説明

標準光源装置

【課題】低輝度における高精度の標準光源を提供すること。
【解決手段】光源Lを含む光源ボックスSで輝度Lが定義される。第1の積分球S内の内壁上相互拡散反射によって、その内壁上に輝度Lを第1の積分球Sの半径の2乗に反比例する一定の減衰率で減衰させた輝度Lが定義される。第2の積分球S内の内壁上相互拡散反射によって、その内壁に輝度Lを積分球Sの半径の2乗に反比例する一定の減衰率でさらに減衰させた輝度Lが定義される。第2の積分球でさらに減衰した輝度Lは、第2の積分球S上の出力開口部A23で定義され、標準光源出力が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標準光源装置に係り、特に、暗所コントラスト比を向上させる目的で、TV、ディスプレーの画面上最低輝度を測定する際に必要な、放射輝度計もしくは分光放射輝度計の最大感度の較正を行うために用いる、積分球を用いた低輝度標準光源装置に関するものである。ここでいう暗所におけるTV、ディスプレー等の画面上最低輝度は、例えば、人の色覚の閾値に近い1/10,000 cd/mから1/100 cd/m程度の範囲にある。
【背景技術】
【0002】
従来、標準光源は、白熱ランプ等の光源ボックスと、この光源ボックスで照明することによって作った、1次光源としての輝度が定義される第1の開口を含む面と、この1次光源で照明することによって作った、2次光源としての輝度が定義される第2の開口を含む面と、から構成される。そして、この標準光源は、第1の開口を含む面と第2の開口を含む面の面間隔を調整する手段によって、第1の開口上の輝度を減衰させた輝度を、第2の開口上に作る機能を有するものである。このとき、面間隔はその2乗に反比例して輝度を減衰させるように作用する。このように標準光源を作る方法を「光学ベンチ法」と呼ぶ。
【0003】
図14に、光学ベンチ法の説明図を示す。
図に示すように、光学ベンチ法では、光学ベンチ上に配置された、白熱ランプ等の光源ボックスと、光源ボックスの前に設けられた、ふたつの輝度を定義する透過拡散板を有する円形開口と、ふたつの円形開口を有する面間隔を調整する手段によって、開口上輝度間に減衰が発生するようになし、結果として実現された第2の開口上の輝度を測定する光検出器ないしは放射輝度計から構成される。
【0004】
この光学ベンチの例では、開口平面S、Sの法線とS、Sの中心を結ぶ光軸とがなす角をθ、θとし、光学ベンチ上開口S、S間間隔をdとし、S上の輝度をLとするとき、一般に、光検出器PD上の全光束Φは開口面積の積Aに比例、間隔dの2乗に反比例する。したがって輝度比はA/dに比例する。
【0005】
また、従来の輝度ユニットの構成例として、Journal of Research of the National Institute of Standards and Technology vol.102 no.3 1997 P.323−331(非特許文献1)、特にFig.8、に記載のものがある。これは、輝度ユニットと称する標準光源の例で、光源としての2重積分球のうちで後続する積分球に設けた開口上で定義される輝度を、一定距離伝播させ、輝度計の入射開口に到達するまでに減衰した輝度を輝度計で測定するもので、積分球上開口と輝度計の入射開口の間の輝度減衰の手段には、光学ベンチ法における輝度減衰の手段が用いられている。
【0006】
この輝度ユニットは、2重積分球光源の開口上輝度Lを光学ベンチ法の手段を用いて減衰させ、積分球光源開口から間隔dを置いた放射輝度計の開口上に照度E=LA/dを定義するものである。
【非特許文献1】Journal of Research of the National Institute of Standards and Technology vol.102 no.3 1997 P.323−331
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図14のような従来の光学ベンチ法の課題は、輝度減衰率が開口間隔の2乗に逆比例するという理由で、輝度減衰率を高くすると開口間隔が長くなり、開口間隔が長くなると開口間の共軸性、開口平面間の平行度等の位置精度を維持するのが困難になることであって、この理由で光学ベンチ法は低輝度の標準光源を実現するに必ずしも適しているとはいえない。
【0008】
加えて非特許文献1のような輝度ユニットでは開口間に遮光環が挿入されているが、放射輝度計の入射開口が大気に開放されているから、迷光を完全に防止するには、輝度ユニット全体もしくは輝度ユニットを設置する部屋全体を遮光する必要があった。
【0009】
光学ベンチ法に替わる高精度の輝度減衰手段を提案するという課題に加えて、従来の低輝度を確認する放射輝度計が、本発明の目標とする1/10,000 cd/mから1/100 cd/m程度の範囲の低輝度まで較正することが困難であることから、この目標輝度まで放射輝度計を高精度に較正する方法を提案するという課題が残されている。現在は、例えば、3/1,000 cd/m前後の低輝度における較正が、特に要求される。このような低輝度まで較正できる標準光源は、従来、入手困難であった。
【0010】
この高精度に放射輝度計を較正するという課題を仔細に検討すると、放射輝度計内の光検出器半導体素子そのものの直線性は極めて高いが、目標とする1/10,000 cd/mから1/100 cd/mの範囲の低輝度領域は、既にこの半導体素子の暗電流の等価入力雑音領域を含むから、暗電流雑音を効果的に低減して放射輝度計の測定限界を拡張するというのが、より本質的な課題でもある。
【0011】
放射輝度計出力に含まれる、低輝度域での直線性からの誤差は、直流成分とランダム成分からなる。例えば、シリコン・フォトダイオードのような半導体素子を用いた放射輝度計の場合、直流成分は主として、半導体素子の暗電流温度ドリフトと、半導体素子の発生する光電流を電圧に変換する際に使用するオペレーショナル・アンプのオフセット電圧と、迷光とを含み、ランダム成分は半導体素子の暗電流雑音を含む。
【0012】
