説明

樹脂充填コネクタ

【課題】端子ホルダに外部に露呈して設けられた端子係止部材の損傷を防止するように構成した樹脂充填コネクタを提供すること。
【解決手段】樹脂充填コネクタを構成する端子ホルダ10の外側面に、端子係止部材17を保護するための保護リブ11a〜11fが設けられている。多数の端子ホルダ10をまとめて搬送する際に、端子係止部材17に他の端子ホルダ10が接しようとしても保護リブ11b〜11eによって端子係止部材17への接触が防止されるので、端子係止部材17の損傷を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタハウジング内に樹脂材を充填して防水や防油等を図るように構成した樹脂充填コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示された樹脂充填コネクタは、合成樹脂製の雌型のコネクタハウジングと、コネクタハウジングの室内に収容される合成樹脂製の端子ホルダとを備え、端子を装着した端子ホルダを前記コネクタハウジング内に収容した後、前記コネクタハウジング内に樹脂材を注入して固化することにより、前記コネクタハウジングと前記端子ホルダとを一体化したものである。
【0003】
なお、前記端子ホルダには、例えば雄型の外部接続端子を収容する端子収容室が形成されている。そして、端子収容室には、雄型の外部接続端子の一端に係止して抜出し不可に保持する係止突起を形成した端子係止部材(ランス)が設けられている。
【0004】
前記構成の樹脂充填コネクタによれば、前記コネクタハウジングと前記端子ホルダとの間の隙間はもとより、前記端子ホルダに形成された端子収容室内にも樹脂材が充填されるので、水分や油分の浸入を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−126802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種の樹脂充填コネクタは、上記のように端子ホルダの端子収容室に端子係止用の端子係止部材が設けられており、端子係止部材の端子係止部が設けられた部分の反対側の部分(端子係止部材の背面部)が外部にそのまま露呈している構成のものがある。この場合、端子ホルダはコネクタハウジングに収容されて用いられるので、端子係止部材の背面部が外部に露呈していても外部部品が接触する等の問題はない。
【0007】
ところが、このように端子係止部材の背面部が外部に露呈していると、多数の端子ホルダをまとめて搬送している最中に、端子係止部材の背面部が他の端子ホルダと接して、損傷するおそれがある。
【0008】
本発明の目的は上記課題を解消することに係り、端子ホルダに外部に露呈して設けられた端子係止部材の損傷を防止するように構成した樹脂充填コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 端子ホルダと、当該端子ホルダの端子収容室内に装着された外部接続端子と、前記端子ホルダの外面に一部が露呈して形成され前記端子収容室に装着された前記外部接続端子を抜け出し不可に係止する端子係止部材と、を含む端子ホルダ組立体と、
前記端子ホルダ組立体を収容するコネクタハウジングと、
を備え、
前記コネクタハウジング内に前記端子ホルダ組立体を収容した状態で、前記コネクタハウジング内に樹脂材を充填して固化する樹脂充填コネクタであって、
前記端子ホルダの外面に、
前記端子係止部材を保護する保護リブが設けられていることを特徴とする樹脂充填コネクタ。
【0010】
(2) 前記保護リブは、前記端子係止部材よりも外方に突出していることを特徴とする前記(1)に記載の樹脂充填コネクタ。
【0011】
(3) 前記保護リブは、前記端子係止部材と平行に前記端子係止部材に近接して設けられた長手状の突条であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の樹脂充填コネクタ。
【0012】
(4) 複数の前記端子係止部材を更に備え、隣接する前記端子係止部材間に前記保護リブが設けられていることを特徴とする前記(2)又は(3)に記載の樹脂充填コネクタ。
【0013】
上記(1)の構成によれば、前記端子ホルダの側面に端子係止部材を保護する保護リブが設けられているので、多数の端子ホルダをまとめて搬送する際に、端子ホルダの端子係止部材が設けられている面に、他の端子ホルダ又は他の部品・設備等に接するようなことがあっても、端子係止部材は保護リブにより保護されているので、端子係止部材が他の端子ホルダ又は他の部品・設備等に接することを防止できる。
