説明

横押し型プッシュスイッチ

【課題】高寿命化を容易に図ることができる小形、薄形の横押し型プッシュスイッチを提供する。
【解決手段】横押し型プッシュスイッチ1は、ドーム状金属板7,8を横方向からの押しボタン9の押圧により押し下げるに当たって、2つの固定端及び1つの自由端を有する可撓性をもったT字状の押し子11を備え、押し子11の自由端を押しボタン9に接触するようにし、その押し子11の自由端に押しボタン9の押圧を直角方向に変換する傾斜部11eを形成し、押しボタン9の押圧により押し子11の2つの固定端の間11aを捻り変形させながら、押し子11の自由端によりドーム状金属板7,8を押し下げ、押し子11全体の変形量を少なくして、押し子11に発生する応力を減少させ、押し子11の外形を大きくすることなく、押し子11の耐久性を向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話機や携帯オーディオプレーヤ等の電子機器において、側面操作用のスイッチとして用いられる小形・薄形の横押し型プッシュスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
横押し型プッシュスイッチにおいては、小形・薄形を実現するため、基板への実装を面実装で行い、可動接点としてドーム状金属板を用いるものが多く、横方向からの押しボタンの押圧を直角方向に変換して、ドーム状金属板を押し下げ、スイッチをオンにするようになっている。
【0003】
従来の横押し型プッシュスイッチとして、押しボタンの奥側にある樹脂ハウジングの側壁に、押しボタンに向かって突出する可撓性をもった単純な片持ち梁を一体に形成し、押しボタンと片持ち梁の自由端を平坦な傾斜面をもって面接触させるようにし、押しボタンの押圧により片持ち梁を固定端を支点に下向きに撓み変形させて、ドーム状金属板を押し下げるものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平5−1125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の横押し型プッシュスイッチにおいては、樹脂の片持ち梁に圧縮及び引っ張りの応力を発生する撓みの繰り返しに対する耐久性によってスイッチの寿命が左右される。スイッチには実装部品としてのさらなる小型・薄形の要求があり、片持ち梁の耐久性を向上させるために、その長さや厚みを増やすことはできず、スイッチの高寿命化を容易に図り得ない問題があった。
【0005】
また、携帯型電子機器の小型・薄形化に加えて多機能化が進む中、2枚のドーム状金属板を2段で設置する2段動作タイプの横押し型プッシュスイッチが強く求められているが、この場合、1段動作タイプよりスイッチの操作ストローが長くなるため、スイッチの高寿命化がより困難になる問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、高寿命化を容易に図ることができる小形・薄形の横押し型プッシュスイッチを提供することにある。
【0007】
また、第2の目的は、高寿命化を容易に図ることができる小形・薄形で、2段動作タイプの横押し型プッシュスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の第1の目的を達成するために本発明の横押し型プッシュスイッチは、ドーム状金属板を横方向からの押しボタンの押圧により押し下げる横押し型プッシュスイッチであって、2つの固定端及び1つの自由端を有する可撓性をもったT字状の押し子を備え、押し子の自由端を押しボタンに接触するようにし、その押し子の自由端に押しボタンの押圧を直角方向に変換する傾斜部を形成し、押しボタンの押圧により押し子の2つの固定端の間を捻り変形させながら、押し子の自由端によりドーム状金属板を押し下げることを特徴とするもので、押し子全体の変形量を少なくして、押し子に発生する応力を減少させる。これにより、押し子の外形を大きくすることなく、押し子の耐久性を向上することができる。
【0009】
本発明の横押し型プッシュスイッチにおいては、押し子の傾斜部には丸みを付けて、押しボタンに線接触させて摺動させることが好ましい。この形態では、押しボタンと押し子の自由端との摺動摩擦を少なくして、押しボタンと押し子の自由端との摺動部の磨耗を抑え、ドーム状金属板の安定した押し下げストローク(スイッチの操作ストローク)を得る。これにより、スイッチの寿命までドーム状金属板の良好な動作特性(スイッチの良好な動作特性)を得ることができる。
【0010】
