樹脂積層板
【課題】軽量化、薄肉化を確保しつつ、更なる剛性向上が実現できる樹脂積層板を提供する。
【解決手段】中空部を隔てて重ねた表面側シート120Aと裏面側シート120Bを備え、裏面側シート120Bを中空部内に凹ませて複数の第1・第2凹部200S、200Lを設け、これら複数の第1・第2凹部200S、200Lの底を表面側シート120Aに溶着することで、表面側シート120Aと裏面側シート120Bの間を複数のリブで連結してなる樹脂積層板100であって、深さが小さい複数の第1凹部200Sを有する薄板部100aと、深さが大きい複数の第2凹部200Lを有する厚板部100bとで構成し、且つ、複数の第1・第2凹部200S、200Lを略同一のピッチで配置した。
【解決手段】中空部を隔てて重ねた表面側シート120Aと裏面側シート120Bを備え、裏面側シート120Bを中空部内に凹ませて複数の第1・第2凹部200S、200Lを設け、これら複数の第1・第2凹部200S、200Lの底を表面側シート120Aに溶着することで、表面側シート120Aと裏面側シート120Bの間を複数のリブで連結してなる樹脂積層板100であって、深さが小さい複数の第1凹部200Sを有する薄板部100aと、深さが大きい複数の第2凹部200Lを有する厚板部100bとで構成し、且つ、複数の第1・第2凹部200S、200Lを略同一のピッチで配置した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂積層板に関し、より詳細には、軽量化、薄肉化を確保しつつ、更なる剛性向上が実現できる樹脂積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の内装材や建材、物流・包装材として、いわゆる樹脂積層板が採用されている。樹脂積層板は、樹脂製の表面材と樹脂製の裏面材とを有し、裏面材には先端部が表面材の内面に突き合わされる凹部が設けられる。特に、外観が重視される自動車の内装材や建材の場合には、表面材の表側には不織布が貼着される。この樹脂積層板の製造方法には、従来から種々の方法が採用されている。第1に、溶融樹脂を用いて一体押出中空成形により製造する技術が採用されている。このような方法により製造された樹脂積層板によれば、単に内部に中空部を有するだけの二重壁中空構造に比べ、表面材と裏面材とを連結する凹部により、剛性、特に面材に対して鉛直方向の荷重に対する圧縮剛性を確保することが可能である。
【0003】
第2に、特許文献1に開示されているように、一方が表面に多数の突起部が千鳥模様状に配置されたロールである一対のロールの間に、個別に押出された2枚の溶融状態のシートを所定押圧力のもとで通して、一方のシートに凹部を形成すると共に、凹部の底面を他方のシートの内面に突き合わせる形態で2枚のシートを溶着し、さらに一方のシートの凹部の開口が形成された側の面に別のシートを溶着させる技術であり、凹部を形成したシートの表側及び裏側それぞれに対してシートを溶着させる3層構造をなす。
【0004】
第3に、特許文献2に開示されているように、第2の方法と異なり、それぞれ表面に多数の突起部が千鳥模様状に配置されたロールである一対のロールの間に、個別に押出された2枚の溶融状態のシートを所定押圧力のもとで通して、それぞれのシートに凹部を形成すると共に、それぞれのシートの対応する凹部の底面同士を溶着する形態で2枚のシートを溶着し、さらにそれぞれシートの反対側の面に別のシートを溶着させる技術であり、シートそれぞれの凹部の開口が形成された側の面に対してシートを溶着させる4層構造をなす。以上のような溶融状態のシートを押出して樹脂積層板を製造する技術には、以下のような技術的問題点が存する。
【0005】
すなわち、製造効率を確保しつつ、方向性のない十分な強度を有する樹脂積層板を得ることが困難な点である。より詳細には、第1の方法ないし第3の方法に共通の押し出し成形特有の問題として、シートの押出し方向の端部は開放状態となることから、熱シール処理等の端面処理が必須となるため、その分余分な工程が必要となり、全体の製造効率が低下する。さらに、千鳥状に凹部が形成されるシートと別のシートとの溶着、または、それぞれ千鳥状に凹部が形成されるシート同士の溶着はそれぞれ、一対のローラーの間をローラーにより送り出されながら通過する際の押圧力により行われるに過ぎず、十分な溶着時間を確保することが難しく、それによる溶着不足が原因で樹脂積層板として十分な強度を確保することが困難となり、品質劣化を引き起こす。この点、連続的な押出成形ではなく、ブロー成形によれば、上記のような端面処理に伴う製造効率の低下、及び溶着不足に伴う強度不足を回避することが可能である。特許文献3は、このようなブロー成形による方法を開示する。特許文献3によれば、溶融状態の筒状のパリソンを用いて、裏面壁には先端部が表面壁の内面に突合せ溶着される凹部を設けると共に、表面壁の外表面には、表装材を貼着する点が開示されている。しかしながら、このように筒状のパリソンを用い吹き込み圧をかけて成形するブロー成形によれば、別の技術的問題点が引き起こされる。すなわち、周方向に肉厚の均一な筒状のパリソンを用い吹き込み圧をかけて成形することに起因して、樹脂積層板の十分な軽量化、薄肉化が困難な点である。
【0006】
より詳細には、筒状のパリソンは、通常ダイコア間の環状のスリットから押し出しされることからその厚みは周方向に略一様であり、一方、分割形式の一対の金型を型締めした際、金型内の密閉空間から吹き込み圧をかけることからパリソンの金型に対する押圧力はパリソンの全面に亘って一様であるところ、凹部を形成する一方の金型に押圧されるパリソンは、凹部の深さ、開口径に応じたブロー比との関係でパリソンが引き伸ばされて局所的な薄肉部が生じる一方、他方の金型には凹部を形成しないことから、このような薄肉部が生じない。この点から、筒状パリソンの厚みは、一方の金型の側の薄肉部に合わせて設定する必要があり、それにより他方の金型の側には、余分な厚みのシートが形成されることになる。このように、周方向の肉厚が略均一な筒状パリソンを利用する場合は、ブロー成形後に複数の凹部を有する壁面と凹部が形成されない壁面とで不可避的に厚みの違いを生じ、これに起因して、樹脂積層板の十分な軽量化、薄肉化を達成することができない。この点、特許文献4によれば、筒状のパリソンに基づく2枚の溶融状態のシートを用いて、内部に空洞部を有すると共に、互いに対向する二面に、複数の凹部がその底面部が互いに背向するように形成される熱可塑性樹脂の板状体を製造する方法が開示されている。しかしながら、特に、表面の外観が重視される自動車の内装材や建材向けの樹脂積層板の場合には、表面を形成する一方のシートには、不織布等の化粧材を貼着する必要があることから、一方のシートに凹部を形成する凹部を設けて表面に多数の凹部の開口を形成するのは避けるのが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4327275号公報
【特許文献2】特許第4192138号公報
【特許文献3】特開平11−105113号公報
【特許文献4】特開平7−171877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上の問題点を解消するためには、次のような製造技術が有効である。
すなわち、一方の分割型のキャビティに対して、他方の分割型に向けて突起する複数の突起部を設けた分割形式の金型を用い、2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シート素材を一対の分割型の間に位置決めする。そして、一方のシート素材と一方の分割型のキャビティとの間に密閉空間を形成した後、一方の分割型の側から密閉空間を吸引する。この吸引作用により、複数の突起部で複数の凹部をシート素材に成形し、一対の分割型を型締めすることで、凹部の底を他方のシート素材に溶着し、複数のリブで補強された中空構造の樹脂積層板を得る。
【0009】
このような製造技術を用いれば、2枚のシート素材それぞれの厚みを最大限に薄くすることができ、これにより製造効率及び製品品質を確保しつつ、軽量化、薄肉化を図ることができる。
【0010】
ところで、車両用内装品に代表される樹脂積層板の一層の品質向上が求められる中、積層板の更なる剛性向上が期待される。上記分割形式の金型を用いた製造技術であっても、更なる剛性向上のため、改良の余地はある。
【0011】
そこで、本発明は、軽量化、薄肉化を確保しつつ、更なる剛性向上が実現できる樹脂積層板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、中空部を隔てて重ねた二枚のシートを備え、一方のシートを前記中空部内に凹ませて複数の凹部を設け、これら複数の凹部の底を他方のシートに溶着することで、前記二枚のシートの間を複数のリブで連結してなる樹脂積層板であって、
複数の第1凹部を有する薄板部と、第1凹部に対して相対的に深さが大きい複数の第2凹部を有する厚板部と、で構成し、
前記複数の第1凹部及び前記複数の第2凹部を略同一のピッチで配置したことを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明は、複数の第1凹部及び複数の第2凹部を、底から開口に向けて拡径する円錐台形に形成し、
第1凹部及び前記第2凹部のそれぞれの円錐台斜面の傾斜角を調整することにより、
複数の第1凹部の開口径と複数の第2凹部の開口径を同一寸法とし、
複数の第1凹部の底径と複数の第2凹部の底径を同一寸法としたことを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明は、一方のシートの両端部が支持され、他方のシートの中央部が曲げ荷重を受ける構造体であって、
支持される両端部よりも中央側の一部の領域又は全体の領域を厚板部としたことを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明は、支持される両端部の間を結ぶように帯状に延びる領域を設け、このような帯状の領域を、この領域の延びる方向と直交する方向に複数列設け、これら複数列の帯状の領域を厚板部としたことを特徴とする。
【0016】
請求項5に係る発明は、一方のシートの両端部が支持され、他方のシートの中央部が曲げ荷重を受ける構造体であって、
支持される両端部を含み、且つ、所定の幅で外周に沿う領域を設け、この外周に沿う領域を厚板部としたことを特徴とする。
【0017】
請求項6に係る発明は、平面視で外形が長方形である車両用内装材であって、