【0014】
上記(2)の構成によれば、保護リブは、端子係止部材よりも外方に突出しているので、端子係止部材に向けて他の端子ホルダ又は他の部品・設備等が移動しても、端子係止部材に接する前に保護リブに接するので、端子係止部材が他の端子ホルダ又は他の部品・設備等に接することを防止できる。
【0015】
上記(3)の構成によれば、保護リブが、端子係止部材と平行に端子係止部材に近接して設けられているので、端子係止部材が外部に露呈する間口が狭くなり、端子係止部材が他の端子ホルダ又は他の部品・設備等に接することを防止することができる。
【0016】
上記(4)の構成によれば、隣接する前記端子係止部材間に前記保護リブが設けられているので、端子係止部材が他の端子ホルダ又は他の部品・設備等に接することを防止する信頼性が向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明による樹脂充填コネクタによれば、樹脂充填コネクタを構成する端子ホルダに端子係止部材を保護する保護リブが設けられているので、端子ホルダをまとめて搬送する際に、端子係止部材が設けられた面に他の端子ホルダ又は他の部品・設備等が接触するようなことがあっても、端子係止部材は保護リブにより保護されており、端子係止部材が他の端子ホルダ又は他の部品・設備等と接することがなく、端子係止部材の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態である樹脂充填コネクタの構成を示す平面図である。
【図2】端子ホルダの構成を示す斜視図である。
【図3】端子ホルダを図2の裏面側から見た斜視図である。
【図4】コネクタハウジングの構成を示す斜視図である。
【図5】樹脂充填の形態を示す樹脂充填コネクタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る樹脂充填コネクタの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明の実施形態である樹脂充填コネクタの構成を示す平面図、図2は端子ホルダの一側面の構成を示す斜視図、図3は端子ホルダの他の側面の構成を示す斜視図、図4はコネクタハウジングの構成を示す斜視図、図5はコネクタハウジングに端子ホルダ組立体を収容した状態を示す断面図である。
【0021】
本実施形態における樹脂充填コネクタ1は、端子ホルダ10の端子収容室3内に不図示の外部接続端子を収容した端子ホルダ組立体5と、前記端子ホルダ組立体5を収容するコネクタハウジング7とを備え、前記コネクタハウジング7内に前記端子ホルダ組立体5を収容した状態で、エポキシ樹脂材等の樹脂材9を充填し、これを固化して端子ホルダ組立体5とコネクタハウジング7とを一体化した構成になっている。
【0022】
前記端子ホルダ組立体5は、図2及び図3に示すように合成樹脂を1個のブロック状に成形した端子ホルダ10内に予め電線を接続した外部接続端子を組み付けて構成される。
即ち、端子ホルダ10には、図5に示すような端子収容室3が設けられ、端子収容室3内に外部接続端子(何れも図示せず)が収容される。なお、本実施形態に示す樹脂充填コネクタ1には、図5に示すように相手方コネクタAが嵌合されるが、前記のように端子収容室3内に外部接続端子を収容することにより、嵌合位置に相手方コネクタAに接続される端子部Bが想像線で示すように突出することになる。
【0023】
一方、端子ホルダ10の外側面には、図2に示すように後述する端子係止部材(ランス)17を保護するための長手状の保護リブ11a〜11fが形成され、保護リブ11a〜11cの一端は連結部材13aに連結され、各他端は端子ホルダ10の一側面に連結されている。
【0024】
そして、各連結部材13a,13b及び各保護リブ11b,11c,11d,11eの下面は同一面に形成され、前記下面と端子ホルダ10の一側面との間には図2に示すように隙間Gが形成されている。
【0025】
一方、前記保護リブ11b,11c,11d,11eよりも奥まって、端子係止部材17が設けられている。各端子係止部材17は、図5に例示したように弾性アーム17aと係止突起17bとにより構成されている。弾性アーム17aは、一端が端子ホルダ10と一体に形成された片持ち構造であり、その他端、即ち係止突起17bの形成部分側が弾性的に撓み変形するようになっている。