本発明の横押し型プッシュスイッチにおいては、押し子は、押しボタンを横方向に往復移動自在に支持するガイド体に、押し子の2つの固定端で繋いで一体に形成することが好ましい。この形態では、押しボタンと押し子との位置精度を確保して、ドーム状金属板の安定した押し下げストロークを得る。これにより、スイッチの寿命までドーム状金属板の良好な動作特性を得るとができる。
【0011】
本発明の横押し型プッシュスイッチにおいては、押しボタンに可動ストッパを一体に形成すると共に、ガイド体に、押しボタンの可動ストッパを当接させて、押しボタンの押圧を決められた位置で止める固定ストッパを一体に形成することが好ましい。この形態では、押しボタンの過剰な押圧(オーバーストローク)を精度よく制限することにより、押しボタンの過剰な押圧による押し子やドーム状金属板の耐久性の低下を防止することができると共に、スイッチの寿命までドーム状金属板の良好な動作特性を得ることができる。
【0012】
上記の第2の目的を達成するために本発明の横押し型プッシュスイッチは、上記の第1の目的を達成するための本発明の横押し型プッシュスイッチに、ドーム状金属板を上下2段で設置し、2段動作タイプの横押し型プッシュスイッチを構成する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の横押し型プッシュスイッチによれは、高寿命化を容易に図ることができる小形・薄形の横押し型プッシュスイッチを提供することができる。
【0014】
また、高寿命化を容易に図ることができる小形・薄形で、2段動作タイプの横押し型プッシュスイッチを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの外観を示す平面図、図2は本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの外観を示す側面図、図3は本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの内部構造を示すカバー除去状態の平面図、図4は本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの内部構造を示す断面図、図5は本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの組み立て図、図6は本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチに備える押しボタンを下から見た斜視図、図7は本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチに備えるガイド体の平面図、図8は本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチに備えるガイド体の断面図である。
【0016】
図1〜図8において、本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチ1は、2段階で2種類のスイッチ回路を開閉操作する2段動作タイプであり、インサート成形により第1,第2,第3の固定端子2,3,4と一体に形成する合成樹脂製で絶縁性をもったハウジング5と、ハウジング5とで横押し型プッシュスイッチ1のケースを形成するカバー6と、第1,第2の可動接点として用いる第1,第2のばね性をもったドーム状金属板7,8と、横方向から押圧してスイッチ操作を行う合成樹脂製で絶縁性をもった押しボタン9と、押しボタン9を横方向に往復移動自在に支持すると共に、押しボタン9の押圧を決められた位置で止める合成樹脂製で絶縁性をもったガイド体10と、ガイド体10に一体に形成し、横方向からの押しボタン9の押圧を下直角方向に変換して第1,第2ドーム状金属板7,8に伝達し、第1,第2ドーム状金属板7,8を押し下げて横押し型プッシュスイッチ1を2段動作させる合成樹脂製で絶縁性をもった押し子11とから構成される。
【0017】
ハウジング5は、上面開放の箱型に形成され、その内底面に段付き凹部5aを設けている。第1,第2,第3の固定接点端子2,3,4は、良導電性の金属薄板を打ち抜き及び曲げ加工することによって形成され、ハウジング5の底部に絶縁状態で埋設されている。第1固定接点端子2は、その一部を段付き凹部5aの外周段差面に略面一に露出して、第1固定接点としてのコモン接点2aを形成する。第2固定接点端子3は、その一部を段付き凹部5aの底面外側部に略面一に露出して、第2固定接点としての第1選択接点3aを形成する。第3固定接点端子4は、その一部を段付き凹部5aの底面中心部に略面一に露出して、第3固定接点としての第2選択接点4aを形成する。また、第1,第2,第3の固定接点端子2,3,4は、その一部をハウジング5の外部に取り出して、横押し型プッシュスイッチ1の外部接続端子を形成する。外部接続端子は、図示しないプリント回路基板に半田付けで面実装される。ハウジング5の外底面には、実装時の位置決め用に複数の突起5bを下方へ突出して設けている。
