説明

樹脂用添加剤及びこれを含むマスターバッチ又は樹脂組成物並びに成形品

【課題】帯電防止性、防曇性、フィラー分散性を改善する樹脂用添加剤を提供する。
【解決手段】本発明は、(1)樹脂に添加されて用いられる樹脂用添加剤において、特定構造のポリグリセリンアルキルエーテル化合物を含有すること、(2)アニオン系界面活性剤を併せ含有すること、(3)樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ポリ乳酸から選ばれる少なくとも1つであること、を各々特徴とする樹脂用添加剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯電防止性、防曇性、フィラーの分散性改善に優れ且つ加工時の安定性に優れた樹脂用添加剤及びこれを含むマスターバッチ又は樹脂組成物並びに成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に使用されているプラスチックの多くは極性が低く、通常の室温、湿度条件下で容易に帯電したり、結露を生じたりしやすい。プラスチックが帯電すると、生産工程上の障害となったり、製品に汚れが付着したり、印刷不良が起きたりする。また、ラップフィルム等の食品包装材料では結露が生じるとフィルム表面が結露により曇り内容物が確認できないなどの問題が生じる。農業用フィルムでは結露が生じると日光の透過率が低下し作物の生育が悪くなったり、水滴が作物に落下し病虫害が発生したりする問題が生じる。また、樹脂(プラスチック)の剛性や耐衝撃、耐熱性などの向上の目的で炭酸カルシウム、タルクやガラスファイバーなどのフィラーを充填することが一般的に行われるが、これらのフィラーはプラスチックとの相溶性が悪い事が多く、樹脂中に十分に分散されずに満足できる効果が得られなかったり、加工時にフィラーの分散不良により、ムラが出来たりして不良が発生する事がある。
【0003】
これらの問題を解決するために一般に帯電防止剤や防曇剤、分散剤といった樹脂用添加剤を樹脂中に含有せしめて、樹脂表面を親水化したり樹脂とフィラーの界面を相溶化することが行われる。このような樹脂用添加剤としては低分子の界面活性剤が常用されている。
【0004】
樹脂用添加剤として用いられる界面活性剤をイオン性別に分類するとアニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性系に分けられる。これらの内、アニオン系は表面親水化効果があまり大きくない。カチオン系、両性系のものは表面親水化効果は大きいものの耐熱性が低く、着色などの問題が起きやすい。ノニオン系のものも表面親水化効果はあまり大きくないが、分子構造上、親水基の付加モル数や疎水基の鎖長の調整により親水性・疎水性バランスの調整がしやすく、様々な樹脂に適用しやすいこと、着色などの問題も起きにくいことから、樹脂用添加剤として単独でまた、アニオン系やカチオン系との併用により用いられている。
ポリエステル樹脂の耐熱性改善の目的で、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリグリセリン脂肪酸エステルを用いる方法(例えば、特許文献1参照)、及びポリエステル樹脂の帯電防止剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを用いる方法(例えば、特許文献2参照)が開示されているが、その効果の持続性の面では十分とはいえない。
【0005】
ノニオン系界面活性剤としてはアルキルアミンのエチレンオキサイド付加物やアルキルアミドのエチレンオキサイド付加物が効果の高いものとして用いられるが、分子内に窒素原子を含有しており、樹脂の黄変を発生しやすい。また、高級アルコールやグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどのエチレンオキサイド付加物も樹脂用添加剤として用いる事ができるが、樹脂によっては十分な効果が見られなかったり、効果の持続性が劣る場合がある。その他にもノニオン系界面活性剤としてはステアリン酸モノグリセライドが常用されているが、ステアリン酸モノグリセライドはアニオン系、カチオン系、窒素含有ノニオン系などの界面活性剤との併用時に分解し、不都合が生じる。
【特許文献1】特開2007−246623号公報
【特許文献2】特開2007−126500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、帯電防止性、防曇性、フィラーの分散性改善に優れ且つ加工時の安定性に優れた樹脂用添加剤及びこれを含むマスターバッチ又は樹脂組成物並びに成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を持つ化合物を含有する樹脂用添加剤を樹脂に配合した場合に、優れた表面親水化効果をもつことを突き止め、また、同樹脂用添加剤が安定性、加工性において優れた特性を有する事を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の構成を有する。
