説明

樹脂組成物

【課題】軟質性、成形加工性、耐熱性、透明性、力学物性、耐傷つき性、耐摩耗性、耐油性を同時に満足する樹脂組成物を提供することが可能で、製品、成形方法に合わせ、耐熱性、透明性、力学物性、耐傷つき性、耐摩耗性、耐油性を損なわずに軟質性、成形加工性を適合させることが容易な樹脂組成物を提供する。
【解決手段】クロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体1〜99質量%とオレフィン−芳香族ビニル化合物共重合体1〜99質量%、必要に応じて他の樹脂0〜50質量%からなり合計100質量%である樹脂組成物ならびのその成形物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
軟質性、成形加工性、耐熱性、透明性、力学物性、耐傷つき性、耐摩耗性、耐油性をいずれも満足する樹脂組成物は、フィルム、シ−ト、チュ−ブ等の各種成形体として各種建材、雑貨、自動車内装材、医療用途、包装用途その他多様な用途に好適に使用できる。このような用途には従来主に軟質塩ビが用いられてきた。軟質塩ビを代替する素材としてポリオレフィン系、またはスチレン系熱可塑性エラストマ−を原料とする各種素材が提案されているが(特許文献1〜3参照)、これら各種特性を同時に満足することは困難であった。
【特許文献1】特開2002−322224
【特許文献2】特開2002−241449
【特許文献3】WO01/019881
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、従来のクロス共重合体やエチレン−スチレン共重合体の特長を損なわずに、軟質性、成形加工性を幅広い範囲で制御することができる樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち本発明は、クロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体1〜99質量%とオレフィン−芳香族ビニル化合物共重合体1〜99質量%、必要に応じて他の樹脂0〜50質量%からなり合計100質量%である樹脂組成物である。さらに好ましくはクロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体20〜99質量%とオレフィン−芳香族ビニル化合物共重合体1〜80質量%、必要に応じて「他の樹脂」0〜50質量%、合計100質量%である樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0005】
軟質性、成形加工性、耐熱性、透明性、力学物性、耐傷つき性、耐摩耗性、耐油性を同時に満足する樹脂組成物を提供することが可能で、製品、成形方法に合わせ、耐熱性、透明性、力学物性、耐傷つき性、耐摩耗性、耐油性を損なわずに軟質性、成形加工性を適合させることが容易な樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
クロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体としての特長、たとえば耐熱性を有するためには、1質量%以上、好ましくは20質量%以上配合する必要があり、これ以下では樹脂組成物の耐熱性が失われる可能性がある。「他の樹脂」の割合が50質量%を超えると、クロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体とオレフィン−芳香族ビニル化合物共重合体からなる樹脂組成物成分の効果が失われる可能性がある。
【0007】
本明細書において、樹脂組成物原料ポリマ−の質量%とは、樹脂組成物全体に対する質量%である。また、本明細書において、共重合体の芳香族ビニル化合物含量とは、共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物モノマー由来のユニットの含量を示す。オレフィン含量も同様である。
【0008】
ここでクロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体(以下クロス共重合体と略する場合がある)とは、主鎖重合工程として、配位重合触媒を用いて芳香族ビニル化合物モノマー、オレフィンモノマーおよびジエンモノマーの共重合を行ってオレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体を合成し、次にこれと重合条件の異なるクロス化工程として、このオレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体と少なくともオレフィン、芳香族ビニル化合物モノマーの共存下、配位重合触媒を用いて重合する、少なくとも2段階の重合方法を用いることにより製造されることを特徴とする共重合体である。クロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体は、芳香族ビニル化合物含量が0.03モル%以上96モル%以下、ジエン含量が0.0001モル%以上3モル%以下、残部がオレフィンという組成を、好ましくは芳香族ビニル化合物含量が5モル%以上50モル%以下、ジエン含量が0.0001モル%以上3モル%以下、残部がオレフィンという組成を有する。
