説明

樹脂素材及びその製造方法

【課題】使用済みオレフィン系樹脂成形物と使用済み石膏ボードと混合し、オレフィン系樹脂成分と石膏成分と繊維状セルロース成分とが混合された木質調の質感を有する樹脂素材を提供する。
【解決手段】オレフィン系合成樹脂成形物と石膏ボードとを攪拌機能を有する混合装置内に順次に供給し、当該混合装置内で攪拌操作を行いつつ、当該オレフィン系合成樹脂を粉砕溶融すると共に、当該石膏ボードを粉砕して粉体状の石膏成分と繊維状のセルロース成分とに分離しながら、上記3成分を混合処理する事を特徴とする石膏成分及びセルロース成分を含む樹脂素材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂素材及びその製造方法に関するものであり、特に詳しくは、使用済みのオレフィン系合成樹脂素材と使用済みの石膏ボードとから完全リサイクル化を達成した新規の樹脂素材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、産業用廃棄物としての石膏ボードをリサイクルする必要性がある事は周知である。
然しながら、一般的は、産業廃棄物をリサイクル処理を行う事は環境には良いと分かっていても、実際のリサイクルに要するコストが高いと産業界には受け入れられないのが現状である。
【0003】
処で、石膏ボードは、主原料の石膏を紙で被覆した板である。
そして、石膏ボードは経済性に優れ、耐久性、断熱性、遮音性が有り、建材用素材として多用されており、生産量は年間500万トンを超えている。
その為、当該石膏ボードの廃棄量は年間170万トンを超える状況にあり、製造時に発生する廃石膏ボードは、ほぼ100%リサイクルされるが、建築時に発生する廃石膏ボードは、約38%がリサイクルされているものの、建物の解体時に発生する廃石膏ボードは、リサイクル率が悪く、最終処分場に埋め立てられているのが現状である。
【0004】
従って、係る石膏ボードの有効なリサイクル処理の開発が必要となっている。
一方、他の産業廃棄物として、使用済み梱包材のポリプロピレン及びポリエチレン又は一般廃棄物のプラスチック容器に使用されているオレフィン系合成樹脂製品が知られており、係る使用済みのオレフィン系合成樹脂製品の再利用に関しても、必要性は認められながら、コストの問題があって、効率的なリサイクル処理方法は未だ実現されていない。
【0005】
処で、当該オレフィン系合成樹脂は、安価であって成形性が良いので、リサイクル用の原材料として流通量も多く、リサイクル材としても入手しやすいという特徴はあるが、成形時に加熱すると、とても柔らかくなり、異形押出加工する際には、硬さを調節して成形する必要がある。又、オレフィン系プラスチックの剛性を上げる目的があり、その為、係る硬さの調整に滑石という鉱石を徴粉砕した粉末のタルク等を配合して成形している。
【0006】
係るタルクの配合率は、オレフィン系の樹脂の重量に対して通常10%〜60%の配合を行い、かなりのウェイトを占める配合材料となっている。
そこで、当該オレフィン系の樹脂の溶融成形に際して、硬さを調整するためのタルクの代替品として当該建築廃材の石膏ボードを使用しようとする試みが過去に見られたが、成功せずに終っている。
【0007】
その原因を検討すると、1つは、石膏ボードは耐久性を持たせる為と、もともと石膏に含まれる結晶水として含まれる水分で20%以上の水分が存在する。
一方、通常のプラスチックに混合するタルクの含水率は、ほぼ0%に規定されており、その理由としては、高温に加熱溶融されているオレフィン系の樹脂中に、若し含水率を有するタルクを混合させた場合、当該含水されている水が蒸発して成形時にプラスチックが発泡してしまい、成型された樹脂の強度低下を起す原因となるからである。
【0008】
従って、石膏ボードの石膏には、20%の水を含んでいるので、オレフィン系の樹脂の骨材としては使えるものでは無い事は明らかである。
そして、もう1つの理由としては、石膏ボードは、石膏と紙から構成されており、仮に石膏の含水率を無くせたとしても、石膏と紙との分離が前提となり、この分離工程が容易ではない事から、更に余計なエネルギーの投入が必要となる。
