説明

樹脂組成物、樹脂付き金属箔、及び金属ベース基板

【課題】本発明の目的は、アクリルゴムやシリコーン樹脂などを用いることなく、金属ベース板との密着性、ヒートサイクル性に優れ、十分な絶縁抵抗を有する樹脂組成物、樹脂付き金属、及び金属ベース基板を提供することにある。
【解決手段】(A)ビスフェノールS骨格を有するフェノキシ樹脂、(B)無機充填剤、及び(C)シランカップリング剤を必須成分とする樹脂組成物であって、(C)シランカップリング剤が樹脂組成物全体の2〜10重量%であることを特徴とする樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、樹脂付き金属箔、及び金属ベース基板に関する。
【背景技術】
【0002】
金属板上に無機充填剤を配合したエポキシ樹脂等の樹脂からなる絶縁層を設け、その上に導電回路を配設した金属ベース基板が、熱放散性に優れることから高発熱性電子部品を実装する回路基板として用いられている。
【0003】
一方、車載用電子機器について、その小型化、省スペ−ス化と共に電子機器をエンジンル−ム内に設置することが要望されている。エンジンル−ム内は温度が高く、温度変化が大きいなど過酷な環境であり、また、放熱面積の大きな基板が必要とされる。このような用途に対して、より一層放熱性に優れる金属ベース基板が注目されている。
【0004】
従来の金属ベース基板は、熱放散性や経済的な理由からアルミニウム板を用いることが多いが、実使用下で加熱/冷却が繰り返されると、前記アルミニウム板と電子部品、特にチップ部品との熱膨張率の差に起因して大きな熱応力が発生し、部品を固定している半田部分或いはその近傍にクラックが発生するなど電気的信頼性が低下するという問題点がある。
【0005】
このような点を改良するためには、絶縁層を熱伝導性が高く、低弾性率にして、さらに高レベルの耐熱性、耐湿性を有することが必要である。このような目的のために、アクリルゴムを用いることにより、低弾性率化を図った樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1、2)。
しかし、アクリルゴムを用いた場合は、ヒートサイクル試験において十分な性能が得られない問題があった。
【0006】
また、他の低弾性率化手段として、シリコーン樹脂などを用いる技術が検討されている(例えば、特許文献3)。
しかし、シリコーン樹脂を用いた場合、金属板との密着性に劣るため、金属ベース板との密着力が低下し、金属板と絶縁樹脂間に吸湿等により、絶縁抵抗値が低下する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−8426号公報
【特許文献2】特開平10−242606号公報。
【特許文献3】特開2005−281509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、金属ベース板との密着性、ヒートサイクル性に優れ、十分な絶縁抵抗を有する樹脂組成物、樹脂付き金属、及び金属ベース基板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、下記[1]〜[4]項に記載の本発明により達成される。
[1](A)ビスフェノールS骨格を有するフェノキシ樹脂、(B)無機充填剤、及び(C)シランカップリング剤を必須成分とする樹脂組成物であって、(C)シランカップリング剤が樹脂組成物全体の2〜10重量%であることを特徴とする樹脂組成物。
[2]前記(A)ビスフェノールS骨格を有するフェノキシ樹脂の含有量は、樹脂組成物全体の10〜40重量%である[1]項に記載の樹脂組成物
[3][1]または[2]項に記載の樹脂組成物は、さらに(D)ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含むものである樹脂組成物
[4][1]乃至[3]項のいずれか一項に記載の樹脂組成物、金属、接着層および金属板を用いてなる金属ベース基板。
【発明の効果】
【0010】
本発明の樹脂組成物は、金属ベース板との密着性、ヒートサイクル性に優れる、十分な絶縁抵抗を有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の樹脂組成物について説明する。
本発明の樹脂組成物は、(A)ビスフェノールS骨格を有するフェノキシ樹脂(B)無機充填剤、及び(C)シランカップリング剤を必須成分とする樹脂組成物であって、(C)シランカップリング剤が樹脂組成物全体の2〜10重量%であることを特徴とする樹脂組成物である。
