説明

樹脂発泡体とプレート部材との一体成型品の製造方法および、その一体成型品

【課題】成形金型10の下型11内にプレート部材20を配置するに際して、プレート部材20を、下型11に対して十分確実に位置決めして、発泡樹脂原料の発泡成形工程での、プレート部材20の位置のずれを防止することにより、成形金型10を複雑に加工することなく、プレート部材20の所期したとおりの位置に、樹脂発泡体30を適正に一体化させることができる、樹脂発泡体とプレート部材との一体成型品40の製造方法および、その一体成型品40を提供する。
【解決手段】プレート部材20に、プレート部材本体部21の端部から、相互に対向して立上がる少なくとも一対の側壁22を設け、前記プレート部材20を、成形金型10の下型11内に嵌め込んで、プレート部材20の一対の対向側壁22を、下型11の対向側面11aのそれぞれに、直接的ないしは間接的に摩擦係合させて下型11に位置決めし、該プレート部材20上に発泡樹脂原料を注入し、その後、上型12と下型11とを型締めして、キャビティ13内で発泡樹脂原料を発泡させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、上型および下型からなる成形金型の下型内に、プレート部材を配置して、そのプレート部材上に発泡樹脂原料を注入し、上型と下型との型締め状態で、成形金型の内部に画成されるキャビティ内で、前記発泡樹脂原料を発泡させる、樹脂発泡体とプレート部材との一体成型品の製造方法および、その一体成型品に関するものであり、とくに、キャビティ内での、発泡樹脂原料の発泡・膨脹に起因する、プレート部材の、下型に対する位置のずれを有効に防止して、所期したとおりの一体成型品を製造する技術を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン等の合成樹脂材料からなるプレート部材の片面に、ポリウレタンフォーム等の熱可塑性の樹脂発泡体を一体的に設けてなる一体成型品は、たとえば、車両のドアパネルの内側に、前記樹脂発泡体が車両の室内側に向く姿勢で配設することで使用に供することができる。
この場合、車両のドアパネルの内側のこの一体成型品は、車両の側面衝突時等に、衝突衝撃を、ドアパネルに近接して位置するプレート部材で分散させるとともに、衝撃エネルギーを、車室内側に位置する樹脂発泡体の崩壊によって吸収して、乗員への衝撃を緩和すべく機能する。
【0003】
このような一体成型品を製造するに当っては、上型と下型に分割可能な成形金型の下型内に、プレート部材を位置決め配置して、そのプレート部材上に液体状の発泡樹脂原料を注入し、上型と下型との型締め状態で成形金型内に画成されるキャビティ内で、前記発泡樹脂原料を発泡・固化させてプレート部材と一体化させ、その後、成形金型を型開きして、樹脂発泡体とプレート部材との一体成型品を下型から取出す場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、上記の製造方法では、プレート部材を下型内に配置するに当って、プレート部材の、下型への位置決めが確実に行われていないことから、成形金型の内部のキャビティ内で、発泡樹脂原料を発泡・固化させる際に、発泡樹脂原料の膨脹や、液体状の発泡樹脂原料がプレート部材に及ぼす浮力の作用等に起因して、プレート部材の、下型内での配置位置にずれが生じ、これにより、樹脂発泡体が、プレート部材の所期した位置とは異なる部分に一体的に配設された状態で、樹脂発泡体とプレート部材との一体成型品が製造される場合があった。
【0005】
発泡樹脂原料の発泡成形工程での、プレート部材のこのような位置のずれを防止するためには、成形金型の下型内に、ピン、突起もしくはボルト等の固定手段を設け、プレート部材を下型内に位置決め配置する際に、このような固定手段でプレート部材を下型に一時的に固定し、発泡成形工程の終了後に前記固定手段を外して、一体成型品を下型から取出すという方法が考えられるが、この方法では、成形金型の下型内に、予め固定手段を配設しておく必要があるのみならず、発泡成形工程終了後の、一体成型品の、下型からの取出しが困難となる場合があった。
【0006】