【0009】
上記の理由から、従来では、石膏ボードをオレフィン系の樹脂のリサイクルに於ける骨材として使用する方法は実現されていない。
一方、オレフィン系の樹脂に未乾燥のフィラーを混合して発泡剤を形成し、金属基板等の表面に貼り付ける成形体の製造方法に関しては、例えば、特開2008−81648号公報(特許文献1)等で知られているが、石膏ボードそのものをフィラーとしてオレフィン系の樹脂の中に混在させる技術に関しては、公知例が見当たらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−81648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、現在大量に産業廃棄物として排出される建築廃材としての使用済み石膏ボードと、同じく大量に産業廃棄物として排出されるペットボトルに代表される使用済みオレフィン系樹脂成形物とから、新規な特性を有する樹脂素材をリサイクル製品として製造し、産業廃棄物の減少に寄与させると共に、完全リサイクル処理の達成により当該新規リサイクル製品のコストを大幅に低減する事が可能な、樹脂素材及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る当該樹脂素材及びその製造方法は、上記目的を達成するために、以下に示す様な基本的技術構成を採用するものである。
【0013】
即ち、本発明に係る第1の態様は、オレフィン系合成樹脂成分、粉体状或は破砕状の石膏成分及び繊維状セルロース成分と、が混在して構成されている樹脂素材であり、又本発明に係る第2の態様は、オレフィン系合成樹脂と石膏ボードとを攪拌機能を有する混合装置内に順次に供給し、当該混合装置内で攪拌操作を行いつつ、当該オレフィン系合成樹脂を粉砕溶融すると共に、当該石膏ボードを粉砕して粉体状の石膏成分と繊維状のセルロース成分とに分離しながら、上記3成分を混合する事を特徴とする石膏成分及びセルロース成分を含む樹脂素材の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に於ける当該樹脂素材の製造方法によって製造された当該樹脂素材は、その原材料は全てリサイクル用に準備されている材料を利用するものであるから、入手が容易で有る他、原材料の価格も低く、然も単に混合装置中で、スクリュー等によって攪拌する操作を実行するのみであるから、当該リサイクル処理に要するエネルギー及びコストは低く抑えられるので、リサイクル製品の価格は安価となり、理想的な完全リサイクル工程と完全リサイクル商品が得られるという作用効果を発揮するものである。
【0015】
更に、当該使用済みオレフィン系合成樹脂成形物と使用済み石膏ボードの混合体に少量のステアリン酸ナトリウムを混合することによって、短時間でかつ紙成分であるセルロース繊維成分を炭化させることなく、オレフィン系合成樹脂と石膏ボードとを混合させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明に於ける樹脂素材の構造を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明に於ける樹脂素材の製造装置の概略を示す図である。
【図3】図3は、本発明に於ける樹脂素材の製造方法の一具体例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明にかかる樹脂素材及び当該樹脂素材の製造方法の具体的な構成を、図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
【実施例】
【0018】
即ち、図1は、本発明に係る樹脂素材1の一具体例の構成を示す図であって、図中、オレフィン系合成樹脂成分2の中に、粉体状の石膏成分3及び繊維状セルロース成分4と、が略均一に分散されて混在している樹脂素材が示されている。
【0019】
