説明

樹脂組成物、光学材料、及び、光学部材

【課題】透明性、低硬化収縮率、低屈折率、密着性等等各種性能に優れ、光導波路、レンズ、光ディスク、光ファイバー、筐体等の光学用途(特に光学透明用途)の他、機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料・電気・電子部品材料等に好適に用いることができる樹脂組成物、光学材料、及び、光学部材を提供する。
【解決手段】カチオン重合性基含有化合物を有機樹脂成分として含む樹脂組成物であって、該樹脂組成物は、硬化体の850nmにおける屈折率が1.49以下である樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び光学部材に関する。より詳しくは、光学用途、オプトデバイス用途、表示デバイス用途の他、機械部品材料、電気・電子部品材料等として有用な樹脂組成物、光学材料、及び、該光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性樹脂組成物は、各種部材を構成する成形体や被覆の形成に幅広く用いられ、例えば、光学的に良好な特性をもつものが従来の無機系材料に代わるものとして注目されている。特に、電気・電子部品材料や光学用途にも好適に用いられる。電気・電子部品材料や光学用途においては、樹脂組成物に無機物質を含有させると、熱膨張率を低下させることができるだけでなく、無機物質と樹脂との屈折率を合わせることで樹脂組成物及びその硬化物の外観を制御し、透明性を発現させることもできることから、有用である。例えば、光実装用途においては、加工が容易でコストパフォーマンスに優れた材料が求められているため、無機ガラスに代わって樹脂組成物の採用が進んでいる。また、このような硬化性樹脂組成物は、機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料の他、成形材料等としても有用であり、更に、塗料や接着剤の材料としても用いられるものである。
【0003】
光導波路用途においては、ポリマー系導波路を用いることによって、低温プロセスにより低コストで製造可能であるだけでなく、光損失が少なく充分な信頼性を有する材料とする検討が進んでいる(例えば、非特許文献1参照。)。光導波路の用途としては、車内LAN、家電ネットワーク、AV機器ネットワーク、光電気混載PWB等のエリアにおいて、FTTH(Fiber to the HOME)×エリアに好適に用いることができる。また、光電気混載基板へ向けての技術開発が検討されている。
【0004】
光実装材料用樹脂組成物について、樹脂と無機微粒子とを含有する光実装材料用樹脂組成物であって、上記無機微粒子は、アルコキシド化合物及び/またはカルボン酸塩化合物の加水分解縮合物であって、その平均慣性半径が50nm以下であることを特徴とする光実装材料用樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。光導波路用途においては、光導波路のクラッド部において、屈折率を1.40〜1.62の範囲で制御でき、かつ無溶剤で塗布可能な、フッ素を分子内に含まない脂肪族環状エポキシ樹脂を必須成分とする紫外線硬化樹脂を用いることを特徴とする光導波路が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
また光導波路の製造方法としては、コアをクラッドで狭持した光導波路の製造方法であって、第1の凹型を作製する工程と、該第1の凹型に樹脂を塗布、硬化させて第2の凸型を作製する工程と、該第2の凸型に樹脂を塗布、硬化させてコアパターンとなる凹部を有する第1のクラッドを形成する工程と、該第2の凸型を剥離する工程と、該コアパターンとなる凹部に樹脂を塗布、硬化させてコアを形成する工程と、更に樹脂を塗布、硬化させて第2クラッドを形成する工程と、を含むことを特徴とする光導波路の製造方法が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【非特許文献1】「ポリマー光導波路と関連材料の技術・市場展望」、株式会社 ジャパンマーケティングサーベイ、平成15年2月17日、p.2−6、17−22、28−32
【特許文献1】特開2006−131876号公報(第1−2頁)
【特許文献2】特開平6−273631号公報(第1−2頁)
【特許文献3】特開2002−311273号公報(第1−2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、透明性、低硬化収縮率、低屈折率、密着性等の各種性能に優れ、光導波路、レンズ、光ディスク、光ファイバー、筐体等の光学用途(特に光学透明用途)の他、機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料・電気・電子部品材料等に好適に用いることができる樹脂組成物、光学材料、及び、光学部材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、カチオン重合性基含有化合物を有機樹脂成分として含む樹脂組成物について種々検討したところ、カチオン重合性基含有化合物は、成形が容易であり光学用途等種々の用途における材料として有用であることに着目し、硬化体の屈折率が1.49以下とする樹脂組成物を用いると、成形性、硬化性等の作業性、透明性、屈折率等の光学特性、保存安定性に優れた樹脂組成物となることを見いだした。また、特定の無機成分を用いることにより、機械的特性が優れたものとなり、種々の用途に好適に用いることができる樹脂組成物とすることができることに想到した。更に、レンズ等の光学用途、光導波路等の光実装用途、オプトデバイス用途、表示デバイス用途の他、機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料等の様々な用途に好適に適用することができることも見いだし、本発明に到達したものである。
【0008】
本発明者等は、オプトデバイス用途において、特に光導波路用途に上記樹脂組成物及び硬化体を好適に用いることができることを見いだした。すなわち、アルキル基を含有することを必須とするシルセスキオキサンとエポキシ樹脂からなる光学材料用樹脂組成物とすることで、上述した種々の用途に好適に適用することができ、特に望ましくは光導波路用材料として用いることができる。光導波路用材料としては、コアとクラッドの屈折率差が大きい方が好ましい。具体的には、コアとクラッドとの屈折率の差が3%以上であることが好ましい。光導波路用コアとしてアクリル樹脂を用いた場合、屈折率を1.5前半程度までしか上げることができないため、クラッド用材料として1.49以下の低屈折率樹脂が必要とされている。エポキシ樹脂が光導波路用材料として提案されているが、この屈折率を満足することはエポキシ樹脂単独では難しい。また、アクリル樹脂では屈折率の達成は可能であるが厚膜化することやコアとの密着性に由来する信頼性に問題をかかえており実用化は難しい。それに対し、上記のようなオルガノシロキサン化合物(具体的には、シルセスキオキサン)とカチオン重合性基含有化合物(具体的には、エポキシ樹脂)を含む有機無機複合材料の硬化体は、透明性・低硬化収縮率(厚膜化)・低屈折率(850nmでの屈折率が1.49以下)・コア材との密着性等、光導波路用材料に必要な物性を全て満足することを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、カチオン重合性基含有化合物を有機樹脂成分として含む樹脂組成物であって、上記樹脂組成物は、硬化体の850nmにおける屈折率が1.49以下である樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
上記樹脂組成物は、硬化体の850nmにおける屈折率が1.49以下である。硬化体の屈折率を1.49以下とすることにより、低い屈折率が求められる用途に特に好適に用いることができる。具体的には、光導波路においては、クラッド用材料として1.49以下の低屈折率樹脂が必要とされており、コアとの屈折率差をより大きくすることが求められている。例えば、光導波路、光電気混載基板等として、車内LAN、家電ネットワーク、AV機器ネットワーク、光電気混載PWB等のエリアにおいて、FTTH(Fiber to the HOME)×エリアに好適に用いることができる。なお、本明細書中、上記樹脂組成物を「硬化性樹脂組成物」とも言う。
上記硬化体の屈折率としては、より好ましくは、1.48以下であり、更に好ましくは、1.47以下であり、特に好ましくは、1.46以下である。なお、屈折率の測定方法は、プリズムカプラー(SAIRON TECHNOLOGY社製、「SPA−4000」)を用いる方法等が挙げられる。上記屈折率は、プリズムカプラーを用いて測定した場合に、室温(25℃)の条件下で、波長が830nmの光に対して測定したときの屈折率である。
【0011】
上記樹脂組成物は、下記平均組成式:
aRbYcSiOd
(式中、Rは、飽和脂肪族炭化水素基を表す。Rは、アリール基、アラルキル基、及び、アリール基又はアラルキル基の水素原子の一部若しくは全部が脂肪族炭化水素基で置換されてなる基からなる群から選ばれる少なくとも1種を表す。Yは、RO基、水酸基、ハロゲン原子及び水素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種を表す。Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1種を表す。a、b、c及びdは、0<a<3、0≦b<3、0≦c<3、0<a+b+c<3、0<a+b<3、及び、a+b+c+2d=4を満たす。R、R、Y、Rが複数個ある場合には、それぞれ同一でもよく、異なっていてもよい。)で表されるオルガノシロキサン化合物を含むことが好ましい。上記樹脂組成物がオルガノシロキサン化合物を含むことにより、硬化収縮率が小さく、厚膜化が可能であり、種々の用途に好適に用いることができる。特に光導波路に用いた場合に、クラッドとコアとの密着性に優れ、光損失を低減する等必要な物性を満たすことができる。また、上記樹脂組成物は、成形が容易であり、加熱硬化特性に優れ、ハンドリング等の作業性がよく、保存安定性に優れたものとなる。また、成形体は、優れた透明性(光学的均質性)、低い屈折率等の光学特性を示し、耐熱性がよく、耐曲げ強度等の機械的特性に優れている。更に、上記オルガノシロキサン化合物は、不活性な(反応性の低い)有機基であるR及び/又はRを有することから、本発明の樹脂組成物は、長期間保存しても経時的な粘度の上昇が小さく、硬化剤や硬化触媒を添加しても常温でゲル化反応が進行し難い。
【0012】
上記オルガノシロキサン化合物は、不活性で反応性が低い有機基であるR及び/又はRを有することから、樹脂組成物の経時的な粘度の上昇が小さいことが特徴である。このような不活性有機基を有するオルガノシロキサン化合物は、耐熱性や機械的特性を改善しながら、増粘を促進する作用がない点で特に好ましい。したがって、ハンドリング性に優れた一液性樹脂組成物(一液性硬化性樹脂組成物)として提供することができ、樹脂組成物として種々の用途に好適に用いることができる。このように、有機樹脂成分を含む樹脂組成物であって、上記平均組成式で表されるオルガノシロキサン化合物を含有せしめる樹脂組成物(硬化性樹脂組成物)の保存安定性改良方法もまた、本発明の好ましい形態の一つである。更に、オルガノシロキサン化合物を用いると、有機樹脂成分の硬化性に影響することがないので、所望の硬化速度を有する有機樹脂成分を選ぶことにより、樹脂組成物(光学材料)の硬化性を制御することができる。例えば、硬化反応性の高いカチオン重合性基含有化合物を用いて、硬化時の硬化性を高めることができることとなる。なお、本明細書中、「有機樹脂成分」とは、カチオン重合性基含有化合物を含む有機樹脂全体を指すものである。カチオン重合性基含有化合物の含有量としては、全有機樹脂成分中、30質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、50質量%以上であり、更に好ましくは、80質量%以上であり、最も好ましくは、100質量%である。
【0013】
また上記硬化性樹脂組成物を硬化させる場合には、製造工程における硬化・加工特性の再現性に優れ、品質の安定した硬化物が得られることとなる。得られる硬化物は、充分な光学的均質性を有し、種々の用途、特に、硬化成形後の成形体の表面及び内部において極めて高度な光学的均質性が必要とされる光学材料に好適に用いることができる。更に、有機樹脂成分として、硬化反応性の高いカチオン重合性基含有化合物を用いることで、加熱硬化性に優れた硬化物が得られ、光学部材等として好適に用いることができる。例えば、アッベ数、屈折率を適宜制御することにより、所望の光学特性を有する樹脂組成物を得ることができ、例えば、屈折率が低く、アッベ数が高い光学材料を、ハンドリング性に優れた一液性樹脂組成物(一液性光学材料)として得ることができ、該光学材料を硬化させて、低屈折率かつ高アッベ数を有する硬化物(光学部材)を得ることができる。また、硬化触媒として、熱潜在性カチオン発生剤又は光潜在性カチオン発生剤を用いることで、上述のような保存安定化効果が充分に発揮されつつ、好適な範囲で硬化をすすめることができ、上述した種々の用途に好適に用いることができる。
【0014】
上記オルガノシロキサン化合物としては、平均組成式が上記のものであれば特に限定されない。上記オルガノシロキサン化合物において、Rとしては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルへキシル基、n−オクチル基、ラウリル基、ステアリル基などの飽和脂肪族鎖状炭化水素基(アルキル基)((1)群);シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロへキシル基、ビシクロヘキシル基などの飽和脂肪族環状炭化水素基(シクロアルキル基)((2)群);飽和脂肪族鎖状炭化水素基(アルキル基)の水素原子の一部又は全部が、飽和脂肪族環状炭化水素基(シクロアルキル基)で置換されてなる基((3)群);飽和脂肪族環状炭化水素基(シクロアルキル基)の水素原子の一部又は全部が、飽和脂肪族鎖状炭化水素基(アルキル基)で置換されてなる基((4)群);などの無置換−飽和脂肪族炭化水素基(以下、無置換−炭化水素基(I)と称することがある)が好ましい。
上記オルガノシロキサン化合物は、Rが上記のものであればいずれも好適に用いることができるが、中でも、Rがアルキル基であることが好ましい。Rとして、特に好ましくは、メチル基である。
【0015】
またRとしては、飽和脂肪族炭化水素基における炭素数が1〜20であるものが好ましい。
上記Rとしてより好ましくは、工業的に入手しやすい点で、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルへキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロへキシル基であり、更に好ましくは、メチル基、シクロへキシル基である。
上記飽和脂肪族炭化水素基が、オルガノシロキサン化合物の1分子中に複数ある場合は、同一であっても異なっていてもよい。
上記Rとしては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基;メチルフェニル基(トルイル基)、ジメチルフェニル基(キシリレン基)、ジエチルフェニル基、メチルベンジル基などの如く、アリール基、アラルキル基の水素原子の一部又は全部が、脂肪族炭化水素基で置換されてなる基が好ましい。これらを総称して無置換−炭化水素基(II)と称することがある。
