説明

構造部材、及び構造部材を有する構造物

【課題】鋼材の腐食を抑制することを目的する。
【解決手段】柱14は、内部に柱鉄筋20が配置された第一柱部14Aと、この第一柱部14Aと一体化された第二柱部14Bと、を備えた複合構造とされている。第一柱部14Aは、普通コンクリートで構成され、第二柱部14Bは、弱アルカリコンクリートで構成されている。ここで、第二柱部14Bは、第一柱部14Aよりもアルカリ性が弱くなっている。従って、第二柱部14Bの内部に柱鉄筋20を配置する場合と比較して、第一柱部14Aの内部に柱鉄筋20が配置したことにより、柱鉄筋20の腐食を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造部材、及び構造部材を有する構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、建築構造物では鉄筋コンクリートが多用されている。鉄筋コンクリートは、鉄筋及びコンクリートの複合材料である。このコンクリートは、水、セメント、骨材(細骨材、粗骨材)及び各種の混和材から構成されている。セメントには、石灰石、ケイ石等の原料を細かく砕いたものを、約1450℃の高温で焼成したポルトランドセメントが一般的に用いられる。
【0003】
ここで、ポルトランドセメントの焼成には、多量のエネルギーを消費するだけでなく、焼成に伴って多量の二酸化炭素が発生するため、省エネ化や地球温暖化等への環境対策が求められている。
【0004】
環境対策としては、高炉スラグ微粉末を用いた高炉セメント(JISR5211)が知られている。この高炉セメントは、ポルトランドセメントの一部を高炉スラグ微粉末(高炉で銑鉄を製造する際に生成される副産物)で置換したものであり、高炉スラグ微粉末の分量によってA種(5〜30質量%)、B種(30〜60質量%)、C種(60〜70質量%)に分類されている。このようにポルトランドセメントを高炉スラグ微粉末で置換することで、石灰石等の原料の消費量を削減することができ、更に、二酸化炭素の排出量を実質的に削減することができる。
【0005】
しかしながら、ポルトランドセメントの分量を減らすと、ポルトランドセメントの水和反応によって生成される水酸化カルシウム等のアルカリ性物質が減少する。従って、高炉セメントを用いた鉄筋コンクリート造の構造部材では鉄筋等の鋼材が腐食し易く、鋼材腐食に伴う体積膨張によってひび割れの発生が懸念される。そのため、高炉セメント、特に高炉セメントC種は、柱や梁等の構造部材として利用し難いのが実情である。
【0006】
一方、特許文献1には、大気中の二酸化炭素を吸収する二酸化炭素固定化構造部材が提案されている。この二酸化炭素固定化構造部材には、その内部へ大気を導く通気孔が形成されており、この通気孔から供給された大気中の二酸化炭素がコンクリートに吸収される。
【0007】
ところで、二酸化炭素固定化構造部材中の水酸化カルシウムが二酸化炭素と反応すると炭酸カルシウムに変化し、アルカリ性が失われて鉄筋等の鋼材の防錆効果が低下してしまう。この対策として特許文献1の二酸化炭素固定化構造部材では、吸収された二酸化炭素と鉄筋付近の水酸化カルシウムが反応しないように、鋼材から離れた位置に上記の通気孔を形成している。そのため、大気中の二酸化炭素を二酸化炭素固定化構造部材に固定化しつつ、鋼材の腐食を抑制することができる。
【0008】
この特許文献1は、大気中の二酸化炭素を二酸化炭素固定化構造部材に固定化することを目的とするため、通気孔の存在が前提となっている。また、二酸化炭素固定化構造部材はポルトランドセメントを用いて製造するため、その製造工程(ポルトランドセメントの焼成)において多量の二酸化炭素が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−246375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の事実を考慮し、鋼材の腐食を抑制することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の構造部材は、鋼材が埋設された第一硬化体と、前記第一硬化体と一体化されると共に、該第一硬化体よりもアルカリ性が弱い第二硬化体と、を備えている。
【0012】
上記の構成によれば、構造部材が、鋼材が埋設された第一硬化体と、当該第一硬化体と一体化された第二硬化体と、を備えている。
【0013】
ここで、第二硬化体は、第一硬化体よりもアルカリ性が弱くなっている。従って、第二硬化体に埋設された鋼材は、第一硬化体に埋設された鋼材と比較して、鋼材が腐食し始めるまでの時間が短く、即ち、鋼材の寿命が短くなる傾向にある。そのため、本発明では、第二硬化体よりもアルカリ性が強い第一硬化体に鋼材を埋設している。従って、鋼材の表面に形成された不動態皮膜が保持され易くなるため、鋼材が腐食し始めるまでの時間が長くなる。よって、鋼材の長寿命化を図ることができる。
【0014】
請求項2に記載の構造部材は、請求項1に記載の構造部材において、前記第二硬化体が、高炉スラグ微粉末を60質量%以上含有する水硬性セメントが水和反応して硬化したコンクリート硬化体、モルタル硬化体、又はグラウト硬化体である。
【0015】
上記の構成によれば、第二硬化体が、高炉スラグ微粉末を60質量%以上含有する水硬性セメントが水和反応して硬化したコンクリート硬化体、モルタル硬化体、又はグラウト硬化体とされている。高炉スラグ微粉末を多く含有することにより、石灰石等の原料の消費量を低減することができる。更に、石灰石等の原料の消費量が少なくなるため、石灰石の熱分解や燃焼による二酸化炭素の排出量を低減することができる。
【0016】
請求項3に記載の構造部材は、請求項1又は請求項2に記載の構造部材において、前記第一硬化体が、前記第二硬化体の周囲に配置されている。
【0017】
上記の構成によれば、第二硬化体の周囲に、第一硬化体が配置されている。従って、第一硬化体の周囲に鋼材を配置することができ、構造部材の曲げ耐力を合理的に大きくすることができる。また、第一硬化体をプレキャスト化し、型枠(外殻プレキャスト型枠)として用いることで、現場での第二硬化体の型枠が不要となるため、施工性が向上する。
【0018】
請求項4に記載の構造部材は、請求項1又は請求項2に記載の構造部材において、前記第二硬化体が、前記第一硬化体の周囲に配置されている。
【0019】
上記の構成によれば、第一硬化体の周囲に、第二硬化体が配置されている。ここで、第二硬化体をプレキャスト化し、型枠(外殻プレキャスト型枠)として用いることで、現場での第一硬化体の型枠が不要となるため、施工性が向上する。
【0020】
また、第二硬化体が有効な仕上げとして機能するため(構造部材内へ浸透する酸素を低減する)、第一硬化体に埋設された鋼材の防錆効果を上げることができる。更に、第二硬化体はアルカリ性が弱いため、壁紙等の仕上げ材の接着性、耐久性を向上することができる。更にまた、第二硬化体で構造部材の表層を構成することで、植物を生育可能(植物と接触可能)な緑化コンクリートとして使用することができる。
【0021】
請求項5に記載の構造部材は、請求項1又は請求項2に記載の構造部材において、前記第二硬化体の内部に、棒状に形成された複数の前記第一硬化体が配置されている。
【0022】
上記の構成によれば、第二硬化体の内部に、複数の第一硬化体が配置されている。この第一硬化体は棒状に形成されている。ここで、鋼材ごとに、又は複数の鋼材が密集する領域ごとに第二硬化体を設けることにより、効率的に鋼材を防錆することができる。
【0023】
請求項6に記載の構造部材は、請求項1又は請求項2に記載の構造部材において、前記第一硬化体と前記第二硬化体とが対向して配置されている。
【0024】
上記の構成によれば、第一硬化体と第二硬化体とが対向して配置されている。この構造部材には、例えば、床や壁等の面材が含まれる。ここで、構造部材で床を構成する場合、第一硬化体又は第二硬化体をプレキャスト化することにより、ハーフプレキャスト工法を用いることができる。また、構造部材で床や壁を構成する場合、対向する第一硬化体の間に第二硬化体を配置し、又は対向する第二硬化体の間に第一硬化体を配置して一体化することにより、いわゆるサンドイッチ構造とすることもできる。
【0025】
請求項7に記載の構造物は、請求項1〜6の何れか1項に記載の構造部材を有している。
【0026】
上記の構成によれば、請求項1〜6の何れか1項に記載の構造部材を有することで、鋼材の腐食を抑制しつつ、製造エネルギー及び二酸化炭素の排出量が低減された構造物を構築することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、上記の構成としたので、鋼材の腐食を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係る構造部材が適用された構造物を示す概略平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る柱を示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る床を示す断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る柱の変形例を示す断面図である。
【図5】(A)及び(B)は、本発明の第1実施形態に係る柱の変形例を示す断面図である。
【図6】(A)及び(B)は、本発明の第2実施形態に係る床を示す断面図である。
【図7】(A)及び(B)は、本発明の第2実施形態に係る床の変形例を示す断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る第二硬化体の変形例を示す斜視図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る床の変形例を示す断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る梁を示す断面図である。
【図11】(A)及び(B)は、実施形態に係る床を示す平面図である。
【図12】本発明の実施形態に係る壁を示す断面図である。
【図13】本発明の実施形態に係る柱を示す断面図である。
【図14】本発明の実施形態に係る石組造の壁を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る構造部材について説明する。図1は、構造物12の一部を示す概略平面図であり、第1実施形態に係る構造部材としての柱14、梁16、床18が示されている。
【0030】
先ず、柱14の構成について説明する。なお、梁16は柱14と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0031】
図2の断面図に示されるように、柱14は、第二柱部(第二硬化体)14Bと、この第二柱部14Bの周囲(外周)に配置された第一柱部(第一硬化体)14Aと、を備えた複合構造とされている。これらの第一柱部14A及び第二柱部14Bによって、柱14の部材断面(柱14の材軸に垂直な断面)が構成されている。
【0032】
第一柱部14Aは、普通コンクリートで角形の環状に形成されており、その内部に柱鉄筋(鋼材)20及びせん断補強筋22が埋設された鉄筋コンクリート造とされている。第一柱部14Aの内周壁には、第二柱部14Bとの付着性、一体性を高めるための凹状のコッター24が複数形成されている。なお、コッター24の形状は、三角系、台形、半円形等の種々の形状から選択することができる。また、凹状に限らず、凸状のコッターを形成しても良い。
【0033】
なお、普通コンクリートとは、ポルトランドセメント、又は高炉スラグ微粉末を主成分(高炉スラグ微粉末の含有量が60質量%未満)とした水硬性セメントに、水、混和材料、骨材(細骨材、粗骨材)等を混ぜ合わせ、水との水和反応によって硬化したコンクリートである。ポルトランドセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種のポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等の各種の混合セメントを用いることができる。また、石膏、石灰を適宜添加することもできる。
【0034】
第一柱部14Aで囲まれた空間(空洞部)には、第二柱部14Bが配置されている。第二柱部14Bは、第一柱部14Aを構成する普通コンクリートよりもアルカリ性が弱いコンクリート硬化体(以下、「弱アルカリコンクリート」という)で角柱状に形成されている。この第二柱部14Bは、第一柱部14Aと一体化されており、柱14に作用する各種の応力(曲げ応力、せん断応力、軸力等)に対して第一柱部14Aと協同で抵抗可能とされている。なお、弱アルカリコンクリートについては後述する。
【0035】
次に、床18の構成について説明する。
【0036】
