説明

樹脂シロップ、この樹脂シロップの硬化物を含む人造大理石及びその製造方法

本発明は、カルボキシル基含有アクリル系高分子量体、常温硬化型開始剤、及び高温硬化型開始剤を含む樹脂シロップ、この樹脂シロップの硬化物を含む人造大理石及びその製造方法に関する。本発明によると、カルボキシル基を含有するアクリル系高分子量体、常温硬化型開始剤、及び高温硬化型開始剤を含ませることにより、熟成過程などの工程によって、プレス成形に好適な高粘度及び優れた硬化効率を有する樹脂シロップを得ることができ、この硬化物を含む人造大理石及びその製造方法を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シロップ、この樹脂シロップの硬化物を含む人造大理石及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キッチンの調理台や床材などの各種インテリア内/外装材として使用される人造大理石は、大きく、無機系と樹脂系に区分される。このうち、樹脂系人造大理石の種類は、使用される樹脂の種類によってアクリル系人造大理石及び不飽和ポリエステル系人造大理石などに分類される。
【0003】
アクリル系人造大理石は、不飽和ポリエステル系と比較して、機械的強度に優れており、美しい色相の表現が可能であり、卓越した耐熱性を有するなどの利点のため、人造大理石市場の殆どを占有している。
【0004】
一般に、アクリル系人造大理石は、10万内外の重量平均分子量を有するアクリル系高分子量体(例:ポリメチルメタクリレート(PMMA))を硬化可能な単量体(例:メチルメタクリレート(MMA))に溶解させ、無機充填剤のような添加剤を混合して製造した組成物(樹脂シロップ)を、連続方式であるキャスティング工法に適用して製造している。
【0005】
一方、アクリル系人造大理石の製造では、プレス工法を適用する場合、キャスティング工法を適用する場合と比較して多様な形態の製品を一時に製造することができ、かつ、製造された製品の変形防止特性が優れており、薄肉の薄膜製品を成形するのに容易であるという利点がある。
【0006】
従って、アクリル系樹脂を主成分とする組成物をプレス成形に適用することができれば、アクリル系樹脂及びプレス工法の利点を兼ね備えた、さらに優れた物性の製品を製造することができると期待される。
【0007】
しかし、上述したプレス工法の利点にもかかわらず、従来のアクリル系人造大理石がキャスティング工法によって製造されている理由は、アクリル系樹脂を主成分とする組成物の粘度をプレス工法の適用が可能な水準まで引き上げることが難しいためである。
【0008】
例えば、樹脂組成物の粘度を高めるために無機充填剤の含量を高める場合、粘度上昇に伴って流れ性が非常に悪くなって気泡の除去が不可能であり、成形された製品の強度及び表面品質もかなり落ちるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した従来技術の問題を解決するために、アクリル系高分子量体を主成分として含む樹脂シロップの低い粘度問題などを解決し、プレス成形に適用できる樹脂シロップを提供することを目的とする。
【0010】
本発明の他の目的は、上記樹脂シロップを含む人造大理石及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を解決するための手段として、カルボキシル基含有アクリル系高分子量体;常温硬化型開始剤及び高温硬化型開始剤を含む樹脂シロップを提供する。
【0012】
本発明は上記課題を解決するための他の手段として、前述した本発明による樹脂シロップの硬化物を含む人造大理石を提供する。
【0013】
本発明は上記課題を解決するためのさらに他の手段として、前述した本発明による樹脂シロップを熟成させる第1段階と、第1段階で熟成された樹脂シロップをプレス成形する第2段階とを含む人造大理石の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、カルボキシル基を含むアクリル系高分子量体が溶解されている樹脂シロップに常温硬化型開始剤及び高温硬化型開始剤を含有させ、熟成工程などを経てその粘度を最適化することによって、プレス成形に適用できる樹脂シロップを提供することができる。
【0015】
これにより、本発明は、多様な形態の製品を一時に製造することができ、製造された製品の変形防止特性が優れており、アクリル系成形品(例:人造大理石)を、薄膜製品の容易な成形が可能なプレス工法を適用することによって製造することができるという利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、カルボキシル基含有アクリル系高分子量体;常温硬化型開始剤;及び高温硬化型開始剤を含む樹脂シロップに関するものである。
