説明

樹木精油成分を含む木質床板

【課題】 樹木精油成分を適度に、しかも十分に発散させることが可能な床板であって、その害虫忌避性能や抗菌性能、抗カビ性能等の効能の向上をはかるとともに、効能の長期間持続性を改善した樹木精油成分を含有する木質床板を安価に提供することを目的とする。
【解決手段】 裏面コート層、基材、シート貼り用接着剤層、アンダーレイシート、単板貼り用接着剤層、化粧単板、表面塗膜の各層が、木質床板の裏面側からこの順で構成された木質床板において、前記各層のうち少なくとも単板貼り用接着剤層又はアンダーレイシートに樹木精油成分を含有させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は住宅等建築物の内装に使用される床板で、木質基材表面に化粧材として天然銘木の単板や突板をアンダーレイシートを介し、接着剤を用いて貼着して作製された木質床板で、詳しくは、少なくとも、床板の前記接着剤層、又は、アンダーレイシートに樹木精油成分を含有させてなる木質床板である。樹木精油成分が長期にわたって床板から徐放し、その効能が長期間持続して発揮される、樹木精油成分を含む木質床板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、健康で快適な住空間への需要は大きく、そのために住宅等の建築物に使用される部材にさまざまな工夫がなされ、家具や住器や建具分野では勿論のこと、床板、壁材、天井材、階段部材、その他内装材に対しても、さまざまな工夫がなされている。また、住宅等の内部に用いられる部材や部品において、施工を受け持つ大工さん等の職人の立場になって考えると、単にコストが安価なだけでなく、施工性の良い商品や、施工手間がかからず、施工仕上がりにも優れた商品が市場で高い評価を得ている。
【0003】
一方、主としてその商品を使う側の人の立場になって考えると、そこに住む人にとって、快適で健康的な住まい作りは大きな関心事である。住む人の立場で研究開発された商品も種々市場に投入されており、例えば、使い勝手の良い商品、品質に優れたもの、強度や長期耐久性に優れたものが好まれている。また、商品の安全性を考慮した商品も多く、家具、住器、階段等においては、思わぬ怪我等に配慮した商品も多く出されている。また、住宅の床、壁等の内装材においては、ホルマリン等の臭気問題を解決するために、環境に優しい接着剤が種々開発されているが高価である点が難点である。
【0004】
また、一方、健康で快適な生活を追求するために、天然樹木から発散される精油成分の持つ、さまざまな効果、すなわち、ダニ抑制効果、防虫効果、防カビ効果、抗菌効果、それに加えて、人の心をリラックスさせる効果等、所謂、森林浴効果等を、住空間に現出せしめるための建築内装部材が提案されている。例えば、台板と突板との間に合成樹脂シート層を設け、該合成樹脂シート層に樹木精油成分を含浸させてなる床板がある(特許文献1参照)。また、印刷紙貼り接着剤中に樹木精油成分を含有させた木目プリント化粧板がある。(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−138816号公報
【特許文献2】特開平5−004320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特開平5−138816号公報においては、台板の表面に用いる突板を貼着する時に、前記突板と台板との間に、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂シート層を設け、該合成樹脂シート層に害虫忌避成分を含浸させ、防虫、防カビ効果を長期間にわたって持続させることが記載されている。
【0007】
しかしながら、現実の床板製造工程においては、合成樹脂シート層に樹木精油成分を含浸させることは床板製造工程も複雑化し、合成樹脂シート層は木質材料からなる台板とその上の木質の突板との間に設けて積層接着されることになり、積層接着剤が木質材料と合成樹脂材料の両方に良好な接着性能を備える高性能接着剤が必要となる。安価で高性能な接着剤の選定は、なかなか困難なことである。
【0008】
しかも、合成樹脂シートの材料もエチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等、さまざまであり、どの合成樹脂シートを選定するかで、それに最適な接着剤の選定が必要となり、製造上高度な生産技術を要するばかりでなく、合成樹脂シートの種類を仕様変更した際、積層用接着剤も新たに最適なものに再選定し直す必要が生じる。さらに、合成樹脂シートの種類を仕様変更するのに伴って、合成樹脂シート層に樹木精油成分を含浸させる手順や方法も異なり、生産技術的な困難性と、生産性の低下を招くことになる。このことで製造コストの高騰を招き、現実性に乏しいものとなる。
【0009】
また、上記特開平5−004320号公報においては、樹木精油成分を含有させた接着剤を用いて、木目模様が表面に印刷された化粧紙を台板上に貼着して製造するプリント化粧板に関するものであるが、この際、化粧板表面の塗装面に部分的塗欠部を形成させて該塗欠部から樹木精油成分を徐々に発散させ、このことによって、接着剤中の樹木精油成分が短期間に外部へ発散してしまうことを防ぎ、精油成分の持つ効能の長期持続性が発揮できるということが記載されている。
【0010】
しかしながら、前記プリント化粧板の表面の一部に表面塗装膜の塗欠部を生じさせることは、高度な技術を要し、製造コストが高くつくばかりでなく、表面塗装膜の塗欠部から空気中にある湿気が侵入することで、表面化粧紙の剥離、脱落等が生じる恐れがある。また、前記塗欠部は特定の1箇所では効果が生じないか極めて低いので、プリント化粧板の表面の複数箇所に偏在させることなく、万遍なく設ける必要がある。そのためにプリント化粧板の表面意匠を著しく低下させる恐れがあった。本発明は上述した事情に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、樹木精油成分の適度でしかも十分な発散による、ダニ増殖抑制性能、抗菌性能、カビ抵抗性能等の効能の向上をはかるとともに、長期持続性を改善した樹木精油成分を含む木質床板を安価に提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の本発明の樹木精油成分を含む木質床板は、裏面コート層、基材、シート貼り用接着剤層、アンダーレイシート、単板貼り用接着剤層、化粧単板、表面塗膜の各層が、木質床板の裏面側からこの順で構成された木質床板において、前記各層のうち少なくとも単板貼り用接着剤層又はアンダーレイシートに樹木精油成分が含有されていることを特長とする。
【0012】
係る構成によれば、少なくとも単板貼り用接着剤層、又は、アンダーレイシートに樹木精油成分が含有されているので、樹木精油成分が外部に発散するには、下部方向には、アンダーレイシート、シート貼り用接着剤層、合板等の基材、裏面コート層の順に通過しながら、又は、シート貼り用接着剤層、合板等の基材、裏面コート層の順に通過しながら、長期間にわたって徐々に発散していく。そして、上部方向には、化粧単板、表面塗膜の順に通過しながら、又は、単板貼り用接着剤層、化粧単板、表面塗膜の順に通過しながら、長期間にわたって徐々に発散していく。
【0013】
従って、樹木精油成分の持つ種々の効能、すなわち、ダニ抑制効果、防カビ効果、抗菌効果等が適度に、しかも長期間にわたって安定して得られる。しかも、床板を構成する各層のうち少なくとも、単板貼り用接着剤層、又は、アンダーレイシートに樹木精油成分を含有させる構成であるので、製造工程も簡略化され、生産効率も向上し、製造コストも安価に可能となる。
【0014】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の樹木精油成分を含む木質床板において、前記樹木精油成分を含む層が単板貼り用接着剤層、表面塗膜、及び、裏面コート層の三層であることを特長とする。
【0015】
係る構成によれば、樹木精油成分が単板貼り用接着剤層のみならず、表面塗膜、及び、裏面コート層の三層に含有されているので、樹木精油成分が長期間安定して十分に発散するので効能の長期間持続性に優れる。しかも、それぞれの相乗効果によって、ダニ抑制効果、防カビ効果、抗菌効果等の効能のよりいっそうの向上をはかることが可能となる。
【0016】
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の樹木精油成分を含む木質床板において、前記樹木精油成分を含む層がアンダーレイシート、表面塗膜、及び、裏面コート層の三層であることを特長とする。
【0017】
係る構成によれば、樹木精油成分がアンダーレイシートのみならず、表面塗膜、及び、裏面コート層の三層に含有されているので、樹木精油成分が長期間安定して十分に発散するので、効能の長期間持続性に優れる。しかも、それぞれの相乗効果によって、ダニ抑制効果、防カビ効果、抗菌効果等の効能のよりいっそうの向上をはかることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、少なくとも単板貼り用接着剤層、又は、アンダーレイシートに樹木精油成分が含有されているので、樹木精油成分が外部に発散するには、下部方向には、アンダーレイシート、シート貼り用接着剤層、合板等の基材、裏面コート層の順に通過しながら、又は、シート貼り用接着剤層、合板等の基材、裏面コート層の順に通過しながら、長期間にわたって徐々に発散していく。そして、上部方向には、化粧単板、表面塗膜の順に通過しながら、又は、単板貼り用接着剤層、化粧単板、表面塗膜の順に通過しながら、長期間にわたって徐々に発散していく。