【0026】
前記構成で注目すべきは、端子係止部材17の外側、即ち図2においては端子係止部材17よりも上方に突出して、また図5においてはガイド板15の右側に示すように、端子係止部材17よりも右方に突出して保護リブ11dが設けられていることである。なお、他の保護リブ11b,11c,11eと、端子係止部材17との位置関係も同様である。
【0027】
このため、例えば多数の端子ホルダ10をまとめて搬送する際に、端子係止部材17に他の端子ホルダ10が接しようとしても、他の端子ホルダ10が保護リブ11a〜11dに接することで、保護リブ11a〜11dよりも奥にある端子係止部材17に接することはない。したがって、端子係止部材17は損傷することがなく、確実に端子を係止することができる。
【0028】
なお、端子ホルダ10の側面には、前記のように保護リブ11a,11fが形成されている。前記2本の保護リブ11a,11fは、端子ホルダ10の側壁と一体に形成されているので撓み変形しない。
【0029】
従って、端子ホルダ10が、端子係止部材17が露呈している図2における上面を下にして載置されても、端子ホルダ10が2本の保護リブ11a,11fによって支持され、端子係止部材17が載置面に接することがない。したがって、端子係止部材17は損傷することがなく、確実に端子を係止することができる。
【0030】
一方、端子ホルダ10の他の側面は、図3に示すように保護壁19により覆われ、保護壁19の両端部にリブ22b,22bが設けられている。なお、保護壁19の略中央部には、端子ホルダ10を後述するコネクタハウジング7に係止させるためのロックアーム21aが設けられている。また、図2に示すように端子ホルダ10の一側面にも、ロックアーム21bが設けられている。
【0031】
次に、図4を参照してコネクタハウジング7について説明する。
コネクタハウジング7は、合成樹脂で一体成形したものであり、基本的に一端を開口した箱体に形成されている。そして、ハウジング本体29によって形成された中空部31内に前記端子ホルダ組立体5が収容される。
【0032】
なお、ハウジング本体29の外側面には補強リブ33や、樹脂充填コネクタ1を他の機器に取付けるためのフランジ状の固定部35、支軸36等が一体に形成されている。また、中空部31内にも、リブ37が一体に形成されているが、これらのリブ37は端子ホルダ5とハウジング本体29の内壁面との間に隙間を形成して樹脂材9を円滑に流通させる機能と、ハウジング本体29を補強する機能を有している。
【0033】
コネクタハウジング7の一端、即ち中空部31の形成側は略長方形の開口に形成されているが、他端は筒体39に形成され、その端部は円形の開口部39aに形成されている。
【0034】
そして、端子ホルダ10の各端子収容室3内に不図示の接続端子を収容した状態で、即ち端子ホルダ組立体5に構成した状態でコネクタハウジング7内に収容し、図5に想像線で示すように開口部39aをゴム栓39bにより閉塞する。なお、前記ゴム栓39bには図示を省略しているが、各接続端子に接続された電線を挿通する挿通孔が形成されていて、開口部39aをゴム栓39bにより閉塞した状態では、電線が挿通孔を挿通してコネクタハウジング7外に導出されるようになっている。
【0035】
次に、前記樹脂材9を注入するための構成について説明する。
図2に示すように、各連結部材13a,13b間に隙間が設けられ、この隙間に連通するようにしてコネクタハウジング7内に樹脂材9を注入させる注入口23と、注入口23から注入される樹脂材9の注入を促進する注入促進部25とが設けられている(図5参照)。
【0036】
次に、本実施形態における樹脂材9の充填作用を説明する。なお、注入時の樹脂材9は液状であるから、樹脂材9の注入方向を矢印9aによって図示する。
【0037】
樹脂材9を注入する場合、図5に示した注入口23内に図示しない注入ノズルを挿入し、図5に矢印9aで示すように注入口23内に樹脂材9を注入する。注入口23の下端には、図5に示すように端子ホルダ組立体5の外側に向けて下がり勾配(テーパ状)の注入促進部25が形成されている。
【0038】
従って、注入された樹脂材9は、テーパ状の注入促進部25において流れ方向が斜め下方に変更され、コネクタハウジング7内の底部に溜まる。
【0039】
