説明

樹脂架橋粒子の製造方法

【課題】アミノ樹脂架橋粒子やフェノール樹脂架橋粒子において、カップリング剤処理による効果をより一層向上させうる(つまり、より多くのカップリング剤を樹脂架橋粒子に結合させうる)手段を提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係る樹脂架橋粒子の製造方法は、アミノ化合物および/またはフェノール化合物とホルムアルデヒドとを反応させて樹脂前駆体を得る工程と、樹脂前駆体を硬化させて樹脂架橋粒子を得る工程とを含む。そして、当該製造方法は、硬化後の樹脂架橋粒子のメチロール基率が8%以上の状態で当該樹脂架橋粒子をカップリング剤と混合して加熱するカップリング剤処理工程をさらに含む点に特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂架橋粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂の1種として、熱硬化性樹脂であるアミノ樹脂が知られている。アミノ樹脂は、アミノ化合物(例えば、メラミン、ベンゾグアナミンなど)とホルムアルデヒドとの縮合単位を含み、架橋(網目状)構造を有する。そして、このアミノ樹脂からなる架橋粒子(アミノ樹脂架橋粒子)は、高硬度などの優れた機械的特性、高い耐熱性、高い屈性率、正帯電特性などのビニル重合体粒子にはない優れた特性から、液晶表示素子用スペーサ、導電性微粒子用基材粒子、高分子フィルムのアンチブロッキング剤、光拡散剤などとして有用である。
【0003】
また、他の合成樹脂(熱硬化性樹脂)として、フェノール樹脂が知られている。フェノール樹脂は、フェノール化合物(例えば、フェノール、フェニルフェノールなど)とホルムアルデヒドとの縮合単位を含み、架橋(網目状)構造を有する。そして、このフェノール樹脂からなる架橋粒子(フェノール樹脂架橋粒子)は、耐薬品性、高強度、高耐熱性といった優れた特性から、これらの特性を活かした機能性フィラーとして有用である。
【0004】
これらのアミノ樹脂架橋粒子やフェノール樹脂架橋粒子は、水性媒体中でアミノ化合物とホルムアルデヒドとの縮合、硬化反応、フェノール化合物とホルムアルデヒドとの縮合、硬化反応によりそれぞれ製造され、これらの粒子は、使用用途上、通常は乾燥粉体として使用に供される。ところが、これらの粒子粉体は、加熱すると有害なホルムアルデヒドを発生するという問題があった。つまり、これらの樹脂架橋粒子は、ジメチレンエーテル結合やメチロール基を構造中に有する。このジメチレンエーテル結合が残存すると熱により脱ホルムアルデヒド反応によって、また、メチロール基が残存すると脱水反応および脱ホルムアルデヒド反応によって、有害なホルムアルデヒドが発生するのである。
【0005】
そこで、従来は、上述した問題を解消すべく、通常の乾燥条件よりも厳しい条件下で乾燥・粉体化を行なうという対策を施すことにより、後のホルムアルデヒド発生を防止していた。なお、具体的には、得られた樹脂架橋粒子の湿体を気相中、高温(例えば、150℃以上)で数時間加熱し、高温加熱乾燥粉体として使用に供していた。
【0006】
ところで、アミノ樹脂架橋粒子やフェノール樹脂架橋粒子は、高温加熱乾燥粉体であっても親水性が高く、溶剤、溶剤塗料、溶融樹脂への均一分散性においては改良の余地があった。また、これらの樹脂架橋粒子は、ビニル系樹脂粒子等と比較して吸湿性が高い。このため、塗料や樹脂添加剤として用いる場合には塗膜や樹脂フィルムなどの経時安定性の低下要因となるなど、上記樹脂架橋粒子にはより一層の吸湿性の低減が要求されている。
【0007】
そこで、樹脂架橋粒子の上述したような親水性表面を改質するために、シランカップリング剤等の「疎水性部を有する改質剤」を用いて表面処理する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−108205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、従来の手法によって高温加熱乾燥粉体化された樹脂架橋粒子に対してカップリング剤処理を施しても、樹脂架橋粒子の親水性表面が十分に改質されないという問題があることが判明した。また、従来の手法によって粉体化された粉体を、溶媒に再分散してからカップリング処理を施しても、一部のカップリング剤が導入されるのみであり、しかも容易に脱離してしまうことも判明した。樹脂架橋粒子の親水性表面が十分に改質されないと、樹脂架橋粒子に対してカップリング剤処理を施しても、処理による効果はきわめて限定されたものとなり、要求される性能を達成することが困難となってしまう。
【0010】
そこで本発明は、アミノ樹脂架橋粒子やフェノール樹脂架橋粒子において、カップリング剤処理による効果をより一層向上させうる(つまり、より多くのカップリング剤を樹脂架橋粒子に結合させうる)手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上述した問題の解決を図るべく、その原因を鋭意探索した。その結果、従来の手法によって乾燥粉体化された樹脂架橋粒子の表面には反応基点となるメチロール基が少ないことを見出した。そして、このことに起因してカップリング剤−粒子間の反応性が乏しいのではないかとの仮説を設定し、当該仮説を検証する形で、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明の一形態に係る樹脂架橋粒子の製造方法は、アミノ化合物および/またはフェノール化合物とホルムアルデヒドとを反応させて樹脂前駆体を得る工程と、樹脂前駆体を硬化させて樹脂架橋粒子を得る工程とを含む。そして、当該製造方法は、硬化後の樹脂架橋粒子のメチロール基率が8%以上の状態で当該樹脂架橋粒子をカップリング剤と混合して加熱するカップリング剤処理工程をさらに含む点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来の技術と比較して、アミノ樹脂架橋粒子やフェノール樹脂架橋粒子に対するカップリング剤処理による効果をより一層向上させることができる。つまり、より多くのカップリング剤を樹脂架橋粒子に結合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例3においてカップリング剤処理工程に供される樹脂架橋粒子について、メチロール基率を算出するために行なった固体13C−NMR分析の結果を示すチャートである。なお、分析試料は、後述するメチロール基率の試料調整方法によるメタノールで洗浄したウエットケーキを60℃にて真空乾燥した粉体である。
【図2】比較例1においてカップリング剤処理工程に供される樹脂架橋粒子について、メチロール基率を算出するために行なった固体13C−NMR分析の結果を示すチャートである。なお、分析試料は、メタノールで洗浄したウエットケーキを190℃で真空乾燥した粉体である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る樹脂架橋粒子の製造方法について詳しく説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの具体的な説明のみに拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更、実施しうるものである。
【0016】
<樹脂架橋粒子の製造方法>
本発明の一形態に係る樹脂架橋粒子の製造方法は、アミノ化合物および/またはフェノール化合物とホルムアルデヒドとを反応させて樹脂前駆体を得る工程(以下、「第1工程」ともいう。)と、樹脂前駆体を硬化させて樹脂架橋粒子を得る工程(以下、「第2工程」ともいう。)とを含む。これら2つの工程を含む点については従来技術と同様であるが、本発明に係る製造方法の最大の特徴は、硬化後の樹脂架橋粒子のメチロール基率が8%以上の状態で当該樹脂架橋粒子をカップリング剤と混合して加熱するカップリング剤処理工程をさらに含む点にある。
【0017】
以下、本発明に係る製造方法について工程順に詳細に説明し、その中で、上述した本発明の特徴についても詳しく説明することとする。
【0018】
[第1工程]
第1工程では、アミノ化合物および/またはフェノール化合物とホルムアルデヒドとを反応させて樹脂前駆体を得る。この樹脂前駆体は、第2工程を経て樹脂架橋粒子を構成することになる。
【0019】
最終的にアミノ樹脂架橋粒子の製造を希望する場合には、第1工程においてアミノ化合物を原料として用い、樹脂前駆体を得る。この場合に第1工程において原料として用いられるアミノ化合物としては、特に限定はされないが、例えば、メラミンまたは下記一般式(1):
【0020】
【化1】

【0021】
(式中、Rは、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基を表すが、それらの少なくとも1つが置換基を有してもよいアルキル基である。Rはそれぞれ、同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるメラミン化合物;ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−sym.−トリアジン)、シクロヘキサンカルボグアナミン、シクロヘキセンカルボグアナミン、アセトグアナミン、ノルボルネンカルボグアナミン、スピログアナミンなどのグアナミン化合物;下記一般式(2):
【0022】
【化2】

【0023】
(式中、Rは、直鎖構造または側鎖を有する構造である炭素数1〜2の炭化水素基を表す。)
で表されるジアミノトリアジン化合物や、下記一般式(3):
【0024】
【化3】

【0025】
(式中、Rは、直鎖構造、側鎖を有する構造、芳香環を有する構造および脂環を有する構造の何れかである炭素数1〜8の炭化水素基を表す。なお、芳香環を有する構造および脂環を有する構造は、側鎖を有する構造および/または置換基を有する構造であってもよい。)
で表されるジアミノトリアジン化合物などが挙げられる。これらアミノ化合物は、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0026】
ここで、一般式(1)で表されるメラミン化合物において、非置換のR(つまり、アルキル基)の炭素数は、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜12であり、さらに好ましくは1〜8であり、特に好ましくは1〜4であり、最も好ましくは1〜2である。また、Rが置換基を有するアルキル基である場合、アルキル基を置換する該置換基としては、例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、チオール基、エポキシ基が挙げられる。
【0027】
上述したアミノ化合物のなかでも、トリアジン環を有するアミノ化合物がより好ましい。なお、原料としてアミノ化合物が用いられる場合、用いられるアミノ化合物の全量に占めるトリアジン環を有するアミノ化合物の量(複数の場合には合計量)は、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、いっそう好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。かような形態によれば、耐熱性、耐溶剤性の優れたアミノ樹脂架橋粒子が得られるといった効果がある。
【0028】
