説明

樹脂成形体再生方法及び樹脂成形体再生システム

【課題】本発明は、樹脂成形体の外観の低下を抑制することが可能な樹脂成形体再生方法及び樹脂成形体再生システムを提供することを目的とする。
【解決手段】樹脂成形体再生方法は、樹脂を含む組成物を成形して作製された樹脂成形体の表面に刺激応答性材料を含む保護層が形成されている樹脂製品に外部刺激を付与する工程と、外部刺激が付与された樹脂製品から保護層を除去する工程を有し、刺激応答性材料は、熱分解性、加熱発泡性、生分解性又は架橋性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形体再生方法及び樹脂成形体再生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、レーザープリンター等の電子写真装置、インクジェット装置等の画像出力機器;家電製品等の電気電子機器は、使用された後に回収されており、例えば、樹脂製の外装部品は、再生されているが、適用する部品の品質を確保することが困難である。
【0003】
この原因としては、電気電子機器が使用されている間に、紫外線暴露により外装部品が黄変すること、外装部品を再生する際に、汚れ、シール部材等の異物が残留することが挙げられる。また、世代の異なる商品のデザイン色が変更されることがあり、外装部品を調色するには限界がある。このような状況から、再生された外装部品のほとんどは、低品位の材料としてのリサイクル、いわゆるカスケードリサイクルの形で用いられている。
【0004】
しかしながら、再生された外装部品をカスケードリサイクルの形で用いても、二酸化炭素の排出量を低減することによる環境負荷の削減や化石資源の有効利用に対する効果が小さい。
【0005】
そこで、特許文献1には、種々のシールを貼り付けたケースや蓋などのプラスチック成形品のリサイクルを行う装置として、ショットブラストによりシールの表面に粒体を高速度で噴射させ、プラスチック成形品からシールを剥離する装置が開示されている。
【0006】
しかしながら、シールを十分に剥離することができず、リサイクルされたプラスチック成形品の外観が低下するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術が有する問題に鑑み、樹脂成形体の外観の低下を抑制することが可能な樹脂成形体再生方法及び樹脂成形体再生システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、樹脂成形体再生方法において、樹脂を含む組成物を成形して作製された樹脂成形体の表面に刺激応答性材料を含む保護層が形成されている樹脂製品に外部刺激を付与する工程と、該外部刺激が付与された樹脂製品から前記保護層を除去する工程を有し、前記刺激応答性材料は、熱分解性、加熱発泡性、生分解性又は架橋性を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の樹脂成形体再生方法において、前記保護層が除去された樹脂製品を選別する工程をさらに有することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の樹脂成形体再生方法において、前記保護層は、蛍光材料をさらに含み、前記保護層が除去された樹脂製品を紫外線照射により選別することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の樹脂成形体再生方法において、前記刺激応答性材料は、熱分解性又は加熱発泡性を有し、前記外部刺激が加熱であることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の樹脂成形体再生方法において、前記刺激応答性材料は、架橋性を有し、前記外部刺激が加熱又は光照射であることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の樹脂成形体再生方法において、前記加熱の温度が60℃以上前記樹脂成形体の軟化温度以下であることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の樹脂成形体再生方法において、前記刺激応答性材料は、生分解性を有し、前記外部刺激が加熱水暴露又は加熱水蒸気暴露であることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の樹脂成形体再生方法において、前記外部刺激が付与された樹脂製品を乾式