なお、注入促進部25が傾斜面でなく、仮に樹脂注入方向と直交する面であれば、注入口23の下部において樹脂材9が滞留する。しかし、本実施形態のように注入促進部25として傾斜面を形成することにより、樹脂材9は圧力と重力とにより自然に下方に流れ、注入が促進されることになる。
【0040】
コネクタハウジング7内に溜まった樹脂材9の量は、樹脂材9の注入を継続することにより次第に増加し、樹脂材9の液面高さが次第に高くなって行く。更に樹脂材9の注入を継続することにより、図5に矢印9aで示すように樹脂材9が端子収容室3内、コネクタハウジング7と端子ホルダ3との間に形成される隙間g等の間に、充満して行く。
【0041】
なお、端子収容室3内に収容された接続端子は、端子収容室3内に突出するように設けられた端子係止部材17により係止され、樹脂材9が充満してきても係止が緩むようなことはない。そして、樹脂材9の表面が、例えば端子ホルダ組立体5の端面5a近くまで上昇した時点で樹脂材9の注入を停止する。
【0042】
次に、注入した樹脂材9を固化することにより、端子ホルダ組立体5とコネクタハウジング7とが一体化され、樹脂充填コネクタ1が得られる。樹脂充填コネクタ1は、コネクタハウジング7内の隙間が樹脂材9により塞がれるだけでなく、固化された樹脂材9中に空洞や気泡が混在しないので、防水、防油効果が向上するうえに、強度も向上させることができる。
更に、樹脂材9の注入が滞留無く行われるので、注入作業の作業性が向上する。
【0043】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0044】
例えば、保護リブ11b〜11eは単に外方に突出した形状であるが、端子係止部材17の外側を部分的に又は全体的に覆って端子係止部材17を保護する構成であってもよい。
【0045】
また、実施形態において、樹脂材9として熱可塑性のエポキシ樹脂が適用されているが、流動状に軟化した状態から硬化する材料であれば代替可能である。
また、コネクタハウジング7は、筒体であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 樹脂充填コネクタ
3 端子収容室
5 端子ホルダ組立体
7 コネクタハウジング
9 樹脂材
10 端子ホルダ
11a〜11f,21a,21b 保護リブ
13a,13b 連結部材
15 ガイド板
17 端子係止部材
17a 弾性アーム
17b 係止突起
19 保護壁
21a,21b ロックアーム
23 注入口
25 注入促進部
29 ハウジング本体
31 中空部
33 リブ
35 固定部
39 筒体
39a 開口部
39b ゴム栓
G,g 隙間
A 相手方コネクタ
B 端子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子ホルダと、当該端子ホルダの端子収容室内に装着された外部接続端子と、前記端子ホルダの外面に一部が露呈して形成され前記端子収容室に装着された前記外部接続端子を抜け出し不可に係止する端子係止部材と、を含む端子ホルダ組立体と、
前記端子ホルダ組立体を収容するコネクタハウジングと、
を備え、
前記コネクタハウジング内に前記端子ホルダ組立体を収容した状態で、前記コネクタハウジング内に樹脂材を充填して固化する樹脂充填コネクタであって、
前記端子ホルダの外面に、
前記端子係止部材を保護する保護リブが設けられていることを特徴とする樹脂充填コネクタ。
【請求項2】
前記保護リブは、前記端子係止部材よりも外方に突出していることを特徴とする請求項1に記載の樹脂充填コネクタ。
【請求項3】
前記保護リブは、前記端子係止部材と平行に前記端子係止部材に近接して設けられた長手状の突条であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂充填コネクタ。
【請求項4】
複数の前記端子係止部材を更に備え、隣接する前記端子係止部材間に前記保護リブが設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の樹脂充填コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−182494(P2010−182494A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23795(P2009−23795)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】