まず、温度が変化するとき発生する暗電流温度ドリフトは、半導体素子を低温に冷却することにより効果的に低減することができる。この低温においても半導体素子の暗電流雑音成分は残存するが、ランダム成分であるから、オペレーショナル・アンプ等による積分回路により効果的に低減することができる。
【0013】
しかし、オペレーショナル・アンプ自身のオフセット電圧と、迷光からなる直流成分が残存していると、オペレーショナル・アンプによる積分回路が飽和してしまうので、暗電流雑音成分を低減するには、まず、オペレーショナル・アンプのオフセット電圧と、迷光からなる直流成分を検出分離できることが前提条件になる。なお、本発明と従来の技術とは、輝度減衰の手段に差異がある。
本発明は、以上の点に鑑み、低輝度における高精度の標準光源を提供することを目的とする。なお、低輝度とは、例えば、1/10,000 cd/mから1/100 cd/m程度の範囲をいうが、これに限られない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述のような、輝度減衰する手段としての光学ベンチ法における課題を解決するために、本発明では、主に、光源ボックスで照明される入射開口を積分球の表面に設けて、その内壁上に塗布した完全拡散面上の相互拡散反射を用いて輝度減衰すると手段となし、一様に減衰した輝度を内壁上に実現し、これを測定する放射輝度計をとりつける開口を同じ積分球に設けるようにした。
【0015】
つぎに、本発明では、この積分球上の新たな開口で連結された第2の積分球を付け加えることによって、積分球ごとに段階的に減衰した輝度を各積分球内壁に実現し、各積分球にとりつけた放射輝度計で、段階的に減衰した輝度を同時に測定するようになし、その測定データ列を用いて、未較正の放射輝度計の測定誤差の直流成分を検出するようにした。
【0016】
本発明の第1の解決手段によると、
光源を含み、開口部から照明するための光源ボックスと、
前記光源ボックスで一様に照明される前記開口部上の輝度を調整する可変減衰器と、
前記光源ボックスの前記開口部を通じて光を導き、前記可変減衰器で調整された輝度を定義する入力開口部を有し、内壁に形成された完全拡散面の相互拡散反射を用いて前記入力開口部上で定義された輝度を減衰して、減衰した輝度を内壁に実現し、前記減衰した輝度を定義する第1の連結開口部を有する第1の積分球と、
前記第1の積分球により前記減衰した輝度を測定する第1の光検出器と、
前記第1の連結開口部で前記第1の積分球と連結される第2の連結開口部を有し、減衰した第1の積分球の内壁上輝度を、前記第2の連結開口部を通じて導き、内壁に形成された完全拡散面の相互拡散反射を用いて前記第2の連結開口部上で定義された輝度をさらに減衰して、さらに減衰した輝度を内壁に実現し、前記さらに減衰した輝度を定義する出力開口部を有する第2の積分球と、
前記第2の積分球により前記さらに減衰した輝度を測定する第2の光検出器と、
を備えた標準光源装置が提供される。
【0017】
本発明の第2の解決手段によると、
光源を含み、開口部から照明するための光源ボックスと、
前記光源ボックスで一様に照明される前記開口部上の輝度を調整する可変減衰器と、
前記光源ボックスの前記開口部を通じて光を導き、前記可変減衰器で調整された輝度を定義する入力開口部を有し、内壁に形成された完全拡散面の相互拡散反射を用いて前記入力開口部上で定義された輝度を減衰して、減衰した輝度を内壁に実現し、前記減衰した輝度を定義する第1の連結開口部を有する第1の積分球と、
前記第1の積分球により前記減衰した輝度を測定する第1の光検出器と、
前記第1の連結開口部で前記第1の積分球と連結される第2の連結開口部を有し、減衰した第1の積分球の内壁上輝度を、前記第2の連結開口部を通じて導き、内壁に形成された完全拡散面の相互拡散反射を用いて前記第2の連結開口部上で定義された輝度をさらに減衰して、さらに減衰した輝度を内壁に実現し、前記さらに減衰した輝度を定義する出力開口部を有する第2の積分球と、
前記出力開口部で前記第2の積分球と連結される第3の連結開口部を有し、さらに減衰した第2の積分球の内壁上輝度を、前記第3の連結開口部を通じて導き、内壁に形成された完全拡散面の相互拡散反射を用いて前記第3の連結開口部上で定義された輝度をさらにまた減衰して、さらにまた減衰した輝度を内壁に実現し、前記さらにまた減衰した輝度を定義する第2の出力開口部を有する第3の積分球と、
前記第3の積分球により前記さらに減衰した輝度を測定する第3の光検出器と、
を備えた標準光源装置が提供される。
【0018】
本発明は、積分球に取り付けられた放射輝度計内の半導体素子を低温に冷却することによって、放射輝度計出力に含まれる暗電流の直流成分を低減して、オペレーション・アンプ等の積分回路が飽和しないようになし、この積分回路で暗電流雑音を低減してもよい。
【0019】
本発明は、積分球に取り付けられた放射輝度計内の光検出器半導体素子を低温に冷却する際に、放射輝度計のパッケージに設けられたサファイア板等の窓の結露防止を目的として、その外側により接してこれと対向する、別のサファイア板等の窓を設けた金属板を室温に保持してもよい。
【0020】
本発明は、例えば、積分球に取り付けられた放射輝度計内の光検出器半導体素子を低温に冷却する際に、放射輝度計のパッケージに設けられたサファイア板等の窓の結露防止を目的として、その外側により接してこれと対向する、別のサファイア板等の窓を設けた金属板を室温に保持するとき、窓間の空間を除湿する目的で、窓に隣接して乾燥材を配置してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、例えば1/10,000 cd/mから1/100 cd/m程度の範囲の、低輝度における高精度の標準光源を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
1.標準光源
図1に、積分球を用いた標準光源の構成図を示す。この図は、開口部で連結された積分球で段階的に輝度を減衰する標準光源の概念図である。
