説明

樹脂シート製造装置、樹脂シート製造方法、樹脂シートおよび表示素子用樹脂基板

【課題】本発明の課題は、表面の凹凸が従来より低減された樹脂シートを提供することである。
【解決手段】本発明に係る樹脂シート製造装置200は、送り部210と、張り合わせ部230と、硬化部240とを備える。送り部210は、樹脂前駆体シート130を一方向に送る。樹脂前駆体シート130は、樹脂前駆体を含むシートである。張り合わせ部230は、樹脂前駆体シート130に支持体140を張り合わせる。硬化部240は、張り合わせ部230と同じ位置、または、張り合わせ部230の樹脂前駆体シート130の送り方向下流側であって張り合わせ部230の近傍の位置に配置される。また、硬化部240は、樹脂前駆体シート130の少なくとも幅方向の両端部分または両端付近部分の樹脂前駆体を硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シート製造装置、樹脂シート製造方法、樹脂シートおよび表示素子用樹脂基板に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、加熱により硬化する透明樹脂の前駆体(以下、「樹脂前駆体」という)が含浸されるガラス布帛(以下、「樹脂前駆体シート」という)から樹脂シートを製造する場合、樹脂前駆体シート中の樹脂前駆体を加熱装置によって熱硬化させることが多い(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−105287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した方法で製造された樹脂シートの表面には、凹凸が生じることが多い。そのため、この樹脂シートを表示素子用樹脂基板として用いる場合、樹脂シートの表面の凹凸によって像の歪みが発生しやすい。よって、表示素子用樹脂基板の表示品位が低下してしまうという問題がある。
【0005】
本発明の課題は、表面の凹凸が従来より低減される樹脂シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)
本発明に係る樹脂シート製造装置は、送り部と、張り合わせ部と、硬化部とを備える。送り部は、樹脂前駆体シートを一方向に送る。樹脂前駆体シートは、樹脂前駆体を含むシートである。なお、樹脂前駆体シートは、樹脂前駆体をシート全体に含んでいてもよいし、樹脂前駆体をシート表面に含んでいてもよい。張り合わせ部は、樹脂前駆体シートに支持体を張り合わせる。硬化部は、張り合わせ部と同じ位置、または、張り合わせ部の樹脂前駆体シートの送り方向下流側であって張り合わせ部の近傍の位置に配置される。なお、ここでいう「近傍」は、支持体が樹脂前駆体シートに張り合わされたときの状態を概ね維持している位置を指す。また、硬化部は、樹脂前駆体シートの少なくとも幅方向の両端部分または両端付近部分の樹脂前駆体を硬化させる。なお、樹脂前駆体シートとは、シートの全部または一部が半硬化されたもの、または、シートの一部が未硬化であるものを指す。また、樹脂シートとは、シートの全部の樹脂前駆体が全硬化されたものを指す。
【0007】
支持体と樹脂前駆体シートとの張り合わせと同時または直後に、硬化部は樹脂前駆体を硬化させる。そのため、樹脂前駆体シートが支持体で抑え込まれて、樹脂前駆体シートの表面凹凸が低減された状態を保持しながら、樹脂前駆体が硬化される。よって、樹脂シートの表面凹凸は従来より低減される。
【0008】
(2)
上述(1)の樹脂シート製造装置は、剥離部をさらに備えることが好ましい。剥離部は、硬化部の樹脂前駆体シートまたは樹脂シートの送り方向下流側に配置される。そして、この剥離部は、樹脂前駆体シートまたは樹脂シートから支持体を剥離させる。なお、樹脂前駆体シートは、シートの全部または一部が半硬化されたもの、または、シートの一部が未硬化であるものを指す。また、樹脂シートは、シートの全部の樹脂前駆体が全硬化されたものを指す。
【0009】
剥離部は、樹脂前駆体シートまたは樹脂シートから支持体を剥離させる。そして、剥離時には、樹脂前駆体シートまたは樹脂シートの表面の樹脂前駆体は、支持体によって、表面凹凸が低減された状態で既に硬化している。そのため、樹脂シートの表面凹凸は従来より低減される。
【0010】
(3)
上述(2)の樹脂シート製造装置は、第2硬化部をさらに備えることが好ましい。上述(2)の硬化部は、第1硬化部である。第2硬化部は、第1硬化部の樹脂前駆体シートの送り方向下流側に配置される。また、第2硬化部は、樹脂前駆体シートの幅方向全体の樹脂前駆体を硬化させる。剥離部は、第2硬化部の樹脂前駆体シートまたは樹脂シートの送り方向下流側に配置される。
【0011】
第1硬化部は、少なくとも、樹脂前駆体シートが支持体で抑え込まれた状態を移動中などであっても維持できる程度まで、樹脂前駆体を硬化させる。そのため、樹脂前駆体シートが支持体で抑え込まれた状態を維持したまま、第2硬化部は、樹脂前駆体シートの樹脂前駆体を硬化させる。よって、製造装置の構造上、張り合わせ部と同じ位置、または張り合わせ部の近傍の位置に第2硬化部が配置できない場合、第1硬化部が設けられることで、ユーザは、第2硬化部を任意の位置に配置することができる。
【0012】
(4)
上述(2)または(3)の樹脂シート製造装置では、剥離部はロール(剥離ロール)を有することが好ましい。ロールは、樹脂前駆体シートまたは樹脂シートに張り合わされている支持体に接触する。また、剥離部は、ロールの送り方向を含む面に対して90°以上となる方向に、樹脂前駆体シートまたは樹脂シートから剥離している支持体を、ロールを介して引っ張る。
【0013】
剥離部は、ロールの送り方向を含む面に対して90°以上となる方向に、樹脂前駆体シートまたは樹脂シートから剥離している支持体を、ロールを介して引っ張る。これにより、樹脂前駆体または樹脂前駆体が硬化した樹脂が、剥離の際に支持体に付着すること(トラレ)が抑制される。そのため、樹脂シートの表面の凹凸は従来より低減される。ここで、ロールの送り方向を含む面は、ロールから送り出される樹脂前駆体シートまたは樹脂シートの送り方向を含む面であり、ロールから送り出される樹脂前駆体シートまたは樹脂シートの表面と同一または平行である。
【0014】
(5)