【0017】
本発明は、低い粘度及び収縮性の問題のために主にキャスティング工法にのみ適用されてきたアクリル系樹脂シロップをプレス工法に適用できるようにしたことを特徴とする。
【0018】
したがって、本発明は、多様な形態の成形品を一時に製造することができ、製造された製品の耐変形性(変形防止特性)が優れており、アクリル系成形品(例:人造大理石)を、薄膜製品の容易な成形が可能なプレス工法を適用することによって製造することができるという利点を有する。
【0019】
以下、本発明の樹脂シロップを詳細に説明する。
【0020】
本発明の樹脂シロップは、カルボキシル基含有アクリル系高分子量体を含む。この高分子量体に含まれるカルボキシル基は、樹脂シロップに含まれる増粘剤(金属酸化物又は金属水酸化物)と反応して樹脂シロップ全体の粘度を上昇させる役割をすることができる。
【0021】
本発明では、このカルボキシル基と、増粘剤との反応を制御して、目的とする粘度上昇効果を得るために、上記高分子量体の酸価を適切に制御することができる。
【0022】
本発明で使用する用語「酸価」とは、高分子量体内のカルボキシル基の含量を示す数値であって、高分子量体1gを中和させるのに要求される水酸化カリウムの質量(mg)のことを意味する。
【0023】
具体的には、本発明では、酸価が14以上であるアクリル系高分子量体を使用することができ、酸価が18以上であるアクリル系高分子量体を使用することがより好ましい。上記酸価が14未満であると、増粘剤との反応による組成物の粘度上昇効果が低下する恐れがある。本発明で上記酸価の上限は特に限定されず、例えば30である。
【0024】
一方、本発明において「アクリル系高分子量体」は、通常的なアクリル系単量体を主成分として製造される重合体又はオリゴマーを含む概念で使用する。
【0025】
本発明では、このアクリル系高分子量体の重量平均分子量が30万乃至300万であることが好ましい。この重量平均分子量が30万未満であると、増粘効果が低く、樹脂シロップの流れ性が高くなりすぎる恐れがあり、この重量平均分子量が300万を超過すると、増粘速度が速くなりすぎて、混合過程で発生する気泡の除去が難しくなるか、あるいは成形性が低下しすぎる恐れがある。
【0026】
本発明におけるアクリル系高分子量体は、例えば、カルボキシル基含有単量体を、主成分であるアクリル系単量体と共重合させることによって製造することができる。
【0027】
このときに使用するアクリル系単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及びグリシジル(メタ)アクリレートからなる群から選択される一種以上の単量体が挙げられ、カルボキシル基含有単量体としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、及びフマル酸からなる群から選択される一種以上が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0028】
上記アクリル系単量体及びカルボキシル基含有単量体の使用比率は、特に限定されず、この分野の平均的技術者であれば、目的とする高分子量体の酸価に応じて適切な単量体比率を容易に選択することができる。
【0029】
また、共重合させる方法も同様に、特に限定されず、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、又は乳化重合などの一般的な方法を制限なく使用することができる。
【0030】
上述したカルボキシル基含有高分子量体を、本発明の樹脂シロップの総重量100重量部を基準として、10乃至40重量部の量で含有させることが好ましい。この含量が10重量部未満であると、樹脂シロップの硬化物性及び/又は収縮性が低下する恐れがあり、40重量部を超えると、樹脂シロップの粘度が高くなりすぎて取り扱い性が低下する恐れがある。
【0031】
本発明の樹脂シロップは、アクリル系高分子量体とともに、常温硬化型開始剤を含む。
【0032】
本発明で使用する用語「常温硬化型開始剤」は、約20℃乃至50℃の温度で硬化反応を開始させることができる開始剤を意味し、この成分は、樹脂シロップの熟成及び/又は半硬化工程に関与して、樹脂シロップの粘度を一定水準に引き上げる役割をする。
【0033】
本発明に使用することができる常温硬化型開始剤の種類は、前述した作用が行えるものであって、アクリル系樹脂シロップの常温硬化に使用される通常のものなら特に制限されない。その例としては、t−ブチルパーオキシマレイン酸、及びベンゾイルパーオキシドなどが含まれるが、これらに制限されるものではない。
【0034】