【0019】
従って、樹木精油成分の持つ種々の効能、すなわち、ダニ抑制効果、防カビ効果、抗菌効果等が適度に、しかも長期間にわたって安定して得られる。しかも、床板を構成する各層のうち少なくとも、単板貼り用接着剤層、又は、アンダーレイシートに樹木精油成分を含有させる構成であるので、製造工程も簡略化され、生産効率も向上し、製造コストも安価に可能となる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、樹木精油成分が単板貼り用接着剤層のみならず、表面塗膜、及び、裏面コート層の三層に含有されているので、樹木精油成分が長期間安定して十分に発散するので効能の長期間持続性に優れる。しかも、それぞれの相乗効果によって、ダニ抑制効果、防カビ効果、抗菌効果等の効能のよりいっそうの向上をはかることが可能となる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、樹木精油成分がアンダーレイシートのみならず、表面塗膜、及び、裏面コート層の三層に含有されているので、樹木精油成分が長期間安定して十分に発散するので効能の長期間持続性に優れる。しかも、それぞれの相乗効果によって、ダニ抑制効果、防カビ効果、抗菌効果等の効能のよりいっそうの向上をはかることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の樹木精油成分を含む木質床板を示す断面図。
【図2】本発明の樹木精油成分を含む木質床板の第一実施形態の要部拡大断面図。
【図3】本発明の樹木精油成分を含む木質床板の第二実施形態の要部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の詳細を図面に従って説明する。図1は本発明の樹木精油成分を含む木質床板を示す断面図、図2は本発明の樹木精油成分を含む木質床板の第一実施形態の要部拡大断面図、図3は本発明の樹木精油成分を含む木質床板の第二実施形態の要部拡大断面図である。図中の符号1は木質床板、2は基材、3はアンダーレイシート、4は化粧単板、5は表面塗膜、6は裏面コート層、7はシート貼り用接着剤層、8は単板貼り用接着剤層、9は嵌合凸部、10は嵌合凹部、Sは樹木精油成分を示す。
【0024】
図1は本発明の樹木精油成分Sを含む木質床板1を示す断面図である。本発明の樹木精油成分Sを含む木質床板1の詳細について述べる。本発明の樹木精油成分Sを含む木質床板1は、裏面側から順に裏面コート層6、基材2、シート貼り用接着剤層7、アンダーレイシート3、単板貼り用接着剤層8、化粧単板4、表面塗膜5の各層がこの順で積層されて構成されている。
【0025】
そして、本発明の第一実施形態は、前記複数の床板構成層のうち、少なくとも単板貼り用接着剤層8に樹木精油成分Sが含有されている。すなわち、樹木精油成分Sを含有する床板構成層が、単板貼り用接着剤層8のみの場合、又は、単板貼り用接着剤層8及びその他の床板構成層に樹木精油成分Sが含有されている場合である。
【0026】
そして、本発明の第二実施形態は、前記複数の床板構成層のうち、少なくともアンダーレイシート3に樹木精油成分Sが含有されている。すなわち、樹木精油成分Sを含有する床板構成層が、アンダーレイシート3のみの場合、又は、アンダーレイシート3及びその他の床板構成層に樹木精油成分Sが含有されている場合である。
【0027】
本発明の木質床板1の基材2としては、木質基材が好適である。そのなかでも、合板が入手し易さ、コスト、強度と耐久性、加工適性、その他品質等を考慮して、最も好適である。基材2に用いられる合板等の樹種は、ラワン材、カポール材、アピトン材、ジョンコン材、その他合板などの用途に用いられる南洋材が、コスト、入手し易さ等を考慮すると好適である。
【0028】
また、基材2としては、上記の合板が好適であるが、これ以外に、中比重繊維板、木削片板、その他の木質基材等であってもよいものとする。すなわち、基材2として、合板等の他に、MDFなどの中比重繊維板や、パーティクルボードなどの木削片板、OSBなどの繊維配向ボードなどを好適なものとして例示できる。これらのうちでは一般的にラワン合板と称されるものが、コストや入手し易さ、使いやすさ等を配慮して最も好適である。
【0029】
また、本発明の木質床板1の表面化粧材として、基材2の表面に化粧単板4が、アンダーレイシート3を介して接着剤によって、貼着されている。接着剤としては、基材2のすぐ上にアンダーレイシート3を貼着するためのシート貼り用接着剤層7と、アンダーレイシート3と化粧単板4を貼着するための単板貼り用接着剤層8の二層が設けられている。さらに、化粧単板4の表面には表面塗膜5が設けられている。
【0030】
基材2と化粧単板4(化粧突板の場合でもよい)との間に挿入される前記アンダーレイシート3としては、坪量が約20〜30g/m程度で厚み約40〜60ミクロン程度の薄葉紙、不織布等を用いるとよい。アンダーレイシート3が化粧単板4と基材2の間に設けられているので、化粧単板4の耐表面割れ性能向上にとって好適である。従来、このようなアンダーレイシート3を基材2と化粧単板4との間に挿入しないで、接着剤で積層接着して塗装仕上げして製造されることが多く、この場合は、化粧板や床板等の製品になってから、化粧単板4の表面割れが発生することが多々あった。
【0031】
この原因は、床板施工後、長期間にわたって使用する間に、まわりの温度、湿度等の変化によって、下地となる基材2が吸放湿することによって、合板等からなる基材2自体が伸縮し、このため、その上に積層接着されている化粧単板4に伸縮の内部応力が発生し、このため、伸張応力に耐えきれなかった化粧単板4の箇所に表面割れが発生する。
【0032】
この時、表面化粧単板4と基材2との間に前記アンダーレイシート3が介在していると、基材2自体の伸縮をアンダーレイシート3が吸収し、化粧単板4内の伸張内部応力が緩和される。従って、化粧単板4の表面に割れが発生するのを有効に防止可能となる。
【0033】
化粧単板4を積層接着する際の単板貼り用接着剤8、及び、アンダーレイシート3を積層接着する際のシート貼り用接着剤7としては、異なるものでもよいが、できれば同じ又は同種の接着剤を使用することが、コスト、製造作業性等にとって好適である。使用する接着剤としては、ユリア樹脂系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、ユリアメラミン共縮合樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、酢酸ビニル樹脂系接着剤、スチレン・ブタジエンゴムラテックス樹脂系接着剤、メラミン変性ラテックス樹脂系接着剤等が好適に用いられる。これら以外であっても、勿論よいものとする。木質系材料を接着可能なものであればよい。
【0034】
次に、化粧単板4としては、床板として好適なナラ材、カバ材、ケヤキ材、サクラ材、チーク材、メープル材、オーク材等が堅木であるゆえ好適であるが、これら以外の樹種であっても、床板として使用に耐える表面固さ、強度耐久性等を有する樹種であればよい。
【0035】
また、本発明の木質床板1の表面に塗装仕上げし、表面塗膜5を構成する塗料としては、熱硬化型又は紫外線硬化型の合成樹脂塗料が製造作業性等を考慮すると好適である。ウレタン樹脂系塗料、エポキシ樹脂系塗料、エポキシアクリレート樹脂系塗料、ポリエステル樹脂系塗料、アミノアルキッド樹脂系塗料等を、化粧単板4の表面塗膜5に好適な塗料として例示できる。しかし、これらに限定されるものではない。また、これらの合成樹脂系塗料の一種又は複数種を下塗り、中塗り、上塗り用にと、複数層組合せて使用してもよい。
【0036】
また、本発明の木質床板1は平面図(図示せず)で見て正方形又は長方形の四辺形又はこれらを組み合わせた形状からなり、例えば四辺形の場合、該四辺形の、四つの辺の対向する二辺又は四辺に、必要に応じて、嵌合凹部10とそれに適度に嵌合する嵌合凸部9が形成されている。図1に示す断面図でみると、一方の辺に嵌合凸部9が形成され、それと対向する辺に該嵌合凸部9と嵌合する嵌合凹部10が形成されている。
【0037】
本発明に用いられる樹木精油成分Sはフィトンチッドと一般に称される物質で樹木から発散される精油成分Sである。人が森の中を散策した際に気分をしずめ、すがすがしさを感じさせる物質で、森を散策する人に森林浴効果を与えるものである。そして、前記フィトンチッドと称される物質は森林の樹木から発散され、防ダニ性、抗菌性、防カビ性等の種々の効能を有している。これらの効能の他に前記したように、人の気分を沈静化させ、リフレッシュさせる効果を有している。
【0038】
この場合の樹木精油成分Sとしては、スギ、ヒノキ、ユーカリ、ヒバ等の主として葉から水蒸気蒸留法によって得られる、モノテルペン類、セスキテルペン類、ジテルペン類が好適である。このうち、沸点が比較的低く、しかも蒸留法で容易に得られるモノテルペン類、セスキテルペン類が最も好適である。具体的には、モノテルペン類として、α−ピネン、リモネン等を、また、セスキテルペン類としてセドロールを好適なものとして例示できる。これらのうち、α−ピネンとリモネンの組合せが最も好適なものの組合せとして例示できる。