支持される両端部は、一方のシートの対辺部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明では、複数の第1凹部を有する薄板部と、相対的に深さが大きい複数の第2凹部を有する薄板部よりも厚い厚板部と、で樹脂積層板を構成し、複数の第1凹部及び複数の第2凹部を略同一のピッチで配置した。
【0019】
積層板を均一の厚みとした場合を考える。
支持された積層板に何らかの曲げ荷重が加わると、積層板はこの荷重に応じた撓み量で変形する。一般に、材質や形状を変更せずに撓み量を抑えるためには、樹脂積層板を厚くする対策を講ずる。しかし、積層板の厚みが均一である場合、厚みを増すと樹脂積層板の質量は必然的に増加してしまう。
【0020】
この点、本発明では、薄板部と、この薄板部よりも厚い厚板部と、で樹脂積層板を構成した。これにより、樹脂積層板において、変形抑制のために厚みが必要な領域は厚板部とし、それ以外の領域は薄板部とすることができる。すなわち、合理的に薄板部と厚板部とを組み合わせ、且つ、シートの厚みを調整することで、質量を増加させずに、樹脂積層板の剛性を高めることができる。
【0021】
加えて、複数の第1凹部及び前記複数の第2凹部を略同一のピッチで配置したので、樹脂積層板における剛性の均一化が図れる。同時に、金型の加工性、成形性を高め、見栄えも良くなる。
【0022】
そして、必要な強度を確保する限度で2枚の樹脂製シートそれぞれの厚みを個別に最大限まで薄肉化することが可能であり、軽量化、薄肉化が達成可能である。
【0023】
したがって、本発明によれば、軽量化、薄肉化を確保しつつ、更なる剛性向上が実現できる樹脂積層板の製造技術が提供される。
【0024】
請求項2の発明では、複数の第1凹部及び複数の第2凹部を円錐台形に形成し、複数の第1凹部の開口径及び複数の第2凹部の開口径を同一寸法とすると共に、複数の第1凹部の底径と複数の第2凹部の底径を同一寸法とした。
【0025】
深さの異なる2種の凹部を円錐台状に成形する場合、凹部の傾斜角を同一にすることも可能である。この場合、2種の凹部において、開口径を同一にすると底径が異なり、底径を同一にすると開口径が異なる。このような開口径や底径が異なる2種類の凹部が成形品に混在することは、成形品の剛性を不均一にし、また金型の加工あるいは厚板部の成形において好ましくない。
【0026】
この点、本発明では、第1凹部及び第2凹部のそれぞれの傾斜角を調整することにより、深さの異なる第1凹部と第2凹部の開口径及び底径を同一寸法としたので、樹脂積層板における剛性の均一化を図ることができ、金型の加工性、また厚板部の成形性を高めることができる。
【0027】
請求項3の発明では、一方のシートの両端部が支持され、他方のシートの中央部が曲げ荷重を受ける構造体として樹脂積層板が使用されるとき、支持される両端部よりも中央側の一部の領域又は全体の領域を厚板部とした。
【0028】
本発明者らは、CAE(Computer Aided Engineering)による解析を行い、樹脂積層板において、中央側の一部の領域又は全体の領域を厚板部とすると、質量を増加させることなく、剛性が高まることを見出した。結果、更に合理的に剛性を高めることができる。
【0029】
請求項4の発明では、支持される両端部の間を結ぶ帯状の領域を複数列設け、これら複数列の帯状の領域を前記厚板部とした。
発明者らによるCAEの解析では、このような複数の帯状領域を厚板部とすることが有効であった。したがって、樹脂積層板の質量を増加させることなく、剛性を合理的に高めることができる。
【0030】
請求項5の発明では、支持される両端部を含み、且つ、所定の幅で外周に沿う領域を厚板部とした。
発明者らによるCAEの解析では、このような外周に沿う領域を厚板部とすることが有効であった。よって、樹脂積層板の質量を増加させることなく、剛性を合理的に高めることができる。
【0031】
請求項6の発明では、樹脂積層板が、平面視で外形が長方形である車両用内装材であり、支持される両端部を一方のシートの対辺部とした。
本発明によれば、軽量化、薄肉化を確保しつつ、更なる剛性向上が実現できる車両用内装材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1実施形態に係る樹脂積層板の斜視図である。
【図2】図1の2矢視図であり、樹脂積層板の斜視図である。
【図3】樹脂積層板の底面図である。
【図4】図3の4部拡大図である。
【図5】第1・第2凹部の構成を説明する図であり、(A)は図4の5−5線断面図、(B)は(A)の比較例を示す断面図である。
【図6】解析条件を説明する図であり、(A)は基本モデルの平面図、(B)は(A)のB矢視図である。
【図7】第1実施形態に係る解析モデルの底面図である。
【図8】第2実施形態に係る解析モデルの底面図である。
【図9】第3実施形態に係る解析モデルの底面図である。
【図10】第4実施形態に係る解析モデルの底面図である。
【図11】樹脂積層板が装着された車両後部の斜視図である。
【図12】図11の12−12線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【0034】
先ず、第1実施形態に係る樹脂積層板について説明する。
図1に示すように、樹脂積層板100は、表面側シート120Aと、裏面側シート120Bと、表面側シート120Aの外表面に貼り合わされた化粧材シート140と、からなる3層構造である。このような樹脂積層板100は、例えば車両用内装材として使用される。なお、図1において、樹脂積層板100の内部構造を明瞭に示すために、樹脂積層板100の周端部まわりを省略して示している。
【0035】
図2に示すように、樹脂積層板100は、深さが小さい複数の第1凹部200Sを有する薄板部100aと、深さが大きい複数の第2凹部200Lを有する厚板部100bと、から構成される。
【0036】
図3に示すように、樹脂積層板100は、外形が長方形に形成されており、薄板部100aは、各辺の近傍の領域で且つ外周部の全体に亘り一定幅で形成される。厚板部100bは、中央部側の領域で且つ薄板部100aに囲われる領域に形成される。
【0037】
次に、第1凹部200S及び第2凹部200Lの構成を図4及び図5に基づいて詳細に説明する。
図4に示すように、複数の第1凹部200S及び複数の第2凹部200Lは、略同一のピッチPで千鳥模様状に配置される。略同一のピッチとは、第1凹部及び第2凹部の間隔が近接することにより成形上シートが引き伸ばされて他の部位より薄肉とならない範囲であれば良く、第1凹部及び第2凹部間の距離であれば各ピッチにおいて第1凹部及び第2凹部の開口径aの半分の長さ以上の差がないことが必要であり、各部位におけるシートの肉厚の比率が80〜120%の範囲内となることが好ましい。
【0038】
また、図5(A)に示すように、薄板部100aと厚板部100bとは、裏面側シート120Bに形成される段差101を介して連なる。第1凹部200S及び第2凹部200Lは、表面側シート120Aのうち、化粧材シート140が接着される外表面150と反対側の面である内表面170に溶着される。第1凹部200Sの深さd1と第2凹部200Lの深さd2は、薄板部100aの厚みt1と厚板部100bの厚みt2の差となる。第1凹部200S及び第2凹部200Lは、裏面側シート120Bの内表面180と表面側シート120Aの内表面170との間を連結する第1リブ122S及び第2リブ122Lを構成する。第1凹部200S及び第2凹部200Lは、円錐台形状を呈しており、底240S、240Lから開口260S、260Lに向けて拡径した形状である。
【0039】
底240S、240Lは、表面側シート120Aの内表面170に溶着される。表面側シート120Aと裏面側シート120Bとの間には、中空部280が形成され、この中空部280は、積層構造板100の周端面において閉じられる。第1凹部200S及び第2凹部200Lの個数は、樹脂積層板100の用途により適宜設定すればよいが、数が多いほど重量に比して高い剛性を得ることができる。
【0040】
そして、第1凹部200Sの開口径と第2凹部200Lの開口径を同一寸法aに設定する。さらに、第1凹部200Sの傾斜角dと第2凹部200Lの傾斜角eを調整する(具体的には傾斜角d>傾斜角eとする)ことで、第1凹部200Sの底径と第2凹部200Lの底径を同一寸法bに設定する。
【0041】
このように、第1凹部200S及び第2凹部200Lの開口径・底径を合わせることで、樹脂積層板100における剛性の均一化を図ることができ、金型の加工性、厚板部100bの成形性を高めることができる。
【0042】
これに対して、図5(B)に示すように、開口径aを同一にし、傾斜角dを同一にすることも可能である。しかし、この場合、第1凹部200Sの底径bと第2凹部200Lの底径cの大きさが異なる。底径の異なる2種類の凹部が成形品に混在することは、成形品の剛性を不均一にし、また金型の加工性や厚板部の成形性において好ましくない。
【0043】
次に、各シートの材質について詳細に説明する。
表面側シート120A及び裏面側シート120Bの材料であるシート素材は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、または非晶性樹脂などから形成されたシートからなる。より詳細には、シート素材P1、P2は、ドローダウン、ネックインなどにより肉厚のバラツキが発生することを防止する観点から溶融張力の高い樹脂材料を用いることが好ましく、一方で金型への転写性、追従性を良好とするため流動性の高い樹脂材料を用いることが好ましい。
【0044】
より具体的にはエチレン、プロピレン、ブテン、イソプレンペンテン、メチルペンテン等のオレフィン類の単独重合体あるいは共重合体であるポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン)であって、230℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)が3.0g/10分以下、さらに好ましくは0.3〜1.5g/10分のもの、またはアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン(HIPS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等の非晶性樹脂であって、200℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度200℃、試験荷重2.16kgにて測定)が3.0〜60g/10分、さらに好ましくは30〜50g/10分で且つ230℃におけるメルトテンション(株式会社東洋精機製作所製メルトテンションテスターを用い、余熱温度230℃、押出速度5.7mm/分で、直径2.095mm、長さ8mmのオリフィスからストランドを押し出し、このストランドを直径50mmのローラーに巻き取り速度100rpmで巻き取ったときの張力を示す)が50mN以上、好ましくは120mN以上のものを用いて形成される。