【0009】
クロス共重合体の重量平均分子量は、1万以上、好ましくは3万以上、特に好ましくは6万以上であり、100万以下、好ましくは50万以下である。分子量分布(Mw/Mn)は特に限定されないが、一般的には10以下、好ましくは7以下、最も好ましくは5以下、1.5以上である。
【0010】
さらに以下1)〜3)の少なくとも1つ以上満足する共重合体である。
1)主鎖重合工程に対し重合条件の異なるクロス化工程として、主鎖重合工程の開始時または平均のオレフィン分圧に対しクロス化工程における重合系のエチレン分圧が150%以上または50%以下であるという重合条件を満たす。
【0011】
2)第一重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体の芳香族ビニル化合物含量と最終的に得られるクロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体の芳香族ビニル化合物含量が、少なくとも2モル%以上、好ましくは5モル%以上、最も好ましくは10モル%以上異なる。
【0012】
3)芳香族ビニル化合物含量とDSC測定による融点のうち少なくとも一つが以下の関係を満たし、芳香族ビニル化合物含量が5モル%以上50モル%以下、ジエン含量が0.0001モル%以上3モル%以下、残部がエチレンまたはエチレンを含む2種以上のαオレフィンである。
(5≦St≦15)
−3×St+125≦Tm≦140
(15<St≦50)
80<Tm≦140
Tm;DSC測定による結晶融解熱が10J/g以上150J/g以下、好ましくは20J/g以上120J/g以下である融点(℃)
St;芳香族ビニル化合物含量(モル%)
オレフィンがエチレンまたはエチレンを含む2種以上のαオレフィンである本クロス共重合体は、通常のエチレン−芳香族ビニル化合物共重合体と比較して高い結晶融点を有することができる特長があり、本式で示される組成と融点範囲の関係式で従来のエチレン−芳香族ビニル化合物共重合体と区別することができる。
【0013】
クロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体は、ジエンユニットを介して異なる組成のオレフィンー芳香族ビニル化合物共重合体ブロック鎖が結合したスターブロック型共重合体(図1)を含んでいる共重合体であると考えられる。また本クロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体は、必ずしも純粋な共重合体で無くてもよく、他にクロス鎖と結合されなかった主鎖ポリマ−や主鎖と結合されなかったクロス鎖が含まれていても良い。しかし、これらクロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体の構造や含まれる量の如何に関わらず、上記の条件を満たす共重合体であれば本発明に用いられる。
【0014】
また、WO01/19881、US6566453、US6803422公報および対応する日本出願に記載されたクロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体であり、さらに上記の条件を満たす共重合体である。さらに本発明の樹脂組成物に用いられる最も好ましいクロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体は、以下の特長を有するクロス共重合体である。
【0015】
4)主鎖重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体の芳香族ビニル化合物含量が10モル%以上、40モル%以下の組成を有する。
主鎖重合工程で得られる主鎖はこの組成範囲であることでDSC結晶融解熱が20J/g以下であり実質的に低から非結晶性である特長を有することができる。主鎖重合工程で得られるクロス共重合体の主鎖が実質的に低から非結晶性であることで、クロス化工程を経て最終的に得られるクロス共重合体は透明性、A硬度で代表的には85〜95の軟質性に優れた樹脂となることができる。
【0016】
