樹脂封止方法及び樹脂封止用金型
【課題】製造歩留まり、信頼性を向上させる半導体装置を製造する樹脂封止方法及び樹脂封止用金型を提供する。
【解決手段】半導体素子20cが搭載された支持基板20sを、下金型上に載置し、下金型と、下金型と衝合する上金型10uとを型締めし、金型の樹脂注入口10gから樹脂30rを注入し、樹脂注入口からエアベント孔10aの方向に樹脂を流動させ、上金型の内側壁10uwに樹脂を到達させて、半導体素子を樹脂により封止する。上金型の内側面は、キャビティ10ca内に於いて、被処理基板、半導体素子方向に突出する波形形状10cv−1を有している。これにより、半導体装置を、高い製造歩留まりで、高い信頼性を以て、製造することができる。
【解決手段】半導体素子20cが搭載された支持基板20sを、下金型上に載置し、下金型と、下金型と衝合する上金型10uとを型締めし、金型の樹脂注入口10gから樹脂30rを注入し、樹脂注入口からエアベント孔10aの方向に樹脂を流動させ、上金型の内側壁10uwに樹脂を到達させて、半導体素子を樹脂により封止する。上金型の内側面は、キャビティ10ca内に於いて、被処理基板、半導体素子方向に突出する波形形状10cv−1を有している。これにより、半導体装置を、高い製造歩留まりで、高い信頼性を以て、製造することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂封止方法及び樹脂封止用金型に関し、特にワイヤボンディング法が適用された半導体素子などの電子部品を樹脂封止する方法、並びに当該樹脂封止法を実施するに用いられる樹脂封止用金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子を回路基板等の支持基板上に搭載し、ワイヤボンディング等を行った後、当該半導体素子、ボンディングワイヤ等を封止して半導体装置を形成するための手段の一つとして、樹脂封止(樹脂モールド)工程が挙げられる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
かかる樹脂封止工程に於いて用いられる一般的な樹脂封止用金型の構造の一部を、図20に示す。
この図では、樹脂モールドを形成する金型の下金型100dと上金型100uが、型締めされて一対になった状態が示されている。
【0004】
即ち、下金型100dと上金型100uとが型締めされた状態を以て、キャビティ100cを形成している。
また、下金型100d上には、複数個の半導体素子200cが搭載された支持基板200sが載置されている。また、半導体素子200cの電極(図示せず)から支持基板200sの電極端子(図示せず)には、ボンディングワイヤ200wが接続されている。
【0005】
そして、封止用樹脂300rがゲート部100gから注入され、当該ゲート部100gからエアベント孔100aの方向に向かい流動して、当該キャビティ100c内に充填される。
【0006】
これにより、支持基板200s上の半導体素子200c並びにボンディングワイヤ200wが封止用樹脂300rにより封止される。
【特許文献1】特開2002−110718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この様に、ゲート部100gから注入された封止用樹脂300rがエアベント孔100a方向に流動すると、封止用樹脂300rの樹脂圧によってボンディングワイヤ200wが変形し、ボンディングワイヤ200wの一部が相互に接触し、短絡を生ずる場合がある。
【0008】
かかる現象を、図21乃至図23を用いて説明する。当該図21乃至図23には、図20のX−X’断面に於けるエアベント孔100a付近の状態を示す。
上記ゲート部100gからエアベント孔100aの方向に、封止用樹脂300rを充填させる様子を図21に示す。
【0009】
即ち、ゲート部100gからエアベント孔100aの方向に封止用樹脂300rを充填させると、矢印aの方向に封止用樹脂300rが流動する。
図21に示される様に、矢印A(楕円状の実線で包囲した部分)で示されるボンディングワイヤ200wは、封止用樹脂300rと接触していないため、原形を維持している。
【0010】
しかし、封止用樹脂300rがこれらのボンディングワイヤ200wにまで到達し、当該封止用樹脂300rと当該ボンディングワイヤ200wとが接触すると、当該封止用樹脂300rの流動方向とボンディングワイヤ200wの延在する方向が異なるため、当該ボンディングワイヤ200wは、封止用樹脂300rから圧力を受け、図22に示される様に湾曲してしまう。
【0011】
また、封止用樹脂300rの充填を続けると、上金型100uのエアベント孔100a付近の内側壁100uwに於いて、封止用樹脂300rの跳ね返りが生じ、矢印aとは逆方向に流動する状態が出現する。
【0012】
即ち、上金型100uの側壁100uwの近傍では、矢印aの方向に流動した封止用樹脂300rが内側壁100uwに於いて逆方向に跳ね返り、図23に示される様に、矢印aとは逆方向の矢印bの方向に流動する樹脂が出現する。
【0013】
この様な樹脂の跳ね返りが生ずると、矢印aの方向に湾曲したボンディングワイヤ200wと、矢印bの方向に湾曲したボンディングワイヤ200wとが接触、即ち短絡を生じてしまう。
【0014】
この様に、ゲート部100gからエアベント孔100aに封止用樹脂300rを注入すると、特にエアベント近傍に位置する半導体素子200cに於いて、その電極から導出されたボンディングワイヤの相互にショート(短絡)を生じてしまう。
【0015】
特に、半導体素子200cが高集積化、小型化する傾向にあり、隣接するボンディングワイヤの導出ピッチが狭小化する傾向にある。このため、前記ボンディングワイヤ間のショートは、発生し易い状況にある。
【0016】
本発明はこの様な点に鑑みてなされたものであり、製造歩留まりを向上させ、信頼性の高い半導体装置を製造する樹脂封止方法及び樹脂封止用金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、被処理体を上金型と下金型により形成されるキャビティ内に配置し、当該キャビティ内に封止用樹脂を注入して前記被処理体を樹脂封止する方法に於いて、金型として、エアベント孔が配設された側壁の前記キャビティ内側面が、波形を有する金型を用いることを特徴とする樹脂封止方法が提供される。
【0018】
また、被処理体を上金型と下金型により形成されるキャビティ内に配置し、当該キャビティ内に封止用樹脂を注入して前記被処理体を樹脂封止する方法に於いて、金型として、エアベント孔が配設された側壁の前記キャビティ内側面近傍に、柱状体が配設された金型を用いることを特徴とする樹脂封止方法が提供される。
【0019】
また、上金型と下金型により構成されるキャビティ内に於いて、エアベント孔が配設された側壁の内側面が波形を有することを特徴とする樹脂封止用金型が提供される。
また、上金型と下金型により構成されるキャビティ内に於いて、エアベント孔が配設された側壁の近傍に、柱状体が配設されてなることを特徴とする樹脂封止用金型が提供される。
【発明の効果】
【0020】
上記手段によれば、半導体装置の製造歩留まりを高めることができ、且つ信頼性の高い半導体装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本実施の形態に係る樹脂封止方法、並びに当該樹脂封止方法を実施する樹脂封止装置(樹脂封止用金型)について、図面を参照しながら説明する。
<第1の実施の形態>
本発明の、第1の実施の形態に係る、半導体装置の製造方法の製造工程フローを、図1に示す。
【0022】
先ず、半導体素子が搭載された支持基板を、下金型上に載置する(ステップS1)。
次に、下金型と、下金型と衝合する上金型とを型締めする(ステップS2)。
これにより、金型内のキャビティ内に、半導体素子が搭載された支持基板が配置される。
【0023】
次いで、金型の樹脂注入口から、キャビティ内に封止用樹脂を注入する(ステップS3)。
そして、当該キャビティ内に於いて、封止用樹脂をエアベント孔の方向に流動させ、上金型の内側壁に樹脂を到達させて、前記半導体素子を樹脂により封止する(ステップS4)。
【0024】
この時、前記上金型の内側面は、キャビティ内に於いて、被処理基板、半導体素子方向に突出する波形形状を有している。
この様な製造方法により、第1の実施の形態に係る半導体装置が製造される。
【0025】
本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
尚、以下に示す図に於いては、同一の部材には同一の符号を付している。
本発明の第1の実施の形態で用いられる樹脂封止装置1Aの、金型部分の要部断面を図2に示す。
【0026】
図2に於いては、上金型10uと下金型10dとが衝合し、それらが一対になって型締めされた状態が示されている。
上金型10uと下金型10dとが衝合されると、樹脂封止装置1Aの金型内に、キャビティ10caが形成される。当該キャビティ10ca内には、被処理基板として、一方の主面(上面)に複数個の半導体素子20cが搭載された大判の支持基板20sが、下金型10d上に載置された状態で収容されている。
【0027】
上金型10uの側壁には、ゲート部(樹脂注入口)10gとエアベント孔10aとが、対向して配置されている。
ゲート部10gは、封止用樹脂30rの注入口である。
【0028】
当該ゲート部10gからキャビティ10ca内に、溶融状態にある封止用樹脂30rが注入されると、当該封止用樹脂30rはエアベント孔10aが配置されている側壁の方向(矢印aの方向)に流動してキャビティ10ca内に充填される。この時、キャビティ10ca内に存在するガスは、エアベント孔10aから放出される。
【0029】
尚、上金型10uの内側壁は、上金型10uの主面10sに垂直な方向から傾いた傾斜面10tpの角度を“θ”とすると、θが下金型10dの主面の垂直方向に対し、5°〜15°に選択された傾斜面とされている。
【0030】
かかる上金型10uの内側壁を傾斜面とすることにより、硬化した封止用樹脂30rと上金型10uとを容易に分離することができる。即ち封止用樹脂30r部を上金型10uから容易に取り外すことができる。尚、かかる傾斜角θが5°より小さくなると、封止用樹脂30rと上金型10uとの密着により、封止用樹脂30r部を上金型10uから取り外し難く、また、θが15°より大きいと、支持基板20sに搭載される半導体素子数が減少してしまう。
【0031】
本発明による樹脂封止装置1Aにあっては、図2並びに図2のX−X’断面である図3に示される様に、前記エアベント孔10aが配設される上金型10uの内側壁に、キャビティ内部、即ち、被処理基板、半導体素子方向に突出する半円状の凸部と同様に半円状の凹部含む凹凸部10cv−1が複数個配設される。
【0032】
即ち、前記エアベント孔10aが配設されて、流動する封止用樹脂30rが到達する上金型10uの内側面の平面形状は、連続する円弧状の波形とされている。
尚、当該凹凸部10cv−1の内側壁は、前述の如き傾斜角θ(θ=5°〜15°)を有する。
【0033】
また、前記下金型10dは、支持基板20sの支持台としても機能する。
当該下金型10dには、ガイドピン(固定用ピン)を設け、当該ガイドピンにより支持基板20sの位置決めを行ってもよい(図示せず)。
【0034】
また、当該支持基板20sを載置した後、必要に応じて支持基板20sを下金型10dに吸引保持してもよい。
尚、上金型10u及び下金型10dの材質としては、例えば、ステンレス鋼材が適用される。但し、上金型10uが封止用樹脂30rと接する面、下金型10dが支持基板20sと接する面には、超硬材を配置してもよい。
【0035】
また、上金型10u及び下金型10dには、夫々、ヒータ機構が備えられている(図示せず)。そして、当該ヒータ機構により、上金型10u及び下金型10dの温度調整が行われる。
【0036】
また、被処理基板である支持基板20sは、例えば、ガラス−エポキシ樹脂、ガラス−ビスマレイミドトリアジン(BT)、またはポリイミド等の有機絶縁材料、あるいは、セラミック、ガラス等の無機絶縁材料から形成される。
【0037】
当該支持基板20sは、必要に応じて、片面配線構造、両面配線構造或いは多層配線構造とされる。尚、当該支持基板20sは、回路基板、配線基板、プリント基板、インターポーザー、あるいはパッケージ基板とも称される。
【0038】
一方、前記支持基板20s上に搭載される複数個の半導体素子20cに於いては、例えば、シリコン(Si)またはガリウム砒素(GaAs)等の半導体基材の一方の主面に、所謂ウエハプロセスが適用されて、トランジスタ等の能動素子、容量素子等の受動素子、並びにこれらの機能素子を接続する配線層をもって電子回路が形成されている。
【0039】
そして、夫々の半導体素子20cに於ける電極と、支持基板20sに形成された電極端子との間は、ボンディングワイヤ20wにより相互に接続されている。当該ボンディングワイヤ20wとしては、例えば、金(Au)線が適用される。
【0040】
次に、前記樹脂封止装置1Aを用いて、支持基板20s上に搭載された複数個の半導体素子20c並びにボンディングワイヤ20w等を封止用樹脂30rにより封止する過程について、図4乃至図6を用いて説明する。
【0041】
尚、図4乃至図6は、図2のX−X’断面に於いて、上金型10uから下金型10dの方向に俯瞰した状態を示すもので、上金型に於ける、エアベント孔10a近傍の構成が拡大して示されている。
【0042】
前記樹脂封止装置1A内に、被処理支持基板20sを配置して、上金型10uと上記下金型10dとを型締めした状態を図4に示す。
上金型10uと上記下金型10dとにより形成されたキャビティ内に配置された被処理支持基板20sの主面には、前述の如く、複数の半導体素子20cが搭載され、当該半導体素子20cの電極(図示せず)と支持基板20s上の電極端子(図示せず)との間は、ボンディングワイヤ20wにより接続されている。
【0043】
一方、上金型10uの一つの壁の、下金型10dへの対向面には、選択的にエアベント孔10aが所定の間隔をもって複数配設されている。
