説明

樹脂系滑り止め舗装材料

【課題】 下地温度が0℃から50℃となる全季節にわたり、火気や加温設備を使用すること無く、速硬化で臭気の発生が少なく施工できる滑り止め舗装材料を提供する。
【解決手段】 分子内に不飽和基を有する反応性オリゴマー(a)及び分子量160以上の(メタ)アクリロイル基を有するエチレン性不飽和単量体(b)を含む主剤(A)と硬化剤として有機過酸化物(B)とを含む二液硬化型樹脂組成物からなる樹脂系滑り止め舗装材料であって、前記主剤(A)100重量部に前記有機過酸化物(B)5重量部を25℃の温度下で添加し撹拌したとき、前記有機過酸化物(B)が60秒以内に主剤(A)に溶解するものであることを特徴とする樹脂系滑り止め舗装材料、及びこの舗装材料を用いた道路の施工方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、速硬化、低臭を特徴とする二液硬化型樹脂組成物からなる樹脂系滑り止め舗装材料に関するものであり、またこの材料を道路表面に塗布し、その上に骨材を散布することを特徴とする道路の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路表面に樹脂を塗布し、骨材を散布する樹脂系滑り止め舗装は、1950年代にアメリカ合衆国にて、エポキシ樹脂を用いて施工された。日本でも、1960年代より、可撓性を有するエポキシ樹脂を用い、交通事故の低減の為、滑り抵抗性のアップや、注意喚起、視認性の向上を目的として施工される様になった。
【0003】
エポキシ樹脂は、各種材料との接着性に優れ、機械的強度が高く、耐水性、耐薬品性に優れる特徴を有するが、硬化が遅く、特に、低温では、顕著に硬化が遅くなるため、通常交通開放まで一晩以上要する。また、ガスバーナー等で施工表面を加熱し、硬化を早める施工方法も行われているが、完全硬化までには数時間を有し、また、火気の危険性や騒音の問題がある
【0004】
10年程前より、本用途において、硬化が速く、開放時間を短縮でき、その硬化物は耐候性や耐薬品性等の耐久性が良好である不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、MMA樹脂等が提案され(例えば特許文献1参照)、実績を重ねてきている。
【0005】
しかしながら、近年、道路舗装分野等の屋外においても環境問題及び異臭問題への関心の高まりにより、揮発性の高い溶剤や反応性モノマーを規制する動きが高まっており、これらの溶剤等を含まない舗装材料が要望されている。
【0006】
この課題に対して、分子量が160以上の(メタ)アクリロイル基を有するエチレン性不飽和単量体を用いる案、フェニル基を有し分子量180以上の(メタ)アクリレート基を有するモノマーを用いる案が提案されている(例えば特許文献2及び3参照)。
【0007】
しかしながら、これらの単量体を含む樹脂に、通常硬化剤として用いられる粉体状や顆粒状のジアシルパーオキサイド系過酸化物を添加すると、樹脂への溶解率が悪いため、硬化不良が発生していた。
【0008】
この課題に対して、従来スラリー状の有機過酸化物を用いる方法もあったが、スラリー中の有効成分である有機過酸化物の沈降等のため硬化不良が発生していた。このため分散性、または溶解性等に優れる硬化剤の開発が求められていた。
【特許文献1】特開平03−002212号公報
【特許文献2】特開平8−283357号公報
【特許文献3】特開平11−209628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、下地温度が0℃から50℃となる全季節にわたり、火気や加温設備を使用すること無く、速硬化で臭気の発生が少なく施工できる滑り止め舗装材料を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、低臭速硬化の樹脂組成及び性状、硬化剤の種類及び性状に着目し、また特定の有機過酸化物に着目することにより、下地温度が0℃から50℃となる全季節にわたり、火気や加温設備を使用すること無く、硬化不良がなく、速硬化で臭気の発生が少なく施工できることを発見するに及んで、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、分子内に不飽和基を有する反応性オリゴマー(a)及び分子量160以上の(メタ)アクリロイル基を有するエチレン性不飽和単量体(b)を含む主剤(A)と硬化剤として有機過酸化物(B)とを含む二液硬化型樹脂組成物からなる樹脂系滑り止め舗装材料であって、前記主剤(A)100重量部に前記有機過酸化物(B)5重量部を25℃の温度下で添加し撹拌したとき、前記有機過酸化物(B)が60秒以内に主剤(A)に溶解するものであることを特徴とする樹脂系滑り止め舗装材料を提供する。また本発明は、前記樹脂系滑り止め舗装材料を道路表面に塗布した後、骨材を散布することを特徴とする道路の施工方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の舗装材料は、下地温度が0℃から50℃となる全季節にわたり、火気や加温設備を使用すること無く、硬化不良がなく、速硬化で臭気の発生が少なく施工できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明は、主剤(A)と硬化剤(B)とを含む二液硬化型樹脂組成物からなる樹脂系滑り止め舗装材料に関する。
