説明

横押し型プッシュスイッチ

【課題】可動接点としてのドーム状金属板の良好な動作特性を得ることができる小形、薄形で高寿命、高接触信頼性の1段動作タイプ及び2段動作タイプの横押し型プッシュスイッチを提供する。
【解決手段】押しボタン10の移動方向の操作力をドーム状金属板6,7の動作方向に変換する樹脂の傾斜部11と、この傾斜部11をドーム状金属板6,7の動作方向に移動させる可撓性を持った金属のヒンジ部12と、ドーム状金属板を押し下げる樹脂の押圧部13と、を有する押し子14を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話機や携帯オーディオプレーヤ等の側面操作用の操作スイッチとして用いられる小形・薄形の横押し型プッシュスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の横押し型プッシュスイッチでは、その小形、薄形を実現するために基板への実装を面実装で行い、可動接点にばね性を持ったドーム状金属板を用いるものが多く、横方向の操作力をその操作方向とは垂直方向に変換してドーム状金属板に伝達し、そのドーム状金属板を押し下げて動作させるようになっている。
【0003】
このような従来の横押し型プッシュスイッチとしては、特許文献1で示すものが知られており、1枚のドーム状金属板がハウジングの内底面に設置され、押しボタンはハウジングに支持され、ハウジングの側部より突出した操作部の押圧操作に伴いドーム状金属板の動作方向とは垂直方向に案内されて移動する。そして、押しボタンに操作部と一直線上で一体に形成する可撓性を持ったヒンジ部と、ハウジングに取り付くカバーに一体に形成し押しボタンの移動方向の操作力をドーム状金属板の動作方向に変換する傾斜部と、を備え、ヒンジ部の先端が傾斜部上で摺動することで、操作部の押圧操作に伴う押しボタンの移動方向の操作力を押しボタンの移動方向とは垂直方向のドーム状金属板の動作方向に変換している。
【特許文献1】特開2005−122989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように従来の横押し型プッシュスイッチは、横方向の操作力をその操作方向とは垂直方向のドーム状金属板の動作方向に変換する部品(傾斜部)と、その部品をドーム状金属板の動作方向に移動させる部品(ヒンジ部)と、を別体に備えているので、操作力をそのままドーム状金属板に伝達し得ず、それに加えて、ドーム状金属板の略中心部を精度よく押圧し得ないため、ドーム状金属板の良好な動作特性を得ることが難しい。
【0005】
また、押しボタンに一体に形成されたヒンジ部の先端でドーム状金属板を押し下げるので、ヒンジ部には絶縁性が求められ、導電性の金属は使用できず、耐久性に欠ける面があると共に、特性が実装時の熱で変化(劣化)しバラツキを生じ易い。
【0006】
また、ヒンジ部は略水平姿勢から撓んで弾性変形しながら下方向に押し下げられて、ドーム状金属板を押し下げ、最終的にドーム状金属板をその設置面に対して傾いた傾斜姿勢でドーム状金属板の動作状態を保持するため、接触信頼性に欠ける面がある。
【0007】
ところで、携帯電話機や携帯オーディオプレーヤ等の小形、薄形化に加え、その多機能化が進む中で、従来の横押し型プッシュスイッチは、1枚のドーム状金属板を用い、1段階で1種類のスイッチ回路を開閉操作する1段動作タイプであるため、2枚のドーム状金属板をその動作方向に2段で備え、2段階で2種類のスイッチ回路を開閉操作する2段動作タイプの横押し型プッシュスイッチが強く求められている。
【0008】
しかしながら、2段動作タイプの場合、1段動作タイプよりヒンジ部の動作ストローク(ドーム状金属板の押し下げストローク)が長くなるため、上記のような問題が顕著に現れる。それに加えて、ヒンジ部の動作ストロークを長くするためには、傾斜部を大きくする必要があり、そのことが製品の厚みを厚くするという致命的な問題を生じる。
【0009】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、ドーム状金属板の良好な動作特性を得ることができる小形、薄形で高寿命、高接触信頼性の横押し型プッシュスイッチを提供することにある。