5)クロス化工程で得られる共重合体の芳香族ビニル化合物含量が主鎖の芳香族ビニル化合物含量と比較して5モル%以上低い組成を有し、最大で10モル%以下である。別な観点からは、クロス化工程で得られるポリマ−はこの組成範囲であることでDSC結晶融点が80℃以上、140℃以下である結晶融点を有することができる。クロス化工程で得られるポリマ−がこのような結晶融点を有することで、クロス化工程を経て最終的に得られるクロス共重合体は主鎖に由来する透明性、軟質性に加え、優れた耐熱性を併せ有する樹脂となることができる。なお、クロス化工程で得られるポリマ−の組成は、主鎖重合工程で得られるポリマ−とクロス化工程を経て最終的に得られるクロス共重合体とのマスバランス(物質収支)から容易に求めることができる。
【0017】
オレフィンとしては、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィン、すなわちプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、ビニルシクロヘキサンや環状オレフィン、すなわちシクロペンテン、ノルボルネンが挙げられる。好ましくは、エチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、または1−オクテン等のα−オレフィンとの混合物、プロピレン等のα−オレフィン、エチレンが用いられ、更に好ましくは、エチレン、エチレンとα−オレフィンの混合物が用いられ、特に好ましくは、エチレンが用いられる。
【0018】
芳香族ビニル化合物は好ましくはスチレンが用いられるが、他の芳香族ビニル化合物例えばp−クロロスチレン、p−ターシャリ−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等を用いることも可能で、さらにこれらの混合物を用いてもよい。
【0019】
ジエンとしては、配位重合可能なジエン類が用いられる。 好ましくは、二重結合(ビニル基)の1つが配位重合に用いられて重合した状態において残された二重結合が配位重合可能であるジエン類であり、オルトジビニルベンゼン、パラジビニルベンゼン及びメタジビニルベンゼンのいずれか1種または2種以上の混合物が好適に用いられる。さらに、最も好ましくは異性体純度80質量%以上、好ましくは異性体純度90質量%以上のメタジビニルベンゼンを用いる。
【0020】
オレフィンー芳香族ビニル化合物共重合体は公知のものが用いられる。ここで、オレフィンと芳香族ビニル化合物は上記クロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体でもちいられるものと同じオレフィン、芳香族ビニル化合物を用いることができるが、好ましくはオレフィンとしてはエチレン、芳香族ビニル化合物としてはスチレンが用いられる。さらに、用いられるオレフィンー芳香族ビニル化合物共重合体の芳香族ビニル化合物含量は、10モル%以上40モル%以下の組成を有することが好ましい。
【0021】
本樹脂組成物は、200℃、加重10kgで測定したMFRが5g/10min.以上100g/min.以下、好ましくは5g/10min.以上30g/min.以下であることを特徴とし、オレフィンー芳香族ビニル化合物共重合体の配合量によりそのMFR値を変更できる。その際、用いられるオレフィンー芳香族ビニル化合物共重合体の同一条件下で測定したメルトフローレイト(MFR)は、用いられるクロス共重合体よりも小さいこと、好ましくは90%以下であることが必要である。最適なMFRを有するまたは最適な配合量のオレフィン−芳香族ビニル化合物共重合体を用いることで、本樹脂組成物のMFRをクロス共重合体単独に対し、精密な制御性を持って低下させることが可能である。そのため、本樹脂組成物を種々の成形加工法に適用することが容易になる。また、特殊な場合には、クロス共重合体に対し、よりMFRの小さいエチレン−スチレン共重合体を配合し、MFRを下げることも可能である。
【0022】
クロス共重合体とオレフィン−芳香族ビニル化合物共重合体との組成物は、オレフィン−芳香族ビニル化合物共重合体の配合量により従来のクロス共重合体の優れた特長、すなわち耐熱性、透明性、力学強度、耐摩耗性、耐摩傷性を保持しながら硬度を広い範囲で、すなわち硬度をA硬度(JIS)で55〜90の範囲で変更でき、様々な用途に用いることが可能となる。その際、好適に用いられるオレフィン−芳香族ビニル化合物共重合体は、用いられるクロス共重合体よりも低いA硬度を有する。このようなオレフィン−芳香族ビニル化合物共重合体のA硬度、配合量を選択することで、本樹脂組成物のA硬度をクロス共重合体単独に対し、精密な制御性を持って低下させることが可能である。そのため、本樹脂組成物を種々の用途に適用することが可能となる。オレフィン−芳香族ビニル化合物共重合体の中で、スチレン含量が10モル%以上40モル%以下の組成を有するエチレンースチレン共重合体が本発明の樹脂組成物に最も好適に用いられ、本スチレン含量範囲のエチレン−スチレン共重合体は一般に50から85のA硬度を有する。