この標準光源は、PC1、光源ボックスS、第1の積分球S、第2の積分球S、光検出器PM、PM、可変減衰器VAを備える。
【0023】
光源ボックスSは、白熱ランプ、LED、蛍光灯、バックライト等の光源を含み、定電圧電源、定電流電源、安定化電源等の電源により調整された輝度を定義する開口部A(開口、開口面、開口を有する面)を有する。光源ボックスSは、この開口部Aにより、第1の積分球Sに光を導入する。光源ボックスSは、内部に光源を含む積分球で構成されていても良い。
【0024】
可変減衰器VAは、光源ボックスSと第1の積分球Sとの間に設けられ、光源ボックスSで一様に照明される開口部Aで定められた輝度を調整し、第1の積分球Sへ光を導入する。可変減衰器VAは、PC1からの指令により制御される。
【0025】
一般に、積分球は、内壁に硫酸バリウムをコーティングしたり、テフロン(登録商標)(PTFE)の粉末を固めてベーキングしたり、金メッキを施す等により完全拡散面が塗布又は形成された球である。積分球の内壁は反射率が高く拡散性に優れたコーティングが施されている。積分球の中心又は内部に光源を置くと、又は、外部光源から積分球に開口部を経て光を導くと、光源から放射された光は積分球の内壁に当たり拡散反射し、拡散反射された光は再び積分球の内壁に当たり拡散反射を繰返す。これにより、積分球内で光は掻き混ぜられ、積分球内はほとんど均一な明るさになり、一様に減衰した輝度を内壁上に実現する。
【0026】
第1の積分球Sは、光源ボックスSで照明され可変減衰器VAで輝度が調整された入力開口部A11と、入力開口部A11上で調整された輝度を球内壁の完全拡散面の相互拡散反射を用いて減衰した輝度を定義する閉領域を有する面(内壁)と、この減衰した輝度を測定する放射輝度計をとりつける開口部A12と、この減衰した輝度を定義し第2の積分球Sに光を導入する連結開口部A13とを、球面の一部もしくはその内面に設けている。第1の積分球Sは、光源ボックスSにより可変減衰器VAを介して一様に照明された開口面上の輝度を減衰させた輝度を内壁に実現する。
【0027】
第2の積分球Sは、第1の積分球Sで輝度が調整された第1の積分球と連結される連結開口部A21と、連結開口部A21上で調整された輝度を球内壁の完全拡散面の相互拡散反射を用いて減衰した輝度を形成し、この減衰した輝度を測定する放射輝度計をとりつける開口部A22と、この減衰した輝度を定義し標準光源としての光を出力する出力開口部A23とを、球面の一部もしくは内面に設けている。 第2の積分球Sは、連結開口部A21で第1の積分球の連結開口部A13と連結されることによって、第1の積分球Sの内壁上の輝度を、連結開口部A21を通じて導いた第2の積分球Sでさらに減衰させた輝度を、第2の積分球Sの内壁に実現する。
【0028】
このようにして、標準光源は、積分球S及びS毎に段階に分けて輝度を減衰し、減衰した輝度を各内壁上に定義する。なお、連結開口部A13及びA21は、第1の積分球Sと第2の積分球Sで共通としてもよいし、別々に設けられた開口部を連結した構成としてもよい。
【0029】
第1及び第2の光検出器PM及びPMは、フォトダイオード、フォトトランジスタ、それらに視感度フィルタを取り付けた放射輝度計等を用いることができ、それぞれ第1及び第2積分球S及びSの表面上の開口部A12及びA22に取り付けられ、各積分球で減衰した輝度を測定する。
【0030】
つぎに、標準光源の実現機能について説明する。
図示のように、第1の積分球Sは、第1の光検出器入力Iに対応する内壁輝度Lを有し、第2の積分球Sは、第2の光検出器入力Iに対応した内壁輝度Lを有する。連結開口部A13及びA21により、第1の光検出器入力Iと第2の光検出器入力Iの間の比例減衰関係を実現する。
【0031】
まず、光源Lを含む光源ボックスSで輝度Lが定義される(この例では、光源ボックスに積分球を用いている。)。光源ボックスSから可変減衰器VAを介して第1の積分球S上の開口部Aを照明し、開口部A及びA11上で輝度Lが定義される。第1の積分球Sは、光源ボックス及び可変減衰器VAとは開口部A11で、第2の積分球Sとは開口部A13で連結される。第1の積分球S内の内壁上相互拡散反射によって、その内壁上に輝度Lを第1の積分球Sの半径の2乗に反比例する一定の減衰率で減衰させた輝度Lが定義される(輝度Lを表す式は後述する。)。この減衰した輝度Lは、第1の積分球S上の開口部A12に取り付けられ、この内壁に焦点を合わせた、光検出器PMで測定される。また、第1の積分球Sから連結開口部A13を照明し、連結開口部A13上で輝度Lが定義される。
【0032】
第2の積分球Sでは、連結開口部A21上で輝度Lが定義され、第2の積分球S内の内壁上相互拡散反射によって、その内壁に輝度Lを積分球Sの半径の2乗に反比例する一定の減衰率でさらに減衰させた輝度Lが定義される。この減衰した輝度Lは、第2の積分球S上の開口部A22に取りつけられ、この内壁に焦点を合わせた、光検出器PMで測定される。また、第2の積分球で、さらに減衰した輝度Lは、第2の積分球S上の出力開口部A23で定義され、標準光源出力が得られる。
【0033】
第1の積分球Sと第2の積分球Sには光検出器PMとPMをとりつける開口部A12及びA22が設けられており、光検出器PMとPMは第1の積分球Sと第2の積分球Sの内壁輝度LとLを同時に測定する。第1の積分球Sと第2の積分球Sの内壁輝度LとLの間には第2の積分球Sの内壁上相互拡散反射で決まりSの半径の2乗に反比例する一定の減衰がある(輝度L及びLを表す式は後述する。)。
【0034】
PC1は、可変減衰器VAにより第1の積分球Sへ照射する輝度を可変して、各輝度で同時に測定された内壁輝度LとLの測定値を、データ列としてPC内部又は外部の表示部に表示し、記憶部に記憶する。
【0035】
以下に、輝度を表す式を示す。
(輝度Lを表す第1の積分球方程式)
第1の積分球Sの平均拡散反射率ρ、積分球の内壁表面積AS1、ポートの占める割合f、ランプ光源よりの入射全光束Φi1とするとき、第1の積分球Sの内壁上の輝度(照度)Lは、次式で表される。

