説明

樹脂添加剤マスターバッチ

【課題】融点80℃以下の樹脂添加剤を高濃度で配合することができ、かつ、ストランドの切断なく連続生産が可能であるとともにペレット表面のベトツキについても改善した樹脂添加剤マスターバッチを提供する。
【解決手段】(A)ポリオレフィン樹脂100重量部に対し、(B)融点80℃以下の樹脂添加剤80〜150重量部および(C)有機酸金属塩0.3〜5重量部が配合されてなる樹脂添加剤マスターバッチである。(B)融点80℃以下の樹脂添加剤としては、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン化合物またはこれらの混合物が好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂添加剤マスターバッチ(以下、単に「マスターバッチ」とも称する)に関し、詳しくは、融点80℃以下の樹脂添加剤を高濃度で含有するポリオレフィンマスターバッチを製造するに際して造核剤を併用した樹脂添加剤マスターバッチに関する。
【背景技術】
【0002】
フェノール系酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン化合物などの樹脂添加剤は、合成樹脂などの有機物の光や熱による劣化を抑制することが知られている。
【0003】
樹脂添加剤として用いられる化合物は、テトラキス(3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル)メタン、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイトなど、一般に融点が高く、樹脂の可塑化や、樹脂からの揮散が小さい化合物が好ましい。しかし、あまり高分子量化すると、樹脂中で添加剤が移動できないために、安定化効果が小さくなる傾向にある。
【0004】
一方、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートやビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)セバケートなどの低融点の化合物は、比較的分子量が小さく、初期の安定化効果に優れるものの、樹脂から揮散しやすいために長期の安定化効果に乏しく、また、液状であったり、粘調であったり、粉末状であったものが保存時にケーキングにより大きな塊になるなどして取扱い性が悪く、取扱い性を改良するにはマスターバッチ化する必要があった。
【0005】
しかし、一般的なヒンダードアミン化合物は、ポリオレフィン樹脂に用いた場合には樹脂への相溶性が低く、高濃度で配合したマスターバッチを作製すると、ペレットの表面にヒンダードアミン化合物が染み出してペレットがケーキングする問題があった。このためポリオレフィン100重量部に対して50重量部程度しか配合できず、マスターバッチ化するメリットが小さかった。
【0006】
特に、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノール類と脂肪酸とを反応させて得られるヒンダードアミン化合物は、優れた耐候性付与効果を示すものの、低分子量で液状になりやすく、取扱い性を改良するために樹脂でマスターバッチ化する場合には、マスターバッチ化した樹脂組成物の表面に添加剤がしみ出して粘着性を示すため、低濃度のマスターバッチにする必要がある。また、高濃度にするとマスターバッチの製造時にストランドの腰が弱くなって、ペレットを安定して連続生産できないという問題もあった。
【0007】
添加剤の取扱い性などを改善する方法としては、例えば、吸油性重合体を用いてマスターバッチ化することでべたつきを抑制すること(特許文献1)、芯層と鞘層を有するマスターバッチとすることでストランド切れを防止すること(特許文献2)、マイクロカプセル化すること(特許文献3)、低融点難燃剤の結晶化を促進することで粉体特性を改良する方法(特許文献4)などが提案されており、これらはいずれも液状、低融点添加剤の取扱い性改善策となる技術である。
【特許文献1】特開平9−52956号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2000−80172号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特表平10−512320号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平9−87290号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、マスターバッチ化は前述のように高濃度品の製造が困難であり、特許文献1に開示されているように吸油性重合体を用いると、得られる樹脂組成物中に吸油性重合体が残留してしまう。また、マイクロカプセル化は高コストであり、結晶化の促進は、非晶質に比べて取扱い性は向上するものの液状品には適用できず、結晶品が低融点の場合はケーキング防止効果が小さいなど、従来の方法では、取扱い性の改善効果は限られていた。
【0009】
そこで本発明の目的は、上記問題を解消して、従来のような他の問題を生ずることなく、融点80℃以下の樹脂添加剤を高濃度で配合することができ、かつ、ストランドの切断なく連続生産が可能であるとともにペレット表面のベトツキについても改善した樹脂添加剤マスターバッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、かかる現状に鑑みて鋭意検討を重ねた結果、ポリオレフィン樹脂に対し融点80℃以下の樹脂添加剤を高濃度で配合したマスターバッチを製造するに際し、有機酸金属塩を所定量にて配合することで、製造時におけるストランドの切断が少なく、得られるペレットのベトツキも少ない、取扱い性に優れるマスターバッチが得られることを見出して、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明の樹脂添加剤マスターバッチは、(A)ポリオレフィン樹脂100重量部に対し、(B)融点80℃以下の樹脂添加剤80〜150重量部および(C)有機酸金属塩0.3〜5重量部が配合されてなることを特徴とするものである。
【0012】
本発明においては、前記(B)融点80℃以下の樹脂添加剤が、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン化合物またはこれらの混合物であることが好ましい。
【0013】
また、本発明においては、前記(B)融点80℃以下の樹脂添加剤が、下記一般式(1)、