そして、当該上金型10uに於ける、前記エアベント孔10aが配設された壁の内側面には、キャビティ内部、即ち、被処理基板、半導体素子方向に突出する半円状の凸部と、同様に半円状の凹部とを含む凹凸部10cv−1が複数個配設されている。
【0044】
即ち、前記エアベント孔10aが配設されて、流動する封止用樹脂30rが到達する上金型10uの内側面の平面形状は、連続する円弧状の波形とされている。
そして、当該円弧状の波形を有する凹凸部10cv−1は、エアベント孔10aに連通している。
【0045】
かかる凹凸部10cv−1にあっては、凹凸部の深さをd1、幅をd2とすると、d1は、3mm〜10mmであり、d2は、3mm〜10mmとされる。
特に、d1とd2とが等しく、例えば、d1,d2が5mmの場合、rは2.5mmのR加工が施されている。
【0046】
また、隣り合う凹凸部間のピッチd3は、8mm〜15mmに選択される。
尚、かかる寸法は一例であり、これに限定されるものではない。
また、上金型10u並びに下金型10dは、この段階に於いて、所定の温度に加熱されている。
【0047】
例えば、樹脂封止装置1Aに於けるキャビティ内に注入する樹脂として、熱硬化性のエポキシ系樹脂を適用する場合には、被処理支持基板20sを下金型10d上に載置する前に、下金型10d及び上金型10uを、160℃〜180℃程度に加熱しておく。
【0048】
次に、図5に示す如く、樹脂注入手段を適用して、前記ゲート部10gからキャビティ10ca内に、溶融状態の封止用樹脂30rを注入・充填する。
当該封止用樹脂30rとしては、加熱されることにより溶融・硬化するエポキシ系樹脂が適用される。また、当該封止用樹脂30rには、シリカ(SiO2)またはアルミナ(Al2O3)等からなる無機フィラーを含有してもよい。
【0049】
注入された封止用樹脂30rは、キャビティ10ca内に於いて、前記ゲート部10gからエアベント孔10aの方向に向かい流動する(図中の矢印aの方向)。
この時、エアベント孔10aの方向に向かって流動する封止用樹脂30rにより、矢印aとは略垂直方向に配設されたボンディングワイヤ20w(矢印Aで示す楕円状の実線で包囲した部分のボンディングワイヤ20w)は、封止用樹脂30rにより圧力を受け、矢印aの方向に湾曲してしまう。
【0050】
尚、この時、隣接するボンディングワイヤ20wは一様に同じ方向に変形することから、互いに接触することは生じない。
そして、溶融状態の封止用樹脂30rが、キャビティ10ca内を流動して、エアベント孔10aを具備した上金型10uの内側面にまで到達した状態を図6に示す。
【0051】
本実施の形態にかかる樹脂封止装置1Aにあっては、前述の如く、前記エアベント孔10aが配設されて、流動する封止用樹脂30rが到達する上金型10uの内側面の平面形状は、連続する円弧状の波形とされている。
【0052】
このため、当該上金型10uの内側面に衝突する封止用樹脂30rは、当該連続する円弧状の波形部に於いて反射するも、その殆どの反射方向が矢印bの方向であって、多くは前記矢印aとは逆方向とはならない。即ち、当該円弧状の波形部に於ける封止用樹脂30rの反射は、斜め方向あるいは直交する方向にもなされる。
【0053】
従って、封止用樹脂30rの流動により矢印aの方向に湾曲したボンディングワイヤ20w(矢印Aで示す楕円状の実線で包囲した部分のボンディングワイヤ20w)は、矢印aとは逆方向の圧力を受ける確率が低下し、当該矢印aとは逆方向に再度変形することが抑制される。
【0054】
これにより、当該ボンディングワイヤ20w同士の接触が防止される。
前記溶融状態の封止用樹脂30rが、キャビティ10ca内に充填されることにより、被処理支持基板20s上の複数個の半導体素子20c、並びにボンディングワイヤ20wなどが、当該封止用樹脂30rにより被覆される。
【0055】
しかる後、上金型10uと下金型10dとを型締めした状態に於いて封止用樹脂30rを引き続き加熱し、当該封止用樹脂30rを硬化せしめる。
当該封止用樹脂30rの硬化がなされた後、上金型10uと下金型10dとを型開きし、下金型10d上から成形品、即ち樹脂封止品を取り出す。
【0056】
取り出した樹脂成型品の形態を、図7に示す。
当該図7では、樹脂成型品即ち樹脂封止体の平面形状が示されているが、封止状態を示すため、被処理支持基板20s上に於いて、封止用樹脂30rにより被覆された半導体素子20c、ボンディングワイヤ20wなども表記している。
【0057】
当該成形品には、前記半導体素子20cなどの被覆部に連続して、前記上金型10uに於けるところの、連続する円弧状の波形部に対応した突出部30rbpが含まれている。
しかる後、前記支持基板20sの他方の主面(裏面側)に於いて、半導体素子20cの電極に対応して配設された電極端子に対し、半田ボール等からなる外部接続用端子を配設する(図示せず)。
【0058】
複数の半田ボールを支持基板20s裏面に格子状に配設させることにより、所謂BGA(Ball Grid Array)構造を形成する。
しかる後、封止用樹脂30rと支持基板20sとを含む成形体を、ダイシングラインDLに沿って、その厚さ方向(積層方向)にダイシングし、個片化された樹脂封止型の半導体装置を形成する。
【0059】
前述の如く、上金型のエアベント孔が配設された壁の内側面に、連続する円弧状の波形部を配設することにより、当該上金型の内側面に於いて封止用樹脂の反射方向を分散させ、当該樹脂の流動によるボンディングワイヤの特定方向への湾曲を防止することができる。
【0060】
これにより、樹脂封止される半導体素子に於けるボンディングワイヤ相互間の接触が防止されて、当該半導体素子を含む半導体装置の製造歩留りを高めることができ、また当該半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0061】
尚、前記樹脂封止装置1Aを複数、並設させた樹脂封止装置を用いてもよい。この様な樹脂封止装置であれば、より多数の半導体素子20cを一括して樹脂封止することができる。
【0062】
この様な本発明の第1の実施の形態にかかる樹脂封止装置は、以下の様に、種々の変形を可能としている。
<第1の実施の形態の変形例1>
前記第1の実施の形態に於ける樹脂封止装置1Aの、第1の変形例1Bを、図8に示す。
【0063】
当該図8にあっては、図4と同様に、上金型10uから下金型10dの方向に俯瞰した状態を示すもので、上金型に於ける、エアベント孔10a近傍の構成が拡大して示されている。
【0064】
即ち、上金型10uと上記下金型10dとにより形成されたキャビティ内に配置された被処理支持基板20sの主面には、複数の半導体素子20cが搭載され、当該半導体素子20cの電極(図示せず)と支持基板20s上の電極端子(図示せず)との間は、ボンディングワイヤ20wにより接続されている。
【0065】
一方、上金型10uの一つの壁の、下金型10dへの対向面には、選択的にエアベント孔10aが配設されている。
そして、当該上金型10uに於ける、前記エアベント孔10aが配設された壁の内側面には、キャビティ内部、即ち、被処理基板、半導体素子方向に突出する矩形の凸部を含む矩形状の凹凸部10cv−2が複数個配設されている。
【0066】
即ち、前記エアベント孔10aが配設されて、流動する封止用樹脂30rが到達する上金型10uの内側面の平面形状は、連続する矩形状の波形とされている。
そして、当該矩形状の波形を有する凹凸部10cv−2は、エアベント孔10aに連通している。
【0067】
かかる構成に於いて、側壁10uw側に形成された凹部の深さをd1、凹凸部10cv−2の幅をd2とすると、d1は、3mm〜10mmであり、d2は、3mm〜10mmとされる。
【0068】
また、隣り合う凹凸部間のピッチd3は、8mm〜15mmとされる。
尚、この様な寸法は、一例であり、これに限定されるものではない。
この様に、第1の実施の形態の変形例1にあっては、上金型の内側面に連続する矩形状の波形部を配設することにより、当該上金型の内側面に於ける封止用樹脂の反射の方向を分散させ、当該樹脂の流動によるボンディングワイヤの特定方向への湾曲を防止することができる。
【0069】
また、当該上金型の内側面からボンディングワイヤ迄の距離を遠くして、反射される封止用樹脂の流動を抑制することができる。
これにより、樹脂封止される半導体素子に於けるボンディングワイヤ相互間の接触が防止されて、当該半導体素子を含む半導体装置の製造歩留りを高めることができ、また当該半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0070】
尚、図8に示される形態にあっては、凹凸部10cv−2は、エアベント孔10aの位置に対応して配設されているが、かかる構成に限られるものではなく、例えば隣り合うエアベント孔10aの間に、細幅の凹部を配設してもよい。
【0071】
<第1の実施の形態の変形例2>
前記第1の実施の形態に於ける樹脂封止装置1Aの、第2の変形例1Cを、図9に示す。
【0072】
当該図9にあっては、図4と同様に、上金型10uから下金型10dの方向に俯瞰した状態を示すもので、上金型に於ける、エアベント孔10a近傍の構成が拡大して示されている。
【0073】
即ち、上金型10uと上記下金型10dとにより形成されたキャビティ内に配置された被処理支持基板20sの主面には、複数の半導体素子20cが搭載され、当該半導体素子20cの電極(図示せず)と支持基板20s上の電極端子(図示せず)との間は、ボンディングワイヤ20wにより接続されている。
【0074】
一方、上金型10uの一つの壁の、下金型10dへの対向面には、選択的にエアベント孔10aが配設されている。
そして、当該上金型10uに於ける、前記エアベント孔10aが配設された壁の内側面には、キャビティ内部、即ち、被処理基板、半導体素子方向に突出する三角形状の凸部と、同様に三角形状の凹部を含む波形の凹凸部10cv−3が複数個配設されている。
【0075】
即ち、前記エアベント孔10aが配設されて、流動する封止用樹脂30rが到達する上金型10uの内側面の平面形状は、連続する三角形状の波形とされている。
そして、当該三角形状の波形の凹凸部10cv−3は、エアベント孔10aに連通している。
【0076】
かかる構成に於いて、側壁10uw側に形成された凹凸部10cv−3の深さをd1、三角形の底辺をd2とすると、d1は、3mm〜10mmであり、d2は、3mm〜10mmとされる。
【0077】
また、隣り合う凹凸部間のピッチd3は、8mm〜15mmとされる。
尚、この様な寸法は、一例であり、これに限定されるものではない。
この様に、第1の実施の形態の変形例2にあっては、上金型の内側面に連続する三角形状の波形部を配設することにより、当該上金型の内側面に於ける封止用樹脂の反射の方向を分散させ、当該樹脂の流動によるボンディングワイヤの特定方向への湾曲を防止することができる。
【0078】
これにより、樹脂封止される半導体素子に於けるボンディングワイヤ相互間の接触が防止されて、当該半導体素子を含む半導体装置の製造歩留りを高めることができ、また当該半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0079】
尚、当該変形例2にあっては、三角形の頂点が平坦化された状態であるが、当該頂点が鋭角をなすものとされることは勿論可能である。
<第1の実施の形態の変形例3>
前記第1の実施の形態に於ける樹脂封止装置1Aの、第3の変形例1Dを、図10に示す。
【0080】
当該図10にあっては、図4と同様に、上金型10uから下金型10dの方向に俯瞰した状態を示すもので、上金型に於ける、エアベント孔10a近傍の構成が拡大して示されている。
【0081】
即ち、上金型10uと上記下金型10dとにより形成されたキャビティ内に配置された被処理支持基板20sの主面には、複数の半導体素子20cが搭載され、当該半導体素子20cの電極(図示せず)と支持基板20s上の電極端子(図示せず)との間は、ボンディングワイヤ20wにより接続されている。
【0082】
一方、上金型10uの一つの壁の、下金型10dへの対向面には、選択的にエアベント孔10aが配設されている。
そして、当該上金型10uに於ける、前記エアベント孔10aが配設された壁の内側面には、円弧状の凹部10cv−4が複数個配設されている。
【0083】
即ち、前記エアベント孔10aが配設されて、流動する封止用樹脂30rが到達する上金型10uの内側面の平面形状は、直線状の内側面に、互いに離間して、円弧状の凹部10cv−4が複数個配設された形状とされている。
【0084】
そして、当該円弧状の凹部10cv−4は、エアベント孔10aに連通している。
かかる構成に於いて、側壁10uw側に配設された凹部10cv−4の深さをd1、円弧状の径をd2とすると、d1は、3mm〜10mmであり、d2は、3mm〜10mmとされる。
【0085】
また、隣り合う凹部10cv−4のピッチをd3は、8mm〜15mmとされる。
尚、この様な寸法は、一例であり、これに限定されるものではない。
この様に、第1の実施の形態の変形例3にあっては、上金型の内側面に連続する円弧状の凹部を配設することにより、当該上金型の内側面に於ける封止用樹脂の反射の方向を分散させ、当該樹脂の流動によるボンディングワイヤの特定方向への湾曲を防止することができる。
【0086】
また、当該上金型の内側面からボンディングワイヤ迄の距離を遠くして、反射される封止用樹脂の流動を抑制することができる。
これにより、樹脂封止される半導体素子に於けるボンディングワイヤ相互間の接触が防止されて、当該半導体素子を含む半導体装置の製造歩留りを高めることができ、また当該半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0087】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
第2の実施の形態で用いられる樹脂封止装置2Aの、金型部分の要部断面を図11に示す。
【0088】
図11に於いては、上金型10uと下金型10dとが衝合し、それらが一対になって型締めされた状態が示されている。