上記Rとしては、工業的に入手し易い点でフェニル基、ベンジル基が特に好ましい。最も好ましくは、フェニル基である。
【0016】
更に、上記R、Rにおいて、上記炭化水素のみからなる基以外に、炭化水素基における水素原子の一部又は全部が、他の置換基で置換されたものも好ましい。この場合、炭化水素基とは、Rにおいては、無置換−炭化水素基(I)を、Rにおいては、無置換−炭化水素基(II)を意味する。以下、総称して、無置換−炭化水素基ともいう。これらのR及び/又はRを有するオルガノシロキサン化合物もまた、本発明におけるオルガノシロキサン化合物に包含される。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基などの非反応性置換基が無置換−炭化水素基の一部又は全部の水素原子と置換した基(このような非反応性置換基を有する炭化水素基を非反応性基置換−炭化水素基ともいう。);水酸基、アミノ基、チオール基、カルボン酸基、スルホン酸基、エポキシ基(グリシジル基を含む)、エポキシシクロヘキサン基、オキセタン基、ビニル基などの重合性不飽和結合基、などの反応性置換基が無置換−炭化水素基の一部又は全部の水素原子と置換した基(反応性官能基を有する炭化水素基を反応性基置換−炭化水素基ともいう。)が例示される。
上記非反応性置換基において、上記ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。
上記アルコキシ基としては、アルコキシ基を構成するアルキル鎖が、Rにおける脂肪族炭化水素基(1)群に例示したアルキル基であるもの、又は、同じく(2)群に例示したシクロアルキル基であるものが好ましい。より好ましくは、メチル基、シクロへキシル基である。
【0017】
上記R、Rとしては、上述した無置換−炭化水素基、非反応性基置換−炭化水素基及び反応性基置換−炭化水素基は、いずれも用いることができる。より好ましくは、無置換−炭化水素基、非反応性基置換−炭化水素基であり、更に好ましくは、無置換−炭化水素基である。なお、それぞれの炭化水素基の好ましい例は、上述したとおりである。
上記反応性置換基ならびに反応性基置換−炭化水素基は、樹脂組成物に含まれると、本発明の有機樹脂成分に含まれるカチオン重合性基含有化合物と相まって、カチオン硬化速度を向上し、耐熱性を向上させることから、樹脂組成物に含まれることが好ましい。一方、これらの反応性置換基は、硬化性樹脂組成物の粘度を上昇させる場合があることから、本願発明の硬化性樹脂組成物の常温における保存安定性の低下を招くおそれがある。したがって、これらの反応性置換基は、少量含まれることが好ましい。
【0018】
上記オルガノシロキサン化合物が反応性置換基を有する場合、反応性置換基の炭化水素基に対する割合としては、炭化水素基(R+R)100質量%中、50質量%未満が好ましい。また、10質量%未満が好ましく、1質量%未満が好ましい。より好ましくは、0.1質量%未満であり、更に好ましくは、0.01質量%未満であり、特に好ましくは、0.001質量%未満である。最も好ましくは、0質量%(検出されない)である。なお、上述したように、反応性置換基は、上記反応性基置換−炭化水素基に含有される反応性置換基のことである。また、オルガノシロキサン化合物の分子末端のケイ素原子に、R及び/又はRが結合する場合は、これ(又はこれら)のR及び/又はRは、上記「オルガノシロキサン化合物が有する炭化水素基」に含まれる。また、反応性基置換−炭化水素基に含まれる反応性置換基の割合としては、反応性基置換−炭化水素基100質量%中30質量%未満が好ましい。また、5質量%未満が好ましく、0.5質量%未満が好ましい。より好ましくは、0.05質量%未満であり、更に好ましくは、0.005質量%未満であり、特に好ましくは、0.0005質量%未満である。最も好ましくは、0質量%(検出されない)である。
【0019】
上記反応性置換基の含有量としては、反応性置換基を有するオルガノシロキサン化合物(質量%)が、樹脂組成物100質量%中(樹脂組成物全体)、30質量%以下であることが好ましい。30質量%を超えると、樹脂組成物が硬脆くなり厚膜に加工できなくなるおそれがある。より好ましくは、20質量%以下であり、更に好ましくは、10質量%以下である。なお、「反応性置換基を有するオルガノシロキサン化合物」とは、エポキシ基・オキセタン基等のカチオン硬化性基を少なくとも一つ含有するオルガノシロキサン化合物のことを言い、反応性置換基を有するものであればよい。すなわち、反応性置換基のオルガノシロキサン化合物中での結合箇所は限定されず、上記反応性基置換−炭化水素基を有するオルガノシロキサン化合物とともに、ケイ素原子にこれらの反応性置換基が直接結合したオルガノシロキサン化合物も含まれる。
【0020】
上記オルガノシロキサン化合物が無置換−炭化水素基及び/又は非反応性基置換−炭化水素基を有する場合、無置換−炭化水素基及び非反応性基置換−炭化水素基の炭化水素基に対する割合としては、炭化水素基総量(R+R)100質量%中、50質量%以上が好ましい。また、90質量%以上が好ましい。より好ましくは、95質量%以上であり、更に好ましくは、98質量%以上であり、特に好ましくは、100質量%である。なお、オルガノシロキサン化合物の分子末端のケイ素原子に、R及び/又はRが結合する場合は、上述と同様である。また、無置換−炭化水素基及び非反応性基置換−炭化水素基に対する無置換−炭化水素基の割合としては、無置換−炭化水素基及び非反応性基置換−炭化水素基100質量%中70質量%以上が好ましい。また、80質量%以上が好ましい。より好ましくは、90質量%以上であり、更に好ましくは、98質量%以上であり、特に好ましくは、100質量%である。
【0021】
上記Yは、OR基、水酸基、ハロゲン原子及び水素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
上記Yは、Rがアルキル基であるOR基、塩素原子、水酸基、水素原子であることが好ましい。より好ましくは、Rが炭素数1〜5のアルキル基からなるOR基であり、更に好ましくは、Rが炭素数1のアルキル基からなるOR基、すなわち、メトキシ基である。
上記Yの含有量としては、低いことが好ましい。Yの含有率が高いと、硬化性樹脂組成物の常温における硬化反応が進むおそれがあるためである。具体的には、平均組成式におけるcの値が、1未満であることが好ましい。より好ましくは、0.4未満であり、更に好ましくは、0.1未満であり、特に好ましくは、0.01未満である。最も好ましくは、0である。またR、Rの合計モル数に比べ、Yの含有モル数が小さいことが、同様の理由から好ましい。具体的には、c<a+bであることが好ましい。より好ましくは、c<(a+b+c)×0.4である。すなわち、本発明の硬化性樹脂組成物において、上記オルガノシロキサン化合物を表す平均組成式は、c<(a+b+c)×0.4を満たすことが好ましい。言い替えれば、本発明の硬化性樹脂組成物において、上記平均組成式で表されるオルガノシロキサン化合物であり、該式におけるYの含有量がc<(a+b+c)×0.4を満たすことが好ましい。更に好ましくは、c<(a+b+c)×0.2であり、特に好ましくは、c<(a+b+c)×0.1であり、最も好ましくは、c<(a+b+c)×0.01である。
【0022】
上記オルガノシロキサン化合物は、上述の平均組成式で表されるものであるが、各オルガノシロキサン化合物の分子末端のケイ素原子における末端結合基が、上記した、R又はRであることが好ましい。より好ましくは、R又はRが、上記無置換−炭化水素基又は非反応性基置換−炭化水素基であり、更に好ましくは、R又はRが、上記無置換−炭化水素基である。なお、分子末端のケイ素原子に結合する基の一部又は全部が、R、R以外の基であってもよく、例えば、上記したY(RO基、ハロゲン原子、水酸基及び水素原子)であり、更に好ましい態様は上記したYに同様である。
上記オルガノシロキサン化合物分子の結合基における、上記R又はRからなる炭化水素基の割合は、末端結合基100モル%に対し、50モル%以上であることが好ましい。より好ましくは、80モル%以上であり、更に好ましくは、90モル%以上であり、特に好ましくは、100モル%である。
【0023】
上記オルガノシロキサン化合物において、a、b、c及びdとしては、0<a<3、0≦b<3、0<a+b<3、0<a+b+c<3、及び、a+b+c+2d=4を満たすものである。上記a及びbとしては、R及びRの割合を示すこととなる。なお、上記平均組成式は、樹脂組成物に含まれる全てのオルガノシロキサン化合物の組成式の平均を示すものであり、上記平均組成式を満たさないオルガノシロキサン化合物が含まれていてもよい。具体的には、上記平均組成式において、a≠0であるが、a=0であるオルガノシロキサン化合物が含まれていてもよい。言い換えると、オルガノシロキサン化合物が有する固体組成物R及び/又はRの形態としては、(1)R、(2)R及びR、(3)Rのいずれかからなり、樹脂組成物の用途に応じて適宜選択することができる。例えば、Rからなる形態(1)(Rを含まない形態)では、樹脂組成物の屈折率を小さくすることができ、有機樹脂成分を適宜選択することで、屈折率が小さく所望のアッベ数の樹脂組成物や硬化物を得ることができる。また、Rからなる形態(3)(Rを含まない形態)では、樹脂組成物の屈折率を大きくすることができ、有機樹脂成分を適宜選択することで、屈折率が大きく所望のアッベ数の樹脂組成物や硬化物を得ることができる。また、RとRとからなる形態(2)では、RとRの割合を変えることにより、屈折率を所望の範囲に設定することができる。このように、上記オルガノシロキサン化合物におけるR、Rの比率により、ポリシロキサン自体の屈折率が制御され、得られる樹脂組成物の屈折率の厳密な調整が可能となる。
【0024】
上記a+b+cとしては、0より大きく3未満であればよい。好ましくは、0.5以上2.7以下であり、より好ましくは、0.8以上2.4以下である。また、a+bは、0より大きく3未満であればよい。a+bの好ましい範囲は、0.4以上2.7以下であり、より好ましくは、0.7以上2.4以下である。また樹脂の屈折率を高くしたい場合には、a+b+cにおけるaの割合:a/(a+b+c)は、0.4未満が好ましい。
より好ましくは、0.2未満であり、更に好ましくは、0.1未満であり、特に好ましくは、0.01未満である。一方、樹脂の屈折率を低くしたい場合には、bの割合b/(a+b+c)は、0.4未満が好ましい。より好ましくは0.2未満であり、更に好ましくは0.1未満であり、最も好ましくは0.01未満である。
【0025】
上記オルガノシロキサン化合物の分子構造としては、特に限定されないが、通常、鎖状構造(直鎖状、分岐状)、ラダー状構造、鎖状、ラダー状からなる環状構造、かご状及び粒子状が例示される。分子構造としては、鎖状、ラダー状、かご状が好ましく、より好ましくは、ラダー状である。すなわち、ラダー状>線状(鎖状)>かご状>粒子状の順に好ましい。これは、この順に樹脂成分への溶解性が高いためであり、溶解性が高いと、オルガノシロキサン化合物が均質に分散した樹脂組成物を得ることができる。なお、分子構造がラダー状、鎖状の場合は、樹脂組成物への溶解性が高く、光学的な透明性、機械特性がよい材料が得られる。特にラダー状のオルガノシロキサン化合物を用いると、他の構造のものを用いる場合に比べて、少量の添加で下記添加効果が発揮されることとなる。オルガノシロキサン化合物を添加する効果とは、(1)硬化性樹脂組成物の透明性、アッベ数・屈折率を厳密に制御することができる(制御性に優れる。)効果、(2)硬化物の透明性、アッベ数・屈折率を厳密に制御することができる効果(制御性に優れる効果)、(3)硬化物の機械的特性に優れる効果(弾性率、破壊強度が高い効果)等があげられる。
【0026】
上記分子構造が鎖状構造である場合、上記平均組成式におけるa+b+cの好ましい範囲は、1.5以上2.7以下である。より好ましくは、1.8以上2.4以下であり、更に好ましくは、1.9以上2.3以下であり、特に好ましくは、2以上2.2以下である。a+bの好ましい範囲は、1以上2.7以下である。より好ましくは、1.6以上2.4以下であり、更に好ましくは、1.8以上2.2以下であり、特に好ましくは、2±0.05である。上記分子構造がラダー状、かご状である場合、上記平均組成式におけるa+b+cの好ましい範囲は、0.5以上2以下である。より好ましくは、0.8以上1.6以下であり、更に好ましくは、0.9以上1.4以下であり、特に好ましくは、1以上1.2以下である。a+bの好ましい範囲は、0.4以上2以下である。より好ましくは、0.7以上1.7以下であり、更に好ましくは、0.8以上1.2以下であり、特に好ましくは、1±0.05である。
【0027】
上記オルガノシロキサン化合物の分子構造としては、上述のように鎖状、ラダー状、かご状が好ましく、この場合、上記a+bとしては、1以上2以下であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。a+b=1のとき、分子構造は通常ラダー状、又は、かご状、粒子状等の二次元、三次元の高次構造となり、a+b=2のとき、分子構造は、直鎖状の一次元構造となる。このように、オルガノシロキサン化合物は、式中、a+bが1又は2である樹脂組成物である形態もまた、本発明の好ましい形態の一つである。上記オルガノシロキサン化合物の分子構造としては、上述のように、ラダー状であることがより好ましい。この場合、上記a+bとしては、1であることが好ましい。すなわち、上記オルガノシロキサン化合物は、ラダー状であり、式中、a+bが1である樹脂組成物もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
【0028】
上記平均組成式:RaRbYcSiOdにおいて、RとRとの割合(aとbとの比率)を上記a及びbの条件を満たす範囲で変化させることが好ましい。すなわち、上記オルガノシロキサン化合物は、オルガノシロキサン化合物のRとRとの比率を変化させるものである樹脂組成物である形態(RとRとの比率を変化させる形態)もまた、本発明の好ましい形態の一つである。このようにaとbとの割合を変化させることにより、樹脂組成物(及び硬化物)の屈折率を変更することができ、所望の屈折率を有する樹脂組成物を得ることができる。例えば、Rの比率を高くすると、得られる樹脂組成物を低屈折率化することができ、低く(Rの含有量を高く)すると、得られる樹脂組成物を高屈折率化することとなる。
【0029】
上記aとbとの比率としては、屈折率をどの程度変化させるか、及び、用いるR、Rの種類に依存し、適宜選択することができる。上記樹脂組成物及び硬化物の屈折率を低くしたい場合、脂肪族炭化水素基含有量が多い方が好ましい。具体的には、a/(a+b)×100が、50%以上であることが好ましい。より好ましくは、80〜100%であり、更に好ましくは、100%である。樹脂組成物及び硬化物の屈折率を高くする場合、アリール基又はアラルキル基含有量が多い方が好ましい。具体的には、a/(a+b)×100が、50%未満であることが好ましい。より好ましくは、0〜20%であり、更に好ましくは、0%である。
【0030】