係る構成の結果、当該繊維状セルロース成分4の一部が適宜の割合で当該成型された樹脂体の表面に顕出しているので、当該樹脂素材の表面が木質調の風合いを呈するものである。
【0020】
又、本発明にかかる樹脂素材の製造方法は、図2に示す様に、オレフィン系合成樹脂成形物2‘と適宜の大きさに破砕された石膏ボード片5とを、適宜の駆動手段、例えば、モータ8により回転せしめられるスクリュー等からなる攪拌手段9を有する混合装置10内に順次に供給し、当該混合装置10内で攪拌操作を行いつつ、当該オレフィン系合成樹脂2’を粉砕溶融すると共に、その後に当該石膏ボード片5を供給してこれを粉砕して粉体状の石膏成分と繊維状のセルロース成分とに分離しながら、溶融されたオレフィン系合成樹脂2と上記2成分を混合する事を特徴とする石膏成分及びセルロース成分を含む樹脂素材の製造方法である。
【0021】
つまり、本発明に於いては、従来合成樹脂に骨材を混入する場合には、当該骨材には水分を含まないものを使用する必要があるという常識を覆し、積極的に含水率の高い石膏を使用して石膏成分と繊維状セルロース成分とオレフィン系合成樹脂成分とが均一に混合された木質系の質感を有する新規な樹脂素材が得られるのである。
【0022】
此処で、本発明に於ける当該樹脂素材の製造方法の基本的な技術思想について以下に説明する。
即ち、本発明に於いて使用される主体となる樹脂は、容器リサイクルから出た使用済みのオレフィン系(主にPP)樹脂成形物を使用する。
又、石膏ボードも使用済みのもの、つまり廃材となった石膏ボードを使用する。
【0023】
そして、本発明では、かかるオレフィン系樹脂成形物を適宜のミキサーによって溶融して、これに当該使用済みの石膏ボードを混合して行く。
混合処理が完了したものは、成形処理後、ある程度の大きさに粉砕し、プラスチックの原料となる。
つまり、再生樹脂を製造する際、工程的には、最初にオレフィン系樹脂成形物の溶融が行わる。
そして、係る溶融時に当該使用済みの石膏ボードを混合する。
【0024】
その結果、当該オレフィン系樹脂は溶融時に温度が170℃を超えているので、当該石膏ボードに含まれている水分は、この熱により、一気に放出される事になる。
次に問題となる石膏ボードの紙について説明するならば、石膏ボードと紙の割合は、廃石膏ボードが処分された方法によって差異があるが、一般的に石膏が8乃至9.58に対して、紙が2乃至0.5の割合となっている。
【0025】
然しながら、一般に、石膏ボードには、平均して20%の含水率を含んでいるので、計算上の当該石膏ボードの混合割合を55%とした場合、仮に、石膏ボードを使って配合を行った場合、樹脂が50%、石膏が45%、紙が5%となり、好ましい混合比率を有する樹脂素材となる。
【0026】
本発明に於ける当該樹脂素材は、比較的長い繊維状のセルロース成分が含まれていることから、従来公知のペーパースラッジ入り樹脂と同様に、石膏に含まれていた紙成分から抽出されたセルロース繊維が他の成分と混じり合い、強度を向上させると同時に、成形物の質感が木質系となるというメリットが生まれる。
更に、本発明の樹脂素材の製造方法に付いてより具体的に説明するならば、従来では、一般的に樹脂の溶融は当該樹脂を外部加熱して溶融する。
【0027】
然しながら、本発明に於いては、当該オレフィン系樹脂成形物を混合機(ミキシング機)10に樹脂を投入して、当該スクリュー9を回転させ、その結果、当該オレフィン系樹脂成形物は高回転するプロペラ或はスクリュー等に当り、又、樹脂同士がぶつかり合い、摩擦熱が生じ、これを繰り返す事で、当該オレフィン系樹脂成形物は溶融を始める。
【0028】
即ち、当該ミキサーで回転せしめられた当該オレフィン系樹脂成形物は摩擦熱により溶融し、当該オレフィン系樹脂成形物のこの時の温度は170℃を超えている。
係る時点で、仮に当該溶融中のオレフィン系樹脂成形物の中に、紙成分を入れたとすれば、数分で紙は化してしまうので、紙に期待する繊維や木質系の質感は無くなる。
【0029】
然しながら、当該170℃に加熱させたオレフィン系樹脂成形物は、ミキサーの中でゲル化している。
