説明

樹脂組成物の製造方法及び成形体

【課題】生分解性樹脂の分散性が良好で機械的強度や引張伸び、耐熱性に優れ、かつ、揮発性有機化合物の発生量の少ない成形体を製造することが可能な樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)生分解性樹脂と、(B−1)この(A)生分解性樹脂と相容性を有する化合物及び/又は(B−2)(A)生分解性樹脂と反応性を有する化合物と、を混練して樹脂組成物前駆体を製造する第一混練工程と、この第一混練工程で発生した揮発性成分を除去する第一脱気工程と、前記樹脂組成物前駆体と、(C)ポリオレフィン系樹脂と、を混練する第二混練工程と、この第二混練工程で発生した揮発性成分を除去する第二脱気工程と、を有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物の製造方法及びこの樹脂組成物により得られる成形体に関するものである。具体的には、生分解性樹脂を含有し、耐衝撃性に優れる樹脂組成物の製造方法及びこの樹脂組成物により得られる成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、石油資源の枯渇の問題、炭酸ガスの排出による地球温暖化問題等から、カーボンニュートラルな材料として、ポリ乳酸やポリブチレンサクシネート等の植物由来の樹脂が注目されている。しかしながら、植物由来の樹脂の機械的強度は弱いため、ポリオレフィン系樹脂とあわせて用いることが検討されている。例えば、特許文献1には、ポリオレフィン樹脂、生分解性樹脂(特許文献1に記載の「脂肪族ポリエステル系生分解性ポリマー」に該当)、及び酸又はエポキシ基含有ポリオレフィンを含有する樹脂組成物が開示されている。この樹脂組成物によれば、酸又はエポキシ基含有ポリオレフィンを使用することで、加工性や耐衝撃性、弾性率等の物性バランスに優れた組成物及び成形体を提供することが可能となる。
【特許文献1】特開2006−077063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂組成物は、生分解性樹脂の分散性が十分でなく、成形体を製造した場合に所望の機械的強度に満たない場合がある。また、この樹脂組成物より得られる成形体は、アルデヒド類等の揮発性有機化合物が発生することがある。
以上の課題に鑑み、本発明では生分解性樹脂の分散性が良好で機械的強度や引張伸び、耐熱性に優れ、揮発性有機化合物の発生量の少ない成形体を製造することが可能な樹脂組成物の製造方法及びこの樹脂組成物により得られる成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、生分解性樹脂と、ポリオレフィン系樹脂の混練を所定の方法で混練することにより、本発明の課題を解決することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には以下のようなものを提供する。
【0005】
本発明は(A)生分解性樹脂と、(C)ポリオレフィン系樹脂と、を含有する樹脂組成物の製造方法であって、
前記(A)生分解性樹脂と、(B−1)この(A)生分解性樹脂と相容性を有する化合物及び/又は(B−2)前記(A)生分解性樹脂と反応性を有する化合物と、を混練して樹脂組成物前駆体を製造する第一混練工程と、
この第一混練工程で発生した揮発性成分を除去する第一脱気工程と、
前記樹脂組成物前駆体と、前記(C)ポリオレフィン系樹脂と、を混練する第二混練工程と、この第二混練工程で発生した揮発性成分を除去する第二脱気工程と、を有する樹脂組成物の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、生分解性樹脂の分散性が良好で機械的強度や引張伸び、耐熱性に優れ、かつ、揮発性有機化合物の発生量の少ない成形体を製造することが可能な樹脂組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
[樹脂組成物の製造方法]
〔第一混練工程及び第一脱気工程〕
本発明に係る樹脂組成物の製造方法は、第一混練工程と、第一脱気工程と、第二混練工程と、第二脱気工程と、を有する。
「第一混練工程」では、(A)生分解性樹脂(以下、(A)成分ともいう)と、(B−1)この(A)生分解性樹脂と相容性を有する化合物(以下、(B−1)成分ともいう)及び/又は(B−2)(A)生分解性樹脂と反応性を有する化合物(以下、(B−2)成分ともいう)と、を混練して樹脂組成物前駆体を製造する。生分解性樹脂と相容性を有する化合物及び/又は生分解性樹脂と反応性を有する化合物と、生分解性樹脂と、を混練して樹脂組成物前駆体を製造することにより、ポリオレフィン系樹脂との相容性を向上させることが可能となる。なお、本明細書において(B−1)成分及び(B−2)成分を合わせて(B)成分ともいう。
「第一脱気工程」は、第一混練工程で発生した揮発性成分を除去する工程である。この第一脱気工程を設けることにより、得られる成形体からアルデヒド類が発生することを抑制することが可能となる。ここで、「揮発性成分」とは、混練中に発生する成分であって、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド類成分、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン等の沸点が50℃から260℃の揮発性有機化合物(VOC)成分をいう。
【0008】
上記(A)成分及び(B)成分はそれぞれ以下のものを用いることが好ましい。
<(A)成分>
第一混練工程において、使用する(A)生分解性樹脂は、植物由来の樹脂である。植物由来の樹脂としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレン−サクシネート、ポリ(ブチレン−サクシネート/アジペート)、ポリカプロラクトン、ポリ(ブチレン−サクシネート−(δ−オキシカプロエート))、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸エステル等が挙げられる。また、この(A)成分は、後述する(C)成分との共重合体や、(C)成分とのグラフト重合体であってもよい。