上金型10uと下金型10dとが衝合されると、樹脂封止装置2Aの金型内に、キャビティ10caが形成される。当該キャビティ10ca内には、被処理基板として、一方の主面(上面)に複数個の半導体素子20cが搭載された大判の支持基板20sが、下金型10d上に載置された状態で収容されている。
【0089】
上金型10uの側壁には、ゲート部(樹脂注入口)10gとエアベント孔10aとが、対向して配置されている。
ゲート部10gは、封止用樹脂30rの注入口である。
【0090】
当該ゲート部10gからキャビティ10ca内に、溶融状態にある封止用樹脂30rが注入されると、当該封止用樹脂30rはエアベント孔10aが配置されている側壁の方向(矢印aの方向)に流動してキャビティ10ca内に充填される。この時、キャビティ10ca内に存在するガスは、エアベント孔10aから放出される。
【0091】
尚、上金型10uの内側壁は、上金型10uの主面10sに垂直な方向から傾いた傾斜面10tpの角度を“θ”とすると、θが下金型10dの主面の垂直方向に対し、5°〜15°に選択された傾斜面とされている。
【0092】
かかる上金型10uの内側壁を傾斜面とすることにより、硬化した封止用樹脂30rと上金型10uとを容易に分離することができる。即ち封止用樹脂30r部を上金型10uから容易に取り外すことができる。尚、かかる傾斜角θが5°より小さくなると、封止用樹脂30rと上金型10uとの密着により、封止用樹脂30r部を上金型10uから取り外し難く、また、θが15°より大きいと、支持基板20sに搭載される半導体素子数が減少してしまう。
【0093】
本実施の形態にかかる樹脂封止装置2Aにあっては、当該図11並びに当該図11のX−X’断面である図12に示される様に、キャビティ10ca内に於いて、前記エアベント孔10aが配設される上金型10uの内側壁の近傍に、当該上金型の上面から下金型方向に延びる五角形柱10bp−1が複数本、当該上金型10uの内側壁面に平行して配設される。
【0094】
即ち、前記エアベント孔10aが配設されて、流動する封止用樹脂30rが到達する上金型10uの内側面の近傍に、鋭角部が半導体素子の搭載部に向けられて、五角形柱10bp−1が複数本、当該上金型10uの内側壁面に平行して配設される。
【0095】
尚、当該五角形柱10bp−1も、上金型10u近傍では太く、そして下金型10d方向に細くされて、その側面は、傾斜角θ(θ=5°〜15°)を有する。
また、前記下金型10dは、支持基板20sの支持台としても機能する。
【0096】
当該下金型10dには、ガイドピン(固定用ピン)を設け、当該ガイドピンにより支持基板20sの位置決めを行ってもよい(図示せず)。
また、当該支持基板20sを載置した後、必要に応じて支持基板20sを下金型10dに吸引保持してもよい。
【0097】
尚、上金型10u及び下金型10dの材質としては、例えば、ステンレス鋼材が適用される。但し、上金型10uが封止用樹脂30rと接する面、下金型10dが支持基板20sと接する面には、超硬材を配置してもよい。
【0098】
また、上金型10u及び下金型10dには、夫々、ヒータ機構が備えられている(図示せず)。そして、当該ヒータ機構により、上金型10u及び下金型10dの温度調整が行われる。
【0099】
また、被処理基板である支持基板20sは、例えば、ガラス−エポキシ樹脂、ガラス−ビスマレイミドトリアジン(BT)、またはポリイミド等の有機絶縁材料、あるいは、セラミック、ガラス等の無機絶縁材料から形成される。
【0100】
当該支持基板20sは、必要に応じて、片面配線構造、両面配線構造或いは多層配線構造とされる。尚、当該支持基板20sは、回路基板、配線基板、プリント基板、インターポーザー、あるいはパッケージ基板とも称される。
【0101】
一方、前記支持基板20s上に搭載される複数個の半導体素子20cに於いては、例えば、シリコン(Si)またはガリウム砒素(GaAs)等の半導体基材の一方の主面に、所謂ウエハプロセスが適用されて、トランジスタ等の能動素子、容量素子等の受動素子、並びにこれらの機能素子を接続する配線層をもって電子回路が形成されている。
【0102】
そして、夫々の半導体素子20cに於ける電極と、支持基板20sに形成された電極端子との間は、ボンディングワイヤ20wにより相互に接続されている。当該ボンディングワイヤ20wとしては、例えば、金(Au)線が適用される。
【0103】
次に、前記樹脂封止装置2Aを用いて、支持基板20s上に搭載された複数個の半導体素子20c並びにボンディングワイヤ20w等を封止用樹脂30rにより封止する過程について、図13乃至図15を用いて説明する。
【0104】
尚、図13乃至図15は、前記図11のX−X’断面に於いて、上金型10uから下金型10dの方向に俯瞰した状態を示すもので、上金型に於ける、エアベント孔10a近傍の構成が拡大して示されている。
【0105】
前記樹脂封止装置2A内に、被処理支持基板20sを配置して、上金型10uと上記下金型10dとを型締めした状態を図13に示す。
上金型10uと上記下金型10dとにより形成されたキャビティ内に配置された被処理支持基板20sの主面には、前述の如く、複数の半導体素子20cが搭載され、当該半導体素子20cの電極(図示せず)と支持基板20s上の電極端子(図示せず)との間は、ボンディングワイヤ20wにより接続されている。
【0106】
一方、上金型10uの一つの壁の、下金型10dへの対向面には、エアベント孔10aが所定の間隔をもって複数配設されている。
そして、当該上金型10uに於ける、前記エアベント孔10aが配設された壁の内側面近傍には、当該上金型の上面から下金型方向に延びる五角形柱10bp−1が複数本、当該上金型10uの内側壁面に平行して配設されている。
【0107】
即ち、前記エアベント孔10aが配設されて、流動する封止用樹脂30rが到達する上金型10uの内側面の近傍に、一つの鋭角部(図中に矢印αで示す部位)が半導体素子20cの搭載部に向けられた五角形柱10bp−1が複数本、その側面(図中に矢印βで示す部位)を平行に、且つ当該上金型10uの内側壁面に平行して配設されている。当該五角形柱10bp−1の前記一つの鋭角部は、前記キャビティ内に対して封止用樹脂が流入して来る方向に対向することとなる。
【0108】
かかる五角形柱10bp−1の封止用樹脂の流動方向に沿う長さをd1、幅をd2とすると、d1は、2mm〜5mmであり、d2は、1mm〜3mmとされる。
また、隣り合う五角形柱10bp−1間の距離d3は、1mm〜3mmとされる。更に、当該五角形柱10bp−1と側壁10uw間の距離d4は、1mm〜3mmとされる。
【0109】
尚、かかる寸法は一例であり、これに限定されるものではない。
また、上金型10u並びに下金型10dは、この段階に於いて、所定の温度に加熱されている。
【0110】
例えば、樹脂封止装置2Aに於けるキャビティ内に注入する樹脂として、熱硬化性のエポキシ系樹脂を適用する場合には、被処理支持基板20sを下金型10d上に載置する前に、下金型10d及び上金型10uを、160℃〜180℃程度に加熱しておく。
【0111】
次に、図14に示す如く、樹脂注入手段を適用して、前記ゲート部10gからキャビティ10ca内に、溶融状態の封止用樹脂30rを注入・充填する。
当該封止用樹脂30rとしては、前記第1の実施の態様と同様に、加熱されることにより溶融・硬化するエポキシ系樹脂が適用される。また、当該封止用樹脂30rには、同様に、シリカ(SiO2)またはアルミナ(Al2O3)等からなる無機フィラーを含有してもよい。
【0112】
注入された封止用樹脂30rは、キャビティ10ca内に於いて、前記ゲート部10gからエアベント孔10aの方向に向かい流動する(図中の矢印aの方向)。
この時、エアベント孔10aの方向に向かって流動する封止用樹脂30rにより、矢印aとは略垂直方向に配設されたボンディングワイヤ20w(矢印Aで示す楕円状の実線で包囲した部分のボンディングワイヤ20w)は、封止用樹脂30rにより圧力を受け、矢印aの方向に湾曲してしまう。
【0113】
尚、この時、隣接するボンディングワイヤ20wは一様に同じ方向に変形することから、互いに接触することは生じない。
そして、溶融状態の封止用樹脂30rが、キャビティ10ca内を流動して、エアベント孔10aを具備した上金型10uの内側面にまで到達した状態を図15に示す。
【0114】
本実施の形態にかかる樹脂封止装置2Aにあっては、前述の如く、前記エアベント孔10aが配設されて、流動する封止用樹脂30rが到達する上金型10uの内側面近傍には、当該上金型の上面から下金型方向に延びる五角形柱10bp−1が複数本、当該上金型10uの内側壁面に平行して配設されている。
【0115】
このため、封止用樹脂30rは当該五角形柱10bp−1に衝突し、当該五角形柱10bp−1に於いて反射される。
しかしながら、その殆どの反射方向が矢印bの方向であって、前記矢印aとは逆方向とはならない。即ち、当該五角形柱10bp−1に於ける封止用樹脂30rの反射は、斜め方向になされる。
【0116】
また、当該五角形柱10bp−1の間を通り抜けて上金型10uの内側壁面に到達した封止用樹脂30rは、当該内側壁面に於いて反射されるも、当該五角形柱10bp−1に於ける内側壁面との対向面(図中に矢印γで示す部位)に於いてその流動が制限される。
【0117】
従って、封止用樹脂30rの流動により矢印aの方向に湾曲したボンディングワイヤ20w(矢印Aで示す楕円状の実線で包囲した部分のボンディングワイヤ20w)は、矢印aの逆方向に圧力を受ける率が低下し、矢印aの逆方向に再度変形することが抑制される。
【0118】
これにより、当該ボンディングワイヤ20w同士の接触が防止される。
前記溶融状態の封止用樹脂30rが、キャビティ10ca内に充填されることにより、被処理支持基板20s上の複数個の半導体素子20c、並びにボンディングワイヤ20wなどが、当該封止用樹脂30rにより被覆される。
【0119】
しかる後、上金型10uと下金型10dとを型締めした状態に於いて封止用樹脂30rを引き続き加熱し、当該封止用樹脂30rを硬化せしめる。
当該封止用樹脂30rの硬化がなされた後、上金型10uと下金型10dとを型開きし、下金型10d上から成形品、即ち樹脂封止品を取り出す。
【0120】
この様に、本実施の形態にあっては、上金型の内側面近傍に、当該上金型の上面から下金型方向に延びる五角形柱10bp−1が複数本、当該上金型10uの内側壁面に平行して配設されている。
【0121】
かかる五角形柱10bp−1を配設することにより、当該上金型の内側面に於ける封止用樹脂の反射が防止・抑制され、且つ、当該五角形柱10bp−1に於ける反射の方向も分散されて、当該封止用樹脂の流動によるボンディングワイヤの特定方向への湾曲を防止することができる。
【0122】
これにより、樹脂封止される半導体素子に於けるボンディングワイヤ相互間の接触が防止されて、当該半導体素子を含む半導体装置の製造歩留りを高めることができ、また当該半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0123】
<第2の実施の形態の変形例1>
前記第2の実施の形態に於ける樹脂封止装置2Aの、第1の変形例2Bを、図16に示す。
【0124】
当該図16にあっては、図13と同様に、上金型10uから下金型10dの方向に俯瞰した状態を示すもので、上金型に於ける、エアベント孔10a近傍の構成が拡大して示されている。
【0125】
即ち、上金型10uと上記下金型10dとにより形成されたキャビティ内に配置された被処理支持基板20sの主面には、複数の半導体素子20cが搭載され、当該半導体素子20cの電極(図示せず)と支持基板20s上の電極端子(図示せず)との間は、ボンディングワイヤ20wにより接続されている。
【0126】
一方、上金型10uの一つの壁の、下金型10dへの対向面には、選択的にエアベント孔10aが配設されている。
そして、当該上金型10uに於ける、上金型の内側面近傍に、当該上金型の上面から下金型方向に延びる柱状体10bp−2が複数本、当該上金型10uの内側壁面に平行して配設されている。
【0127】
当該柱状体10bp−2は、前記半導体素子20cの搭載部に対向する面、即ち封止用樹脂が流入して来る方向に対向する部位(図中に矢印αで示す部位)が円弧状とされ、他の三つの面が平面とされている。
【0128】
即ち、隣り合う柱状体10bp−2と対向する面(図中に矢印βで示す部位)は平面とされ、また上金型の内側面に対向する面(図中に矢印γで示す部位)も平面とされている。
【0129】
尚、当該柱状体10bp−2も、上金型10u近傍では太く、そして下金型10d方向に細くされて、その側面は、傾斜角θ(θ=5°〜15°)を有する。
かかる構成に於いて、柱状体10bp−2の封止用樹脂の流動方向に沿う長さをd1、幅をd2とすると、d1は、2mm〜5mmであり、d2は、1mm〜3mmとされる。
【0130】
また、隣り合う柱状体10bp−2間の距離d3は、1mm〜3mmとされる。更に、当該柱状体10bp−2と上金型の内側面(側壁10uw)との間の距離d4は、1mm〜3mmとされる。
【0131】
尚、かかる寸法は一例であり、これに限定されるものではない。
この様に、第2の実施の形態の変形例1にあっては、上金型の内側面近傍に、当該上金型の上面から下金型方向に延びる柱状体10bp−2が複数本、当該上金型10uの内側壁面に平行して配設されている。
【0132】
かかる柱状体10bp−2を配設することにより、当該上金型の内側面に於ける封止用樹脂の反射が防止・抑制され、且つ、当該柱状体10bp−2に於ける反射の方向も分散されて、当該封止用樹脂の流動によるボンディングワイヤの特定方向への湾曲を防止することができる。
【0133】
これにより、樹脂封止される半導体素子に於けるボンディングワイヤ相互間の接触が防止されて、当該半導体素子を含む半導体装置の製造歩留りを高めることができ、また当該半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0134】
