説明

樹脂シート

【課題】作業性、成形性、耐衝撃性等の物性に優れ、透明性に優れ、プレートアウトがほとんどなく、しかもエンボス加工時や熱貼り合わせ時に白化しにくく、とくにメンブレンプレス成形、真空プレス成形、圧空プレス成形等に適した樹脂シートを提供すること。
【解決手段】(A)完全非晶性ポリエステル系樹脂50〜99.9重量%および(D)熱可塑性ポリエステル系エラストマー0.1〜50重量%を含む組成物に、さらに金属石鹸、高分子量エステル及び脂肪族エステルから選択された1種以上の滑剤を加え、得られた成形材料を成形して得られる樹脂シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から積層化粧シートは、家具、キャビネット、建具、机、食器棚等の金属または木質系の材料に貼り合わされ幅広く使用されている。
また積層化粧シートは、単独のシートとして、あるいはシートを上地、下地、さらに中地と複数のシートを積層した積層化粧シートとしても使用されている。
また、積層化粧シートを複雑な曲面を有する被着体に対してメンブレンプレス成形に施し、その輪郭に忠実に貼着することも行われている。
【0003】
このような従来の積層化粧シートとしては、例えば特許文献1に記載されているシートが挙げられる。これは、不透明のポリオレフィン系樹脂フィルムの基材層と、非結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムとからなる積層化粧シートである。
なお、この特許文献1に記載されたシートに用いられる非結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムは、“非結晶性”と呼んでいるものの、一部結晶性を有するものである。
【0004】
また、特許文献2には、硬質収縮フィルムが記載されている。これは非晶質なポリエステル系樹脂成分と、少なくとも1個のビニル芳香族系炭化水素を主体とする重合体ブロック成分と少なくとも1個の共役ジエン誘導体を主成分とする重合体ブロックからなる部分を有し、且つ該ビニル芳香族系炭化水素よりなる重合体成分と、を含む。
この従来技術によれば成形性に優れ、耐衝撃性等に優れた積層化粧シートと硬質収縮性フィルムが得られるとされている。
【0005】
さらに、特許文献3には、ポリアルキレンテレフタレート樹脂の耐衝撃改良剤が記載されている。ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレート樹脂と、ゴム弾性体をコア(芯)とし、ガラス状ポリマーをシェル(殻)とするコアシェルポリマーよりなる樹脂組成物である。
【0006】
この従来技術によれば、耐衝撃性に優れた樹脂組成物が得られるとされている。
【0007】
【特許文献1】特開平7−24979号公報
【特許文献2】特開昭62−124928号公報
【特許文献3】特開平2−129266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の樹脂組成物および積層化粧シートは、エンボス加工時、熱貼り合わせ時および2次加工の折り曲げ時に白化現象が発生したり、透明度が悪いという問題点がある。さらに、ロール成形(カレンダー成形、エンボス成形)時や射出成形時にプレートアウトが発生するという問題点もある。
また従来から、透明性を有する樹脂シート以外にも、下地を着色あるいは印刷したシートにした樹脂シートが広く使用されている。この場合、一層深みのある意匠性を付与するために、一般的には上地を透明なシートにしている。しかし、その意匠性はいまだ十分なレベルに達していない。また一方で、これらの着色あるいは印刷したシートを単層または上地として使用する樹脂シートは、折り曲げ加工するときは白化し易く、作業性が悪いという問題点があった。
【0009】
本発明の目的は、作業性、成形性、耐衝撃性等の物性に優れ、透明性に優れ、プレートアウトがほとんどなく、しかもエンボス加工時や熱貼り合わせ時に白化しにくく、とくにメンブレンプレス成形、真空プレス成形、圧空プレス成形等に適した樹脂組成物および樹脂シートの提供にある。
【0010】
なお、メンブレンプレス成形とは、所望の厚みで所望の着色または表面印刷した熱可塑性の化粧シートをその軟化点近傍まで加熱し、これを所定の形状の被着体、例えばキッチンセットのドアの形状のような複雑な曲面を有する被着体にかぶせ、この上にさらに伸縮自在のメンブレン(膜状物)、例えばゴム膜をかぶせて、これに空気または液体の圧力をかけて、その輪郭に忠実に化粧シートを貼着するというものである。
また、真空プレス成形および圧空プレス成形は、基本原理はメンブレンプレス成形と同じであるが、前者はメンブレンプレスゴムを使用せずに真空圧によって成形する方法であり、後者は空気加圧を利用した成形方法である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、上記のような従来の課題を解決することができた。
請求項1の発明は、(A)ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、かつジオール成分がエチレングリコール60〜80モル%および1,4−シクロヘキサンジメタノール20〜40モル%である完全非晶性ポリエステル系樹脂50〜99.9重量%および(D)熱可塑性ポリエステル系エラストマー0.1〜50重量%を含む組成物に、さらに金属石鹸、高分子量エステル及び脂肪族エステルからなる群から選ばれる1種以上の滑剤を加え、得られた成形材料をカレンダー製造機を用いて製膜して得られる樹脂シートである。
請求項2の発明は、着色および/または表面に印刷が施されている請求項1に記載の樹脂シートである。
