説明

樹脂カバー用キャップの取付け構造

【課題】キャップの取外しが容易であって、取外し時の破損を防止できる樹脂カバー用キャップの取付け構造を提供する。
【解決手段】作業機に配設される部材を覆う樹脂カバー16に凹部30を形成し、凹部30の底部に固定具挿通孔34を設ける。固定具挿通孔34に挿通する固定具(ねじまたはボルト)29により樹脂カバー16を取付け対象部材25に固定する。凹部30の開口部に、その開口部内に設けた段部37にキャップ32の底辺を当ててキャップ32を嵌合する。キャップ32の周辺部の2箇所に設けた係止爪32cを、段部37に設けた係止孔39に係止してキャップ32を取付ける。凹部30の開口部の内壁41に設けるキャップ取外し用の溝40を、開口部の周方向に見て係止孔39と同位置に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機において、運転室等に設置する部材を樹脂カバーで覆い、この樹脂カバーに凹部を設け、この凹部の底部に設けた固定具挿通孔にねじやボルト等の固定具を挿通して対象部材に樹脂カバーを固定する場合、前記凹部に嵌合して取付けられ前記固定具を覆うキャップの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の作業機の運転室においては、特許文献1に示すように、空調用のダクト等を室内に配設し、このようなダクト等の配設部材の保護と外観の向上を図るため、樹脂カバーによって配設部材を覆い、樹脂カバーはねじにより運転室に設けられる鉄板等の対象部材に固定している。このような樹脂カバーをねじにより運転室の対象部材に固定する構造において、外観の向上のため、ねじをキャップにより覆っている。このキャップの取付けは、図7に示すように、樹脂カバー16に設けた凹部30にキャップ32を嵌合し、キャップ32に設けた2つの係止爪32cを、凹部30に設けた係止孔39に弾性的に係止させて固定することにより行なっている。また、保守点検や修理時にキャップ32を取外すため、係止孔39と周方向の異なる開口縁部の内壁に、棒状の工具(図示せず)を挿入してキャップ32を外すための溝45を形成している。
【0003】
【特許文献1】特開2000-319938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来のキャップ32の取付け構造においては、係止爪32cを係止孔39から外すために大きな力が必要で、取外しが容易ではない上、強い力でキャップ32を変形させて取外すため、キャップ32が破損することがあるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑み、キャップの取外しが容易であって、取外し時の破損を防止できる樹脂カバー用キャップの取付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の樹脂カバー用キャップの取付け構造は、作業機に配設される部材を覆う樹脂カバーに凹部を形成し、前記凹部の底部に固定具挿通孔を設け、前記固定具挿通孔に挿通する固定具(ねじまたはボルト)により樹脂カバーを取付け対象部材に固定し、前記凹部の開口部に、その開口部内に設けた段部にキャップの底辺を当ててキャップを嵌合すると共に、前記キャップの周辺部の2箇所に設けた係止爪を、前記段部に設けた係止孔に係止してキャップを取付ける構造において、
前記凹部の開口部の内壁に設けるキャップ取外し用の溝を、前記開口部の周方向に見て前記係止孔と同位置に設けたことを特徴とする。
【0007】
請求項2の樹脂カバー用キャップの取付け構造は、請求項1に記載の樹脂カバー用キャップの取付け構造において、
前記凹部の底部に設ける固定具挿通孔の中心を、前記凹部の中心から偏位させて設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、キャップ取外し用の溝を、キャップ取付け用凹部の開口部内壁における係止孔と周方向の同位置に設けたので、キャップの取外しの際に、溝に挿入する工具で梃子状に係止爪を容易に弾性変形させることができる。このため、係止爪を係止孔から容易に離脱させ、キャップを凹部から容易に取外すことができる。また、キャップに過大な力を作用させることがないため、取外し時のキャップの破損が回避される。
【0009】