床18は、図3の断面図に示されるように、上下方向に対向する一対の第一床部(第一硬化体)18Aと、第一床部18Aの間に配置された第二床部(第二硬化体)18Bと、を備えている。これらの第一床部18A及び第二床部18Bによって、床18の部材断面が構成されている。なお、構造部材が床や壁のような面材の場合、その部材断面とは、面材の表面と直交する方向(面材の厚さ方向)の断面を指すものとする。
【0037】
第一床部18Aは、普通コンクリートで板状に形成されており、その内部に鉄筋(鋼材)26及びせん断補強筋28が埋設された鉄筋コンクリート造とされている。これらの第一床部18Aの対向面には、第二床部18Bとの付着性を高めるための凹状のコッター29が間隔を置いて複数形成されている。
【0038】
対向する第一床部18Aの間には、第二床部18Bが配置されている。即ち、第二床部18Bは、上下の第一床部18Aのそれぞれに対向して配置されている。第二床部18Bは、第一床部18Aを構成する普通コンクリートよりもアルカリ性が弱い弱アルカリコンクリートで板状に形成されている。この第二床部18Bは、第一床部18Aと一体化されており、床18に作用する各種の応力に対して第一床部18Aと協同で抵抗可能とされている。
【0039】
次に、第1実施形態に係る構造部材の作用について説明する。
【0040】
建築構造物ではコンクリートが多用されており、我が国のセメント(ポルトランドセメント)の年間生産量は、約6000〜7000万tに昇っている。このポルトランドセメントの製造時に発生する二酸化炭素は、1t当たりの焼成エネルギーで約350kg/t、原材料の石灰石から約450kg/t、合計約750kg/tと非常に膨大な量となっており、我が国の産業分野全体の約4%を占めている。そこで、近年の省エネルギー化や地球温暖化等の環境対策として、高炉で銑鉄を製造した際に副産物として生成される高炉スラグを用いたセメントが提案されている。具体的には、高炉セメント、高硫酸塩スラグセメント等が挙げられる。これらのセメントは、ポルトランドセメントを高炉スラグ微粉末で置換することにより、ポルトランドセメントの主材料となる石灰石、ケイ石等の原料の消費量を削減すると共に、石灰石等の焼成時に発生する二酸化炭素の排出量を実質的に削減している。
【0041】
更に、高炉スラグ微粉末に、石膏を添加すると共に、高炉スラグ微粉末のアルカリ反応を促進させるアルカリ刺激材として、再生コンクリート微粉末を用いることで、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等の工業材料の消費量を削減している。
【0042】
しかしながら、ポルトランドセメントの分量を減らすと、ポルトランドセメントの水和反応によって生成される水酸化カルシウム等のアルカリ性物質が減少する。従って、これらの高炉セメントC種、高硫酸塩スラグセメント等を用いた鉄筋コンクリート造の構造部材は、普通コンクリートと比較して中性化が速く、鉄筋等の鋼材の表面に形成された不動態皮膜が破壊され易い。従って、鋼材が腐食し始めるまでの時間が短くなり、鋼材の寿命が短くなる。また、鋼材が腐食すると、その体積膨張によって構造部材のひび割れ等が懸念される。従って、構造部材として利用し難いのが実情である。
【0043】
この対策として、本実施形態では、柱14に第一柱部14A及び第二柱部14Bを設け、この第一柱部14Aに柱鉄筋20、せん断補強筋22等の鋼材を埋設している。第一柱部14Aは普通コンクリートで構成されており、強いアルカリ性(例えば、PH値12以上)を呈している。従って、柱鉄筋20及びせん断補強筋22の表面に形成された不動態皮膜が保持され易く、これらの柱鉄筋20及びせん断補強筋22が腐食し始めるまでの時間が長くなる。よって、柱鉄筋20及びせん断補強筋22の長寿命化を図ることができると共に、腐食に伴う第一柱部14Aのひび割れ等を抑制することができる。
【0044】
一方、第一柱部14Aで囲まれた空間(空洞部)には、第二柱部14Bが配置されている。この第二柱部14Bを弱アルカリコンクリート(PH値12未満)で構成することで、二酸化炭素の排出量、及び製造エネルギーを実質的に低減しつつ、従来の鉄筋コンクリート造の構造部材と同等の強度、耐力を備える柱14を構築することができる。なお、床18についても、同様に作用、効果を得ることができる。
【0045】
また、第一柱部14Aをプレキャスト化することにより、型枠(外殻プレキャスト型枠)として用いることができる。これにより、第二柱部14Bの型枠を省略することができるため、施工性が向上する。具体的には、プレキャスト化された第一柱部14Aを設置し、この第一柱部14A内に、硬化する前の弱アルカリコンクリートを流し込み、第二柱部14Bを形成する。なお、柱14全体をプレキャスト化しても良いし、第一柱部14A及び第二柱部14Bを現場で施工しても良いことは勿論である。
【0046】
また、本実施形態では、第二柱部14Bの周囲に第一柱部14Aを配置したことにより、即ち、第二柱部14Bの周囲に柱鉄筋20及びせん断補強筋22を配置したことにより、柱14に作用する曲げ応力に対して、柱鉄筋20及びせん断補強筋22が効率的に抵抗する。従って、柱14の曲げ耐力を合理的に大きくすることができる。
【0047】
次に、第1実施形態に係る構造部材の変形例について説明する。
【0048】
図4には、円柱状(丸柱)に形成された柱30の断面が示されている。柱30は、第二柱部(第二硬化体)30Bと、この第二柱部30Bの周囲に配置された第一柱部(第一硬化体)30Aと、を備えた複合構造とされている。これらの第一柱部30A及び第二柱部30Bによって、柱30の部材断面(柱30の材軸に垂直な断面)が構成されている。
【0049】
第一柱部30Aは、普通コンクリートで円形の環状に形成されており、その内部に柱鉄筋(鋼材)32及びせん断補強筋34が埋設された鉄筋コンクリート造とされている。なお、図示を省略するが、第一柱部30Aの内周壁に、第二柱部30Bとの付着性、一体性を高めるための凹状のコッターを形成しても良い。
【0050】
第一柱部30Aで囲まれた空間(空洞部)には、第二柱部30Bが配置されている。第二柱部30Bは、弱アルカリコンクリートで円柱状に形成されている。この第二柱部30Bは、第一柱部30Aと一体化されており、柱14に作用する各種の応力に対して第一柱部14Aと協同で抵抗可能とされている。
【0051】
ここで、柱30は、一般的な遠心成形を用いて製造することができる。具体的には、先ず、柱30の外形を模った円形形枠(不図示)内に、柱鉄筋32及びせん断補強筋34を設置し、硬化する前の普通コンクリートを打設する。次に、図示せぬモータ等の駆動源を用いて円形型枠を回転させ、遠心力によって普通コンクリートを円形型枠の内周壁に付着させる。この状態で普通コンクリートを硬化させ、中空状(円筒状)の第一柱部30Aを形成する。
【0052】
次に、第一柱部30Aで囲まれた空間(空洞部)に、硬化する前の弱アルカリコンクリートを打設し、第二柱部30Bを形成すると共に、第二柱部30Bと第一柱部30Aを一体化させる。このように遠心成形を用いて柱30を製造することができる。なお、第一柱部30Aのみを工場等で製造し(プレキャスト化)、現場で第二柱部30Bを打設しても良い。
【0053】
また、アルカリ性含浸材で弱アルカリコンクリートにアルカリ性を付与し、第一柱部30Aを形成することも可能である。具体的には、図5(A)及び図5(B)の断面図に示されるように、先ず、円形型枠36の内周壁にケイ酸、リチウム等のアルカリ性含浸材38を塗布しておく。次に、円形型枠36内に、柱鉄筋32及びせん断補強筋34を配置し、硬化する前の弱アルカリコンクリート40を円形型枠36内に打設する。
【0054】
ここで、円形型枠36の内周壁に塗布されたアルカリ性含浸材38が弱アルカリコンクリート40内へ浸透する。これにより、柱鉄筋32及びせん断補強筋34が配置された柱30の表層部にアルカリ性が付与され、防錆効果を有する第一柱部30Aが形成される。なお、円形型枠36は、型枠部36Aと型枠部36Bと組み合わせた割型枠とされており、脱型し易くなっている。
【0055】
このように、弱アルカリコンクリート40に事後的にアルカリ性含浸材38でアルカリ性を付与することにより、柱鉄筋32及びせん断補強筋34の腐食を抑制しつつ、普通コンクリートを省略することができる。従って、製造エネルギー、及び二酸化炭素の排出量を実質的に削減することができる。
【0056】
次に、本発明の第2実施形態に係る構造部材について説明する。なお、第1実施形態と同じ構成のものは同符号を付すると共に適宜省略して説明する。
【0057】
図6(A)及び図6(B)には、構造部材としての床42の断面図が示されている。床42は、第一床部(第一硬化体)42A(図6(B)参照)と、この第一床部42Aの周囲に配置された第二床部(第二硬化体)42Bと、備えた複合構造とされている。
【0058】
第二床部42Bは、弱アルカリコンクリートで板状に形成されており、内部に埋設された複数のシース管44によって空洞部45が形成されている。シース管44は鋼製で円筒形状に形成された中空部材とされており、その外周面に防錆材としてのエポキシ樹脂塗料46が塗布されている。なお、シース管44は中空であれば良く、角形でも良い。また、防錆材としては、例えば、鉛系錆止め(鉛丹、ジンクロメート、シアナミド鉛、亜酸化鉛)、ジンクリッチペイント錆止め、各種のメッキ(ステンレスメッキ、亜鉛メッキ)等を用いることができる。ただし、防錆材は適宜、省略可能である。
【0059】
シース管44は、床42の上面又は下面に沿って所定の間隔で床42に埋設されており、せん断補強筋48によって補強されている。このシース管44内の空間(空洞部45)には、図6(B)に示されるように、鉄筋(鋼材)50が配置されると共に、防錆充填材としてのアルカリ性グラウト52が充填されている。このアルカリ性グラウト52は、アルカリ性が強く(例えば、PH値12以上)、防錆効果を有している。これらの鉄筋50及びアルカリ性グラウト52によって、棒状の第一床部42Aが構成されている。なお、防錆充填材としては、グラウト、モルタル等のアルカリ性を有するセメント系充填材を用いることができる。また、せん断補強筋48には、エポキシ樹脂塗料等によって防錆処理を適宜施しても良い。
【0060】
次に、第2実施形態に係る構造部材の作用について説明する。
【0061】
床42は、第一床部42A及び第二床部42Bを備え、第二床部42Bに埋設されたシース管44内に、第一床部42Aが設けられている。第一床部42Aは、鉄筋50とこの鉄筋50の表面を覆うアルカリ性グラウト52によって構成されている。このアルカリ性グラウト52によって鉄筋50の表面に形成された不動態皮膜が保持され易くなるため、鉄筋50の腐食が抑制され、鉄筋50の長寿命化を図ることができる。
【0062】
このように、アルカリ性グラウト52で鉄筋50の表面を覆うことにより、鉄筋50の腐食を抑制しつつ、第二床部42Bを弱アルカリコンクリートで形成することができる。従って、製造エネルギー、及び二酸化炭素の排出量が実質的に低減された床42を構築することができる。
【0063】
また、第二床部42Bをプレキャスト化することにより、施工性を向上させることができる。即ち、第二床部42Bにシース管44を埋設して空洞部45を形成したことにより、現場において鉄筋50を容易に配置することができる。また、シース管44内にアルカリ性グラウト52を充填することにより、簡単な施工で床42を構築することができる。
【0064】
なお、本実施形態では、第二床部42Bにシース管44を埋設して空洞部45を形成したがこれに限らない。第二床部42Bに鉄筋50を配置可能な空間(空洞部)を形成できれば良く、例えば、床の軽量化を図るためのボイドと同様の施工方法を用いて、空洞部を形成しても良い。
【0065】
具体的には、図7(A)及び図7(B)に示されるように、床54には複数のボイド56が形成されている。このボイド56の施工方法としては、例えば、第二床部54Bを製造する際に、型枠内に発砲スチロールを配置し、第二床部54Bが硬化した後に当該発砲スチロールを溶解させる方法や、型枠内に中空状の弾性チューブに気体(例えば、空気)を圧入して膨張させたものを配置し、第二床部54Bが硬化した後に当該弾性チューブから気体を抜いて撤去する方法等が挙げられる。なお、弾性チューブの表面には、剥離材等を適宜塗布し、撤去し易いようにしても良い。また、気体に替えて弾性チューブ内に液体(例えば、水)等を圧入して膨張させても良い。
【0066】
図7(B)の断面図に示されるように、ボイド56内には、鉄筋50が配置されると共に、アルカリ性グラウト52が充填される。これにより、棒状の第一床部54Aが形成される。このように、ボイド56を用いて第一床部54Aを形成することができる。なお、図7(B)に示す構成では、全てのボイド56内に、第一床部54Aを形成したが、必ずしも全てのボイド56内に第一床部54Aを形成する必要はない。第一床部54Aを形成せずに、ボイド56の本来の目的である床54の軽量化を図っても良い。