これにより、金属ベース板との密着性、ヒートサイクル性に優れる、十分な絶縁抵抗を有する。
また、本発明の樹脂組成物は、金属板との密着性に優れるため、長期絶縁信頼性試験において、良好な絶縁抵抗を示し、絶縁信頼性を有する。
【0012】
加えて、本発明の樹脂組成物は、無機充填剤を含有させていることで従来からの熱放散性が優れる点、耐電圧等の電気絶縁性に優れる点等が良好のままに維持されていながら、応力緩和性が改善されている。
【0013】
前記(A)ビスフェノールS骨格を有するフェノキシ樹脂(以下、単に「(A)フェノキシ樹脂」ということがある。)とは、(A)フェノキシ樹脂の構造中にジフェニルスルホン構造を有する化合物であれば特に限定されない。分子内に2つのエポキシ基を有する化合物とビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンを反応させることで得ることができる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンを反応させたフェノキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂とビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンを反応させたフェノキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂とビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンを反応させたフェノキシ樹脂などがあげられる。
【0014】
(A)フェノキシ樹脂を樹脂層に含むことにより、樹脂層と金属板との密着性が向上するだけでなく、プレス時に、流動性が改善され、ボイド等なく成形することが可能となる。また、分子内のS原子と金属板との金属原子相互作用により、樹脂層と金属板との密着性が向上し、そのため、吸湿後の絶縁抵抗値が優れたものとなる。また低弾性率化が可能となり、金属ベース基板に用いると応力緩和性にも優れ、例えば、金属ベース基板として用い、電子部品等を実装した半導体装置を製造した場合、当該半導体装置は、急激な加熱/冷却の環境下おいても、電子部品と金属ベース基板を接合する半田接合部、またはその近傍で、クラック等の不良が発生することはない。
【0015】
(A)フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、3.0×10〜4.5×10が好ましい。3.0×10より小さいと、弾性率を低くすること難しく、半導体装置に用いた場合、急激な加熱/冷却下で、半田接合部、またはその近傍でのクラックを発生することがある。重量平均分子量が4.5×10より大きいと、樹脂組成物の粘度上昇により、プレス時の流動性が悪化し、ボイド等が発生することがあり、金属ベース基板の絶縁信頼性が低下する場合がある。
【0016】
前記(A)フェノキシ樹脂の含有量は特に限定されないが、樹脂組成物全体の10〜40重量%であることが好ましい。10重量%未満であると、弾性率を十分下げることができない場合があり、金属ベース基板に用いると応力緩和性が十分でなく、急激な加熱/冷却を受けても半田或いはその近傍でのクラックが発生する恐れがある。40重量%より多いと、プレス時の流動性が悪化し、ボイド等が発生するため、金属ベース基板の絶縁信頼性が低下する場合がある。
なお樹脂組成物全体とは、例えば、溶剤等を用いたワニスの場合は、溶剤を除く固形を意味し、液状エポキシ、カップリング剤等の液状成分は、樹脂組成物に含まれる。
【0017】
前記(B)無機充填剤は、特に限定されないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、窒化アルミニウム、ほう酸アルミウイスカ、窒化ホウ素、結晶性シリカ、非晶性シリカ、炭化ケイ素などが挙げられる。
【0018】
これらの中でも、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、結晶性シリカ、非晶性シリカが、高熱伝導性の観点から好ましい。 さらに好ましくは、アルミナである。アルミナを用いた場合、高熱伝導性に加え、耐熱性、絶縁性の点で好ましい。
【0019】
また、信頼性の観点から、結晶性シリカまたは非晶性シリカは、イオン性不純物が少ない点で好ましい。絶縁信頼性に優れる金属ベース基板を製造することができる。
結晶性シリカまたは非晶性シリカは、プレッシャークッカテスト等の水蒸気雰囲気下で絶縁性が高く、金属、アルミ線、アルミ板等の腐食が少ない点で好適である。
【0020】