1.樹脂に添加されて用いられる樹脂用添加剤において、下記式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする樹脂用添加剤。
RO−(A)n−H (1)
(式中、Rは炭素数8〜22のアルキル基、nは平均値が1〜20、Aは−CHCHOHCHO−、−CHCH(CHOH)O−で示されるいずれかの基を表す。)
2.アニオン系界面活性剤を併せ含有することを特徴とする前記1に記載の樹脂用添加剤。
3.樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ポリ乳酸から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする前記1又は2に記載の樹脂用添加剤。
4.式(1)で表される化合物を5〜20質量%含む前記1〜3のいずれかに記載の樹脂用添加剤を含有することを特徴とするマスターバッチ。
5.式(1)で表される化合物を0.1〜20質量%含む前記1〜3のいずれかに記載の樹脂用添加剤を含有することを特徴とする樹脂組成物。
6.前記5に記載の樹脂組成物を成形してなる成形品。
【発明の効果】
【0008】
上記の説明から明らかなように、本発明により表面親水化効果が高く、且つ加工性、安定性に優れ、機械物性の低下や加工時の分解も少なく着色を抑制できる樹脂用添加剤及びこれを含むマスターバッチ又は樹脂組成物並びに成形品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明について、さらに詳しく説明する。なお、以下、「式(1)で表される化合物」を本発明の化合物と称することもある。
本発明に係る樹脂用添加剤に含まれる本発明の化合物は式(1)により示される。
RO−(A)n−H (1)
式(1)においてRは炭素数8〜22のアルキル基を示す。アルキル基は直鎖状、または分岐鎖状であっても良いし、飽和アルキル基でも、不飽和アルキル基でも良い。本発明に用いる事のできるアルキル基としてはn−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、ベヘニル、1−メチルヘプチル、1−ブチルヘキシル、イソステアリル、2−オクテニル、4−テトラデセニル、オレイルなどがある。
【0010】
式(1)においてnは平均の重合度であり、式(1)で表される化合物の製法にもよるが、nは一般に単分散ではなく、分布がある数値である。nは水酸基価に基づいて、下記式(2)により計算できる。
【0011】
【数1】

【0012】
式(2)中、MWalはアルキルアルコールの平均分子量を表す。
【0013】
式(1)においてアルキル基の炭素数とnの値は、本発明の化合物の対象樹脂や求められる性能により決定される。本発明の化合物は対象樹脂種の極性に応じた親水性、疎水性を持つ必要があるがアルキル基の炭素数が増すと疎水性が増し、炭素数が減ると親水性が増す。
そして、nの値が増すと、親水性が増し、nの値が減ると、疎水性が増す。また、アルキル基の炭素数とnの値の和により決定される分子量も重要であり、分子量が小さい場合、初期の表面親水性が良好になるが経時での持続性が悪くなる。また、本発明の化合物が揮発しやすくなるデメリットもある。分子量が大きい場合、初期の表面親水性の発現性が悪くなるが、持続性が向上し、樹脂の物性低下などの影響も小さくなる。アルキル基の炭素数とnの値はこれらの傾向からバランス良く選ぶ必要があるが、アルキル基としては炭素数が8から22の範囲にあることが好ましく、オクチル基やラウリル基、ミリスチル基、ステアリル基が好ましい。アルキル基の炭素数は単一であっても良いし、複数の混合物であっても良い。
nの値はその数平均において1から20であり、好ましくは2〜20であり、さらに好ましくは4〜10である。
【0014】
式(1)で表される化合物は公知の方法で得られる。例えば、アルキルアルコールと、該アルキルアルコールに対し3〜5倍当量のグリシドールとをアルカリ触媒下、50〜100℃で反応させ、減圧下、130〜200℃で未反応のアルキルアルコール及び遊離ポリグリセロールを留去する方法で得られる。
【0015】
