説明

樹脂組成物、樹脂成形物及びその製造方法、ベルト張架装置、プロセスカートリッジ、並びに、画像形成装置

【課題】得られる樹脂成形物の成形不良を抑制する樹脂組成物を提供すること。成形不良が抑制された樹脂成形物及びその製造方法を提供すること。当該樹脂組成物を利用した、ベルト張架装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂又は当該熱可塑性樹脂を形成するためのモノマーと、ポリアニリンと、光酸発生剤と、溶媒と、を含有することを特徴とする樹脂組成物である。熱可塑性樹脂又は当該熱可塑性樹脂を形成するためのモノマーの代わりに、ゴム材料又は当該ゴム材料を形成するためのモノマーを適用してもよい。そして、当該樹脂組成物で成形された樹脂成形物、当該樹脂成形物を利用したベルト張架装置25、プロセスカートリッジ及び画像形成装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、樹脂成形物及びその製造方法、ベルト張架装置、プロセスカートリッジ、並びに、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
転写ベルト等の電子写真機器部材に用いる導電性組成物は、好適に使用するためには電気抵抗の制御が必須である。
従来、導電性組成物には、イオン導電剤、カーボンブラック等の導電剤を添加して抵抗の制御を行なってきた。
【0003】
一方で、例えば、「界面活性剤構造を有する導電性ポリマー」を導電剤として導電性組成物に適用する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、「酸によって導電性を発現するポリアニリン」は、導電性ポリマーであり安定な物質である。したがって、ポリアニリンを導電材料として用いると、電圧を変化させた場合の抵抗変動が小さくなり、導電性組成物として好適である。
更に、ポリアニリンの取り扱い性を高めるため、ポリアニリンに対して反応性を有する基を含有するセグメント(A)と、ポリアルキレングリコール等の特定の構造を有するセグメント(B)とを分子中に有する共重合体を、ポリアニリンに分散混合する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2004−184512公報
【特許文献2】特開2002−265781公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、成形前に樹脂やゴム材料が酸と反応する場合と比較して、得られる樹脂成形物の成形不良を抑制する樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
熱可塑性樹脂又は当該熱可塑性樹脂を形成するためのモノマーと、ポリアニリンと、光酸発生剤と、溶媒と、を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【0006】
請求項2に係る発明は、
前記光酸発生剤がジフェニルヨードニウム塩型の化合物及びトリフェニルスルホニウム塩型の化合物から選択される少なくとも1種の化合物であり、当該化合物の対アニオンがCFSO、又はPFである、
ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【0007】
請求項3に係る発明は、
ゴム材料又は当該ゴム材料を形成するためのモノマーと、ポリアニリンと、光酸発生剤と、光酸発生剤と、溶媒と、を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【0008】
請求項4に係る発明は、
前記光酸発生剤がジフェニルヨードニウム塩型の化合物及びトリフェニルスルホニウム塩型の化合物から選択される少なくとも1種の化合物であり、当該化合物の対アニオンがCFSO、又はPFである、
ことを特徴とする請求項3に記載の樹脂組成物。
【0009】
請求項5に係る発明は、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の樹脂組成物より成形されてなる樹脂成形物。
【0010】
請求項6に係る発明は、
形状がロール状であることを特徴とする請求項5に記載の樹脂成形物。
【0011】
請求項7に係る発明は、
形状がベルト状であることを特徴とする請求項5に記載の樹脂成形物。
【0012】
請求項8に係る発明は、
帯電ロール、中間転写ベルト、記録媒体搬送ベルト、定着ベルト又は転写ロールに用いることを特徴とする請求項5に記載の樹脂成形物。
【0013】
請求項9に係る発明は、
請求項7に記載のベルト状の樹脂成形物と、
前記ベルト状の樹脂成形物を内面側から回転可能に張架する複数の張架部材と、
を備えることを特徴とするベルト張架装置。
【0014】
請求項10に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段、前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段、前記潜像をトナー像として現像する現像手段、及び前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段から選択される少なくとも一つと、
を備え、
前記帯電手段、現像手段、及び転写手段の少なくとも一つが、請求項5乃至8のいずれか1項に記載の樹脂成形物を備え、
画像形成装置本体に着脱されることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【0015】
請求項11に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記潜像をトナー像として現像する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記トナー像を前記記録媒体に定着する定着手段と、
を備え、
前記帯電手段、現像手段、転写手段、及び定着手段の少なくとも1つが、請求項5乃至8のいずれか1項に記載の樹脂成形物を備えることを特徴とする画像形成装置。
【0016】
請求項12に係る発明は、
