説明

樹脂組成物およびそれを使用した絶縁電線

【課題】細線化した絶縁電線に使用しても機械的特性、加熱老化特性、耐熱湿特性、耐油特性、柔軟特性および成形作業性に優れるとともに、埋め立てや焼却廃棄した場合に有害な物質や腐食性ハロゲン系ガスなどを発生させる恐れがなく、また電子線照射などの処理を必要としない、成形作業性に優れる樹脂組成物およびこれを用いた絶縁電線を提供する。
【解決手段】引張破断強度が50MPa以上であり、表面硬度がデュロメーターDスケールにて50〜75の範囲であることを特徴とするポリエステル系エラストマー樹脂75〜90重量%と変性ポリスチレン系エラストマー樹脂10〜25重量%からなるベースポリマー100重量部に対して、メラミンシアヌレートを3.0〜10.0重量部、フェノール系酸化防止剤を1.8〜3.0重量部、チオエーテル系酸化防止剤を1.2〜2.4重量部、リン系酸化防止剤を0.75〜1.25重量部配合したことを特徴とする樹脂組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物およびそれを使用した絶縁電線に関し、特に電気・電子機器や同軸ケーブル内などの細線に使用される樹脂組成物及びそれを使用した絶縁電線に関する。
【背景技術】
【0002】
電気・電子機器や同軸ケーブル内などに使用される絶縁電線には、機械的特性、加熱老化特性、耐熱湿特性、耐油特性および成形作業性など様々な特性が要求されている。従来の絶縁電線用材料としては、難燃剤を配合するポリオレフィンコンパウンド、ポリ塩化ビニルコンパウンド、フッ素系樹脂が使用されてきた。
【0003】
近年の環境問題で、埋め立てや焼却廃棄した場合に発生する有害な重金属や腐食性ハロゲン系ガスに恐れがあるために、前記した中でもポリオレフィンコンパウンドが重要視されてきた。
【0004】
実用化されているポリオレフィンコンパウンドにおいては、エチレン系共重合体が一般的にベースポリマーとして用いられているが、機械的特性や加熱老化特性、耐油特性がポリ塩化ビニルコンパウンド、フッ素系樹脂より劣るために、電子線架橋などの処理を行うことでそれらの弱点を補ってきた。
【0005】
しかし、エチレン系共重合体をベースポリマーとするポリオレフィンコンパウンドは、押出被覆厚を薄く(以下「細線化」という)するほど機械的特性、加熱老化特性などの弱点が露呈しやすくなる。
【0006】
その細線化した絶縁電線の機械的特性、加熱老化特性、耐油特性を満足させるため、焼却廃棄時に腐食性ハロゲン系ガスを発生させ、本来ならば近年の環境問題にそぐわない材料であるが、依然としてポリ塩化ビニルコンパウンド、フッ素系樹脂が使用され続けているのが現状である。
【0007】
さらに、フッ素系樹脂に限って言えば、機械的特性に優れるために柔軟特性に乏しく、また汎用押出機が使用できないなどの特殊な押出技術が必要であり成形作業性の悪い材料となっている。
【0008】
これらの現状を満足させるために、従来の耐熱電線として、結晶融点とビカット軟化点の数値が、実質的なハードセグメントの重量%の数値と特定の関係にあるポリエステル系エラストマー樹脂を電気絶縁材料として用いたものがある(特許文献1)。また、ポリエステル系エラストマー樹脂に特定のゴム状重合体を配合することを特徴とした絶縁材料もある(特許文献2)。
【特許文献1】特開2000−228120号公報
【特許文献2】特開2002−275360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1および特許文献2の樹脂組成物およびそれを使用した絶縁電線は、ポリエステル系エラストマー樹脂の弱点でもある熱分解に弱いエーテル結合部と加水分解に弱いエステル結合部の処法としては十分ではなかった。すなわち、機械的特性は満足するが、加熱老化特性、耐熱湿特性を満足するには十分ではなかった。
【0010】