【0039】
図2は本発明の樹木精油成分Sを含む木質床板1の第一実施形態の一例を示す要部拡大断面図である。次に本発明の樹木精油成分Sを含む木質床板1の第一実施形態の詳細について述べる。図2の拡大断面図に示すように本発明の樹木精油成分Sを含む木質床板1の第一実施形態においては、木質床板1は、裏面側から順に裏面コート層6、基材2、シート貼り用接着剤層7、アンダーレイシート3、単板貼り用接着剤層8、化粧単板4、表面塗膜5の各層がこの順で積層されて構成されている。すなわち、単板貼り用接着剤層8を含む複数の層から構成されている。
【0040】
そして、前記複数の床板構成層のうち、少なくとも単板貼り用接着剤層8に樹木精油成分Sが含有されている。すなわち、第一実施形態は、樹木精油成分Sを含有する床板構成層が単板貼り用接着剤層8のみの場合、又は、単板貼り用接着剤層8及びその他の床板構成層にも樹木精油成分Sが含有されている場合である。図2は第一実施形態の一例で、樹木精油成分Sが含有されている床板構成層が、単板貼り用接着剤層8、表面塗膜5、及び、裏面コート層6の計三層の場合である。
【0041】
詳しく述べると、本発明の木質床板1を構成する複数の構成層は、下から順に、裏面コート層6、基材2、シート貼り用接着剤層7、アンダーレイシート3、単板貼り用接着剤層8、化粧単板4、表面塗膜5の各層がこの順に積層され構成されている。
【0042】
前記単板貼り用接着剤としては、ユリア樹脂系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、ユリアメラミン共縮合樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、酢酸ビニル樹脂系接着剤、スチレン・ブタジエンゴムラテックス樹脂系接着剤、メラミン変性ラテックス樹脂系接着剤等が好適に用いられる。
【0043】
天然精油成分Sとしては上記したように、α−ピネン、リモネン等のモノテルペン類が好適である。一例として、合成樹脂粒子(図示せず)に樹木精油成分Sを内蔵させエマルジョン化したものを前記単板貼り用接着剤に所定量添加し化粧単板4を積層接着する。その時の単板貼り用接着剤の塗布量は、床板面積1m当たりで、約80〜100g/m程度が好適である。少なすぎると化粧単板4の接着不良が生じやすくなり、また、多すぎると接着剤が化粧単板4から表面へしみ出して汚染の原因となる。
【0044】
また、接着剤中に添加される樹木精油成分Sの含有量は、使用する床材の材質、床材を施工する部屋の広さと施工する床材の面積の割合等で変わるが、床材1m当たり、2.0〜10.0gの範囲であることが好適である。2.0g以下では、樹木精油成分Sが床板から発散する期間が短期間になり効能持続性に劣り、また、10.0g以上の場合は化粧単板4の接着強度の低下を招く恐れがあり、2.0g〜10.0gの範囲であることが、樹木精油成分Sの効能持続期間、効能の発揮といった観点と、床板の品質の維持といった観点の両方から見て、バランスがとれたものとなるので、この範囲が好適である。さらに、樹木精油成分Sの含有量の範囲が床材1m当たり、3.0g〜8.0gであると、前記した樹木精油成分Sの効能の十分な発揮、効能の長期間持続性、床板品質維持の観点から最も好適である。
【0045】
樹木精油成分Sを合成樹脂粒子に含有させ、これをエマルジョン化し、精油成分含有エマルジョンとして、化粧単板4を基材2の表面に貼着する際の単板貼り用接着剤層8、表面塗膜5、裏面コート層6の三層に適量混入して用いるとよい。
【0046】
次に、このうち、単板貼り用接着剤層8に添加する樹木精油成分Sについて詳しく述べる。精油成分含有エマルジョンに用いる樹木精油成分Sとしては互いに沸点の異なる2種類以上のモノテルペン類の組合せが好適である。前記互いに沸点の異なる2種類以上のモノテルペン類を少なくとも、約20重量%以上、好ましくは約40重量%程度内蔵させた合成樹脂粒子を接着剤中に、少なくとも、約5%〜約30%程度添加するとよい。好ましくは、約7%〜20%程度、最も好適には、約10〜15%程度添加するとよい。
【0047】
以下、精油成分含有エマルジョン、精油成分Sなどの好適な成分比を重量比率で示す。この場合、接着剤への精油成分含有エマルジョンの添加割合は、約7%〜40%程度以下とするとよい。また、精油成分含有エマルジョン中の合成樹脂粒子の比率は約60%〜約80%程度が好適である。また、合成樹脂粒子内の精油成分Sの割合は、樹脂が約60%に対して精油成分Sを約40%程度とするのがよい。
【0048】
また、この場合、床板面積1m当たりで、前記合成樹脂粒子の塗布量は約5〜25g程度が好適である。こうすると、床板面積1m当たりで、前記樹木精油成分Sの塗布量は約2〜10g程度となり、樹木精油成分Sの効能や床板の単板積層剥離防止といった観点から好適である。
【0049】
また、上記のように、床板面積1m当たりで、前記合成樹脂粒子の塗布量を約5〜25g程度とするためには、例えば、接着剤塗布量を床板面積1m当たりで、約100g/mとした場合、樹木精油成分含有エマルジョン中の合成樹脂粒子の比率を約60%〜約80%とし、接着剤中への樹木精油成分含有エマルジョンの添加量を約8〜32%程度とすればよい。
【0050】
また、他の例を示すと、床板面積1m当たりで、前記合成樹脂粒子の塗布量を約5〜25g程度とするためには、例えば、接着剤塗布量を床材面積1m当たりで、約100g/mとした場合、樹木精油成分含有エマルジョン中の合成樹脂粒子の比率を約60%とし、接着剤中への樹木精油成分含有エマルジョンの添加量を約9〜42%程度とすればよい。
【0051】
本発明の樹木精油成分Sを含む木質床板1の第一実施形態の製造方法について述べる。基材2となる合板を用意し、さらに床板の表面化粧のために用いる化粧単板4を用意する。そして、化粧単板4を基材2の表面に貼着するための単板貼り用の接着剤を化粧単板4の材質や基材2の樹種、製造コスト、作業性などを考慮して、適宜選定し用意する。さらに、樹木精油成分Sを含有させた精油エマルジョンを適量用意する。また、アンダーレイシート3として坪量20〜30g/m、厚み約40〜60ミクロンの薄葉紙を用意する。
【0052】
前記精油成分含有エマルジョンは樹木精油成分Sとして、互いに沸点の異なる2種類以上のモノテルペン類を少なくとも約20重量%以上、好ましくは約40重量%程度内蔵させた合成樹脂粒子を接着剤中に重量比率で少なくとも約5%〜約30%程度添加する。好ましくは、約7%〜20%程度、最も好適には、約10〜15%程度添加するとよい。
【0053】
また、一例として、メラミン変性ラテックス樹脂接着剤を用いて化粧単板4を基材2の表面に貼着する場合について詳細に述べる。
【0054】
先ず、メラミン変性ラテックス樹脂接着剤をアンダーレイシート貼り用接着剤、及び、化粧単板貼り用接着剤とする。基材2表面に前記接着剤の塗布量を床板1m当たり、約60〜80g/m、となるように塗布し、アンダーレイシート3(樹木精油成分Sは含有されていない)をラミネーター加工機にて温度約50℃程度で貼着する。
【0055】
また、上記したように、単板貼り用の接着剤の塗布量は床板面積1m当たりで、約80〜100g/m程度とするのが好適である。ロールスプレッダー又はそれに代わる塗布装置にて塗布する。そして、前記合成樹脂粒子を床板面積1m当たりで、約5〜25g/m程度となるように塗布するのが好適である。また、化粧単板4はホットプレス等を用いて熱圧締するとよい。好適な条件は、一例として、圧締圧力約7.0〜12.0kg/cm程度、圧締温度は約100℃〜120℃で、圧締時間は化粧単板4の厚み、及び、接着剤の種類にもよるが、化粧単板4の厚み約0.2〜0.25mmの湿式貼りの場合で、約50〜90秒程度である。また、化粧単板4が厚み約3.0mmの乾式の厚単板の場合は約3〜4分程度の圧締が必要である。
【0056】
以上、第一実施形態では、単板貼り用接着剤層8に樹木精油成分Sを添加する点を中心に述べたが、その他の表面塗装工程、裏面コート層を設ける工程、多層構造の合成樹脂粒子からなる精油成分含有エマルジョンの詳細、及び、該エマルジョンを製造する工程等は、第二実施形態と同様であるので、そちらで詳しく述べる。このようにして、本発明の第一実施形態では、少なくとも単板貼り用接着剤層8中に樹木精油成分Sが含有されており、図2に示す一例では、単板貼り用接着剤層8、表面塗膜5、裏面コート層6の三層に樹木精油成分Sが含有されている。
【0057】
図3は本発明の樹木精油成分Sを含む木質床板1の第二実施形態の一例を示す要部拡大断面図である。次に、本発明の樹木精油成分Sを含む木質床板1の第二実施形態の詳細について述べる。図3の拡大断面図に示すように、本発明の樹木精油成分Sを含む木質床板1の第二実施形態においては、木質床板1は、裏面側から順に裏面コート層6、基材2、シート貼り用接着剤層7、アンダーレイシート3、単板貼り用接着剤層8、化粧単板4、表面塗膜5の各層がこの順で積層されて構成されている。すなわち、アンダーレイシート3を含む複数の層から構成されている。
【0058】