上述(4)の樹脂シート製造装置では、剥離部は、ロールの送り方向を含む面に対して120°以上180°以下となる方向に、樹脂前駆体シートまたは樹脂シートから剥離している支持体を、ロールを介して引っ張ることが好ましい。
【0015】
剥離部は、ロールの送り方向を含む面に対して120°以上180°以下となる方向に、樹脂前駆体シートまたは樹脂シートから剥離している支持体を、ロールを介して引っ張る。これにより、樹脂前駆体または樹脂前駆体が硬化した樹脂が、剥離の際に支持体に付着すること(トラレ)がより抑制される。
【0016】
(6)
上述(4)または(5)の樹脂シート製造装置では、ロールの直径は100mm以下であることが好ましい。
【0017】
直径が100mm以下であるロールによって、樹脂前駆体または樹脂前駆体が硬化した樹脂が、剥離の際に支持体に付着すること(トラレ)がより抑制される。
【0018】
(7)
上述(6)の樹脂シート製造装置では、ロールの直径は50mm以下であることが好ましい。
【0019】
直径が50mm以下であるロールによって、樹脂前駆体または樹脂前駆体が硬化した樹脂が、剥離の際に支持体に付着すること(トラレ)がさらに抑制される。
【0020】
(8)
上述(4)〜(7)のいずれかの樹脂シート製造装置では、ロールの表面温度は0℃以上100℃以下であることが好ましい。
【0021】
表面温度が0℃以上であるロールは、樹脂前駆体シートまたは樹脂シートから支持体を剥離しやすくするため、樹脂シートの表面に凹凸が発生しにくい。また、表面温度が100℃以下であるロールは、支持体および樹脂前駆体シートに対して熱による影響を与えにくい。そのため、支持体が樹脂前駆体シートまたは樹脂シートから剥離される際に、樹脂シートの表面に凹凸が発生しにくい。
【0022】
(9)
上述(4)〜(8)のいずれかの樹脂シート製造装置では、ロールは第1ロールおよび第2ロールであることが好ましい。張り合わせ部は、樹脂前駆体シートの両方の面に、それぞれ支持体を張り合わせる。第1ロールは、樹脂前駆体シートまたは樹脂前駆体シートが硬化した樹脂シートの一方の面に張り合わされている支持体と接触する。第2ロールは、樹脂前駆体シートまたは樹脂シートの他方の面に張り合わされている支持体と接触する。また、第2ロールは、第1ロールの送り方向(第1ロールから送り出される樹脂前駆体シートまたは樹脂シートの送り方向)上流側または下流側に配置される。
【0023】
第1ロールによって支持体が樹脂前駆体シートまたは樹脂シートから剥離される位置と、第2ロールによって支持体が樹脂前駆体シートまたは樹脂シートから剥離される位置とが異なる。そのため、支持体の剥離中に樹脂前駆体シートまたは樹脂シートの移動時の動きが乱れにくくなることでばたつきにくくなり、支持体は安定して樹脂前駆体シートまたは樹脂シートから剥離される。
【0024】
(10)
本発明に係る樹脂シート製造方法は、張り合わせ工程と、硬化工程とを含む。張り合わせ工程では、樹脂前駆体シートに支持体が張り合わされる。樹脂前駆体シートは、樹脂前駆体を含むシートである。硬化工程では、張り合わせ工程中または張り合わせ工程終了後、樹脂前駆体シートの少なくとも幅方向の両端部分または両端付近部分の樹脂前駆体が硬化される。
【0025】
支持体と樹脂前駆体シートとの張り合わせと同時または直後に、樹脂前駆体の少なくとも一部が硬化される。そのため、樹脂前駆体シートが支持体で抑え込まれて、樹脂前駆体シートの表面凹凸が低減された状態を保持しながら、樹脂前駆体は硬化させられる。よって、樹脂シートの表面凹凸は従来より低減される。
【0026】
(11)
上述(10)の樹脂シート製造方法は、剥離工程をさらに含むことが好ましい。剥離工程では、硬化工程終了後、樹脂前駆体シートまたは樹脂シートから支持体が剥離される。
【0027】
剥離工程では、樹脂前駆体シートまたは樹脂シートから支持体が剥離される。そして、剥離時には、樹脂前駆体シートまたは樹脂シートの表面の樹脂前駆体は、支持体によって表面凹凸が低減された状態で既に硬化している。そのため、樹脂シートの表面凹凸は従来より低減される。
【0028】
(12)
上述(11)の樹脂シート製造方法は、第2硬化工程をさらに含むことが好ましい。上述(11)の硬化工程は、第1硬化工程である。第2硬化工程では、第1硬化工程終了後、樹脂前駆体シートの幅方向全体の樹脂前駆体が硬化される。第2硬化工程終了後に、剥離工程が行われる。
【0029】
第1硬化工程では、少なくとも、樹脂前駆体シートが支持体で抑え込まれた状態を移動中などであっても維持できる程度まで、樹脂前駆体が硬化される。そのため、樹脂前駆体シートが支持体で抑え込まれた状態を維持したまま、第2硬化工程では、樹脂前駆体シートの樹脂前駆体が硬化される。そのため、ユーザは、第2硬化工程を任意のタイミングで行うことができる。
【0030】
(13)
上述(11)または(12)の樹脂シート製造方法において、剥離工程では、樹脂前駆体シートまたは樹脂シートから剥離している支持体が、ロール(剥離ロール)を介して、ロールの送り方向を含む面に対して90°以上となる方向に引っ張られることが好ましい。ロールは、樹脂前駆体シートまたは樹脂シートに張り合わされている支持体に接触する。
【0031】
樹脂前駆体シートまたは樹脂シートから剥離している支持体が、ロールを介して、ロールの送り方向を含む面に対して90°以上となる方向に引っ張られる。これにより、樹脂前駆体または樹脂前駆体が硬化した樹脂が、剥離の際に支持体に付着すること(トラレ)が抑制される。そのため、この樹脂シート製造方法を用いることで、樹脂シートの表面の凹凸は従来より低減される。
【0032】
(13)
上述(11)また(12)の樹脂シート製造方法において、剥離工程では、樹脂前駆体シートまたは樹脂シートから剥離している支持体が、ロールを介して、ロールの送り方向を含む面に対して120°以上180°以下となる方向に引っ張られることが好ましい。ロールは、樹脂前駆体シートまたは樹脂シートに張り合わされている支持体に接触する。
【0033】
樹脂前駆体シートまたは樹脂シートから剥離している支持体が、ロールを介して、ロールの送り方向を含む面に対して120°以上180°以下となる方向に引っ張られる。これにより、樹脂前駆体または樹脂前駆体が硬化した樹脂が、剥離の際に支持体に付着すること(トラレ)がより抑制される。
【0034】
(14)