<第2の実施の形態の変形例2>
前記第2の実施の形態に於ける樹脂封止装置2Aの、第2の変形例2Cを、図17に示す。
【0135】
当該図17にあっては、図13と同様に、上金型10uから下金型10dの方向に俯瞰した状態を示すもので、上金型に於ける、エアベント孔10a近傍の構成が拡大して示されている。
【0136】
即ち、上金型10uと上記下金型10dとにより形成されたキャビティ内に配置された被処理支持基板20sの主面には、複数の半導体素子20cが搭載され、当該半導体素子20cの電極(図示せず)と支持基板20s上の電極端子(図示せず)との間は、ボンディングワイヤ20wにより接続されている。
【0137】
一方、上金型10uの一つの壁の、下金型10dへの対向面には、選択的にエアベント孔10aが配設されている。
そして、当該上金型10uに於ける、上金型の内側面近傍に、当該上金型の上面から下金型方向に延びる三角柱10bp−3が複数本、当該上金型10uの内側壁面に平行して配設されている。
【0138】
当該三角柱10bp−3は、前記半導体素子20cの搭載部に対向する面、即ち封止用樹脂が流入して来る方向に対向して鋭角部(図中に矢印αで示す部位)が配置された二等辺三角形状を有し、他の一辺(図中の矢印βで示す部位)のなす面が平面とされている。
【0139】
即ち、上金型の内側面に対向する面が平面とされている。
尚、当該三角柱10bp−3も、上金型10u近傍では太く、そして下金型10d方向に細くされて、その側面は、傾斜角θ(θ=5°〜15°)を有する。
【0140】
かかる構成に於いて、三角柱10bp−3の封止用樹脂の流動方向に沿う長さをd1、幅をd2とすると、d1は、2mm〜5mmであり、d2は、1mm〜3mmとされる。
また、隣り合う三角柱10bp−3間の距離d3は、1mm〜3mmとされる。更に、当該三角柱10bp−3と上金型の内側壁(側壁10uw)との間の距離d4は、1mm〜3mmとされる。
【0141】
尚、かかる寸法は一例であり、これに限定されるものではない。
この様に、第2の実施の形態の変形例2にあっては、上金型の内側面近傍に、当該上金型の上面から下金型方向に延びる三角柱10bp−3が複数本、当該上金型10uの内側壁面に平行して配設されている。
【0142】
かかる三角柱10bp−3を配設することにより、当該上金型の内側面に於ける封止用樹脂の反射が防止・抑制され、且つ、当該三角柱10bp−3に於ける反射の方向も分散されて、当該封止用樹脂の流動によるボンディングワイヤの特定方向への湾曲を防止することができる。
【0143】
これにより、樹脂封止される半導体素子に於けるボンディングワイヤ相互間の接触が防止されて、当該半導体素子を含む半導体装置の製造歩留りを高めることができ、また当該半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0144】
<第2の実施の形態の変形例3>
前記第2の実施の形態に於ける樹脂封止装置2Aの、第3の変形例2Dを、図18(a)に示す。
【0145】
当該図18(a)にあっては、図13と同様に、上金型10uから下金型10dの方向に俯瞰した状態を示すもので、上金型に於ける、エアベント孔10a近傍の構成が拡大して示されている。
【0146】
即ち、上金型10uと上記下金型10dとにより形成されたキャビティ内に配置された被処理支持基板20sの主面には、複数の半導体素子20cが搭載され、当該半導体素子20cの電極(図示せず)と支持基板20s上の電極端子(図示せず)との間は、ボンディングワイヤ20wにより接続されている。
【0147】
一方、上金型10uの一つの壁の、下金型10dへの対向面には、選択的にエアベント孔10aが配設されている。
そして、当該上金型10uに於ける、上金型の内側面近傍に、当該上金型の上面から下金型方向に延びる柱状体10bp−4が複数本、当該上金型10uの内側壁面に平行して配設されている。
【0148】
当該柱状体10bp−4は、前記半導体素子20cの搭載部に対向する面、即ち封止用樹脂が流入して来る方向に対向して円弧状部(図中に矢印αで示す部位)が配置されている。
【0149】
また、隣り合う柱状体10bp−4と対向する面(図中の矢印βで示す部位)は平面とされ、また上金型の内側面に対向して円弧状部(図中の矢印γで示す部位)が位置する。
尚、当該柱状体10bp−4も、上金型10u近傍では太く、そして下金型10d方向に細くされて、その側面は、傾斜角θ(θ=5°〜15°)を有する。
【0150】
かかる構成に於いて、柱状体10bp−4の封止用樹脂の流動方向に沿う長さをd1、幅をd2とすると、d1は、2mm〜5mmであり、d2は、1mm〜3mmとされる。
また、隣り合う柱状体10bp−4間の距離d3は、1mm〜3mmとされる。更に、当該柱状体10bp−4と上金型の内側壁(側壁10uw)との間の距離d4は、1mm〜3mmとされる。
【0151】
尚、かかる寸法は一例であり、これに限定されるものではない。
この様に、第2の実施の形態の変形例3にあっては、上金型の内側面近傍に、当該上金型の上面から下金型方向に延びる柱状体10bp−4が複数本、当該上金型10uの内側壁面に平行して配設されている。
【0152】
かかる柱状体10bp−4を配設することにより、当該上金型の内側面に於ける封止用樹脂の反射が防止・抑制され、且つ、当該柱状体10bp−4に於ける反射の方向も分散されて、当該封止用樹脂の流動によるボンディングワイヤの特定方向への湾曲を防止することができる。
【0153】
また、当該柱状体10bp−4の、上金型の内側面への対向部は円弧状を有することから、図18(b)に示される様に、封止用樹脂は、エアベント孔10aに向かい矢印cをもって示す流れにより円滑に流れ、目詰まりなどを生じない。
【0154】
これにより、樹脂封止される半導体素子に於けるボンディングワイヤ相互間の接触が防止されて、当該半導体素子を含む半導体装置の製造歩留りを高めることができ、また当該半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0155】
<第2の実施の形態の変形例4>
前記第2の実施の形態に於ける樹脂封止装置2Aの、第4の変形例2Eを、図19(a)に示す。
【0156】
当該図19(a)にあっては、図13と同様に、上金型10uから下金型10dの方向に俯瞰した状態を示すもので、上金型に於ける、エアベント孔10a近傍の構成が拡大して示されている。
【0157】
即ち、上金型10uと上記下金型10dとにより形成されたキャビティ内に配置された被処理支持基板20sの主面には、複数の半導体素子20cが搭載され、当該半導体素子20cの電極(図示せず)と支持基板20s上の電極端子(図示せず)との間は、ボンディングワイヤ20wにより接続されている。
【0158】
一方、上金型10uの一つの壁の、下金型10dへの対向面には、選択的にエアベント孔10aが配設されている。
そして、当該上金型10uに於ける、上金型の内側面近傍に、当該上金型の上面から下金型方向に延びる六角柱10bp−5が複数本、当該上金型10uの内側壁面に平行して配設されている。
【0159】
当該六角柱10bp−5は、前記半導体素子20cの搭載部に対向する面、即ち封止用樹脂が流入して来る方向に対向して鋭角部(図中に矢印αで示す部位)が配置されている。
【0160】
従って、隣り合う六角柱10bp−5と対向する面(図中の矢印βで示す部位)は平面とされ、また上金型の内側面に対向して鋭角部(図中の矢印γで示す部位)が位置する。
尚、当該六角柱10bp−5も、上金型10u近傍では太く、そして下金型10d方向に細くされて、その側面は、傾斜角θ(θ=5°〜15°)を有する。
【0161】
かかる構成に於いて、六角柱10bp−5の封止用樹脂の流動方向に沿う長さをd1、幅をd2とすると、d1は、2mm〜5mmであり、d2は、1mm〜3mmとされる。
また、隣り合う六角柱10bp−5間の距離d3は、1mm〜3mmとされる。更に、当該六角柱10bp−5と上金型の内側壁(側壁10uw)との間の距離d4は、1mm〜3mmとされる。
【0162】
尚、かかる寸法は一例であり、これに限定されるものではない。
この様に、第2の実施の形態の変形例4にあっては、上金型の内側面近傍に、当該上金型の上面から下金型方向に延びる六角柱10bp−5が複数本、当該上金型10uの内側壁面に平行して配設されている。
【0163】
かかる六角柱10bp−5を配設することにより、当該上金型の内側面に於ける封止用樹脂の反射が防止・抑制され、且つ、当該六角柱10bp−5に於ける反射の方向も分散されて、当該封止用樹脂の流動によるボンディングワイヤの特定方向への湾曲を防止することができる。
【0164】
また、当該六角柱10bp−5の、上金型の内側面への対向部は鋭角を有することから、図19(b)に示される様に、封止用樹脂は、エアベント孔10aに向かい矢印cをもって示す流れにより円滑に流れ、目詰まりなどを生じない。
【0165】
これにより、樹脂封止される半導体素子に於けるボンディングワイヤ相互間の接触が防止されて、当該半導体素子を含む半導体装置の製造歩留りを高めることができ、また当該半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0166】
尚、上述した第1の実施の形態及びその変形例、並びに第2の実施の形態及びその変形例は、夫々が独立した実施の形態とは限らず、第1の実施の形態及びその変形例、第2の実施の形態及びその変形例の中から2つ以上の実施の形態を複合させた実施の形態を構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法のフロー図である。
【図2】第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法並びに樹脂封止装置を説明するための要部図である(その1)。
【図3】第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法並びに樹脂封止装置を説明するための要部図である(その2)。
【図4】第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法並びに樹脂封止装置を説明するための要部図である(その3)。
【図5】第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法並びに樹脂封止装置を説明するための要部図である(その4)。
【図6】第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法並びに樹脂封止装置を説明するための要部図である(その5)。
【図7】第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法並びに樹脂封止装置を説明するための要部図である(その6)。
【図8】第1の実施の形態の樹脂封止装置の変形例を説明する要部図である(その1)。
【図9】第1の実施の形態の樹脂封止装置の変形例を説明する要部図である(その2)。
【図10】第1の実施の形態の樹脂封止装置の変形例を説明する要部図である(その3)。
【図11】第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法並びに樹脂封止装置を説明するための要部図である(その1)。
【図12】第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法並びに樹脂封止装置を説明するための要部図である(その2)。
【図13】第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法並びに樹脂封止装置を説明するための要部図である(その3)。
【図14】第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法並びに樹脂封止装置を説明するための要部図である(その4)。
【図15】第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法並びに樹脂封止装置を説明するための要部図である(その5)。
【図16】第2の実施の形態の樹脂封止装置の変形例を説明する要部図である(その1)。
【図17】第2の実施の形態の樹脂封止装置の変形例を説明する要部図である(その2)。
【図18】第2の実施の形態の樹脂封止装置の変形例を説明する要部図である(その3)。
【図19】第2の実施の形態の樹脂封止装置の変形例を説明する要部図である(その4)。
【図20】樹脂封止用金型の構造を説明するための要部図である(その1)。
【図21】樹脂封止用金型の構造を説明するための要部図である(その2)。
【図22】樹脂封止用金型の構造を説明するための要部図である(その3)。
【図23】樹脂封止用金型の構造を説明するための要部図である(その4)。
【符号の説明】
【0168】
1A,2A 樹脂封止装置
10a エアベント孔
10ca キャビティ
10g ゲート部
10bp−1 五角形柱
10bp−2,4 柱状体
10bp−3 三角柱
10bp−5 六角柱
10cv−1,2,3 凹凸部
10cv−4 凹部
10d 下金型
10u 上金型
10s 主面
10tp 傾斜面
10uw 側壁
20c 半導体素子
20s 支持基板
20w ボンディングワイヤ
30r 封止用樹脂
30rbp 突出部
DL ダイシングライン
θ 傾斜角
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂封止方法及び樹脂封止用金型に関し、特にワイヤボンディング法が適用された半導体素子などの電子部品を樹脂封止する方法、並びに当該樹脂封止法を実施するに用いられる樹脂封止用金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子を回路基板等の支持基板上に搭載し、ワイヤボンディング等を行った後、当該半導体素子、ボンディングワイヤ等を封止して半導体装置を形成するための手段の一つとして、樹脂封止(樹脂モールド)工程が挙げられる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
