説明

樹脂組成物の製造方法およびその樹脂組成物

【課題】高アスペクト比を有するナノオーダレベルの無機微粒子を用いた場合においても、優れた分散性、解膠能力を有し、着色や分子量低下の懸念が小さく、かつ弾性率や衝撃強度、さらには熱膨張性に優れた樹脂組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも無機粒子、熱可塑性樹脂及び有機溶媒とを含む混合物を製造し、次いで、この混合物に対してビーズミルや高圧乳化処理などの手段によって力学的付加を加え、前記無機粒子の解膠を生ぜしめる。次いで、前記混合物から溶媒のみを留去させ、目的とする樹脂組成物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物の製造方法、及び樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の各種部材を樹脂から構成することにより、前記部材さらには前記自動車の軽量化に寄与することは広く知られている。最近では、これまで銅板が用いられていた自動車外板パネルにおいても、軽量化を主たる目的としてポリアミド系材料が適用されるなど、軽量化に果たす樹脂化の役割は大きい。外板パネル以外においても、燃料タンクがこれまでの銅板製のものから、ポリエチレンを主たる材料にした樹脂製の中空容器に変わるなど、金属材料から樹脂材料への代替は増加の傾向にある。
【0003】
しかしながら、その一方でウインドシールドをはじめとするガラス部材においては、樹脂化は殆ど進んでいないのが現状である。ガラスが有する透明性、耐衝撃性は、すでにポリカーボネート樹脂によって得られているものの、熱に対する樹脂の膨張量(例えば、線膨張係数)が、ガラスのそれに比べてきわめて大きいこと、曲げ剛性でガラスに劣ることから、ガラスに代わる樹脂は一般的には得られていない。
【0004】
熱膨張量の低減には、ガラス繊維やタルク等の無機充填剤による補強が知られているが、透明性確保の為には、非強化樹脂を選択せざるを得ない。すなわち、透明性を有し、且つ熱膨張量が小さく、剛性が高い、という樹脂は得られていないというのが現状である。
【0005】
一方、樹脂の諸物性を向上させる手法として、樹脂の特徴である柔軟性、低密度や成形性などを保持しつつ、無機化合物の特徴である高強度、高弾性率、耐熱性、電気特性などを併せ持つ材料の開発が盛んに行われており、このような物性改良手法として、従来のガラス繊維やタルクなどによる強化樹脂に代わり、ナノオーダレベルの無機微粒子を用いた複合材料、いわゆるポリマーナノコンポジット(樹脂組成物)が注目されてきている。このような複合材料の例としては、「複合材料及びその製造方法(特許第2519045号/豊田中研)」や「ポリアミド複合材料及びその製造方法(特公平7−47644号/宇部興産他)」、「ポリオレフイン系複合材料およびその製造方法(特開平10−30039号/昭和電工)」などが挙げられる。
【0006】
上記のようなナノオーダレベルの無機微粒子を用いたポリマーナノコンポジットでは、いずれの場合も、微細な無機微粒子の分散性向上が物性向上の大きなポイントのひとつであり、無機微粒子の分散性を高効率、低コストで向上させるため、様々な分散方法が検討、提案されている。
【0007】
このような分散方法の一手段として混練法が挙げられる。前述の特公平7−47644号や特開平10−30039号がこれにあたり、溶融状態のポリマーとナノオーダレベルの無機微粒子を混練機などを用いて溶融混練するものである。また混練法において分散性を更に向上させる方法として、層状クレーを極性溶媒に分散しておきこれをポリマーの溶融状態で接触させる「樹脂複合材料の製造方法(特開平11−310643号/豊田中研)」や、混練する際に無機微粒子とポリマーに超臨界流体を接触させる「樹脂組成物およびその製造方法(特開2000−53871号/東レ)」が提案されている。
【0008】
これらの方法では、無機微粒子やポリマーの改質、混練時の溶媒や超臨界流体の添加などの工夫により、比較的低コストでありながら分散性はある程度向上するものの、未だ透明性を保持するに十分な分散性が得られているとは言い難く、物性の改良代も十分とは言い難い。
【0009】
このような理由から、「樹脂ウィンドウおよびその製法(特開平11−343349号)」においては、ポリマーを溶剤に溶解し、このポリマー溶液と溶剤に分散した無機微粒子を十分混合した後、コンポジットを析出させる手法が述べられているが、この手法においても無機微粒子の一部が凝集することを避けられず、高い透明性を得るには至っていない。これは無機微粒子の表面改質が不十分であるためと推察される。また、得られた樹脂組成物の機械物性はある程度向上するものの、前記無機微粒子の低アスペクト比に起因して、十分なレベルにまでは達していない。
【0010】
アスペクト比の高い無機微粒子としてはカーボンナノチューブが挙げられ、例えばハイペリオンの「熱可塑性エラストマー組成物および樹脂組成物」(特開平7−102112号)では、カーボンナノチューブを樹脂に添加した樹脂組成物を開示している。この場合、前記カーボンナノチューブの高いアスペクト比から高機械物性が期待される。しかしながら、カーボンナノチューブの可視光域の吸収係数は大きく、数%の添加量でコンポジットは黒く着色してしまい、十分な光線透過量は得られない。
【0011】