上述した常温硬化型開始剤を、本発明の樹脂シロップの総重量100重量部を基準として、0.05重量部乃至5重量部の量で含有させることが好ましい。常温硬化型開始剤のこの含量が上記範囲を外れると、半硬化又は熟成過程における硬化反応が過度に進行するか、あるいは不十分に進行し、適正な粘度の調節が困難になる恐れがある。
【0035】
本発明の樹脂シロップは、この常温硬化型開始剤の硬化反応を補助することができる適切な促進剤をさらに含むこともできる。
【0036】
このような促進剤の例としては、金属水酸化物(例:水酸化カルシウム)、3級アミン、及び金属塩(例:コバルト塩)の一種又は二種以上が含まれるが、これらに制限されない。
【0037】
また、促進剤を樹脂シロップに含ませる場合、その含量は、樹脂シロップの総重量100重量部に対し、0.1重量部乃至1重量部であってよい。促進剤の含量が上記範囲を外れると、半硬化又は熟成過程における硬化反応が過度に進行するか、あるいは不十分に進行し、適正な粘度の調節が困難になる恐れがある。
【0038】
本発明の樹脂シロップはまた、高温硬化型開始剤を含む。
【0039】
本発明で使用する用語「高温硬化型開始剤」は、約100℃以上の温度で熱による硬化反応を起こす開始剤を意味し、この成分は、熟成及び/又は半硬化工程が終了した樹脂シロップがプレス成形などの工程に適用される際に、硬化効率などを向上させる役割をする。
【0040】
本発明に使用することができる高温硬化型開始剤の種類は、前述した作用が行えるものであって、10時間半減期が100℃以上のものであれば特に制限されない。その例には、t−ブチルパーベンゾエート、t−ブチルパーイソプロピルカーボネート、t−ブチルパー−2−エチルヘキサノエート、及び1,1−ジ−t−ブチルパー−2,2,5−トリメチルシクロヘキサンなどの一種又は二種以上の混合が含まれるが、これに制限されるものではない。
【0041】
上記した高温硬化型開始剤を、本発明の樹脂シロップの総重量100重量を基準として、0.1重量部乃至5.0重量部の量で含有させ、好ましくは0.5重量部乃至2.0重量部の量で含有させる。高温硬化型開始剤の含量が上記範囲を外れると、樹脂シロップをプレス成形に適用する過程で硬化効率が低下する恐れがある。
【0042】
本発明の樹脂シロップは、前述した成分とともに、アクリル系高分子量体が有するカルボキシル基と反応することによって樹脂シロップの粘度を上昇させることができる増粘剤をさらに含むことができる。
【0043】
このような増粘剤の種類としては、各種金属酸化物又は金属水酸化物などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0044】
金属酸化物又は金属水酸化物の具体的な例としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化カルシウムからなる群から選択される一種以上が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0045】
上述した金属酸化物又は金属水酸化物を、本発明の樹脂シロップの総重量100重量部に対し、1重量部乃至10重量部の量で含ませることが好ましい。上記増粘剤の含量が1重量部より少ないと、粘度上昇効果が低下する恐れがあり、10重量部を超えると、製造された製品に黄変及び/又は強度低下現象が現れる恐れがある。
【0046】
本発明の樹脂シロップには、製品収縮を減らすとともに、モノマー吸収による粘度上昇効果を付与するために、熱可塑性樹脂をさらに含ませることができる。
【0047】
この熱可塑性樹脂の重量平均分子量及びガラス転移温度は、特に制限されないが、例えば、重量平均分子量は30万乃至300万であってよく、ガラス転移温度は70乃至120℃であってよい。
【0048】
なお、熱可塑性樹脂の種類も、本発明の樹脂シロップに製品収縮防止効果を具現するとともに粘度上昇効果をもたらすものであれば特に制限されない。例えば、ポリスチレン(PS)、ポリビニルアセテート(PVA)、及びポリメチルメタクリレート(PMMA)などを使用することができ、具体的には、硬化後の透明度及び分散性の観点からPMMAを使用することができる。
【0049】
熱可塑性樹脂の含量も、特に制限されるものではないが、例えば、樹脂シロップの総重量100重量部に対し、5乃至50重量部の量で含有させる。熱可塑性樹脂の含量が5重量部未満である場合、製品の収縮防止効果が弱いため収縮現象が発生する恐れがあり、50重量部を超える場合、硬化後に、収縮よりは膨張が起こる恐れがあり、かつ、粘度が上昇しすぎる恐れがある。
【0050】
本発明の樹脂シロップは、樹脂シロップの総重量100重量部に対し、100重量部乃至300重量部の無機充填剤をさらに含むこともできる。このような無機充填剤は、樹脂シロップの成形時に収縮現象を防止することによって表面平滑性を改善し、硬度を高める作用をする。