一方、最終的にフェノール樹脂架橋粒子の製造を希望する場合には、第1工程においてフェノール化合物を原料として用い、樹脂前駆体を得る。この場合に第1工程において原料として用いられるフェノール化合物としては、特に限定はなく、フェノール性水酸基を有する化合物が適宜用いられうる。フェノール化合物の具体例としては、例えば、フェノール、o−エチルフェノール、p−エチルフェノール、混合クレゾール、p−n−プロピルフェノール、o−イソプロピルフェノール、p−イソプロピルフェノール、混合イソプロピルフェノール、o−sec−ブチルフェノール、m−tert−ブチルフェノ−ル、p−tert−ブチルフェノール、ペンチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、2,3−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、2,4−ジ−s−ブチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,6−ジ−s−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、3−メチル−4−イソプロピルフェノール、3−メチル−5−イソプロピルフェノール、3−メチル−6−イソプロピルフェノール、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、3−メチル−6−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−エチルフェノール、o−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール等のフェノール性水酸基を有する化合物;カテコール、レゾルシン、ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF等の分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物が挙げられる。特に好ましくはフェノールまたはo−フェニルフェノールである。これらのフェノール化合物は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0029】
また、アミノ化合物の1種または2種以上とフェノール化合物の1種または2種以上とが併用されてもよい。この場合、第1工程で得られる樹脂前駆体は、アミノ化合物−フェノール化合物−ホルムアルデヒド共縮合単位を含むことになる。なお、かような形態によればフェノール化合物−ホルムアルデヒド縮合単位を含むアミノ樹脂架橋粒子が得られ、本来吸湿性が高く耐湿性が十分ではないアミノ樹脂架橋粒子の耐湿性が向上しうる。そして、この場合には、アミノ化合物とフェノール化合物との合計100質量%に対するフェノール化合物の量の下限値は、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上である。フェノール化合物の量がこれらの下限値以上の値であると、フェノール縮合単位を含ませることによる耐湿性の向上という作用効果が十分に発揮されうるという利点がある。一方、同様の基準でフェノール化合物の量の上限値は、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下である。フェノール化合物の量がこれらの上限値以下の値であると、樹脂架橋粒子を製造する際の粒子間での凝集の発生が防止され、粒度分布や耐湿性等の物性に優れる樹脂架橋粒子が製造されうるという利点がある。ただし、上記の数値範囲は本発明における必須要件ではなく、これらの範囲を外れる量のフェノール化合物が用いられる場合であっても、本発明の技術的範囲に包含されうる。
【0030】
第1工程において反応させるアミノ化合物および/またはフェノール化合物とホルムアルデヒドとのモル比(アミノ化合物および/またはフェノール化合物(モル)/ホルムアルデヒド(モル))は、1/3.5〜1/1.5であることが好ましく、1/3.5〜1/1.8であることがより好ましく、1/3.2〜1/2であることがさらにより好ましい。上記モル比が1/3.5以上であれば、ホルムアルデヒドの未反応物が低減されうる。一方、上記モル比が1/1.5以下であれば、アミノ化合物および/またはフェノール化合物の未反応物が低減されうる。
【0031】
アミノ化合物および/またはフェノール化合物とホルムアルデヒドとを反応させるにあたっては、通常、溶媒として水またはアルコールが用いられ、好ましくは水が用いられる。よって、反応形態としては、アミノ化合物および/またはフェノール化合物とホルムアルデヒドとを水系媒体中で反応させることにより、初期縮合反応物として樹脂前駆体を含む水溶液(反応液)を得るという形態となる。この反応形態を実施する具体的方法としては、ホルムアルデヒドを水溶液(ホルマリン)の状態にしたものにアミノ化合物および/またはフェノール化合物を添加して反応させる方法や、トリオキサンやパラホルムアルデヒドを水に添加して水中でホルムアルデヒドが発生しうるようにした水溶液にアミノ化合物および/またはフェノール化合物を添加して反応させる方法等が好ましく挙げられ、なかでも、前者の方法が、ホルムアルデヒド水溶液の調整槽が必要ないこと、入手が容易であることなど、経済性の点でより好ましい。
【0032】
アミノ化合物および/またはフェノール化合物とホルムアルデヒドとの反応は、塩基触媒の存在下で行なわれることが好ましい。かような形態によれば、当該反応がより一層効率的に進行しうる。なお、用いられうる塩基触媒の具体的な形態について特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。塩基触媒の一例としては、例えば、炭酸ナトリウムや水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。この際、アミノ化合物−ホルムアルデヒド−塩基触媒混合液の加熱前のpHを中性から弱塩基性に調整することが好ましく、この範囲にするために使用する塩基触媒量は特に限定されるものではない。
【0033】
なお、一般的に、上記反応を行う第1工程は、公知の撹拌装置等による撹拌下で行うことが好ましい。
【0034】
アミノ化合物および/またはフェノール化合物とホルムアルデヒドとを反応させる際の反応温度は、反応が進行しうる限りにおいて特に制限されないが、好ましくは50〜98℃であり、より好ましくは55〜95℃であり、さらに好ましくは60〜90℃であり、特に好ましくは70〜90℃である。また、反応時間についても特に制限はなく、通常は10〜360分間程度であり、好ましくは30〜240分間である。
【0035】
なお、アミノ化合物および/またはフェノール化合物、ホルムアルデヒド、並びに必要に応じて塩基触媒は、いずれの添加混合形態であっても、そのまま添加してもよいが、好ましくは予めアミノ化合物および/またはフェノール化合物やホルムアルデヒド、塩基触媒を含む添加液を作製しておき、かかるアミノ化合物および/またはフェノール化合物、および/または、ホルムアルデヒド、および塩基触媒の少なくとも1種、好ましくは全部を含む添加液を用いることが好ましい。より好ましくは、添加後に均一に拡散されやすいことから、かかるアミノ化合物および/またはフェノール化合物等を含む添加液として、該アミノ化合物および/またはフェノール化合物等を水系媒体に分散または溶解した液状添加液を用いるのが好ましい。この場合、1種のみの添加液を用いる場合は当該添加液を、複数の添加液を用いる場合はそれぞれの添加液を独立で、反応系に逐次添加してもよいし、一括添加してもよいし、分割添加してもよい。
【0036】
[第2工程]
第2工程では、上記第1工程において得られた樹脂前駆体を硬化させる。
【0037】
第2工程を実施するための形態としては、大きく2つの実施形態が例示される。以下、それぞれの手法について、説明する。
【0038】
(第1の手法)
第1の手法では、第1工程で得られた樹脂前駆体を、水系媒体中で界面活性剤と混合し、得られた混合液に触媒を添加して、樹脂前駆体を硬化および粒子化させて析出させる。このようにして、樹脂架橋粒子が得られる。なお、この手法は、樹脂前駆体の組成が比較的親水性である場合に適した手法である。このため、第2工程で第1の手法を採用する場合には、上述した第1工程においてホルマリンと反応して水溶性の樹脂前駆体を生成しうるものを必須とすることがより好ましい。また、第1工程で得られる樹脂前駆体は水溶性であることが好ましい。
【0039】
第1の手法では、まず、第1工程で得られた樹脂前駆体を、水系媒体中で界面活性剤と混合して、混合液を得る(以下、この工程を「混合工程」ともいう。)。
【0040】
樹脂前駆体と混合される界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤など全ての界面活性剤が使用できるが、特にアニオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤またはこれらの混合物が好ましい。アニオン性界面活性剤としては、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェートなどのアルカリ金属アルキルサルフェート;アンモニウムドデシルサルフェートなどのアンモニウムアルキルサルフェート;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;ナトリウムスルホリシノエート;スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩、スルホン化パラフィンのアンモニウム塩などのアルキルスルホン酸塩;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテートなどの脂肪酸塩;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェートなどのアルキルアリールスルホン酸塩;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩; ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩などが使用でき、非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセロールのモノラウレートなどの脂肪酸モノグリセライド;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体;エチレンオキサイドと脂肪族アミン、アミドまたは酸との縮合生成物などが使用できる。界面活性剤の使用量は、上記第1工程で得られた樹脂前駆体100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲が好ましい。界面活性剤の使用量が0.01質量部以上であれば、樹脂架橋粒子の安定な懸濁液が得られる。また、界面活性剤の使用量が10質量部以下であれば、懸濁液に不必要な泡立ちが生じたり最終的に得られる樹脂架橋粒子の物性に悪影響が及ぶ心配が低減される。なお、第2工程の第1の手法において用いられる界面活性剤は、樹脂前駆体に対して水系媒体への水親和性を得させることを目的としたものであり、後述する第2の手法で用いられる乳化剤とは異なる。
【0041】
混合工程では、例えば、界面活性剤の水溶液に、樹脂前駆体の濃度(つまり、固形分濃度)が3〜25質量%の範囲内となるように第1工程で得られた反応液を添加した後、混合することが好ましい。この場合、界面活性剤の水溶液の濃度は、特に限定されるものではなく、樹脂前駆体の濃度を上記範囲内に調節することができる濃度であればよい。上記樹脂前駆体の濃度が3質量%以上であれば、樹脂架橋粒子の生産性の低下が防止され、25質量%以下であれば、得られる樹脂架橋粒子の肥大化や凝集が抑制されうる。
【0042】
混合工程における撹拌方法としては、一般的な撹拌方法で行なえばよく、例えば、ディスクタービン、ファンタービン、ファウドラー型、プロペラ型および多段翼などの撹拌翼を使用して撹拌する方法等が好ましい。
【0043】
第1の手法では、最終的に得られる樹脂架橋粒子が強固に凝集することを防止する目的で、必要に応じて、混合工程後に得られた混合液に無機粒子を添加しておいてもよい。
【0044】
無機粒子としては、具体的には、例えば、シリカ微粒子、ジルコニア微粒子、アルミニウム粉、アルミナゾル、セリアゾル等が好ましく挙げられ、なかでも、入手が容易であるといった点で、シリカ微粒子がより好ましい。無機粒子の比表面積は10〜400m/gであることが好ましく、より好ましくは20〜350m/g、さらにより好ましくは30〜300m/gである。無機粒子の粒子径は0.2μm以下であることがより好ましく、より好ましくは0.1μm以下、さらにより好ましくは0.05μm以下である。比表面積や粒子径が上記範囲内であれば、最終的に得られる樹脂架橋粒子が強固に凝集することを防止するのに、より一層優れた効果を発揮することができる。