【0018】
また、ハウジング5は、前後左右4側壁の1つ(本実施の形態では左側壁)に押しボタン突出用の切り欠き5cを設け、上部4隅にカバー位置決め用の突起5dを上方へ突出して設け、左右側壁外面にカバー固定用の第1係止爪5eを外側へ突出して設け、前後側壁外面から外底面側部にわたってカバー固定用の係止溝5fを設けている。
【0019】
カバー6は、ハウジング5の開放上面を覆い、横押し型プッシュスイッチ1のケースを形成する。また、カバー6は、良導電性の金属板を打ち抜き及び曲げ加工することによって形成され、4隅にカバー位置決め用の切り欠き6aを設け、左右側縁からカバー固定用のばね性をもった第1係止片6bを下方へ突出して設け、前後側縁からカバー固定用のばね性をもった第2係止片6cを突出して設けている。横押し型プッシュスイッチ1の組み立て最終段階にハウジング5の開放上面をカバー6で覆う際、カバー6の切り欠き6aをハウジング5の突起5dに嵌合させることにより、カバー6がハウジング5の開放上面で位置決めされる。また、第1係止片6bは、その下部がハウジング5の第1係止爪5e上部に付けたテーパで外側に押し広げられて第1係止爪5e外面に乗り上げ、第1係止爪5eを乗り越えた時点で元に戻り、ハウジング5の左右側壁外面を押圧しながら第1係止爪5eに下側から係止する。さらに、第2係止片6cは、その下部がハウジング5の係止溝5f上部に付けたテーパで外側に押し広げられて係止溝5f垂直部に嵌合し、ハウジング5の前後側壁を乗り越えた時点で係止溝5f水平部に嵌合して元に戻り、全体が係止溝5fに嵌合し、上部でハウジング5の前後側壁外面を押圧しながら下部がハウジング5の外底面側部に下側から係止する。これにより、カバー6がハウジング5の開放上面に固定される。
【0020】
第1ドーム状金属板7及び第2ドーム状金属板8は、良導電性の金属薄板を打ち抜き及び曲げ加工することによって形成され、第1ドーム状金属板7の外周部を段付き凹部5aの外周段差面に支持し、第2ドーム状金属板8の外周部を段付き凹部5aの底面外周部に支持して、第1ドーム状金属板7及び第2ドーム状金属板8を段付き凹部5aに上下2段で設置している。第1ドーム状金属板7は、その外周部がコモン接点2aと常時接触している。第2ドーム状金属板8は、その外周部が第1選択接点3aと常時接触し、中心部が第2選択接点4aと対向している。
【0021】
押しボタン9は、平面視コ字状の押圧板9aと、押圧板9a中間片部の外側面中央部から突出した板状の操作部9bと、押圧板9a中間片部の内側面を斜め下向きに傾斜させた平らな傾斜面でなる押し下げ部9cと、押圧板9a中間片部の外側面両端部でなる復帰時のストッパ9dと、押圧板9a両端辺部の先端部外側面から外側へ突出した突起でなる押圧時の可動ストッパ9eとを一体に形成している。押しボタン9は、押圧板9aをガイド体10によってハウジング5の内側上部に略水平に支持して、操作部9bを切り欠き5cを通してハウジング5の左外側に略水平に突出させることにより、操作部9bを横方向から押圧することにより右方向に押し込み操作される。復帰時のストッパ9dは、ハウジング5の切り欠き5c両側にある左側壁内面に対向している。
【0022】
ガイド体10は、第1ドーム状金属板6を覆わないように、ハウジング5の段付き凹部5a外側にある内底面の上に重ね合わせる平面視コ字状のベース板部10aと、ベース板部10a両端辺部の外側縁から立ち上げてハウジング5の前後側壁内側に重ね合わせる一対のガイド壁部10bとを一体に形成している。ガイド体10は、ベース板部10a及びガイド壁部10bの外周面をハウジング5の前後左右4側壁内面に接触させると共に、ベース板部10aの下面をハウジング5の段付き凹部5a外側にある内底面で支持した状態で、ガイド壁部10bの上部をカバー6で押えて、ハウジング5内に収容固定される。
【0023】
また、ガイド体10のガイド壁部10bには、押しボタン9の押し込みストローク(スイッチの操作ストローク)を決める凹状の切り欠き10cを設け、押しボタン9の押圧方向に沿って奥側にある切り欠き10cの側端面が、押しボタン9の押圧を止める固定ストッパ10dになっている。
【0024】
ガイド体10は、押しボタン9の押圧板9a上面をカバー6で押えて、切り欠き10c内に押しボタン9の可動ストッパ9eを嵌合させると共に、ガイド壁部10bの間に押しボタン9の押圧板9aを挟み、ベース板部10a上面で押しボタン9の押圧板9a下面を支持し、ガイド壁部10b内面で押しボタン9の押圧板9a両外側面を支持して、押しボタン9を押圧方向に沿う横方向に往復移動自在に支持する。また、押しボタン9の押し込みストローク終端で、固定ストッパ10dに押しボタン9の可動ストッパ9eを当接させ、押しボタン9の押圧を止める。