(式中、R1は水素原子、ヒドロキシ基、炭素原子数1〜30のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルコキシ基またはオキシラジカルを表し、R2は炭素原子数1〜30のアルキル基または炭素原子数2〜30のアルケニル基を表す)で表される化合物であることも好ましく、特に好適には、前記一般式(1)におけるR2が炭素原子数8〜26のアルキル基の混合物である。
【0014】
さらに、本発明においては、前記(C)有機酸金属塩が、環構造を有する有機カルボン酸金属塩、下記一般式(2)、

(式中、R3は炭素原子数4〜8のアルキル基を表し、R4は水素原子または炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、R5は炭素原子数1〜4のアルキリデン基を表し、Aは(n+x)価の金属を表し、nは1〜3の数を表し、xは0〜2の数を表す)で表されるリン酸エステル金属塩化合物またはこれらの混合物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、取扱い性に優れ、低融点の樹脂添加剤を高濃度に含有する樹脂添加剤マスターバッチを実現することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の好適実施形態について詳細に説明する。
本発明に用いられる(A)ポリオレフィン樹脂としては、ポリオレフィンであれば特に制限されずに用いることが可能であり、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリブテン−1、ポリ−3−メチルペンテン、ポリ−4−メチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体等のα−オレフィンの単重合体または共重合体などが挙げられる。
【0017】
本発明に用いられる(B)融点が80℃以下の樹脂添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0018】
融点が80℃以下の酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが挙げられる。また、融点が80℃以下の紫外線吸収剤としては、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤などが挙げられる。さらに、融点が80℃以下の光安定剤としては、ヒンダードアミン化合物などが挙げられる。
【0019】
具体的には、フェノール系酸化防止剤としては、例えば、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオビス(3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル、トリエチレングリコールビス〔(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビスオクチルチオ−6−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシアニリノ)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(オクチルチオメチル)フェノール、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、分岐を有するC7−9混合アルコールと(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のエステル、2,2−チオビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)などが挙げられる。
【0020】
融点が80℃以下のホスファイト系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビスノニルフェニルペンタエリスリトールジホスファイト、ビスフェノールAと炭素原子数12〜15の混合アルコールのホスファイト、ジフェニル−2−エチルヘキシルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、1,1−ブチリデンビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)とトリデシルアルコールのホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタンとトリデシルアルコールのホスファイトなどが挙げられる。
【0021】
融点が80℃以下のチオエーテル系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、4,4−チオビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ビス−3−(ドデシルチオ)プロピオネートなどが挙げられる。
【0022】
融点が80℃以下の紫外線吸収剤としては、例えば、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、4−(2−アクリロイルオキシ)エトキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノンの重合物、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾール、C7−9混合アルコールと3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)プロピオン酸のエステル、ポリエチレングリコールと3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)プロピオン酸のエステル、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−ドデシルフェノール(ドデシル基は直鎖と分岐の混合物)、オクタノールと3−(3−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)プロピオン酸のエステル、2−(4−オクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−イソオクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−(3−(2−エチルヘキシル−1−オキシ)−2−ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2’−エチルヘキシル−2−シアノ−3−フェニルシンナメート、N−(2−エトキシフェニル)−N’−(4−イソドデシルフェニル)オキサミドなどが挙げられる。
【0023】
融点が80℃以下のヒンダードアミン化合物としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール脂肪酸エステル、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとメチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートの混合物、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジノールとトリデシルアルコールの混合アルコールとブタンテトラカルボン酸のテトラエステル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノールとトリデシルアルコールの混合アルコールとブタンテトラカルボン酸のテトラエステル、ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとブタンジオイックアシッドのポリエステル、2,2,6,6−テトラメチル−4−(2−プロペニルオキシ)ピペリジンとメチルハイドロジェンシロキサンの反応物、ドデシル−3−(2,2,4,4−テトラメチル−21−オキソ−7−オキサ−3,20−ジアゾジスピロ(5.1.11.2)ヘンイコサン−20−イル)プロピオネートとテトラデシル−3−(2,2,4,4−テトラメチル−21−オキソ−7−オキサ−3,20−ジアゾジスピロ(5.1.11.2)ヘンイコサン−20−イル)プロピオネートの混合物、ドデシル−N−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−b−アラニネートとテトラデシル−N−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−b−アラニネートの混合物、3−ドデシル−N−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)スクシンイミド、2−ドデシル−N−(1−アセチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)などが挙げられる。
【0024】
(B)樹脂添加剤は、これらの単独またはこれらを含む混合物としての融点が80℃以下となる添加剤組成物であってもよく、脂肪族アルコールや脂肪酸を原料とする化合物においては、混合アルコールや混合脂肪酸から得られる混合エステル化合物(混基エステル化合物)、混合アミド化合物(混基アミド化合物)などの混合物とすることで融点が80℃以下となる添加剤組成物であってもよい。
【0025】
上記(B)樹脂添加剤としては、融点が80℃以下のもの、好ましくは60℃以下のものであり、常温で液体のものも含まれる。
【0026】
上記(B)樹脂添加剤としては、好ましくは前記一般式(1)で表される化合物である。前記一般式(1)において、R1及びR2が表す炭素原子数1〜30のアルキル基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、ペンチル、第二ペンチル、第三ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、第三オクチル、ノニル、イソノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシルなどが挙げられる。特には、R2は、炭素原子数8〜26のアルキル基の混合物であることが好ましい。
【0027】
また、一般式(1)においてR1が表す炭素原子数1〜30のヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピルなど上記アルキル基のヒドロキシ基置換体が挙げられる。
【0028】
さらに、一般式(1)においてR1が表す炭素原子数1〜30のアルコキシ基としては、上記アルキル基に対応するメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、オクトキシ、2−エチルヘキシルオキシなどが挙げられる。
【0029】
さらにまた、一般式(1)においてR1が表す炭素原子数1〜30のヒドロキシアルコキシ基としては、上記アルコキシ基に対応するヒドロキシエチルオキシ、2−ヒドロキシプロピルオキシ、3−ヒドロキシプロピルオキシ、4−ヒドロキシブチルオキシ、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルオキシ、6−ヒドロキシヘキシルオキシなどが挙げられる。
【0030】
さらにまた、前記一般式(1)においてR2が表す炭素原子数2〜30のアルケニル基としては、ビニル、プロペニル、ブテニル、ヘキセニル、オレイルなどが挙げられる。二重結合の位置は、α−位であっても、内部であっても、ω−位であってもよい。
【0031】
前記一般式(1)で表される化合物としては、より具体的には、以下に示す化合物No.1〜No.6の化合物が挙げられる。但し、本発明は以下の化合物によりなんら制限を受けるものではない。
【0032】