【0045】
混合液に無機粒子を添加する方法としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、無機粒子をそのままの状態(粒子状)で添加する方法や、無機粒子を水に分散させた分散液の状態で添加する方法などが挙げられる。混合液に対する無機粒子の添加量は、混合液に含まれる樹脂前駆体100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは2〜28質量部、さらにより好ましくは3〜25質量部である。1質量部以上であれば、最終的に得られる樹脂架橋粒子が強固に凝集することを十分防止することができる。一方、30質量部以下であれば、無機粒子のみの凝集物の発生が防止されうる。また、無機粒子を添加した際の撹拌方法としては、前述の強力に撹拌することができる装置(高せん断力を有する装置)を用いる方法が、無機粒子を樹脂架橋粒子に強固に固着させるという点で好ましい。
【0046】
第2工程における第1の手法では、続いて、上記で得られた混合液に触媒(硬化触媒)を添加する。これにより、樹脂前駆体を硬化および粒子化させて析出させる(以下、この工程を「硬化工程」ともいう。)。
【0047】
触媒としては、酸触媒が好適である。酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸;これら鉱酸のアンモニウム塩;スルファミン酸;ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸類;フタル酸、安息香酸、酢酸、プロピオン酸、サリチル酸等の有機酸;のいずれも使用できる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
【0048】
上記で例示した酸触媒のうち、硬化速度向上の観点からは鉱酸が好ましく、さらに、装置への腐食性、鉱酸使用時の安全性等に優れる点からは硫酸がより好ましい。酸触媒として硫酸を用いる場合には、さらにドデシルベンゼンスルホン酸を用いる場合に比べて、最終的に得られる樹脂架橋粒子が変色しないまたは耐溶剤性が高いといった点からも優れている。
【0049】
一方、上記で例示した酸触媒のうち、本工程において粒子に対する特異な界面活性能を発揮し、樹脂架橋粒子の安定な懸濁液を生成する効果に優れる点で、炭素数10〜18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸を用いることが好ましい。例えばデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸などが挙げられる。
【0050】
触媒の使用量は、上記混合工程により得られた混合液中の樹脂前駆体100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10質量部、さらにより好ましくは1〜10質量部である。特に、上記炭素数10〜18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸を用いる場合は、混合液中の樹脂前駆体100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10質量部である。上記触媒の使用量が、上記範囲を下回る少量では縮合硬化に長時間を要し、また、樹脂架橋粒子の安定な懸濁液が得られず、最終的に凝集粗大化した粒子を多量に含む状態でしか得られない虞がある。また、上記範囲を上回る多量では、生成した懸濁液中の樹脂架橋粒子中に、上記アルキルベンゼンスルホン酸等の触媒が必要以上に分配されることになり、その結果、樹脂架橋粒子が可塑化されて縮合硬化中に粒子間の凝集や融着が生じやすくなり、最終的に均一な粒子径を有する樹脂架橋粒子が得られない虞がある。
【0051】
硬化工程における硬化反応および粒子化は、樹脂前駆体の混合液に上記触媒を加えて、0℃の低温から加圧下100℃以上の高温のいずれかの温度で撹拌下に保持すればよい。触媒の添加方法には特に制限はなく、適宜選択できる。硬化反応の終点は、サンプリングまたは目視によって判断すればよい。また、硬化反応の反応時間は、特に限定されない。硬化反応は、一般には、90℃またはそれ以上の温度に昇温して一定時間保持することにより完結されるが、必ずしも高温での硬化は必要でなく、低温短時間であっても、得られる懸濁液中の樹脂架橋粒子がメタノールやアセトンで膨潤しなくなる程度まで硬化されていれば充分である。一例として、反応(硬化)温度は、好ましくは50〜98℃であり、より好ましくは60〜95℃であり、さらに好ましくは70〜90℃である。また、反応(硬化)時間は、好ましくは1〜12時間であり、好ましくは1〜10時間であり、さらに好ましくは2〜5時間である。硬化反応の反応温度が50℃以上であれば、硬化が十分に進行しうる。一方、硬化反応の反応温度が98℃以下であれば、強固な加圧反応器などを必要とせず、経済的である。なお、硬化反応の終点は、サンプリングまたは目視によって判断すればよい。
【0052】
硬化工程における撹拌方法としては、通常公知の撹拌装置などによる撹拌下で行なうことが好ましい。
【0053】
第1の手法においては、上記硬化工程により得られた樹脂架橋粒子を含む懸濁液の中和を行なう中和工程を含むことができる。中和工程は、上記硬化工程において、硬化触媒として硫酸等の酸触媒を用いた場合に行なうことが好ましい。中和工程を行なうことにより、上記酸触媒を取り除くこと(具体的には酸触媒を中和すること)ができ、例えば、後述する加熱工程などにおいて樹脂架橋粒子を加熱した場合に、樹脂架橋粒子の変色(例えば、黄色に変色)を抑制することができる。
【0054】
中和工程の「中和」では、樹脂架橋粒子を含む懸濁液のpHを5以上とすることが好ましく、より好ましくはpHを5〜9にする。懸濁液のpHが5以上であれば、酸触媒がほぼ残存していないことになり、後述する加熱工程などにおける樹脂架橋粒子の変色が防止されうる。中和工程の中和によって懸濁液のpHを上記範囲内に調節することにより、硬度が高く、耐溶剤性や耐熱性に優れ、かつ、変色しにくい樹脂架橋粒子を得ることができる。
【0055】
中和工程において用いられうる中和剤としては、例えば、アルカリ性物質が好適である。該アルカリ性物質としては、例えば、炭酸ナトリウムや水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアが挙げられるが、なかでも取り扱いが容易である点で、水酸化ナトリウムが好ましく、水酸化ナトリウム水溶液が好適に用いられる。これらの中和剤は1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
【0056】
第1の手法においては、硬化工程を経て(さらには中和工程を経て)得られる樹脂架橋子の懸濁液から、当該樹脂架橋粒子を取り出す分離工程を含んでもよい。
【0057】
この分離工程では、硬化(またはその後の中和)によって得られた樹脂架橋粒子を、硬化工程で(またはさらに中和工程でも)用いた水系媒体から分離して取り出す。樹脂架橋粒子を懸濁液から取り出す方法(分離方法)としては、濾別する方法や遠心分離機等の分離機を用いる方法が簡便な方法として挙げられるが、特に限定されるわけではなく、通常公知の分離方法を用いることができる。なお、懸濁液から取り出した後の樹脂架橋粒子は、必要に応じて、水等で洗浄してもよい。
【0058】
第1の手法において、従来の技術では、分離工程を経て取り出した樹脂架橋粒子に対して加熱処理を施すことが行なわれていた。例えば、上述した特許文献1の実施例では、吸引ろ過によって固液分離された樹脂架橋粒子(脱水アミノ樹脂粒子)に対して、窒素ガス雰囲気下160℃にて2時間の加熱処理が施されている。そしてその後に、上述した「疎水性部を有する改質剤」(具体的には、シランカップリング剤であるビニルトリエトキシシラン)による粒子の表面処理が行なわれている。
【0059】
一方、本発明によれば、このような分離工程後の加熱工程は行なわないことが好ましい。より具体的には、後述するカップリング剤処理工程の前に、上述の手法によって得られた架橋樹脂粒子を気相中、100℃以上の温度で加熱しないことが好ましいのである。かような形態によれば、より多くのカップリング剤を樹脂架橋粒子に結合させるという本発明の作用効果をより顕著に発現させることができる。ただし、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、かような形態のみには限定されない。場合によっては、上述したような加熱工程が行なわれてもよい。なお、この段階で(つまり、後述するカップリング剤処理工程の前に)加熱工程が行なわれる場合の当該加熱工程の具体的な構成については、後述する(カップリング剤処理工程後に行なわれる)加熱工程と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0060】
分離工程によって分離された樹脂架橋粒子を、メタノール、エタノール等の溶剤に再分散させ、さらに上述した分離工程と同様の処理を施してもよい。なお、このように溶剤再分散−固液分離の操作については、2回または3回以上行なわれうるが、好ましくは2〜4回である。このように溶剤再分散−固液分離の操作を行なうことで、粒子中に残留する微量の乳化剤成分や未反応のアミノ化合物成分を除去でき、より粒子表面への反応性が向上するという利点が得られる。
【0061】
本発明の樹脂架橋粒子の製造方法は、上記で得られた硬化後の樹脂架橋粒子を、カップリング剤と混合して加熱する工程(カップリング剤処理工程)をさらに含む点に特徴を有する。そして、当該カップリング剤処理工程は、上記樹脂架橋粒子のメチロール基率が8%以上の状態で行なわれることを特徴とする。
【0062】
ここで、樹脂架橋粒子の「メチロール基率」について、説明する。この「メチロール基率」は、後述する実施例の欄に記載の手法によって測定される値であり、樹脂架橋粒子の表面に存在するメチロール基に対応する13C−NMRのピーク面積(化学シフト約75ppmおよび約72ppmの2つのピーク(極大値)を含む二山のピーク面積)と、樹脂架橋粒子の表面に存在するメチレン結合に対応する13C−NMRのピーク面積(化学シフト約57ppmおよび約50ppmの2つのピーク(極大値)を含む二山のピーク面積)との合計に占めるメチロール基のピーク面積の割合(百分率)として定義される。図1は、後述する実施例3においてカップリング剤処理工程に供される樹脂架橋粒子(メチロール基率の測定自体は乾燥粉体に対して行なった)について、メチロール基率を算出するために行なった固体13C−NMR分析の結果を示すチャートである。図1に示すように、実施例3の樹脂架橋粒子は、その表面にメチロール基およびメチレン結合の双方を有し、しかもこれらの合計に対してメチロール基が所定割合以上を占めていることがわかる(メチロール基率は12.2%であった)。一方、図2は、後述する比較例1においてカップリング剤処理工程に供される樹脂架橋粒子について、メチロール基率を算出するために行なった固体13C−NMR分析の結果を示すチャートである。図2に示すように、比較例1の樹脂架橋粒子では、メチロール基に対応するピークが確認されなかったことがわかる(つまり、メチロール基率は0%であった)。
【0063】
本発明の製造方法では、上述のメチロール基率が8%以上の状態で、カップリング剤処理工程を行なうが、カップリング剤処理工程前の樹脂架橋粒子のメチロール基率を8%以上とするための具体的な手法について特に制限はない。一例としては、上述したような「架橋樹脂粒子を気相中、100℃以上の温度で加熱しない」という手法により、カップリング剤処理工程前の樹脂架橋粒子のメチロール基率を8%以上とすることができる(後述する実施例1〜3を参照)。ただし、かような手法のみには限定されない。例えば、粒子の合成工程中に高温加圧処理を行わない手法を用いる、または、樹脂粒子合成原料としてのアミノ化合物としてメラミン等の三官能アミノ化合物を主成分として用いる(好ましくはかような三官能アミノ化合物が樹脂粒子の表層に存在するように粒子を合成する)という手法によってもまた、カップリング剤処理工程前の樹脂架橋粒子のメチロール基率を8%以上とすることができる(後述する実施例4を参照)。