請求項3の発明は、請求項1に記載のシートを2層以上積層して得られる積層樹脂シートである。
請求項4の発明は、請求項2に記載のシートを2層以上積層して得られる積層樹脂シートである。
請求項5の発明は、上地として請求項1に記載の樹脂シートを用い、下地として請求項2に記載の樹脂シートを用い、両者を積層して得られた積層樹脂シートである。
請求項6の発明は、上地として請求項1または2に記載の樹脂シートを用い、下地として熱可塑性樹脂シートを用い、両者を積層して得られた積層樹脂シートである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、作業性、成形性、耐衝撃性等の物性に優れ、透明性に優れ、プレートアウトがほとんどなく、しかもエンボス加工時や熱貼り合わせ時に白化しにくく、とくにメンブレンプレス成形、真空プレス成形、圧空プレス成形等に適した樹脂シートが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(A)成分(完全非晶性ポリエステル系樹脂)
本発明に使用する(A)完全非晶性ポリエステル系樹脂は、再度加熱処理を行っても再結晶化による物性低下を起こさず、結晶性成分を全くもたないものである。なお、本発明でいう結晶性とは、DSC法によって測定された結晶性を意味する(JIS K7121)。
【0014】
(A)完全非晶性ポリエステル系樹脂は、例えばテレフタル酸またはジメチルテレフタル酸とエチレングリコールとを主成分としてエステル化反応を経て重縮合反応によって製造されたものが好適に使用される。
【0015】
また(A)完全非晶性ポリエステル系樹脂は、上記のジカルボン酸およびグリコール成分の他に、第3成分を共重合させた共重合体タイプのものも包含し、本発明においてはこのタイプが好ましい。
【0016】
本発明の好ましい態様において、第3成分としては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、テレフタル酸、イソフタル酸等が好適であり、さらに好ましくは、グリコール成分が2種類以上のものから構成されるものであり、最適には、そのジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、かつジオール成分がエチレングリコール50〜99モル%および1,4−シクロヘキサンジメタノール1〜50モル%であるものがよい。とくに、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、かつエチレングリコール60〜80モル%および1,4−シクロヘキサンジメタノール20〜40モル%のものがよい。
【0017】
また、(A)成分の粘度はIV値として0.65〜0.85が好ましい。
【0018】
完全非晶性ポリエステル系樹脂の製造方法は、すでに当業界において広く知られており、例えば米国特許5,340,907号に開示されている。
【0019】
本発明の樹脂組成物は、完全非晶性ポリエステル系樹脂成分(A)に、共役ジエン系ゴム粒子に(メタ)アクリル酸エステルおよびビニル芳香族をグラフト重合して得られる(B)グラフト共重合体を配合するか、または、完全非晶性ポリエステル系樹脂成分(A)に、アクリル系ゴム粒子に(メタ)アクリル酸エステルをグラフト重合して得られる(C)グラフト共重合体を配合するか、あるいは完全非晶性ポリエステル系樹脂成分(A)に、上記の(B)グラフト共重合体および(C)を配合することにより得られる。すなわち、本発明の樹脂組成物は、グラフト共重合体を2種類使用することができる。以下、両者のグラフト共重合体について説明する。
【0020】
(B)グラフト共重合体
(B)グラフト共重合体は、共役ジエン系ゴム粒子に(メタ)アクリル酸エステルおよびビニル芳香族をグラフト重合して得られる。
共役ジエン系ゴム粒子の調製に用いられる共役ジエンは、共役2重結合を有するオレフィン類であり、例えば1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。
【0021】
共役ジエン系ゴム粒子の調製は、上記のような共役ジエンを重合することにより行われるが、さらにビニル芳香族や他の共重合可能な単量体を用いて共重合させてもよい。そのためのビニル芳香族としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、あるいはそれらの核置換誘導体、例えばビニルトルエン、イソプロペニルトルエン、クロルスチレン、芳香族ビニリデン等が挙げられる。また他の共重合可能な単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートのようなアルキルアクリレート;アクリロニトリル、メタクリロニトリルのようなシアン化ビニル;シアン化ビニリデン;等が挙げられる。
【0022】
さらに、架橋剤を用いて架橋させてもよい。そのための架橋性単量体としては、2個以上の反応性の等しい二重結合をもつ単量体、例えばジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のアルカンポリオールポリアクリレート;等を挙げることができるが、とくにブチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレートが好ましく用いられる。
【0023】
共役ジエン系ゴム粒子は、共役ジエン1〜65重量%、ビニル芳香族0〜35重量%および他の共重合可能な単量体0〜35重量%からなるのが望ましい。なお、架橋剤は少量用いられ、具体的な量は適宜選択される。
【0024】
共役ジエン系ゴム粒子の重合は、公知の重合手段により行うことができ、とくに制限されない。
【0025】