また他の高アスペクト比無機粒子を用いた例として、岐阜県他の「針状ベーマイト及び針状アルミナ並びにそれらを含有する樹脂組成物」(特開2003−54941号)が挙げられる。かかる技術では、長軸長さ1〜10μm、アスペクト比が40〜70の針状ベーマイト及び針状アルミナを混練機で溶融混練することにより樹脂組成物を作製し、これまでのアスペクト比の低いフィラーを含有する樹脂組成物よりも高い機械物性を実現している。しながら、粒子サイズが可視光線波長に比べ相当に大きく、また分散性も十分でないため、十分な透明性を得るには至っていない。
【0012】
また、同様に高アスペクト比のアルミナ粒子を用いた例として、帝人の「被覆繊維状酸化アルミニウムフィラー及びこれを含む熱可塑性樹脂組成物」(特開2004−149687号)が挙げられる。かかる技術ではナノオーダレベルの粒子を用い、これをシランカップリング剤で表面処理し分散性を向上し、フィルム等コンポジット材の表面性や弾性率、軟化温度の向上を図っている。しかしながら後述するように、シランカップリング剤処理ではその反応性の点から十分な分散性が期待できず、表面性の改善は期待できても透明性の点では未だ不十分である。
【0013】
以上のように様々な検討がなされているが、これらの無機微粒子を用いたポリマーナノコンポジット(樹脂組成物)では、機械物性と透明性の双方を十分なレベルで両立することは未だできていない。
【0014】
一方、可視光線波長以下でかつ高アスペクト比を有するナノオーダレベルの無機微粒子をポリマー中に良好に均一分散したポリマーナノコンポジットで達成可能と予見された。この場合、前記無機微粒子を良好に均一に分散させるために前記粒子の表面処理を行なうことが多く、一般的な表面処理剤としては、シランカップリング剤などのアルコキシ基を有するカップリング剤が用いられる。しかしながら、金属酸化物ナノ粒子は、粒子がまず水分散ゾルとして得られること、また低濃度の状態で得られることが多く、水分散ゾルの状態での処理は反応性の面で困難である。また、ゾルを有機溶媒へ溶媒置換後に処理する場合は、反応こそするものの、粒子は既に凝集状態にあり、一度凝集した二次粒子を一次粒子に再び分離する能力、つまりより強い解膠能力が要求される。
【0015】
このように、高アスペクト比を有するナノオーダレベルの無機微粒子を用いた場合においては、着色や分子量低下の懸念が小さく、かつさらに優れた分散性、解膠能力を有するようにすることが要求されるが、未だ実現されていないのが現状である。
【0016】
【特許文献1】特許第2519045号
【特許文献2】特公平7−47644号
【特許文献3】特開平10−30039号
【特許文献4】特開平11−310643号
【特許文献5】特開2000−53871号
【特許文献6】特開平11−343349号
【特許文献7】特開平7−102112号
【特許文献8】特開2003−54941号
【特許文献9】特開2004−149687号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、高アスペクト比を有するナノオーダレベルの無機微粒子を用いた場合においても、優れた分散性、解膠能力を有し、着色や分子量低下の懸念が小さく、かつ弾性率や衝撃強度、さらには熱膨張性に優れた樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成すべく、本発明は、
無機粒子を含む樹脂組成物の製造方法であって、
少なくとも前記無機粒子、第1の熱可塑性樹脂及び第1の有機溶媒とを含む第1の混合物を製造する第1の工程と、
前記第1の混合物に対して力学的付加を加え、前記無機粒子の解膠を生ぜしめる第2の工程と、
前記第1の混合物から溶媒のみを留去させる第3の工程と、
を具えることを特徴とする、樹脂組成物の製造方法に関する。
【0019】
本特許の目的とする樹脂組成物における透明性と力学的特性を同時に実現するためには無機粒子を樹脂組成物中に2次凝集体の殆ど無いまでに分散させることが必須であり、この点において分散剤の添加は有効な手段であるが、その解膠能力は目的を達成するに不十分である。また、分散剤は原料である無機粒子分散ゾル時に添加され、その際には高い分散状態を保持するものの、その後の工程において樹脂の溶融状態では分散剤が乖離する恐れがある。
【0020】
また、本特許の目的とする樹脂組成物における透明性を実現するためには、例えば前記無機粒子の単軸長を10nm以下にする必要があり、同時に力学的特性を得るためにアスペクト比を出来るだけ高くすることが求められる。しかし、製造コストや製造工程中に粒子が破断することを考慮すると、長軸長さはおよそ700nm程度が限界であると予測される。そこで、アスペクト比の不足分を無機粒子の添加量で補おうとした場合、製造コストと添加量増大に伴う粒子の凝集が問題となる。
【0021】
そこで通常、粒子表面の官能基と樹脂組成物の双方に親和性が高い分散剤を用いる手法がとられているが、副作用として樹脂組成物の着色、樹脂の分子量低下、コストの向上が個々に、もしくは複数発生する場合が多い。さらに致命的な課題として、分散剤を粒子表面に結合させるために、一度無機粒子分散ゾルがなるべく良好に分散するために溶媒の極性を最適化し、その上で適量に調整された分散剤を加え、さらに分散剤が十分に反応するまで、ゾル全体を十分に攪拌、保温をする必要がある。これは一般的な樹脂組成物の工業生産性を考えたとき、全体のコストを著しく増大させる主要因となり得るものである。
【0022】
このように、従来では、力学的特性と透明性をはじめとする光学的特性とを向上させる目的で、無機充填剤とともに分散剤を添加していたが、この場合において、分散効果が未だ不十分であるのと、着色や分子量低下、コスト向上といった問題を解決することは不可能であると考えられていた。
【0023】
そこで本発明において、従来技術の有する課題の解決には分散剤を用いない、もしくは可能な限り低減しても十分な分散効果が得られる製造方法の選択が有効であると考え、本願発明を想到するに至ったものである。