そして、前記複数の床板構成層のうち、少なくともアンダーレイシート3に樹木精油成分Sが含有されている。すなわち、第二実施形態は、樹木精油成分Sを含有する床板構成層がアンダーレイシート3のみの場合、又は、アンダーレイシート3及びその他の床板構成層にも樹木精油成分Sが含有されている場合である。図3は第二実施形態の一例で、樹木精油成分Sが含有されている床板構成層が、アンダーレイシート3、表面塗膜5、及び裏面コート層6の計三層の場合である。
【0059】
前記アンダーレイシート3は、一例として前述したように、坪量約20〜30g/m、厚み約40〜60ミクロンの薄葉紙が好適である。さらに、漂白処理された白色度の高いものが外観上望ましい。その理由は、薄葉紙の上に接着剤を介して化粧単板4が貼着されるので、しかも、この化粧単板4は厚みが約0.2〜0.3mm程度と薄貼り用の突板である。この湿式の薄突きの突板を化粧単板4として用いると突板厚みが薄いので下地のアンダーレイシート3が未晒しで白色度が低いと、突板が透けて、白色度の低いアンダーレイシート3が透けて見える。このため、どうしても、天然突板の持つ樹種の色調の良さや味わいが低下し、外観意匠的価値が低下してしまうことになる。この湿式の薄突きの突板を化粧単板4として用いることがコスト、生産性、仕上がり意匠性(外観性)等を考慮すると好ましい。そのために、化粧単板4としては、湿式の薄突きの突板が好適で良く用いられる。
【0060】
また、前記アンダーレイシート3に樹木精油成分Sを含有させる方法として、含浸方法、塗布方法等が好適である。この方法について以下詳しく述べる。
【0061】
アンダーレイシート3に含有させる樹木精油成分Sとしては、第一実施形態の場合と同様に単板貼り用の接着剤層8に添加するものと同様のものでよい。すなわち、α−ピネン、リモネン等のモノテルペン類が好適である。一例として、合成樹脂粒子(図示せず)に樹木精油成分Sを内蔵させ、エマルジョン化したものをアンダーレイシート3に含浸させる方法がある。
【0062】
例えば、樹木精油成分Sを約25〜35重量%、樹脂を約35〜50重量%、水を約15〜40重量%配合して乳化重合等によって得られた精油エマルジョンを含浸液として用意し、該含浸液中に、アンダーレイシート3を幅約0.92m×長さ約1.83mの枚葉にカットして用意しておく。そしてこのアンダーレイシート3を約10〜20分間浸漬させたのち、プレスロールの間を通過させ、余剰の精油エマルジョンを除去し、その後常温で24時間養生させる。
【0063】
また、塗布方法として、アンダーレイシート3を枚葉にカットしないで、巻取状として用意する。そして、精油エマルジョンをロールコーターに入れ、片面塗布ロールにアンダーレイシート3の表面と裏面から、1回づつ計2回通過させ、アンダーレイシート3の表裏片面づつ塗布する方法、又は、アンダーレイシート3を両面塗布ロールに通過させ、アンダーレイシート3の表面、裏面を同時に両面塗布する方法、又は、塗布量を若干多めにしてアンダーレイシート3の表面側のみから塗布する方法、又は、ロール塗布でなく、スプレー塗布する方法等が作業性等を考慮すると好適である。アンダーレイシート3に精油エマルジョンSを塗布したのち、同様にして、プレスロールの間を通過させ余剰の精油エマルジョンを除去し、その後、常温で24時間程度養生させる。
【0064】
塗布量又は含浸量は、一例として挙げると、アンダーレイシート3として坪量約25g/m厚み約50ミクロン、大きさとして縦約1.8m×横幅約0.9mの、枚葉の場合、アンダーレイシート1枚当たり約13〜57gが好適である。すなわち、精油エマルジョンの含浸量又は塗布量を約8〜35g/m程度とするとよい。精油エマルジョン中の合成樹脂粒子の含有量は約60重量%〜80重量%であるので、合成樹脂粒子の含浸量又は塗布量は、約4.8〜28g/m程度となる。このうち、樹木精油成分Sが40%とすると、樹木精油成分Sが約1.9〜11.2g/m程度、好適に言えば、樹木精油成分Sを約2〜10g/m程度含有させることができる。
【0065】
このようにすると、木質床板1の面積1m当たり、樹木精油成分Sが約2〜10g/m程度含有させることができるので、樹木精油成分Sの徐放性と床板の品質にとって好適である。2.0g/m以下では樹木精油成分Sの発散期間が短期間になり、効能持続性に劣る。従って、その効果を充分に発揮することができない。また、10.0g/m以上の場合は化粧単板4の接着強度の低下を招くことになり、化粧単板4の積層剥離を招く恐れがある。2.0g〜10.0gの範囲であることが、樹木精油成分Sの効能持続期間、効能の発揮といった観点と、床板の品質の維持といった観点の両方から見て、バランスがとれたものとなるので、この範囲が好適である。
【0066】
前記モノテルペン類の好適なものとしては、第一実施形態の場合と同様に、少なくとも2種類以上の沸点の異なるモノテルペン類の組合せがよい。α−ピネン、リモネンの組合せを好適なものとして例示したが、その理由は、α−ピネン、リモネンの組合せは、それらの沸点が互いに異なる組合せであるので、住環境の温度湿度などの変化に対する対応力が大きくなり、長期間の床板使用に対しても、樹木精油成分Sの持つ効果が長期間維持でき、従って安定した効能を発揮できるからである。
【0067】
さらに詳しくは、本発明の木質床板1に用いる樹木精油成分Sは、前述したとおり、互いに沸点が異なる少なくとも2種類のモノテルペン類からなるので、沸点の低い方の天然精油成分Sが一足早く発散し、初期効能を一定レベル維持した上で、沸点の高いもう一方の天然精油成分Sが少しづつ比較的ゆっくりと発散する。従って、長期間にわたって効能を維持しつづけることが可能となる。このように、二段階の仕組みを有しているので、天然精油成分Sの発散速度をコントロール可能となり、天然精油成分Sが持つさまざまな効能の維持という観点から見て、初期効能の維持から、長期間効能の維持まで、長期間にわたる効能の持続可能な本発明の木質床板1が完成する。この作用は、第一実施形態の場合と同様である。
【0068】
樹木精油成分Sを内蔵させた合成樹脂粒子(図示せず)の詳細を述べる。合成樹脂粒子を形成する樹脂としては、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂などを好適なものとして例示できる。これらのうち、上記した酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂などが製造作業性等を考慮すると、内層樹脂として最も好適である。
【0069】
詳述すると、前記合成樹脂粒子は外殻層と内部層からなり、該内部層は内層周辺部と内層中心部からなる。そして、外殻層、内層周辺部、内層中心部の三重構造(多層構造)で構成(図示せず)されている。そして、内層周辺部に主としてα−ピネンが含浸されており、内層中心部に主としてリモネンが含浸されている。このように互いに沸点が異なる少なくとも2種類のモノテルペン類の組合せからなる樹木精油成分Sを含浸させると徐放性にとって好適である。
【0070】
この場合の樹脂としては、一例として、外殻層にはアクリル樹脂、内部層には、前記したように、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂などを用いるとよい。精油成分Sと樹脂との親和性を考慮すると、また、精油成分Sの徐放性能を考慮すると、この組合せが好適である。この点も第一実施形態の場合と同様である。
【0071】
さらに、詳しく述べる。樹木精油成分Sを含有する三重構造(多層構造)の合成樹脂粒子の製造方法について述べる。合成樹脂粒子を構成する樹脂として、前記したように、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂等が用いられる。
【0072】
樹木精油成分Sとしては、α−ピネンとリモネンの組合せ、テルピネオールとシネオールの組合せ、リモネンとシネオールの組合せ、ピネンとシネオールの組合せ等が考えられる。これらは、合成樹脂粒子に対する親和性が異なり、そのことによって、合成樹脂粒子に対する含浸吸収位置が異なるのである。
【0073】
このうち、合成樹脂粒子を構成する樹脂として、酢酸ビニル樹脂を用い、精油成分Sとして、α−ピネンとリモネンの組合せが安価で入手し易く、最も好適である。合成樹脂粒子の中心部(内層中心部)に主としてリモネンが含浸し、合成樹脂粒子の周縁部(内層周辺部)には主としてα−ピネンが含浸されている。
【0074】
前記酢酸ビニル樹脂からなる合成樹脂粒子は、非イオン系界面活性剤の存在下で乳化重合によって、酢酸ビニル重合体からなる樹脂エマルジョンとして得られる。この酢酸ビニル樹脂エマルジョンに前記精油成分Sのうち、合成樹脂粒子の内層中心部に含浸するリモネンを添加し、必要に応じて加熱しながら攪拌し、酢酸ビニル樹脂からなる合成樹脂粒子のエマルジョンに、リモネンを含浸させる。次に、同様にして、酢酸ビニル樹脂からなる合成樹脂粒子のエマルジョンに、α−ピネンを含浸させる。樹脂エマルジョンにα−ピネンを添加し同様にして合成樹脂粒子の内層周辺部にα−ピネンを含浸させ、精油成分含有エマルジョンが得られる。
【0075】
次に、前記精油成分含有エマルジョンについて、さらに詳しく述べる。精油成分含有エマルジョンは、内層樹脂の外側を外殻樹脂で覆い、外殻層、内層周辺部、内層中心部の三重構造(多層構造)の合成樹脂粒子とする。前記したように、先ず、内部層となる酢酸ビニル樹脂エマルジョンを製造し、これに前記精油成分Sを添加して含浸させ、酢酸ビニル樹脂からなる合成樹脂粒子のエマルジョンを製造し、これに重合性モノマーと重合開始剤を加え、必要に応じて加熱攪拌しながら、酢酸ビニル樹脂からなる合成樹脂粒子の外殻を高分子化合物で覆い、三重構造からなる多層構造の合成樹脂粒子を含有するエマルジョンが得られる。