本発明に係る樹脂用添加剤は式(1)で表される化合物の他に、樹脂や用途に適した表面親水化性能を発揮する目的等でその他の界面活性剤を包含する樹脂用添加剤を含有することができる。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性系界面活性剤が挙げられるが、これらの内、特にアニオン系界面活性剤との併用が好ましい。このアニオン系界面活性剤は、式(1)で表される化合物に対して1〜50質量%の範囲で用いることが好ましい。本発明に係る樹脂用添加剤は、本発明の化合物及び上記界面活性剤の他に、公知の樹脂用添加剤を含有していても良い。
【0016】
〔アニオン系界面活性剤〕
アニオン系界面活性剤としてはアルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、α−スルホ脂肪酸エステル、α−オレフィンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキル又はヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸、N−アシルタウリン、N−アシルメチルタウリン、N−アシルグリシン、N−アシルアスパラギン酸、N−アシルザルコシン、N−アシルグルタミン酸、モノアルキルリン酸エステル、アルキルアミドエーテル硫酸エステル、脂肪酸モノグリセライド硫酸エステル、脂肪酸ポリグリセリン硫酸エステル、アルキルイミノジカルボン酸、ジアルキルスルホコハク酸、アルキルグリセリルエーテル硫酸エステル、アルキルポリグリセリルエーテル硫酸エステル、二級アミド型N−アシルアミノ酸塩、酒石酸アルキルアミド、リンゴ酸アルキルアミド、クエン酸アルキルアミド及びこれらの塩などが挙げられる。
【0017】
〔カチオン系界面活性剤〕
カチオン系界面活性剤としては、アルキル四級アンモニウム塩、エーテル基又はエステル基を有するアルキル四級アンモニウム塩、テトラアルキルホスホニウム塩あるいはそれらの塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、有機酸塩などが挙げられる。
【0018】
〔ノニオン系界面活性剤〕
ノニオン系界面活性剤としては、本発明以外のアルキル多価アルコールエーテル、ヒドロキシアルキル多価アルコールエーテル、高級アルコールエトキシレート、高級アルコールエトキシプロポキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、ポリオキシエチレンアルキルアミン、脂肪酸アルカノールアミド、ショ糖脂肪酸エステル、アルキル(ポリ)グリコシド、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセロール脂肪酸エステル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、これらの脂肪酸エステルのエトキシレート、脂肪酸2,3−ジヒドロキシプロピルアミド、脂肪酸ポリオキシエチレンアミド、アルキルアミンオキシド、アルキルアミドアミンオキシド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、メチルあるいはエチルグリコシド、脂肪酸エステル、脂肪酸、高級アルコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、アシルグルカミドなどが挙げられる。
【0019】
〔両性系界面活性剤〕
両性系界面活性剤としては、トリアルキルカルボキシメチルベタイン、スルホベタイン、アミドプロピルベタイン、イミダゾリウムベタイン、カルボキシベタイン、ホスホベタインなどが挙げられる。
【0020】
本発明に係る樹脂用添加剤は式(1)で表される化合物とその他の樹脂用添加剤を目的に応じて、式(1)で表される化合物が20質量%以上、より好ましくは主成分(質量比で50%を超える量。)である範囲内で、任意の比率を以って混合して用いて良い。併用する樹脂用添加剤は1種類であっても良いし、数種類の混合物であっても良い。この併用する事ができる樹脂用添加剤には可塑剤、安定剤、滑剤、加工性改良剤、酸化防止剤、加水分解防止剤、スリップ剤、顔料、フィラー、難燃剤などが挙げられる。複数の樹脂用添加剤を混合して用いる場合はあらかじめ複数の樹脂用添加剤を混合しておいて、樹脂に添加しても良いし、樹脂の成形加工中に複数の樹脂用添加剤を別々に添加して混合しても良い。
【0021】
本発明に係る樹脂用添加剤は樹脂に添加してその効果を発揮する。本発明に係る樹脂用添加剤を適用できる樹脂(対象樹脂)としては特に限定なく任意の樹脂を用いることができる。対象樹脂としては例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、脂肪族ポリエステルなどの熱可塑性樹脂やフェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、珪素樹脂、ポリウレタン、ポリイミドなどの熱硬化性樹脂がある。また、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系などの熱可塑性エラストマーや天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴムなどの合成ゴムも用いる事ができる。これらの中、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ポリ乳酸から選ばれる少なくとも1つが好ましい対象樹脂である。