【0033】

【0034】

【0035】

【0036】
【化7】

【0037】

【0038】
前記一般式(1)で表される化合物の中で、化合物No.5以外は、融点が60℃以下であり特に好ましい。これら一般式(1)で表される化合物の合成方法としては、特に制限されず、通常の有機合成における手法により合成可能であり、例えば、酸とアルコールの直接エステル化、酸ハロゲン化物とアルコールの反応、エステル交換反応などでエステル化が可能であり、精製方法としては、蒸留、再結晶、再沈、ろ過剤・吸着剤を用いる方法などが適宜使用できる。
【0039】
上記(B)樹脂添加剤は、(A)ポリオレフィン樹脂100重量部に対し、80〜150重量部にて配合することが必要である。(B)樹脂添加剤の配合量が80重量部未満であると、多量のマスターバッチの添加が必要となって高濃度マスターバッチのメリットが小さくなり、一方、150重量部を超えると、添加剤が滲出しやすくなり、ペレットのケーキングが生じて、保存安定性が低下してしまう。
【0040】
本発明に用いられる(C)有機酸金属塩は、有機リン酸類、有機ホスフィン酸類、有機ホスホン酸類、有機カルボン酸類、有機硫酸塩類、有機スルホン酸類、有機チオ硫酸類の金属塩からなる群から選ばれ、特に環構造を有する有機カルボン酸金属塩や、有機リン酸エステル類金属塩が好ましい。また、その金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、銀、亜鉛、アルミニウムからなる群から選ばれる。
【0041】
上記有機カルボン酸金属塩のカルボン酸としては、グルコン酸、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、シクロペンタンカルボン酸、ジシクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、ジシクロヘプタンカルボン酸、安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、ジ−t−ブチル安息香酸、ナフテン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸などであり、有機カルボン酸金属塩として例えば、ジナトリウム−ビシクロ(2,2,1)ヘプタン−2,3−ジカルボキシラート、パラ−t−ブチル安息香酸アルミニウム並びに安息香酸ナトリウムなどの環構造を有するものが優れるので好ましい。
【0042】
また、有機リン酸エステル類金属塩化合物としては、下記一般式(2)、

(式中、R3は炭素原子数4〜8のアルキル基を表し、R4は水素原子または炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、R5は炭素原子数1〜4のアルキリデン基を表し、Aは(n+x)価の金属を表し、nは1〜3の数を表し、xは0〜2の数を表す)で表される化合物が好ましい。
【0043】
前記一般式(2)で表されるリン酸エステル類金属塩において、R3で表される炭素原子数4〜8のアルキル基としては、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、ペンチル、第三ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、第三オクチルなどが挙げられる。
【0044】
前記一般式(2)においてR4で表される炭素原子数1〜8のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、ペンチル、第三ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、第三オクチルなどが挙げられる。
【0045】
前記一般式(2)においてR5で表される炭素原子数1〜4のアルキリデン基としては、メチレン、エチリデン、1,1−プロピリデン、2,2−プロピリデン、ブチリデンなどが挙げられる。
【0046】
前記一般式(2)で表される化合物としては、より具体的には、以下の化合物No.7〜12が挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物によりなんら制限を受けるものではない。
【0047】