【0045】
また、シート素材には衝撃により割れが生じることを防止するため、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーが30wt%未満、好ましくは15wt%未満の範囲で添加されていることが好ましい。具体的には水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしてスチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体、水添スチレン−ブタジエンゴム及びその混合物が好適であり、スチレン含有量が30wt%未満、好ましくは20wt%未満であり、230℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)は1.0〜10g/10分、好ましくは5.0g/10分以下で且つ1.0g/10分以上あるものがよい。さらに、シート素材P1、P2には、添加剤が含まれていてもよく、その添加剤としては、シリカ、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機フィラー、可塑剤、安定剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤等が挙げられる。具体的にはシリカ、マイカ、ガラス繊維等を成形樹脂に対して50wt%以下、好ましくは30〜40wt%添加する。
【0046】
表面側シートの材料であるシート素材の表面に化粧材シート140を設ける場合において、化粧材シート140とは、外観性向上、装飾性、成形品と接触する物(例えば、カーゴフロアボードの場合、ボード上面に載置される荷物など)の保護を目的として構成されるものである。化粧材シート140の材質は、繊維表皮材、シート状表皮材、フィルム状表皮材等が適用される。かかる繊維表皮材の素材としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、アクリル、ビニロン等の合成繊維、アセテート、レーヨン等の半合成繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン等の再生繊維、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、又はこれらのブレンド繊維が挙げられる。
【0047】
これらの中でも、触感、耐久性及び成形性の観点から、ポリプロピレン又はポリエステルであることが好ましく、ポリエステルであることがより好ましい。繊維表皮材に用いられる糸は、例えば、ポリエステル:(3〜5)デニール×(50〜100)mm等の繊度が3〜15デニール、繊維長さが2〜5インチ程度のステープルの紡績糸と、細い柔軟なフィラメントを束にしたポリエステル:約150〜1000デニール/30〜200フィラメント=約5デニール×30〜200本等のマルチフィラメント、又は、ポリエステル:400〜800デニール/1フィラメント等の太いモノ・フィラメントと、を組み合わせて用いることが好ましい。
【0048】
化粧材シート140の組織としては、不織布、織物、編物、それらを起毛した布地等が挙げられる。なお、織物には、織組織が縦糸、横糸が順次上下に交絡する平組織のほか、何本かの糸を跳び越して交絡する種々の変化織も含まれる。これらの中でも、伸びに対する方向性がないため、立体形状に成形し易く、且つ表面の触感、風合いに優れることから、不織布であることが好ましい。ここで、不織布とは、繊維を平行に又は交互させて積上げるか又はランダムに散布してウエブを形成し、次いでウエブとなった繊維を接合してなる布状品を意味する。これらの中でも、成形品の立体形状再現性及び外観特性の観点から、ニードルパンチ法により製造された不織布であることが好ましい。また、ニードルパンチ法にて得られた不織布は、織物に比べて強度が小で伸度が大であり任意方向に対する変形度合いが大きいので、不織布としての強度を向上させると共に寸法の安定化を図るために、織布にバインダーを付着させる、又は、ウエブと不織布を重ね針でパンチさせておくことがより好ましい。これらのことから、化粧材シート140は、ポリプロピレン不織布又はポリエステル不織布であることがより好ましい。この場合、化粧材シート140自体が熱可塑性であるので、剥離回収後、加熱して変形させることによって、別の用途に用いることも可能である。例えば主体樹脂層をポリプロピレンにて構成し、化粧材シート140をポリプロピレン不織布で構成すると、成形品の主体樹脂層と化粧材シート140とが同じ素材であることから、リサイクルが容易になる。
【0049】
一方、化粧材シート140がポリエステル不織布であると、ポリプロピレンにて構成した主体樹脂層と繊維表皮材との融点が異なるので、成形品に化粧材シート140を接着する際、熱により変質、変形したり、正しい位置に接着できない等の不具合が生じるのを抑制できる。また、この場合、成形性、剛性、外観及び耐久性にも優れる。また、化粧材シート140の引張強度は、立体形状再現性及び成形性の観点から、15kg/cm2以上であることが好ましく、伸度は、30%以上であることが好ましい。なお、かかる引張強度及び伸度の値は、温度20℃においてJIS−K−7113に準拠して測定したものである。シート状表皮材、フィルム状表皮材としては、熱可塑性エラストマ−、エンボス加工された樹脂層、印刷層が外面に付された樹脂層、合成皮革、滑り止め用メッシュ形状の表皮層等が使用できる。
【0050】
以上の構成を有する樹脂積層板100は、以下の製造方法で製造される。
先ず、表面側シート120A、裏面側シート120Bに対応する熱可塑性樹脂からなる2枚のシート素材を、溶融状態で一対の分割型の間に配置する。次に、一方の分割型に設けた複数の突起部により、一方のシート素材を他方のシート素材に向けて凹ませて複数の第1凹部200S、第2凹部200Lを成形し、一対の分割型を型締めする。これにより、複数の第1凹部200S、第2凹部200Lの底240S、240Lを他方のシート素材に溶着し、2枚のシート素材の間を複数の第1リブ122S、第2リブ122Lで連結させ、中空構造の樹脂積層板100を得る。
【0051】
以上に述べた樹脂積層板100の効果について説明する。
仮に、樹脂積層板の厚みを均一とした場合を考える。
支持された樹脂積層板に何らかの曲げ荷重が加わると、樹脂積層板はこの荷重に応じた撓み量で変形する。一般に、材質や形状を変更せずに撓み量を抑えるためには、樹脂積層板を厚くする対策を講じるが、樹脂積層板の厚みが均一である場合、厚みを増すと樹脂積層板の質量は必然的に増加する。
【0052】
この点、樹脂積層板100は、薄板部100aと、この薄板部100aよりも厚い厚板部100bとからなる。例えば、裏面側シート120Bの両端部が支持され、化粧材シート140の中央部が曲げ荷重を受ける構造体として樹脂積層板100が使用される場合、中央側の広い領域に形成された厚板部100bにより剛性が高まり、撓み量を抑えることができる。結果、質量を増加させずに、樹脂積層板100の剛性を合理的に高めることができる。
【0053】
加えて、複数の第1凹部200S及び複数の第2凹部200Lを略同一のピッチPで配置したので、樹脂積層板100における剛性の均一化が図れる。同時に、金型の加工性、成形性を高め、見栄えも良くなる。
【0054】
そして、必要な強度を確保する限度で表面側シート120A及び裏面側シート120Bそれぞれの厚みを個別に最大限まで薄肉化することが可能であり、軽量化、薄肉化が達成可能である。したがって、樹脂積層板100では、軽量化、薄肉化を確保しつつ、更なる剛性向上が実現できる。
【0055】
次に、樹脂積層板において、厚板部100bを形成する好適な領域を調べるため、第1実施形態を含め、以下に説明する第2〜第4実施形態の各々について解析モデルを設定し、CAE(Computer Aided Engineering)による解析を行った。詳細を以下に説明する。
【0056】
(解析例)
○使用した解析ソフト
CATIA V5 GPS・GASモジュール(線形解析)
○解析条件
解析条件を図6に基づいて説明する。
・基本モデル
図6(A)に示すように、解析に用いる基本モデルMは、表面側シート(図1、符号120A)を裏面側シート(図1、符号120B)に溶着させた形態に相当するものであり、長辺の長さWを288mm、短辺の長さLを208mmとする長方形形状とする。なお、対称形状を考慮し、この基本モデルMの1/4のモデルで解析を行う。
【0057】
・荷重条件
図6(B)に示すように、基本モデルMの上面は、表面側シートの外表面(図5(A)、符号図150)に相当しており、この上面の中央に荷重Fを加える。荷重Fを加える面は、直径Dの円形面とする。荷重Fの大きさは196N、直径Dは60mm、厚みtは7mm均一とする。
【0058】
・拘束条件
基本モデルMの短辺側の端部を支持する拘束部R、Rを設定し、この拘束部Rの幅W1は、24mmとする。
【0059】
・材質条件
モデルの材質は、ポリプロピレンにタルクを添加した材料を想定し、弾性率を825MPa、ポアソン比を0.45、密度を1.0g/cm3とした。
【0060】
○解析モデルM1〜M4
厚みtを均一とした基本モデルMに対し、薄板部と厚板部とからなる解析モデルM1〜M4を設定する。なお、解析モデルM1〜M4では、厚板部の厚みを10mmとするが、各シートの肉厚を調整することにより、解析モデルM1〜M4の各質量は、基本モデルの質量と同一にする。
【0061】
各解析モデルを図7〜図10に基づいて説明する。なお、各図において、斜線部は、厚板部の領域を示す。
【0062】
・解析モデルM1
図7に示すように、解析モデルM1では、基本モデルMにおいて、長方形の4辺に沿って幅W2で形成される領域A1を薄板部100aとし、この薄板部100bで囲われる領域A2を厚板部100bとした。幅W2を29mmに設定し、厚板部100bを拘束部(図6、符号R)よりも中央側に形成した。薄板部100aの厚みを7mm、厚板部100bの厚みを10mmとした。この解析モデルM1は、前記第1実施形態の樹脂積層板100に相当する。
【0063】
・解析モデル2
