説明

樹脂組成物

【課題】地山の空洞や空隙部分の裏込め材、シールドセグメントの充填材として、主に止水や振動防止に用いることのできる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】分子主鎖中に、エチレン性不飽和二重結合を含有するモノマーとビニルエステル単位を有するモノマーとを共重合させた後にケン化して得られる、カルボキシル基を含有する変性ポリビニルアルコール100質量部と、ラジカル重合開始剤0.001〜10質量部を有する樹脂組成物。
【効果】本組成物は、均一にゲル化し、安定した裏込め効果や充填効果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂組成物に係るものであり、特に、地山の空洞や空隙部分の裏込め材、シールドセグメントの充填材として、主に止水や振動防止に用いられる樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
河川堤防等の取水口付近においては、流水による浸食で地盤に空隙が発生する場合がある。また、トンネル施工においても、施工時や施工後にトンネル壁と地盤との間に空洞が発生する場合がある。その際、その空洞に裏込め材を充填して河川堤防の遮水やトンネル壁の固定を図る必要がある。従来の裏込め材としては、セメントに、高吸水性樹脂を添加して増粘させたもの(例えば特許文献1参照)、水ガラスを添加して硬化を促進させたもの(例えば特許文献2参照)等が提案されていた。
【0003】
しかしながら、これらセメント系の裏込め材は、柔軟性や靭性を有しないため、地震や圧密沈下および交通等による振動を受けた際に破損したり、振動吸収性をほとんど有していないために、地盤自体に破損が拡大してしまうという問題があった。また、膨潤性を有していないために、一度発生した空隙はそのまま埋まることがないという問題もあった。このような問題を解決するために、これまで、土粒子を樹脂あるいはゲル状の物質で固定した有機系の裏込め材が提案されており、例えば、アクリルアミド系、アクリル酸塩系、リグニンスルホン酸系、フェノール樹脂系のものを用いる方法が一般的に行われている。しかしながら、これらの裏込め材は、毒性及びコスト面で大きな制約を受けるという問題を有している。
【0004】
そこで、毒性のない裏込め材としてポリビニルアルコールを利用したものが種々検討されており、例えば、ポリビニルアルコールに重合性α,β−不飽和化合物及び/又は共役ジエン化合物をグラフト変性し、これに銅、カルシウム、亜鉛等を添加させたもの(例えば特許文献3参照)、アルカリ及びグリコール類の存在下でポリビニルアルコールと硼酸化合物を含有させたもの(例えば特許文献4参照)、ポリビニルアルコールとメチロール基を有する化合物をゲル化させたもの(例えば特許文献5参照)などが提案されている。
【特許文献1】特開平10−237446号公報
【特許文献2】特開平11−061123号公報
【特許文献3】特開昭51−68918号公報
【特許文献4】特開昭52−1941号公報
【特許文献5】特開2002−371278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特に、地山の空洞や空隙部分の裏込め材、シールドセグメントの充填材として、主に止水や振動防止に用いることのできる樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
樹脂組成物として、その構成を特定した変性ポリビニルアルコールとラジカル重合開始剤を有する樹脂組成物を用いることにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0007】
すなわち本発明は、分子主鎖中に、一般式(化2)で表される結合単位を含有する変性ポリビニルアルコール100質量部に対して、ラジカル重合開始剤0.001〜10質量部を含有する樹脂組成物である。
【化2】

(式中、X1とX2は、炭素数1〜12の低級アルキル基、水素原子または金属塩を表す。gは、0〜3の整数を表す。hは、0〜12の整数を表す。Y1は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩または水素原子を表す。)
ここで、変性ポリビニルアルコール中の未変性ポリビニルアルコールの含有量は、25モル%以下であることが好ましく、変性ポリビニルアルコールは、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーと、ビニルエステル単位を有するモノマーとを共重合させた後ケン化して得られたものであることが好ましい。さらに、変性ポリビニルアルコールが、アニオン性基を有する結合単位を含有することが好ましく、アニオン性基を有する結合単位の含有量は、変性ポリビニルアルコール中の0.05〜10モル%の範囲であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
地山の空洞や空隙部分の裏込め材、シールドセグメントの充填材として、主に止水や振動防止に用いることのできる樹脂組成物が得られる。特に、樹脂組成物に用いる変性ポリビニルアルコールが主鎖中に均一に不飽和二重結合を有するものであるため、樹脂組成物は均一にゲル化し、安定した裏込め効果や充填効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
変性ポリビニルアルコールは、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーと、ビニルエステル単位を有するモノマーを共重合させた後に、ケン化させてカルボニル基含有ポリビニルアルコールを得、洗浄、乾燥を行って得られるものであり、主鎖にカルボキシル基を起点とする不飽和二重結合をランダムに導入させたものである。