【0048】

【0049】

【0050】

【0051】
上記(C)有機酸金属塩は、(A)ポリオレフィン樹脂100重量部に対し、0.3〜5重量部にて配合することが必要である。(C)有機酸金属塩の配合量が0.3重量部未満であると充分な効果が得られず、一方、5重量部を超えると、マスターバッチを添加した樹脂の結晶性等に影響を与え、樹脂物性が低下してしまう。
【0052】
本発明の樹脂添加剤マスターバッチにより安定化される樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、結晶性樹脂、非結晶性樹脂、生分解性樹脂、非生分解性樹脂、合成樹脂、天然産製樹脂、汎用樹脂、エンジニアリング樹脂、ポリマーアロイ等、いずれの種類の樹脂でもよい。
【0053】
合成樹脂としては、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリブテン−1、ポリ−3−メチルペンテン、ポリ−4−メチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体等のα−オレフィンの単重合体または共重合体、これらのα−オレフィンと共役ジエンまたは非共役ジエン等の多不飽和化合物、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル等との共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート、ポリエチレンテレフタレート・パラオキシベンゾエート、ポリブチレンテレフタレートなどの直鎖ポリエステルや酸変性ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどの生分解性樹脂、液晶ポリエステル、ポリカプロラクタム及びポリヘキサメチレンアジパミド等のポリアミド、液晶ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、スチレン及び/又はα−メチルスチレンと他の単量体(例えば、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、メタクリル酸メチル、ブタジエン、アクリロニトリル等)との共重合体(例えば、アクリロニトリルスチレン共重合体(AS)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエンースチレン共重合体(ABS)樹脂、メチルメタクリレートブタジエンスチレン共重合体(MBS)樹脂、耐熱ABS樹脂等)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、塩化ゴム、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−シクロヘキシルマレイミド共重合体等の含ハロゲン樹脂、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸オクチル等の(メタ)アクリル酸エステルの重合物、ポリエーテルケトン、ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、直鎖又は分岐のポリカーボネート、石油樹脂、クマロン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリウレタン、繊維素系樹脂等の熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性ポリウレタン等の熱硬化性樹脂;更に、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブタジエン−スチレン共重合ゴム、ブタジエン−アクリロニトリル共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合ゴム、エチレンとプロピレン、ブテン−1等のα−オレフィンとの共重合ゴム、更にエチレン−α−オレフィン及びエチリデンノルボルネン、シクロペンタジエン等の非共役ジエン類との三元共重合体ゴム等のエラストマー、シリコン樹脂等であってもよく、これら樹脂及び/又はエラストマーをアロイ化又はブレンドしたものであってもよい。
【0054】
天然産製樹脂としては、天然ゴム、3−ヒドロキシブチラートなどの微生物産製脂肪族ポリエステル、微生物産製脂肪族ポリアミド、デンプン、セルロース、キチン・キトサン、グルテン・ゼラチンなどが挙げられる。
【0055】
上記樹脂は、立体規則性、比重、重合触媒の種類、重合触媒の除去の有無や程度、結晶化の度合い、温度や圧力などの重合条件、結晶の種類、X線小角散乱で測定したラメラ晶のサイズ、結晶のアスペクト比、芳香族系または脂肪族系溶媒への溶解度、溶液粘度、溶融粘度、平均分子量、分子量分布の程度、分子量分布におけるピークがいくつあるか、共重合体にあってはブロックであるかランダムであるか、各モノマーの配合比率などにより安定化効果の発現に差異が生じることはあるものの、いかなる樹脂を選択した場合においても適用可能である。
【0056】
