説明

樹脂管溶着装置及び溶着方法

【課題】接合部を溶融させて管端部とチューブ端部とを溶着する際には、溶着継手の段差側面にチューブ端面が当接する正規の差込状態になっており、溶着継手とチューブとの差し込み不足によって段差側面とチューブ端面とに間に隙間が生じてしまう、という不都合が生じないように改善される樹脂管溶着装置を提供する。
【解決手段】フッ素樹脂製溶着継手4の管端部4Aとフッ素樹脂製チューブ11のチューブ端部11Aとが嵌合されて成る接合部sに外囲する発熱部7の発熱により、接合部sを加熱溶融して管端部4Aとチューブ端部11Aとの溶着が可能に構成されている樹脂管溶着装置Aにおいて、チューブ11をその端面11tから所定距離離された箇所にて外囲係止可能なクランプ2と、クランプ2をチューブ長手方向での相対位置が定まる状態で係止可能な溶着装置本体1とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂管溶着装置及び溶着方法に係り、詳しくは、合成樹脂製溶着継手の管端部と合成樹脂製チューブのチューブ端部とが嵌合されて成る接合部に外囲する発熱部を有し、発熱部の発熱によって接合部を加熱溶着して管端部とチューブ端部との溶着が可能に構成されている樹脂管溶着装置、並びにその溶着装置を用いての溶着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の樹脂管溶着装置や溶着方法としては、特許文献1において開示されたものが知られている。即ち、樹脂継手(100)を位置決め保持可能なクランパ(30)と、接合部(J)を加熱する加熱部(40)とを備える溶着ヘッド(10)を有し、クランパ(30)は、樹脂継手(100)の位置決め突出部(110)に嵌合する継手保持部(31)を有して継手保持部(31)が位置決め突出部(110)と嵌合するように閉じた閉じ位置と、その嵌合を解除可能に開いた開き位置との間を揺動可能に支持されている。そして、加熱部(40)は、閉じ位置で接合部(J)を囲むように配設され、継手保持部(31)によって樹脂継手(100)を位置決めした状態に保持しながら加熱部(40)によって接合部(J)を加熱して溶着するものである。
【0003】
上述の溶着装置及び方法を簡略化して説明すると、図6に示すように、溶着装置Aは、溶着継手24を外囲保持する継手保持部25と、チューブ31を外囲保持するチューブ保持部26とを有しており、溶着継手24の管端部24Aに外装されるホルダ34に外嵌される状態の発熱手段(ヒータ)27が、それら両保持部25,26の間に配置されている。なお、継手保持部25、チューブ保持部26、及び発熱手段27のそれぞれは、下部構造体25k,26k,27kと、上部構造体25j,26j,27jとが枢支連結されて成り、それら三者25,26,27が一体的に揺動開閉する公知の構造に構成されている。
【0004】
溶着継手24とチューブ31との接合部sを溶融させて溶着するには、まず、溶着継手24におけるホルダ34の外装されている管端部24Aにチューブ31の端部31Aを差し込む(内嵌合させる)挿入工程を行う。次いで、そのチューブ31を伴っている溶着継手24を、その環状凸条(位置決め環リブ)24Bが継手保持部25の下部構造体25kの半環状凹溝38に嵌め入れられる状態で下部構造体25k,26k,27kに位置決め載置するセット工程を行う。
【0005】
そして、チューブ31を、その先端面である端面31tが管端部24Aの段差側面24cに当接するまで溶着継手1に差し込む確認挿入工程を行い、その後に上部構造体25j,26j,27jを下降揺動させて下部構造体25k,26k,27kに係止結合させ、継手保持部25で溶着継手24を、かつ、チューブ保持部26でチューブ31をそれぞれ挟持保持させる装着工程を行う。それから、発熱手段27を動作させて接合部sを溶融させて、溶着継手24の管端部24Aとチューブ31の端部31Aとが溶着一体化する溶着工程を行う、という具合になる。
【0006】
ところで、正しく溶着するには、確認挿入工程の際にチューブ31を、チューブ端面31tが溶着継手24の段差側面24cに当接させて、それら両者31t,24cが接する状態(図6における中心線Dより紙面下側に描かれている状態)にすること、及びその当接状態で装着工程を行うことが必須である。しかしながら、往々にして確認挿入があいまいに行われるという確認挿入工程の不備、或いは、装着工程の際にチューブ3が若干抜き出し方向にズレ動いてしまう不手際により、図6における中心線Dより紙面上側に描かれるように、段差側面24cと端面31tとが中心線D方向で互いに離れて隙間(環状隙間)mが形成された状態で溶着されてしまうことがあった。