得られた共役ジエン系ゴム粒子の粒子径は0.05〜1.0μmのものが好ましい。さらに好ましくは、0.05〜0.5μmのものである。
【0026】
次に、共役ジエン系ゴム粒子に(メタ)アクリル酸エステルおよびビニル芳香族をグラフト重合することにより、(B)グラフト共重合体が調製される。(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数が1〜8を有するものが好適であり、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらはそれぞれ併用することもできる。中でも、メチル(メタ)アクリレートが望ましい。ビニル芳香族は上記で例示したものを使用することができる。
【0027】
(メタ)アクリル酸エステルおよびビニル芳香族のグラフト重合の際には、必要に応じて他の成分、すなわち他の共重合可能な単量体、架橋剤等を使用して共重合することもできる。他の共重合可能な単量体および架橋剤は、上記で例示したものを使用することができる。しかしながら、これらの他の成分は、(メタ)アクリル酸エステル、ビニル芳香族および他の成分の合計重量に対し、50重量%未満の割合で使用するのが望ましい。
【0028】
共役ジエン系ゴム粒子と、(メタ)アクリル酸エステル、ビニル芳香族および必要に応じて使用される他の成分との共重合反応は、公知の方法を利用することができ、とくに制限されない。例えばシード乳化重合法等が挙げられる。
(B)グラフト共重合体における共役ジエン系ゴム成分の割合は、40〜90重量%であるのが好ましい。
【0029】
(C)グラフト共重合体
(C)グラフト共重合体は、アクリル系ゴム粒子に、(メタ)アクリル酸エステルおよびビニル芳香族をグラフト重合して得られる。
アクリル系ゴム粒子は、アクリル酸エステルを重合することにより得られる。アクリル酸エステルとしては、アルコール成分の炭素数2〜8を有するものが好適であり、例えばエチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。
【0030】
アクリル系ゴム粒子の調製は、上記のようなアクリル酸エステルを重合することにより行われるが、さらにビニル芳香族や他の共重合可能な単量体を用いて共重合させてもよい。また架橋剤を用いて架橋させてもよい。これらのビニル芳香族、他の共重合可能な単量体、架橋剤は、上記の(B)グラフト共重合体の欄で説明したものが例示される。
【0031】
アクリル系ゴム粒子は、アクリル酸エステル1〜65重量%、ビニル芳香族0〜35重量%および他の共重合可能な単量体0〜35重量%からなるのが望ましい。なお、架橋剤は少量用いられ、具体的な量は適宜選択される。
【0032】
アクリル系ゴム粒子の重合は、公知の重合手段により行うことができ、とくに制限されない。
【0033】
得られたアクリル系ゴム粒子の粒子径は0.05〜1.0μmのものが好ましい。さらに好ましくは、0.05〜0.5μmのものである。
【0034】
次に、アクリル系ゴム粒子に(メタ)アクリル酸エステルおよびビニル芳香族をグラフト重合することにより、(C)グラフト共重合体が調製される。(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数が1〜8を有するものが好適であり、上記の(B)グラフト共重合体の欄で説明したものが例示される。ビニル芳香族も、上記の(B)グラフト共重合体の欄で説明したものが例示される。
【0035】
(メタ)アクリル酸エステルのグラフト重合の際には、必要に応じて他の成分、すなわち他の共重合可能な単量体、架橋剤等を使用して共重合することもできる。他の共重合可能な単量体および架橋剤は、上記で例示したものを使用することができる。しかしながら、これらの他の成分は、(メタ)アクリル酸エステルおよび他の成分の合計重量に対し、50重量%未満の割合で使用するのが望ましい。
【0036】
アクリル系ゴム粒子と、(メタ)アクリル酸エステル、ビニル芳香族および必要に応じて使用される他の成分との共重合反応は、公知の方法を利用することができ、とくに制限されない。例えばシード乳化重合法等が挙げられる。
【0037】
(C)グラフト共重合体におけるアクリル系ゴム成分の割合は、40〜90重量%であるのが好ましい。
【0038】
(B)グラフト共重合体および(C)グラフト共重合体は、グラフト成分のガラス転移温度が40℃以上であるのが望ましい。
【0039】
本発明の樹脂組成物の配合割合は、(A)完全非晶性ポリエステル系樹脂50〜99重量%および(B)グラフト共重合体1〜50重量%、好ましくは(A)完全非晶性ポリエステル系樹脂55〜92重量%および(B)グラフト共重合体8〜45重量%がよい。
【0040】
また(C)グラフト共重合体を使用する場合は、(A)完全非晶性ポリエステル系樹脂50〜99重量%および(C)グラフト共重合体1〜50重量%、好ましくは(A)完全非晶性ポリエステル系樹脂55〜92重量%および(C)グラフト共重合体8〜45重量%がよい。
【0041】
さらに(B)グラフト共重合体および(C)を併用する場合は、(A)完全非晶性ポリエステル系樹脂50〜98重量%、(B)グラフト共重合体1〜49重量%および(C)グラフト共重合体1〜49重量%がよい。但し前記(A)、(B)および(C)成分の合計は100重量%となる。
【0042】
また本発明は、(A)完全非晶性ポリエステル系樹脂50〜99.9重量%および(D)熱可塑性ポリエステル系エラストマー0.1〜50重量%を含む組成物を成形して得られる樹脂シートを提供するものである。
(D)熱可塑性ポリエステル系エラストマーとしては、例えば好適には下記一般式(1)または(2)
【0043】
【化1】