本発明の樹脂添加剤マスターバッチを樹脂へ配合する方法としては、特に限定されず、公知の樹脂への安定剤の配合技術が用いられる。合成樹脂を重合する際に予め重合系に添加する方法、重合途中で添加する方法、重合後に添加する方法のいずれでもよい。また、重合後に添加する場合には、安定化させる合成樹脂の粉末やペレットとヘンシェルミキサーなどで混合したものを押出し機などで混練する方法、マスターバッチとした後に用いる方法などがあり、用いる加工機の種類や加工温度、加工後の冷却条件なども特に制限されず、得られる樹脂物性が用途に適したものとなる条件を選択することが好ましい。また、本発明の樹脂添加剤は、単独または他の添加剤と一緒に顆粒状にして用いてもよい。
【0057】
本発明の樹脂添加剤マスターバッチを樹脂へ配合する重量比率は、樹脂100重量部に対して、通常0.01〜20重量部、好ましくは0.05〜10重量部である。
【0058】
本発明の樹脂添加剤マスターバッチを樹脂の安定化に用いる場合には、必要に応じて、通常各々の樹脂に用いられる各種の配合剤が用いられる。これらの配合剤は、本発明の樹脂添加剤マスターバッチに用いられる前記樹脂添加剤(B)および有機酸金属塩(C)と同じであっても異なっていてもよい。各種の配合剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン化合物、造核剤、難燃剤、難燃助剤、滑剤、充填材、繊維状充填材、金属石鹸、ハイドロタルサイト類、帯電防止剤、顔料、染料などが挙げられる。
【0059】
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−第三ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4−第二ブチル−6−第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレングリコールビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、ビス〔2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕などが挙げられ、樹脂100重量部に対して、0.001〜10重量部、より好ましくは、0.01〜5重量部が用いられる。
【0060】
上記イオウ系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、チオジプロピオン酸ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類およびペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられ、樹脂100重量部に対して、0.001〜10重量部、より好ましくは、0.01〜5重量部が用いられる。
【0061】
上記リン系酸化防止剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−エチル−2−ブチルプロピレングリコールと2,4,6−トリ第三ブチルフェノールのホスファイトなどが挙げられ、樹脂100重量部に対して、0.001〜10重量部、より好ましくは、0.01〜5重量部が用いられる。
【0062】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾール等の2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ第三アミルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシ−5−メチルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)−s−トリアジン等のトリアリールトリアジン類が挙げられ、樹脂100重量部に対して、0.001〜10重量部、より好ましくは、0.01〜5重量部が用いられる。
【0063】
上記他のヒンダードアミン化合物としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノウンデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノウンデカン等のヒンダードアミン化合物が挙げられる。
【0064】
上記造核剤としては、p−t−ブチル安息香酸アルミニウム、安息香酸ナトリウムなどの芳香族カルボン酸金属塩;ジナトリウム−ビシクロ(2,2,1)ヘプタン−2,3−ジカルボキシラートなどの脂環族カルボン酸金属塩;ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)リン酸ナトリウム、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)リン酸リチウム、ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート等の酸性リン酸エステル金属塩;ジベンジリデンソルビトール、ビス(メチルベンジリデン)ソルビトールなどの多価アルコール誘導体などが挙げられる。
【0065】