洗浄又は湿式洗浄することにより、前記保護層を除去することを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、樹脂成形体再生システムにおいて、樹脂を含む組成物を成形して樹脂成形体を作製する工程と、該樹脂成形体の表面に前記保護層を形成して前記樹脂製品を作製する工程と、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の樹脂成形体再生方法を用いて、使用後の前記樹脂製品に含まれる樹脂成形体を再生する工程を有することを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の樹脂成形体再生システムにおいて、前記樹脂製品は、電気電子機器の外装部品であることを特徴とする。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項9又は10に記載の樹脂成形体再生システムにおいて、塗料、塗料下地材、インク、トナー、フィルム、接着剤及び粘着剤の少なくとも一つを用いて、前記保護層を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、樹脂成形体の外観の低下を抑制することが可能な樹脂成形体再生方法及び樹脂成形体再生システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の樹脂成形体再生システムに適用される外装部品を有する電子写真装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
【0022】
まず、本発明の樹脂成形体再生システムに適用される電気電子機器の外装部品の一例として、電子写真装置10(図1参照)の外装部品について説明する。外装部品としては、特に限定されないが、外装カバー11、給紙トレイ12等が挙げられる。このような外装部品は、樹脂成形体の表面に、刺激応答性材料を含む保護層が形成されている。このため、電子写真装置10が使用されている間に、樹脂成形体が紫外線暴露により黄変することを抑制できる。また、外装部品を調色することができる。さらに、後述するように、樹脂成形体を再生する際に、保護層を十分に除去することができ、汚れ、シール部材等の異物の残留を抑制することができる。
【0023】
なお、樹脂成形体は、所定の成形条件で、樹脂を含む組成物を射出成形することにより得られる。
【0024】
樹脂としては、特に限定されないが、ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、ポリカーボネート樹脂とABS樹脂のポリマーアロイ樹脂(PC/ABS樹脂)、ポリカーボネート樹脂とポリスチレン樹脂のポリマーアロイ樹脂(PC/PS樹脂)、ポリカーボネート樹脂とアクリルニトリル・スチレン共重合樹脂のポリマーアロイ樹脂(PC/AS樹脂)、ポリカーボネート樹脂とポリ乳酸樹脂のポリマーアロイ樹脂(PC/PLA樹脂)等が挙げられる。
【0025】
また、組成物は、樹脂の他に、ガラス繊維、炭素繊維、植物繊維等の強化剤、ゴム等の耐衝撃改質剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、離型剤、熱安定剤、酸化防止剤、加水分解防止剤、紫外線吸収剤、着色顔料等の各種樹脂添加剤を含んでもよい。
【0026】
保護層に含まれる刺激応答性材料としては、熱分解性材料、加熱発泡性材料、生分解性材料又は架橋性材料を用いることができる。
【0027】
熱分解性材料としては、特に限定されないが、ポリペルオキシド、各種エポキシ樹脂やエステル樹脂に熱酸発生剤を少量添加した樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0028】
加熱発泡性材料としては、特に限定されないが、アゾジカルボンアミド(ADCA)、N,N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、4,4'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、ヒドラジカルボンアミド(HDCA)等の有機系発泡剤;炭酸水素ナトリウム(重曹)等の無機系発泡剤が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0029】