【0025】
押し子11は、両端がガイド体10の切り欠き10cより押しボタン9の押圧方向に沿って奥側にあるガイド壁部10bに一体に繋がれて固定され、このガイド壁部10bの間に架け渡たされる可撓性をもった捻り変形可能な薄板状の揺動支点部11aと、一端部が揺動支点部11aの内面中央部に一体に繋がれて支持され、揺動支点部11aの内面中央部から押しボタン9の押し下げ部9cに向かって略直角に延出される可撓性をもった上下に撓み変形可能な片持ち梁状のヒンジ部11bとで、T字状に、ガイド体10に一体に形成され、2つの固定端(揺動支点部9aの両端)及び1つの自由端(ヒンジ部9bの先端)を有している。
【0026】
また、ヒンジ部9bの先端部には、上向きに突出する山形の上部突起11cと下向きに突出する半球状の下部突起11dを一体に形成し、上部突起9cの頂部からヒンジ部9bの先端に向かって下る傾斜面を押しボタン9の押し下げ部9cに下側から接触させると共に、下部突起9cの下部を第1ドーム状金属板7の上面略中心部に当接させ、押しボタン9の押し下げ部9cに接触する上部突起9cの傾斜面が、押し子11の自由端に一体に形成されて押しボタン9の押圧を下直角方向に変換する傾斜部11eになっている。
【0027】
さらに、傾斜部11eには、押しボタン9の平らな(直線状の)押し下げ部9cに対し、面ではなく線をもって接触させ摺動させるように、丸みを付けている。
【0028】
図3に示すように、本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチ1の組み立ては、ハウジング5の段付き凹部5aに第1ドーム状金属板7及び第2ドーム状金属板8を上下2段で設置した後、その段付き凹部5a外側にある内底面の上に固定ストッパ10d及び押し子11を一体に形成したガイド体10を配置し、ハウジング5の切り欠き5cに押しボタン9の操作部9bを嵌合させると共に、ガイド体10の切り欠き10cに押しボタン9の可動ストッパ9eを嵌合させながら、押しボタン11の押圧板9aをガイド体10のガイド壁部10bの間に嵌合させて、押しボタン9を装着し、最後にカバー6を上方から嵌合してハウジング5に位置決め及び係止させることにより完了する。
【0029】
図9は本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの1段目のスイッチ動作後(第1ドーム状金属板動作後)の状態を示す断面図、図10は本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの2段目のスイッチ動作後(第2ドーム状金属板動作後)の状態を示す断面図である。次に、図4,図6,図7に基づいて本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチ1の動作を説明する。
【0030】
図4は横押し型プッシュスイッチ1の動作前の状態を示し、押しボタン9を操作しない動作前の自由状態では、押しボタン9は、その復帰時のストッパ9dがハウジング5の切り欠き5c両側にある左側壁内面に当接すると共に、押圧時の可動ストッパ9eがガイド体10の切り欠き10c内の左端部に位置して固定ストッパ10dとは離間し、押し下げ部9cが押し子11の傾斜部11eを押圧しない位置にあるので、押し子11は、その揺動支点部11a及びヒンジ部11b壁に殆ど外力を受けず、略自由状態にある。
【0031】
また、第1ドーム状金属板7と第2ドーム状金属板8とは、それぞれが上向きに膨らんだ自由状態にあり離間すると共に、第2ドーム状金属板8は、中心部が第2選択接点4aに対し離間対向している。
【0032】
この自由状態から、押しボタン9の操作部9bを横方向から図4の右方向へ押圧すると、図9に示すように、押しボタン9の押し下げ部9cが右方向に移動し、接触している押し子11の傾斜部11aを右方向に押圧しながら摺動する。これに伴い、横方向からの押しボタン9の押圧が下直角方向に変換されて押し子11の自由端に伝達され、押し子11は、先ず、揺動支点部11aを反時計方向に捻り変形させながら、その揺動支点部11aを中心に反時計方向へ回動し、自由端を下方向に押し下げ、その自由端の下部突起11dにより第1ドーム状金属板7の上面略中心部を押し下げ操作する。
【0033】
これによって、第1ドーム状金属板7は下向きに反転動作して、その下側にある第2ドーム状金属板8に接触するため、コモン接点2aと第1選択接点3aとが第1ドーム状金属板7及び第2ドーム状金属板8を介して電気的に導通接続され、1段目の第1スイッチがオンになる。