【0064】
カップリング剤処理工程では、上記所定のメチロール基率を有する樹脂架橋粒子を、カップリング剤と混合する。通常は、樹脂架橋粒子をカップリング剤と混合すると、特に加熱処理などを行なわなくとも、樹脂架橋粒子の表面に存在するメチロール基がカップリング剤と反応しうる。これにより、樹脂架橋粒子の表面が表面処理されうる(つまり、表面にカップリング剤が導入されうる)。
【0065】
樹脂架橋粒子と混合されるカップリング剤の具体的な手法について特に制限はなく、樹脂架橋粒子の表面処理の目的で従来用いられているカップリング剤が適宜用いられうる。かようなカップリング剤の具体例としては、例えば、シランカップリング剤、シラン化合物(シラザン類)、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤などが挙げられるが、これらの形態のみには限定されず、樹脂架橋粒子の表面に結合して当該粒子の親水性表面を疎水化することができるのであれば任意の従来公知のカップリング剤が用いられうる。これらのうち最も好ましいシランカップリング剤およびシラザン類(シラン化合物)としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、卜リメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン、および1分子あたり2〜12個のシロキサン単位を有し、末端に位置する単位のSiに水酸基を1つずつ有するジメチルポリシロキサンが挙げられる。これらは1種または2種以上が用いられうる。なかでも、樹脂架橋粒子の親水性表面の疎水化度を効果的に高めることができるという観点からは、非加水分解性基が、アルキル基、アラルキル基、および/またはアリール基を有するものが好適に用いられる。特に、結合安定性に優れ高湿雰囲気下においても加水分解による脱離が発生しにくいという観点から、3つの非加水分解性基がいずれもこれらの置換基を有するものであることが特に好ましい。なお、アルキル基の有する炭素数は、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜12であり、さらに好ましくは1〜8であり、特に好ましくは1〜4であり、最も好ましくは1〜2である。また、アラルキル基の有する炭素数は、好ましくは7〜20であり、より好ましくは7〜12である。かようなアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。さらに、アリール基の有する炭素数は、好ましくは6〜20であり、より好ましくは6〜12である。かようなアリール基としては、例えば、フェニル基やナフチル基が挙げられる。
【0066】
シランカップリング剤の好ましい他の実施形態としては、フッ素系シランカップリング剤が挙げられる。「フッ素系シランカップリング剤」とは、1分子中に有機官能基および加水分解性シリル基を有し、さらに有機官能基中にフッ素原子を含有するものを意味する。かような定義を満たす限りいかなる構造のものも本実施形態では用いられうるが、好ましいフッ素系シランカップリング剤は、下記式(4)で表される構造を有する。
【0067】
【化4】

【0068】
式中、Rfは炭素数1〜20のパ−フルオロアルキル基であり、Rはメチル基またはエチル基であり、Xは加水分解性基であり、nは0〜5の整数であり、aは0または1である。
【0069】
上記式で表されるフッ素系シランカップリング剤の具体例としては、例えば、CF(CHSiCl、CF(CFSiCl、CF(CF(CHSiCl、CF(CF(CHSiCl、CF(CF(CHSi(OCH、CF(CF(CHSi(CH)Cl、CF(CHSi(OCH、CF(CHSi(CH)(OCH、CF(CF(CHSi(OCH、CF(CF(CHSi(OCH、CF(CF(CHSi(CH)(OCH、CF(CF(CHSi(OCHが挙げられる。これらの中でもCF(CHSi(OCH(トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)が好ましい。なお、これらのフッ素系シランカップリング剤は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0070】
一方、チタネート系カップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、ビス(ジオクチルピロホフェート)、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート等が挙げられる。また、アルミネート系カップリング剤としては、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。なお、いずれのカップリング剤にしても、上記で列挙したもののみに限定されることはなく、従来公知の形態が同様に採用されうる。
【0071】
樹脂架橋粒子と混合されるカップリング剤の添加形態にも特に制限はなく、モノマーの状態で添加してもよいし、予め(好ましくは触媒存在下での)加水分解縮合によってオリゴマー化させたものを添加してもよい。ただし、本発明の効果をより一層発現させるという観点からは、モノマーの状態で添加する形態がより好ましい。また、カップリング剤を添加する際には、カップリング剤をそのまま直接、樹脂架橋粒子(好ましくはその分散液)に対して添加してもよいし、後述する溶媒(好ましくは有機溶媒)に希釈したものを添加してもよい。
【0072】
樹脂架橋粒子と混合されるカップリング剤の添加量について特に制限はないが、添加される相手方の樹脂架橋粒子100質量%に対して、好ましくは0.05〜20質量%であり、より好ましくは0.5〜10質量%であり、さらに好ましくは1〜5質量%である。カップリング剤の添加量が0.05質量%以上であれば、樹脂架橋粒子のメチロール基率を8%以上の状態でカップリング剤と混合することとしたことによるメリット(すなわち、十分な量のカップリング剤を樹脂架橋粒子の表面に導入すること)が効果的に達成されうる。一方、カップリング剤の添加量が20質量%以下であれば、添加したカップリング剤が効率的に利用され、カップリング剤の無駄な消費が防止されうる。
【0073】
カップリング剤処理工程では、樹脂架橋粒子が湿潤した状態で、カップリング剤と混合されることが好ましい。具体的には、樹脂架橋粒子が、固形分濃度1〜50質量%程度、好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは10〜30質量%のスラリーの状態で、カップリング剤と混合されることが好ましい。かような形態によれば、粒子表面全体に表面処理剤が行き渡り、より均一な状態で表面処理を行なうことができるという利点が得られる。
【0074】
上記形態において、樹脂架橋粒子をスラリー化するには、得られた樹脂架橋粒子を適当な溶媒に分散させればよい。カップリング剤との混合に先立って樹脂架橋粒子を分散させるための溶媒について特に制限はないが、有機溶媒が好ましい。かような有機溶媒の一例としては、メタノール、エタノール、(n−、イソ)プロパノール、(n−、t−、sec−、イソ)ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類;エチレングリコール(ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(ジ)エチルエーテル、エチレングリコール(ジ)ブチルエーテル、エチレングリコール(ジ)アセテート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールt−ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体(エーテル類、エステル類、エーテルエステル類);アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)などのケトン類;ジメチルエーテル、ジブチルエーテルなどのエーテル類、酢酸メチル、酢酸ブチルなどのカルボン酸類などの親水性有機溶媒が好ましく例示されるが、これらの形態のみには限定されない。なお、これらの溶媒は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、樹脂架橋粒子とカップリング剤との混合系には、水が共存していてもよい。水が共存する場合の存在量は、上述した有機溶媒との合計100質量%に対して、0.1〜10質量%程度であることが好ましい。
【0075】
樹脂架橋粒子とカップリング剤との混合系には、触媒を共存させてもよい。かような形態によれば、樹脂架橋粒子の表面処理(すなわち、樹脂架橋粒子表面へのカップリング剤の導入)がより一層促進されうる。用いられうる触媒に特に制限はなく、アルコキシシリル基を加水分解させるための触媒として従来公知の触媒が適宜用いられうる。かような触媒としては、塩基触媒および酸触媒が挙げられる。塩基触媒としては、例えば、アンモニア;ジメチルアミンやブチルアミン等のアミン類;エタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン等のヒドロキシルアミン類;4級アンモニウム塩類;アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などのアルカリ金属化合物類などが挙げられる。また、酸触媒としては、例えば、酢酸、蟻酸、プロピオン酸、安息香酸などのカルボン酸類;ドデシルベンゼンスルホン酸などのスルホン酸類;硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸類などが挙げられる。なお、混合系に水が存在する場合には、無触媒で行なうことも可能である。これは、樹脂粒子中のアミノ基が加水分解の触媒作用として機能しうるためである。
【0076】
カップリング剤処理工程では、樹脂架橋粒子をカップリング剤と混合した後に、必要に応じて得られた混合物に対して減圧乾燥処理を施してもよい。減圧乾燥処理の具体的な形態について特に制限はなく、一例としては、50〜200℃程度の乾燥温度、10〜500torr(1.3〜66.7kPa)程度の圧力、1〜24時間程度の乾燥時間といった条件が例示されうる。
【0077】
本発明の製造方法では、上述したカップリング剤処理工程の後に、カップリング剤で処理された樹脂架橋粒子を加熱する加熱工程を行なうことが好ましい。加熱工程を行なうことによって、樹脂架橋粒子に付着している水分および残存している遊離ホルムアルデヒドを除去することができ、樹脂架橋粒子内の縮合(架橋)をさらに促進させることができる。また、樹脂架橋粒子の表面に付着しているカップリング剤と当該樹脂架橋粒子との結合をより強固なものとすることもできるため、好ましい。
【0078】
加熱工程における加熱温度について特に制限はないが、上述した加熱工程を実施することによるメリットの発現を確実なものとするという観点からは、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは150℃以上であり、さらに好ましくは180℃以上である。なお、加熱温度の上限値についても特に制限はないが、実質的には250℃以下であることが好ましく、より好ましくは220℃以下であり、さらに好ましくは200℃以下である。加熱温度がこれらの上限値以下の値であれば、得られるアミノ樹脂架橋粒子の変色の虞が低減されうる。
【0079】
加熱工程における加熱の方法については、特に限定されるものではなく、通常公知の加熱方法を用いればよい。加熱工程は、例えば、樹脂架橋粒子の含水率が3質量%以下となった段階で終了すればよい。また、加熱時間についても特に限定はされないが、好ましくは1〜24時間である。
【0080】
さらに、上記加熱工程後に得られた樹脂架橋粒子(乾燥物)を粉砕し、得られた粉砕物を分級する工程をさらに行なってもよい。
【0081】