また、特殊な場合には、A硬度85程度のクロス共重合体に対し、A硬度90程度のエチレン−スチレン共重合体を配合し、硬度を高めることも可能である。
【0023】
本樹脂組成物は、70℃以上140℃まで、好ましくは90℃以上140℃までの耐熱変形温度を有する。
【0024】
また、本樹脂組成物は、1mm厚シ−トにおけるヘイズが25%以下、または全光線透過率が70%以上であることを特長とする。
【0025】
クロス共重合体に対し、オレフィン−芳香族ビニル化合物共重合体を配合し樹脂組成物とすることで、クロス共重合体の各特長を失うことなく上記のごとくA硬度、成形加工性を制御できる。
【0026】
また、特徴的な「変形からの遅い戻り」特性を付与することができる。さらに軟質塩ビ類似の風合いをその成形物に与えることができる。
本発明の樹脂組成物に対し必要に応じて他の樹脂を樹脂組成物の全体の重量を基準として0〜50質量%添加することができる。この場合、以下に例示する各樹脂を用いることができるがこれには限定されない。
【0027】
「芳香族ビニル化合物系重合体」
芳香族ビニル化合物単独の重合体及び芳香族ビニル化合物と共重合可能な1種類以上のモノマー成分を含む芳香族ビニル化合物含量が10質量%以上、好ましくは30質量%以上の共重合体。芳香族ビニル化合物系重合体に用いられる芳香族ビニル化合物モノマーとしては、スチレンおよび各種の置換スチレン、例えばp−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、o−t−ブチルスチレン、m−t−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン等が挙げられ、またジビニルベンゼン等の一分子中に複数個のビニル基を有する化合物等も挙げられる。また、これら複数の芳香族ビニル化合物間の共重合体も用いられる。なお、芳香族ビニル化合物の相互の芳香族基間の立体規則性は、アタクティック、アイソタクティク、シンジオタクティクいずれでもよい。
【0028】
芳香族ビニル化合物と共重合可能なモノマーとしては、ブタジエン、イソプレン、その他の共役ジエン類、アクリル酸、メタクリル酸及びアミド誘導体やエステル誘導体、無水マレイン酸及びその誘導体が挙げられる。共重合形式はブロック共重合、テーパードブロック共重合、ランダム共重合、交互共重合のいずれでもよい。さらに、上記のモノマーからなる重合体に、上記芳香族ビニル化合物をグラフト重合したもので芳香族ビニル化合物を10質量%以上、好ましくは30質量%以上含有するものでも差し支えない。
【0029】
以上の芳香族ビニル化合物系重合体は、その実用樹脂としての性能を発現するために、スチレン換算重量平均分子量として、3万以上、好ましくは5万以上が必要である。
【0030】
芳香族ビニル化合物系樹脂としては例えばアイソタクティクポリスチレン(i−PS)、シンジオタクティクポリスチレン(s−PS)、アタクティクポリスチレン(a−PS)、ゴム強化ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体等のスチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−ジエンブロック/テーパード共重合体(SBS、SISなど)、水添スチレン−ジエンブロック/テーパード共重合体(SEBS、SEPSなど)、スチレン−ジエン共重合体(SBRなど)、水添スチレン−ジエン共重合体(水添SBRなど)、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−イミド化マレイン酸共重合体が挙げられる。さらに石油樹脂を含む概念である。
【0031】
「オレフィン系重合体」
エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、またはビニルシクロヘキサンや環状オレフィン、すなわちシクロペンテン、ノルボルネンから選ばれる1以上のオレフィンから得られる単独重合体または共重合体が用いられる。例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、アイソタクティクポリプロピレン(i−PP)、シンジオタクティクポリプロピレン(s−PP)、アタクティクポリプロピレン(a−PP)、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリイソブテン、ポリブテン、ポリノルボルネン等の環状オレフィン重合体、エチレン−ノルボルネン共重合体等の環状オレフィン共重合体が挙げられる。必要に応じてブタジエンやα−ωジエン等のジエン類を共重合したオレフィン系樹脂でもよい。