上述(10)〜(14)のいずれかの樹脂シート製造方法において、張り合わせ工程では、樹脂前駆体シートの両方の面に、それぞれ支持体が張り合わされることが好ましい。剥離工程では、一方の支持体が、他方の支持体と異なる位置で剥離される。
【0035】
一方の支持体が樹脂前駆体シートから剥離される位置と、他方の支持体が樹脂前駆体シートから剥離される位置とが異なる。そのため、支持体の剥離中に樹脂前駆体シートまたは樹脂シートの移動時の動きが乱れにくくなることでばたつきにくくなり、支持体は安定して樹脂前駆体シートまたは樹脂シートから剥離される。
【0036】
(15)
本発明に係る樹脂シートは、上述(10)〜(17)のいずれかの樹脂シート製造方法で製造される。
【0037】
上記の樹脂シート製造方法で製造された樹脂シートでは、表面の凹凸が従来より低減される。
【0038】
(16)
本発明に係る表示素子用樹脂基板は、上述(15)の樹脂シートを備える。
【0039】
この表示素子用樹脂基板は、表面の凹凸が従来より低減された樹脂シートを用いて作製される。このため、表示素子用樹脂基板は、樹脂シートの表面の凹凸による像の歪みを低減させる。よって、この表示素子用樹脂基板は、表示品位の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態に係る樹脂シートの断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る樹脂シート製造装置の構成(側面視)を示す概念図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る樹脂シート製造装置の硬化部付近の平面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る樹脂シート製造装置の構成(側面視)を示す概念図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る樹脂シート製造装置の第1硬化部および第2硬化部付近の平面図である。
【図6】本発明の第2実施形態の変形例に係る樹脂シート製造装置の第1硬化部および第2硬化部付近の平面図である。
【図7】本発明の第2実施形態の変形例に係る樹脂シート製造装置の第1硬化部および第2硬化部付近の平面図である。
【図8】本発明の第2実施形態の変形例に係る樹脂シート製造装置の第1硬化部および第2硬化部付近の平面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る樹脂シートの断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る樹脂シート製造装置の構成(側面視)を示す概念図である。
【図11】図10に示した樹脂シート製造装置のA部分の拡大図である。
【図12】図10に示した樹脂シート製造装置のB部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
−第1実施形態−
本発明の第1実施形態に係る樹脂シート製造方法は、含浸工程と、張り合わせ工程と、硬化工程と、剥離工程とを含む。各工程は、含浸工程、張り合わせ工程、硬化工程、剥離工程の順に行われる。なお、樹脂シート製造方法は、上記以外の工程を含んでもよい。以下、樹脂シート、樹脂シート製造装置、および樹脂シート製造方法について、それぞれ詳しく説明する。
【0042】
<樹脂シート>
図1に示されるように、樹脂シート100は、後述する樹脂前駆体を含む樹脂前駆体組成物111(図3参照)が硬化して形成される透明樹脂110と、透明樹脂110で覆われたコアシート120とから構成される。この樹脂シート100は、例えば、表示素子用樹脂基板として用いられる。
【0043】
コアシート120は、例えば、樹脂で覆われた布帛から構成される。この樹脂として、例えば、上記の透明樹脂110と同様のものが用いられる。コアシートには、任意の透明な繊維材料、例えば、無機繊維であるガラス繊維などから形成される布帛等が用いられる。なお、透明な繊維材料は、完全に無色透明な繊維材料だけでなく、実質的に無色透明な繊維材料も含む。
【0044】
ガラス繊維から構成される布帛は、ガラスクロス、ガラス不織布などのガラス布帛である。ガラス繊維がクロス材である場合、ガラス繊維の織り組織として、平織り、ななこ織り、朱子織り、綾織り等が挙げられる。ガラス繊維の素材として、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、Tガラス、NEガラス、石英ガラス、低誘導率ガラスおよび高誘導率ガラス等が用いられる。
【0045】
透明樹脂110の材料である樹脂前駆体組成物には、熱硬化開始剤およびエネルギー線硬化開始剤の少なくとも一方と、樹脂前駆体とが含有される。樹脂前駆体は、活性種の発生により硬化反応が開始されるものであり、例えば、エポキシ系樹脂前駆体、アクリル系樹脂前駆体、フェノール樹脂前駆体、シアネート樹脂前駆体などである。エポキシ系樹脂前駆体としては、例えば、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートなどの前駆体が用いられる。アクリル系樹脂前駆体としては、例えば熱硬化性または光硬化性のアクリル系樹脂の前駆体などが用いられる。なお、透明樹脂110は、完全に無色透明な樹脂だけでなく、実質的に無色透明な樹脂も含む。
【0046】
熱硬化開始剤は、加熱により活性種を生成するものであり、カチオン系のものが好ましい。熱硬化開始剤を含有する樹脂前駆体組成物は、加熱によって活性種を生成することで硬化する。エネルギー線硬化開始剤は、エネルギー線照射により活性種を生成するものであり、カチオン系のものが好ましい。具体的なエネルギー線硬化開始剤として、紫外線(UV)硬化開始剤、電子線(EB)硬化開始剤、および赤外線(IR)硬化開始剤などが用いられる。エネルギー線硬化開始剤を含有する樹脂前駆体組成物は、エネルギー線照射によって活性種を生成して硬化する。
【0047】
<樹脂シート製造装置>
図2、3に示されるように、樹脂シート100を製造するための樹脂シート製造装置200は、送り部210と、浸漬槽220と、張り合わせ部230と、硬化部240と、剥離部250とを備える。
【0048】
送り部210は、コンベアまたはローラ等から成り、ロール状のコアシート120を巻き出し、浸漬槽220、張り合わせ部230、硬化部240、剥離部250の順にコアシート120を一方向(白抜き矢印方向)に送る。