【0067】
更に、第一床部をプレキャスト化しても良い。図8には、プレキャスト化された棒状の第一床部(第一硬化体)62Aが示されている。この第一床部62Aは、鉄筋50と、この鉄筋50の表面を覆うアルカリ性グラウト52と、を備えており、工場において鉄筋50とアルカリ性グラウト52とが一体化された状態で製造される。この第一床部62Aは、一般的な型枠工法や、図5において説明した遠心成形等を利用して製造される。なお、アルカリ性グラウト52の外周面には、第二床部(不図示)との付着性、一体性を高めるための螺旋状の突起64が形成されている。なお、突起64は螺旋状に限定されず、異形鉄筋と同様のリブや節などの凹凸でも良い。また、突起64は適宜省略可能である。
【0068】
このように、第一床部62Aをプレキャスト化することで、現場において第一床部62Aを設置し、第一床部62Aの周囲に、硬化する前の弱アルカリコンクリートを打設することで、床を構築することができる。従って、施工性が向上する。
【0069】
また、図9に示されるように、アルカリ性グラウト52の外周面に溝を形成し、この溝に沿ってせん断補強筋48を配置しても良い。これにより、容易にせん断補強筋48を配筋できると共に、せん断補強筋48と第一床部62Aとの一体性を高めることができる。
【0070】
更に、上記実施形態は、柱、梁、壁、ブレース等の種々の構造部材に適用可能である。例えば、図10の断面図には、構造部材としての梁110が示されている。梁110は、第一梁部(第一硬化体)110Aと、第二梁部(第二硬化体)110Bと、を備えている。
【0071】
第二梁部110Bは、弱アルカリコンクリートで角柱状に形成されており、内部に複数(図10では、4つ)のシース管44が埋設されている。このシース管44は、梁110の四隅に埋設されており、せん断補強筋48によって補強されている。このシース管44内には、鉄筋(鋼材)50が配置されると共に、防錆充填材としてのアルカリ性グラウト52が充填されている。これらの鉄筋50及びアルカリ性グラウト52によって、第一梁部110Aが構成されている。このように、本実施形態は、構造部材としての梁110にも適用することができる。
【0072】
更に、ハーフプレキャスト工法を用いて構造部材を構築することも可能である。例えば、図11(A)及び図11(B)には、ハーフプレキャスト工法が適用された床66の断面図が示されている。なお、図11(A)は、第一床部66Aを構築する前の状態が示されている。
【0073】
床66は、第一床部(第一硬化体)66Aと、第二床部(第二硬化体)66Bと、を備えた複合構造とされている。第二床部66Bは、プレキャスト化されており、弱アルカリコンクリートで板状に形成されている。第二床部66Bの内部には、複数のボイド68が形成されると共に、PC鋼線又はPC鋼棒からなるPC鋼材70が埋設されている。このPC鋼材70にはエポキシ樹脂塗料等で防錆処理が施されており、張力が付与された状態で第二床部66Bに埋設されている。これにより、第二床部66Bに圧縮力(プレストレス)が導入されている。なお、ボイド68及びPC鋼材70は適宜省略可能である。
【0074】
プレキャスト化された第二床部66Bの上には、現場において鉄筋50及びせん断補強筋48が設置されると共に、普通コンクリートが打設される。これにより、板状の第一床部66Aが形成されると共に、第一床部66Aと第二床部66Bとが一体化される。このようにハーフプレキャスト工法を用いることにより、施工性を向上させることができる。
【0075】
なお、上記第1、第2実施形態では、構造部材としての柱14、梁16、床18、42、54、62、66について説明したがこれに限らない。第1、第2実施形態は、種々の構造部材に適用可能であり、例えば、ブレース又は壁に適用することができる。
【0076】
例えば、図12には、第2実施形態が適用された壁(構造部材)72の断面図が示されている。壁72は、水平方向に対向する一対の第一壁部(第一硬化体)72Aと、これらの第一壁部72Aの間に配置された第二壁部(第二硬化体)72Bと、を備えた複合構造とされている。これらの第一壁部72A及び第二壁部72Bによって、壁72の部材断面(壁72の表面と直交する断面)が構成されている。
【0077】
第一壁部72Aは、普通コンクリートで板状に形成されており、その内部に鉄筋(鋼材)74及びせん断補強筋76が埋設された鉄筋コンクリート造とされている。これらの第一壁部72Aの対向面には、第二壁部72Bとの付着性、一体性を高めるための凹状のコッター78が所定の間隔で複数形成されている。また、対向する第一壁部72A同士は、鉄筋、PC鋼線、又はPC鋼棒からなる連結鋼材80で連結されている。この連結鋼材80によって、第一壁部72Aを型枠(外殻プレキャスト型枠)として用いる際に、対向する第一壁部72Aが外側へ倒れないようになっている。
【0078】
対向する第一壁部72Aの間には、第二壁部72Bが配置されている。即ち、第二壁部72Bは、左右の第一壁部72Aのそれぞれに、対向して配置されている。第二壁部72Bは弱アルカリコンクリートで構成されている。この第二壁部72Bは、第一壁部72Aと一体化されており、壁72に作用する各種の応力に対して第一壁部72Aと協同で抵抗可能とされている。
【0079】
このように、第一壁部72A及び第二壁部72Bで壁72を構成することにより、鉄筋74の腐食を抑制しつつ、製造エネルギー、及び二酸化炭素の排出量が実質的に低減された壁72を構築することができる。また、第一壁部72Aをプレキャスト化し、型枠として使用することで、第二壁部72Bの型枠が不要となるため、施工性が向上する。更に、対向する第一壁部72A同士を連結鋼材80で連結することで、第一壁部72Aの安定化を図ることができ、第一壁部72Aが外側へ倒れることを防止することができる。
【0080】
なお、第1実施形態では、柱14に2つの第一柱部14A、第二柱部14Bを設けたがこれに限らず、第一柱部14Aと第二柱部14Bとを適宜組み合わせて柱14を構成することができる。例えば、図2に示す構成において、第一柱部14Aの周囲に、更に第二柱部14B、第一柱部14Aを交互に配置し、複数層(3層以上)の層構造としても良い。また、図3に示す床18も同様に、第一床部18Aに、更に第二床部18B、第一床部18Aを交互に対向配置し、複数層(4層以上)の層構造(積層構造)としても良い。
【0081】
また、例えば、図13に示されるように、第一柱部82Aの周囲に第二柱部82Bを配置しても良い。具体的には、柱(構造部材)82は、第一柱部(第一硬化体)82Aと、この第一柱部82Aの周囲に配置された第二柱部(第二硬化体)82Bと、を備えた複合構造とされている。
【0082】
第二柱部82Bは、弱アルカリコンクリートで角形の環状に構成されている。第二柱部82Bの内周壁には、第一柱部82Aとの付着性、一体性を高めるためのコッター84が複数形成されている。第二柱部82Bで囲まれた空間(空洞部)には、第一柱部82Aが配置されている。第一柱部82Aは、普通コンクリートで構成されており、その内部に柱鉄筋86(鋼材)及びせん断補強筋88が配置されている。
【0083】
ここで、第二柱部82Bは、普通コンクリートと同等の耐久性能を有し、有効な仕上げとしての役割を担うことができるため、柱鉄筋86及びせん断補強筋88の腐食を抑制することができる。また、第二柱部82Bはアルカリ性が弱く、壁紙等の仕上げ材の接着性、耐久性を向上することができる。更に、第二柱部82Bで柱82の表層を構成することにより、柱82を緑化コンクリートとして使用することができる。図3に示す床18も同様に、対向する第二床部18Bの間に、第一床部18Aを配置して良い。
【0084】
更に、弱アルカリコンクリートでコンクリートブロックを形成しても良い。図14には、複数のコンクリートブロック(第二硬化体)90を積み上げて構成した組石造の壁92が示されている。コンクリートブロック90は、弱アルカリコンクリートで構成されており、対向する一対の表面材90Aと、これらの表面材90Aを繋ぐ連結材90Bと、を備えている。これらのコンクリートブロック90を積み上げることにより、壁92の第二壁部92Bが形成されている。また、コンクリートブロック90内には、鉄筋(鋼材)94が配置されると共に、普通コンクリート96が打設されており、これらの鉄筋94及び普通コンクリート96によって、壁92の第一壁部92Aが形成されている。
【0085】
ここで、コンクリートブロック90は運搬等が容易であると共に、型枠として使用できる。従って、施工性が向上する。なお、コンクリートブロック造に限らず、補強コンクリートブロック造にも適用することができる。
【0086】
また、上記第1、第2実施形態では、第二柱部14B、第二床部18B等の第二硬化体を弱アルカリコンクリート(コンクリート硬化体)で形成したが、普通コンクリートよりもアルカリ性が弱いモルタル硬化体又はグラウト硬化体で形成しても良い。また、第二柱部14B、第二床部18B等の第二硬化体に、鉄粉、鉄繊維、炭素繊維、竹繊維等の繊維補強材を混ぜ合わせて補強しても良い。この補強によって、ひび割れの低減効果、靭性の向上が期待できる。また、張力が付与された状態のPC線、PC鋼棒等からなるPC鋼材を埋設し、圧縮力(プレストレス)を導入しても良い。この際、PC鋼材には、エポキシ樹脂塗料等によって防錆処理を施すことが望ましい。
【0087】
更に、上記第1、第2実施形態において、鉄筋、せん断補強等は各構造部材に求められる強度に応じて適宜配置可能である。
【0088】
また、上記第1、第2実施形態に係る構造部材は、梁、柱、床、壁、ブレース、コンクリートブロック、レンガ等の種々の構造部材に適用可能であり、例えば、梁に適用した場合は、当該梁自体が本発明の権利範囲に含まれる。更には、現場打ち工法、プレキャスト工法等の種々の工法を用いることができる。また、これらの構造部材は、構造物の一部に用いても良いし、構造物の全てに用いても良い。更に、種々の構造の新築構造物や改修構造物に適用することができる。なお、構造物とは、建築構造物、及び土木構造物(例えば、橋梁、ダムなど)を含む概念である。
【0089】
<第二硬化体>
次に、第二硬化体(弱アルカリコンクリート(コンクリート硬化体)、モルタル硬化体、グラウト硬化体)について説明する。
【0090】
第二硬化体には、高炉スラグ微粉末を60質量%以上含有する水硬性セメントが水和反応して硬化した硬化体である。この水硬性セメントとしては、例えば、高炉スラグセメントC種、高硫酸塩スラグセメントや、高炉スラグ微粉末に、石膏、及びアルカリ刺激材を添加したものを用いることができる。このように、高炉スラグ微粉末が60質量%と高い含有率を占める水硬性セメントを用いることにより、セメント製造時における二酸化炭素の排出量を抜本的に削減することができる。
【0091】
第二硬化体としては、コンクリート硬化体、モルタル硬化体、グラウト硬化体が挙げられる。弱アルカリコンクリートは、前述の水硬性セメント、水、細骨材、粗骨材、混和材料等を含有する組成物が、水硬性セメントの水和反応によって硬化したものである。モルタル硬化体は前述の水硬性セメント、水、細骨材(砂)等を含有し、グラウト硬化体は前述の水硬性セメント、水を含有し、何れも水硬性セメントの水和反応によって硬化した硬化体である。
【0092】
従来、用いる高炉スラグ微粉末の粉末度や置換率がコンクリート組成物に及ぼす影響について報告されている(例えば、「高炉スラグ微粉末を用いたコンクリートの技術の現状」、日本建築学会編、1992年、3頁)。ここでは、普通ポルトランドセメントに対する高炉スラグ微粉末の使用量が多くなると、普通ポルトランドセメント単独使用に比べて、初期強度が低下し、中性化が早くなり、乾燥収縮が大きくなる等、コンクリート物性のマイナス傾向が顕著になることが報告されている。別に、かかる高炉スラグ微粉末等に加えて各種の混和材を用いたいくつかの提案も報告されている(例えば、特開昭62−158146号公報、特開昭63−2842号公報、特開平1−167267号公報、特開平10−114555号公報、特開2000−143326号公報、特開2003−306359号公報、特開2005−281123号公報、特開2007−217197号公報、特開2007−297226号公報)。しかし、これらの従来提案には実際のところ、高炉スラグ微粉末の使用量を多くすると、1)良好な施工性を確保できない、2)硬化体の乾燥収縮率を抑えることが難しい、3)硬化体の圧縮強度の低下が大きい等、何らかの点で重大な支障をきたすという問題がある。
【0093】
これに対して、以下に説明する本実施形態に係る第二硬化体は、高炉スラグ微粉末の使用割合を高くすることにより二酸化炭素の排出量を抑制しつつ、1)調製したコンクリート組成物の経時的な流動性の低下や空気量の低下を抑えて良好な施工性を確保すること、2)得られる第二硬化体の乾燥収縮率が高炉セメントB種を用いた場合に比べて大きくならないようにすること、3)得られる第二硬化体の必要な強度を発現すること、以上の1)〜3)の基本的な諸性能を同時に発現することができる。