前記転写手段が、中間転写体と、前記トナー像を中間転写体に転写する一次転写手段と、前記中間転写体に転写に転写された前記トナー像を記録媒体に転写する二次転写手段と、を備え、前記中間転写体、前記一次転写手段及び前記二次転写手段の少なくとも一つが、前記樹脂成形物を備えることとを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【0017】
請求項13に係る発明は、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を、金型に塗布する工程と、
金型に塗布された前記樹脂組成物を加熱して樹脂成形物を形成する工程と、
前記樹脂組成物を金型に塗布する工程以降に、前記樹脂組成物又は前記樹脂成形物に光照射を行う工程と、
を有することを特徴とする樹脂成形物の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によれば、成形前に樹脂やゴム材料が酸と反応する場合と比較して、得られる樹脂成形物の成形不良が抑制される。
請求項2に係る発明によれば、本発明を採用しない場合に比較して、より効果的に、得られる樹脂成形物の成形不良が抑制される。
請求項3に係る発明によれば、成形前に樹脂やゴム材料が酸と反応する場合と比較して、得られる樹脂成形物の成形不良が抑制される。
請求項4に係る発明によれば、本発明を採用しない場合に比較して、より効果的に、得られる樹脂成形物の成形不良が抑制される。
【0019】
請求項5に係る発明によれば、成形前に樹脂やゴム材料が酸と反応する樹脂組成物を成形する場合と比較して、成形不良を抑制した樹脂成形物が提供される。
請求項6に係る発明によれば、成形前に樹脂やゴム材料が酸と反応する樹脂組成物を成形する場合と比較して、成形不良を抑制したロール状の樹脂成形物が提供される。
請求項7に係る発明によれば、成形前に樹脂やゴム材料が酸と反応する樹脂組成物を成形する場合と比較して、成形不良を抑制したベルト状の樹脂成形物が提供される。
請求項8に係る発明によれば、成形前に樹脂やゴム材料が酸と反応する樹脂組成物を成形する場合と比較して、成形不良を抑制した画像形成装置用部材としての樹脂成形物が提供される。
【0020】
請求項9に係る発明によれば、成形前に樹脂やゴム材料が酸と反応する樹脂組成物を成形したベルト状の樹脂成形物を用いる場合と比較して、樹脂組成物の成形不良に起因した画像欠陥が抑制される。
請求項10に係る発明によれば、成形前に樹脂やゴム材料が酸と反応する樹脂組成物を成形した樹脂成形物を用いる場合と比較して、樹脂組成物の成形不良に起因した画像欠陥が抑制される。
請求項11に係る発明によれば、成形前に樹脂やゴム材料が酸と反応する樹脂組成物を成形した樹脂成形物を用いる場合と比較して、樹脂成形物の成形不良に起因した画像欠陥が抑制される。
請求項12に記載の発明によれば、本発明を採用しない場合に比較して、樹脂組成物の成形不良に起因した画像欠陥が抑制される。
【0021】
請求項13に係る発明によれば、本発明を採用しない場合に比較して、効率良く製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る樹脂組成物、樹脂成形物、プロセスカートリッジ、ベルト張架装置及び画像形成装置について詳細に説明する。
<樹脂組成物>
本実施形態に係る樹脂組成物は、ポリアニリンと、光酸発生剤と、溶媒と、を含有する樹脂組成物であって、熱可塑性樹脂又は当該熱可塑性樹脂を形成するためのモノマーと、ゴム材料又は当該ゴム材料を形成するためのモノマーと、のいずれかを主成分として含有する樹脂組成物である。本実施形態に係る樹脂組成物は、ポリアニリンと共に、光酸発生剤を含有することで、得られる樹脂成形物の成形不良が抑制される。
【0023】
ここで、ポリアニリンの如く、酸によって導電性が発現する導電剤を用いた場合、導電化するための酸添加によって樹脂やゴム材料の分子量が低下し、その結果、例えば表面に突起物が形成され、成形不良が発生する。
【0024】
そこで、本実施形態に係る樹脂組成物では、光により酸を発生する光酸発生剤を添加することで、成形前に樹脂やゴム材料が酸と反応する場合とを比較して、上記成形不良が抑制される。加えて、ポリアニリンへの導電化も良好に付与され、電気的特性(例えば、抵抗分布のバラツキ)も良好であり、当該樹脂組成物から成形される樹脂成形物の電気的特性も良好なものとなる。特に、当該樹脂成形物を画像形成装置の部材(例えば、帯電手段(帯電ロール)、転写手段(中間転写体、転写ロール))に適用することで、画質欠陥(画像が白抜けしたり、うろこ状になる事)や経時使用後の濃度低下が抑制される。
【0025】
以下、各成分について説明する。
【0026】
[ポリアニリン]
ポリアニリンは、酸により導電性を発現するものであり、電子を受け取る働きのある物質を添加することで、分子内の電子が動ける状態となり導電性が発現する状態になるアニリンをいう。
なお、「導電性」とは、体積抵抗率が10以上Ω・cm1014以下Ω・cmの範囲内にあることをいう。
【0027】
(1)ポリアニリン
ポリアニリンは、酸により導電性を発現するため、導電材料として用いられる。
ポリアニリンは、主鎖骨格はp位で結合した構造となっている。本発明で用いられるポリアニリンは、キノンジイミン構造単位及び/又はフェニレンジアミン構造単位を主たる繰り返し単位として有することが望ましい。
【0028】
ポリアニリンは、酸によるドープ状態、及び脱ドープ状態により著しく電気化学活性が変化することが知られている。
なお、本実施の形態では、導電状態にあるポリアニリンを、酸によりドープされた状態であることから「ドープされたポリアニリン」又は「ドープ状態のポリアニリン」と称する。また、非導電状態にあるポリアニリンを、酸によるドープがなされていない状態であることから「脱ドープ状態のポリアニリン」と称して説明する。
【0029】
以下に示すように、ポリアニリンの主鎖中の構造単位は、酸化還元により、A:ロイコエメラルジン、B:エメラルジン、C:ペルニグラニリン、D:エメラルジン塩の4構造を取るとされている。
【0030】
【化1】



【0031】
この中でも、上記Bのエメラルジン構造を持つポリアニリンが、プロトン化、すなわち導電状態とすること(ドーピング)により、一番高い電気伝導度を持つ導電状態の(ドープ状態の)ポリアニリンとなり、空気の中で安定なので一番有用である。