【0044】
で表されるテレフタル酸系結晶性ポリエステルハードセグメント(ポリブチレンテレフタレート(PBT)またはポリブチレンナフタレート(PBN))と、一般式(3)
【0045】
【化2】

【0046】
(式中、xは2〜4の整数を示し、pは8〜140の整数を示す)で表される分子量600〜6000の脂肪族ポリエーテルソフトセグメント(ポリテトラメチレンジグリコール(PTMG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレングリコール(PEG))とから構成される分子量5,000〜100,000のセグメントコポリエステルが挙げられる。
【0047】
(D)熱可塑性ポリエステル系エラストマーの分子量を上記範囲に設定することにより、得られる樹脂シートの耐衝撃性、引張強度、耐寒性等の物性や、成形加工性が一層良好となる。
【0048】
上記のハードセグメントとソフトセグメントとのモル比を適宜選択することにより、本発明の樹脂シートの所望の物性、例えば耐衝撃性を付与させることができる。
【0049】
例えば、ハードセグメント/ソフトセグメントのモル比は、ソフトセグメントが50モル%以上であることが好ましい。
【0050】
ハ−ド成分が芳香族ポリエステルでソフト成分が脂肪族ポリエ−テル、ハ−ド成分が芳香族ポリエステルでソフト成分が脂肪族ポリエステル(例えば脂肪族ラクトン系エラストマー)、ハ−ド成分がポリブチレンナフタレートでソフト成分が脂肪族ポリエ−テルからなる(共)重合体を挙げることができる。
【0051】
(A)成分および(D)成分の配合量は、(A)成分50〜99.9重量%および(D)成分0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜30重量%である。さらに好ましくは(D)成分が1〜30重量%のものである。
【0052】
(D)成分が0.1重量%より少ないと機械的強度が悪く、50重量%を超えるとロールとの剥離性が悪く成形加工作業が悪くなる。
【0053】
(A)成分および(D)成分を配合した組成物は、下記で説明する手段によりシート状に成形加工することができ、これを単層としての樹脂シート(以下、透明樹脂シートと呼ぶ)として利用することができる。このようにして得られる透明樹脂シートは、機械的強度、透明性に優れ、折り曲げ加工のとき白化し難く、意匠性に優れている。この透明樹脂シートは、公知の手段で着色することができ、および/または表面に印刷を施してもよい。
【0054】
本発明の積層樹脂シートの一実施態様としては、透明樹脂シートを2層以上積層して得られる積層樹脂シート、着色および/または表面を印刷した樹脂シートを2層以上積層して得られる積層樹脂シート、下地として着色および/または表面を印刷した上記の樹脂シートを用い、上地として透明樹脂シートを用いたもの等が挙げられる。なおこの場合、必要に応じて各種の中地を適用できることはいうまでもなく、この態様も本発明の範囲に包含される。
【0055】
これとは別に、本発明の積層樹脂シートは、下地として下記の(F)熱可塑性樹脂からなるシートを使用することができる。
【0056】
本発明で使用される(F)熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル系、ポリオレフィン系(ポリエチレン系、ポリプロピレン系、プロピレン−エチレン共重合体)、(メタ)アクリル酸エステル、ポリカーボネート系、ポリスチレン系、AS系樹脂、ABS系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系、ポリアミド系等が一般的に挙げられる。この(F)成分も、下記で説明するような手段によりシート状に加工することができる。(F)成分を下地にした場合、上地は好適には上記の透明樹脂シートか、着色および/または表面を印刷した樹脂シートであると下地が白化しても上地が白化しないから、表面上白化が見えなくなるのでよい。
【0057】
さらに本発明においては、下地として、上記で説明した(A)成分と、(B)グラフト共重合体および/または(C)グラフト共重合体とを配合した組成物からなるシートを利用することができる。
【0058】
このように、(A)成分に、(B)成分および/または(C)成分を配合した下地を用いると、機械的強度が上がりVカット適性がよい、という効果が奏され好ましい。
【0059】
なお、本発明のシートが、建材、とくに台所等、洗剤を常時使用する場所に用いられる場合、下記に示す(E)ポリエステル系樹脂を組成物に配合することにより、耐ストレスクラック性が向上し好ましい。
【0060】
この(E)ポリエステル系樹脂は、結晶化度が限りなく0に近似ないし50%であるものであり、具体的には、下記構造式を有し、テレフタル酸100モル%、エチレングリコール42〜32モル%および1,4−シクロヘキサンジメタノール58〜68モル%からなるグリコール変性ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCTG);ジカルボン酸成分として1〜50モル%のイソフタル酸および50〜99モル%のテレフタル酸からなり、好ましくは1〜25モル%のイソフタル酸および75〜99モル%のテレフタル酸からなる酸変性ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCTA);等が挙げられる。PCTAの例としては、80モル%のテレフタル酸、20モル%のイソフタル酸および100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールからなるコポリエステル1や、95モル%のテレフタル酸、5モル%のイソフタル酸、100モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールからなるコポリエステル2;等が挙げられる。
【0061】
【化3】