【0024】
すなわち、本発明では、上述のようにして、無機粒子、熱可塑性樹脂及び有機溶媒とを含む混合物を製造し、この混合物に対して力学的付加を加え、前記無機粒子の解膠を生ぜしめるようにしている。その後、前記混合物から溶媒のみを留去し、目的とする樹脂組成物を得るようにしている。このように本発明においては、従来のような分散剤を用いることなく、樹脂組成物の前駆体に相当する前記混合物に対して力学的付加を加え、それによって前記無機粒子を解膠させ、前記樹脂組成物中に高度に均一分散するようにしている。したがって、従来のような分散剤を用いた場合と比較して、前記無機粒子をより解膠させることなく高度に分散できるようになるので、目的とする樹脂組成物の着色や分子量低下に伴う機械的特性の劣化などを生じることがない。
【0025】
換言すれば、本発明の方法によって得た樹脂組成物は、無機粒子の解膠効果により、前記無機粒子が樹脂組成物中に凝集することなく極めて高度に均一分散するようになるので、着色などがなく透明性に優れるとともに、分子量低下に伴う機械的特性の劣化を防止することができる。
【0026】
なお、本発明においては、樹脂組成物中の無機粒子の高度な分散を力学的に達成しているが、必ずしも従来の分散剤の使用を否定するものではない。むしろ、本発明においては、分散剤を併用することによって、力学的付加と分散剤との相乗効果によって、目的とする樹脂組成物中に前記無機粒子を高度に均一分散させることができるようになる。
【0027】
また、上記のような力学的付加によって、無機粒子を樹脂組成物中に高度に分散させることが可能となるメカニズムに関しては未だ明らかではないが、力学的付加により生成する単一粒子表面上の官能基に対し、樹脂に完全に溶解している高分子鎖中の極性部が結合することで、粒子同士の二次凝集を抑制していることが推察される。つまり、力学的な解膠処理と化学的な解膠処理を同時に行われることになり、その結果、前記無機粒子の、前記樹脂組成物中での分散性が向上するものと考えられる。
【0028】
また、本発明に変形例として、上述のようにして得た樹脂組成物をマスターバッチとし、さらに有機溶媒及び熱可塑性樹脂を加えて希釈混練するようにしても良い。したがって、この変形例においては、目的とする樹脂組成物は以下のような工程を経て得ることができる。
【0029】
すなわち、前記第3の工程の後に、前記第1の混合物に対して第2の熱可塑性樹脂及び第2の有機溶媒を加えて第2の混合物を製造する第5の工程と、
前記第2の混合物から溶媒のみを留去する第6の工程と、
前記溶媒を留去した前記第2の混合物に対して混練処理を施す第7の工程と、
を具えることを特徴する、樹脂組成物の製造方法であり、
前記第4の工程の後に、前記第1の混合物に対して第2の熱可塑性樹脂及び第2の有機溶媒を加えて第2の混合物を製造する第5の工程と、
前記第2の混合物から溶媒のみを留去する第6の工程と、
前記溶媒を留去した前記第2の混合物に対して混練処理を施す第7の工程と、
を具えることを特徴する、樹脂組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、透明性を保持しながら力学的強度の優れる、樹脂組成物を提供することができるようになる。その結果、強度の面から不可能であった自動車の有機ガラスとして用いることができ、従来の無機ガラスに比べ、大幅な軽量化、安全性に頁献することができる。尚、前記樹脂組成物は、構造建築物の透明建築材料などのその他の用途に対しても用いることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明のその他の特徴及び利点について、発明を実施するための最良の形態に基づいて説明する。
【0032】
(無機粒子)
本発明に用いる無機粒子としては、例えば珪素酸化物、アルミニウム酸化物、鉄酸化物、亜鉛酸化物、カルシウム酸化物、チタン酸化物、錫酸化物、ジルコニウム酸化物、マグネシウム酸化物、及び硫化亜鉛、またタルク、カオリナイトなどの金属酸化物粒子を例示することができる。しかしながら、力学的特性及び光学的特性を高い次元で両立させるには、シリカ、アルミナ、ヘマタイト、チタニア、カルシアが良く、中でも結晶性の良く、ナノサイズでありながら、アスペクト比の高い粒子を作ることができるアルミナが好ましい。特に最も長軸長さの長い粒子はアルミナが好ましい。
【0033】
また、前記アルミナ粒子は、下記の一般式により表されることが好ましい。
A1203・nH20
式中のnが0のときは酸化アルミニウムを示し、α、γ、δ、θアルミナである。式中のnが1のときはベーマイトを表す。また式中のnが1を越えて3未満である場合はベーマイトと非結晶構造のアルミナ水和物との混合物を示す。これは一般に疑ベーマイトと呼ばれている。さらにnが3以上では非結晶構造のアルミナ水和物を示す。安定性、製造の容易さから、前記アルミナ粒子の中でも、αアルミナ、γアルミナ及びベーマイトが好ましい。
【0034】
なお、金属酸化物粒子の総添加量(目的とする樹脂組成物中における配合量)は要求特性(例えば、剛性、耐熱性及び耐熱膨張性など)が得られるような量であれば特に制限されないが、5〜60wt%であることが好ましく、さらには10〜30wt%であることが好ましい。5wt%未満では、前記金属酸化物粒子の配合の効果が少なく、得られる樹脂組成物の剛性、耐熱性及び耐熱膨張性などの物性の向上がほとんど認められない場合がある。また、60wt%を超えると、比重の増加が無視できなくなるばかりでなく、コスト面でも不利となり、樹脂組成物のコスト及び比重が増大してしまうという問題が生じる場合がある。また、前記金属酸化物粒子の含有量の増大に伴い、樹脂組成物の粘度が増大し、成形性が悪くなる場合がある。