すなわち、上記「非導電状態」、すなわち「脱ドープ状態のポリアニリン」とは、「B:エメラルジン」の状態に相当する。また、「ドープ状態のポリアニリン」とは、「Dのエメラルジン塩」の状態に相当する。このDの状態では、高い電気伝導度を有する。
なお、ポリアニリンは通常においては酸化されやすいため、導電性向上、安定化のためにはペルニグラニリン構造がより少ないことが望ましく、より還元状態からドーピング処理することが望ましい。
【0032】
ポリアニリンの合成・構造については、特開平3−28229号公報に詳しく述べられている。本発明におけるポリアニリンは、アニリン又はアニリン誘導体から酸化重合法にて容易に製造される。
具体的には、プロトン酸の存在下に溶剤中にてアニリンに温度を5℃以下、望ましくは0℃以下の温度を保持しつつ、酸化剤を作用させて酸化重合を行い、後述するプロトン酸を用いてドープされたアニリンの酸化重合体(以下、ドープされたポリアニリンという。)を生成させる。次いで、このドープされたポリアニリンを塩基性物質によって脱ドープすることによって得られる。
また、市販品としては、パニポール社製「Panipol PA」が挙げられる。
【0033】
なお、上述のようにポリアニリンは通常においては酸化されやすいため、導電性向上、安定化のためにはペルニグラニリン構造がより少ないことが望ましく、より還元状態からドーピング処理することで効率よくドーピングされる。
本発明では、フェニルヒドラジン、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン等のヒドラジン化合物や、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素リチウム等の還元性水素化金属化合物等の還元剤を用いて還元処理し、溶媒中に溶解し、ドーピング処理を行なうことで、脱ドープ状態のポリアニリンを得る。
【0034】
上記還元剤としては、フニルヒドラジン、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン等のヒドラジン化合物、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素リチウム等の還元性水素化金属化合物等が好適に用いられる。
【0035】
また、脱ドープ状態のポリアニリンの数平均分子量は、機械的強度の確保と、導電性の付与の観点から、4000以上400000以下であることが望ましい。
【0036】
ポリアニリンの添加量(使用量)は、発現させる導電度によって調整される。一般的には、本実施形態に係る樹脂組成物中の樹脂(又はゴム材料)分100質量部に対して、添加されるポリアニリンは5質量部以上40質量部以下が望ましく、より望ましくは10質量部以上30質量部以下である。
ポリアニリンの添加量が上記範囲内にあると、電気導電性、及び得られる成形物のしなやかさの観点から好適である。例えば、本実施形態に係る樹脂組成物から無端ベルトを成型する場合、ベルトとして好適に機能が発揮される。
【0037】
[光酸発生剤]
光酸発生剤とは、300nm以下の波長の光を照射することによって酸を発生させる化合物をいう。具体的には、ジフェニルヨードニウム塩型の化合物、トリフェニルスルホニウム塩型の化合物が好適に挙げられる。そのオニウム塩型の化合物の対アニオンとしては、CFSO、PF、CFCFCFCFSO、CH(C)SO、(CHO)(C14)SO、NOなどが挙げられるが、特に、CFSO、PFが好適である。また、光酸発生剤は、これら塩型の化合物に限られず、ジフェニルスルホニウム塩型の化合物(その対アニオンとしては上記と同様)、ヒドロキシナフタルイミドスルホネート化合物、ノルボルネンジカルボキシイミドスルホネートも用いられる。
【0038】
以下に、光酸発生剤(ジフェニルヨードニウム塩型の化合物、トリフェニルスルホニウム塩型の化合物)の好適な具体例を挙げるが、本発明はこれらの化合物に限定されない。以下例示する光酸発生剤は、付与番号に応じて「光酸発生剤(番号)」と標記する。
【0039】
【化2】

【0040】
【化3】

【0041】
【化4】

【0042】
【化5】

【0043】
以下に、その他の光酸発生剤の具体例を挙げるが、これに限られるものではない。
【0044】
【化6】

【0045】
光酸発生剤の使用割合は、樹脂組成物の使用導電域にも関係するが、ポリアニリン添加量に対して当モル量であることが望ましい。
【0046】
[熱可塑性樹脂又は当該熱可塑性樹脂を形成するためのモノマー]
熱可塑性樹脂としては、特に制限されるものではなく、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリカーボネイト、ポリエステル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、またはポリフロロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)などの樹脂材料が挙げられる。
【0047】
一方で、樹脂組成物には、当該熱可塑性樹脂を形成するためのモノマーが含有されていてもよい。
【0048】
熱可塑性樹脂(それを形成するためのモノマー)は、樹脂組成物中15質量%以上30質量%以下含有することが望ましい。
【0049】
[ゴム材料又はゴム材料を形成するためのモノマー]
ゴム材料の種類は、特に限定されるものでなく、任意のエラストマーが用いられる。その具体例としては、塩素化ポリイソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリン系ゴム、ノルボルネンゴム、フッ素系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、またはアクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合ゴム等が挙げられる。
また、熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレンーブタジエンブロック共重合体、スチレンーエチレンーブチレンースチレンブロック共重合体等のスチレン系エラスマー、ウレタン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、フッ素系エラストマー、または塩ビ系エラストマーが挙げられる。