そして、係る加熱溶融状態のオレフィン系樹脂成形物の中に含水率20%の石膏ボードを投入すると、激しい水分蒸発が開始される。
【0030】
係る時点では、まだ石膏ボードは石膏と紙とが分離していない状態で、内部の水分が蒸発をしている状態にある。
そして、係る状況を詳細に観察するならば、当該水分蒸発がされている間は水分が熱せられて高温になると考えられるが、逆にステアリン酸ナトリウムが有効に作用している場合には、100℃以上の水蒸気で紙を冷やしていると考えられる。
【0031】
つまり、水分が蒸発している間は、紙は水蒸気によって170℃のゲル化している樹脂の熱から灰化するのを防いでいるのである。
換言するならば、本発明に於いては、上記した構成を採用することによって、紙或いはセルロース繊維の灰化のタイミングを外して、樹脂との混合を遂行していく。
当該混合が終了したら、当該混合体を一気に冷却する。
【0032】
この時、さらに灰化を防ぐのに材料の0.5乃至3重量%、好ましくは1%ほどのステアリン酸ナトリウムを同時に添加する事も好ましい具体例であり、これによって当該セルロース繊維が灰化する時間を更に遅くする事が可能である。
【0033】
ステアリン酸ナトリウムを入れることにより、おそらくステアリン酸ナトリウムが石膏ボードに付着して塗膜を作り、摩擦力を低下させた結果、紙の温度上昇を防ぎ、炭化のスピードを遅らせるものと推定される。
【0034】
これは、本発明の別の応用としてダンボールを樹脂に混合する際、ダンボールを灰化させずに混合する時も同じ手段を使用する事が可能である。
つまり、本発明に於いては、あらかじめ混合機の中にオレフィン系樹脂成形物を入れて高速回転混合させ、そのプラスチック同士の摩擦熱により石膏の含水率を下げると言う、従来にない技術思想を導入したもので、この時、当該オレフィン系樹脂成形物は溶融を始めているので170℃前後の温度になっている。ここに合水率の高い石膏ボードをそのまま或は適度に破砕してから投入すると、石膏ボードは粉体化して、石膏の粉粒体となり、紙は剪断され、比較的長い繊維状のセルロース成分となる。その時、石膏ボードの持っていた水分が一気に蒸発、放熱を行い、紙の温度を、紙が炭化する温度に上昇する事を防ぐ事が可能となる。
【0035】
水蒸気が出ている間は、全く紙は炭化しない事から、水蒸気が紙を冷やしてくれているものと推測できる。
その後、色々実験を繰り返した結果、当該石膏ボードの水が当該オレフィン系樹脂成形物と石膏ボードとの混合を促進している事が判明した。
【0036】
尚、本発明に於いて使用される石膏ボードは、その成分は特に限定されるものではないが、一般的に使用されている、半水石膏、二水石膏或いは無水石膏等を主成分とする石膏ボード使用する事が出来る。
【0037】
また、この方法でオレフィン系樹脂成形物中に紙を混合すると、従来の方法の様に、粉砕した紙を混合するのに比べて、強度が増す事が判明した。これは混合機の中で、紙は引っ張られ、引きちぎられる所謂剪断処理を受けることとなり、粉砕物と比べて圧倒的に繊維長が長くなるから強度が増す事になると考えられる。
【0038】
更に、本発明では、従来プラスチックの中に繊維長の長いセルロース分は混合で出来ないとされていたのに対し、例えば、ステアリン酸ナトリウムを1%乃至3%程度混合する事により、繊維が鳥の羽根状になっている所に油脂成分が付着して濡れ性能が上がり、プラスチックが受け入れやすくなることと、繊維質が摩擦によって崩壊又は炭化しないようにコントロールされ、その結果、異物間の混合が均一化される事が判明した。
【0039】
更に、本発明に於いては、プラスチックに石膏ボードをそのまま混合させるに際しては、石膏と紙とを分離せずにそのまま含水率も下げずにオレフィン系樹脂成形物と混合するという点も特徴となる。
【0040】
本発明に於いて使用されるオレフィン系合成樹脂としては、特に限定されないが、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂が使用できる。