上記RとRとの比率を変化させる形態においては、オルガノシロキサン化合物として、分子中にRを有するシロキサン(シロキサンA)と、Rを有するシロキサン(シロキサンB)とを併用し、該オルガノシロキサン化合物のシロキサンA含有量を変化させる形態(a)、オルガノシロキサン化合物として、分子中にR及びRのいずれも有するシロキサン(シロキサンAB)を用いて制御し、該オルガノシロキサンのR含有量を変化させる形態(b)が好適である。a、b、cの異なるオルガノシロキサンABを2種以上用いる形態や、シロキサンA及び/又はシロキサンBとシロキサンABとを用いる形態なども好適である。
【0031】
なお、上記平均組成式は用いるオルガノシロキサン分子の平均組成を示し、a、b、c及びdは、Siに対するR、R、Y及びOの結合割合の平均値を表すものであり、その結合様式を特定するものではない。具体的には、シロキサンABとしては、その分子中のシロキサン骨格が、任意のケイ素原子にRもRも結合しているものからなる場合、有機基としてRのみが結合したケイ素原子と、Rのみが結合したケイ素原子からなる場合も、両方が混在した場合も含まれる。この平均組成式で表されるオルガノシロキサン化合物において、シロキサン骨格を形成するケイ素原子に注目すると、(1)RとRとが結合したケイ素原子、又は、(2)Rが結合したケイ素原子及びRが結合したケイ素原子が必須として含まれ、RとRのいずれも結合していないケイ素原子が含まれていてもよい。これらのケイ素原子の組み合わせ、割合、シロキサン骨格での位置等については限定されないこととなる。
【0032】
用いるオルガノシロキサン化合物総量において、上記RとRとの比率を変化させる形態においては、シロキサンAと、シロキサンBとを併用し、該オルガノシロキサン化合物のシロキサンAの含有量を変化させる形態(a)がより好ましい。形態(a)と(b)とを比べると、形態(b)では、分子量や分子構造、RとRの比率を任意に制御したオルガノシロキサンABを用いてRとRとの比率を制御することとなる。一方、形態(a)では、分子量、分子構造、R含有量の制御されたシロキサンAとR含有量の制御されたシロキサンBの混合比率を変えることで、RとRとの比率を制御することとなり、所望の特性を有するシロキサンA又はシロキサンBが個々に工業的に入手し易いことから、また、シロキサンA又はシロキサンBを個別に合成した方がシロキサンAB製造時に起こるRとRの導入比率の振れの問題が起こり難いことから、形態(b)に比べて、組成物の物性を制御し易い。このように、上記オルガノシロキサン化合物は、形態(a)によりRとRとの比率を制御した樹脂組成物、すなわち、シロキサンAとシロキサンBとを併用してなる樹脂組成物が好ましい。
【0033】
上記シロキサンAとしては、Rを有し、Rを有さないシロキサンであればいずれも好適に用いることができるが、Rがアルキル基であるアルキルシロキサンが好ましい。また、シロキサンBとしては、Rを有し、Rを有さないシロキサンであればいずれも好適に用いることができるが、Rがフェニル基であるフェニルシロキサンが好ましい。このように、上記オルガノシロキサン化合物は、アルキルシロキサンとフェニルシロキサンとを併用したものである樹脂組成物もまた、本発明の好ましい形態の一つである。言い替えれば、本発明の硬化性樹脂組成物において、上記オルガノシロキサン化合物は、Rを有さないオルガノシロキサン化合物とRを有さないオルガノシロキサン化合物とを併用したものであることが好ましい。
【0034】
上記シロキサンAをオルガノシロキサン化合物として用いた場合、樹脂組成物及び硬化物は、低屈折率を示すこととなる。カチオン重合性基含有化合物を適宜選択することにより、得られる樹脂組成物を低屈折率化することができる。一方、シロキサンBをオルガノシロキサン化合物として用いた場合、樹脂組成物の硬化物は、高屈折率を示すことから、カチオン重合性基含有化合物を適宜選択することにより、得られる樹脂組成物を高屈折率化することができる。このように、シロキサンAとシロキサンBとが異なる性質を示すことから、これらを併用して割合を変えることにより、樹脂組成物の光学特性を変えることができる。また、上記割合を変えることに加えて、シロキサンAやシロキサンBにおけるRやRを適宜選択することにより、樹脂組成物の特性を変えることもできる。
【0035】
上記オルガノシロキサン化合物は、重量平均分子量が200〜100000であることが好ましい。200より小さいと、添加効果が小さく、機械的特性、保存安定化効果、光学特性制御等の効果が充分には発揮されないおそれがあり、硬化時の熱による揮発のおそれがある。また、1分子中における分子末端のケイ素原子の割合が高まる。したがって、末端ケイ素原子にアルコキシ基(アルコキシシリル基)、水酸基(シラノール基)などの反応性基等の上記平均組成式におけるY基が結合している場合は、結果として、シロキサン添加総量に対する反応性基の割合が高くなる。その結果、樹脂組成物中の反応性基量の含有率が高まり、保存安定性が低下するおそれがある。100000を超えると有機樹脂成分への相溶性が悪く、溶解しにくいおそれがある。上記重量平均分子量としてより好ましくは、500〜50000であり、更に好ましくは、800〜10000である。
上記オルガノシロキサン化合物において、a、b、c及びdとしては、a=1、b=0、c=0〜0.4及びd=1.5〜1.3であることが好ましい。
【0036】
上記オルガノシロキサン化合物としては、上述したように有機基やその割合を適宜選択して所望のものを得ることができるが、シロキサンAとしては、ポリメチルシルセスキオキサンであることが好ましい。このようなポリメチルシルセスキオキサンは、上記平均組成式において、Rがメチル基(ここで、c及びdは、該シロキサンの分子量、縮合度によるが、好ましくは、c<0.7であり、dは1.5又は1.1〜1.5である。)で表されるものであり、ラダー状の構造であることが好ましい。ポリメチルシルセスキオキサンを用いると、特に低い屈折率を達成できることとなり、これらの特性が要求される用途、例えば、光学用途等の種々の用途に好適に用いることができる。このように、上記オルガノシロキサン化合物は、ポリメチルシルセスキオキサンである樹脂組成物もまた、本発明の好ましい形態の一つである。ポリメチルシルセスキオキサンは、下記式(2):
【0037】
【化1】

【0038】
(式中、Rは、同一若しくは異なって、メチル基、又は、エチル基を表す。nは繰り返し数を表す。)で表されるものが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物において、上記オルガノシロキサン化合物は、ラダー状シルセスキオキサン化合物であることが好ましい。また上記オルガノシロキサン化合物は、上記平均組成式に示されるオルガノシロキサン化合物であり、ラダー状シルセスキオキサン化合物であることが好ましい。なお、ラダー状とは、シルセスキオキサン化合物の分子形態を表し、当該分子形態を表す技術用語として認められている意味を有するものである。
【0039】
上記オルガノシロキサン化合物の樹脂組成物中での含有量(添加量)としては、カチオン重合性基含有化合物とオルガノシロキサン化合物の総重量に対し、0.1〜50質量%(重量%)が好ましい。0.1質量%未満であると、添加効果が小さく、保存安定化効果、光学特性制御等の効果が充分には発揮されないおそれがあり、50質量%超えると硬化物の機械的強度が充分とはならない場合がある。より好ましくは、1〜30質量%であり、更に好ましくは、3〜20質量%である。
【0040】
〔オルガノシロキサン化合物の製造方法〕
上記オルガノシロキサン化合物の製造方法としては、本発明の作用効果を発揮する限り特に限定されないが、例えば、下記式(I):
sSiX(4−s) (I)
(上記式中、Rは上述のRと同じである。Xは、加水分解性基を表す。sは、1、2又は3である。)、下記式(II):
tSiX(4−t) (II)
(上記式中、Rは上述のRと同じである。Xは、加水分解性基を表す。tは、1、2又は3である。)、及び、下記式(III):
s´Rt´SiX(4−s´−t´) (III)
(上記式中、R及びRは上述のR及びRと同じである。Xは、加水分解性基を表す。s´及びt´は、同一又は異なって、1又は2であり、s´+t´は、2又は3である。)で表される加水分解性シラン化合物を、単独又は混合して有機溶媒中で加水分解・縮合して得ることが好ましい。
上記式(I)〜(III)において、X、X及びXとしては、同一でもよく異なってもよく、RO基、水酸基、水素原子、ハロゲン原子であることが好ましい。なお、Rとしては、アルキル基を表す。Rの炭素数としては、1〜5が好ましく、1又は2がより好ましい。
、X及びXとしては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、塩素原子であることが好ましい。
【0041】
上記式(I)で表されるシラン化合物(シラン化合物(1))を加水分解・縮合することにより、上述したシロキサンAが得られることとなり、上記式(II)で表されるシラン化合物(シラン化合物(2))を加水分解・縮合することにより、上述したシロキサンBが得られることとなる。
上記シラン化合物(1)及びシラン化合物(2)を共加水分解・縮合するか、上記シラン化合物(1)及び/又はシラン化合物(2)と式(III)で表されるシラン化合物(シラン化合物(3))とを共加水分解・縮合するか、上記シラン化合物(3)を単独で加水分解・縮合することにより、上記シロキサンABが得られることとなる。なお、上記シラン化合物(1)及びシラン化合物(2)を共加水分解・縮合する場合、上記式(I)や(II)において、R、R等は適宜設定することができ、同一又は異なるシロキサン化合物(AB)を得ることができることとなる。
【0042】
上記式(I)及び(II)において、s及びtは、同一又は異なって1、2であることが好ましい。特にs=1、t=1で表されるトリアルコキシシラン化合物が好ましい。トリアルコキシシラン化合物を加水分解・縮合することにより得られるオルガノシロキサン化合物は、有機樹脂成分に相溶性に優れるため好ましい。
上記式(III)において、s´及びt´は、1であることが好ましい。
【0043】
本発明のオルガノシロキサン化合物を加水分解・縮合する場合、上記式(I)〜(III)で表されるシラン化合物以外のシラン化合物を原料として用いてもよい。このように、上記シラン化合物(1)〜(シラン化合物(3)と共加水分解・縮合するシラン化合物としては、例えば、下記式(IV):
Si(X (IV)
(式中、Xは、加水分解性基を表す。)で表されるシラン化合物(シラン化合物(4))ものであることが好適である。
上記Xは、同一又は異なっていてもよく、好ましい態様も上記X〜Xと同様である。
【0044】
上記シラン化合物(4)は、上記シラン化合物(1)〜シラン化合物(3)と好適に共加水分解・縮合することができるが、最終的に得られるオルガノシロキサン化合物が上記平均組成式で表されるものである範囲で用いることが好ましい。具体的には、上記平均組成式において、R、Rの割合が、上述した範囲となる割合で用いることが好ましい。また、有機溶媒中でシラン化合物(1)〜シラン化合物(4)を加水分解縮合して得られるオルガノシロキサン化合物は、再沈殿精製、抽出等により精製して使用することが好ましい。
【0045】
〔有機樹脂成分〕
本発明の硬化性樹脂組成物においては、上記有機樹脂成分とオルガノシロキサン化合物とを含むものであるが、有機樹脂成分とオルガノシロキサン化合物との合計100質量%に対し、有機樹脂成分を10〜99.9質量%、オルガノシロキサン化合物を0.1〜90質量%含むことが好ましい。このような含有量とすることで、透明性とアッベ数がいずれも高い硬化性樹脂組成物とすることができる。特に、有機樹脂成分として熱硬化性樹脂を用いた場合には、熱可塑性樹脂にはできない耐熱性の克服が可能であり、ガラスにはできない複雑で安価な加工が可能となる。上記含有量としてより好ましくは、有機樹脂成分が20〜99質量%、オルガノシロキサン化合物が0.1〜70質量%であり、更に好ましくは、有機樹脂成分が50〜90質量%、オルガノシロキサン化合物が1〜50質量%である。
【0046】
〔カチオン重合性基含有化合物〕
本発明の樹脂組成物は、カチオン重合性基含有化合物を有機樹脂成分として含むものであることが好ましい。このような樹脂組成物は、カチオン重合性基を分子中に少なくとも1個有する化合物を含む樹脂組成物であり、「カチオン硬化性樹脂組成物」とも言う。カチオン硬化性樹脂組成物としては、カチオン重合性基を2個以上有する化合物を含むことが好ましい。より好ましくは、カチオン重合性基を2個以上有する多官能カチオン硬化性化合物を含むことである。
上記硬化性樹脂組成物は、カチオン硬化性樹脂組成物(カチオン重合性基を有する樹脂成分)であることにより、硬化剤を用いずに硬化することができ、本発明の作用効果を充分に発揮し、保存安定性に優れたものとし、更に着色しないものとすることができる。
【0047】
上記カチオン重合性基は、エポキシ基、オキセタン基、ジオキソラン基、トリオキサン基及びビニルエーテル基からなる群より選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。より好ましくは、エポキシ基、オキセタン基、ビニルエーテル基であり、更に好ましくは、エポキシ基、オキセタン基である。なお、本明細書中、「エポキシ基」とは、エポキシ基及びグリシジル基を含むものとする。
上記カチオン重合性基含有化合物は、上述したカチオン重合性基を1種又は2種以上有するものである。好ましい形態としては、エポキシ基含有化合物を有する形態、エポキシ基含有化合物とそれ以外のカチオン重合性基を有する化合物とを併用する形態である。エポキシ基含有化合物とそれ以外のカチオン重合性基を有する化合物とを併用する形態は、エポキシ基含有化合物以外のカチオン重合性基を有する化合物を樹脂組成物に添加することで、硬化速度(カチオン硬化速度)を調整することができる。
【0048】
本発明の樹脂組成物は、カチオン重合性基含有化合物を有機樹脂成分として含むものであり、カチオン重合性基含有化合物としては、上述のようにエポキシ基含有化合物を含むものであることが好ましい。「エポキシ基」として具体的には、グリシジルエーテル基、グリシジルエステル基等のグリシジル基;芳香族グリシジルエーテル化合物の水添物等の完全又は部分飽和脂肪族環状炭化水素に結合したグリシジルエーテル基;エポキシシクロへキサン基など脂環式エポキシ基を含むエポキシ基等も含まれる。以下、エポキシ基含有化合物について更に説明する。
【0049】
上記エポキシ基含有化合物は、脂肪族エポキシ化合物、水添エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、及び、芳香族エポキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含むものであることが好ましい。具体的には、脂肪族エポキシ化合物としては、脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、中心骨格にオキシプロピレン骨格を有するグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が好適である。水添エポキシ化合物としては、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が好適である。脂環式エポキシ化合物としては、エポキシシクロヘキサン骨格を有するエポキシ樹脂、環状脂肪族炭化水素に直接又は炭化水素基を介してエポキシ基が付加したエポキシ樹脂等が好適である。芳香族エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂、ブロモ置換基を有する芳香族エポキシ樹脂等が好適である。