このうち剛性が高く、分子末端にカルボキシル基を有しているため反応性が高いこと、さらに入手し易いこと、等の理由によりポリ乳酸を用いることが好ましい。これらは単独又は組み合わせて用いることが可能である。
ここで、(A)生分解性樹脂として、ポリ乳酸を用いる場合、L体の比率が94モル%以上のものを用いることが好ましい。L体の比率をこのような範囲とすることにより融点の低下を防ぐことが可能となる。また、ポリ乳酸は、他の生分解性樹脂との共重合体であってもかまわない。他の生分解性樹脂としては、上述のポリブチレンサクシネート、ポリエチレン−サクシネート、ポリ(ブチレン−サクシネート/アジペート)、ポリカプロラクトン、ポリ(ブチレン−サクシネート−(δ−オキシカプロエート))、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸エステル等が挙げられる。
【0009】
(A)生分解性樹脂の質量平均分子量としては、1万〜50万あることが好ましく、5万〜40万であることがより好ましい。さらに好ましくは7万〜30万である。分子量を1万以上とすることにより、得られる成形体の衝撃強度を向上させることが可能となる。また、分子量を50万以下とすることにより、(A)生分解性樹脂の分散性を良好なものとすることが可能となる。
また、(A)生分解性樹脂として、ポリ乳酸を用いる場合、その分子量は6万以上が好ましい。
【0010】
(A)生分解性樹脂の合成方法としては、公知の重合方法が挙げられる。例えば、ポリ乳酸の場合、乳酸からの直接重合法、及びラクチドを介する開環重合法等が挙げられる。
ポリエチレンサクシネート及びポリブチレンサクシネートの場合、例えば、特開平6−271656号公報に記載の方法により製造することができる。すなわち、(無水)こはく酸とエチレングリコール(又は1,4−ブタンジオール)とをエステル交換してオリゴマーを得、次いで得られたオリゴマーを重縮合することにより製造することができる。
また、特開平4−189822号公報や特開平5−287068号公報に記載されているように、数平均分子量が5000以上のポリエチレンサクシネート及びポリブチレンサクシネートをジイソシアナート又はテトラカルボン酸二無水物で鎖延長させたポリマーを原料として用いてもよい。
また、ポリカプロラクトンは、ε−カプロラクトンとエチレングリコール、ジエチレングリコール等のジオールとを触媒の存在下で反応させて得られる。この反応において用いられる触媒としては、有機スズ化合物、有機チタン化合物、有機ハロゲン化スズ化合物等が挙げられる。これらの触媒を0.1ppm〜5000ppm添加し、100℃〜230℃好ましくは不活性気体中で重合させることによってポリカプロラクトンが得られる。これらの製法は、例えば、特公昭35−189号、特公昭35−497号、特公昭40−23917号、特公昭40−26557号、特公昭43−2473号、特公昭47−14739号、特開昭56−49720号、特開昭58−61119号等に開示されている。
【0011】
<(B)成分>
(B−1)成分としては、オキシメチレン、ラクチド、ヒドロキシアルカノエート、でんぷんから選ばれる少なくとも一種の化合物、これらは単独又は二種以上組み合わせて用いることが可能である。
また、(B−2)成分としては、エポキシ基を含有する化合物の重合体、不飽和カルボン酸を含有する化合物の重合体、から選ばれる少なくとも一種の化合物が挙げられる。
【0012】
(B−2)成分において、エポキシ基を含有する化合物の重合体としては、エチレンに由来する単量体単位と、エポキシ基を有する単量体に由来する単量体単位と、を有する共重合体が挙げられる。エポキシ基を有する単量体としては、例えば、グリシジルメタアクリレート、グリシジルアクリレート等のα,β−不飽和グリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル等のα,β−不飽和グリシジルエーテルを挙げることができ、好ましくはグリシジルメタアクリレートである。
このような共重合体としては、具体的には、グリシジルメタアクリレート−エチレン共重合体(例えば、住友化学製 商品名ボンドファースト)等が挙げられる。
【0013】
また、エポキシ基を有する化合物としては、グリシジルメタアクリレート−スチレン共重合体やグリシジルメタアクリレート−アクリロニトリル−スチレン共重合体、グリシジルメタアクリルレート−プロピレン共重合体が挙げられる。
上記の重合による共重合体のほかに、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、水添及び非水添のスチレン−共役ジエン系等に、エポキシ基を有する単量体を、溶液若しくは溶融混練でグラフト重合させたものを用いることも可能である。
共重合体とグラフト重合体では、エポキシ基を有する単量体の付加量を多くすることができるという点で共重合体がより好ましい。
【0014】
また、(B−2)成分において、エポキシ基を含有する化合物の重合体は、他の単量体に由来する単量体単位を有していてもよい。単量体単位としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル等の不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和ビニルエステル等が挙げられる。
【0015】
エポキシ基を含有する化合物の重合体において、エポキシ基を有する単量体に由来する単量体単位の含有量は、通常0.01質量%〜30質量%であり、より好ましくは0.1質量%〜20質量%である(ただし、エポキシ基を有するエチレン系重合体中の全単量体単位の含有量を100質量%とする)。なお、エポキシ基を有する単量体に由来する単量体単位の含有量は、赤外法により測定される。
【0016】
エポキシ基を含有する化合物の重合体のメルトフローレイト(MFR)は、通常0.1g/10分〜300g/10分であり、好ましくは0.5g/10分〜80g/10分である。ここでいうメルトフローレイトとは、JIS K 7210(1995)に規定された方法によって、試験荷重21.18N、試験温度190℃の条件で測定される。
【0017】
