説明

樹脂材料の計量装置

【課題】ベース材に対してマスターバッチ材を均一に分散させた所望の配合比の樹脂材料を安定してつくり出す。
【解決手段】ベース材Aと、マスターバッチ材Bとによって所定の配合比の樹脂材料をつくるための樹脂材料の計量装置であって、ベース材貯留部(第1ホッパー)12およびマスターバッチ材貯留部(第2ホッパー)16に隣接して配置されて回転する計量ホイール20と、その外周面22において一定量のマスターバッチ材を受け入れることが可能な計量部24と、貯留部12内のベース材Aを計量ホイールの外周面22に連続して供給する供給口14と、貯留部16内のマスターバッチ材Bを計量部24にのみ供給する供給口18とを備えている。計量ホイール20は、その外周面が供給口18から供給口14に向かって移行する方向へ回転し、ベース材Aと一定量のマスターバッチ材Bとを配合しながら計量する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材料の計量装置に関し、詳しくはベース材とマスターバッチ材とによって所定の配合比の樹脂材料をつくるための樹脂材料の計量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置については、例えば特許文献1に開示された技術が既に知られている。この技術では、樹脂成形品の樹脂材料が、その主剤となるベース材と、このベース材とほぼ同等の原料に物性調節剤や着色剤などの添加剤を分散させたマスターバッチ材との混合によってつくられている。そして、マスターバッチ材の添加剤が全体に分散された樹脂成形品となるように、ベース材とマスターバッチ材とを正確な割合で、かつ、均一に混合する必要がある。その手段として特許文献1の技術では、回転可能なローター外周にマスターバッチ材の粒寸法に対応した孔寸法の吸着孔を設け、この吸着孔にペレット状のマスターバッチ材を一粒だけ吸着することで計量を行う。この状態でローターが回転し、吸着孔に保持されているマスターバッチ材を、ベース材が連続して供給されている通路に排出することで、ベース材とマスターバッチ材とを配合している。
【特許文献1】特開2000−176939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示された技術では、マスターバッチ材は正確に計量されるものの、ベース材はそのホッパータンク内から通路に向けて直接落下させるといった供給を行っている。このため、ベース材の供給量が不安定であり、結果的にベース材とマスターバッチ材との配合比が変化することになる。
【0004】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、ベース材に対してマスターバッチ材を均一に分散させた所望の配合比の樹脂材料を安定してつくり出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
第1の発明は、ベース材貯留部に貯留されているベース材と、マスターバッチ材貯留部に貯留されているマスターバッチ材とによって所定の配合比の樹脂材料をつくるための樹脂材料の計量装置であって、ベース材貯留部およびマスターバッチ材貯留部に隣接して配置され、かつ、所定の駆動源から回転力を受けて回転する計量ホイールと、計量ホイールの外周面において、一定量のマスターバッチ材を受け入れることが可能に設けられた計量部と、ベース材貯留部に貯留されているベース材を、計量ホイールの外周面に連続して供給することが可能なベース材供給口と、マスターバッチ材貯留部に貯留されているマスターバッチ材を、計量ホイールの計量部にのみ供給することが可能なマスターバッチ材供給口とを備えている。計量ホイールは、その外周面がマスターバッチ材供給口からベース材供給口に向かって移行する方向へ回転駆動され、その外周面に対してベース材供給口から連続して供給されるベース材と、マスターバッチ材供給口から計量部に受け入れて送られてくる一定量のマスターバッチ材とを、計量ホイールの回転によって配合しながら計量するように設定されている。
【0006】
このように、計量ホイールの外周面に供給されるベース材と、該計量ホイールの計量部に受け入れた一定量のマスターバッチ材とを計量ホイールの回転によって配合しながら計量することにより、ベース材に対してマスターバッチ材を均一に分散させた所望の配合比の樹脂材料を安定してつくり出すことができる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、計量ホイールの回転に伴ってその外周面から落下するベース材とマスターバッチ材とが配合された樹脂材料を受ける位置に、衝突板および空隙部が設けられている。