【0035】
アルミナ粒子の形状は、繊維状、紡錘状、棒状、針状、筒状、柱状などの異方性を示すことが好ましく、特には、短軸長さが1〜10nmであり、長軸長さが20〜700nmであり、アスペクト比が5〜100であるような高異方性を示すことが好ましい。前記アルミナ粒子を含有させて高透明性の樹脂組成物を得ようとする場合は、特に粒子サイズは短軸長さが6nm以下であり、長軸長さが50〜700nmであることが好ましい。
【0036】
また、アルミナ粒子は中空円筒を粒子内に有した中空粒子であることが好ましい。これによって、前記アルミナ粒子の比重を低減することができ、前記アルミナ粒子を充填剤として樹脂中に含有させた場合に、得られた樹脂組成物の重量を比較的低く維持したまま、その力学的強度を向上させることができ、その高透明性を達成することができる。
【0037】
なお、上述したようなアルミナ粒子は、例えば水熱合成法によって製造することができる。
【0038】
また、本発明においては、上述したような金属酸化物粒子の他に金属粒子を用いることができる。このような金属粒子としては、アルミニウム、チタニウム、鉄、銅、金、銀、錫、モリブデン、インジウム、ニッケル、パラジウム、タングステン、銀-銅、銀-白金、カドミウムセレン、硫化亜鉛、ジンクセレン、および銅-亜鉛合金などを用いることができる。なお、このような金属粒子の総添加量についても、上記金属酸化物粒子同様に、5〜60wt%であることが好ましく、さらには10〜30wt%であることが好ましい。
【0039】
(分散剤)
本発明においては、以下に詳述するように、無機粒子、熱可塑性樹脂及び有機溶媒とを含む混合物を製造し、この混合物に対して力学的付加を加え、前記無機粒子の解膠を生ぜしめて前記無機粒子の、目的とする樹脂組成物中での分散性を向上させるようにしている。但し、本発明においては、分散剤の使用を排除するものではなく、以下に示すような化合物で前記無機粒子を処理することにより、前記無機粒子表面にさらに前記分散剤を付加せしめて、前記力学的付加との相乗作用によって前記無機粒子の、目的とする樹脂組成物中での分散性をさらに向上させるようにすることができる。
【0040】
前記分散性向上化合物としては、有機スルホン化合物、有機リン化合物、カルボン酸、無機酸及びこれらの混合物が挙げられる。
【0041】
有機スルホン化合物は特に限定されないが、分散効果からスルホン酸類が好ましい。特にアルミナに対してはパラトルエンスルホン酸又は無水パラトルエンスルホン酸が最も効果的である。
【0042】
有機リン化合物は特に限定されないが、粒子表面への反応性、化合物としての安定性、入手の容易さなどの理由から、リン酸エステル類もしくは亜リン酸エステル類もしくは環状リン化合物が好ましく、特にリン酸エステル類が好ましい。さらに好ましくは、酸性リン酸エステル類、つまり一般式ROP(O)(OH)3−n(ここでn=1または2)で表わされ、Rはアルキル基、アリール基等を示し、Rにはエーテル基などの酸素原子が含まれてもよい化合物が好適である。中でも特に好ましくは、モノフェニルアシッドホスフェート、モノエチルアシッドホスフェート、モノブチルアシッドホスフェート、モノベンジルアシッドホスフェート及びブトキシエチルアシッドホスフェートである。
【0043】
無機酸は特に限定されないが、硫酸、塩酸、硝酸、弗酸、リン酸、硼酸、炭酸及びこれらの混合物が挙げられる。特に、硫酸は脱水効果を有するため、より好ましい。
【0044】
なお、本発明の目的を達成することが出来る限りにおいて、前記化合物は、前記金属酸化物粒子に対して、共有結合、配位縮合、水素結合、静電気的な結合などのいずれの態様で結合していても良いし、前記化合物の総てがこのような態様で結合している必要はなく、少なくとも一部が結合していれば良い。
【0045】
さらに、分散剤の添加量は分散剤を用いない場合も含め、目的を達成するために必要な分散性を実現できる限りにおいて特に限定されるものではないが、本発明の主要効果であるコスト低減やその他副作用、粒子の比表面積を考慮すると、無機粒子に対して30wt%以下が好ましい。
【0046】
(溶媒)
本発明における樹脂組成物を製造する上で用いる有機溶媒は、樹脂組成物を構成する樹脂を常温常圧下で溶液に対して2wt%以上溶解するものであれば特に限定されるものではなく、任意のものを用いることができる。2wt%以上である理由は、それ以下であると、力学的付加により解膠した粒子表面に結合し、十分な化学的解膠効果を発揮するに不十分であり、また得られる樹脂組成物に対し、大量の溶媒が必要となるため、コストが増加するためである。従って好ましくは、後の樹脂組成物の製造過程において、製造されるべき樹脂と少なくとも部分的に混合可能で、溶解した樹脂組成物と前記無機粒子とが均一に混合可能なものを用いる。
【0047】
具体的には、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル類、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、1,1,2,2−テトラクロロエタン等のハロゲン化アルキル類、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類などを例示することができる。これらの有機溶剤は単独あるいは混合物で用いても良い。中でも、特に好ましいのはテトラヒドロフラン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、シクロヘキサノンである。