なお、第二硬化体は、普通コンクリートと比較して中性化速度が速く、鉄筋等の防錆作用を呈する期間が短くなる傾向があるが、上記実施形態に係る構造部材では、普通コンクリートで形成された第一硬化体に防錆されるべき鋼材等を設けている。従って、第二硬化体の中性化を抑制することは特に必要としない。
【0094】
以下、第二硬化体として、弱アルカリコンクリートの具体例を挙げて説明する。以下に説明する弱アルカリコンクリートは、建設現場で打設されるコンクリート組成物としてだけでなく、コンクリート製品工場で加工される二次製品用のコンクリート組成物としても適用できる。
【0095】
<第1の弱アルカリコンクリート>
先ず、第1の弱アルカリコンクリートについて説明する。なお、ここでは、弱アルカリコンクリートをコンクリート組成物といい、水硬性セメントを高炉スラグ組成物という場合がある。
【0096】
第1の弱アルカリコンクリートは、少なくとも、結合材、水、細骨材、粗骨材及び混和材を含有して成るコンクリート組成物であって、結合材として下記の高炉スラグ組成物(水硬性セメント)を用い、且つ水/該高炉スラグ組成物の質量比を30〜60%に調製して成る。
【0097】
高炉スラグ組成物:粉末度が3000〜13000cm/gの高炉スラグ微粉末を80〜95質量%及び石膏を5〜20質量%(合計100質量%)の割合で含有する混合物100質量部当たり、解体コンクリートから分離した水酸化カルシウム含有率が3〜15質量%の再生コンクリート微粉末を3〜15質量部の割合で添加した高炉スラグ組成物。
【0098】
即ち、コンクリート組成物は、少なくとも、結合材、水、細骨材、粗骨材及び混和材を含有して成るものである。本発明のコンクリート組成物は結合材として特定の高炉スラグ組成物を用いたものであり、かかる高炉スラグ組成物は、粉末度が3000〜13000cm/gの高炉スラグ微粉末を80〜95質量%及び石膏を5〜20質量%(合計100質量%)の割合で含有する混合物100質量部当たり、解体コンクリートから分離した水酸化カルシウム含有率が3〜15質量%の再生コンクリート微粉末を3〜15質量部の割合で添加したものである。
【0099】
高炉スラグ微粉末は、粉末度が3000〜13000cm/gのものを使用するが、好ましくは3000〜8000cm/gのものを使用し、より好ましくは3500〜6500cm/gのものを使用する。粉末度が3000〜13000cm/gの範囲を外れたものを使用すると、調製したコンクリート組成物の流動性が悪くなったり、得られる硬化体の強度発現が低下したりする。なお、粉末度はブレーン法(JIS R 5201(1997年)による比表面積で表したものである。また、粉末度は、高炉水砕スラグを粉砕する時の粉砕方法、粉砕条件や粉砕後の分級により制御することができる。
【0100】
また石膏としては、無水石膏、二水石膏、半水石膏が挙げられるが、無水石膏が好ましい。無水石膏としては、それを90質量%以上の純度で含有するものであれば使用でき、天然無水石膏や副産無水石膏等を使用できる。粉末度は、3000〜8000cm/gのものが好ましく、3500〜6500cm/gのものがより好ましい。
【0101】
再生コンクリート微粉末としては、粉末度が2000〜7000cm/gのものを使用するのが好ましい。また水酸化カルシウム含有率が3〜15質量%のものを使用するが、好ましくは6〜12質量%のものを使用する。解体コンクリートから分離する方法は特に限定されず、これには例えば、破砕機を用いて破砕する方法や破砕物どうしを機械ですりもむ方法が挙げられる。
【0102】
解体コンクリートから分離された再生コンクリート微粉末は、例えば、解体コンクリートから粗骨材や細骨材を取り除くことにより得ることができる。このとき解体コンクリートから分離された粗骨材や細骨材も再生品として使用することができる。
解体コンクリートから分離した再生コンクリート微粉末であって、水酸化カルシウムを上記の含有率で含む再生コンクリート微粉末を得る手段としては、機械擦りもみ方式が好ましく、機械擦りもみ方式のなかでは偏心ロータ方式がより好ましい。以下、このような再生コンクリート微粉末の製造方法について説明する。
【0103】
本実施形態における好ましい再生コンクリート微粉末は、加熱を行わない機械擦りもみ方式により製造されることが、製造時の二酸化炭素の削減及び得られる微粉末の品質にばらつきがないという観点から好適である。特に、偏心ロータ方式や遊星ミル等の機械擦りもみ装置で製造する際に、機械すりもみプロセスを密閉された空間内で行い、空間内の空気中のCOを除去する方法、或いは、チッソガスなどの不活性ガスを封入する方法をとることで、処理中の炭酸化による水酸化カルシウム含有率の減少を抑制した再生コンクリート微粉末は本発明における如き、アルカリ刺激材として使用するのに最適な水酸化カルシウム含有率の微粉末を得ることができる。
【0104】
他方、解体コンクリート塊をジョークラッシャーやインペラーブレーカー等の破砕機を用いて破砕する方法においては、骨材とモルタル・ぺーストが同時に破砕されるため、再生コンクリート微粉末中に骨材粉が多くなり易く、また、微粉中の骨材粉とモルタル・ぺースト粉の比率もコンクリートの配(調)合によっては相当変化することとなり、高炉スラグ微粉末のアルカリ刺激材として用いるには、品質のコントロールが極めて困難であり、また、加熱と機械擦りもみによって骨材を取り出す加熱すりもみ方式で製造した微粉末は骨材粉が少なく、アルカリ刺激材として適しているものの、加熱によって解体コンクリート中の水和物が変化する懸念があり、また、製造エネルギーが大きくなり、セメント製造時のCOを削減するという観点からも好適とは言い難い。
【0105】
細骨材としては、公知の川砂、砕砂、山砂等を使用でき、粗骨材としては、公知の川砂利、砕石、軽量骨材等を使用できる。
【0106】
このコンクリート組成物では、水/高炉スラグ組成物の質量比を30〜60%に調製するが、好ましくは35〜55%に調製する。かかる質量比が60%より大きいと、得られる硬化体の乾燥収縮が大きくなり過ぎたり、強度の低下が著しくなる。逆に、かかる質量比が30%より小さいと、調製したコンクリート組成物の流動性や空気量の経時的な低下が大きくなり、施工性が低下する。尚、水/高炉スラグ組成物の質量比は、(用いた水の質量/用いた高炉スラグ組成物の質量)×100で求められるものである。
【0107】
混和材としては、従来公知のコンクリート用に用いられるものが挙げられる。これには例えば、セメント分散剤、乾燥収縮低減剤、膨張材等が挙げられる。このコンクリート組成物では、セメント分散剤と乾燥収縮低減剤を、またセメント分散剤と膨張材を、更にはセメント分散剤と乾燥収縮低減剤と膨張材を混和材として使用することができる。
【0108】
セメント分散剤としては、リグニンスルホン酸塩、グルコン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン高縮合物塩、メラミンスルホン酸ホルマリン高縮合物塩、ポリカルボン酸系の水溶性ビニル共重合体等が挙げられる。なかでも、セメント分散剤としては、ポリカルボン酸系の水溶性ビニル共重合体が好ましく、その構成単位の種類や組成比率及び分子量等の適切なポリカルボン酸系の水溶性ビニル共重合体がより好ましい。かかるポリカルボン酸系の水溶性ビニル共重合体としては、メタクリル酸(塩)から形成された単位を構成単位にもつ共重合体(例えば特開昭58−74552号公報、特開平1−226757号公報等に記載されているもの)、またマレイン酸(塩)から形成された単位を構成単位にもつ共重合体(例えば特開昭57−118058号公報、特開昭63−285140号公報、特開2005−132956号公報等に記載されているもの)が挙げられるが、そのなかでもセメント分散剤としては、メタクリル酸(塩)から形成された単位を構成単位にもつ水溶性ビニル共重合体がより好ましく、分子中に下記の構成単位Aを45〜85モル%、下記の構成単位Bを15〜55モル%及び下記の構成単位Cを0〜10モル%(合計100モル%)の割合で有する質量平均分子量2000〜80000(GPC法、プルラン換算、以下同じ)の水溶性ビニル共重合体が特に好ましい。
【0109】
構成単位A:メタクリル酸から形成された構成単位及びメタクリル酸塩から形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上
構成単位B:分子中に5〜150個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するメトキシポリエチレングリコールメタクリレートから形成された構成単位
構成単位C:(メタ)アリルスルホン酸塩から形成された構成単位及びメチルアクリレートから形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上
【0110】
以上説明したポリカルボン酸系の水溶性ビニル共重合体からなるセメント分散剤それ自体は公知の方法で合成できる。それがメタクリル酸(塩)から形成された単位を構成単位にもつ共重合体の場合は、例えば特開昭58−74552号公報、特開平1−226757号公報等に記載されている方法で合成でき、またマレイン酸(塩)から形成された単位を構成単位にもつ共重合体の場合は、例えば特開昭57−118058号公報、特開2005−132956号公報、特開2008−273766号公報等に記載されている方法で合成できる。これらのポリカルボン酸系の水溶性ビニル共重合体からなるセメント分散剤の使用量は、高炉スラグ組成物100質量部当たり、0.1〜1.5質量部の割合とするのが好ましい。
【0111】
乾燥収縮低減剤としては、公知のものを使用でき、特に限定されないが、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルからなる乾燥収縮低減剤が好ましく、なかでもジエチレングリコールモノブチルエーテル及びジプロピレングリコールジエチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれるものが好ましい。かかる乾燥収縮低減剤の使用量は、高炉スラグ組成物100質量部当たり、0.2〜4.0質量部の割合とするのが好ましい。
【0112】
膨張材としては、公知のものを使用でき、大別してカルシウムスルホアルミネート系のものと石灰系のものとの2種類が挙げられる。いずれも水和反応によりエトリンガイト及び水酸化カルシウムを生成して膨張する無機系の混和材であり、コンクリート用膨張材として、JIS−A6202の規格を満足するものが好ましい。かかる膨張材の使用量は、コンクリート組成物1m当たり、10〜25kgの割合とするのが好ましい。
【0113】
以下、第1の弱アルカリコンクリートの構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、当該実施例に限定されるというものではない。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
【0114】
(実施例)
試験区分1(水溶性ビニル共重合体の合成)
・水溶性ビニル共重合体(p−1)の合成
メタクリル酸60g、メトキシポリ(オキシエチレン単位数が23個、以下n=23とする)エチレングリコールメタクリレート300g、メタリルスルホン酸ナトリウム5g、3−メルカプトプロピオン酸4g及び水490gを反応容器に仕込んだ後、48%水酸化ナトリウム水溶液58gを加え、攪拌しながら部分中和して均一に溶解した。反応容器内の雰囲気を窒素置換した後、反応系の温度を温水浴にて60℃に保ち、過硫酸ナトリウムの20%水溶液25gを加えてラジカル重合反応を開始し、5時間反応を継続して反応を終了した。その後、48%水酸化ナトリウム水溶液23gを加えて反応物を完全中和し、メタクリル酸塩から形成された単位を構成単位にもつポリカルボン酸系の水溶性ビニル共重合体(p−1)の40%水溶液を得た。水溶性ビニル共重合体(p−1)を分析したところ、メタクリル酸ナトリウムから形成された構成単位/メトキシポリ(n=23)エチレングリコールメタクリレートから形成された構成単位/メタリルスルホン酸ナトリウムから形成された構成単位=70/27/3(モル%)の割合で有する質量平均分子量が33800の水溶性ビニル共重合体であった。
【0115】
・水溶性ビニル共重合体(p−2)〜(p−4)及び(pr−1)〜(pr−4)の合成
水溶性ビニル共重合体(p−1)の合成と同様にして、水溶性ビニル共重合体(p−2)〜(p−4)及び(pr−1)〜(pr−4)を合成した。以上で合成した各水溶性ビニル共重合体の内容を表1にまとめて示した。
【0116】
【表1】