一方、難燃性の観点からは、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好ましい。
さらに、 溶融粘度調整やチクトロピック性の付与の目的においては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグシウム、アルミナ、結晶性シリカ、非晶性シリカが好ましい。
【0021】
(B)無機充填剤の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の40〜70重量%であることが好ましい。40重量%より少ないと、熱抵抗が増大し、十分な放熱性を得ることができない場合があり、70重量%より多いと、プレス時の流動性が悪化し、ボイド等が発生する場合がある。
【0022】
前記(C)シランカップリング剤は、本発明の樹脂組成物に含むことにより、金属板との密着性が向上し、従来よりも金属ベース基板の絶縁信頼性が向上する。
これは、(A)ビスフェノールS骨格を有するフェノキシ樹脂、及び(B)無機充填剤との組み合わせによる相乗効果によるものと推察される。
【0023】
前記(C)シランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の2〜10重量%であることが好ましく、3〜7重量%であることがより好ましい。含有量が2重量%未満であると、金属板との密着力が低下し、半田耐熱性が低下する場合がある。また10重量%を超えると、シランカップリング剤が加水分解し、半田耐熱性が低下しする場合がある。
【0024】
前記樹脂組成物は、さらにエポキシ樹脂等の本発明では改質剤として、エポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂を添加することにより、樹脂組成物の耐湿性、耐熱性、特に吸湿後の耐熱性が改善される。エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば、特に限定されず、例えば、ビスフェノールA系、ビスフェノールF系、ビフェニル系、ノボラック系、多官能フェノール系、ナフタレン系、脂環式系及びアルコール系等のグリシジルエーテル、グリシジルアミン系並びにグリシジルエステル系等が挙げられ、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0025】
これらの中で、耐熱性、耐湿性、金属接着性およびプレス成形時の流動性の点から、ビスフェノールAエポキシ樹脂が好ましく、特に常温で液状のビスフェノールAエポキシ樹脂が好ましい。常温で液状のビスフェノールAエポキシ樹脂は、プレス成形時の流動性が特に優れる上、ビスフェノールS骨格を有するフェノキシ樹脂との相溶性に優れ、樹脂組成物が相分離等を起こさないため、耐熱性に優れる。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、エポキシ樹脂の硬化剤を含んでも良い。硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、酸無水物、アミン化合物及びフェノール化合物等が挙げられる。
【0027】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、硬化促進剤を用いても良い。硬化促進剤は、特に限定されないが、例えば、イミダゾール類及びその誘導体、第三級アミン類及び第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0028】
本発明の樹脂組成物は、その他必要に応じ、任意に公知の熱可塑性樹脂、エラストマー、難燃剤及び充填剤、色素、紫外線吸収剤等の併用ができる。
【0029】
次に、樹脂付き金属箔について説明する。
前述した樹脂組成物を用いた樹脂付き金属箔は、樹脂組成物からなる樹脂層を金属箔上に形成することにより得られる。
まず、樹脂層を形成するため本発明の樹脂組成物を、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンシクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール等の有機溶剤中で、超音波分散方式、高圧衝突式分散方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式、および自転公転式分散方式などの各種混合機を用いて溶解、混合、撹拌して樹脂ワニスを作製する。
【0030】
前記樹脂ワニス中の樹脂組成物の含有量は、特に限定されないが、45〜85重量%が好ましく、特に55〜75重量%が好ましい。