【0076】
前記外殻を構成する樹脂としては、アクリル樹脂、プロピレン樹脂、ポリエステル樹脂等が好適に用いられる。これらのうち、内層を構成する樹脂が酢酸ビニル樹脂の場合、外殻樹脂としてアクリル樹脂が、樹木精油成分Sの徐放性にとって最も好適である。
【0077】
このようにして、本発明に用いられる樹木精油成分Sを含有する三重構造の多層構造を有する合成樹脂粒子からなる精油成分含有エマルジョンが製造される。
【0078】
次に、一例として、メラミン変性のスチレン・ブタジエンゴムラテックス系樹脂接着剤を用いて、精油エマルジョンを含浸済みのアンダーレイシート3及び化粧単板4を基材2の上に貼着する場合について詳細に述べる。精油エマルジョンを含浸済みのアンダーレイシート3は、所定の大きさに枚葉にカットしたものを用意しておく。カットサイズは、基材合板が、3尺×6尺サイズの場合は、幅約920mm×長さ約1830mm程度とするとよい。
【0079】
基材2として合板を用いた。この場合も第一実施形態と同様である。先ず、前記精油エマルジョンを含浸させて養生済みで枚葉にカット済みの、アンダーレイシート3を、基材2にシート貼り用接着剤にて貼着する。この場合の接着剤塗布量は床板面積1m当たりで、約60〜80g/m程度が好適である。
【0080】
加工機としては、ホットプレスを用いて熱圧締するとよい。熱圧締条件は、一例として、圧締温度約45〜60℃、圧締圧力約1.0〜3.0kg/cm程度、圧締時間は約20〜60秒程度がよい。
【0081】
また、前記アンダーレイシート3を合板基材2に貼着した後、その上に化粧単板4を貼着する。その場合は単板貼り用接着剤にて貼着する。製造作業性を考慮すれば、シート貼り用接着剤と単板貼り用接着剤とは同一又は同種のものが好適である。化粧単板貼り工程での接着剤塗布量は、床板面積1m当たりで、約80〜100g/m程度が好適である。加工機としては、ロールスプレッダー又はそれに代わる塗布装置にて接着剤を塗布し、ホットプレスにて熱圧締すると良い。好適な熱圧締条件は、一例として、圧締圧力約7.0〜12.0kg/cm程度、圧締温度は約100℃〜120℃で、圧締時間は化粧単板4の厚み、及び、接着剤の種類にもよるが、厚み約0.2〜0.25mmの湿式貼りの突板の場合で、約50〜90秒程度である。
【0082】
次に、塗装工程について述べる。この場合も第一実施形態と同様である。また、図3で詳細を示すように、本発明の木質床板1の表面塗膜5に添加する樹木精油成分Sは、一例として、ヒノキ材、ヒバ材、ユーカリ材、その他の樹木からのフィトンチッドと称される天然抽出成分が利用できる。このうち、ヒノキ材抽出成分として有効な、トロポノイドであるヒノキチオールが床板の最表面塗膜に添加する精油成分として効能と徐放性等を考慮すると好適である。また、これ以外の樹木精油成分Sとしては、シネオール、セドロール、等を好適なものとして例示できる。そして、これらの樹木精油成分Sを単独もしくは組み合わせて、又は、他のモノテルペン類、セスキテルペン類、ジテルペン類と混合して用いてもよい。
【0083】
例えば、上塗り塗料16kgに対してトロポノイドであるヒノキチオールを約15〜30g程度(重量比添加率で、約0.1%〜約0.2%程度)が好適である。上塗り工程で、塗料配合時に適量添加する。塗料粘度は9〜10秒(Z/C#5)程度、上塗り塗布量は約5.5〜7.5g/mとするとよい。
【0084】
塗装工程は、下地シーラー工程、着色工程、補色工程、下塗り工程、中塗り工程、上塗り工程の順で塗装を行う。これは好適な塗装工程の一例であって、これ以外の工程であっても、勿論よいものとする。
【0085】
塗装工程での塗布量は下地シーラー工程で約5〜7g/m、着色工程及び補色工程は仕上がり色の色調、彩度、明度、濃度等を考慮して着色剤を適量塗布する。下塗り工程で約25〜30g/m、中塗り工程で約30〜35g/m、上塗り工程で約5.5〜7.5g/m程度が、仕上がり性、塗膜性能、品質、コスト等を考慮すると好適である。
【0086】
前記塗装工程はこの条件に限定されるものではない。特に、塗布量については、これらの約50%程度増やして厚塗り塗装しても、勿論よいものとする。樹木精油成分Sの効能等について変わりはない。床板の表面の外観仕上がり性が向上する。
【0087】
各塗装工程の間において、例えば、紫外線硬化ランプを照射し、塗膜を充分に硬化させ、必要に応じ中間研磨を経て次の塗装工程に入る。用いられる塗料は、前記した熱硬化型又は紫外線硬化型の合成樹脂塗料が製造作業性等を考慮すると好適である。塗装作業性、生産効率等を考慮すると紫外線硬化タイプの塗料の方がよりいっそう望ましい。ウレタン樹脂系塗料、エポキシ樹脂系塗料、エポキシアクリレート樹脂系塗料、ポリエステル樹脂系塗料、アミノアルキッド樹脂系塗料等を化粧単板4の塗装に好適な塗料として例示できる。しかし、これらに限定されるものではない。
【0088】
次に裏面コート層6について述べる。この場合も第一実施形態と同様である。本発明の樹木精油成分Sを含む木質床板1の最下層、すなわち、基材2の裏面に精油エマルジョンからなる裏面コート層6が設けられている。該裏面コート層6に用いる精油エマルジョンは、前記アンダーレイシート3に含浸させる精油エマルジョンと同様のものでよい。(第一実施形態の場合は化粧単板貼り用接着剤に添加した精油エマルジョンと同様のものでよい。)同様のものを使った方が製造作業性等が向上し、コスト適性に優れる。精油エマルジョンに防虫剤及びホルマリンキャッチャー剤等を添加し調合し裏面コート剤とする。該裏面コート剤の塗布量は床板面積1m当たり、約30〜50g/m程度が好適である。
【0089】
本発明の樹木精油成分Sを含む木質床板1の最表面層に位置する表面塗膜5に含有されている天然精油成分S、及び、基材2の裏面コート層6に含有されている樹木精油成分Sが、床板施工初期において、床板表面及び床板裏面から発散し、その後、アンダーレイシート3に含浸塗布(第一実施形態では単板貼り用接着剤中に添加)した精油エマルジョンに含有されている樹木精油成分Sが発散していく仕組みである。
【0090】
詳しくは、裏面コート層6の精油エマルジョン、及び、アンダーレイシート3に含浸塗布した精油エマルジョン(第一実施形態では化粧単板貼り用接着剤に添加した精油エマルジョン)にある三重構造(多層構造)の合成樹脂粒子に含有されている樹木精油成分Sの発散の仕組みは以下のとおりである。
【0091】
すなわち、上記したように、上塗りの表面塗膜5に含有されている樹木精油成分S、及び、基材2の裏面コート層6に含有されている樹木精油成分Sが、床板施工初期において、床板表面及び床板裏面から発散し、その後、合成樹脂粒子の内層周辺部に含浸しているα−ピネンが発散し、それに続き、最後に、内層中心部に含浸しているリモネンが発散していく仕組みである。このようにして床板施工後の初期状態から床板の長期間使用後においても樹木精油成分Sが徐放するので、長期間にわたって、安定した効能が発揮できるのである。
【0092】
本発明の樹木精油成分Sを含む木質床板1の第二実施形態における製造方法について述べる。基材2、化粧単板4、アンダーレイシート3、シート貼り用接着剤、単板貼り用接着剤、樹木精油成分Sを含有させたエマルジョン、塗料、着色剤、表面塗膜5に添加するための樹木精油成分S、裏面コート剤等を用意する。一例として、下記の手順で製造するとよい。
【0093】
アンダーレイシート3として、坪量20g/m、厚み約40ミクロンの薄葉紙を用意する。大きさは幅920mmの小巻き状、又は、縦1830mm、横幅920mmの枚葉とする。前記精油エマルジョンは樹木精油成分Sとして、互いに沸点の異なる2種類以上のモノテルペン類の組合せが徐放性にとって好適であり、中でもα−ピネン、リモネンの組合せが製造作業性、コスト等を考慮すると最も好適である。
【0094】
ここで、精油エマルジョンの製造方法について述べる。先ず、酢酸ビニル樹脂からなる合成樹脂粒子を製造する方法について述べる。これは、非イオン系界面活性剤の存在下で乳化重合によって、酢酸ビニル重合体からなる樹脂エマルジョンとして得られる。
【0095】
この酢酸ビニル樹脂エマルジョンに前記樹木精油成分Sのうち、合成樹脂粒子の内層中心部に含浸するリモネンを添加し、必要に応じて加熱しながら攪拌し、酢酸ビニル樹脂からなる合成樹脂粒子のエマルジョンに、リモネンを含浸させる。次に、同様にして、酢酸ビニル樹脂からなる合成樹脂粒子のエマルジョンに、α−ピネンを含浸させ、樹木精油成分Sを含有させたエマルジョンを得る。
【0096】
次に、前記エマルジョンの酢酸ビニル樹脂からなる樹脂粒子を内層樹脂として、その外側を外殻樹脂で覆い、三重構造(多層構造)からなる合成樹脂粒子が得られる。この時、酢酸ビニル樹脂からなる樹脂粒子に、重合性モノマーと重合開始剤を加え、必要に応じて加熱攪拌しながら、樹脂粒子の外側を高分子化合物で覆い、外殻層を形成し、樹木精油成分Sを含有させた三重構造(多層構造)の合成樹脂粒子のエマルジョンが得られる。これは、外殻層、内層周辺部、内層中心部の三層構造からなる多層構造の合成樹脂粒子のエマルジョンである。
【0097】