【0010】
また、第2の目的は、ドーム状金属板の良好な動作特性を得ることができる小形、薄形で高寿命、高接触信頼性の2段動作タイプの横押し型プッシュスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の第1の目的を達成するために本発明の横押し型プッシュスイッチは、押しボタンの操作部が側部より突出すると共に、可動接点にばね性を持ったドーム状金属板を用い、前記操作部の押圧操作に伴う前記押しボタンの移動方向の操作力を前記押しボタンの移動方向とは垂直方向のドーム状金属板の動作方向に変換する横押し型プッシュスイッチであって、前記押しボタンの移動方向の操作力を前記ドーム状金属板の動作方向に変換する傾斜部と、この傾斜部を前記ドーム状金属板の動作方向に移動させる可撓性を持ったヒンジ部と、前記ドーム状金属板を押し下げる押圧部と、を有する押し子を備えたことを特徴とするもので、この構成を採用することにより、操作力をそのままドーム状金属板に伝達し、ドーム状金属板の略中心部を精度よく押圧し、ドーム状金属板の良好な動作特性を得ると共に、ヒンジ部の金属化を可能にし、ヒンジ部の耐久性の向上及び特性の安定化を図る。
【0012】
また、前記押し子の押圧部が樹脂で成形され、ヒンジ部が金属板バネで形成されている構成を付加することにより、ヒンジ部の金属化による耐久性の向上及び特性の安定化を実現する。
【0013】
また、前記押し子自体に前記傾斜部より緩傾斜の傾斜を持たせている構成を付加することにより、1段動作タイプでは傾斜部を小さくしながら、押し子に必要な動作ストロークを得られるようにし、一方、2段動作タイプでは傾斜部を大きくすることなく、押し子の動作ストロークを長くできるようにする。
【0014】
また、前記押し子は前記押しボタンの押し込みストローク終端で前記ドーム状金属板の設置面と略平行になる構成を付加することにより、押し子がドーム状金属板の動作状態をその設置面に対して略平行になる姿勢で保持し、高い接触信頼性を得る。
【0015】
上記の第2の目的を達成するために本発明の横押し型プッシュスイッチは、上記の第1の目的を達成するための本発明の横押し型プッシュスイッチに、前記ドーム状金属板をその動作方向に2段で設置したことを特徴とするもので、製品の厚みを厚くすることなく、2段動作タイプの横押し型プッシュスイッチを得る。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明の横押し型プッシュスイッチによれは、ドーム状金属板の良好な動作特性を得ることができる小形、薄形で高寿命、高接触信頼性の横押し型プッシュスイッチを提供することができる。
【0017】
また、ドーム状金属板の良好な動作特性を得ることができる小形、薄形で高寿命、高接触信頼性の2段動作タイプの横押し型プッシュスイッチを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの平面図、図2は本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの断面図、図3は本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの組み立て図である。
【0019】
図1〜図3に示すように、本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチ1は、2段階で2種類のスイッチ回路を開閉操作する2段動作タイプである。インサート成形等により第1,第2,第3の3つの固定接点端子2,3,4と一体に形成された合成樹脂製で絶縁性を持ったハウジング5と、第1,第2の2つの可動接点として用いる第1,第2の2枚のばね性を持ったドーム状金属板6,7と、固定ストッパ8を一体に形成した合成樹脂製で絶縁性を持ったガイド体9と、横方向から押圧操作される合成樹脂製で絶縁性を持った押しボタン10と、押しボタン10の移動方向の操作力をドーム状金属板6,7の動作方向に変換する傾斜部11及びこの傾斜部11をドーム状金属板6,7の動作方向に移動させる可撓性を持ったヒンジ部12及びドーム状金属板6,7を押し下げる押圧部13を有する押し子14と、スイッチケースをハウジング5とで形成するカバー15とから構成される。