そして、本発明に於いては、当該オレフィン系合成樹脂成分としては、使用済みのプラスチック容器類、或いはポリプロピレン樹脂で構成された樹脂製品の様な、産業廃棄物として取り扱われる製品を原材料として、そのリサイクル製品を製造するものである。
【0041】
そして、これ等のオレフィン系合成樹脂を一旦溶融されて、適宜の大きさのペレットの形状に加工されるが、本発明では、主に係るペレット状又は粉砕されたオレフィン系合成樹脂を使用する事が望ましい。
【0042】
一方、本発明に於いて使用される石膏ボードも使用済みで産業廃棄物として取り扱われる石膏ボードを原材料として使用するものである。
従って、本発明に於いては、何れもかなり大量に産業廃棄物市場に存在しているものを原材料として使用するものであるから、原材料の調達に係るコストは低額に抑えられる利点がある。
【0043】
本発明に於いては、上記した通り、当該オレフィン系合成樹脂成分としての、使用済みオレフィン系合成樹脂成型物を、適当なサイズに破砕して、それを適宜の混合機に入れて攪拌処理する事により、当該樹脂同士の摩擦熱により発熱が起こり、当該オレフィン系合成樹脂成型物は溶融状態になる。
【0044】
その状態で、当該溶融状態のオレフィン系合成樹脂内に、適度のサイズに破砕した石膏ボードを混入して、オレフィン系合成樹脂と共に攪拌操作を継続させると、当該石膏が含水している水がその間に蒸発し、それにより、当該オレフィン系合成樹脂の溶融温度が当該石膏に含まれている紙の化温度以下となる様に調整が行われ、石膏ボードから分離された石膏粒体と紙とが分離されるが、当該紙成分は化温度以下の温度条件下に存在しえるので炭化することなく、当該混合機の攪拌操作によって、剪断操作を受けて、比較的長い長さを有する繊維状のセルロースが分離されてくる。
【0045】
係る3種類の成分が略均一に混合され当該石膏成分とセルロース成分当該オレフィン系合成樹脂をマトリクスとして、その中に分散されている状態の樹脂素材が得られる。
係る樹脂素材を一旦細かく細片化して、適宜の押し出し成型機或いは射出成型機等を使用して所望の形に成型した樹脂製品を得る事が出来る。
【0046】
次に、本発明に於ける当該樹脂素材或いはそれを用いた樹脂成型品に於ける、オレフィン系合成樹脂成分、粉体状の石膏成分及び当該繊維状セルロース成分のそれぞれの混合割合について、種々実験した結果、先ず当該オレフィン系合成樹脂成分と当該石膏ボードとの混合比率は、20:80から60:40の範囲である事が望ましい事が判明し、且つ、上記した様に、当該石膏ボードと紙(当該セルロース系繊維成分)の割合が一般的に使用される廃石膏ボードでは、石膏が8〜9.5に対して、紙が0.5から2の割合となっていることから、当該オレフィン系合成樹脂成分、当該石膏成分及び繊維状セルロース系成分との相互混合比率、オレフィン系合成樹脂成分:石膏成分:繊維状セルロース系成分は、20:64〜76:4〜16、乃至は、60:32〜38:2〜8である事が望ましい事が判明した。
【0047】
従って、本発明に於ける当該樹脂素材或いはそれを用いた樹脂成型品における、
オレフィン系合成樹脂成分の混入比率が30〜50%、
粉体状の石膏成分の混入比率が63〜40%及び、
繊維状セルロース成分の混入比率が14〜5%
である組成比を有している事が望ましい。
【0048】
本発明に於いては、当該オレフィン系合成樹脂成分と当該石膏成分との混合比率によって、得られる新規な樹脂素材の特性が変化するものであって、当該オレフィン系合成樹脂成分が当該石膏成分よりも多ければ、石膏入り樹脂素材となり、反対に当該石膏成分が当該オレフィン系合成樹脂成分よりも多ければ、樹脂入り石膏ボードとなる。
【0049】
更に、本発明に於いては、上記した当該オレフィン系合成樹脂素材の各成分以外に、ステアリン酸ナトリウムが更に含まれているものであっても良い。
本発明に於ける当該ステアリン酸ナトリウムの混入割合は、特に限定されないが、ステアリン酸ナトリウムの混入量は、0.5乃至3重量%である事が好ましく、特には、1重量%である事が望ましい。
【0050】