【0050】
上記脂環式エポキシ化合物としては、エポキシシクロヘキサン基を有する樹脂が好適であり、上記水添エポキシ化合物としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂等の芳香族多官能グリシジルエーテル化合物の水添物が好適である。
上記水添エポキシ化合物としては、芳香族エポキシ化合物の完全又は部分水添物等が好ましい。なお、芳香族エポキシ化合物は、芳香族グリシジルエーテル化合物を含む。
上記エポキシ基含有化合物の中でも、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物がこの順に好ましい。具体的には、脂環式エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ基を有する多官能脂環式エポキシ化合物(以下、単に「多官能脂環式エポキシ化合物」とも言う。)が好適である。水添エポキシ化合物としては、飽和脂肪族環状炭化水素骨格に直接的又は間接的に結合したグリシジルエーテル基を有する多官能グリシジルエーテル化合物(以下、単に「多官能グリシジルエーテル化合物」とも言う。)が好適である。脂肪族エポキシ化合物としては、脂肪族グリシジルエーテル化合物が好適である。芳香族エポキシ化合物としては、芳香族グリシジルエーテル化合物が好適である。これらの中でもより好ましくは、硬化性樹脂組成物の硬化速度が高い点で、多官能脂環式エポキシ化合物、多官能グリシジルエーテル化合物である。このように、高い硬化速度を発揮できることから、触媒量が同じであれば、より短時間で硬化物を得ることができる。
【0051】
〔エポキシ基含有化合物〕
本発明の樹脂組成物(硬化性樹脂組成物)は、有機樹脂成分としてエポキシ基含有化合物を含むものであることが好ましい。エポキシ基含有化合物を含む場合、本発明の樹脂組成物を種々の用途、特に、光導波路用途において好適に用いることができる。従来のポリマー系材料、例えば、アクリル樹脂では、硬化収縮率が大きく、1〜2mm程度の厚膜とした場合にクラックが入り成膜することが困難であったが、エポキシ基含有化合物を含む樹脂組成物においては硬化収縮率が小さく、クラックが入ることなく好適に成膜することができる。また、硬化収縮率が小さいと、クラッドとコアとの密着性が高まり、クラッドとコアとの間での光の屈折の際に光のもれが生じにくくなり、光損失を低減することができる。
【0052】
上記エポキシ基含有化合物としては、以下のような化合物等が好適である。ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等のビスフェノール類とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるエピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、及び、これらを上記ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等のビスフェノール類と更に付加反応させることにより得られる高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノール、クレゾール、キシレノール、ナフトール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等のフェノール類とホルムアルデヒド、アセトアルテヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、ジシクロペンタジエン、テルペン、クマリン、パラキシリレングリコールジメチルエーテル、ジクロロパラキシリレン、ビスヒドロキシメチルビフェニル等を縮合反応させて得られる多価フェノール類を更にエピハロヒドリンと縮合反応することにより得られるノボラック・アラルキルタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;テトラメチルビフェノール、テトラメチルビスフェノールF、ハイドロキノン、ナフタレンジオール等とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られる芳香族結晶性エポキシ樹脂、及び、更に上記ビスフェノール類やテトラメチルビフェノール、テトラメチルビスフェノールF、ハイドロキノン、ナフタレンジオール等を付加反応させることにより得られる芳香族結晶性エポキシ樹脂の高分子量体;上記ビスフェノール類やテトラメチルビフェノール、テトラメチルビスフェノールF、ハイドロキノン、ナフタレンジオール等の芳香族骨格を水素化した脂環式グリコール類やエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、PEG600、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、PPG、グリセロール、ジグリセロール、テトラグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン及びその多量体、ペンタエリスリトール及びその多量体、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース等の単/多糖類等とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られる脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂(脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ化合物);(3,4−エポキシシクロヘキサン)メチル3´,4´−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート等のエポキシシクロへキサン骨格を有するエポキシ樹脂(エポキシシクロヘキサン骨格を有するエポキシ化合物);テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、安息香酸とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ヒダントインやシアヌール酸、メラミン、ベンゾグアナミンとエピハロヒドリンとの縮合反応により得られる室温で固形の3級アミン含有グリシジルエーテル型エポキシ樹脂。中でも、上記脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂やエポキシシクロヘキサン骨格を有するエポキシ樹脂が光照射時の外観劣化抑制を目的とした場合はより好適に用いられる。
【0053】
上記エポキシ基含有化合物としては、エポキシ(メタ)アクリレートも好適に用いることができる。
上記エポキシ(メタ)アクリレートとは、1官能以上のエポキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレートであり、エポキシドとしては、例えば、(メチル)エピクロルヒドリンと、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールS、水添ビスフェノールF、それらのエチレンオキシド、プロピレンオキシド変性物等から合成されるエピクロルヒドリン変性水添ビスフェノール型エポキシ樹脂;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート等の脂環式エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート等のヘテロ環含有のエポキシ樹脂等の脂環式エポキシド;
(メチル)エピクロルヒドリンと、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、それらのエチレンオキシド、プロピレンオキシド変性物等から合成されるエピクロルヒドリン変性ビスフェノール型のエポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンと各種フェノール類と反応させて得られる各種ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のエポキシ化物;2,2´,6,6´−テトラメチルビフェノールのエポキシ化物、フェニルグリシジルエーテル等の芳香族エポキシド;
(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)ブチレングリコール、(ポリ)テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類の(ポリ)グリシジルエーテル;グリコール類のアルキレンオキシド変性物の(ポリ)グリシジルエーテル;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ジグリセリン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコールの(ポリ)グリシジルエーテル;脂肪族多価アルコールのアルキレンオキシド変性物の(ポリ)グリシジルエーテル等のアルキレン型エポキシド;
アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボン酸のグリシジルエステル、多価アルコールと多価カルボン酸とのポリエステルポリオールのグリシジルエーテル;グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレートの共重合体;高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化大豆油、エポキシ化ひまし油、エポキシ化ポリブタジエン等の脂肪族エポキシ樹脂等が好適である。
【0054】
脂環式エポキシ化合物を用いると、他の有機化合物成分を用いる場合に比べて、光潜在性カチオン発生剤、熱潜在性カチオン発生剤等のカチオン硬化触媒の添加量を少なくしても、高い硬化速度を発揮することができる。したがって、より短時間で硬化物を得ることができだけでなく、触媒量を低減することより、耐熱性に優れ、加熱による熱変色、機械的強度の劣化が抑制された硬化物を得ることができる。
【0055】
上記エポキシ基含有化合物としては、上述した化合物であればいずれも好適に用いることができるが、下記脂肪族グリシジルエーテル化合物であることが特に好ましい。低屈折率化を主目的とした場合、すなわち、上記カチオン重合性基含有化合物は、下記式(1):
【0056】
【化2】

【0057】
(式中、nは、メチレン基の繰り返し数を表し、0〜20の数である。mは、オキシアルキレン基の繰り返し数を表し、1〜10の数である。)で表されるポリアルキレン基を有する樹脂組成物もまた、本発明の好ましい形態の一つである。このようなカチオン重合性基含有化合物を含むエポキシ樹脂と上述したオルガノシロキサン化合物(シルセスキオキサン)による有機無機複合材料の硬化体は、透明性・低硬化収縮率(厚膜化)・低屈折率(850nmで1.49以下)・コア材との密着性等、光導波路用材料に必要な物性を全て満足することとなり、光導波路のクラッド用材料として好適に用いることができる。
【0058】
上記式(1)中、メチレン基の繰り返し数nとしては、0〜20の数であることが好ましい。20を超えると耐熱性の低下、他の樹脂との相溶性の低下等のおそれがある。より好ましくは、2〜15であり、更に好ましくは、4〜10である。オキシアルキレン基の繰り返し数mとしては、1〜10の数であることが好ましい。1未満であると、樹脂組成物の硬化体が硬脆くなるおそれがあり、10を超えると耐熱性低下のおそれがある。より好ましくは、1〜8であり、更に好ましくは、1〜5である。
【0059】
上記脂肪族エポキシ化合物としては、ポリテトラメチレンエーテルのグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールグリシジルエーテル、トリメチルプロパングリシジルエーテル、ジエチレングリコールグリシジルエーテル、ポリテトラメチレンエーテルのジグリシジルエーテルが好ましい。これらの中でも、より好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルのグリシジルエーテルである。
上記脂環式エポキシ化合物を用いることで、硬化速度の向上が可能であり、光学特性を優れたものとすることができ、種々の用途に好適に用いることができる。
【0060】
上記カチオン重合性基含有化合物を有する有機樹脂成分としては、ジャパンエポキシレジン社製のYED−216D、YL−7410、ナガセケムテックス社製のFCA−061L、FCA−061M等が好ましい。より好ましくは、ジャパンエポキシレジン社製のYED−216D、YL−7410である。
【0061】
上記エポキシ基含有化合物としては、上記化合物の1種又は2種以上を用いることができる。樹脂組成物及び硬化体の屈折率を低下させる目的からは、脂肪族エポキシ化合物単独、脂肪族エポキシ化合物及び脂環式エポキシ化合物の組み合わせ、脂肪族エポキシ化合物及び水添エポキシ化合物の組み合わせ、脂肪族エポキシ化合物及び脂肪族オキセタン化合物の組み合わせ等が好ましい。より好ましくは、脂肪族エポキシ化合物単独、脂肪族エポキシ化合物及び脂環式エポキシ化合物の組み合わせ、脂肪族エポキシ化合物及び水添エポキシ化合物の組み合わせである。すなわち、アルキル基含有オルガノシロキサン、ポリアルキレン基を有するエポキシ樹脂の他に脂環式エポキシ樹脂または水添エポキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つ含むものであることが好ましい。このような組み合わせのエポキシ基含有化合物を用いることで、カチオン硬化速度を向上させて、生産性の向上を図ることができる。上記エポキシ基含有化合物として更に好ましくは、脂肪族エポキシ化合物単独、脂肪族エポキシ化合物及び脂環式エポキシ化合物の組み合わせであり、特に好ましくは、脂肪族エポキシ化合物及び脂環式エポキシ化合物の組み合わせである。
【0062】
低屈折率を有する樹脂組成物及び該樹脂組成物の硬化物を目的とする場合には、脂肪族オキセタン化合物を用いることも好ましい。脂肪族オキセタン化合物としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル等が好ましい。
【0063】
本発明の樹脂組成物においては、上述したカチオン重合性基含有化合物を含み、硬化体の屈折率が1.49以下であればよい。本発明の樹脂組成物及びその硬化体の好適な形態としては、アルキル基含有オルガノシロキサン化合物を含み、かつ、ポリアルキレン基を有するエポキシ樹脂の他に脂環式エポキシ樹脂または水添エポキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つ含むものである形態が好ましい。このような形態とすることにより、カチオン硬化速度を向上させて、生産性の向上を図ることができる。また、オルガノシロキサン化合物としては、エポキシ基・オキセタン基等のカチオン硬化性基を少なくとも一つ含有するオルガノシロキサンを含有することも好ましい。カチオン硬化速度の向上、耐熱性の向上という効果が得られる。本発明の樹脂組成物及びその硬化体の最も好ましい形態としては、上記式(1)で表されるカチオン重合性基含有化合物と、上記式(2)で表されるオルガノシロキサン化合物を含むことである。