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題を解決することを課題とするものであり、それの目的とするところは、成形金型の下型内にプレート部材を配置するに際して、プレート部材を、下型に対して十分確実に位置決めして、発泡樹脂原料の発泡成形工程での、プレート部材の位置のずれを防止することにより、成形金型を複雑に加工することなしに、プレート部材の所期したとおりの位置に、樹脂発泡体を適正に一体化させることができる、樹脂発泡体とプレート部材との一体成型品の製造方法および、その一体成型品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の、樹脂発泡体とプレート部材との一体成型品の製造方法は、上型および下型からなる成形金型の下型内に、プレート部材を配置するとともに、該プレート部材上に発泡樹脂原料を注入し、上型と下型との型締め状態で、成形金型の内部に画成されるキャビティ内で、前記発泡樹脂原料を発泡させて、樹脂発泡体とプレート部材との一体成型品を製造するに際し、前記プレート部材に、プレート部材本体部の端部から、相互に対向して立上がる少なくとも一対の側壁を設け、前記プレート部材を、成形金型の下型内に嵌め込んで、プレート部材の一対の対向側壁を、下型の対向側面のそれぞれに、直接的ないしは間接的に摩擦係合させて下型に位置決めし、該プレート部材上に発泡樹脂原料を注入し、その後、上型と下型とを型締めして、前記キャビティ内で発泡樹脂原料を発泡させるにある。
【0008】
ここでいう「対向」は、一対の側壁が、互いに平行する向きに向き合う場合のみならず、一方の側壁が、他方の側壁に対して、互いに平行する向きから一定の傾斜角度をなして向き合う場合も含むものとする。そして、この「一定の傾斜角度」は、互いに平行する向きに対して、90°未満、さらには60°未満であることが好ましい。
【0009】
ここで好ましくは、プレート部材の前記対向側壁の少なくとも一方の、前記プレート部材本体部に対する立上り角度を、下型の側面の、該下型の底面に対する立上り角度よりも大きくし、前記プレート部材を、成形金型の下型内に嵌め込んで、プレート部材の一対の対向側壁を、下型の対向側面のそれぞれに、少なくとも一方の側壁の弾性変形下で摩擦係合させて下型に位置決めし、該プレート部材上に発泡樹脂原料を注入する。
【0010】
また好ましくは、プレート部材の前記プレート部材本体部の最大寸法を、下型の底面の最大寸法よりも大きくし、前記プレート部材を、成形金型の下型内に嵌め込んで、プレート部材の一対の対向側壁を、下型の対向側面のそれぞれに、プレート部材本体部の弾性変形下で摩擦係合させて下型に位置決めし、該プレート部材上に発泡樹脂原料を注入する。
【0011】
なお好ましくは、プレート部材の一対の対向側壁の少なくとも一方の外表面に、前記下型内への嵌め込み姿勢で、該下型の側面に向けて突出する、側壁の一部をなす一個以上の突起を設け、前記プレート部材を、成形金型の下型内に嵌め込んで、プレート部材の一対の対向側壁を、側壁の外表面の前記突起の、下型側面への当接下で、下型の対向側面のそれぞれに摩擦係合させて下型に位置決めし、該プレート部材上に発泡樹脂原料を注入する。
【0012】
ここでまた好ましくは、下型の成形面に倣った形状の離型フィルムを具える成形金型により、樹脂発泡体とプレート部材との一体成型品を製造するに当り、
プレート部材を、前記成形金型の下型内に嵌め込んで、プレート部材の一対の対向側壁を、下型の対向側面のそれぞれに、間接的に摩擦係合させて下型内に位置決めした後に、該プレート部材上に発泡樹脂原料を注入し、発泡樹脂原料の、前記キャビティ内での発泡成形工程の終了後、成形金型の上型を下型から型開きし、離型フィルムを下型の成形面から離隔させて、離型フィルムを、樹脂発泡体とプレート部材との一体成型品とともに下型成形面から持ち上げて、該一体成型品を下型から取出す。
【0013】
また、この発明の、樹脂発泡体とプレート部材との一体成型品は、プレート部材が、プレート部材本体部の端部から、相互に対向して立上がる少なくとも一対の側壁を有し、樹脂発泡体が、プレート部材の一対の対向側壁間で、該プレート部材に一体的に固定されてなるものである。
【0014】
ここで好ましくは、プレート部材が少なくとも一の孔を有し、樹脂発泡体の一部を、前記孔内に入り込ませる。
【0015】
また好ましくは、プレート部材の、樹脂発泡体との接触面が、樹脂発泡体に向けて突出する少なくとも一のリブを有し、該リブを、樹脂発泡体の内部に埋め込む。