【0020】
ハウジング5は、上面開口状の箱型に形成され、その内底面に段付き凹部5aが形成され、この段付き凹部5aの外周段差面に第1固定接点端子2の一部が略面一に露出されて第1固定接点としてのコモン接点2aが形成され、また段付き凹部5aの底面外側部に第2固定接点端子3の一部が略面一に露出されて第2固定接点としての第1選択接点3aが形成され、さらに段付き凹部5aの底面中心部に第3固定接点端子4の一部が略面一に露出されて第3固定接点としての第2選択接点4aが形成される。
【0021】
各固定接点端子2,3,4は、導電性の金属薄板を打ち抜き及び曲げ加工して形成され、各固定接点端子2,3,4の一端部がハウジング5の外部に取り出され、横押し型プッシュスイッチ1の面実装用に図示しない外部接続端子を形成する。この外部接続端子は図示しないプリント回路基板に半田付けで固定、接続される。
【0022】
また、ハウジング5の4側壁のうちの1つの側壁(左側壁)の中央上部には、押しボタン突出用に凹状の切り欠き5bが形成される。さらに、ハウジング5の上面側の4隅には、カバー位置決め用に上方へ突出する突起5cが形成されると共に、ハウジング5の4側壁には、カバー固定用の係合爪5dと係合溝5eが形成される。係合爪5dは切り欠き5bを形成した側壁の両端上部とその側壁に対向する側壁外面の中央上部とに外方へ突出して形成され、係合溝5eは残りの対向する2つの側壁の外面中央部に形成される。係合溝5eの下端部はハウジング5の外底面に沿って内側に屈曲形成される。ハウジング5の外底面には、図示しないプリント回路基板に対する位置決め用に突起5fが形成される。
【0023】
第1,第2のドーム状金属板6,7は、導電性の金属薄板(ばね用金属材料)からなり、第1ドーム状金属板6が段付き凹部5aの外周部段差面に支持され、第2ドーム状金属板7が段付き凹部5aの底面に支持され、これら2枚の第1,第2のドーム状金属板6,7がハウジング5の段付き凹部5a内に上下2段に設置される。第1ドーム状金属板6はその外側部がコモン接点2aと常時接触している。第2ドーム状金属板7はその外側部が第1選択接点3aと常時接触し、第2ドーム状金属板7の中心部が第2選択接点4aと対向している。
【0024】
図4の(A)は組み立て状態のガイド体と押し子の平面図、(B)は(A)のA−A線断面図、図5の(A)は組み立て状態の押しボタンとガイド体と押し子の平面図、(B)は(A)の底面図、(C)は(A)のA−A線断面図である。
【0025】
図1〜図5に示すように、ガイド体9は、平面視略コ字状に形成されたベース板部9aと、このベース板部9aの両端辺部の外側縁から立ち上げたガイド壁部9bとを一体に形し、ベース板部9aの中間辺部外側面がハウジング5の切り欠き5bを形成した側壁下部内面と接触し、ベース板部9aの両端辺部外側面とガイド壁部9bの外側面がハウジング5の切り欠き5bを形成した側壁に隣接する2つの側壁内面と接触し、ベース板部9aの両端辺部端面がハウジング5の切り欠き5bを形成した側壁と対向する側壁内面と接触した状態で、第1ドーム状金属板6を覆わないようにハウジング5の段付き凹部5aの周囲にある内底面の上に配置され、ガイド壁部9bの上側面をカバー15で押えて固定される。
【0026】
また、各ガイド壁部9bの中央上部には、押しボタン10の押し込みストロークを決める凹状の切り欠き9cが形成され、この各切り欠き9cの一側(右側)の側端面が押しボタン10の過剰な押し込みストローク(オーバーストローク)を規制する固定ストッパ8になっている。
【0027】
押しボタン10は、平面視コ字状に形成された基板部10aと、この基板部10aの中間辺部中央外側面から突出した操作部10bと、基板部10aの中間辺部両端外側面でなる肩部10cとを一体に形成し、操作部10bがハウジング5の切り欠き5bから外方へ突出すると共に、肩部10cがハウジング5の切り欠き5bを形成した側壁の切り欠き5bの両側にある内面と対向し、基板部10aの下面がガイド体9のベース板部9aの上面と接触し、基板部10aの両端辺部外側面がガイド体9のガイド壁部9bの内面と接触した状態で、ガイド体9によって支持され、基板部10aの上面をカバー15で摺動自在に押えて、操作部10bの押圧操作方向に沿って移動案内される。