【0022】
本発明における樹脂組成物は通常のプラスチックの成型に用いられる押出機、射出成形機、カレンダー成形機、圧縮成形機、ブロー成形機などを用いて押出、射出、圧縮、ブロー等の熱成形が可能である。樹脂と樹脂用添加剤は別々に添加して、成形機中で混練しても良いし、あらかじめ、混合しておいても良い。ポリマーブレンドを行う場合には二軸押出機の方が好ましい。しかし、加工機の種類によっては、樹脂用添加剤の添加量が高い場合、樹脂の喰い込みが悪く加工できなかったり、加工できても充分混錬できず分散不良が生じたりする場合がある。このため、あらかじめ樹脂に対し樹脂用添加剤を高濃度に含有させたマスターバッチを二軸押出機やバンバリーミキサーにより作製し、これを所定の樹脂用添加剤濃度になるように樹脂と混合して成形することが好ましい。この場合マスターバッチの樹脂用添加剤の濃度はマスターバッチ中の式(1)で表される化合物の量が、5質量%以上20質量%以下となる量が好ましい。
本発明に係るマスターバッチの作製については、従来公知の技術を特別の制限なく採用できる。
【0023】
また、本発明に係る樹脂用添加剤をフィラーとともに用い、主としてフィラーの分散性向上で用いる場合には、あらかじめフィラーに樹脂用添加剤を吸着させてから、樹脂と混練して用いる事が好ましい。例えば、リボンブレンダーを用いフィラーを撹拌しながら、融点以上に熱して融解した樹脂用添加剤をスプレーして振りかけることにより、フィラーに対し、樹脂用添加剤を吸着させる事ができる。この場合、フィラーに対する本発明に係る樹脂用添加剤の使用量は質量比で1%〜100%が好ましい。
【0024】
用いることができるフィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、ケイ酸カルシウム、カーボンブラック、カーボン繊維、ガラス繊維、金属繊維、酸化チタン、クレー、マイカ、タルク 、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、各種有機繊維、木粉、クルミ殻粉、ジュート、ケナフ、セルロース、リグニンなどが挙げられる。
【0025】
本発明の樹脂組成物において、樹脂用添加剤の樹脂に対する添加量は、樹脂組成物中の式(1)で表される化合物量が0.1〜20質量%となる量が好ましく、特に0.1〜5質量%となる量が好ましい。樹脂用添加剤の添加量がかかる範囲より少ない場合は充分な表面親水化効果や分散性向上効果が得られないし、かかる範囲より多い場合には、樹脂の透明性や機械物性が低下したり、樹脂からブリードアウトしたりする。
【0026】
本発明の樹脂組成物はTダイ、インフレーション、カレンダーなどによりシート或いはフィルムへ成形することができる。フィルムについては延伸、無延伸のいずれのものでも構わない。また、射出成形機、圧縮成形機などを用いて成形品を得ることもできる。例えば、ブロー成形によりボトルなどを成形する事ができる。
【実施例】
【0027】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0028】
製造例1 [ポリグリセロールモノラウリルエーテル]
ラウリルアルコール175g(0.9392mol)とグリシドール200g(2.700mol)に水酸化ナトリウム5.746g(0.144mol)を触媒に用いた。反応はラウリルアルコールと水酸化ナトリウムを反応させ、アルコキシドとした後、トルエン200mlを加えて、反応温度90℃にてグリシドールを約0.8ml/minの速度で滴下した。滴下終了後さらに6時間90℃にて熟成させた。反応は、不活性ガス雰囲気下で行った。反応終了後、触媒は当量のリン酸で中和、中和塩と分離したポリグリセロールを濾別し、トルエンを留去して粗ポリグリセロールモノラウリルエーテル370gを得た。さらに未反応のラウリルアルコールを減圧蒸留で留去し(0.92kPa、150〜180℃、対仕込み14.5%カット)、ポリグリセロールモノラウリルエーテル[化合物(1)]を314g得た。この化合物(1)の水酸基価は589.2mgKOH/ml、水酸基価から求めた平均重合度は4.3であった。
【0029】
製造例2 [グリセロールモノラウリルエーテル]