次に、本発明により得られた当該新規な樹脂素材は、比較的長い繊維長を持ったセルロース成分がオレフィン系合成樹脂と石膏成分と間に介在している事から樹脂素材としての強度が向上すると共に、当該長い繊維長を持つセルロースが適度に当該樹脂素材の表面に出現しているので、木質調の質感が得られる。
【0051】
又、本発明に於ける当該樹脂素材は、耐水性に強く従って屋外のデッキ材として使用いることが可能であり、更には、当該樹脂素材の表面の滑り抵抗があるので、水にぬれた状態で人がその上を歩いても滑る可能性は低いという特徴を持っている。
以下の表1は、従来の屋外のデッキ材として代表的な木材である杉材と本発明の樹脂素材の表面滑り抵抗値を測定して比較したものである。
【0052】
【表1】

【0053】
上記の比較データから、本発明に於ける当該樹脂素材は、杉材と略同等の滑り抵抗値を有するものである事が理解される。
尚、参考データとして、条例施設整備マニュアルに規定されている滑り抵抗値を示す。
下足で歩行する部分 0.4 〜0.9
上足で歩行する部分 0.35〜0.9
素足で歩行する部分 0.45〜0.9
傾斜路部分 0.5 〜0.9
【0054】
尚、上記した滑り抵抗値の測定方法は、人の歩行を前提とした測定方法であり、錘を付けたゴム片を床上に置き、斜め上から引張った時に当該ゴム片が動き出す荷重から求めたものであり、JIS A1454(高分子系張り床材試験法)によるものである。
【0055】
又、本発明に係る当該樹脂素材に於いて、使用済み石膏ボードの混合割合を重量比で55%とした新石膏ボードの物性値を杉材の物性値と対比したものを表2に示す
【0056】
【表2】

【0057】
上記データは成形断面及び成形条件によって変化する。
上記した物性表から見ると、本発明に係る当該樹脂素材は、木材の杉より若干強度的に劣るものの、耐候性、耐蟻性、耐朽性に富んでいる部材である事が判る。
【0058】
これらから判断すると、本発明に係る当該樹脂素材は、屋外のエクステリア及び、水周りの建材に適していると思われる。
つまり、本発明に係る樹脂素材としては、滑り抵抗値(C.S.R.)が0.74乃至0.81である事が特徴である。
【0059】
次に、本発明に於ける当該樹脂素材を製造する方法に付いて説明する。
本発明の当該樹脂素材の製造方法は、基本的には、図2に示す様に、オレフィン系合成樹脂2‘と石膏ボード5とを攪拌機能9を有する混合装置10内に順次に供給し、当該混合装置10内で攪拌操作を行いつつ、当該オレフィン系合成樹脂2’を粉砕溶融すると共に、当該石膏ボード5を粉砕して粉体状の石膏成分3と繊維状のセルロース成分4とに分離しながら、上記3成分を混合する事を特徴とする石膏成分及びセルロース成分を含む樹脂素材の製造方法である。
【0060】
そして、本発明の特に技術上の特徴点は、当該オレフィン系合成樹脂2‘を攪拌粉砕する際に、摩擦熱による発熱により溶融された当該溶融オレフィン系合成樹脂2の溶融温度を、当該石膏ボード5を混入する際に、当該石膏ボード5がもともと含水している水を蒸発させることにより、セルロース成分4の化温度以下に抑制しながら、攪拌処理する事にある。
【0061】
即ち、溶融状態にあるオレフィン系合成樹脂2に石膏ボード5を混入させて両者を粉砕し、当該石膏ボード5を石膏成分3と紙成分に分離し、更に当該紙成分を剪断処理して繊維状セルロース成分4を発生させる際に、当該オレフィン系合成樹脂2の溶融温度をセルロース4の化温度以下に維持しながら混合処理するものである。
【0062】
そして、本発明では、上記混合処理により当該石膏ボード5の各成分の分離が完了した時点で当該混合体を急速に冷却するものである。
更に、本発明に於いては、上記した様に、オレフィン系合成樹脂2‘と石膏ボード5とを攪拌機能を有する混合装置内に順次に供給する際に、ステアリン酸ナトリウムを添加する事が好ましい。
【0063】
本発明に於いては、当該ステアリン酸ナトリウムの混入量は、0.5乃至3重量%であって、更に望ましくは、1重量%である。