かかる樹脂封止工程に於いて用いられる一般的な樹脂封止用金型の構造の一部を、図20に示す。
この図では、樹脂モールドを形成する金型の下金型100dと上金型100uが、型締めされて一対になった状態が示されている。
【0004】
即ち、下金型100dと上金型100uとが型締めされた状態を以て、キャビティ100cを形成している。
また、下金型100d上には、複数個の半導体素子200cが搭載された支持基板200sが載置されている。また、半導体素子200cの電極(図示せず)から支持基板200sの電極端子(図示せず)には、ボンディングワイヤ200wが接続されている。
【0005】
そして、封止用樹脂300rがゲート部100gから注入され、当該ゲート部100gからエアベント孔100aの方向に向かい流動して、当該キャビティ100c内に充填される。
【0006】
これにより、支持基板200s上の半導体素子200c並びにボンディングワイヤ200wが封止用樹脂300rにより封止される。
【特許文献1】特開2002−110718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この様に、ゲート部100gから注入された封止用樹脂300rがエアベント孔100a方向に流動すると、封止用樹脂300rの樹脂圧によってボンディングワイヤ200wが変形し、ボンディングワイヤ200wの一部が相互に接触し、短絡を生ずる場合がある。
【0008】
かかる現象を、図21乃至図23を用いて説明する。当該図21乃至図23には、図20のX−X’断面に於けるエアベント孔100a付近の状態を示す。
上記ゲート部100gからエアベント孔100aの方向に、封止用樹脂300rを充填させる様子を図21に示す。
【0009】
即ち、ゲート部100gからエアベント孔100aの方向に封止用樹脂300rを充填させると、矢印aの方向に封止用樹脂300rが流動する。
図21に示される様に、矢印A(楕円状の実線で包囲した部分)で示されるボンディングワイヤ200wは、封止用樹脂300rと接触していないため、原形を維持している。
【0010】
しかし、封止用樹脂300rがこれらのボンディングワイヤ200wにまで到達し、当該封止用樹脂300rと当該ボンディングワイヤ200wとが接触すると、当該封止用樹脂300rの流動方向とボンディングワイヤ200wの延在する方向が異なるため、当該ボンディングワイヤ200wは、封止用樹脂300rから圧力を受け、図22に示される様に湾曲してしまう。
【0011】
また、封止用樹脂300rの充填を続けると、上金型100uのエアベント孔100a付近の内側壁100uwに於いて、封止用樹脂300rの跳ね返りが生じ、矢印aとは逆方向に流動する状態が出現する。
【0012】
即ち、上金型100uの側壁100uwの近傍では、矢印aの方向に流動した封止用樹脂300rが内側壁100uwに於いて逆方向に跳ね返り、図23に示される様に、矢印aとは逆方向の矢印bの方向に流動する樹脂が出現する。
【0013】
この様な樹脂の跳ね返りが生ずると、矢印aの方向に湾曲したボンディングワイヤ200wと、矢印bの方向に湾曲したボンディングワイヤ200wとが接触、即ち短絡を生じてしまう。
【0014】
この様に、ゲート部100gからエアベント孔100aに封止用樹脂300rを注入すると、特にエアベント近傍に位置する半導体素子200cに於いて、その電極から導出されたボンディングワイヤの相互にショート(短絡)を生じてしまう。
【0015】
特に、半導体素子200cが高集積化、小型化する傾向にあり、隣接するボンディングワイヤの導出ピッチが狭小化する傾向にある。このため、前記ボンディングワイヤ間のショートは、発生し易い状況にある。
【0016】
本発明はこの様な点に鑑みてなされたものであり、製造歩留まりを向上させ、信頼性の高い半導体装置を製造する樹脂封止方法及び樹脂封止用金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、被処理体を上金型と下金型により形成されるキャビティ内に配置し、当該キャビティ内に封止用樹脂を注入して前記被処理体を樹脂封止する方法に於いて、金型として、エアベント孔が配設された側壁の前記キャビティ内側面が、波形を有する金型を用いることを特徴とする樹脂封止方法が提供される。
【0018】
また、被処理体を上金型と下金型により形成されるキャビティ内に配置し、当該キャビティ内に封止用樹脂を注入して前記被処理体を樹脂封止する方法に於いて、金型として、エアベント孔が配設された側壁の前記キャビティ内側面近傍に、柱状体が配設された金型を用いることを特徴とする樹脂封止方法が提供される。
【0019】
また、上金型と下金型により構成されるキャビティ内に於いて、エアベント孔が配設された側壁の内側面が波形を有することを特徴とする樹脂封止用金型が提供される。
また、上金型と下金型により構成されるキャビティ内に於いて、エアベント孔が配設された側壁の近傍に、柱状体が配設されてなることを特徴とする樹脂封止用金型が提供される。
【発明の効果】
【0020】
上記手段によれば、半導体装置の製造歩留まりを高めることができ、且つ信頼性の高い半導体装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本実施の形態に係る樹脂封止方法、並びに当該樹脂封止方法を実施する樹脂封止装置(樹脂封止用金型)について、図面を参照しながら説明する。
<第1の実施の形態>
本発明の、第1の実施の形態に係る、半導体装置の製造方法の製造工程フローを、図1に示す。
【0022】
先ず、半導体素子が搭載された支持基板を、下金型上に載置する(ステップS1)。
次に、下金型と、下金型と衝合する上金型とを型締めする(ステップS2)。
これにより、金型内のキャビティ内に、半導体素子が搭載された支持基板が配置される。
【0023】
次いで、金型の樹脂注入口から、キャビティ内に封止用樹脂を注入する(ステップS3)。
そして、当該キャビティ内に於いて、封止用樹脂をエアベント孔の方向に流動させ、上金型の内側壁に樹脂を到達させて、前記半導体素子を樹脂により封止する(ステップS4)。
【0024】
この時、前記上金型の内側面は、キャビティ内に於いて、被処理基板、半導体素子方向に突出する波形形状を有している。
この様な製造方法により、第1の実施の形態に係る半導体装置が製造される。
【0025】
本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
尚、以下に示す図に於いては、同一の部材には同一の符号を付している。
本発明の第1の実施の形態で用いられる樹脂封止装置1Aの、金型部分の要部断面を図2に示す。
【0026】
図2に於いては、上金型10uと下金型10dとが衝合し、それらが一対になって型締めされた状態が示されている。
上金型10uと下金型10dとが衝合されると、樹脂封止装置1Aの金型内に、キャビティ10caが形成される。当該キャビティ10ca内には、被処理基板として、一方の主面(上面)に複数個の半導体素子20cが搭載された大判の支持基板20sが、下金型10d上に載置された状態で収容されている。
【0027】
上金型10uの側壁には、ゲート部(樹脂注入口)10gとエアベント孔10aとが、対向して配置されている。
ゲート部10gは、封止用樹脂30rの注入口である。
【0028】
当該ゲート部10gからキャビティ10ca内に、溶融状態にある封止用樹脂30rが注入されると、当該封止用樹脂30rはエアベント孔10aが配置されている側壁の方向(矢印aの方向)に流動してキャビティ10ca内に充填される。この時、キャビティ10ca内に存在するガスは、エアベント孔10aから放出される。
【0029】
尚、上金型10uの内側壁は、上金型10uの主面10sに垂直な方向から傾いた傾斜面10tpの角度を“θ”とすると、θが下金型10dの主面の垂直方向に対し、5°〜15°に選択された傾斜面とされている。
【0030】
かかる上金型10uの内側壁を傾斜面とすることにより、硬化した封止用樹脂30rと上金型10uとを容易に分離することができる。即ち封止用樹脂30r部を上金型10uから容易に取り外すことができる。尚、かかる傾斜角θが5°より小さくなると、封止用樹脂30rと上金型10uとの密着により、封止用樹脂30r部を上金型10uから取り外し難く、また、θが15°より大きいと、支持基板20sに搭載される半導体素子数が減少してしまう。
【0031】
本発明による樹脂封止装置1Aにあっては、図2並びに図2のX−X’断面である図3に示される様に、前記エアベント孔10aが配設される上金型10uの内側壁に、キャビティ内部、即ち、被処理基板、半導体素子方向に突出する半円状の凸部と同様に半円状の凹部含む凹凸部10cv−1が複数個配設される。
【0032】
即ち、前記エアベント孔10aが配設されて、流動する封止用樹脂30rが到達する上金型10uの内側面の平面形状は、連続する円弧状の波形とされている。
尚、当該凹凸部10cv−1の内側壁は、前述の如き傾斜角θ(θ=5°〜15°)を有する。
【0033】
また、前記下金型10dは、支持基板20sの支持台としても機能する。
当該下金型10dには、ガイドピン(固定用ピン)を設け、当該ガイドピンにより支持基板20sの位置決めを行ってもよい(図示せず)。
【0034】
また、当該支持基板20sを載置した後、必要に応じて支持基板20sを下金型10dに吸引保持してもよい。
尚、上金型10u及び下金型10dの材質としては、例えば、ステンレス鋼材が適用される。但し、上金型10uが封止用樹脂30rと接する面、下金型10dが支持基板20sと接する面には、超硬材を配置してもよい。
【0035】
また、上金型10u及び下金型10dには、夫々、ヒータ機構が備えられている(図示せず)。そして、当該ヒータ機構により、上金型10u及び下金型10dの温度調整が行われる。
【0036】
また、被処理基板である支持基板20sは、例えば、ガラス−エポキシ樹脂、ガラス−ビスマレイミドトリアジン(BT)、またはポリイミド等の有機絶縁材料、あるいは、セラミック、ガラス等の無機絶縁材料から形成される。
【0037】
当該支持基板20sは、必要に応じて、片面配線構造、両面配線構造或いは多層配線構造とされる。尚、当該支持基板20sは、回路基板、配線基板、プリント基板、インターポーザー、あるいはパッケージ基板とも称される。
【0038】
一方、前記支持基板20s上に搭載される複数個の半導体素子20cに於いては、例えば、シリコン(Si)またはガリウム砒素(GaAs)等の半導体基材の一方の主面に、所謂ウエハプロセスが適用されて、トランジスタ等の能動素子、容量素子等の受動素子、並びにこれらの機能素子を接続する配線層をもって電子回路が形成されている。
【0039】
そして、夫々の半導体素子20cに於ける電極と、支持基板20sに形成された電極端子との間は、ボンディングワイヤ20wにより相互に接続されている。当該ボンディングワイヤ20wとしては、例えば、金(Au)線が適用される。
【0040】
次に、前記樹脂封止装置1Aを用いて、支持基板20s上に搭載された複数個の半導体素子20c並びにボンディングワイヤ20w等を封止用樹脂30rにより封止する過程について、図4乃至図6を用いて説明する。
【0041】
尚、図4乃至図6は、図2のX−X’断面に於いて、上金型10uから下金型10dの方向に俯瞰した状態を示すもので、上金型に於ける、エアベント孔10a近傍の構成が拡大して示されている。
【0042】
前記樹脂封止装置1A内に、被処理支持基板20sを配置して、上金型10uと上記下金型10dとを型締めした状態を図4に示す。
上金型10uと上記下金型10dとにより形成されたキャビティ内に配置された被処理支持基板20sの主面には、前述の如く、複数の半導体素子20cが搭載され、当該半導体素子20cの電極(図示せず)と支持基板20s上の電極端子(図示せず)との間は、ボンディングワイヤ20wにより接続されている。
【0043】
一方、上金型10uの一つの壁の、下金型10dへの対向面には、選択的にエアベント孔10aが所定の間隔をもって複数配設されている。
そして、当該上金型10uに於ける、前記エアベント孔10aが配設された壁の内側面には、キャビティ内部、即ち、被処理基板、半導体素子方向に突出する半円状の凸部と、同様に半円状の凹部とを含む凹凸部10cv−1が複数個配設されている。
【0044】
即ち、前記エアベント孔10aが配設されて、流動する封止用樹脂30rが到達する上金型10uの内側面の平面形状は、連続する円弧状の波形とされている。
そして、当該円弧状の波形を有する凹凸部10cv−1は、エアベント孔10aに連通している。
【0045】
かかる凹凸部10cv−1にあっては、凹凸部の深さをd1、幅をd2とすると、d1は、3mm〜10mmであり、d2は、3mm〜10mmとされる。
特に、d1とd2とが等しく、例えば、d1,d2が5mmの場合、rは2.5mmのR加工が施されている。
【0046】
また、隣り合う凹凸部間のピッチd3は、8mm〜15mmに選択される。
尚、かかる寸法は一例であり、これに限定されるものではない。
また、上金型10u並びに下金型10dは、この段階に於いて、所定の温度に加熱されている。
【0047】
例えば、樹脂封止装置1Aに於けるキャビティ内に注入する樹脂として、熱硬化性のエポキシ系樹脂を適用する場合には、被処理支持基板20sを下金型10d上に載置する前に、下金型10d及び上金型10uを、160℃〜180℃程度に加熱しておく。
【0048】
次に、図5に示す如く、樹脂注入手段を適用して、前記ゲート部10gからキャビティ10ca内に、溶融状態の封止用樹脂30rを注入・充填する。
当該封止用樹脂30rとしては、加熱されることにより溶融・硬化するエポキシ系樹脂が適用される。また、当該封止用樹脂30rには、シリカ(SiO2)またはアルミナ(Al2O3)等からなる無機フィラーを含有してもよい。
【0049】
注入された封止用樹脂30rは、キャビティ10ca内に於いて、前記ゲート部10gからエアベント孔10aの方向に向かい流動する(図中の矢印aの方向)。