従って、本発明の目的は、細線化した絶縁電線に使用しても機械的特性、加熱老化特性、耐熱湿特性、耐油特性、柔軟特性に優れるとともに、埋め立てや焼却廃棄した場合に有害な物質や腐食性ハロゲン系ガスなどを発生させる恐れがなく、また電子線照射などの処理を必要としない、成形作業性に優れる樹脂組成物およびこれを用いた絶縁電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1]本発明は、上記目的を達成するため、引張破断強度が50MPa以上であり、表面硬度がデュロメーターDスケールにて50〜75の範囲であることを特徴とするポリエステル系エラストマー樹脂75〜90重量%と変性ポリスチレン系エラストマー樹脂10〜25重量%からなるベースポリマー100重量部に対して、メラミンシアヌレートを3.0〜10.0重量部、フェノール系酸化防止剤を1.8〜3.0重量部、チオエーテル系酸化防止剤を1.2〜2.4重量部、リン系酸化防止剤を0.75〜1.25重量部配合したことを特徴とする樹脂組成物を提供する。
【0012】
上記構成の樹脂組成物によれば、引張破断強度が50MPa以上であり、表面硬度がデュロメーターDスケールにて50〜75の範囲であることを特徴とするポリエステル系エラストマー樹脂を使用することで機械的特性、加熱老化特性、耐油特性を高めることができ、変性ポリスチレン系エラストマー樹脂を使用することで、成形作業性、柔軟特性、耐熱湿特性を高めることができる。また、高い機械的特性を得ることで電子線架橋などの処理を行う必要がなくなる効果もある。さらにメラミンシアヌレートを使用することで成形作業性を高め、フェノール系、チオエーテル系、リン系の三元系からなる酸化防止剤を使用することで、加熱老化特性、耐油特性、耐熱湿特性を更に高めることができる。
【0013】
[2]上記発明において、前記変性ポリスチレン系エラストマー樹脂は、無水マレイン酸により変性されていることを特徴とする上記[1]に記載の樹脂組成物であってもよい。
【0014】
上記構成の樹脂組成物によれば、ポリスチレン系エラストマー樹脂に無水マレイン酸を官能基として導入したことにより、相容化剤としての役割を担い、コンパウンド製造過程において樹脂組成物の界面張力が低下させることでミクロな分散を可能とすることができる。
【0015】
[3]また、本発明は、上記目的を達成するため、上記[1]または[2]の樹脂組成物を、導体の周囲に押し出して前記導体を被覆したことを特徴とする絶縁電線を提供する。
【0016】
上記構成の絶縁電線によれば、ポリ塩化ビニルコンパウンドやフッ素系樹脂を被覆材料とした絶縁電線のように埋め立てや焼却廃棄した場合に有害な物質や腐食性ハロゲン系ガスを発生させる恐れがなく、ポリオレフィンコンパウンドを被覆材料とした絶縁電線のように細線化、特に、0.25mm以下の厚さで押出被覆しても機械的特性、加熱老化特性、耐熱湿特性、耐油特性の弱点を露呈しない、両方の特徴を満足させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、機械的特性、加熱老化特性、耐熱湿特性、耐油特性および柔軟特性に優れるとともに、埋め立てや焼却廃棄した場合に有害な物質や腐食性ハロゲン系ガスなどを発生させる恐れがなく、また電子線照射などの処理を必要としない成形作業性に優れた樹脂組成物およびこれを用いた絶縁電線を提供することができる。また、上記の樹脂組成物を用い、同様に、機械的特性、加熱老化特性、耐熱湿特性、耐油特性および柔軟特性に優れるとともに、埋め立てや焼却廃棄した場合に有害な物質や腐食性ハロゲン系ガスなどを発生させる恐れがなく、また電子線照射などの処理を必要としない成形作業性に優れた細線化された絶縁電線を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1の実施の形態)
本発明の実施の形態に係る樹脂組成物は、引張破断強度が50MPa以上であり、表面硬度がデュロメーターDスケールにて50〜75の範囲であることを特徴とするポリエステル系エラストマー樹脂75〜90重量%と変性ポリスチレン系エラストマー樹脂10〜25重量%からなるベースポリマー100重量部に対して、メラミンシアヌレートを3.0〜10.0重量部、フェノール系酸化防止剤を1.8〜3.0重量部、チオエーテル系酸化防止剤を1.2〜2.4重量部、リン系酸化防止剤を0.75〜1.25重量部配合したものからなっている。
【0019】
ポリエステル系エラストマー樹脂としては、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステルから構成されるハードセグメントと、脂肪族ポリエーテルから構成される非晶性ソフトセグメントとをブロック共重合させたものである。