={ρ/(1−ρ(1−f))}・{Φi1/πAS1

(輝度L2を表す積分球方程式)
第2の積分球Sの平均拡散反射率ρ、積分球の内壁表面積AS2、ポートの占める割合f、積分球1よりの入射全光束Φi2、結合開口半径a、第2の積分球Sの半径Rとするとき、第2の積分球Sの内壁上の輝度(照度)Lは、次式で表される。

={ρ/(1−ρ(1−f))}・{Φi2/πAS2
Φi2=πLap=πLπa
S2=4πR
={ρ/(1−ρ(1−f))}・L・(a/2R

【0036】
図2は、PC1の構成図である。
このPC1は、中央処理装置(CPU)である処理部11、入力部12、入力インタフェース(I/F)部13、制御I/F部14、表示部15、及び、記憶部16を有する。また、処理部11、入力部12、入力I/F部13、制御I/F部14、表示部15、及び、記憶部16は、スター又はバス等の適宜の接続手段で接続されている。
記憶部16は、測定値V及びV、光減衰率r、直線データ等の各種データ、設定値を記憶する。
【0037】
入力I/F部13は、処理部11に、第1及び第2光検出器PM及びPMからの測定値のパラレルデジタル入力を可能とするためのインタフェースである。この例では、入力I/F部13として、2CHパラレルアナログ入力 デジタルマルチメーター(電圧計)を用い、この出力は、パラレルシリアル変換され、測定値V、VとしてUSBリンク等でPC1の処理部11に入力される。可変減衰器切り替えとDMMサンプリングのためのトリガーパルスがPC1から出力される。USBが双方向であれば、同じひとつのケーブルトリガーと測定が可能である。ここでは、一例として、別ケーブルでリンクしている。なお、入力I/F部13に、この直流成分を測定値から減算処理できるオペレーション・アンプ等の電子回路を付加してもよい。
制御I/F部14は、処理部11からの指示により可変減衰器VAの減衰量を制御し、光源ボックスSの開口部の輝度を制御する。
【0038】
図3に、PCによる処理の説明図を示す。
PC1は、次の処理を実行する。
処理部11は、制御I/F部14を介して、可変減衰器VAにより光源ボックスSから第1の積分球への照明量を調整する。そして、照明量を調整しながら、処理部11は入力I/F部13を介して、各調整値で第1の積分球内壁上の減衰した輝度を測定する第1の積分球にとりつけた第1の放射輝度計の測定値Vと、測定値Vに対して、第2の積分球内壁上のさらに減衰した輝度を測定する第2の積分球にとりつけた第2の放射輝度計の測定値Vを取り込む(S01)。
【0039】
処理部11は、取り込んだ測定値Vに対する測定値Vを表す測定データ列を、記憶部16に記憶及び/又は表示部15に表示する(S03)。表示画面は、例えば、V−V平面のグラフとする。
【0040】
処理部11は、記憶及び/又は表示された測定データ列を近似する直線を最小二乗法等の適宜の手法により求め、必要に応じその直線を表すデータを記憶部16に記憶する(S05)。処理部11は、求めた直線に基づき、直線のV切片(V−Vの関係を表すx−y平面上のy切片)の値により第2の積分球にとりつけた放射輝度計の測定値に含まれる暗電流及び/又はオフセット値を含む直流成分を検出し、且つ、直線の傾きを第2の積分球の光減衰率rとして求め、直流成分(V切片(y切片))など光減衰率rを記憶部16に記憶する(S07)。
【0041】
標準光源として用いる際、PCの入力部12からの操作入力又は記憶部16に予め定められた値により、処理部11は、所望のL又はVを定め、L=L/r 又は V=V/r により、L又はVを計算し、計算されたL又はVになるように可変減衰器VAを制御I/F部14を介して調整することで出力開口部に所望の輝度を実現することができる(S09)。また、処理部11は、測定値V、又は、Vが示す輝度の値Lと光減衰率rに基づき、L=rL 又は V=rVにより、標準光源の輝度を計算して出力開口部に所望の輝度を実現し、また、表示部15に表示又は記憶部16に記憶することができる(S09)。
このようにして、所望の輝度の標準光源を実現することができる。
【0042】
輝度を減衰する手段として積分球を用いると、この積分球内壁に塗布された完全拡散面の相互拡散反射の作用によって、一様に減衰した輝度が内壁上に実現され、入射開口、放射輝度計開口の積分球表面上取り付け位置の任意性が増すと同時に、アライメント精度が緩和される。また入り口から出口までの光の全経路が、積分球という密閉空間内に取り込まれるので、放射輝度計に流入する迷光を最小化できる。
【0043】
また、輝度の減衰手段として開口部で連結したすくなくとも2個の積分球を用いると、輝度の減衰過程を段階にわける作用があるから、第1の積分球内にできる輝度範囲を、第1の積分球に取り付けられた、予め較正された放射輝度計の測定輝度範囲以内とし、第1の積分球内にできる輝度範囲より一定の減衰率で減衰した第2の積分球内にできる輝度範囲を、第2の積分球に取り付けられた、新たに較正する放射輝度計の較正すべき輝度範囲にすることによって、ふたつの放射輝度計を用いて、一定の減衰率の関係にあるふたつの輝度範囲を、同時に測定できる。
【0044】
また、同時に測定された、すくなくとも2個の積分球に取り付けられた放射輝度計出力を対比するとき、これに雑音が重畳していたとしても、積分球内壁に塗布された完全拡散面の相互拡散反射の作用によって、光源ボックスの輝度によらず、同時に測定された輝度間の減衰率は一定であるから、同時に測定された放射輝度計出力データ列は傾き一定の直線で近似されるという効果をもつ。
【0045】
さらに、重畳している雑音はランダムであるから、同時に測定される放射輝度計出力データ列の数を増せば、直線の近似精度が一層向上するという理由で、第2の積分球に取り付けられた放射輝度計出力のオフセット等直流成分を高精度に検出し、これを高精度に減算除去できる。
【0046】
2.光検出器較正