エポキシ基を含有する化合物の重合体の製造方法としては、公知の方法が用いられ、例えば、高圧ラジカル重合法、溶液重合法、乳化重合法等により、エポキシ基を有する単量体とエチレンと、必要に応じて他の単量体とを共重合する方法、エチレン系樹脂にエポキシ基を有する単量体をグラフト重合させる方法等を挙げることができる。
【0018】
また、不飽和カルボン酸を含有する化合物の重合体としては、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸三元共重合体(住友化学株式会社製 商標名ボンダイン)等が挙げられる。
エチレン−α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸三元共重合体は、高圧ラジカル共重合によって製造される共重合体である。α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、炭素数が3個〜8個の不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸等のアルキルエステルであって、具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸イソブチル等が挙げられる。これらのうちでも特にアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチルが好ましい。これらのコモノマーは1単独又は二種以上組み合わせて用いることもできる。
なお、エポキシ基を含有する化合物の重合体と不飽和カルボン酸を含有する化合物の重合体とでは、生分解性樹脂との反応性の観点からエポキシ基を含有する化合物の重合体を用いることがより好ましい。
【0019】
上記のほかに、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、水添及び非水添のスチレン−共役ジエン系ブロックエラストマー等に、不飽和カルボン酸を溶液若しくは溶融混練でグラフト重合させたものを用いることもできる。
共重合体とグラフト重合体では、不飽和カルボン酸の付加量が多くできるという点で共重合体がより好ましい。
【0020】
上述のように、「第一混練工程及び第一脱気工程」では上記(A)成分と上記(B−1)成分及び(B−2)成分を溶融・混練して樹脂組成物前駆体を製造し、発生した揮発性成分を除去する。
第一混練工程の樹脂温度は(A)成分と(B)成分のいずれかの成分のうちの融点が高い方の成分の融点温度以上であり、当該融点温度プラス150℃以下である。好ましくは当該融点プラス40℃以上、当該融点プラス100℃以下である。このような温度範囲とすることにより、(A)成分と(B)成分の相容化や反応を十分に進行させることが可能となる。例えば、(A)成分にポリ乳酸系樹脂、(B)成分にエポキシ基を含有する化合物の重合体、(C)成分にポリプロピレン系樹脂を用いた場合、好ましい樹脂温度は200℃以上であり、230℃以上であることがより好ましく、235℃以上であることがさらに好ましい。なお、樹脂温度の測定方法は、針状若しくは棒状の熱電対を、混練機のシリンダに設けられている樹脂出口から押し出されて直ぐの溶融樹脂、即ち樹脂組成物前駆体に接触させて測定することが可能である。
【0021】
また、第一混練工程の混練時間は、1秒〜1800秒であり、2秒〜600秒であることが好ましく、3秒〜300秒であることがより好ましい。混練時間を1秒以上とすることにより、相容化や反応を十分に行うことが可能となる。これによって得られる成形体中の(A)成分の分散粒子径が大きくなり、機械的強度が低くなることを防止することが可能となる。混練時間を1800秒以下とすることにより、各成分が熱劣化してしまうことを防止することが可能となる。これによって、得られる成形体の機械的強度が低下したり、外観が悪化してしまうことを防止することが可能となる。
【0022】
混練時間はバッチ式混練機の場合には、(A)成分と(B)成分を実質的に混練している時間を示し、連続式混練機の場合には、滞留時間分布のピーク時間を示す。ピーク時間を得る方法としては、(A)成分と(B)成分と同時に顔料を連続式混練機にホッパーから投入し、混練機の出口から押し出された溶融樹脂を一定時間毎にサンプリングし、最も着色度の高い時間を求める方法が挙げられる。
【0023】
第一脱気工程では、上記第一混練工程にて発生した揮発性成分を除去する。本発明における「揮発性成分」とは、混練中に発生する成分であって、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド類成分、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン等の沸点が50℃から260℃のVOC成分をいう。
上記揮発性成分の除去方法としては、混練機のシリンダ内の圧力を、所定の圧力まで減圧する方法や、シリンダ内の一部に吸引孔を設け、発生した揮発性成分を吸引する方法や、発生した揮発性成分を吸着剤によって吸着させる方法等が挙げられる。このうちシリンダ内を減圧する方法が好ましい。
【0024】
第一脱気工程にて減圧を行う場合、減圧を行う部分のシリンダ内の圧力を、溶融樹脂内部の圧力よりも低くすることが好ましく、シリンダ内の圧力が溶融樹脂内部の圧力の半分以下になるまで減圧することがより好ましい。通常、溶融樹脂内部の圧力は、脱気工程前の混練部で圧縮されるため、大気圧よりも高いことが多い。減圧時間は、シリンダ内に溶融樹脂が流入してから0.5秒〜600秒であり、1秒〜800秒であることがより好ましい。このような減圧時間とすることにより、第一混練工程で発生した揮発性成分を適切に除去することが可能となる。なお、減圧は真空ポンプ等により行われることが好ましい。シリンダ内の圧力は、シリンダ内圧力を直接測定できる位置に設けられている圧力計を用いて測定されることが好ましい。
なお、溶融樹脂の圧力測定方法としては、シリンダ内壁に設置した圧力センサーで、シリンダ内に溶融樹脂が充満した部分を測定する方法が挙げられる。
【0025】