【0028】
また、基板部10aの内側には下側から押し子14の傾斜部11が突出し、この傾斜部11と対向する基板部10aの中間辺部中央内側面が、傾斜部11に接触して摺動しながら押し子14を押し下げる押し子押し下げ部10dになっている。
【0029】
さらに、基板部10aの両端辺部外側面には、外方へ突出してガイド体9のガイド壁部9bに形成された切り欠き9cに嵌り込む可動ストッパ10eが一体に形成される。この可動ストッパ10eは、操作部10bの押圧操作に伴う押しボタン10の押し込み時に切り欠き9c内で移動し、押しボタン10の押し込みストローク終端で、切り欠き9cの一側(右側)の側端面でなる固定ストッパ8で受け止められて、押しボタン10の過剰な押し込みストローク(オーバーストローク)を規制する。
【0030】
押し子14の傾斜部11と押圧部13は、絶縁性の合成樹脂で一体に形成され、押し子14のヒンジ部12は、金属板バネで形成されている。傾斜部11は、側面が三角形で、底面が矩形となるように、横に倒した三角柱状のものである。押圧部13は、傾斜部11の平坦な矩形底面から下方に突出する半球状のものである。押圧部13の基端部外周面には、リング状の溝13aが形成されている。ヒンジ部12は、その固定端部から両側にコ字状の係止部12aが突出されて平面視略T字に形成され、自由端側に円形の取り付け孔12bが開口形成されている。また、ヒンジ部12の固定端部は水平に形成されるのに対し、その水平な固定端部から先はZ曲げされた曲げ部12cを介して斜め上方に延出されて傾斜角度θを持っている。
【0031】
押し子14の組み立ては、傾斜部11の平坦な矩形底面から下方に突出した半球状の押圧部13を、ヒンジ部12の自由端側に開口形成された取り付け孔12bに上方から圧入して、ヒンジ部12の下面側に突出させ、ヒンジ部12の取り付け孔12bの周辺部を、押圧部13の基端部外周面に形成されたリング状の溝13aに嵌め込むことで、ヒンジ部12の上面に傾斜部11を上方に突出して取り付けると共に、ヒンジ部12の自由端側下面に押圧部13を下方に突出して取り付けて、完了する。なお、傾斜部11の平坦な矩形底面とヒンジ部12の上面とを接着剤により接着する等して、傾斜部11及び押圧部13の回り止めを行うことができる。
【0032】
そして、押し子14は、ヒンジ部12の固定端部とその両側に突出されて形成されたコ字状の係止部12aが、ハウジング5の切り欠き5bを形成した側壁と段付き凹部5aの間にある内底面と、その面と対向するガイド体9のベース板部9aの中間辺部外底面との間に挟み込まれて固定されて、ヒンジ部12が片持ちで支持される。これにより、傾斜部11が、傾斜角度θを持ったヒンジ部12によって、押しボタン10の基板部10aの内側に配置され、傾斜部11の頂部より一側にあり、押しボタン10の押し込み方向に向かって上り傾斜となる傾斜面11aが、押しボタン10の基板部10aの中間辺部中央内側面でなる押し子押し下げ部10dと対向すると共に、押圧部13が、第1ドーム状金属板6の上に配置され、押圧部13の下端略中心部が、第1ドーム状金属板6の上面略中心部に当接している。また、傾斜部11と押圧部13が片持ち支持のヒンジ部12によって第1ドーム状金属板6とカバー15との間に上下に揺動自在に支持している。なお、ヒンジ部12の固定端部とその両側に突出されて形成されたコ字状の係止部12aを挟み込む二面のうちの何れか一方の面、つまり、ハウジング5の切り欠き5bを形成した側壁と段付き凹部5aの間にある内底面、或いは、ガイド体9のベース板部9aの中間辺部外底面に、ヒンジ部12の板厚分の深さを有し、ヒンジ部12の固定端部とその両側に突出されて形成されたコ字状の係止部12aを埋め込む図示しない溝を形成することで、コ字状の係止部12aの内側にハウジング5或いはガイド体9の樹脂が嵌り込み、押し子14の位置決めを行うことができる。この際、ヒンジ部12とハウジング5及びガイド体9との接合面を接着剤により接着することもできる。
【0033】
また、押し子14には、それ自体に傾斜角度θを持ったヒンジ部12によって、傾斜部11の傾斜面11aより緩傾斜の傾斜角度θを持たせている。