【発明の効果】
【0016】
この発明の、樹脂発泡体とプレート部材との一体成型品の製造方法によれば、プレート部材を下型内に嵌め込むに際して、プレート部材本体部の端部から相互に対向して立上がる、プレート部材の一対の側壁を、下型の対向側面のそれぞれに、直接的ないしは間接的に摩擦係合させてプレート部材を下型に位置決めすることにより、プレート部材の対向側壁と下型の対向側面との間で生じる摩擦力が、発泡樹脂原料の発泡成形工程での、プレート部材の、下型に対する位置ずれを防止するべく機能することになるので、樹脂発泡体を、プレート部材の所期したとおりの位置に、適正に一体化させることができる。
しかも、この製造方法では、従来の成形金型を、複雑に加工することなしにそのまま用いることができる。また、発泡成形工程終了後の、一体成型品の取出しの困難さを抑制できる。
【0017】
ところで、樹脂発泡体とプレート部材との一体成型品を製造するに当って、たとえば、樹脂発泡体としてポリウレタンフォームを、プレート部材としてポリプロピレンをそれぞれ用いた場合には、これらの材料は相互の固着性を有しないことから、従来では接着材等を用いて、それらの部材の相互を固着させていたが、この発明では、発泡成形工程における、発泡樹脂原料の、プレート部材の対向側壁間での発泡・膨脹により、固化した樹脂発泡体が、対向側壁間に嵌まり込んで摩擦係合するため、プレート部材の対向側壁間に樹脂発泡体が強固に挟み込まれた状態で、一体成型品が製造されることになる。
このため、この発明の製造方法によれば、樹脂発泡体とプレート部材とのそれぞれに、相互の固着が生じない材質を用いて一体成型品を製造する場合であっても、接着材等の副資材が不要になるとともに、接着剤等による、部材相互の固着工程を削減でき、樹脂発泡体とプレート部材との一体成型品を、安価にかつ容易に製造することができる。
【0018】
ここで、プレート部材の対向側壁の少なくとも一方の立上り角度を、下型の側面の立上り角度よりも大きくし、プレート部材の一対の対向側壁を、下型の対向側面のそれぞれに、少なくとも一方の側壁の弾性変形下で摩擦係合させたときは、弾性変形した側壁の復元力に基き、プレート部材の対向側壁と下型の対向側面との間の摩擦力が増大することになるので、発泡樹脂原料を発泡させる際の、プレート部材の位置ずれを防止する効果を高めることができる。
【0019】
またここで、プレート部材本体部の最大寸法を、下型の底面の最大寸法よりも大きくし、プレート部材の一対の対向側壁を、下型の対向側面のそれぞれに、プレート部材本体部の弾性変形下で摩擦係合させたときは、弾性変形下のプレート部材本体部の復元力によって、プレート部材の対向側壁が、下型の対向側面に強く押し付けられることになるため、発泡樹脂原料の発泡時の、プレート部材の位置のずれを効果的に防止することができる。
【0020】
そしてまた、プレート部材の一対の対向側壁を、側壁外表面に設けた突起の、下型側面への当接下で、下型の対向側面のそれぞれに摩擦係合させたときは、その突起の、下型側面への当接により、プレート部材の対向側壁が内側に弾性変形して、それらの対向側壁に復元力が生じ、プレート部材の対向側壁と下型の対向側面との間の摩擦力が増大することになるので、プレート部材の、下型への位置決め配置を十分に確実なものとすることができる。
【0021】
ここにおいて、たとえば真空成形法により、下型の成形面に倣った形状に成形された離型フィルムを具える成形金型を用いて、樹脂発泡体とプレート部材との一体成型品を製造する場合には、発泡成形工程が終了した後の、一体成型品の、下型からの取出しが、たとえば、離型フィルムの下面側への加圧空気等の吹き込みに基く、その一体成型品のエジェクト作用により、極めて容易なものとなって、一体成型品の生産性を向上させることができる。
【0022】
この一方で、離型フィルムを具える成形金型では、下型の成形面に倣った形状の離型フィルムの存在の故に、金型側に、先に述べたような、プレート部材を一時的に固定する、ボルト等の固定手段を設けることはより一層難しくなるが、ここでは、プレート部材の対向側壁を、下型の対向側面のそれぞれに間接的に摩擦係合させて、プレート部材を下型内に位置決めすることにより、発泡成形時の、プレート部材の位置ずれを防止できるので、一体成型品の生産性を高めてなお、プレート部材の所期したとおりの位置に、樹脂発泡体を適正に一体化させることができる。