また、第一脱気工程にて発生した揮発性成分の吸引を行う場合、脱気工程内のシリンダ内壁および/又はスクリュ表面に、溶融樹脂の内部と表面をかき混ぜることのできる形状を設置させることが好ましい。このような形状としては、シリンダであれば、半球状で凹形のディンプル形状や螺旋若しくは直線上の溝が挙げられる。スクリュでは、突起状の攪拌部分や順フライトに刻みや溝を設けたもの、ニーディングディスク等が挙げられる。
【0026】
〔第二混練工程及び第二脱気工程〕
そして「第二混練工程」では、第一混練工程により得られた樹脂組成物前駆体と、(C)ポリオレフィン系樹脂と、を混練し「第二脱気工程」では、第一脱気工程と同様に、第二混練工程で発生する余分な揮発性成分を脱気して樹脂組成物を得る。
【0027】
<(C)成分>
(C)ポリオレフィン系樹脂としては、オレフィンの単独重合体、少なくとも二種のオレフィンの共重合体が挙げられる。具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂などが挙げられる。このうち、ポリプロピレン樹脂であることが好ましい。これらの(C)ポリオレフィン樹脂は、単独又は二種以上を併用して用いてもよい。
【0028】
ポリエチレン樹脂としては、エチレン単独重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。
エチレン−α−オレフィン共重合体に用いられるα−オレフィンの具体例としては、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、メチルエチル−1−ブテン、1−オクテン、メチル−1−ペンテン、エチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、プロピル−1−ヘプテン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等が挙げられる。中でも、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンを用いることが好ましい。
【0029】
ポリプロピレン樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン単独重合体成分又は主にプロピレンからなる共重合体成分(以下、重合体成分(I)ともいう)と、プロピレンとエチレン及び/又はα−オレフィンの共重合体成分(以下、共重合体成分(II)ともいう)からなるポリプロピレン系共重合体等が挙げられる。これらのポリプロピレン樹脂は、単独又は二種以上を併用して用いてもよい。
【0030】
ポリプロピレン樹脂に用いられるα−オレフィンとしては、通常、炭素数4〜12のα−オレフィンであり、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。このうち1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンを用いることが好ましい。
【0031】
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−1−オクテンランダム共重合体等が挙げられる。
また、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体等が挙げられる。
【0032】
上記重合体成分(I)と、上記共重合体成分(II)と、からなるポリプロピレン系共重合体の重合体成分(I)における主にプロピレンからなる共重合体成分としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分等が挙げられる。また、プロピレンとエチレン及び/又はα−オレフィンの共重合体成分(前記共重合体成分(II))としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−1−オクテン共重合体成分等が挙げられる。
なお、上記共重合体成分(II)におけるエチレン及び/又はα−オレフィンの含有量は、通常、10質量%〜70質量%である。
【0033】
そして、前記重合体成分(I)と前記共重合体成分(II)からなるポリプロピレン系共重合体としては、例えば、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体等が挙げられる。
【0034】
本発明で用いられる(C)ポリオレフィン樹脂がポリプロピレン樹脂である場合、ポリプロピレン樹脂として、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、又は、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体を用いることが好ましい。
【0035】
(C)ポリオレフィン樹脂の製造方法は、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法による製造方法が挙げられる。重合触媒としては、例えば、チーグラー型触媒、チーグラー・ナッタ型触媒が挙げられる。また、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とアルキルアルミノキサンからなる触媒系、又はシクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とそれと反応してイオン性の錯体を形成する化合物及び有機アルミニウム化合物からなる触媒系、又は、これらの触媒を無機粒子等に担持させた担持型触媒系等が挙げられる。
【0036】
また、重合方法としては、例えば、不活性炭化水素溶媒によるスラリー重合法、溶媒重合法、無溶媒による液相重合法、気相重合法、又はそれらを連続的に行う気相−気相重合法、液相−気相重合法等が挙げられ、これらの重合方法は、回分式(バッチ式)であってもよく、連続式であってもよい。また、(C)ポリオレフィン樹脂を一段階で製造する方法であってもよく、二段階以上の多段階で製造する方法であってもよい。
特に、上記重合体成分(I)と上記共重合体成分(II)からなるポリプロピレン系共重合体の製造方法として、好ましくは、前記重合体成分(I)を製造する段階と、前記共重合体成分(II)を製造する段階と、の少なくとも二段階の工程を有する多段階の製造方法が挙げられる。
【0037】
