説明

橋梁部軌道の製造方法

【課題】橋梁部において防振性能の高い軌道を簡易に構築することができる橋梁部軌道の構築方法を提供する。
【解決手段】橋梁部1の縦桁および横桁2上面に離型手段となる鉄板7を設けるための離型手段積層工程と、縦桁および横桁2上に積層された敷き鉄板7上に、コンクリート打設時に橋梁部1の主桁ウエブ3を一体化することを防止しかつコンクリートを板状に形成するための型枠を形成する型枠形成工程と、敷き鉄板7上の型枠内にコンクリートを打設して床版コンクリート9を形成するコンクリート打設工程と、床版コンクリート9をジャッキアップさせるジャッキアップ工程と、ジャッキアップされた床版コンクリート9と縦桁および横桁2との間隙に防振材10を配置する防振材設置工程と、床版コンクリート9をジャッキダウンさせるジャッキダウン工程と、を経ることにより、橋梁部の縦桁および横桁と床版コンクリートとの間に簡易に防振材が設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は橋梁部において防振軌道を構築することができる橋梁部軌道の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁部では、鉄桁上に設置されたコンクリートスラブの上面に、枕木(縦型、横型いずれでも良い)を敷設することにより、橋梁部の軌道を構成するようにしている。この種のコンクリートスラブとしては、例えば、特許文献1及び2に示される床版コンクリートがあり、この床版コンクリート上に、支持材を介して枕木が設置される構成とされている。
【特許文献1】特開2005−163264号公報
【特許文献2】特開2002−332601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、橋梁部に設置されたコンクリートスラブでは、スラブ軌道上を列車が通過した際に、コンクリートスラブの振動が橋梁部の鉄桁に伝わることによって騒音が生じ、その騒音を軽減又は防止するための対策が必要となっていた。
【0004】
本発明は、従来の有していた問題を解決しようとするものであって、橋梁部において防振性能の高い軌道を簡易に構築することができる橋梁部軌道の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そして、上記目的を達成するために本発明の課題解決手段では、橋梁部の縦桁および横桁上面に離型手段を設けるための離型手段積層工程と、縦桁および横桁上に積層された離型手段上に、コンクリート打設時に橋梁部の主桁ウエブと一体化することを防止しかつコンクリートを板状に形成するための型枠を形成する型枠形成工程と、離型手段上の型枠内にコンクリートを打設して床版コンクリートを形成するコンクリート打設工程と、床版コンクリートをジャッキアップさせるジャッキアップ工程と、ジャッキアップされた床版コンクリートと縦桁および横桁との間隙に防振材を配置する防振材設置工程と、床版コンクリートをジャッキダウンさせるジャッキダウン工程と、を有する。
【0006】
また、本発明の課題解決手段では、前記離型手段を、鉄板から構成する。
【0007】
また、本発明の課題解決手段では、前記離型手段を、橋梁部の縦桁および横桁上面に離型剤を塗布することにより構成する。
【0008】
また、本発明の課題解決手段では、前記ジャッキアップ工程にて床版コンクリートをアップさせるジャッキを、縦桁および横桁にその軸線が垂直となるようにボルトを螺合し、このボルトの上端に、該ボルトとともに上下動するフランジを設けることにより構成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の橋梁部軌道の構築方法では、橋梁部の縦桁および横桁上面に、鉄板を敷く又は離型を塗布するなどの離型手段を設けた後、この離型手段上に型枠を形成し、この型枠内にコンクリートを打設して枕木が敷設される床版コンクリートを形成する。コンクリート固化後、床版コンクリートをジャッキアップし、ジャッキアップした床版コンクリートと縦桁および横桁との間隙に防振材を配置した後、床版コンクリートをジャッキダウンさせることで、橋梁部の縦桁および横桁と床版コンクリートとの間に防振材が密着配置される。そして、以上のような工程により、橋梁部の縦桁および横桁と床版コンクリートとの間に簡易に防振材を設置することができ、この防振材により、床版コンクリート上の軌道を列車が走行した場合に、床版コンクリートの振動が、橋梁部の鉄桁に伝わることが防止され、これにより発生する騒音を軽減又は防止することが可能となる。又、床版コンクリートの下面に離型手段が積層されているので、床版コンクリートをジャッキアップするに際して、該床版コンクリートが縦桁および横桁と密着することが無く、そのジャッキアップを支障なく行うことができる。