【0032】
以上のオレフィン系重合体は、その実用樹脂としての性能を発現するために、スチレン換算重量平均分子量として、1万以上、好ましくは3万以上が必要である。
【0033】
「その他の樹脂、エラストマー、ゴム」
例えば、水添または部分水添石油樹脂、ナイロン等のポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、ブチルゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム、天然ゴム、シリコン樹脂、シリコンゴムが挙げられる。
【0034】
さらに、本発明の樹脂組成物には物性の改善や難燃性付与を目的として無機質充填剤を添加することができる。無機質充填材としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、トリフェニルホスフィート、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アミド、酸化ジリコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化モリブデン、リン酸グアニジン、ハイドロタルサイト、スネークタイト、硼酸亜鉛、無水硼酸亜鉛、メタ硼酸亜鉛、メタ硼酸バリウム、酸化アンチモン、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、赤燐、タルク、アルミナ、シリカ、ベーマイト、ベントナイト、珪酸ソーダ、珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムであり、これらから選ばれる1種又は2種以上の化合物が使用される。特に、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、炭酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いるのが難燃性の付与効果に優れ、経済的に有利である。
【0035】
無機質充填剤の配合量は、樹脂組成物100質量部に対し1〜400質量部、好ましくは5〜300質量部の範囲である。無機質充填剤が1質量部未満では、難燃性が劣る場合がある。一方で、無機質充填剤が400質量部を超えると、成形性及び強度等の機械的物性が劣る場合がある。
【0036】
樹脂組成物には、通常樹脂に使用される安定剤、老化防止剤、耐光性向上剤、紫外線吸収剤、可塑剤、充填材、軟化剤、滑剤、加工助剤、着色剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、結晶核剤等を添加することができる。これらは単独または複数を組み合わせて使用することができる。
【0037】
樹脂組成物を製造するには、公知の適当なブレンド法を用いることができる。例えば、単軸、二軸のスクリュー押出機、バンバリー型ミキサー、プラストミル、コニーダー、加熱ロールなどで溶融混合を行うことができる。溶融混合を行う前に、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサー、タンブラーなどで各原料を均一に混合しておくこともよい。溶融混合温度はとくに制限はないが、120〜300℃、好ましくは150〜250℃が一般的である。
【0038】
樹脂組成物の成形法としては、真空成形、射出成形、ブロー成形、押出し成形、異型押し出し成形等公知の成形法を用いることができる。特にフィルム、テープを製造するには公知の方法、すなわちインフレーション方式、Tダイ方式などの通常の押出しフィルム成形法等を採用できる。本樹脂組成物は上記のようにMFRを広い範囲で変更でき、各種成形加工法に適合させることが容易である。
【0039】
本発明の樹脂組成物は、軟質性、成形加工性、耐熱性、透明性、力学物性、耐傷つき性、耐摩耗性、耐油性に優れているため、各種フィルム、テープ基材やパッケージ材料、シート、チューブやホース、ガスケット、さらには床材、壁材等の建築材料や自動車の内装材として好適に用いることができる。特に、耐摩耗性、耐傷つき性、耐油性に優れる特長から、床材、壁材やその表面保護層として有用である。また、耐油性、耐摩耗性、軟質性、耐熱性、透明性から、家電用や産業用、自動車用のホ−ス、医療用各種チュ−ブとして有用である。また、フィラ−充填性も良好で、各種電線、ケ−ブル被覆用樹脂として好適に用いることができる。透明性、耐油性に優れることから、食品包装用のストレッチフィルム、シュリンクフィルムとして好適である。また、伸びが大きく、軟質性、耐熱性、耐油性や塩ビ類似の風合いから、各種テ−プの基材として用いることができる。