上記難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤、赤燐、リン酸メラミン、リン酸グアニジン、リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物などのリン系難燃剤、メラミンシアヌレートなどの窒素系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物が、難燃助剤としては、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛などの無機化合物、ポリテトラフルオロエチレンなどのドリップ防止剤などが挙げられる。
【0066】
ハイドロタルサイト類としては、天然物でも合成品でもよく、表面処理の有無や結晶水の有無によらず用いることができる。例えば、下記一般式(3)、
MxMgy Alz CO3(OH)xp+2y+3z-2・nH2O (3)
(式中、Mはアルカリ金属または亜鉛を、Xは0〜6の数を、yは0〜6の数を、zは0.1〜4の数を、pはMの価数を、nは0〜100の結晶水の数を表す)で表される塩基性炭酸塩が挙げられる。
【0067】
滑剤としては、ラウリルアミド、ミリスチルアミド、ステアリルアミド、ベヘニルアミドなどの脂肪酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、ポリエチレンワックス、カルシウムステアレート、マグネシウムステアレートなどの金属石鹸、ジステアリルリン酸エステルマグネシウム、ステアリルリン酸エステルマグネシウムなどのリン酸エステル金属塩などが挙げられる。
【0068】
充填材としては、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維、チタン酸カリウム、ホウ酸カリウムなどの無機物が球状物においては粒径、繊維状物においては繊維径や繊維長さおよびアスペクト比を適宜選択して用いられる。また、充填材は、必要に応じて表面処理したものを用いることが好ましい。
【0069】
帯電防止剤としては、例えば、脂肪酸第四級アンモニウムイオン塩、ポリアミン四級塩等のカチオン系帯電防止剤;高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールEO付加物、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アニオン型のアルキルスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物リン酸エステル塩等のアニオン系帯電防止剤;多価アルコール脂肪酸エステル、ポリグリコールリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル等のノニオン系帯電防止剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性型アルキルベタイン、イミダゾリン型両性活性剤等の両性帯電防止剤が挙げられる。係る帯電防止剤は単独で用いてもよく、また、2種類以上の帯電防止剤を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
また、本発明の樹脂添加剤マスターバッチを農業用フィルムに用いる場合には、作物の生長を制御するために紫外線吸収剤を配合したり、保温性を向上するために赤外線吸収剤を配合したり、ハウス内に霧が発生したり、フィルム表面が結露して作物に光が十分に届かないことがあるので、防曇剤や防霧剤を配合してもよい。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例によりなんら制限を受けるものではない。
【0072】
<実施例1〜6,比較例1〜4>
ポリプロピレン(ノバテックMA3、日本ポリプロピレン(株)製)100重量部に対し、低融点の樹脂添加剤((株)ADEKA製 商品名:アデカスタブLA−402,融点33℃)100重量部および下記表1中に示す結晶核剤、充填剤および透明化剤のいずれか(表中の配合量)を加えて、ヘンシェルミキサーで20分間撹拌した。得られた粉末を170℃で押出し機によりペレットとした。
【0073】
押出し成形時のストランドを手で引っ張って、強く引っ張っても切れないものを○、強く引っ張ると切れるものを△、軽く引っ張っても切れるものを×としてストランド強度として評価した。また、3時間以上連続生産可能なものを◎、1〜3時間でストランドが切れたものを○、1時間に1〜5回ストランドが切れたものを△、1時間に6回以上切れたものを×として量産性として評価した。
【0074】
さらに、得られたペレット5gを12cm×8cmのろ紙製の封筒に入れ、50℃で24時間後の封筒の重量増加分をペレットの重量で除して100分率を染み出し率とした。染み出し率が大きいものほど、ペレットの品質が保存に適さないことを意味する。さらにまた、ペレット20gを10cm×6cmのポリエチレン製の袋に入れ、80g/cm2の荷重をかけて50℃で14日保存した。その後室温で3日間保存してペレットのブロッキング状態を手でほぐすことで確認した。ブロッキングが認められなかったものを○、一部ブロッキングしたものを△、全体がブロッキングしたものを×としてブロッキング性として評価した。
【0075】
これらの結果を、下記の表1中に併せて示す。
【0076】
【表1】