主剤(A)は、分子内に不飽和基を有する反応性オリゴマー(a)と分子量160以上の(メタ)アクリロイル基を有するエチレン性不飽和単量体(b)とを含むものである。
本発明に使用する分子内に不飽和基を有する反応性オリゴマー(a)とは、好ましくはビニルエステルタイプの樹脂であり、具体的にはウレタン(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂から選択されるものである。
【0013】
本発明のオリゴマー(a)として用いられるウレタン(メタ)アクリレート樹脂とは、好ましくはポリオール、ポリイソシアネートおよび1分子に1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応により得られるものであり、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する。
【0014】
前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂に用いられるポリオールとしては、好ましくは数平均分子量が200〜3000、特に好ましくは400〜2000のものである。このポリオールは、代表的にはポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカ−ボネ−トポリオール、ポリブタジエンポリオール等が挙げられる。
【0015】
ここで言うポリエーテルポリオールとは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレンオキサイドの他に、ビスフェノールA及びビスフェノールFに上記アルキレンオキサイドを付加させたポリオールも含むことが出来る。
【0016】
又、ポリエステルポリオールは、二塩基酸と多価アルコールの縮合重合体又はポリカプロラクトンの様に環状エステル化合物の開環重合体である。ここで使用する二塩基酸とは、例えば、フタル酸、無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、4,4'−ビフェニルジカルボン酸、またこれらのジアルキルエステル等を挙げることができる。又、多価アルコールとは、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールAとプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドの付加物、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−プロパンジオール、1,2−シクロヘキサングリコール、1,3−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル−4,4'−ジオール、2,6−デカリングリコール、2,7−デカリングリコール等を挙げることができる。
【0017】
又、前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂に用いるポリイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート及びその異性体または異性体の混合物(以下TDIと略す)、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができ、それらの単独または2種以上で使用することができる。上記ポリイソシアネートのうちジイソシアネート、特にTDIが好ましく用いられる。
【0018】
前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂に用いられる1分子に1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、たとえば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のモノ(メタ)アクリレート類、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。
【0019】
前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の製造方法の例を挙げれば、1)先ずポリイソシアネートとポリオールを好ましくはNCO/OH=1.3〜2で反応させ、末端イソシアネート化合物を生成させ、次いでそれに水酸基含有(メタ)アクリレート化合物をイソシアネート基に対して水酸基がほぼ等量になるように反応する方法と、2)ポリイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリレート化合物をNCO/OH=2以上で反応させ、片末端イソシアネートの化合物を生成させ、次いでポリオールを加えて反応する方法等が挙げられる。
【0020】
前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、好ましくは1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するもので、エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸とをエステル化触媒の存在下で反応して得られるものである。