【0051】
本発明において使用することができる無機充填剤の例としては、シリカ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、滑石、アルミナ、及びマイカからなる群から選択される一種以上が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0052】
本発明では、これらの充填剤が樹脂成分と化学的に結合することを可能にするために、これらの充填剤をシランカップリング剤などで表面処理した後で使用することもできる。
【0053】
本発明の樹脂シロップは、製品の耐熱性及び耐薬品性などの向上の観点から、樹脂シロップの総重量100重量部に対して0.5重量部乃至10重量部の架橋剤を、さらに含むこともできる。
【0054】
このときに使用することができる架橋剤としては、多官能性アクリレート〔例えば、ジエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、1,1−ジメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、又はテトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレートなど〕、又は(メタ)アクリル酸などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0055】
架橋剤の含量が0.5重量部未満であると、硬化物の強度が充分ではない恐れがあり、架橋剤の含量が10重量部を超えると、シロップの硬化が過度に進行して、単量体が沸騰する恐れ、あるいは製品の亀裂が発生する恐れがある。
【0056】
本発明の樹脂シロップは、前述した成分に加えて、連鎖移動剤、消泡剤、顔料、染料、カップリング剤、内部離型剤、紫外線安定剤、重合禁止剤、耐収縮剤、及びチップ(例:樹脂チップ、天然素材チップなど)からなる群から選択される一種以上の添加剤を適切に含むことができる。
【0057】
上述した成分を使用することによる本発明の樹脂シロップの製造方法は、特に限定されない。一般に、樹脂シロップは、適正な高分子量体を反応性単量体に溶解させることによって製造されるが、本発明の樹脂シロップも同様に、同様の方法で製造することができる。
【0058】
この場合に使用する単量体の種類は、特に制限されないが、例えば、アクリル系単量体、又はビニル系単量体などを含ませことができる。具体的には、炭素数1乃至20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及びベンジル(メタ)アクリレートなどの単量体、又はエチレン、塩化ビニル、フッ化ビニル、1,3−ブタジエン、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルエステル、アクリル酸、N−ビニルピロリドン、ジクロロエテン、クロロスチレン、及びアクリロニトリルなどの単量体を使用することができる。
【0059】
また、さらに具体的には、炭素数1乃至12のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することができ、さらに具体的には炭素数1乃至8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することができ、好ましくはメチル(メタ)アクリレートを使用することができる。
【0060】
上述したアクリル系単量体を、本発明の樹脂シロップ中に50重量部乃至100重量部の量で含ませることが好ましい。上記含量が50重量部より少ないと、樹脂シロップの粘度が高いことに起因して取り扱い性が低下する恐れがあり、100重量部を超えると、組成物の硬化物性及び収縮性などの特性が低下する恐れがある。
【0061】
前述したとおりに製造した本発明の樹脂シロップは、その粘度が500cps乃至20,000cpsの範囲内にあることが好ましい。上記粘度が500cps未満であると、プレス工法への適用効率が落ちる恐れがあり、20,000cpsを超えると、シロップの取り扱いが難しくなる恐れ、あるいは脱泡効率が低下する恐れなどがある。
【0062】
本発明はまた、前述した本発明による樹脂シロップの硬化物を含む人造大理石に関する。
【0063】
本発明は、例えば、前述したそれぞれの成分を含み、粘度が最適化された樹脂シロップを使用して、プレス工法を通じて人造大理石を製造することによって、アクリル系樹脂及びプレス工法の利点を兼ね備えた人造大理石を提供することができる。
【0064】
本発明において、この人造大理石を製造する方法は、特に限定されない。例えば、この人造大理石は、前述した本発明による樹脂シロップを熟成させる第1段階と、第1段階で熟成させた樹脂シロップをプレス成形する第2段階とを含む方法によって製造することができる。