請求項2の発明によれば、固定具挿通孔の位置を凹部の中心から偏位させた構造としたので、キャップの取付け位置が固定具の取付け位置に制限を受ける度合いが緩和されると共に、キャップのサイズを固定具に比較して大きくすることができ、キャップの着脱が容易となる。また、樹脂カバーの縁部にある場合に、固定具挿通孔を樹脂カバーの縁部寄りに設けることにより、樹脂カバーが本来覆うべき空間を広く確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明の樹脂カバー用キャップの取付け構造を適用する作業機の一例である油圧ショベルを示す側面図である。この油圧ショベルは、下部走行体1上に旋回装置2を介して設置した上部旋回体3にパワーユニット4および運転室5等を設置する。また、上部旋回体3に作業用フロント6を取付ける。この作業用フロント6は、ブーム7をブームシリンダ9によりピン8を中心に起伏可能に取付け、ブーム7の先端にアームシリンダ10によりピン11を中心にアーム12を回動可能に取付け、アーム12の先端にバケットシリンダ13によりピン14を中心にバケット15を回動可能に取付けてなる。
【0011】
図2、図3はそれぞれ図1の運転室5内の樹脂カバー16の取付け部位を説明する側面断面図および平面断面図である。図2、図3において、17、18、19、20、21はそれぞれ運転室5の前面部、側面部、背面部、底面部、天井部を示す。22は運転室5内に設置した運転席である。23は運転室5内における運転席22の後部に設置した空調装置である。24は空調装置23から吐出される空気を通すダクト、25はダクト24を支持する支持体、16はこの支持体25に取付けられてこの支持体25およびダクト24を覆う樹脂カバーである。
【0012】
図4は前記ダクト24、その支持体25および樹脂カバー16の相互の組み合わせ構造を示す縦断面図である。18Aは前記側面部18を構成する鉄板、18Bはこの鉄板18Aにゴム26を介して接着したガラス窓である。前記支持体25は鉄板でなる成形体であり、前記鉄板18Aの内面に溶接や固定具により固定される。支持体25にはダクト24の収容部25aが形成され、この収容部25aと樹脂カバー16との間でダクト24が収容される。29は樹脂カバー16の取付け用固定具(ねじまたはボルト)、30はこの固定具29を収容する凹部、31は固定具29に螺合するナット、32は凹部30を覆うキャップであり、これらの構造は図5に拡大して示される。
【0013】
図5(A)、(C)に示すように、凹部30の底部には固定具挿通孔34を設け、支持体25に設けた凹部35には固定具挿通孔36を設けると共にナット31を溶接する。固定具29は、凹部30の底部の固定具挿通孔34と支持体25に設けた固定具挿通孔36に通してナット31に螺合し締結することにより、樹脂カバー16を支持体25に固定する。
【0014】
キャップ32は樹脂成形体からなるもので、円板部32aと、その円板部32aと一体に形成された浅い筒状部32bと、筒状部32bより開口面側に突出するように、互いに反対側となる2箇所に形成された係止爪32cとからなる。係止爪32cは係止用突起32dを有するもので、係止爪32cの両側の筒状部32bには、可撓性を高めるためにスリット32eを設けている。また、後述の係止孔39に対する係止爪32cの挿入を容易にするため、係止爪32cの先端部には先細りのテーパー部32fを形成している。
【0015】
樹脂カバー16の凹部30の開口部近傍には段部37が形成されており、前記キャップ32の係止爪32cを係止させるために、段部37における互いに反対側に位置する2箇所に係止孔39を設ける。この実施の形態においては、係止孔39は上下2箇所に設けられている。40はキャップ32を外すために開口部内壁41に設けた溝である。この溝は、凹部30の開口部を周方向に見て、上方の係止孔39と同じ位置に形成している。
【0016】
図5(C)に示すように、キャップ32はその係止爪32cを係止孔39に係止させて凹部30に固定する。すなわち、係止爪32cはその先端のテーパー部32fが凹部30の開口部内壁41に当接し、弾性により変形した状態で内壁41を摺動しながら係止孔39内に挿入され、係止爪39cの突起32dが係止爪39を越えると、係止爪32cの持つ弾性により、元の姿勢に復帰して突起32dが係止孔39に係止され、抜け止めされる。このとき、キャップ32の筒状部32bの底辺は段部37に当接する。
【0017】
