説明

樹脂組成物及び画像表示装置

【課題】保護部と画像表示部との間の樹脂硬化物の硬化収縮により生ずる内部応力や、保護部の反りによって画像表示部に附加される外部応力によって生ずる表示ムラ及び樹脂硬化物の剥離が抑制された画像表示装置並びに樹脂硬化物を与える樹脂組成物を提供する。
【解決手段】画像表示装置は、画像表示部と、該画像表示部上に配置された透光性の保護部とを有する。画像表示部と保護部との間に樹脂硬化物層が介在する。樹脂硬化物層は、可視光領域の透過率が90%以上、伸び率が25℃で700%以上且つ80℃で400%以上、及び保護部に対する密着力が25℃で0.4N/cm以上且つ80℃で0.3N/cm以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話等に用いられる液晶表示装置(LCD)等の画像表示装置に関し、特に、画像表示部上に透明な保護部を設け、画像表示部と保護部との間に樹脂硬化物を介在させた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の表示装置としては、例えば図4に示すような液晶表示装置101が知られている。この液晶表示装置101は、画像表示部である液晶表示パネル102上に、例えば、ガラスやプラスチックスからなる透明な保護部103が設けられている。
【0003】
この場合、液晶表示パネル102表面及び偏光板(図示せず)を保護するため、保護部103との間にスペーサ104を介在させることによって液晶表示パネル102と保護部103との間に空隙105が設けられている。
【0004】
しかし、液晶表示パネル102と保護部103との間の空隙105の存在により、光の散乱が起き、それに起因してコントラストや輝度が低下し、また、空隙105の存在は表示装置の薄型化の妨げとなる。
【0005】
このような問題に鑑み、液晶表示パネルと保護部との間の空隙に可視光透過率の高い樹脂を充填することが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−55641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、充填した樹脂の硬化収縮の際に樹脂硬化物に生ずる内部応力によって、あるいは、環境温度の変動により保護部に反りが生じた場合に樹脂硬化物を介して液晶パネルに加わる外部応力によって、液晶表示パネルの液晶を挟持する光学ガラス板に変形が生じ、液晶セルギャップの面内均一性が失われ、また、液晶材料の配向が乱れ、その結果、表示ムラ等の表示不良が生ずる可能性が増大する。特に、保護部103としてガラス板よりも薄く形成できる樹脂板を使用した場合には、環境温度変化による反りの影響が大きくなり、セルギャップの面内均一性がより損なわれ、表示ムラが強まることが懸念される。それだけでなく、保護部103のプラスチック板が過度に反った場合、プラスチック板と液晶表示パネルとの間の樹脂硬化物がプラスチック板の反りに追随できずに、プラスチック板から剥離してしまうことも懸念される。
【0008】
本発明は、従来の技術の課題を解決しようとするものであり、保護部と画像表示部との間の樹脂組成物の硬化収縮により生ずる内部応力や、保護部の反りによって画像表示部に加わる外部応力によって生ずる表示ムラと樹脂硬化物の剥離とが抑制された画像表示装置、並びにそのような樹脂硬化物を与える樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、画像表示部と保護部との間の空隙に充填され硬化した樹脂硬化物について、その伸び率と保護部に対する密着力とを調整することにより上述の目的を達成できることを見出し、本発明の画像表示装置を完成させた。また、樹脂硬化物の硬化前の樹脂組成物については、それが硬化する際に蓄積される内部応力が、硬化後の伸び率と保護部に対する密着力とを規定することにより調整できることに鑑み、画像表示部と保護部との間に充填するための本発明の樹脂組成物を完成させた。
【0010】
即ち、本発明は、画像表示部と、該画像表示部上に配置された透光性の保護部とを有する画像表示装置であって、
画像表示部と保護部との間に樹脂硬化物層が介在し、
樹脂硬化物層は、可視光領域の透過率が90%以上、伸び率が25℃で700%以上且つ80℃で400%以上、及び保護部に対する密着力が25℃で0.4N/cm以上且つ80℃で0.3N/cm以上である画像表示装置を提供する。
【0011】