【0007】
隙間mがあると、そこで流体が淀んだり、異物やゴミが溜まったりして都合が悪い。とりわけ、流体が半導体洗浄液や薬液といったクリーンさが要求される場合には、淀みによって純度が落ちてしまうという深刻な問題を招くおそれがある。このように、チューブを初期の位置にて継手本体に溶着させるのに、いわば現場での作業者の感に頼るような従来の装置や方法では不確実であり、改善の余地が残されているものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−069880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、接合部を溶融させて管端部とチューブ端部とを溶着する際には、溶着継手の段差側面にチューブ端面が当接する正規の差込状態になっており、溶着継手とチューブとの差し込み不足によって段差側面とチューブ端面とに間に隙間が生じてしまう、という不都合が生じないように改善される樹脂管溶着装置、及び溶着方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、合成樹脂製溶着継手4の管端部4Aと合成樹脂製チューブ11のチューブ端部11Aとが嵌合されて成る接合部sに外囲する発熱部7を有し、前記発熱部7の発熱によって前記接合部sを加熱溶融して前記管端部4Aと前記チューブ端部11Aとの溶着が可能に構成されている樹脂管溶着装置において、
前記チューブ11をそのチューブ端面11tから所定距離離された箇所にて外囲係止可能なクランプ2と、前記クランプ2を前記チューブ長手方向での相対位置が定まる状態で係止可能な溶着装置本体1とを有することを特徴とするものである。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の樹脂管溶着装置において、前記クランプ2と前記溶着装置本体1とを相対係止させる係止部6における前記クランプ2と前記溶着装置本体1とのチューブ長手方向の相対位置を定める位置決め手段Bが、互いに嵌合可能な環状凸条13と環状凹溝17とを前記クランプ2と前記溶着装置本体1とに振分け配備することで構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の樹脂管溶着装置において、前記位置決め手段Bが、前記クランプ2に形成される前記環状凸条13と前記溶着装置本体1に形成される前記環状凹溝17とで構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の樹脂管溶着装置において、前記クランプ2が、前記チューブ端面11tをチューブ軸心Tに対して垂直でフラットな面に仕上げ加工する場合に用いられるクランプで構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項5に係る発明は、合成樹脂製溶着継手4の管端部4Aと合成樹脂製チューブ11のチューブ端部11Aとが嵌合されて成る接合部sに外囲する発熱部7を有し、前記発熱部7の発熱によって前記接合部sを加熱溶融して前記管端部4Aと前記チューブ端部11Aとの溶着が可能に構成されている溶着装置Aを用いて、前記管端部4Aと前記チューブ端部11Aとを溶着する樹脂管溶着方法において、
前記チューブ11を外囲係止可能なクランプ2、及び前記クランプ2を前記チューブ長手方向の相対位置が定まる状態で係止可能な溶着装置本体1を用意し、前記チューブ11をそのチューブ端面11tから所定距離離された箇所にて前記クランプ2で外囲係止させ、前記チューブ11が係止されている前記クランプ2を前記溶着装置本体1に係止させた状態で前記接合部sを加熱溶融して前記管端部4Aと前記チューブ端部11Aと溶着させることを特徴とするものである。