【0064】
〔低屈折率・高アッベ数化〕
本発明の樹脂組成物は、その硬化体の屈折率が1.49以下と低いものであるが、樹脂組成物や硬化体の用途に応じて所望の屈折率のものを得ることができる。具体的には、有機樹脂成分(特に、エポキシ基含有化合物)及び/又はオルガノシロキサン化合物を適宜選択することにより、屈折率を所望のものとすることができる。また、通常、屈折率とアッベ数とは連動して変化し、屈折率を低くする場合は、アッベ数は高くなる。したがって、屈折率だけでなくアッベ数を変化させたい場合にも、好適に適用することができる。
なお、本発明の樹脂組成物は、硬化体の屈折率が1.49以下であり、この屈折率を満たす好適な有機樹脂成分及び/又はオルガノシロキサン化合物は、上述のとおりである。したがって、以下に示す説明は、これを満たしたうえで更にアッベ数及び/又は屈折率を変える場合の説明であり、「主成分」等の説明もこのような要件を満たしたうえで主成分となることを意味する。
以下、高アッベ数、低屈折率の樹脂組成物及び硬化物を目的とする場合について、更に説明する。
上記高アッベ数、低屈折率の硬化性樹脂組成物に含まれるオルガノシロキサン化合物としては、不活性かつ低屈折率のオルガノシロキサン化合物であることが好ましい。具体的には、上述したシロキサンA及びシロキサンABの少なくとも一方であるオルガノシロキサン化合物が好適である。飽和脂肪族炭化水素基は、鎖状であっても環状であってもよい。
上記高アッベ数、低屈折率の硬化性樹脂組成物として好適なオルガノシロキサン化合物の含有量としては、オルガノシロキサン化合物100質量%中、50質量%以上が好ましく、更に80質量%以上が好ましく、特に100質量%が好ましい。
【0065】
上記高アッベ数、低屈折率の樹脂組成物及び硬化物を目的とする場合は、カチオン重合性基含有化合物として、後述するエポキシA又は脂肪族オキセタン化合物を主成分とすることが好ましい。また、エポキシAと脂肪族オキセタン化合物とにより主成分を構成することも好ましい。
上記特性を有する樹脂組成物においては、エポキシ基含有化合物として、脂肪族エポキシ化合物、水添エポキシ化合物、及び、脂環式エポキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つのエポキシ基含有化合物(エポキシA)が主成分であることが好ましい。これらの化合物の具体例は、上述したとおりである。
上記エポキシAを主成分とする場合、該エポキシAの含有量としては、エポキシAが全有機樹脂成分中、60質量%以上であることが好ましい。60質量%以上であれば、有機樹脂成分の主成分となり、エポキシAの効果が充分に発揮されることとなり、高アッベ数、低屈折率の樹脂組成物及び硬化物を得ることができる。エポキシAの含有量としてより好ましくは、80質量%以上であり、更に好ましくは、95質量%以上である。
上記脂肪族オキセタン化合物を主成分とする場合、該脂肪族オキセタン化合物の含有量としては、脂肪族オキセタン化合物が全有機樹脂成分中、60質量%以上であることが好ましい。60質量%以上であれば、有機樹脂成分の主成分となり、脂肪族オキセタン化合物の効果が充分に発揮されることとなり、高アッベ数、低屈折率の樹脂組成物及び硬化物を得ることができる。脂肪族オキセタン化合物の含有量としてより好ましくは、80質量%以上であり、更に好ましくは、95質量%以上である。
上記エポキシAと脂肪族オキセタン化合物とにより主成分を構成する場合、該エポキシAの含有量としては、エポキシAと脂肪族オキセタン化合物との合計質量が全有機樹脂成分中、60質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、80質量%以上であり、更に好ましくは、95質量%以上である。
【0066】
上記脂環式エポキシ化合物としては、下記化学式:
【0067】
【化3】

【0068】
で表される3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、下記化学式:
【0069】
【化4】

【0070】
で表される1,2,8,9−ジエポキシリモネン、下記化学式:
【0071】
【化5】

【0072】
(式中、Rは、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)基を表す。nは繰り返し数を表す。)で表される2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物、環状脂肪族炭化水素に直接又は炭化水素基を介してエポキシ基が付加したエポキシ樹脂等の脂環式エポキシ樹脂が好ましい。
上記水添エポキシ化合物としては、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が好ましい。これらの中でも、より好ましくは脂環式エポキシ化合物;水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
【0073】
本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる有機樹脂成分以外の有機成分としては、熱可塑性樹脂等の非硬化性成分を含有するものを使用することもできる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンからなるABS樹脂、塩化ビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリエステル、ポリイミド、ポリカプロラクトンジオール、ポリカーボネートジオール、ポリテトラヒドロフラン等を挙げることができる。
【0074】
〔有機樹脂成分の好ましい形態〕
本発明の硬化性樹脂組成物において、有機樹脂成分は、分子量(重量平均分子量)が700以上である有機樹脂を必須とするものであることが好ましい。有機樹脂成分がこのような分子量を有する有機樹脂を含むことにより、樹脂組成物を硬化させたときに、好適な材料強度とすることができる。上記有機樹脂成分に必須として含まれる有機樹脂の分子量としては、700〜10000であることが好ましい。分子量が10000を超えると、樹脂組成物の透明性が充分ではなくなるおそれがある。
上記樹脂組成物において、分子量が700以上の成分(有機樹脂)が樹脂組成物総量100質量%に対し、10質量%以上含まれることが好ましい。また、成型のしやすさの面から、分子量が700以上の成分(具体的には、700〜1万)は90質量%以下とすることが好ましい。分子量が700以上の有機樹脂の含有量としてより好ましくは、10〜80質量%である。20〜80質量%、20〜70質量%も好適である。更に好ましくは、30〜70質量%である。また、30質量%以上であることが好ましい。例えば30〜90質量%が好適である。このように、分子量が700以上の有機樹脂成分を10〜90質量%含んでなる樹脂組成物もまた、本発明の好ましい形態の一つである。なお、有機樹脂の分子量の測定方法としては、下記のとおりである。
【0075】
<分子量の測定方法>
上記有機樹脂成分の分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー社製、商品名「HLC−8220GPC」を用い、下記の条件で測定することができる。
(分子量の測定条件)
カラム:東ソー社製「TSK−GEL SUPER HZM−N 6.0*150」×4本
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.6mL/分
温度:40℃
検量線:ポリスチレン標準サンプル(東ソー社製)を用いて作成。
【0076】
上記カチオン重合性基含有化合物は、分子量が700以上のものと700未満のものとを必須とするものである樹脂組成物であることが好ましい。分子量が700以上のもの(高分子量成分とも言う。)と700未満のもの(低分子量成分とも言う。)とを必須とすることにより、製造時の粘度低減と製品の機械強度の向上という効果が得られることとなる。すなわち、硬化性樹脂組成物の加工特性(粘度、流れ性)に優れ、硬化性樹脂組成物の硬化物の機械的強度に優れるといった、通常は相反することとなる両特性を満足する。硬化性樹脂組成物の粘度としては、有機樹脂成分として、高分子量成分だけであると、粘度が上昇するので、低分子量成分を併用する方が好ましい。また、硬化収縮率は、高分子量成分の方が低分子量成分より小さいことから、高分子量成分を用いることが好ましい。このような理由により、低分子量成分と高分子量成分を併用することが好ましい。これらの高分子量成分と低分子量成分とは、組成が同じであってもよく、異なっていてもよい。
上記高分子量成分の分子量としては、上述した分子量(重量平均分子量)が700以上である有機樹脂と同様であることが好ましい。具体的には、700〜10000が好ましい。
【0077】
上記低分子量成分の分子量としては、重量平均分子量が700未満であることが好ましい。具体的には、100〜700が好ましい。
上記2種以上の分子量を有する有機樹脂成分としては、2種以上のエポキシ化合物又は脂肪族オキセタン化合物の組み合わせであることが好ましい。
【0078】
上記樹脂組成物としてはまた、有機樹脂成分とオルガノシロキサン化合物とを含む樹脂組成物であって、溶媒5質量%以下に調製される形態が好ましい。このような形態に調製することにより、連続生産可能となり、一体感を有し、強度が高く、透明性・耐熱性が高い熱硬化性樹脂を得ることができる。有機樹脂成分としては2種以上であることが好適である。樹脂組成物が、上記2種以上の有機樹脂が分子量が700以上のもの(高分子量成分)と700未満のもの(低分子量成分)とを含む場合、これらの調製方法としては、低分子量成分とオルガノシロキサン化合物(と必要に応じてその他の成分)とを混合し、溶媒(溶剤)を留去した後、高分子量成分を添加する方法が好ましく、混合物(低分子量成分とオルガノシロキサン化合物と高分子量成分と溶媒(と必要に応じてその他の成分)との混合物)100質量%中、溶媒を5質量%以下となるよう調製してなる形態が好ましい。
【0079】
上記のように混合することで、樹脂組成物の粘度が上昇することなく、好適な樹脂組成物を得ることができる。また、高分子量材料の樹脂組成物へのなじみをよくすることができる。このように、有機樹脂成分とオルガノシロキサン化合物とを含む樹脂組成物を製造する方法であって、該製造方法は、2種以上の有機樹脂とオルガノシロキサン化合物とを混合し、最終的に溶媒5質量%以下で調製する工程を含む樹脂組成物の製造方法もまた、本発明の好ましい実施形態の一つである。このような製造方法としてより好ましくは、上記2種以上の有機樹脂が分子量が700以上のもの(高分子量成分)と700未満のもの(低分子量成分)とを必須とするものである形態である。更に好ましくは、上記混合工程は、低分子量成分とオルガノシロキサン化合物と溶媒とを含む混合物から溶媒の少なくとも一部を除去した後、高分子量成分を添加してなる形態である。
【0080】
上記溶媒量としては、混合物(2種以上の有機樹脂とオルガノシロキサン化合物と溶媒(と必要に応じてその他の成分)との混合物)100質量%中、溶媒5質量%以下である。5質量%を超えると発泡や成形体の強度低下のおそれがある。溶媒量としてより好ましくは、3質量%以下であり、更に好ましくは、1質量%以下である。一方、本発明の好ましい形態の一つとして溶媒を用いた樹脂組成物の製造時(脱溶媒時)の粘度上昇を抑えるという観点からは、0.05〜5質量%の溶媒を混合物(樹脂組成物)100質量%中に残すことが好ましい。溶媒の残存量としてより好ましくは、0.1〜3質量%であり、更に好ましくは、0.5〜2質量%である。本発明においては、例えば、高沸点溶媒等を同時にエバポレートすることにより、短期間で溶媒を上記範囲とすることができ、樹脂組成物を好適に得ることができることとなる。上記溶媒としては、2−エチル−1−ヘキサノール、ドデカノール等の高沸点アルコールが好ましい。なお、高沸点アルコールの具体例については、後述する。このような高沸アルコールの残存量は、0.01〜2質量%であることが好ましい。
【0081】
上記分子量が700以上の有機樹脂、分子量の測定方法及び樹脂組成物に含まれるオルガノシロキサン化合物としては、上述と同様であることが好ましい。
上記分子量が700以上のものと700未満のものの割合としては、〔700以上/(樹脂組成物全体)〕=10〜90であることが好ましい。より好ましくは、20〜80であり、更に好ましくは、30〜70である。なお、有機樹脂の具体例としては、上述したとおりである。
また低分子量成分と高分子量成分の割合としては、高分子量成分/(有機樹脂成分総量)=30〜90質量%であることが好ましい。より好ましくは、35〜80質量%であり、更に好ましくは、40〜70質量%である。
上記2種以上の分子量を有する有機樹脂成分としては、上述したように、2種以上のエポキシ化合物であることが好ましい。中でも、脂肪族エポキシ化合物又は脂肪族オキセタン化合物を含むことが好適である。このように、分子量の異なる2種以上のエポキシ化合物をオルガノシロキサン化合物と溶媒5%以下で混合してなる樹脂組成物もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
【0082】
本発明の樹脂組成物は、好適には、上記有機樹脂成分とオルガノシロキサン化合物とを含むものであるが、有機樹脂成分とオルガノシロキサン化合物との合計100質量%に対し、有機樹脂成分を10〜99.9質量%、オルガノシロキサン化合物を0.1〜90質量%含むことが好ましい。このような含有量とすることで、透明性が高い樹脂組成物とすることができる。特に、有機樹脂成分として熱硬化性樹脂を用いた場合には、熱可塑性樹脂にはできない耐熱性の克服が可能であり、ガラスにはできない複雑で安価な加工が可能となる。
【0083】
本発明の樹脂組成物は、上述した樹脂やオルガノシロキサン化合物の他に、硬化触媒、離型剤、硬化剤、硬化促進剤、反応性希釈剤、不飽和結合をもたない飽和化合物、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、非反応性化合物、連鎖移動剤、熱重合開始剤、嫌気重合開始剤、重合禁止剤、無機充填剤や有機充填剤、カップリング剤等の密着向上剤、熱安定剤、防菌・防カビ剤、難燃剤、艶消し剤、消泡剤、レベリング剤、湿潤・分散剤、沈降防止剤、増粘剤・タレ防止剤、色分かれ防止剤、乳化剤、スリップ・スリキズ防止剤、皮張り防止剤、乾燥剤、防汚剤、帯電防止剤、導電剤(静電助剤)等を含有してもよい。
【0084】
〔硬化触媒〕
上記硬化触媒としては、従来公知のものを好適に用いることができ、例えば、カチオン硬化触媒が好ましい。このように、上記樹脂組成物は、カチオン硬化触媒を含む樹脂組成物(カチオン硬化系樹脂組成物)が好ましい。カチオン硬化触媒を有することで、硬化剤を用いた系に比べて硬化性樹脂組成物の保存安定性がより優れたものとなる。更に、硬化性樹脂組成物の硬化速度を速くすることができ、生産性よく硬化物を得ることができる。また、得られる硬化物は、耐熱性、透明性、機械的特性に優れるものとなる。なお、上記カチオン硬化系樹脂組成物としては、カチオン重合性基を有する有機樹脂成分を必須とするものであることが好ましい。
【0085】