図8に示すように、解析モデルM2は、本発明に係る第2実施形態であり、基本モデルMにおいて、2つの拘束部(図6、符号R)間を結ぶように帯状に延びる領域A3を設ける。このような帯状の領域A3を、領域A3の延びる方向と直交する方向に5列設け、これら5列の帯状の領域A3を厚板部100bとし、残りの領域A4を薄板部100aとした。領域A3の幅W3は、20mmであり、離間距離L1は、12.5mmである。5列の領域A3は、解析モデルM1の領域A2を5分割した形態となる。この解析モデルM2においても、厚板部100bは、拘束部(図5、符号R)よりも中央側に形成される。薄板部100aの厚みを7mm、厚板部100bの厚みを10mmとした。
【0064】
・解析モデルM3
図9に示すように、解析モデルM3は、本発明に係る第3実施形態であり、基本モデルMにおいて、長方形の4辺に沿って幅W2で形成される領域A1を厚板部100bとし、この厚板部100bで囲われる領域A2を薄板部100aとした。幅W2を29mmに設定し、厚板部100bを拘束部(図6、符号R)に載せるようにした。薄板部100aの厚みを7mm、厚板部100bの厚みを10mmとした。
【0065】
・解析モデルM4
図10に示すように、解析モデルM4は、本発明に係る第4実施形態であり、基本モデルMにおいて、拘束部(図6、符号R)に沿うように(短辺と平行に)帯状に延びる領域A5を設ける。このような帯状の領域A5を、領域A5の延びる方向と直交する方向に5列設け、これら5列の帯状の領域A5を厚板部100bとし、残りの領域A6を薄板部100aとした。領域A5の幅W4は、20mmであり、離間距離L2は、15mmである。5列の領域A5は、解析モデルM1の領域A2を7分割した形態となる。この解析モデルM2においても、厚板部100bは、拘束部(図6、符号R)よりも中央側に形成される。薄板部100aの厚みを7mm、厚板部100bの厚みを10mmとした。
【0066】
・方法
以上の解析条件に基づいて、基本モデルM、解析モデルM1〜M4の解析を行い、各々の撓み量δを求める。
【0067】
○結果
・基本モデルM、解析モデルM1〜M4の撓み量δの解析結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1に示されるように、厚みtを均一とした基本モデルでは、撓み量δが19.8mmであった。これに対し、解析モデルM1では、撓み量δが13.5mmであり、変形が十分に抑制されることが確認された。よって、第1実施形態の樹脂積層材(図1、符号100)のように、中央側にて厚板部100bを広く形成することが有効であると言える。
【0070】
解析モデルM2では、撓み量δが14.3mmであり、変形が十分に抑制されることが確認された。よって、この解析モデルM2(第2実施形態)のように、支持される両端部の間を結ぶように帯状に延びる複数の領域を厚板部とすることは、有効であると言える。
【0071】
解析モデルM3では、撓み量δが16.6mmであり、変形が十分に抑制されることが確認された。よって、この解析モデルM3(第3実施形態)のように、支持される両端部を含み、且つ、所定の幅で外周に沿う領域を厚板部とすることは、有効であると言える。
【0072】
解析モデルM4では、撓み量δが25.5mmであり、基本モデルMの撓み量を上回った。解析モデルM4における厚板部100bの領域(図10、符号A5)は、拘束部(図6、符号R)に沿って延びる。一方、この解析モデルM4に類似する解析モデルM2では、厚板部100bの領域(図8、符号A3)が、拘束部(図6、符号R)と直交する方向に延びており、変形が抑制される良好な結果が得られた。
【0073】
この解析モデルM4と解析モデルM2の結果より、厚板部の領域を帯状で且つ複数列とする場合、一方の拘束部から他方の拘束部に向けて延びるように帯状の領域を形成することが有効であると言える。
【0074】
したがって、解析モデルM4の構成であっても、仮に、長方形の長辺部が拘束されるときは、厚板部100bが有効に作用して、撓み量を抑制することができる。
【0075】
なお、第2〜第4実施形態は、解析モデルとして説明したが、厚板部を設ける領域以外は、第1実施形態の樹脂積層板(図1、符号100)と同じ構成にすることが可能であり、その場合、第1実施形態の樹脂積層板と同様の効果を奏する。
【0076】
次に、樹脂積層板の使用例として、自動車のラゲッジボードに使用した例を図11に基づいて説明する。
自動車の車室内後方には、リヤシートクッション302と左右一対のリヤシートバック304とを備えるリヤシート306が設置されている。リヤシートバック304は、リヤシートクッション302に対して前後へリクライニング可能であり、また前方へ大きく倒れて折り畳むことができる。リヤシートバック304の後方にはラゲッジルーム308が形成されており、そのラゲッジルーム308のフロアパネル上には、工具類やスペアタイヤを収納する収納ボックス310とラゲッジボード300が載置されている。
【0077】
ラゲッジボード300は、ラゲッジルーム308の底面を構成するようにして、収納ボックス310の上部開口全体を覆って載置されるラゲッジボード本体部312Aと、左右のリヤシートバック304の起立・傾倒動作に追従する左右一対の補助ボード部312B、312Bとからなる。
【0078】
ラゲッジボード本体部312Aや左右の補助ボード部312B、312Bは、収納ボックス310の開口やリヤシートバック304の下部後方の空間を覆う内装材であり、同時に様々な荷物が載せられる支持体でもある。このように意匠性と剛性とが要求されるラゲッジボード本体部312Aや左右の補助ボード部312B、312Bに、樹脂積層板(図1、符号100)を使用することで、高品質なラゲッジボード300を得ることができる。
【0079】
続いて、このラゲッジボード本体部312Aを樹脂積層板(図1、符号100)で構成した例を図12に基づいて説明する。
図12に示すように、ラゲッジボード本体部312Aは、表面側シート120Aと、裏面側シート120Bと、化粧材シート140と、からなる3層構造である。ラゲッジボード本体部312Aは、外形が長方形に形成されており、短辺側の左右の端部が収納ボックス310の左右の側壁310a、310aに支持され、収納空間310bを上から塞ぐ。また、ラゲッジボード本体部312Aの上には、荷物等により、白抜きの矢印で示す荷重Fが加わる。
【0080】
左右の側壁310a、310aは、CAEの解析例の拘束部(図6、符号R)に相当し、荷重Fは、CAEの解析例の荷重(図6、符号F)に相当する。そこで、CAEの解析結果に基づき、ラゲッジボード本体部312Aにおいて、側壁310a、310aに接する領域(短辺側の端部)を薄板部100aで形成し、側壁310a、310aよりも中央側(収納空間310b側)の領域の一部又は全体を厚板部100bで形成する。
【0081】
すると、ラゲッジボード本体部312Aの上に荷重Fが加わっても、厚板部100bの高い剛性により、撓み量δが抑制される。したがって、質量を増加することなく、剛性の高いラゲッジボード本体部312Aを得ることができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば種々の修正あるいは変更が可能である。例えば、実施形態においては、自動車向けの内装材として説明したが、それに限定されることなく、鉄道車両、飛行機、船舶等一般車両のみならず、遊園地の乗り物等の特殊車両に対しても適用可能であり、特に特殊車両の場合には、幼児向けに色彩も含めた外観上の美観が重視されることから、樹脂製内装材が適している。また、実施形態においては、平板状の内装材として説明したが、それに限定されることなく、例えば天井材、インストルメントパネル等立体形状を有する用途にも適用可能であり、その場合、軽量化を達成すると共に外形形状を保持できる剛性を維持しつつ、必要な厚みを確保することが可能である。さらに、第2凹部を有する厚板部は第1凹部を有する薄板部に対して相対的に厚さが大きければ良く、任意の厚さに設定することができ、厚板部の厚さは樹脂積層板の部位によって異なる厚みとすることができる。
【符号の説明】
【0083】
100 樹脂積層板
100a 薄板部
100b 厚板部
120A 表面側シート
120B 裏面側シート
122S 第1リブ
122L 第2リブ
200S 第1凹部
200L 第2凹部
240S 底
240L 底
260S 開口
260L 開口
280 中空部
300 ラゲッジボード(車両用内装材)
312A ラゲッジボード本体部(車両用内装材)
312B 補助ボード(車両用内装材)
a 開口径
b 底径
c 底径
d 第1凹部の傾斜角
e 第2凹部の傾斜角
t1 薄板部の厚み
t2 厚板部の厚み
A1〜A5 厚板部の領域
F 荷重
M1〜M4 解析モデル(樹脂積層素材)
P ピッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂積層板に関し、より詳細には、軽量化、薄肉化を確保しつつ、更なる剛性向上が実現できる樹脂積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の内装材や建材、物流・包装材として、いわゆる樹脂積層板が採用されている。樹脂積層板は、樹脂製の表面材と樹脂製の裏面材とを有し、裏面材には先端部が表面材の内面に突き合わされる凹部が設けられる。特に、外観が重視される自動車の内装材や建材の場合には、表面材の表側には不織布が貼着される。この樹脂積層板の製造方法には、従来から種々の方法が採用されている。第1に、溶融樹脂を用いて一体押出中空成形により製造する技術が採用されている。このような方法により製造された樹脂積層板によれば、単に内部に中空部を有するだけの二重壁中空構造に比べ、表面材と裏面材とを連結する凹部により、剛性、特に面材に対して鉛直方向の荷重に対する圧縮剛性を確保することが可能である。
【0003】
第2に、特許文献1に開示されているように、一方が表面に多数の突起部が千鳥模様状に配置されたロールである一対のロールの間に、個別に押出された2枚の溶融状態のシートを所定押圧力のもとで通して、一方のシートに凹部を形成すると共に、凹部の底面を他方のシートの内面に突き合わせる形態で2枚のシートを溶着し、さらに一方のシートの凹部の開口が形成された側の面に別のシートを溶着させる技術であり、凹部を形成したシートの表側及び裏側それぞれに対してシートを溶着させる3層構造をなす。
【0004】