(C)ポリオレフィン樹脂のメルトフローレイト(以下、MFRともいう)は、0.01g/10分〜400g/10分である。MFRが400g/10分を超えた場合、機械的強度が低下する傾向にある。そして、機械的強度や生産安定性の観点から、1g/10分〜400g/10分であることが好ましく、5g/10分〜200g/10分であることがより好ましく、10g/10分〜150g/10分であることが更に好ましい。本発明におけるMFRは、A.S.T.M.D1238に従って、ポリプロピレンの場合には230℃、21.2N荷重で、ポリエチレンの場合には190℃、21.2N荷重で測定した値である。
【0038】
<(D)成分>
(A)成分の分散粒子径を小さくし、得られる成形体の耐衝撃性を向上させ、かつ、(C)ポリオレフィン系樹脂との相容性をより向上させるために、第一混練工程或いは第一混練工程と第二混練工程の間に、(D)エラストマー類(以下、(D)成分ともいう)を更に添加してもよい。
(D)エラストマー類は、(C)成分以外の共重合体を用いる。例えば、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ブチルゴム、非晶性又は低結晶性のエチレン系エラストマー、非晶性又は低結晶性のプロピレン系エラストマー、ブタジエン−スチレンエラストマー、ブタジエン−アクリロニトリルエラストマー、水添及び非水添のスチレン−共役ジエン系ブロックエラストマー、ポリエステルゴム、アクリルゴム、シリコンゴム等が挙げられる。エラストマー類として、好ましくは非晶性又は低結晶性のエチレン系エラストマーである。
【0039】
上記エチレン系エラストマーは、エチレンに由来する単量体単位を主成分として含有するエラストマーであり、例えば、エチレン単独重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチレン系不飽和エステル共重合体等が挙げられる。また、共役ジエンや非共役ジエン等の多不飽和化合物とエチレンとα−オレフィンとの共重合体も挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
このようなエチレン系重合体として好ましくは、エチレンと1種類以上のα−オレフィンとの共重合体であるエチレン−α−オレフィン共重合体である。このα−オレフィンとして好ましくは、炭素数3〜12のα−オレフィンである。具体的には、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、ノルボルネン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。
【0041】
水添及び非水添のスチレン−共役ジエン系ブロックエラストマーとしては、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレンブテン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体等が挙げられる。
【0042】
エチレン系エラストマーの密度は、得られる成形体の機械的強度を高める観点から、好ましくは850kg/m3以上〜910kg/m3である。より好ましくは855kg/m3〜900kg/m3である。例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体の密度の場合、好ましくは850kg/m3以上であり、引張破断伸びを高める観点から、好ましくは910kg/m3以下である。より好ましくは855kg/m3〜900kg/m3である。ここでいう密度とは、JIS K 6760−1981に規定された方法により、アニール無しで測定される。
【0043】
エチレン系エラストマーのメルトフローレイト(MFR)は、得られる成形体の機械的強度を高める観点から、好ましくは0.1g/10分〜100g/10分である。より好ましくは0.3g/10分〜50g/10分であり、さらに好ましくは0.5g/10分〜40g/10分である。例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレイト(MFR)は、好ましくは0.1g/10分以上であり、得られる成形体の機械的強度を高める観点から100g/10分以下である。より好ましくは0.3g/10分〜50g/10分であり、さらに好ましくは0.5g/10分〜40g/10分である。
ここでいうメルトフローレイトとは、JIS K 7210(1995)に規定された方法によって、試験荷重21.18N、試験温度190℃の条件で測定される。
【0044】
エチレン系エラストマーの分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、得られる成形体の機械的強度を高める観点から、好ましくは1.8〜3.5であり、より好ましくは1.8〜2.5であり、最も好ましくは1.8〜2.2である。例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布は、好ましくは1.8〜3.5であり、より好ましくは1.8〜2.5であり、最も好ましくは1.8〜2.2である。
【0045】
エチレン系エラストマーの融解温度は、得られる成形体の機械的強度を高める観点から好ましくは110℃以下であり、より好ましくは100℃以下である。エチレン系エラストマーの融解熱量は、引張破断伸びを高める観点から、好ましくは110J/g以下であり、より好ましくは100J/g以下である。例えばエチレン−α−オレフィン共重合体の融解温度は、110℃以下であり、より好ましくは100℃以下である。エチレン−α−オレフィン共重合体の融解熱量は、好ましくは110J/g以下であり、より好ましくは100J/g以下である。
【0046】
エチレン系エラストマーの製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が用いられる。
例えばエチレン−α−オレフィン共重合体の場合、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン錯体や非メタロセン錯体等の錯体系触媒を用いた、溶液重合法、スラリー重合法、高圧イオン重合法、気相重合法、また、ラジカル開始剤を用いた塊状重合法、溶液重合法等により製造することが好ましい。中でもチーグラー・ナッタ系触媒や錯体系触媒を用いて、重合する方法を用いることが好ましく、メタロセン触媒の存在下に製造する方法を用いることが好ましい。