また、本発明は、画像表示装置の画像表示部と、透光性の保護部との間に介在させる樹脂硬化物層を形成するための樹脂組成物であって、それを硬化させた樹脂硬化物の可視光領域の透過率が厚さ100μmの場合に90%以上、伸び率が25℃で700%以上且つ80℃で400%以上、及びアクリル樹脂板に対する密着力が25℃で0.4N/cm以上且つ80℃で0.3N/cm以上である樹脂組成物を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、画像表示装置の画像表示部と、透光性の保護部との間に介在する樹脂硬化物層であって、その可視光領域の透過率が90%以上、伸び率が25℃で700%以上且つ80℃で400%以上、及びアクリル樹脂板に対する密着力が25℃で0.4N/cm以上且つ80℃で0.3N/cm以上である樹脂硬化物層を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の画像表示装置によれば、画像表示部と保護部との間に存在する樹脂硬化物として特定の数値以上の伸び率と保護部に対する密着力とを有するものを使用するので、樹脂硬化物の硬化収縮により生ずる内部応力を軽減し、樹脂硬化物を保護部の反りに追随させることができるので、表示不良や樹脂硬化物の保護部からの剥離を大きく抑制することができる。
【0014】
また、本発明の樹脂組成物によれば、その硬化物の伸び率と保護部に対する密着力とを特定の数値以上に規定し、更に好ましい態様として硬化収縮率を測定の数値以下に規定しているので、画像表示部と保護部との間に充填して硬化させた場合に、その硬化収縮により生ずる内部応力が軽減され、また、その硬化物を保護部の反りに追随させることができ、表示不良や樹脂硬化物の保護部からの剥離を大きく抑制することができる。また、本発明の樹脂組成物の屈折率を、従来の液晶表示パネルと保護部との間に設けられていた空隙に比して画像表示部の構成パネルや保護部の構成パネルの屈折率に近く数値に調整することができる。これは、成分の選択や量の調整により行うことができる。そのような場合、保護部と樹脂硬化物との界面や樹脂硬化物と画像表示部との界面での光の反射を抑制することができる。その結果、本発明の画像表示装置によれば、表示不良のない高輝度及び高コントラスト表示が可能になる。
【0015】
特に、画像表示部が液晶表示パネルである場合には、液晶材料の配向乱れ等の表示不良を確実に防止して高品位の表示を行うことができる。
【0016】
さらに、本発明の画像表示装置によれば、画像表示部と保護部との間に樹脂硬化物が介在するので、衝撃に強くなる。
【0017】
加えて、本発明の画像表示装置によれば、画像表示部と保護部との間に空隙を設けていた従来例に比して薄型の画像表示装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る表示装置の実施形態の要部を示す断面図である。
【図2】本発明に係る表示装置の実施形態の要部を示す断面図である。
【図3】本発明に係る表示装置の実施形態の要部を示す断面図である。
【図4】従来技術に係る表示装置の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は同一又は同等の構成要素を表している。
【0020】
図1及び図2は、本発明に係る画像表示装置の一実施形態の要部を示す断面図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の表示装置1は、図示しない駆動回路に接続され所定の画像表示を行う画像表示部2と、この画像表示部2に所定の距離をおいて近接対向配置された透光性の保護部3とを有している。
【0022】
画像表示装置1において画像表示部2としては、特に限定されず、例えば、画像表示装置1が液晶表示装置である場合には液晶表示パネルであり、プラズマ表示装置であれば、プラズマパネルであり、有機EL表示装置であれば、有機ELシートである。また、画像表示部2の表面素材としては、光学ガラスやプラスチック(アクリル樹脂等)を好適に用いることができる。
【0023】
ここで、液晶表示装置としては、特に限定されるものではなく、種々のものに適用することができる。このような液晶表示装置としては、例えば、携帯電話、携帯ゲーム機器等の電子機器があげられる。
【0024】
なお、画像表示部2が液晶表示パネルである場合には、図2に示すように、その表側面に偏光板6、7が設けられている。
【0025】
保護部3は、画像表示部2と同程度の大きさの板状、シート状又はフィルム状の部材からなるもので、その部材として、例えば、光学ガラスやプラスチック(ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル樹脂、ポリカーボネート等)を好適に用いることができる。保護部3の表面もしくは裏面には、反射防止膜、遮光膜、視野角制御膜等の光学層を形成してもよい。特に、本発明では、保護部3として、アクリル樹脂板、中でもPMMA板を使用した場合に発明の効果が顕著となる。
