説明

樹脂積層体及び樹脂積層体の製造方法

【課題】樹脂基材の表面に、クラックの発生が抑制されたシリカ層を高生産性で積層させることが可能で、且つシリカ層と樹脂基材とが良好な密着性を有した透明性及び耐擦傷性に優れる樹脂積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】透明フィルムの片面に、ポリシラザンを含有するコーティング材の乾燥塗膜を硬化させて得られるシリカ層及び特定の化合物が5質量%以上含まれるシランカップリング剤を含有するプライマー組成物の乾燥塗膜を硬化させて得られるプライマー層が順次積層された転写フィルムの表面に形成されたプライマー層と樹脂基材とを硬化膜形成用材料塗膜を介してラミネートして樹脂基材ラミネート物を形成するラミネート工程、樹脂基材ラミネート物に転写フィルムを介して活性エネルギー線を照射して硬化膜形成用材料塗膜を硬化させて硬化膜とする硬化膜形成工程並びに透明フィルムを剥離する透明フィルム剥離工程を含む樹脂積層体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等の透明樹脂基材は工業用資材、建築用資材等の各種資材として広く使用されている。特に近年では、樹脂の透明性と耐衝撃性の点から、CRT、液晶テレビ、プラズマディスプレイ等の各種ディスプレイの前面板として使用されるに至っている。
【0003】
しかしながら、これらの透明樹脂基材はガラスと比較して柔軟なため引掻き等による傷が発生し易く、また、他の基材に接着層等を介して貼り合わせて使用する際にアウトガスの発生が問題となる場合がある。
【0004】
更に、前記透明樹脂基材は温度、湿度等の周囲の環境変化によって反りや変形が生じる場合があり、ガラスと比較して寸法安定性の面でも劣る。
【0005】
このような透明樹脂基材の耐擦傷性やアウトガスの問題を改善する方法として、透明樹脂基材上に耐擦傷性及びガスバリア性に優れるポリシラザンを硬化させてシリカ層を形成する方法が挙げられる。
【0006】
樹脂基材上にポリシラザンを硬化させてシリカ層を形成する方法としては、例えば特許文献1には、離型性を有するベースフィルムの表面に、ポリシラザン(a)を含む組成物である被覆組成物(A)の硬化物の層及び活性エネルギー線硬化性の重合性官能基を2個以上有する多官能性化合物(b)を含む組成物である被覆組成物(B)の硬化物の層がこの順に形成された転写フィルムが提案されている。また、実施例には、ポリシラザン(a)を含む組成物である被覆組成物(A)を部分的に硬化させたものの表面に多官能性化合物(b)を含む組成物である被覆組成物(B)を塗付した後に被覆組成物(A)と被覆組成物(B)を硬化させて得られた転写フィルムを、ベースフィルムの表面にアクリル系樹脂からなる接着層を介してポリカーボネート樹脂板に積層した後にベースフィルムを剥離して、被覆組成物(B)の硬化物の層及び被覆組成物(A)の硬化物の層が順にポリカーボネート樹脂板の表面に積層された積層体を得る方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1で得られるシリカ層を表面に有する積層体は耐擦傷性には優れているが、各層間の密着性が充分でないことによりシリカ層からベースフィルムをきれいに剥離できず、シリカ層が樹脂基材に転写されない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−103691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、樹脂基材の表面に、転写法によりクラックの発生が抑制されたシリカ層を高生産性で積層させることが可能で、且つシリカ層と樹脂基材とが良好な密着性を有した透明性及び耐擦傷性に優れる樹脂積層体の製造方法及びその製造方法により得られた樹脂積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の要旨とするところは、透明フィルムの片面に、ポリシラザンを含有するコーティング材の乾燥塗膜を硬化させて得られるシリカ層及び下式(1)で示される化合物が5質量%以上含まれるシランカップリング剤を含有するプライマー組成物の乾燥塗膜を硬化させて得られるプライマー層が順次積層された転写フィルムを作製する転写フィルム作製工程、転写フィルムの表面に形成されたプライマー層と樹脂基材とを硬化膜形成用材料塗膜を介してラミネートして樹脂基材ラミネート物を形成するラミネート工程、樹脂基材ラミネート物に転写フィルムを介して活性エネルギー線を照射して硬化膜形成用材料塗膜を硬化させて硬化膜とする硬化膜形成工程並びに樹脂基材上に積層された硬化膜、プライマー層及びシリカ層を残して透明フィルムを剥離する透明フィルム剥離工程を含む樹脂積層体の製造方法を第1の発明とする。
【0011】
【化1】

(Rは反応性官能基、Rは反応性官能基又は炭素数が1〜20のアルキル基及びRは炭素数が1〜4のアルキル基)
また、本発明の要旨とするところは、上記の樹脂積層体の製造方法において、転写フィルム作製工程が、透明フィルムの片面にポリシラザンを含有するコーティング材の乾燥塗膜を形成し、次いでコーティング材の乾燥塗膜の表面に式(1)で示される化合物が5質量%以上含まれるシランカップリング剤を含有するプライマー組成物の塗膜を形成した後にプライマー組成物の乾燥塗膜を硬化させてプライマー層とすることで得られる積層シートをロール状に巻き取ったロール状物を下記エージング条件で処理してコーティング材の乾燥塗膜をシリカ層とすることにより転写フィルムを作製する工程であることを特徴とする樹脂積層体の製造方法を第2の発明とする。
<エージング条件>
処理温度:40〜100℃
相対湿度:10〜95%
処理時間:6時間〜10日間
更に第1の発明及び第2の発明で得られた樹脂積層体をそれぞれ第3の発明及び第4の発明とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、シリカ層が樹脂基材の表面に積層された積層体を高生産性で製造することができ、且つシリカ層におけるクラック発生が抑制され、シリカ層と樹脂基材との密着性に優れ、透明性及び耐擦傷性に優れた樹脂積層体を得ることができるので、本発明の樹脂積層体はCRT、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、プロジェクションテレビ等の各種ディスプレイの前面板及び携帯電話、携帯ミュージックプレーヤー、モバイルパソコン等の情報端末の情報表示部の前面板等に好適である。更に、シリカ層が防湿性を有することから、太陽電池モジュールの表面保護部材としても好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は連続的に生産される樹脂基材を使用して樹脂積層体を製造する設備の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