このようにキャップ32を凹部30に取付けた状態から保守点検や修理のために樹脂カバー16を外す場合、キャップ32を凹部30から外す必要がある。この場合は、図5(C)に示すように、棒状工具42を溝40から挿入し、この棒状工具42を矢印aで示すように梃子状に動かすことにより、係止爪32cが矢印bで示すように突起32dが係止孔39から外れる方向に動き、かつキャップ32が矢印cで示すように抜け出す方向に回動するから、キャップ32を容易に外すことができる。また、棒状工具42により係止爪32cを直接弾性変形させて係止爪32cを係止孔39から外すため、キャップ32に過大な力を作用させることがないため、取外し時のキャップ32の破損が防止される。
【0018】
図6は本発明の他の実施の形態であり、この実施の形態は、樹脂カバー16の凹部30の底部に設ける固定具挿通孔34の中心O1を、凹部30の中心O2から偏位させて設けたものである。この実施の形態においては、固定具挿通孔O1の中心を、樹脂カバー16の縁部16a側に偏らせて設けている。
【0019】
このように、固定具挿通孔34の中心O1の位置を凹部30の中心O2から偏位させた構造とすれば、キャップ32の取付け位置が固定具29の取付け位置に制限を受ける度合いが緩和される。また、キャップ32のサイズを固定具29に比較して大きくすることができ、キャップ32の着脱が容易となる。また、樹脂カバー16の縁部16a側にある場合に、固定具挿通孔34を樹脂カバー16の縁部16a寄りに設けることにより、樹脂カバー16が本来覆うべき空間を広く確保することができる。
【0020】
本発明による樹脂カバー用キャップの取付け構造は、自走式車両に各種作業用フロントを取付けた油圧ショベル以外の自走式作業機に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による樹脂カバー用キャップの取付け構造を適用する作業機の一例である油圧ショベルを示す側面図である。
【図2】図1の油圧ショベルの運転室の側面断面図である。
【図3】図1の油圧ショベルの運転室の平面断面図である。
【図4】図2のE-E断面図である。
【図5】本発明の樹脂カバー用キャップの取付け構造の一実施の形態を示すもので、(A)はその分解斜視図、(B)はそのキャップの側面図、(C)はその側面断面図である。
【図6】本発明の他の実施の形態を示す正面図である。
【図7】従来の樹脂カバー用キャップの取付け構造を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
1:下部走行体、2:旋回装置、3:上部旋回体、4:パワーユニット、5:運転室、6:作業用フロント、7:ブーム、9:ブームシリンダ、10:アームシリンダ、12:アーム、13:バケットシリンダ、14:バケット、16:樹脂カバー、17:前面部、18:側面部、18A:鉄板、18B:ガラス窓、19:背面部、20:底面部、21:天井部、22:運転席、23:空調装置、24:ダクト、25:支持体、25a:収容部、26:ゴム、29:固定具、30:凹部、31:ナット、32:キャップ、32c:係止爪、32d:突起、32e:スリット、32f:テーパー部、34、36:固定具挿通孔、35:凹部、37:段部、39:係止孔、40:溝、41:内壁、42:棒状工具、O1:固定具挿通孔34の中心、O2:凹部30の中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機に配設される部材を覆う樹脂カバーに凹部を形成し、前記凹部の底部に固定具挿通孔を設け、前記固定具挿通孔に挿通する固定具により樹脂カバーを取付け対象部材に固定し、前記凹部の開口部に、その開口部内に設けた段部にキャップの底辺を当ててキャップを嵌合すると共に、前記キャップの周辺部の2箇所に設けた係止爪を、前記段部に設けた係止孔に係止してキャップを取付ける構造において、
前記凹部の開口部の内壁に設けるキャップ取外し用の溝を、前記開口部の周方向に見て前記係止孔と同位置に設けたことを特徴とする樹脂カバー用キャップの取付け構造。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂カバー用キャップの取付け構造において、
前記凹部の底部に設ける固定具挿通孔の中心を、前記凹部の中心から偏位させて設けたことを特徴とする樹脂カバー用キャップの取付け構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−137567(P2008−137567A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327835(P2006−327835)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】