【0026】
保護部3は、画像表示部2の周縁部に設けられたスペーサ4を介して画像表示部2上に設けられている。このスペーサ4の厚さは0.05〜1.5mm程度であり、これにより画像表示部2と保護部3との表面間距離が1mm程度に保持されるようになっている。
【0027】
画像表示装置1には、画像表示部2と保護部3との間に、樹脂硬化物層5が設けられている。
【0028】
この樹脂硬化物層5は、可視光領域の透過率が90%以上、伸び率が25℃で700%以上且つ80℃で400%以上、好ましくは25℃で800%以上且つ80℃で500%以上、及び保護部3に対する密着力が25℃で0.4N/cm以上且つ80℃で0.3N/cm以上、好ましくは25℃で0.5N/cm以上且つ80℃で0.4N/cm以上である。
【0029】
可視光領域の透過率を90%以上とした理由は、90%未満とすると変色の発生や透明性の低下が実用上無視できないからである。ここで、透過率は、画像表示置1においては、樹脂硬化物層5の厚みに関わりなく90%以上であることが要請されている。即ち、樹脂硬化物層5が同じ素材から形成されていても、例えば100μm厚では90%以上であるが、1mm厚では70%となる場合、1mmの厚みの樹脂硬化物層5は本発明の画像表示装置1には適用できないことになるが、その場合であっても100μm厚では適用可能となる。
【0030】
また、伸び率及び密着性を規定する温度として25℃と80℃とを選択した理由は、画像表示装置の通常の使用環境が25℃であり、製造工程において樹脂組成物に紫外線照射すると約80℃程度まで温度が上昇するからであり、また、80℃前後から保護部を構成するアクリル樹脂、例えばPMMAの反り急激に大きくなるからである。ここで、伸び率は、樹脂組成物を所定の厚さになるように剥離フィルム上に滴下し、ついて紫外線照射して硬化させ、所定の大きさ(例えば、0.6mm厚、10mm幅、25mm長)にカットして試料を作成し、それを引っ張り試験機(テンシロン、オリエンテック社)で測定した値である。その条件は、雰囲気温度25℃又は80℃、加重5Kgf、引っ張り速度5mm/分、伸び率(%)=L/L×100で算出する。ここで、Lは基準長さ、Lは破断するまでの変位長さである。
【0031】
更に、伸び率を25℃で700%以上とした理由は、700%未満とすると反りに追随できないからであり、80℃で400%以上とした理由も、400%未満とする反りに追随できないからである。
【0032】
また、保護部3に対する密着力を25℃で0.4N/cm以上とした理由は、0.4N/cm未満とすると樹脂硬化時のUV照射による発熱に起因するPMMA反りに追随できず剥離するからであり、80℃で0.3N/cm以上とした理由は、0.3N/cm未満とするとモバイル機器の耐湿環境温度での反りに追随できず、剥離するからである。なお、密着力はJIS K6854−1に準拠して測定したものである。
【0033】
また、樹脂硬化物層5として、25℃における貯蔵弾性率に着目することが好ましい。これは、貯蔵弾性率が樹脂硬化物の硬化時の残留応力に起因するからである。具体的には25℃における貯蔵弾性率が高すぎると残留応力が大きくなり液晶に表示ムラが発生するので、好ましくは1×10Pa以下、より好ましくは1×10〜1×10Paである。特に、1×10〜1×10Paである。
【0034】
なお、樹脂硬化物層5の屈折率については、画像表示部2や保護部3の素材との関係で決定することになるが、樹脂硬化物層5側の画像表示部2の表面がガラス板で保護部3の表面がポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂板である場合には、好ましくは1.51〜1.52である。
【0035】
なお、本発明を構成する樹脂硬化物層5は、以上説明したような特性を示す樹脂組成物から形成する。このような樹脂組成物については後述する。
【0036】
本発明の画像表示装置においては、図1及び図2に示した実施形態の表示装置1のようにスペーサ4を設けることなく、図3に示す表示装置1Bのように、画像表示部2上に、上述した樹脂硬化物層5を与える樹脂組成物を成膜し、更に保護部3を積層し、樹脂組成物を硬化させることにより、スペーサを省略することが好ましい。その場合、画像表示部2と保護部3との距離(即ち、樹脂硬化物層5の厚さ)は樹脂組成物の粘度、密度、保護部3の重さ等に応じて定まるが、通常50〜250μmとすることができ、これにより、画像表示装置の薄型化を図ることができる。