【0049】
浸漬槽220は、樹脂前駆体組成物が溜められた槽である。コアシート120が浸漬槽220の槽内を通過すると、コアシート120に樹脂前駆体組成物が含浸し、樹脂前駆体組成物を含むシートである樹脂前駆体シート130が得られる。
【0050】
張り合わせ部230は、樹脂前駆体シート130に支持体140を圧力を加えつつ貼り合わせる送り出しロール231等の複数のロールから構成される。送り出しロール231として、金属ロール、ゴムロール等が用いられる。
【0051】
支持体140は、樹脂シート100または樹脂前駆体シート130に平滑面を転写するためのものである。支持体140として、樹脂シート、金属ベルト、金属箔、ガラス板などが用いられる。樹脂シートとして、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリイミド、ポリエステル等から成るフィルムが用いられる。金属ベルトとして、エンドレスステンレスベルト等が用いられる。金属箔として、ステンレス箔、銅箔、アルミ箔などが用いられる。
【0052】
硬化部240は、エネルギー線の照射、および加熱の少なくとも一方を、支持体140付きの樹脂前駆体シート130に対して行い、樹脂前駆体シート130の幅方向全体の樹脂前駆体組成物を硬化させる。すなわち、硬化部240は、エネルギー線の照射のみで樹脂前駆体組成物を硬化させてもよいし、加熱のみで樹脂前駆体組成物を硬化させてもよいし、エネルギー線の照射および加熱で樹脂前駆体組成物を硬化させてもよい。硬化部240から照射されるエネルギー線として、紫外線(UV)、電子線(EB)、または赤外線(IR)などの中から、樹脂前駆体組成物に含まれるエネルギー線硬化開始剤に対応するものが用いられる。
【0053】
硬化部240は、張り合わせ部230の樹脂前駆体シートの送り方向下流側であって張り合わせ部230の近傍の位置に配置される。ここでいう「近傍」は、支持体140が樹脂前駆体シート130に張り合わされたときの状態を概ね維持している位置を指す。なお、硬化部240は、張り合わせ部230と同じ位置であってもよい。
【0054】
剥離部250は、樹脂シート100から支持体140を剥離する剥離ロール251等の複数のロールから構成される。剥離ロール251として、金属ロール、ゴムロール等が用いられる。この樹脂シート100は、シートの全部の樹脂前駆体組成物が全硬化した透明樹脂110を有するものを指す。なお、剥離ロール251は、樹脂シート100から支持体140を剥離するのではなく、硬化部240で一部が硬化された樹脂前駆体シート130から支持体140を剥離してもよい。この場合の樹脂前駆体シート130は、シートの全部または一部が半硬化されたもの、または、シートの一部が未硬化であるものを指す。
【0055】
<樹脂シート製造方法>
樹脂シート製造方法について、図2、3を用いて説明する。含浸工程では、送り部210によって、ロール状のコアシート120が浸漬槽220へ送られる。そして、浸漬槽220中の樹脂前駆体組成物がコアシート120に含浸され、樹脂前駆体シート130が得られる。そして、樹脂前駆体シート130は、張り合わせ部230へ送られる。
【0056】
張り合わせ工程では、張り合わせ部230によって、樹脂前駆体シート130の両面に支持体140が張り合わされる。具体的に、支持体140は、送り出しロール231で圧力を加えられつつ、樹脂前駆体シート130に張り合わされる。なお、樹脂前駆体シート130の片面にのみ支持体140が張り合わされてもよい。
【0057】
硬化工程では、硬化部240によって、張り合わせ工程終了後10秒以内に、樹脂前駆体シート130の幅方向全体の樹脂前駆体組成物が全硬化され、樹脂シート100が得られる。図3の灰色箇所は、樹脂前駆体シート130が硬化部240で全硬化された箇所である。なお、張り合わせ工程終了後7秒以内に、樹脂前駆体シート130の幅方向全体の樹脂前駆体組成物が硬化されることが好ましく、張り合わせ工程終了後5秒以内に、樹脂前駆体シート130の幅方向全体の樹脂前駆体組成物が硬化されることがより好ましく、張り合わせ工程終了後3秒以内に、樹脂前駆体シート130の幅方向全体の樹脂前駆体組成物が硬化されることがさらに好ましい。なお、硬化工程は、張り合わせ工程と同時に、かつ、張り合わせ工程と同じ場所で行ってもよい。
【0058】
剥離工程では、剥離部250によって、硬化工程終了後、樹脂シート100から支持体140が剥離される。得られた樹脂シート100は、ロール状に巻き取られる。剥離時に、樹脂シート100の表面の樹脂前駆体組成物は、支持体140によって表面凹凸が低減された状態で既に硬化している。この樹脂シート100は、シートの全部の樹脂前駆体組成物が全硬化されたものを指す。
【0059】
なお、硬化工程では、樹脂前駆体シート130の幅方向全体の樹脂前駆体組成物が全硬化されていなくてもよい。この場合、剥離工程では、剥離部250によって、硬化工程終了後、樹脂前駆体シート130から支持体140が剥離される。この樹脂前駆体シート130は、シートの全部または一部が半硬化されたもの、または、シートの一部が未硬化であるものを指す。
【0060】
<本実施形態における効果>
支持体140と樹脂前駆体シート130との張り合わせと同時または直後に、硬化部240は樹脂前駆体組成物の少なくとも一部を硬化させる。そのため、樹脂前駆体シート130が支持体140で抑え込まれて、樹脂前駆体シート130の表面凹凸が低減された状態を保持しながら、樹脂前駆体組成物が硬化される。よって、樹脂シート100の表面凹凸は従来より低減される。
【0061】
剥離部250は、樹脂前駆体シート130または樹脂シート100から支持体140を剥離させる。そして、剥離時には、樹脂前駆体シート130または樹脂シート100の表面の樹脂前駆体組成物は、支持体140によって表面凹凸が低減された状態で既に硬化している。そのため、樹脂シート100の表面凹凸は従来より低減される。
【0062】
この樹脂シート製造方法で製造される樹脂シート100では、表面の凹凸が従来より低減される。
【0063】
この表示素子用樹脂基板は、表面の凹凸が従来より低減された樹脂シート100を用いて作製される。このため、表示素子用樹脂基板は、樹脂シート100の表面の凹凸による像の歪みを低減させる。よって、この表示素子用樹脂基板は、表示品位の低下を抑制することができる。