【0062】
さらに次の化学式で示すポリエチレンテレフタレート類も好ましい。
【0063】
【化4】

【0064】
(E)成分のDSC法(JIS K7121)による結晶融解熱は15(cal/g)以下、好ましくは10(cal/g)以下、さらに好ましくは7(cal/g)以下が好ましい。また、(E)成分の粘度はIV値として0.65〜0.85が好ましい。また(E)成分は必要に応じて2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0065】
(E)成分を配合した本発明の樹脂組成物は、(A)完全非晶性ポリエステル系樹脂0.1〜95重量%および(E)成分5〜99.9重量%からなる(A)+(E)成分50〜99重量%と、
【0066】
共役ジエン系ゴム粒子に(メタ)アクリル酸エステルおよびビニル芳香族をグラフト重合して得られる(B)グラフト共重合体、アクリル系ゴム粒子に(メタ)アクリル酸エステルおよびビニル芳香族をグラフト重合して得られる(C)グラフト共重合体および(D)熱可塑性ポリエステル系エラストマーからなる群から選ばれた少なくとも1種類以上1〜50重量%と、
を含んでなる。
【0067】
好ましい態様において、(E)成分を配合した本発明の樹脂組成物は、(A)完全非晶性ポリエステル系樹脂20〜93重量%および(E)成分7〜80重量%からなる(A)+(E)成分70〜93重量%と、
共役ジエン系ゴム粒子に(メタ)アクリル酸エステルおよびビニル芳香族をグラフト重合して得られる(B)グラフト共重合体、アクリル系ゴム粒子に(メタ)アクリル酸エステルおよびビニル芳香族をグラフト重合して得られる(C)グラフト共重合体および(D)熱可塑性ポリエステル系エラストマーからなる群から選ばれた少なくとも1種類以上7〜30重量%と、
を含んでなる。なお、(E)成分を配合した本発明の樹脂組成物は、先に説明した樹脂組成物に比べて(A)成分の配合割合が少ないが、これは耐ストレスクラック性を得ることを主要目的として想定しているからである。逆に言えば、耐ストレスクラック性以外のシートの性質をそれほど望まない場合は、(A)成分を0.1〜95重量%に設定してもよい。
【0068】
(A)、(B)、(C)および(D)成分については、上記したとおりである。
【0069】
上記で説明した各種組成物は、適当量の添加剤を含有してもよい。
このような添加剤としては、例えば難燃剤、離型剤、耐候性安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、着色剤、界面活性剤、補強剤、充填剤等が挙げられる。なお、加工性を向上させることを目的として滑剤を配合することが好ましい。滑剤としては、炭化水素系(低分子ポリエチレン、パラフィン)、脂肪酸系(ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、複合型ステアリン酸、オレイン酸)、脂肪族アルコール系、脂肪族アマイド系(ステアロアミド、オキシステアロアミド、オレイルアミド、エルシルアミド、リシノールアミド、ベヘンアミド、メチロールアミド、メチレンビスステアロアミド、メチレンビスステアロベヘンアミド、高級脂肪酸のビスアミド酸、ステアロアミド、複合型アミド)、脂肪族エステル系(n−ブチルステアレート、メチルヒドロキシステアレート、多価アルコール脂肪酸エステル、飽和脂肪酸エステル、エステル系ワックス)、脂肪酸金属石鹸系族等を用いることができる。好ましくは、炭化水素系、脂肪族エステル系であり、より好ましくは脂肪族エステルである。
【0070】
本発明の樹脂組成物は、配合物を例えばバンバリー混練機、1軸または2軸混練機等にて混練することにより得ることができる。
【0071】
また、本発明の樹脂組成物は、カレンダー製造機、Tダイ押出機等を用いて、所望のサイズおよび厚さのシートに成形することができる。得られたシートは、エンボス加工時や熱貼り合わせ時に白化しにくく、真空プレス成形、圧空プレス成型並びにメンブレンプレス成形にとくに適し、例えば各種積層化粧シートとして利用することができる。
【0072】
本発明の樹脂シートあるいは積層樹脂シートの厚さはとくに制限されないが、例えば透明樹脂シートは5〜1000μm、好ましくは 60〜500μm、積層樹脂シートの場合、上地は、5〜1000μm、好ましくは60〜500μm、下地は5〜1000μm、好ましくは60〜500μm、シート全体として10〜2000μm、好ましくは120〜1000μmであるのがよい。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものでない。
【0074】
(例1〜17)
各種特性の測定方法について説明する。
(1)ロール作業性試験
配合物をロール表面温度190℃の8インチのテストロール装置にて混練して作業性を試験した。
〇:問題なく混練作業ができ、シートが得られた。
△:シートが得られたものの、ベタツキが発生し作業が困難であった。
×:結晶化がおき、シートが白濁化し製品を得ることができなかった。
【0075】
(2)金型汚染試験
樹脂組成物(ペレット)を長さ150mm、巾25mm、厚さ4mmの樹脂板を下記の射出条件にて射出成形し、金型からの剥離性について試験を行った。
日精樹脂工業株式会社製 FS−120
成形温度:250℃、260℃、280℃
射出速度:55mm/秒
射出圧力:800kg/cm
保持圧力:600kg/cm
射出時間:8秒
冷却時間:45秒
【0076】
(3)プレートアウト試験
ロール試験の際、5分ごとに、ロールの金属表面状態を観察した。
【0077】
(4)アイゾット衝撃試験
JIS K7110に準拠した。
射出成形によって、長さ:6.35mm、巾:12.7mm、厚さ:6.4mmの試験片を作成し評価した。(ノッチ有り)
【0078】
(5)引張強度、伸び
JIS K7113に準拠した。
射出成形によって厚さ1.0mmの1号ダンベルの試験片を作成し、温度23℃および相対湿度50%(促進試験前)と、温度60℃、相対湿度95%、7日間放置(促進試験後)とで評価した。
【0079】
(6)Vカット性試験
所定量の樹脂配合物をカレンダー加工して、厚み0.2mmのフィルムを作成した。このシートを温度60℃、相対湿度95%、7日間の環境に放置した後、MDF(中密度ファイバーボード)に以下の方法でラミネートした。すなわち、含水率5〜15%のMDF:長さ240mm×幅1200mm×厚さ18mm(スターウッド:北新合板製)にエチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分とする二液硬化型接着剤をロールコーティング方式で約140g/mmの量で塗布した後、フィルムをラミネートしてその後1〜5kg/cmの圧力で約12時間圧締、養生した。