【0037】
本発明の画像表示装置1を作製する場合には、例えば、画像表示部2上の周縁部に、スペーサ4と図示しない突堤部を設け、これらの内側の領域に樹脂組成物を所定量滴下する。
【0038】
そして、画像表示部2のスペーサ4上に保護部3を配置し、画像表示部2と保護部3との間に樹脂組成物を隙間なく充填する。
【0039】
その後、保護部3を介して樹脂組成物に対して硬化させる熱あるいはエネルギー線(好ましくは紫外線)を照射することにより、樹脂組成物を硬化させる。これにより、目的とする画像表示装置1を得る。
【0040】
また、図3に示すようにスペーサ4を省略した画像表示装置1Bを作製する場合には、画像表示部2上に上述した樹脂組成物を塗布し、その上に保護部3を重ね、保護部3側から加熱あるいはエネルギー線(例えば紫外線)を照射すればよい。
【0041】
こうして得られる本発明の画像表示装置1、1Bによれば、画像表示部2及び保護部3に対し樹脂硬化収縮時の応力、環境温度による保護部3の反りによる外部応力の影響を最小限に抑えることができるので、画像表示部2及び保護部3において歪みがほとんど発生せず、その結果、製造の際に画像表示部2に変形が発生しないので、表示不良のない高輝度及び高コントラスト表示が可能になる。
【0042】
さらに、本実施の形態によれば、画像表示部2と保護部3との間に樹脂硬化物5が充填されているので、衝撃に強く、より薄型の表示装置1を提供することができる。
【0043】
特に、画像表示部2が液晶表示パネルである揚合には、液晶材料の配向乱れ等の表示不良を確実に防止して高品位の表示を行う液晶表示装置を提供することができる。
【0044】
なお、本発明は、上述した液晶表示装置に好適に適用することができるが、これに限らず、例えば、有機EL装置、プラズマディスプレイ装置等の種々のパネルディスプレイに適用することができる。
【0045】
次に、本発明の画像表示装置1を構成する樹脂硬化物層5は、既に説明した特性を与えることのできる樹脂組成物から形成される。その硬化は、熱硬化型でもエネルギー線(可視光、紫外線等の光、電子線等)硬化型でもよいが、生産性向上の観点からは、光硬化型であることが好ましい。
【0046】
即ち、本発明の樹脂組成物は、画像表示装置の画像表示部と、透光性の保護部との間に介在させる樹脂硬化物層を形成するための樹脂組成物であって、それを硬化させた樹脂硬化物の可視光領域の透過率が厚さ100μmの場合に90%以上、伸び率が25℃で700%以上且つ80℃で400%以上、及びアクリル樹脂板に対する密着力が25℃で0.4N/cm以上且つ80℃で0.3N/cm以上である樹脂組成物である。
【0047】
本発明の樹脂組成物は、可視光領域の透過率に関し、それを硬化させた樹脂硬化物の厚さが100μmの場合に90%以上必要である。90%未満とすると変色の発生や透明性の低下が実用上無視できないからである。また、それを硬化させた樹脂硬化物の伸び率及びアクリル樹脂板に対する密着力については、本発明の画像表示装置1の樹脂硬化物層5について記述した内容を適用することができる。
【0048】
また、本発明の樹脂組成物は、硬化収縮率が好ましくは5%以下、より好ましくは4%以下、特に好ましくは3%以下、さらに好ましくは2.5%以下となるように調製したものである。そのため、樹脂組成物が硬化する際に樹脂硬化物に蓄積される内部応力を低減させることができ、樹脂硬化物層5と画像表示部2又は保護部3との界面に歪みができることを防止できる。ここで、硬化収縮率はJIS K6901(5.12項)の体積収縮率に準ずるものである。
【0049】
本発明の樹脂組成物の貯蔵弾性率及び/又は屈折率については、本発明の画像表示装置1の樹脂硬化物層5について記述した内容を好ましく適用することができる。
【0050】
更に、本発明の樹脂組成物は、その硬化物の凝集力が小さすぎると反りに追随できず凝集破壊が生じるので、好ましくは25℃で30N/cm以上且つ80℃で5N/cm以上、より好ましくは25℃で40〜80N/cm且つ80℃で10〜15N/cmの凝集力を有する。ここで、凝集力は次のように測定した値である。即ち、短冊状の2mm厚のPMMA板と1mm厚のガラス基板とを用意する。つぎに、ガラス基板の中央部に直径6mmの樹脂組成物を滴下し、0.1mmスペーサーを介してその上からPMMA基板を直交するように載置し、紫外線を照射して硬化させて試験片を作成する。この試験片のPMMA基板を固定し、他方、ガラス基板におけるPMMA基板と接触していない両端部を押圧治具(クロスヘッド)により押圧し、PMMA基板とガラス基板とが分離するまでに要する応力を測定する。押圧速度は5mm/minであり、得られた応力を単位面積