【0065】
本発明の第1段階は、前述した本発明による樹脂シロップを、プレス成形に適した粘度を有するように熟成させる段階である。本発明の第1段階で樹脂シロップを熟成させるこの方法は、特に限定されない。
【0066】
例えば、第1段階は、(1) 樹脂シロップを50℃乃至70℃の温度で1時間乃至3時間処理する段階、(2) 段階(1)に引き続き、樹脂シロップを20℃乃至40℃の温度で処理する段階を含むことができる。
【0067】
段階(1)は、樹脂シロップの熟成前に、シロップを半硬化(semi-curing)させる段階である。このような半硬化工程を進行させる方法は、特に限定されない。例えば、樹脂シロップを適切な方法で密封包装した後、熟成室又はオーブン内で温度を上昇させる方法で行うことができる。
【0068】
また、段階(2)を行う方法も同様に、特に限定されない。例えば、段階(1)に引き続き、熟成室内部の温度を調節した状態で樹脂シロップを保持する方法で行うことができる。
【0069】
このとき、段階(2)の熟成工程を行う時間は、樹脂シロップの粘度を考慮して適切に選択することができ、例えば、12時間乃至50時間かけて行うことができる。しかし、この条件は本発明の一つの例に過ぎない。すなわち、本発明では、上述した熟成後に組成物の粘度が目的とする範囲に属しない場合には、同一条件で追加熟成を行うか、あるいは熟成温度などの条件を適切に変更することができる。
【0070】
本発明の第2段階は、第1段階によって粘度が最適化された樹脂シロップをプレス工程に適用して、人造大理石を製造する段階である。このプレス成形は、連続方式のキャスティング工法と比較して多様な形態の成形品を一時に製造することができる。加えて、製造された製品の変形防止特性が優れており、薄膜製品の成形も有利であるという利点がある。
【0071】
本発明の第2段階におけるプレス成形の方法は、特に限定されない。この分野の当業者であれば、目的とする人造大理石に応じて適切なプレス成形条件を容易に選択することができる。
【0072】
例えば、本発明の第2段階では、第1段階の熟成を経て得られた組成物を計量した後、適切なプレス金型に投入して成形を進行させることができる。
【0073】
この第2段階において、プレス成形は、90℃乃至110℃の成形温度、及び20乃至50psi/cm2の成形圧力で10分乃至20分間行うことができるが、これに制限されるものではない。
【0074】
本発明の人造大理石の製造方法では、上述したプレス工程を経た後、製品を冷却し、型から取り出すことによって人造大理石を製造することができ、その後、用途に応じてサンディング及び/又は裁断工程などの後処理工程をさらに行うことができる。
【0075】
以下、本発明による実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲が以下に提示する実施例によって制限されるものではない。
【実施例】
【0076】
[実施例1]
重量平均分子量が30万であり、酸価が15であるカルボキシル基含有ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)25重量部を、メチルメタクリレート(MMA)75重量部に投入溶解させて樹脂シロップを製造した。
【0077】
製造された樹脂シロップ100重量部に、水酸化アルミニウム150重量部、アクリル系樹脂チップ200重量部、ノルマルメルカプタン0.5重量部、シリコーン消泡剤0.1重量部、PMMA(重量平均分子量:100万)10重量部、ジエチレングリコールジメタクリレート5重量部、及び酸化マグネシウム(MgO)2重量部を混合した。
【0078】
次いで、この樹脂シロップに、水酸化カルシウム0.2重量部、t−ブチルパーオキシマレイン酸0.5重量部、及びt−ブチルパーベンゾエート1.0重量部をさらに混合した。
【0079】
次いで、製造された樹脂シロップを密封して50℃のオーブンで2時間熟成させ、引き続き、常温で1日間さらに熟成させた。その後、樹脂シロップの適正量を計量してプレス金型に投入し、100℃、30psi/cm2の成形圧力で15分間成形した後、冷却し、型から取り出して、人造大理石を製造した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基含有アクリル系高分子量体と、常温硬化型開始剤と、高温硬化型開始剤とを含む樹脂シロップ。
【請求項2】
カルボキシル基含有アクリル系高分子量体の酸価が14以上であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂シロップ。
【請求項3】