【0080】
このフィルム付きMDFを、長さ600mm×幅400mmに裁断し、そのMDF側を長さの中間点で幅方向に図2に示すように、90度の開き角度でV字形にカットした。これを加工温度23±2℃、曲げ速度1mm/分の条件で折り曲げ、図3に示すような直角の形状にした。
折り曲げ部分の外観を観察した。○を「異常なし」、×を「割れが発生」とした。
下記例では、次の各種樹脂のいずれかを使用した。
【0081】
(1)(A)完全非晶性ポリエステル系樹脂
製造会社:イーストマン・ケミカル社製
商品名:KODAR PETG 6763(PET−G)
組成:コポリマータイプ
グリコール成分:エチレングリコール70モル%および1,4−シクロヘキサンジメタノール30モル%
ジカルボン酸成分:テレフタル酸
結晶成分:0%
結晶融解熱:完全非晶性であるため測定不可
【0082】
(2)非晶性ポリエステル系樹脂
製造会社:ユニチカ
商品名:MA−2101(A−PET)
組成:ホモタイプ
グリコール成分:エチレングリコール
ジカルボン酸成分:テレフタル酸
結晶成分:一部有する
【0083】
(3)(B)グラフト共重合体
(i)
製造会社:鐘淵化学工業
商品名:カネエース B−28
組成:メタクリル酸エステル・スチレン/スチレン・ブタジエンゴムグラフト共重合体
ゴム粒子径:0.1〜0.5μm
(ii)
製造会社:鐘淵化学工業
商品名:カネエース B−56
組成 :メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体 ゴム粒子径:0.1〜0.5μm
【0084】
(4)(C)グラフト共重合体
製造会社:鐘淵化学工業
商品名:カネエース FM
組成:メタクリル酸エステル・アクリロニトリル/ブチルアクリレート(アクリル系ゴム)グラフト共重合体
ゴム粒子径:0.05〜0.1μm
【0085】
(5)その他のポリマー
(i)
製造会社:旭化成工業
商品名:アサフレックス 810
組成:スチレン/ブタジエンブロック共重合体
スチレン含有量 78%
数平均分子量 13万
(ii)
製造会社:旭化成工業
商品名 :タフプレン125
組成 :スチレン/ブタジエンブロック共重合体
スチレン含有量 40%
数平均分子量 8万
【0086】
(4)添加剤
(i)
製造会社:石原産業
商品名:CR90
組成:ルチル型酸化チタン
(ii)
製造会社:三井化学
商品名:W−4051
組成:酸化型ポリエチレンワックス
得られた試験結果を表1および2に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
上記の表から分かるように、本発明の樹脂組成物は各種成績に優れているが、完全非晶性ポリエステル系樹脂ではなく単なる非晶性ポリエステル樹脂を使用したもの(例10および11)は、ロール作業性に著しく劣っている。また(B)グラフト共重合体および(C)以外のポリマーを配合したもの(例12〜17)は物性には優れるものの、ロール作業性、金型汚染性およびプレートアウト性に劣っている。完全非晶性ポリエステル系樹脂のみをポリマー成分として配合したもの(例9)は、十分な物性が得られない。
【0090】
また、例3、4、8および9における樹脂組成物のミル中での混練負荷トルクを測定した。測定条件を以下に示す。
使用ミキサー:東洋精機製作所製ラボプラストミルR−30タイプ
サンプル量:33g
試験温度:160℃
試験回転数:50.0rpm
予熱時間:120秒
【0091】
得られた結果を図1に示す。図1において、番号1は例9であり、2は例8であり、3は例4であり、4は例3である。図1によれば、本発明の樹脂組成物は短時間でトルク値が上昇し、ゲル化が迅速に達成されているのに対し、例9の樹脂組成物は20分近くになるまでゲル化が遅れ、両者の作業性の差異が明らかになった。すなわち、本発明の樹脂組成物は、混練により迅速に溶融し、かつ各成分の分散も短時間で均一になるが、例9の樹脂組成物は、熱伝導性が悪いために溶融が遅く、各成分の分散に長時間が必要である。
【0092】
(例18〜28)
本例における各種特性の測定方法について説明する。
(1)ロール作業性試験
例1に準じた。
(2)金型汚染試験
例1に準じた。
(3)アイゾット衝撃試験
例1に準じた。
(4)引張強度、伸び
例1に準じた。
(5)ヘーズ(曇価)試験
JIS K7105に準拠した。
試験片の厚さは1mmで評価した。
(6)Vカット適性試験
例1に準じた。
(7)折り曲げ白化性試験
上記(6)Vカット性試験で折り曲げ部分の外観の白化を観察した。○を「白化なし」、△を「濃色は白化する、薄いグレー等の淡白色は白化なし」とした。
本例では、次の各種樹脂のいずれかを使用した。
【0093】
(1)(A)完全非晶性ポリエステル系樹脂
製造会社:イーストマン・ケミカル社製
商品名:KODAR PETG 6763(PET−G)
組成:コポリマータイプ
グリコール成分:エチレングリコール70モル%および1,4−シクロヘキサンジメタノール30モル%
ジカルボン酸成分:テレフタル酸
結晶成分:0%
結晶融解熱:完全非晶性であるため測定不可
【0094】
(2)(D)熱可塑性ポリエステル系エラストマー
製造会社:東レ・デュポン社製
商品名:ハイトレル 4057、2551
組成:化学構造はハードセグメント(PBT)とソフトセグメント(ポリエーテル)との共重合体
【0095】
(3)(B)グラフト共重合体
製造会社:鐘淵化学工業
商品名:カネエース B−56
組成 :メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体
ゴム粒子径:0.1〜0.5μm
【0096】
(4)(C)グラフト共重合体
製造会社:鐘淵化学工業
商品名:カネエース FM
組成:メタクリル酸エステル・アクリロニトリル/ブチルアクリレート(アクリル系ゴム)グラフト共重合体
ゴム粒子径:0.05〜0.1μm
【0097】
(5)添加剤
製造会社 ヘンケルジャパン
商品名 ロキシオール G−78
組成 金属石鹸および高分子量エステルの混合物
【0098】
(6)(F)熱可塑性樹脂シート
(i)PVCシート
製造会社 理研ビニル工業製
商品名 W500
組成 ポリ塩化ビニル樹脂
(ii)PPシート
製造会社 理研ビニル工業製
商品名 〇W
組成 ポリプロピレン樹脂
(iii)PEシート
製造会社 理研ビニル工業製
商品名 TPN
組成 ポリエチレン樹脂
【0099】
表3〜5に示す配合において組成物を調製し、上記各種試験に供した。結果を併せて表3〜5に示す。
【0100】
【表3】