この時、エアベント孔10aの方向に向かって流動する封止用樹脂30rにより、矢印aとは略垂直方向に配設されたボンディングワイヤ20w(矢印Aで示す楕円状の実線で包囲した部分のボンディングワイヤ20w)は、封止用樹脂30rにより圧力を受け、矢印aの方向に湾曲してしまう。
【0050】
尚、この時、隣接するボンディングワイヤ20wは一様に同じ方向に変形することから、互いに接触することは生じない。
そして、溶融状態の封止用樹脂30rが、キャビティ10ca内を流動して、エアベント孔10aを具備した上金型10uの内側面にまで到達した状態を図6に示す。
【0051】
本実施の形態にかかる樹脂封止装置1Aにあっては、前述の如く、前記エアベント孔10aが配設されて、流動する封止用樹脂30rが到達する上金型10uの内側面の平面形状は、連続する円弧状の波形とされている。
【0052】
このため、当該上金型10uの内側面に衝突する封止用樹脂30rは、当該連続する円弧状の波形部に於いて反射するも、その殆どの反射方向が矢印bの方向であって、多くは前記矢印aとは逆方向とはならない。即ち、当該円弧状の波形部に於ける封止用樹脂30rの反射は、斜め方向あるいは直交する方向にもなされる。
【0053】
従って、封止用樹脂30rの流動により矢印aの方向に湾曲したボンディングワイヤ20w(矢印Aで示す楕円状の実線で包囲した部分のボンディングワイヤ20w)は、矢印aとは逆方向の圧力を受ける確率が低下し、当該矢印aとは逆方向に再度変形することが抑制される。
【0054】
これにより、当該ボンディングワイヤ20w同士の接触が防止される。
前記溶融状態の封止用樹脂30rが、キャビティ10ca内に充填されることにより、被処理支持基板20s上の複数個の半導体素子20c、並びにボンディングワイヤ20wなどが、当該封止用樹脂30rにより被覆される。
【0055】
しかる後、上金型10uと下金型10dとを型締めした状態に於いて封止用樹脂30rを引き続き加熱し、当該封止用樹脂30rを硬化せしめる。
当該封止用樹脂30rの硬化がなされた後、上金型10uと下金型10dとを型開きし、下金型10d上から成形品、即ち樹脂封止品を取り出す。
【0056】
取り出した樹脂成型品の形態を、図7に示す。
当該図7では、樹脂成型品即ち樹脂封止体の平面形状が示されているが、封止状態を示すため、被処理支持基板20s上に於いて、封止用樹脂30rにより被覆された半導体素子20c、ボンディングワイヤ20wなども表記している。
【0057】
当該成形品には、前記半導体素子20cなどの被覆部に連続して、前記上金型10uに於けるところの、連続する円弧状の波形部に対応した突出部30rbpが含まれている。
しかる後、前記支持基板20sの他方の主面(裏面側)に於いて、半導体素子20cの電極に対応して配設された電極端子に対し、半田ボール等からなる外部接続用端子を配設する(図示せず)。
【0058】
複数の半田ボールを支持基板20s裏面に格子状に配設させることにより、所謂BGA(Ball Grid Array)構造を形成する。
しかる後、封止用樹脂30rと支持基板20sとを含む成形体を、ダイシングラインDLに沿って、その厚さ方向(積層方向)にダイシングし、個片化された樹脂封止型の半導体装置を形成する。
【0059】
前述の如く、上金型のエアベント孔が配設された壁の内側面に、連続する円弧状の波形部を配設することにより、当該上金型の内側面に於いて封止用樹脂の反射方向を分散させ、当該樹脂の流動によるボンディングワイヤの特定方向への湾曲を防止することができる。
【0060】
これにより、樹脂封止される半導体素子に於けるボンディングワイヤ相互間の接触が防止されて、当該半導体素子を含む半導体装置の製造歩留りを高めることができ、また当該半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0061】
尚、前記樹脂封止装置1Aを複数、並設させた樹脂封止装置を用いてもよい。この様な樹脂封止装置であれば、より多数の半導体素子20cを一括して樹脂封止することができる。
【0062】
この様な本発明の第1の実施の形態にかかる樹脂封止装置は、以下の様に、種々の変形を可能としている。
<第1の実施の形態の変形例1>
前記第1の実施の形態に於ける樹脂封止装置1Aの、第1の変形例1Bを、図8に示す。
【0063】
当該図8にあっては、図4と同様に、上金型10uから下金型10dの方向に俯瞰した状態を示すもので、上金型に於ける、エアベント孔10a近傍の構成が拡大して示されている。
【0064】
即ち、上金型10uと上記下金型10dとにより形成されたキャビティ内に配置された被処理支持基板20sの主面には、複数の半導体素子20cが搭載され、当該半導体素子20cの電極(図示せず)と支持基板20s上の電極端子(図示せず)との間は、ボンディングワイヤ20wにより接続されている。
【0065】
一方、上金型10uの一つの壁の、下金型10dへの対向面には、選択的にエアベント孔10aが配設されている。
そして、当該上金型10uに於ける、前記エアベント孔10aが配設された壁の内側面には、キャビティ内部、即ち、被処理基板、半導体素子方向に突出する矩形の凸部を含む矩形状の凹凸部10cv−2が複数個配設されている。
【0066】
即ち、前記エアベント孔10aが配設されて、流動する封止用樹脂30rが到達する上金型10uの内側面の平面形状は、連続する矩形状の波形とされている。
そして、当該矩形状の波形を有する凹凸部10cv−2は、エアベント孔10aに連通している。
【0067】
かかる構成に於いて、側壁10uw側に形成された凹部の深さをd1、凹凸部10cv−2の幅をd2とすると、d1は、3mm〜10mmであり、d2は、3mm〜10mmとされる。
【0068】
また、隣り合う凹凸部間のピッチd3は、8mm〜15mmとされる。
尚、この様な寸法は、一例であり、これに限定されるものではない。
この様に、第1の実施の形態の変形例1にあっては、上金型の内側面に連続する矩形状の波形部を配設することにより、当該上金型の内側面に於ける封止用樹脂の反射の方向を分散させ、当該樹脂の流動によるボンディングワイヤの特定方向への湾曲を防止することができる。
【0069】
また、当該上金型の内側面からボンディングワイヤ迄の距離を遠くして、反射される封止用樹脂の流動を抑制することができる。
これにより、樹脂封止される半導体素子に於けるボンディングワイヤ相互間の接触が防止されて、当該半導体素子を含む半導体装置の製造歩留りを高めることができ、また当該半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0070】
尚、図8に示される形態にあっては、凹凸部10cv−2は、エアベント孔10aの位置に対応して配設されているが、かかる構成に限られるものではなく、例えば隣り合うエアベント孔10aの間に、細幅の凹部を配設してもよい。
【0071】
<第1の実施の形態の変形例2>
前記第1の実施の形態に於ける樹脂封止装置1Aの、第2の変形例1Cを、図9に示す。
【0072】
当該図9にあっては、図4と同様に、上金型10uから下金型10dの方向に俯瞰した状態を示すもので、上金型に於ける、エアベント孔10a近傍の構成が拡大して示されている。
【0073】
即ち、上金型10uと上記下金型10dとにより形成されたキャビティ内に配置された被処理支持基板20sの主面には、複数の半導体素子20cが搭載され、当該半導体素子20cの電極(図示せず)と支持基板20s上の電極端子(図示せず)との間は、ボンディングワイヤ20wにより接続されている。
【0074】
一方、上金型10uの一つの壁の、下金型10dへの対向面には、選択的にエアベント孔10aが配設されている。
そして、当該上金型10uに於ける、前記エアベント孔10aが配設された壁の内側面には、キャビティ内部、即ち、被処理基板、半導体素子方向に突出する三角形状の凸部と、同様に三角形状の凹部を含む波形の凹凸部10cv−3が複数個配設されている。
【0075】
即ち、前記エアベント孔10aが配設されて、流動する封止用樹脂30rが到達する上金型10uの内側面の平面形状は、連続する三角形状の波形とされている。
そして、当該三角形状の波形の凹凸部10cv−3は、エアベント孔10aに連通している。
【0076】
かかる構成に於いて、側壁10uw側に形成された凹凸部10cv−3の深さをd1、三角形の底辺をd2とすると、d1は、3mm〜10mmであり、d2は、3mm〜10mmとされる。
【0077】
また、隣り合う凹凸部間のピッチd3は、8mm〜15mmとされる。
尚、この様な寸法は、一例であり、これに限定されるものではない。
この様に、第1の実施の形態の変形例2にあっては、上金型の内側面に連続する三角形状の波形部を配設することにより、当該上金型の内側面に於ける封止用樹脂の反射の方向を分散させ、当該樹脂の流動によるボンディングワイヤの特定方向への湾曲を防止することができる。
【0078】
これにより、樹脂封止される半導体素子に於けるボンディングワイヤ相互間の接触が防止されて、当該半導体素子を含む半導体装置の製造歩留りを高めることができ、また当該半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0079】
尚、当該変形例2にあっては、三角形の頂点が平坦化された状態であるが、当該頂点が鋭角をなすものとされることは勿論可能である。
<第1の実施の形態の変形例3>
前記第1の実施の形態に於ける樹脂封止装置1Aの、第3の変形例1Dを、図10に示す。
【0080】
当該図10にあっては、図4と同様に、上金型10uから下金型10dの方向に俯瞰した状態を示すもので、上金型に於ける、エアベント孔10a近傍の構成が拡大して示されている。
【0081】
即ち、上金型10uと上記下金型10dとにより形成されたキャビティ内に配置された被処理支持基板20sの主面には、複数の半導体素子20cが搭載され、当該半導体素子20cの電極(図示せず)と支持基板20s上の電極端子(図示せず)との間は、ボンディングワイヤ20wにより接続されている。
【0082】
一方、上金型10uの一つの壁の、下金型10dへの対向面には、選択的にエアベント孔10aが配設されている。
そして、当該上金型10uに於ける、前記エアベント孔10aが配設された壁の内側面には、円弧状の凹部10cv−4が複数個配設されている。
【0083】
即ち、前記エアベント孔10aが配設されて、流動する封止用樹脂30rが到達する上金型10uの内側面の平面形状は、直線状の内側面に、互いに離間して、円弧状の凹部10cv−4が複数個配設された形状とされている。
【0084】
そして、当該円弧状の凹部10cv−4は、エアベント孔10aに連通している。
かかる構成に於いて、側壁10uw側に配設された凹部10cv−4の深さをd1、円弧状の径をd2とすると、d1は、3mm〜10mmであり、d2は、3mm〜10mmとされる。
【0085】
また、隣り合う凹部10cv−4のピッチをd3は、8mm〜15mmとされる。
尚、この様な寸法は、一例であり、これに限定されるものではない。
この様に、第1の実施の形態の変形例3にあっては、上金型の内側面に連続する円弧状の凹部を配設することにより、当該上金型の内側面に於ける封止用樹脂の反射の方向を分散させ、当該樹脂の流動によるボンディングワイヤの特定方向への湾曲を防止することができる。
【0086】
また、当該上金型の内側面からボンディングワイヤ迄の距離を遠くして、反射される封止用樹脂の流動を抑制することができる。
これにより、樹脂封止される半導体素子に於けるボンディングワイヤ相互間の接触が防止されて、当該半導体素子を含む半導体装置の製造歩留りを高めることができ、また当該半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0087】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
第2の実施の形態で用いられる樹脂封止装置2Aの、金型部分の要部断面を図11に示す。
【0088】
図11に於いては、上金型10uと下金型10dとが衝合し、それらが一対になって型締めされた状態が示されている。
上金型10uと下金型10dとが衝合されると、樹脂封止装置2Aの金型内に、キャビティ10caが形成される。当該キャビティ10ca内には、被処理基板として、一方の主面(上面)に複数個の半導体素子20cが搭載された大判の支持基板20sが、下金型10d上に載置された状態で収容されている。
【0089】
上金型10uの側壁には、ゲート部(樹脂注入口)10gとエアベント孔10aとが、対向して配置されている。
ゲート部10gは、封止用樹脂30rの注入口である。
【0090】
当該ゲート部10gからキャビティ10ca内に、溶融状態にある封止用樹脂30rが注入されると、当該封止用樹脂30rはエアベント孔10aが配置されている側壁の方向(矢印aの方向)に流動してキャビティ10ca内に充填される。この時、キャビティ10ca内に存在するガスは、エアベント孔10aから放出される。
【0091】
尚、上金型10uの内側壁は、上金型10uの主面10sに垂直な方向から傾いた傾斜面10tpの角度を“θ”とすると、θが下金型10dの主面の垂直方向に対し、5°〜15°に選択された傾斜面とされている。
【0092】
かかる上金型10uの内側壁を傾斜面とすることにより、硬化した封止用樹脂30rと上金型10uとを容易に分離することができる。即ち封止用樹脂30r部を上金型10uから容易に取り外すことができる。尚、かかる傾斜角θが5°より小さくなると、封止用樹脂30rと上金型10uとの密着により、封止用樹脂30r部を上金型10uから取り外し難く、また、θが15°より大きいと、支持基板20sに搭載される半導体素子数が減少してしまう。
【0093】
本実施の形態にかかる樹脂封止装置2Aにあっては、当該図11並びに当該図11のX−X’断面である図12に示される様に、キャビティ10ca内に於いて、前記エアベント孔10aが配設される上金型10uの内側壁の近傍に、当該上金型の上面から下金型方向に延びる五角形柱10bp−1が複数本、当該上金型10uの内側壁面に平行して配設される。