前記外殻層を構成する樹脂としては、アクリル樹脂、プロピレン樹脂、ポリエステル樹脂等が好適に用いられる。これらのうち、内層を構成する樹脂が酢酸ビニル樹脂の場合、外殻樹脂としてアクリル樹脂が、樹木精油成分Sの徐放性にとって最も好適である。
【0098】
このようにして、本発明に用いられる樹木精油成分Sを含有する三重構造(多層構造)の合成樹脂粒子からなる精油エマルジョンが得られる。内層樹脂が酢酸ビニル樹脂で、外殻層樹脂がアクリル樹脂であるのが好適である。好適な配合重量比率は、樹木精油成分Sが約24〜32%程度、合成樹脂粒子が約36〜48%程度、水が約20〜40%程度である。一例を挙げると、樹木精油成分S、合成樹脂粒子、水、それぞれの重量比率を、樹木精油成分Sを28%、合成樹脂粒子を42%、水を30%として配合するとよい。
【0099】
次にアンダーレイシート3に精油エマルジョンを含浸させる工程について述べる。一例として、アンダーレイシート3を3尺×6尺サイズの枚葉にカットして含浸させる場合について詳しく述べる。
【0100】
アンダーレイシート3を3尺×6尺サイズの枚葉にカットし、前記合成樹脂粒子からなる精油エマルジョン中に約15分間浸漬させ、含浸させる。アンダーレイシート3に含浸後、常温にて24時間養生し、次に、水分を気乾含水率と平衡するまで養生させる。その時の含浸量は一例として約6〜30g/m程度が好適である。このうち、約20g/m程度が最も好適である。このうち、精油エマルジョン中の合成樹脂粒子の重量比率は、約60〜80%であるので、合成樹脂粒子の含浸量は床板1m当たり、約3.6〜24g/m程度となる。最も好適には、約12〜16g/m程度である。また、合成樹脂粒子に対する樹木精油成分Sの重量比率は約40%であるので、床板1m当たり、樹木精油成分Sは、アンダーレイシート3の層のみで、約1.4〜9.6g/mとなる。最も好適には約4.8〜6.4g/m程度である。
【0101】
次に、樹木精油成分Sを含有させた上記アンダーレイシート3を3尺×6尺サイズ(長さ約1830mm×幅約920mm×厚さ約12.0mm)のラワン合板からなる基材2に、精油成分無添加の、シート貼り用接着剤にて貼着する。接着剤としてはメラミン変性のスチレン・ブタジエンゴムラテックス樹脂系接着剤を使用するとよい。接着剤塗布量は約60〜80g/mとなるようにする。最も好適には、70g/mとなるように調整するとよい。アンダーレイシート3を3尺×6尺サイズの枚葉として用意し、これをホットプレスにて基材2の表面に熱圧締するのが良い。好適な熱圧締条件は圧締温度約45〜60℃、圧締圧力約1.0〜3.0kg/cm、圧締時間は約20〜60秒である。
【0102】
続いて、シート貼り後の台板に単板貼り用接着剤を用いて化粧単板4を貼着する。化粧単板4としては、一例として、厚み約0.2mmのナラ材の湿式突板を用いるとよい。
【0103】
単板貼り用接着剤としてはシート貼り用接着剤と同じものを使用するとよい。樹木精油成分S無添加の接着剤とする。シート貼り後の台板表面温度が常温になるまで養生したのち、台板表面にロールスプレッダーにて接着剤を塗布する。接着剤の塗布量を約80〜100g/mとなるようにする。ホットプレスにて熱圧締するとよい。熱圧締条件は次に示すとおりである。圧締圧力は約7.0〜12.0kg/cmとする。圧締温度は約100℃〜120℃とする。圧締時間は約50〜90秒とする。これを約2〜3日堆積養生し板面表面温度が常温になるまで養生する。
【0104】
次に、化粧単板貼り済みの台板裏面に精油エマルジョン等からなる裏面コート層6を施す。この時の精油エマルジョンは前記アンダーレイシート3に含浸させるものと同様のものでよい。この精油エマルジョンに防虫剤、及び、ホルマリンキャッチャー剤を添加して裏面コート剤とする。これらを添加すると、床板のシロアリ等に対する防虫効果やホルマリン臭の防止にとって好適である。前記防虫剤としては、非リン系のイミダクロプリドを主成分とするクロロニコチル系防虫剤が防虫効果や安全性の観点から好適である。精油エマルジョンに防虫剤、ホルマリンキャッチャー剤を添加し水を加えて調整し裏面コート剤とする。前記裏面コート剤の好適な配合例としては、重量比率で、防虫剤約1〜2%、樹木精油エマルジョン約3〜9%、ホルマリンキャッチャー剤約40〜45%、水約50%程度が好適である。塗布量は約30〜50g/m程度が好適である。しかし、これに限定されるものではない。
【0105】
好適な一例は、防虫剤2%、樹木精油エマルジョン5%、ホルマリンキャッチャー剤43%、水50%として配合し裏面コート剤を作製するとよい。この裏面コート剤を3尺×6尺サイズ(長さ約1830mm×幅約920mm×厚さ約12.0mm)のラワン合板からなる基材2の裏面に約67g程度塗布するとよい。床板1m当たりの塗布量を約40g/mとするのが最も好適である。一例として、溝付きロールスプレッダーにて塗布し約5分間、常温にて養生した後、約50〜70℃の乾燥炉中で約15分間乾燥させるとよい。
【0106】
続いて、3尺×6尺サイズの床板仕掛かり製品を床板仕上がりサイズに加工機にて切断加工する。次に、必要に応じて表面溝加工と実加工を行う。先ず、三ツ割加工機にて、一例として、約1尺×6尺サイズに切断し、続いて、テノーナーを用いて本実加工する。床板1を平面で見て、四辺形の四辺に本実加工を施す。対向する二辺ごとに、凸部とこれに嵌合する凹部を形成する。図1の断面図に示すような嵌合凸部9及び嵌合凹部10を加工する。加工形状はあくまでも一例であって、これ以外のものであっても勿論よいものとする。さらに床板表面に必要に応じて縦溝及び又は横溝を加工する。溝形状は断面視、V字型形状、角型形状、U字型形状等、床板意匠性を考慮して適宜選定する。
【0107】
次に、塗装工程に入る。使用される塗料としては、熱硬化型又は紫外線硬化型の合成樹脂塗料が好適であるが塗装作業性、生産効率等を考慮すると紫外線硬化タイプの塗料の方がよりいっそう好適である。
【0108】
ウレタン樹脂系塗料、エポキシ樹脂系塗料、エポキシアクリレート樹脂系塗料、ポリエステル樹脂系塗料、アミノアルキッド樹脂系塗料等を化粧単板4の塗装に好適な塗料として例示できる。しかし、これらに限定されるものではない。
【0109】
好適な塗料の一例としては紫外線硬化タイプの無溶剤系のエポキシ樹脂塗料、及び、溶剤系のポリエステル樹脂塗料の組合せを例示できる。製品の仕上がり性、塗膜性能、作業性、生産性、製造コスト等の観点から好適であるが、しかし、これら以外であっても、勿論、よいものとする。塗装機械は、ロールコーター、フローコーター、自動スプレー塗装機等公知の塗装機が用いられる。
【0110】
塗装工程は一例として、紫外線硬化タイプの塗料を用いた高品質塗装を例示する。塗装工程の好適な一例は、シーラー工程、着色工程、補色工程、下塗り工程、中塗り工程、上塗り工程の順に塗装するとよい。
【0111】
好適な一例を示す。下塗り及び中塗り工程の塗布量は合わせて、一例として、約55〜65g/mとするのが好適である。下塗りには無溶剤系エポキシ樹脂塗料をロールコーターにて28g/m塗布し紫外線ランプにて照射エネルギー290mj程度とするのがよい。中塗りには溶剤系ポリエステル樹脂塗料をロールコーターにて32g/m塗布し紫外線ランプにて照射エネルギー380mj程度とするのがよい。
【0112】
上塗りには無溶剤系エポキシ樹脂塗料が好適である。上塗り塗布量は一例として、約5.5〜7.5g/mとするのが好適である。好適な一例として、無溶剤系エポキシ樹脂塗料をロールコーターにて6g/m塗布し紫外線ランプにて照射エネルギー380mj程度とするとよい。
【0113】
下塗り、中塗り、上塗りの各塗装の工程間に、紫外線硬化ランプ(UV硬化ランプ)を照射し、塗膜を十分に硬化させ、番手が#240番〜#320番手程度の比較的目の細かなサンドペーパーを用いて、プラテン式のベルトサンダーにて軽く中間研磨を行い、次の塗装工程に入るとよい。
【0114】
さらに、上記塗装工程の上塗り工程において、上塗り塗料中に、ヒノキチオールを適量添加するとよい。前記ヒノキチオールの好適な添加量は、無溶剤系エポキシ樹脂塗料16kgに対してヒノキチオール添加量が約15〜30gである。ヒノキチオールの添加量は約0.1%〜0.2%が好適である。最も好適には無溶剤系エポキシ樹脂塗料16kgに対してヒノキチオールを約20g添加するのがよい。この時の添加量比率は重量比で0.125%である。前記塗装工程はこの条件に限定されるものではない。特に、塗布量については、これらの約50%程度増やして厚塗り塗装しても、勿論よいものとする。樹木精油成分の効能等について変わりはない。床板表面の外観仕上がり性が向上する。
【実施例】
【0115】
以下、実施例によって本発明を更に詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0116】
実施例1。
【0117】
先ず、樹木精油成分Sを全く含有しない、アンダーレイシート3を用意した。アンダーレイシート3は、坪量20g/m、厚み約40ミクロン程度で幅約920mmの薄葉紙を巻取状で用意した。厚さ12mm×幅920mm×長さ1830mmのラワン合板からなる基材2にシート貼り用接着剤を用いて、アンダーレイシート3をラミネーターにて温度約50℃にて貼着し、板面が常温になるまで養生した。接着剤としてはメラミン変性のスチレン・ブタジエンゴムラテックス樹脂接着剤を使用した。
【0118】