【0064】
<変形例>
(A)
この樹脂シート製造方法では、剥離工程が省略されてもよい。そのため、硬化工程後の樹脂前駆体シート130または樹脂シート100は、支持体140を備えたままであってもよい。この場合、樹脂シート製造装置200は、剥離部250を備えていなくてもよい。さらに、透明層、平滑層、バリア層などを含む支持体140が用いられることで、樹脂シート100は、透明性、平滑性、バリア性などの機能を有する機能性シートとなる。
【0065】
(B)
樹脂前駆体シート130は、樹脂前駆体組成物が含浸されたコアシート120に代えて、コアシート表面に樹脂前駆体組成物が塗布されたシートであってもよい。
【0066】
−第2実施形態−
本発明の第2実施形態に係る樹脂シート製造方法は、第1実施形態に係る樹脂シート製造方法と異なり、硬化工程を第1硬化工程とし、さらに第2硬化工程を追加した。具体的に、本実施形態の樹脂シート製造方法は、含浸工程と、張り合わせ工程と、第1硬化工程と、第2硬化工程と、剥離工程とを含む。各工程は、含浸工程、張り合わせ工程、第1硬化工程、第2硬化工程、剥離工程の順に行われる。なお、樹脂シート製造方法は、上記以外の工程を含んでもよい。以下、樹脂シート製造装置、および樹脂シート製造方法について、それぞれ詳しく説明する。なお、第2実施形態に係る樹脂シート製造装置および樹脂シート製造方法と、上記の第1実施形態に係る樹脂シート製造装置および樹脂シート製造方法とで共通する構成については、適宜その説明を省略する。
【0067】
<樹脂シート製造装置>
図4、5に示されるように、本発明の第2実施形態に係る樹脂シート製造装置200aは、送り部210と、浸漬槽220と、張り合わせ部230と、第1硬化部241と、第2硬化部242と、剥離部250とを備える。
【0068】
第1硬化部241、第2硬化部242は、エネルギー線の照射、および加熱の少なくとも一方を、樹脂前駆体シート130に対して行い、樹脂前駆体組成物を硬化させる。
【0069】
第1硬化部241は、張り合わせ部230の樹脂前駆体シート130の送り方向下流側であって張り合わせ部230の近傍の位置に配置される。第1硬化部241は、樹脂前駆体シート130の少なくとも幅方向の両端部分または両端付近部分の樹脂前駆体組成物を硬化させる。なお、第1硬化部241は、張り合わせ部230と同じ位置であってもよい。
【0070】
第2硬化部242は、第1硬化部241の樹脂前駆体シート130の送り方向下流側に配置される。第2硬化部242は、樹脂前駆体シート130の幅方向全体の樹脂前駆体組成物を硬化させる。剥離部250は、第2硬化部242の樹脂前駆体シート130の送り方向下流側に配置される。
【0071】
<樹脂シート製造方法>
樹脂シート製造方法について、図4、5を用いて説明する。含浸工程では、送り部210によって、ロール状のコアシート120は、送り部210で巻き出されて浸漬槽220へ送られる。そして、浸漬槽220中の樹脂前駆体組成物がコアシート120に含浸され、樹脂前駆体シート130が得られる。そして、樹脂前駆体シート130は、張り合わせ部230へ送られる。
【0072】
張り合わせ工程では、張り合わせ部230によって、樹脂前駆体シート130の両面に支持体140が張り合わされる。具体的に、支持体140は、送り出しロール231で圧力を加えられつつ、樹脂前駆体シート130に張り合わされる。なお、樹脂前駆体シート130の片面にのみ支持体140が張り合わされてもよい。
【0073】
第1硬化工程では、第1硬化部241によって、張り合わせ工程終了後10秒以内に、樹脂前駆体シート130の幅方向全体の樹脂前駆体組成物が半硬化される。図5の薄い灰色箇所は、樹脂前駆体シート130が第1硬化部241で半硬化された箇所であり、濃い灰色箇所は、後述する樹脂前駆体シート130が第2硬化部242で全硬化された箇所である。なお、張り合わせ工程終了後7秒以内に、樹脂前駆体シート130の幅方向全体の樹脂前駆体組成物が硬化されることが好ましく、張り合わせ工程終了後5秒以内に、樹脂前駆体シート130の幅方向全体の樹脂前駆体組成物が硬化されることがより好ましく、張り合わせ工程終了後3秒以内に、樹脂前駆体シート130の幅方向全体の樹脂前駆体組成物が硬化されることがさらに好ましい。なお、第1硬化工程は、張り合わせ工程と同時に、かつ、張り合わせ工程と同じ場所で行ってもよい。
【0074】
第2硬化工程では、第1硬化工程終了後に、樹脂前駆体シート130の幅方向全体の樹脂前駆体組成物が全硬化され、樹脂シート100が得られる。剥離工程では、剥離部250によって、第2硬化工程終了後、樹脂シート100から支持体140が剥離される。得られた樹脂シート100は、ロール状に巻き取られる。剥離時に、樹脂シート100の表面の樹脂前駆体組成物は、支持体140によって表面凹凸が低減された状態で既に硬化している。この樹脂シート100は、シートの全部の樹脂前駆体組成物が全硬化されたものを指す。
【0075】
なお、第2硬化工程では、樹脂前駆体シート130の幅方向全体の樹脂前駆体組成物が全硬化されていなくてもよい。この場合、剥離工程では、剥離部250によって、硬化工程終了後、樹脂前駆体シート130から支持体140が剥離される。この樹脂前駆体シート130は、シートの全部または一部が半硬化されたもの、または、シートの一部が未硬化であるものを指す。なお、具体的には、半硬化とは樹脂前駆体の反応率が50%未満の状態を指し、全硬化とは反応率が50%以上の状態を指す。
【0076】
<本実施形態における効果>
第1硬化部241は、少なくとも、樹脂前駆体シート130が支持体140で抑え込まれた状態を移動中などであっても維持できる程度まで、樹脂前駆体組成物を硬化させる。そのため、樹脂前駆体シート130が支持体140で抑え込まれた状態を維持したまま、第2硬化部242は、樹脂前駆体シート130の樹脂前駆体組成物を硬化させる。よって、製造装置の構造上、張り合わせ部230と同じ位置、または張り合わせ部230の近傍の位置に第2硬化部242が配置できない場合、第1硬化部241が設けられることで、ユーザは、第2硬化部242を任意の位置に配置することができる。
【0077】