【0094】
即ち、前記エアベント孔10aが配設されて、流動する封止用樹脂30rが到達する上金型10uの内側面の近傍に、鋭角部が半導体素子の搭載部に向けられて、五角形柱10bp−1が複数本、当該上金型10uの内側壁面に平行して配設される。
【0095】
尚、当該五角形柱10bp−1も、上金型10u近傍では太く、そして下金型10d方向に細くされて、その側面は、傾斜角θ(θ=5°〜15°)を有する。
また、前記下金型10dは、支持基板20sの支持台としても機能する。
【0096】
当該下金型10dには、ガイドピン(固定用ピン)を設け、当該ガイドピンにより支持基板20sの位置決めを行ってもよい(図示せず)。
また、当該支持基板20sを載置した後、必要に応じて支持基板20sを下金型10dに吸引保持してもよい。
【0097】
尚、上金型10u及び下金型10dの材質としては、例えば、ステンレス鋼材が適用される。但し、上金型10uが封止用樹脂30rと接する面、下金型10dが支持基板20sと接する面には、超硬材を配置してもよい。
【0098】
また、上金型10u及び下金型10dには、夫々、ヒータ機構が備えられている(図示せず)。そして、当該ヒータ機構により、上金型10u及び下金型10dの温度調整が行われる。
【0099】
また、被処理基板である支持基板20sは、例えば、ガラス−エポキシ樹脂、ガラス−ビスマレイミドトリアジン(BT)、またはポリイミド等の有機絶縁材料、あるいは、セラミック、ガラス等の無機絶縁材料から形成される。
【0100】
当該支持基板20sは、必要に応じて、片面配線構造、両面配線構造或いは多層配線構造とされる。尚、当該支持基板20sは、回路基板、配線基板、プリント基板、インターポーザー、あるいはパッケージ基板とも称される。
【0101】
一方、前記支持基板20s上に搭載される複数個の半導体素子20cに於いては、例えば、シリコン(Si)またはガリウム砒素(GaAs)等の半導体基材の一方の主面に、所謂ウエハプロセスが適用されて、トランジスタ等の能動素子、容量素子等の受動素子、並びにこれらの機能素子を接続する配線層をもって電子回路が形成されている。
【0102】
そして、夫々の半導体素子20cに於ける電極と、支持基板20sに形成された電極端子との間は、ボンディングワイヤ20wにより相互に接続されている。当該ボンディングワイヤ20wとしては、例えば、金(Au)線が適用される。
【0103】
次に、前記樹脂封止装置2Aを用いて、支持基板20s上に搭載された複数個の半導体素子20c並びにボンディングワイヤ20w等を封止用樹脂30rにより封止する過程について、図13乃至図15を用いて説明する。
【0104】
尚、図13乃至図15は、前記図11のX−X’断面に於いて、上金型10uから下金型10dの方向に俯瞰した状態を示すもので、上金型に於ける、エアベント孔10a近傍の構成が拡大して示されている。
【0105】
前記樹脂封止装置2A内に、被処理支持基板20sを配置して、上金型10uと上記下金型10dとを型締めした状態を図13に示す。
上金型10uと上記下金型10dとにより形成されたキャビティ内に配置された被処理支持基板20sの主面には、前述の如く、複数の半導体素子20cが搭載され、当該半導体素子20cの電極(図示せず)と支持基板20s上の電極端子(図示せず)との間は、ボンディングワイヤ20wにより接続されている。
【0106】
一方、上金型10uの一つの壁の、下金型10dへの対向面には、エアベント孔10aが所定の間隔をもって複数配設されている。
そして、当該上金型10uに於ける、前記エアベント孔10aが配設された壁の内側面近傍には、当該上金型の上面から下金型方向に延びる五角形柱10bp−1が複数本、当該上金型10uの内側壁面に平行して配設されている。
【0107】
即ち、前記エアベント孔10aが配設されて、流動する封止用樹脂30rが到達する上金型10uの内側面の近傍に、一つの鋭角部(図中に矢印αで示す部位)が半導体素子20cの搭載部に向けられた五角形柱10bp−1が複数本、その側面(図中に矢印βで示す部位)を平行に、且つ当該上金型10uの内側壁面に平行して配設されている。当該五角形柱10bp−1の前記一つの鋭角部は、前記キャビティ内に対して封止用樹脂が流入して来る方向に対向することとなる。
【0108】
かかる五角形柱10bp−1の封止用樹脂の流動方向に沿う長さをd1、幅をd2とすると、d1は、2mm〜5mmであり、d2は、1mm〜3mmとされる。
また、隣り合う五角形柱10bp−1間の距離d3は、1mm〜3mmとされる。更に、当該五角形柱10bp−1と側壁10uw間の距離d4は、1mm〜3mmとされる。
【0109】
尚、かかる寸法は一例であり、これに限定されるものではない。
また、上金型10u並びに下金型10dは、この段階に於いて、所定の温度に加熱されている。
【0110】
例えば、樹脂封止装置2Aに於けるキャビティ内に注入する樹脂として、熱硬化性のエポキシ系樹脂を適用する場合には、被処理支持基板20sを下金型10d上に載置する前に、下金型10d及び上金型10uを、160℃〜180℃程度に加熱しておく。
【0111】
次に、図14に示す如く、樹脂注入手段を適用して、前記ゲート部10gからキャビティ10ca内に、溶融状態の封止用樹脂30rを注入・充填する。
当該封止用樹脂30rとしては、前記第1の実施の態様と同様に、加熱されることにより溶融・硬化するエポキシ系樹脂が適用される。また、当該封止用樹脂30rには、同様に、シリカ(SiO2)またはアルミナ(Al2O3)等からなる無機フィラーを含有してもよい。
【0112】
注入された封止用樹脂30rは、キャビティ10ca内に於いて、前記ゲート部10gからエアベント孔10aの方向に向かい流動する(図中の矢印aの方向)。
この時、エアベント孔10aの方向に向かって流動する封止用樹脂30rにより、矢印aとは略垂直方向に配設されたボンディングワイヤ20w(矢印Aで示す楕円状の実線で包囲した部分のボンディングワイヤ20w)は、封止用樹脂30rにより圧力を受け、矢印aの方向に湾曲してしまう。
【0113】
尚、この時、隣接するボンディングワイヤ20wは一様に同じ方向に変形することから、互いに接触することは生じない。
そして、溶融状態の封止用樹脂30rが、キャビティ10ca内を流動して、エアベント孔10aを具備した上金型10uの内側面にまで到達した状態を図15に示す。
【0114】
本実施の形態にかかる樹脂封止装置2Aにあっては、前述の如く、前記エアベント孔10aが配設されて、流動する封止用樹脂30rが到達する上金型10uの内側面近傍には、当該上金型の上面から下金型方向に延びる五角形柱10bp−1が複数本、当該上金型10uの内側壁面に平行して配設されている。
【0115】
このため、封止用樹脂30rは当該五角形柱10bp−1に衝突し、当該五角形柱10bp−1に於いて反射される。
しかしながら、その殆どの反射方向が矢印bの方向であって、前記矢印aとは逆方向とはならない。即ち、当該五角形柱10bp−1に於ける封止用樹脂30rの反射は、斜め方向になされる。
【0116】
また、当該五角形柱10bp−1の間を通り抜けて上金型10uの内側壁面に到達した封止用樹脂30rは、当該内側壁面に於いて反射されるも、当該五角形柱10bp−1に於ける内側壁面との対向面(図中に矢印γで示す部位)に於いてその流動が制限される。
【0117】
従って、封止用樹脂30rの流動により矢印aの方向に湾曲したボンディングワイヤ20w(矢印Aで示す楕円状の実線で包囲した部分のボンディングワイヤ20w)は、矢印aの逆方向に圧力を受ける率が低下し、矢印aの逆方向に再度変形することが抑制される。
【0118】
これにより、当該ボンディングワイヤ20w同士の接触が防止される。
前記溶融状態の封止用樹脂30rが、キャビティ10ca内に充填されることにより、被処理支持基板20s上の複数個の半導体素子20c、並びにボンディングワイヤ20wなどが、当該封止用樹脂30rにより被覆される。
【0119】
しかる後、上金型10uと下金型10dとを型締めした状態に於いて封止用樹脂30rを引き続き加熱し、当該封止用樹脂30rを硬化せしめる。
当該封止用樹脂30rの硬化がなされた後、上金型10uと下金型10dとを型開きし、下金型10d上から成形品、即ち樹脂封止品を取り出す。
【0120】
この様に、本実施の形態にあっては、上金型の内側面近傍に、当該上金型の上面から下金型方向に延びる五角形柱10bp−1が複数本、当該上金型10uの内側壁面に平行して配設されている。
【0121】
かかる五角形柱10bp−1を配設することにより、当該上金型の内側面に於ける封止用樹脂の反射が防止・抑制され、且つ、当該五角形柱10bp−1に於ける反射の方向も分散されて、当該封止用樹脂の流動によるボンディングワイヤの特定方向への湾曲を防止することができる。
【0122】
これにより、樹脂封止される半導体素子に於けるボンディングワイヤ相互間の接触が防止されて、当該半導体素子を含む半導体装置の製造歩留りを高めることができ、また当該半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0123】
<第2の実施の形態の変形例1>
前記第2の実施の形態に於ける樹脂封止装置2Aの、第1の変形例2Bを、図16に示す。
【0124】
当該図16にあっては、図13と同様に、上金型10uから下金型10dの方向に俯瞰した状態を示すもので、上金型に於ける、エアベント孔10a近傍の構成が拡大して示されている。
【0125】
即ち、上金型10uと上記下金型10dとにより形成されたキャビティ内に配置された被処理支持基板20sの主面には、複数の半導体素子20cが搭載され、当該半導体素子20cの電極(図示せず)と支持基板20s上の電極端子(図示せず)との間は、ボンディングワイヤ20wにより接続されている。
【0126】
一方、上金型10uの一つの壁の、下金型10dへの対向面には、選択的にエアベント孔10aが配設されている。
そして、当該上金型10uに於ける、上金型の内側面近傍に、当該上金型の上面から下金型方向に延びる柱状体10bp−2が複数本、当該上金型10uの内側壁面に平行して配設されている。
【0127】
当該柱状体10bp−2は、前記半導体素子20cの搭載部に対向する面、即ち封止用樹脂が流入して来る方向に対向する部位(図中に矢印αで示す部位)が円弧状とされ、他の三つの面が平面とされている。
【0128】
即ち、隣り合う柱状体10bp−2と対向する面(図中に矢印βで示す部位)は平面とされ、また上金型の内側面に対向する面(図中に矢印γで示す部位)も平面とされている。
【0129】
尚、当該柱状体10bp−2も、上金型10u近傍では太く、そして下金型10d方向に細くされて、その側面は、傾斜角θ(θ=5°〜15°)を有する。
かかる構成に於いて、柱状体10bp−2の封止用樹脂の流動方向に沿う長さをd1、幅をd2とすると、d1は、2mm〜5mmであり、d2は、1mm〜3mmとされる。
【0130】
また、隣り合う柱状体10bp−2間の距離d3は、1mm〜3mmとされる。更に、当該柱状体10bp−2と上金型の内側面(側壁10uw)との間の距離d4は、1mm〜3mmとされる。
【0131】
尚、かかる寸法は一例であり、これに限定されるものではない。
この様に、第2の実施の形態の変形例1にあっては、上金型の内側面近傍に、当該上金型の上面から下金型方向に延びる柱状体10bp−2が複数本、当該上金型10uの内側壁面に平行して配設されている。
【0132】
かかる柱状体10bp−2を配設することにより、当該上金型の内側面に於ける封止用樹脂の反射が防止・抑制され、且つ、当該柱状体10bp−2に於ける反射の方向も分散されて、当該封止用樹脂の流動によるボンディングワイヤの特定方向への湾曲を防止することができる。
【0133】
これにより、樹脂封止される半導体素子に於けるボンディングワイヤ相互間の接触が防止されて、当該半導体素子を含む半導体装置の製造歩留りを高めることができ、また当該半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0134】
<第2の実施の形態の変形例2>
前記第2の実施の形態に於ける樹脂封止装置2Aの、第2の変形例2Cを、図17に示す。
【0135】
当該図17にあっては、図13と同様に、上金型10uから下金型10dの方向に俯瞰した状態を示すもので、上金型に於ける、エアベント孔10a近傍の構成が拡大して示されている。
【0136】
即ち、上金型10uと上記下金型10dとにより形成されたキャビティ内に配置された被処理支持基板20sの主面には、複数の半導体素子20cが搭載され、当該半導体素子20cの電極(図示せず)と支持基板20s上の電極端子(図示せず)との間は、ボンディングワイヤ20wにより接続されている。
【0137】
一方、上金型10uの一つの壁の、下金型10dへの対向面には、選択的にエアベント孔10aが配設されている。
そして、当該上金型10uに於ける、上金型の内側面近傍に、当該上金型の上面から下金型方向に延びる三角柱10bp−3が複数本、当該上金型10uの内側壁面に平行して配設されている。
【0138】
当該三角柱10bp−3は、前記半導体素子20cの搭載部に対向する面、即ち封止用樹脂が流入して来る方向に対向して鋭角部(図中に矢印αで示す部位)が配置された二等辺三角形状を有し、他の一辺(図中の矢印βで示す部位)のなす面が平面とされている。
【0139】
即ち、上金型の内側面に対向する面が平面とされている。
尚、当該三角柱10bp−3も、上金型10u近傍では太く、そして下金型10d方向に細くされて、その側面は、傾斜角θ(θ=5°〜15°)を有する。
【0140】
かかる構成に於いて、三角柱10bp−3の封止用樹脂の流動方向に沿う長さをd1、幅をd2とすると、d1は、2mm〜5mmであり、d2は、1mm〜3mmとされる。
また、隣り合う三角柱10bp−3間の距離d3は、1mm〜3mmとされる。更に、当該三角柱10bp−3と上金型の内側壁(側壁10uw)との間の距離d4は、1mm〜3mmとされる。
【0141】