【0021】
ここでいうエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールタイプまたはノボラックタイプのエポキシ樹脂単独、または、ビスフェノールタイプとノボラックタイプのエポキシ樹脂とを混合した樹脂などであって、その平均エポキシ当量が好ましくは150から450の範囲のものである。
【0022】
ここで、上記ビスフェノールタイプのエポキシ樹脂として、具体的には、エピクロルヒドリンとビスフェノールA若しくはビスフェノールFとの反応により得られる実質的に1分子中に2個以上のエポキシ基を有するグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂、メチルエピクロルヒドリンとビスフェノールA若しくはビスフェノールFとの反応により得られるメチルグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂、あるいはビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物とエピクロルヒドリン若しくはメチルエピクロルヒドリンとから得られるエポキシ樹脂などが挙げられる。また、上記ノボラックタイプのエポキシ樹脂としては、フェノールノボラック又はクレゾールノボラックと、エピクロルヒドリン又はメチルエピクロルヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0023】
前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂に用いられる不飽和一塩基酸としては、例えばアクリル酸、メタアクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノ(2−エチルヘキシル)あるいはソルビン酸などが挙げられる。これらの不飽和一塩基酸は、単独でも、2種以上混合しても用いられる。上記エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応は、好ましくは60〜140℃、特に好ましくは80〜120℃の温度においてエステル化触媒を用いて行われる。
【0024】
前記のエステル化触媒としては、たとえばトリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルアンリン若しくはジアザビシクロオクタンなどの如き三級アミン、トリフェニルホスフィンあるいはジエチルアミン塩酸塩などの如き公知の触媒がそのまま使用できる。
【0025】
前記ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する飽和若しくは不飽和ポリエステルであり、飽和若しくは不飽和ポリエステルの末端に(メタ)アクリル化合物を反応させたものである。かかる樹脂の数平均分子量としては、好ましくは500〜5000である。
【0026】
前記飽和ポリエステルとは、飽和二塩基酸と多価アルコールとの縮合反応、また、不飽和ポリエステルとは、α,β−不飽和二塩基酸を含む二塩基酸と多価アルコールとの縮合反応で得られるものである。
【0027】
ここでいう飽和二塩基酸としては、前記のポリエステルポリオールの項に示した化合物を挙げることができ、不飽和二塩基酸としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸等を挙げることができる。また、多価アルコールについても、前記のポリエステルポリオールの項に示した化合物を挙げることができる。
【0028】
本発明に使用する分子内に不飽和基を有する反応性オリゴマー(a)としてのポリエステル(メタ)アクリレート樹脂に用いる(メタ)アクリル化合物としては、不飽和グリシジル化合物、アクリル酸またはメタクリル酸の如き各種の不飽和一塩基酸、およびそのグリシジルエステル等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、グリシジル(メタ)アクリレートの使用が望ましい。
【0029】
本発明に使用する分子量160以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体(b)としては、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、ポリカプロラクトンアクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、ポリカプロラクトンメタクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノメタクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルモノメタクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノールエチレンオキサイド(EO)変性アクリレート、ノニルフェニルカルビトールアクリレート、ノニルフェノールEO変性アクリレート、フェノキシプロピルアクリレート、フェノールプロピレンオキサイド(PO)変性アクリレート、ノニルフェノキシプロピルアクリレート、ノニルフェノールPO変性アクリレート、アクリロイルオキシエチルフタレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェノールEO変性メタクリレート、ノニルフェニルカルビトールメタクリレート、ノニルフェノールEO変性メタクリレート、フェノキシプロピルメタクリレート、フェノールPO変性メタクリレート、ノニルフェノキシプロピルメタクリレート、ノニルフェノールPO変性メタクリレート、メタクリロイルオキシエチルフタレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうち、低臭性、下地アスファルトコンクリートの接着性より、フェノキシエチルメタクリレート等、フェニル基を有し分子量180以上の(メタ)アクリレート基を有するエチレン性不飽和単量体が好ましい。