【0015】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の樹脂管溶着方法において、前記クランプ2として、前記チューブ端面11tをチューブ軸心Tに対して垂直でフラットな面に仕上げ加工する場合に用いられるクランプを兼用することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、詳しくは実施形態の項にて説明するが、溶着装置本体が、クランプをチューブ長手方向での相対位置が定まる状態で係止可能に構成されているので、チューブを規定通りにクランプに予備組付けしておけば、必ずチューブ端面と段差側面とが当接する正規の挿入状態で溶着することができるものとなる。その結果、接合部を溶融させて管端部とチューブ端部とを溶着する際には、溶着継手の段差側面にチューブ端面が当接する正規の差込状態になっており、溶着継手とチューブとの差し込み不足によって段差側面とチューブ端面とに間に隙間が生じてしまう、という不都合が生じないように改善される樹脂管溶着装置を提供することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、クランプと溶着装置本体との位置決め手段が、互いに嵌合可能な環状凸条と環状凹溝とをクランプと溶着装置本体とに振分け配備することで構成されているから、環状凸条と環状凹溝とを嵌め合わせてクランプを溶着装置本体にセットするだけの簡単な操作により、請求項1の発明による前記効果を確実に得ることができる利点を奏することができる。この場合、請求項3のように、クランプに環状凸条を、かつ、溶着装置本体に環状凹溝を設けるようにすれば、その逆の構成を採る場合に比べて、クランプを含めた溶着装置としてのチューブ軸心方向長さのコンパクト化が可能となる利点がある。
【0018】
請求項4の発明によれば、チューブの端面をチューブ軸心に対して垂直でフラットな面に仕上げ加工する際に用いられるクランプが、溶着装置本体に係止させるクランプに兼用構成できるから、専用の治具を一つ省くことができ、コストダウンや管理費の節減に寄与できるという、より合理的な樹脂管溶着装置を提供することができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、請求項1の発明による樹脂管溶着装置の効果と同等の効果を得る樹脂管溶着方法を提供することができ、請求項6の発明によれば、請求項4の発明による樹脂管溶着装置の効果と同等の効果を得る樹脂管溶着方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】樹脂管溶着装置の正面図
【図2】互いに分離されている装置本体及びチューブ保持具それぞれの斜視図
【図3】溶着工程における溶着装置の要部を示す概略の断面図
【図4】(a)クランプ工程を示す作用図、(b)外嵌工程を示す作用図
【図5】セット工程を示す作用図
【図6】従来の溶着工程及びその状態で溶着装置の要部を示す概略の断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明による樹脂管溶着装置及び樹脂管溶着方法の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0022】
〔実施例1〕
樹脂管溶着装置Aは、図1〜図3に示すように、脚部3を備える下部構造体1Kと、これに横向きの軸心Pで枢支される上部構造体1Jとを有する溶着装置本体1、及びこれとは別体のクランプ(チューブ保持具)2とから構成されている。この溶着装置Aは、溶着継手4の端部とチューブ11の端部とを互いに差し込まれて部分である接合部sを加熱して溶融一体化させるものである。溶着装置本体1は、チューブ11を外囲係止(把持)するクランプ2と、チューブ11に差し込まれている溶着継手4とを挟み込んで支持するものに構成されている(図3参照)。
【0023】
溶着装置本体1は、図1〜図3に示すように、溶着継手4を挟んで係止する継手保持部5、クランプ2をチューブ長手方向の相対位置が定まる状態で係止可能なクランプ保持部6、継手保持部5とクランプ保持部6との間に配置される発熱部(加熱手段)7、上部構造体1Jを下降揺動させた閉じ位置にて係止保持するためのバックル8等を有して構成されている。下部構造体1Kの軸心P側には、各種リード線e等が取り出される装置基部1Aが設けられ、揺動端(反軸心P側)には、バックル8を係止させる係止片8aが装備されている。
【0024】
継手保持部5、クランプ保持部(係止部の一例)6、及び発熱部7のそれぞれは、下部構造体1Kに組み込まれる半割り下部5a,6a,7aと、上部構造体1Jに組み込まれる半割り上部5b,6b,7bとから成っている。図1,3は、上部構造体1Jが下降揺動してバックル8で下部構造体1Kに係止された溶着作用状態を示し、図2は、上部構造体1Jが上昇揺動した開放待機状態を示している。開放待機状態(図2)は、溶着継手4やクランプ2を溶着装置本体1に対して脱着を行う開き姿勢であり、溶着作用状態(図1)は、接合部sを加熱して溶着させる閉じ姿勢である。