【0034】
図例では、傾斜部11を樹脂の押圧部14側に一体に形成した2ピース構造の押し子14を示したが、金属板バネからなるヒンジ部12側に傾斜部11を一体に形成した2ピース構造の押し子、或いは、傾斜部11を単品構造で有する3ピース構造の押し子としてもよい。この際、2ピース構造の方が3ピース構造より生産性が高く、コスト面でも有利である。また、これら2ピース或いは3ピース構造の押し子は、インサート成型によって形成することもできる。
【0035】
カバー15は、導電性の金属板を打ち抜き及び曲げ加工して形成され、ハウジング5の上面を覆う平板状の上側板15aと、この上側板15aの4隅に形成され、ハウジング5の突起5cと嵌合するカバー位置決め用の切り欠き15bと、上側板15aの対向する2側縁から下向きに延出され、下端部をハウジング5の係合爪5dに下側から係止させてカバー15を固定する第1係止部15cと、上側板15aの残りの対向する2側縁から下向きに延出され、ハウジング5の係合溝5eに嵌合した状態で、下端部をハウジング5の外底面に下側から係止させてカバー15を固定する第2係止部15dとを備える。
【0036】
図3に示すように、本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチ1の組み立ては、ハウジング5の段付き凹部5aに第1,第2ドーム状金属板6,7を上下2段で設置した後、ハウジング5の切り欠き5bを形成した側壁と段付き凹部5aの間にある内底面の上に、押し子14のヒンジ部12の固定端部とその両側に突出されて形成されたコ字状の係止部12aを載せ、ハウジング5の段付き凹部5aの周囲にある内底面の上に固定ストッパ8を一体に形成したガイド体9を配置し、ハウジング5の切り欠き5bに押しボタン10の操作部10bを嵌合すると共に、ガイド体9の切り欠き9cに押しボタン10の可動ストッパ10eを嵌合しながら、押しボタン10の基板部10aをガイド体9のベース板部9aの上に重ねて配置し、最後に、カバー15を上方からハウジング5に嵌着して位置決め及び係止させることにより完了する。
【0037】
図6は本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの1段目のスイッチ動作後(第1ドーム状金属板動作後)の状態を示す断面図、図7は同横押し型プッシュスイッチの2段目のスイッチ動作後(第2ドーム状金属板動作後)の状態を示す断面図である。図2及び図6,図7に基づいて本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの動作を説明する。
【0038】
図2は横押し型プッシュスイッチ1の動作前の状態を示し、押しボタン10を操作しない動作前の状態では、押しボタン10は、肩部10cがハウジング5の切り欠き5bを形成した側壁の切り欠き5bの両側にある内面に当接すると共に、可動ストッパ10eがガイド体9のガイド壁部9bに形成された切り欠き9c内の左端部に位置し、押し子押し下げ部10dが押し子14の傾斜部11の傾斜面11aを押圧しない位置に保持されるので、押し子14は、そのヒンジ部12に殆ど弾性変形を受けずに略自由状態の傾斜姿勢で保持される。
【0039】
また、第1ドーム状金属板6と第2ドーム状金属板7とは、それぞれ上向きに膨らんだ状態で離間すると共に、第2ドーム状金属板7は第2選択接点4aと離間している。ここで、押し子14の押圧部13は、第1ドーム状金属板6の上面略中心部で上方向へ押される。これに伴い、押し子14がその自由状態の傾斜角度θよりややきつい傾斜角度の傾斜姿勢に保持され、押圧部13の下端略中心部と第1ドーム状金属板6の上面略中心部とが接触保持される。
【0040】
この状態から、押しボタン10の操作部10bを図2の右方向へ押圧すると、図6に示すように、押し子押し下げ部10dが右方向に移動して押し子14の傾斜部11の傾斜面11aに接触して右方向に押圧すると共に、傾斜部11の傾斜面11aで摺動する。これに伴い、押し子14はヒンジ部12の曲げ部12cで撓んで弾性変形しながら下方向に押し下げられるので、押圧部13の下端略中心部が第1ドーム状金属板6の上面略中心部を押し下げ操作する。
【0041】