接着剤配合重量比率は次のとおりであった。変性ラテックス樹脂30重量部、変性メラミン樹脂30重量部、増量剤としての小麦粉22重量部、水2重量部を配合し、これに樹木精油成分Sを全く添加しないエマルジョンを16重量部配合して、アンダーレイシート貼り用接着剤を調整した。従って、この時のアンダーレイシート貼り用接着剤には樹木精油成分Sは全く含有されていなかった。そして、接着剤塗布量は70g/mとなるように調整した。
【0119】
次に、化粧単板貼り工程に入る。接着剤としては、上記と同様で、変性ラテックス樹脂30重量部、変性メラミン樹脂30重量部、増量剤としての小麦粉22重量部、水2重量部を配合し、これに樹木精油成分Sを含有したエマルジョンを16重量部配合して化粧単板貼り用接着剤を調整した。従って、この時の化粧単板貼り用接着剤には樹木精油成分Sが含有されていた。次に、前記厚さ12mmの3尺×6尺サイズのラワン合板に、上記接着剤を100g/m塗布したのち、厚さ0.22mmのなら材銘木単板を貼り合わせ、ホットプレスにて熱圧締した。圧締条件として、圧締温度100℃、圧締圧力7.0kg/cm、圧締時間60秒として、熱圧締した。
【0120】
単板貼り用接着剤中の樹木精油エマルジョンの重量比率は16%となる。また、精油エマルジョン中の合成樹脂粒子比率の好適な範囲が60〜80%であるので、実施例1では中間の70%とした。従って、合成樹脂粒子の配合重量比率は、11.2%となり、接着剤の塗布量が100g/mなので、合成樹脂粒子の塗布量は床板1m当たり、11.2g/mとなった。このうち、合成樹脂粒子に対する樹木精油成分Sの重量比率は約40%であるので、従って、樹木精油成分Sの含有量は、床板1m当たり、約4.5g/mとなった。その後、24時間養生堆積し、板面の表面温度が常温に戻ったのち、裏面コート工程及び塗装工程にて裏面コート及び表面塗装を施した。
【0121】
裏面コートについて述べる。化粧単板貼り済みの台板裏面に精油エマルジョンからなる裏面コート層6を施す。この時の精油エマルジョンは前記単板貼り用接着剤中に添加したものと同様のものでよい。この精油エマルジョンに防虫剤、及び、ホルマリンキャッチャー剤を添加する。前記防虫剤としては、非リン系のイミダクロプリドを主成分とするクロロニコチル系防虫剤が防虫効果や安全性の観点から好適である。精油エマルジョンに防虫剤、ホルマリンキャッチャー剤を添加し水を加えて調整し裏面コート剤とする。前記裏面コート剤の好適な配合例としては、重量比率で、防虫剤約1〜2%、精油エマルジョン約3〜9%、ホルマリンキャッチャー剤約40〜45%、水約50%程度が好適である。塗布量は約30〜50g/m程度が好適である。
【0122】
本実施例1では、防虫剤2%、精油エマルジョン5%、ホルマリンキャッチャー剤43%、水50%として配合し裏面コート剤を作製した。この裏面コート剤を3尺×6尺サイズ(長さ約1830mm×幅約920mm×厚さ約12.0mm)のラワン合板からなる前記基材2の裏面に約67g塗布した。床板1m当たりの塗布量を約40g/mとした。このうち、樹木精油成分Sを含有したエマルジョンの比率が5%であるので、精油エマルジョンは床板1m当たり、約2g/mとなった。精油エマルジョン中の合成樹脂粒子比率を70%としたので、従って、合成樹脂粒子は床板1m当たり、1.4g/mとなった。
【0123】
また、合成樹脂粒子中の樹木精油成分Sの比率を約40%としたので、従って、樹木精油成分Sは床板1m当たり、約0.6g/mとなった。溝付きロールスプレッダーにて塗布し約5分間、常温にて養生した後、約50〜70℃の乾燥炉中で約15分間乾燥させた。続いて塗装工程に入る。
【0124】
次に、塗装工程について述べる。シーラー工程、着色工程、補色工程、下塗り工程、中塗り工程、上塗り工程の順に進めた。塗料は紫外線硬化タイプのものを用いた。シーラー工程では無溶剤系エポキシ塗料を約6g/mロール塗布し、紫外線ランプにて照射エネルギー300mjとした。続いて、着色及び補色工程にて、化粧単板4にロールコーターにて着色剤を塗布しリバースコーターにて余剰の着色剤を掻き取ると共に化粧単板4の導管等の木目孔内に着色剤を刷り込んだ。
【0125】
続いて、下塗りには無溶剤系エポキシ樹脂塗料をロールコーターにて28g/m塗布し、紫外線ランプにて照射エネルギー290mjとした。中塗りには溶剤系ポリエステル樹脂塗料をロールコーターにて32g/m塗布し紫外線ランプにて照射エネルギー380mjとした。上塗りには無溶剤系エポキシ樹脂塗料をロールコーターにて6g/m塗布し紫外線ランプにて照射エネルギー380mjとした。
【0126】
この時、塗装工程の上塗り工程において、表面塗装の塗料中に、ヒノキチオールを適量添加した。前記ヒノキチオール添加量は、無溶剤系エポキシ樹脂塗料16kgに対してヒノキチオールを20g配合(重量比率で0.125%)した。この時、塗装膜によって付加される床板1m当たりの樹木精油成分Sは約0.01g/m程度であった。実施例1の床板1m当たりの樹木精油成分Sの合計量は、約5.11g/m程度であった。このようにして、本発明の木質床板1の実施例1のサンプルを作製し次に述べる試験に供した。
【0127】
実施例2。
次に実施例2について述べる。アンダーレイシート3として、坪量20g/m、厚み約40ミクロンの薄葉紙を用意した。大きさは縦1830mm、横幅920mmの枚葉にカットして用いた。このカット済みアンダーレイシート3を、前記精油エマルジョンの液中に浸漬し含浸させた。精油エマルジョンは前記した製造方法に基づいて作製した。
【0128】
樹木精油成分S、合成樹脂粒子、水、それぞれの重量比率として、樹木精油成分Sを28%、合成樹脂粒子を42%、水を30%として、前記したように乳化重合させ、前記精油エマルジョンを得た。
【0129】
次にアンダーレイシート3を前記合成樹脂粒子からなる精油エマルジョン中に約15分間浸漬させ含浸させた。アンダーレイシート3に精油エマルジョンを含浸後、常温にて24時間養生して水分を気乾含水率と平衡するまで養生させた。その時の含浸量は一例として、アンダーレイシート1m当たり、20g/mとした。精油エマルジョン中の合成樹脂粒子比率の好適な範囲が60〜80%であるので、実施例2では中間の70%とした。(実施例1でも同様に70%であった)。従って、合成樹脂粒子は、アンダーレイシート1m当たり、14g/mとなった。従って、このうち、合成樹脂粒子に対する樹木精油成分Sの重量比率は約40%であるので、樹木精油成分Sは、アンダーレイシート1m当たり、約5.6g/mとなった。
【0130】
次に、樹木精油成分Sを含有させた上記アンダーレイシート3を3尺×6尺サイズ(長さ約1830mm×幅約920mm×厚さ約12.0mm)のラワン合板からなる基材2にシート貼り用接着剤にて貼着した。接着剤としてはメラミン変性のスチレン・ブタジエンゴムラテックス系樹脂接着剤を使用した。この時の接着剤には樹木精油成分Sを添加しなかった。
【0131】
接着剤配合は、変性ラテックス樹脂30重量部、変性メラミン樹脂30重量部、増量剤としての小麦粉22重量部、水2重量部を配合し、これに樹木精油成分Sを全く添加しないエマルジョンを16重量部配合してアンダーレイシート貼り用接着剤を調整した。
【0132】
接着剤塗布量は70g/mとなるように調整し、ホットプレスにて、3尺×6尺サイズで貼着した。熱圧締条件は圧締温度50℃、圧締圧力1.5kg/cm、圧締時間30秒として、熱圧締した。
【0133】
続いて、アンダーレイシート貼り後の台板合板に、樹木精油成分Sを添加しない単板貼り用接着剤を用いて化粧単板4を貼着した。接着剤としてはメラミン変性のスチレン・ブタジエンゴムラテックス系樹脂接着剤を使用した。
【0134】
接着剤配合は、変性ラテックス樹脂30重量部、変性メラミン樹脂30重量部、増量剤としての小麦粉22重量部、水2重量部を配合し、これに樹木精油成分Sを全く添加しないエマルジョンを16重量部配合して単板貼り用接着剤を調整した。
【0135】
接着剤塗布量を100g/mとして塗布したのち、厚さ0.22mmのなら材銘木単板を貼り合わせ、ホットプレスにて熱圧締した。熱圧締条件として、圧締温度100℃、圧締圧力7.0kg/cm、圧締時間60秒として、熱圧締した。
【0136】
次に、化粧単板貼り済みの台板裏面に精油エマルジョンからなる裏面コート層6を施し、続いて、表面塗装を施した。この工程は実施例1と同様であった。従って、裏面コート層6での樹木精油成分Sは実施例1と同様にして、床板1m当たり、0.6g/mとなった。さらに表面塗装工程も実施例1と同様としたので、従って、上塗り塗料(実施例1と同様の塗料で塗布量も同様とした)に添加したヒノキチオールの添加量の重量比率は実施例1と同様にして、0.125%とした。
【0137】
この時、塗装膜によって付加される床板1m当たりの樹木精油成分Sは実施例1と同様であり、約0.01g/m程度であった。。実施例2の床板1m当たりの樹木精油成分Sの合計量は、約6.21g/m程度であった。このようにして実施例2のサンプルを作製した。これを次に述べる試験に供した。
【0138】
比較例1。
また、比較例として、精油成分無添加エマルジョンを用いて次に示すように、比較例1の床板を作製した。すなわち、同様にして、変性ラテックス樹脂30重量部、変性メラミン樹脂30重量部、増量剤としての小麦粉22重量部、水2重量部を配合し、これに樹木精油成分Sを含有しないエマルジョンを16重量部配合して、比較例1用の化粧単板貼り用接着剤を調整した。この接着剤をアンダーレイシート貼り用の接着剤としても用いた。また、表面塗装の上塗りの塗料中に、ヒノキチオールを全く添加しなかった。