【0117】
表1において、
構成単位A〜C:各構成単位を形成することとなる単量体で表示した。
A−1:メタクリル酸ナトリウム
A−2:メタクリル酸
B−1:メトキシポリ(n=23)エチレングリコールメタクリレート
B−2:メトキシポリ(n=68)エチレングリコールメタクリレート
B−3:メトキシポリ(n=9)エチレングリコールメタアクリレート
C−1:メタリルスルホン酸ナトリウム
C−2:アリルスルホン酸ナトリウム
C−3:メチルアクリレート
【0118】
試験区分2(高炉スラグ組成物の調製)
表2に記載の調合条件で、高炉スラグ微粉末、無水石膏、再生コンクリート微粉末を混合して高炉スラグ組成物を調製し、高炉スラグ組成物(S−1)〜(S−4)及び(R−1)〜(R−5)を得た。
【0119】
【表2】

【0120】
表2において、
sg−1:粉末度が4100cm/gの高炉スラグ微粉末
sg−2:粉末度が5900cm/gの高炉スラグ微粉末
sg−3:粉末度が1020cm/gの高炉スラグ微粉末
gp−1:粉末度が4150cm/gの無水石膏
gp−2:粉末度が5800cm/gの無水石膏
rc−1:粉末度が5860cm/g且つ水酸化カルシウム含有率が9.2%の再生コンクリート微粉末
rc−2:粉末度が4620cm/g且つ水酸化カルシウム含有率が6.5%の再生コンクリート微粉末
rc−3:粉末度が4350cm/g且つ水酸化カルシウム含有率が1.5%の再生コンクリート微粉末
【0121】
試験区分3(コンクリート組成物の調製)
実施例1〜16
表3に記載の配合条件で、50リットルのパン型強制練りミキサーに、練り混ぜ水(水道水)、高炉スラグ組成物、細骨材(大井川水系産川砂、密度=2.58g/cm)の各所定量を投入し、またセメント分散剤、乾燥収縮低減剤、膨張材等の混和材の各所定量を投入して、更に空気量調節剤(竹本油脂社製のAE剤、商品名AE−300)を投入し、45秒間練り混ぜた。最後に、粗骨材(岡崎産砕石、密度=2.68g/cm)の所定量を投入し、60秒間練り混ぜて、目標スランプが18±1cm、目標空気量が4.5±1%とした水/高炉スラグ組成物比が45%又は40%のコンクリート組成物を調製した。
【0122】
比較例1〜12
表3に記載の配合条件で、実施例と同様な練り混ぜ方法により、水/高炉スラグ組成物比が45%のコンクリート組成物を調製した。
【0123】
比較例13及び14
表3に記載の配合条件で、実施例と同様な練り混ぜ方法により、高炉セメントB種を用いた水/高炉スラグ組成物比が45%又は50%のコンクリート組成物を調製した。
【0124】
【表3】

【0125】
表3において、
二酸化炭素排出量:コンクリート組成物1mを製造する場合の二酸化炭素の排出量(kg/コンクリート1m)。但し、石膏及び再生コンクリート微粉末の製造に必要なエネルギーに由来する二酸化炭素の排出量を除いて計算した値
セメント分散剤の種類:表1に記載した水溶性ビニル共重合体又は下記のP−5
P−5:ポリカルボン酸系の水溶性ビニル共重合体からなるセメント分散剤として、竹本油脂社製の商品名チューポールHP−11W(マレイン酸とα−アリル−ω−メチル−ポリオキシエチレンとの共重合体塩)
使用量:高炉スラグ組成物100質量部当たりの、セメント分散剤、乾燥収縮低減剤又は膨張材の固形分としての質量部
高炉スラグ組成物の種類:表2に記載したもの
*1:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
*2:ジプロピレングリコールジエチレングリコールモノブチルエーテル
*3:太平洋マテリアル社製の商品名が太平洋ハイパーエクスパン(石灰系膨張材)
*4:高炉セメントB種(密度=3.04g/cm、ブレーン値3850cm/g)
【0126】
試験区分4(調製したコンクリート組成物の評価)
調製した各例のコンクリート組成物について、空気量、スランプ、スランプ残存率を下記のように求めた。また各コンクリート組成物から得た硬化体について、乾燥収縮率及び圧縮強度を下記のように求めた。
【0127】
・空気量(容量%):練り混ぜ直後のコンクリート組成物及び更に60分間静置後のコンクリート組成物について、JIS−A1128に準拠して測定した。
・スランプ(cm):空気量の測定と同時に、JIS−A1101に準拠して測定した。
・スランプ残存率(%):(60分間静置後のスランプ/練り混ぜ直後のスランプ)×100で求めた。
・乾燥収縮率:JIS−A1129に準拠し、各例のコンクリート組成物を20℃×60%RHの条件下で保存した材齢26週の供試体についてコンパレータ法により乾燥収縮ひずみを測定し、乾燥収縮率を求めた。この数値は小さいほど、乾燥収縮が小さいことを示す。
・圧縮強度(N/mm):各例のコンクリート組成物について、JIS−A1108に準拠し、材齢7日及び材齢28日で測定した。
【0128】
結果を表4にまとめて示した。各実施例で調製したコンクリート組成物は、高炉セメントB種を用いた場合に比べて、コンクリート1mを製造するための二酸化炭素の排出量が少なく、またコンクリート組成物の経時的な流動性に優れ、得られる硬化体の乾燥収縮率が800×10−6よりも小さく、必要とされる充分な圧縮強度が得られている。
【0129】
【表4】

【0130】
表4において、
比較例2、3及び10〜12:目標とする流動性(スランプ値)が得られなかったので測定しなかった。
【0131】
<第2の弱アルカリコンクリート>
次に、第2の弱アルカリコンクリートについて説明する。なお、ここでは、弱アルカリコンクリートをコンクリート組成物といい、水硬性セメントを高炉セメント組成物という場合がある。また、第1の弱アルカリコンクリートと同じものは適宜省略して説明する。
【0132】
第2の弱アルカリコンクリートは、少なくとも、結合材、水、細骨材、粗骨材及び混和材を含有して成るコンクリート組成物であって、結合材として下記の高炉セメント組成物(水硬性セメント)を用い、且つ水/該高炉セメント組成物の質量比を30〜60%に調製して成る。
【0133】
高炉セメント組成物:粉末度が3000〜13000cm/gの高炉スラグ微粉末を60〜90質量%、石膏を5〜20質量%及びポルトランドセメントを5〜35質量%(合計100質量%)の割合で含有する混合物100質量部当たり、解体コンクリートから分離した水酸化カルシウム含有率が3〜15質量%の再生コンクリート微粉末を10〜30質量部の割合で添加した高炉セメント組成物。
【0134】
即ち、第2の弱アルカリコンクリートは、少なくとも、結合材、水、細骨材、粗骨材及び混和材を含有して成るものである。このコンクリート組成物は結合材として特定の高炉セメント組成物を用いたものであり、かかる高炉セメント組成物は、粉末度が3000〜13000cm/gの高炉スラグ微粉末を60〜90質量%、石膏を5〜20質量%及びポルトランドセメントを5〜35質量%(合計100質量%)の割合で含有する混合物100質量部当たり、解体コンクリートから分離した水酸化カルシウム含有率が3〜15質量%の再生コンクリート微粉末を10〜30質量部の割合で添加したものである。
【0135】
ポルトランドセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント等が挙げられるが、汎用の普通ポルトランドセメントが好ましい。
【0136】
また、コンクリート組成物では、水/高炉セメント組成物の質量比を30〜60%に調製するが、好ましくは35〜55%に調製する。かかる質量比が60%より大きいと、得られる硬化体の乾燥収縮が大きくなり過ぎたり、強度の低下が著しくなる。逆に、かかる質量比が30%より小さいと、調製したコンクリート組成物の流動性や空気量の経時的な低下が大きくなり、施工性が低下する。尚、本発明において水/高炉セメント組成物の質量比は、(用いた水の質量/用いた高炉セメント組成物の質量)×100で求められるものである。
【0137】
混和材としては、従来公知のコンクリート用に用いられるものが挙げられる。これには例えば、セメント分散剤、乾燥収縮低減剤、膨張材等が挙げられる。このコンクリート組成物では、セメント分散剤と乾燥収縮低減剤を組み合せて、またセメント分散剤と膨張材を、更にはセメント分散剤と乾燥収縮低減剤と膨張材を組み合せて混和材として使用することができ、第1の弱アルカリコンクリートと同様のものを使用することができる。
【0138】
なお、再生コンクリート微粉末、粗骨材、細骨材については、第1の弱アルカリコンクリートと同様のものを使用することができる。
【0139】
以下、第2の弱アルカリコンクリートの構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、当該実施例に限定されるというものではない。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
【0140】
(実施例)
試験区分1(水溶性ビニル共重合体の合成)
・水溶性ビニル共重合体(p−1)〜(p−4)及び(pr−1)〜(pr−4)は、第1の弱アルカリコンクリートの実施例で示したものと同様の方法で合成を合成した。合成した各水溶性ビニル共重合体の内容は表1と同様である。
【0141】
試験区分2(高炉セメント組成物の調製)
表5に記載の調合条件で、高炉スラグ微粉末、無水石膏、ポルトランドセメント及び再生コンクリート微粉末を混合して高炉セメント組成物を調製し、高炉セメント組成物(S−1)〜(S−5)及び(R−1)〜(R−6)を得た。
【0142】
【表5】

【0143】
表5において、
sg−1:粉末度が4100cm/gの高炉スラグ微粉末
sg−2:粉末度が5900cm/gの高炉スラグ微粉末
sg−3:粉末度が1020cm/gの高炉スラグ微粉末
gp−1:粉末度が4150cm/gの無水石膏
gp−2:粉末度が5800cm/gの無水石膏
pc−1:普通ポルトランドセメント
pc−2:早強ポルトランドセメント
rc−1:粉末度が5860cm/g且つ水酸化カルシウム含有率が9.2%の再生コンクリート微粉末
rc−2:粉末度が4620cm/g且つ水酸化カルシウム含有率が6.5%の再生コンクリート微粉末
rc−3:粉末度が4350cm/g且つ水酸化カルシウム含有率が1.5%の再生コンクリート微粉末
rc−4:、粉末度が1200cm/g且つ水酸化カルシウム含有率が6.1%の再生コンクリート微粉末
【0144】
試験区分3(コンクリート組成物の調製)
実施例1〜17
表6に記載の配合条件で、50リットルのパン型強制練りミキサーに、練り混ぜ水(水道水)、高炉セメント組成物、細骨材(大井川水系産川砂、密度=2.58g/cm)の各所定量を投入し、またセメント分散剤、乾燥収縮低減剤、膨張材等の混和材の各所定量を投入して、更に空気量調節剤(竹本油脂社製のAE剤、商品名AE−300)を投入し、45秒間練り混ぜた。最後に、粗骨材(岡崎産砕石、密度=2.68g/cm)の所定量を投入し、60秒間練り混ぜて、目標スランプが18±1cm、目標空気量が4.5±1%とした水/高炉セメント組成物比が45%又は40%のコンクリート組成物を調製した。
【0145】
比較例1〜13
表6に記載の配合条件で、実施例と同様な練り混ぜ方法により、水/高炉セメント組成物比が45%のコンクリート組成物を調製した。
【0146】
比較例14及び15
表6に記載の配合条件で、実施例と同様な練り混ぜ方法により、高炉セメントB種を用いた水/高炉セメント組成物比が45%又は50%のコンクリート組成物を調製した。
【0147】
【表6】