上記カチオン硬化触媒としては、熱潜在性カチオン発生剤又は光潜在性カチオン発生剤であることが好ましい。熱や光により、重合を開始させるカチオン種が発生するものであれば、特に限定されない。例えば、熱潜在性カチオン発生剤を用いることにより、加熱によりカチオン種を含む化合物が励起され、熱分解反応がおこり、熱硬化がすすむこととなる。また光潜在性カチオン発生剤を用いることにより、光によりカチオン種を含む化合物が励起され、光分解反応がおこり、光硬化がすすむこととなる。すなわち、上記樹脂組成物は、熱潜在性カチオン発生剤又は光潜在性カチオン発生剤を含有することを必須とすることが好ましい。
【0086】
上記カチオン硬化触媒の触媒量(使用量)は、有機樹脂成分とオルガノシロキサン化合物をあわせた樹脂組成物100質量%に対し、固形分換算で(溶媒等を含まない、有効成分の量で)0.01〜10質量%が好ましい。より好ましくは、0.1〜4.0質量%であり、更に好ましくは、0.2〜2.0質量%である。触媒量を減らしすぎて0.01質量%未満とすると、硬化が遅く、10質量%を超えて増やすと硬化時やその成形体の加熱時に着色するおそれがある。
【0087】
上記カチオン硬化触媒としては、熱潜在性カチオン発生剤が好適である。このように、上記樹脂組成物は、熱潜在性カチオン発生剤を含むものである樹脂組成物(カチオン硬化系樹脂組成物)もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
上記熱潜在性カチオン発生剤とは、熱潜在性硬化剤、熱潜在性硬化触媒、カチオン重合開始剤とも呼ばれ、樹脂組成物において硬化温度になれば、硬化剤としての実質的な機能を発揮するものである。熱潜在性カチオン発生剤は後述する硬化剤と異なり、樹脂組成物に含まれていても、樹脂組成物の常温での経時的な粘度上昇やゲル化を引き起こすことなく、また、熱潜在性カチオン発生剤の作用として、硬化反応を充分に促進することができ、優れた効果を発揮することができ、ハンドリング性に優れた一液性樹脂組成物(一液性光学材料)を提供することができる。特に、硬化性樹脂組成物を光学材料として用いる場合には、熱潜在性カチオン発生剤を含むカチオン硬化系樹脂組成物であることが好ましい。カチオン硬化系樹脂組成物は保存安定性に優れる点で好ましい。このように、エポキシ基等のカチオン重合性基を有する有機樹脂成分、及び、熱潜在性カチオン発生剤を含む樹脂組成物であって、上記平均組成式で表されるオルガノシロキサン化合物を含有する樹脂組成物(硬化性樹脂組成物)の保存安定性改良方法もまた本発明の好ましい形態の一つである。カチオン硬化系樹脂組成物における有機樹脂成分は硬化速度の向上の観点からは、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物が好ましく、触媒量を減量するという観点からは、脂環式エポキシ化合物が好ましい。
【0088】
上記熱潜在性カチオン発生剤を用いると、また、得られる樹脂組成物の硬化物の耐湿性が劇的に改善され、過酷な使用環境においても樹脂組成物が有する優れた光学特性を保持し、種々の用途に好適に用いることができるものとなる。通常、屈折率が低い水分が樹脂組成物やその硬化物に含まれると、濁りの原因になるが、熱潜在性カチオン発生剤を用いると、優れた耐湿性が発揮できることから、このような濁りが抑制され、光導波路等の光学用途に好適に用いることができる。
【0089】
上記熱潜在性カチオン発生剤としては、下記一般式(3)
(RZ)+k(AXn−k(3)
(式中、Zは、S、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、N及びハロゲン元素からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を表す。R、R、R及びRは、同一又は異なって、有機基を表す。e、f、g及びhは、0又は正数であり、e、f、g及びhの合計はZの価数に等しい。カチオン(RZ)+kはオニウム塩を表す。Aは、ハロゲン化物錯体の中心原子である金属元素又は半金属元素(metalloid)を表し、B、P、As、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Coからなる群より選ばれる少なくとも一つである。Xは、ハロゲン元素を表す。kは、ハロゲン化物錯体イオンの正味の電荷である。nは、ハロゲン化物錯体イオン中のハロゲン元素の数である。)で表されるものであることが好ましい。
【0090】
上記熱潜在性カチオン発生剤としては、上述の構造を有するものであればよいが、これらは、一般に、硬化温度でカチオンが発生することになる。硬化温度としては、25〜250℃であることが好ましい。より好ましくは60〜200℃、更に好ましくは80〜180℃である。
また硬化条件としては硬化温度を段階的に変化させてもよい。例えば、樹脂組成物の硬化物を製造する上での生産性を向上する目的で型内に所定の温度・時間で保持した後、型から取り出して空気又は不活性ガス雰囲気内に静置して熱処理することも可能である。この場合の硬化温度としては型内保持温度を25℃〜250℃、より好ましくは60℃〜200℃、更に好ましくは80〜180℃であり、保持時間は10秒〜5分、より好ましくは30秒〜5分である。
【0091】
上記一般式(3)の陰イオン(AXn−kの具体例としては、テトラフルオロボレート(BF4−)、ヘキサフルオロホスフェート(PF6−)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6−)、ヘキサフルオロアルセネート(AsF6−)、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl6−)等が挙げられる。
更に一般式AXn(OH)で表される陰イオンも用いることができる。また、その他の陰イオンとしては、過塩素酸イオン(ClO)、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CFSO)、フルオロスルホン酸イオン(FSO)、トルエンスルホン酸イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0092】
上記熱潜在性カチオン発生剤の具体的な商品としては、ジアゾニウム塩タイプ:AMERICUREシリーズ(アメリカン・キャン社製)、ULTRASETシリーズ(アデカ社製)、WPAGシリーズ(和光純薬社製)、ヨードニウム塩タイプ:UVEシリーズ(ゼネラル・エレクトリック社製)、FCシリーズ(3M社製)、UV9310C(GE東芝シリコーン社製)、Photoinitiator 2074(ローヌプーラン社製)、WPIシリーズ(和光純薬社製)
スルホニウム塩タイプ:CYRACUREシリーズ(ユニオンカーバイド社製)、UVIシリーズ(ゼネラル・エレクトリック社製)、FCシリーズ(3M社製)、CDシリーズ(サトーマー社製)、オプトマーSPシリーズ・オプトマーCPシリーズ(アデカ社製)、サンエイドSIシリーズ(三新化学工業社製)、CIシリーズ(日本曹達社製)、WPAGシリーズ(和光純薬社製)、CPIシリーズ(サンアプロ社製)
等が挙げられる。
【0093】
上記光潜在性カチオン発生剤(光潜在性硬化触媒又は光カチオン重合開始剤とも言う)としては、例えば米国特許第3379653号に記載されたような金属フルオロホウ素錯塩及び三フッ素化ホウ素錯化合物;米国特許第3586616号に記載されているようなビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)メタン金属塩;米国特許第3708296号に記載されているようなアリールジアゾニウム化合物;米国特許第4058400号に記載されているようなVIa族元素の芳香族オニウム塩;米国特許第4069055号に記載されているようなVa族元素の芳香族オニウム塩;米国特許第4068091号に記載されているようなIIIa〜Va族元素のジカルボニルキレート;米国特許第4139655号に記載されているようなチオピリリウム塩;米国特許第4161478号に記載されているようなMF陰イオン(ここでMは、リン、アンチモン及びヒ素から選択される)の形のVIb元素;米国特許第4231951号に記載されているようなアリールスルホニウム塩;米国特許第4256828号に記載されているような芳香族ヨードニウム錯塩及び芳香族スルホニウム錯塩;W.R.Wattらによって「ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス(Journal of Polymer Science)、ポリマーケミストリー(Polymer Chemistry)版」、第22巻、1789項(1984年)に記載されているようなビス[4−(ジフェリルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロ金属塩(例えば、リン酸塩、ヒ酸塩、アンチモン酸塩など);鉄化合物の混合配位子金属塩;シラノール−アルミニウム錯体;などが挙げられる。これらの化合物は、紫外線重合開始剤ともいう。これらの紫外線重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの紫外線重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの紫外線重合開始剤のうち、アリールスルホニウム錯塩、ハロゲン含有錯イオンの芳香族ヨードニウム錯塩又は芳香族スルホニウム錯塩、II族、V族及びVI族元素の芳香族オニウム塩が好適である。これらのいくつかは、例えばUVI−6992(ダウ・ケミカル社製)、FX−512(3M社製)、UVR−6990、UVR−6974、UVR−6976(ユニオン・カーバイド社製)、KI−85(デグッサ社製)、SP−150、SP−170、SP−152、SP−172(アデカ社製)、サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80L、サンエイドSI−100L(三新化学工業社製)などの市販品を入手することができる。より好ましくは、UVR−6976、SP−152及びSP−172である。
【0094】
〔樹脂組成物の製造方法〕
本発明の樹脂組成物の製造方法としては、上記樹脂組成物を製造できるものである限り特に限定されないが、例えば、オルガノシロキサン化合物、有機樹脂の均一混合が困難な場合には、(1)オルガノシロキサン化合物、有機樹脂及び溶媒を含む混合物を調製する工程と、(2)上記混合物から溶媒を脱気する脱気工程とを含むものであることが好ましい。
上記(1)の調製工程としては、上記3成分が含まれる混合物が調製できれば特に限定されず、3成分が均一に混合されていればよく、任意の添加(配合)順序、混合方法を用いることができる。更に、上記混合物にはその他の成分が含まれていてもよい。
【0095】
上記溶媒としては、有機溶媒が好ましく、例えば、アルコール類、ケトン類、脂肪族及び芳香族のカルボン酸エステル類、エーテル類、エーテルエステル類、脂肪族及び芳香族の炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類のほか、鉱物油、植物油、ワックス油、シリコーン油等を挙げることができる。これらの中でも、エポキシ基を有する化合物が容易に溶解する溶媒が好ましく、具体的には、ケトン類、脂肪族及び芳香族のカルボン酸エステル類、エーテル類、脂肪族及び芳香族の炭化水素類が好ましい。中でも、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、クロロホルム、トルエン、キシレン等が好ましい。より好ましくは、イソプロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、トルエンが好ましい。
上記調製工程としては、減圧度を調整して、100℃以下で調製を行うことが好ましい。
上記調製工程において、有機樹脂成分とオルガノシロキサン化合物と溶媒との割合としては、(有機樹脂成分+オルガノシロキサン化合物)/(有機樹脂成分+オルガノシロキサン化合物+溶媒)=10〜90質量%であることが好ましい。より好ましくは、15〜60質量%である。
【0096】
上記(2)の脱気工程としては、高沸点成分共存下で行われるものであることが好ましい。すなわち、本発明の製造方法としては、樹脂組成物の製造過程で、組成物中間体が溶媒を含む場合、高沸点成分を共存させて脱溶媒(脱気)する工程を含むことが好ましい。
このような製造方法は、オルガノシロキサン化合物として無機微粒子の溶媒分散体を原料とした場合や、オルガノシロキサンの溶液を原料として用いた場合などに好適に適用することができる。高沸点成分共存下で脱気することにより、オルガノシロキサン化合物を高濃度とすることができ、透明性とアッベ数がいずれも高い樹脂組成物を得ることができる。また、混合物の増粘及びゲル化を効果的に抑えることができ、連続生産が可能となる。なお、「高沸点成分共存下」とは、脱気工程において、高沸点成分が共存する期間があればよく、該共存期間は、脱気工程の全期間であっても一部の期間であってもよいが、増粘防止のため、全期間であることが好ましい。
【0097】
上記高沸点成分の添加方法としては、本発明の作用効果を発揮する限り特に限定されず、一括で添加してもよく、滴下して添加してもよく、分割添加等であってもよい。中でも、一括添加が好適である。また、高沸点成分の添加時期(又は添加開始時期)としては特に限定されず、例えば、(1)調製工程の終了後であって、脱気工程の開始前であってもよく、(2)調製工程の中であってもよく、(3)脱気工程の中であってもよい。これらの中でも、増粘防止のため、(1)であることが好ましい。このように、オルガノシロキサン化合物(無機物)と有機樹脂成分(有機物)を混合した後の溶媒を脱気する前に高沸点成分を添加する製造方法もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
【0098】
上記高沸点成分の添加量としては、有機樹脂成分とオルガノシロキサン化合物と脱気前の溶媒と高沸点成分と必要に応じてその他の成分との混合物100質量%に対し、0.01〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.1〜5質量%であり、更に好ましくは、0.5〜3質量%である。高沸点成分の添加量が10質量%を超えると、硬化性樹脂組成物中の高沸点成分含有量を30000ppm(3質量%)以下とするために、高い脱気温度とする必要があり、有機樹脂成分のカチオン硬化性官能基がオルガノシロキサン化合物のシラノール基と反応してしまうおそれがある。
上記高沸点成分は、高沸点成分は、脱気工程終了時に最終生成物である硬化性樹脂組成物にも含まれることとなる。高沸点成分としては、後述するように、高沸点アルコールであることが好ましい。アルコールは、一般に、シラノール基へのエステル化反応活性が高く、金属水酸基を封鎖する反応が起こりやすいことが知られている。本発明の硬化性樹脂組成物は、例えば、オルガノシロキサンがシラノール基を有する場合、樹脂組成物の製造過程や保存時に高沸点アルコールが共存すると、シラノール基を封鎖する反応が起こり、樹脂組成物の保存安定性が改善される。
【0099】
上記硬化性樹脂組成物中の高沸点成分の含有量としては、硬化性樹脂組成物総量に対し、100〜30000ppm(0.01〜3質量%)であることが好ましい。30000ppmより大きい場合では、上記金属水酸基を封鎖する反応により、副生する水分濃度が高くなるため、樹脂組成物の化学的安定性が損なわれるおそれがある。また、樹脂組成物の硬化時に、高沸点アルコールや上記封鎖反応により生成する水分がガス化し、気泡を発生するおそれがある。このようなガス化により、硬化物にボイドが生じたり、硬化反応が阻害されたりするおそれがある。また、100ppmより小さい場合、上記樹脂組成物の保存安定化効果が充分には得られないおそれがある。