第1硬化工程では、少なくとも、樹脂前駆体シート130が支持体140で抑え込まれた状態を移動中などであっても維持できる程度まで、樹脂前駆体組成物が硬化される。そのため、樹脂前駆体シート130が支持体140で抑え込まれた状態を維持したまま、第2硬化工程では、樹脂前駆体シート130の樹脂前駆体組成物が硬化される。そのため、ユーザは、第2硬化工程を任意のタイミングで行うことができる。
【0078】
<変形例>
(A)
第1硬化部241は、樹脂前駆体シート130の一部の樹脂前駆体組成物、例えば樹脂前駆体シート130の幅方向の両端部分または両端付近部分を含む一部の樹脂前駆体組成物を硬化させてもよい。
より具体的には、図6に示されるように、第1硬化部241は、樹脂前駆体シート130の幅方向の両端部分131の樹脂前駆体組成物を半硬化させてもよい。また、図7に示されるように、第1硬化部241は、樹脂前駆体シート130の幅方向の両端付近部分132の樹脂前駆体組成物を半硬化させてもよいし、図8に示されるように、第1硬化部241は、樹脂前駆体シート130の長手方向に沿って縞状に樹脂前駆体組成物を半硬化させてもよい。図6〜8の薄い灰色箇所は、樹脂前駆体シート130が第1硬化部241で半硬化された箇所であり、濃い灰色箇所は、樹脂前駆体シート130が第2硬化部242で全硬化された箇所である。ここでいう「両端部分」は、シートの両端を含む一部の領域であり、「両端付近部分」は、シートの両端を含まない、シート両端近傍の領域である。両端部分及び両端付近部分が占める領域の幅は、いずれも、シート幅全体の長さの0.1%以上10%以下であってよい。また、両端付近部分を占める領域のシート両端側の外縁は、シート幅全体の長さの0.1%以上7.5%以下となる距離だけ、シート両端から離れていてよい。また、第1硬化部241において、樹脂前駆体シート130の幅方向の一部の樹脂前駆体組成物を全硬化させてもよい。
【0079】
(B)
この樹脂シート製造方法では、剥離工程が省略されてもよい。そのため、硬化工程後の樹脂前駆体シート130または樹脂シート100は、支持体140を備えたままであってもよい。この場合、樹脂シート製造装置200は、剥離部250を備えていなくてもよい。
【0080】
(C)
樹脂前駆体シート130は、樹脂前駆体組成物が含浸されたコアシート120に代えて、表面に樹脂前駆体組成物が塗布されたシートであってもよい。
【0081】
―第3実施形態−
本発明の第3実施形態に係る樹脂シート製造方法は、含浸工程に替えて供給工程を含む。各工程は、供給工程、張り合わせ工程、硬化工程、剥離工程の順に行われる。なお、樹脂シート製造方法は、上記以外の工程を含んでもよい。以下、樹脂シート製造装置、および樹脂シート製造方法について、それぞれ詳しく説明する。なお、第1実施形態、および第2実施形態に係る樹脂シート製造装置および樹脂シート製造方法と、上記の第1実施形態、および第2実施形態に係る樹脂シート製造装置および樹脂シート製造方法とで共通する構成については、適宜その説明を省略する。
【0082】
<樹脂シート>
図9に示されるように、樹脂シート100aは、樹脂前駆体を含む樹脂前駆体組成物111(図11参照)が硬化して形成される透明樹脂110と、透明樹脂110で覆われたコアシート120とから構成される。この樹脂シート100aは、例えば、表示素子用樹脂基板として用いられる。
【0083】
<樹脂シート製造装置>
図10に示されるように、樹脂シート100aを製造するための樹脂シート製造装置200bは、送り部210と、供給部225と、張り合わせ部230と、硬化部240と、剥離部250とを備える。
【0084】
送り部210は、コンベアまたはローラ等から成り、ロール状のコアシート120を巻き出し、供給部225、張り合わせ部230、硬化部240、剥離部250の順にコアシート120を一方向(白抜き矢印方向)に送る。
【0085】
図10に示される供給部225は、ダイコートによって樹脂前駆体組成物111(図11参照)をコアシート120の両面に供給する。樹脂前駆体組成物111を供給する方法として、ダイコート以外に、グラビアコート、ディスペンス、噴霧などによる供給方法が挙げられ、材料の種類などにより最適な方法が適宜選択される。
【0086】
図10、11に示されるように、張り合わせ部230は、第1送り出しロール232および第2送り出しロール233等の複数のロールから構成される。第1送り出しロール232および第2送り出しロール233は、コアシート120に圧力を加えつつ、コアシート120と支持体140とを貼り合わせる。このとき、樹脂前駆体組成物111は、コアシート120と支持体140との間に配置される。そして、コアシート120は、表面に樹脂前駆体組成物111の層が設けられることで樹脂前駆体シート130となる。
【0087】
第1送り出しロール232は、側面視において、支持体140を介して樹脂前駆体シート130の上側の面と接する。第2送り出しロール233は、側面視において、支持体140を介して樹脂前駆体シート130の下側の面と接する。第1送り出しロール232および第2送り出しロール233として、金属ロール、ゴムロール等が用いられる。
【0088】
図10、12に示されるように、剥離部250は、樹脂シート100aから支持体140を剥離する第1剥離ロール252および第2剥離ロール253等の複数のロールから構成される。第1剥離ロール252および第2剥離ロール253の直径は、100mm以下である。また、第1剥離ロール252および第2剥離ロール253の形状を保持する観点、および樹脂前駆体組成物111(図11参照)または樹脂前駆体組成物111が硬化した透明樹脂110(図12参照)が、剥離の際に支持体140に付着すること(以下、「トラレ」という)を抑制する観点から、第1剥離ロール252および第2剥離ロール253の直径は、5mm以上50mm以下であることが好ましい。なお、第1剥離ロール252の直径は、第2剥離ロール253の直径と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0089】
剥離しやすくすると共に、樹脂前駆体シート130への熱の影響を低減する観点から、第1剥離ロール252および第2剥離ロール253の表面温度は、0℃以上100℃以下であることが好ましく、10℃以上90℃以下であることがより好ましく、20℃以上80℃以下であることがさらに好ましい。なお、第1剥離ロール252の表面温度は、第2剥離ロール253の表面温度と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0090】