【0040】
以下に合成例、実施例を挙げ、本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
各合成例で得られた共重合体の分析は以下の手段によって実施した。
【0042】
13C−NMRスペクトルは、日本電子社製α−500を使用し、重クロロホルム溶媒または重1,1,2,2−テトラクロロエタン溶媒を用い、TMSを基準として測定した。ここでいうTMSを基準とした測定は以下のような測定である。先ずTMSを基準として重1,1,2,2−テトラクロロエタンの3重線13C−NMRピークの中心ピークのシフト値を決めた。次いで共重合体を重1,1,2,2−テトラクロロエタンに溶解して13C−NMRを測定し、各ピークシフト値を、重1,1,2,2−テトラクロロエタンの3重線中心ピークを基準として算出した。重1,1,2,2−テトラクロロエタンの3重線中心ピークのシフト値は73.89ppmであった。測定は、これら溶媒に対し、ポリマーを3質量/体積%溶解して行った。
【0043】
共重合体中のスチレン含量の決定は、1H−NMRで行い、機器は日本電子社製α−500及びBRUCKER社製AC−250を用いた。重1,1,2,2−テトラクロロエタンに溶解し、測定は、80〜100℃で行った。TMSを基準としてフェニル基プロトン由来のピーク(6.5〜7.5ppm)とアルキル基由来のプロトンピーク(0.8〜3ppm)の強度比較で行った。共重合体中のジエン(ジビニルベンゼン)含量は、1H−NMRによって行った。
【0044】
実施例中の分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めた。室温でTHFに可溶な共重合体は、THFを溶媒とし、東ソー社製HLC−8020を用い測定した。室温でTHFに不溶な共重合体は、1,2,4−トリクロロベンゼンを溶媒として、Waters社製150CV装置を用い、135℃で測定するか、または、オルトジクロロベンゼンを溶媒として、東ソー製HLC−8121装置を用い、145℃で測定した。ディテクターはRI(示差屈折率計)を用いた。本実施例のクロス共重合体は、主鎖成分とクロス鎖成分で、溶媒であるオルトジクロロベンゼンに対する屈折率が反転するため、RIディテクターにより得られたクロス共重合体の分子量は正確ではなく、参考値である。
【0045】
DSC測定は、セイコー電子社製DSC200を用い、N2気流下昇温速度10℃/minで行った。サンプル10mgを用い、昇温速度20℃/分で240℃まで加熱し、液体窒素で−100℃以下まで急冷し(前処理)、次に−100℃より10℃/分で昇温し240℃までDSC測定を行い、融点、結晶融解熱及びガラス転移点を求めた。ガラス転移点は、接線法で求めた。
【0046】
なお、物性評価用の試料は加熱プレス法(温度180℃、時間3分間、圧力50kg/cm2)により成形した厚さ1.0mmのシ−トを用いた。
【0047】
<引張試験> JIS K−6251に準拠し、シートを1号型テストピース形状またはJIS2号小型(1/2)テストピースを用いにカットし、島津製作所AGS−100D型引張試験機を用い、引張速度500mm/minにて測定した。
【0048】
<硬度>硬度はJIS K−7215プラスチックのデュロメーター硬さ試験法に準じてタイプAのデュロメーター硬度を求めた。この硬度は瞬間値である。
【0049】
<全光線透過率、ヘイズ>透明度は加熱プレス法(温度200℃、時間4分間、圧力50kg/cm2G)により1mm厚にシートを成形しJIS K−7105プラスチックの光学的特性試験方法に準じて日本電色工業社製濁度計NDH2000を用いて全光線透過率およびヘイズを測定した。
【0050】
<耐熱変形試験>プレスシートからJIS2号小型(1/2)テストピースにカットし、オーブン中につり下げ、所定の温度で1時間たったのちに取り出し放冷後、形状を測定した。テストピースの縦、横方向いずれかに長さ方向に対し、3%以上の伸びまたは収縮があれば変形と判断した。変形が認められない最大温度(60℃から5℃幅で測定した)を耐熱変形温度とした。
【0051】
<対摩耗性>JIS K 7204に基づき(回転数のみ1000→9000回転に変更)、以下のように行った。
・測定試験機:テーバー磨耗試験機(東洋精機製)
・試験条件: 摩耗輪:緑色炭化珪素質研削材
回転転円盤の回転速度:1rpm
荷重:1kg
試験片:プレス成形(200℃、4分、50kg/cm2)にて厚さ2mm、直径約120mmの正方形。
【0052】
<対傷つき性>JIS規格の耐傷付き性試験装置を軟質樹脂向けに改造 (0.05Rのサファイヤジグにてスクラッチ) し、傷を付け、粗さ計にて表面を測定した。軟質塩ビ(電気化学G5375)と比較し、傷が浅く、耐傷付き性が同等〜良好の場合、◎と記載し、傷が深く、耐傷つき性が悪い場合、×と記載した。