【0010】
また、本発明の橋梁部軌道の構築方法では、縦桁および横桁にその軸線が垂直となるようにボルトを螺合し、このボルトの上端に、該ボルトとともに上下動するフランジを設けることにより構成したので、ボルトの頭部をスパナ等で操作して、該ボルトを橋梁部の縦桁および横桁に対して上下動させることによって、上述した床版コンクリートのジャッキアップ、ジャッキダウンの作業を簡単に行うことができ、その作業性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を図1〜図7に基づいて説明する。これらの図は橋梁部軌道の構築方法を工程順に説明するための説明図であって、まず、図1において符号1は、縦桁および横桁2と主桁ウエブ3とからなる橋梁部である。縦桁および横桁2は、桁上フランジ4と桁下フランジ5とを有し、桁上フランジ4には、後述する床版コンクリートにおいて、ジベル等として使用されるボルト6が固定されている。また、ボルト6には、フランジ6aが一体に取り付けられている。
【0012】
次に、図1に示す橋梁部1の縦桁および横桁2上に、図2に示す如く離型手段となる敷き鉄板7を載置する(離型手段積層工程)。この敷き鉄板7は、後述する床版コンクリートの設置位置に一致するように配置し、かつ該床版コンクリートの大きさ(縦横の大きさ)よりやや大きく形成する。なお、敷き鉄板7には、ボルト6が上下に挿通されるように予め貫通孔(図示せず)を設けておくようにする。また、離型手段として敷き鉄板7を使用することに限定されず、離型剤を縦桁および横桁2上に塗布しても良い。また、敷き鉄板7に代えて、型枠の底板をなすような木板を使用しても良い。
【0013】
次に、図3に示すように、縦桁および横桁2上に積層した敷き鉄板7上に、コンクリート打設時に橋梁部1の主桁ウエブ3と一体化することを防止しかつコンクリートを板状に形成するための型枠8を形成する(型枠形成工程)。その後、敷き鉄板7を底板として、型枠8内にコンクリートを打設して床版コンクリート9を形成する(コンクリート打設工程)。なお、コンクリートを型枠8内に打設するに際して、コンクリートがボルト6に密着しないように、離型剤を塗布しておいたり、コンクリートにボルト貫通用のスリーブを埋め込んでおくことが望ましい。また、型枠8として、例えば発泡スチロール、材木などが使用される。そして、以上のような型枠形成工程、コンクリート打設工程によって形成された床版コンクリート9の平面図を、図7に示す。同図に示されるように床版コンクリート9は、橋梁部1の主桁ウエブ3間にて列車軌道に沿うように複数配置される。
【0014】
次に、コンクリートが固化して、型枠8を取り除いた後は、図4に示すように、床版コンクリート9をジャッキアップさせる(ジャッキアップ工程)。このジャッキアップには、油圧ジャッキ、パンタグラフジャッキ等を利用して、床版コンクリート9を下方から持ち上げても良いし、上方から吊り下げても良い。
【0015】
次に、図5に示すように、ジャッキアップされた床版コンクリート9と縦桁および横桁2の桁上フランジ4との間隙にゴムからなる防振材10を設置する(防振材設置工程)。なお、この防振材10は、軌道に沿った長尺なものでも良いし、四角形状のものであっても良く、その形状及び設置数は限定されない。
【0016】
次に、図6に示すように、床版コンクリート9をジャッキダウンさせることで、橋梁部1の縦桁および横桁2と床版コンクリート9との間に防振材10を密着配置させる(ジャッキダウン工程)。その後、床版コンクリート9上に軌道11を設置する。本実施形態では、床版コンクリート9上に支持台座12を設置し、この支持台座12上にラダー枕木13を介してレール14を締結固定することにより軌道11を形成したが、このようなラダー枕木13に限定されず、横枕木を使用しても良い。
【0017】