剥離部250は、硬化部240の樹脂前駆体シート130の送り方向下流側に配置される。第2剥離ロール253は、平面視において第1剥離ロール252と同じ位置に配置される。また、第1剥離ロール252は、側面視において、支持体140を介して樹脂前駆体シート130の上側の面と接する。第2剥離ロール253は、側面視において、支持体140を介して樹脂前駆体シート130の下側の面と接する。第1剥離ロール252および第2剥離ロール253として、金属ロール、ゴムロール等が用いられる。
【0091】
なお、第2剥離ロール253は、第1剥離ロール252が送り出す樹脂前駆体シート130または樹脂シート100aの送り方向下流側または上流側に配置されてもよい。これにより、第1剥離ロール252によって支持体140が樹脂前駆体シート130または樹脂シート100aから剥離される位置と、第2剥離ロール253によって支持体140が樹脂前駆体シート130または樹脂シート100aから剥離される位置とが異なる。そのため、支持体140の剥離中に樹脂前駆体シート130または樹脂シート100aがばたつきにくくなり、支持体140は安定して樹脂前駆体シート130または樹脂シート100aから剥離される。
【0092】
<樹脂シート製造方法>
樹脂シート製造方法について、図10〜12を用いて説明する。供給工程では、送り部210によって、ロール状のコアシート120が供給部225へ送られる。そして、供給部225は、ダイコートによってコアシート120の両面に樹脂前駆体組成物111を供給する(図10参照)。
【0093】
張り合わせ工程では、張り合わせ部230によって、コアシート120の両面に、樹脂前駆体組成物111を介して支持体140が張り合わされ、支持体140付きの樹脂前駆体シート130が得られる。具体的に、支持体140は、第1送り出しロール232および第2送り出しロール233で圧力を加えられつつ、樹脂前駆体シート130に張り合わされる。
【0094】
剥離工程では、剥離部250によって、硬化工程終了後、樹脂シート100aから支持体140が剥離される。この樹脂シート100aは、シートの全部の樹脂前駆体組成物111が全硬化されているものを指す。剥離時に、樹脂シート100aの表面の樹脂前駆体組成物111は、支持体140によって表面凹凸が低減された状態で既に硬化している。得られた樹脂シート100aは、ロール状に巻き取られる。
【0095】
具体的に、剥離部250は、第1剥離ロール252を介して、側面視において、上方側の支持体140を剥離した後、第2剥離ロール253を介して、側面視において、下方側の支持体140を剥離する。その他の剥離の条件については後述する。なお、剥離部250は、第2剥離ロール253を介して、下方側の支持体140を剥離した後、第1剥離ロール252を介して、上方側の支持体140を剥離してもよい。
【0096】
<剥離の条件>
図12に示されるように、支持体140を樹脂シート100aから剥離する際、第1剥離ロール252および第2剥離ロール253は、樹脂前駆体シート130に張り合わされていた(図11参照)支持体140すなわち樹脂シート100aに張り合わされている支持体140に接触している。
【0097】
図12に示されるように、剥離部250が第1剥離ロール252を介して支持体140を引っ張る方向と、第1剥離ロール252の送り方向すなわち第1剥離ロール252が送り出す樹脂シート100aの送り方向を含む面とがなす角度は、角度αである。また、剥離部250が第2剥離ロール253を介して支持体140を引っ張る方向と、第2剥離ロール253の送り方向すなわち第2剥離ロール253が送り出す樹脂シート100aの送り方向を含む面とがなす角度は、角度βである。トラレを抑制する観点から、角度αおよび角度βは、90°以上であることが好ましく、120°以上180°以下であることがより好ましく、150°以上180°以下であることがさらに好ましい。また、角度βは、角度αと同じ角度であってもよいし、異なる角度であってもよい。
【0098】
<本実施形態における効果>
剥離部250は、樹脂前駆体シート130または樹脂シート100aから剥離している支持体140を、第1剥離ロール252を介して、第1剥離ロール252の送り方向を含む面に対して90°以上となる方向に引っ張る。これにより、トラレが抑制される。そのため、樹脂シート100aの表面の凹凸は従来より低減される。
【0099】
剥離部250は、樹脂前駆体シート130または樹脂シート100aから剥離している支持体140を、第1剥離ロール252、第2剥離ロール253を介して、第1剥離ロール252の送り方向及び第2剥離ロール253の送り方向を含む面に対して120°以上180°以下となる方向に引っ張る。これにより、トラレがより抑制される。
【0100】
直径が100mm以下である第1剥離ロール252、第2剥離ロール253によって、トラレがより抑制される。また、直径が50mm以下である第1剥離ロール252、第2剥離ロール253によって、トラレがさらに抑制される。
【0101】
表面温度が0℃以上である第1剥離ロール252、第2剥離ロール253は、樹脂前駆体シート130または樹脂シート100aから支持体140を剥離しやすくするため、樹脂シート100aの表面に凹凸が発生しにくい。また、表面温度が100℃以下である第1剥離ロール252、第2剥離ロール253は、支持体140および樹脂前駆体シート130に対して熱による影響を与えにくい。そのため、支持体140が樹脂前駆体シート130または100aから剥離される際に、樹脂シート100aの表面に凹凸が発生しにくい。
【0102】
樹脂前駆体シート130または樹脂シート100aから剥離している支持体140が、第1剥離ロール252、第2剥離ロール253を介して、第1剥離ロール252及び第2剥離ロールの送り方向を含む面に対して90°以上となる方向に引っ張られる。これにより、トラレが抑制される。そのため、この樹脂シート製造方法を用いることで、樹脂シート100aの表面の凹凸は従来より低減される。
【0103】
樹脂前駆体シート130または樹脂シート100aから剥離している支持体140が、第1剥離ロール252、第2剥離ロール253を介して、第1剥離ロール252及び第2剥離ロール253の送り方向を含む面に対して120°以上180°以下となる方向に引っ張られる。これにより、トラレがより抑制される。
【0104】