透明フィルム
本発明に使用する透明フィルムとしては、透明であれば特に限定されるものではなく、公知のフィルムが挙げられる。
【0015】
本発明においては、活性エネルギー線透過性フィルムが好ましい。
【0016】
透明フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレタレートフィルム(以下、「PETフィルム」という)、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、脂環式ポリオレフィンフィルム、ポリアリレートフィルム及びこれらの複合フィルムが挙げられる。
【0017】
透明フィルムの厚さとしては4μm以上が好ましく、12μm以上がより好ましく、30μm以上が更に好ましい。また、透明フィルムの厚さとしては300μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、120μm以下が更に好ましい。透明フィルムの厚さを上記の範囲とすることによりロール状に巻くことができ、しわや亀裂等のない転写フィルムの製造が容易にできる傾向にある。
【0018】
本発明においては、後述する転写フィルムを樹脂基材上に積層した後に後述するシリカ層に積層された透明フィルムを剥離するので離型性を有するフィルムが好ましい。透明フィルムのシリカ層からの剥離性が不充分の場合には、必要に応じて透明フィルムの表面に離型層を設けることができる。
【0019】
上記の離型層を形成するために使用される離型剤としては公知の離型層を形成する樹脂等が挙げられる。
【0020】
離型層を形成する樹脂等としては、例えば、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、尿素−メラミン系樹脂、セルロ−ス系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂及びパラフィンワックスが挙げられる。
【0021】
透明フィルムの表面に離型層を形成する方法としては、例えば、主成分として上記離型層を形成する樹脂等に必要に応じて界面活性剤を添加したものを有機溶剤又は水に溶解させて得られた塗料をグラビア印刷法、スクリ−ン印刷法、オフセット印刷法等の公知の印刷法で透明フィルム上に塗布した後に乾燥又は硬化させる方法が挙げられる。尚、離型層を形成する樹脂として熱可塑性樹脂を使用した塗料の場合には乾燥処理が施され、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂等の硬化性樹脂を使用した塗料の場合には硬化処理が施される。
【0022】
離型層の厚さは通常0.1〜3μm程度である。離型層が薄すぎる場合、透明フィルムが剥離しにくくなる。逆に、離型層が厚すぎる場合、透明フィルムが剥離し易くなり過ぎて透明フィルムを剥離すべき時期以前にシリカ層から透明フィルムの脱離が起こり、好ましくない。
【0023】
ポリシラザン
本発明で使用されるポリシラザンは後述するシリカ層を形成するための材料であり、下式(2)で示される構造単位を有するオリゴマーである。
【0024】
本発明においては、ポリシラザンとしては、得られるシリカ層の耐擦傷性、ガスバリア性等の点で、式(2)のR〜Rが全て水素原子であるペルヒドロポリシラザンが好ましい。
【0025】
【化2】

(R〜Rはそれぞれ水素原子又は炭素数が1〜10のアルキル基)
【0026】
コーティング材
本発明で使用されるコーティング材としては、例えば、ポリシラザンを溶剤に溶解又は分散させたものが挙げられる。
【0027】
ポリシラザンを溶解又は分散させる溶剤(以下、「コーティング材用溶剤」という)としては、例えば、脂肪族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族エーテル及び脂環式エーテルが挙げられる。
【0028】
コーティング材用溶剤の具体例としては、キシレン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、ジエチルエーテル及びテトラヒドロフランが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併用して使用できる。
【0029】
コーティング材中のポリシラザンの含有量としては、コーティング材の貯蔵安定性及びシリカ層の生産性の点で、0.1〜30質量%が好ましい。
【0030】
本発明においては、コーティング材中には、より低温でポリシラザンを硬化させてシリカ層を形成するために、パラジウム化合物、白金化合物、アルミニウム化合物、アミン化合物等の触媒を添加することができる。
【0031】
また、本発明においては、コーティング材中に必要に応じてシランカップリング剤、レベリング剤、無機微粒子、紫外線吸収剤、消泡剤、帯電防止剤、分散剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0032】
透明フィルムの表面にコーティング材の塗膜を形成する方法としては、例えば、透明フィルムの表面にコーティング材をバーコート法、グラビアコート法、ローラーコート法、フローコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法等の方法により塗付する方法が挙げられる。
【0033】
コーティング材の乾燥塗膜
本発明において、コーティング材の乾燥塗膜は透明フィルムの表面に形成されたコーティング材の塗膜からコーティング材用溶剤を揮発させることにより得られる。
【0034】
コーティング材の塗膜の乾燥温度としては、転写フィルムの生産性及びシリカ層におけるクラック発生の抑制の点で、60〜180℃が好ましく、80〜140℃がより好ましい。また、コーティング材の塗膜の乾燥時間は10秒〜30分が好ましく、30秒〜10分がより好ましい。
【0035】
シリカ層
本発明において、シリカ層はコーティング材の乾燥塗膜を硬化させて得られるものである。
【0036】
シリカ層の膜厚としては、シリカ層の耐擦傷性、ガスバリア性、耐クラック性等の点で、0.05〜5μmが好ましく、0.1〜2μmがより好ましい。
【0037】
コーティング材の乾燥塗膜を硬化させてシリカ層を形成する方法としては、例えば、コーティング材の乾燥塗膜を空気下で加熱することにより硬化させる方法、コーティング材の乾燥塗膜を水蒸気処理する方法、コーティング材の乾燥塗膜をアミン、酸等の触媒を添加した水中で浸漬処理する方法、コーティング材の乾燥塗膜を特開2007−237588号公報等に記載されたプラズマ処理により処理する方法及び以下に示すエージング処理法が挙げられる。本発明においては以下に示すエージング処理法が好ましい。
【0038】