これによって、第1ドーム状金属板6は下向きに反転動作して、下側の第2ドーム状金属板7と接触するため、コモン接点2aと第1選択接点3aが第1,第2ドーム状金属板6,7を通じて導通して1段目の第1スイッチがオンとなる。
【0042】
この状態から、押しボタン10の操作部10bをさらに右方向へ押圧すると、図7に示すように、押し子押し下げ部10dはさらに右方向に移動して押し子14の傾斜部11の傾斜面11aをさらに右方向に押圧すると共に、傾斜部11の傾斜面11aでさらに摺動する。これに伴い、押し子14はヒンジ部12の曲げ部12cでさらに撓んで弾性変形しながらさらに下方向に押し下げられるので、この押圧部13が第1ドーム状金属板6を介して第2ドーム状金属板7の上面略中心部を押し下げ操作する。
【0043】
これによって、第2ドーム状金属板7は下向きに反転動作して第2選択接点4aと接触するため、コモン接点2aと第2選択接点4aが第1,第2ドーム状金属板6,7を通じて導通して2段目の第2スイッチが1段目の第1スイッチに続いてオンとなる。
【0044】
この時、押しボタン10の可動ストッパ10eはガイド体9のガイド壁部9bに形成された切り欠き9c内の右端部に移動し、ガイド体9の固定ストッパ8で受け止められ、操作部10bの押圧操作に伴う押しボタン10の押し込み規制すると共に、第1,第2ドーム状金属板6,7の過剰な押し下げを招く押しボタン10の過剰な押し込みストローク(オーバーストローク)を制限する。これに伴い、押し子14が第1,第2ドーム状金属板6,7の動作状態をその設置面に対して略平行になる略水平姿勢で保持する。なお、操作部10bが押圧操作されて第2ドーム状金属板7と第2選択接点4aが接触している間は第1,第2スイッチのオン状態を保つ。
【0045】
この状態から、操作部10bの押圧操作力を除くと、ヒンジ部12の弾性復帰力によって押し子14が図2のスイッチ動作前の状態に復帰すると共に、押しボタン10も図2のスイッチ動作前の状態に復帰する。この時、押し子14の復帰に伴い、第1,第2ドーム状金属板6,7がそのばね力によりそれぞれ上向きに反転動作し、第2ドーム状金属板7が第2選択接点4aより離間して第2スイッチがオフとなり、続いて第1ドーム状金属板6が第2ドーム状金属板7と離間して第1スイッチがオフとなる。
【0046】
上記のように、本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチ1は、押しボタン10の操作部10bが側部より突出すると共に、可動接点にばね性を持ったドーム状金属板6,7を用い、前記操作部10bの押圧操作に伴う前記押しボタン10の移動方向の操作力を前記押しボタン10の移動方向とは垂直方向のドーム状金属板6,7の動作方向に変換する横押し型プッシュスイッチであって、前記押しボタン10の移動方向の操作力を前記ドーム状金属板6,7の動作方向に変換する傾斜部11と、この傾斜部11を前記ドーム状金属板6,7の動作方向に移動させる可撓性を持ったヒンジ部12と、前記ドーム状金属板6,7を押し下げる押圧部13と、を有する押し子14を備えたことにより、操作力をそのままドーム状金属板6,7に伝達でき、それに加えて、ドーム状金属板6,7の略中心部を精度よく押圧できるので、ドーム状金属板6,7の良好な動作特性を得ることができると共に、ヒンジ部12の金属化を可能にし、ヒンジ部12の耐久性の向上及び特性の安定化を図ることができる。
【0047】
また、前記押し子14の押圧部13が樹脂で成形され、ヒンジ部12が金属板バネで形成されていることにより、ヒンジ部12の金属化による耐久性の向上及び特性の安定化を実現することができる。
【0048】
また、前記押し子14自体に前記傾斜部11の傾斜面11aより緩傾斜の傾斜角度θを持たせていることにより、1段動作タイプでは傾斜部11を小さくしながら、押し子14に必要な動作ストロークを得られるようにし、一方、2段動作タイプでは傾斜部11を大きくすることなく、押し子14の動作ストロークを長くすることができる。
【0049】
また、前記押し子14は前記押しボタン10の押し込みストローク終端で前記ドーム状金属板6,7の設置面と略平行になることにより、押し子14がドーム状金属板6,7の動作状態をその設置面に対して略平行になる姿勢で保持できるので、高い接触信頼性を得ることができる。