で除して凝集力とする。
【0051】
以上説明したような本発明の樹脂組成物としては、基本的には、ポリマーとモノマーと光重合開始剤とからなる組成物である。光重合開始剤について、保護部3には、画像表示部2に対する紫外線保護の観点から紫外線領域の光をカットする機能が付与されていることが多いため、光重合開始剤としては、α―ヒドロキシケトン類などの通常の紫外線感応性の光重合開始剤に加えて、可視光領域でも硬化能を示す光重合開始剤(例えば、ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド(商品名SpeedCureTPO、日本シイベルヘグナー(株)製)等)を併用することが好ましい。
【0052】
本発明の樹脂組成物としては、例えば、ポリウレタンアクリレート、ポリイソプレン系アクリレート又はそのエステル化物、テルペン系水素添加樹脂及びブタジエン重合体から選ばれる1種以上のポリマーと、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート及び2−ヒドロキシブチルメタクリレートから選ばれる1種以上のアクリレート系モノマーと、光重合開始剤とを含有する樹脂組成物を好適に挙げることができる。
【0053】
より具体的な本発明の樹脂組成物としては、ポリマーが、ポリイソプレン重合物の無水マレイン酸付加物と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル化物、テルペン系水素添加樹脂及びブタジエン重合体であり、モノマーが、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート及び2−ヒドロキシブチルメタクリレートであり、光重合開始剤が、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン及びジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイドである樹脂組成物を挙げることができる。
【0054】
更に具体的な本発明の樹脂組成物としては、ポリイソプレン重合物の無水マレイン酸付加物と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル化物50〜100質量部、テルペン系水素添加樹脂10〜70質量部及びブタジエン重合体30〜220質量部、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート20〜50質量部及び2−ヒドロキシブチルメタクリレート5〜15質量部、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン1〜10質量部及びジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド1〜10質量部である樹脂組成物を挙げることができる。
【0055】
なお、本発明の樹脂組成物が硬化する際に樹脂硬化物に蓄積される内部応力の程度は、樹脂組成物を平板上に滴下し、それを硬化させて得られる樹脂硬化物の平均表面粗度によって評価することができる。例えば、樹脂組成物2mgをガラス板上又はアクリル樹脂板上に滴下し、それをUV照射により90%以上の硬化率で硬化させて得られる樹脂硬化物の平均表面粗度が6.0nm以下であれば、画像表示部2と保護部3との間に樹脂組成物を介在させ、それを硬化させた場合にそれらの界面に生じる歪みが実用上無視できるが、本発明の樹脂組成物によれば、この平均表面粗度を6.0nm以下、好ましくは5.0nm以下、より好ましくは1〜3nmにすることができる。ここで、ガラス板としては、液晶セルの液晶を挟持するガラス板や液晶セルの保護板として使用されているものを好ましく使用できる。また、アクリル樹脂板としては、液晶セルの保護板として使用されているものを好ましく使用できる。これらのガラス板やアクリル樹脂板の平均表面粗度は、通常、1.0nm以下である。
【0056】
なお、樹脂硬化層5自体が新規なものである点から、画像表示装置の画像表示部と、透光性の保護部との間に介在する樹脂硬化物層であって、その可視光領域の透過率が90%以上、伸び率が25℃で700%以上且つ80℃で400%以上、及びアクリル樹脂板に対する密着力が25℃で0.4N/cm以上且つ80℃で0.3N/cm以上である樹脂硬化物層も本発明に包含される。この発明の構成要素は既に説明したとおりである。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