【0010】
エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとしては、特に限定するものではないが、例えば、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、シトラコン酸ジメチル、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等がある。
【0011】
これらモノマーの含有量(共重合量)は、特に限定するものではないが、変性ポリビニルアルコール中に0.1〜50モル%の範囲、より好ましくは0.1〜10モル%の範囲とすると、得られる変性ポリビニルアルコールの分子内の不飽和二重結合量と水溶性のバランスが向上するため好ましい。
【0012】
ビニルエステル単位を有するモノマーとしては、特に限定するものではないが、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等がある。これらの中でも、酢酸ビニルを用いると、変性ポリビニルアルコールの重合が安定して行えるため好ましい。
【0013】
変性ポリビニルアルコール中の未変性ポリビニルアルコールの含有量は、特に限定するものではないが、25モル%以下の範囲とすると、不飽和二重結合の含有比率が増加し、地盤注入後にゲル化しやすくなるため好ましい。未変性ポリビニルアルコールの含有量は0モル%であってもよい。未変性ポリビニルアルコールの含有量は、重合させるエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとビニルエステル単位を有するモノマーの割合を変化させることで、調整できる。未変性ポリビニルアルコールの含有量を低減させるにはビニルエステル単位を有するモノマーの割合を多くすればよく、未変性ポリビニルアルコールの含有量を増加させるにはエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーの割合を少なくすればよい。
【0014】
変性ポリビニルアルコールは、分子中にアニオン性基を有する結合単位を含有させることによって、得られる分散剤の活性が向上するため好ましい。
【0015】
分子中にアニオン性基を有する結合単位を含有させるには、特に限定するものではないが、変性ポリビニルアルコールを重合する際にアニオン性基を有するモノマーを共重合させる方法や、ポリビニルアルコール中の水酸基との反応性を利用して後変性させる方法がある。
【0016】
分子中のアニオン性基を有する結合単位の含有量は、変性ポリビニルアルコール中の0.05〜10モル%の範囲とすると、得られる分散剤自体の溶媒中への分散性が向上するため好ましく、0.1〜3モル%の範囲とするとより好ましい。
【0017】
アニオン性基を有するモノマーとしては、特に限定するものではないが、例えば、カルボン酸基含有ビニル単量体やスルホン酸基含有ビニル単量体等があり、カルボン酸基含有ビニル単量体を用いると取り扱いが容易なため好ましい。
カルボン酸基含有ビニル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の重合性モノカルボン酸やそのエステル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の重合性ジカルボン酸、無水マレイン酸等の重合性ジカルボン酸無水物、脂肪族ビニルエステル等がある。これらの中でも、イタコン酸を用いると、得られる分散剤自体の溶媒中への分散性がより向上するため好ましい。
スルホン酸基含有ビニル単量体としては、例えば、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−1−メチルスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等がある。
【0018】
変性ポリビニルアルコールには、必要に応じて、これらのモノマーと共重合可能なモノマーを共重合させてもよい。共重合可能なモノマーとしては、特に限定するものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フタル酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和酸類、またはその塩類、または炭素数1〜18のモノアルキルエステル類もしくはジアルキルエステル類、アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩などのアクリルアミド類、メタクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩などのメタクリルアミド類、炭素数1〜18のアルキル鎖長を有するアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドなどのN−ビニルアミド類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類、トリメトキシビニルシランなどのビニルシラン類、酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール等のアリル化合物、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物、酢酸イソプロペニル等があり、2種類以上を併用することもできる。
これらの共重合可能なモノマーの使用量は、特に限定するものではないが、使用する全モノマーに対して0.001〜20モル%が好ましい。
【0019】
変性ポリビニルアルコールの数平均分子量(以下Mnと略記する。)は、特に限定するものではないが、一般に使用されている1900〜66500の範囲がよく、3800〜28500の範囲とすると水溶性、保護コロイド性のバランスが向上するため好ましい。