【0030】
本発明の二液硬化型樹脂組成物の主剤(A)には、空乾性を有しラジカル重合により架橋できる不飽和基を含有する重合体を含ませることができる。この空乾性とは、重合体中にある特定の官能基が導入されることにより、酸素分子による硬化阻害を受けず、空気中でも速やかに硬化が進行することを言う。この目的で使用され得る樹脂としては、例えば、前記の不飽和ポリエステル、ビニルエステル等に必須成分として空乾性基を導入したものが挙げられる。
【0031】
上記の空乾性基の例としては、アリル基をはじめとするアルケニル基、アルケニルエーテル基、およびジシクロペンタジエニル基などが挙げられる。
【0032】
空乾性基導入方法の例としては、以下の方法を挙げることができる。即ち、1)多価アルコール成分にアリルエーテル基を含有する化合物を併用する。2)多価アルコールと乾性油等の脂肪油とのエステル交換反応で得られるアルコリシス化合物をアルコール成分に併用する。3)二塩基酸成分に環状不飽和脂肪族多塩基酸およびその誘導体を含有する化合物を併用する。4)ジシクロペンタジエニル基を含有する化合物を併用する。
【0033】
これら1)〜4)のうち、1)のアリルエーテル基含有化合物としては、公知のものがいずれも使用できるが、その代表的なものとしては、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,2−ブチレングリコールモノアリルエーテル、1,3−ブチレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロ−ルプロパンモノアリルエーテル、トリメチロ−ルプロパンジアリルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールモノアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等の多価アルコール類のアリルエーテル化合物、アリルグリシジルエーテルなどの如きオキシラン環を有するアリルエーテル化合物等が挙げられる。
【0034】
上記2)で用いる乾性油とは、好ましくはヨウ素価130以上の油脂で、例えば、アマニ油、大豆油、綿実油、落花生油、やし油等がある。また、エステル交換反応で得られるアルコリシス化合物に用いる多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン等の3価アルコール、ペンタエリスリトール等の4価アルコールがある。
【0035】
上記3)で用いる環状脂肪族不飽和多塩基酸およびその誘導体を含有する化合物としては、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、α−テルヒネン・無水マレイン酸付加物、トランス−ピペリレン・無水マレイン酸付加物等がある。
上記1)〜4)のうち、4)のジシクロペンタジエニル基を含有する化合物としては、ヒドロキシ化ジシクロペンタジエン等が代表的なものとして挙げられる。
【0036】
また、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、スチレン、酢酸ビニル、ビニルトルエン、α−メチルトルエン等の不飽和基を有する反応性単量体も、発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0037】
また、本発明に使用する分子量160以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体(b)に、発明の効果を損なわない範囲で、一分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する単量体を併用することが好ましい。この単量体を併用することにより、硬化物表面の耐摩耗性、耐さっ傷性、耐煽動性、耐薬品性等を向上させることができる。
この一分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する単量体としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン−グリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独で、又は2種以上の併用で用いられる。
また、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテトラブロムフタレート、トリアリルフタレート等も、発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0038】