【0025】
クランプ2は、図1〜図4に示すように、軸心Xで揺動開閉可能な上下の半割り保持片2A,2Bから成る。下半割り保持片2Bにおける軸心Xの反対側端部には、クランプ2を閉じ状態に維持するための係止レバー9が枢支連結されており、上半割り保持片2Aにおける軸心Xの反対側端部には、係止レバー9の胴部9aを挿入させてそれより大径の頭部9bを係止させるための縦溝10が形成されている。また、両半割り保持片2A,2Bには、チューブ11を外囲して保持する把持部12を形成する半割り内周面12A,12B、及び環状凸条13(後述)を形成する半割り凸条13A,13Bが形成されている。
【0026】
図1,4は、上半割り保持片2Aが下降揺動して係止レバー9で下半割り保持片2Bに係止された把持作用状態であり、図2は、上半割り保持片2Aが上昇揺動した連結開放状態を示している。連結開放状態(図2)は、チューブ11をクランプ2に対して脱着を行う開き姿勢であり、把持作用状態(図1)は、チューブ11を把持部12で外囲係止(把持)する閉じ姿勢である。なお、各保持片2A,2Bにおける本体部分と環状凸条13との間の部分は、軸心T方向で若干の距離を持つ環状のクリアランス溝13Cに形成されている。
【0027】
溶着継手4は、図3〜5に示すように、チューブ11を内嵌させる差込内周部15、及びホルダ(後述)14を外装させる装着外周面16を備える管端部4A、管端部4Aから軸心Y方向(軸心T方向)で溶着継手4としての内奥側に若干離れた箇所に形成される環状突起4B、及び内部流路4aを有するフッ素樹脂(合成樹脂の一例)製の筒状体である。ホルダ14は、一端に径外側に突出した環状の厚肉端部14Aを有する基本薄肉でフッ素樹脂製の筒状部材であり、溶着継手4の装着外周面16に外嵌装着されて使用される。
【0028】
チューブ11は、図3〜5に示すように、溶着継手4の内部流路4aと同径の内部流路11aを有するフッ素樹脂製(合成樹脂の一例)の管状体である。その溶着継手4への挿入側となるチューブ端部11Aの端面11tは、予めの切削加工等により、チューブ軸心Tに対して丁度90度を呈する垂面に形成されている。チューブ端部11Aと、これが差し込まれている管端部4Aとにより、これら両者11A,4Aが溶着によって一体化されるべく接合部sを構成している。
【0029】
以上により、溶着装置Aは、チューブ11をその端から所定距離n離された箇所にて外囲係止可能なクランプ2と、クランプ2をチューブ11の長手方向の相対位置が定まる状態で係止可能な溶着装置本体1と、これら両者2,1の相対位置を定める位置決め手段Bとを有しており、合成樹脂製溶着継手4の管端部4Aと合成樹脂製チューブ11のチューブ端部11Aとが嵌合されて成る接合部sに外囲する発熱部7を有し、発熱部7の発熱によって接合部sを加熱溶融させて管端部4Aとチューブ端部11Aとの溶着一体化が可能に構成されている。
【0030】
クランプ2と溶着装置本体1とを相対係止させるクランプ保持部6におけるクランプ2と溶着装置本体1との軸心T方向(チューブ長手方向)の相対位置を定める位置決め手段Bは、互いに嵌合可能な環状凸条13と環状凹溝17とをクランプ2と溶着装置本体1とに振分け配備することで構成されている。実施例1においては、クランプ2に側方突出状態で環状凸条13が、そして溶着装置本体1のクランプ保持部6に環状凹溝17がそれぞれ形成されて位置決め手段Bが構成されている。例えば、溶着装置本体1にそこから側方突出状態で環状凸条を設け、かつ、クランプ2に環状凹溝を設ける手段も可能であるが、その場合には、図3,5に示す実施例1の場合の構造のものに比べて、装置Aとしての幅寸法の肥大化を招き易き易い。
【0031】
図2,図3に示すように、溶着継手4をその軸心Y方向での位置が定まる状態で溶着装置本体1で外囲保持させる位置定め機構Cが装備されている。即ち、位置定め機構Cは、溶着継手4に形成されている環状突起4Bと、溶着装置本体1の継手保持部5に形成されている環状溝18とで構成されている。つまり、環状突起4Bが環状溝18に嵌り込んでいれば、環状突起4Bの内奥側側周面4bと管端面4tとの軸心Y方向間隔dが、環状溝18の外側周面18aからの軸心Y方向の突出長さとして定まるようになっている。
【0032】