上記で製造した化合物(1)5000gを分子蒸留機(アルバック社製、CEH−300II)を用い、0.4Pa下、100℃、110℃、120℃で3回蒸留した。120℃の蒸留操作でグリセロールモノラウリルエーテル[化合物(2)]を267gを得た。この化合物(2)の水酸基価は431.3、水酸基価から求めた平均重合度は1.0であった。
【0030】
製造例3 [ポリグリセロールモノイソステアリルエーテル]
イソステアリルアルコール250g(0.925mol)とグリシドール200g(2.700mol)に水酸化ナトリウム5.71g(0.143mol)を触媒に用いた。反応はイソステアリルアルコールと水酸化ナトリウムを反応させ、アルコキシドとした後、トルエン200mlを加えて、反応温度90℃にてグリシドールを約0.8ml/minの速度で滴下した。滴下終了後さらに6時間90℃にて熟成させた。反応は、不活性ガス雰囲気下で行った。反応終了後、触媒は当量のリン酸で中和、中和塩と分離したポリグリセロールを濾別し、トルエンを留去して粗ポリグリセロールモノイソステアリルエーテル436gを得た。さらに未反応のイソステアリルアルコールを減圧蒸留で留去し(0.9kPa、160〜200℃、対仕込み13.8%カット)、ポリグリセロールモノイソステアリルエーテル[化合物(3)]を376g得た。この化合物(3)の水酸基価は511.2mgKOH/ml、水酸基価から求めた平均重合度は4.5であった。
【0031】
製造例4 [ポリグリセロールモノヘキサデシルエーテル]
ヘキサデシルアルコール250g(1.032mol)とグリシドール200g(2.700mol)に水酸化ナトリウム5.99g(0.150mol)を触媒に用いた。反応はヘキサデシルアルコールと水酸化ナトリウムを反応させ、アルコキシドとした後、トルエン200mlを加えて、反応温度90℃にてグリシドールを約0.8ml/minの速度で滴下した。滴下終了後さらに6時間90℃にて熟成させた。反応は、不活性ガス雰囲気下で行った。反応終了後、触媒は当量のリン酸で中和、中和塩と分離したポリグリセロールを濾別し、トルエンを留去して粗ポリグリセロールモノヘキサデシルエーテル432gを得た。さらに未反応のヘキサデシルアルコールを減圧蒸留で留去し(0.9kPa、160〜200℃、対仕込み15.2%カット)、ポリグリセロールモノヘキサデシルエーテル[化合物(4)]を366g得た。この化合物(4)の水酸基価は499.6mgKOH/ml、水酸基価から求めた平均重合度は3.4であった。
【0032】
樹脂(1):ポリエチレン(ノバテックLD LF440HB:日本ポリエチレン社製)
樹脂(2):ポリプロピレン(ノバテックPP BC03C:日本ポリプロ社製)
樹脂(3):ポリ乳酸(レイシアH−100:三井化学社製)
樹脂(4):ポリ塩化ビニル(TH700:大洋塩ビ社製)
樹脂(5):ポリエチレン酢酸ビニル共重合体(NUC3758:日本ユニカー社製)
【0033】
試験方法は以下による。
[試験−1]帯電防止性
試験片は100×100mm、厚さ2mmのものを使用した。室温20℃、湿度65%RHで1週間エージングした試験片を、同条件で極超絶縁計SEM−10型(東亜電波工業社製)により表面固有抵抗を測定した。印加電圧は500Vで1分後の値を読み取った。樹脂の表面固有抵抗は通常1016Ω以上であるが、樹脂用添加剤を加えると10〜1014Ω程度に低下する。抵抗値が低いほど帯電防止性が良くなる。
【0034】
[試験−2]防曇性
試験フィルムは100×100mm、厚さ50μmのものを使用した。試験フィルムは成形後、室温20℃、湿度65%RHで1週間エージングして試験に供した。300mlビーカーに200mlの常温の蒸留水を入れ、試験フィルムをかぶせ、密着させた。水を入れフィルムで覆ったビーカーを5℃の冷蔵庫中に入れ、フィルムに付着する水滴を観察した。冷蔵庫に入れて1時間後のフィルムが曇っている場合を×、曇ってなくビーカーの中身がはっきり見える場合を○とした。
【0035】
[試験−3]ビカット軟化点測定試験
試験片は25×20mm、厚さ2mmのものを使用した。東洋精機社製HDT TESTER により、ビカット軟化点(JIS K7206)を測定した。負荷は50N、昇温速度は50℃/hである。
【0036】
実施例1〜10、比較例1〜3
樹脂(1)〜(3)の帯電防止性の比較
表1に示す配合で樹脂、本発明の化合物を混合し、ラボプラストミル(東洋精機社製)にて180℃15min溶融混練し、小型プレス機にて180℃でプレスし2mm厚の板状に成形した。試験片を100×100mmに切り出し、試験−1に供した。結果を表1に示した。
【0037】
【表1】

【0038】
実施例11、比較例4
樹脂(4)の帯電防止性の比較