【0050】
一方で、樹脂組成物には、当該ゴム材料を形成するためのモノマーが含有されていてもよい。
【0051】
ゴム材料のうち、ポリウレタンについて説明する。ゴム材料がポリウレタンの場合には、ゴム材料を形成するためのモノマーとしては、少なくとも、(1)ポリオール成分としてのモノマーと、(2)イソシアネート成分としてのモノマーと、が必要である。
【0052】
ポリウレタンのポリオール成分のポリエーテルポリオールモノマーとしては例えば、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシブチレングリコール、ポリオキシテトラメチレンギリコール等のポリオキシアルキレングリコール類、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレントリオール、ポリオキシブリレントリオール等のポリオキシアルキレントリオール類、エチレンジアミン、ペンタエリスルトール、ソルビトール、スクロース、スターチ等を開始剤としたポリオキシプロピレンポリオール、またはポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオール等のポリ(オキシアルキレン)ポリオール等が挙げられる。
またポリオール成分のポリエステルポリオール化合物モノマーとしては、ポリ炭酸エステルポリオール、ポリカプロラクトンエステルポリオール、又はエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,3−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のグリコールの1種又2種以上の混合物と、アジピン酸等の炭素数2以上6以下のジカルボン酸とを反応させて得られるポリエステルポリオール等が挙げられるが、ポリオール成分としては上記のものに限定されない。
【0053】
またポリウレタンのイソシアネート成分としてはトリレンジイソソアネート(TDI)、メタキシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、プレポリマー変性イソシアネート、及びこれらのイソシアネート化合物をフェノール、芳香族2級アミン、3級アルコール、アミド、ラクタム、複素環化合物、亜硫酸塩等でブロックしたブロックイソシアネートをインデックス=0.80以上1.20以下に調整し、望ましくは0.98以上1.09以下に調整したものなどが挙げられる。(インデックス=活性水素基/イソシアネート基(NCO基))
【0054】
発泡層のマトリックス(ゴム材料)としては特にウレタン発泡体を用いることが望ましく、ウレタン発泡体を用いることにより、安定した発泡状態を維持でき、その結果画像均一性が得られる。発泡剤としては水を用いる発泡方式、窒素、空気などの混合による機械発泡方式を用いることにより発熱を抑え破泡、連泡化を少なくし、また歪みも小さく、さらに低硬度化が得られる。
発泡硬度(アスカーC硬度)は3度以上60度以下、さらには5度以上20度以下にすることが望ましい。またウレタンは永久歪みが少なく繰り返しの使用によってへこみ、歪み、変形等が少なく、寸法精度が安定であり、したがって中間転写体の交換頻度が少なくなる。
【0055】
ポリアニリンと光酸発生剤とを組み合わせる場合、特に好適なゴム材料としては、ポリウレタン、塩素化ポリイソプレンゴム、クロロプレンゴム、またはNBRであり、これらのゴム材料は導電剤との親和性が高く、分散性の観点から好適である。
【0056】
ゴム材料(それを形成するためのモノマー)は、樹脂組成物中15質量%以上30質量%以下含有することが望ましい。
【0057】
[溶媒]
溶媒としては、熱可塑性樹脂やゴム材料(これらのモノマー含む)を溶解するものであれば特に限定されないが、具体的には、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系或いはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更には、キシレン、トルエンのような芳香族炭化水素も使用可能である。
【0058】
これら溶媒は、樹脂組成物中40質量%以上60質量%以下含有することが望ましい。
【0059】
<樹脂成形物>
本実施形態に係る樹脂成形物は、上記実施形態に係る樹脂組成物より成形されてなる樹脂成形物である。
本実施形態に係る樹脂成形物は、例えば、上記実施形態に係る樹脂組成物を、金型に塗布する工程と、金型に塗布された樹脂組成物を加熱して樹脂成形物を形成する工程と、樹脂組成物を金型に塗布する工程以降に、樹脂組成物又は樹脂成形物に光照射を行う工程と、を経て、得られる。この光照射処理を施すことで、樹脂組成物又は樹脂成形物に含まれる光酸発生剤から酸が発生し、当該酸によりポリアニリンの導電性が発現される。
【0060】
樹脂組成物の金型への塗布は、遠心塗布法、浸漬塗布法等、周知の塗布法により実施される。また、金型は、樹脂成形物の形状は用途に応じて選択される。具体的には、ロール状の樹脂成形物を作製する場合、金型として円筒状支持体の表面(表面上に下層となる層を有していてもよい)上に、樹脂組成物を塗布する。また、ベルト状の樹脂成形物を作製する場合、金型として円筒状金型の表面又は内面(表面又は裏面に下層又は上層となる層を有していてもよい)に、樹脂組成物を塗布する。
【0061】
次に、樹脂成形物を形成する際の加熱は、乾燥、そして、樹脂種又はゴム材料種に応じてモノマー重合や焼成、硬化のために実施される。ここで、例えば、ベルト状の樹脂成形物を得る場合、乾燥後、円筒状金型から取り外して、他の円筒状金型に嵌め込んでモノマー重合や焼成、硬化のための加熱を別途行ってもよい。
【0062】
次に、光照射は、樹脂組成物を金型に塗布する工程以降であれば、いずれの時期に実施してもよく、例えば、樹脂組成物の塗布後、樹脂組成物の乾燥後、樹脂成形物を形成した後に実施される。塗布前の樹脂組成物、即ち塗布液に光照射を行ってもよいが、塗布液組成が変化し、塗布性が低減されることがあるため、上記の如く、樹脂組成物を金型に塗布する工程以降に行うことがよい。