<実施例1>
ポリイソプレン重合物の無水マレイン酸付加物と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル化物(商品名UC−203、クラレ)55質量部、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(商品名FA512M、日立化成工業)40質量部、2−ヒドロキシブチルメタクリレート(商品名ライトエステルHOB、共栄社化学)10質量部、軟化点85℃±5℃のテルペン系水素添加樹脂(商品名クリアロンP−85、ヤスハラケミカル)60質量部、ブタジエン重合体(商品名Polyoil 110、日本ゼオン)80質量部、光重合開始剤(商品名イルガキュア184D、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ)6質量部、光重合開始剤(商品名SpeedCure TPO、日本シイベルヘグナー)1.5質量部を混練機にて混練して実施例1の樹脂組成物を調製した。
【0059】
<実施例2>
軟化点85℃±5℃のテルペン系水素添加樹脂(商品名クリアロンP−85、ヤスハラケミカル)60質量部に代えて、軟化点115℃±5℃のテルペン系水素添加樹脂(商品名クリアロンP−115、ヤスハラケミカル)40質量部を使用すること以外は、実施例1と同様にして実施例2の樹脂組成物を調製した。
【0060】
<比較例1>
ポリイソプレン重合物の無水マレイン酸付加物と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル化物(商品名UC−203、クラレ)70質量部、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(商品名FA512M、日立化成工業)30質量部、2−ヒドロキシブチルメタクリレート(商品名ライトエステルHOB、共栄社化学)10質量部、軟化点85℃±5℃のテルペン系水素添加樹脂(商品名クリアロンP−85、ヤスハラケミカル)30質量部、ブタジエン重合体(商品名Polyoil 110、日本ゼオン)140質量部、光重合開始剤(商品名イルガキュア184D、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ)2質量部、光重合開始剤(商品名SpeedCure TPO、日本シイベルヘグナー)7質量部を混練機にて混練して比較例1の樹脂組成物を調製した。
【0061】
<実施例3>
軟化点85℃±5℃のテルペン系水素添加樹脂(商品名クリアロンP−85、ヤスハラケミカル)60質量部を15質量部に代えること以外は、実施例1と同様にして実施例3の樹脂組成物を調製した。
【0062】
実施例1〜3、比較例1で調製した樹脂組成物を、厚さ100μmの白色のアクリル樹脂板上に、所定の膜厚となるように滴下してUVコンベアにて搬送し、所定の厚さの樹脂硬化物を得、これを試料とした。
【0063】
(評価1)
各試料の光透過率、伸び率、保護板に対する密着力、貯蔵弾性率、硬化収縮率、凝集力及び表面粗度を、以下のようにして求めた。
【0064】
〔光透過率〕
各試料(樹脂硬化物の厚さ100μm)について、紫外可視分光光度計(日本分光(株)製V−560)によって可視光領域の透過率を測定したところ、全て90%以上であった。
【0065】
〔伸び率〕
伸び率は、樹脂組成物を所定の厚さになるように剥離フィルム上に滴下し、ついて紫外線照射して硬化させ、所定の大きさ(例えば、0.6mm、10mm幅、25mm長)にカットして試料を作成し、それを引っ張り試験機(テンシロン、オリエンテック社)で測定した値である。その条件は、雰囲気温度25℃又は80℃、加重5Kgf、引っ張り速度5mm/分、伸び率(%)=L/L0×100で算出する。ここで、L0は基準長さ、Lは破断するまでの変位長さである。
【0066】
〔保護板に対する密着力(JIS K6854−1)〕
PETフィルムに樹脂組成物を50μm厚となるように塗布し、それをPMMA板に貼り合わせ、紫外線を照射して硬化させ試験片(幅2.5cm)とする。次に、PMMA板からPETフィルムと共に樹脂組成物の硬化物を90度方向に、引っ張り試験機(テンシロン、オリエンテック社)を用いて50mm/分の速度で引き剥がす。その引き剥がすために要した力を2.5cmで除した値を密着力とする。
【0067】
〔貯蔵弾性率〕
各試料について、粘弾性測定装置(セイコーインスツルメンツ(株)製DMS6100)を用い、測定周波数1Hzで貯蔵弾性率(Pa)(25℃)を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0068】