加熱発泡性材料の市販品としては、セルマイクCAP(125℃)、セルマイクCAP−149(125℃)、セルマイクCAP−250(145℃)、セルマイクCAP−500(150〜160℃)、セルマイク133(140〜160℃)、セルマイクEP−50(125℃)(以上、三協化成社製)、ビニホールAC#99(160℃)、ビニホールSE#30(142℃)、FE−788(140℃)(以上、永和化成工業社製)等のADCA系発泡剤;セルマイクAN(125℃)、セルマイクCAP−124(125℃)(以上、三協化成社製)、セルラーGX(123℃)、セルラーGX−N(123℃)、セルラーCK#54(123℃)(以上、永和化成工業社製)等のDPT系発泡剤;セルマイクS(158℃)、セルマイクSX(160℃)、セルマイクSX−H(160℃)(以上、三協化成社製)、FE−507(150℃)、セルボンSC−K(150℃)、セルボンSC−53(150℃)、セルボンSC−810(150℃)(以上、永和化成工業社製)等のOBSH系発泡剤等が挙げられる。なお、括弧内の温度は、分解温度である。
【0030】
このとき、加熱発泡性材料と発泡助剤を併用してもよい。発泡助剤としては、特に限定されないが、尿素等が挙げられる。
【0031】
生分解性材料としては、特に限定されないが、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレート・バリレート、ポリヒドロキシブチレート・ヘキサノエート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリビニールアルコール、芳香族ポリエステルコポリマー、デンプン系樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0032】
生分解性材料の市販品としては、バイオマックス(デュポン社製)、マタービー(ノバモント社製)等が挙げられる。
【0033】
架橋性材料としては、特に限定されないが、フェノール樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等の熱硬化性樹脂;エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、不飽和ポリエステル等の紫外線硬化樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0034】
また、保護層は、後述するように、樹脂成形体を再生する際に、保護層が除去された樹脂製品(樹脂成形体)を紫外線照射により選別するために、蛍光材料をさらに含む。
【0035】
蛍光材料としては、特に限定されないが、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化バリウム、硫化亜鉛、硫化バリウム、酸化ゲルマニウム亜鉛、硫化酸化イットリウム、塩化リン酸ストロンチウム等の無機材料;ビス(トリアジニルアミド)スチルベンジスルホン酸、クマリン誘導体、ピラゾリン誘導体等の蛍光増白剤、ローダミンB、ローダミン6G、フルオレセイン、エオシン、オーラミンタングステート、ローダミンタングステート、ソジウムレッドレーキC等の蛍光染料、蛍光染料を基に作製された蛍光顔料等の有機材料が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、耐候性の点で、無機材料が好ましい。
【0036】
蛍光材料の市販品としては、YS−A(朱色)、HG−A(若草色)、SPE−A(青色)、HR−A(紅色)、ALN−GP(瑠璃色)、ALN−BP(群青色)、D1120、D1150、D1180(以上、根本特殊化学社製)、FZ−2000シリーズ、FZ−5000シリーズ、FZ−6000シリーズ、SX−100シリーズ、SX−1000シリーズ(以上、シンロイヒ社製)が挙げられる。なお、括弧内の色は、蛍光発光する色である。
【0037】
樹脂成形体の表面に保護層を形成する方法としては、特に限定されないが、刺激応答性材料及び蛍光材料を含む塗料をスプレー塗布する方法、刺激応答性材料及び蛍光材料を含むインクをインクジェット塗布する方法、刺激応答性材料及び蛍光材料を含むトナーを電子写真プロセスにより転写する方法、刺激応答性材料及び蛍光材料を含むフィルムをインモールド成形により転写する方法、刺激応答性材料及び蛍光材料を含む接着剤でフィルムを接着させる方法、刺激応答性材料及び蛍光材料を含む粘着剤でフィルムを密着させる方法等が挙げられる。
【0038】
塗料としては、樹脂成形体に塗布することが可能であれば、特に限定されず、油性塗料及び水性塗料のいずれであってもよい。