【0148】
表6において、
二酸化炭素排出量:コンクリート組成物1mを製造する場合の二酸化炭素の排出量(kg/コンクリート1m)。但し、石膏及び再生コンクリート微粉末の製造に必要なエネルギーに由来する二酸化炭素の排出量を除いて計算した値
セメント分散剤の種類:表5に記載した水溶性ビニル共重合体又は下記のP−5
P−5:ポリカルボン酸系の水溶性ビニル共重合体からなるセメント分散剤として、竹本油脂社製の商品名チューポールHP−11W(マレイン酸とα−アリル−ω−メチル−ポリオキシエチレンとの共重合体塩)
使用量:高炉セメント組成物100質量部当たりの、セメント分散剤、乾燥収縮低減剤又は膨張材の固形分としての質量部
高炉セメント組成物の種類:表9に記載したもの
*1:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
*2:ジプロピレングリコールジエチレングリコールモノブチルエーテル
*3:太平洋マテリアル社製の商品名が太平洋ハイパーエクスパン(石灰系膨張材)
*4:高炉セメントB種(密度=3.04g/cm、ブレーン値3850cm/g)
【0149】
試験区分4(調製したコンクリート組成物の評価)
調製した各例のコンクリート組成物について、空気量、スランプ、スランプ残存率を下記のように求めた。また各コンクリート組成物から得た硬化体について、乾燥収縮率及び圧縮強度を下記のように求めた。
【0150】
・空気量(容量%):練り混ぜ直後のコンクリート組成物及び更に60分間静置後のコンクリート組成物について、JIS−A1128に準拠して測定した。
・スランプ(cm):空気量の測定と同時に、JIS−A1101に準拠して測定した。
・スランプ残存率(%):(60分間静置後のスランプ/練り混ぜ直後のスランプ)×100で求めた。
・乾燥収縮率:JIS−A1129に準拠し、各例のコンクリート組成物を20℃×60%RHの条件下で保存した材齢26週の供試体についてコンパレータ法により乾燥収縮ひずみを測定し、乾燥収縮率を求めた。この数値は小さいほど、乾燥収縮が小さいことを示す。
・圧縮強度(N/mm):各例のコンクリート組成物について、JIS−A1108に準拠し、材齢7日及び材齢28日で測定した。
【0151】
結果を表7にまとめて示した。各実施例で調製したコンクリート組成物は、高炉セメントB種を用いた場合に比べて、コンクリート1mを製造するための二酸化炭素の排出量が少なく、またコンクリート組成物の経時的な流動性に優れ、得られる硬化体の乾燥収縮率が800×10−6よりも小さく、必要とされる充分な圧縮強度が得られている。
【0152】
【表7】

【0153】
表7において、
比較例2、3及び11〜13:目標とする流動性(スランプ値)が得られなかったので測定しなかった。
【0154】
<第3の弱アルカリコンクリート>
次に、第3の弱アルカリコンクリートについて説明する。なお、ここでは、弱アルカリコンクリートをコンクリート組成物といい、水硬性セメントを高炉スラグ組成物という場合がある。また、第1、第2の弱アルカリコンクリートと同じものは適宜省略して説明する。
【0155】
第3の弱アルカリコンクリートは、少なくとも、結合材、水、細骨材、粗骨材及び混和材を含有して成るコンクリート組成物であって、結合材として下記の高炉スラグ組成物(水硬性セメント)を用い、且つ水/該高炉スラグ組成物の質量比を30〜60%に調製して成る。
【0156】
高炉スラグ組成物:粉末度が3000〜13000cm/gの高炉スラグ微粉末を80〜95質量%及び石膏を5〜20質量%(合計100質量%)の割合で含有する混合物100質量部当たり、アルカリ刺激材を0.5〜1.5質量部又は5〜45質量部の割合で添加した高炉スラグ組成物。
【0157】
即ち、第3の弱アルカリコンクリートは、少なくとも、結合材、水、細骨材、粗骨材及び混和材を含有して成るものである。このコンクリート組成物は結合材として特定の高炉スラグ組成物を用いたものであり、かかる高炉スラグ組成物は、粉末度が3000〜13000cm/gの高炉スラグ微粉末を80〜95質量%及び石膏を5〜20質量%(合計100質量%)の割合で含有する混合物100質量部当たり、アルカリ刺激材を0.5〜1.5質量部又は5〜45質量部の割合で添加したものである。
【0158】
アルカリ刺激材としては、水酸化カルシウム、生石灰、軽焼マグネシア、軽焼ドロマイト、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、再生コンクリート微粉末等が挙げられる。なかでも、アルカリ刺激材としては、水と接触したときに徐々に水酸化カルシウムを生成する性質を持つアルカリ刺激材が好まく、かかる性質を有するアルカリ刺激材として、ポルトランドセメントが好ましい。ポルトランドセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントが挙げられるが、汎用の普通ポルトランドセメントが好ましい。
【0159】
このコンクリート組成物では、水/高炉スラグ組成物の質量比を30〜60%に調製するが、好ましくは35〜55%に調製する。かかる質量比が60%より大きいと、得られる硬化体の乾燥収縮が大きくなり過ぎたり、強度の低下が著しくなる。逆にかかる質量比が30%より小さいと、調製したコンクリート組成物の流動性や空気量の経時的な低下が大きくなり、施工性が低下する。尚、本発明において水/高炉スラグ組成物の質量比は、(用いた水の質量/用いた高炉スラグ組成物の質量)×100で求められるものである。
【0160】
なお、再生コンクリート微粉末、粗骨材、細骨材、混和材等については、第1の弱アルカリコンクリートと同様のものを使用することができる。
【0161】
以下、第3の弱アルカリコンクリートの構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、当該該実施例に限定されるというものではない。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
【0162】
(実施例)
試験区分1(水溶性ビニル共重合体の合成)
・水溶性ビニル共重合体(p−1)〜(p−4)及び(pr−1)〜(pr−4)は、第1の弱アルカリコンクリートの実施例で示したものと同様の方法で合成を合成した。合成した各水溶性ビニル共重合体の内容は表1と同様である。
【0163】
試験区分2(高炉スラグ組成物の調製)
表8に記載の調合条件で、高炉スラグ微粉末、無水石膏及びアルカリ刺激材を混合して高炉スラグ組成物を調製し、高炉スラグ組成物(S−1)〜(S−10)及び(R−1)〜(R−10)を得た。
【0164】
【表8】

【0165】
表8において、
sg−1:粉末度が4100cm/gの高炉スラグ微粉末
sg−2:粉末度が5900cm/gの高炉スラグ微粉末
sg−3:粉末度が1020cm/gの高炉スラグ微粉末
gp−1:粉末度が4150cm/gの無水石膏
gp−2:粉末度が5800cm/gの無水石膏
rc−1:普通ポルトランドセメント
rc−2:早強ポルトランドセメント
【0166】
試験区分3(コンクリート組成物の調製)
実施例1〜36
表9に記載の配合条件で、50リットルのパン型強制練りミキサーに、練り混ぜ水(水道水)、高炉スラグ組成物、細骨材(大井川水系産川砂、密度=2.58g/cm)の各所定量を投入し、またセメント分散剤、乾燥収縮低減剤、膨張材等の混和材の各所定量を投入して、更に空気量調節剤(竹本油脂社製のAE剤、商品名AE−300)を投入し、45秒間練り混ぜた。最後に、粗骨材(岡崎産砕石、密度=2.68g/cm)の所定量を投入し、60秒間練り混ぜて、目標スランプが18±1cm、目標空気量が4.5±1%とした水/高炉スラグ組成物の質量比が45%又は40%のコンクリート組成物を調製した。
【0167】
比較例1〜27
表10に記載の配合条件で、実施例と同様な練り混ぜ方法により、水/高炉スラグ組成物の質量比が45%のコンクリート組成物を調製した。
【0168】
比較例28及び29
表10に記載の配合条件で、実施例と同様な練り混ぜ方法により、高炉セメントB種を用いた水/高炉セメントの質量比が45%又は50%のコンクリート組成物を調製した。
【0169】
【表9】

【0170】
【表10】

【0171】
表9、表10において、
二酸化炭素排出量:コンクリート組成物1mを製造する場合の二酸化炭素の排出量(kg/コンクリート1m)。但し、石膏及び再生コンクリート微粉末の製造に必要なエネルギーに由来する二酸化炭素の排出量を除いて計算した値
セメント分散剤の種類:表1に記載した水溶性ビニル共重合体又は下記のP−5
P−5:ポリカルボン酸系の水溶性ビニル共重合体からなるセメント分散剤として、竹本油脂社製の商品名チューポールHP−11W(マレイン酸とα−アリル−ω−メチル−ポリオキシエチレンとの共重合体塩)
使用量:高炉スラグ組成物(比較例28及び29は高炉セメントB種)100質量部当たりの、セメント分散剤、乾燥収縮低減剤又は膨張材の固形分としての質量部
高炉スラグ組成物の種類:表8に記載したもの
*1:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
*2:ジプロピレングリコールジエチレングリコールモノブチルエーテル
*3:太平洋マテリアル社製の商品名が太平洋ハイパーエクスパン(石灰系膨張材)
*4:高炉セメントB種(密度=3.04g/cm、ブレーン値3850cm/g)
【0172】
試験区分4(調製したコンクリート組成物の評価)
調製した各例のコンクリート組成物について、空気量、スランプ、スランプ残存率を下記のように求めた。また各コンクリート組成物から得た硬化体について、乾燥収縮率及び圧縮強度を下記のように求めた。
【0173】
・空気量(容量%):練り混ぜ直後のコンクリート組成物及び更に60分間静置後のコンクリート組成物について、JIS−A1128に準拠して測定した。
・スランプ(cm):空気量の測定と同時に、JIS−A1101に準拠して測定した。
・スランプ残存率(%):(60分間静置後のスランプ/練り混ぜ直後のスランプ)×100で求めた。
・乾燥収縮率:JIS−A1129に準拠し、各例のコンクリート組成物を20℃×60%RHの条件下で保存した材齢26週の供試体についてコンパレータ法により乾燥収縮ひずみを測定し、乾燥収縮率を求めた。この数値は小さいほど、乾燥収縮が小さいことを示す。
・圧縮強度(N/mm):各例のコンクリート組成物について、JIS−A1108に準拠し、材齢7日及び材齢28日で測定した。
【0174】
結果を表11及び表12にまとめて示した。各実施例で調製したコンクリート組成物は、高炉セメントB種を用いた場合に比べて、コンクリート組成物1mを製造するための二酸化炭素の排出量が少なく、またコンクリート組成物の経時的な流動性に優れ、得られる硬化体の乾燥収縮率が800×10−6よりも小さく、必要とされる充分な圧縮強度が得られている。
【0175】
【表11】