【0050】
さらに、本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチ1は、前記ドーム状金属板6,7をその動作方向に2段で設置したことこより、製品の厚みを厚くすることなく、2段動作タイプの横押し型プッシュスイッチを得ることができる。
【0051】
よって、ドーム状金属板6,7の良好な動作特性を得ることができる小形、薄形で高寿命、高接触信頼性の横押し型プッシュスイッチを提供することができる。またドーム状金属板6,7の良好な動作特性を得ることができる小形、薄形で高寿命、高接触信頼性の2段動作タイプの横押し型プッシュスイッチを提供することができる。
【0052】
以上、本実施の形態は本発明の好適な一実施の形態を示したが、本発明はそれに限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形実施することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの平面図である。
【図2】本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの動作前の状態を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの組み立て図である。
【図4】組み立て状態のガイド体と押し子の平面図、(B)は(A)のA−A線断面図である。
【図5】(A)は組み立て状態の押しボタンとガイド体と押し子の平面図、(B)は(A)の底面図、(C)は(A)のA−A線断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの1段目のスイッチ動作後の状態を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの2段目のスイッチ動作後の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 横押し型プッシュスイッチ
6 第1ドーム状金属板(第1可動接点)
7 第2ドーム状金属板(第2可動接点)
10 押しボタン
10b 操作部
11 傾斜部
12 ヒンジ部
13 押圧部
14 押し子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押しボタンの操作部が側部より突出すると共に、可動接点にばね性を持ったドーム状金属板を用い、前記操作部の押圧操作に伴う前記押しボタンの移動方向の操作力を前記押しボタンの移動方向とは垂直方向のドーム状金属板の動作方向に変換する横押し型プッシュスイッチであって、前記押しボタンの移動方向の操作力を前記ドーム状金属板の動作方向に変換する傾斜部と、この傾斜部を前記ドーム状金属板の動作方向に移動させる可撓性を持ったヒンジ部と、前記ドーム状金属板を押し下げる押圧部と、を有する押し子を備えたことを特徴とする横押し型プッシュスイッチ。
【請求項2】
前記押し子の押圧部が樹脂で成形され、ヒンジ部が金属板バネで形成されている請求項1に記載の横押し型プッシュスイッチ。
【請求項3】
前記押し子自体に傾斜部より緩傾斜の傾斜を持たせている請求項1又は2に記載の横押し型プッシュスイッチ。
【請求項4】
前記押し子は前記押しボタンの押し込みストローク終端で前記ドーム状金属板の設置面と略平行になる請求項3に記載の横押し型プッシュスイッチ。
【請求項5】
前記ドーム状金属板をその動作方向に2段で設置したことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1の横押し型プッシュスイッチ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−59962(P2008−59962A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237118(P2006−237118)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】