【0100】
上記オルガノシロキサン化合物は、溶液中に分散させたときの25℃におけるpHが3.4〜11であり、上記硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂組成物総量に対して、高沸点成分を100〜30000ppm含有し、有機溶媒含有量が5質量%以下であることが本発明の好ましい形態の一つである。
上記オルガノシロキサン化合物は、溶液中に分散させたときの25℃におけるpHが3.4〜11であるオルガノシロキサン化合物を有機溶媒分散体として、その有機溶媒分散体に由来する形態を有するオルガノシロキサン化合物である。
上記オルガノシロキサン化合物の好ましい形態は、本明細書中に記載される好ましい形態と適宜組み合わせることができる。
上記高沸点成分の残存量は、ガスクロマトグラフィー(GC)で測定することができる。測定条件としては、下記のとおりである。
(GCの測定条件)
カラム:GLサイエンス社製「DB−17」
キャリアーガス:ヘリウム
流速:1.44mL/分
【0101】
上記脱気工程においては、溶媒を脱気できる条件であれば特に限定されないが、有機樹脂成分の分解や硬化反応、オルガノシロキサン化合物の凝集が過度におこるのを抑制する条件であることが好ましい。具体的には、脱気温度は200℃以下であることが好ましい。より好ましくは、100℃以下であり、更に好ましくは、80℃以下である。脱気時間としては、72時間以下であることが好ましい。より好ましくは、24時間以下であり、更に好ましくは、2時間以下である。脱気工程における圧力としては、常圧であってもよいが、200torr以下であることが好ましく、100torr以下であることがより好ましい。
上記脱気工程において、脱気工程終了とは、その時点の混合物100質量%に対して、溶媒の含有量が5質量%以下となる場合である。脱気工程終了時の溶媒の含有量としてより好ましくは、3質量%以下であり、更に好ましくは、1質量%以下であり、特に好ましくは0.5質量%以下である。
【0102】
上記高沸点成分は、硬化性樹脂組成物中の有機溶媒に含まれる、常圧での沸点が100℃以上の成分であり、2−エチル−1−ヘキサノール、ドデカノール、ブタノール等の沸点が100℃以上のアルコール等が好ましい。より好ましくは、沸点が120℃以上のアルコール(具体的には、2−エチル−1−ヘキサノール、ドデカノール)であり、更に好ましくは、沸点が150℃以上のアルコールである。このように、高沸点成分がアルコールである組成物が好ましい。沸点が120℃以上のアルコールとしては、上記の中でも2−エチル−1−ヘキサノール、ドデカノールがより好ましく、2−エチル−1−ヘキサノールが更に好ましい。なお、沸点が100℃未満のアルコールでは、混合物の増粘が充分には防げないおそれがあることから、沸点が100℃以上のアルコールであることが好ましい。上記高沸点成分は、沸点が100℃以上のアルコールである樹脂組成物の製造方法もまた、本発明の好ましい形態の一つである。なお、沸点120℃以上のアルコールの中でも、沸点150℃以上のアルコールがより好ましく、沸点190℃以上のアルコールが更に好ましい。
【0103】
上記高沸点アルコールとしては、ジエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等の多価アルコールも好ましい。より好ましくは、ジエチレングリコール、グリセリン、ブタンジオールであり、更に好ましくは、ブタンジオールである。
多価アルコールは1価アルコールに比べ、上述したオルガノシロキサン化合物に含まれる金属水酸基へのエステル化反応活性が高いために、樹脂組成物の保存安定性を改善される効果に優れることとなる。
上記高沸点アルコールとしては、また、融点が20℃以下のものであることが好ましい。融点が20℃より高い場合には、樹脂組成物の製造直後や保存時に、高沸点アルコールが析出するおそれがある。
【0104】
本発明の樹脂組成物としては、上述の方法で製造されることが好適である。すなわち、有機樹脂成分とオルガノシロキサン化合物とを含む樹脂組成物を製造する方法であって、該製造方法は、オルガノシロキサン化合物、有機樹脂及び溶媒を含む混合物を調製する工程と、該混合物から溶媒を脱気する脱気工程とを含み、該脱気工程が、高沸点成分共存下で行われる樹脂組成物の製造方法もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
上記製造方法において、製造される樹脂組成物は、有機樹脂成分とオルガノシロキサン化合物とを含むものであるが、有機樹脂成分とオルガノシロキサン化合物としては、上述のものを好適に用いることができる。また、その他の成分や硬化方法等、樹脂組成物に関する記載はすべて上記樹脂組成物の製造方法に好適に適用することができるものである。なお、有機樹脂成分として特に好ましくは、脂肪族エポキシ化合物であり、上記有機樹脂成分は、脂肪族エポキシ化合物である樹脂組成物の製造方法もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
【0105】
上記樹脂組成物を得るためのオルガノシロキサン化合物の樹脂成分への配合方法としては、外部添加法と内部析出法とが好適に用いられる。なお、本発明の硬化性樹脂組成物を光学用途に用いる場合には、オルガノシロキサン化合物を内部析出法により生成した場合、用いた触媒による組成物の安定性の低下、オルガノシロキサン化合物の構造・組成の制御が困難、有機樹脂成分(エポキシ基)との反応などによる硬化前の変質、残存触媒、除去し難い水の残留等の種々の影響のおそれがある。したがって、光学材料に用いる場合は内添法は好ましくない。
上記オルガノシロキサン化合物の外部添加法、具体的には、オルガノシロキサン化合物の樹脂組成物への添加形態、分散体について説明する。
【0106】
上記オルガノシロキサン化合物の形態としては、粉末状、液状又は液状の媒体に溶解した形態で、樹脂成分と混合することが好ましい。オルガノシロキサン化合物が媒体に溶解した溶液の形態であることが好ましい。
上記媒体としては、溶媒、可塑剤、モノマー、液状樹脂等を例示することができる。溶媒としては、水、有機溶媒、鉱物油、植物油、ワックス油、シリコーン油等が好適に使用できるが、エポキシ基を有する化合物が容易に溶解する溶媒が好ましい。
上記溶媒及びオルガノシロキサン化合物を含む溶液としては、例えば、溶媒分散体の形態が挙げられる。溶媒分散体におけるオルガノシロキサン化合物の含有量については、特に限定はないが、好ましくは溶媒分散体全体の10〜70重量%、さらに好ましくは20〜50重量%であり、溶媒分散体は、この程度の含有量において取扱いやすい。溶媒分散体における溶媒の含有量については、特に限定はないが、好ましくは溶媒分散体全体の90〜30重量%、さらに好ましくは80〜50重量%である。
上記有機溶媒としては、上述した有機溶媒のなかから適宜選択して用いることができる。
【0107】
本発明で使用するオルガノシロキサン化合物の内部析出法としては、上述した樹脂成分を含有してなる液体媒体中で、上記アルコキシド化合物を加水分解及び縮合してオルガノシロキサン化合物を得る方法である。ただし、液体溶媒で、アルコキシド化合物を加水分解及び縮合してオルガノシロキサン化合物を得た後に、加水分解触媒を取り除き、樹脂成分を混合する方法が好ましい。
【0108】
〔硬化方法〕
本発明の樹脂組成物の硬化方法としては、熱硬化や光硬化等の種々の方法を好適に用いることができるが、樹脂組成物に上記硬化触媒や必要に応じてその他の材料を混合して1液として用いる方法が好適に用いられる。このような方法においては、硬化触媒等を混合した硬化性樹脂組成物の粘度は、取り扱いが容易であることから、著しく上昇しない方が好ましい。
【0109】
本発明の樹脂組成物は、硬化触媒を用いて熱硬化又は光硬化することにより、硬化物とすることができる。上記硬化触媒として上述した熱潜在性カチオン発生剤、又は、上述した光潜在性カチオン発生剤を用いることが好ましい。なお、熱潜在性カチオン発生剤、光潜在性カチオン発生剤等のカチオン硬化触媒を用いるカチオン硬化以外の硬化方法として硬化剤を使用する方法がある。このような硬化剤としては、例えば、酸無水物類、アミン類、フェノール樹脂類等が挙げられる。具体的には、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸、メチルナジック酸等の酸無水物類;アンモニア、1〜3級アミン、ヘキサメチレンテトラミン等のアミン類;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、テルペンフェノール樹脂等の種々のフェノール樹脂類;種々のフェノール類とヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザール等の種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂等の各種のフェノール樹脂類;BF錯体、スルホニウム塩類、イミダゾール類等の1種又は2種以上を用いることができる。また、多価フェノール化合物で硬化することも好ましい態様である。
【0110】
上記硬化剤を用いる硬化方法においては、必要に応じて硬化促進剤を用いることができ、例えば、イミダゾール、トリフェニルホスフィン、トリブチルヘキサデシルホスフォニウムブロマイド、トリブチルホスフィン、トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィン等の有機リン化合物等の1種又は2種以上が好適である。上記硬化温度としては、70〜200℃が好ましい。より好ましくは、80〜150℃である。
なお、上述した硬化剤及び硬化促進剤を樹脂組成物中に含む場合、本発明の作用効果の一つである優れた保存安定性を充分には発揮できないおそれが生じるため、硬化剤及び硬化促進剤を添加することが必要不可欠である場合以外は、積極的には使用しない方がよい。
【0111】
〔硬化物の特性〕
本発明の樹脂組成物は、上述する硬化方法によって硬化物を得ることができ、このような硬化物としては、種々の光学特性に優れたのもとなる。例えば、硬化物の濁度(ヘイズ)としては、20%以下であることが好ましい。このように、上記樹脂組成物の硬化物の濁度が、20%以下である樹脂組成物もまた、本発明の好ましい形態の一つである。硬化物の濁度としてより好ましくは10%以下であり、更に好ましくは5%以下であり、特に好ましくは1%以下である。透明性としては、波長が360〜1600nmの領域における光透過率が75%以上であることが好ましい。硬化物の光線透過率はより好ましくは80%以上であり、更に好ましくは85%以上であり、特に好ましくは、87%以上である。
上記硬化物において、硬化物の屈折率・アッベ数は適用される光学系の光学設計に応じて幅広い数値が求められる。なお、硬化物の光線透過率はJIS K7361−1に準拠した方法、屈折率・アッベ数はプリズムカプラーで測定できる。
【0112】
〔光学材料〕
本発明はまた、上記樹脂組成物によって構成される光学材料でもある。光学材料とは、上記樹脂組成物を用いた硬化材料であり、単に「硬化材料」又は「光学部材用硬化性材料」とも言う。本発明の樹脂組成物は、上述のように優れた透明性・光学特性を発揮し、該樹脂組成物を硬化させた硬化物もまた、同様の特性を発揮することから、光学用途(光学透明用途)、オプトデバイス用途、表示デバイス用途等の種々の用途に好適に用いることができる。本発明の光学材料としては、上記樹脂組成物によって形成される硬化性光学材料であって、熱や光によって硬化する熱・光硬化性光学材料(熱硬化性光学材料や光硬化性光学材料)であることが好ましい。
上記光学材料としては、上述したように、オルガノシロキサン化合物及び/又はカチオン重合性基含有化合物(例えば、エポキシ化合物)の組み合わせによりアッベ数、屈折率を制御することができる。これらの好適な組み合わせ等は、上述のとおりである。また、このような光学材料の硬化方法等の種々の特性等は、上記樹脂組成物におけるものと同様であることが好ましい。
【0113】
上記光学材料としては、上記樹脂組成物を含むものであるが、光学材料の用途に応じて適宜その他の成分を含んでいてもよい。具体的には、UV吸収剤、IRカット剤、反応性希釈剤、顔料、染料、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、非反応性化合物、連鎖移動剤、熱重合開始剤、嫌気重合開始剤、光安定剤、重合禁止剤、消泡剤等が好適である。
【0114】
〔硬化物の用途〕
上記硬化物の用途として具体的には、光導波路、光ディスク、光ファイバー、フォトセンサー、フォトスイッチ、LED、発光素子、光導波管、合波器、分波器、断路器、光分割器、光導波路、光ファイバー、接着剤、筐体等のオプトデバイス用途(光学透明用途);眼鏡レンズ、(デジタル)カメラや携帯電話や車載カメラ等カメラレンズ、フィルター、回折格子、プリズム、光案内子、光ビーム集光レンズや光拡散用レンズ、ウォッチガラス、表示装置用のカバーガラス等の透明ガラスやカバーガラス等の光学用途;LCDや有機ELやPDP等の表示素子用基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、ディスプレイ保護膜、ディスプレイバックライト、導光板、反射防止フィルム、防曇フィルム等の表示デバイス用途等が好適である。上記用途の中でも、光導波路用途が特に好適である。
上記硬化物の形状としては、用途に応じて適宜設定することができ、特に限定されず、異形品等の成形体、フィルム、シート、ペレット等の形態も挙げられる。
【0115】
本発明はまた、上記光学部材を用いてなる光導波路でもある。本発明の光学部材を用いることにより、透明性・低硬化収縮率(厚膜化)・低屈折率(850nmでの屈折率が1.49以下)・コア材との密着性等、光導波路用材料に必要な物性を全て満足し、優れた性能を発揮することとなる。
上記光導波路は、クラッドとコアとを構成要素として有するものであるが、上記光学部材は、クラッドとコアの両方に用いてもよく、片方に用いてもよい。より好ましくは、両方に用いる形態である。なお、クラッドとコアの材料は、同系統の材料で構成されることが好適である。同系統の材料とすると、クラッドとコアはその接触面で光が反射(全反射)するために、密着することが求められるが、同系統の材料を用いることで、クラッドとコアの硬化収縮率、熱膨張率が同等となる等、材料の相性がよくなり密着しやすくなる。
【0116】
上記屈折率としては、クラッドとコアの屈折率差が3%以上であることが好ましい。3%未満であると、クラッドとコアとの間で光反射が充分に行われず、光のもれが生じ、光導波路としての性能が充分ではなくなるおそれがある。
【0117】
〔光導波路の製造方法〕
本発明の光学材料を光導波路用途に用いる場合、その製造方法としては、例えば、フォトリソ・ドライエッチング法、UV硬化法(直接露光法)、選択重合法、射出成形法、プレス成形法、電子線描画法(フッ素化ポリイミド)等が好適である。具体的には、以下のような方法を用いることができる。
(ア)コアに相当する溝が設けられたマスター型を作製し、このマスター型を利用して、下部クラッド成型用型を作製する。この際マスター型に設けられたコアに相当する溝のパターンが、下部クラッド成型用型に転写される。次いで、下部クラッド成型用型を用いて下部クラッドを成形する。下部クラッドには、下部クラッド成型用型に転写されたコアに相当する溝のパターンがさらに転写される。そして、下部クラッドに設けられたコアに相当する溝に、コア用樹脂組成物を充填し硬化させてコアを形成する。次いで、上部クラッド用の樹脂組成物を塗布して、硬化させて上部クラッドを形成する。