【0053】
<耐油性>JIS2号小型(1/2)テストピースをパラフィンオイルに24℃で24時間浸し、浸せき後の重量増加割合で膨潤度を測定し、耐油性を評価した。
【0054】
<MFR>JIS K7210に従い、200℃、加重10kg、10分で測定した。
【0055】
<ジビニルベンゼン> 以下の合成例では、旭化成ファインケム社製のメタジビニルベンゼン(異性体純度97%以上)を用いた。この場合の異性体純度とは、オルト、メタ、パラの各種ジビニルベンゼン異性体に対するメタジビニルベンゼンの割合である。
【0056】
<触媒(遷移金属化合物)>以下の合成例では、遷移金属化合物(触媒)として、rac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライド、(rac−イソプロピリデンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライド)を用いた。(図2)
図2:rac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライド
【0057】
合成例1<クロス共重合化エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体の合成> 触媒としてrac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを用い、以下のように実施した。容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。トルエン4400ml、スチレン400ml及びジビニルベンゼン0.73gを仕込み、内温70℃に加熱攪拌した。窒素を約100Lバブリングして系内及び重合液をパージした。トリイソブチルアルミニウム8.4mmol、メチルアルモキサン(東ソーアクゾ社製、PMAO−3A)をAl基準で21mmol加え、ただちにエチレンを導入し、圧力0.25MPa(1.5Kg/cm2G)で安定した後に、オートクレーブ上に設置した触媒タンクから、rac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを8.4μmol、トリイソブチルアルミニウム0.84mmolを溶かしたトルエン溶液約50mlをオートクレーブに加えた。内温を80℃、圧力を0.25MPaに維持しながら117分間重合(主鎖重合工程)を実施した。この段階でのエチレンの消費量は標準状態で約250Lであった。重合液の一部(約50ml)をサンプリングし、メタ析により第一重合工程のポリマーサンプル(ポリマー1−A)を得た。急速にエチレンを導入し、5分間かけて系内の圧力を1.1MPaにした。エチレンの圧を上昇させたことにより、重合が促進され、内温は80℃から約100℃に上昇した。圧力を1.1MPaに維持したまま30分間重合を実施した(1.1MPa、30分間でのエチレン消費量は約200L)。(クロス化工程)。重合終了後、得られたポリマー液を、激しく攪拌した大量のメタノール液中に少量ずつ投入して、ポリマーを回収した。このポリマーを、室温で1昼夜風乾した後に80℃、真空中、質量変化が認められなくなるまで乾燥した。977gのポリマー(ポリマー1−C)を得た。表1に合成例1で得られたクロス共重合体の分析結果を示す。
【0058】
【表1】

【0059】
合成例2<エチレン−スチレン共重合体の合成>
触媒としてrac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを用い、以下のように実施した。容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。トルエン4400ml、スチレン400mlを仕込み、内温70℃に加熱攪拌した。窒素を約100Lバブリングして系内及び重合液をパージした。トリイソブチルアルミニウム8.4mmol、メチルアルモキサン(東ソーアクゾ社製、PMAO−3A)をAl基準で8.4mmol加え、ただちにエチレンを導入し、圧力0.25MPa(1.5Kg/cm2G)で安定した後に、オートクレーブ上に設置した触媒タンクから、rac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを8.4μmol、トリイソブチルアルミニウム0.84mmolを溶かしたトルエン溶液約50mlをオートクレーブに加えた。内温を70℃、圧力を0.25MPaに維持しながら120分間重合を実施した。重合終了後、得られたポリマー液を、激しく攪拌した大量のメタノール液中に少量ずつ投入して、ポリマーを回収した。このポリマーを、室温で1昼夜風乾した後に80℃、真空中、質量変化が認められなくなるまで乾燥した。420gのポリマーを得た。