本実施の形態の骨子となる技術思想は、「作図法」による光検出器較正における線形領域の拡大(Graphical method to extend photo−detector’s calibration linearity range)である。
ここでいう光検出器の直線性とは、厳密には、光入力Iに対する光検出器出力電圧Vの比例関係をいう。すなわちkを比例定数とするとき

V=kI (1)

とかけることである。

光検出器が半導体素子のとき、光入力Iが小さい領域では、一般には式(1)はなりたたず、

V=k(I+ΔI)+V+N (2)

となる。シリコン半導体素子の場合、Iが小さい領域でもkの一定性は保たれているが、暗電流ΔIと増幅器のオフセット電圧Vと、暗電流ランダム雑音Nが出力電圧Vにふくまれる。
【0047】
ここで暗電流ΔIがあると、I=0でもVが0にならないから、暗電流ΔIは、オフセット電圧Vと同じく直流成分である。これに対して暗電流ランダム雑音Nは時間的に不規則に変動する成分で、十分長い時間で平均すれば0になるランダム雑音である。このように光入力に対する光検出器出力電圧の関係I=f(V)における直線性(比例関係)からの誤差(乖離)を、直流成分と雑音成分に分類することができる。
【0048】
本実施の形態の骨子なる技術思想は、元来、式(2)で記述される直線性(比例関係)からの誤差(乖離)を伴う光検出器出力から、誤差成分を抽出分離し、真の比例関係を導く方法に関する。直接的に式(2)で記述される光検出器出力から、誤差成分を抽出分離する方法は、光入力Iを変化させてVを測定し、(V,I)をプロットする直接作図法である。
【0049】
図4は、(V,I)プロットの図を示す。
いま変数Iを変化させるとき、光を順次、減衰させるとする。このとき減衰手段として用いる可変減衰器に従来、光学ベンチ法が用いられてきた。しかしこの光学ベンチ法の精度保証範囲を超えると、例えば図に示すように等間隔に光入力を減衰させることを意図しても、実際の光検出器入力が等間隔に減衰しているとは限らないという、技術的課題に直面する。
【0050】
可変減衰器の精度に頼らず、上記の作図を完成するには、図の独立変数Iを精密に測定し較正すればよいが、そもそもIを精密に測定するのが技術課題であるから、課題解決する手段が課題になっており自己撞着である。
本実施の形態は、上述の課題を解決するために、減衰を2段階にわける。
【0051】
図5に、光検出器による測定を説明するための概念図を示す。
各符号は、次の通りである。
、V:第1、第2光検出器の測定値(単位の例、mV)
、I:第1、第2光検出器の光入力(単位の例、nW、pW)
、L:第1、第2積分球の内壁輝度(単位の例、cd/m
【0052】
図示の積分球を用いた例では、とりつけられた光検出器入力Iに対応する内壁輝度Lを有する第1の積分球と、とりつけられた光検出器入力Iに対応した内壁輝度Lを有する第2の積分球とを備えた2重積分球が示される。そして、第1の積分球に光を可変しながら導入する開口部で結合された光源と、IとIの間の比例減衰関係を実現する手段として、第1の積分球と第2の積分球を結合する連結開口部とが示される。
【0053】
一般に、積分球の内壁輝度は光検出器の入力光電流に比例し、よって、光検出器の測定値に比例する。第1の積分球に取り付けられる第1の光検出器が入力光電流Iの実現しうる範囲で良好に較正されている場合、第1の光検出器の測定値Vの読み取り値が内壁輝度Lである。なお、低輝度の場合は、暗電流ΔIと増幅器のオフセット電圧Vの影響により、測定値V(測定値Vの読み取り値)は、必ずしも輝度Lと等しいとは限らない。
【0054】
本実施の形態では、光源から導入される光を2段階で減衰する際、第1段階の減衰では、それを較正する光検出器が存在するような中程度のIを作る。このとき

=k (3)

が十分よい精度でなりたっている。すなわち、測定値V(測定値Vの読み取り値)が輝度Lと等しい。

第2段階の減衰における、減衰率は一定でrと書けるとすると

=rI (4)

であり、式(3)と式(4)を用いて、式(2)は

=k(I+ΔI)+V+N=k(rI+ΔI)+V+N (5)

と書きなおせる。ここで式(5)の最右辺の独立変数Iは、式(3)より、十分よい精度で計測可能である。
【0055】
図6に、V−I,V−Iプロットの図を示す。
式(3)と式(5)から定義される同じIの関数としてのVとVをプロットすると、この図のように示される。
【0056】
図7に、V−Vプロットの図を示す。
つぎに、同じIに対するVとVを上図から読み取って、V(I)をV(I)に対してプロットするとき、

=k(rI+ΔI)+V+N=(k/k)rV+kΔI+V+N
(6)