次に、溶着装置Aを用いての溶着方法について説明する。まず、開き姿勢又は閉じ姿勢から若干開けた姿勢のクランプ2にチューブ11を通してから、上半割り保持片2Aを下降揺動させるとともに、係止レバー9を縦溝10に入れ込み、図4(a)に示すように、クランプ2でチューブ11を外囲係止(把持)する把持工程を行う。このとき、環状凸条13の端面13aとチューブ端面11tとの軸心T方向間隔が所定の値nとなるようにする寸法セット工程も行われる。環状凸条13の幅寸法(軸心T方向寸法)はgに設定されているので、環状凸条13の内側側面13sとチューブ端面11との間隔寸法(軸心T方向寸法)はn+gとなる。
【0033】
寸法セット工程は、例えば、図4(a)に参考として示すように、設定治具19を用いれば好都合であり、チューブ端面11tが第1当接面19aに当接し、かつ、端面13aが第2当接面19bに当接させてチューブ11をクランプすれば、クランプ2でチューブ11をその突出量が所定値nとなる状態で外囲係止(把持)することが容易に行える。なお、図示は省略するが、環状凸条13の内側側面13sとチューブ端面11tとの間隔(n+g)を直接測定する治具を用いて寸法セット工程を行う方法でも良い。
【0034】
次に、チューブ11における環状凸条13からの突出端部に、既にホルダ14が外装されている溶着継手1を差し込んで外嵌させ、図4(b)に示すように、管端部4Aがチューブ端部11Aに外装されて溶着継手4とチューブ11とを嵌合して仮連結させる継手差込工程を行う。このとき、一応、管端部4A内部の段差側面4cにチューブ11の端面11tが当接するまで差し込んでおく。この端面11tと段差側面4cとが当接する状態での溶着継手4とチューブ11との嵌合長はfである。
【0035】
仮連結が済んだら、図5に示すように、溶着継手4の環状突起4Bを継手保持部の半割り下部5aの環状溝18に嵌め入れ、かつ、クランプ2の環状凸条13(下半割り凸条13B)をクランプ保持部6の半割り下部6aに嵌め入れる状態で、クランプ2を伴うチューブ11と溶着継手4との仮連結体を下部構造体1kに載置保持させる装填工程を行う。
【0036】
ここで、環状溝18の外側周面18aと環状凹溝17の外側周面17aとの間隔(軸心Y方向寸法)hは、端面11tと段差側面4cとが当接する正規の挿入状態(換言すれば、環状凸条13からのチューブ端部11Aの突出量がnの状態)であるときの環状突起4Bの内奥側側周面4bと環状凸条13の内側側面13sとの間隔寸法〔軸心Y(T)方向の寸法〕に等しく、或いは極わずかに小さく設定されている。つまり、寸法h=寸法d+寸法n+寸法g−寸法fに設定されている。
【0037】
そして、装填工程の次には、上昇揺動して開き姿勢にある上部構造体1Jを下降揺動移動させるとともにバックル8を係止動作させ、図3に示すように、溶着装置本体1にクランプで外囲保持されているチューブ11及び溶着継手4を装着させて溶着可能状態とする装着工程を行う。それから、ホルダ14に外嵌された状態となっている発熱部7に通電して発熱させ、ホルダ14を介して接合部sを加熱して溶融させ、チューブ端部11Aと管端部4Aとを溶着一体化する溶着工程を行うのである。
【0038】
つまり、チューブ11を外囲固定可能なクランプ2、及びクランプ2をチューブ11の長手方向の相対位置が定まる状態で係止可能な溶着装置本体1を用意し、チューブ11をその端(端面11t)から所定距離(n)離された箇所にてクランプ2で外囲係止させ、チューブ11が把持されているクランプ2を溶着装置本体1に係止させた状態で接合部sを加熱溶着させる樹脂管溶着方法である。本溶着Y方法においては、把持工程(寸法セット工程を含む)→継手差込工程→装填工程→装着工程→溶着工程となる。
【0039】
もちろん、溶着工程が済めば、上部構造体1Jを上昇揺動してクランプ2を伴う継手一体品(互いに溶着された溶着継手4とチューブ11)を取り出す取出工程、及び継手一体品からクランプ2を外すクランプ外し工程とが行われる。これらの取出工程及びクランプ外し工程は、特に説明しなければ理解できないという複雑な工程ではないので、この程度の記載とする。
【0040】
このように、本発明による樹脂管溶着装置A及び溶着方法によれば、チューブ11を規定通りにクランプ2に予備組付けしておけば、図5に示す装填工程以降においては、チューブ端面11tと段差側面4cとが必ず当接する正規の挿入状態で溶着することができるものとなる。従来では、チューブの確認挿入工程という余分な工程が必要であるにも拘らず、その確認挿入工程の不備、或いはチューブを外囲保持させるセット工程の不手際によってチューブ端面と段差側面とが離れたまま溶着されてしまうおそれがあるという欠点があったが、本発明では、チューブ11を溶着装置本体1にセットする時点におけるそのような不都合は生じない。