【0020】
変性ポリスチレン系エラストマー樹脂としては、ポリスチレンから構成される結晶性ハードセグメントと、水素添加したエチレン−ブチレン共重合体から構成される非晶性ソフトセグメントとをブロック共重合させたものであり、反応性官能基として無水マレイン酸を導入したものである。
【0021】
メラミンシアヌレートとしては、平均粒子径10μm以下、好ましくは5μm以下の小さい粒子が好ましい。また高級脂肪酸、シランカップリング剤、ポリビニルアルコールなどで表面処理を施したものが樹脂組成物との親和性、分散性を高められるために好ましいが、表面処理されていないものも問題なく使用できる。また、メラミンシアヌレートを使用することにより、押出機中での樹脂組成物の粘度が一定となり、成形作業性が向上する。その影響で、機械的特性、加熱老化特性などの引張特性を向上させることができる。具体的には粒径1〜5μmであり、表面処理されていないメラミンシアヌレートがより好ましい。
【0022】
フェノール系酸化防止剤としては、トリエチレングリコール−ビス(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどがある。具体的にはペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
【0023】
チオエーテル系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステリアル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリト−ルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジ−トリデシル−チオ−ジプロピオネートなどがある。具体的にはジ−トリデシル−チオ−ジプロピオネートが好ましい。
【0024】
リン系酸化防止剤としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、トリスノニルフェニルフォスファイトなどがある。具体的にはトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトが好ましい。
【0025】
(第1の実施の形態の効果)
本発明の実施の形態に係る樹脂組成物の構成要件であるフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、リン系酸化防止剤の一つでも欠けるか、もしくは請求の範囲内より少ない場合には加熱老化特性および耐熱湿特性の低下が著しいが、本発明の実施の形態に係る樹脂組成物は、上記示したフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、リン系酸化防止剤をそれぞれ所定の重量部だけ有して構成されているので、加熱老化特性および耐熱湿特性に優れる。
【0026】
また、配合重量部はフェノール系を最も多く、次にチオエーテル系、リン系を最も少ない組み合わせで、かつ請求した範囲内において使用することにより、加熱老化特性および耐熱湿特性を向上させる相乗効果を出すことができる。
【0027】
尚、酸化防止剤を請求した範囲以上で使用しても、加熱老化特性は飽和状態であり、機械的特性の低下する原因となる。
【0028】
(第2の実施の形態)
第2の実施形態に係る樹脂組成物は、第1の実施形態に係る樹脂組成物において、変性ポリスチレン系エラストマー樹脂が無水マレイン酸にて変性されているものである。
【0029】
(第2の実施の形態の効果)
ポリスチレン系エラストマー樹脂に無水マレイン酸を官能基として導入したことにより、よりミクロ分散性を向上させることが可能となる。そのミクロな分散が可能なことにより、より高い機械的特性を得ることができる。変性されていないポリスチレン系エラストマーでは、このミクロ分散が不十分であり、機械的特性低下の原因となる。
【0030】
(第3の実施の形態)
第3の実施形態に係る樹脂組成物は、導体の周囲に0.25mm以下の厚さで押出被覆したことを特徴とする絶縁電線であって、前記絶縁体が請求項1または2の樹脂組成物を有して構成されている絶縁電線である。
【0031】