【0023】
また、この発明の、樹脂発泡体とプレート部材との一体成型品によれば、プレート部材が、プレート部材本体部の端部から、相互に対向して立上がる少なくとも一対の側壁を有することにより、上述のとおり、樹脂発泡体の、プレート部材への配設位置の精度が高まって、材料歩止りを大きく向上することができ、また、樹脂発泡体が、プレート部材の一対の対向側壁間で摩擦係合するため、接着剤等の固着材料の適用なしに、プレート部材に、樹脂発泡体が強固に固定されることになる。
【0024】
ここで、樹脂発泡体の一部を、プレート部材に設けた孔内に入り込ませたときは、樹脂発泡体が、プレート部材の対向側壁間で摩擦係合する他、プレート部材の孔内に入り込んだ、発泡樹脂原料の一部が発泡成形時に膨脹して、固化した樹脂発泡体のその部分が、前記孔の周縁と摩擦係合することになるので、樹脂発泡体とプレート部材との固定がより強固なものとなる。
【0025】
またここで、プレート部材の、樹脂発泡体との接触面に設けたリブを、樹脂発泡体の内部に埋め込んだときは、プレート部材のリブと、樹脂発泡体との摩擦係合により、樹脂発泡体を、プレート部材に強固に固定する効果をより一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の一の実施の形態の、樹脂発泡体とプレート部材との一体成形品の製造方法を示す、各製造工程の断面図である。
【図2】他の実施の形態の製造方法に用いるプレート部材の斜視図である。
【図3】プレート部材側壁の立上り角度および、下型側面の立上り角度のそれぞれを示す断面図である。
【図4】プレート部材本体部の最大寸法および、下型底面の最大寸法のそれぞれを示す断面図である。
【図5】他の実施の形態の製造方法を示す、各製造工程の断面図である。
【図6】他の実施の形態の一体成型品を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に図面を参照しながら、この発明の実施の形態について説明する。
図中10は、この発明の、樹脂発泡体とプレート部材との一体成型品の製造に用いる成形金型を示し、20は、成形金型10の内部に配置されるプレート部材を、30は、成形金型10の成形キャビティ内で発泡成形されて、プレート部材20と一体化された樹脂発泡体を、そして、40は、プレート部材20と樹脂発泡体30との一体成型品をそれぞれ示す。
【0028】
成形金型10は、図に示すところでは、内側に対向側面11aを有し、断面が略U字状の成形面を画成する下型11と、型締め状態で下型11に嵌まり込む上型12とからなり、上型12と下型11との型締め状態の下では、それらの間に成形キャビティ13が画成される。このキャビティ13内で、発泡樹脂原料を発泡させるとともに成形して固化させてなる樹脂発泡体30がプレート部材20に一体化される。
【0029】
ここで、プレート部材20は、プレート部材本体部21の端部から、相互に対向する対向側壁22を立ち上げてなるものであり、たとえば、図1に例示するプレート部材20は、平板状のプレート部材本体部21と、その本体部21の端部から、曲面をなして滑らかに立ち上げた一対の対向側壁22とを具え、その断面は略U字状をなす。
なお、プレート部材20は少なくとも一対の対向側壁22を有していればよく、たとえば図2に斜視図で示すように、全体としてバスタブ形状をなし、平面視で略矩形の平板状のプレート部材本体部21と、二対の対向側壁22とからなるものとすることもできる。また、プレート部材本体部21は、図示の矩形以外の多角形、たとえば三角形や、円形等の様々な形状とすることができる。
【0030】
またここで、プレート部材20は、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレン、ABS樹脂その他の合成樹脂材料から形成することができるが、生産コストの観点からポリプロピレン製とすることが好ましい。
一方、樹脂発泡体30は、たとえば、ポリヒドリキシ化合物とポリイソシアネート化合物とを主成分とする硬質ポリウレタンフォームからなるものとすることができ、さらにこれに、触媒、発泡剤、整泡材、難燃剤等の助剤を含むものとすることもできる。