【0031】
次に前記樹脂ワニスを、各種塗工装置を用いて、金属箔上に塗工した後、これを乾燥する。または、樹脂ワニスをスプレー装置により金属箔に噴霧塗工した後、これを乾燥する。これらの方法により樹脂付き金属箔を作製することができる。
前記塗工装置は、特に限定されないが、例えば、ロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、コンマコーターおよびカーテンコーターなどを用いることができる。これらの中でも、ダイコーター、ナイフコーター、およびコンマコーターを用いる方法が好ましい。これにより、ボイドがなく、均一な絶縁層の厚みを有する樹脂付き金属箔を効率よく製造することができる。
【0032】
前記樹脂層の厚さは、50μm〜250μmの範囲が好ましく、50μm未満の場合、以下に述べる金属ベース基板に用いる、例えば、アルミニウム板等の金属板との熱膨張率差による熱応力の発生を絶縁接着層で緩和することが十分に出来ない。
その結果、基板に半導体素子、抵抗部品等を表面実装した場合、歪が大きくなり、十分な熱衝撃信頼性を得ることができなくなる場合がある。250μmを超えると、表面実装した部分の歪量が少なく、良好な熱衝撃信頼性を得ることができるが、熱抵抗が増大するため、十分な放熱性を得ることができない。
【0033】
前記金属箔は、特に限定されないが、例えば銅及び銅系合金、アルミ及びアルミ系合金、銀及び銀系合金、金及び金系合金、亜鉛及び亜鉛系合金、ニッケル及びニッケル系合金、錫及び錫系合金、鉄および鉄系合金等の金属箔が挙げられる。
これらの中でも、金属箔をエッチングにより導体回路として用いることができる点で銅が好ましい。
また、低熱膨張の観点から、鉄−ニッケル合金が好ましい。
【0034】
尚、前記金属箔の製造方法は電解法でも圧延法で作製したものでもよく、金属箔上にはNiメッキ、Ni−Auメッキ、半田メッキなどの金属メッキがほどこされていてもかまわないが、絶縁接着層との接着性の点から導体回路の絶縁接着層に接する側の表面はエッチングやメッキ等により予め粗化処理されていることが一層好ましい。
【0035】
前記金属箔の厚さは、特に限定されないが、0.5μm以上105μm以下であることが好ましい。さらには1μm以上70μm以下が好ましく、さらに好ましくは9μm以上35μm以下が好ましい。前記金属箔の厚さが上記下限値未満であると、ピンホールが発生しやすく、金属箔をエッチングし導体回路として用いた場合、回路パターン成形時のメッキバラツキ、回路断線、エッチング液やデスミア液等の薬液の染み込みなどが発生する怖れがあり、前記上限値を超えると、金属箔の厚みバラツキが大きくなったり、金属箔粗化面の表面粗さバラツキが大きくなったりする場合がある。
また、前記金属箔は、キャリア箔付き極薄金属箔を用いることもできる。キャリア箔付き極薄金属箔とは、剥離可能なキャリア箔と極薄金属箔とを張り合わせた金属箔である。キャリア箔付き極薄金属箔を用いることで前記絶縁層の両面に極薄金属箔層を形成できることから、例えば、セミアディティブ法などで回路を形成する場合、無電解メッキを行うことなく、極薄金属箔を直接給電層として電解メッキすることで、回路を形成後、極薄銅箔をフラッシュエッチングすることができる。キャリア箔付き極薄金属箔を用いることによって、厚さ10μm以下の極薄金属箔でも、例えばプレス工程での極薄金属箔のハンドリング性の低下や、極薄銅箔の割れや切れを防ぐことができる。
【0036】
次に、金属ベース基板について説明する。
本発明に係る金属ベース基板の製造方法は、特に限定されないが、例えば、金属板の片面又は両面に前記樹脂付き金属箔の樹脂面が接するように積層し、プレス等を用い加圧・加熱硬化させて樹脂層を形成することにより金属ベース基板を得ることができる。
金属ベース基板は、金属箔をエッチングすることにより、回路形成し、用いることができる。
多層にする場合は、前記金属ベース基板に回路形成後、さらに樹脂付き金属箔を積層し、前記同様エッチングすることにより回路形成することにより多層の金属ベース基板を得ることができる。
なお、最外層にソルダーレジストを形成し、露光・現像により半導体素子、や電子部品が実装できるよう接続用電極部を露出させても良い。
【0037】
前記金属板の厚みは、特に限定されないが、厚み0.5〜5.0mmであることが好ましい。熱放散性に優れ、しかも経済的であるからである。
【0038】
金属ベース基板を作製する別の方法としては、金属板に前記樹脂ワニスを塗工し、その後、金属箔を積層し加熱・加圧する方法が挙げられる。
前記同様エッチングにより回路形成して用いることもできる。