【0048】
(熱可塑性樹脂)
本発明で用いる樹脂組成物は、溶媒に溶解するものであれば特に限定されないが、ポリカーボネート系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、非晶性オレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂をあげることができる。透明性、耐熱性、剛性の観点から、ポリカーボネート系、メタクリル系樹脂などの熱可塑性樹脂が好ましい。
【0049】
さらに、上記熱可塑性樹脂に代えて、熱硬化性樹脂においても、キュアリングして三次元架橋される前の主鎖がリニアーな状態やオリゴマー状態であるが故に、溶媒に対して溶解性を示すものであれば、使用可能である。たとえばエポキシ樹脂、尿素樹脂などがあげられる。これらは後述の製造工程において、溶媒を除去後の熱処理において所定の架橋反応を生じさせることで樹脂組成物を得ることができる。
【0050】
このような熱可塑性樹脂は、目的とする樹脂組成物において母材を構成するものであるが、この際、上述したような無機粒子及び分散剤が付加してなる無機粒子複合体は、前記樹脂組成物において充填剤として機能する。そして、これらの充填剤は以下に詳述する本発明の製造方法に起因して、前記樹脂組成物中に解膠効果及び分散剤効果に起因して高度に均一分散するようになるので、前記樹脂組成物の透明性及び機械的特性を十分に確保することができるようになる。
【0051】
(樹脂組成物の製造方法)
本発明において、目的とする樹脂組成物を製造するに際しては、最初に、上述した無機粒子、熱可塑性樹脂及び有機溶媒を所定の容器中で混合して、これらの混合物を製造する。前記無機粒子は解鯵処理を行っていてもいなくても良い。また、無機粒子は水、酸、アルカリ、金属、有機金属錯体など、粒子の合成に必要、若しくは副生成する化合物を含んでいても良い。また、前記無機粒子は、上述した分散剤による処理を通じてその表面に前記分散剤が付加した複合体とすることもできる。
【0052】
前記容器への、前記無機粒子、前記熱可塑性樹脂及び前記有機溶媒の投入順序などにも特に規定はなく、例えば無機粒子を最初に投入し、そこに予め溶媒に溶解させた樹脂溶液を投入してもよいし、粒子と溶媒と樹脂を同時に投入してもよい。混合方法としては一般的な攪拌や超音波振動といった混合を行うとより短期間に均一な混合物を得ることができる。
【0053】
また、前記分散剤を用いる場合には、本工程の混合物の製造工程中に添加することが、分散剤を粒子表面に効果的に結合させることが出来るため好ましい。
なお、前述した攪拌、超音波振動は最終的な樹脂組成物中の粒子の分散性が目的を達成するレベルである限りにおいて、省略してもよい。
【0054】
次いで、上述のようにして得た混合物に対し、力学的付加を加えて前記無機粒子の解膠を生ぜしめる。前記力学的付加を行うための具体的な手段としては、ビーズミル処理、若しくは高圧乳化またはその双方を行う。前記ビーズミル処理はマイクロビーズミル分散装置を用いて、通常の粒子と溶媒との混合系における操作と同じように行う。前記高圧乳化では、前記混合物を所定の高圧乳化装置内に入れ、この装置を通常の手順に従って駆動させることにより行う。
【0055】
なお、高圧乳化とは、具体的には、粒子などの入った溶液をポンプで加圧し、バルブシートとバルブとの狭い間隔を超音速域の流速で通過させることにより、前記バルブシートのエッジ部でキャビテーション(空洞化現象)を発生させ、その空洞の崩壊に伴って局部的に商い圧力差が引き起こされ、液中の凝集状態にある粒子を引き裂き(ひきはがす)、凝集を1次粒子の状態まで再分散する操作を言う。また、前記解膠処理により得られる混合物に対して、樹脂組成物における粒子濃度を調整する目的で樹脂や溶媒を追添加してもよい。
【0056】
次いで、上述のようにして力学的付加を加えた後、前記混合物から、溶媒のみを留去させる。具体的には前記混合物を攪拌しながら、高温減圧下において溶媒のみをすばやく留去することによって、無機粒子若しくは無機粒子複合体が均一に分散した、目的とする樹脂組成物を得る。なお、溶剤減量とともに溶液の粘度が上昇するが、攪拌出来なくなるまで攪拌を継続する。これによって、前記樹脂組成物中における無機粒子若しくは無機粒子複合体を、凝集させることなくより均一に分散させることができるようになる。
【0057】
なお、上記工程において、溶媒留去後の混合物に対し、必要に応じて混練機により融点以上の温度で加熱混練することで、無機粒子若しくは無機粒子複合体との混合をより強固にすると共に、樹脂の結晶性を低下させ、透明性を向上させることが出来る。混練機には二軸押出成形機、一軸押出成形機、真空徹量混練押出機、ラボブラストミル等を用いることができ、樹脂組成物の組成、酸化性、溶融粘度に応じて選択決定する。
【0058】
また、混練により生成した樹脂組成物をマスターバッチとして、適宜追加の熱可塑性樹脂及び有機溶媒を加えた後、混練して得た混合物を目的とする樹脂組成物とすることもできる。この場合は分散性を保持したまま、任意の粒子含有量の樹脂組成物を得るという効果を得ることができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例および比較例により本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本発明において採用した分析方法および分析機器は下記の通りである。
【0060】
(1)粒子形状、粒子径
透過型電子顕微鏡(TEM)にて、粒子形状を観察した。
<観察方法(粒子形状)>