【0176】
【表12】

【0177】
表12において、
比較例1、2、6、7、21〜23及び25〜27:目標とする流動性(スランプ値)が得られなかったので測定しなかった。
【0178】
<第4の弱アルカリコンクリート>
次に、第4の弱アルカリコンクリートについて説明する。なお、ここでは、弱アルカリコンクリートをコンクリート組成物といい、水硬性セメントを高炉セメントという場合がある。また、第1〜第3の弱アルカリコンクリートと同じものは適宜省略して説明する。
【0179】
第4の弱アルカリコンクリートは、少なくとも、セメント、水、細骨材、粗骨材及び混和材を含有して成るコンクリート組成物であって、セメントとして下記の高炉セメント(水硬性セメント)を用い、且つ水/該高炉セメント比を20〜60%に調製し、また該高炉セメント100質量部当たり、混和材の少なくとも一部として下記のA成分を0.1〜1.5質量部含有して成る。
【0180】
高炉セメント:粉末度が3000〜13000cm/gの高炉スラグ微粉末とポルトランドセメントとからなり、且つ該高炉スラグ微粉末を60〜80質量%及びポルトランドセメントを20〜40質量%(合計100質量%)の割合で含有する高炉セメント。
【0181】
A成分:下記の水溶性ビニル共重合体P及び下記の水溶性ビニル共重合体Qから選ばれる一つ又は二つ以上の水溶性ビニル共重合体からなるセメント分散剤。
水溶性ビニル共重合体P:分子中に下記の構成単位Xを45〜85モル%、下記の構成単位Yを15〜55モル%及び下記の構成単位Zを0〜10モル%(合計100モル%)の割合で有する質量平均分子量2000〜80000の水溶性ビニル共重合体。
構成単位X:メタクリル酸から形成された構成単位及びメタクリル酸塩から形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上
構成単位Y:分子中に5〜150個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するメトキシポリエチレングリコールメタクリレートから形成された構成単位
構成単位Z:(メタ)アリルスルホン酸塩から形成された構成単位及びメチルアクリレートから形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上
【0182】
水溶性ビニル共重合体Q:分子中に下記の構成単位Lを40〜60モル%及び下記の構成単位Mを60〜40モル%(合計100モル%)の割合で有する質量平均分子量2000〜50000の水溶性ビニル共重合体。
構成単位L:マレイン酸から形成された構成単位及びマレイン酸塩からから形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上
構成単位M:分子中に5〜100個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するα−アリル−ω−メチル−ポリオキシエチレンから形成された構成単位及び分子中に5〜100個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するα−アリル−ω−ヒドロキシ−ポリオキシエチレンから形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上
【0183】
第4の弱アルカリコンクリートには、混和材の少なくとも一部として、適宜、下記のB成分を0.2〜4.0質量部、下記のC成分を0.1〜5.0質量部の割合で加えて含有してもよい。この場合、混和材の少なくとも一部として、下記B成分又は下記C成分を加えても良いし、下記B成分及び下記C成分を加えても良い。
B成分:乾燥収縮低減剤
C成分:凝結促進剤
【0184】
即ち、第4の弱アルカリコンクリートは、少なくとも結合材、水、細骨材、粗骨材及び混和材を用い、結合材として特定の高炉セメントを含有し、また特定の混和剤を所定割合で含有して成るものである。かかる高炉セメントは、粉末度が3000〜13000cm/gの高炉スラグ微粉末を60〜80質量%及びポルトランドセメントを20〜40質量%(合計100質量%)の割合で含有するものである。
【0185】
結合材として用いる高炉セメント(水硬性セメント)は、前記の高炉スラグ微粉末を60〜80質量%及びポルトランドセメントを20〜40質量%(合計100質量%)の割合で含有するものであるが、前記の高炉スラグ微粉末を64〜76質量%及びポルトランドセメントを24〜36質量%(合計100質量%)の割合で含有するものが好ましい。したがって、このコンクリート組成物において結合材として用いる高炉セメントには、JIS−R5211の規格に適合する高炉セメントC種が含まれる。
【0186】
このコンクリート組成物は、水/高炉セメントの質量比を20〜60%に調製したものであるが、好ましくは25〜50%に調製したものとする。かかる質量比が60%より大きいと、得られる硬化体の乾燥収縮が大きくなり過ぎたり、強度の低下が著しくなる。逆にかかる質量比が20%より小さいと、調製したコンクリート組成物の流動性や空気量の経時的な低下が大きくなり、施工性が低下する。尚、水/高炉セメントの質量比は、(用いた水の質量/用いた高炉セメントの質量)×100で求められるものである。
【0187】
また、コンクリート組成物は、混和材として、A成分のセメント分散剤を含有している。この混和材には、B成分の乾燥収縮低減剤、C成分の凝結促進剤を適宜、加えて含有しても良い。この場合、混和材の少なくとも一部として、下記B成分又は下記C成分を加えても良いし、下記B成分及び下記C成分を加えても良い。
【0188】
A成分のセメント分散剤は、水溶性ビニル共重合体P及び水溶性ビニル共重合体Qから選ばれる一つ又は二つ以上の水溶性ビニル共重合体からなるものである。ここで水溶性ビニル共重合体Pは、分子中に下記の構成単位Xを45〜85モル%、下記の構成単位Yを15〜55モル%及び下記の構成単位Zを0〜10モル%(合計100モル%)の割合で有する質量平均分子量2000〜80000(GPC法、プルラン換算、以下同じ)の水溶性ビニル共重合体である。
【0189】
構成単位X:メタクリル酸から形成された構成単位及びメタクリル酸塩から形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上
構成単位Y:分子中に5〜150個、好ましくは7〜90個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するメトキシポリエチレングリコールメタクリレートから形成された構成単位
構成単位Z:(メタ)アリルスルホン酸塩から形成された構成単位及びメチルアクリレートから形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上
【0190】
A成分のセメント分散剤として用いる前記の水溶性ビニル共重合体Pそれ自体は公知の方法で合成できる。例えば特開昭58−74552号公報、特開平1−226757号公報等に記載されている方法で合成できる。かかる水溶性ビニル共重合体Pからなるセメント分散剤の使用量は、高炉セメント100質量部当たり、0.1〜1.5質量部、好ましくは0.2〜1.0質量部の割合とする。
【0191】
また水溶性ビニル共重合体Qは、分子中に下記の構成単位Lを40〜60モル%及び下記の構成単位Mを40〜60モル%(合計100モル%)の割合で有する質量平均分子量2000〜50000の水溶性ビニル共重合体である。
【0192】
構成単位L:マレイン酸から形成された構成単位及びマレイン酸塩からから形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上
構成単位M:分子中に5〜100個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するα−アリル−ω−メチル−ポリオキシエチレンから形成された構成単位及び分子中に5〜100個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するα−アリル−ω−ヒドロキシ−ポリオキシエチレンから形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上
【0193】
A成分のセメント分散剤として用いる前記の水溶性ビニル共重合体Qそれ自体は公知の方法で合成できる。例えば特開昭57−118058号公報、特開2005−132955号公報、特開2008−273766号公報等に記載されている方法で合成できる。かかる水溶性ビニル共重合体Qからなるセメント分散剤の使用量は、高炉セメント100質量部当たり、0.1〜1.5質量部、好ましくは0.2〜1.0質量部の割合とする。
【0194】
B成分の乾燥収縮低減剤としては、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルからなるものが好ましく、なかでもジエチレングリコールモノブチルエーテル及びジプロピレングリコールジエチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる一つ又は二つ以上がより好ましい。かかる乾燥収縮低減剤の使用量は、高炉セメント100質量部当たり、0.2〜4.0質量部、好ましくは0.6〜3.5質量部の割合とする。
【0195】
C成分の凝結促進剤としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の炭酸塩の他に、塩化カルシウム、亜硝酸塩、チオシアン酸塩、硫酸塩等が挙げられるが、なかでも、初期強度の増進効果において炭酸塩及び塩化カルシウムが好ましく、炭酸ナトリウムがより好ましい。かかる凝結促進剤の使用量は、高炉セメント100質量部当たり、0.1〜5.0質量部、好ましくは0.3〜3.0質量部の割合とする。
【0196】
なお、粗骨材、細骨材等については、第1の弱アルカリコンクリートと同様のものを使用することができる。
【0197】
以下、第4の弱アルカリコンクリートの構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、当該実施例に限定されるというものではない。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
【0198】
(実施例)
試験区分1(A成分のセメント分散剤としての水溶性ビニル共重合体の合成)
・水溶性ビニル共重合体(ap−1)の合成
メタクリル酸60g、メトキシポリ(オキシエチレン単位数が23個、以下n=23とする)エチレングリコールメタクリレート300g、メタリルスルホン酸ナトリウム5g、3−メルカプトプロピオン酸6g及び水490gを反応容器に仕込んだ後、48%水酸化ナトリウム水溶液58gを加え、攪拌しながら部分中和して均一に溶解した。反応容器内の雰囲気を窒素置換した後、反応系の温度を温水浴にて60℃に保ち、過硫酸ナトリウムの20%水溶液25gを加えてラジカル重合反応を開始し、5時間反応を継続して反応を終了した。その後、48%水酸化ナトリウム水溶液24gを加えて反応物を完全中和し、水溶性ビニル共重合体(ap−1)の40%水溶液を得た。水溶性ビニル共重合体(ap−1)を分析したところ、メタクリル酸ナトリウムから形成された構成単位/メトキシポリ(n=23)エチレングリコールメタクリレートから形成された構成単位/メタリルスルホン酸ナトリウムから形成された構成単位=70/27/3(モル%)の割合で有する質量平均分子量が31700の水溶性ビニル共重合体であった。
【0199】
・水溶性ビニル共重合体(ap−2)〜(ap−4)及び(apr−1)〜(apr−4)の合成
水溶性ビニル共重合体(ap−1)の合成と同様にして、水溶性ビニル共重合体(ap−2)〜(ap−4)及び(apr−1)〜(apr−4)を合成した。以上で合成した各水溶性ビニル共重合体の内容を表13にまとめて示した。
【0200】
【表13】

【0201】
表13において、
構成単位X〜Z:各構成単位を形成することとなる単量体で表示した。
X−1:メタクリル酸ナトリウム
X−2:メタクリル酸
Y−1:メトキシポリ(n=23)エチレングリコールメタクリレート
Y−2:メトキシポリ(n=68)エチレングリコールメタクリレート
Y−3:メトキシポリ(n=9)エチレングリコールメタアクリレート
Z−1:メタリルスルホン酸ナトリウム
Z−2:アリルスルホン酸ナトリウム
Z−3:メチルアクリレート
【0202】
・水溶性ビニル共重合体(aq−1)の合成
無水マレイン酸98g及びα−アリル−ω−メチル−ポリオキシエチレン(n=33)512gを反応容器に仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、反応容器内の雰囲気を窒素置換した。反応系の温度を温水中にて80℃に保ち、アゾビスイソブチロニトリル3gを投入してラジカル重合反応を開始した。更にアゾビスイソブチロニトリル5gを分割投入し、ラジカル重合反応を4時間継続して反応を完結した。得られた共重合体に水を加えて加水分解して水溶性ビニル共重合体(aq−1)の40%水溶液を得た。水溶性ビニル共重合体(aq−1)を分析したところ、マレイン酸から形成された構成単位/α−アリル−ω−メチル−ポリオキシエチレン(n=33)から形成された構成単位=50/50(モル比)の割合で有する質量平均分子量23000の水溶性ビニル共重合体であった。
【0203】
・水溶性ビニル共重合体(aq−2)〜(aq−4)及び(aqr−1)〜(aqr−4)の合成
水溶性ビニル共重合体(aq−1)の合成と同様にして、水溶性ビニル共重合体(aq−2)〜(aq−4)及び(aqr−1)〜(aqr−4)を合成した。以上で合成した各水溶性ビニル共重合体の内容を表14にまとめて示した。
【0204】
【表14】