【0039】
尚、前記において金属板に前記樹脂ワニスを塗工し、樹脂を硬化させた後、無電解めっき、および電解めっきにより回路形成を行っても良い。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0041】
実施例及び比較例において用いた原材料は以下の通りである。
(1)フェノキシ樹脂A:ビスフェノールSエポキシ樹脂とビフェニル型エポキシ樹脂との共重合体であるフェノキシ樹脂(三菱化学製、YX−8100、重量平均分子量38000)
(2)フェノキシ樹脂B:ビスフェノールSエポキシ樹脂とビスフェノールA型エポキシ樹脂との共重合体であるフェノキシ樹脂(新日鉄化学製、YPS−007、重量平均分子量40000)
(3)フェノキシ樹脂C:ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(新日鐵化学製、YP−50、重量平均分子量50000)
(4)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC製、850S、エポキシ当量190)
(5)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学製、1001、エポキシ当量475)
(6)ジシアンジアミド(デグサ製)
(7)フェノールノボラック樹脂(DIC製、TD−2010、水酸基当量105)
(8)2−フェニルイミダゾール(四国化成製、2PZ)
(9)γ−グリシドキシプロピルトリトメキシシラン(信越シリコーン製、KBM−403)
(10)水酸化アルミニウム(昭和電工製、HP−360)
(11)アルミナ(電気化学工業製、AS−50)
(12)窒化ホウ素(電気化学工業製、SPG−3)
(13)シリコーン樹脂(モメンティブパフォーマンズ製XE14−A0425(A)、ポリアルキルアルケニルシロキサン)
(14)シリコーン樹脂(モメンティブパフォーマンズ製XE14−A0425(B)、ポリアルキル水素シロキサン)
【0042】
(実施例1)
(1)樹脂ワニスの調製
ビスフェノールS骨格を有するフェノキシ樹脂(三菱化学製、YX−8100、重量平均分子量38000、ビスフェノールSエポキシ樹脂とビフェニル型エポキシ樹脂との共重合体)22.0重量%、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC製、850S、エポキシ当量190)10.0重量%、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学製、1001、エポキシ当量475)15.0重量部、2−フェニルイミダゾール(四国化成製2PZ)1.0重量部、シランカップリング剤としてγ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン製KBM−403)2.0重量部、水酸化アルミニウム(昭和電工製、HP−360、粒径3.0μm)50.0重量部をシクロヘキサノンに溶解・混合させ、高速撹拌装置を用い撹拌して、樹脂組成物が固形分基準で70重量%のワニスを得た。
【0043】
(2)樹脂付き金属箔の作製
金属箔として、厚さ70μmの銅箔(古河サーキットホイル製、GTSMP)を用い、銅箔の粗化面に樹脂ワニスをコンマコーターにて塗布し、100℃で3分、150℃で3分加熱乾燥し、樹脂厚100μmの樹脂付き銅箔を得た。
【0044】
(3)金属ベース基板の作製
前記樹脂付き銅箔と金属板として2mm厚のアルミニウム板を張り合わせ、真空プレスで、プレス圧30kg/cmで80℃30分、200℃90分の条件下で、プレスし金属ベース基板を得た。
【0045】
(実施例2〜11、および比較例1〜6)
表1、及び表2に記載の配合表に従い樹脂ワニスを調製した以外は、実施例1と同様に樹脂ワニスを調製し、樹脂付き銅箔、金属ベース基板を作製した。
また、各実施例および比較例により得られた金属ベース基板について、次の各評価を行った。評価結果を表1、及び表2に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
(評価方法)
上述の各評価について、評価方法を以下に示す。
【0049】
(1)ピール強度
前記実施例、及び比較例で得られた金属ベース基板から100mm×20mmの試験片を作製し、23℃における金属ベース基板と樹脂層とのピール強度を測定した。
尚、ピール強度測定は、JIS C 6481に準拠して行った。
【0050】
(2)半田耐熱性