【0118】
(イ)シリコンウエハ、石英、樹脂などの任意の基板上に下部クラッド用樹脂組成物を塗布して硬化して下部クラッドを作製する。得られた下部クラッドにコア用樹脂組成物を塗布して硬化させる。硬化後のコア膜にフォトレジストを塗布した後、光回路パターンが付されたフォトマスクを使用して露光及び現像を行うことで、光回路パターンを形成する。次いで、ドライエッチング(例えば、RIE反応性イオンエッチング)、或は、酸、アルカリ、又は、有機溶剤等を用いたウエットエッチングを行って、フォトレジストが載っていない部分のコア膜を選択的に除去した後、フォトレジストを剥離する。その後、上部クラッド用樹脂組成物を塗布して硬化することで、埋め込み型光導波路を得ることができる。
【0119】
(ウ)シリコンウエハ、石英、樹脂などの任意の基板上に下部クラッド用樹脂組成物を塗布して硬化して下部クラッドを作製する。得られた下部クラッドにコア用樹脂組成物を塗布する。光回路パターンが付いたフォトマスクを介してUV光を照射し、コア層を選択的に硬化させる。未硬化のコア用樹脂組成物(UV光が当たっていない部分)を、酸、アルカリ、有機溶剤などを用いて除去した後、上部クラッド用樹脂組成物を塗布して硬化することで、埋め込み型光導波路装置を得ることができる。
【0120】
(エ)コアに相当する溝が反転した凸状のマスター型を作製し、このマスター型にシリコーン樹脂を流し込み、コア成形用型を作製する。既存の方法により作製した樹脂製の下部クラッドを任意の基板上に作製し、得られた下部クラッドに上述のコア成形用型を当接させる。この際、前記基板の背面から圧力を加えたり、コア成形用型の溝部分を真空ポンプなどを用いて負圧を加えることも好ましい態様である。次いで、下部クラッドと当接させたコア成形用型の溝部分にコア用樹脂組成物を流し込み硬化させた後、コア成形用型を取り外し、その後上部クラッド用樹脂組成物を塗布し、成形することにより光導波路装置を得ることができる。
【0121】
(オ)凸状のマスター型上に、適宜、剥離層を形成した後、下部クラッド用樹脂組成物を塗布する。必要に応じて、塗布した下部クラッド用樹脂組成物の上面に透明基板を置き、UVを照射して硬化させる。この際、下部クラッド用樹脂組成物を加圧してもよい。硬化させた下部クラッドをマスター型から剥離する(必要であれば、水、酸、アルカリ、有機溶剤へ浸漬する)。下部クラッドに設けられた溝にコア用樹脂組成物を充填し硬化させ、次いで、上部クラッド用の樹脂組成物を塗布して、硬化させて上部クラッドを形成する。
【0122】
(カ)その他スクリーン印刷、インクジェット印刷技術などを用いて、下部クラッドにコア用樹脂組成物を直接形成させる方法や、下部クラッドに直接溝を形成し、コアを埋め込む方法などを挙げることができる。
なお、上記(ア)〜(カ)の方法において、クラッド用樹脂組成物又はコア用樹脂組成物を充填、或は、塗布する方法としては、スピンコート、バーコート、ディップコート、スプレーコートなどの既存の方法を適宜選択することができる。
【発明の効果】
【0123】
本発明の樹脂組成物及びその光学部材は、上述の構成よりなり、透明性、低硬化収縮率、低屈折率、密着性等等各種性能に優れ、光導波路、レンズ、光ディスク、光ファイバー、筐体等の光学用途(特に光学透明用途)の他、機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料・電気・電子部品材料等に好適に用いることができる樹脂組成物、光学材料、及び、光学部材である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0124】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0125】
実施例1
〔樹脂組成物作成方法〕
・実施例1用樹脂組成物
PMSQ−E(メチル基含有シルセスキオキサン、小西化学工業株式会社製)60.0g、セロキサイド2021P(脂環式エポキシ樹脂、ダイセル化学工業株式会社製)8.0g、YED216D(1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジャパンエポキシレジン株式会社製)32.0gを100℃にて混合した後、UVI−6976(六フッ化アリールスルホニウム塩、ダウ・ケミカル社製)2.0gを加えて自公転式遠心混合装置(シンキー社製、あわとり練太郎)を用いて混合脱泡を行うことで実施例1用樹脂組成物を作成した。
【0126】
・コア層用アクリル樹脂組成物
ライトアクリレートDCP−A(ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、共栄社化学社製)100gにイルガキュア189(チバ・ジャパン社製)を2.0g添加、溶解させることで作成した。
【0127】
<光導波路の作製>
まず、シリコン基板上に、クラッド層用樹脂組成物として実施例1用樹脂組成物をスピンコートし、高圧水銀ランプを光源とする露光機(ミカサ社製、MA−60F)を用いて、照度10mW/cmで15分間、すなわち露光エネルギー9J/cmの紫外線照射を行って、厚さ50μmの下部クラッド層を形成した。プリズムカプラー(SPA−4000、SAIRON TECHNOLOGY社製)を用いて、下部クラッド層の屈折率を測定したところ、波長830nmにおける屈折率は1.47であった。
【0128】
得られた下部クラッド層上にコア層用アクリル樹脂組成物をスピンコートし、フォトマスクを介して、高圧水銀ランプを光源とする露光機(MA−60F、ミカサ社製)を用いて、照度10mW/cmで15分間、すなわち露光エネルギー9J/cmの紫外線照射を行って、パターニングした後、未硬化部分をアセトンで洗い流すことにより、厚さ50μmのコア層を形成した。プリズムカプラー(SAIRON TECHNOLOGY社製、SPA−4000)を用いて、コア層の屈折率を測定したところ、波長830nmにおける屈折率は1.52であった。なお、屈折率の測定には、プリズムカプラー(SAIRON TECHNOLOGY社製、「SPA−4000」)を用い、屈折率の値は、室温(25℃)の条件下で、波長が830nmの光に対して測定したときの屈折率である。
【0129】
コア層を形成した下部クラッド層上に、クラッド層用樹脂組成物として実施例1用樹脂組成物をスピンコートし、高圧水銀ランプを光源とする露光機(ミカサ社製、MA−60F)を用いて、照度10mW/cmで15分間、すなわち露光エネルギー9J/cmの紫外線照射を行って厚さ70μm(コア層上は厚さ20μm)の上部クラッド層を形成した。プリズムカプラー(SAIRON TECHNOLOGY社製、SPA−4000)を用いて、上部クラッド層の屈折率を測定したところ、波長830nmにおける屈折率は1.47であった。
【0130】
実施例2〜5及び比較例1〜3
実施例2〜5及び比較例1用樹脂組成物においても実施例1と同様の方法で作成した。実施
例2〜5及び比較例1で用いた材料は、次の通りである。
・YED216D(1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジャパンエポキシレジン株式会社製)
・YL−7410(ポリオキシブチレンジグリシジルエーテル、ジャパンエポキシレジン株式会社製)
・セロキサイド2021P(脂環式エポキシ樹脂、ダイセル化学工業株式会社製)
・EHO(3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、宇部興産株式会社製)
・PMSQ−E(メチル基含有シルセスキオキサン、小西化学工業株式会社製)
・PMPSQ−E(メチル基フェニル基含有シルセスキオキサン、小西化学工業株式会社製)
比較例2用樹脂組成物は、ライトアクリレート1,9ND−A(共栄社化学社製、1,9−ノナンジオールジアクリレート)100gにイルガキュア189(チバ・ジャパン社製)を2.0g添加し、溶解させることで作成した。比較例3で用いたクラッド層用の材料はPMSQ−Eである。各実施例及び比較例における、クラッド層用材料の配合割合を表1に示す。
【0131】
【表1】

【0132】
実施例2〜4、比較例1、2について、実施例1における実施例1用樹脂組成物をそれぞれの樹脂組成物に変更した方法で、光導波路を作製した。実施例5については、実施例1用樹脂組成物を実施例5用樹脂組成物に変更し、更に、光潜在性カチオン発生剤として、UVI−6976の代わりに、SP−172(六フッ化アリールスルホニウム塩、アデカ社製)2.0gを加えた方法で、光導波路を作製した。屈折率については、実施例1と同様に測定した。比較例3で用いたPMSQ−Eについては、固体であるため、光導波路を作製することはできなかった。そこで、PMSQ−Eをメチルエチルケトンで固形分50%になるように希釈し、スピンコーターでシリコンウエハ上に3μmの厚みになるよう塗布し、プリズムカプラー(SAIRON TECHNOLOGY社製、SPA−400)を用いて、屈折率を測定した。
【0133】
<導波損失の測定方法>
得られた光導波路に、ダイシングソー(ディスコ社製、DAD321)を用いて、光導波路の長さが5cmになるように端面をカットし、光入射口及び光射出口を形成した。波長850nmの発光ダイオードにコア径50μmの石英光ファイバーを接続し、もう一方のファイバー端を入射ファイバー端とした。一方、光パワーメーター(アンリツ社製、MT9810A)にコア径50μmの石英光ファイバーを接続し、もう一方のファイバー端を出射ファイバー端とした。入射ファイバー端と出射ファイバー端とを突き合わせた後、自動調芯機(駿河精機社製)により光パワーメーター(アンリツ社製、MT9810A)の強度が最大光量となるように、それぞれの光ファイバーの位置合わせを行い、その時の光導波路をRef(dBm)とした。続いて、光導波路の端面にそれぞれ入射ファイバー端及び出射ファイバー端を突き合わせ、自動調芯機(駿河精機社製)により光パワーメーター(アンリツ社製、MT9810A)の強度が最大光量となるように、それぞれの光ファイバーの位置合わせを行い、その時の光強度をOBS(dBm)とした。光導波路5cmの挿入損失INT(dB)は、式Ref(dBm)−OBS(dBm)により算出した。続いて、ダイシングソー(ディスコ社製、DAD321)を用いて、光導波路の一方の端面から1cm内側をカットすることにより、長さ4cmの光導波路を得た後、上記と同様にして、光導波路4cmの挿入損失INT(dB)を算出した。同様にして、光導波路を1cmずつカットし、光導波路が1cmになるまで、挿入損失INT(dB)の算出を繰り返した。横軸に光導波路の長さ(cm)、縦軸に挿入損失INT(dB)として、各データをプロットし、得られた直線の傾きから光導波路の導波損失(dB/cm)を得た。この方法は一般的にカットバック法と呼ばれる方法である。
【0134】
<耐久性試験>
上記方法で作製した光導波路について、85℃、85%RH、500hの耐温熱試験(吸湿試験)前、後の光損失を比較する試験を行った。結果を表2に示す。
【0135】
【表2】

【0136】
耐久性試験を行った結果、実施例1〜5で作成した樹脂組成物を用いて作製した光導波路では、吸湿試験の前後で光損失が変化することはなく優れた耐久性を示した。また、屈折率が1.47以下であり、かつ作製した光導波路による光損失が0.10dB以下と小さいものであった。比較例1では、屈折率が1.51と大きく、光損失も0.3dBと大きいものであった。比較例2においては、吸湿試験前の光損失は0.06dBと小さいものであったが、屈折率は1.48と本発明の樹脂組成物を用いたものより大きかった。また、吸湿試験後の光損失は0.06dBから0.3dBに増加し、耐久性の点で本発明の樹脂組成物よりも劣っていた。
これらの結果から、本発明の樹脂組成物は、硬化された後の屈折率が小さく、成形性に優れ、かつ耐久性に優れる樹脂組成物であることが確認された。そして、屈折率が小さく、成形性が優れていることが好適な用途、例えば、光導波路のクラッド層等に好適に用いることができることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン重合性基含有化合物を有機樹脂成分として含む樹脂組成物であって、
該樹脂組成物は、硬化体の850nmにおける屈折率が1.49以下であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂組成物は、下記平均組成式:
aRbYcSiOd
(式中、Rは、飽和脂肪族炭化水素基を表す。Rは、アリール基、アラルキル基、及び、アリール基又はアラルキル基の水素原子の一部若しくは全部が脂肪族炭化水素基で置換されてなる基からなる群から選ばれる少なくとも1種を表す。Yは、RO基、水酸基、ハロゲン原子及び水素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種を表す。Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1種を表す。a、b、c及びdは、0<a<3、0≦b<3、0≦c<3、0<a+b+c<3、0<a+b<3、及び、a+b+c+2d=4を満たす。R、R、Y、Rが複数個ある場合には、それぞれ同一でもよく、異なっていてもよい。)で表されるオルガノシロキサン化合物を含むことを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記オルガノシロキサン化合物は、式中、a+bが1以上2以下であることを特徴とする請求項2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記オルガノシロキサン化合物は、ラダー状であり、式中、a+bが1であることを特徴とする請求項2又は3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記カチオン重合性基は、エポキシ基、オキセタン基、ジオキソラン基、トリオキサン基及びビニルエーテル基からなる群より選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記カチオン重合性基含有化合物は、下記式(1):
【化1】

(式中、nは、メチレン基の繰り返し数を表し、0〜20の数である。mは、オキシアルキレン基の繰り返し数を表し、1〜10の数である。)で表されるポリアルキレン基を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂組成物は、熱潜在性カチオン発生剤又は光潜在性カチオン発生剤を含有することを必須とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物によって構成されることを特徴とする光学材料。
【請求項9】
請求項8記載の光学材料を硬化させてなることを特徴とする光学部材。
【請求項10】
請求項9記載の光学部材を用いてなることを特徴とする光導波路。

【公開番号】特開2009−249467(P2009−249467A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97494(P2008−97494)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】