【0101】
【表4】

【0102】
【表5】

【0103】
(例29)
下地層として、カレンダー製造機で厚さ80μmの樹脂シートを製造し(配合は例21と同じ)、酸化チタンと有機顔料で着色し、その上面に印刷層1.5±0.5μm(日本デコール(株)木目調)を設けた。印刷層が硬化した後、この印刷層の上面に溶剤タイプ2液型接着剤(東洋モートン(株)AD527/CATHY−92)をグラビア塗工方式で塗布した。塗布した後乾燥炉にて溶剤を蒸発飛散させて接着層(厚さ2.5±0.5μ)を設けた。なお、乾燥炉は75℃〜85℃に設定したフローティング方式の乾燥ゾーンを設けたものであり、ここに樹脂シートを18秒〜22秒通過させた。接着層が乾燥した後、上地層である厚さ80μmの例21の樹脂シートを重ねて金属ロールで熱融着した。
その後シートは巻き取り、接着剤を養生させる為に室温40±2℃で72時間放置した後製品とした。得られた積層化粧シートの折り曲げ白化性およびVカット適性を調べた。結果を表6に示す。
【0104】
(例30〜34)
例30〜34は、下記の通り下地層を変更して上記例16と同じテストを行った。
なお例31は印刷層を設けることなく、着色した化粧シートのテストである。
【0105】
(例30)
上地層 厚さ80μm、例21の配合、原色
印刷層 下地層に木目調の印刷
下地層 厚さ80μm、例26の配合に着色(酸化チタン、有機顔料等で調色)
【0106】
(例31)
上地層 厚さ80μm、例21の配合、着色
下地層 厚さ80μm、例26の配合、着色
(酸化チタン、有機顔料等で調色)
【0107】
(例32)
上地層 厚さ80μm、例21の配合、原色
印刷層 下地層に木目調の印刷
下地層 厚さ80μm、理研ビニル工業(株)製(PVCシート、W500 着色品)
【0108】
(例33)
上地層 厚さ80μm、例21の配合、原色
印刷層 下地層に木目調の印刷
下地層 厚さ80μm、理研ビニル工業(株)製(PPシート、OW 着色品)
【0109】
(例34)
上地層 厚さ80μm、例21の配合、原色
印刷層 下地層に木目調の印刷
下地層 厚さ80μm、理研ビニル工業(株)製(PEシート、TPN 着色品)
例29〜34で得られた結果を表6に示す。
【0110】
【表6】

【0111】
(例35〜36)
例35と例36は積層シートの例30と例34の同じ材質を用い、上地と下地を反対にし、さらに、上地を原色、下地を着色した化粧シートを積層した比較例である。積層の方法、および試験方法は前記例29と同じである。
【0112】
(例35)
上地層 厚さ80μm、例26の配合、原色
印刷層 下地層に木目調の印刷
下地層 厚さ80μm、例21の配合、着色
【0113】
(例36)
上地層 厚さ80μm、理研ビニル工業(株)製(PEシート、TPN原色)
印刷層 下地層に木目調の印刷
下地層 厚さ80μm、例21の配合、着色
例35〜36で得られた結果を表7に示す。
【0114】
【表7】