アクリル系高分子量体の重量平均分子量が30万乃至300万であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂シロップ。
【請求項4】
アクリル系高分子量体が、10重量部乃至40重量部含まれることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂シロップ。
【請求項5】
常温硬化型開始剤が、t−ブチルパーオキシマレイン酸、及びベンゾイルパーオキシドからなる群から選択される一種以上であることを特徴とする請、求項1に記載の樹脂シロップ。
【請求項6】
常温硬化型開始剤が、0.05重量部乃至5重量部含まれることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂シロップ。
【請求項7】
金属水酸化物、3級アミン、及び金属塩からなる群から選択される一種以上の促進剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の樹脂シロップ。
【請求項8】
高温硬化型開始剤が、t−ブチルパーベンゾエート、t−ブチルパーイソプロピルカーボネート、t−ブチルパー−2−エチルヘキサノエート、及び1,1−ジ−t−ブチルパー−2,2,5−トリメチルシクロヘキサンからなる群から選択される一種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂シロップ。
【請求項9】
高温硬化型開始剤が、0.1重量部乃至5.0重量部含まれることを特徴とする請求項1に記載の樹脂シロップ。
【請求項10】
増粘剤を、1重量部乃至10重量部の量でさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の樹脂シロップ。
【請求項11】
増粘剤が、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化カルシウムからなる群から選択される一種以上であることを特徴とする、請求項10に記載の樹脂シロップ。
【請求項12】
無機充填剤、架橋剤、連鎖移動剤、消泡剤、顔料、染料、カップリング剤、内部離型剤、紫外線安定剤、重合禁止剤、耐収縮剤、及びチップからなる群から選択される一種以上をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の樹脂シロップ。
【請求項13】
炭素数1乃至20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、エチレン、塩化ビニル、フッ化ビニル、1,3−ブタジエン、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルエステル、アクリル酸、N−ビニルピロリドン、ジクロロエテン、クロロスチレン、及びアクリロニトリルからなる群から選択される一種以上の単量体をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の樹脂シロップ。
【請求項14】
粘度が500cps乃至20,000cpsであることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂シロップ。
【請求項15】
請求項1〜請求項14の何れか一項による樹脂シロップの硬化物を含む、人造大理石。
【請求項16】
請求項1〜請求項14の何れか一項による樹脂シロップを熟成させる第1段階と、
第1段階で熟成された樹脂シロップをプレス成形する第2段階と
を含む、人造大理石の製造方法。
【請求項17】
第1段階が、
(1) 樹脂シロップを50℃乃至70℃の温度で1時間乃至3時間処理する段階、
(2) 段階(1)に引き続き、樹脂シロップを20℃乃至40℃の温度で処理する段階
を含むことを特徴とする、請求項16に記載の人造大理石の製造方法。
【請求項18】
第2段階におけるプレス成形を、90℃乃至110℃の成形温度、及び20乃至50psi/cm2の成形圧力で、10分乃至20分間行うことを特徴とする、請求項16に記載の人造大理石の製造方法。

【公表番号】特表2012−504678(P2012−504678A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529988(P2011−529988)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【国際出願番号】PCT/KR2009/004993
【国際公開番号】WO2010/041819
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(510244710)エルジー・ハウシス・リミテッド (17)
【Fターム(参考)】