粉砕を行なう粉砕工程とは、硬化、分離、乾燥(加熱)工程において凝集した樹脂架橋粒子を解砕する工程をいう。また、分級を行なう分級工程とは、それまでの工程で生成した微小粒子、特定粒径以上の粗大粒子または粒子、および粉砕工程において解砕できなかった凝集粗大粒子や凝集粒子を低減する工程をいい、分級のみを行なう工程でもよいし、粉砕と分級をともに行なう工程でもよい。また、粉砕と分級とをともに行なう場合、粉砕を行なってから分級を行なってもよいし、粉砕と分級とを同時に行なってもよい。
【0082】
第1の手法における粉砕工程および分級工程では、粉砕機と分級機は別々の装置を用いてもよいが、粉砕と分級の両機能を兼ね備えた装置(粉砕分級機)を用いることもできる。粉砕機としては、例えば、バンタムミル、パルベライザー(ホソカワミクロン(株)製)、サンプルミル(不二パウダル(株)製)、ジェットミルなどが挙げられる。分級機としては、例えば、ミクロンセパレータ(ホソカワミクロン(株)製)、マイクロンクラッシファイアー((株)セイシン企業製)、TURBO CLASSIFIER(日清エンジニアリング(株)製)などが挙げられる。粉砕分級機としては、例えば、LABO JET(日本ニューマチック工業(株)製)、ジェット粉砕分級機STJ−200((株)セイシン企業製)などが挙げられる。粉砕分級機は、装置がコンパクトになり、経済的であるといった理由からより好ましい形態である。なお、粉砕および/または分級の条件は特に限定されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。
【0083】
上述した第1の手法によれば、水溶液状態において樹脂前駆体の硬化が開始する。このため、粒子径が小さく、サイズの揃った樹脂架橋粒子の調製が容易となる。得られる樹脂架橋粒子の平均粒子径の具体的な値について特に制限はない。ただし、第1の手法により得られる樹脂架橋粒子の平均粒子径は通常サブミクロンサイズであり、好ましくは0.05〜5μmであり、より好ましくは0.1〜4μmである。なお、樹脂架橋粒子の平均粒子径の値は、後述する実施例に記載の手法により測定される値を採用するものとする。
【0084】
(第2の手法)
第2の手法では、第1工程で得られた樹脂前駆体を水系媒体中で乳化し、得られた乳濁液に触媒を添加して、当該樹脂前駆体を硬化および粒子化させて析出させる。このようにして、樹脂架橋粒子が得られる。なお、この手法は、樹脂前駆体の組成が比較的疎水性である場合に適した手法である。
【0085】
第2の手法では、まず、第1工程で得られた樹脂前駆体を水系媒体中で乳化する(以下、この工程を「乳化工程」ともいう。)。
【0086】
乳化工程においては、第1工程により得られた樹脂前駆体を乳化して樹脂前駆体の乳濁液を得るようにする。乳化するにあたっては、例えば、保護コロイドを構成しうる乳化剤を用いることが好ましく、より好ましくは保護コロイドを構成しうる水溶性重合体からなる乳化剤が用いられる。かような乳化剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、水溶性ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドンなどを用いることができる。これら乳化剤は、全量を水に溶解させた水溶液の状態で用いてもよいし、その一部を水溶液の状態で用い、残りをそのままの状態(例えば粉体状、顆粒状、液状など)で用いるようにしてもよい。上に例示した乳化剤のなかでも、乳濁液の安定性、触媒との相互作用等を考慮すると、ポリビニルアルコールがより好ましい。ポリビニルアルコールは、完全ケン化物であってもよく、部分ケン化物であってもよい。また、ポリビニルアルコールの重合度は、特に限定されるものではない。第1工程で得られた樹脂前駆体に対する乳化剤の使用量が多いほど、生成する粒子の粒子径が小さくなる傾向がある。乳化剤の使用量は、第1工程で得られた樹脂前駆体100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、1〜5質量部であることがより好ましい。乳化剤の使用量が上記範囲内の値であれば、乳濁液の安定性が確保されうる。
【0087】
乳化工程では、例えば、乳化剤の水溶液に、樹脂前駆体の濃度(つまり、固形分濃度)が30〜60質量%の範囲内となるように上記第1工程で得られた反応液を添加した後、50〜100℃の温度範囲内で乳濁させることが好ましく、より好ましくは60〜100℃、さらにより好ましくは70〜95℃である。乳化剤の水溶液の濃度は特に限定されず、樹脂前駆体の濃度を上記範囲内に調節することができる濃度であればよい。上記樹脂前駆体の濃度が30質量%以上であれば、樹脂架橋粒子の生産性の低下が防止されうる。一方、当該濃度が60質量%以下であれば、得られる樹脂架橋粒子の肥大化や粒子同士の凝集の虞が低減されうる。
【0088】
乳化工程における撹拌方法としては、より強力に撹拌することができる装置(高せん断力を有する装置)を用いる方法、具体的には、例えば、いわゆる高速撹拌機やホモミキサーや、TKホモミキサー(特殊機化工業(株)製)、高速ディスパー、エバラマイルザー((株)荏原製作所製)、高圧ホモジナイザー((株)イズミフードマシナリ製)、スタティックミキサー((株)ノリタケカンパニーリミテッド製)などを用いる方法が好ましい。
【0089】
第2の手法においても、最終的に得られる樹脂架橋粒子が強固に凝集することをより確実に防止するために、必要に応じて、上記乳化工程後に得られた乳濁液に無機粒子を添加しておくことができる。無機粒子およびその添加方法等については、前述した第1の手法での説明が同様に適用されうる。
【0090】
第2の手法では、続いて、入荷工程で得られた乳濁液に触媒を添加して、樹脂前駆体を硬化および粒子化させて析出させる(硬化工程)。
【0091】
硬化工程においては、乳化工程により得られた乳濁液に触媒(硬化触媒)を加え、乳化させた樹脂前駆体の硬化反応を行なう(樹脂前駆体を乳濁状態で硬化させる)ことにより樹脂架橋粒子(詳しくは、樹脂架橋粒子の懸濁液)を得るようにする。触媒(硬化触媒)の具体的な形態については、上述した第1の手法における説明が同様に適用されうるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0092】
第2の手法の硬化工程における触媒(硬化触媒)の使用量としては、乳化工程により得られる乳濁液中の樹脂前駆体100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.3〜4.5質量部、さらにより好ましくは0.5〜4.0質量部である。触媒の使用量が5質量部以下であれば、乳濁状態の破壊やこれによる粒子同士の凝集の虞が低減されうる。一方、触媒の使用量が0.1質量部以上であれば、比較的短時間の反応でも十分に硬化を行なうことができる。また、同様に、触媒(硬化触媒)の使用量としては、原料化合物として用いたアミノ化合物および/またはフェノール化合物の合計量1モルに対して0.002モル以上であることが好ましく、より好ましくは0.005モル以上、さらに好ましくは0.01〜0.1モルである。触媒の使用量が上記下限値以上であれば、比較的短時間の反応でも十分に硬化を行なうことができる。
【0093】
硬化工程における硬化反応の条件について特に制限はないが、一例として、反応(硬化)温度は、好ましくは50〜98℃であり、より好ましくは60〜95℃であり、さらに好ましくは70〜90℃である。また、反応(硬化)時間は、好ましくは1〜12時間であり、好ましくは1〜10時間であり、さらに好ましくは2〜5時間である。硬化反応の反応温度が50℃以上であれば、硬化が十分に進行しうる。一方、硬化反応の反応温度が98℃以下であれば、強固な加圧反応器などを必要とせず、経済的である。なお、硬化反応の終点は、サンプリングまたは目視によって判断すればよい。
【0094】
硬化工程における撹拌方法としては、通常公知の撹拌装置などによる撹拌下で行なうことが好ましい。
【0095】
硬化工程における触媒の添加は、上述した乳化の開始から5時間以内に行なうようにすることが好ましい。このように、乳化開始(樹脂前駆体と乳化剤(乳化剤水溶液)との混合開始)から硬化開始(触媒添加時)までの時間(以下、「乳化時間」ともいう。)を5時間以内に制御することによって、粗大粒子の生成を防止することができるため、好ましい。当該乳化時間は、好ましくは4時間以内、より好ましくは3時間以内、さらに好ましくは2時間以内、さらにより好ましくは1時間以内である。
【0096】
乳化時間の始まりから終わりまでの間に行なう操作については、上述したように乳化開始で始まり硬化開始で終了することとする以外は、特に限定はされない。したがって、例えば、アミノ樹脂前駆体を含む反応液と乳化剤とを撹拌混合し樹脂前駆体を乳濁状態にした後、撹拌を止めて静置し所定の温度まで冷却するようにしてもよいし、上記冷却後に所定の無機粒子を添加するなどの他の工程を行なってもよいし、所望の乳濁状態になるまで上記撹拌混合を行い、その後も触媒を添加するまで撹拌(始めに比べて緩やかな撹拌が好ましい)を続けながら冷却も同時にするようにしてもよく、特に限定はされない。
【0097】
第2の手法においても、硬化工程により得られた樹脂架橋粒子を含む懸濁液の中和を行なう中和工程を含むことができる。中和工程におけるpHの範囲や中和剤の種類等の詳細については、上述した第1の手法での説明が同様に適用されうる。
【0098】
また、第2の手法において、硬化工程により得られた樹脂架橋粒子は、第1の手法の場合と同様に、カップリング剤処理することでカップリング剤が高い割合で結合した架橋樹脂粒子が得られる。粉砕、分級などその後の処理の具体的な形態は、第1の手法について上述したのと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0099】
上述した第2の手法によれば、第1の手法と比較して、相対的に粒子径の大きい樹脂架橋粒子が調製される。得られる樹脂架橋粒子の平均粒子径の具体的な値について特に制限はない。ただし、第2の手法により得られる樹脂架橋粒子の平均粒子径は通常ミクロンサイズであり、好ましくは1〜100μmであり、より好ましくは1.5〜10μmである。なお、樹脂架橋粒子の平均粒子径の値は、後述する実施例に記載の手法により測定される値を採用するものとする。
【0100】
[コアシェル構造(シェル層の形成)]
上記の第1の手法および第2の手法のいずれにおいても、カップリング剤処理工程の前の段階で得られた樹脂架橋粒子がアミノ化合物(正確には、アミノ化合物由来のホルムアルデヒドとの縮合単位)を含む場合には、得られた樹脂架橋粒子をコアとして、当該コアの外周にアミノ樹脂からなるシェル層を形成してもよい。この場合には、シェル層を形成した後に、上述したカップリング剤処理工程以降の工程が同様に行なわれうる。これにより、コアシェル構造を有する樹脂架橋粒子(アミノ樹脂架橋粒子)が製造されうる。以下、最終生成物としての樹脂架橋粒子がコアシェル構造を有する場合において、カップリング剤処理工程の前の段階で得られた樹脂架橋粒子(コア)の外周にシェル層を形成する工程(以下、この工程を「シェル層形成工程」ともいう。)について、説明する。
【0101】
シェル層形成工程は、上記で得られた樹脂架橋粒子を分散させた水系媒体を、加熱・保持しながら、アミノ化合物(場合によっては、さらにフェノール化合物)をホルムアルデヒドとともに添加混合する。これにより、アミノ化合物(場合によっては、さらにフェノール化合物)とホルムアルデヒドとを縮合・硬化させ、アミノ化合物−ホルムアルデヒド縮合物(または、アミノ化合物−フェノール化合物−ホルムアルデヒド共縮合物)をコア(アミノ樹脂架橋粒子)の表面に成長させて、当該(共)縮合物からなるシェル層を形成させる工程である。
【0102】
本工程の好ましい実施形態では、上記で得られたコア(アミノ樹脂架橋粒子)を分散させた水系媒体中に、アミノ化合物(場合によっては、さらにフェノール化合物)、ホルムアルデヒド(ホルマリン)、硬化触媒、界面活性剤等を適時、適量添加する。ただし、かような形態のみには限定されず、所望のシェル層を形成しうるものであれば、そうした製造方法も十分に適用可能である。
【0103】
本工程で用いられる水系媒体としては、特に制限されるものではなく、水、アルコール類等が挙げられ、好ましくは水である。
【0104】