この構成により、既に所定の比率で配合されているベース材とマスターバッチ材とが衝突板に当たるとともに空隙部で混ざり合うこととなり、これらのマスターバッチ材とベース材とが効率よく混合される。
【0008】
第3の発明は、1又は2の発明において、計量ホイールの外周面において一定量のマスターバッチ材を受け入れるための計量部が溝形状に設定されている。
これにより、マスターバッチ材とベース材とを所望の比率で配合するためのマスターバッチ材の計量が正確となる。
【0009】
第4の発明は、1、2又は3の発明において、計量ホイールの外周面に対して複数個の計量部が周方向へ一定の間隔をもって設けられている。
これにより、計量部の個数(ピッチ)を変えるだけで、ベース材に対するマスターバッチ材の配合比を容易に調整することができる。
【0010】
第5の発明は、1、2、3又は4の発明において、計量ホイールにおける外周面の表面粗さが、他の箇所の表面よりも粗く設定されている。
これによってベース材供給口から計量ホイールの外周面に供給されるベース材が滑りにくくなり、このベース材が計量ホイールの回転によって的確に運ばれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を用いて説明する。
実施の形態1
まず、本発明における実施の形態1を図1および図2によって説明する。
図1は、樹脂材料の計量装置を表した概要図である。この図面において、ハウジング10の上部には、ベース材Aが貯留された第1ホッパー12と、マスターバッチ材Bが貯留された第2ホッパー16とがそれぞれ設置されている。つまり、第1ホッパー12は本発明の「ベース材貯留部」に相当し、第2ホッパー16は本発明の「マスターバッチ材貯留部」に相当する。また、ハウジング10内の上方部位には、計量ホイール20が組み込まれている。この計量ホイール20は、モータなどの駆動源から回転力を受けて図面の矢印方向へ連続して回転することが可能である。
なお、第1ホッパー12の供給口14および第2ホッパー16の供給口18は、それぞれ計量ホイール20の外周面22に接近した位置で開放している。そして、計量ホイール20の回転方向は、外周面22が第2ホッパー16の供給口18から第1ホッパー12の供給口14に向かって移行するようになっている。
【0012】
図2に計量ホイール20が外観斜視図で示されている。この図面から明らかなように、計量ホイール20の外周面22における片側の端面寄りには、複数個(4個)の計量部24が周方向へ一定の間隔で設けられている。これらの各計量部24は、第2ホッパー16から供給されるマスターバッチ材Bを計量するためのもので、それぞれ溝形状(凹形状)に設定されている。なお、計量ホイール20の外周面22において、各計量部24を除いた表面はローレット加工が施されている。
第1ホッパー12内に貯留されているベース材Aは、該第1ホッパー12の供給口14から計量ホイール20の外周面22に連続して供給される。これに対し、第2ホッパー16内に貯留されているマスターバッチ材Bは、第2ホッパー16の供給口18から計量ホイール20の各計量部24にのみ供給される。すなわち、第2ホッパー16の供給口18は、計量ホイール20の外周面22にほとんど接触する状態に接近しており、各計量部24の間では計量ホイール20の外周面22によって閉ざされた状態に保持される。
【0013】
ハウジング10内における計量ホイール20の下方部位には、衝突板26が設けられ、この衝突板26の下方は空隙部28になっている。これにより、後述するように計量ホイール20の外周面22から落下するベース材Aおよびマスターバッチ材Bは、衝突板26に当たってから空隙部28に落下する。このため、空隙部28において材料同士が衝突し合いながらランダムな運動が与えられ、ベース材Aおよびマスターバッチ材Bが効率よく混合される。
【0014】
このように構成された樹脂材料の計量装置において、モータなどの駆動源を起動させて計量ホイール20を図1の矢印方向へ回転させると、その外周面22に第1ホッパー12の供給口14から一定量のベース材Aが連続して供給されるとともに、第2ホッパー16の供給口18からマスターバッチ材Bが計量部24にのみ供給される。そして、既に説明したように計量ホイール20の回転方向は、その外周面22が第2ホッパー16の供給口18から第1ホッパー12の供給口14に向かって移行するように設定されている。このため、第2ホッパー16の供給口18から計量部24に受け入れた一定量のマスターバッチ材Bが第1ホッパー12の供給口14に向けて送られ、この供給口14から連続して供給される一定量のベース材Aと配合される。
すなわち、計量ホイール20の回転によってベース材Aとマスターバッチ材Bとが配合されながら計量される。これにより、ベース材Aに対してマスターバッチ材Bが均一に分散された樹脂材料が、計量ホイール20の外周面22からハウジング10内の下方へ落下する。