【0060】
合成例3 スチレン800ml、トルエン4000ml、エチレン圧0.8MPa、重合時間0.5hに変更した以外は合成例3と同様に重合、後処理を行った。その結果970gのポリマーを得た。
【0061】
合成例4 スチレンを600ml、トルエン4200ml、エチレン圧1.0MPa、重合時間0.5時間に変更した以外は合成例3と同様に重合、後処理を行った。その結果820gのポリマーを得た。表2に合成例2〜4で得られたエチレンースチレン共重合体の分析結果を示す。
【0062】
【表2】

【0063】
実施例1〜7 表2に示す配合でブラベンダープラスチコーダー(ブラベンダー社PLE331型)を使用し、ポリマー溶融後、200℃、60rpm、5分間、混練しサンプルを作製した。得られたサンプルを180℃、50気圧で2分間プレス成形し、各種物性を測定した。測定結果についても表2に示す。クロス共重合体は、上記合成例1で得られたポリマーを、エチレンースチレン共重合体は上記合成例2で得られたポリマーを用いた。
クロス共重合体とエチレン−スチレン共重合体の組成物は、高い耐熱性、透明性、力学物性(破断強度、伸び)、対摩耗性、対傷つき性、耐油性を維持し、軟質化できる。成形加工性(MFR)も著しく改善されている。配合割合を変更することで、耐熱性、透明性、力学物性、対摩耗性、対傷つき性、耐油性を維持しながら広い範囲で硬度を変更でき、成形加工性を制御することが可能である。
図3に実施例1〜7で得られた組成物と、合成例2〜4で得られたエチレン−スチレン共重合体のA硬度と耐熱変形温度の関係を示す。本発明の樹脂組成物は、エチレン−スチレン共重合体に対し同一の硬度で比較して約20〜40℃高い耐熱変形温度を示す。
【0064】
比較例1 エチレン−スチレン共重合体を用いずに、トリメリット酸系可塑剤を用い、実施例と同様に混練し、組成物を得た。配合、測定結果について表3に示す。トリメリット酸系可塑剤を用いた場合、軟質化し、成形加工性(MFR)は増加したが、可塑剤のブリード(浸みだし)があり、実用性はなかった。
【0065】
比較例2,3、4 エチレンー酢ビ共重合体(EVA)日本ユニカ社製NUC3830 酢ビ含量15%、軟質塩ビ(電気化学G5375渋川工場品 G5375)、エチレン−オクテン共重合体(オクテン含量13モル%)を用い、耐摩耗性試験を行った。その結果を表3に示す。
本発明の樹脂組成物は、一般的軟質樹脂(塩ビ、EVA、エチレン−オクテン共重合体)と比較し耐熱変形性、対摩耗性、傷つき性、耐油性で総合的に優れた特長を示す(図3)。
【0066】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】クロス共重合体概念図
【図2】合成例に用いた触媒
【図3】A硬度と耐熱変形温度の関係図
【符号の説明】
【0068】
1 クロス鎖(クロス化工程で得られる共重合体)
2 主鎖(主鎖重合工程で得られる共重合体)
3 主鎖ジエンユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体1〜99質量%とオレフィン−芳香族ビニル化合物共重合体1〜99質量%、必要に応じて他の樹脂0〜50質量%からなり合計100質量%である樹脂組成物。
【請求項2】
芳香族ビニル化合物がスチレンである請求項1または2記載の樹脂組成物。
【請求項3】
オレフィンがエチレンである請求項1または2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
55〜90のA硬度を有する請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項5】
1mm厚シ−トにおけるヘイズが25%以下、または全光線透過率が70%以上である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項6】
200℃、加重10kgで測定したMFRが5g/10min.以上100g/10min.以下である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1記載の樹脂組成物からなる成形物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−176708(P2006−176708A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−373197(P2004−373197)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】