水系媒体中に分散させるコアの濃度(つまり、固形分濃度)は、特に制限されないが、3〜25質量%の範囲内となるように調整するのが好ましい。コアの濃度を3質量%以上とすることで、得られるアミノ樹脂架橋粒子の生産性を向上することができる点で優れている。一方、コアの濃度を25質量%以下とすることで、得られるアミノ樹脂架橋粒子の肥大化、粒子同士の凝集を効果的に防止でき、粒度分布の狭いアミノ樹脂架橋粒子とすることができる。
【0105】
なお、コアを製造する段階で水系媒体を用い、当該コアが水系媒体中に分散した形態で得られる場合には、水系媒体中のアミノ樹脂粒子の濃度(固形分濃度)を上記範囲内になるように、必要があれば、水系媒体をさらに追加すればよい。コアを水系媒体中に混合、分散させるには、一般的な撹拌手段を用いて混合、分散させればよく、例えば、ディスクタービン、ファンタービン、ファウドラー型、プロペラ型および多段翼などの撹拌翼を使用して撹拌する方法等が挙げられる。これらの撹拌方法は、後述する硬化(架橋)反応の際の反応液の撹拌にそのまま適用することもできる。
【0106】
本工程において、シェル層を形成するのに添加混合されるアミノ化合物としては、上述したアミノ化合物が同様に用いられうるため、ここでは詳細な説明を省略する。なお、得られるアミノ樹脂架橋粒子がコアシェル構造を有し、シェル層がフェノール縮合単位を含む場合に、シェル層を形成するのに添加混合されるフェノール化合物の具体的な形態についても、上述した形態が同様に採用されうるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0107】
アミノ化合物の使用量(シェル層がフェノール縮合単位を含む場合には、アミノ化合物とフェノール化合物との合計使用量)は、コア100質量部に対して、10〜1000質量部の範囲が好ましく、より好ましくは25〜700質量部、さらに好ましくは50〜500質量部の範囲である。10質量部以上では、吸湿性を抑制する効果に優れるシェル層を形成しやすく、1000質量部以下であれば、粒度分布の特にシャープな粒子が得られやすい。
【0108】
なお、シェル層形成工程においてアミノ化合物と併せてフェノール化合物を用いる場合において、アミノ化合物とフェノール化合物とのそれぞれの使用量に特に制限はなく、適宜設定されうる。
【0109】
本工程にて必要なホルムアルデヒドの含有量は、ホルムアルデヒド/アミノ化合物のモル比で、1.5〜6、より好ましくは2〜4の範囲である。かかる範囲内とすることで、モノマー架橋反応の促進ができるほか、粒度分布の狭いアミノ樹脂架橋粒子を得ることができる。なお、シェル層が「アミノ化合物−フェノール化合物−ホルムアルデヒド縮合物」の組成を有する場合には、「ホルムアルデヒド/アミノ化合物のモル比」を「ホルムアルデヒド/(アミノ化合物およびフェノール化合物の合計量)のモル比」と置き換えた上で、上記と同様の好ましい形態(数値範囲)が採用されうる。
【0110】
なお、場合によっては、コアを製造する段階で水系媒体中にホルムアルデヒドを過剰に添加しておくことで、得られるコアを分散させた水系媒体中に、予めホルムアルデヒドを含有させることができる。
【0111】
シェル層形成工程において用いられる界面活性剤、触媒(硬化触媒)等の具体的な形態についても、上述した形態が同様に採用されうるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0112】
シェル層形成工程において、水系媒体に添加されるアミノ化合物(およびフェノール化合物)、硬化触媒、ホルムアルデヒド、界面活性剤の好適な添加混合形態につき、以下に例示する。ただし、本発明では、縮合・硬化反応により所望のシェル層を形成しうるものであればよく、以下に例示する添加混合形態に何ら制限されるものではない。
【0113】
具体的には、ホルムアルデヒド、界面活性剤、硬化触媒は、(i)アミノ化合物(およびフェノール化合物)を含む添加液を添加するに先立ち、予め、コアが分散した水系媒体に共存させておいてもよいし、(ii)アミノ化合物(およびフェノール化合物)を添加する際に添加してもよい。添加する場合は、(ii−1)アミノ化合物(およびフェノール化合物)を含む添加液に共存させた混合状態で添加してもよいし、(ii−2)アミノ化合物(およびフェノール化合物)を含む添加液とは異なる経路で添加してもよい。
【0114】
好ましい形態は、ホルムアルデヒド、硬化触媒、界面活性剤いずれも、上記(ii)の形態が好ましく、上記(ii−1)の形態が特に好ましい。これは、所定濃度のアミノ化合物(およびフェノール化合物)、ホルムアルデヒド、硬化触媒、界面活性剤を水系媒体中に素早く溶解または分散させることができ、縮合反応、硬化反応のコントロールが容易であるためである。
【0115】
上記(i)(ii)いずれの形態であっても、コアが分散した水系媒体へのアミノ化合物(およびフェノール化合物)を含む添加液の添加は、連続して行なってもよく、断続的に所定量を分割して添加してもよい。好ましくは、連続的に滴下する方が好ましい。連続的の方が系内で均一になり、分布がシャープになりやすいためである。なお、分割して添加する場合には、添加液を2等分〜10等分し、それぞれの画分を10〜60分毎にそれぞれ一括添加することが好ましい。
【0116】
上記(ii−2)の場合、アミノ化合物(およびフェノール化合物)を含む添加液とは異なる経路で添加されるホルムアルデヒド、界面活性剤、硬化触媒の添加も、連続して行なってもよく、断続的に所定量を分割して添加してもよい。好ましくは、ホルムアルデヒド、界面活性剤、硬化触媒を含む添加液を連続的に滴下する方が好ましい。この際、ホルムアルデヒド、界面活性剤、硬化触媒は、それぞれ別々の添加液を作製して添加してもよいし、これらの2以上を含む添加液を作製して添加してもよい。特に好ましくは2以上含む添加液の形態である。
【0117】
上記「同様に添加する」場合の硬化触媒と前記アミノ化合物(およびフェノール化合物)の添加は、上記アミノ化合物(およびフェノール化合物)の速度と同じ範囲内で添加するのが好適である。
【0118】
なお、上記アミノ化合物(およびフェノール化合物)、ホルムアルデヒド、界面活性剤、硬化触媒は、いずれの添加混合形態であっても、そのまま添加してもよいが、好ましくは上記したように予めアミノ化合物(およびフェノール化合物)やホルムアルデヒド、界面活性剤、硬化触媒を含む添加液を作製しておき、かかるアミノ化合物(およびフェノール化合物)、および/または、ホルムアルデヒド、界面活性剤および硬化触媒の少なくとも1種、好ましくは全部を含む添加液を用いることが好ましい。より好ましくは、添加後に均一に拡散されやすいことから、かかるアミノ化合物(およびフェノール化合物)等を含む添加液として、該アミノ化合物(およびフェノール化合物)等を水系媒体に分散または溶解した液状添加液を用いるのが好ましい。また、該添加液において、アミノ化合物(およびフェノール化合物)は、界面活性剤で微分散させてなるのが好ましい。
【0119】
なお、アミノ化合物(およびフェノール化合物)等を含む添加液の総添加時間(添加工程の時間、断続の場合は添加開始から添加が全て終了するまでの時間)t(hr)は、下記数式1の関係を満足することが好ましい。
【0120】
【数1】

【0121】
式中、Wxは、添加するアミノ化合物(およびフェノール化合物)の質量(kg)であり、Wyは、コアの質量(kg)である。
【0122】
アミノ化合物(およびフェノール化合物)等を含む添加液の総添加時間tを上記範囲内とすることで、水系媒体(反応液)中に分散されてなるアミノ樹脂架橋粒子(コア)表面に所望のシェル層を選択的(優先的)に成長させることができ、個々の粒子間で成長厚みにバラツキが少なく、所望の厚さ(平均値)を有するシェル層を形成させることができる。さらに、アミノ化合物(およびフェノール化合物)等を含む添加液の総添加時間tを上記範囲内とすることで、アミノ樹脂架橋粒子(コア)の持つ粒度分布のシャープな特性を損なうことなく、粒子径の変動係数CV値を小さい値とすることができる。アミノ化合物(およびフェノール化合物)の添加によって、コア表面だけでなく、水系媒体(反応液)中でも、アミノ化合物(またはフェノール化合物)とホルムアルデヒドとの縮合反応が進行して新たにアミノ樹脂前駆体からアミノ樹脂架橋粒子が形成される可能性がある。その一方で多くのアミノ化合物(およびフェノール化合物)はその近傍に存在するコアの表面で成長するシェル層に吸着・結合して取り込まれていくものであるが、とりわけアミノ化合物(およびフェノール化合物)等を含む添加液の総添加時間tを上記範囲内にコントロールすることで、新たなアミノ樹脂粒子の生成を抑えることができるのである。また、tを上記範囲内とすることで、残留未反応モノマーを抑制し得る点でも有利である。一方、前記アミノ化合物(およびフェノール化合物)等を含む添加液の総添加時間tが(Wx/Wy)×0.5(hr)未満の場合には、前述した新たなアミノ樹脂粒子の生成や粒子の2次凝集を起こす虞がある。(Wx/Wy)×5.0t(hr)を超える場合には生産効率が悪くなる虞がある。なお、Wx/Wyの具体的な値について特に制限はなく、得られるシェル層の厚みや、アミノ樹脂架橋粒子のシェル層比が所望の値となるように適宜調節すればよい。一例として、Wx/Wyの値は、好ましくは0.1〜10であり、より好ましくは0.25〜7であり、さらに好ましくは0.5〜5である。また、本工程では、上記反応液を常に適当な温度域に保持し、適当な撹拌力にて撹拌・混合しながら縮合・硬化反応を進めていくのがよい。
【0123】
本工程では、シェル層形成工程は、上記で得られたアミノ樹脂架橋粒子を分散させた水系媒体を、加熱・保持しながら、アミノ化合物(場合によっては、さらにフェノール化合物)をホルムアルデヒドとともに添加混合する。これにより、アミノ化合物(およびフェノール化合物)とホルムアルデヒドを縮合反応、硬化反応させて、コアの表面にアミノ化合物−ホルムアルデヒド縮合物(フェノール化合物が用いられる場合には、アミノ化合物−フェノール化合物−ホルムアルデヒド共縮合物)を成長させて、当該縮合物からなるシェル層を形成せしめ、コアシェル構造を形成する。
【0124】
縮合・硬化反応の際の反応条件について特に制限はないが、一例として、反応(硬化)温度は、好ましくは50〜98℃であり、より好ましくは60〜95℃であり、さらに好ましくは70〜90℃である。また、反応(硬化)時間は、好ましくは1〜12時間であり、好ましくは1〜10時間であり、さらに好ましくは2〜5時間である。硬化反応の反応温度が50℃以上であれば、硬化が十分に進行しうる。一方、硬化反応の反応温度が98℃以下であれば、強固な加圧反応器などを必要とせず、経済的である。なお、硬化反応の終点は、サンプリングまたは目視によって判断すればよい。
【0125】
上述したように、縮合・硬化反応の際の反応系の圧力は、特に制限されるものではなく、大気圧下でも、減圧下でも、加圧下でもよい。安全性や経済性(生産コスト)の観点からは大気圧下で行うのが好ましい。
【0126】
また、縮合・硬化反応の際の反応液は、撹拌下に保持するのが好ましい。かかる撹拌方法としては、通常公知の撹拌装置などを用いて行なうことが好ましい。
【0127】
上述した手法により得られるコアシェル構造を有するアミノ樹脂架橋粒子におけるシェル層の厚み(平均値)tは、0.01μm以上であることが好ましい。上記厚み(平均値)tが0.01μm以上であると、吸湿性の抑制された粒子となりやすい。アミノ樹脂架橋粒子のシェル層の厚み(平均値)tとしては、吸湿性が特に低くなる観点から、好ましくは0.02μm以上、より好ましくは0.03μm以上、特に好ましくは0.04μm以上である。一方、吸湿性抑制の観点からは厚みは大きいほど好ましいが、分散性に優れる観点からは本形態に係るアミノ樹脂架橋粒子のシェル層の厚み(平均値)tは、好ましくは5μm以下である。なお、アミノ樹脂架橋粒子のシェル層の厚み(平均値)tは、シェル形成後の成長粒子の平均粒子径D(μm)、コアの平均粒子径d(μm)より、式:t=(D−d)/2により算出されうる。
【0128】