となるから、プロットの各点はkΔI+Vをy切片とする直線の近傍に分布し、さらに半導体素子感度が同じだとすると(k=k)、プロットを近似する直線の傾きは第2段階の光減衰率rになる。
【0057】
このような図が描ける、つまり作図は完成するための前提条件には、同じIに対してVとVを測定できることと、このIとIの間には一定の比例関係があることと、が必須である。なおIはVから知ることができるから、Iを変化させるための手段としての可変減衰器は厳密に較正されている必要は全くない。(Iを変化させるための可変減衰器の精度についての付帯条件なし。)
【0058】
本実施の形態の技術思想「作図法」の実施形態は、したがって作図ができるための必須の前提条件をすべて満たしていなければならない。
なお第1の積分球にとりつけられる光検出器ないしは放射輝度計は、中間状態の光入力Iの実現しうる範囲で良好に較正されていなければならない。
第1の積分球にとりつけられる光検出器と第2の積分球にとりつけられる光検出器は、光源から導入される光量を変化させ、その結果としてIを変化させる毎に同時測定できることが必要である。
【0059】
図8に、開口で連結された積分球内壁輝度を測定する放射輝度計の測定値の表示装置上プロットをシミュレーション計算した図を示す。
この図は、暗電流雑音をランダム関数として与えたシミュレーション計算による、分光放射輝度計PMとPMの測定値の関係を表わす。直線の勾配は積分球Sと積分球Sの内壁輝度LからLへの減衰率rに一致し、シミュレーションでは、一例として、1/100とした。測定データの最小2乗近似直線のx−y平面上のy切片からPMのオフセット電圧等直流成分が導かれる。
【0060】
図9に、V−Lプロットの図を示す。
結合開口半径と第2の積分球半径の比からきまる輝度減衰率がr=0.01 で、輝度Lの範囲が0.01cd/m−1cd/m のとき、輝度Lの範囲は、0.0001cd/m−0.01cd/m となる。このとき第2の積分球半径できまる測定距離と対物レンズの有効径より光検出器入力Iの範囲は0.2−20pWと計算することができる。
【0061】
第2の積分球にとりつけた放射輝度計の有する光検出器の可視光帯における代表的、平均感度をk=3mV/pWとして、最終図に等価な作図として、第1の積分球にとりつけた放射輝度計の測定値Vに対応する輝度値Lに減衰率rを掛けて求めた第2の積分球の輝度Lに対して、第2の積分球にとりつけた放射輝度計の測定電圧Vをプロットすることにより、この図を作図することができる。
【0062】
ここで、直線は、原点を通る理論値であり、低輝度のプロットが直線からややずれている。そして、輝度Lの最小輝度0.0001cd/mにおける電圧0.6mVの測定値には、ほぼ同等の雑音電圧が重畳している。(逆に、信号電圧と雑音電圧の比が1のときが、最小検出可能輝度である。)この雑音電圧が一様でランダムに分布していると考えられるので、最小輝度から最大輝度の範囲で入力輝度を変え、測定数を増すことによって、公知の最小2乗法等の技術で、雑音等の影響を排除した直線関係を導くことが可能であり、これより、オフセット電圧や雑音を逆算して求めることができる。
【0063】
3.詳細構成例

図10に、積分球内壁照度を測定する放射輝度計の構成図を示す。主に、この放射輝度計は、視感度フィルター21と、対物レンズ22と、光検出器23と、輝度を測定する領域を定義する視野しぼり24とを備える。
【0064】
図11に、光検出器の半導体素子の暗電流雑音のパワースペクトル密度分布(A)と積分回路(挿入図)出力のパワースペクトル密度分布(B)の説明図を示す(横軸:周波数(Hz))。
【0065】
積分回路には、冷却した光検出器を有する放射輝度計の出力が有する暗電流雑音のパワースペクトル密度関数(A)が入力され、その積分回路によって低減された暗電流雑音のパワースペクトル密度関数(B)が出力される。
図示のように、光検出器の半導体素子にオペアンプ等による積分回路を付加することで、暗電流雑音を減少することができる。
【0066】
図12に、光検出器の半導体素子を冷却するための構成図を示す。この図は、サファイア等の窓を用いた2重封止構造による、光検出器パッケージ窓の加熱(冷却)法と、サファイア等の窓間の空気を除湿する乾燥材の配置法を示す概念図である。
【0067】
図示のように、窓1を取り付けた開口を有する金属板で、窓2付き冷却シリコン・フォトダイオードが2重封止される。窓1と窓2の間隔は窓2とシリコン・フォトダイオード間隔に比べ狭い。この窓間隔内空気を、窓1の周りに配置したリング状乾燥材で除湿する。
【0068】
放射輝度計の光検出器半導体素子を冷却するとき、その電子や正孔からなるキャリアの熱励起を低減する作用をもつから、冷却することによって放射輝度計の暗電流の直流成分を低減する効果をもつ。
【0069】
放射輝度計出力誤差の直流成分の一部である暗電流直流成分が低減されていれば、そのドリフトがないという理由で、出力誤差の直流成分を良好に検出除去できるから、積分回路を飽和させずに機能させることができ、上述したような積分回路によって暗電流雑音を良好に低減できる。
【0070】
放射輝度計の光検出器半導体素子を低温に冷却すると、この半導体素子と対向する、パッケージに設けられたサファイア板等の窓を、熱輻射に基づく熱交換によって冷却する作用がある。このとき、その外側からより近接してこれと対向する、別のサファイア板等の窓を設けた金属板を室温に保持すると、その窓からの熱輻射よる加熱と、前記半導体素子への熱輻射による冷却がつりあって、パッケージに設けられた窓の温度が、冷却された半導体素子温度と室温の中間温度で、より室温に近い温度に維持さるという理由で、パッケージ窓への結露が防止できる。
【0071】
パッケージに設けられた窓の温度が、冷却された半導体素子温度と室温の中間温度で、より室温に近い温度に維持されるという理由で、窓間の空気は室温と冷却光検出器半導体素子の中間温度で、より室温に近い温度に維持されているから、窓に隣接して乾燥材を配置すると、この中間温度で窓間の空気中の蒸気圧が飽和しないように蒸気圧を下げる作用があり、もって窓の結露をより良好に防止する効果がある。
【0072】
4.3つの積分球を備えた構成
図13に、3つの積分球を備えた標準光源の構成図を示す。
上述の実施の形態では、積分球を2つ用いる例を説明したが、3つ以上積分球を連結して用いても良い。例えば、3つの積分球を用いる場合、以下のように、同様に、V3−V2プロットの図を作図し、直線を求めることで、第3の積分球の光減衰率r’を求めることができ、また、第3の積分球の内壁輝度を求めることができる。
【0073】
第3の積分球Sは、第2の積分球Sに設けた出力開口部と連結開口部A31で連結され、減衰した第2の積分球Sの内壁上輝度を、連結開口部を通じて導き、内壁に形成された完全拡散面の相互拡散反射を用いて連結開口部上で定義された輝度をさらに減衰し、さらに減衰した輝度を内壁に実現し、さらに減衰した輝度を定義する出力開口部Aを有するように構成する。そして、第3の光検出器PMは、第3の積分球Sによりさらに減衰した輝度を測定するように構成する。
【0074】
PC1は、可変減衰器VAにより光源ボックスから第1の積分球Sへの照明量を調整し、各調整値で第1の積分球内壁上の減衰した輝度を測定する第1の積分球Sにとりつけた第1の光検出器PMの測定値Vに対して、第3の積分球内壁上のさらに減衰した輝度を測定する第3の積分球Sにとりつけた第3の光検出器PMの測定値Vを取り込む。つぎに、PC1は、取り込んだ測定データ列(V−Vプロット)を、記憶部に記憶又は表示装置上に表示する。そして、PC1は、記憶又は表示された測定データ列を近似する直線に基づき、直線のV切片により第3の積分球にとりつけた放射輝度計の測定値に含まれる暗電流とオフセット値を含む直流成分を検出し、且つ、直線の傾きより第3の積分球の光減衰率r’を求めることができる。
【0075】
第3の積分球から出力される輝度L3は、次の関係となる。
L3=r’V1