【0015】
ベース材Aの供給量(配合量)は、計量ホイール20の径や外周面22の幅、その回転数、供給口14と外周面22との隙間によって決定される。特に供給口14と外周面22との隙間については、ベース材Aの供給量の微調整が可能である。なお、計量ホイール20における外周面22のローレット加工により、この外周面22からベース材Aが滑りにくく、計量ホイール20の回転に伴ってベース材Aが適正に計量され、かつ、適正に送られる。
一方、マスターバッチ材Bの供給量(配合量)は、計量ホイール20の回転数、あるいは各計量部24の容積、個数、ピッチによって決定される。この計量部24の個数については、1〜10個程度から配合比に応じて適宜に選定すればよい。また、計量ホイール20の各計量部24の形状は矩形に限らず、円形あるいは楕円形でもよい。これらの計量部24に関する変更事項は、後述する実施の形態2における計量部25においても適用することができる。
【0016】
ハウジング10内の下方へ落下する樹脂材料は、既に述べたように衝突板26に当たってから空隙部28に落下することで、樹脂材料の落下方向が変化し、材料同士が衝突し合いながらランダムな運動が与えられ、ベース材Aおよびマスターバッチ材Bが効率よく混合される。このように、計量ホイール20の回転によってベース材Aにマスターバッチ材Bを均一に分散させた状態で配合し、かつ、これらを衝突板26および空隙部28によって混合することにより、良好な樹脂材料がつくられる。したがって、計量装置とは別に混合機を設ける必要がなく、設備コストを抑えることが可能になる。
【0017】
実施の形態2
つづいて、本発明における実施の形態2を図3および図4によって説明する。
図3は、実施の形態2における樹脂材料の計量装置を表した概要図である。図4は、同じく実施の形態2における計量ホイール20を表した外観斜視図である。これらの図面で示す実施の形態2では、ハウジング10の上部に設置されている第1ホッパー12(ベース材貯留部)と第2ホッパー16(マスターバッチ材貯留部)との間において、もう一つの第3ホッパー30が設置されている。この第3ホッパー30内には、例えば第2ホッパー16内に貯留されているマスターバッチ材Bとは異なる種類のマスターバッチ材Cが貯留されている。
第3ホッパー30の供給口32についても、第1ホッパー12および第2ホッパー16の供給口14,18と同様に計量ホイール20の外周面22に接近した位置で開放している。そして、計量ホイール20の回転により、その外周面22は第2ホッパー16の供給口18から第3ホッパー30の供給口32を経て第1ホッパー12の供給口14に向かって移行する。
【0018】
計量ホイール20の外周面22には、各計量部24とは反対側の端面寄りにおいて複数個(4個)の計量部25が周方向へ一定の間隔で設けられている。これらの各計量部25は、第3ホッパー30から供給されるマスターバッチ材Cを計量するためのもので、それぞれ溝形状(凹形状)に設定されている。この第3ホッパー30の供給口32は、計量ホイール20の外周面22にほとんど接触する状態に接近しており、各計量部25の間では計量ホイール20の外周面22によって閉ざされた状態に保持される。したがって、第3ホッパー30内に貯留されているマスターバッチ材Cは、供給口32から計量ホイール20の各計量部25にのみ供給される。
なお、計量ホイール20の外周面22において、各計量部24,25を除いた表面にローレット加工が施され、またハウジング10内における計量ホイール20の下方部位に、衝突板26および空隙部28が設けられているのは実施の形態1と同じである。
【0019】
実施の形態2における計量装置において、計量ホイール20を図3の矢印方向へ回転させると、その外周面22に第1ホッパー12の供給口14から一定量のベース材Aが連続して供給されるとともに、第2ホッパー16の供給口18からマスターバッチ材Bが計量部24にのみ供給され、第3ホッパー30の供給口32からマスターバッチ材Cが計量部25にのみ供給される。これにより、計量部24に受け入れた一定量のマスターバッチ材Bと、計量部25に受け入れた一定量のマスターバッチ材Cとが第1ホッパー12の供給口14から連続して供給される一定量のベース材Aと配合ながら計量される。
計量ホイール20の回転により、ベース材Aに対してマスターバッチ材B,Cが均一に分散された樹脂材料は、この計量ホイール20の外周面22からハウジング10内の下方へ落下する。この樹脂材料が衝突板26に当たることで材料の落下方向が変化し、空隙部28で三種類の材料同士が衝突し合いながらランダムな運動が与えられて効率よく混合される。
【0020】
実施の形態3
つぎに、本発明における実施の形態3を図5によって説明する。