まず、透明フィルムの片面にコーティング材の乾燥塗膜を形成し、次いでコーティング材の乾燥塗膜の表面に後述するシランカップリング剤を含有するプライマー組成物の塗膜を形成し、更に乾燥してプライマー組成物の乾燥塗膜を形成する。この後、プライマー組成物の乾燥塗膜を硬化させてプライマー層を形成することにより得られる積層シートをロール状に巻き取る。得られたロール状物を下記のエージング条件で処理することによりコーティング材の乾燥塗膜を硬化させてシリカ層を形成する。
【0039】
<エージング条件>
処理温度:40〜100℃
相対湿度:10〜95%
処理時間:6時間〜10日間
【0040】
本発明においては、エージング条件が上記の条件を満足する場合、得られるシリカ層のクラックの発生を抑制することができ、且つ本発明で得られる樹脂積層体は耐擦傷性に優れているだけでなく耐吸湿性にも優れているので好ましい。
【0041】
上記のエージング処理法によるシリカ層を形成する場合、コーティング材の乾燥塗膜を得るための乾燥処理は、コーティング材中の溶剤が揮発し、コーティング材の乾燥塗膜の表面がタックフリーになる程度の処理で良いことから、ラインスピードを遅くする必要がなく、好ましい。
【0042】
また、透明フィルムにシリカ層及びプライマー層が積層された後述の積層シートをロール状に巻き取ったロール状物の状態でエージング処理するため、複数のロール状物を同時に処理することが可能であり、シリカ層形成における生産性及びコストの面で好ましい。
【0043】
更に、前記のエージング処理法では、ロール状に巻き取らないエージング処理と比較し、ポリシラザンの硬化反応によって副生したアンモニアがコーティング材の乾燥塗膜の面に滞留し易くなる。その結果、副生したアンモニアがポリシラザンの硬化触媒として作用し、シリカへの硬化反応がより促進される点でも有利である。
【0044】
シランカップリング剤
本発明においては、後述するプライマー組成物中に、下式(1)で示される化合物を5質量%以上含むシランカップリング剤が含有されている。
【0045】
【化1】

(Rは反応性官能基、Rは反応性官能基又は炭素数が1〜20のアルキル基及びRは炭素数が1〜4のアルキル基)
【0046】
本発明においては、上記の反応性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、アミノ基及びメルカプト基が挙げられる。
【0047】
式(1)で示されるシランカップリング剤としては、例えば、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及び3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。
【0048】
本発明においては、シランカップリング剤中に、必要に応じて式(1)以外のその他のシランカップリング剤を含有することができる。
【0049】
その他のシランカップリング剤としては、例えば、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロイルオキシ基含有シラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有シラン;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シラン;p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基含有シラン;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基含有シラン;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シラン;及びこれらシランカップリング剤のオリゴマーが挙げられる。これらの中で、シリカ層と後述する硬化膜との密着性の点での点で、(メタ)アクリロイルオキシ基含有シラン、ビニル基含有シラン及びスチリル基含有シランが好ましい。
【0050】
シランカップリング剤は単独で又は2種以上を併用して使用できる。
【0051】
尚、本発明において、「(メタ)アクリ」は「アクリ」又は「メタクリ」を示す。
【0052】
プライマー組成物
本発明においては、プライマー組成物は後述する転写フィルムのプライマー層を形成するための材料である。
【0053】
プライマー組成物はシランカップリング剤を含有するものである。
【0054】
プライマー組成物中のシランカップリング剤の添加量としては、プライマー組成物の貯蔵安定性及び転写フィルムの生産性の点で、0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましい。
【0055】
本発明においては、シランカップリング剤の加水分解・縮合反応に伴うシリカ層との結合によるシリカ層とプライマー層との密着性向上の点で、プライマー組成物中に水を含有させることが好ましい。
【0056】
水の含有量としては、シランカップリング剤1モルに対して0.1〜50モルが好ましい。水の含有量が0.1モル以上で、シランカップリング剤の加水分解・縮合反応が十分に進行して、シリカ層とプライマー層との密着性が良好である傾向にある。また、水の含有量が50モル以下でプライマー組成物の貯蔵安定性が良好である傾向にある。
【0057】
本発明においては、プライマー組成物の貯蔵安定性及びコーティング材の塗膜又はコーティング材の乾燥塗膜の表面にプライマー組成物を塗布する際のはじき防止の点で、プライマー組成物中に溶剤を含有させることが好ましい。
【0058】
プライマー組成物中に含有させる溶剤(以下、「プライマー用溶剤」という)としては、例えば、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤及びエーテル系溶剤が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併用して使用できる。
【0059】
プライマー用溶剤としては、メタノールや2−プロパノールのような揮発性の高い溶剤を用いる場合は、溶剤乾燥時の塗膜白化を防止するためにプロピレングリコールモノメチルエーテルやエチレングリコールモノブチルエーテルのような高沸点溶剤と併用することが好ましい。
【0060】
本発明においては、プライマー組成物中に、必要に応じてシランカップリング剤の加水分解・縮合反応を促進させるために触媒(以下、「プライマー用触媒」という)を添加することができる。
【0061】
プライマー用触媒としては、例えば、酸、塩基、金属錯体及び金属塩が挙げられる。
【0062】
酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸及び蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、安息香酸等の有機酸が挙げられる。
【0063】
塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等の無機塩基及びトリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリベンジルアミン、エチレンジアミン、トリメチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機塩基が挙げられる。
【0064】
コーティング材の塗膜又はコーティング材の乾燥塗膜の表面にプライマー組成物の塗膜を形成する方法としては、透明フィルムの表面にコーティング材の塗膜を形成する方法と同様の方法が挙げられる。
【0065】
プライマー組成物の乾燥塗膜及びプライマー層
本発明において、プライマー組成物の乾燥塗膜はコーティング材の塗膜又はコーティング材の乾燥塗膜の表面に形成されたプライマー組成物の塗膜からプライマー用溶剤を揮発することにより得られる。また、プライマー組成物の乾燥塗膜を硬化することによりプライマー層が得られる。
【0066】
プライマー組成物の乾燥塗膜の形成及びプライマー層の形成は別々でも同時でもよいが、プライマー組成物の塗膜の乾燥を行なう際に同時に硬化処理を実施する方法が効率的であり、好ましい。また、透明フィルムの片面にポリシラザンを含有するコーティング材の乾燥塗膜を形成し、次いでコーティング材の乾燥塗膜の表面にシランカップリング剤を含有するプライマー組成物の塗膜を形成した後にプライマー組成物の乾燥塗膜を硬化させてプライマー層を形成して得られる積層シートをロール状に巻き取ったロール状物を前述のエージング処理によりコーティング材の乾燥塗膜をシリカ層とする場合には、得られるシリカ層にプライマー層形成のための熱負荷がないことからシリカ層におけるクラック発生が抑制されるので好ましい。尚、目的に応じてプライマー層の形成のための硬化処理をシリカ層を形成するための硬化処理の際に同時に実施することができる。
【0067】
プライマー組成物の塗膜の乾燥及びプライマー層の形成のための硬化の処理温度としては室温〜160℃が好ましく、80〜140℃であることがより好ましい。
【0068】
プライマー層の膜厚としては、シリカ層と後述する硬化膜との密着性及び樹脂積層体の製造コストの点で、0.01〜10μmが好ましく、0.1〜2μmがより好ましい。
【0069】
転写フィルム
本発明においては、転写フィルムは透明フィルムの片面に、ポリシラザンを含有するコーティング材の乾燥塗膜を硬化させて得られるシリカ層及びシランカップリング剤を含有するプライマー組成物の乾燥塗膜を硬化させて得られるプライマー層が順次積層されたものである。
【0070】
転写フィルム作製工程
本発明においては、転写フィルム作製工程としては、例えば、透明フィルムの片面にポリシラザンを含有するコーティング材の乾燥塗膜を硬化させてシリカ層を形成させ、次いで、シリカ層の表面にシランカップリング剤を含有するプライマー組成物の乾燥塗膜を硬化させてプライマー層を形成して転写フィルムを作製する工程、並びに透明フィルムの片面にポリシラザンを含有するコーティング材の乾燥塗膜を形成し、次いでコーティング材の乾燥塗膜の表面にシランカップリング剤を含有するプライマー組成物の塗膜を形成した後にプライマー組成物の乾燥塗膜を硬化させてプライマー層とすることで得られる積層シートをロール状に巻き取ったロール状物をエージング処理してコーティング材の乾燥塗膜をシリカ層とすることにより転写フィルムを作製する工程が挙げられる。これらの中で、シリカ層におけるクラック発生の抑制の点で後者の工程が好ましい。
【0071】
樹脂基材
本発明においては、樹脂基材はシリカ層を表面に有する樹脂積層体を得るための基材である。
【0072】
樹脂基材としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、メタクリル酸メチル単位を主構成成分とする共重合体及びスチレン−メチルメタクリレート共重合体等のシート状物及び成形物が挙げられる。
【0073】
樹脂基材がシート状物の場合、シート状物の厚みとしては、シート状物の機械的強度の点で0.2mm以上が好ましく、シート状物の生産性の点で10mm以下が好ましい。
【0074】
本発明においては、樹脂基材中に必要に応じて着色剤、光拡散剤等の添加剤を含有することができる。
【0075】
本発明においては、樹脂基材がシート状物である場合、シート状物の製造方法としては、例えば、セルキャスト法、溶融押出法、溶液流延法及びカレンダー法が挙げられる。
【0076】
また、シート状物の製造方式としてはバッチ式又は連続方式のいずれでもよい。
【0077】
樹脂基材として連続的に製造されるシート状物を使用して本発明における樹脂積層体を製造することができる。
【0078】
連続的に製造されるシート状物を使用して本発明における樹脂積層体を製造する方法としては、例えば、図1に示すように、ラミネート工程の前に樹脂基材を連続的に製造する樹脂基材連続製造工程を有する製造方法が挙げられる。
【0079】
硬化膜形成用材料塗膜
本発明において、硬化膜形成用材料塗膜は樹脂基材表面に転写フィルムを積層する際に、樹脂基材と転写フィルムのプライマー層との間に形成されるものである。
【0080】
硬化膜形成用材料塗膜の形成に使用される硬化膜形成用材料(以下、「本硬化膜形成用材料」という)は電子線、放射線、紫外線等の活性エネルギー線硬化性を有する。
【0081】
本硬化膜形成用材料は単独の活性エネルギー線で硬化するもの又は複数の種類の活性エネルギー線で硬化するものを併用したもののいずれでもよい。本硬化膜形成用材料としては、後述する硬化膜の生産性及び物性の点で、紫外線硬化性材料が好ましい。
【0082】
本硬化膜形成用材料としては、例えば、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物及び光開始剤を含有する紫外線硬化性組成物が挙げられる。
【0083】
分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物としては、例えば、1モルの多価アルコールと2モル以上の(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物及び多価カルボン酸又はその無水物と多価アルコールと(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物が挙げられる。
【0084】
1モルの多価アルコールと2モル以上の(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物の具体例としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルキルジオールジ(メタ)アクリレート;及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等の3官能以上のポリオールポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0085】