【0039】
油性塗料のベース塗料の市販品としては、アクリル樹脂を主成分とするアクリルラッカー系1液塗料のポリナールNo.500、ネオポリナールNo.500(以上、大橋化学工業社製)、アクリル樹脂系塗料のPコートYS、ポリフェンAU1液型(以上、佑光社製)、熱可塑性スチレン変性アクリル樹脂系塗料のリペレS#1100(トウペ社製)等が挙げられる。
【0040】
水性塗料のベース塗料の市販品としては、水性FRP・プラスチック塗料のポリベスト・トップコート(サンデーペイント社製)等が挙げられる。
【0041】
外装部品に高度な外観品質が要求される場合には、刺激応答性材料を含む塗料下地材を塗布した後、刺激応答性材料を含まない塗料を塗布してもよい。
【0042】
塗料下地材としては、上記の塗料を用いることができ、着色剤を含まなくてもよい。
【0043】
接着剤としては、樹脂成形体にフィルムを接着させることが可能であれば、特に限定されず、一液型及び二液型のいずれであってもよいし、熱硬化型及び光硬化型のいずれであってもよい。
【0044】
次に、本発明の樹脂成形体再生システムについて説明する。
【0045】
まず、外装カバー11、給紙トレイ12等の外装部品を作製した後、電子写真装置10の本体に外装部品を取り付ける。次に、各種ユーザー環境で使用された電子写真装置10は、回収拠点である回収センターに集められる。このとき、再使用が不可能な外装部品は、再生拠点である再生センターに集められる。
【0046】
次に、再生センターに集められた電子写真装置10から外装部品を取り外した後、樹脂成形体に含まれる樹脂毎に外装部品を分別する。このとき、破損や変形が無いもののみを再生する。
【0047】
次に、外装部品に外部刺激を付与することにより、樹脂成形体と保護層の界面が変化し、保護層が剥離しやすくなる。
【0048】
刺激応答性材料が熱分解性材料である場合は、加熱により熱分解性材料を分解させる。刺激応答性材料が加熱発泡性材料である場合は、加熱により加熱発泡性材料を発泡させる。刺激応答性材料が架橋性材料である場合は、加熱又は光照射により架橋性材料を架橋させる。刺激応答性材料が生分解性材料である場合は、加熱水暴露又は加熱水蒸気暴露により生分解性材料を分解させる。
【0049】
このとき、加熱の温度が60℃〜樹脂成形体の軟化温度であることが好ましい。電気電子機器の外装部品は、一般に、保証温度が60℃程度であるため、60℃未満の加熱に応答する刺激応答性材料を用いることは好ましくない。また、加熱の温度が樹脂成形体の軟化温度を超えると、樹脂成形体に粘着性が生じ、後述する外部刺激が付与された外装部品から保護層を除去する際に、外装部品から保護層を除去しにくくなることがある。
【0050】
次に、外部刺激が付与された外装部品から保護層を除去する。このとき、物理的衝撃により、外装部品から保護層が剥離する。また、外装部品から剥離した粉体状の保護層は、集塵機により回収される。
【0051】
外部刺激が付与された外装部品から保護層を除去する方法としては、特に限定されないが、外装部品を乾式洗浄又は湿式洗浄する方法が挙げられる。
【0052】
外装部品を乾式洗浄する方法としては、特に限定されないが、圧空装置を用いて、樹脂ビーズ、砂、ドライアイス粒子等を外装部品に噴射する方法、密封容器内に圧縮空気を流入させる気流発生装置を用いて、密封された容器内で樹脂シート片を舞わせて、外装部品に衝突させる方法、樹脂繊維等のブラシを回転させながら外装部品に接触させる方法、圧縮空気を外装部品に噴射する方法等が挙げられる。
【0053】
外装部品を湿式洗浄する方法としては、特に限定されないが、高圧水又は高温高圧水を外装部品に噴射する方法等が挙げられる。
【0054】
保護層を除去した後の外装部品は、保護層が残留している外装部品を含むことがあるため、保護層を除去した後の外装部品の中から、保護層が除去された外装部品を選別することが好ましい。具体的には、ベルトコンベア上を搬送されている外装部品に紫外線を照射し、蛍光発光をラインCCDセンサにより検出し、保護層が除去された外装部品を選別する。このとき、保護層を除去した後の外装部品は、保護層が残留している外装部品を含む場合は、保護層が残留している外装部品から再度保護層を除去する。これにより、樹脂成形体を再生することができる。
【0055】
