達すると共に、前記ゴム系弾性体を前記下部構造の慣性力方向と逆方向に変形させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の構造物制震および免震方法。
【請求項1】
建築物や橋梁等の構造物の上部構造と下部構造との間に、地震時前記下部構造に作用する慣性力に対して逆方向の水平力を発生させる水平力発生機構と前記水平力発生機構に連結されたゴム系弾性体からなる制震および免震装置を配置し、
地震時前記水平力発生機構が下部構造に作用する慣性力を逆方向の水平力に変換し前記ゴム系弾性体を前記下部構造の慣性力方向と逆方向に変形させ、上部構造に伝達される地震エネルギーを軽減すると共に上部構造及び下部構造の水平変位量を低減することを特徴とする構造物制震および免震方法。
【請求項2】
前記水平力発生機構と前記ゴム系弾性体からなる制震および免震装置を、多径間連続桁橋の橋脚、橋台等の下部構造と主桁等の上部構造との間に配置し、連続した上部構造の水平変位量を低減し、且つ、複数の下部構造の水平変位量を低減することを特徴とする請求項1に記載の構造物用制震および免震方法。
【請求項3】
前記水平力発生機構と前記ゴム系弾性体からなる制震および免震装置と、バッファー、免震支承、固定支承、可動支承およびダンパーの内のいずれかを多径間連続桁橋の橋脚、橋台等の下部構造と主桁等の上部構造との間に混在させて配置し、連続した上部構造の水平変位量を低減し、且つ、複数の下部構造の水平変位量を低減することを特徴とする請求項1に記載の構造物制震および免震方法。
【請求項4】
前記水平力発生機構と前記ゴム系弾性体からなる制震および免震装置と、バッファー、免震支承、固定支承、可動支承およびダンパーの内の少なくとも1つを、橋脚、橋台等の下部構造と主桁等の上部構造との間に組み合わせて配置し、上部構造および下部構造の水平変位量を低減することを特徴とする請求項1に記載の構造物制震および免震方法。
【請求項5】
前記制震および免震装置は、
上部構造または下部構造の一方に固定したゴム系弾性体と、
前記ゴム系弾性体が固定された構造側の前記ゴム系弾性体の外側に一端を固定した中央垂直軸と、前記中央垂直軸に回転自在に軸支され、両端に長穴、U字状切り欠き又はスライド溝等のスライド係合部を形成したリンク部材と、前記リンク部材の一方の側の前記スライド係合部に係合される前記ゴム系弾性体に一端を固定した第1垂直軸と、前記リンク部材の他方の側の前記スライド係合部に係合される前記ゴム系弾性体の固定されない構造側に一端を固定した第2垂直軸とからなる水平力発生機構と、を備え、地震時に下部構造に作用する慣性力を前記リンク部材の回動により逆方向の水平力に変換して上部構造に伝達すると共に、前記ゴム系弾性体を前記下部構造の慣性力方向と逆方向に変形させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の構造物制震および免震方法。
【請求項6】
前記中央垂直軸と前記第1垂直軸間の距離と前記中央垂直軸と前記第2垂直軸間の距離およびその比を、上部構造の変位制限またはゴム系弾性体の弾性変形制限の設計要件に応じた変数としたことを特徴とする請求項5に記載の構造物制震および免震方法。
【請求項7】
一方のリンク部材と他方のリンク部材を直交する方向に配置したことを特徴とする請求項5又は6に記載の構造物制震および免震方法。
【請求項8】
前記制震および免震装置は、
上部構造または下部構造の一方に配置される慣性力方向に直線的に延びるギヤレールと、
他方の構造に回転自在に配置されるギヤと、
前記上部構造及び下部構造に上下が固定されるゴム系弾性体と、
を備え、
前記ギヤと前記ギヤレールを噛み合わせ、地震時に下部構造に作用する慣性力を前記ギヤレールと前記ギヤの噛合しながら相対移動することで逆方向の水平力に変換して上部構造に伝達すると共に、前記ゴム系弾性体を前記下部構造の慣性力方向と逆方向に変形させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の構造物制震および免震方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−47433(P2013−47433A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211911(P2011−211911)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(391051256)株式会社美和テック (29)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(391051256)株式会社美和テック (29)
【Fターム(参考)】
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