多価カルボン酸又はその無水物と多価アルコールと(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物の組合せ(多価カルボン酸又はその無水物/多価アルコール/(メタ)アクリル酸)としては、例えば、マロン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、フマル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸及び無水マレイン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸が挙げられる。
【0086】
分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物のその他の例としては、トリメチロールプロパントルイレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネートの3量化により得られるポリイソシアネート1モルに対して、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、1,2,3−プロパントリオール−1,3−ジ(メタ)アクリレート、3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の活性水素を有するアクリル系モノマー3モル以上を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート又はトリ(メタ)アクリレート等のポリ[(メタ)アクリロイルオキシエチレン]イソシアヌレート;エポキシポリ(メタ)アクリレート;及びウレタンポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0087】
分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は単独で又は2種以上を併用して使用できる。
【0088】
光開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド等のリン化合物が挙げられる。
【0089】
光開始剤の添加量としては、紫外線硬化性組成物の硬化性の点で紫外線硬化性組成物100質量部に対して0.1質量部以上が好ましい。また、光開始剤の添加量としては、得られる硬化膜の良好な色調を維持する点で紫外線硬化性組成物100質量部に対して10質量部以下が好ましい。
【0090】
光開始剤は単独で又は2種以上を併用して使用できる。
【0091】
本発明においては、必要に応じて紫外線硬化性組成物中に前述のシランカップリング剤、リン酸基又はリン酸エステル基を有する(メタ)アクリレート等の密着促進剤を添加することができる。
【0092】
シランカップリング剤の添加量としては、シリカ層と硬化膜との密着性及び紫外線硬化性組成物の硬化性の点で紫外線硬化性組成物100質量部に対して0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。
【0093】
リン酸基又はリン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、大八化学工業(株)製のMR−200、日本化薬(株)製の各種KAYAMER商品、ユニケミカル(株)製の各種Phosmer商品が挙げられる。
【0094】
リン酸基又はリン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートの添加量としては、シリカ層と硬化膜との密着性及び硬化膜の硬度の点で紫外線硬化性組成物100質量部に対して0.1〜30質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましい。
【0095】
本発明においては、本硬化膜形成用材料には、必要に応じて、スリップ性向上剤、レベリング剤、無機微粒子、紫外線吸収剤、HALS等の光安定剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0096】
各種添加剤の配合量としては、本発明で得られる樹脂積層体の透明性の点で、本硬化膜形成用材料中に10質量%以下が好ましい。
【0097】
樹脂基材ラミネート物
本発明において、樹脂基材ラミネート物は、樹脂基材の少なくとも片表面に、硬化膜形成用材料塗膜を介して、転写フィルムのプライマー層側が硬化膜形成用材料塗膜と接するように積層されたものである。
【0098】
ラミネート工程
本発明において、ラミネート工程は樹脂基材の少なくとも片表面に、硬化膜形成用材料塗膜を介して転写フィルムを、転写フィルムのプライマー層側が硬化膜形成用材料塗膜と接するように積層する工程である。
【0099】
本発明において、硬化膜形成用材料塗膜を形成する場所としては樹脂基材の表面又は転写フィルムのプライマー層の表面のいずれの面でもよい。
【0100】
硬化膜形成用材料塗膜の形成方法としてはコーティング材の塗膜を形成する方法と同様の方法が挙げられる。
【0101】
樹脂基材と転写フィルムを硬化膜形成用材料塗膜を介してラミネートする方法としては、例えば、樹脂基材と転写フィルムとを、樹脂基材と転写フィルムとの間に本硬化膜形成用材料を塗付した状態で、ゴムロールで圧着させる方法が挙げられる。尚、この場合、樹脂基材と転写フィルムとを、樹脂基材と転写フィルムとの間に過剰量の本硬化膜形成用材料を塗布した状態で、ゴムロールで過剰の本硬化膜形成用材料をしごき出しながら気泡を含まないように圧着させることが好ましい。
【0102】
上記のゴムロールで圧着する際の樹脂基材の表面温度としては40〜100℃が好ましい。この範囲の圧着温度とすることにより、プライマー層と樹脂基材との密着性が良好で、樹脂基材の硬度低下もなく、硬化膜形成用材料塗膜の黄変も少ない傾向にある。
【0103】
樹脂基材の表面温度は熱源の設定温度、加熱時間等により調整することができる。
【0104】
樹脂基材の表面温度の測定方法としては、例えば、非接触型表面温度計による測定方法が挙げられる。
【0105】
硬化膜
本発明において、硬化膜は硬化膜形成用材料塗膜を活性エネルギー線の照射により硬化させたものであり、本発明で得られる樹脂積層体の表面の耐擦傷性を向上させることを目的としている。
【0106】
硬化膜の厚みとしては0.5〜40μmが好ましく、3〜30μmがより好ましい。上記範囲の厚みとすることにより樹脂積層体の表面に十分な表面硬度を付与することができ、硬化膜による樹脂積層体の反りを抑制することができる傾向にある。
【0107】
硬化膜形成工程