【0115】
(例37〜75)
下記に示す材料を用い、かつ表8〜11に示す配合において、(1)転写箔/(2)0.2mm厚ポリエステルシート/(3)0.15mm厚ポリエステルシートをそれぞれ調製し、(1)(2)(3)の順番で積層し、これらを150℃〜160℃の金属鏡面ロールにて40秒間熱融着した(ニップ圧:2.0kg/cmドラム回転速度:2.0(m/分)、ドラム円周:2.0m)。なお、ポリエステルシートは、Tダイ押出し機で所望の厚さに成膜したものである。
次に積層されたシートを、メンブレンプレス機(機種名:KT−M−139、製造会社名:ベンホーナー)により下記の被着体に貼り合わせた。貼り合わせ条件は、プレス温度設定:top/bottom=110℃/80℃、プレス時間設定:予熱/加圧=60秒/60秒、圧力:4kg/cmとした。
被着体(MDF)は、針葉樹もしくはラワン材等の木材のチップを細かくくだき、プレスして固めた合板である。その被着体をシステムキッチン等に組み込まれる扉の形状にカット(サイズ150mm×200mm程度、厚み18mm程度)さらに曲面加工(3R〜10R程度)に施してある。天面には装飾の溝が彫りこまれた(ルーターと呼称)ものである。
なお、貼り合わせの前に、この扉形状のMDF表面に例えばウレタン系の接着剤(ヘンミィティン社製接着剤商品名:34333と、同社製硬化剤商品名:ハードナーDとを、重量比として100:5で混合したもの)を施しておいた。
【0116】
本例に使用された材料
(1)転写箔 品名:京阪尾池転写社製UV−03
タイプ:アクリル系転写箔、12μm厚
【0117】
(2)ポリエステルシート
(A)完全非晶性ポリエステル系樹脂
製造会社:イーストマン・ケミカル社製
商品名:KODAR PETG 6763(PET−G)
組成:コポリマータイプ
グリコール成分:エチレングリコール70モル%および1,4−シクロヘキサンジメタノール30モル%
ジカルボン酸成分:テレフタル酸
結晶成分:0%
結晶融解熱:完全非晶性であるため測定不可
【0118】
(B)グラフト共重合体
製造会社:鐘淵化学工業
商品名:カネエース B−56
組成 :メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体(MBS)
ゴム粒子径:0.1〜0.5μm
【0119】
(D)熱可塑性ポリエステル系エラストマー
製造会社:東レ・デュポン社製
商品名:ハイトレル2551(ハイトレル)
組成:化学構造はハードセグメント(PBT)とソフトセグメント(ポリエーテル)との共重合体
【0120】
(E)ポリエステル系樹脂
(i)
製造会社:イーストマン・ケミカル社製
商品名:EASTER PCTG 5445(PCTG)
組成:コポリマータイプ
テレフタル酸100モル%、エチレングリコール42〜32モル%および1,4−シクロヘキサンジメタノール58〜68モル%からなるグリコール変性ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート
結晶成分(結晶化度):微量
結晶融解熱:2.6(cal/g)
(ii)
製造会社:イーストマン・ケミカル社製
商品名:THERMX PCTA 6761(PCTA)
組成:コポリマータイプ
ジカルボン酸成分として1〜50モル%のイソフタル酸および50〜99モル%のテレフタル酸からなり、好ましくは1〜25モル%のイソフタル酸および75〜99モル%のテレフタル酸からなる酸変性ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート
結晶融解熱:5.5(cal/g)
【0121】
(3)ポリエステルシート
製造会社:理研ビニル工業社製
商品名:RIVESTAR SET351 FZ13359
組成:コポリマータイプ
結晶成分(結晶化度):0%
【0122】
得られた成形体について、下記の試験を行った。
・透明性:目視により判定した。判定レベルは、○:透明性良好、△:僅かな白濁、×:白濁である。
・鉛筆硬度試験:JIS K5400に準ずる(荷重:200g)
・洗剤によるストレスクラック試験:成形したサンプルに台所洗剤(花王社製商品名マジックリン)を十分塗布し、常温にて24時間放置後、50℃×90分間、さらに0℃×90分間の環境に保管した後、成形品表面のクラックの有無を目視して判定した。判定レベルは、○:クラック無し、△:僅かなクラックあり(約1〜10本)、×:多数のクラックあり(10本以上)、××:全面にクラックが発生である。結果を表8〜11に示す。
【0123】
【表8】

【0124】
【表9】

【0125】
【表10】

【0126】
【表11】

【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明によれば、作業性、成形性、耐衝撃性等の物性に優れ、透明性に優れ、プレートアウトがほとんどなく、しかもエンボス加工時や熱貼り合わせ時に白化しにくく、とくにメンブレンプレス成形、真空プレス成形、圧空プレス成形等に適した樹脂組成物および樹脂シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】例3、4、8および9における樹脂組成物のミル中での混練負荷トルクの測定結果を示す図である。
【図2】本発明の樹脂シートをVカットしたMDFにラミネートした図である。
【図3】本発明の樹脂シートをVカットしたMDFにラミネートし、これを折り曲げて直角にした図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、かつジオール成分がエチレングリコール60〜80モル%および1,4−シクロヘキサンジメタノール20〜40モル%である完全非晶性ポリエステル系樹脂50〜99.9重量%および(D)熱可塑性ポリエステル系エラストマー0.1〜50重量%を含む組成物に、さらに金属石鹸、高分子量エステル及び脂肪族エステルからなる群から選ばれる1種以上の滑剤を加え、得られた成形材料をカレンダー製造機により製膜して得られる樹脂シート。
【請求項2】
着色および/または表面に印刷が施されている請求項1に記載の樹脂シート。
【請求項3】
請求項1に記載のシートを2層以上積層して得られる積層樹脂シート。
【請求項4】
請求項2に記載のシートを2層以上積層して得られる積層樹脂シート。
【請求項5】
上地として請求項1に記載の樹脂シートを用い、下地として請求項2に記載の樹脂シートを用い、両者を積層して得られた積層樹脂シート。
【請求項6】
上地として請求項1または2に記載の樹脂シートを用い、下地として熱可塑性樹脂シートを用い、両者を積層して得られた積層樹脂シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−246910(P2007−246910A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102048(P2007−102048)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【分割の表示】特願2003−344740(P2003−344740)の分割
【原出願日】平成11年2月5日(1999.2.5)
【出願人】(000250384)リケンテクノス株式会社 (236)
【Fターム(参考)】