*1:化合物No.7
*2:化合物No.9+ミリスチン酸リチウム
*3:パラ−t−ブチル安息香酸アルミニウム
*4:ジナトリウム−ビシクロ(2,2,1)ヘプタン−2,3−ジカルボキシラート(ミリケンケミカル社製 商品名:HPN68)
*5:安息香酸ナトリウム
*6:タルク
*7:ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール(ミリケンケミカル社製 商品名:MILLAD3988)
*8:Znグリセロレート(ユニケマジャパン(株)製 商品名:prifer3881)
【0077】
上記表1の結果からわかるように、本発明に従う各実施例においては、製造時のストランドの切断が少なく、得られるペレットのベトツキも少ない、取り扱い性に優れた樹脂添加剤マスターバッチが得られることが確かめられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリオレフィン樹脂100重量部に対し、(B)融点80℃以下の樹脂添加剤80〜150重量部および(C)有機酸金属塩0.3〜5重量部が配合されてなることを特徴とする樹脂添加剤マスターバッチ。
【請求項2】
前記(B)融点80℃以下の樹脂添加剤が、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン化合物またはこれらの混合物である請求項1記載の樹脂添加剤マスターバッチ。
【請求項3】
前記(B)融点80℃以下の樹脂添加剤が、下記一般式(1)、

(式中、R1は水素原子、ヒドロキシ基、炭素原子数1〜30のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルコキシ基またはオキシラジカルを表し、R2は炭素原子数1〜30のアルキル基または炭素原子数2〜30のアルケニル基を表す)で表される化合物である請求項1または2記載の樹脂添加剤マスターバッチ。
【請求項4】
前記一般式(1)におけるR2が炭素原子数8〜26のアルキル基の混合物である請求項3記載の樹脂添加剤マスターバッチ。
【請求項5】
前記(C)有機酸金属塩が、環構造を有する有機カルボン酸金属塩、下記一般式(2)、

(式中、R3は炭素原子数4〜8のアルキル基を表し、R4は水素原子または炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、R5は炭素原子数1〜4のアルキリデン基を表し、Aは(n+x)価の金属を表し、nは1〜3の数を表し、xは0〜2の数を表す)で表されるリン酸エステル金属塩化合物またはこれらの混合物である請求項1または2記載の樹脂添加剤マスターバッチ。

【公開番号】特開2008−189822(P2008−189822A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26155(P2007−26155)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】