【0139】
また、アンダーレイシートにも精油エマルジョンを含浸塗布しなかった。また、裏面コート剤中のエマルジョンに、樹木精油成分Sを全く添加しなかった。この他は実施例1、2と全く同様にして比較例1のサンプルを作製し、次に述べる試験に供した。
【0140】
上記実施例1、2及び比較例1の各サンプル床板について、ダニ増殖抑制性能試験、抗菌性能試験、カビ抵抗性能試験を実施した。試験結果を表1〜表3に示す。
(1)ダニ増殖抑制性能試験について。
(試験方法)検査ダニとして、ヤケヒョウヒダニを用い、サンプル床材上にダニ増殖装置を置き、ウエットチャンバー内に設置した。該ウエットチャンバー内の環境を温度25℃、相対湿度75%に調整した。このような環境下でダニの増殖状況を観察した。観察期間は、設置開始後、4週目、8週目とした。
【0141】
ダニ増殖装置の概要は以下のとおりであった。厚み3mm×縦30mm×横30mmの平面視30mm角の正方形で高さ(厚み)3mmのアクリル樹脂製角柱を9個用意し、該角柱をサンプル床材上に3mm方向が高さとなるように載置した。そして、該角柱を平面で見て、中央部に直径10mmの円形の貫通孔を3mmの高さ方向に設けた。前記貫通孔の中に所定数のダニとその飼料を入れ、円形の貫通孔が設けられている角柱の天面と底面を和紙で被覆した。角柱は和紙で被覆されているので、フィトンチッドを含む空気及び湿気や水分は通過可能であるが、ダニそのものは脱出できない。
【0142】
実施例1、実施例2、及び、比較例1のサンプル床材を190mm×190mmの正方形にカットし、それぞれ各3枚づつ計9枚用意した。また、ヤケヒョウヒダニを90匹用意した。上記ダニ増殖装置を実施例1用として3個、実施例2用として3個、比較例1用として3個、計9個用意した。各ウエットチャンバー内に190mm角の正方形の実施例1、実施例2サンプル床材、及び、比較例1サンプル床材を各1枚づつ設置し、前記アクリル樹脂製角柱に、ヤケヒョウヒダニを10匹と飼料を入れ和紙で被覆したものを1個づつ、各ウエットチャンバー内の床板サンプル上に載置した。このようにして、実験開始直後、4週後、8週後のダニの総数をカウントした。実施例1、2、比較例1とも各3枚づつ試験し、その平均値を表1に示す。
(表1)ダニ増殖抑制性能試験結果。(ダニ数で示す)

【0143】
(単位、匹)
(試験結果の考察)
実験開始直後から4週後までの期間、実施例1、2サンプル、比較例1サンプルとも、ダニの増殖が認められたが、実施例1のサンプルは比較例1のサンプルの約66%に抑制された。また、実施例2のサンプルは比較例1のサンプルの約60%に抑制された。また、4週後から8週後までの期間においては比較例1のサンプルはあいかわらず増殖を続けたが、実施例1、2のサンプルは明らかにダニ数が減少し抑制効果が認められた。実施例1のサンプルは、4週後のダニ数に比べて8週後のダニ数が約14%減少した。また、実施例2のサンプルは4週後のダニ数に比べて8週後のダニ数が約24%減少した。実施例1に比べて実施例2のサンプルの方が若干、ダニ抑制性能が優れているが、この理由は、サンプル床板の単位面積当たりの精油成分濃度が実施例2の方が約20%程度高いことによるものと思われる。
(2)抗菌性能試験について。
(試験方法)JIS、Z、2801(2000)抗菌加工製品−抗菌性試験方法、抗菌効果に従って実施した。
【0144】
供試サンプルとしては、実施例1、2のサンプル、比較例1のサンプルとも、基材合板及び化粧単板部分を除去し、表面塗膜部分を試験に供した。基材合板及び化粧単板部分を除去した理由は、木質部分に菌が入り込み、回収できないためである。
【0145】
ヒノキチオールを添加した表面塗膜をフィルム状に固化させ実施例1、及び、実施例2のサンプルとした。ヒノキチオールの添加量は塗料樹脂16kgに対してヒノキチオールを20g添加(添加量の重量比率は0.125%)した。ヒノキチオール添加量は実施例2のサンプルと実施例1のサンプルと同様とした。また、ヒノキチオールを全く添加しなかった以外は実施例1、2と全く同様にして、比較例1のサンプルとした。
【0146】
上記のようにして、実施例1、2のサンプル、及び、比較例1のサンプルを作製し、これに菌液を散布し、散布した菌液を回収し、JIS、Z、2801に従って試験した。結果を表2に示す。
(表2)抗菌性能試験結果。(生菌数で示す)

【0147】
(単位)試験片1個当たりの生菌数
(試験結果の考察)
上記試験結果を見てわかるとおり、抗菌剤としてのヒノキチオールを上塗り塗料中に重量比率で0.125%添加した実施例1、2のサンプルは、大腸菌、及び、黄色ぶどう球菌のいずれの場合においても、35℃、24時間後の生菌数は検出されなかった。しかしながら、比較例1のサンプルにおいては、生菌数が明らかに増加している。大腸菌の場合で約5倍増加しており、黄色ぶどう球菌の場合で約1.6倍増加している。
(3)カビ抵抗性能試験について。
(試験方法)カビ抵抗性能試験として、JIS、Z、2911(1981)カビ抵抗性試験方法に従って実施した。実施例1、2のサンプル床材、及び、比較例1のサンプル床材について試験した結果を表3に示す。
(結果の表示方法)
カビ抵抗性能について、評価を3段階評価とした。カビ抵抗性能が最も良好なものを3、やや良好なものを2、不良を1とした。
(評価基準)

【0148】
実施例1、2及び比較例1の床材サンプルについて、カビ培養14日後、カビ培養28日後の菌糸発育状況を表3に示す。
(表3)カビ抵抗性能試験結果。

【0149】
(試験結果の考察)
上記実施例1、2の床材サンプル、及び、比較例1の床材サンプルについて、対比させると床材サンプルの表面のみならず側面においても、実施例1、2のサンプルの方が比較例1のサンプルと対比させて、菌糸発育を抑制する効果があることがわかる。いずれにおいても、カビ抵抗性能評価値の差が1以上有り、実施例1、2の床材サンプルにおいてはカビの発育の抑制にとって有効であることがわかる。また、実施例1の床材サンプルと比べると実施例2の床材サンプルの方が若干、カビ抵抗性能が優れているが、この理由は、サンプル床板の単位面積当たりの精油成分濃度が実施例2の方が約20%程度高いことによるものと思われる。
(徐放性試験)
次に、上記、実施例1、実施例2の床板サンプルについて、精油成分の長期間徐放性について試験した。試験結果を表4に示す。
(試験方法)
供試床板として、厚み12mm×幅303mm×長さ1818mmの実施例1、2の床板サンプルを各24枚づつ用意した。根太方式の床下地を有する8疊間の大きさの部屋を用意し、根太上に前記各24枚の実施例1、及び、実施例2の床板サンプルを、それぞれ施工した。室温は20℃で一定とした。部屋の換気回数を0.6回/時間とした。ここでいう、換気回数とは、単位時間当たり、部屋の空気をそっくり新しくする回数のことである。そして経過日数が経過した時点における精油成分(総テルペン量)の気中濃度(単位:ppb)を測定した。
【0150】
精油成分の気中濃度の測定方法は、室内の空気をTENAX−GC管に吸着させた後、ガスクロマトグラフ−マススペクトロメトリーによって定量分析し、実測値とした。
(表4)精油成分徐放性試験結果。

【0151】
(試験結果の考察)
上記実施例1、2の床板サンプルは、約6ヶ月後においても、実施例1で13ppb、実施例2で16ppbの値を示している。また、約1年後において、実施例1は7ppb、実施例2は8ppbの値を示している。さらに、1000日後(約3年弱)における実施例1、2の値は、2ppbを示し、このように長期間にわたって精油成分が徐放されているのがわかる。
【符号の説明】
【0152】
1 木質床板
2 基材
3 アンダーレイシート
4 化粧単板
5 表面塗膜
6 裏面コート層
7 シート貼り用接着剤層
8 単板貼り用接着剤層
9 嵌合凸部
10 嵌合凹部
S 樹木精油成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面コート層、基材、シート貼り用接着剤層、アンダーレイシート、単板貼り用接着剤層、化粧単板、表面塗膜の各層が、木質床板の裏面側からこの順で構成された木質床板において、前記各層のうち少なくとも単板貼り用接着剤層又はアンダーレイシートに樹木精油成分が含有されていることを特長とする樹木精油成分を含む木質床板。
【請求項2】
前記樹木精油成分を含む層が単板貼り用接着剤層、表面塗膜、及び、裏面コート層の三層であることを特長とする請求項1に記載の樹木精油成分を含む木質床板。
【請求項3】
前記樹木精油成分を含む層がアンダーレイシート、表面塗膜、及び、裏面コート層の三層であることを特長とする請求項1に記載の樹木精油成分を含む木質床板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−127312(P2011−127312A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285510(P2009−285510)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(398051497)株式会社パル (65)
【Fターム(参考)】