【0063】
光照射は、樹脂組成物又は樹脂成形物全体で光酸発生剤から酸が生じるように実施されれば、特に制限はなく、樹脂組成物又は樹脂成形物を全面に光照射を行ってもよく、樹脂組成物又は樹脂成形物の一面に光照射を行ってもよい。
【0064】
光照射は、光酸発生剤の種類にもよるが、紫外線照射がよく、例えば、400nm以下(望ましくは300nm以下)の波長で、1分以上30分以下(望ましくは5分以上15分以下)で実施することがよい。光照射は、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、デイープ紫外線ランプ、マイクロ波を用い外部から無電極で水銀灯を励起するランプ、紫外線レーザー、キセノンランプ、UV−LEDなどが適用される
【0065】
(用途)
本実施形態に係る樹脂組成物は、以下に示す種々の形状、ロール状やベルト状に成形され、利用される。
ロール状の樹脂成形物は、画像形成装置用として帯電ロール、中間転写ロール、転写ロール、または定着ロールなどに適用される。
また、ベルト状の樹脂成形物は、画像形成装置用として帯電ベルト、中間転写ベルト、記録媒体搬送ベルト、または定着ベルト、などに適用される。当該ベルトを複の樹脂成形物は回転可能な張架部材に張架させて、ベルト張架装置が構成される。
これらの中でも、本実施形態に係る樹脂成形物は、帯電ロール、中間転写ベルト、記録媒体搬送ベルト、定着ベルト又は転写ロールに適用することが好適である。
【0066】
(構成)
本実施形態に係る樹脂成形物には、上記実施形態に係る樹脂組成物によって成形される層の他、その他樹脂層(例えば、ポリイミド層など)を設けてもよい。また、前記樹脂組成物によって形成される層は、単層でもよく、また前記樹脂組成物中の樹脂の種類や配合比率などを変えて、複数層を積層してもよい。積層体とする場合には、その積層の順は特に制限されない。
【0067】
−ロール状の樹脂成形物−
ロール状の樹脂成形物は、支持体と、弾性層と、必要に応じて表面層と、を有する構成であることが望ましい。そして、前記弾性層及び表面層の少なくとも1層を上記実施形態に係る樹脂組成物で成形、即ち本実施形態に係る樹脂成形物で構成することが望ましい。
【0068】
−ベルト状の樹脂成形物−
ベルト状の樹脂成形物は、基材層と、必要に応じて表面層を有する構成であることが望ましい。そして、基材層及び表面層の少なくとも1層を上記実施形態に係る樹脂組成物で成形、即ち本実施形態に係る樹脂成形物で構成することが望ましい。
【0069】
<プロセスカートリッジ、画像形成装置>
本実施形態に係る画像形成装置は、上記樹脂成形物を具備するものであれば如何なる構成であってもよい。例えば、本実施形態に係る画像形成装置としては、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、潜像をトナー像として現像する現像手段と、トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、トナー像を前記記録媒体に定着する定着手段と、を備える画像形成装置が挙げられる。そして、帯電手段、現像手段、転写手段、及び定着手段の少なくとも1つが、上記実施形態に係る樹脂成形物を備え得る。つまり、例えば、上記実施形態に係る樹脂成形物を利用した、帯電ロール、帯電ベルト、現像ロール、転写ロール、定着ベルト、または定着ロールとして、備える。
【0070】
また、本実施形態に係る画像形成装置において、転写手段は、中間転写体と、トナー像を中間転写体に転写する一次転写手段と、中間転写体に転写に転写されたトナー像を記録媒体に転写する二次転写手段と、を備える構成でもよい。そして、当該中間転写体、一次転写手段及び二次転写手段の少なくとも一つが、上記実施形態に係る樹脂成形物を備え得る。つまり、例えば、上記実施形態に係る樹脂成形物で利用した、中間転写ロール、中間転写ベルト、一次転写ロール、または二次転写ロールとして、備える。
【0071】
また、本実施形態に係る画像形成装置には、当該画像形成装置本体に脱着されるプロセスカートリッジを備える構成としてもよい。このプロセスカートリッジとしては、例えば、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段、像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段、潜像をトナー像として現像する現像手段、及びトナー像を記録媒体に転写する転写手段から選択される少なくとも一つと、を備える構成のプロセスカートリッジが挙げられる。そして、帯電手段、現像手段、及び転写手段の少なくとも一つが、上記実施形態に係る樹脂成形物を備える。
【0072】
なお、本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、装置内に単色(通常は黒色)画像を形成するモノカラー電子写真装置や、像保持体としての感光体上に保持されたトナー像を中間転写ベルトに順次一次転写を繰り返すカラー電子写真装置や、色毎の現像器を備えた複数の感光体を中間転写ベルト上に直列に配列した、タンデム型カラー電子写真装置のいずれであってもよい。
【0073】
上記本実施形態に係る樹脂成形物を備えたプロセスカートリッジ及び画像形成装置は、成形不良が抑制された上記部材を備えるため、優れた画像性能が発揮される。
【0074】
以下、本実施形態に係る画像形成装置について図面を参照しつつ説明する。図1は、実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【0075】
実施形態に係る画像形成装置は、上記実施形態に係る中間転写ベルトを備え、感光体ドラムを各色毎に4台持つ出力機である。
【0076】
実施形態に係る画像形成装置は、図1に示すように、画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kが備えられている。
【0077】