【0041】
即ち、チューブ11をクランプ2で外囲係止させる際に規定の突出量nに設定しさえすれば、その後におけるチューブ11のクランプ2からの突出量の確認作業を一切不要としながら、確実で迅速に溶着一体化することができるのである。従来では、チューブ端面と段差側面とが初期どおりの状態になっているか否かを、溶着装置でチューブを挟んで係止させた後において確認することが不能であったが、本発明では、チューブ11をクランプ2で外囲係止(把持)した後でも、継手差込工程までの間においては、チューブ端部11Aの突出量がnになっているかの再確認が可能である点でも好ましいものである。
【0042】
ところで、チューブ11の端面11tは、正確な寸法が出せるように、溶着装置Aにかかる前に、専用の加工機等により、チューブ端面11tをチューブ軸心Tに対して垂直でフラットな面に仕上げ加工されるのであり、その際はチューブ11をクランプ治具(クランプ)にてクランプ(把持)し、そのクランプ治具を加工機にセット保持させた状態で端面加工が為される。本発明においては、溶着装置本体1の形状や構造工夫により、そのクランプ治具を溶着装置Aにおけるクランプ2として使えるように兼用させてあるので、専用の治具を一つ省くことができ、コストダウンや管理費の節減にも寄与できている。
【符号の説明】
【0043】
1 溶着装置本体
2 クランプ
4 溶着継手
4A 管端部
6 係止部
7 発熱部
11 チューブ
11A チューブ端部
11t チューブ端面
13 環状凸条
17 環状凹溝
B 位置決め手段
T チューブ軸心
s 接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製溶着継手の管端部と合成樹脂製チューブのチューブ端部とが嵌合されて成る接合部に外囲する発熱部を有し、前記発熱部の発熱によって前記接合部を加熱溶融して前記管端部と前記チューブ端部との溶着が可能に構成されている樹脂管溶着装置であって、
前記チューブをそのチューブ端面から所定距離離された箇所にて外囲係止可能なクランプと、前記クランプを前記チューブ長手方向での相対位置が定まる状態で係止可能な溶着装置本体とを有する樹脂管溶着装置。
【請求項2】
前記クランプと前記溶着装置本体とを相対係止させる係止部における前記クランプと前記溶着装置本体とのチューブ長手方向の相対位置を定める位置決め手段が、互いに嵌合可能な環状凸条と環状凹溝とを前記クランプと前記溶着装置本体とに振分け配備することで構成されている請求項1に記載の樹脂管溶着装置。
【請求項3】
前記位置決め手段が、前記クランプに形成される前記環状凸条と前記溶着装置本体に形成される前記環状凹溝とで構成されている請求項2に記載の樹脂管溶着装置。
【請求項4】
前記クランプが、前記チューブ端面をチューブ軸心に対して垂直でフラットな面に仕上げ加工する場合に用いられるクランプで構成されている請求項1〜3の何れか一項に記載の樹脂管溶着装置。
【請求項5】
合成樹脂製溶着継手の管端部と合成樹脂製チューブのチューブ端部とが嵌合されて成る接合部に外囲する発熱部を有し、前記発熱部の発熱によって前記接合部を加熱溶融して前記管端部と前記チューブ端部との溶着が可能に構成されている溶着装置を用いて、前記管端部と前記チューブ端部とを溶着する樹脂管溶着方法であって、
前記チューブを外囲係止可能なクランプ、及び前記クランプを前記チューブ長手方向の相対位置が定まる状態で係止可能な溶着装置本体を用意し、
前記チューブをそのチューブ端面から所定距離離された箇所にて前記クランプで外囲係止させ、前記チューブが係止されている前記クランプを前記溶着装置本体に係止させた状態で前記接合部を加熱溶融して前記管端部と前記チューブ端部と溶着させる樹脂管溶着方法。
【請求項6】
前記クランプとして、前記チューブ端面をチューブ軸心に対して垂直でフラットな面に仕上げ加工する場合に用いられるクランプを兼用する請求項5に記載の樹脂管溶着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−189092(P2012−189092A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50996(P2011−50996)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000229737)日本ピラー工業株式会社 (337)
【Fターム(参考)】