【0047】
第二混練工程の樹脂温度としては(A)成分、(B)成分及び(C)成分のいずれかの成分のうちで、融点が最も高い成分の融点以上であり、当該融点プラス10℃以上、当該融点プラス150℃以下である。また、当該融点プラス40℃以上、当該融点プラス100℃以下である。このような温度範囲とすることにより、このような温度範囲とすることにより、(A)成分と(B)成分の相容化や反応を十分に進行させることが可能となる。
例えば、(A)成分にポリ乳酸系樹脂、(B)成分にエポキシ基を含有する化合物の重合体、(C)成分にポリプロピレン系樹脂を用いた場合、好ましい樹脂温度は200℃以上であり、230℃以上であることがより好ましく、235℃以上であることがさらに好ましい。
【0048】
また、第二混練工程の混練時間は、1秒〜1800秒であり、2秒〜600秒であることが好ましく、3秒〜300秒であることがより好ましい。混練時間を1秒以上とすることにより、相容化や反応を十分に行うことが可能となる。これによって(A)成分の分散粒子径が大きくなり、機械的強度が低くなることを防止することが可能となる。混練時間を1800秒以下とすることにより、各成分が熱劣化してしまうことを防止することが可能となる。これによって、得られる成形体の機械的強度が低下したり、外観が悪化してしまうことを防止することが可能となる。なお、混練時間は第一混練工程と同様の手順で測定を行う。
【0049】
第二脱気工程では、第二混練工程にて発生した揮発性成分を除去する。揮発性成分の除去方法としては、第一脱気工程と同様の方法により行うことが好ましい。
【0050】
第一混練工程及び第二混練工程の混練設備は、一般に市販されているものを使用できる。混練設備としては、バッチ式混練設備や連続式混練設備等が挙げられる。バッチ式混練設備としてはバンバリーミキサーが例示され、連続式混練設備としては単軸混練機や二軸混練機が例示される。また、第二混練工程として加工機(射出成形機、Tダイ押出機、ブロー成形機、フィルム成形機)も使用可能である。
【0051】
本発明に係る樹脂組成物の製造方法において、上記(A)成分〜(D)成分の含有量としては、(A)成分〜(C)成分の合計量を100質量%としたとき、(A)成分の含有量が1〜70質量%であり、好ましくは10質量%〜55質量%であり、より好ましくは20質量%〜45質量%である。
また(B)成分の含有量は1〜30質量%であり、好ましくは2質量%〜20質量%であり、より好ましくは3質量%〜10質量%である。そして(C)成分の含有量が30〜98質量%であり、好ましくは40質量%〜90質量%であり、より好ましくは50質量%〜80質量%である。また、(B)成分のうち、(B−1)成分の含有量は、1質量%〜30質量%であり、好ましくは2質量%〜20質量%であり、より好ましくは3質量%〜10質量%である。(B−2)成分の含有量は、1質量%〜30質量%であり、好ましくは2質量%〜20質量%であり、より好ましくは3質量%〜10質量%である。
【0052】
(A)成分の含有量が過剰であると、分散粒子径が大きくなり、耐衝撃強度が低下する傾向にある。また、(B)成分が過少であると、(A)成分の分散粒子径が大きくなり、耐衝撃強度が低くなる傾向があり、過剰であると成形品表面にゲルが発生し、成形品の外観が悪化する傾向にある。
また、(C)成分が過少であると、耐衝撃強度が低くなることや、成形性が損なわれることにより、フローマークなどの外観不良が生じる傾向にある。
【0053】
本発明では上記の成分のほかに、本発明の特徴及び効果を損わない範囲で必要に応じて他の付加的成分を添加してもよい。例えば、酸化防止剤、耐候性改良剤、造核剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、各種着色剤、フィラー(タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維、炭素繊維、ワラストナイト、硫酸マグネシウムウィスカ等)等が挙げられる。
【0054】
[混練機を用いた製造方法]
本発明に係る樹脂組成物の製造は、混練機を用いて行われる。以下、図を用いて詳細に説明する。なお、図中、同じ番号を有する符号は、同一ないし同様の構成要素を示す。
【0055】
図1は本発明に係る樹脂組成物を製造する混練機を示す図である。混練機1Aは、シリンダ10aとスクリュ20aから構成されている。シリンダ10aは、上流側から下流側に向かって(図に向かって左側から右側)順に、上流側投入口31a、真空ベント101a、下流側投入口32a、真空ベント102aを備えている。そしてシリンダ10aの先の一端には樹脂出口40が設けられている。また、各真空ベント101a、102aは減圧ポンプ(図示せず)に接続されている。
一方、スクリュ20aは、第一混練部201a及び第二混練部202aを備えている。この第一混練部201aは上流側投入口31aと下流側投入口32aの間に、第二混連部202aは下流側投入口32aと真空ベント101aの間に位置するように設けられている。このように、脱気工程を行う箇所よりも上流側に混練部を設けることにより、外部との圧力差を大きくして脱気効率を高めることが可能となる。また、真空ベント101aと下流側投入口32aの間に、溶融樹脂の堰き止め部203aが設けられている。この堰き止め部により、下流側投入口32aから投入した原料が、真空ベント101aから吸い込まれることを防止すると共に、真空ベント内を目的の圧力とすることができる。また混練部は、順フライト、逆フライト、Rニーディングディスク、Nニーディングディスク、Lニーディングディスク、ロータ等を組み合わせて使用される。堰き止め部は、Nニーディングディスク、Lニーディングディスク、逆フライト等を単独若しくは組み合わせて使用されることが好ましい。なお、シリンダ10aは外部ヒータ(図示せず)により加熱可能であり、スクリュ20aには螺旋状の溝が刻まれており外部モータ(図示せず)により駆動可能である。
【0056】