(第3の実施の形態の効果)
請求項1または2の樹脂組成物を使用することにより、従来の技術で示したようにポリ塩化ビニルコンパウンド、フッ素系樹脂が使用されている0.25mm以下の厚さで押出被服した絶縁電線に使用できる。すなわち、細線化された絶縁電線でも機械的特性、加熱老化特性、耐熱湿特性、耐油特性を満足させる効果を有する。
【0032】
(実施例)
表1は、本発明の第1〜第3の実施の形態に係る樹脂組成物を表に示す処方に従って配合し、2軸押出機で混練して作製した樹脂組成物の配合及び後述する方法で作製した絶縁電線を後述する試験評価法により評価した結果を示すものである。
【0033】
表2及び表3は、表1と対比するための比較例を示すもので、表1と同様に、2軸押出機で混練して作製した樹脂組成物の配合及び後述する方法で作製した絶縁電線を後述する試験評価法により評価した結果を示すものである。
【0034】
本発明の実施の形態に係る樹脂組成物の製造では、ポリエステル系エラストマー樹脂と変性ポリスチレン系エラストマー樹脂とを均一に溶融させる。また、そのベースポリマーにメラミンシアヌレートや各酸化防止剤を均一に分散させるために、2軸押出機での混練を行なった。
【0035】
こうして得られた樹脂組成物を、サイズ40mm(L/D=24.1)の一般的に使用されている電線製造用押出成形機により、導体径0.48mm(7/0.16)の軟銅線上に、厚さ0.19mmで押出被覆(ダイス温度270℃、引取速度約60m/min)して絶縁層を形成し、実施例1〜3および比較例1〜7の絶縁電線を作製した。また実施例4については、実施例1の樹脂組成物を使用して、前記同様の押出成形機、導体を用い、厚さ0.13mmで押出被覆(ダイス温度270℃、引取速度約100m/min)して絶縁層を形成し、絶縁電線を作製した。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】

【表3】

(備考)
ポリエステル系エラストマー(D72) 商品名「ハイトレル7277」(登録商標)東レ・デュポン(株)
ポリエステル系エラストマー(D47) 商品名「ハイトレル4777」(登録商標)東レ・デュポン(株)
変性ポリスチレン系エラストマー 商品名「タフテックM1913」(登録商標)旭化成ケミカルズ(株)
メラミンシアヌレート 商品名「MC−6000」日産化学工業(株)
フェノール系酸化防止剤 商品名「アデカスタブAO−60」(登録商標)(株)ADEKA
チオエーテル系酸化防止剤 商品名「アデカスタブAO−503A」(登録商標)(株)ADEKA
リン系酸化防止剤 商品名「アデカスタブHP−10」(登録商標)(株)ADEKA
尚、( )内の(D72)(D47)は表面硬度デュロメーターDスケール値を示す。
【0039】
(試験方法および評価方法)
機械的特性:JIS C3005に規定される方法に基づき試験を行った。絶縁層である樹脂組成物について、標線20mm、引張速度50mm/minの条件で測定し、引張強度(MPa)および引張伸び(%)を算出した。
加熱老化特性:JIS C3005に規定される方法に基づき、温度は125℃定格(158℃×168h)で試験を行った。その後、前記した引張特性の条件で測定を行い、引張強度残率(%)および引張伸び残率(%)を算出した。
X=C/C×100
ここに, X:残率(%)
:加熱前の平均値
:加熱後の平均値
耐熱湿特性:恒温恒湿器を用い、温度85℃および湿度85%の条件で500時間の試験を行った。試験片は絶縁層である樹脂組成物を導体に被覆した絶縁電線を用いた。その後、前記した引張特性の条件で測定を行い、引張強度残率(%)および引張伸び残率(%)を算出した。
耐油特性:JIS C3005に規定される方法に基づき試験を行った。ただし試験片は絶縁層である樹脂組成物を導体に被覆した絶縁電線を、また試験油としてはIRM902を用いた。試験油温度70℃に4時間浸漬させた後、前記した引張特性の条件で測定し、引張強度残率(%)および引張伸び残率(%)を算出した。
加熱巻付:JIS C3005に使用される加熱試験機を用い、温度は125℃定格(158℃×168h)の試験を行った。試験片は絶縁層である樹脂組成物を導体に被覆した絶縁電線を用いた。その後、Φ1.7mmのマンドレルに10ターン巻き付け、割れ・亀裂の有無を目視で検査した。導体が露出していない場合は、Φ1.7mmのマンドレルに巻き付けたまま、水中にて交流電圧を1kV×1min加える耐電圧試験を行い、目視できないような割れ・亀裂を検査した。