以上詳細に説明したように、本実施形態に示される橋梁部軌道の構築方法では、橋梁部1の縦桁および横桁2上面に敷き鉄板7を載置した後、この敷き鉄板7上に型枠8を形成し、この型枠8内にコンクリートを打設して軌道11が敷設される床版コンクリート9を形成する。コンクリート固化後、床版コンクリート9をジャッキアップし、ジャッキアップした床版コンクリート9と縦桁および横桁2との間隙に防振材10を配置した後、床版コンクリート9をジャッキダウンさせることで、橋梁部1の縦桁および横桁2と床版コンクリート9との間に防振材10が密着配置される。そして、以上のような工程により、橋梁部1の縦桁および横桁2と床版コンクリート9との間に簡易に防振材10を設置することができ、この防振材10により、床版コンクリート9上の軌道11を列車が走行した場合に、床版コンクリート9の振動が、橋梁部1の鉄桁に伝わることが防止され、これにより発生する騒音を軽減又は防止することが可能となる。又、床版コンクリート9の下面に離型手段となる敷き鉄板7(又は木板、又は離型剤)が積層されているので、床版コンクリート9をジャッキアップするに際して、該床版コンクリート9が橋梁部1の縦桁および横桁2と密着せず、そのジャッキアップを支障無く行うことができる。
【0018】
なお、前記実施形態では、床版コンクリート9をアップさせるジャッキとしては、例えば、橋梁部1の縦桁および横桁2の桁上フランジ4に垂直に雌ねじを切っておき、これにボルト6を螺合し、このボルト6にフランジ6aを設けて一体に上下動することによって、ジャッキとして利用できるようにしている。このフランジ6aは、ボルト6の頭部をスパナ等で操作して回転させることにほり、橋梁部1の縦桁および横桁2に対して上下動することができ、このフランジ6aの上下動により、敷き鉄板7及びその上の床版コンクリート9を同じく上下動させることができる。すなわち、前記ボルト6の上下動により、敷き鉄板7上の床版コンクリート9をジャッキアップ、ジャッキダウンさせることができる。
なお、前記ボルト6を単なるジベルボルトとして用い、別途持ち込んだジャッキによりコンクリート床版をジャッキアップし、あるいはクレーンによってつり上げても良い。
また敷き鉄板を省略しても良いが、この場合、コンクリート打設に際し、板材等によって型枠8の底をふさぐことが必要なのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】床版コンクリート設置前の橋梁部1を示す正断面図
【図2】離型手段積層工程を説明するための正断面図
【図3】型枠形成工程、コンクリート打設工程を説明するための正断面図
【図4】ジャッキアップ工程を説明するための正断面図
【図5】防振材設置工程を説明するための正断面図
【図6】ジャッキダウン工程を説明するための正断面図
【図7】橋梁部1上の床版コンクリート9を上方から見た平面図
【符号の説明】
【0020】
1 橋梁部
2 縦桁および横桁
3 主桁ウエブ
4 桁上フランジ
5 桁下フランジ
6 ボルト
6a フランジ
7 敷き鉄板
8 型枠
9 床版コンクリート
10 防振材
11 軌道

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁部の縦桁および横桁上面に離型手段を設けるための離型手段積層工程と、縦桁および横桁上に積層された離型手段上に、コンクリート打設時に橋梁部の主桁ウエブと一体化することを防止しかつコンクリートを板状に形成するための型枠を形成する型枠形成工程と、離型手段上の型枠内にコンクリートを打設して床版コンクリートを形成するコンクリート打設工程と、床版コンクリートをジャッキアップさせるジャッキアップ工程と、ジャッキアップされた床版コンクリートと縦桁および横桁との間隙に防振材を配置する防振材設置工程と、床版コンクリートをジャッキダウンさせるジャッキダウン工程と、からなることを特徴とする橋梁部軌道の製造方法。
【請求項2】
前記離型手段は、鉄板からなることを特徴とする請求項1記載の橋梁部軌道の製造方法。
【請求項3】
前記離型手段は、橋梁部の縦桁および横桁上面に離型剤を塗布するものであることを特徴とする請求項1記載の橋梁部軌道の製造方法。
【請求項4】
前記ジャッキアップ工程にて床版コンクリートをアップさせるジャッキは、縦桁および横桁にその軸線が垂直となるようにボルトを螺合し、このボルトと一体に、該ボルトとともに上下動するフランジを設けることにより構成されることを特徴とする請求項2に記載の橋梁部軌道の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−13681(P2009−13681A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177212(P2007−177212)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(592173124)株式会社東京鐵骨橋梁 (11)
【Fターム(参考)】