画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kには、それぞれ、像保持体としての感光体ドラム12Y,12M,12C,12K(Yはイエロー用、Mはマゼンタ用、Cはシアン用、Kはブラック用を示す)を備え、感光体ドラム12Y,12M,12C,12Kの周囲には、それぞれ、感光体ドラム12Y,12M,12C,12Kの表面を帯電する帯電装置14Y,14M,14C,14Kと、帯電された感光体ドラム12Y,12M,12C,12Kの表面に静電潜像を形成する露光装置16Y,16M,16C,16Kと、感光体ドラム12Y,12M,12C,12Kの表面に形成された静電潜像を現像剤に含まれるトナーによりトナー像とする現像装置18Y,18M,18C,18Kと、トナー像を中間転写ベルト24に転写するための一次転写装置20Y,20M,20C,20K(例えば転写ロール)と、転写後の感光体ドラム12Y,12M,12C,12Kの表面に付着した残留トナーを除去するための感光体ドラムクリーナー22Y,22M,22C,22Kとが備えられている。
【0078】
また、画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kに対向して、中間転写体としての中間転写ベルト24が配設されている。中間転写ベルト24は、感光体ドラム12Y,12M,12C,12Kと一次転写装置(例えば一次転写ロール)20Y,20M,20C,20Kとの間に配設されている。
【0079】
そして、中間転写ベルト24は、駆動ロール26a、中間転写ベルト24がゆがんだり蛇行したりすることを防ぐテンション・ステアリングロール26c、支持ロール26b,26d,26eと共に、バックアップロール28により内周面側から張力を掛けつつ回転可能に支持されて、ベルト張架装置25を構成している。
【0080】
中間転写ベルト24の周囲には、当該中間転写ベルト24を介してバックアップロール28と対向して二次転写装置30(例えば二次転写ロール)が配設されると共に、二次転写装置30よりも中間転写ベルト24の回転方向下流側にベルトクリーナー32が配設されている。
【0081】
そして、二次転写装置30よる転写後の記録用紙P(記録媒体)を搬送するための搬送装置34が配設されると共に、搬送装置34による搬送方向下流側に定着装置36が配設されている。
【0082】
本実施形態に係る画像形成装置では、まず、画像形成ユニット10Yにおいて、感光体ドラム12Yは図中時計方向に回転し、帯電装置14Yでその表面が帯電される。帯電された感光体ドラム12Yにレーザー書き込み装置などの露光装置16Yにより第1色(Y)の静電潜像が形成される。
【0083】
この静電潜像は現像装置18Yにより供給されるトナー(トナーを含む現像剤)よってトナー現像されて可視化されたトナー像が形成される。トナー像は感光体ドラム12Yの回転により一次転写部に到り、一次転写装置20Yからトナー像に逆極性の電界を作用させることにより、トナー像が、反時計方向に回転する中間転写ベルト24に一次転写される。
【0084】
そして、同様にして第2色のトナー像(M)、第3色のトナー像(C)、第4色のトナー像(K)が画像形成ユニット10M,10C,10Kにより順次形成され中間転写ベルト24において重ね合わせられ、多重トナー像が形成される。
【0085】
次に、中間転写ベルト24に転写された多重トナー像は中間転写ベルト24の回転で二次転写装置30が設置された二次転写部に到る。
【0086】
この二次転写部では、二次転写装置30と中間転写ベルト24を介して対向配置したバックアップロール28との間にトナー像の極性と同極性のバイアス(転写電圧)を印加することで、当該トナー像を記録用紙Pに静電反発で転写する。
【0087】
記録用紙Pは、記録用紙容器(図示せず)に収容された記録用紙束からピックアップローラ(図示せず)で一枚ずつ取り出され、フィードロール(図示せず)で二次転写部の中間転写ベルト24と二次転写装置30との間に所定のタイミングで給送される。
【0088】
給送された記録用紙Pには、二次転写装置30とバックアップロール28による圧接及び転写電圧搬送と、中間転写ベルト24の回転と、の作用により、中間転写ベルト24に保持されたトナー像が転写される。
【0089】
トナー像が転写された記録用紙Pは、搬送装置34により定着装置36に搬送され、加圧/加熱処理でトナー像を固定して永久画像とされる。
【0090】
なお、多重トナー像の記録用紙Pへの転写の終了した中間転写ベルト24は二次転写部の下流に設けたベルトクリーナー32で残留トナーの除去が行われて次の転写に備える。また、二次転写装置30はブラシクリーニング(図示せず)により、転写で付着したトナー粒子や紙紛等の異物が除去される。
【0091】
また、単色画像の転写の場合は、一次転写されたトナー像を単色で二次転写して定着装置に搬送するが、複数色の重ね合わせによる多色画像の転写の場合は各色のトナー像が一次転写部で一致するように中間転写ベルト24と感光体ドラム12Y,12M,12C,12Kとの回転を同期させて各色のトナー像がずれないようにする。
【0092】
このようにして、本実施形態に係る画像形成装置では、記録用紙P(記録媒体)に画像が形成される。
【0093】
以下、他の実施形態に係る画像形成装置について図面を参照しつつ説明する。図2は、他の実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【0094】
他の実施形態に係る画像形成装置は、図2に示すように、画像形成装置本体(図示せず)に、電子写真感光体52を備えるプロセスカートリッジ50と、露光装置(潜像形成手段)56と、転写装置60と、記録媒体搬送ベルト64とを備える。なお、他の実施形態に係る画像形成装置において、露光装置56はプロセスカートリッジ50の開口部から電子写真感光体52に露光する位置に配置されており、転写装置60は記録媒体搬送ベルト64を介して電子写真感光体52に対向する位置に配置されており、記録媒体搬送ベルト64は電子写真感光体52に突き当たった状態で接触して配置されている。
【0095】
プロセスカートリッジ50は、ケース内に電子写真感光体52とともに、帯電装置54、現像装置58、クリーニング装置62を組み合わせて一体化し、画像形成装置本体に取り付けレールにより取り付けられるものである。また、クリーニング装置62は、繊維状部材(ロール形状)62aとクリーニングブレード(ブレード部材)62bとを備える。なお、ケースには、露光のための開口部が設けられている。
【0096】