また主剤(A)の成分としてパラフィンワックスを使用することができる。パラフィンワックスとしては、融点110°F〜160°Fのものが好ましく、特に下地温度0〜50℃での使用を想定すると、特に、115°F〜155°Fが好ましい。さらに、10°F以上の融点のものを2種類以上、配合することが好ましい。
【0039】
前記石油ワックスのほか、合成ワックスすなわちポリエチレンワックス、酸化パラフィン、アルコール型ワックス等も使用でき、液状の炭化水素、たとえば鉱物油、流動パラフィン等も併用できる。
【0040】
本発明の二液硬化型樹脂組成物には、硬化速度を調整するため、前記主剤と硬化剤とを使用する。
【0041】
本発明に使用する硬化剤としての有機過酸化物(B)は、前記主剤(A)100重量部に前記有機過酸化物(B)5重量部を25℃の温度下で添加し撹拌したとき、撹拌開始後60秒以内に主剤(A)に溶解するものである。
この要件を満足する有機過酸化物(B)としては、ジアシルパーオキサイド系有機過酸化物やケトンパーオキサイド系有機過酸化物やジアルキルパーオキサイド系有機過酸化物やハイドロパーオキサイド系有機過酸化物等が挙げられる。
【0042】
ジアシルパーオキサイド系有機過酸化物としては、例えばビス−3.5.5−トリメチルヘキサノールパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジイソブチルパーオキサド、ジ−n−ブチルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、O−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0043】
ケトンパーオキサイド系有機過酸化物としては、例えばメチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等が挙げられる。
【0044】
ジアルキルパーオキサイド系有機過酸化物としては、例えばジクメンパーオキサイド、2.5−ジメチル−2.5.ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクメンパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2.5−ジメチル−2.5.ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキセン、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン等が挙げられる。
【0045】
ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物系有機過酸化物としては、具体的に、1.1.3.3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0046】
これらの有機過酸化物のうち、8%オクチル酸コバルト等のコバルト石鹸との組合せで、0〜50℃の温度範囲で安定して硬化するメチルエチルケトンパーオキサイドや、N、N−ジメチルアニリン等の芳香族アミンとの組合せで、0〜50℃の温度範囲で安定して硬化するベンゾイルパーオキサイドが好ましい。更に、水分の影響を受け難いという点でベンゾイルパーオキサイドが好ましい。またその形態は、液状、スラリー状、粉末状等が挙げられるが、特に、下地温度0〜50℃での硬化の安定性、硬化剤の安全性及び沈降性等の貯蔵安定性の点から、液状又はスラリー状であることが好ましい。またこれらの形態のものを混合して用いることもできる。
有機過酸化物(B)の使用量は、硬化性樹脂組成物の合計量100重量部に対して、0.1〜6重量部であることが好ましい。
【0047】
また本発明の硬化剤成分には、有機過酸化物(B)のほか、光ラジカル開始剤、硬化促進剤、重合禁止剤を使用することができる。
また、光ラジカル開始剤を併用しても良い。光ラジカル開始剤としては、例えばベンゾインアルキルエーテルのようなベンゾインエーテル系、ベンゾフェノン、ベンジル、メチルオルソベンゾイルベンゾエートなどのベンゾフェノン系、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンなどのアセトフェノン系、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン系等が挙げられる。
【0048】
硬化促進剤としては、例えばナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸バナジウム、ナフテン酸銅、ナフテン酸バリウム等金属石鹸類、バナジウムアセチルアセテート、コバルトアセチルアセテート、鉄アセチルアセトネート等の金属キレート類、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス(2-ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4-(N,N−ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、4−[N,N−ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]ベンズアルデヒド、4−(N−メチル−N−ヒドロキシエチルアミノ)ベンズアルデヒド、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、N−エチル−m−トルイジン、トリエタノールアミン、m−トルイジン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェニリモルホリン、ピペリジン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、ジエタノールアニリン等のN,N−置換アニリン、N,N−置換−p−トルイジン、4-(N,N−置換アミノ)ベンズアルデヒド等のアミン類が挙げられる。