第3に、特許文献2に開示されているように、第2の方法と異なり、それぞれ表面に多数の突起部が千鳥模様状に配置されたロールである一対のロールの間に、個別に押出された2枚の溶融状態のシートを所定押圧力のもとで通して、それぞれのシートに凹部を形成すると共に、それぞれのシートの対応する凹部の底面同士を溶着する形態で2枚のシートを溶着し、さらにそれぞれシートの反対側の面に別のシートを溶着させる技術であり、シートそれぞれの凹部の開口が形成された側の面に対してシートを溶着させる4層構造をなす。以上のような溶融状態のシートを押出して樹脂積層板を製造する技術には、以下のような技術的問題点が存する。
【0005】
すなわち、製造効率を確保しつつ、方向性のない十分な強度を有する樹脂積層板を得ることが困難な点である。より詳細には、第1の方法ないし第3の方法に共通の押し出し成形特有の問題として、シートの押出し方向の端部は開放状態となることから、熱シール処理等の端面処理が必須となるため、その分余分な工程が必要となり、全体の製造効率が低下する。さらに、千鳥状に凹部が形成されるシートと別のシートとの溶着、または、それぞれ千鳥状に凹部が形成されるシート同士の溶着はそれぞれ、一対のローラーの間をローラーにより送り出されながら通過する際の押圧力により行われるに過ぎず、十分な溶着時間を確保することが難しく、それによる溶着不足が原因で樹脂積層板として十分な強度を確保することが困難となり、品質劣化を引き起こす。この点、連続的な押出成形ではなく、ブロー成形によれば、上記のような端面処理に伴う製造効率の低下、及び溶着不足に伴う強度不足を回避することが可能である。特許文献3は、このようなブロー成形による方法を開示する。特許文献3によれば、溶融状態の筒状のパリソンを用いて、裏面壁には先端部が表面壁の内面に突合せ溶着される凹部を設けると共に、表面壁の外表面には、表装材を貼着する点が開示されている。しかしながら、このように筒状のパリソンを用い吹き込み圧をかけて成形するブロー成形によれば、別の技術的問題点が引き起こされる。すなわち、周方向に肉厚の均一な筒状のパリソンを用い吹き込み圧をかけて成形することに起因して、樹脂積層板の十分な軽量化、薄肉化が困難な点である。
【0006】
より詳細には、筒状のパリソンは、通常ダイコア間の環状のスリットから押し出しされることからその厚みは周方向に略一様であり、一方、分割形式の一対の金型を型締めした際、金型内の密閉空間から吹き込み圧をかけることからパリソンの金型に対する押圧力はパリソンの全面に亘って一様であるところ、凹部を形成する一方の金型に押圧されるパリソンは、凹部の深さ、開口径に応じたブロー比との関係でパリソンが引き伸ばされて局所的な薄肉部が生じる一方、他方の金型には凹部を形成しないことから、このような薄肉部が生じない。この点から、筒状パリソンの厚みは、一方の金型の側の薄肉部に合わせて設定する必要があり、それにより他方の金型の側には、余分な厚みのシートが形成されることになる。このように、周方向の肉厚が略均一な筒状パリソンを利用する場合は、ブロー成形後に複数の凹部を有する壁面と凹部が形成されない壁面とで不可避的に厚みの違いを生じ、これに起因して、樹脂積層板の十分な軽量化、薄肉化を達成することができない。この点、特許文献4によれば、筒状のパリソンに基づく2枚の溶融状態のシートを用いて、内部に空洞部を有すると共に、互いに対向する二面に、複数の凹部がその底面部が互いに背向するように形成される熱可塑性樹脂の板状体を製造する方法が開示されている。しかしながら、特に、表面の外観が重視される自動車の内装材や建材向けの樹脂積層板の場合には、表面を形成する一方のシートには、不織布等の化粧材を貼着する必要があることから、一方のシートに凹部を形成する凹部を設けて表面に多数の凹部の開口を形成するのは避けるのが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4327275号公報
【特許文献2】特許第4192138号公報
【特許文献3】特開平11−105113号公報
【特許文献4】特開平7−171877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上の問題点を解消するためには、次のような製造技術が有効である。
すなわち、一方の分割型のキャビティに対して、他方の分割型に向けて突起する複数の突起部を設けた分割形式の金型を用い、2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シート素材を一対の分割型の間に位置決めする。そして、一方のシート素材と一方の分割型のキャビティとの間に密閉空間を形成した後、一方の分割型の側から密閉空間を吸引する。この吸引作用により、複数の突起部で複数の凹部をシート素材に成形し、一対の分割型を型締めすることで、凹部の底を他方のシート素材に溶着し、複数のリブで補強された中空構造の樹脂積層板を得る。
【0009】
このような製造技術を用いれば、2枚のシート素材それぞれの厚みを最大限に薄くすることができ、これにより製造効率及び製品品質を確保しつつ、軽量化、薄肉化を図ることができる。
【0010】
ところで、車両用内装品に代表される樹脂積層板の一層の品質向上が求められる中、積層板の更なる剛性向上が期待される。上記分割形式の金型を用いた製造技術であっても、更なる剛性向上のため、改良の余地はある。
【0011】
そこで、本発明は、軽量化、薄肉化を確保しつつ、更なる剛性向上が実現できる樹脂積層板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、中空部を隔てて重ねた二枚のシートを備え、一方のシートを前記中空部内に凹ませて複数の凹部を設け、これら複数の凹部の底を他方のシートに溶着することで、前記二枚のシートの間を複数のリブで連結してなる樹脂積層板であって、
複数の第1凹部を有する薄板部と、第1凹部に対して相対的に深さが大きい複数の第2凹部を有する厚板部と、で構成し、
前記複数の第1凹部及び前記複数の第2凹部を略同一のピッチで配置したことを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明は、複数の第1凹部及び複数の第2凹部を、底から開口に向けて拡径する円錐台形に形成し、
第1凹部及び前記第2凹部のそれぞれの円錐台斜面の傾斜角を調整することにより、
複数の第1凹部の開口径と複数の第2凹部の開口径を同一寸法とし、
複数の第1凹部の底径と複数の第2凹部の底径を同一寸法としたことを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明は、一方のシートの両端部が支持され、他方のシートの中央部が曲げ荷重を受ける構造体であって、
支持される両端部よりも中央側の一部の領域又は全体の領域を厚板部としたことを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明は、支持される両端部の間を結ぶように帯状に延びる領域を設け、このような帯状の領域を、この領域の延びる方向と直交する方向に複数列設け、これら複数列の帯状の領域を厚板部としたことを特徴とする。
【0016】
請求項5に係る発明は、一方のシートの両端部が支持され、他方のシートの中央部が曲げ荷重を受ける構造体であって、
支持される両端部を含み、且つ、所定の幅で外周に沿う領域を設け、この外周に沿う領域を厚板部としたことを特徴とする。
【0017】
請求項6に係る発明は、平面視で外形が長方形である車両用内装材であって、
支持される両端部は、一方のシートの対辺部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明では、複数の第1凹部を有する薄板部と、相対的に深さが大きい複数の第2凹部を有する薄板部よりも厚い厚板部と、で樹脂積層板を構成し、複数の第1凹部及び複数の第2凹部を略同一のピッチで配置した。
【0019】
積層板を均一の厚みとした場合を考える。
支持された積層板に何らかの曲げ荷重が加わると、積層板はこの荷重に応じた撓み量で変形する。一般に、材質や形状を変更せずに撓み量を抑えるためには、樹脂積層板を厚くする対策を講ずる。しかし、積層板の厚みが均一である場合、厚みを増すと樹脂積層板の質量は必然的に増加してしまう。
【0020】
この点、本発明では、薄板部と、この薄板部よりも厚い厚板部と、で樹脂積層板を構成した。これにより、樹脂積層板において、変形抑制のために厚みが必要な領域は厚板部とし、それ以外の領域は薄板部とすることができる。すなわち、合理的に薄板部と厚板部とを組み合わせ、且つ、シートの厚みを調整することで、質量を増加させずに、樹脂積層板の剛性を高めることができる。
【0021】
加えて、複数の第1凹部及び前記複数の第2凹部を略同一のピッチで配置したので、樹脂積層板における剛性の均一化が図れる。同時に、金型の加工性、成形性を高め、見栄えも良くなる。
【0022】
そして、必要な強度を確保する限度で2枚の樹脂製シートそれぞれの厚みを個別に最大限まで薄肉化することが可能であり、軽量化、薄肉化が達成可能である。
【0023】
したがって、本発明によれば、軽量化、薄肉化を確保しつつ、更なる剛性向上が実現できる樹脂積層板の製造技術が提供される。
【0024】
請求項2の発明では、複数の第1凹部及び複数の第2凹部を円錐台形に形成し、複数の第1凹部の開口径及び複数の第2凹部の開口径を同一寸法とすると共に、複数の第1凹部の底径と複数の第2凹部の底径を同一寸法とした。
【0025】
深さの異なる2種の凹部を円錐台状に成形する場合、凹部の傾斜角を同一にすることも可能である。この場合、2種の凹部において、開口径を同一にすると底径が異なり、底径を同一にすると開口径が異なる。このような開口径や底径が異なる2種類の凹部が成形品に混在することは、成形品の剛性を不均一にし、また金型の加工あるいは厚板部の成形において好ましくない。
【0026】
この点、本発明では、第1凹部及び第2凹部のそれぞれの傾斜角を調整することにより、深さの異なる第1凹部と第2凹部の開口径及び底径を同一寸法としたので、樹脂積層板における剛性の均一化を図ることができ、金型の加工性、また厚板部の成形性を高めることができる。
【0027】
請求項3の発明では、一方のシートの両端部が支持され、他方のシートの中央部が曲げ荷重を受ける構造体として樹脂積層板が使用されるとき、支持される両端部よりも中央側の一部の領域又は全体の領域を厚板部とした。
【0028】
本発明者らは、CAE(Computer Aided Engineering)による解析を行い、樹脂積層板において、中央側の一部の領域又は全体の領域を厚板部とすると、質量を増加させることなく、剛性が高まることを見出した。結果、更に合理的に剛性を高めることができる。