本発明に係る樹脂組成物の製造方法では、まず、上流側投入口31aに、(A)成分と、(B)成分を投入して上述のような条件で混練する。混練により各成分は溶融・混合され、樹脂組成物前駆体が得られる。この樹脂組成物前駆体は、スクリュ40の回転と共に下流側へ搬送される(第一混練工程)。そしてこの第一混練工程の際に発生した揮発性成分を真空ベント101aで除去する(第一除去工程)。このときのシリンダ10a内の圧力は、樹脂組成物前駆体の内部圧力よりも低い。具体的には−510hPa〜−1013hPaであることが好ましく、−800hPa〜1013hPaであることがより好ましい。
【0057】
次いで、下流側投入口32aに(C)成分を投入し、第一混練工程で得られた樹脂組成物前駆体と合わせ、上述のような条件で混練する(第二混練工程)。なお、(C)成分については、機械的強度が低下しない範囲の量を、上流側投入口31aから他の成分と一緒に予め投入しておいてもよい。そして第一除去工程と同様に、第二混練工程の際に発生した揮発性成分を、真空ベント102aで除去する(第一除去工程)。このときのシリンダ10a内の圧力は、樹脂組成物前駆体にかかる圧力よりも低く、かつ第一除去工程よりも低いことが好ましい。
【0058】
第一混練工程では、(D)成分及び、本発明の目的に反しない程度の量の(C)成分を添加して混練してもよい。これにより、(A)成分の分散性をより向上させることが可能となる。(D)エラストマー類の添加方法としては、
方法(1)(A)成分と、(B)成分と一緒に上流側投入口31aから投入して混練する方法。
方法(2)(A)成分と、(B)成分を混練して樹脂組成物前駆体を製造した後に上流側投入口31a及び/又は下流側投入口32aから投入して混練する方法。
等が挙げられる。
【0059】
本発明において、混練機の形状は特に限定されるものではない。例えば、真空ベントが2以上設けられている混練機を用いても、真空ベントが1つの混練機を用いてもよい。この場合には、第一混練工程及び第二混練工程を同じ真空ベントを用いて行う。
生産性及び熱による劣化の観点から、真空ベントが2つ以上設けられている混練機を用いることがより好ましい。
【0060】
混練機1Aとしては、原料のフィード性、混練強度の観点から二軸混練機が好ましく、本発明の形態を作ることのできる混練機としては、日本製鋼所製TEXシリーズ、東芝機械製TEMシリーズ、池貝製PCMシリーズ、ワーナー社製ZSKシリーズ、新神戸製作所製KTXシリーズなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
本発明の樹脂組成物の成形方法としては、熱可塑性樹脂及び樹脂組成物一般に適用される成形法、例えば、射出成形法、押出成形法、中空成形法等の成形法が挙げられる。本発明の樹脂組成物は、引張破断伸び、耐衝撃性及び光沢に優れることから、自動車、家電、産業分野等で広く用いることができる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。なお、物性の評価は、以下の方法により行った。
(1)分子量分布測定
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法を用い、下記の条件により測定した。
装置:Waters社製 150C ALC/GPC
カラム:昭和電工社製Shodex Packed ColumnA−80M 2本
温度:140℃、溶媒:o−ジクロロベンゼン
溶出溶媒流速:1.0ml/分、試料濃度:1mg/ml
測定注入量:400μl、分子量標準物質:標準ポリスチレン
検出器:示差屈折
【0063】
(2)グリシジルメタアクリレートに由来する単量体単位含有量(単位:質量%)
プレスシートを作成し、赤外吸収スペクトルの特性吸収の吸光度を厚さで補正して、検量線法により求めた。なお、グリシジルメタアクリレート特性吸収としては、910cm-1のピークを用いた。
【0064】
(3)示差走査熱量測定(DSC)
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製DSC220C:入力補償DSC)を用い、以下の条件で測定した。なお、測定の標準物質にはインジウムを用いた。
(i)試料約5mgを室温から30℃/分の昇温速度で200℃まで昇温し、昇温完了後、5分間保持した。
(ii)次いで、200℃から10℃/分の降温速度で−50℃まで降温し、降温完了後、5分間、保持した。
(iii)次いで、−50℃から10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温した。
【0065】
(4)アイゾット衝撃強度(単位:kJ/m2
JIS K 7110(1984)に規定された方法に従って測定した。射出成形により成形された試験片を用いた。試験片の厚さは3.2mmであり、成形の後にノッチ加工されたノッチ付きのアイゾット衝撃強度を評価した。測定温度は23℃及び−30℃で行った。
【0066】
(5)引張伸び(単位:%)
ASTM D638に規定された方法に従って測定した。射出成形によって成形された試験片を用いた。試験片の厚さは3.2mm、引張速度は50mm/分であり、標線間(50mm)の破断時の伸びを評価した。測定温度は23℃で行った。
【0067】
(6)熱変形温度(単位:℃)
ASTM D 648に規定された方法に従って測定した。射出成形で得られた127mm×12.7mm×6.4mmtの試験片を用いた。試験荷重は0.45MPaで評価した。
【0068】
(7)揮発性有機化合物量
アセトアルデヒドの定量を以下の方法で行った。射出成形で得られた100mm幅×400mm長×3mm厚みの平板成形品の長さ方向の中央部を80mm長切り出し、100mm幅×80mm長×3mm厚みの試験片を作製し、23℃50%RHの雰囲気下で2週間状態調整後に測定を行った。
上記の試験片を用いて、以下の方法により測定を行った。
(i):試験片を容積10Lのテドラーバッグに封入し、純窒素ガスを充填した。その後、純窒素ガスを抜く作業を2回繰り返し行った。
(ii):テドラーバッグに純窒素ガス4Lを充填し、テドラーバッグのコックを閉じた。テドラーバッグをオーブンの中に入れ、コックの先にサンプリング用チューブを取り付けてオーブンの外まで延ばし、この状態で65℃、2時間加熱処理を行った。