又、本発明に於いて、当該混合機に投入される当該オレフィン系合成樹脂2‘と当該石膏ボード5との混合割合は、オレフィン系合成樹脂が20乃至60重量%、好ましくは30乃至45重量%であり、又当該石膏ボードが、40乃至80重量%、好ましくは55%乃至70重量%である事が望ましい。
【0064】
本発明に於いては、上記の方法によって混合され製造されたオレフィン系合成樹脂素材を例えば、異形押出成形装置或は射出成形装置を使用して成形加工する事が出来る。
上記した通り、本発明は、完全リサイクルを実現するものであって、具体的には、使用済みオレフィン系合成樹脂成形物と使用済み石膏ボードとを攪拌機能を有する混合装置内に順次に供給し、当該混合装置内で攪拌操作を行いつつ、当該オレフィン系合成樹脂を粉砕溶融すると共に、当該石膏ボードを粉砕して粉体状の石膏成分と繊維状のセルロース成分とに分離しながら、当該溶融されたオレフィン系合成樹脂に当該粉体状の石膏成分と当該繊維状のセルロース成分とを混合し、成型加工処理して木質調の完全リサイクル樹脂素材を製造する方法であるから、原材料のコストは低価格に抑えられると共に、その後の加工工程も外部加熱による余分なエネルギーの消耗がないので、加工コストも低く抑える事が可能である。
【0065】
又、本発明に於いて使用される添加剤としては、ステアリン酸ナトリウムも使用済みが好ましいが、産業廃棄物の一つである廃油を少量添加することも可能である。
以下に、本発明に於ける当該樹脂素材の製造方法の手順を図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0066】
即ち、ステップS−1に於いて、使用済みのオレフィン系樹脂成形物を選択し、ステップS−2で適宜の大きさのペレット状に粉砕する。
この段階では、例えば、株式会社ホーライ製のVシリーズ粉砕機を使用する事が可能である。
【0067】
当該ペレット状粉砕物の成分は、一般的に、PPが60%、PEが30%、PSが10%の割合と成っている。
その後、ステップS−3に進み、当該ペレットを、回転羽根9を有する混合装置10、例えば、株式会社三井三池製のFM500F型の混合装置(ミキサー)を使用する事が可能である。
【0068】
ステップS−4では、当該混合装置で当該回転羽根9の回転によって、ペレット状のオレフィン系樹脂成形物に摩擦熱が発生し、当該熱によって当該ペレット状のオレフィン系樹脂成形物は溶融を開始する。
【0069】
係る状態になった時に、ステップS−6で選択されている使用済みの石膏ボードを、必要に応じてステップS−7で適宜の大きさに破砕し、当該破砕された当該石膏ボード5をステップS−8で当該混合機内に投入して、少なくとも一部が溶融状態にある溶融オレフィン系樹脂成形物と混合し、ミキシング操作を継続させる。
【0070】
使用済みの石膏ボードは、通常、900mm×1800mmの大きさを有しているが、建築物の解体現場である程度の大きさに破砕され、解体時には、約300mm×300mm程度の大きさに破砕さえている。
【0071】
当該混合装置10の被破砕材料の投入口は、かなり大きく設計されており、上記した破砕後の石膏ボード5はそのままでも投入は可能である。
然しながら、実際上では、当該石膏ボードには、金属製のビス等が付いていることが多く、当該金属部品は、当該混合装置10や成形時に成形金型或は成形機を破壊する恐れがあるため、除去しておく事が望ましい。
【0072】
その為、当該石膏ボードは、更に細かく破砕することが望ましく、具体的には、当該石膏ボードを少なくとも一辺の長さ、或は、直径に相当する部分の長さが約30mm程度になる様に、荒粉砕し、それに付着している金属材料等は磁気分別手段等によって除去する様になっている。
【0073】
勿論、本発明に於いては、当該石膏ボードの破砕時の大きさに関しては、特に限定しているものではない。
本発明に於いては、必要によっては、ステップS−15に示す様に、当該石膏ボードを当該混合装置10内に投入するタイミングと略同時期に、当該混合装置内にステアリン酸ナトリウムを上記した重量比の範囲内で投入するものである。
【0074】