【0034】
続いて、押しボタン9の操作部9bを横方向からさらに右方向へ押圧すると、図10に示すように、押しボタン9の押し下げ部9Cはさらに右方向へ移動し、接触している押し子11の傾斜部11eをさらに右方向に押圧しながら摺動する。これに伴い、押し子9は、揺動支点部11aを反時計方向にさらに捻り変形させながら、その揺動支点部11aを中心に反時計方向へさらに回動し、加えてヒンジ部11bを撓み変形させながら自由端を下方向に押し下げ、その自由端の下部突起11dにより第1ドーム状金属板7と共に第2ドーム状金属板8の上面略中心部を押し下げ操作する。
【0035】
これによって、第2ドーム状金属板7は下向きに反転動作して、その中心部下側にある第2選択接点4aに接触するため、コモン接点2aと第2選択接点4aとが第1ドーム状金属板7及び第2ドーム状金属板8を介して電気的に導通接続され、2段目の第2スイッチが1段目の第1スイッチに続いてオンになる。
【0036】
この時、押しボタン9の可動ストッパ9eは、ガイド体10の切り欠き10c内の右端部に移動し、ガイド体10の固定ストッパ10dに突き当たって受け止められ、横方向からの押しボタン9の押圧が止められ、押し子11や第1ドーム状金属板7及び第2ドーム状金属板8の耐久性の低下を招く押しボタン9の過剰な押圧(オーバーストローク)を精度良く制限する。なお、押しボタン9の操作部9bが押圧されて第2ドーム状金属板8と第2選択接点4aが接触している間は、第1スイッチ及び第2スイッチのオン状態を保つ。
【0037】
この第1スイッチ及び第2スイッチのオン状態で、横方向からの押しボタン9の押圧を除くと、第1ドーム状金属板7及び第2ドーム状金属板8がそれぞればね力により上向きに反転動作して元の自由状態に戻ると共に、押し子9もヒンジ部911b及び揺動支点部11aそれぞれの弾性復帰力により元の自由状態に戻り、それに伴って、押しボタン9も元の位置に戻り、図4に示したスイッチ動作前の自由状態に復帰する。この自由状態への復帰時に、第2ドーム状金属板8と第2選択接点4aとの接触が断たれ時点で第2スイッチがオフになり、第1ドーム状金属板7と第2ドーム状金属板8との接触が断たれた時点で第1スイッチがオフになる。
【0038】
上記から明らかなように、本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチ1は、2枚の第1,第2ドーム状金属板7,8を上下2段で設置し、その第1,第2ドーム状金属板7,8を横方向からの押しボタン9の押圧により押し下げる2段動作タイプの横押し型プッシュスイッチであり、スイッチの操作ストロークがドーム状金属板が1枚の1段動作タイプの横押し型プッシュスイッチより長くなるが、2つの固定端及び1つの自由端を有する可撓性をもったT字状の押し子11を備え、押し子11の自由端を押しボタン9に接触するようにし、その押し子11の自由端に押しボタン9の押圧を直角方向に変換する傾斜部11eを形成し、押しボタン9の押圧により押し子11の2つの固定端の間11aを捻り変形させながら、押し子11の自由端により第1,第2ドーム状金属板7,8を押し下げるので、押し子11全体の変形量を少なくして(単純な片持ち梁構造の押し子に比べて)、押し子11に発生する応力を減少させることができる。これにより、押し子11の外形を大きくすることなく、押し子11の耐久性を向上することができる。
【0039】
また、押し子11の傾斜部11eには丸みを付けて、押しボタン11に線接触させて摺動させるので、押しボタン9と押し子11の自由端との摺動摩擦を少なくして(面接触に比べ)、押しボタン9と押し子11の自由端との摺動部の磨耗を抑え、第1,第2ドーム状金属板7,8の安定した押し下げストローク(スイッチの操作ストローク)を得ることができる。これにより、スイッチの寿命まで第1,第2ドーム状金属板7,8の良好な動作特性(スイッチの良好な動作特性)を得ることができる。
【0040】
また、押し子11は、押しボタン9を横方向に往復移動自在に支持するガイド体10に、押し子11の2つの固定端で繋いで一体に形成するので、押しボタン9と押し子11との位置精度を容易に確保でき、第1,第2ドーム状金属板7,8の安定した押し下げストロークを得ることができる。これにより、スイッチの寿命まで第1,第2ドーム状金属板7,8の良好な動作特性を得るとができる。
【0041】