試料を純水(2段蒸留水)にて希釈後、超音波洗浄器にて15分間かけた。その後銅メッシュ上の親水処理済カーボン被覆コロジオン膜に試料を塗布し、乾燥させ観察試料を準備した。透過型電子顕微鏡にてその試料の電子顕微鏡像を120KV、70mA、10万倍にて撮影して、観察した。
・TEM用銅メッシュ:マイクログリット150−Bメッシュ、カーボン補強済み 応研商事株式会社
・透過型電子顕徹鏡:JEOUEM−1200EXII 日本電子株式会社
<観察方法(粒子径)>
透過型電子顕微鏡にて撮影した写真を市販のスキャナーで電子データとして取り込み、市販のパソコン上で長さを測るソフトを用いて粒子径を測定した。短軸径、長軸径、厚さ、一辺の長さ共にそれぞれ無作為に100個体選び、測定した。
ソフト名:Scion Image For Windows(登録商標)Scion corp.
【0061】
(2)アルミナの同定
粉末X繰回折装置を用いた。
<観察方法>
試料を測定用無反射板に圧粉することにより、これを観察試料とし、X線解析装置にて測定し、アルミナのJCPDS(Joint Committee on Powder Diffraction Standards)と比較することにより同定した。
・X線解析装置:RINT−2000理学電機
【0062】
(3)粒子表面改質量の定性、定量
・TG−DTA、IR、NMRを用いて行った。
・TG−DTA:TG−DTA20セイコーインスツルメンツ
<分析条件>
測定温度:室温〜900℃、昇温速度10℃/分
・NMR:JNMLA−400 日本電子、1H、13Cを測定した。測定溶媒CDC13
【0063】
(4)力学的物性、光学的物性測定
得られた樹脂組成物を乾燥して粒状にし、加熱プレス成形して厚さ2mmの試験片フィルムを得る。得られたシートについて曇価、曲げ弾性率、IZOD衝撃強度、熱線膨張係数を測定した。
・曇価は、ヘーズメーター(村上色彩研究所製 HM−65)で計測した。
・曲げ弾性率は、オートグラフ(島津製作所(株)製 DSC−10T)で計測した。
・IZOD衝撃強度は、IZOD衝撃試験装置(安田精機社製 95−LFR)で切欠き入り、23℃にて測定した。
・熱線膨張係数は、熱機械測定装置(セイコー電子工業(株)製 TMA120C)で計測した。
【0064】
(5)粒子の合成
針状ベーマイト粒子
機械攪拌機を備えたテフロン(登録商標)製ビーカーに塩化アルミニウム六水和物(2.0M,40ml,25℃)を入れ、恒温槽で10℃に保ちつつ、攪拌(700rpm)しながら水酸化ナトリウム(5.10M,40ml,25℃)を約6分かけて滴下した。滴下終了後さらに10分間攪拌を続け、攪拌終了後、溶液のpHを測定した(pH=7.08)。溶液をテフロンライナーを備えたオートクレーブに代え密栓し、オーブンで180℃、24時間経時させた。加熱終了後、前記オートクレーブを流水で冷やし、遠心分離(30000rpm,30min)で上澄み除去後、遠心水洗3回、水メタノール混合溶液(体積沈水:メタノール、0.5:9.5)遠心洗浄を1回行った。その後、凍結乾燥機を用いて乾燥させることにより無色結晶を得た。この無色結晶はX線回折の結果、針状ベーマイトであることが判明した。また、TEMを用いて粒子のサイズを調べたところ、長軸長さ約125nm、短軸長さ(径)約5nm、アスペクト比が約20〜30の針状であることが判明した。
【0065】
(6)樹脂組成物の製造
(実施例1)
前記針状ベーマイト粒子の製造工程において(第4の熱処理)工程を終えた粒子/水複合体(ベーマイト/水=重量比1/1)を25.7g量り採り、市販の大量循環型粉砕機の試料室に投入し、次いでポリカーボネート(PC)/テトラヒドロフラン(THF)溶液(PC濃度10wt%)を300g量り採り、試料室に投入する。ビーズミル処理を20分間行い、ベーマイト濃度3.9wt%、PC濃度9.2wt%の均一なゾルを得た。次いで、減圧ラインを用いて、系内を徐々に減圧しながら溶媒を留去し、この後さらに反応容器温度を上げ80℃、3時間保持し、完全に溶媒を除いて、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を乾燥し、これを真空微量混練押出機(井元製作所製、IMC−1170B型)を用いて溶融混練した。混練条件は真空チャンバー内10mmHg以下の減圧度、炉内及びローター温度250℃、ローター回転速度15rpmで10分間行った。混練後、得られた樹脂組成物を乾燥し、熱プレス機にて各種試験片を得た。TG−DTAによる測定結果より、灰分は30.5wt%であることが判った。
【0066】
(実施例2)
前記(実施例1)の製造工程中のPC/THF溶液投入後、ビーズミルを行う工程に替えて、ビーズミル処理を10分間行った後にp−トルエンスルホン酸を1.90g(ベーマイトに対して15wt%)添加し、再びビーズミル処理を10分間行ったこと以外は前記(実施例1)と同様にして樹脂組成物及び各種試験片を得た。TG−DTAによる測定結果より、灰分は29.2wt%であることが判った。
【0067】
(実施例3)
前記(実施例2)の製造工程中に使用したp−トルエンスルホン酸に替えて、城北化学製 モノブトキシエチルアシッドホスフェートを1.29g(ベーマイトに対して10wt%)添加したこと以外は前記(実施例2)と同様にして樹脂組成物及び各種試験片を得た。TG−DTAによる測定結果より、灰分は30.2wt%であることが判った。
【0068】
(実施例4)
前記(実施例2)の製造工程中に使用したp−トルエンスルホン酸に替えて、城北化学製 モノペンジルアシッドホスフェートを1.29g(ベーマイトに対して10wt%)添加したこと以外は前記(実施例2)と同様にして樹脂組成物及び各種試験片を得た。TG−DTAによる測定結果より、灰分は29.9wt%であることが判った。