図5は、実施の形態3における計量装置の一部を表した概要図である。図6は、同じく実施の形態3における計量ホイール20を表した外観斜視図である。これらの図面で示すように実施の形態3では、例えば実施の形態1の計量装置における計量ホイール20の各計量部24を突起形状の計量部36に代えている。つまり、これらの計量部36についても、計量ホイール20の外周面22において周方向へ一定の間隔で設けられている。そこで、計量ホイール20を図5の矢印方向へ回転させると、突起形状の計量部36が第2ホッパー16の供給口18からマスターバッチ材Bを受け取って計量するとともに、そのマスターバッチ材Bが実施の形態1の場合と同様にベース材Aと配合される。
なお、実施の形態3においても、計量ホイール20の外周面22にローレット加工が施されている。このローレット加工は、既に説明したように計量ホイール20における外周面22の表面粗さを高めてベース材Aを滑りにくくするための一手段であるから、実施の形態1〜3のローレット加工に代えて外周面22にウレタンゴムなどを貼ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態1における樹脂材料の計量装置を表した概要図
【図2】実施の形態1における計量ホイールを表した外観斜視図
【図3】実施の形態2における樹脂材料の計量装置を表した概要図
【図4】実施の形態2における計量ホイールを表した外観斜視図
【図5】実施の形態3における計量装置の一部を表した概要図
【図6】実施の形態3における計量ホイールを表した外観斜視図
【符号の説明】
【0022】
12 第1ホッパー(ベース材貯留部)
14 ベース材供給口
16 第2ホッパー(マスターバッチ材貯留部)
18 マスターバッチ材供給口
20 計量ホイール
22 外周面
24 計量部
A ベース材
B マスターバッチ材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース材貯留部に貯留されているベース材と、マスターバッチ材貯留部に貯留されているマスターバッチ材とによって所定の配合比の樹脂材料をつくるための樹脂材料の計量装置であって、
ベース材貯留部およびマスターバッチ材貯留部に隣接して配置され、かつ、所定の駆動源から回転力を受けて回転する計量ホイールと、計量ホイールの外周面において、一定量のマスターバッチ材を受け入れることが可能に設けられた計量部と、ベース材貯留部に貯留されているベース材を、計量ホイールの外周面に連続して供給することが可能なベース材供給口と、マスターバッチ材貯留部に貯留されているマスターバッチ材を、計量ホイールの計量部にのみ供給することが可能なマスターバッチ材供給口とを備え、
計量ホイールは、その外周面がマスターバッチ材供給口からベース材供給口に向かって移行する方向へ回転駆動され、その外周面に対してベース材供給口から連続して供給されるベース材と、マスターバッチ材供給口から計量部に受け入れて送られてくる一定量のマスターバッチ材とを、計量ホイールの回転によって配合しながら計量するように設定されている樹脂材料の計量装置。
【請求項2】
請求項1に記載された樹脂材料の計量装置であって、
計量ホイールの回転に伴ってその外周面から落下するベース材とマスターバッチ材とが配合された樹脂材料を受ける位置に、衝突板および空隙部が設けられている樹脂材料の計量装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された樹脂材料の計量装置であって、
計量ホイールの外周面において一定量のマスターバッチ材を受け入れるための計量部が溝形状に設定されている樹脂材料の計量装置。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載された樹脂材料の計量装置であって、
計量ホイールの外周面に対して複数個の計量部が周方向へ一定の間隔をもって設けられている樹脂材料の計量装置。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4に記載された樹脂材料の計量装置であって、
計量ホイールにおける外周面の表面粗さが、他の箇所の表面よりも粗く設定されている樹脂材料の計量装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−96142(P2009−96142A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272382(P2007−272382)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【出願人】(502453539)和光工機株式会社 (4)
【Fターム(参考)】