【0020】
モノマーの重合方法は、バルク重合、乳化重合、懸濁重合、溶液重合などの公知の重合方法が用いられ、特に限定するものではないが、メタノール、エタノールあるいはイソプロピルアルコールなどのアルコールを溶媒とする溶液重合を採用すると重合の制御が容易になるため好ましい。溶液重合は、連続重合でもバッチ重合でもよく、重合させるモノマーは、分割して仕込んでもよいし、一括で仕込んでもよく、あるいは連続的にまたは断続的に添加するなど任意の手段を用いることができる。
【0021】
溶液重合において使用する重合開始剤は、公知のラジカル重合開始剤を使用することができ、特に限定するものではないが、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルパレロニトリル、アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルパレロニトリル)等のアゾ化合物、アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド、2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテート等の過酸化物、ジイソプピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物、t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート等のパーエステル化合物、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスメトキシバレロニトリルなどがある。重合反応温度は、通常30℃〜90℃程度の範囲から選択される。
【0022】
ケン化は、モノマーを共重合させて得られた共重合体をアルコールに溶解し、アルカリ触媒又は酸触媒の存在下で分子中のエステルを加水分解するものである。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等がある。アルコール中の共重合体の濃度は、特に限定するものではないが、10〜80質量%の範囲から選ばれる。
アルカリ触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒を用いることができる。
酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸等の無機酸水溶液、p−トルエンスルホン酸等の有機酸を用いることができる。
これら触媒の使用量は、共重合体に対して1〜100ミリモル当量にすることがよい。ケン化温度は、特に限定するものではないが、10〜70℃、好ましくは30〜40℃の範囲がよい。反応時間は、特に限定するものではないが、30分〜3時間にわたって行われる。
【0023】
変性ポリビニルアルコールのケン化度は、特に限定するものではないが、30〜99.9モル%の範囲とすると、分子内に十分な量の不飽和二重結合が生成されるため好ましい。
【0024】
本発明に用いるラジカル重合開始剤としては、樹脂組成部をゲル化させるために配合する化合物であり、特に限定するものではないが、例えば、過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤、ヒドロペルオキシド、ペルエステル、過酸、レドックス系重合開始剤、光重合開始剤等を用いることができる。
過酸化物系重合開始剤としては過酸化ベンゾイル、アゾ系重合開始剤としてはアゾイソブチロニトリルやα, α'-アゾビスイソバレロニトリル、光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル等のベンゾイン系、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、β−クロールアンスラキノン及び、α-ヒドロキシケトン等が挙げられる。
これらのラジカル重合開始剤は、2種類以上を併用することもできる。
【0025】
ラジカル重合開始剤の配合量は、変性ポリビニルアルコール100質量部に対して、0.001〜10質量部の範囲がよい。0.001質量部未満では変性ポリビニルアルコールを十分にゲル化させることができず、10質量部を超えて配合しても配合量に見合う効果が得られずコスト高となる。
【0026】
樹脂組成物は、これを純水に溶解させて得られる水溶液を、地盤の空隙部分に充填した後にゲル化させることにより、空隙部分を隙間無く充填し、地盤を安定的に固定するものである。
【0027】
樹脂組成物を溶解させる純水の量は特に限定するものではないが、樹脂組成物中の変性ポリビニルアルコール100質量部に対して、200〜800質量部の範囲とすると、効率よく地盤への充填ができるとともに、十分な地盤固定効果が得られる。
【0028】
樹脂組成物の水溶液を地盤の空隙部分へ注入するには、従来公知のポンプを使用して行えば良い。ポンプの形式には特に制約はないが、スクイーズ式圧送ポンプが高粘度スラリの輸送に適しており、好適に使用される。
【0029】
樹脂組成物の水溶液は、経時変化によってゲル化するものである。このため、樹脂組成物の水溶液を地盤の空隙部分へ注入し、放置するだけで安定した地盤固定効果が得られる。また、ゲル化を促進するために、加熱や放射線を照射することにより、ラジカル重合開始剤を活性化させることにより、より短時間でゲル化させることもできる。
【0030】
樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、硬化剤としてのチタン、ジルコニウム、バナジウム等の金属のキレート化合物を配合することもできる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、「部」および「%」は特記しない限り質量基準によるものとする。