【0069】
(実施例5)
前記(実施例2)の製造工程中に使用した針状ベーマイト粒子に替えて、日産化学株式会社製コロイダルシリカMEE−ST(直径10−20nm)をシリカ/メチルエチルケトン(MEE)濃度が50wt%となるように乾燥したものを添加したこと以外は前記(実施例2)と同様にして樹脂組成物及び各種試験片を得た。TG−DTAによる測定結果より、灰分は31.0wt%であることが判った。
【0070】
(比較例1)
前記(実施例1)の製造工程中のPC/THF溶液を投入するのに替えて、同量のTHF溶液を添加し、ビーズミル処理後にPCを加えたこと以外は前記(実施例1)と同様にして樹脂組成物及び各試験片を得た。TG−DTAによる測定結果より、灰分は30.3wt%であることが判った。
【0071】
(比較例2)
前記(実施例2)の製造工程中のPC/THF溶液を投入するのに替えて、同量のTHF溶液を添加し、ビーズミル処理後にPCを加えたこと以外は前記(実施例1)と同様にして樹脂組成物及び各種試験片を得た。TG−DTAによる測定結果より、灰分は29.5wt%であることが判った。
【0072】
(比較例3)
前記(実施例2)の製造工程中に使用した針状ベーマイト粒子に替えて、サンゴバン・セラミック・マテリアルズ株式会社製 ガラス繊維サーフェストランドREV4(直径13μm、長さ70μm)12.9gとTHF12.9を添加し、さらに製造工程中のPC/THF溶液を投入するのに替えて、同量のTHF溶液を添加し、ビーズミル処理後にPCを加えたこと以外は前記(実施例2)と同様にして樹脂組成物及び各種試験片を得た。
TG−DTAによる測定結果より、灰分は31.2wt%であることが判った。
【0073】
(比較例4)
前記(比較例3)の製造工程中に使用したガラス繊維に替えて、日産化学株式会社製 コロイダルシリカ MEK−ST(直径10−20nm)をシリカ/メチルエチルケトン(MEK)濃度が50wt%となるように乾燥したものを添加したこと以外は前記(比較例3)と同様にして樹脂組成物及び各種試験片を得た。TG−DTAによる測定結果より、灰分は30.0wt%であることが判った。
【0074】
(比較例5)
前記(実施例1)の製造工程中に添加した針状ベーマイト粒子に替えて、同量の水を添加したこと以外は前記(実施例1)と同様にして樹脂組成物及び各種試験片を得た。TG−DTAによる測定結果より、灰分は32wt%であることが判った。
【0075】
(評価結果)
各実施例、比較例の評価結果を表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
表1から明らかなように、本発明の方法に従って製造した樹脂組成物は、透明性、曲げ弾性率、衝撃強度及び熱膨張係数などの機械的特性に優れていることが分かる。また、比較例1〜4では、ビーズミル処理を実施しているにも拘らず、本発明と異なり、無機粒子、熱可塑性樹脂及び有機溶媒の混合物に対して実施しているものではないため、たとえ所定の分散剤を用いた場合においても、本発明の方法で製造した樹脂組成物に比較して、透明性や衝撃強度などで劣化していることが分かる。さらに、無機粒子を含まないPC単体からなる比較例5の樹脂組成物では、実施例で得た樹脂組成物に比較して曲げ弾性率や熱線膨張係数などの諸特性において劣化していることが分かる。
【0078】
以上、具体例を挙げながら本発明を詳細に説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
【0079】
例えば、本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、酸化防止剤及び熱安定剤(例えば、ヒンダードフェノール、ヒドロキノン、チオエーテル、及びこれらの置換体及びその組み合わせを含む)、紫外線吸収剤(例えばレゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフケノン等)、滑剤、離型剤(例えばシリコン樹脂、モンタン酸及びその塩、ステアリン酸及びその塩、ステアリルアルコール、ステアリルアミド等)、染料(例えばニトロシン等)、顔科(例えば硫化カドミウム、フタロシアニン等)を含む着色剤、添加剤添着液(例えばシリコンオイル等)、及び結晶核剤(例えばタルク、カオリン等)などを単独又は適宜組み合わせて添加することができる。
【0080】
また、本発明で得た樹脂組成物は、他の樹脂組成物と任意の割合でブレンドすることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子を含む樹脂組成物の製造方法であって、
少なくとも前記無機粒子、第1の熱可塑性樹脂及び第1の有機溶媒とを含む第1の混合物を製造する第1の工程と、
前記第1の混合物に対して力学的付加を加え、前記無機粒子の解膠を生ぜしめる第2の工程と、
前記第1の混合物から溶媒のみを留去させる第3の工程と、
を具えることを特徴とする、樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記第3の工程の後に、前記溶媒を留去した前記第1の混合物に対して混練処理を施す第4の工程を具えることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記第3の工程の後に、前記第1の混合物に対して第2の熱可塑性樹脂及び第2の有機溶媒を加えて第2の混合物を製造する第5の工程と、
前記第2の混合物から溶媒のみを留去する第6の工程と、