〔硬化収縮率〕
さらに、硬化収縮率(%)については、硬化前の樹脂液と硬化後の固体の比重を電子比重計(MIRAGE社製SD−120L)を用いて測定し、両者の比重差から次式により算出した。得られた結果を表1に示す。
【0069】
【数1】

【0070】
〔凝集力〕
短冊状の2mm厚のPMMA板と1mm厚のガラス基板とを用意する。つぎに、ガラス基板の中央部に直径6mmの樹脂組成物を滴下し、0.1mmスペーサーを介してその上からPMMA基板を直交するように載置して試験片を作成する。この試験片のPMMA基板を固定し、他方、ガラス基板におけるPMMA基板と接触していない両端部を押圧治具(クロスヘッド)により押圧し、PMMA基板とガラス基板とが分離するまでに要する応力を測定する。押圧速度は5mm/minであり、得られた応力を単位面積で除して凝集力とする。
【0071】
〔表面粗度の測定〕
各樹脂組成物について、それぞれ2mgを液晶セル用ガラス板に滴下し、UV硬化の際に生ずる内部応力により発生するガラス板表面の所定領域(2.93mm×2.20mm)の歪み(Ra:平均表面粗度)を、Zygo社製3次元非接触表面粗度測定計にて測定した。得られた結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
表1から明らかなように、実施例1〜3は、伸び率が25℃で700%以上、80℃で400%以上で、保護部に対する密着力が25℃で0.4N/cm以上、80℃で0.3N/cmであるので、歪みがほとんどなく、良好な結果が得られた。なお、実施例3の場合、実施例1及び2の場合に比べ、硬化収縮率が若干高いので、僅かに表示ムラが観察さえたが実用上問題のないレベルであった。
【0074】
これに対し、比較例1の場合には伸び率と保護部に対する密着力がいずれも不充分であった。
【0075】
(評価2)
次に、上述の実施例及び比較例の樹脂組成物を使用してパネル試料を作成し、耐衝撃性行った。即ち、大きさ50mm×50mm、厚さ0.5mmのガラス板(画像表示部)と、大きさ50mm×50mm、厚さ0.5mmのポリメチルメタクリレート板(保護部)の間に、実施例1又は2の樹脂組成物を厚さ0.1mmに硬化させたものを実施例のパネル試料とした。この場合、スペーサは用いておらず、パネル試料の総厚さは、1.1mmであった。なお、このパネル試料の作製方法としては、ガラス板上に実施例1の樹脂組成物を塗布し、その上にポリメチルメタクリレート板を重ね、そのポリメチルメタクリレート板側からUV照射することにより樹脂組成物を硬化させた。
【0076】
一方、図4に示す従来技術の構成のパネル試料を作成した。この場合、液晶表示パネル(画像表示部)102及び保護部103として、上述の実施例のパネル試料と同一の部材を用い、画像表示部と保護部との間に厚さ1.0mmのスペーサを介在させて、エアギャップが1.0mmで総厚さ2.0mmの比較例のパネル試料とした。
【0077】
実施例及び比較例のパネル試料について、所定の治具を用いて縁部分を固定し、直径5mmの押圧部を用い、保護部表面に対して垂直方向から押し付け速度1mm/秒で押圧部を保護部表面に押し付けてパネル破壊試験を行った。
【0078】
その結果、実施例のパネルによれば、押し付け強度が150%向上し、しかも比較例のパネルに比べて薄型のパネルが得られることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、液晶表示装置などの画像表示装置等に有用である。
【符号の説明】
【0080】
1、1B 画像表示装置
2 画像表示部
3 保護部
4 スペーサ
5 樹脂硬化物又は樹脂硬化物層
6、7 偏光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示部と、該画像表示部上に配置された透光性の保護部とを有する画像表示装置であって、
画像表示部と保護部との間に樹脂硬化物層が介在し、
樹脂硬化物層は、可視光領域の透過率が90%以上、伸び率が25℃で700%以上且つ80℃で400%以上、及び保護部に対する密着力が25℃で0.4N/cm以上且つ80℃で0.3N/cm以上である画像表示装置。
【請求項2】
樹脂硬化物層の伸び率が、25℃で800%以上且つ80℃で500%以上、及び保護部に対する密着力が25℃で0.5N/cm以上且つ80℃で0.4N/cm以上である請求項1記載の画像表示装置。
【請求項3】
保護部が、アクリル樹脂板からなる請求項1又は2記載の画像表示装置。
【請求項4】