本発明において、硬化膜形成工程は樹脂基材ラミネート物中の硬化膜形成用材料塗膜を活性エネルギー線の照射により硬化させて硬化膜とするための工程である。
【0108】
活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線及び放射線が挙げられる。
【0109】
活性エネルギー線として紫外線を使用する場合には、紫外線ランプを使用することができる。
【0110】
紫外線ランプとしては、例えば、高圧水銀灯、メタルハライドランプ及び蛍光紫外線ランプが挙げられる。
【0111】
活性エネルギー線の照射条件としては、硬化膜の耐擦傷性やプライマー層と樹脂基材との密着性の点で、積算光量で300mJ/cm以上となるように光源の種類、光源とフィルム面との距離、照射時間等を選択することが好ましい。
【0112】
活性エネルギー線の照射による硬化方法としては、1段階で活性エネルギー線を照射して硬化させる方法及び多段階で活性エネルギー線を照射して硬化させる方法のいずれの方法でもよい。
【0113】
1段階で活性エネルギー線を照射して硬化させる方法としては、例えば、硬化膜形成用材料塗膜に転写フィルムを介して1段階で活性エネルギー線を照射する方法が挙げられる。
【0114】
多段階で活性エネルギー線を照射して硬化させる方法としては、例えば、硬化膜形成用材料塗膜に転写フィルムを介して1段目の硬化を行い、次いで後述する透明フィルム剥離工程で透明フィルムを剥離した後に再度シリカ層を介して活性エネルギー線を照射することを含む多段階での硬化方法が挙げられる。
【0115】
透明フィルム剥離工程
本発明において、透明フィルム剥離工程は上述の硬化膜形成工程で得られた、樹脂基材の表面に硬化膜、プライマー層、シリカ層及び透明フィルムが順に積層された積層体から透明フィルムのみを剥離して樹脂積層体を得る工程である。
【0116】
樹脂積層体
本発明で得られる樹脂積層体は、樹脂基材の片面又は両面に硬化膜、プライマー層及びシリカ層が順に積層された積層体である。
【0117】
本発明においては、樹脂積層体として樹脂基材の両面に硬化膜、プライマー層及びシリカ層を順に積層したものを使用することにより、得られる樹脂積層体の耐吸湿性を向上させることができる傾向にあり、好ましい。
【0118】
本発明による樹脂積層体を製造するための装置の一例を図1により説明する。
【0119】
透明フィルムの片面にシリカ層及びプライマー層が順次積層された転写フィルム(1)に硬化膜形成用材料塗膜(3)が積層された積層体が、連続的に製造されて搬送されてくる樹脂基材(2)の表面に、プライマー層が樹脂基材と接するようにプレスロール(4)を用いて積層される。
【0120】
転写フィルム(1)及び硬化膜形成用材料塗膜(3)が樹脂基材(2)の表面に積層された樹脂基材ラミネート物は活性エネルギー線照射装置(5)の下部を通過する。このとき樹脂基材ラミネート物に活性エネルギー線が照射され、樹脂基材ラミネート物中の硬化膜形成用材料塗膜(3)が硬化して硬化膜となる。この後、得られた積層体の表面から透明フィルム(6)が剥離されて樹脂基材(2)の表面に硬化膜(7)とプライマー層とシリカ層のラミネート層(8)が順次積層された樹脂積層体が得られる。
【0121】
本発明の製造方法で得られた樹脂積層体は、CRT、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、もしくは電子ペーパー等の画像表示装置の前面板として好適に使用できる。さらに、太陽電池モジュールの表面保護樹脂板としても使用できる。この場合における太陽電池モジュールの構造は特に限定されないが、例えば、光入射面から、表面保護樹脂板、充填材、光起電力素子、充填材、裏面保護シートの順に積層された公知の構成とすることが出来る。
【実施例】
【0122】
以下、実施例により本発明を説明する。尚、実施例及び比較例で使用した化合物の略称は以下の通りである。また、以下において、「部」は「質量部」を示す。
「TAS」:コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸(モル比1:2:4)の縮合混合物(大阪有機化学工業(株)製)
「C6DA」:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、製品名;ビスコート♯230)
「M305」:ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亞合成(株)製、製品名;アロニックスM305)
「M309」:トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成(株)製、製品名;アロニックスM309)
「M400」:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成(株)製、製品名;アロニックスM400)
「DAROCUR TPO」:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン(株)製、製品名)
「NL110A−20」:アクアミカNL110A−20(ペルヒドロポリシラザンの20質量%溶液)(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製、製品名)
「KBM503」:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、製品名)
「KBM502」:3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業(株)製、製品名)
「KBE502」:3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業(株)製、製品名)
「アートレジンSUX−1」:ウレタン系マクロモノマー(根上工業(株)製、製品名)「イルガキュア184」:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(チバ・ジャパン(株)製、製品名)
「ダイヤナールBR−80」:アクリル樹脂ビーズ(三菱レイヨン(株)製、製品名)
「アクリライトLX001」:アクリル樹脂板(三菱レイヨン(株)製、製品名)
本発明においては、実施例及び比較例における評価は以下の方法に基づいて行った。
【0123】
(1)樹脂基材の温度
樹脂基材の温度を非接触型表面温度計((株)チノー製ハンディ型放射温度計IR−TA(商品名))で測定した。
【0124】
(2)転写性
樹脂基材表面に転写フィルムを積層した後に透明フィルムを剥離して樹脂積層体を得る際のシリカ層の樹脂基材側への転写性の評価を下記基準で実施した。
○:シリカ層が樹脂基材側に転写する。
×:シリカ層が樹脂基材側に転写しない。
【0125】
(3)全光線透過率及びヘーズ