【0031】
成形金型10により、樹脂発泡体30とプレート部材20との一体成型品40を製造するに当っては、はじめに、図1(a)に示すように、上型12を型開きした状態で、下型11内に、プレート部材20を、プレート部材本体部21が下型11の底面11bに向く姿勢で嵌め込む。
このとき、図1(b)に示すように、プレート部材20の一対の対向側壁22を、下型11の対向側面11aのそれぞれに、たとえば直接的に摩擦係合させて、プレート部材20を下型11内に位置決め配置する。なお、図に示すところでは、プレート部材20を下型11に配置した状態で、プレート部材本体部21が下型底面11bに対向して向き合うものとする。
【0032】
次いで、図1(c)に示すように、プレート部材20上から、所定量の液体状の発泡樹脂原料を注入した後、(d)に示すように、下型11に対して上型12を型締めして、キャビティ13内で発泡樹脂原料を発泡・膨脹させる。
これによれば、プレート部材20の対向側壁22の、下型11の対向側面11aへの摩擦係合により、発泡樹脂原料の発泡・膨脹等に起因する、プレート部材20の、下型11に対する位置ずれが防止されることになる。
このようにして樹脂発泡体30がプレート部材20の所定位置に一体化された後は、図示は省略するが、上型12を型開きして、樹脂発泡体30とプレート部材20との一体成型品40を下型11から取出す。
【0033】
ここにおいて、プレート部材20の対向側壁22の外表面、図2に例示するところでは、一方の側壁22の外表面に、その一部をなす一個以上、図では二個の突起22aを、下型11内への嵌め込み姿勢で、下型11の側面11aに向けて突出するように設けることができる。
これによれば、プレート部材20を、下型11内に嵌め込むに際し、側壁22の突起22aの、下型側面11aへの当接に基いて、プレート部材20の対向側壁22と下型11の対向側面11aとの摩擦係合力がより増大するので、発泡成形時の、プレート部材20の位置ずれを一層効果的に防止することができる。
【0034】
またここでは、上述したような突起22aを設けることに代えて、もしくは加えて、図3に示すように、プレート部材側壁22の少なくとも一方の、プレート部材本体部21に対する立上り角度αを、少なくとも一方の下型側面11aの、底面11bに対する立上り角度βよりも大きくすることが好適であり、この場合には、プレート部材20を下型11に嵌め込んで、プレート部材20の対向側壁22を下型側面11aに整合させることにより、少なくとも一方の側壁22に、それの弾性変形に起因する復元力が生じることになるので、プレート部材20の、下型11への位置決め配置を十分確実なものとすることができる。
【0035】
そしてまた、樹脂原料の発泡成形工程での、プレート部材20の位置ずれ防止機能を高めるため、図4に示すように、プレート部材本体部21の最大寸法Lを、下型11の底面11bの最大寸法Mより大きくすることもできる。
このように、プレート部材側壁22の突起22aを設ける場合や、プレート部材側壁22の立上り角度α、プレート部材本体部21の最大寸法Lを変更する場合は、発泡成形工程で、成形金型10への十分な摩擦係合力を発揮させて、プレート部材20の位置ずれを有効に防止してなお、発泡成形後に、成形金型10から無理なく取出すことができるような、形状ないしは大きさに容易に調整できる点で有利である。
【0036】
ところで、樹脂発泡体30とプレート部材20との一体成型品40の生産性、なかでも一体成型品40の取出性を高めるためには、成形金型10を、たとえば図5に示すように、下型11の成形面に倣った形状の離型フィルム14を具えるものとすることが好ましい。
【0037】
離型フィルム14を具えるこの成形金型10では、具体的には、下型11の下方に空気室15を設け、下型11の底部に、空気室15と下型11の内側とを連通させる連通孔16を形成する。そしてまた、空気室15と、成形金型10の外部に設けた加圧・減圧装置18とを、圧力調整バルブ17を具えた流路で連結する。
ここで、離型フィルム14の材質としては、シリコン系樹脂材料、ポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂材料、ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂材料、あるいはその他の合成樹脂材料とすることができる。