標準光源の決め方は、上述の実施の形態と同様である。
すなわち、標準光源として用いる際、PCの入力部12からの操作入力又は記憶部16に予め定められた値により、処理部11は、所望のL又はVを定め、L=L/r’ 又は V=V/r’ により、L又はVを計算し、計算されたL又はVになるように可変減衰器VAを制御I/F部14を介して調整することで出力開口部に所望の輝度を実現することができる(S09)。また、処理部11は、測定値V、又は、Vが示す輝度の値Lと光減衰率r’に基づき、L=r’L 又は V=r’Vにより、標準光源の輝度を計算して出力開口部に所望の輝度を実現し、また、表示部15に表示又は記憶部16に記憶することができる。
このようにして、所望の輝度の標準光源を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、可視光だけでなく、紫外光、赤外光の標準光源にも適用することができる。その際には、光源や積分球光検出器等を、波長領域に応じて適宜選択すればよい。
積分球を2つ又は3つ用いるほかにも、適宜の数連結して段階的に減衰するようにして、低輝度の標準光源を構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】積分球を用いた標準光源の構成図。
【図2】PC1の構成図。
【図3】PCによる処理のフローチャート図。
【図4】(V,I)プロット図。
【図5】光検出器による測定を説明するための概念図。
【図6】V−I,V−Iプロット図。
【図7】V−Vプロット図。
【図8】積分球内壁輝度を測定する放射輝度計の測定値の表示装置上プロットをシミュレーション計算した図。
【図9】V−Lプロット図。
【図10】積分球内壁照度を測定する放射輝度計の構成図。
【図11】光検出器の半導体素子の暗電流雑音のパワースペクトル密度分布(A)と積分回路(挿入図)出力のパワースペクトル密度分布(B)の説明図。
【図12】光検出器の半導体素子を冷却するための構成図。
【図13】3つの積分球を備えた標準光源の構成図。
【図14】光学ベンチ法の説明図。
【符号の説明】
【0078】
1 PC
光源ボックス
第1の積分球
第2の積分球
PM 第1の光検出器
PM 第2の光検出器
VA 可変減衰器
11 処理部
12 入力部
13 入力I/F部
14 制御I/F部
15 表示部
16 記憶部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を含み、開口部から照明するための光源ボックスと、
前記光源ボックスで一様に照明される前記開口部上の輝度を調整する可変減衰器と、
前記光源ボックスの前記開口部を通じて光を導き、前記可変減衰器で調整された輝度を定義する入力開口部を有し、内壁に形成された完全拡散面の相互拡散反射を用いて前記入力開口部上で定義された輝度を減衰して、減衰した輝度を内壁に実現し、前記減衰した輝度を定義する第1の連結開口部を有する第1の積分球と、
前記第1の積分球により前記減衰した輝度を測定する第1の光検出器と、
前記第1の連結開口部で前記第1の積分球と連結される第2の連結開口部を有し、減衰した第1の積分球の内壁上輝度を、前記第2の連結開口部を通じて導き、内壁に形成された完全拡散面の相互拡散反射を用いて前記第2の連結開口部上で定義された輝度をさらに減衰して、さらに減衰した輝度を内壁に実現し、前記さらに減衰した輝度を定義する出力開口部を有する第2の積分球と、
前記第2の積分球により前記さらに減衰した輝度を測定する第2の光検出器と、
を備えた標準光源装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の光検出器から測定値を入力し、前記可変減衰器を制御し、標準輝度を定めるための処理部をさらに備え、
前記処理部は、
前記可変減衰器により前記光源ボックスから前記第1の積分球へ導入される照明量を調整し、
各調整した値で、第1の積分球内壁上の減衰した輝度を測定する、前記第1の積分球にとりつけられた前記第1の光検出器の測定値Vと、測定値Vに対して、前記第2の積分球内壁上のさらに減衰した輝度を測定する、前記第2の積分球にとりつけられた前記第2の光検出器の測定値Vを取り込み、
取り込んだ測定値Vに対する測定値Vを表す測定データ列を、記憶部に記憶又は表示部に表示し、
前記記憶部に記憶又は前記表示部に表示された前記測定データ列を近似する直線を求め、前記直線に基づき、前記直線のV切片により前記第2の積分球にとりつけた前記第2の光検出器の測定値に含まれる暗電流及び/又はオフセット値を含む直流成分を求め、且つ、前記直線の傾きより前記第2の積分球の光減衰率rを求め、光減衰率rを前記記憶部に記憶又は前記表示部に表示する
請求項1に記載の標準光源装置。
【請求項3】
前記処理部は、
入力部からの操作入力又は前記記憶部に予め定められた値により、前記第2の積分球の内壁に実現される所望の輝度L又は測定値Vを定め、
=L/r 又は V=V/r により、L又はVを計算し、
前記第1の検出器により測定された、前記第1の積分球の内壁に実現される輝度又は測定値が、計算された輝度L又は測定値Vになるように前記可変減衰器を制御する
請求項2に記載の標準光源装置。
【請求項4】
前記処理部は、
前記可変減衰器により前記第1の積分球に導入される照明量を調整し、
前記第1の光検出器により測定された、前記第1の積分球の内壁に実現される輝度L又は測定値Vに従い、L=rL 又は V=rVにより、前記第2の積分球の内壁に実現される輝度L又は測定値Vを計算することで、前記第2の積分球の出力開口部に所望の輝度を定義する
請求項2に記載の標準光源装置。
【請求項5】