日本電色工業(株)製HAZE METER NDH2000(商品名)を用いてJIS K7361−1に示される測定法に準拠して全光線透過率を測定し、JIS K7136に示される測定法に準拠してヘーズを測定した。
【0126】
(4)耐擦傷性
擦傷試験の前後における樹脂積層体の表面の、ヘーズの変化(Δヘーズ)により下記基準で樹脂積層体の耐擦傷性を評価した。尚、擦傷試験の前後におけるヘーズは以下の方法により測定した。
【0127】
#000のスチールウールを装着した直径25.4mmの円形パッドを樹脂積層体の表面に置き、1kgの荷重下で20mmの距離を100回往復擦傷し、擦傷前と擦傷後のヘーズの差を下式より求めた。
[Δヘーズ(%)]=[擦傷後ヘーズ(%)]−[擦傷前ヘーズ(%)]
◎:Δヘーズ≦0.3%
○:0.3%<Δヘーズ≦3%
×:3%<Δヘーズ
【0128】
(5)シリカ層のクラック
樹脂積層体の表面を目視及び透過型微分干渉顕微鏡((株)ニコン製、商品名:OPTIPHOT−POL)を用いて観察し、クラック発生の有無を確認した。
【0129】
(6)密着性
樹脂積層体の表面の、シリカ層の密着性をクロスカット試験(JIS K5600)により評価した。4箇所のシリカ層表面において、100マス(1mm間隔)の碁盤の目剥離試験を実施し、各100マスの内、剥離せずに残ったマス数の平均値を表示した。
【0130】
(7)耐吸湿性
長さ100mm及び幅100mmの樹脂積層体を、30℃で1週間真空乾燥し、樹脂積層体の吸水率を0%とした。次いで、試験片を60℃で95%相対湿度の条件下に2時間保持し、保持前後における試験片の質量変化を測定して、2時間後の吸水率を算出した。次いで、樹脂積層体の耐吸湿性を下式で求めた値により下記基準で評価した。
【0131】
[耐吸湿性]=[樹脂積層体の2時間後の吸水率]/[樹脂基材のみの2時間後の吸水率]
○:耐吸湿性≦0.4
△:0.4<耐吸湿性≦0.7
×:0.7<耐吸湿性≦1
【0132】
(8)膜厚
シリカ層及び硬化膜の膜厚測定は、樹脂積層体をミクロトームで切り出した厚み100nmの試験片を透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製JEM−1010(製品名))で観察することにより測定した。
【0133】
プライマー層の膜厚は、プライマー組成物の塗膜の厚みとプライマー組成物の固形分から算出した。
【0134】
[製造例1]プライマー組成物(A1’)の調整
プロピレングリコールモノメチルエーテル45部、2−プロパノール45部及びKBM502を5部混合した混合液中に0.02N塩酸水溶液を5部滴下した後に、混合物を50℃で3時間攪拌してプライマー組成物(A1’)を調整した。プライマー組成物(A1’)の組成を表1に示す。
[製造例2〜9]プライマー組成物(A2’)〜(A9’)の調整
混合物の組成を表1に示す組成とする以外は製造例1と同様にしてプライマー組成物(A2’)〜(A9’)を調整した。
【0135】
【表1】

【0136】
[実施例1]
片面に易接着層を有する厚み100μmのPETフィルム(東洋紡績(株)製、商品名:A4100)のPET面に、NL110A−20をキシレンで希釈したポリシラザンを含有するコーティング材(B1’)を、10号バーコーターを用いて塗布し、120℃で5分間乾燥処理してコーティング材(B1’)の乾燥塗膜を形成した。
【0137】
得られたコーティング材(B1’)の乾燥塗膜の表面に4号バーコーターを用いて前記のプライマー組成物(A1’)を塗布し、120℃で5分間の乾燥及び硬化によりプライマー層(A1)を形成し、積層シートを得た。
【0138】
次いで、得られた積層シートを、プライマー層(A1)の面が内側になるようにして直径6インチの紙管にロール状に巻き取り、ロール状物を得た。このロール状物を60℃で20%相対湿度、3日間のエージング条件でエージングしてロール状物中のコーティング材(B1’)の乾燥塗膜を硬化させてシリカ層(B1)とし、転写フィルムを得た。
【0139】
60℃に加温した、板厚1mmのアクリライトLX001上に、TASを35部、C6DAを30部、M305を10部、M400を25部及びDAROCURTPOを2部含有する硬化膜形成用材料(C1’’)を塗布し、硬化膜形成用材料塗膜(C1’)を形成した。次いで、硬化膜形成用材料塗膜(C1’)の上に、上述の転写フィルムを、プライマー層(A1)と硬化膜形成用材料塗膜(C1’)とが接するように重ね合わせ、JIS硬度40°のゴムロールを用いて過剰な硬化膜形成用材料(C1’’)をしごき出しながら、気泡を含まないように圧着させて樹脂基材ラミネート物を得た。
【0140】
次いで、樹脂基材ラミネート物を、60℃で60秒間加温した後、PETフィルムを介して出力9.6kWのメタルハライドランプの下20cmの位置を2.5m/分の速度で通過させて、硬化膜形成用材料塗膜(C1’)を硬化させて硬化膜(C1)を形成し、積層物を得た。
【0141】
得られた積層物から転写フィルムのPETフィルムを剥離したところ、シリカ層(B1)は樹脂基材に転写されており、シリカ層(B1)が表層に形成された樹脂積層体を得た。得られた樹脂積層体のシリカ層(B1)の膜厚は0.8μmで、硬化膜の膜厚は13μmであった。得られた樹脂積層体の評価結果を表2に示す。
【0142】
【表2】

【0143】
[実施例2]
樹脂基材の両面にシリカ層(B1)を形成させる以外は実施例1と同様にして樹脂積層体を得た。得られた樹脂積層体の評価結果を表2に示す。
【0144】
[実施例3]
シリカ層(B1)の膜厚を0.5μmとする以外は実施例2と同様にして樹脂積層体を得た。得られた樹脂積層体の評価結果を表2に示す。
【0145】
[実施例4]
樹脂基材を板厚1mmのPC板(帝人化成(株)製、製品名:パンライトPC−1151)に変更する以外は実施例2と同様にして樹脂積層体を得た。得られた樹脂積層体の評価結果を表2に示す。
【0146】
[実施例5〜11]
プライマー組成物(A1’)の代わりにプライマー組成物(A2’)〜(A9’)を使用する以外は実施例2と同様にして樹脂積層体を得た。得られた樹脂積層体の評価結果を表2に示す。
【0147】
[実施例12]
シリカ層(B1)を形成させるためのエージング時における転写フィルムの形状としてロール状の代わりに平坦なシート状の状態とする以外は実施例2と同様にして樹脂積層体を得た。得られた樹脂積層体の評価結果を表3に示す。
【0148】
【表3】

【0149】
[実施例13]
23℃で50%相対湿度のエージング条件とする以外は実施例2と同様にして樹脂積層体を得た。得られた樹脂積層体の評価結果を表3に示す。
【0150】
[実施例14〜19]
エージング条件として表3に示す処理温度、処理時間及び相対湿度でエージングする以外は実施例5と同様にして樹脂積層体を得た。得られた樹脂積層体の評価結果を表3に示す。
【0151】
[実施例20及び21]