一方の支持体140が樹脂前駆体シート130から剥離される位置と、他方の支持体140が樹脂前駆体シート130または樹脂シート100aから剥離される位置とが異なる。そのため、支持体140の剥離中に樹脂前駆体シート130または樹脂シート100aがばたつきにくくなり、支持体140は安定して樹脂前駆体シート130または樹脂シート100aから剥離される。
【符号の説明】
【0105】
100,100a 樹脂シート
110 透明樹脂(樹脂)
111 樹脂前駆体組成物
120 コアシート
130 樹脂前駆体シート
131 両端部分
132 両端付近部分
140 支持体
200,200a,200b 樹脂シート製造装置
210 送り部
220 浸漬槽
225 供給部
230 張り合わせ部
231 送り出しロール
232 第1送り出しロール
233 第2送り出しロール
240 硬化部
241 第1硬化部
242 第2硬化部
250 剥離部
251 剥離ロール
252 第1剥離ロール(ロール、第1ロール)
253 第2剥離ロール(ロール、第2ロール)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂前駆体を含むシート(以下、「樹脂前駆体シート」という)を一方向に送る送り部と、
前記樹脂前駆体シートに支持体を張り合わせる張り合わせ部と、
前記張り合わせ部と同じ位置、または、前記張り合わせ部の前記樹脂前駆体シートの送り方向下流側であって前記張り合わせ部の近傍の位置に配置され、前記樹脂前駆体シートの少なくとも幅方向の両端部分または両端付近部分の前記樹脂前駆体を硬化させる硬化部とを備える樹脂シート製造装置。
【請求項2】
前記硬化部の前記樹脂前駆体シートまたは樹脂シートの送り方向下流側に配置され、前記樹脂前駆体シートまたは前記樹脂シートから前記支持体を剥離させる剥離部をさらに備える請求項1に記載の樹脂シート製造装置。
【請求項3】
前記硬化部は、第1硬化部であり、
前記第1硬化部の前記樹脂前駆体シートの送り方向下流側に配置され、前記樹脂前駆体シートの幅方向全体の前記樹脂前駆体を硬化させる第2硬化部をさらに備え、
前記剥離部は、前記第2硬化部の前記樹脂前駆体シートの送り方向下流側に配置される請求項2に記載の樹脂シート製造装置。
【請求項4】
前記剥離部は、前記樹脂前駆体シートまたは前記樹脂シートに張り合わされている前記支持体に接触するロールを有し、前記ロールの送り方向を含む面に対して90°以上となる方向に、前記樹脂前駆体シートまたは前記樹脂シートから剥離している前記支持体を、前記ロールを介して引っ張る請求項2または3に記載の樹脂シート製造装置。
【請求項5】
前記剥離部は、前記樹脂前駆体シートまたは前記樹脂シートに張り合わされている前記支持体に接触するロールを有し、前記ロールの送り方向を含む面に対して120°以上180°以下となる方向に、前記樹脂前駆体シートまたは前記樹脂シートから剥離している前記支持体を、前記ロールを介して引っ張る請求項2または3に記載の樹脂シート製造装置。
【請求項6】
前記ロールの直径は、100mm以下である請求項4または5に記載の樹脂シート製造装置。
【請求項7】
前記ロールの直径は、50mm以下である請求項4または5に記載の樹脂シート製造装置。
【請求項8】
前記ロールの表面温度は、0℃以上100℃以下である請求項4〜7のいずれか1項に記載の樹脂シート製造装置。
【請求項9】
前記張り合わせ部は、前記樹脂前駆体シートの両方の面に、それぞれ前記支持体を張り合わせ、
前記ロールは、前記樹脂前駆体シートまたは前記樹脂シートの一方の面に張り合わされている前記支持体と接触する第1ロール、および前記樹脂前駆体シートまたは前記樹脂シートの他方の面に張り合わされている前記支持体と接触する第2ロールであり、
前記第2ロールは、前記第1ロールの送り方向上流側または下流側に配置される請求項4〜8のいずれか1項に記載の樹脂シート製造装置。
【請求項10】
樹脂前駆体を含むシート(以下、「樹脂前駆体シート」という)に支持体を張り合わせる張り合わせ工程と、
前記張り合わせ工程中または前記張り合わせ工程終了後、前記樹脂前駆体シートの少なくとも幅方向の両端部分または両端付近部分の前記樹脂前駆体を硬化させる硬化工程とを含む樹脂シート製造方法。
【請求項11】
前記硬化工程終了後、前記樹脂前駆体シートまたは樹脂シートから前記支持体を剥離させる剥離工程とをさらに含む請求項10に記載の樹脂シート製造方法。
【請求項12】
前記硬化工程は、第1硬化工程であり、
前記第1硬化工程終了後、前記樹脂前駆体シートの幅方向全体の前記樹脂前駆体を硬化させる第2硬化工程をさらに含み、
前記第2硬化工程終了後に、前記剥離工程が行われる請求項11に記載の樹脂シート製造方法。
【請求項13】
前記剥離工程では、前記樹脂前駆体シートまたは樹脂シートから剥離している前記支持体が、前記樹脂前駆体シートまたは前記樹脂シートに張り合わされている前記支持体に接触するロールを介して、前記ロールの送り方向を含む面に対して90°以上となる方向に引っ張られる請求項11または12に記載の樹脂シート製造方法。
【請求項14】
前記剥離工程では、前記樹脂前駆体シートまたは樹脂シートから剥離している前記支持体が、前記樹脂前駆体シートまたは前記樹脂シートに張り合わされている前記支持体に接触するロールを介して、前記ロールの送り方向を含む面に対して120°以上180°以下となる方向に引っ張られる請求項11または12に記載の樹脂シート製造方法。
【請求項15】
前記張り合わせ工程では、前記樹脂前駆体シートの両方の面に、それぞれ前記支持体が張り合わされ、
前記剥離工程では、一方の前記支持体が、他方の前記支持体と異なる位置で剥離される請求項10から14のいずれか1項に記載の樹脂シート製造方法。
【請求項16】
請求項10から16のいずれか1項に記載の樹脂シート製造方法で製造された樹脂シート。
【請求項17】
請求項16に記載の樹脂シートを備える表示素子用樹脂基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−52673(P2013−52673A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−160247(P2012−160247)
【出願日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】