【0032】
「実施例1」
〈変性ポリビニルアルコール〉
酢酸ビニル17部、メタノール14部、マレイン酸ジメチル0.023部及び酢酸ビニルに対して0.10%のアゾビスイソブチロニトリルを重合缶に仕込み、窒素置換後加熱して沸点まで昇温し、更に、酢酸ビニル6部、メタノール5部及びマレイン酸ジメチル0.207部の混合液を重合率75%に達するまで連続的に添加して重合させ、重合率90%に達した時点で重合を停止した。次いで常法により未重合の酢酸ビニルを除去し、得られた重合体を水酸化ナトリウムで常法によりケン化した。その後、90℃で90分熱風乾燥し、分子量(Mn)11000、ケン化度88.0モル%、マレイン酸ジメチル0.6モル%、0.2%水溶液の波長270nmにおける吸光度0.9、無変性ポリビニルアルコール量13%の変性ポリビニルアルコールを得た。
【0033】
〈分析方法〉
変性ポリビニルアルコールのケン化度は、JIS K 6276「3.5ケン化度」に準じて測定したものであり、変性ポリビニルアルコールの分子量は、GPCを使用し、試料濃度0.25w/v%水溶液を40℃で測定し、標準ポリエチレングリコール換算でMnを計算しものである。無変性ポリビニルアルコールの含有量は、変性ポリビニルアルコールをメタノール中でアルカリ触媒にて完全ケン化し、ソックスレー抽出した試料を濃度0.01w/v%水溶液に調整し、イオン排除のHPLCを使用し、IR検出器の面積比で計算したものである。270nm吸光度は、変性ポリビニルアルコールを0.2質量%の水溶液に調整し、270nmの紫外線の吸光度を測定したものである。マレイン酸ジメチルの含有量はNMRにより測定したものである。
【0034】
〈樹脂組成物〉
変性ポリビニルアルコール60部を、90℃に加熱した純水340部中に添加、溶解し、固形分20%の変性ポリビニルアルコール水溶液400部を得た。得られたポリビニルアルコール水溶液の固形分量100質量部に対して、ラジカル重合開始剤としてのα-ヒドロキシケトン(商品名イルガキュア2959チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)1質量部を配合し、均一になるように攪拌機にて1時間攪拌した。得られた樹脂組成物の水溶液についてポンプ輸送性、ゲル化時間、およびゲル化後の耐水性を測定した。結果を表1の特性の欄に示す。
【0035】
「実施例2〜6」
表1に示した変性ポリビニルアルコールおよびラジカル重合開始剤を用いて、実施例1と同様にして樹脂組成物を作成し、ポンプ輸送性、ゲル化時間、およびゲル化後の耐水性を実施例1と同様に測定した。結果を表1の特性の欄に示す。
【0036】
「比較例1〜4」
表1に示した変性ポリビニルアルコールおよびラジカル重合開始剤を用いて、実施例1と同様にして樹脂組成物を作成し、ポンプ輸送性、ゲル化時間、およびゲル化後の耐水性を実施例1と同様に測定した。結果を表1の特性の欄に示す。
【0037】
「測定方法及び評価」
ポンプ輸送性:スクイーズ式ポンプを用いて、樹脂組成物の水溶液の輸送可能性を確認し、輸送可能であったものを○、輸送できなかったものを×とした。
ゲル化時間:予め水を入れたビーカーに樹脂組成物を投入して、分離しなくなるまでの時間を測定した。
耐水性:ゲル化させた樹脂組成物を、水を入れたビーカー内に投入しゲルの状態を目視で観察したものであり、溶解しなかったものを○、若干溶解したものを△、完全に溶解してしまったものを×とした。
【0038】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子主鎖中に一般式(化1)で表される結合単位を有する変性ポリビニルアルコール100質量部に対して、ラジカル重合開始剤0.001〜10質量部を含有する、ゲル化させて用いるための樹脂組成物。
【化1】

(式中、X1とX2は、炭素数1〜12の低級アルキル基、水素原子または金属塩を表す。gは、0〜3の整数を表す。hは、0〜12の整数を表す。Y1は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩または水素原子を表す。)
【請求項2】
変性ポリビニルアルコール中の未変性ポリビニルアルコールの含有量が、25モル%以下であることを特徴とする請求項1に記載した樹脂組成物。
【請求項3】
変性ポリビニルアルコールが、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーと、ビニルエステル単位を有するモノマーとを共重合させた後ケン化して得られたものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載した樹脂組成物。
【請求項4】
変性ポリビニルアルコールが、さらにアニオン性基を有する結合単位を含有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載した樹脂組成物。
【請求項5】
アニオン性基を有する結合単位の含有量が、変性ポリビニルアルコール中の0.05〜10モル%の範囲であることを特徴とする請求項4に記載した樹脂組成物。
【請求項6】
樹脂組成物を純水に溶解させて得られる水溶液を、地盤の空隙部分に充填した後にゲル化させて、地盤を固定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載した樹脂組成物の使用方法。

【公開番号】特開2008−101057(P2008−101057A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282648(P2006−282648)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】