【0029】
請求項4の発明では、支持される両端部の間を結ぶ帯状の領域を複数列設け、これら複数列の帯状の領域を前記厚板部とした。
発明者らによるCAEの解析では、このような複数の帯状領域を厚板部とすることが有効であった。したがって、樹脂積層板の質量を増加させることなく、剛性を合理的に高めることができる。
【0030】
請求項5の発明では、支持される両端部を含み、且つ、所定の幅で外周に沿う領域を厚板部とした。
発明者らによるCAEの解析では、このような外周に沿う領域を厚板部とすることが有効であった。よって、樹脂積層板の質量を増加させることなく、剛性を合理的に高めることができる。
【0031】
請求項6の発明では、樹脂積層板が、平面視で外形が長方形である車両用内装材であり、支持される両端部を一方のシートの対辺部とした。
本発明によれば、軽量化、薄肉化を確保しつつ、更なる剛性向上が実現できる車両用内装材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1実施形態に係る樹脂積層板の斜視図である。
【図2】図1の2矢視図であり、樹脂積層板の斜視図である。
【図3】樹脂積層板の底面図である。
【図4】図3の4部拡大図である。
【図5】第1・第2凹部の構成を説明する図であり、(A)は図4の5−5線断面図、(B)は(A)の比較例を示す断面図である。
【図6】解析条件を説明する図であり、(A)は基本モデルの平面図、(B)は(A)のB矢視図である。
【図7】第1実施形態に係る解析モデルの底面図である。
【図8】第2実施形態に係る解析モデルの底面図である。
【図9】第3実施形態に係る解析モデルの底面図である。
【図10】第4実施形態に係る解析モデルの底面図である。
【図11】樹脂積層板が装着された車両後部の斜視図である。
【図12】図11の12−12線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【0034】
先ず、第1実施形態に係る樹脂積層板について説明する。
図1に示すように、樹脂積層板100は、表面側シート120Aと、裏面側シート120Bと、表面側シート120Aの外表面に貼り合わされた化粧材シート140と、からなる3層構造である。このような樹脂積層板100は、例えば車両用内装材として使用される。なお、図1において、樹脂積層板100の内部構造を明瞭に示すために、樹脂積層板100の周端部まわりを省略して示している。
【0035】
図2に示すように、樹脂積層板100は、深さが小さい複数の第1凹部200Sを有する薄板部100aと、深さが大きい複数の第2凹部200Lを有する厚板部100bと、から構成される。
【0036】
図3に示すように、樹脂積層板100は、外形が長方形に形成されており、薄板部100aは、各辺の近傍の領域で且つ外周部の全体に亘り一定幅で形成される。厚板部100bは、中央部側の領域で且つ薄板部100aに囲われる領域に形成される。
【0037】
次に、第1凹部200S及び第2凹部200Lの構成を図4及び図5に基づいて詳細に説明する。
図4に示すように、複数の第1凹部200S及び複数の第2凹部200Lは、略同一のピッチPで千鳥模様状に配置される。略同一のピッチとは、第1凹部及び第2凹部の間隔が近接することにより成形上シートが引き伸ばされて他の部位より薄肉とならない範囲であれば良く、第1凹部及び第2凹部間の距離であれば各ピッチにおいて第1凹部及び第2凹部の開口径aの半分の長さ以上の差がないことが必要であり、各部位におけるシートの肉厚の比率が80〜120%の範囲内となることが好ましい。
【0038】
また、図5(A)に示すように、薄板部100aと厚板部100bとは、裏面側シート120Bに形成される段差101を介して連なる。第1凹部200S及び第2凹部200Lは、表面側シート120Aのうち、化粧材シート140が接着される外表面150と反対側の面である内表面170に溶着される。第1凹部200Sの深さd1と第2凹部200Lの深さd2は、薄板部100aの厚みt1と厚板部100bの厚みt2の差となる。第1凹部200S及び第2凹部200Lは、裏面側シート120Bの内表面180と表面側シート120Aの内表面170との間を連結する第1リブ122S及び第2リブ122Lを構成する。第1凹部200S及び第2凹部200Lは、円錐台形状を呈しており、底240S、240Lから開口260S、260Lに向けて拡径した形状である。
【0039】
底240S、240Lは、表面側シート120Aの内表面170に溶着される。表面側シート120Aと裏面側シート120Bとの間には、中空部280が形成され、この中空部280は、積層構造板100の周端面において閉じられる。第1凹部200S及び第2凹部200Lの個数は、樹脂積層板100の用途により適宜設定すればよいが、数が多いほど重量に比して高い剛性を得ることができる。
【0040】
そして、第1凹部200Sの開口径と第2凹部200Lの開口径を同一寸法aに設定する。さらに、第1凹部200Sの傾斜角dと第2凹部200Lの傾斜角eを調整する(具体的には傾斜角d>傾斜角eとする)ことで、第1凹部200Sの底径と第2凹部200Lの底径を同一寸法bに設定する。
【0041】
このように、第1凹部200S及び第2凹部200Lの開口径・底径を合わせることで、樹脂積層板100における剛性の均一化を図ることができ、金型の加工性、厚板部100bの成形性を高めることができる。
【0042】
これに対して、図5(B)に示すように、開口径aを同一にし、傾斜角dを同一にすることも可能である。しかし、この場合、第1凹部200Sの底径bと第2凹部200Lの底径cの大きさが異なる。底径の異なる2種類の凹部が成形品に混在することは、成形品の剛性を不均一にし、また金型の加工性や厚板部の成形性において好ましくない。
【0043】
次に、各シートの材質について詳細に説明する。
表面側シート120A及び裏面側シート120Bの材料であるシート素材は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、または非晶性樹脂などから形成されたシートからなる。より詳細には、シート素材P1、P2は、ドローダウン、ネックインなどにより肉厚のバラツキが発生することを防止する観点から溶融張力の高い樹脂材料を用いることが好ましく、一方で金型への転写性、追従性を良好とするため流動性の高い樹脂材料を用いることが好ましい。
【0044】
より具体的にはエチレン、プロピレン、ブテン、イソプレンペンテン、メチルペンテン等のオレフィン類の単独重合体あるいは共重合体であるポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン)であって、230℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)が3.0g/10分以下、さらに好ましくは0.3〜1.5g/10分のもの、またはアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン(HIPS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等の非晶性樹脂であって、200℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度200℃、試験荷重2.16kgにて測定)が3.0〜60g/10分、さらに好ましくは30〜50g/10分で且つ230℃におけるメルトテンション(株式会社東洋精機製作所製メルトテンションテスターを用い、余熱温度230℃、押出速度5.7mm/分で、直径2.095mm、長さ8mmのオリフィスからストランドを押し出し、このストランドを直径50mmのローラーに巻き取り速度100rpmで巻き取ったときの張力を示す)が50mN以上、好ましくは120mN以上のものを用いて形成される。
【0045】
また、シート素材には衝撃により割れが生じることを防止するため、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーが30wt%未満、好ましくは15wt%未満の範囲で添加されていることが好ましい。具体的には水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしてスチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体、水添スチレン−ブタジエンゴム及びその混合物が好適であり、スチレン含有量が30wt%未満、好ましくは20wt%未満であり、230℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)は1.0〜10g/10分、好ましくは5.0g/10分以下で且つ1.0g/10分以上あるものがよい。さらに、シート素材P1、P2には、添加剤が含まれていてもよく、その添加剤としては、シリカ、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機フィラー、可塑剤、安定剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤等が挙げられる。具体的にはシリカ、マイカ、ガラス繊維等を成形樹脂に対して50wt%以下、好ましくは30〜40wt%添加する。
【0046】
表面側シートの材料であるシート素材の表面に化粧材シート140を設ける場合において、化粧材シート140とは、外観性向上、装飾性、成形品と接触する物(例えば、カーゴフロアボードの場合、ボード上面に載置される荷物など)の保護を目的として構成されるものである。化粧材シート140の材質は、繊維表皮材、シート状表皮材、フィルム状表皮材等が適用される。かかる繊維表皮材の素材としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、アクリル、ビニロン等の合成繊維、アセテート、レーヨン等の半合成繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン等の再生繊維、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、又はこれらのブレンド繊維が挙げられる。
【0047】