得られた金属ベース基板を50mm×50mmにグラインダーソーでカットした後、エッチングにより銅箔を1/4だけ残した試料を作製し、JIS C 6481に準拠して評価した。評価は、前処理をしない場合と、前処理をしない場合と、121℃、100%、(PCT処理)を4時間行った後の場合において、288℃の半田槽に30秒間浸漬した後で外観の異常の有無を調べた。
評価基準:異常なし
:膨れあり(全体的にフクレの箇所がある)
【0051】
(3)絶縁抵抗測定
前記金属ベース基板の樹脂層の絶縁抵抗値を、絶縁抵抗測定器を用いて測定した。
測定は、室温おいて交流電圧を銅箔とアルミニウム板間に印加し、行った。評価は、前処理をしないで測定する場合、及びおよび121℃、100%、(PCT処理)を96時間行った後に測定する場合の2種類で行った。
【0052】
(4)熱伝導率
得られた金属ベース基板の密度を水中置換法により測定し、また、比熱をDSC(示差走査熱量測定)により測定し、さらに、レーザーフラッシュ法により熱拡散率を測定した。
そして、熱伝導率を以下の式から算出した。
熱伝導率(W/m・K)=密度(kg/m)×比熱(kJ/kg・K)×熱拡散率(m/S)×1000
【0053】
(5)ヒ−トサイクル試験
得られた金属ベース配線基板を、−40℃7分〜+125℃7分を1サイクルとして5000回のヒートサイクル試験を行った後、顕微鏡で半田部分のクラックの有無を観察した。半田部分のクラックの発生が10%以上あるものは不良とし、半田クラックの発生が10%未満のものを良好と判定した。
評価基準:良好
:不良(クラック発生率10%以上)
【0054】
表1、及び2に記載されている評価結果より、以下のことが分かる。
比較例1及び比較例2では、半田耐熱性が悪化した。
これは、比較例1は、γ−グリシドキシプロピルトリトメキシシランの量が少ないため、また比較例2は、γ−グリシドキシプロピルトリトメキシシランの量が多すぎるためと推察される。
比較例3は、密着性が低下し、吸湿後の樹脂層の絶縁性が低下した。
これは、ビスフェノールS骨格を有するフェノキシ樹脂を用いず、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂を用いたためと推察される。
比較例4は、ピール強度が低下し、ヒートサイクル試験において実用可能なレベルに達していなかった。
これは、フェノキシ樹脂を用いなかったためと推察する。
比較例5は、無機充填剤を用いなかったため、熱伝導率が十分小さくならなかった。
比較例6は、ビスフェノールS骨格を有するフェノキシ樹脂の代わりにシリコーン樹脂を用いたものである。金属板と樹脂間に吸湿を起こし、絶縁抵抗値が低下した。
一方、実施例1〜11で得られた本発明の樹脂組成物、樹脂付き金属箔箔を用いた金属ベース基板は、ピール強度が高く、半田耐熱性に優れ、十分な絶縁抵抗値、並びに高い熱伝導率を有し、ヒートサイクル試験においても良好な結果であった。
従って、本発明で特定した樹脂組成物を用いることにより、性能の優れた金属ベース基板を得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の樹脂組成物、樹脂付き金属箔、及び金属ベース基板は自動車のエンジンル−ム等過酷な環境化で用いられる基板にでも使用することができ、産業上非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ビスフェノールS骨格を有するフェノキシ樹脂、(B)無機充填剤、及び(C)シランカップリング剤を必須成分とする樹脂組成物であって、(C)シランカップリング剤が樹脂組成物全体の2〜10重量%であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)ビスフェノールS骨格を有するフェノキシ樹脂の含有量は、樹脂組成物全体の10〜40重量%である請求項1に記載の樹脂組成物
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹脂組成物は、さらに(D)ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含むものである樹脂組成物
【請求項4】
請求項1乃至3記載のいずれか一に記載の樹脂組成物、金属、接着層および金属板を用いてなる金属ベース基板。

【公開番号】特開2012−25914(P2012−25914A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168580(P2010−168580)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】