これらのうち、アミン類、金属石鹸類が好ましい。硬化促進剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用しても良い。この硬化促進剤は、予め樹脂組成物に添加しておいても良いし、使用時に添加しても良い。硬化促進剤の使用量は、0.1〜5重量部である。
【0049】
重合禁止剤としては、例えばトリハイドロベンゼン、トルハイドロキノン、14−ナフトキノン、パラベンゾキノン、ハイドロキノン、ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−tert−ブチルカテコール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等を挙げることができる。好ましくは樹脂組成物に、10〜1000ppm添加しうるものである。
【0050】
本発明に使用する二液硬化型樹脂組成物の粘度及び揺変度は特に限定されるものではないが、道路に刷毛塗りしたときの刷毛筋がでないという点で、25℃での粘度が、1000〜6000mPa・sであり、揺変度が1.0〜3.0であることが好ましい。
【0051】
本発明の樹脂系滑り止め舗装材料は、前記二液硬化型樹脂組成物に、上記以外の各種の添加剤、例えば充填剤、紫外線吸収剤、顔料、増粘剤、低収縮剤、老化防止剤、可塑剤、骨材、難燃剤、安定剤、補強材等を適宜含むものである。特に、粘度調整、揺変度調整の為に、シリカ等の増粘剤の使用が好ましい。
【0052】
充填剤としては、例えば水硬性ケイ酸塩材料、炭酸カルシウム粉、クレー、アルミナ粉、硅石粉、タルク、硫酸バリウム、シリカパウダー、ガラス粉、ガラスビーズ、マイカ、水酸化アルミニウム、セルロース系、硅砂、川砂、寒水石、大理石屑、砕石等が挙げられる。
【0053】
本発明は、前記二液硬化型樹脂組成物からなる樹脂系滑り止め舗装材料を道路表面に塗布した後、骨材を散布することを特徴とする道路の施工方法に関するものである。
前記二液硬化型樹脂組成物からなる樹脂系滑り止め舗装材料は、道路に均一に塗り広げる。塗布する方法としては、刷毛、金鏝、レーキ等を用いて塗布する方法が挙げられる。
本発明に使用する骨材は、粒径1〜5mmの骨材である。本発明の粒径1〜5mmの骨材としては、エメリー、炭化珪素、セラミック、珪砂、砕石、ガラス等が挙げられ、特に、耐摩耗性、視認性の向上より、エメリー、炭化珪素、セラミック等が望ましい。
骨材は、前記の樹脂系滑り止め舗装材料を道路に塗布した後、道路に速やかに散布する。散布方法としては、スコップ又はスプレッター等による方法が挙げられる。
本発明の道路の施工方法は、下地である道路の温度が0℃から50℃となる全季節にわたって、火気や加温設備を使用すること無く、硬化不良がなく、速硬化で臭気の発生が少なく実施することができる。
【実施例】
【0054】
以下本発明を実施例によって更に詳細に説明する。また、文中に「部」「%」とあるのは、重量部、重量%を示すものである。
【0055】
<主剤の調製>
参考例1
ウレタンメタアクリレート重合体〔UMA〕の合成温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、及び還流冷却器を備えた5リットルの四つ口フラスコに、ポリプロピレングリコール(数平均分子量984.2)2461部、トリレンジイソシアネート739.5部、イソホロンジイソシアネート166.8部を仕込み、窒素雰囲気中80℃まで昇温し、3時間反応させ、NCO等量697になったところで、50℃まで冷却した後、窒素/空気(流量比1/1)混合気流下でトルハイドロキノン0.337部、ヒドロキシエチルメタアクリレート657.7部を加え、90℃まで再度昇温させた。3時間反応させ、残存NCO量が0.0343%のウレタンメタアクリレート重合体を得た。この重合体を以下(UMA)とする。
【0056】
参考例2(エポキシメタアクリレート重合体〔EMA〕の合成)
温度計、攪拌機、ガス導入口、及び還流冷却器を備えた5リットルの四つ口フラスコに、エピクロン830[大日本インキ化学工業(株)製エポキシ樹脂:エピクロルヒドリンとビスフェノールAの反応物:数平均分子量344]2970部、メタクリル酸1456部、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール1.55部、トリエチルアミン13.3部を仕込み、窒素/空気(流量比1/1)混合気流下90℃まで昇温し、2時間反応させる。次いで、反応温度を105℃まで昇温させ、30時間反応を続け、酸価8.87、エポキシ当量23900のものを得た。この重合体を以下[EMA]とする。