【0040】
(第1〜第3の実施の形態の効果)
表1の実施例1〜4に示されるように、所定の割合で含むベースポリマーに、所定のメラミンシアヌレート、所定の各酸化防止剤で配合された樹脂組成物で被覆してなる本発明の実施の形態に係る絶縁電線は、被覆厚さ0.25mm以下であってもいずれも優れた機械的特性、加熱老化特性、耐熱湿特性、耐油特性、柔軟特性を有している。
【0041】
尚、優れた試験結果とは、機械的特性において引張強度30MPa以上、引張伸び300%以上である。また加熱老化特性、耐熱湿特性、耐油特性においては引張強度残率70%以上、引張伸び残率70%以上のことである。柔軟特性においてはΦ1.7mmのマンドレルに10ターン巻き付けたまま、水中にて交流電圧を1kV×1min加える耐電圧試験に合格することである。
【0042】
これに対し、表2及び表3で示す比較例1〜7の絶縁電線は、上記したような特性の一部を満足することはできないことが結果から明らかである。
【0043】
比較例1の樹脂組成物では、各酸化防止剤が請求の範囲(フェノール系酸化防止剤1.8〜3.0重量部、チオエーテル系酸化防止剤1.2〜2.4重量部、リン系酸化防止剤0.75〜1.25重量部)よりもそれぞれ少ないために加熱老化特性、耐熱湿特性、柔軟特性に劣っている。
【0044】
一方、比較例2の樹脂組成物では、各酸化防止剤が請求の範囲よりもそれぞれ多いために機械的特性のうち引張強度が劣っている。
【0045】
比較例3の樹脂組成物では、メラミンシアヌレートを配合していないことにより加熱老化特性、耐熱湿特性に劣っている。
【0046】
一方、比較例4の樹脂組成物では、メラミンシアヌレートが請求の範囲3.0〜10.0重量部よりも多く配合しているために機械的特性のうち引張強度が劣っている。
【0047】
比較例5の樹脂組成物では、2種類のベースポリマーの請求の範囲の割合よりもポリエステル系エラストマー樹脂が少なく、変性ポリスチレン系エラストマー樹脂が多いために、機械的特性のうち引張強度、加熱老化特性、耐油特性に劣っている。
【0048】
一方、比較例6の樹脂組成物では、2種類のベースポリマーの請求の範囲の割合よりもポリエステル系エラストマー樹脂の割合が多く、変性ポリスチレン系エラストマー樹脂が少ないために、耐熱湿特性に劣っている。
【0049】
比較例7の樹脂組成物では、請求の範囲である引張破断強度50MPa以上であり、表面硬度がデュロメーターDスケールにて50〜75のポリエステル系エラストマー樹脂を使用していないために機械的特性のうち引張強度が劣っている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引張破断強度が50MPa以上であり、表面硬度がデュロメーターDスケールにて50〜75の範囲であることを特徴とするポリエステル系エラストマー樹脂75〜90重量%と変性ポリスチレン系エラストマー樹脂10〜25重量%からなるベースポリマー100重量部に対して、メラミンシアヌレートを3.0〜10.0重量部、フェノール系酸化防止剤を1.8〜3.0重量部、チオエーテル系酸化防止剤を1.2〜2.4重量部、リン系酸化防止剤を0.75〜1.25重量部配合したことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記変性ポリスチレン系エラストマー樹脂は、無水マレイン酸により変性されていることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2の樹脂組成物を、導体の周囲に押し出して前記導体を被覆したことを特徴とする絶縁電線。

【公開番号】特開2008−143962(P2008−143962A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330244(P2006−330244)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(591004146)平河ヒューテック株式会社 (18)
【Fターム(参考)】