硬化膜(C1)の厚みを表3に示す厚みとした。それ以外は実施例5と同様にして樹脂積層体を得た。得られた樹脂積層体の評価結果を表3に示す。
【0152】
[比較例1]
実施例1に用いたアクリル樹脂板について実施例1と同様の評価を実施した。得られた結果を表4に示す。積層体ではないので、耐擦傷性が良くなかった。
【0153】
【表4】

【0154】
[比較例2]
実施例1で使用したものと同様のPETフィルムA4100のPET面に、NL110A−20をキシレンで希釈したポリシラザンを含有するコーティング材(B1’)を10号バーコーターを用いて塗布し、120℃で5分間乾燥させてコーティング材(B1’)の乾燥塗膜を形成した。
【0155】
次いで、得られた透明フィルムの表面にコーティング材(B1’)の乾燥塗膜が積層されたシートをコーティング材(B1’)の乾燥塗膜が内側になるようにして直径6インチの紙管にロール状に巻き取り、ロール状物を得た。このロール状物を60℃で20%相対湿度のエージング条件で3日間エージングしてロール状物中のコーティング材(B1’)の乾燥塗膜を硬化させてシリカ層(B1)とし、転写フィルムを作製した。
【0156】
60℃に加温した板厚1mmのアクリライトLX001上に、TASを35部、C6DAを30部、M305を10部、M400を25部及びDAROCURTPOを2部含有する硬化膜形成用材料(C1’’)を塗布し、硬化膜形成用材料塗膜(C1’)を形成した。次いで、硬化膜形成用材料塗膜(C1’)の上に、上述の転写フィルムを、シリカ層(B1)と硬化膜形成用材料塗膜(C1’)とが接するように重ね合わせ、JIS硬度40°のゴムロールを用いて過剰な硬化膜形成用材料(C1’’)をしごき出しながら、気泡を含まないように圧着させて樹脂基材ラミネート物を得た。
【0157】
次いで、樹脂基材ラミネート物を、60℃で60秒間加温した後、PETフィルムを介して出力9.6kWのメタルハライドランプの、下20cmの位置を2.5m/分の速度で通過させて、硬化膜形成用材料塗膜(C1’)を硬化させて硬化膜(C1)を形成し、積層物を得た。
【0158】
更に、上記の積層物の、アクリライトLX001の残りの面にも、前述と同様にして硬化膜(C1)を形成した。得られた両面積層物の両面の、転写フィルムのPETフィルムを剥離したところ、シリカ層(B1)は樹脂基材に転写されず、シリカ層(B1)はPETフィルムに残ったままで樹脂積層体を得ることはできなかった。
[比較例3]
プライマー組成物(A1’)の代わりにプライマー組成物(A5’)を使用する以外は実施例2と同様にして樹脂積層体を得た。得られた樹脂積層体の評価結果を表4に示す。
【0159】
表2及び3の評価結果から明らかなように、本発明の製造方法で得られた樹脂積層体はシリカ層と樹脂基材とが良好な密着性を有し、透明性及び耐擦傷性に優れていることがわかる。
【0160】
また、本発明においては、シリカ層を形成させるためのプライマー層のエージング条件を特定の条件下で実施することにより耐湿性が良好となることがわかる。
【0161】
これに対し、表4の評価結果から明らかなように、比較例2では、本発明で使用するプライマー層を形成させない場合には樹脂基材表面にシリカ層を転写させることができず、樹脂積層体を得ることができなかった。
【0162】
また、比較例3では、プライマー層として本発明におけるシランカップリング剤が含まれていないものを使用したところ、樹脂積層体表面のシリカ層の密着性が十分ではなかった。
【符号の説明】
【0163】
(1):転写フィルム
(2):樹脂基材
(3):硬化膜形成用材料塗膜
(4):プレスロール
(5):活性エネルギー線照射装置
(6):透明フィルム
(7):硬化膜
(8):プライマー層とシリカ層のラミネート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明フィルムの片面に、ポリシラザンを含有するコーティング材の乾燥塗膜を硬化させて得られるシリカ層及び下式(1)で示される化合物が5質量%以上含まれるシランカップリング剤を含有するプライマー組成物の乾燥塗膜を硬化させて得られるプライマー層が順次積層された転写フィルムを作製する転写フィルム作製工程、転写フィルムの表面に形成されたプライマー層と樹脂基材とを硬化膜形成用材料塗膜を介してラミネートして樹脂基材ラミネート物を形成するラミネート工程、樹脂基材ラミネート物に転写フィルムを介して活性エネルギー線を照射して硬化膜形成用材料塗膜を硬化させて硬化膜とする硬化膜形成工程並びに樹脂基材上に積層された硬化膜、プライマー層及びシリカ層を残して透明フィルムを剥離する透明フィルム剥離工程を含む樹脂積層体の製造方法。
【化1】

(Rは反応性官能基、Rは反応性官能基又は炭素数が1〜20のアルキル基及びRは炭素数が1〜4のアルキル基)
【請求項2】
樹脂基材ラミネート物が、樹脂基材の両面に転写フィルムを、プライマー層の面と樹脂基材とが向き合うように、硬化膜形成用材料塗膜を介してラミネートしたものである請求項1に記載の樹脂積層体の製造方法。
【請求項3】
ラミネート工程の前に樹脂基材を連続的に製造する樹脂基材連続製造工程を有する請求項1又は2のいずれかに記載の樹脂積層体の製造方法。
【請求項4】
ポリシラザンがペルヒドロポリシラザンである請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂積層体の製造方法。
【請求項5】
転写フィルム作製工程が、透明フィルムの片面にポリシラザンを含有するコーティング材の乾燥塗膜を形成し、次いでコーティング材の乾燥塗膜の表面に式(1)で示される化合物が5質量%以上含まれるシランカップリング剤を含有するプライマー組成物の塗膜を形成した後にプライマー組成物の乾燥塗膜を硬化させてプライマー層とすることで得られる積層シートをロール状に巻き取ったロール状物を下記エージング条件で処理してコーティング材の乾燥塗膜をシリカ層とすることにより転写フィルムを作製する工程である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂積層体の製造方法。
<エージング条件>
処理温度:40〜100℃
相対湿度:10〜95%
処理時間:6時間〜10日間
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法によって製造された樹脂積層体。

【図1】
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【公開番号】特開2011−116095(P2011−116095A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298340(P2009−298340)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】