【0205】
表14において、
構成単位L及びM:各構成単位を形成することとなる単量体で表示した。
L−1:マレイン酸
L−2:マレイン酸ナトリウム
M−1:α−アリル−ω−メチル−ポリオキシエチレン(n=33)
M−2:α−アリル−ω−メチル−ポリオキシエチレン(n=68)
M−3:α−アリル−ω−ヒドロキシ−ポリオキシエチレン(n=33)
M−4:α−アリル−ω−ヒドロキシ−ポリオキシエチレン(n=23)
【0206】
試験区分2(コンクリート組成物の調製)
実施例1〜23
表15に記載の配合番号の条件で、50リットルのパン型強制練りミキサーに、練混ぜ水(水道水)、高炉スラグ微粉末を65%及び普通ポルトランドセメントを35%(合計100%)の割合で含有する高炉セメント(密度=2.99g/cm、粉末度4020cm/g)、細骨材(大井川水系産川砂、密度=2.58g/cm)、A成分のセメント分散剤として水溶性ビニル共重合体(ap−1)、B成分の乾燥収縮低減剤としてジエチレングリコールモノブチルエーテル(b−1)、C成分の凝結促進剤として炭酸ナトリウム(c−1)の各所定量を順次投入し、更に空気量調節剤(竹本油脂社製のAE剤で、商品名AE−300)を投入して、次に粗骨材(岡崎産砕石、密度=2.68g/cm)を投入して60秒間練り混ぜ、目標スランプが18±1cm、目標空気量が4.5±1%とした実施例1の水/高炉セメントの質量比が50%のコンクリート組成物を調製した。同様の方法で、実施例2〜23の水/高炉セメントの質量比が30〜50%のコンクリート組成物を調製した。
【0207】
比較例1〜23
実施例1と同様の方法で比較例1〜23の水/高炉セメントの質量比が45〜50%のコンクリート組成物を調製した。実施例も含め、以上の各例で調製したコンクリート組成物の内容を表16にまとめて示した。
【0208】
【表15】

【0209】
表15において、
s−1:高炉スラグ微粉末を65%及び普通ポルトランドセメントを35%(合計100%)の割合で含有する高炉セメント(密度=2.99g/cm、粉末度4020cm/g)
s−2:高炉スラグ微粉末を70%及び普通ポルトランドセメントを30%(合計100%)の割合で含有する高炉セメント(密度=2.98g/cm、粉末度4040cm/g)
s−3:高炉スラグ微粉末を75質量%及び普通ポルトランドセメントを25質量%(合計100%)の割合で含有する高炉セメント(密度=2.96g/cm、粉末度4050cm/g)
sr−1:高炉セメントB種(密度=3.04g/cm、粉末度3850cm/g)
【0210】
【表16】

【0211】
表16において、
添加量:高炉セメント100質量部当たりの固形分質量部
*1:リグニンスルホン酸塩を主成分とするセメント分散剤(竹本油脂社製の商品名チューポールEX20)
*2:ナフタレンスルホン酸ホルマリン高縮合物塩を主成分とするセメント分散剤(竹本油脂社製の商品名ポールファイン510AN)
*3:メラミンスルホン酸ホルマリン高縮合物塩を主成分とするセメント分散剤(竹本油脂社製の商品名ポールファインMF)
ap−1〜ap−4及びapr−1〜apr−4:表13に記載したセメント分散剤としての水溶性ビニル共重合体
aq−1〜aq−4及びaqr−1〜aqr−4:表14に示したセメント分散剤としての水溶性ビニル共重合体
b−1:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
b−2:ジプロピレングリコールジエチレングリコールモノブチルエーテル
c−1:炭酸ナトリウム
c−2:炭酸カリウム
c−3:塩化カルシウム
【0212】
試験区分3(調製したコンクリート組成物の評価)
調製した各例のコンクリート組成物について、空気量、スランプ、スランプ残存率を下記のように求めた。また各例のコンクリート組成物から得た硬化体について、乾燥収縮率及び圧縮強度を下記のように求めた。
【0213】
・空気量(容量%):練り混ぜ直後のコンクリート組成物及び更に60分間静置後のAEコンクリートについて、JIS−A1128に準拠して測定した。
・スランプ(cm):空気量の測定と同時に、JIS−A1101に準拠して測定した。
・スランプ残存率(%):(60分間静置後のスランプ/練り混ぜ直後のスランプ)×100で求めた。
・乾燥収縮率:JIS−A1129に準拠し、各例のコンクリート組成物を20℃×60%RHの条件下で保存した材齢26週の供試体についてコンパレータ法により乾燥収縮ひずみを測定し、乾燥収縮率を求めた。この数値は小さいほど、乾燥収縮が小さいことを示す。
・圧縮強度(N/mm):各例のコンクリート組成物について、JIS−A1108に準拠し、材齢7日及び材齢28日で測定した。
・二酸化炭素排出量:コンクリート組成物1mを製造する場合の二酸化炭素の排出量(kg/コンクリート1m)。但し、石膏及び再生コンクリート微粉末の製造に必要なエネルギーに由来する二酸化炭素の排出量を除いて計算した値
【0214】
結果を表17及び表18にまとめて示した。各実施例のコンクリート組成物は、結合材として高炉セメントB種を用いた比較例23に比べて、高炉スラグ微粉末の使用量が多い分だけコンクリート組成物1mを製造するための二酸化炭素の排出量が少なく、また調整したコンクリート組成物の経時的な流動性に優れ、更に得られる硬化体の乾燥収縮率が800×10−6よりも小さく、必要とされる充分な圧縮強度が得られている。
【0215】
【表17】

【0216】
【表18】

【0217】
表18において、
比較例4、14〜16及び18〜20:目標とする流動性(スランプ値)が得られなかったので測定しなかった。
【0218】
なお、以上説明した本実施形態に係る第二硬化体をまとめると以下のようになる。即ち、第1に、第二硬化体は、少なくとも、結合材、水、細骨材、粗骨材及び混和材を含有して成るコンクリート組成物であって、結合材として下記の高炉スラグ組成物(水硬性セメント)を用い、且つ水/該高炉スラグ組成物の質量比を30〜60%に調製して成るコンクリート組成物が硬化してなる。
高炉スラグ組成物:粉末度が3000〜13000cm/gの高炉スラグ微粉末を80〜95質量%及び石膏を5〜20質量%(合計100質量%)の割合で含有する混合物100質量部当たり、解体コンクリートから分離した水酸化カルシウム含有率が3〜15質量%の再生コンクリート微粉末を3〜15質量部の割合で添加した高炉スラグ組成物。
【0219】
第2に、第二硬化体は、少なくとも、結合材、水、細骨材、粗骨材及び混和材を含有して成るコンクリート組成物であって、結合材として下記の高炉セメント組成物(水硬性セメント)を用い、且つ水/該高炉セメント組成物の質量比を30〜60%に調製して成るコンクリート組成物が硬化してなる。
高炉セメント組成物:粉末度が3000〜13000cm/gの高炉スラグ微粉末を60〜90質量%、石膏を5〜20質量%及びポルトランドセメントを5〜35質量%(合計100質量%)の割合で含有する混合物100質量部当たり、解体コンクリートから分離した水酸化カルシウム含有率が3〜15質量%の再生コンクリート微粉末を10〜30質量部の割合で添加した高炉セメント組成物。
【0220】
第3に、第二硬化体は、少なくとも、結合材、水、細骨材、粗骨材及び混和材を含有して成るコンクリート組成物であって、結合材として下記の高炉スラグ組成物(水硬性セメント)を用い、且つ水/該高炉スラグ組成物の質量比を30〜60%に調製して成るコンクリート組成物が硬化してなる。
高炉スラグ組成物:粉末度が3000〜13000cm/gの高炉スラグ微粉末を80〜95質量%及び石膏を5〜20質量%(合計100質量%)の割合で含有する混合物100質量部当たり、アルカリ刺激材を0.5〜1.5質量部又は5〜45質量部の割合で添加した高炉スラグ組成物。
【0221】
第4に、第二硬化体は、少なくとも、セメント、水、細骨材、粗骨材及び混和材を含有して成るコンクリート組成物であって、セメントとして下記の高炉セメント(水硬性セメント)を用い、且つ水/該高炉セメントの質量比を20〜60%に調製し、また該高炉セメント100質量部当たり、混和材の少なくとも一部として下記のA成分を0.1〜1.5質量部含有して成るコンクリート組成物が硬化してなる。
高炉セメント:粉末度が3000〜13000cm/gの高炉スラグ微粉末とポルトランドセメントとから成り、且つ該高炉スラグ微粉末を60〜80質量%及びポルトランドセメントを20〜40質量%(合計100質量%)の割合で含有する高炉セメント。
A成分:下記の水溶性ビニル共重合体P及び下記の水溶性ビニル共重合体Qから選ばれる一つ又は二つ以上の水溶性ビニル共重合体からなるセメント分散剤。
水溶性ビニル共重合体P:分子中に下記の構成単位Xを45〜85モル%、下記の構成単位Yを15〜55モル%及び下記の構成単位Zを0〜10モル%(合計100モル%)の割合で有する質量平均分子量2000〜80000の水溶性ビニル共重合体。
構成単位X:メタクリル酸から形成された構成単位及びメタクリル酸塩から形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上
構成単位Y:分子中に5〜150個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するメトキシポリエチレングリコールメタクリレートから形成された構成単位
構成単位Z:(メタ)アリルスルホン酸塩から形成された構成単位及びメチルアクリレートから形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上
水溶性ビニル共重合体Q:分子中に下記の構成単位Lを40〜60モル%及び下記の構成単位Mを60〜40モル%(合計100モル%)の割合で有する質量平均分子量2000〜50000の水溶性ビニル共重合体。
構成単位L:マレイン酸から形成された構成単位及びマレイン酸塩からから形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上
構成単位M:分子中に5〜100個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するα−アリル−ω−メチル−ポリオキシエチレンから形成された構成単位及び分子中に5〜100個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するα−アリル−ω−ヒドロキシ−ポリオキシエチレンから形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上
なお、混和材の一部として、下記のB成分を0.2〜4.0質量部、下記のC成分を0.1〜5.0質量部の割合で含有しても良い。この場合、混和材の一部として、下記B成分又は下記C成分を加えても良いし、下記B成分及び下記C成分を加えても良い。
B成分:乾燥収縮低減剤
C成分:凝結促進剤
【0222】
以上、本発明の第1、第2実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、第1、第2実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0223】
12 構造物
14 柱(構造部材)
14A 第一柱部(第一硬化体)
14B 第二柱部(第二硬化体)
16 梁(構造部材)
18 床(構造部材)
18A 第一床部(第一硬化体)
18B 第二床部(第二硬化体)
20 柱鉄筋(鋼材)
26 鉄筋(鋼材)
30 柱(構造部材)
30A 第一柱部(第一硬化体)
30B 第二柱部(第二硬化体)
32 柱鉄筋(鋼材)
42 床(構造部材)
42A 第一床部(第一硬化体)
42B 第二床部(第二硬化体)
50 鉄筋(鋼材)
54 床(構造部材)
54A 第一床部(第一硬化体)
54B 第二床部(第二硬化体)
62A 第一床部(第一硬化体)
66 床(構造部材)
66A 第一床部(第一硬化体)
66B 第二床部(第二硬化体)
72 壁(構造部材)
72A 第一壁部(第一硬化体)
72B 第二壁部(第二硬化体)
74 鉄筋(鋼材)
82 柱(構造部材)
82A 第一柱部(第一硬化体)
82B 第二柱部(第二硬化体)
86 柱鉄筋(鋼材)
92 壁(構造部材)
92A 第一壁部(第一硬化体)
92B 第二壁部(第二硬化体)
94 鉄筋(鋼材)
110 構造部材
110A 第一梁部(第一硬化体)
110B 第二梁部(第二硬化体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材が埋設された第一硬化体と、
前記第一硬化体と一体化されると共に、該第一硬化体よりもアルカリ性が弱い第二硬化体と、
を備える構造部材。
【請求項2】
前記第二硬化体が、高炉スラグ微粉末を60質量%以上含有する水硬性セメントが水和反応して硬化したコンクリート硬化体、モルタル硬化体、又はグラウト硬化体である請求項1に記載の構造部材。
【請求項3】
前記第一硬化体が、前記第二硬化体の周囲に配置されている請求項1又は請求項2に記載の構造部材。
【請求項4】
前記第二硬化体が、前記第一硬化体の周囲に配置されている請求項1又は請求項2に記載の構造部材。
【請求項5】
前記第二硬化体の内部に、棒状に形成された複数の前記第一硬化体が配置されている請求項1又は請求項2に記載の構造部材。
【請求項6】
前記第一硬化体と前記第二硬化体とが対向して配置されている請求項1又は請求項2に記載の構造部材。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の構造部材を有する構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−285761(P2010−285761A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138635(P2009−138635)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「エネルギー使用合理化技術戦略的開発/エネルギー有効利用基盤技術先導研究開発/エネルギー・CO2ミニマム(ECM)セメント・コンクリートシステムの研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】