なお、保護層が除去された外装部品を選別する方法としては、保護層に蛍光材料を添加して、保護層が除去された外装部品に紫外線を照射し、蛍光発光をラインCCDセンサにより検出する方法に限定されず、樹脂成形体と保護層材料の色調を変えて、保護層が除去された外装部品の色調をカラーCCDセンサにより検出する方法等が挙げられる。
【0056】
再生された樹脂成形体の表面に、刺激応答性材料を含む保護層を形成することにより、外装部品を再生することができる。
【0057】
なお、本発明の樹脂成形体再生システムを適用することが可能な樹脂製品としては、電気電子機器の外装部品の他に、自動車の内外装部品、電車の内装部品、航空機の内装部品、家財道具、建材等が挙げられる。電気電子機器としては、複写機、レーザープリンター等の電子写真装置、インクジェット装置等の画像出力機器;家電製品等が挙げられる。
【実施例】
【0058】
[実施例1]
水性アクリル系樹脂を主成分とする水性塗料アクアトーンNo.500(大橋化学工業社製)100質量部に、発泡温度が125℃の有機系発泡剤セルマイクCAP(三協化成社製)5質量部及び平均粒子径が3μmの蛍光顔料ALN−GP(根本特殊化学社製)1質量部を添加し、水分を調整しながら撹拌分散させて、塗料1を得た。
【0059】
ガラス転移点が145〜150℃のPC/ABS樹脂マルチロンTN−7200B(帝人化成社製)を、型締力50トンの電動式射出成形機を用いて、金型温度60℃、シリンダー温度240℃、射出速度20mm/秒、射出圧力100MPa、冷却時間60秒間の成形条件で射出成形し、長さが80mm、幅が10mm、厚さが4mmの樹脂成形体1を得た。
【0060】
塗装ブースで、スプレー式塗布ガンを用いて、樹脂成形体1の表面に塗料1を塗装して保護層を形成し、樹脂製品を得た。
【0061】
温度60℃、湿度85%RHの恒温恒湿槽に、樹脂製品を200時間放置し、5年相当の使用を想定した加速試験を実施した。
【0062】
125℃の恒温槽PU−1KH(エスペック社製)に、樹脂製品を5分間放置し、加熱した。次に、圧空装置を用いて、ドライアイス粒子を加熱された樹脂製品に噴射することにより、乾式洗浄し、保護層を除去した。さらに、乾式洗浄された樹脂製品に波長が350nmの紫外線を照射し、保護層が除去された樹脂製品を選別し、樹脂成形体を再生した。
【0063】
分光測色計CM−3700d(ミノルタ社製)を用いて、再生された樹脂成形体の樹脂成形体1との色差ΔEを測定したところ、ΔEは0.8であった。
【0064】
また、顕微鏡BX51−P(オリンパス社製)を用いて、再生された樹脂成形体の保護層の残量を測定したところ、直径が100μm以上の保護層の残量は0個であった。
【0065】
[実施例2]
熱硬化型一液型接着剤2202C(スリーボンド社製)100質量部に、発泡温度が125℃の有機系発泡剤セルマイクCAP(三協化成社製)5質量部及び平均粒子径が3μmの蛍光顔料ALN−GP(根本特殊化学社製)1質量部を添加し、撹拌分散させて、接着剤1を得た。
【0066】
樹脂成形体1の表面に接着剤1を均一に塗布し、厚さが50μmのポリエチレンテレフタレート製のフィルムを貼り付けた後、80℃で15分間加熱して、保護層を形成し、樹脂製品を得た。
【0067】
温度60℃、湿度85%RHの恒温恒湿槽に、樹脂製品を200時間放置し、5年相当の使用を想定した加速試験を実施した。
【0068】
125℃の恒温槽PU−1KH(エスペック社製)に、樹脂製品を5分間放置し、加熱した。次に、アクリル繊維のブラシを回転させながら、加熱された樹脂製品に接触させることにより、乾式洗浄し、保護層を除去した。さらに、乾式洗浄された樹脂製品に波長が350nmの紫外線を照射し、保護層が除去された樹脂製品を選別し、樹脂成形体を再生した。
【0069】
分光測色計CM−3700d(ミノルタ社製)を用いて、再生された樹脂成形体の樹脂成形体1との色差ΔEを測定したところ、ΔEは0.9であった。
【0070】
また、顕微鏡BX51−P(オリンパス社製)を用いて、再生された樹脂成形体の保護層の残量を測定したところ、直径が100μm以上の保護層の残量は0個であった。
【0071】
[実施例3]
ポリ乳酸レイシア H−100(三井化学社製)100質量部をクロロホルム中に溶解させた後、蛍光顔料FZ−5009(シンロイヒ社製)1質量部を添加し、分散させた分散液を用いて、キャスト法によりフィルム1を得た。
【0072】
ガラス転移点が145〜150℃のPC/ABS樹脂マルチロンTN−7200B(帝人化成社製)を、型締力50トンの電動式射出成形機を用いて、金型温度60℃、シリンダー温度240℃、射出速度20mm/秒、射出圧力100MPa、冷却時間60秒間の成形条件で射出成形した。このとき、金型内にフィルム1を設置して、インモールド成形することにより、長さが80mm、幅が10mm、厚さが4mmの樹脂成形体の表面に保護層が形成されている樹脂製品を得た。