その後、ステップS−9に於いて、上記した混合操作が継続され、ステップS−10に於いて、石膏ボードから石膏成分と紙との分離が完了し、更に当該紙を構成しているセルロース成分が剪断力を受けて、繊維状に伸張せしめられる。
【0075】
その後、ステップS−11に進んで、当該混合体を急冷する操作が行われる。
係るステップでは、当該混合装置10内にある混合された材料は、200℃前後で過熱されており、係る混合体を例えば、株式会社三井三池製のクーリングミキサーDF300等の装置が使用可能である。
【0076】
当該クーリングミキサーの構成は、上記した混合装置の構成と略同じで、当該ミキサー内に回転するスクリューが配置され、係るスクリューを回転させながら、平均約15℃の冷却水を注入する。
尚、当該クーリングミキサーの内壁は2重構造になっており、外部との断熱性を確保している。
【0077】
当該ステップに於いては、当該混合体の温度は、約20分後には、常温にまで冷却される。
その後、当該冷却された混合体は、ステップS−12の成形加工工程に送られ、一旦溶融加熱した後、所定の金型内に注入され、所定の形状に成形した後、ステップS−13再度上記した冷却水を使用して冷却することによって新石膏ボードが完成する。
【0078】
又、本発明に於いては、当該オレフィン系合成樹脂成形物と石膏ボードとを混合する際に、当該石膏ボードに含まれるセルロース繊維成分の外に、別途紙等のセルロース系成分を追加混入する事も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、オレフィン系合成樹脂成分と石膏材料とから構成された完全リサイクルシステムによる樹脂素材であって、土木建築材料、家具、雑貨等の分野で木質調を持った素材として有効に利用する事が出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系合成樹脂成形物と繊維状のセルロース成分を含む骨材とを攪拌機能を有する混合装置内に供給し、当該混合装置内で攪拌操作を行いつつ、当該オレフィン系合成樹脂を粉砕溶融すると共に、当該オレフィン系合成樹脂成分に当該骨材成分と繊維状のセルロース成分とを混合処理して再生合成樹脂素材を製造する方法に於いて、当該骨材として予め含水率が5%以上の骨材を使用すると共に、当該オレフィン系合成樹脂を攪拌粉砕する際に、摩擦による発熱により溶融された当該溶融オレフィン系合成樹脂の溶融温度を、当該骨材に含有された水の蒸発作用によって、セルロース成分の炭化温度以下に抑制しながら攪拌混合処理を行う事を特徴とする再生合成樹脂素材の製造方法。
【請求項2】
当該骨材として、タルク、石膏ボード、ペーパースラッジ、ダンボールから選択された一つが使用される事を特徴とする請求項1に記載の再生合成樹脂素材の製造方法。
【請求項3】
当該骨材に含まれる水の含水率が20%以上である事を特徴とする請求項1又は2に記載の再生合成樹脂素材の製造方法。
【請求項4】
当該混合装置内に更にステアリン酸ナトリウムを添加する事を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の再生合成樹脂素材の製造方法。
【請求項5】
当該ステアリン酸ナトリウムの混入量は、0.5乃至3重量%である事を特徴とする請求項4に記載の再生合成樹脂素材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−229423(P2010−229423A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163723(P2010−163723)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【分割の表示】特願2009−57592(P2009−57592)の分割
【原出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(509071471)株式会社プラシンクス (2)
【出願人】(509071666)株式会社プラト (2)
【Fターム(参考)】