これらの中でも、触感、耐久性及び成形性の観点から、ポリプロピレン又はポリエステルであることが好ましく、ポリエステルであることがより好ましい。繊維表皮材に用いられる糸は、例えば、ポリエステル:(3〜5)デニール×(50〜100)mm等の繊度が3〜15デニール、繊維長さが2〜5インチ程度のステープルの紡績糸と、細い柔軟なフィラメントを束にしたポリエステル:約150〜1000デニール/30〜200フィラメント=約5デニール×30〜200本等のマルチフィラメント、又は、ポリエステル:400〜800デニール/1フィラメント等の太いモノ・フィラメントと、を組み合わせて用いることが好ましい。
【0048】
化粧材シート140の組織としては、不織布、織物、編物、それらを起毛した布地等が挙げられる。なお、織物には、織組織が縦糸、横糸が順次上下に交絡する平組織のほか、何本かの糸を跳び越して交絡する種々の変化織も含まれる。これらの中でも、伸びに対する方向性がないため、立体形状に成形し易く、且つ表面の触感、風合いに優れることから、不織布であることが好ましい。ここで、不織布とは、繊維を平行に又は交互させて積上げるか又はランダムに散布してウエブを形成し、次いでウエブとなった繊維を接合してなる布状品を意味する。これらの中でも、成形品の立体形状再現性及び外観特性の観点から、ニードルパンチ法により製造された不織布であることが好ましい。また、ニードルパンチ法にて得られた不織布は、織物に比べて強度が小で伸度が大であり任意方向に対する変形度合いが大きいので、不織布としての強度を向上させると共に寸法の安定化を図るために、織布にバインダーを付着させる、又は、ウエブと不織布を重ね針でパンチさせておくことがより好ましい。これらのことから、化粧材シート140は、ポリプロピレン不織布又はポリエステル不織布であることがより好ましい。この場合、化粧材シート140自体が熱可塑性であるので、剥離回収後、加熱して変形させることによって、別の用途に用いることも可能である。例えば主体樹脂層をポリプロピレンにて構成し、化粧材シート140をポリプロピレン不織布で構成すると、成形品の主体樹脂層と化粧材シート140とが同じ素材であることから、リサイクルが容易になる。
【0049】
一方、化粧材シート140がポリエステル不織布であると、ポリプロピレンにて構成した主体樹脂層と繊維表皮材との融点が異なるので、成形品に化粧材シート140を接着する際、熱により変質、変形したり、正しい位置に接着できない等の不具合が生じるのを抑制できる。また、この場合、成形性、剛性、外観及び耐久性にも優れる。また、化粧材シート140の引張強度は、立体形状再現性及び成形性の観点から、15kg/cm2以上であることが好ましく、伸度は、30%以上であることが好ましい。なお、かかる引張強度及び伸度の値は、温度20℃においてJIS−K−7113に準拠して測定したものである。シート状表皮材、フィルム状表皮材としては、熱可塑性エラストマ−、エンボス加工された樹脂層、印刷層が外面に付された樹脂層、合成皮革、滑り止め用メッシュ形状の表皮層等が使用できる。
【0050】
以上の構成を有する樹脂積層板100は、以下の製造方法で製造される。
先ず、表面側シート120A、裏面側シート120Bに対応する熱可塑性樹脂からなる2枚のシート素材を、溶融状態で一対の分割型の間に配置する。次に、一方の分割型に設けた複数の突起部により、一方のシート素材を他方のシート素材に向けて凹ませて複数の第1凹部200S、第2凹部200Lを成形し、一対の分割型を型締めする。これにより、複数の第1凹部200S、第2凹部200Lの底240S、240Lを他方のシート素材に溶着し、2枚のシート素材の間を複数の第1リブ122S、第2リブ122Lで連結させ、中空構造の樹脂積層板100を得る。
【0051】
以上に述べた樹脂積層板100の効果について説明する。
仮に、樹脂積層板の厚みを均一とした場合を考える。
支持された樹脂積層板に何らかの曲げ荷重が加わると、樹脂積層板はこの荷重に応じた撓み量で変形する。一般に、材質や形状を変更せずに撓み量を抑えるためには、樹脂積層板を厚くする対策を講じるが、樹脂積層板の厚みが均一である場合、厚みを増すと樹脂積層板の質量は必然的に増加する。
【0052】
この点、樹脂積層板100は、薄板部100aと、この薄板部100aよりも厚い厚板部100bとからなる。例えば、裏面側シート120Bの両端部が支持され、化粧材シート140の中央部が曲げ荷重を受ける構造体として樹脂積層板100が使用される場合、中央側の広い領域に形成された厚板部100bにより剛性が高まり、撓み量を抑えることができる。結果、質量を増加させずに、樹脂積層板100の剛性を合理的に高めることができる。
【0053】
加えて、複数の第1凹部200S及び複数の第2凹部200Lを略同一のピッチPで配置したので、樹脂積層板100における剛性の均一化が図れる。同時に、金型の加工性、成形性を高め、見栄えも良くなる。
【0054】
そして、必要な強度を確保する限度で表面側シート120A及び裏面側シート120Bそれぞれの厚みを個別に最大限まで薄肉化することが可能であり、軽量化、薄肉化が達成可能である。したがって、樹脂積層板100では、軽量化、薄肉化を確保しつつ、更なる剛性向上が実現できる。
【0055】
次に、樹脂積層板において、厚板部100bを形成する好適な領域を調べるため、第1実施形態を含め、以下に説明する第2〜第4実施形態の各々について解析モデルを設定し、CAE(Computer Aided Engineering)による解析を行った。詳細を以下に説明する。
【0056】
(解析例)
○使用した解析ソフト
CATIA V5 GPS・GASモジュール(線形解析)
○解析条件
解析条件を図6に基づいて説明する。
・基本モデル
図6(A)に示すように、解析に用いる基本モデルMは、表面側シート(図1、符号120A)を裏面側シート(図1、符号120B)に溶着させた形態に相当するものであり、長辺の長さWを288mm、短辺の長さLを208mmとする長方形形状とする。なお、対称形状を考慮し、この基本モデルMの1/4のモデルで解析を行う。
【0057】
・荷重条件
図6(B)に示すように、基本モデルMの上面は、表面側シートの外表面(図5(A)、符号図150)に相当しており、この上面の中央に荷重Fを加える。荷重Fを加える面は、直径Dの円形面とする。荷重Fの大きさは196N、直径Dは60mm、厚みtは7mm均一とする。
【0058】
・拘束条件
基本モデルMの短辺側の端部を支持する拘束部R、Rを設定し、この拘束部Rの幅W1は、24mmとする。
【0059】
・材質条件
モデルの材質は、ポリプロピレンにタルクを添加した材料を想定し、弾性率を825MPa、ポアソン比を0.45、密度を1.0g/cm3とした。
【0060】
○解析モデルM1〜M4
厚みtを均一とした基本モデルMに対し、薄板部と厚板部とからなる解析モデルM1〜M4を設定する。なお、解析モデルM1〜M4では、厚板部の厚みを10mmとするが、各シートの肉厚を調整することにより、解析モデルM1〜M4の各質量は、基本モデルの質量と同一にする。
【0061】
各解析モデルを図7〜図10に基づいて説明する。なお、各図において、斜線部は、厚板部の領域を示す。
【0062】
・解析モデルM1
図7に示すように、解析モデルM1では、基本モデルMにおいて、長方形の4辺に沿って幅W2で形成される領域A1を薄板部100aとし、この薄板部100bで囲われる領域A2を厚板部100bとした。幅W2を29mmに設定し、厚板部100bを拘束部(図6、符号R)よりも中央側に形成した。薄板部100aの厚みを7mm、厚板部100bの厚みを10mmとした。この解析モデルM1は、前記第1実施形態の樹脂積層板100に相当する。
【0063】
・解析モデル2
図8に示すように、解析モデルM2は、本発明に係る第2実施形態であり、基本モデルMにおいて、2つの拘束部(図6、符号R)間を結ぶように帯状に延びる領域A3を設ける。このような帯状の領域A3を、領域A3の延びる方向と直交する方向に5列設け、これら5列の帯状の領域A3を厚板部100bとし、残りの領域A4を薄板部100aとした。領域A3の幅W3は、20mmであり、離間距離L1は、12.5mmである。5列の領域A3は、解析モデルM1の領域A2を5分割した形態となる。この解析モデルM2においても、厚板部100bは、拘束部(図5、符号R)よりも中央側に形成される。薄板部100aの厚みを7mm、厚板部100bの厚みを10mmとした。
【0064】
・解析モデルM3
図9に示すように、解析モデルM3は、本発明に係る第3実施形態であり、基本モデルMにおいて、長方形の4辺に沿って幅W2で形成される領域A1を厚板部100bとし、この厚板部100bで囲われる領域A2を薄板部100aとした。幅W2を29mmに設定し、厚板部100bを拘束部(図6、符号R)に載せるようにした。薄板部100aの厚みを7mm、厚板部100bの厚みを10mmとした。
【0065】
・解析モデルM4
図10に示すように、解析モデルM4は、本発明に係る第4実施形態であり、基本モデルMにおいて、拘束部(図6、符号R)に沿うように(短辺と平行に)帯状に延びる領域A5を設ける。このような帯状の領域A5を、領域A5の延びる方向と直交する方向に5列設け、これら5列の帯状の領域A5を厚板部100bとし、残りの領域A6を薄板部100aとした。領域A5の幅W4は、20mmであり、離間距離L2は、15mmである。5列の領域A5は、解析モデルM1の領域A2を7分割した形態となる。この解析モデルM2においても、厚板部100bは、拘束部(図6、符号R)よりも中央側に形成される。薄板部100aの厚みを7mm、厚板部100bの厚みを10mmとした。
【0066】
・方法
以上の解析条件に基づいて、基本モデルM、解析モデルM1〜M4の解析を行い、各々の撓み量δを求める。
【0067】
○結果
・基本モデルM、解析モデルM1〜M4の撓み量δの解析結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1に示されるように、厚みtを均一とした基本モデルでは、撓み量δが19.8mmであった。これに対し、解析モデルM1では、撓み量δが13.5mmであり、変形が十分に抑制されることが確認された。よって、第1実施形態の樹脂積層材(図1、符号100)のように、中央側にて厚板部100bを広く形成することが有効であると言える。
【0070】
解析モデルM2では、撓み量δが14.3mmであり、変形が十分に抑制されることが確認された。よって、この解析モデルM2(第2実施形態)のように、支持される両端部の間を結ぶように帯状に延びる複数の領域を厚板部とすることは、有効であると言える。
【0071】
解析モデルM3では、撓み量δが16.6mmであり、変形が十分に抑制されることが確認された。よって、この解析モデルM3(第3実施形態)のように、支持される両端部を含み、且つ、所定の幅で外周に沿う領域を厚板部とすることは、有効であると言える。