【0073】
温度60℃、湿度85%RHの恒温恒湿槽に、樹脂製品を200時間放置し、5年相当の使用を想定した加速試験を実施した。
【0074】
樹脂製品を80℃の温水に1時間浸漬し、加水加熱した。次に、密封容器内に圧縮空気を流入させる気流発生装置を用いて、密封容器内で、1cm×1cm×50μmのポリエチレンテレフタレート製のフィルムを10分間舞わせて、加水加熱された樹脂製品に衝突させることにより、乾式洗浄し、保護層を除去した。さらに、乾式洗浄された樹脂製品に波長が350nmの紫外線を照射し、保護層が除去された樹脂製品を選別し、樹脂成形体を再生した。
【0075】
分光測色計CM−3700d(ミノルタ社製)を用いて、再生された樹脂成形体の樹脂成形体1との色差ΔEを測定したところ、ΔEは1.1であった。
【0076】
また、顕微鏡BX51−P(オリンパス社製)を用いて、再生された樹脂成形体の保護層の残量を測定したところ、直径が100μm以上の保護層の残量は0個であった。
【0077】
[実施例4]
水性アクリル系樹脂を主成分とする水性塗料アクアトーンNo.500(大橋化学工業社製)100質量部に、平均粒子径が3μmの蛍光顔料ALN−GP(根本特殊化学社製)1質量部を添加し、水分を調整しながら撹拌分散させて、塗料2を得た。
【0078】
エタノール100質量部に、発泡温度が125℃の有機系発泡剤セルマイクCAP(三協化成社製)5質量部を添加し、撹拌分散させて、塗料下地材1を得た。
【0079】
塗装ブースで、スプレー式塗布ガンを用いて、樹脂成形体1の表面に塗料下地材1を塗装して、乾燥した後、塗料2を塗装して保護層を形成し、樹脂製品を得た。
【0080】
温度60℃、湿度85%RHの恒温恒湿槽に、樹脂製品を200時間放置し、5年相当の使用を想定した加速試験を実施した。
【0081】
125℃の恒温槽PU−1KH(エスペック社製)に、樹脂製品を5分間放置し、加熱した。次に、加熱された樹脂製品に圧縮空気を噴射することにより、乾式洗浄し、保護層を除去した。さらに、乾式洗浄された樹脂製品に波長が350nmの紫外線を照射し、保護層が除去された樹脂製品を選別し、樹脂成形体を再生した。
【0082】
分光測色計CM−3700d(ミノルタ社製)を用いて、再生された樹脂成形体の樹脂成形体1との色差ΔEを測定したところ、ΔEは0.8であった。
【0083】
また、顕微鏡BX51−P(オリンパス社製)を用いて、再生された樹脂成形体の保護層の残量を測定したところ、直径が100μm以上の保護層の残量は0個であった。
【0084】
[実施例5]
ガラス転移点が145〜150℃のPC/ABS樹脂マルチロンTN−7200B(帝人化成社製)を、型締力50トンの電動式射出成形機を用いて、金型温度60℃、シリンダー温度240℃、射出速度20mm/秒、射出圧力100MPa、冷却時間60秒間の成形条件で射出成形した。このとき、金型内にフィルム1を設置して、インモールド成形することにより、長さが80mm、幅が10mm、厚さが4mmの樹脂成形体の表面に保護層が形成されている樹脂製品を得た。
【0085】
温度60℃、湿度85%RHの恒温恒湿槽に、樹脂製品を200時間放置し、5年相当の使用を想定した加速試験を実施した。
【0086】
樹脂製品を80℃の温水に1時間浸漬し、加水加熱した。次に、加水加熱された樹脂製品に80℃の温水を圧縮噴射することにより、湿式洗浄し、保護層を除去した。さらに、乾式洗浄された樹脂製品に波長が350nmの紫外線を照射し、保護層が除去された樹脂製品を選別し、樹脂成形体を再生した。
【0087】
分光測色計CM−3700d(ミノルタ社製)を用いて、再生された樹脂成形体の樹脂成形体1との色差ΔEを測定したところ、ΔEは1.1であった。
【0088】
また、顕微鏡BX51−P(オリンパス社製)を用いて、再生された樹脂成形体の保護層の残量を測定したところ、直径が100μm以上の保護層の残量は0個であった。
【0089】
[比較例1]
塗装ブースで、スプレー式塗布ガンを用いて、樹脂成形体1の表面に塗料1を塗装して保護層を形成し、樹脂製品を得た。
【0090】
温度60℃、湿度85%RHの恒温恒湿槽に、樹脂製品を200時間放置し、5年相当の使用を想定した加速試験を実施した。
【0091】
圧空装置を用いて、ドライアイス粒子を噴射して、加熱された樹脂製品を乾式洗浄し、保護層を除去した。