尚、かかる寸法は一例であり、これに限定されるものではない。
この様に、第2の実施の形態の変形例2にあっては、上金型の内側面近傍に、当該上金型の上面から下金型方向に延びる三角柱10bp−3が複数本、当該上金型10uの内側壁面に平行して配設されている。
【0142】
かかる三角柱10bp−3を配設することにより、当該上金型の内側面に於ける封止用樹脂の反射が防止・抑制され、且つ、当該三角柱10bp−3に於ける反射の方向も分散されて、当該封止用樹脂の流動によるボンディングワイヤの特定方向への湾曲を防止することができる。
【0143】
これにより、樹脂封止される半導体素子に於けるボンディングワイヤ相互間の接触が防止されて、当該半導体素子を含む半導体装置の製造歩留りを高めることができ、また当該半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0144】
<第2の実施の形態の変形例3>
前記第2の実施の形態に於ける樹脂封止装置2Aの、第3の変形例2Dを、図18(a)に示す。
【0145】
当該図18(a)にあっては、図13と同様に、上金型10uから下金型10dの方向に俯瞰した状態を示すもので、上金型に於ける、エアベント孔10a近傍の構成が拡大して示されている。
【0146】
即ち、上金型10uと上記下金型10dとにより形成されたキャビティ内に配置された被処理支持基板20sの主面には、複数の半導体素子20cが搭載され、当該半導体素子20cの電極(図示せず)と支持基板20s上の電極端子(図示せず)との間は、ボンディングワイヤ20wにより接続されている。
【0147】
一方、上金型10uの一つの壁の、下金型10dへの対向面には、選択的にエアベント孔10aが配設されている。
そして、当該上金型10uに於ける、上金型の内側面近傍に、当該上金型の上面から下金型方向に延びる柱状体10bp−4が複数本、当該上金型10uの内側壁面に平行して配設されている。
【0148】
当該柱状体10bp−4は、前記半導体素子20cの搭載部に対向する面、即ち封止用樹脂が流入して来る方向に対向して円弧状部(図中に矢印αで示す部位)が配置されている。
【0149】
また、隣り合う柱状体10bp−4と対向する面(図中の矢印βで示す部位)は平面とされ、また上金型の内側面に対向して円弧状部(図中の矢印γで示す部位)が位置する。
尚、当該柱状体10bp−4も、上金型10u近傍では太く、そして下金型10d方向に細くされて、その側面は、傾斜角θ(θ=5°〜15°)を有する。
【0150】
かかる構成に於いて、柱状体10bp−4の封止用樹脂の流動方向に沿う長さをd1、幅をd2とすると、d1は、2mm〜5mmであり、d2は、1mm〜3mmとされる。
また、隣り合う柱状体10bp−4間の距離d3は、1mm〜3mmとされる。更に、当該柱状体10bp−4と上金型の内側壁(側壁10uw)との間の距離d4は、1mm〜3mmとされる。
【0151】
尚、かかる寸法は一例であり、これに限定されるものではない。
この様に、第2の実施の形態の変形例3にあっては、上金型の内側面近傍に、当該上金型の上面から下金型方向に延びる柱状体10bp−4が複数本、当該上金型10uの内側壁面に平行して配設されている。
【0152】
かかる柱状体10bp−4を配設することにより、当該上金型の内側面に於ける封止用樹脂の反射が防止・抑制され、且つ、当該柱状体10bp−4に於ける反射の方向も分散されて、当該封止用樹脂の流動によるボンディングワイヤの特定方向への湾曲を防止することができる。
【0153】
また、当該柱状体10bp−4の、上金型の内側面への対向部は円弧状を有することから、図18(b)に示される様に、封止用樹脂は、エアベント孔10aに向かい矢印cをもって示す流れにより円滑に流れ、目詰まりなどを生じない。
【0154】
これにより、樹脂封止される半導体素子に於けるボンディングワイヤ相互間の接触が防止されて、当該半導体素子を含む半導体装置の製造歩留りを高めることができ、また当該半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0155】
<第2の実施の形態の変形例4>
前記第2の実施の形態に於ける樹脂封止装置2Aの、第4の変形例2Eを、図19(a)に示す。
【0156】
当該図19(a)にあっては、図13と同様に、上金型10uから下金型10dの方向に俯瞰した状態を示すもので、上金型に於ける、エアベント孔10a近傍の構成が拡大して示されている。
【0157】
即ち、上金型10uと上記下金型10dとにより形成されたキャビティ内に配置された被処理支持基板20sの主面には、複数の半導体素子20cが搭載され、当該半導体素子20cの電極(図示せず)と支持基板20s上の電極端子(図示せず)との間は、ボンディングワイヤ20wにより接続されている。
【0158】
一方、上金型10uの一つの壁の、下金型10dへの対向面には、選択的にエアベント孔10aが配設されている。
そして、当該上金型10uに於ける、上金型の内側面近傍に、当該上金型の上面から下金型方向に延びる六角柱10bp−5が複数本、当該上金型10uの内側壁面に平行して配設されている。
【0159】
当該六角柱10bp−5は、前記半導体素子20cの搭載部に対向する面、即ち封止用樹脂が流入して来る方向に対向して鋭角部(図中に矢印αで示す部位)が配置されている。
【0160】
従って、隣り合う六角柱10bp−5と対向する面(図中の矢印βで示す部位)は平面とされ、また上金型の内側面に対向して鋭角部(図中の矢印γで示す部位)が位置する。
尚、当該六角柱10bp−5も、上金型10u近傍では太く、そして下金型10d方向に細くされて、その側面は、傾斜角θ(θ=5°〜15°)を有する。
【0161】
かかる構成に於いて、六角柱10bp−5の封止用樹脂の流動方向に沿う長さをd1、幅をd2とすると、d1は、2mm〜5mmであり、d2は、1mm〜3mmとされる。
また、隣り合う六角柱10bp−5間の距離d3は、1mm〜3mmとされる。更に、当該六角柱10bp−5と上金型の内側壁(側壁10uw)との間の距離d4は、1mm〜3mmとされる。
【0162】
尚、かかる寸法は一例であり、これに限定されるものではない。
この様に、第2の実施の形態の変形例4にあっては、上金型の内側面近傍に、当該上金型の上面から下金型方向に延びる六角柱10bp−5が複数本、当該上金型10uの内側壁面に平行して配設されている。
【0163】
かかる六角柱10bp−5を配設することにより、当該上金型の内側面に於ける封止用樹脂の反射が防止・抑制され、且つ、当該六角柱10bp−5に於ける反射の方向も分散されて、当該封止用樹脂の流動によるボンディングワイヤの特定方向への湾曲を防止することができる。
【0164】
また、当該六角柱10bp−5の、上金型の内側面への対向部は鋭角を有することから、図19(b)に示される様に、封止用樹脂は、エアベント孔10aに向かい矢印cをもって示す流れにより円滑に流れ、目詰まりなどを生じない。
【0165】
これにより、樹脂封止される半導体素子に於けるボンディングワイヤ相互間の接触が防止されて、当該半導体素子を含む半導体装置の製造歩留りを高めることができ、また当該半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0166】
尚、上述した第1の実施の形態及びその変形例、並びに第2の実施の形態及びその変形例は、夫々が独立した実施の形態とは限らず、第1の実施の形態及びその変形例、第2の実施の形態及びその変形例の中から2つ以上の実施の形態を複合させた実施の形態を構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法のフロー図である。
【図2】第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法並びに樹脂封止装置を説明するための要部図である(その1)。
【図3】第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法並びに樹脂封止装置を説明するための要部図である(その2)。
【図4】第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法並びに樹脂封止装置を説明するための要部図である(その3)。
【図5】第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法並びに樹脂封止装置を説明するための要部図である(その4)。
【図6】第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法並びに樹脂封止装置を説明するための要部図である(その5)。
【図7】第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法並びに樹脂封止装置を説明するための要部図である(その6)。
【図8】第1の実施の形態の樹脂封止装置の変形例を説明する要部図である(その1)。
【図9】第1の実施の形態の樹脂封止装置の変形例を説明する要部図である(その2)。
【図10】第1の実施の形態の樹脂封止装置の変形例を説明する要部図である(その3)。
【図11】第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法並びに樹脂封止装置を説明するための要部図である(その1)。
【図12】第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法並びに樹脂封止装置を説明するための要部図である(その2)。
【図13】第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法並びに樹脂封止装置を説明するための要部図である(その3)。
【図14】第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法並びに樹脂封止装置を説明するための要部図である(その4)。
【図15】第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法並びに樹脂封止装置を説明するための要部図である(その5)。
【図16】第2の実施の形態の樹脂封止装置の変形例を説明する要部図である(その1)。
【図17】第2の実施の形態の樹脂封止装置の変形例を説明する要部図である(その2)。
【図18】第2の実施の形態の樹脂封止装置の変形例を説明する要部図である(その3)。
【図19】第2の実施の形態の樹脂封止装置の変形例を説明する要部図である(その4)。
【図20】樹脂封止用金型の構造を説明するための要部図である(その1)。
【図21】樹脂封止用金型の構造を説明するための要部図である(その2)。
【図22】樹脂封止用金型の構造を説明するための要部図である(その3)。
【図23】樹脂封止用金型の構造を説明するための要部図である(その4)。
【符号の説明】
【0168】
1A,2A 樹脂封止装置
10a エアベント孔
10ca キャビティ
10g ゲート部
10bp−1 五角形柱
10bp−2,4 柱状体
10bp−3 三角柱
10bp−5 六角柱
10cv−1,2,3 凹凸部
10cv−4 凹部
10d 下金型
10u 上金型
10s 主面
10tp 傾斜面
10uw 側壁
20c 半導体素子
20s 支持基板
20w ボンディングワイヤ
30r 封止用樹脂
30rbp 突出部
DL ダイシングライン
θ 傾斜角
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体を上金型と下金型により形成されるキャビティ内に配置し、当該キャビティ内に封止用樹脂を注入して前記被処理体を樹脂封止する方法に於いて、
金型として、エアベント孔が配設された側壁の前記キャビティ内側面が、波形を有する金型を用いることを特徴とする樹脂封止方法。
【請求項2】
被処理体を上金型と下金型により形成されるキャビティ内に配置し、当該キャビティ内に封止用樹脂を注入して前記被処理体を樹脂封止する方法に於いて、
金型として、エアベント孔が配設された側壁の前記キャビティ内側面近傍に、柱状体が配設された金型を用いることを特徴とする樹脂封止方法。
【請求項3】
上金型と下金型により構成されるキャビティ内に於いて、エアベント孔が配設された側壁の内側面が波形を有することを特徴とする樹脂封止用金型。
【請求項4】
上金型と下金型により構成されるキャビティ内に於いて、エアベント孔が配設された側壁の近傍に、柱状体が配設されてなることを特徴とする樹脂封止用金型。
【請求項1】
被処理体を上金型と下金型により形成されるキャビティ内に配置し、当該キャビティ内に封止用樹脂を注入して前記被処理体を樹脂封止する方法に於いて、
金型として、エアベント孔が配設された側壁の前記キャビティ内側面が、波形を有する金型を用いることを特徴とする樹脂封止方法。
【請求項2】
被処理体を上金型と下金型により形成されるキャビティ内に配置し、当該キャビティ内に封止用樹脂を注入して前記被処理体を樹脂封止する方法に於いて、
金型として、エアベント孔が配設された側壁の前記キャビティ内側面近傍に、柱状体が配設された金型を用いることを特徴とする樹脂封止方法。
【請求項3】
上金型と下金型により構成されるキャビティ内に於いて、エアベント孔が配設された側壁の内側面が波形を有することを特徴とする樹脂封止用金型。
【請求項4】
上金型と下金型により構成されるキャビティ内に於いて、エアベント孔が配設された側壁の近傍に、柱状体が配設されてなることを特徴とする樹脂封止用金型。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2010−98229(P2010−98229A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269588(P2008−269588)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
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