表2に示す配合でヘンシェルミキサーにて120℃5min混合した。続いて、ラボプラストミル(東洋精機社製)にて170℃10min溶融混練し、小型プレス機にて170℃でプレスし2mm厚の板状に成形した。試験片を100×100mmに切り出し、試験−1に供した。結果を表2に示した。
【0039】
【表2】

【0040】
注1:エポキシ化大豆油;ダイセル化学社製 エポキシ化大豆油
注2:錫系安定剤;日東化成社製 #8831
【0041】
実施例12、比較例5
樹脂(5)の防曇性の比較
樹脂(5)90質量%に対し化合物(1)が10質量%になるように流量を調整し、ストランドダイを備えた小型異方向二軸押出機により190℃にて溶融混練し、ストランドを水冷して切断し、マスターバッチペレットを作製した。作製したマスターバッチペレットを80℃、12時間乾燥させた。続いて、表3に示す配合で混合しインフレーション成形機にて180℃で厚さ50μmのフィルムに成形した。成形したフィルムを試験−2に供した。結果を表3に示す。
【0042】
【表3】

【0043】
実施例13−15、比較例6、7
アニオン系界面活性剤との併用での帯電防止性の比較
表4に示す配合で混合し、ストランドダイを備えた小型異方向二軸押出機により190℃にて溶融混練し、ストランドを水冷して切断し、ペレットを作成した。作成したペレットを100℃、5時間乾燥させた。続いて、ペレットを射出成形機にて190℃で10×10×2mmの板状に成形し、試験−1に供した。結果を表4に示した。尚、注3に示すアニオン系界面活性剤に限らず、前記〔アニオン系界面活性剤〕の例示化合物の全てについて同様の効果がみられた。
【0044】
【表4】

【0045】
注3:アニオン系界面活性剤:松本油脂社製 TB−160(アルキルスルホン酸ナトリウム)
【0046】
実施例16−18、比較例8
フィラーの分散性の比較
タルク(ハイトロンA、竹原化学社製)100gに対し、表5に示す本発明の化合物100gを加え、ヘンシェルミキサーにて100℃ 10min撹拌し吸着させた。樹脂、本発明の化合物、タルクの比率が表5に記載の濃度になるように本発明の化合物を吸着したタルクと樹脂を混合し、ストランドダイを備えた小型異方向二軸押出機により190℃にて溶融混練し、ストランドを水冷して切断し、ペレットを作成した。作成したペレットを100℃、5時間乾燥させた。続いて、ペレットを射出成形機にて190℃で金型温度105℃、冷却時間60秒にて、厚さ2mmの試験片に成形し、適宜切り出し試験−3に供した。結果を表5に示した。
【0047】
【表5】

【0048】
表5から、タルクは樹脂に添加することにより耐熱性が向上するが、タルクは樹脂中に
十分な分散性を持たないことが分かり、一方、本発明の化合物をタルクに吸着させる事により、タルクの分散性が向上し、樹脂組成物の耐熱性が向上していることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂に添加されて用いられる樹脂用添加剤において、下記式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする樹脂用添加剤。
RO−(A)n−H (1)
(式中、Rは炭素数8〜22のアルキル基、nは平均値が1〜20、Aは−CHCHOHCHO−、−CHCH(CHOH)O−で示されるいずれかの基を表す。)
【請求項2】
アニオン系界面活性剤を併せ含有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂用添加剤。
【請求項3】
樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ポリ乳酸から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂用添加剤。
【請求項4】
式(1)で表される化合物を5〜20質量%含む請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂用添加剤を含有することを特徴とするマスターバッチ。
【請求項5】
式(1)で表される化合物を0.1〜20質量%含む請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂用添加剤を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の樹脂組成物を成形してなる成形品。

【公開番号】特開2010−1384(P2010−1384A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161573(P2008−161573)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(390010674)理研ビタミン株式会社 (236)
【Fターム(参考)】