【0092】
分光測色計CM−3700d(ミノルタ社製)を用いて、保護層が除去された樹脂製品の樹脂成形体1との色差ΔEを測定したところ、ΔEは3.5であった。
【0093】
また、顕微鏡BX51−P(オリンパス社製)を用いて、保護層が除去された樹脂製品の保護層の残量を測定したところ、直径が100μm以上の保護層の残量は2個であった。
【0094】
[比較例2]
温度60℃、湿度85%RHの恒温恒湿槽に、樹脂成形体1を200時間放置し、5年相当の使用を想定した加速試験を実施した。
【0095】
分光測色計CM−3700d(ミノルタ社製)を用いて、加速試験を実施した樹脂成形体1の樹脂成形体1との色差ΔEを測定したところ、ΔEは2.1であった。
【0096】
以上の結果から、実施例1〜3の樹脂成形体再生システムは、外観の低下を抑制できることがわかる。
【符号の説明】
【0097】
10 電子写真装置
11 外装カバー
12 給紙トレイ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0098】
【特許文献1】特開2001−260026号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を含む組成物を成形して作製された樹脂成形体の表面に刺激応答性材料を含む保護層が形成されている樹脂製品に外部刺激を付与する工程と、
該外部刺激が付与された樹脂製品から前記保護層を除去する工程を有し、
前記刺激応答性材料は、熱分解性、加熱発泡性、生分解性又は架橋性を有することを特徴とする樹脂成形体再生方法。
【請求項2】
前記保護層が除去された樹脂製品を選別する工程をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形体再生方法。
【請求項3】
前記保護層は、蛍光材料をさらに含み、
前記保護層が除去された樹脂製品を紫外線照射により選別することを特徴とする請求項2に記載の樹脂成形体再生方法。
【請求項4】
前記刺激応答性材料は、熱分解性又は加熱発泡性を有し、
前記外部刺激が加熱であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の樹脂成形体再生方法。
【請求項5】
前記刺激応答性材料は、架橋性を有し、
前記外部刺激が加熱又は光照射であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の樹脂成形体再生方法。
【請求項6】
前記加熱の温度が60℃以上前記樹脂成形体の軟化温度以下であることを特徴とする請求項4又は5に記載の樹脂成形体再生方法。
【請求項7】
前記刺激応答性材料は、生分解性を有し、
前記外部刺激が加熱水暴露又は加熱水蒸気暴露であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の樹脂成形体再生方法。
【請求項8】
前記外部刺激が付与された樹脂製品を乾式洗浄又は湿式洗浄することにより、前記保護層を除去することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の樹脂成形体再生方法。
【請求項9】
樹脂を含む組成物を成形して樹脂成形体を作製する工程と、
該樹脂成形体の表面に前記保護層を形成して前記樹脂製品を作製する工程と、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の樹脂成形体再生方法を用いて、使用後の前記樹脂製品に含まれる樹脂成形体を再生する工程を有することを特徴とする樹脂成形体再生システム。
【請求項10】
前記樹脂製品は、電気電子機器の外装部品であることを特徴とする請求項9に記載の樹脂成形体再生システム。
【請求項11】
塗料、塗料下地材、インク、トナー、フィルム、接着剤及び粘着剤の少なくとも一つを用いて、前記保護層を形成することを特徴とする請求項9又は10に記載の樹脂成形体再生システム。

【図1】
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【公開番号】特開2011−137132(P2011−137132A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114679(P2010−114679)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】