プロセスカートリッジ20は、画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。
【実施例】
【0097】
以下、本発明に対応する複数の実施例及びこれらの実施例に対する比較例について述べる。なお、これらの実施例は全て例示であり、この記述によって本発明の適用範囲が限定されるものではない。なお、実施例中「部」は質量部を意味する。
【0098】
[実施例1]
下記に示すA液とB液を室温(25℃)で攪拌混合し、その後、ポリアニリン(商品名:パニポールEB、パニポール社製)15部、光酸発生剤(1)17部、及びテトラブチルアンモニウム過塩素酸0.03部を加えて更に攪拌混合した。
【0099】
−A液−
・ポリテトラメチレングリコール(平均分子量:3000、三洋化成工業(株)製、PTMG3000): 100部
【0100】
−B液−
・ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI): 23.8部(ポリオールOH価に対して1.03)
・トリエチレンジアミン: 0.05部
【0101】
この混合物を内直径110mm径、長さ500mm、厚み5mmのアルミニウム製円筒状ドラム型の内面に塗布し、3000rpmで遠心成形した後、180℃×30分加熱硬化させ、ウレタンエラストマーをマトリックスとする膜厚300μmのウレタン無端ベルトを得た。紫外線照射装置(UM1036−B(ウシオ電気製))により、得られたウレタン無端ベルト全体に照射エネルギー(100W/m)で照射波長300nmの紫外光を15分照射した。
得られたウレタン無端ベルトの外面の表面抵抗率は1011log・ohmであった。
【0102】
[評価]
<塗工性能>
得られたウレタン無端ベルトを目視し、塗工性能を評価した。評価基準は以下の通りである。
−塗工性能の評価基準−
A:突起状の表面欠陥の存在が全く確認されない。
B:突起状の表面欠陥が極僅か確認されたが、実用上問題の無い範囲。
C:突起状の表面欠陥が存在し、実用上問題がある。
【0103】
また、得られたウレタン無端ベルトの塗工性能に加え、電気特性(体積抵抗率、電界依存)、これを中間転写ベルトとして電子写真装置へ搭載した場合の転写画像の品質(微小な白点(MWS(マイクロホワイトスポット))、画像のエッジ部のボケ(ブラー)及び画像が中抜けする画質欠陥(ホロキャラクター)について、以下のように評価した。
【0104】
<電気特性の評価>
(体積抵抗率の測定)
ウレタン無端ベルトの体積抵抗率の測定には、R8340A デジタル超高抵抗/微小電流計(株式会社 アドバンテスト社製)と、接続部をR8340A用に改造した二重リング電極構造のURプローブMCP−HTP12及びレジテーブUFL MCP−ST03(何れも、株式会社 ダイアインスツルメンツ社製)を用いた。
なお、測定の際の試験片は、実施例・比較例で製造したベルト片を用いた。
【0105】
レジテーブUFL MCP−ST03(金属面を下部電極として使用)上に、試験片を置き、上部電極としてURプローブMCP−HTP12の二重電極部を当てた。なお、URプローブMCP−HTP12の上部には19.6N±1Nの錘を取り付け、試験片に一様な荷重がかかるようにした。
【0106】
R8340A デジタル超高抵抗/微小電流計の測定条件は、チャージタイムを30秒、ディスチャージタイムを1秒、印加電圧を100Vとした。
このとき、試験片の体積抵抗率をρv、中間転写体の厚さt(μm)、R8340A デジタル超高抵抗/微小電流計の読み値をR、URプローブMCP−HTP12の体積抵抗率補正係数をRCF(V)とすると、三菱化学「抵抗率計シリーズ」カタログによれば、RCF(V)=2.011である。
【0107】
これらの値を下記式に代入することで、体積抵抗率が求められる。
式:ρv[Ω・cm]=R×RCF(V)×(10000/t)=R×2.011×(10000/t)
【0108】
<電界依存>
電界依存は印加電圧100Vの時の体積抵抗率と、印加電圧10Vの時の体積抵抗率の差により評価した。
【0109】
<転写画像の品質の評価>
得られたウレタン無端ベルトを富士ゼロックス社製電子写真装置(DocuCentreColor400CP)に中間転写ベルトとして組み込み、初期(5枚目)の転写画像の画質の評価を行った。
転写画像の画質の評価項目として、MWS(マイクロホワイトスポット)の有無、ブラーの有無、及びホロキャラクターの有無を、目視にて確認した。評価基準は以下の通りである。
【0110】
−MWS(マイクロホワイトスポット)の評価基準−
A:MWSの存在が全く確認されない。
B:MWSの存在は確認されたが、実用上問題の無い範囲。
C:MWSが多数存在し、実用上問題がある。
なお、マイクロホワイトスポットとは、ハーフトーンパッチ画像中、数十乃至100μmレベルの白抜けをいう。
【0111】
−ブラーの有無−
A:ブラーの存在が全く確認されない。
B:ブラーの存在は確認されたが、実用上問題の無い範囲。
C:ブラーが多数存在し、実用上問題がある。
なお、ブラーとは、画像のエッジ部のトナーの飛散をいう。
【0112】
−ホロキャラクターの有無−
A:ホロキャラクターの存在が全く確認されない。
B:ホロキャラクターの存在は確認されたが、実用上問題の無い範囲。
C:ホロキャラクターが多数存在し、実用上問題がある。
なお、ホロキャラクターとは、ライン画像が中抜けする画質欠陥をいう。
【0113】
また、50,000枚通紙後の濃度低下の有無を確認した。
○:初期濃度同等レベル
△:初期濃度より低下しているが実用上問題ないレベル
×:初期濃度より激しく低下しているレベル
【0114】
[実施例2]
実施例1では、ゴム材料としてウレタンエラストマーとしたところを、実施例2ではオレフィン系エラストマー(商品名:ミラストマー5030N、三井化学(株)製)とした。具体的な製造方法は以下の通りである。
ミラストマー100部にパニポールEB15部、前記光酸発生剤(2)15部を添加し、160℃で混練押し出しマスターバッチとした。得られた樹脂を再度200℃で混練押し出し、直径110mmの管状ダイ(ダイ温度210℃)にて押し出し無端ベルトを得た。
そして、得られた無端ベルトについて、実施例1と同様にして評価を行った。
【0115】
[実施例3乃至6、比較例1乃至2]