前記光源ボックスは、積分球を用いて構成されている請求項1乃至4のいずれかに記載の標準光源装置。
【請求項6】
前記第1の積分球は、
前記可変減衰器で調整された輝度を定義する前記入力開口部を有する面と、内壁に形成された完全拡散面の相互拡散反射を用いて前記開口部上で定義された輝度を減衰し、減衰した輝度を定義する閉領域を有する内壁面と、前記減衰した輝度を定義する連結開口部を有する面と、前記第1の光検出器により前記減衰した輝度を測定するための測定用開口部を含む面いずれをも、前記積分球の球面の一部もしくはその内面に設けた請求項1乃至5のいずれかに記載の標準光源装置。
【請求項7】
前記第1及び/又は第2の光検出器の出力に積分回路を接続した請求項1乃至6のいずれかに記載の標準光源装置。
【請求項8】
積分球に取り付けられた前記第1及び/又は第2の光検出器の半導体素子を低温に冷却することによって、前記第1及び/又は第2の光検出器出力に含まれる暗電流の直流成分を低減して、後段の積分回路が飽和しないようにし、且つ、前記積分回路で暗電流雑音を低減した請求項1乃至7のいずれかに記載の標準光源装置。
【請求項9】
積分球に取り付けられた前記第1及び第2の光検出器の半導体素子を低温に冷却する際に、前記第1及び第2の光検出器のパッケージに設けられた窓の結露防止のために、その外側により接してこれと対向する、別の窓を設けた金属板を室温に保持した請求項1乃至8のいずれかに記載の標準光源装置。
【請求項10】
前記窓又は前記別の窓に隣接して乾燥材を配置した請求項9に記載の標準光源装置。
【請求項11】
前記光源ボックスは、可視光、紫外光、赤外光のいずれかの光を照射する請求項1乃至10のいずれかに記載の標準光源装置。
【請求項12】
光源を含み、開口部から照明するための光源ボックスと、
前記光源ボックスで一様に照明される前記開口部上の輝度を調整する可変減衰器と、
前記光源ボックスの前記開口部を通じて光を導き、前記可変減衰器で調整された輝度を定義する入力開口部を有し、内壁に形成された完全拡散面の相互拡散反射を用いて前記入力開口部上で定義された輝度を減衰して、減衰した輝度を内壁に実現し、前記減衰した輝度を定義する第1の連結開口部を有する第1の積分球と、
前記第1の積分球により前記減衰した輝度を測定する第1の光検出器と、
前記第1の連結開口部で前記第1の積分球と連結される第2の連結開口部を有し、減衰した第1の積分球の内壁上輝度を、前記第2の連結開口部を通じて導き、内壁に形成された完全拡散面の相互拡散反射を用いて前記第2の連結開口部上で定義された輝度をさらに減衰して、さらに減衰した輝度を内壁に実現し、前記さらに減衰した輝度を定義する出力開口部を有する第2の積分球と、
前記出力開口部で前記第2の積分球と連結される第3の連結開口部を有し、さらに減衰した第2の積分球の内壁上輝度を、前記第3の連結開口部を通じて導き、内壁に形成された完全拡散面の相互拡散反射を用いて前記第3の連結開口部上で定義された輝度をさらにまた減衰して、さらにまた減衰した輝度を内壁に実現し、前記さらにまた減衰した輝度を定義する第2の出力開口部を有する第3の積分球と、
前記第3の積分球により前記さらに減衰した輝度を測定する第3の光検出器と、
を備えた標準光源装置。
【請求項13】
前記第1及び第3の光検出器から測定値を入力し、前記可変減衰器を制御し、標準輝度を定めるための処理部をさらに備え、
前記処理部は、
前記可変減衰器により前記光源ボックスから前記第1の積分球へ導入される照明量を調整し、
各調整した値で、第1の積分球内壁上の減衰した輝度を測定する、前記第1の積分球にとりつけられた前記第1の光検出器の測定値Vと、測定値Vに対して、前記第3の積分球内壁上のさらに減衰した輝度を測定する、前記第3の積分球にとりつけられた前記第3の光検出器の測定値Vを取り込み、
取り込んだ測定値Vに対する測定値Vを表す測定データ列を、記憶部に記憶又は表示部に表示し、
前記記憶部に記憶又は前記表示部に表示された前記測定データ列を近似する直線を求め、前記直線に基づき、前記直線のV切片により前記第3の積分球にとりつけた前記第3の光検出器の測定値に含まれる暗電流及び/又はオフセット値を含む直流成分を求め、且つ、前記直線の傾きより前記第3の積分球の光減衰率r’を求め、光減衰率r’を前記記憶部に記憶又は前記表示部に表示する
請求項12に記載の標準光源装置。
【請求項14】
前記処理部は、
入力部からの操作入力又は前記記憶部に予め定められた値により、前記第3の積分球の内壁に実現される輝度L又は測定値Vを定め、
=L/r’ 又は V=V/r’ により、L又はVを計算し、
前記第1の検出器により測定された、前記第1の積分球の内壁に実現される輝度又は測定値が、計算された輝度L又は測定値Vになるように前記可変減衰器を制御する
請求項13に記載の標準光源装置。
【請求項15】
前記処理部は、
前記可変減衰器により前記第1の積分球に導入される照明量を調整し、
前記第1の光検出器により測定された、前記第1の積分球の内壁に実現される輝度L又は測定値Vに従い、L=r’L 又は V=r’Vにより、前記第3の積分球の内壁に実現される輝度L又は測定値Vを計算することで、前記第3の積分球の出力開口部に所望の輝度を定義する請求項13に記載の標準光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−236546(P2009−236546A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80201(P2008−80201)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】