樹脂硬化物層の25℃における貯蔵弾性率が、1×10〜1×10Paである請求項1〜3のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項5】
樹脂硬化物層の厚みが50〜250μmである請求項1〜4のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項6】
画像表示部が、液晶表示パネルである請求項1〜5のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項7】
画像表示装置の画像表示部と、透光性の保護部との間に介在させる樹脂硬化物層を形成するための樹脂組成物であって、それを硬化させた樹脂硬化物の可視光領域の透過率が厚さ100μmの場合に90%以上、伸び率が25℃で700%以上且つ80℃で400%以上、及びアクリル樹脂板に対する密着力が25℃で0.4N/cm以上且つ80℃で0.3N/cm以上である樹脂組成物。
【請求項8】
樹脂硬化物層の伸び率が、25℃で800%以上且つ80℃で500%以上、及びアクリル樹脂板に対する密着力が25℃で0.5N/cm以上且つ80℃で0.4N/cm以上である請求項7記載の樹脂組成物。
【請求項9】
硬化収縮率が、4.0%以下である請求項7又は8記載の樹脂組成物。
【請求項10】
硬化収縮率が、3.0%以下である請求項7又は8記載の樹脂組成物。
【請求項11】
硬化収縮率が、2.5%以下である請求項7又は8記載の樹脂組成物。
【請求項12】
樹脂組成物の硬化物の25℃における貯蔵弾性率が、1×10〜1×10Paである請求項7〜11のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項13】
ポリウレタンアクリレート、ポリイソプレン系アクリレート又はそのエステル化物、テルペン系水素添加樹脂及びブタジエン重合体から選ばれる1種以上のポリマーと、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート及び2−ヒドロキシブチルメタクリレートから選ばれる1種以上のアクリレート系モノマーと、光重合開始剤とを含有する請求項7〜12のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項14】
ポリマーが、ポリイソプレン重合物の無水マレイン酸付加物と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル化物、テルペン系水素添加樹脂及びブタジエン重合体であり、モノマーが、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート及び2−ヒドロキシブチルメタクリレートであり、光重合開始剤が、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン及びジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイドである請求項13記載の樹脂組成物。
【請求項15】
樹脂組成物2mgをガラス板上又はアクリル板上に滴下し、それをUV照射により硬化させた樹脂硬化物の平均表面粗度が6.0nm以下である請求項7〜14のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項16】
樹脂組成物2mgをガラス板上又はアクリル板上に滴下し、それをUV照射により硬化させた樹脂硬化物の平均表面粗度が5.0nm以下である請求項7〜15のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項17】
画像表示装置の画像表示部と、透光性の保護部との間に介在する樹脂硬化物層であって、その可視光領域の透過率が90%以上、伸び率が25℃で700%以上且つ80℃で400%以上、及びアクリル樹脂板に対する密着力が25℃で0.4N/cm以上且つ80℃で0.3N/cm以上である樹脂硬化物層。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−212143(P2012−212143A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−105372(P2012−105372)
【出願日】平成24年5月2日(2012.5.2)
【分割の表示】特願2008−105198(P2008−105198)の分割
【原出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】