また、押しボタン9に可動ストッパ9eを一体に形成すると共に、ガイド体10に、押しボタン9の可動ストッパ9eを当接させて、押しボタン9の押圧を決められた位置で止める固定ストッパ10dを一体に形成するので、押しボタン9の過剰な押圧(オーバーストローク)を精度よく制限することができ、これにより、押しボタン9の過剰な押圧による押し子11や第1,第2ドーム状金属板7,8の耐久性の低下を防止することができると共に、スイッチの寿命まで第1,第2ドーム状金属板7,8の良好な動作特性を得ることができる。
【0042】
従って、本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチ1は、高寿命化を容易に図ることができると共に、スイッチの寿命まで良好な動作特性を得ることができる小形・薄形で、2段動作タイプの横押し型プッシュスイッチになっている。
【0043】
以上、本実施の形態は本発明の良好な一実施の形態を示したが、本発明はそれに限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形実施することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの外観を示す平面図である。
【図2】本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの外観を示す側面図である。
【図3】本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの内部構造を示すカバー除去状態の平面図である。
【図4】本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの内部構造を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの組み立て図である。
【図6】本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチに備える押しボタンを下から見た斜視図である。
【図7】本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチに備える押し子の構造を示すガイド体の平面図である。
【図8】本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチに備える押し子の構造を示す断面図である。
【図9】本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの1段目のスイッチ動作後の状態を示す断面図である。
【図10】本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの2段目のスイッチ動作後の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 横押し型プッシュスイッチ
7 第1ドーム状金属板
8 第2ドーム状金属板
9 押しボタン
9e 可動ストッパ
10 ガイド体
10d 固定ストッパ
11 押し子
11e 傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーム状金属板を横方向からの押しボタンの押圧により押し下げる横押し型プッシュスイッチであって、2つの固定端及び1つの自由端を有する可撓性をもったT字状の押し子を備え、押し子の自由端を押しボタンに接触するようにし、その押し子の自由端に押しボタンの押圧を直角方向に変換する傾斜部を形成し、押しボタンの押圧により押し子の2つの固定端の間を捻り変形させながら、押し子の自由端によりドーム状金属板を押し下げることを特徴とする横押し型プッシュスイッチ。
【請求項2】
押し子の傾斜部には丸みを付けて、押しボタンに線接触させて摺動させる請求項1に記載の横押し型プッシュスイッチ。
【請求項3】
押し子は、押しボタンを横方向に往復移動自在に支持するガイド体に、押し子の2つの固定端で繋いで一体に形成する請求項1又は2に記載の横押し型プッシュスイッチ。
【請求項4】
押しボタンに可動ストッパを一体に形成すると共に、ガイド体に、押しボタンの可動ストッパを当接させて、押しボタンの押圧を決められた位置で止める固定ストッパを一体に形成する請求項3に記載の横押し型プッシュスイッチ。
【請求項5】
ドーム状金属板を上下2段で設置する請求項1乃至4の何れか1に記載の横押し型プッシュスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−108654(P2008−108654A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292068(P2006−292068)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】