上述した手法により得られるコアシェル構造を有するアミノ樹脂架橋粒子における、コアの平均粒子径に対するシェル層の厚み(平均値)の比(t(μm)/d(μm);「シェル層比」ともいう。)は、好ましくは0.1〜1.5の範囲である。シェル層比が0.1〜1.5の範囲内であると、吸湿性が低くかつ分散性に優れる。シェル層比の値としては、吸湿性が低いという観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、特に好ましくは0.3以上である。
【0129】
縮合・硬化反応を行なう際には、上述したのと同様の目的で、無機粒子を添加してもよい。添加されうる無機粒子の具体的な形態については上述したとおりである。
【0130】
シェル層形成工程においては、上述した縮合・硬化反応の終了後に、カップリング剤処理工程以降の工程が、上述したのと同様の手法によって行なわれうる。
【0131】
[フェノール樹脂層の形成]
上記の第1の手法および第2の手法のいずれにおいても、カップリング剤処理工程の前の段階で得られた樹脂架橋粒子がアミノ化合物(正確には、アミノ化合物由来のホルムアルデヒドとの縮合単位)を含む場合や、上述したコアシェル構造を有する樹脂架橋粒子である場合には、得られた樹脂架橋粒子の表層にフェノール樹脂層を形成してもよい。この場合には、フェノール樹脂層を形成した後に、上述したカップリング剤処理工程以降の工程が同様に行なわれうる。
【0132】
具体的には、カップリング剤処理工程の前の段階で得られた樹脂架橋粒子の表層へのフェノール樹脂層の形成は、上述したシェル層形成工程と同様にして行なうことができ、この際、層形成のためにホルムアルデヒドと縮合させるための化合物として、アミノ化合物(およびフェノール化合物)に代えてフェノール化合物を用いるように変更すればよい。よって、ここでは詳細な説明を省略する。
【0133】
[樹脂架橋粒子の好ましい物性]
上述した製造方法により得られる樹脂架橋粒子は、従来のアミノ樹脂架橋粒子やフェノール樹脂架橋粒子をカップリング剤処理した粒子に比べ、カップリング剤が高い割合で結合しているために、カップリング剤を導入した効果が高いものとなる。該効果としては、まず、これらの架橋樹脂粒子では産業分野に供する上で、脱ホルムアルデヒド、高架橋化を目的として最終的には乾燥や気相中で高温加熱処理することが必要となるが、その際、粒子間での二次凝集を伴う。しかしながら本発明の好適な製法においては、カップリング剤を表面に結合させた後に高温加熱処理を施すために、カップリング剤により表面に導入された有機鎖の効果によって、乾燥や高温加熱処理時に発生する二次凝集を抑制することができ、単一分散性に優れた粉体が得られやすい。さらに、例えば、アルキル基、アラルキル基またはアリール基を有するシランカップリング剤、シラザン類またはフッ素系シランカップリング剤をカップリング剤として用いた場合は、親水性表面を疎水性の高い表面に改質することができる。その結果、従来の親水性のアミノ樹脂架橋樹脂粒子やフェノール樹脂架橋粒子に比べて、有機樹脂や有機溶媒系塗料への分散性が向上し光拡散剤や艶消し剤としての特性が改善されたものなる。また、樹脂粒子表面へのカップリング剤の結合が強固であるため、有機樹脂や有機溶媒系塗料中においても、経時的に樹脂粒子表面からカップリング剤が脱離することがない。このため、有機樹脂や有機溶媒系塗料中における樹脂粒子の分散性を高いレベルで維持することができる。
【0134】
以下、上述した製造方法により得られる樹脂架橋粒子の好ましい形態をより詳細に説明する。
【0135】
得られる樹脂架橋粒子において、粒子径の変動係数CV値は、30%以下であることが好ましい。樹脂架橋粒子の粒子径の変動係数CV値としては、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下、特に好適には13%以下である。なお、本発明において、樹脂架橋粒子の粒子径の変動係数CV値は、後述する実施例の欄に記載の手法により測定されうる。
【0136】
得られるアミノ樹脂架橋粒子の水分含有量は、好ましくは0.1〜3質量%である。さらに好ましくは2.5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。粒子の水分含有量がこれらの範囲内の値であると、特定用途におけるバインダー樹脂への分散性に優れる。なお、樹脂架橋粒子の水分含有量については、解砕後の粉体(アミノ樹脂架橋粒子)1gをカールフィッシャー法にて定量し、得られた水分量の百分率を水分含有量(質量%)とする。
【0137】
得られる樹脂架橋粒子の飽和吸湿量は、好ましくは10%未満であり、より好ましくは7%以下である。さらに好ましくは6%以下、特に好ましくは5%以下である。また下限値は1%以上であることが好ましい。粒子の飽和吸湿量がこれらの範囲内の値であると、特定用途におけるバインダー樹脂へ分散させた後の耐吸湿性に優れる。樹脂架橋粒子の飽和吸湿量は、後述する実施例の欄に記載の手法により測定されうる。
【0138】
得られる樹脂架橋粒子は、各種用途に好適に使用されうる。本発明の製造方法により得られる樹脂架橋粒子は、例えば、下記の用途に用いられうるが、これらに限定されるわけではない。
【0139】
液晶ディスプレイ(LCD)などの表示素子用の光拡散板、光拡散フィルム用の光拡散剤、防眩フィルム用の光拡散剤等の光学樹脂用の光拡散剤、あるいはLED照明用カバー等に用いられる光拡散剤;
PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、PEN(ポリエチレンナフタレート)フィルム、PP(ポリプロピレン)フィルム、PE(ポリエチレン)フィルムなど各種高分子フィルムのアンチブロッキング剤、滑剤;
液晶ディスプレイ(LCD)用スペーサ;
各種電子部品間の接合、接着における隙間距離保持剤;
つや消し剤、
導電性微粒子用基材粒子、
機能性フィラー(特に樹脂架橋粒子がフェノール樹脂の場合)、など。
【0140】
なお、本発明の製造方法により得られる樹脂架橋粒子が各種用途に用いられる場合には、粒子がそのまま用いられてもよいし、それぞれの用途に適した添加剤や溶媒などと混合されてなる組成物の形態で使用されてもよい。各種用途に応じた添加剤や溶媒等の具体的な種類、それらが添加されてなる組成物における具体的な組成等については特に制限されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。
【実施例】
【0141】
[メチロール基率の算出方法]
表面処理に供した粒子のメチロール基率は、以下のようにして試料を調製し、該試料について固体13C−NMR測定を行なうことによって求めた。
(試料調製)
後述する実施例のように、表面処理に供した粒子がケーキまたはスラリー状態など溶媒成分を含んでいる場合には、真空乾燥機で減圧排気しながら60℃で3時間保持することによって脱溶媒して粉体化したものを試料とした(実施例1〜3に相当する)。また、粒子が乾燥粉体である場合には、当該粉体を測定試料とした(実施例4および比較例1に相当する)。
(固体13C−NMR分析)
測定装置:固体13C-NMR ブルカー(Bruker)社製 AVANCE400
測定条件:100.63MHz DD/MAS測定法 繰り返し待ち時間40秒 積算回数4096回 4mm径試料管 試料管回転数 13kHz
解析方法:各炭素原子に帰属されるピーク面積より、下記数式2によって、メチロール基率を算出した。
【0142】
【数2】

【0143】
式中、SAは、メチロール基の炭素原子に帰属されるピークの面積(化学シフト約75ppmおよび約72ppmの2つのピーク(極大値)を含む二山のピーク面積)を表し、SBは、メチレン結合の炭素原子に帰属されるピークの面積(化学シフト約57ppmおよび約50ppmの2つのピーク(極大値)を含む二山のピーク面積)を表す。
【0144】
[評価方法]
得られた樹脂架橋粒子の各種の物性は、それぞれ以下の手法によって評価した。
【0145】
<平均粒子径および粒子径の変動係数(CV値)>
表面処理粉体について、以下の手法により平均粒子径DおよびそのCV値を測定した。具体的には、粒子総個数が200個前後になるようにSEM写真を撮影し、その写真より無作為に選んだ100個の粒子の直径(撮影された粒子(断面)の最大長)をノギスにて計測し、その算術平均値を平均粒子径Dとした。また、平均粒子径Dに対する粒子径の標準偏差の百分率(%)として、平均粒子径DのCV値を算出した。
【0146】
<疎水性指数(=疎水化度)>
製造された樹脂架橋粒子からなる粉体(表面処理粉体)と、これを洗浄した粉体(洗浄粉体試料)の双方について、以下の手法により、疎水化度の指標として疎水性指数を求めた。
【0147】
底部に撹拌子を置いた200mlのガラスビーカーに、イオン交換水50mlを投入し、水面に重合体粒子0.2gを浮かべた後、撹拌子を緩やかに回転させる。その後、ビーカー内の水中にビュレットの先端を沈め、撹拌子を緩やかに回転させながら、前記重合体粒子添加から5分後に、ビュレットからメタノールを徐々に導入する。メタノールは1mlずつ導入し、1ml導入する度に3分撹拌を行い、また1mlずつ導入した。水面の重合体粒子の全量が完全に水中に沈んだ状態(水面に浮いている重合体粒子がなくなった状態)までメタノールの導入を続け、水中に重合体粒子が完全に沈んだときのメタノール導入量(ml)を測定し、下記数式3に基づき疎水性指数を求めた。
【0148】
【数3】

【0149】
なお、ビュレットからメタノールを添加する前に、水面に浮かべた重合体粒子が水中に完全に沈んだ場合は、疎水性指数を0と判定した。
【0150】
<飽和吸湿量>
製造された樹脂架橋粒子からなる粉体(表面処理粉体)と、これを洗浄した粉体(洗浄粉体試料)の双方について、以下の手法により、吸湿性(耐湿性)の指標として飽和級質量を求めた。
【0151】
まず、粉体を温度30℃、湿度90%RHの雰囲気条件下で1日間放置した。その後、粉体1gについてカールフィッシャー法により水分量を定量し、得られた水分量の百分率を飽和吸湿量(質量%)とした。
【0152】
<結合率>
製造された樹脂架橋粒子からなる粉体(表面処理粉体)と、これを洗浄した粉体(洗浄粉体試料)の双方について、以下の手法により結合率を測定した。
(洗浄粉体試料の作成)
まず、洗浄粉体試料の調製については、表面処理を行なった粉体を固形分濃度10質量%になるようメタノールで希釈し、超音波ホモジナイザーで10分間分散させたスラリーを得た。その後、遠心分離機(遠心力:1万G)にて固液分離し、その上澄みを廃棄し、沈降ケーキのみをSUSポットに取り出した。さらにその沈降ケーキをメタノールで10質量%になるように希釈して、上記洗浄操作を2回繰り返し、合計3回洗浄した沈降ケーキを得た。その沈降ケーキを120℃/50torr(6.7kPa)で真空乾燥して、シランカップリング剤で表面処理されてなる樹脂架橋粒子の洗浄粉体試料を得た。
(ESCAによるSi原子の定量、および結合率の算出)
表面処理粉体および洗浄粉体試料について、ESCA(X線光電子分析法)を用いて、粒子の表層に存在するSi原子の定量を行なった。
【0153】
測定装置:機器名 ULVAC-PHI社 Quantera SXM
測定条件:X線源 Al Kα、ビーム径100μm、ビーム出力25W−15kV Su(ワイドスキャン)、範囲0〜1100eV、Pass Energy-Step 280eV−1eV、スキャン回数 14回
算出方法:各元素のピーク総面積の百分率
以上の手法により定量されたSi原子の量に基づき、洗浄粉体試料における定量値の表面処理粉体における定量値に対する百分率(%)を結合率とした。なお、この結合率が大きいほど洗浄処理によってSi原子(すなわち、シランカップリング剤)が洗い流されずに粒子表面に結合したままとなっていることを示す。言い換えれば、この結合率が大きいほど、より多くの量のシランカップリング剤が粒子表面に導入されていることを示す。
【0154】
[実施例1]
(アミノ樹脂架橋粒子の作製)
撹拌機、還流冷却管および温度計を備えた4つ口の500ccセパラブルフラスコに、メラミン(以下、「Me」ともいう。)100部、37質量%ホルマリン193.0部、25質量%アンモニア水3.5部を仕込み、撹拌しながら70℃に昇温し、70℃で30分間保持した。かかる操作によりアミノ樹脂前駆体含有液(1)296.5部を得た。