【0057】
参考例3(空乾性不飽和ポリエステル〔空乾UPE〕重合体の合成)
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、及び還流冷却器を備えた2リットルの四つ口フラスコに、ジエチレングリコール576部、無水フタル酸285部、無水マレイン酸81部、ピペリレン・無水マレイン酸付加物457部を公知の条件で加熱脱水縮合させて酸価10.2の空乾性ポリエステル樹脂を得た。この重合体を以下(空乾UPE)とする。
【0058】
上記参考例で得られた樹脂、フェノキシエチルメタクリレート(PHOEMA)、MMA、増粘剤であるレオロシールQS−20L(株式会社トクヤマ製)、パラフィンワックス(日本精鑞株式会社製)を配合し、主剤を得た(表−1)。
【0059】
【表1】

【0060】
<主剤の性状値の測定>
前記の配合で得られた主剤の粘度及び揺変度をBM型粘度計にて、25℃条件下と、下地温度条件において測定した。
<硬化剤としての有機過酸化物>
ナイパーNS(スラリー状ベンゾイルパーオキサイド、日本油脂株式会社製)(以後過酸Aという)、又はナイパーFF(粉末状ベンゾイルパーオキサイド、日本油脂株式会社製)(以後過酸Bという)を用いた。過酸Aは前記主剤と混合撹拌し60秒以内に前記有機過酸化物が主剤に溶解するものである。
【0061】
実施例1〜7及び比較例1〜3
前記で得られた主剤100部に、前記硬化剤を、表−2及び表−3に記載の下地温度条件下、3枚羽根のついた800rpmの電気ドリルで1分間攪拌し、二液硬化型の性樹脂組成物からなる舗装材料を調製した。この舗装材料を密粒アスファルト上に約1.6kg/m塗布した後、セラサンドA粒(粒状硬質磁器、美州興産株式会社製)を約8.0kg/m散布し施工した。
<評価及び評価基準>
1)有機過酸化物の溶解性;施工する前に、舗装材料中の有機過酸化物の溶け残り及び沈降を目視で確認した。残存有機過酸化物が完全に主剤に溶解して無いものを○、あるものを×とした。
2)施工時の臭気の有無;施工場所より2m離れた場所で臭気の有無を確認した。無い場合を○とし、有る場合を×とした。
3)流れ染みだし性;主剤、硬化剤を混合した樹脂を、端部をガムテープで閾いした10度の傾斜を取ったスレート板上に1.6kg/m塗布し、塗布後ガムテープを剥し、樹脂の流れが発生しない場合を○とし、有る場合を×とした。
4)塗膜の硬化性;主剤、硬化剤を混合した樹脂を道路に刷毛で塗布した後、スコップでセラサンドA粒を散布し、樹脂が硬化した後に竹箒で、余剰骨材を回収し、塗膜の露出が無いものを○とし、1円玉以上の大きさの塗膜の露出があるものを×とした。
5)刷毛筋の有無;主剤、硬化剤を混合した樹脂を道路に刷毛で塗布した後、スコップでセラサンドA粒を散布し、樹脂が硬化した後に竹箒で、余剰骨材を回収し、仕上がりを確認し、刷毛筋が確認できないものを○とし、刷毛筋が確認できるものを×とした。
6)骨材の安定性(据えきり);主剤、硬化剤を混合した樹脂を道路に刷毛で塗布した後、スコップでセラサンドA粒を散布し、樹脂が硬化した後に竹箒で、余剰骨材を回収し、約2tの四輪車で据え切りをその場でハンドル3往復させた後の状態を確認した。塗膜の露出がないものを○とし、塗膜の露出のあるものを×とした。
【0062】
【表2】

粘度の単位:mPa・s
揺変度:6回転時の粘度/60回転時の粘度を意味する。
【0063】
【表3】

粘度の単位:mPa・s
揺変度:6回転時の粘度/60回転時の粘度を意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に不飽和基を有する反応性オリゴマー(a)及び分子量が160以上の(メタ)アクリロイル基を有するエチレン性不飽和単量体(b)を含む主剤(A)と硬化剤として有機過酸化物(B)とを含む二液硬化型樹脂組成物からなる樹脂系滑り止め舗装材料であって、前記主剤(A)100重量部に前記有機過酸化物(B)5重量部を25℃の温度下で添加し撹拌したとき、前記有機過酸化物(B)が60秒以内に主剤(A)に溶解するものであることを特徴とする樹脂系滑り止め舗装材料。
【請求項2】
前記二液硬化型樹脂組成物の25℃での粘度が、1000〜6000mPa・sであり、揺変度が1.0〜3.0である請求項1記載の樹脂系滑り止め舗装材料。
【請求項3】
前記有機過酸化物(B)が、液状又はペースト状である請求項1又は2記載の樹脂系滑り止め舗装材料。
【請求項4】
前記分子量が160以上の(メタ)アクリロイル基を有するエチレン性不飽和単量体(b)が、フェニル基を有し分子量が180以上の(メタ)アクリレート基を有するエチレン性不飽和単量体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂系滑り止め舗装材料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂系滑り止め舗装材料を道路表面に塗布した後、骨材を散布することを特徴とする道路の施工方法。

【公開番号】特開2008−156839(P2008−156839A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−344160(P2006−344160)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】