【0038】
図5に示す成形金型10により、樹脂発泡体30とプレート部材20との一体成型品40を製造する場合は、図示しないエアシール部材等によって、下型周縁に周囲を密封固定した離型フィルム14を具える成形金型10において、図5(a)に示すように、加圧・減圧装置18を用いて、空気室15ならびに、連通孔16でこの空気室15と連通させた、下型11の成形面と離型フィルム14との間の空間を減圧することで、離型フィルム14を、下型11の成形面に倣った形状に予め真空成形しておく。
【0039】
なおここでは、真空成形法により、離型フィルム14を、下型11の成形面に倣った形状に成形するものとしたが、その他に、図示は省略するが、圧空成形法、プレス成形法等を用いることができる。
また、図に示すところでは、発泡樹脂原料とプレート部材20との一体発泡成形を行う成形金型10を用いて、離型フィルム14を真空成形するものとしたが、図示しない別個の成形金型を用いて、離型フィルム14を真空成形しておくこともできる。なお、生産性の観点からは、一体発泡成形を行う成形金型10とは別個の成型金型を用いて、離型フィルム14の真空成形を行うことが好ましい。
【0040】
そして、プレート部材20を、下型11内に嵌め込んで、図5(b)に示すように、プレート部材20の対向側壁22を、下型11の対向側面11aのそれぞれに、離型フィルム14を介して間接的に摩擦係合させて、プレート部材20を下型11内に位置決めした後に、プレート部材20上に発泡樹脂原料を注入し、成形金型10の型締めの下で、発泡樹脂原料を発泡させる。
【0041】
発泡樹脂原料が発泡・固化した後、上型12を下型11から型開きするとともに、図5(c)に示すように、加圧・減圧装置18を用いて、空気室15を加圧することにより、離型フィルム14を、一体成型品40とともに押上げて、一体成型品40を下型11から取出す。
ここにおいて、離型フィルム14の周囲を引っ張ることにより、離型フィルム14を、一体成型品40とともに押上げてこれを下型11から取出すこともできる。
【0042】
離型フィルム14を具えるこのような成形金型10では、発泡樹脂原料を発泡、成形および固化させた後、離型フィルム14を、エアブロー等によって、一体成型品40とともに押し上げることで、一体成型品40を下型11から容易にかつ、適正に抜き出すことができるので、一体成型品40の生産性が有効に高まることになる。
また、このような離型フィルム14を用いる製造方法によれば、発泡成形工程の後、一体成型品40を成形金型10から取出す際に、樹脂発泡体30の、プレート部材20からの剥離の発生が抑制されることから、極めて顕著な効果を有する。
【0043】
以上のような製造工程を経て製造された、樹脂発泡体30とプレート部材20との一体成形品40では、発泡成形時の膨脹によって、樹脂発泡体30が、プレート部材20の対向側壁22の間で強固に挟み込まれて一体的に固定されていることから、それらの部材のそれぞれを、相互の固着が生じない材質とした場合であっても、部材相互を接着剤等によって固着させる必要がない。
【0044】
ここにおいて、樹脂発泡体30の、プレート部材20への固定を、より一層確実なものとするために、プレート部材20に、図6(a)に示すような、ここではプレート部材本体部21を貫通するものとした孔23を設けることができる他、図6(b)に示すように、プレート部材20の、樹脂発泡体30との接触面に、樹脂発泡体30に向けて突出する、図では二条のリブ24を形成することができる。なお、図示は省略するが、このリブ26の先端部は、それ以外の部分に比して大きく形成することが、樹脂発泡体30を強固に固定する観点から好ましい。
【符号の説明】
【0045】
10 成形金型
11 下型
11a 対向側面
11b 底面
12 上型
13 成形キャビティ
14 離型フィルム
15 空気室
16 連通孔
17 圧力調整バルブ
18 加圧・減圧装置
20 プレート部材
21 プレート部材本体部
22 対向側壁
22a 突起
23 孔
24 リブ
30 樹脂発泡体
40 一体成型品
α プレート部材側壁の立上り角度
β 下型側面の立上り角度
L プレート部材本体部の最大寸法