前記溶媒を留去した前記第2の混合物に対して混練処理を施す第7の工程と、
を具えることを特徴する、請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記第4の工程の後に、前記第1の混合物に対して第2の熱可塑性樹脂及び第2の有機溶媒を加えて第2の混合物を製造する第5の工程と、
前記第2の混合物から溶媒のみを留去する第6の工程と、
前記溶媒を留去した前記第2の混合物に対して混練処理を施す第7の工程と、
を具えることを特徴する、請求項2に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記力学的付加は、ビーズミル及び高圧乳化の少なくとも一方の手段を用いて行うことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記第3の工程及び前記第6の工程の少なくとも一方において、前記溶媒除去は前記第1の混合物及び/又は前記第2の混合物を高温減圧下に配置して行うことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂組成物中における前記無機粒子の含有量が5〜60wt%であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記無機粒子は、金属粒子及び金属酸化物粒子の少なくとも一方を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記金属酸化物粒子は、Al203・nH20なる一般式により表されるアルミナ粒子であることを特徴とする、請求項8に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
前記アルミナ粒子は、ベーマイト、αアルミナ、及びγアルミナからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項9に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
前記アルミナ粒子は、その内部に中空円筒を有する中空粒子であることを特徴とする、請求項9又は10に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
前記有機溶媒は、前記熱可塑性樹脂を常温常圧下において、2wt%以上溶解するものから選ばれることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
前記有機溶媒は、テトラヒドロフラン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム及びシクロヘキサノンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項12に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項14】
前記無機粒子に対して、分散効果を向上させる作用を有する分散性向上化合物をその表面に吸着させる第8の工程を具えることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項15】
前記分散性向上化合物は、有機スルホン化合物、有機リン化合物、カルボン酸、無機酸及びこれらの混合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項14に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項16】
前記有機スルホン化合物はスルホン酸類であることを特徴とする、請求項15に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項17】
前記有機リン化合物はリン酸エステル類、亜リン酸エステル類及び環状リン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項15に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項18】
前記分散性向上化合物の、前記無機粒子に対する割合が30wt%以下であることを特徴とする、請求項14〜17のいずれか位置に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項19】
前記熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、及び非晶性オレフィン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする、請求項1〜18のいずれか一に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項20】
前記第1の混合物中における前記熱可塑性樹脂の配合割合が1〜50wt%であることを特徴とする、請求項1〜19のいずれか一に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか一に記載の製造方法で製造されたことを特徴とする、樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−238759(P2007−238759A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62875(P2006−62875)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】