表1に従って、導電剤(ポリアニリン)、ゴム材料/熱可塑性樹脂、光酸発生剤の種類を変えたこと以外は、実施例3、4、6、比較例1、2は実施例1と同様に、実施例5は実施例2と同様にして無端ベルトを作製した。
【0116】
【表1】

【0117】
上記結果から、本実施例は、比較例に比べ、塗工性能が良好であり、成形不良が抑制されて無端ベルトが得られることがわかる。また、得られた無欄ベルトを中間転写ベルトとして適用した場合、本実施例では、比較例に比べ、良好な転写画像が得られることがわかる。
【0118】
なお、本実施例では無端ベルトを作製したが、形成形状をロールにした場合であっても同様の結果、つまり、欠陥を抑制して塗工され、成形不良が抑制されたロールが得られ、これを画像形成装置に適用した場合、良好な画像が得られることもわかる。また、無端ベルトを画像形成装置の他の用途に用いた場合でも、同様に、成形不良が抑制されているため、これに起因する画像欠陥も抑制され、良好な画像が得られることもわかる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】他の実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0120】
10Y,10M,10C,10K 画像形成ユニット
12Y,12M,12C,12K 感光体ドラム
14Y,14M,14C,14K 帯電装置
16Y,16M,16C,16K 露光装置
18Y,18M,18C,18K 現像装置
20Y,20M,20C,20K 一次転写装置
22Y,22M,22C,22K 感光体ドラムクリーナー
24 中間転写ベルト
25 ベルト張架装置
26c テンション・ステアリングロール
26a 駆動ロール
26b,26d,26e 支持ロール
28 バックアップロール
30 二次転写装置
32 ベルトクリーナー
34 搬送装置
36 定着装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂又は当該熱可塑性樹脂を形成するためのモノマーと、ポリアニリンと、光酸発生剤と、溶媒と、を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記光酸発生剤がジフェニルヨードニウム塩型の化合物及びトリフェニルスルホニウム塩型の化合物から選択される少なくとも1種の化合物であり、当該化合物の対アニオンがCFSO、又はPFである、
ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
ゴム材料又は当該ゴム材料を形成するためのモノマーと、ポリアニリンと、光酸発生剤と、光酸発生剤と、溶媒と、を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項4】
前記光酸発生剤がジフェニルヨードニウム塩型の化合物及びトリフェニルスルホニウム塩型の化合物から選択される少なくとも1種の化合物であり、当該化合物の対アニオンがCFSO、又はPFである、
ことを特徴とする請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の樹脂組成物より成形されてなる樹脂成形物。
【請求項6】
形状がロール状であることを特徴とする請求項5に記載の樹脂成形物。
【請求項7】
形状がベルト状であることを特徴とする請求項5に記載の樹脂成形物。
【請求項8】
帯電ロール、中間転写ベルト、記録媒体搬送ベルト、定着ベルト又は転写ロールに用いることを特徴とする請求項5に記載の樹脂成形物。
【請求項9】
請求項7に記載のベルト状の樹脂成形物と、
前記ベルト状の樹脂成形物を内面側から回転可能に張架する複数の張架部材と、
を備えることを特徴とするベルト張架装置。
【請求項10】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段、前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段、前記潜像をトナー像として現像する現像手段、及び前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段から選択される少なくとも一つと、
を備え、
前記帯電手段、現像手段、及び転写手段の少なくとも一つが、請求項5乃至8のいずれか1項に記載の樹脂成形物を備え、
画像形成装置本体に着脱されることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項11】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記潜像をトナー像として現像する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記トナー像を前記記録媒体に定着する定着手段と、
を備え、
前記帯電手段、現像手段、転写手段、及び定着手段の少なくとも1つが、請求項5乃至8のいずれか1項に記載の樹脂成形物を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
前記転写手段が、中間転写体と、前記トナー像を中間転写体に転写する一次転写手段と、前記中間転写体に転写に転写された前記トナー像を記録媒体に転写する二次転写手段と、を備え、前記中間転写体、前記一次転写手段及び前記二次転写手段の少なくとも一つが、前記樹脂成形物を備えることとを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を、金型に塗布する工程と、
金型に塗布された前記樹脂組成物を加熱して樹脂成形物を形成する工程と、
前記樹脂組成物を金型に塗布する工程以降に、前記樹脂組成物又は前記樹脂成形物に光照射を行う工程と、
を有することを特徴とする樹脂成形物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−227934(P2009−227934A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78424(P2008−78424)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】