M 下型底面の最大寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型および下型からなる成形金型の下型内に、プレート部材を配置するとともに、該プレート部材上に発泡樹脂原料を注入し、上型と下型との型締め状態で、成形金型の内部に画成されるキャビティ内で、前記発泡樹脂原料を発泡させて、樹脂発泡体とプレート部材との一体成型品を製造するに際し、
前記プレート部材に、プレート部材本体部の端部から、相互に対向して立上がる少なくとも一対の側壁を設け、
前記プレート部材を、成形金型の下型内に嵌め込んで、プレート部材の一対の対向側壁を、下型の対向側面のそれぞれに、直接的ないしは間接的に摩擦係合させて下型に位置決めし、該プレート部材上に発泡樹脂原料を注入し、その後、上型と下型とを型締めして、前記キャビティ内で発泡樹脂原料を発泡させる、樹脂発泡体とプレート部材との一体成型品の製造方法。
【請求項2】
プレート部材の前記対向側壁の少なくとも一方の、前記プレート部材本体部に対する立上り角度を、下型の側面の、該下型の底面に対する立上り角度よりも大きくし、
前記プレート部材を、成形金型の下型内に嵌め込んで、プレート部材の一対の対向側壁を、下型の対向側面のそれぞれに、少なくとも一方の側壁の弾性変形下で摩擦係合させて下型に位置決めし、該プレート部材上に発泡樹脂原料を注入する、請求項1に記載の、樹脂発泡体とプレート部材との一体成型品の製造方法。
【請求項3】
プレート部材の前記プレート部材本体部の最大寸法を、下型の底面の最大寸法よりも大きくし、
前記プレート部材を、成形金型の下型内に嵌め込んで、プレート部材の一対の対向側壁を、下型の対向側面のそれぞれに、プレート部材本体部の弾性変形下で摩擦係合させて下型に位置決めし、該プレート部材上に発泡樹脂原料を注入する、請求項1または2に記載の、樹脂発泡体とプレート部材との一体成型品の製造方法。
【請求項4】
プレート部材の一対の対向側壁の少なくとも一方の外表面に、前記下型内への嵌め込み姿勢で、該下型の側面に向けて突出する、側壁の一部をなす一個以上の突起を設け、
前記プレート部材を、成形金型の下型内に嵌め込んで、プレート部材の一対の対向側壁を、側壁の外表面の前記突起の、下型側面への当接下で、下型の対向側面のそれぞれに摩擦係合させて下型に位置決めし、該プレート部材上に発泡樹脂原料を注入する、請求項1〜3のいずれか記載の、樹脂発泡体とプレート部材との一体成型品の製造方法。
【請求項5】
下型の成形面に倣った形状の離型フィルムを具える成形金型により、樹脂発泡体とプレート部材との一体成型品を製造するに当り、
プレート部材を、前記成形金型の下型内に嵌め込んで、プレート部材の一対の対向側壁を、下型の対向側面のそれぞれに、間接的に摩擦係合させて下型内に位置決めした後に、該プレート部材上に発泡樹脂原料を注入し、
発泡樹脂原料の、前記キャビティ内での発泡成形工程の終了後、成形金型の上型を下型から型開きし、離型フィルムを下型の成形面から離隔させて、離型フィルムを、樹脂発泡体とプレート部材との一体成型品とともに下型成形面から持ち上げて、該一体成型品を下型から取出す、請求項1〜4のいずれかに記載の、樹脂発泡体とプレート部材との一体成型品の製造方法。
【請求項6】
プレート部材が、プレート部材本体部の端部から、相互に対向して立上がる少なくとも一対の側壁を有し、
樹脂発泡体が、プレート部材の一対の対向側壁間で、該プレート部材に一体的に固定されてなる、樹脂発泡体とプレート部材との一体成型品。
【請求項7】
プレート部材が少なくとも一の孔を有し、樹脂発泡体の一部を、前記孔内に入り込ませてなる、請求項6に記載の、樹脂発泡体とプレート部材との一体成型品。
【請求項8】
プレート部材の、樹脂発泡体との接触面が、樹脂発泡体に向けて突出する少なくとも一のリブを有し、該リブを、樹脂発泡体の内部に埋め込んでなる、請求項6または7に記載の、樹脂発泡体とプレート部材との一体成型品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−156712(P2011−156712A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19070(P2010−19070)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】