【0155】
別に、撹拌機、還流冷却管および温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、固形分濃度65質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ(花王株式会社製:ネオペレックスG65:以下、「65質量%DBSNa」ともいう。)6.2部と純水1400部を撹拌しながら90℃に昇温した均一な界面活性剤水溶液を調製しておいた。
【0156】
上記の90℃の撹拌状態下にある界面活性剤水溶液に、アミノ樹脂前駆体含有液(1)296.5部を投入して、90℃に保持し、次いで10質量%ドデシルベンゼンスルホン酸(以下、「DBS」ともいう。)水溶液50部を加えた(固形分濃度:10.0質量%)。この状態で90℃にて5時間保持して、アミノ樹脂架橋粒子分散液(1)1752.7部を得た。
【0157】
(ろ過/洗浄)
アミノ樹脂架橋粒子分散液(1)を遠心分離機(遠心力:1万G)にて固液分離し、その上澄みを廃棄し、沈降ケーキのみをSUSポットに取り出した。その沈降ケーキをメタノール(以下、「MeOH」ともいう。)で10質量%になるように希釈し、ホモディスパーで30分間分散させたアミノ樹脂架橋粒子(1)のMeOH分散体を遠心分離にて同上の操作をあと2回繰り返し、合計3回洗浄した沈降ケーキ(固形分濃度:37質量%)を得た。
【0158】
(表面処理)
上記の沈降ケーキ54.1部(アミノ樹脂架橋粒子(1)換算:20g)にMeOH145.9部を加え、得られた10質量%MeOH分散スラリー(200部)を超音波ホモジナイザーで10分間分散させ、0.5Lのナス型フラスコに全量投入した後、さらにヘキシルトリメトキシシラン(以下、「HTMS」ともいう。)1.0部を投入して、エバポレーターにセットし、バス温度70℃/300〜50torr(40kPa〜6.7kPa)にて5時間減圧乾燥を行なって、表面処理前駆体を得た。
【0159】
(乾燥/粉砕)
ナス型フラスコから表面処理前駆体をSUSバットに取り出し、真空乾燥機にて120℃で5時間保持した後、さらに昇温して190℃で5時間保持を行なった後、室温まで冷却した。
【0160】
得られた粉体について、粉砕圧0.7MPa・sのジェットミル分級機にて粉砕分級を行ない、HTMSで表面処理されたアミノ樹脂架橋粒子(P1)を得た。得られたアミノ樹脂架橋粒子(P1)をSEMにて観測したところ、平均粒子径0.20μm(CV値:12.1%)であった。得られたアミノ樹脂架橋粒子(P1)の評価結果を表1に示す。
【0161】
[実施例2]
(アミノ樹脂架橋粒子の作製)
撹拌機、還流冷却管および温度計を備えた4つ口の500ccセパラブルフラスコに、ベンゾグアナミン(以下、「BG」ともいう。)60質量部、Me40質量部、37質量%ホルマリン165.8質量部、10質量%炭酸ナトリウム0.4質量部を仕込み、撹拌しながら70℃に昇温し、30分間保持した。かかる操作によりアミノ樹脂前駆体含有液(2)266.2質量部を得た。
【0162】
別に、撹拌機、還流冷却管および温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、65質量%DBSNa10質量部と純水1292質量部を撹拌しながら75℃に昇温した均一な界面活性剤水溶液を調製しておいた。
【0163】
上記の70℃の撹拌状態下にある界面活性剤水溶液に、アミノ樹脂前駆体含有液(2)266.2質量部を投入して、次いで2.3質量%DBS水溶液131質量部を加えた。この状態で70℃にて2時間保持した後、さらに90℃に昇温後5時間保持して、アミノ樹脂架橋粒子分散液(2)を得た。
【0164】
上記アミノ樹脂架橋粒子分散液(2)について、上述した実施例1と同じ手法のろ過、MeOH洗浄、表面処理、乾燥、粉砕を行なうことにより、HTMSで表面処理されたアミノ樹脂架橋粒子(P2)を得た。得られたアミノ樹脂架橋粒子(P2)をSEMにて観測したところ、平均粒子径3.84μm(CV値:11.3%)であった。得られたアミノ樹脂架橋粒子(P2)の評価結果を表1に示す。
【0165】
[実施例3]
(コア:メラミン樹脂架橋粒子の作製)
上述した実施例1と同様の手法により、メラミン樹脂シード粒子分散液(1)(実施例1における「アミノ樹脂架橋粒子分散液(1)」に相当)1752.7質量部を得た。
【0166】
(シェル:ベンゾグアナミン樹脂層被覆形成)
BG400質量部、37質量%ホルマリン520質量部、65質量%DBSNa25質量部、DBS20質量部、純水5120質量部を均一に分散混合し、BG分散液(1)を得た。メラミン樹脂シード粒子分散液(1)1752.7質量部を90℃で攪拌、保持し、そこにBG分散液(1)をローラーポンプにて3時間かけて滴下し、滴下後は90℃にて3時間保持し、その後室温まで冷却した。このようにしてメラミン樹脂シード粒子の表面にベンゾグアナミン樹脂が被覆されてなるコアシェル構造を有するアミノ樹脂架橋粒子分散液を10Lオートクレーブに全量仕込み、170℃まで昇温して5時間保持し、その後室温まで冷却して、アミノ樹脂架橋粒子分散液(3)7837.7部を得た。
【0167】
(ろ過/洗浄)
上記アミノ樹脂架橋粒子分散液(3)について、上述した実施例1と同じ手法のろ過、MeOH洗浄を行なうことにより、合計3回洗浄した沈降ケーキ(固形分濃度:40質量%)を得た。なお、この段階のアミノ樹脂架橋粒子について、メチロール基率を算出するために行なった固体13C−NMR分析の結果を示すチャートを図1に示す。
【0168】
(表面処理)
上記の沈降ケーキ50部(アミノ樹脂粒子(3)換算:20g)にMeOH150部を加え、得られた10質量%MeOH分散スラリー(200部)を超音波ホモジナイザーで10分間分散させ、0.5Lのナス型フラスコに全量投入した後、さらにトリフルオロプロピルトリメトキシシラン(以下、「TFPTMS」ともいう)1.0部を投入して、エバポレーターにセットし、バス温度70℃/300〜50torr(40kPa〜6.7kPa)にて5時間減圧乾燥を行なって、表面処理前駆体を得た。
【0169】
(乾燥/粉砕)
ナス型フラスコから表面処理前駆体をSUSバットに取り出し、真空乾燥機にて120℃で5時間保持した後、さらに昇温して190℃で5時間保持を行なった後、室温まで冷却した。
【0170】
得られた粉体について、粉砕圧0.7MPa・sのジェットミル分級機にて粉砕分級を行ない、TFPTMSで表面処理されたアミノ樹脂架橋粒子(P3)を得た。得られたアミノ樹脂架橋粒子(P3)をSEMにて観測したところ、平均粒子径0.34μm(CV値:7.2%)であった。得られたアミノ樹脂架橋粒子(P3)の評価結果を表1に示す。
【0171】
[実施例4]
上述した実施例1と同様の手法により得られたアミノ樹脂架橋粒子分散液(1)を、遠心分離機(遠心力:1万G)にて固液分離し、その上澄みを廃棄し、沈降ケーキのみをSUSポットに取り出した。その沈降ケーキをMeOHで10質量%になるように希釈して、ホモディスパーで30分間分散させたアミノ樹脂架橋粒子(1)のMeOH分散体を遠心分離にて同上の操作をあと2回繰り返し、合計3回洗浄した沈降ケーキ(固形分濃度:37質量%)を得た。
【0172】
得られた沈降ケーキを真空乾燥機にて190℃/50torr(6.7kPa)/5時間の条件で乾燥させた後、室温まで冷却した。得られた乾燥粉体を、粉砕圧0.7MPa・sのジェットミル分級機にて粉砕分級し、アミノ樹脂架橋粒子を得た。
【0173】
(表面処理)
上記で乾燥・粉砕したアミノ樹脂架橋粒子20部にMeOH180部を加え、得られた10質量%MeOH分散スラリー(200部)を超音波ホモジナイザーで10分間分散させ、0.5Lのナス型フラスコに全量投入した後、さらにHTMS1.0部を投入して、エバポレーターにセットし、バス温度70℃/300〜50torr(40kPa〜6.7kPa)にて5時間減圧乾燥を行なって、表面処理前駆体を得た。
【0174】
(乾燥・粉砕)
ナス型フラスコから表面処理前駆体をSUSバットに取り出し、真空乾燥機にて120℃で5時間保持した後、室温まで冷却した。
【0175】
得られた粉体について、粉砕圧0.7MPa・sのジェットミル分級機にて粉砕分級を行ない、ヘキシルTMSで表面処理されたアミノ樹脂架橋粒子(P4)を得た。得られたアミノ樹脂架橋粒子(P4)をSEMにて観測したところ、平均粒子径0.20μm(CV値:12.1%)であった。得られたアミノ樹脂架橋粒子(P4)の評価結果を表1に示す。
【0176】
[比較例1]
(アミノ樹脂架橋粒子の作製)
上述した実施例3で得られたアミノ樹脂架橋粒子分散液(3)を用い、ろ過、洗浄、乾燥、粉砕、表面処理については上述の実施例4と同じ手法を行ない、TFPTMSで表面処理された比較アミノ樹脂架橋粒子(CP1)を得た。なお、乾燥後の段階のアミノ樹脂架橋粒子について、メチロール基率を算出するために行なった固体13C−NMR分析の結果を示すチャートを図2に示す。
【0177】
得られた比較アミノ樹脂架橋粒子(CP1)をSEMにて観測したところ、平均粒子径0.34μm(CV値:7.2%)であった。得られた比較アミノ樹脂架橋粒子(CP1)の評価結果を表1に示す。
【0178】
【表1】

【0179】
[考察]
表1に示す結果から、アミノ樹脂架橋粒子などの樹脂架橋粒子を製造する際に、硬化後の樹脂架橋粒子のメチロール基率が8%以上の状態で当該樹脂架橋粒子をカップリング剤と混合して加熱することで、結合率の高い樹脂架橋粒子が得られることがわかる。
【0180】
また、カップリング剤処理工程の前に、架橋樹脂粒子を気相中、100℃以上の温度で加熱していない実施例1〜3では、かような加熱を行なっている実施例4と比較して、結合率のより高い(つまり、カップリング剤がより一層導入された)樹脂架橋粒子が得られることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ化合物および/またはフェノール化合物とホルムアルデヒドとを反応させて樹脂前駆体を得る工程と、
前記樹脂前駆体を硬化させて樹脂架橋粒子を得る工程と、
を含む、樹脂架橋粒子の製造方法であって、
硬化後の樹脂架橋粒子のメチロール基率が8%以上の状態で当該樹脂架橋粒子をカップリング剤と混合して加熱するカップリング剤処理工程をさらに含むことを特徴とする、樹脂架橋粒子の製造方法。
【請求項2】
前記カップリング剤処理工程に供される前記樹脂架橋粒子が、固形分濃度1〜50質量%のスラリーの状態である、請求項1に記載の樹脂架橋粒子の製造方法。
【請求項3】
前記カップリング剤処理工程の前に、前記架橋樹脂粒子を気相中、100℃以上の温度での加熱を行なわない、請求項1または2に記載の樹脂架橋粒子の製造方法。
【請求項4】
前記カップリング剤処理工程の後に、前記架橋樹脂粒子を気相中、100℃以上の温度で加熱する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂架橋粒子の製造方法。
【請求項5】
前記カップリング剤が、シランカップリング剤である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂架橋粒子の製造方法。
【請求項6】
前記カップリング剤が、下記化学式(4):
【化1】

式中、Rfは炭素数1〜20のパ−フルオロアルキル基であり、Rはメチル基またはエチル基であり、Xは加水分解性基であり、nは0〜5の整数であり、aは0または1である、
で表される構造を有する、請求項5に記載の樹脂架橋粒子の製造方法。
【請求項7】
前記カップリング剤の添加量が、前記樹脂架橋粒子100質量部に対して0.05〜20質量部である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂架橋粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−67183(P2012−67183A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212793(P2010−212793)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】