【0072】
解析モデルM4では、撓み量δが25.5mmであり、基本モデルMの撓み量を上回った。解析モデルM4における厚板部100bの領域(図10、符号A5)は、拘束部(図6、符号R)に沿って延びる。一方、この解析モデルM4に類似する解析モデルM2では、厚板部100bの領域(図8、符号A3)が、拘束部(図6、符号R)と直交する方向に延びており、変形が抑制される良好な結果が得られた。
【0073】
この解析モデルM4と解析モデルM2の結果より、厚板部の領域を帯状で且つ複数列とする場合、一方の拘束部から他方の拘束部に向けて延びるように帯状の領域を形成することが有効であると言える。
【0074】
したがって、解析モデルM4の構成であっても、仮に、長方形の長辺部が拘束されるときは、厚板部100bが有効に作用して、撓み量を抑制することができる。
【0075】
なお、第2〜第4実施形態は、解析モデルとして説明したが、厚板部を設ける領域以外は、第1実施形態の樹脂積層板(図1、符号100)と同じ構成にすることが可能であり、その場合、第1実施形態の樹脂積層板と同様の効果を奏する。
【0076】
次に、樹脂積層板の使用例として、自動車のラゲッジボードに使用した例を図11に基づいて説明する。
自動車の車室内後方には、リヤシートクッション302と左右一対のリヤシートバック304とを備えるリヤシート306が設置されている。リヤシートバック304は、リヤシートクッション302に対して前後へリクライニング可能であり、また前方へ大きく倒れて折り畳むことができる。リヤシートバック304の後方にはラゲッジルーム308が形成されており、そのラゲッジルーム308のフロアパネル上には、工具類やスペアタイヤを収納する収納ボックス310とラゲッジボード300が載置されている。
【0077】
ラゲッジボード300は、ラゲッジルーム308の底面を構成するようにして、収納ボックス310の上部開口全体を覆って載置されるラゲッジボード本体部312Aと、左右のリヤシートバック304の起立・傾倒動作に追従する左右一対の補助ボード部312B、312Bとからなる。
【0078】
ラゲッジボード本体部312Aや左右の補助ボード部312B、312Bは、収納ボックス310の開口やリヤシートバック304の下部後方の空間を覆う内装材であり、同時に様々な荷物が載せられる支持体でもある。このように意匠性と剛性とが要求されるラゲッジボード本体部312Aや左右の補助ボード部312B、312Bに、樹脂積層板(図1、符号100)を使用することで、高品質なラゲッジボード300を得ることができる。
【0079】
続いて、このラゲッジボード本体部312Aを樹脂積層板(図1、符号100)で構成した例を図12に基づいて説明する。
図12に示すように、ラゲッジボード本体部312Aは、表面側シート120Aと、裏面側シート120Bと、化粧材シート140と、からなる3層構造である。ラゲッジボード本体部312Aは、外形が長方形に形成されており、短辺側の左右の端部が収納ボックス310の左右の側壁310a、310aに支持され、収納空間310bを上から塞ぐ。また、ラゲッジボード本体部312Aの上には、荷物等により、白抜きの矢印で示す荷重Fが加わる。
【0080】
左右の側壁310a、310aは、CAEの解析例の拘束部(図6、符号R)に相当し、荷重Fは、CAEの解析例の荷重(図6、符号F)に相当する。そこで、CAEの解析結果に基づき、ラゲッジボード本体部312Aにおいて、側壁310a、310aに接する領域(短辺側の端部)を薄板部100aで形成し、側壁310a、310aよりも中央側(収納空間310b側)の領域の一部又は全体を厚板部100bで形成する。
【0081】
すると、ラゲッジボード本体部312Aの上に荷重Fが加わっても、厚板部100bの高い剛性により、撓み量δが抑制される。したがって、質量を増加することなく、剛性の高いラゲッジボード本体部312Aを得ることができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば種々の修正あるいは変更が可能である。例えば、実施形態においては、自動車向けの内装材として説明したが、それに限定されることなく、鉄道車両、飛行機、船舶等一般車両のみならず、遊園地の乗り物等の特殊車両に対しても適用可能であり、特に特殊車両の場合には、幼児向けに色彩も含めた外観上の美観が重視されることから、樹脂製内装材が適している。また、実施形態においては、平板状の内装材として説明したが、それに限定されることなく、例えば天井材、インストルメントパネル等立体形状を有する用途にも適用可能であり、その場合、軽量化を達成すると共に外形形状を保持できる剛性を維持しつつ、必要な厚みを確保することが可能である。さらに、第2凹部を有する厚板部は第1凹部を有する薄板部に対して相対的に厚さが大きければ良く、任意の厚さに設定することができ、厚板部の厚さは樹脂積層板の部位によって異なる厚みとすることができる。
【符号の説明】
【0083】
100 樹脂積層板
100a 薄板部
100b 厚板部
120A 表面側シート
120B 裏面側シート
122S 第1リブ
122L 第2リブ
200S 第1凹部
200L 第2凹部
240S 底
240L 底
260S 開口
260L 開口
280 中空部
300 ラゲッジボード(車両用内装材)
312A ラゲッジボード本体部(車両用内装材)
312B 補助ボード(車両用内装材)
a 開口径
b 底径
c 底径
d 第1凹部の傾斜角
e 第2凹部の傾斜角
t1 薄板部の厚み
t2 厚板部の厚み
A1〜A5 厚板部の領域
F 荷重
M1〜M4 解析モデル(樹脂積層素材)
P ピッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を隔てて重ねた二枚のシートを備え、一方のシートを前記中空部内に凹ませて複数の凹部を設け、これら複数の凹部の底を他方のシートに溶着することで、前記二枚のシートの間を複数のリブで連結してなる樹脂積層板であって、
複数の第1凹部を有する薄板部と、第1凹部に対して相対的に深さが大きい複数の第2凹部を有する厚板部と、で構成し、
前記複数の第1凹部及び前記複数の第2凹部を略同一のピッチで配置したことを特徴とする樹脂積層板。
【請求項2】
前記複数の第1凹部及び前記複数の第2凹部を、前記底から開口に向けて拡径する円錐台形に形成し、
前記第1凹部及び前記第2凹部のそれぞれの円錐台斜面の傾斜角を調整することにより、
前記複数の第1凹部の開口径と前記複数の第2凹部の開口径を同一寸法とし、
前記複数の第1凹部の底径と前記複数の第2凹部の底径を同一寸法としたことを特徴とする請求項1記載の樹脂積層板。
【請求項3】
前記一方のシートの両端部が支持され、前記他方のシートの中央部が曲げ荷重を受ける構造体であって、
前記支持される両端部よりも中央側の一部の領域又は全体の領域を前記厚板部としたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の樹脂積層板。
【請求項4】
前記支持される両端部の間を結ぶように帯状に延びる領域を設け、このような帯状の領域を、この領域の延びる方向と直交する方向に複数列設け、これら複数列の帯状の領域を前記厚板部としたことを特徴とする請求項3記載の樹脂積層板。
【請求項5】
前記一方のシートの両端部が支持され、前記他方のシートの中央部が曲げ荷重を受ける構造体であって、
前記支持される両端部を含み、且つ、所定の幅で外周に沿う領域を設け、この外周に沿う領域を前記厚板部としたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の樹脂積層板。
【請求項6】
平面視で外形が長方形である車両用内装材であって、
前記支持される両端部は、前記一方のシートの対辺部であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項記載の樹脂積層板。
【請求項1】
中空部を隔てて重ねた二枚のシートを備え、一方のシートを前記中空部内に凹ませて複数の凹部を設け、これら複数の凹部の底を他方のシートに溶着することで、前記二枚のシートの間を複数のリブで連結してなる樹脂積層板であって、
複数の第1凹部を有する薄板部と、第1凹部に対して相対的に深さが大きい複数の第2凹部を有する厚板部と、で構成し、
前記複数の第1凹部及び前記複数の第2凹部を略同一のピッチで配置したことを特徴とする樹脂積層板。
【請求項2】
前記複数の第1凹部及び前記複数の第2凹部を、前記底から開口に向けて拡径する円錐台形に形成し、
前記第1凹部及び前記第2凹部のそれぞれの円錐台斜面の傾斜角を調整することにより、
前記複数の第1凹部の開口径と前記複数の第2凹部の開口径を同一寸法とし、
前記複数の第1凹部の底径と前記複数の第2凹部の底径を同一寸法としたことを特徴とする請求項1記載の樹脂積層板。
【請求項3】
前記一方のシートの両端部が支持され、前記他方のシートの中央部が曲げ荷重を受ける構造体であって、
前記支持される両端部よりも中央側の一部の領域又は全体の領域を前記厚板部としたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の樹脂積層板。
【請求項4】
前記支持される両端部の間を結ぶように帯状に延びる領域を設け、このような帯状の領域を、この領域の延びる方向と直交する方向に複数列設け、これら複数列の帯状の領域を前記厚板部としたことを特徴とする請求項3記載の樹脂積層板。
【請求項5】
前記一方のシートの両端部が支持され、前記他方のシートの中央部が曲げ荷重を受ける構造体であって、
前記支持される両端部を含み、且つ、所定の幅で外周に沿う領域を設け、この外周に沿う領域を前記厚板部としたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の樹脂積層板。
【請求項6】
平面視で外形が長方形である車両用内装材であって、
前記支持される両端部は、前記一方のシートの対辺部であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項記載の樹脂積層板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−10273(P2013−10273A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144965(P2011−144965)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]