(iii):上記(ii)で調製した試料ガスを、65℃の加熱状態で、2,4−ジニトロフェノルヒドラジン(2,4−Dinitrophenylhydrazine(略称:DNPH))カートリッジに3L採取した。採取後のカートリッジはアセトニトリルで溶出処理を行い、得られた溶出液を高速液体クロマトグラフ(HPLC;Waters製、型式:Ultra Performance Liquid Chromatography Aquiy)を用いて、カートリッジから溶出した成分の測定を行った。
上述の方法により検出された成分が揮発性有機化合物である。なお、揮発性有機化合物発生量(μg/試験片)は、各成分の標準物質の検量線を用いて算出した。また、本測定のアルデヒド類の定量下限値は0.15g/試験片である。定量下限未満であっても検出が確認された場合については( )内に参考値を示す。
【0069】
実施例に使用した材料は、以下のとおりである。
(A)生分解性樹脂((A)成分)
ユニチカ株式会社製「テラマックTE−4000」(ポリ乳酸樹脂)
(B−2)エポキシ基を有するエチレン系重合体((B−2)成分)
住友化学株式会社製「ボンドファーストE」(エチレン−グリシジルメタアクリレート共重合体、MFR(190℃)=3g/10分、グリシジルメタアクリレートに由来する単量体単位含有量=12質量%)
(C)ポリオレフィン系樹脂((C)成分)
住友化学株式会社製「ノーブレン WPX5343」(ポリプロピレンブロック共重合体、MFR(230℃)=50g/10分)
(D)エラストマー類((D)成分)
住友化学株式会社製「エクセレンFX CX5505」(エチレン−1−ブテン共重合体、1−ブテンに由来する単量体単位含有量=23質量%、MFR(190℃)=16g/10分、d=880kg/m3、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比=1.8、融解温度=53℃、融解熱量=51J/g)
(E)添加剤
添加剤として、光安定剤(チバ・ガイギー社製 商品名サノール770)を樹脂組成物100質量部に対して、0.05質量部、紫外線吸収剤(住友化学社製 商品名スミソーブ)0.03質量部、帯電防止剤(花王社製 商品名エレクトロンストリッパー TS−5)0.3質量部、造核剤(旭電化社製 商品名アデカスタブNA−11)0.1質量部を混合したものを用いた。
(F)顔料
顔料マスターバッジとして、住化カラー社製、アイボリー色顔料マスターバッジ(商品名PEM−9Y1475MB)を3質量部用いた。
【0070】
[実施例1及び比較例1]
本発明に係る樹脂組成物を次の方法で製造した。
複数の原料投入口を有する50mmφ二軸混練押出機(東芝機械社製TEM50A)を用い、表1に示す割合、混練方法で混練を行った。シリンダ温度は190℃に設定し、押出量50kg/hr、スクリュ回転数200rpmで、樹脂組成物のペレットを得た。
実施例1では、第一脱気工程(真空Vent)及び第二脱気工程(真空Vent)で設けた。一方、比較例1では第一脱気工程を設置せず(Ventの設置無し)、第二脱気工程(真空Vent)のみとした。減圧は、水封式真空ポンプで行った。
【0071】
物性評価用試験片は、次の射出成形条件下で作製した。上記で得られた樹脂組成物のペレットを住友重機械社製サイキャップ110/50型射出成形機を用いて、成形温度200℃、金型冷却温度30℃、射出時間15秒、冷却時間30秒で射出成形を行った。得られた射出成形体のアイゾット衝撃強度、引張伸び、熱変形温度を測定した。
揮発性有化合物の測定用試験片は、次の条件下で作製した。東芝機械社製IS220EN型射出成形機を用いて、成形温度200℃、金型温度30℃、射出時間20秒、冷却時間35秒で射出成形を行った。
その結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1は、本発明で好ましく用いられる混練機の例を示す図である。
【符号の説明】
【0074】
1A 混練機
10a シリンダ
101a、102a 真空ベント
20a スクリュ
201a 第一混練部
202a 第ニ混練部
31a 上流側投入口
32a 下流側投入口
40 樹脂出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)生分解性樹脂と、(C)ポリオレフィン系樹脂と、を含有する樹脂組成物の製造方法であって、
前記(A)生分解性樹脂と、(B−1)この(A)生分解性樹脂と相容性を有する化合物及び/又は(B−2)前記(A)生分解性樹脂と反応性を有する化合物と、を混練して樹脂組成物前駆体を製造する第一混練工程と、
この第一混練工程で発生した揮発性成分を除去する第一脱気工程と、
前記樹脂組成物前駆体と、前記(C)ポリオレフィン系樹脂と、を混練する第二混練工程と、この第二混練工程で発生した揮発性成分を除去する第二脱気工程と、を有する樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記第一脱気工程及び前記第二脱気工程は、混練機のシリンダ内の圧力を所定の圧力まで減圧する工程である請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記第一混練工程において、(D)エラストマー類を更に添加して混練する請求項1又は2に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記第一混練工程と前記第二混練工程の間に、前記樹脂組成物前駆体と、(D)エラストマー類と、を混練する工程を更に有する請求項1又は2に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4いずれかに記載の方法により得られる樹脂組成物を成形して得られる成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2009−138123(P2009−138123A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316774(P2007−316774)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】